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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部
1
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 21:28:16
SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1430536972/
SSログ置き場
http://jp.bloguru.com/masaoikuta/238553/top
2
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 21:28:46
前スレの続きの話をこのスレで書いていきます。
第一部をすべて読み終えることを前提にしていますので
前スレか、あるいは後に更新するSSログ置き場を御覧いただくことをお勧めします。
3
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 21:32:16
【第二部:berryz-side】
我々の住む地球から時空を超え宇宙を超えたところにある、とある世界。
そこにはモーニング帝国と呼ばれる大国が存在していた。
その帝国を護る少女剣士集団であるモーニング帝国剣士らは今日も訓練に勤しみ、
正午には食堂でランチを楽しもうとしていた。
「やったーごはんだー!」
帝国剣士の中でも最も若い新人、アカネチン・クールトーンは大はしゃぎだ。
成長期だからか、今が一番ご飯が美味しい時期なのだろう。
急いで定食を取りに向かうが、それを同期のハーチン・キャストマスターに制止される。
「こらあかんやろ!先輩方が先や。」
モーニング帝国剣士には厳しい鉄の掟が定められていた。
いくつかある中でも代表的なのは「料理を選ぶのは先輩から」というものだ。
まずは最も先輩であるQ期団のエリポン、サヤシ、カノンから。
次は天気組団のハルナン、アユミン、マーチャン、ハル。
続いて同じく天気組団だが先の4人より後輩であるオダが定食を運んでいく。
そして最後に新人ハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンが選択することを許されるのだ。
人気の焼肉定食などはすぐに無くなってしまうため、新人4人の選択肢はほぼ無いに等しかった。
ボリュームの少ない野菜だらけの定食を運びながら、アカネチンが寂しそうな顔をする。
「はぁ、もっとたくさん食べたかったなぁ。」
「ほんまにアカネチンはしょうがないな。じゃあウチの分も食べ。」
「え!?ハーチンいいの!?」
「ウチは氷さんだけあればそれで満足なんや。」
「ハーチン大好き!」
アカネチンは両手をあげて喜んだ。
ハーチンがご飯を分け与えることなんて日常茶飯事なのだが、
それでもとても嬉しく思えるくらい、食べたくて食べたくて仕方ないのである。
だが、その行為に対して先輩から注意が入る。
「ダメよハーチン。ご飯は自分で食べなさい。」
「「ハルナンさん……」」
指摘をしたのはモーニング帝国の剣士団長兼、天気組団の団長兼、新人剣士の教育係である
ハルナン・シスター・ドラムホールドだった。
新人のことを思って、剣士たるもの体調管理も重要だというありがたい話をしてくる。
「食事制限も行き過ぎると逆効果よ?訓練と任務をこなすためのエネルギーはちゃんと摂取しなさい。」
「はぁい……」
「そしてアカネチン。成長期とは言え定食を2つも食べるのは絶対にダメ。
身体が重かったら実践で思うように動けないでしょ?」
「でも……」
アカネチンはQ期団の座るテーブルをチラッチラッと見た。
そこでは恰幅の良いカノンと、昨年より大幅にスケールアップしたサヤシが食事をとっている。
「あの二人は……」
「それ以上言うのは許しません。」
「はい、ごめんなさい……」
4
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/09(土) 22:10:19
「ごちそうさまでしたー。」
アカネチンは、食事が終わると決まってハルナンの後をついていく。
彼女らは重要な任務を任されているため、日に三回、とある場所に向かわねばならないのだ。
「アカネチン、ちゃんとお弁当は持った?」
「はい!カバンの中に入れています。」
「じゃあ行くわよ。サユ様のお部屋へ。」
ハルナンとアカネチンの任務。それはこの国の先代の王であったサユの元に食事を届けることだった。
この国では昔からのしきたりで、元帝王はモーニング城の地下で隠居することが義務づけられている。
地下室に缶詰めという訳ではないが、なるべくは外に出ないほうが望ましいとされているのである。
その目的や詳しいことは末端の剣士であるアカネチンにはまったく分からないが、
研修生時代に比較的サユと仲が良かったということもあって、給仕係に任命されたのだ。
朝、昼、晩のご飯を届けるために、唯一サユにアクセス可能なハルナンについていくのが日課になっている。
「それにしてもサユ様がこんな庶民的な料理を食べるなんて意外でした。」
アカネチンが運ぶ料理は、ご飯の上に焼鳥つくねを乗せて、その上から甘いタレをかけた丼ぶり料理だった。
このいかにもB級グルメな見た目の丼ぶりを先代の王サユが好むというのは有名な話であり、
信奉者も「サユ丼」と呼んで、食堂の在庫が切れるくらいに食べまくったという。
それを運んでいると、アカネチンもヨダレが出そうになってくる。
「お腹減ったなぁ……」
「アカネチン。さっきお昼ご飯を食べたでしょ?」
「思ってません!サユ丼を食べたいなんて思ってません!」
「あなたがサユ丼って言ったらダメでしょ。立場的に……」
そんなやり取りをしながら、ハルナンは厳重に施錠された扉のカギを開けていく。
ここから階段を下ればサユの部屋はすぐそこだ。
さっさとサユ丼をお届けしようと思っていたところに、とんだ邪魔が入る。
「アカネチンばっかりズルい!ハルナンさん、マリアも連れていってください!」
「「!?」」
登場したのはアカネチンやハーチンと同期の新人剣士である、マリア・ハムス・アルトイネだ。
ハルナンとアカネチン以外の帝国剣士らは城外の監視を行っているはずだというのに、
こちらの任務を羨ましく思うあまり、本業を疎かにして尾行してきてしまったのである。
「マリア?あなたの仕事はエリポンさん達と一緒に城門を見張ることでしょ?」
「ハルナンさん!アカネチンばっかりズルいんです!」
「まったくもう……」
この時アカネチンは、マリアが仕事熱心すぎるからこんなことを言うのだと考えた。
研修生時代のマリアは相当なエリートだったため、いろんな仕事をこなしたいのだろうと推測したのである。
当時はともかく今は同格。アカネチンも言いたいことは気にせず言うようにしている。
「マリアちゃんは監視任務の方に行きなよ、ここは私がちゃっちゃと終わらすからさぁ」
「ズルい!アカネチンがそうするならマリアはドゥーさんにベッタリくっつくことにする!」
「ちょっと!?なんでそこでドゥーさんが出てくるの?意味が分からないんだけど……」
「とにかくマリアも地下室に行きたいんです!ハルナンさんお願いします!」
「ハルナンさん!こんな訳分からないこと言うマリアちゃんなんか放っといて早くいきましょうよ!」
新人二人の喧嘩にハルナンは頭を抱えてしまった。
天気組団のハルやマーチャンを超える問題児はそうそういないと思っていたが、現にこうして二名存在している。
後輩育成の難しさを改めて痛感する。
5
:
名無し募集中。。。
:2016/01/09(土) 22:11:25
スケールアップ…そこいじるのかw
祝二部スタート!楽しみにしてます
6
:
名無し募集中。。。
:2016/01/09(土) 22:22:18
やっぱり誘惑に勝てなかったかーw
7
:
名無し募集中。。。
:2016/01/09(土) 23:39:33
サユ王はほぼ缶詰状態でもあまり気にしなさそう
日がな一日ネットパトロールしたり
美少(幼)女の画像や動画を鑑賞したり
8
:
名無し募集中。。。
:2016/01/10(日) 00:30:58
どうせ地下にいても王国中の監視カメラで美少女漁るんでしょw
てか昔のサユはただのナルシストだったのにいつから幼女好きになったのか・・・
9
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/11(月) 01:19:36
「しょうがない、今日だけマリアもついてくることを許可します。」
「本当ですか!?マリア、とってもとっても嬉しいです!」
「ハルナンさん甘いなぁ……」
このまま喧嘩が長引いても埒があかないため、ハルナンは自分が折れることにした。
本来は誰彼構わず地下に入れるのは望ましいことではないのだが、
新人を一人加えたところで大きくは影響しないと判断したのである。
「さて、早くお食事を届けないとね……あら?」
「どうかしたんですか?」
「鍵が、開いている……」
「「え!?」」
サユの部屋へと続く扉が施錠されていないのは、かなりの一大事だった。
大したことないように思えるかもしれないが、これは場合によっては国際的な問題にも発展しうる緊急事態なのである。
詳しくは知らないマリアとアカネチンも緊迫した雰囲気を感じ取ったのか、途端に慌てだす。
「えっと、えっと、サユ様が外出しているとかじゃないんですか?……」
「この扉の鍵はサユ様も持ってるの。外出する時は必ず鍵をかけるはずよ。」
「鍵のかけ忘れは考えられないんですか?」
「ありえない。地下室の重要性を理解されているサユ様に限って、そんなミスはありえないわ。」
「うぅ……」
鍵の行方を議論するのも良いが、まず優先すべきはサユの安否だ。
ハルナン、マリア、アカネチンは覚悟を決めて扉を開こうとする。
ところが扉を開けようとしたその時、思いもしなかった出来事が起こった。
「わっ!!」「誰!?」
なんと扉の中から謎の人物が飛び出してきたのだ。
いや、正確には「謎の人物」と「謎の馬」。
馬に騎乗した女性が突如現れたのである。
そして更に信じがたいことに、そいつは気を失っていると思わしき黒髪女性を脇に抱えていた。
その黒髪女性のことは誰もが知っている。
マリアは思わず大声でその名を叫んでしまう。
「サユ様!!」
謎の騎馬兵が運ぶのはモーニング帝国の先代の王、サユだった。
その緊迫した様子からはとても乗馬遊びをしているようには見えない。
「人さらいだ。」と、マリアもアカネチンもすぐに感じ取ることが出来た。
「サユ様を放せ!」
人さらいを倒すため、サユを助けるため、マリアは両手剣を握って騎馬兵に斬りかかった。
この状況ならば帝国剣士は誰もがそうするべきかもしれない。
しかしアカネチンは瞬時に動くことが出来なかった。
人さらいのことを知っていたため、恐怖で身体が凍りついてしまったのである。
「あなたは……!!」
10
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/11(月) 01:21:26
この世界にはネットも監視カメラもありませんが、
それに近い情報を得る手段ならサユは持っているかもしれませんねw
11
:
名無し募集中。。。
:2016/01/11(月) 10:59:02
サユ王拉致!?犯人は『馬に乗っている』・『アカネチンと顔見知り』・・・あの人以外考えられないなw
まさか一部の 366 がネタではなく伏線になっていたとは…
12
:
名無し募集中。。。
:2016/01/11(月) 20:29:26
ついにあの部隊が登場か!
13
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/12(火) 08:38:51
ハルナン達が人さらいと遭遇したのと同時刻。
残りの帝国剣士らも、城門前で信じ難い光景を目にしていた。
「マイミ様!?その怪我はいったい……」
帝国を訪ねてきたのは、マーサー王国のキュート戦士団団長であるマイミだった。
それ程の大物がやって来るだけでも一大事だというのに、
そのマイミの鋼鉄で出来た義足が両方とも折れ、
更に腕が真っ赤に腫れているのだから一同は大騒ぎだ。
そんな人間が無事であるはずが無いと思った新人剣士は特にパニックに陥っている。
「い、今すぐ誰かにDoctorを呼んできてもらいます!」
ノナカ・チェル・マキコマレルは門の中にいる兵士らに助けを求めようとしたが、
それを帝国剣士団長兼、Q期団団長であるエリポン・ノーリーダーが制した。
「待って!」
「What's!?」
「騒ぎを起こすのはまずい。なるべく他の人には知らせないようにしよう。」
「でも急がないとその人が死んじゃいますよ……」
「私なら大丈夫。それよりも頼みを聞いて欲しい……そのために走ってきたんだ!」
マイミの言葉に帝国剣士らは息を飲んだ。
走ってきたとは言うが、義足の破損した今のマイミに脚はない。
つまりは、二本の腕だけでここまで来たということになる。
いくらモーニング帝国とマーサー王国が隣国とは言え、ここまで手押し車で来るなんてレスリング選手もビックリの体力だ。
霊長類最強女子とはマイミのことを言うのかもしれない。
そんなマイミがこれだけボロボロになっているのだから、一同は興味を引かれずにはいられなかった。
「頼み……とは?」
「結論から言う。キュート戦士団が倒され、マーサー王がさらわれたから助けて欲しいんだ!
我々キュートだけでは……王を取り戻すことが出来ない!!」
「「「「!?」」」」
マイミの口から飛び出したのは、本日最も信じられない事実だった。
マーサー王がさらわれることの重要性はもちろんのこと、
化け物のような強さを誇るキュート戦士団が壊滅したということにも驚かされた。
マイミだけでなく、ナカサキ、アイリ、オカール、マイマイと言った超一流戦士が揃っているというのに
敗北を味わうなんて現実味が無いにもほどがあった。
「い、いったい誰にやられたんですか?……」
マーサー王国の守護戦士、いわゆる食卓の騎士の強さを身をもって知ったことのあるサヤシがおそるおそる訪ねた。
キュートと同格と言われているベリーズ戦士団の恐ろしさに泣かされた経験から、
それに相当する強さを誇る人物がいるなんて未だに信じられていないのだ。
だが、そこでサヤシは気づいてしまった。
キュート戦士団を壊滅に追いやる、キュート戦士団に匹敵した実力者集団の存在を理解してしまったのだ。
「え!?まさか、いや、そんな……」
その存在を思い出すだけでサヤシの身体は重くなる。
あまりの重圧に吐き気がしそうになってくる。
サヤシが勘付いたのを悟ったマイミは、本件の全貌を明らかにする。
「あぁ、我々キュートを倒すことが出来る強者なんて、彼女ら以外には存在しないだろう。」
14
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/12(火) 08:40:28
皆さんの予想は半分アタリ半分ハズレです。
なんともコメントしにくいのでとにかく更新を急ぎますねw
次回は夜頃に更新します。
15
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 12:42:58
マジか・・・色んな意味でマジか!?
色々気になるけど今夜の更新を待つ事にしよう…
16
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 13:20:12
まーたマーサー王さらわれたのかよw
17
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/12(火) 20:18:09
マーサー王国で起きた事件の日まで時は遡る。
その日のマイミは訓練場にて3時間にも及ぶ自己鍛錬を終えた後、
ジョギングがてらパトロールに行こうとしていた。
いつもの平穏な日常ならば、42.195kmを2時間ほど走ることでマイミの1日は終わるはずだったのだが
この日に限ってはジョギングの一歩目から異変が起きていた。
訓練場を少し出たところにキュート戦士団の一人であるオカールが倒れていたのだ。
それも、血まみれで。
「オカール!?いったいどうしたんだ!」
団員の無事を確かめつつも、マイミは自然とファイティングポーズをとっていた。
まだ見ぬ敵を警戒しているのだ。
オカールはこの国で、いや、それどころか近隣諸国を含めても十二指に入るほどの実力者のはず。
特にアウェーでの戦いに強く、マーサー王国に刃向かう小国でもあればたった一人で制圧する程だった。
そんなオカールが無惨に散るなんてまったくもって考えられ無い。
それを可能にした敵とはどれだけの強者なのだろうか。
「俺のことは良いから早く王のところへ……」
「王だと!?敵は王を狙っているのか!……くそっ、ベリーズ全員が遠征に行っている時に攻めてくるなんて……
よし!今すぐナカサキとアイリ、そしてマイマイを招集して対抗しよう!」
「ダメだ!それは無駄なんだ……」
「無駄だと?……それはどういう……」
「やられちまったんだよ、キュートはアンタ以外全員な……」
「!!?」
この時受けたマイミのSHOCK!は尋常ではなかった。
キュート戦士団は全員が超一流。
一騎当千どころか一騎当万にも値する実力の持ち主だ。
そんな彼女らが4人も敗北するなんて有り得なさすぎる。
いったい相手はどれだけの戦力なのか、マイミの頭では想像することも出来なかった。
「敵はどんな奴らなんだ?……数十万の軍隊でも押し寄せてきたのか?……」
「6人だよ……」
「は?」
「これ以上言わせないでくれ……察してくれよ!!俺だってもう言いたくないんだよ!」
「待つんだオカール!敵が6人だなんて、それはまるで……」
マイミが叫んだちょうどその時、背後からの凶撃によって右脚の義足が破壊される。
これによってマイミは全てを理解した。
鋼鉄の脚を一撃で粉砕する程の破壊力を持ちながら、
且つ微塵も殺気を悟らせ無い達人なんてこの世に一人しか存在しないのである。
そして、そいつが束ねる化け物集団が攻めてきたとするのならば
キュートの4人がやられてしまったのも納得できる。
「シミハム!何故っ!?」
「……」
そこに居たのはベリーズ戦士団の団長、シミハム。
第二部:berryz-side
ベリーズ戦士団が事件を起こす物語。
18
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 20:41:46
前作の主人公が敵に回る
王道やね
19
:
名無し募集中。。。
:2016/01/12(火) 21:17:10
王道・・・なのか?何気にshockなんだがw
考えてみたらファクトリーはベリーズの魂を受け継いでいるんだからこの展開は予想すべきだった・・・
20
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/13(水) 08:38:41
旧知の友であるシミハムが牙を剥いたことに驚きを隠せ無いマイミだったが、
だからと言ってやるべきことは変わらなかった。
「我が国に、そして我らが王に仇なすならば排除するのみ……それを分かっているんだろうな?」
「……」
シミハムから返事は返ってこなかった。
正確には返事をしたくても出来ないのだ。
ベリーズ戦士団のシミハムとキュート戦士団のマイミは
数年前の大事件の末、それぞれ声と両脚を失ってしまっている。
ゆえに以降は不便な生活を強いられることになったのだが、
だからと言って2人の強さは変わらない。それどころか当時より数段増している。
「洗脳されているのか、何か考えがあるのか……そんなのは分からないが関係ない。
キャプテンであるお前を捕らえて、ベリーズを一網打尽にしてやる!!」
マイミは暴風雨の如き殺気を全開にし、片脚のハンデを感じさせない程の速度でシミハムに殴りかかった。
素手でも鉄扉を捻じ曲げるパワーの持ち主であるマイミが、
本来の武器であるナックルダスターを拳に装着しているのだから威力は絶大だ。
彼女が本気を出せば岩石さえもクラッシュしてみせることだろう。
しかし、その攻撃はシミハムには届かない。
確実にヒットさせる自信が有ったというのに、鉄拳はシミハムの数㎝前で止まってしまう。
「!!……相変わらずのキレだな。」
マイミが目測を誤ったのではない。むしろ非常に正確だった。
当たらなかったのは衝突する直前にシミハムがほんの少しだけ後退したからなのだ。
それも顔色や上半身の動きをまったく変化させず、
ただ爪先だけのちょっとした移動で回避したのである。
全てを破壊するパンチを、シミハムは必要最低限の動きで避けてみせたということになる。
全ての攻撃は、シミハムの前では「無」になる。
そして、キャプテンの真骨頂はこれから披露される。
「はっ!!……しまった!」
事もあろうに、マイミはさっきまで目の前にいたはずのシミハムを見失ってしまった。
一対一の状況で敵を見逃すなんて致命的すぎる。
だがこれはマイミが間抜けだという訳ではない。
シミハムが特殊能力を発揮しただけの事なのだ。
とは言っても瞬間移動や透明化などの超能力の類を発動した訳ではない。
彼女がやったのは、パンチを当てるくらい接近したマイミの右斜め後方にピョイと跳びこんだだけのこと。
それだけで十分死角に入ることが出来たのである。
ではこれの何が特殊能力か?
それは、シミハムの放つオーラの特性ににあった。
(くっ……何も分からない!!)
闘争心のある者であれば誰もが大なり小なり殺気やらプレッシャーを放つものだ。
マイミだけでなく、食卓の騎士に属する者は長年の経験からそのようなオーラを任意に知覚することが出来ている。
それによって背後からの不意打ちから身を守ることが可能になっているのである。
ところが、シミハムからはそのようなオーラが全くと言っていいほど感じ取ることが出来ない。
矛盾した表現になるかもしれないが、シミハムは「無」を放っている。
大した人物に見えない大した人物。
それがシミハムだ。
21
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/13(水) 08:39:58
第二部はベリーズを倒しに行くお話です。
結末はずっと先かもしれませんが、どつかお付き合い願います。
22
:
名無し募集中。。。
:2016/01/13(水) 11:00:28
何部構成になるのかしら
23
:
名無し募集中。。。
:2016/01/13(水) 12:46:44
ベリーズを倒すって・・・今の帝国じゃあ、相手にならない。。。どうやって強くなるのかな
24
:
名無し募集中。。。
:2016/01/13(水) 19:42:39
>>21
のんびりお付き合い致します
25
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/14(木) 09:10:38
一人一人が大物の風格を見せるベリーズ戦士団の中で、唯一シミハムだけは小動物のような見た目をしていた。
身長がかなり低いというのもあるが、それ以前に威圧感のようなものが殆ど感じられないのだ。
ゆえに、ベリーズのことをよく知らない外敵は戦力を見誤る。
小柄なシミハムなら倒せると誤解して返り討ちに遭うことなんてしょっちゅうだ。
となれば、シミハムの実力を十二分に認めているマイミならば脅威を肌で感じ取っても良いものだとと考えるが、
それでもマイミは背後にいるシミハムの気配すら認識できなかった。
足音を、鼓動を、気配を、その全てをかき消してしまう程の圧倒的な無。
それがシミハムの特性なのである。
この状況ならばシミハムは背後からの不意打ちを100%確実に決めることが出来る。
しかもシミハムの獲物は、全長にして自身の身長の倍もある三節棍だ。
ただでさえ重量のあるこの武器を勢いよく振り回すのだから、
衝突時の威力は遠心力も相まって相当なものになる。
先ほど鋼鉄の義足を破壊したのと同等のパワーで、棍はマイミの背中へとぶつかっていく。
「ああ゛っ!!」
この時、シミハムは確かな手応えを感じていた。
相手の背骨を砕く感覚が三節棍を通して伝わってきたのだ。
マイミは食卓の騎士の中で最も高い生命力を誇るため、こうでもしないと動きを止めることは出来ない。
それをなんとかスムーズに実行することが出来たので、シミハムはほっと胸を撫で下ろした。
だが、ここで異変が起きる。
三節棍を引き寄せようとしても、まるで何者かに阻害されているかのように戻ってこないのだ。
何者か、という問いに対して説明は不要だろう。
答えはマイミに決まっているからだ。
「そんな攻撃で私を倒したつもりか?シミハム!」
「!!」
なんとマイミはヒットした瞬間に背中に力を入れることで、肩甲骨で棍を挟み込んでしまったのだ。
シミハムの存在を知覚できないのであれば、攻撃を受けると同時に対応すれば良いと考えた結果である。
人並みを大きく外れた反射神経と度胸がなせる技だろう。
「それではお返しだっ!」
マイミは伸びきった三節棍を掴み取り、逆に自身の方へと引き寄せた。
義足を一本失い、そのうえ確かに背骨は折れているというのに
マイミはしっかりとした重心で片足立ちをしている。
その異常なまでの「生きるという力」はシミハムの想定を何段階も上回っていたのである。
26
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/14(木) 09:12:43
よほどのことが無い限りは全三部構成にするつもりですよ。
一部はsayu-side
二部はberryz-side
三部は拳士です。
27
:
名無し募集中。。。
:2016/01/14(木) 12:46:49
おお!こぶし来るか
28
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/15(金) 12:40:18
次の更新は夜遅くになりそうです。
29
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/16(土) 04:44:00
三節棍をグンと引っ張っては、力強く振り回して周囲の壁に何回もぶつけていく。
本来の持ち主がすぐに棍から手を放したため、シミハムごと叩きつけることまでは出来なかったが
それでも敵の武器を奪い取り、尚且つ破壊できたのは大きな成果だった。
マイミがクラッシャーっぷりを発揮すればこれくらい容易いのである。
「さぁ、丸腰でどう私に勝つつもりだ!」
武器を失ったシミハムは誰がどう見ても絶体絶命の状況だった。
三節棍を持ってしても倒しきれないマイミに対して、素手でどうこう出来るはずがない。
普通の戦士であれば敗北を認めて降参してもおかしくないシチュエーションだ。
ところがシミハムはそうしなかった。
それどころか目を閉じて、その場で座禅を組み始めたのだ。
真剣勝負の場でこんなことをするなんてふざけているとしか思えないのだが、
この行為にはちゃんと意味があった。
(なんだと?……シミハムの姿がぼやけていく……)
シミハムの身体そのものが、目に見えて薄くなっていく。
彼女の集中が極限に達した結果として、目視することすら困難なほどに存在が希薄になったのだ。
他の食卓の騎士が天変地異のようなビジョンを視覚的に見せているのに対して、
シミハムは無そのものを具現化しているため、このような現象を可能にしているのである。
こうなればもう透明化と同じ。マイミは何をされても抵抗できないだろう。
武器のアドバンテージなんて、無いも同然だ。
(驚いた……シミハムの修行はここまで極まっていたというのか。
同じ食卓の騎士でありながら、私はベリーズのことを何も分かっていなかったんだな。
だが、ここでみすみすと勝利を逃すわけにはいかない!絶対にだ!
私の全神経を注いでお前の姿を捉えてやる!!)
シミハムが集中するのと同じくらい、マイミは前方に向けて集中した。
国を、そして王を守りたいという使命感が大きくなるのに連動してマイミの雨女力も強くなっていく。
嵐を超えて、暴風雨を超えて、台風を超えて、マイミのビジョンはハリケーンの如き激しさを見せる。
部屋中のどこを見ても雨が降る中、ただ一部分だけは穴が開いたかのように「何も」なかった。
シミハムはそこにいることをマイミは確信する。
「そこだぁ!!」
何もない空白に向かってマイミは飛び掛かる。
これを逃せばチャンスはもう来ないと心から信じている。
オカールの叫び声も聞こえないほどの瞬間最大降水量の中、マイミは強烈なパンチを繰り出していく。
30
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/18(月) 08:47:45
体調不良で更新できていませんでした……
続きは明日か明後日になりそうです。
31
:
名無し募集中。。。
:2016/01/18(月) 10:58:42
お大事にね
32
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/21(木) 20:16:42
すいません、もう少し長引きそうです。
33
:
名無し募集中。。。
:2016/01/22(金) 08:43:47
ゆっくり待ってますよ
34
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/26(火) 02:10:21
マイミの読みは当たっていた。
嵐の中の空白には、確かにシミハムが存在していたのだ。
このまま鉄拳を振り切れば、敵に対して大きな痛手を与えることが出来たはず。
ところが、またしてもあと一歩のところでそれは叶わなかった。
「猟奇的殺人鋸――」
「!?」
「――"派生・愕運(がくうん)"」
突如現れた凶刃によって、マイミは義足をスパッと切断されてしまう。
先ほどシミハムに右義足を潰されたうえに、こうして左義足までも斬られたものだから
マイミは敵の技名通りにガクーンと転倒することとなる。
これほどの鋭さを誇る斬撃。マイミには心当たりが有りすぎた。
「ミヤビか!」
食卓の騎士としてこれまで戦ってきた仲間のことをマイミが当てられない訳がなかった。
もっとも、今こうして登場しているのは「仲間」などではなく、
殺人的な禍々しいオーラをビンビンに放ち続けている「敵」な訳だが。
「2対1が卑怯だなんて思わないよな?」
「……!」
ミヤビのプレッシャーは刃物のように鋭く尖っている。
それが無数にギラギラと飛んでくるのだから、
余程の胆力が備わぬ者でなければ、四肢を切られる苦痛を味わうことになるだろう。
だが、ここでマイミは一つの違和感を覚える。
これほどまでに暴力的な存在感を持つミヤビの不意打ちに
マイミほどの達人が何故気づくことが出来なかったのか、分からないのだ。
本来ならばすぐに勘付いて回避行動にうつっていたはず。
だがここで考えこんでも意味がない。
その原因さえもがマイミの脳裏から消え去りつつ有るのである。
35
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/26(火) 02:11:24
10日ぶりくらいになっちゃいましたね、、、
なんとか回復したので、続きを再開できそうです。
36
:
名無し募集中。。。
:2016/01/26(火) 06:53:03
待ってました〜
37
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/27(水) 02:15:07
気づけばマイミはミヤビにばかり集中をしていた。
ついさっきまで戦っていた相手のことも、自ら破壊した棍のことも忘れていたのだ。
だがその忘却も長くは続かない。
後頭部に強烈な打撃をぶつけられることで、マイミはシミハムを思い出す。
「!!」
薄れていく意識の中、マイミはすべてを理解した。
凶器の如きオーラを持つミヤビを知覚出来なかったのはシミハムに集中しすぎていたからであり、
そのシミハムを今の今まで見失っていたのは、ミヤビに少しでも関心を向けてしまったからなのだ。
単純なタイマン勝負ならばマイミはシミハムに勝利していたのかもしれないが、
存在感を自在に希薄化できるシミハムは、個性が極めて強いベリーズのメンバーがそばにいることで
完全なる無となることが出来る。
そのせいでマイミは本来ならば喰らわないような不意打ちを何度も受けたのである。
骨が折れ、義足も壊され、その上さらに手痛い打撃を脳天にもらったため、
さすがのマイミも立ち上がれないほどに弱ってしまう。
「シミハム団長。マイミの奴はもう動けません。そろそろ行きましょう。」
地に這いつくばるマイミを見て、ミヤビは逃走の提案を持ち出した。
これが真剣勝負であれば、まだ戦う意思のある相手に背を向けるなんて許されないことだが
シミハムとミヤビの目的はそのようなものではなかった。
マイミをここで動けない程度に痛めつけることが出来れば、それで十分だったのだ。
シミハムはコクリと頷くと、外へと走っていく。
「ま、待て!私はまだやれる……!」
「マイミ。私たちはお前に構ってやるほど暇じゃないんだ。なんせ王を待たせているんだからな。」
「王だと?……王に何をするつもりだ!!」
「これからベリーズ全員でマーサー王を攫う形になる。
長期の不在になるだろうね。国民が混乱しないように上手くやるんだぞ。マイミ、オカール。」
そう言い残してミヤビはシミハムの後を追っていく。
その間マイミは悲痛な叫びを何度もあげ続けたが、当然なんにもならなかった。
この日、ベリーズらの手によってマーサー王国から王が消えることとなる。
38
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/01/28(木) 12:53:40
マイミの回想は終わり、話は現在に戻る。
ハルナン、マリア、アカネチンらは何者かにサユが連れ去られる現場を目撃した訳だが、
この件もマーサー王がさらわれた事件と密接に関わっていた。
そう、どちらもベリーズによって引き起こされていたのだ。
(モモコ様……どうして!?……)
ベリーズ戦士団のモモコが馬に跨りながらサユを抱える姿を見たアカネチンは、
なんて声を発すれば良いのか分からないようだった。
以前出会ったときはこのような事をするような人物には見えなかったので、ショックが大きいのだろう。
しかし主犯が誰であろうと、サユが拐われるのを黙って見逃す訳にはいかない。
アカネチンは剣を取ってモモコに斬りかからねばならないのだ。
だが、それだけのことがアカネチンには難しかった。
モモコの事を知っているからこそ、脳が攻撃を拒否するのである。
新人剣士のアカネチンと食卓の騎士でおるモモコの実力差は月とスッポン。
いや、あるいはそれ以上かもしれない。
仮にも帝国剣士団長であるハルナンですら一歩も動こうとしないのだから、
モモコとそれ以外には絶望的なまでの差が有るのだろう。
このまま攻撃に行くのは自殺行為そのもの。
それを重々承知しているため、アカネチンは動くことが出来なかった。
それでも、マリアは動くことが出来る。
「サユ様を放せえええええええ!!」
モモコを知らないマリアは、両手剣「翔」を握ってモモコへと飛びかかることが出来た。
マリアにとって相手が誰かというのは大した問題ではない。
憧れの存在であるサユに害を及ぼす者はみな排除すべき敵なのだ。
後先なんて考えず、超重量級の斬撃をぶつけようとする。
「あなた、見かけによらずパワーがあるのね。」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「でもね、許してニャン。 モモはパワーだけのお馬鹿さんは結構得意なんだ。」
39
:
名無し募集中。。。
:2016/01/28(木) 13:29:08
モモコだったのか!絶対山木さんが我慢できずにサトダに乗って暴挙に出たのかと思ったのにw
40
:
名無し募集中。。。
:2016/01/28(木) 17:26:56
普通はそう思う
馬触るのにもビビってた人だからなw
41
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/01(月) 12:38:08
多分今夜には更新できそうです><
モモコがサトタの新たな騎乗者になったのは、カントリーだからですね。
と言うわけで、そのほかの人たちも近いうちに登場するはずです。。。
42
:
名無し募集中。。。
:2016/02/01(月) 18:27:12
楽しみにしてます!
山木さん=乗馬ってイメージだから勘違いしたwクマイチャンはちゃんとモモコに貸したって言ってたね
43
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/02(火) 01:51:05
マリアの放つ強烈なスイングは、帝国剣士の中でも上位の破壊力を誇っていた。
これをひとたび受ければ、大の大人だろうと場外まで吹っ飛ばされてしまうだろう。
ましてや相手は小柄なモモコだ。
例え帝国剣士であろうと、ホームラン王であるマリアの打力ならば圧倒することが出来る。
もっとも、それは「ヒットすれば」の話だが。
「えっ!?……消えた……」
マリアは馬上のモモコを殴り落とすつもりで両手剣を振り切っていた。
ところが、そこにはもうモモコは居なかったのだ。
それだけではない。モモコの乗っていた「馬」ごと消滅していたのである。
ではどこに消えたのか? その答えは同期のアカネチンがすぐに教えてくれる。
「マリアちゃん後ろ!」
「!?」
アカネチンの言葉通り、馬とその上に跨るモモコはマリアの背後に突っ立っていた。
まるで瞬間移動だ。マリアは馬の移動する軌道すら認識することが出来ていない。
先ほどまで激昂していたマリアも、この奇妙な現象を前に困惑したようだった。
「え?え?いったいどうして?」
馬の走るスピードが速いというのはまだ理解できる。
競走馬ともなれば70キロもの時速で走るというのだから、速いのは当然だ。
だが、それほどまでの速度を出しながらも、且つ急に止まることの出来る馬なんて聞いたことがない。
だというのにこの馬は確かにマリアの前方から後方まで超スピードで走り抜け、
そしてその場にピタリと止まって見せたのである。
信じられないキレの良さだ。
「あ……あ……でも、倒さなきゃ……」
戸惑いで頭の中がひどくグチャグチャになってはいたが、サユを守りたいという熱意までは押しつぶされていなかった。
敵に背後を取られたのであれば、すぐに振り向いてから斬りかかれば良いだけの話。
むしろその回転力をパワーに変えて剣をぶつけてやろうとも思っていた。
ところが、その行動を同期のアカネチンに制されてしまう。
「だめ!!動いちゃだめ!!」
「えっ?……」
アカネチンの制止は少しだけ遅かった。
いつの間にかマリアの周囲に張り巡らされていた「謎の糸」は、マリアの動きに連動して肉に食い込んでいく。
紐で縛られたハムのようになったマリアの二の腕はすぐに変色し、そして血液が噴出しだす。
一本一本が鉄のように固いその糸は、腕の薄皮など簡単に裂いてしまったのである。
「いやあああああああああああ!!」
バットを振り切る前に止められたため人体切断とまではいかなかったが、
それでもマリアは意気消沈するには十分すぎるほどのショックを受けてしまった。
これではもうモモコに立ち向かうことなど出来やしない。
「いや〜助かった助かった。あなた、"アカネチン"って言うんだったっけ?」
「……なんですか。何が言いたいんですか。」
「何って?私は礼が言いたいの。あなたがその子を止めてくれたおかげで、モモは人殺しにならずに済んだんだから。」
「……」
「信じてたよ。あなたが私の技を見切るくらいのことは、ね。」
44
:
名無し募集中。。。
:2016/02/02(火) 22:36:39
そうか、屋内で目的が誘拐だからモモコなのか
45
:
名無し募集中。。。
:2016/02/03(水) 00:17:03
本来の持ち主だと大きすぎて地下に入れないだろうしねw
46
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/03(水) 08:38:23
ハルナンは全く戦う気が無いのかその場でただ俯いているだけだったし、
アカネチンも視線だけはモモコの一挙手一投足を捉えてはいるものの、何も出来なかった。
この場にいる戦力ではモモコに太刀打ちできないことは明らかだったのだ。
「あら、やる気なし? じゃあ遠慮なく……」
モモコはハルナンらに背を向けて、馬を前方へと走らせた。
目的地は城の敷地内に入る際にくぐってきた城門だ。
サユを攫って国外へと逃亡しようとしているのである。
駿馬のスピードはなかなかのもの。この分ならあっという間に門へと到達してしまうだろう。
「させない!!」
この後に及んでもまだ食い下がったのは、腕からひどい出血を見せていたマリアだった。
自身のもう一つの武器である投げナイフ「有」を取り出して、
高速で移動するモモコ目掛けて投げつける。
「えいっ!!」
マリアは打撃だけでなく、肩も優れている。
彼女の放つ投げナイフは時速160キロをオーバーするため、馬の速さをも上回っていた。
コントロールがバッチリならば強敵モモコの身体に突き刺すことが出来ただろう。
しかし、今のマリアには真っ直ぐ投げることが何よりも難しかった。
新人お披露目会の時と同様にナイフは手からすっぽ抜けて、遥か上空へと吹っ飛んでしまう。
「ああっ!」
「マリア……スランプはまだ治って無かったの……」
研修生時代のマリアは確かに投打ともに優秀な戦士だった。
ところが、モーニング剣士になった途端に投げナイフの精度が目に見えて落ちてしまったのである。
緊張やストレスによる影響など理由は色々考えられるが、
とにかく今のマリアの投球術は戦力としては到底カウント出来ないレベルに有るのだ。
自身の不甲斐なさで憧れのサユを救えないと思うと、非常に泣けてくる。
「うっ……うっ……サユ様ぁ……」
「マリア、もう一回だけ投げてもらえる?」
「ハルナンさん?……でもマリアのコントロールじゃ敵には当たりません……」
「狙うのは敵じゃなくて味方よ。それならあなたの肩は活かすことが出来る。」
「えっ?」
マリアがキョトンとしているうちに、ハルナンはアカネチンに今の状況をメモすることを指示した。
そうして完成した読みやすいメモをナイフに突き刺しては、マリアに手渡す。
「これを城門の方角に思いっきりぶん投げて。 正確さは何もいらない。
おおよその位置に投げれば向こうの方からキャッチしてくれるはず。」
「あっ!……城門には!……」
「そう。エリポン帝国剣士団長を筆頭に計9名の帝国剣士が見張りの番についている。
私たちには何も出来なかったけど、彼女たちならきっとやってくれるはずよ。
そのための報せを投げることが出来るのは、マリア、あなただけ。
あなたのピッチングの速度は馬をも超えるのだから!」
「はい!!」
マリアは残った力を全て振り絞り、指示された方角目掛けてレーザービームの如き投球を放つ。
精度こそ酷いものだがスピードは目を見張るものがあった。
モモコの乗る馬よりももっと速く、目的地へと突き進んでいく。
47
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/03(水) 08:40:30
描写が分かりにくかったかもしれませんが、サユの部屋へと続く近道は屋外にあります。
敷地内ではありますが、城とは異なる建物と言うわけですね。
地下室にクマイチャンが入れないというのはその通りですw
48
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/04(木) 08:37:42
飛んでくるナイフの存在にいち早く気づいたのはノナカだった。
持ち前の耳の良さで風切る音を感じ取ったのである。
「何か来てます!あれはマリアちゃんの……?」
「エリが台になる。キャッチ出来そう?」
「はい!」
ノナカはエリポンの肩を踏み台とし、高く跳び上がった。
非公式ながらアクロバット部を自称する彼女らにとって
このようなコンビネーションを瞬時に見せることは朝飯前なのだ。
「こ、これは……!」
ナイフに括り付けられた手紙を読んだノナカはひどく驚愕する。
他の帝国剣士らも回し読み、事の重大さを理解していく。
「サユ様がさらわれた……!?」
「しかも犯人はベリーズのモモコ様で、こっちに向かってきている!?」
アカネチンの記述したセンセーショナルな内容は、すぐに皆の頭の中に入っていった。
マイミからマーサー王国で起きた事件をさっき聞いたばかりだというのに、
更にモーニング帝国にまでベリーズが攻めてきているなんて、異常事態にも程がある。
こうなると、帝国剣士らはマイミの後からやってきた「客人たち」にも疑いの目を向けざるを得なかった。
「あんた達は何者なんじゃ……ひょっとしてベリーズ戦士団と関連が?」
サヤシが声をかけた客人は、馬にまたがる4人の少女だった。
さっきから何をするでもなく、城門の前でずっと立ち続けているのだ。
その中の一人である栗毛の長髪がサヤシの問いに答えていく。
しかしそれは回答と言うにはあまりに曖昧だった。
「さぁ?どうでしょう……分かりませんね。」
「だったらどうしてここに居るの? 城に攻めに来たんじゃないの?」
「攻めるんですかね、どうなんですかね。 ちょっとそれも分からないですね。」
カノンが質問をしても明確な返事は返ってこない。
4人はクスクスと笑いながら、高いところから帝国剣士らを見下ろすだけだ。
「ふざけないで!馬鹿にしてるの?」
「いやいや本当に分からないんですよ。 私たちだって先輩の指示待ちなんですから。」
「先輩……?」
49
:
名無し募集中。。。
:2016/02/04(木) 12:31:49
おお!もしやついに彼女達の登場か?!
「4人」と言うことはやはり"もう"あの子はいなくて"まだ"あの子達はいないのかな?
50
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/05(金) 08:40:47
エリポンら帝国剣士をなんとも言えぬ寒気が襲いだしたため、馬上の不審者らへの追求を一旦中止することにした。
この凍てつく冷気はモモコが発しているものに違いない。
速い速度でこちらにやって来ているのは明らかなので、その対処に力を入れることにする。
帝国剣士団長であるエリポンがメンバーに指示を出していく。
「相手は伝説と呼ばれる存在やけん、勝てると思って挑むのは止めよう。
最も優先すべきは勝利じゃなくてサユ様の救出なはず。
何人かがオトリになって、そのスキにサユ様を取り戻すっちゃん。
1人や2人……いや、7人や8人の犠牲は仕方ない。」
「私がオトリになろう。それなら犠牲は少なくて済むはずだ。」
「ま、マイミ様!?」
全身ボロボロで、しかも両脚を失っているマイミが自ら危険な役割を買って出たので、一同は驚いた。
だが考えてみればその案は妥当だ。
食卓の騎士の怖さを知っているサヤシもマイミに同調していく。
「確かにウチらじゃオトリにもならんけぇ……マイミ様が適任かもしれん。」
「あぁ任せてくれ。 長い付き合いだからモモコの殺気のことはよく分かっている。
この感じだと……あと40秒、いや、30秒ほどで門に到達するな。
そのタイミングで私がモモコに飛びかかる。そこからは帝国剣士の力でサユを救ってやってくれ。」
「「「はい!!」」」
モモコと同格のマイミが手伝ってくれるのだから、とても心強かった。
敵も帝国剣士を複数相手どる策を準備しているのかもしれないが、
突発的に現れたマイミを勘定に入れることまでは出来ていないだろう。
自分たちならやれる。帝国剣士らとマイミはそう固く信じていた。
ただ、懸念事項があるとすれば謎の騎馬少女たちの存在だろう。
アユミンが警戒しながら声をかけていく。
「あなた達、邪魔しようとしてるんじゃないでしょうね?
でも無駄だよ!武器も持ってない素手のあなた達に妨害されるほど帝国剣士はヤワじゃないんだから。」
「邪魔なんてしませんよ。私たちはここで見てるだけです。
あ、でも武器ならちゃんと持ってますけどね。」
「はっ?手ぶらで何を言ってるの? 馬の手綱しか持ってないじゃん。」
「そう思うならそれでもいいですよ。」
「???」
51
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/05(金) 08:41:45
>>49
はい、その認識で合ってますw
52
:
名無し募集中。。。
:2016/02/06(土) 03:26:13
まさかこの子たちの武器は先輩と…
53
:
名無し募集中。。。
:2016/02/06(土) 06:02:19
なるほどその可能性はあるねw
武器もだけどなんて名前かも気になる
54
:
名無し募集中。。。
:2016/02/07(日) 16:09:05
また戦士の離脱が…
55
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/08(月) 12:45:33
更新は夜遅くになりそうです。
新キャラの武器も早ければそこで出せそうですね。
鞘師が辞めてすぐに香音も卒業とは思いませんでした。
ひょっとしたら他のメンバーも……
56
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/09(火) 03:06:48
「3、2、1、今だ!」
モモコが門を突破するのと同じタイミングで、マイミが飛び掛かった。
外へ出ようとするモモコは前方向しか見ていないはずなので、横からの攻撃は完全な不意打ちとなるだろう。
この強打さえしっかりと当てることが出来れば戦況は大きく有利になると思われていた。
だが、その程度でモモコを出し抜こうだなんて甘かったのだ。
モモコの乗る馬は、門を出ると同時にマイミの方へと急転回する。
「やっほ〜マイミ元気〜?」
「なっ?……次の角を曲がっただと!?」
マイミの行動は見ての通りモモコに読まれていたのだ。
城門にマイミがいるという事実はこの場にいる者しか知らないはずなのだが、それでは何故バレたのか。
その理由はマイミの放つ嵐のような殺気にあった。
マーサー王だけでなくサユまでも連れ去られるという事実に、マイミは激怒している。
その怒りがオーラと連動して激化し、皮肉にもモモコに場所を知らせる発信源となってしまったのだ。
こうなるといくらマイミがキュートの団長であろうと非常に分が悪くなる。
両義足を失い機動力の落ちるマイミに対して、モモコはマーサー王国一の名馬という足を所持している。
この馬、名をサトタと言うのだが、蹴り技を非常に得意としていた。
その強靭な脚力から繰り出されるキックはマイミの胸の骨をメキメキと破壊する。
「……!!」
「そんな怪我でモモに挑んじゃなダメでしょ〜?……ってもう喋れないか。死にそうなくらい苦しいはずだしね。」
たった一蹴りでマイミをノックアウトするモモコを見て、帝国剣士らは凍り付いてしまった。
だがモモコの脇には情報通りサユが抱えられている。
便りの綱であるマイミが居なくなったからといって逃げる訳にはいかない。
この場で、食卓の騎士モモコを止めなくてはならないのだ。
「ベリーズだかなんだか知らんっちゃけど、サユ様は返してもらう!」
「んっ?ひょっとして戦うつもり?」
「当たり前っちゃん!」
「許してにゃん、いや、ごめんなさいね。 私たちに戦うメリットなんて無いんだ。」
モモコがそう言い放つと、周囲に「馬上の4人」を呼び寄せた。
やはりこの4人はモモコの仲間。部下にあたる存在だったのである。
そして、臨戦態勢に入ろうとする帝国剣士らを嘲笑うかのような行動をとり始める。
要するに、逃亡を始めたのだ。
「じゃあねバイバイ〜」
「ま、待て!!」
「ん〜、私たちに追いついたら相手してあげてもいいけど、足はあるの?」
モモコ一派と帝国剣士の決定的な差。それは馬の有無だった。
いくら帝国剣士がせいいっぱい走ろうとも馬の速度には追いつけない。
しかもマリアのように飛び道具を扱う剣士もいないために、攻撃を当てることすら叶わないのである。
これではサユが攫われるのを指をくわえて見てることしか出来ない。
ところが、そうはならないための予防策を事前にうっていたのだ。
モモコならびに部下ら4名が次々と落馬していくのを見て、帝国剣士らは防衛の成功を確信する。
57
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/09(火) 03:12:26
「きゃ!」「痛〜い!」「うわ〜最悪!」
「ちょっとちょっと!何なのこれ!めちゃくちゃ地面滑りやすくなってるじゃない!」
「あの〜モモち先輩。」
「なに!?リサちゃん。」
「これきっとあのアユミンって人のせいですよ。さっきからずっとスライディングして地均ししてましたし。」
「そういうのは早く言ってよ!」
「だってその程度でこんなに地面がツルツルになるなんて思わないじゃないですか!」
敵が困惑しているのを見て、アユミンはにっこり笑顔で微笑んだ。
確かに帝国剣士側には馬は無いが、スベリの帝王であるアユミンの前では機動力など無意味なのだ。
依然状況が悪いことに変わりはないが、戦わずして逃げられることは防ぐことが出来た。
「も〜!責任とってリサちゃんがなんとか食い止なさい。私たちは速度を落として逃げるから。」
「えっ?私一人でやるんですか?」
「そう。これはPM命令。」
「モモち先輩が一人でやる方が早くないですか?」
「それはそうだけど、じゃあサユは誰が運ぶっていうの?」
「はいはい!私が運びますよ!モモち先輩よりずっと丁重に扱いますって。」
「リサちゃんはなんかダメ。さっさと帝国剣士の子たちと戦いなさい。」
「本気ですか〜?……」
「リサちゃん。これはムチャブリなんかじゃないの。 あなたの戦法ならそれが出来るから言ってるの。」
「分かりましたよ。じゃあ帝国剣士全員倒したらサユ様を運ばせてくださいね。」
「出来高次第かな。」
リサと呼ばれた栗毛の少女だけで対抗できるかのような口ぶりだったので、帝国剣士からしてみたら全く面白くなかった。
中でもサヤシ、カノン、ハルの3名が特にカチンときたようだ。
「本気で言うちょるんか? リサって子は食卓の騎士の脅威には程遠いようじゃけぇのぉ……」
「私たちは国を代表する帝国剣士だよ。 サユ様に限らず帝国に仇なす者は無事には返さないから。」
「だいたいこっちは9人もいるんだぞ! 1人で何が出来るっていうんだ!!」
リサは、ハルの喋りを聞いてクスッと吹き出してしまった。
相手が自分のことを何も分かっていないことが面白かったのだ。
もう!あなたってなんにもわかってない!ってやつだ。
「ふふっ……9人ですよね。そんなの見れば分かりますよ。」
「なんだよ!なにがおかしいんだよ!」
「ごめんなさい、こっちの戦力は"1万"なんです。」
「えっ?……」
1万といった突拍子も無い数を聞いてキョトンとしている帝国剣士を横目に、リサは指で作った笛を吹き始めた。
リサは形としての武器なんてものは身に着けていない。
あるのは武器と言っても差し支えのないほどの強力な「味方たち」だけ。
その「味方たち」はいつでも、どんなところでも近くに潜んでいる。
リサの呼びかけさえあればすぐにでも駆けつけてくれる。
「ね、ねぇサヤシ……あっちから来てるのってもしかして……」
「嘘じゃろ……こんな戦い方をされたら……」
"勝てない"、ほとんどの帝国剣士はそう思ってしまった。
58
:
名無し募集中。。。
:2016/02/09(火) 08:16:07
ガマおやびん!
59
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/10(水) 08:28:16
リサの武器はあらゆるところから跳んでくる。
それは自ら動く生命体であり、本日のような雨模様の日には非常に活発になっていた。
「元気で可愛いでしょ?私のカエルたち。」
リサ・ロードリソースは両生類を武器とする戦士。つまりはカエルを操るのだ。
総数1万のカエル軍団が集まる姿はとても異様だが、リサはそれらを愛おしいと思っている。
食べたいくらいに可愛いことから「カエルまんじゅう」と名付けているほどだ。
しかし、いくらリサがカエルを可愛いと思っていても、大半の女子はそうとは思えていない。
むしろ恐怖の対象だ。
ゆえに少し触れさせてやるだけで簡単に戦意を喪失させることが出来る。
「ちょっと触ってみませんか?まずは2000匹。」
リサの指笛による合図と同時に、カエルらはサヤシ、カノン、ハルへと飛びかかる。
足に、腕に、そして顔にと、露出している部分をあっという間に埋めて尽くしてしまうのだ。
呼吸出来ないほどの密着と言うわけではないが、
カエルの腹や指先の感触を直に味わうのはなんとも気色悪い。
よって3人は悲鳴をあげて腰を抜かしてしまう。
「ひぃぃぃぃ!!」
「いやぁぁぁぁ!」
「そんなに怖いですか? すっごく可愛いじゃないですか。
この可愛さを分からないのはもはや罪ですよ。罪。
罪人には罰を与えないといけませんね〜」
気づけばリサは全身に小さなカエルを数百匹単位で纏わせていた。
彼女に言わせればこの感触さえも愛おしい。
リサ・ロードリソースはこの状況下で平常心でいられる数少ない人間なのである。
「まずい……サヤシさんカノンさんハルさんが一気にやられちゃった……」
「オ、オダさんが行ったらいいんじゃないですか? 蛇とかカエルとか平気そうじゃないですか」
「さすがに全身で浴びるのは無理……ハーチンは?」
「私だって無理ですよぉ!」
立派な戦士とは言え、それ以前に年頃の少女である帝国剣士たちにとってリサの戦法は恐ろしいものだった。
カエルは戦闘力こそ剣や銃に劣るが、与えることのできる精神的ダメージはそれらの比ではない。
こうして帝国剣士らが二の足を踏んでいる隙に、モモコ一派らはツルツル面をゆっくりと進んでいく。
60
:
名無し募集中。。。
:2016/02/10(水) 08:52:30
リソース?
61
:
名無し募集中。。。
:2016/02/10(水) 08:52:59
ああ、資源かw
62
:
名無し募集中。。。
:2016/02/10(水) 13:41:55
さすがにこれは…想像すると結構キツいw梅雨時期の農道連想してしまう
63
:
名無し募集中。。。
:2016/02/10(水) 23:03:25
スゲー去年前半のハローの曲がいっぱい
64
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/12(金) 08:36:43
「リサちゃん本当に一人で大丈夫かな?……」
リサ・ロードリソースを心配する発言をしたのは、同じくモモコ一派の一人であるチサキ・ココロコ・レッドミミーだ。
いくら1万のカエル軍を従えたとは言え、相手が帝国剣士では無事には済まないと思ったのである。
モモコや、仲間たちもチサキの不安げな表情に気づいたようだった。
「あら?じゃあチサキちゃんが助けに行く?」
「えっ?えっ?いや、私は……」
「ダメですよモモち先輩。 チーたんは陸上ではポンコツなんですから。」
「うわ出た!ブラックマナカん!」
「ブラック?ホワイトですよ、私は。」
「自分でいうか?……まぁそれはさておき、リサちゃんは一人でも平気だからチサキちゃんは安心して。
あの子はカエルをただの精神攻撃のための道具とは思っていないからね。」
一派らがこんなやり取りをしているうちに、城門から悲鳴が聞こえてきた。
その声の主は、急いで駆けつけてきたマリアとアカネチンだ。
カエルで溢れかえっている惨状を見て衝撃を受けたのである。
「あわわわわ……これはいったい……」
「どうなってるの!?これ!」
援軍が来たとは言え、そのマリアとアカネチンも15歳そこいらの女の子。
万のカエルを見てすぐ対応できるほどの度胸は無かった。
だが、この2人の登場は全くの無意味という訳では無かったようだ。
「年下にカッコ悪いところは見せられないよな……」
カエルにまみれながらも、ハル・チェ・ドゥーが立ち上がっていく。
自分を尊敬してくれているマリアとアカネチンが応援に来たのだから、
このままビビって何もしないわけにはいかないと思ったのだ。
全身鳥肌が立つほど恐怖しているが、ハルは涙目でリサに飛びかかっていく。
「ちくしょう!お前さえ倒せば……喰らえ!」
「……ウシガエルさん。やっちゃって。」
リサが指示を出すと同時に、手のひらよりも大きいウシガエルが登場し、
ハルのお腹にキックを入れる。
このカエルはただのカエルではなく、戦闘用の訓練を受けた戦士であるため
ハルは鉄球を受けたような苦しみと共に崩れ落ちてしまう。
「くはっ……な、なんだ?……」
「私のボディーガードのウシガエルさん。そんじょそこらの人間じゃ太刀打ちできないと思いますよ。」
恐怖を与えるだけでなく、純粋な戦闘力も高いという事実を前に帝国剣士はショックを隠せなかった。
もちろん相手はカエルなので剣士が剣をとれば勝てぬ訳が無いのだが、
精神攻撃を受けて本領発揮できぬ今、ウシガエルがよほどの強敵に見えるのである。
この状況で全力を出せる剣士はごく一部しかいなかった。
「ドゥー大丈夫?お腹痛いの?」
「マーチャン!マーチャンは普通に動けるのか?……」
「うん。カエルさんは地元にたくさんいたから。」
「頼むマーチャン!あいつを倒してくれ……そしてサユ様を助けてほしい……」
「うん。マーもミチョシゲさんを絶対助けたい。 でも、マーチャンが戦わなくても大丈夫みたいだよ。」
「えっ?……あ!?」
リサの前にはすでに二人の剣士が立ち向かっていた。
エリポン・ノーリーダー
ハルナン・シスター・ドラムホールド
この2名の帝国剣士団長にはカエルによる精神攻撃は通用しない。
「そろそろ調子乗りすぎやない?」
「私たちの力、見せてあげましょう。」
65
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/12(金) 08:39:46
>>61
元ネタは御察しの通り「道資源」ですね。検索したらすぐ出ると思いますw
>>62
画力があればこのシーンを絵に描きたいくらいです
>>63
この辺りは昨年構想してましたからね。
本当はもっと早く書き上げたかった……
66
:
名無し募集中。。。
:2016/02/12(金) 12:38:36
サブリーダーズきた!精神攻撃効かないってなんとなく納得w
絵に描かないで・・・想像だけでおなかいっぱいですw
67
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/13(土) 22:58:37
全身にカエルがひっついているというのに、エリポンもハルナンも全く動揺しなかった。
カエルの可愛さを共有出来るかもしれない人物が現れたのはリサ・ロードリソースにとって喜ばしいことなのだが
友達になる余裕など今はない。
「たまにいるんですよね、対応できちゃう人……でもこれならどうですか?」
リサがカエル達に出した指令は、エリポンとハルナンに4000匹ずつ纏わりつかせるというもの。
一匹一匹はとても小さく軽い生物ではあるが、こうもくっつかれたら重くて仕方がない。
単体あたりの重さが20グラム程度だとしても合計すれば80キロもの重石になるのだから、動きは大きく制限されるだろう。
そしてリサはそれに加えてさらなる精神攻撃をも与えることにした。
「カエルちゃん達、その人の口の中に入っちゃいなさい。」
身体が重くて動けぬハルナンを指さしながら、リサはなんとも恐ろしい支持を出していった。
リサの言うことならなんでも聞くカエル達は迷わずハルナンに口の中へと侵入していく。
いくらカエルが平気な女子だろうと、いや、例え男性であろうと口内に入られたらパニックを起こさずにはいられないだろう。
リサはこの手段を用いることで今まで何人もの相手を失神させてきたのだ。
今回も同様の手を使って簡単に仕留めるつもりだった。
ところがハルナンの眼を見た瞬間、リサは逆に恐怖してしまう。
(えっ!?……どうしてそんな目が出来るの……)
口の中はもう喋れないくらいにカエルで溢れ返っているというのに、ハルナンの目は死んでいなかった。
それどころか非常に鋭い視線でリサを睨み続けている。
これほどの仕打ちを受けてまだ意識を保っていられるだけでも規格外だと言うのに、
闘争心まで失っていないという事実を、リサは受け入れることが出来なかった。
リサは知らなかったかもしれないが、この世には好んでセミの抜け殻を全身で浴びたり口の中に入れたりする女性が存在する。
ぶっちゃけて言うと、その人物はハルナンの友人だ。
ハルナンはその女性と友であり続けるためには自分もそれくらい出来て当然と考え、そして実践したのである。
そんなハルナンに対してカエル程度で精神的ダメージを与えようなど甘かったのだ。
むしろ逆に精神攻撃をし返すために、瞳でメッセージを送っている。
(口の中がカエルでいっぱいなんだけど、これ食べちゃってもいいの?)
(!?)
(ねぇ、いいの?)
リサの背筋は一瞬で凍り付く。
音としての声などまったく聞こえないはずなのに、確かにハルナンがそう思っていることが伝わったのである。
ハルナンならやりかねない。恐怖心に苛まれたリサは不本意ながらカエルに新たな支持を出す。
「カエルちゃん達!今すぐその人から離れて!!た、食べられちゃう!!」
支持を出すや否やカエルが解散していったため、ハルナンの身体はすぐに軽くなる。
本来の戦闘力を取り戻されたのはリサにとって残念だったが、精神攻撃が全くと言っていいほど通用しないので仕方ない。
それに、リサにはまだ他にも戦い方が残されていた。
「ウシガエルさん!その人を蹴り倒して!!」
「あの〜ちょっといいですか?」
「ヒッ……な、なに?」
「"ウシガエルさん"って、ひょっとしてあそこにいるカエルのことですかね?」
「はっ!?……ええええっ!?」
ハルナンが指さした先では、ウシガエルがカエルの集合体にボコボコにされる光景が繰り広げられていた。
このカエルの集合体とはエリポンのことだ。4000匹のカエルがくっついたままウシガエルを殴り倒しているのである。
先ほど合計重量を80キロと書いたが、この程度で動きを制限されるほどエリポンの筋力はヤワではなかったのだ。
「さすがエリポンさん!相変わらずの馬鹿力で素敵ですわ〜」
(は、話と違う!帝国剣士団長がこんな化け物揃いだなんて聞いてない!)
68
:
名無し募集中。。。
:2016/02/14(日) 00:42:19
それブッ込んできましたかw
あの人はプラナリアとかも飼ってるらしいからカエルもいけちゃうかもねw
69
:
名無し募集中。。。
:2016/02/14(日) 12:13:23
しょこたんwww
70
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/14(日) 17:54:33
ウシガエルを仕留めたエリポンは、ヘッドバンキングの要領で上半身を激しく揺らしカエルを振り落とす。
そして鞘から打刀「一瞬」を抜いてはリサへと突きつけるのだった。
「勝てんよ。キミ。」
もう一人の帝国剣士団長であるハルナンだってフランベルジュ「ウェーブヘアー」を構えている。
二人はもはやカエルなど相手にしてはいない。
リサに照準を合わせているのは誰が見ても明らかだ。
それを理解したリサは、止むを得ず戦法を変えることにした。
「分かりました。諦めます。」
「お、降参?」
「違いますよ!帝国剣士を全員倒すのを諦めるってだけです。
ここからは足止めに専念しますから。」
そう言うとリサは指笛を使って数十匹のカエルを自身の元へと集めだした。
そして鎧を装着するかのように赤、青、黄のド派手な色をしたカエルを纏っていったのだ。
これがリサ・ロードリソースの防御形態。
自ら動くことは出来ないが、鉄壁をも超える防御力を発揮することが出来る。
「なん?そんなので足止めできると思っとーと?
こんなのカエルごと斬ればいいだけやん。」
エリポンの言う通り、リサの装甲はとても頼りないものだった。
カエルが鋼の硬度を誇るのであれば話は別だが、生物である以上それはありえない。
構わずぶった斬ればそれで終わりなのである。
しかし、ハルナンはこの形態に異質さを感じざるをえなかった。
「待ってくださいエリポンさん!斬るのは……まずいです。」
「えっ?それはどういう……」
「カエルのドギツい色……あれは警戒色ですよ。攻撃するなと訴えているんです。」
「警戒色!……ってことは」
「はい、あのカエルは間違いなく猛毒を持っています。
もしも体液が飛び散ったりでもしたら……その時はどうなっても知りませんよ。」
ハルナンの推察通り、リサの纏うカエルは猛毒カエルだった。
前にも述べたがカエルごと斬ればリサを倒すこと自体はとても容易い。
もっとも、それがキッカケで飛散した毒を浴びた場合は生命を保障出来ないだろう。
ゆえにエリポンとハルナンは攻撃を躊躇するしかなかった。
「じ、自分も死ぬかもしれんのに毒カエルを盾にする!?普通!」
「毒に対する免疫が有るのか……あるいは死を覚悟しての行動、ってことですかね……」
「うぅ……」
71
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/14(日) 17:57:18
しょこたんがプラナリアまで育てているとは初耳でしたw
セミの抜け殻の件はニュースにもなってたので丁度良いと思って今回ネタにしました。
ちなみに現在、カントリーガールズのイベント会場にいます。
新曲楽しみ。
72
:
名無し募集中。。。
:2016/02/15(月) 02:33:08
楽しめましたかー?
73
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/15(月) 08:13:19
はい、近くだったので迫力が凄かったです。
今のカントリーの愛おしくってごめんねを見れたのも良かったですね
74
:
名無し募集中。。。
:2016/02/15(月) 09:10:22
面白くて前作と第一部を一気読みしてしまいました
更新を楽しみにしています
75
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/16(火) 08:39:29
リサも出来ればこの手は使いたくなかった。
毒によって相手に与えるダメージは非常に強大ではあるが、
それは同時にカエルが死ぬことを意味している。
カエル好きなリサにとってはとても心苦しい戦法なのである。
とは言え、この状況では甘いことを言ってられない。
戦士としての誇りを持っているため、任務遂行に命をかけているのだ。
だがそれは帝国剣士だって同じ。
自分たちの使命を考え、最も優先すべきことは何なのかを判断している。
「ハルナン、この子に攻撃すると危険なのはよく分かった。じゃあこのまま放っておこう。」
「!……なるほど、律儀に相手する必要はないですもんね。」
「エリ達のやるべきことはサユ様を助けることやけん。ここで立ち止まっとる暇はない。」
さっきまではリサがカエルで邪魔してきたので早急に黙らせる必要があったが
防御形態をとるリサはその場に留まるのみ。
ならばエリポンが言うように放っておけばいいのだ。
最優先事項であるサユ救出のため、エリポンは一歩踏み出そうとした。
「待ってエリポンさん!歩いちゃダメ!」
「!?」
エリポンがあとちょっとで地面を踏むといったところで、ハルナンのストップが入った。
なんと足元にはリサが纏っているようなドギツい色のカエルがビッシリと敷き詰められていたのである。
ちょっとでも歩みを進めればカエルを踏まずにはいられない。
その時は毒が飛び散って、脚をダメにしていたことだろう。
「うおっ!危なかった……」
「それにしてもこの状況は不味すぎますよ……」
警戒色を示すカエルが足の踏み場も無いくらいに集まって密集している。
この状況でカエルを踏みつけずにモモコのところに到達するなんて不可能に近いだろう。
このカエル絨毯をなんとかしたいのであればリサを倒すほかに方法は無いのだろうが
そのリサに攻撃することも先述の理由で非常に難しくなっている。
要するに、帝国剣士はほぼ詰みかけていたのだ。
「言ったでしょう?足止めに専念するって。」
76
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/16(火) 08:40:40
ログ置き場が不完全な状態なのに前作まで見てくださったなんて、とても嬉しいです。
期待に応えられるように頑張りますね。
77
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/17(水) 00:07:58
「ねぇ、マーチャンが全部燃やしちゃっていい?」
突然の声にリサはビクリとした。
カエル平気組に属するマーチャン・エコーチームの言葉が、リサにはひどく恐ろしいものに思えたのだ。
真っ赤な炎の灯った木刀を両手に握っていることからも、その本気度が伺える。
「マーチャンならね、触らなくても焼けるんだよ……」
小悪魔のような顔をしながら、マーチャンは木刀をブンと振り回す。
そうすることによって木刀を焼いていた火の粉が飛び散り、
遠距離にいるカエルを容赦なく燃やしに行く。
すんでのところでリサが退避命令を出したために焼きガエルと化すのは免れたが、
その代償としてカエルの存在しない地帯を作り上げることとなってしまった。
「やったー!こうすればミチョシゲさんのところまで歩けるよ!」
「うぅ……」
ついさっきまで二択を迫る側だったリサ・ロードリソースは、
一転して二択を迫られる側に追いやられてしまった。
炎を避けなければカエルは焼かれてしまう。
炎を避ければ敵に道を与えてしまう。
リサにとってはどちらも等しく苦しい選択肢だったのだ。
ところが、苦渋を舐めたような顔をしているリサに対して
ここにきて朗報が舞い降りてくる。
「リサちゃーん!もう足止めなんかしなくていいよー!」
その大声はリサらのPM(プレイングマネージャー)・モモコによるものだった。
モモコ一派らはアユミンの均したツルツル地面を丁度越えたところだったのである。
それを見たリサの表情はみるみるうちに明るくなり、
この状況を打破するための指示をカエル達に出していく。
「みんな、逃げるよ!」
指令とともにほとんどのカエルが方々へ散っていったが、数十匹だけはそうしなかった。
逃げた警戒色カエルと入れ替わりに、大型のカエルがリサの脚部に纏わり付いたのである。
「これが私の跳躍形態。帝国剣士の皆さん、それではばいちゅん!」
リサの合図とともに、脚部のカエルらは主人であるリサごと大ジャンプする。
その訓練された跳躍力は並のカエルの水準を遥かに超えており、
ひとっとびでツルツル地面の先まで到達してしまった。
これでモモコ一派らは全員が滑りやすい難所を乗り越えたことになる。
「そんな……」
嘘みたいな結末に帝国剣士は呆気にとられることしか出来なかった。
そう、彼女らは負けたのだ。
サユを奪われることが敗北でなければ、何が敗北だと言えるのだろうか。
78
:
名無し募集中。。。
:2016/02/17(水) 09:56:41
リサちゃんは作者さんのキャラによくありがちな一見強いが粗を突かれると一気に崩れるタイプだなw
79
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/18(木) 08:21:14
アヤチョみたいなキャラのことですかねw
確かに仮面ライダーイクタ時代も含めて弱点持ちは多いかもしれません。
80
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/19(金) 07:15:11
「リサちゃんおかえり〜」
「はぁ〜乗り切った〜」
リサは「アジト」へと戻る馬の上でグッタリとしていた。
これまで何度もヒヤリとさせられたので精神的にかなり疲労しているのである。
そんな大役を成し遂げたリサを仲間たちは賞賛しており、
一派の仲では最年少であるマイ・セロリサラサ・オゼキングもその例外ではなかった。
「リサちゃん本当に凄かったよね!おかげでみんな無事に逃げることが出来たよ。
まぁ、マイとリサちゃんは跳べるし、マナカちゃんも飛べるから
ツルツルの地面なんてなんとも思ってなかったんだけどね。
モモち先輩に合わせてあげたんですよ。みんな。」
彼女らはみなモモコの弟子にあたるワケだが、盲目的に従うという関係性ではなかった。
特にこのマイは、教育とは言え法外なルールを課すモモコを敵視さえしている。
そのためリサを持ち上げつつモモコを非難したのだ。
もっとも、モモコだって10歳年下の後輩に負けてはいない。
「あら〜そんなこと言っちゃっていいのかな〜?」
「なんですか?またお菓子禁止したら怒りますよ。」
「ううん、さっきのマイちゃんの発言を聞いてチサキちゃんはどう思うかなーって。」
「?」
モモコが指し示したチサキ・ココロコ・レッドミミーの様子が何やらおかしい。
いつものように耳を真っ赤にしながらも、頬をぷくっと膨らませているようだった。
口数が少ないのもいつものことだが、怒っているようにもみえる。
「え?ごめん……怒ってる?」
「もう!あなたって、なんにもわかってない!」
みんなと違って、陸や空はチサキのフィールドではない。
そのような環境では自身の力を発揮できない(要するにポンコツ)であることを気にしていたのである。
81
:
名無し募集中。。。
:2016/02/19(金) 07:50:54
ここでもポンコツちぃちゃんw
82
:
名無し募集中。。。
:2016/02/19(金) 13:53:30
かわいいw
83
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/22(月) 08:48:32
帝国剣士には今回の件を王に報告する義務があった。
足取りはとても重いが、サユが連れ去られた事実を伝えない訳にもいかない。
重体のマイミを医療室へと連れていくハーチンとノナカ以外は、王の間へと足を踏み入れる。
「……そう、そんなことがあったの。」
エリポンとハルナンから事の顛末を聞いたフク・アパトゥーマ王は静かにそう答えた。
さすが王の風格とでも言うべきか、少しも狼狽える素振りを見せてはいない。
そして誰を責めるでもなく、次のように言葉を続けていく。
「それで、次はどうすれば良いと思う?」
フクはこの国のリーダーではあるが、アレをしれコレをしろと命令をするようなタイプではない。
教えを請われた時はそれに答えるが、基本的には相手に委ねる方針を採っているのだ。
Q期、天気組の責任者であるエリポンとハルナンがそれぞれ自身の考えを述べていく。
「エリたちは不甲斐ない結果を出した以上、もっと強くなる必要があると思う。
日の訓練量を倍にしつつ、且つ防衛も疎かにせんためには……
遊ぶ時間、そして寝る時間を大幅に削るしかないけんね。」
「私はサユ様が攫われた事実、そして帝国剣士が敗北した事実は隠すべきだと思います。
国民に不安を与えないためにも、一部の者だけ知るのが良いかと……
聞けばマーサー王国もベリーズの件は隠すようですし、それに倣いましょう。」
エリポンとハルナンの発言は納得できるものだったので、Q期や天気組らは何も言わなかった。
そもそも、対リサ・ロードリソース戦で何も出来なかった自分達には発言する資格はないと考えていたのだ。
ところがそうは思っていない人物が一人だけ存在していた。
新メンバーであるマリアが空気も読まずに大声をあげていく。
「違います!私たちが次にするのはそんなことじゃありません!」
帝国剣士団長の意思を新人が「そんなこと」と切り捨てるのは前代未聞だが、
その言葉には確かなパワーが有るとフク、エリポン、ハルナンは感じていた。
「マリア、じゃあ何をすれば良いと思うの?」
「今すぐサユ様を助けに行くんです!」
「モモコ様……いや、モモ、コはどこに居るのか知ってるの?」
「知りません!でも探すんです!」
「さっきハルナンが言ったように今回の件は大勢に伝えることが出来ないの。
少ない人数でどうやって探すというの?」
「マリアがやります!マリアが世界中を歩き回って探します!」
「モモコ様、じゃなくて、モ、モ…コをマリアが倒せるとでも……」
「倒します!!この命に代えてでも、倒すんです!」
マリアの言うことには説得力が無かった。
だが、サユを救いたいという思いは本物だ。
いつしか周りの帝国剣士らもそれに同調していく。
「私も探します!」「私も!」「私だって!」
ここでフク王はやっと微笑んだ。
帝国剣士が有るべき姿へと近づいたことを喜んでいるのだ。
「分かった。みんなに任せるよ……サユ様を絶対に助け出してね。」
84
:
名無し募集中。。。
:2016/02/22(月) 16:47:30
ドゥー「じ、じゃあ私も」
全員「どうぞどうぞ」
ドゥー「なんでだよ!」
85
:
名無し募集中。。。
:2016/02/23(火) 00:34:13
何かの歌詞であったよなってずっと考えてた
「私よ!」「私だって!」←
今、思い出した!かしまし…しかもドリ娘。の!
あースカッとしたぁ〜
86
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/23(火) 09:23:30
(マリアちゃん凄い……先輩たちを動かしちゃった。
私に同じことが出来たかな?……)
アカネチンはマリアに感心しつつも、歯をギリッと食いしばっていた。
サユを心配する気持ちなら負けていないのに、
実際に行動に移せなかったことを悔しく思っているのだ。
アカネチンの心の嵐が乱れるのと同じタイミングで、嵐のような人物が発言しだす。
「さすが帝国剣士は頼もしいな。それでこそ訪ねてきた甲斐が有るってものだ。」
嵐のような人物、それはマイミだ。
本来ベッドで寝ているはずなのだが、ハーチンとノナカの制止を振り切って王の間までやって来たのである。
数刻前まで満身創痍だったというのに今はもう殆どの傷が癒えているように見える。
まったくもって不思議な身体だ。
「マイミ様!」
「"様"は止めてくれ。貴女は王で、私は一介の戦士なのだからな。」
「あっ、はい……」
「その一介の戦士の頼みになるが、どうか聞いてほしい。
私たちキュート戦士団はなんとしてでもマーサー王を取り戻さねばならない。
しかしいかんせんベリーズに対抗するには戦力が不足しているのだ。
そこで、モーニング帝国剣士にも力を貸してほしいと思っている。
帝国剣士とキュートの連合軍ならベリーズを打ち破れるはずなんだ!」
相手が王とは言え、マイミほどの重鎮が頭を下げるのは珍しい。
それだけ自国の王を救いたい思いが強いのだろう。
となればサユを救出したいモーニング帝国と利害は一致する。
承諾しないはずがない。
例えフク王がベリーズのことを心から尊敬していたとしても、だ。
「はい。共に戦いましょう。 帝国剣士のみんなは見ての通りやる気で溢れてますよ。」
「とても有難い! では早速だが、帝国剣士の何人かには作戦会議のためマーサー王国に来てほしい。
共闘するキュート戦士団とも顔合わせをしてほしいしな!」
願いが叶ったマイミのテンションは最高潮だ。
このまま何も問題が無ければ連合軍はすぐに結成されることだろう。
ところが、ここで異議を唱える者が現れる。
「キュート戦士団とモーニング帝国剣士の連合軍?……私は反対です。」
「ハルナン!?」
ここで反対意見を出すハルナンの考えが帝国剣士のほとんどには理解できなかった。
マイミも思考回路がショートしたような顔をしている。
そんな中、いち早く意図に気づいたアユミンが言葉を返していく。
「足りない、って言いたいのかな?」
「そう。相手がベリーズだけとは限らない以上、戦力の増強は必要よ。
幸いにも、信頼できる国なら2国ほど心当たりがあるの。」
87
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/23(火) 09:24:48
ダチョウ倶楽部やかしましの事は頭になかったですw
88
:
名無し募集中。。。
:2016/02/23(火) 13:10:44
ドリームチーム構想か
89
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/24(水) 08:55:10
趣味と文化の国、アンジュ王国。
ここではスポーツや演劇などの興行が非常に盛んであり、人々は心身ともに豊かに暮らしていた。
この国が趣味国家として発展してきたのは、やはり番長らの活躍が大きいだろう。
国を護る戦士である7番長は、戦い以外にも興行を盛り上げる役割を担っていて
一人一人がそれぞれの分野でトッププレーヤーとしても活躍していたのだ。
例えば運動番長タケ・ガキダナーはろくに野球のルールを知らないくせにホームランを量産しまくるし、
文化番長メイ・オールウェイズ・コーダーが座長を務める舞台は連日ソールドアウトの大盛況だ。
勉強番長カナナン・サイタチープの講演会も(たまに話がとんでもない方向へ脱線するが)聞きたがる人が多いし、
帰宅番長リナプー・コワオールドがブリーダー兼トリマーとして育てた犬は本人以上に人気がある。
そして、特に活躍が目覚ましいのは先日に舎弟から番長へと昇格した3名の担当する分野だろう。
音楽番長が主催するロックフェスは元来盛り上がるのが好きなアンジュの国民たちを満足させ、
給食番長の作り上げる見たこともないような世界の料理は多くの人々の舌を肥やした。
理科番長は本来の目的である石鹸の普及自体はなかなか上手くいっていないようだが
「決して口を開かぬ美女」として、彼女をモデルにした絵画が爆売れしているらしい。
何故に理科番長が一言も喋らないのか、その理由は番長たちしか知らない。
番長らは忙しい日々を過ごしているため、チームとして集まる機会は少なかった。
この日のようにタケ・ガキダナーと、音楽番長ムロタン・クロコ・コロコが鉢合わせるのも非常に珍しいことなのだ。
「お、ムロタン!」
「タケさん。こんばんワニ。」
「わに?まぁいいや、ムロタンの担当する音楽界、結構盛り上がってるみたいじゃん!
私も結構好きだよ!ロックっていうの?ベンベンベンベン。」
タケはノリノリでエアギターを奏で始めた。
他の国民と同様に、彼女のDNAにも音楽の記憶が刻まれているのだろう。
そんな楽しげなタケに対して、ムロタンは浮かない表情をしていた。
「ありがとうございます。でもな〜やっぱり戦士なんだからもっと戦いたいんですよね〜」
「え?国防とか頑張ってるでしょ。3人だけで国を守るって凄いよ。」
「そういうのじゃないんですよ。」
「???」
「例えば、"モーニング帝国剣士の権力争いに巻き込まれる"ような……そんな戦いがしたいんですよ。」
「……ムロタン、その考えは捨てな。」
「!?」
「ははは、平和が一番ってこと。 今を楽しもうよ!今度ライブに誘ってね!」
「……考えておきます。」
90
:
名無し募集中。。。
:2016/02/24(水) 12:39:55
怪獣番長ではなかったか…
91
:
名無し募集中。。。
:2016/02/24(水) 13:39:24
しゃべるとバレちゃうんだなw
226 名無し募集中。。。@転載は禁止 2016/02/22(月) 17:02:43.11 0
http://i.imgur.com/BRKXCAY.gif
∧ ∧
|≡V≡|
(V)( ^ヮ^)(V) <フォフォフォフォ
ヽ三i三ソ
(/ \)
∪"∪
92
:
名無し募集中。。。
:2016/02/24(水) 18:46:33
理科番長は莉佳子でしょ
93
:
名無し募集中。。。
:2016/02/24(水) 22:01:18
あれ?まろは?
94
:
名無し募集中。。。
:2016/02/24(水) 23:23:41
裏番長だから宰相みたいなポジションでは?
95
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/25(木) 08:40:42
アンジュ王国からそう離れていないところに「果実の国」がある。
ここの人々は自分たちをファミリーのように思っており、平穏無事に暮らしていた。
病を治療する医療施設が数多く建設されていることも平和を維持するのに一役買っていると言えるだろう。
そんな医療国家の中でも最先端の研究をしているのはユカニャ王その人だ。
彼女は王であり、元戦士であり、且つ理系女子としての一面も持っている。
宿敵"ファクトリー"を撲滅することを目指して、今日も実験に精が出ているようだった。
「うーん難しい……この"NEXT YOU"さえ完成すればあの子達はもっと強くなれるのに……」
ユカニャが今作ろうとしているのは、世にも恐ろしい薬だった。
まだ研究段階ではあるが、その薬をひとたび飲めば生まれ変わったかのような強さになるとされている。
まさに「次の君」になるのである。
だが体の組織を作り替えるほどの劇薬であるために、効能が切れたとして元に戻れる保証は全くない。
それどころか非常に苦しい副作用に苛まれる可能性だって十分にある。
ユカニャは現在、その副作用を取り除くために相当苦労しているが、なかなか上手くいっていないようだ。
国を護るためにファクトリー打倒を目標に掲げるユカニャ王ではあるが、
それ以前に彼女は医療に携わる者としてのプライドがあるため
危険な薬を危険なまま兵士に渡すことなんて決して出来ないのである。
「この分だと完成はまだまだずっと先かな……
まぁ、あの子達も強くなっていっているからひとまずは安心なんだけど……」
ユカニャの指す「あの子達」、それは果実の国の戦士「KAST」のことだった。
カリン・ダンソラブ・シャーミン、アーリー・ザマシラン、サユキ・サルベ、トモ・フェアリークォーツ。
この四人の戦士はモーニング帝国での一件以降、訓練の水準を何段階にもあげていっていた。
ジュースを飲まなくてもモーニング帝国剣士やアンジュの番長らに対抗できるように、
ありのままの自分を鍛え上げたのである。
その結果として、彼女らは最高級のパフォーマンスを魅せる戦闘集団へと成長することが出来た。
仲でも一番変わったのは、以前まではサポートのみに徹しようとしていたカリンだろう。
カリンはカリン本来の強さを取り戻している。
「やるじゃん。まるでゴールデンチャイルズの頃のカリンみたい。
あの時のような活躍を期待してるよ!」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってサユキ、
あれはタケちゃんとかフクちゃんとか他のメンバーが凄かっただけで……」
「おいカリン!また卑屈になってるよ!」
「ひぃ!トモ!ごめんなさい〜」
「あはは、性格だけは今までのリンカのままやな。」
96
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/25(木) 08:47:07
>>90
残念ながら怪獣番長でも宇宙番長でもありませんw
それらの要素は別の形で出てくるかもしれませんけどね。
>>91-92
給食番長が相川茉穂モチーフのキャラ、
理科番長が
97
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/25(木) 08:50:40
途中で送信しちゃいました。
>>91-92
給食番長が相川茉穂モチーフのキャラ、
理科番長が佐々木莉佳子モチーフのキャラとなります。
「口を開かない」「美術」あたりのキーワードで混乱させたのかもしれませんね。
>>93-94
マロがどうなったのかはまた後日にw
98
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/26(金) 08:25:54
打倒ベリーズのための作戦会議は3日後、マーサー王国の城にて行われる。
国際的な会議であることを考えれば開催までの期日が極端に短いが
マーサー王とサユの救出という目的を早期に果たすにはこれが適当なのかもしれない。
そして今、ハルナンは馬を走らせ、アンジュの王に謁見している。
ベリーズとモモコ一派、そして他にもいるかもしれない敵に対抗するためには
アンジュ王国の番長と果実の国のKASTの力が必要不可欠だと考えたのだろう。
外交担当として、確実に二国から協力してもらうためにハルナンはここまで来たのだ。
「かくかくしかじかという訳なの。 アヤチョ、出来る限りで良いから助けてほしい。」
「いいよ!アヤがいく!ハルナンを困らせる悪い奴をとっちめてあげるよ!」
アンジュ王国の王、アヤチョは簡単だった。
親友ハルナンのためならどんな犠牲を払っても良いという考え方をしているのがその理由だ。
それに対して裏番長マロ・テスクはハルナンに厳しい。
車椅子生活となり、戦士として以前のように戦うことは難しくなったが
口の達者さは据え置きのようだった。
「ちょっと、アヤチョには王の仕事がたくさん残ってるでしょ?
そんな簡単に居なくならないでくれる?」
「え〜……じゃあ番長たちをハルナンに貸すのはどう?」
「番長たちって、7人全員?」
「そう!あの子たちが揃ったらきっとハルナンの助けになるよね!」
「それはダメ、全員は貸せない。」
「なんで!?カノンちゃんケチだね!」
「考えてもみてよ。全員いなくなったら国防の指揮は誰がとるの?
興行の舵取りは誰がやるの?いないでしょ?」
「カノンちゃんとか。」
「私はアヤチョに押し付けられた面倒な仕事をいーっぱいこなさないといけないんだけど?」
「う〜……」
「それにね、困ると思わない?」
「何が?」
「番長7人がそこのハルナンに唆されて裏切られたりでもしたら、アンジュは終わっちゃうよ?」
「「!!」」
マロの言葉に、ハルナンはギクリとした。
もちろんそんなことをする気など微塵も無いのだが、
過去を顧みるに、ここで否定しても説得力がなさ過ぎるのだ。
そんな感じで小さくなるハルナンとは対照的に、アヤチョは激しい怒りを露わにする。
「酷いよカノンちゃん!ハルナンがそんなことする訳ないでしょ!!
分かった!ベリーズが敵って言われて拗ねてるんだ!
ひょっとしてそのこともハルナンの嘘とか言うんじゃないの!?」
「いや、それは信じるよ。」
「「えっ?……」」
「ベリーズ戦士団様を己のために利用することがどれだけ罪深いか、
ハルナンはよーく知ってるだろうしね。」
ハルナンは背筋がゾクッとするのを感じた。
過去にベリーズの一人であるクマイチャンを利用して、
その結果マロに痛い目を見せられたのを思い出したのだ。
ハルナンは決意する。
ここでマロ・テスクを説得するには全てを洗いざらい説明するしか無いと悟ったのである。
「すいませんマロさん、どこかで2人で話せませんか?」
「2人で?怖〜い。私なにされちゃうの?」
「アヤチョにも聞かれたくない、大事な話がしたいんです。」
「「!!」」
99
:
名無し募集中。。。
:2016/02/26(金) 09:54:49
あれだけのことしといて
いけしゃあしゃあと外交にくるハルナンもすごいなw
100
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/27(土) 10:19:54
個別ブースに入ってから数分後、ようやくハルナンとマロが中から出てきた。
どうやら説得は上手くいったようで、マロはアヤチョも驚く程の変貌ぶりを見せている。
「そういうことだったのね。分かったわ、番長4人を合流させてあげる。」
「有難う御座います。 本当はもっと早くお伝えするべきだったのですが……」
「いいよ、気にしないで」
あのマロがいやに素直なので、アヤチョは不思議に思った。
いったいどんな魔法を使って納得させたのだろうか。
「ねぇハルナン、2人でなに話してたの?」
「うふふ、アヤチョにはまだ秘密。」
「えー!?」
「ごめんね。でももう果実の国に急がなきゃならないの。今度一緒にお話ししましょ。」
「うん!」
こうしてハルナンは慌ただしく去っていってしまった。
ここから番長を手配するのはアヤチョとマロの仕事。
興行に忙しい番長4名をさっそく王の間に呼びつける。
「カナナン、タケちゃん、メイ、リナプー、3日後にマーサー王国に行ってハルナンを助けてあげて。」
「え?」「なんでですか?」
「マーサー王とサユが攫われたらしいの……それもベリーズ様、に。」
「「「「!?」」」」
はじめは気怠い雰囲気を見せていた番長達だったが、マロの言葉を聞いて一気にピリッとする。
事態は深刻であることを理解したのだ。
「キュート様やモーニング帝国剣士と合流して事件を解決するのがあなた達の使命。
正直言って相当厳しい戦いになるけど……やる?」
相手がベリーズほどの存在ともなれば、恐れて逃げることは恥にはならない。
だから念のためマロは本人達の意思を確かめたのだが
どうやらその心配は無用だったようだ。
「やります!フクちゃんが困っているなら、力になってやりたいんです。」
タケの言葉に仲間達も頷いていく。
モーニング帝国での選挙戦を経験して以来、
彼女らは戦士として一段階成長したのと同時に、モーニングに対して親近感を覚えるようになったのだ。
ライバルたちとまた共に戦いたい。 そう思うのは当然のことだった。
こうして話は上手くまとまるかのように思えたが、
王の間に新人番長であるムロタンが乱入することで、少々ややこしくなる。
「待ってください!なんで4人だけなんですか!」
「ムロタン!?」
「人数をどうしても増やせないって言うなら……タケさん、メイさん、その座を譲ってください。」
「は!?」「ちょっと、何言ってるの!?」
101
:
名無し募集中。。。
:2016/02/27(土) 11:11:46
ムロタン乱入!3期が参加するのかな?
102
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/27(土) 23:54:17
ムロタンが今の戦いを物足りないと感じていることはことは知っていたが
まさかこの状況でぶっ込んでくるなんて思いもしなかったのでタケは驚いた。
しかもタケとメイと言う名指しでだ。
「なんでタケちゃんとメイメイなん? ウチやリナプーでもええやろ。
いや、良くはないんやけどな。」
「それはですね、カナナンさんとリナプーさんは尊敬できるからなんです。」
ムロタンの言葉を聞いたタケとメイは今にも卒倒しそうになる。
カナナンとリナプーを尊敬できるということは、裏を返せば自分たちを敬っていないとい薄着でこと。
クラクラする頭を押さえながら、メイが反論し始める。
「ちょっとあなた?先輩風吹かすわけじゃないけどね、一応上下関係というものが……」
「え?同じ番長なんだから同格ですよね?」
「そうなんだけどね?そうなんだけどね?えっとなんて言えばいいのかな……
よし、具体的に聞こう。どういうところが尊敬できない?」
「えっと、例えば、メイさんの服ってオバさんみたいですよね。」
「オバさんじゃない!!これはエイティーズファッションって言うの!
ファッションなの!分かる!?あえてよあえて!!」
「エイティーンエモーションですか?」
「違う!」
数十年前に流行した服を着る、言わばリバイバルファッションを好んでいたメイにとって
それを貶されるのはとても悔しいことだった。
「だいたいね、ファッションと言えば前からムロタンに言いたいことがあったの。
なにその露出度の高い衣装!恥ずかしくないの?心配するわ!」
メイが指摘したのは、ムロタンのヘソ出しノースリーブ衣装だ。
戦士とは思えないほどの薄着で、防御力など度外視しているように見える。
「え?可愛くないですか?男の人にすごく好評ですよ?」
「いやらしい目で見られてるの!あーいやらしい!」
「見られても減るもんじゃないですからねー」
「最近の若い子の貞操観念ってどうなってるのかしらね!」
「え?メイさんと私って同い年じゃないですか。」
「……そうだったね。」
103
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/27(土) 23:56:50
おまけ更新
ムロタン「え?同じ番長だから同格じゃないですか?」
メイ「一応私たちだってマロを敬ってたのよ。ねぇタケちゃん!」
タケ「う、うん!マロめっちゃ尊敬してる。」
カナナン「ほらほらマロ、早く2人の喧嘩を止めなあかんで」
リナプー「マロお茶入れて〜」
マロ「おい」
104
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/27(土) 23:58:35
あ、急いで書いたからか結構誤字ってますね……
遂行気をつけます。
105
:
名無し募集中。。。
:2016/02/28(日) 02:10:02
りなぷー平気で言いそうw
106
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/28(日) 12:27:13
「ムロタン、尊敬できない本当の理由って、服がダサいとかそういうのじゃないんでしょ?」
興奮するメイを制して、タケが口を挟みだす。
声のトーンから真剣さが伝わったのか、ムロタンも真面目な顔をする。
「はい。メイさんの服がダサいとか、タケさんの足が短いとかはこの際どうでもいいんです。」
「ん……(脚が短いって言ってたっけ?)」
「ただ、タケさんやメイさんの役割なら私にも出来るなって思ったんですよ。」
「本心っぽいね。 どうしてそう思ったの?」
「例えばですけど、カナナンさんの真似は私には無理です。
私、っていうか同期はみんな、ちょっとお馬鹿さんなんで……」
「状況を見て指示を出すのは難しいってことか。」
「そうです!タケさんもそうですよね?」
「失礼だな!……まぁいいや、続けて。」
「リナプーさんみたいに姿を消して場をかき乱すのも苦手なんですよね。」
「自分から目立ちに行くもんね、ムロタン。」
「そうなんですよ……それに、リナプーさんには一対一で勝てる気がしません。」
「えっ?ということは……」
ここでムロタンがまた聞き捨てならないセリフを言い放つ。
要するに、タケやメイには勝てるとアピールしたいのだろう。
褒められてニヤニヤしてるカナナンやリナプーとは対照的に、
タケとメイの顔がどんどん怖くなっていく。
「タケさんとメイさんってただの戦闘員ですよね?
だったら私と同じじゃないですか。 代わっても問題ないと思いません?」
「ムロタン、そこまで言うってことはタイマンで私に勝てる気でいるのかな?」
「いや、一対一じゃなくていいですよ。」
「……どういうこと?」
「2人がかりで来てくださいよ。それでやっとフェアです。そう思いません?」
「「!!」」
タケとメイがただの戦闘員だというのは確かに正しい。
とは言え、二人は帝国剣士ともやり合うことのできるレベルにいるのだ。
そんな二人に同時にかかってこいだなんて、無謀にもほどがある。
普通に考えればこんなのただの挑発にしか思えないのだが、
マロ・テスクはムロタンに確かな自信があるのを感じていた。
「面白いじゃない。先輩として勝負を受けてやれば?
もちろん勝った方が遠征に行けるっていう条件でね。
いいでしょ?アヤチョ。」
「もちろん!ハルナンを助けるなら強い子の方がいいからね。」
アヤチョとマロが承認したので、いよいよこの戦いを避けることは出来なくなってしまった。
だがその点においてはなんら問題ない。タケもメイも十分やる気なのだ。
そんな二人をさらに興奮させたいのか、ムロタンが新たな条件を提示する。
「戦う時間と場所なんですけど……私が決めていいですか?」
「いいよ、好きにしな。」
「じゃあ昼過ぎに野外の大広間でやりましょうよ!!
それまでにギャラリーをたっくさん集めてくるから期待しててくださいね。
大勢の兵隊さん達の前で白黒ハッキリ決めましょうよ。」
「……いいけど。」
ここでカナナンは気づいてしまった。
ムロタンがしきりに挑発することで起こりうる最悪の事態を想像したのだ。
「タケちゃん!メイ!」
「カナナン、口出しは無用だよ。」
「……はい。」
マロがクギを刺すのでカナナンは何も助言できなくなった。
こうなったらもう、2人が罠にかからないように祈るしかない。
(タケちゃん!メイ!お願い気づいて!!)
107
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/29(月) 02:04:14
昼の休憩を少し挟んで、ムロタンの指定した時刻がやってきた。
それほど時間が有ったという訳では無いのに、広場には2000を越える数の兵士達が集まっている。
番長同士の戦いという好カードを誰もが見たがっているのだろう。
「どうですか?観客の数としては申し分無いですよね。」
「……ところでさ。」
「タケさん、どうかしました?」
「ムロタンの同期には声をかけなかったの?応援に来てないようだけど。」
新人番長が姿を見せていないことにタケは違和感を覚えていた。
ムロタンが一世一代の大勝負をするというのに見に来ない程の薄情者では無いはずだからだ。
「あー、それがですね。リカコは仕事が忙しくて来れないみたいなんですよ。」
「例のモデルのやつ?」
「はい。色んなところから引っ張りダコらしくて呼べませんでした!
本当はリカコにも見てもらいたかったんですけどね。」
「そっか」
「はい!」
「……で?」
「ん?なんですか?」
「え、いや。なんでもない。」
タケは物言いたげな顔をしていたが、言葉にするのを取りやめた。
観客が待ちくたびれているのを感じ取ったため、早々に決闘の準備を進めねばと思ったのだ。
「それにしてもタケちゃん。」
「どした?メイ。」
「改めて思うけどムロタンって度胸あるよね。この大人数の前でも全然緊張してない。」
「"ロックスター"だからね。慣れっこなんでしょ。でもそれを言うなら私たちだって。」
「"プロスポーツ選手"と"舞台女優"か。確かに慣れてるや。
緊張して本領発揮できなかった、なんて言い訳出来ないね。」
「そもそも言い訳する気ないけど。勝つし。」
「あはは、そりゃそうだ。」
「……ところで、メイ。」
「?」
タケが神妙な面持ちになったのでメイは不思議に思った。
だが次の言葉でメイは困惑することとなる。
「やっぱりメイは下がっててよ。ムロタンの相手は私1人でやる。」
「は!?」
もう少しで開戦だというのに、突然1人で戦うとか言い出したので
メイは何が何だか分からなくなってしまった。
「ちょっと今更なに言ってるの!?」
「ムロタン相手に2人がかりは違うなって思って……」
「卑怯だとか言いたいの?ムロタンが後輩だから大人気ないって?
それは違うよ!これはそういうルールなんだよ!?
分かってるの?タケちゃん。これは遊びじゃないんだよ!」
メイが激しく興奮しながら怒鳴るので、その声はムロタンだけでなく観客にも届いてしまった。
兵士達には、タケとメイが仲間割れするというみっともない姿が見えているのだろう。
「いいから退けっての。ムロタンの相手は1人で務まるから。」
「分かった!!もう分かった!!タケちゃんがそう言うならメイはもうムロタンとは戦わない!!」
「あぁ、その辺で応援してろよ。」
「応援なんてするわけ無いでしょ!ここに居るだけで嫌な気分になってくるの!
あー気持ち悪い!さようなら!!!せいぜい
頑張ってね!!」
「……チッ」
顔を真っ赤にしたメイが本当にどこかに行ってしまったので、ギャラリーはひどくどよめいている。
そして、タケやメイの同期であるカナナンも不安に思っていた。
「あぁ〜なんてことを……このままじゃ負けてしまう……」
最悪の展開が近づいていることにカナナンは絶望しかけていた。
後輩に勝つにはタケとメイの協力が必要不可欠だと分析していたのに、
それがもう叶わなくなってしまったのでガックシきているのだ。
そんなカナナンの肩をポンポンと叩きながら、もう1人の同期であるリナプーが声をかける。
「カナナンって頭いいけどたまに馬鹿だよね。」
「えぇ!?ひどい!」
「だってさ、私たちの同期が負けるわけないじゃん。」
「だったらええけど……根拠ないやろ」
「大丈夫だよ。あの子はやる時にはやる子だから。」
108
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/02/29(月) 13:13:51
「ふふっ、いいんですか?メイさん抜きで」
自分の有利な方向にコトが進むのが愉快すぎて、ムロタンはついつい吹き出してしまう。
ピリピリとした顔をするタケとは全くもって正反対だ。
「いいよ。もう始めよう。」
そう言うとタケは腰につけたホルダーから鉄球を一つ取り出した。
この鉄球「ブイナイン」こそが彼女の武器。
現モーニング帝国帝王であるフク・アパトゥーマをも苦戦させた実績を持って、ムロタンに挑もうとしている。
対するムロタンは、なんと手ぶらだった。
これから決闘を行うというのに装備を持ち合わせていないように見えるのである。
とは言え、ムロタンの戦い方を知っているタケはそれで油断などしない。
先手必勝。全力投球の精神で鉄球をぶん投げる。
「おりゃあっ!!」
160キロオーバーの豪速球なので当たれば骨折は必至。
特にムロタンはメイが呆れたほどの薄着なので、ちょっと当たっただけで戦闘不能に陥るかもしれない。
ところが当のムロタンは全く恐れるようなそぶりを見せなかった。
手のひらを前に突き出し、魔法の言葉を叫び出す。
「バリアー!!」
この世界は魔法やファンタジーの世界ではないのでバリアーなんて出ないはずなのだが
なんと、ムロタンを狙う豪速球は手のひらに当たる直前まで「見えない壁」に跳ね返されてしまう。
このムロタンお得意の防衛術に、観客たちは湧き上がる。
「おお!あれがムロタン様の魔法か!」
「タケ様の鉄球まで防ぐとは、なんと凄まじい防御力!」
ムロタンはロックスターであると共に、エンタメ興行を取り仕切るエンターテイナーでもある。
彼女にとってはパントマイムと呼ばれるパフォーマンスを戦闘に取り入れるくらい朝飯前なのだ。
しかし、パントマイムと言えば自らの身体を用いることで無いものを有るように見せる技術。
本当に自身の身体を使っているのであれば今頃ムロタンの腕はグシャグシャになっているはずだ。
ところがそのムロタンは平気な顔をしているし、腕だってなんともないように見える。
この秘密はアヤチョ王と番長たちしか知らない。
「流石だなムロタン。この程度じゃ効かないってか。」
「もっと速い球を投げてもいいんですよ?私のバリアーで全部跳ね返してあげますから。」
「でも護るだけじゃ勝てないでしょ?攻めてきなよ、そっちもさ。」
ムロタンはこのパントマイムによって番長屈指の防御力を手に入れていたが
その反面、攻撃の手段には乏しかった。
特にタケほどの身体能力を誇る戦士を倒し切るのは骨が折れるだろう。
だが、今のムロタンはそれを克服している。
「分かりました。じゃあ攻撃しますね。」
「どうやって?パンチか?キックか?」
「狙撃です!ファイヤー!!」
ムロタンがタケをビシッと指差したのと同じタイミングで、タケの肩をから血が噴き出していく。
まるで弾丸で撃ち抜かれた時のような損傷を負っているのだ。
しかしムロタンは相変わらずの手ぶら。銃なんて持っているようには見えない。
ではこの弾丸はどこから来たというのだろうか?
「これは……なるほどね。」
「あ、タケさんも分かっちゃいました?」
この仕掛けのタネは番長ならばすぐに分かるとムロタンも自覚していた。
だが分かったところでもう遅い。
絶対防御からの一斉射撃はもう開始されたのだから。
109
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/01(火) 02:17:00
歴代の番長の中で、銃を武器にする者は2人しか存在しなかった。
そのうちの1人は現在一線を退いているマロ・テスクことカノンだ。
小型銃「ベビーカノン」による銃撃によって相手の行動の幅を狭めるのが得意な戦士だった。
しかし、タケの肩にブチ込まれたのは「ベビーカノン」の弾丸ではない。
小型銃にしては弾が大きすぎるのである。
となればおのずと答えが見えてくる。
タケを撃ったのは、もう1人のガンナーだ。
いや、どちらかと言えばスナイパーと呼ぶのが相応しい。
「タケさん。ごち」
タケとムロタンの戦う広場から500m程離れたところに時計台が建っている。
そこの最上階付近では、大きなスナイパーライフルを構えた少女が陣取っていた。
その少女の名はマホ・タタン。 アンジュ王国の給食番長だ。
そんな彼女には料理以外にも天体観測という趣味があった。
スナイパーライフルのスコープを覗き込みながら、
まんまるい月を見る時のような集中力でタケを狙っていく。
「……もう一発。」
マホがトリガーを引くことで、タケの左脇腹に激痛が走る。
あまりの苦しさにひっくり返りそうになるが、それだけはしてはならない。
少しでも動きを止めれば集中砲火を受けることになるからだ。
「あはは、タケさん!私の魔法が効いてるみたいですね!なんちゃって。」
「くそっ!ムロタンじゃなくてマホの仕業だろ!これ!」
「当たりです〜。でも、だったらどうだって言うんですか?」
「……別に、何も言わないよ。」
「あー良かった。タケさん本当にカッコいいですね。
それじゃあ思う存分やらせてもらいますよ。」
この戦い、タケとムロタンの一騎打ちかと思いきや
その実はタケ対ムロタン&マホの1対2の勝負だったのだ。
一見して卑怯に思えるが、そんなことはない。
その理由をカナナンがリナプーに解説し始める。
「ムロタンはな、自分一人だけで戦うとは一言も言ってなかったんや。」
「そーだったっけ?忘れちゃった。」
「リナプーに一対一で勝つ自信が無いって言ってたことは?」
「覚えてる!」
「そう、ムロタンが言ったのはたったそれだけ。
後は周りが勝手に勘違いしたんやな。 タケちゃんやメイには勝てると思っとるって。」
「ふーん。そういうこと。」
「で、ここからはウチの推測になるんやけど、多分ムロタンはウチらのことも尊敬してないと思う。」
「え!?どういうこと!?」
「対戦相手をタケちゃんとメイに絞るために口からデマカセ言うとったんやで。」
「?」
「ほら、ウチは賢いからムロタンとマホの策に気づいてまうやろ?」
「なんか感じ悪いね。」
「こら。あんまり後輩を悪く言ったらあかんで。」
「そうじゃなくて。」
「でな、リナプーは透明になるからマホの狙撃が当たらないはずやろ?」
「あーそうかも。」
「つまり、アホで且つ地味でもないタケちゃんとメイを対戦相手にするのがムロタンとマホの狙いだったんや!!」
「うわー、なんかイラっとくる。」
110
:
名無し募集中。。。
:2016/03/01(火) 06:18:09
新番長はくせ者揃いだわ…流石二期がひくぐらいグイグイくるってあやちょが言うだけあるなw
111
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/02(水) 12:57:07
アンジュの番長は、先輩4人と後輩3人でそれぞれ分かれて戦うことが多かった。
このようになった原因は上下関係によるのではない。
同期間での役割が非常にハッキリしているため自然と分かれていったのである。
例えば先輩番長の役割は以下のようになる。
司令塔のカナナンが仲間に指示を出し、
身体能力の高いタケと、演技によってどんな状況も対応できるメイが前線に出て、
透明化を得意とするリナプーが場を掻き乱す……といった具合だ。
対する後輩番長には司令塔らしき人物は存在しないが、
ムロタンの防御で味方を護り、リカコが相手の視界を奪ったところで
マホが狙撃するといった必勝パターンを確立させていた。
今回、新人はリカコの一枚落とし程度で済んでいるのに対して、先輩であるタケはたった1人で臨まなくてはならない。
誰がどう見ても不利な状況にあるのである。
「せめてメイがおったらな……今のタケちゃんは弾丸から身を護りつつムロタンの護りまで崩さなあかん。」
「あはは、このままだとタケ負けるね。ばくわら」
「リナプー!笑い事やないやろ!」
「……だからさっきも言ったじゃん。カナナンはたまに馬鹿なところあるって。」
「!?」
「この勝負は同期の勝ちだよ。 タケだってそれを分かってるみたいだし。」
リナプーはそう言うが、当のタケは未だにこの状況を打破できずにいた。
身体で貰った銃弾の数は太ももをやられたことで3発に達しているし、
マホを倒しに行こうにもムロタンに回り込まれて妨害されてしまう。
ならばムロタンをぶっ倒せば良いと考えたが、スナイパーに狙われたままでは本気の投球を見せることも不可能だ。
そして、仮に超豪速球を投げたとしてもムロタンの「見えない壁」を破れるかどうかは分からない。
まさに絶体絶命なのである。
タケが苦しい顔をするのを見たムロタンは有頂天になる。
「そろそろキツいんじゃないですか?顔が死んでますよ!」
「まだ負けてない……」
「いえ、もう終わりです。 その撃たれた脚じゃもう避けられないでしょ?
だからこれが最後なんですよ!マホ!やっちゃって!!」
ムロタンはタケを指差し、大声でマホに指示を出した。
動けぬ的のど真ん中に弾丸を当てればそれで終了だと考えたのだ。
ところが、何か様子がおかしい。
ムロタンが発射のお願いをしたというのに、いつまで経っても銃声は鳴り響かない。
「え?……マホ?……なんで撃たないの?」
112
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/02(水) 12:58:51
>>110
未登場ですが、リカコはムロタンやマホ以上に個性的な戦い方になる予定です。
番長の武器は基本的にモチーフになったメンバーの趣味や特技から採用しているので
予想してみてください。
113
:
名無し募集中。。。
:2016/03/02(水) 14:14:57
シャボンカッターかな
114
:
名無し募集中。。。
:2016/03/02(水) 18:38:10
「相手の視界を奪う」から泡の壁を作るとか・・・もしくは無駄な動きで相手の気を散らすとか?w
115
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/03(木) 02:34:21
「ムロタンは凄いと思うよ。実際。」
「え?え?」
マホの動向が不明なところに、更にタケが自分を褒め始めたので
ムロタンは完全に混乱してしまった。
そんなムロタンを見ながら、タケは言葉を続けていく。
「これだけのギャラリーを集めたのも凄いし、そんな大勢の前で先輩を倒そうとする度胸も凄い。
しかもちゃんと策が練られてるから無謀な挑戦なんかじゃない。」
「何が言いたいんですか!」
「いや、なかなか魅せてくれるなって思ったんだよ。」
タケの言葉は全て本心によるものだ。
遠征への切符を奪い取る計画を企てただけじゃなく、
それすらも観客総立ちのショーに変えてしまっている。
なんて優秀なエンターテイナーなのだろうか。
「でも、もっと魅せてくれる奴のことを知ってるんだよなぁ。」
「!?」
「流石だよね、迫真の演技ってのはああいうのを言うんだ。」
「え?え?……うそ、まさか……」
「儲け物だとは思わない?トップ女優の仕事っぷりを間近で観れたんだからさ。」
「!!!」
同時刻、マホのいる時計台。
そこではマホ・タタンが突然の来訪者にひどく怯えていた。
決して来るはずのない人物が目の前に立っているのだから無理もない。
その来訪者はたった1人の観客の前で口上をあげていく。
「世の中は劇場、人生のミザンセーヌ。
せわしないプロット、今日も演るのだ。
きっといつしかは大団円。
愛と義理と人情、心惜しまずに尽くすの。
誰に見られようと
なんと言われようと
ここでは、私が、主役だ!!」
彼女は部屋中に響き渡るほどの声量で見得を切った。
大根役者がこんなことを言ったらお笑いだが、そうはならない。
メイ・オールウェーズ・コーダーには2000人を騙した実績があるのだから。
「め、メイさんなんでここに……」
「今宵の客は貴女かな?」
「へっ?まだお昼ですけど……」
「それでは貴女のためにスッペシャルな演目をご披露いたしましょう。
これは数ヶ月前にあった本当のお話ーー」
マホはスナイパー。狙撃の威力と精度は高いが、近接戦闘だけは非常に苦手としている。
普通にメイとやり合えばマホはあっという間に負けてしまうだろう。
だが幸いにも、メイは現在、自分の世界に入っている。
今ならスナイパーライフルで撃ち抜くチャンスだとマホは考えたのだ。
「えい!」
「ーーその時、巨人が現れたのです!!」
「!?」
あとちょっとで引き金を引けるといったところで、マホの身体は静止してしまった。
急に全身が重くなったのだ。
まるで天空から伸びてきた巨人の手に押さえつけられたかのように、
たった「1秒」だけ動きを止められたのである。
これはメイが死に物狂いの稽古の果てに習得した「1秒演技」によるもの。
超短期ではあるが、己の実力を遥かに超える人物をも演じることが出来るようになったのだ。
たかが「1秒」、されど「1秒」
これだけ止められれば応用はいくらでも効く。
「ーーそこで勇敢な王は仕掛けました。"フク・ダッシュ"!!」
マホが動きを取り戻すよりも早く、メイは爆発的な加速力で体当たりをぶつけていく。
防御姿勢を全くとれていない相手に喰らわす突進は非常に強烈。
マホは耐えきれずに気を失ってしまった。
「か〜てぃんこ〜るるるんるるるん
それでは最後にみんなで一緒に三三七拍子。
さ〜あ、皆様お手を拝借。
『本日は、本当にありがとう!』」
これにてアクトレスによる劇は終幕。
次に輝くのはアスリートか、アーティストか。
116
:
名無し募集中。。。
:2016/03/03(木) 05:02:50
まさにメイの独り舞台!w
117
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/03(木) 12:53:56
「今までのが全部演技……!?
じゃあ、私たちの考えが分かってたってことですか!?
隠してたつもりなのに、どうして!」
同期みんなで意見を出し合って作り上げた作戦が崩壊しかけたので、
ムロタンの焦りは相当のものだった。
負傷自体は相手の方が上だというのに、敗北者のような顔をしている。
「ムロタンの行動が不自然だったからかな。すぐに何か有ると気づいたよ。」
「不自然???私、何か変でした!?」
「番長の凄さは舎弟から昇格したムロタンが一番よく知ってるはずだろ。
マホやリカコよりも長い間努力し続けたムロタンが、
先輩の番長を2人同時に倒せるなんて口が裂けても言えないんじゃない?」
「あ……」
「それでもムロタンは言い切った。じゃあ何か策がある。
しかもこんな開けた場所で決闘するなんて言い出したもんだからさ
ここらで一番高い時計台を怪しいと思うのは当然じゃない?」
「……タケさん、意外と頭良かったんですね。」
「良くなんかないよ、ただ、モーニングの方に姑息な手ばっかり使う奴がいてさ。
そいつに会ってからは、ちょっとは頭使うようになったかな〜」
かつてのタケは親友のフクを満足に守ることが出来たとは言えなかった。
戦術には無頓着だったタケも、その悔しさから考えを改めるようにしたのである。
「じゃあ……どうしてですか。」
「何が?」
「メイさんを信じることが出来たのはどうしてなんですか!
本当に怒って帰っちゃったのかもしれないじゃないですか!
いくらタケさんが策を暴いても、メイさんが気づかなかったら意味ないのに!」
「どうしてって……そりゃ分かるでしょ。」
「!」
「同期なんだぜ?言葉になんかしなくたって、大体分かると思うけどな〜。
ムロタンはどう?マホやリカコの言いたいこと。」
「……分かります。」
「ま、あそこのカナナンだけは分かって無かったみたいだけどね。後でみんなで〆る!!」
ムロタンは、今回の作戦に無理があることにようやく気づいた。
失敗の要因は、先輩番長はカナナン抜きでは正常な判断が出来ないと思ってたこと。
そして、先輩らの絆は新人番長の絆ほど固くないとタカをくくったことが挙げられる。
要するに、舐めすぎていたのだ。
そんな姿勢で臨んだ戦いが上手くいくはずもない。
「私が馬鹿だったって分かりました……でも……」
「でも?」
「私!いや、私たちはまだ負けていません!!」
ムロタンは「見えない壁」をギュウッと掴み、自分とタケとの間に配置する。
彼女の瞳の炎はまだ消えていなかったのだ。
「私の防御は絶対なんです!!かすり傷一つ負わずに勝ってやるんですから!!」
「いいねぇ……そうこなくっちゃ。」
118
:
名無し募集中。。。
:2016/03/03(木) 13:41:48
タケやるねぇ
実際はうるう年の意味もよく分かってないのにw
119
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/04(金) 02:15:39
ムロタンの「見えない壁」の正体は、アクリルと呼ばれる最新の素材で出来た透明色の盾だ。
ただでさえ耐久力の優れた素材だというのに
それを10cmという普通の盾でも考えられないような厚さで作り上げているのだから、硬くないはずがなかった。
もちろんその分だけ重量が増して使いにくくなる訳だが
番長になるため頑張り続けたムロタンからしてみれば、この程度は軽いものだった。
ムロタンは未だ打ち破られたことのないこの透明盾、その名も「クリアファイル」に絶大な信頼を置いている。
そして、そのことは他の番長たちも重々承知していた。
「私の鉄球とムロタンの盾、どっちが強いか勝負だ!」
「望むところです!!」
ここまで来れば策も何もない。力と力のぶつかり合いだ。
タケは本気で投げるし、ムロタンはそれを全力で受け止める。
そんなやり取りが2、3分ほど繰り返された。
時たまタケが変化球を投げて打点をズラそうともするが、それさえも全て防がれてしまった。
盾が透明ということは、相手の攻撃が当たる寸前まで軌道を確認できるということ。
その特性から、ムロタンは不意打ちさえも確実にガードすることが出来るのだ。
「ハァ……ハァ……本当に硬いな」
一見して2人の勝負は拮抗しているように見えるが、実はタケの方がいくらか不利だった。
先ほどマホに撃たれた傷から出血し続けているため、もう長くはないのである。
「タケさん!そろそろキツいんじゃないですか?」
「……かもね、もう諦めようかな。」
「え!?本当ですか?」
「勘違いするなよムロタン。諦めるってのは勝負のことじゃないよ。
9回ウラ満塁になったとしても勝利だけは信じてやるんだ。」
「じゃあなんだって言うんですか?盾を壊さないと私は倒せませんよ?」
「どうかな、まぁその目でしっかりと見てなよ。」
120
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/04(金) 02:16:52
タケちゃんうるう年分かってないんですかw
想像以上でした。
121
:
名無し募集中。。。
:2016/03/04(金) 09:24:19
想像以上ってw
122
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/04(金) 12:56:19
タケの武器は鉄球のみ。
ゆえに、相も変わらぬ豪速球を放ることしか出来ない。
ただ、ここでタケは少しの変化を加えることにした。
狙いをムロタンの顔面に定めてぶん投げたのだ。
「とりゃっ!!」
「だから無駄ですって!」
どこに投げられた球だろうとムロタンには関係ない。
ギリギリまで鉄球の行き先を見極めて、そこに透明盾を当ててやるだけだ。
結果として今回も球は跳ね返されてしまった。
たがタケはまだ勝負を諦めていない。
跳んできたボールをキャッチするや否や、インターバルなしですぐさま投球モーションに入ったのである。
狙いは同じくムロタンの顔面。
「それはさっきやったでしょ!?効きません!」
寸分の狂いもなく同じ箇所を狙ってきたので、ムロタンは盾を動かす必要すら無かった。
ただ構えているだけでいいので非常に楽にガードすることが出来る。
ところが、ここでムロタンの身体に異変が起きる。
まったく動く必要がないと言うのに、脚が勝手に後ずさりし始めたのだ。
「え!?……わわっ!!」
多少バランスを崩したが、すぐに体勢を立て直すことでなんとか鉄球を防ぐことが出来た。
そんな風にホッとしているムロタンに対して、タケはまたもすぐに球をぶん投げる。
狙いは変わらない。ムロタンの顔面だ。
(またぁ!?)
馬鹿の一つ覚えみたいに同じところばかり狙ってくるタケの攻撃は、
盾使いからしてみればこれ以上なく簡単に捌けるはずだった。
ところが気づけば腕が震えている。膝も笑っている。
軌道を見続けねばならない目も頻繁に瞬きをしている。
喉が渇く。胸が苦しくなる。血が冷たくなる。
何より、逃げ出したい思いでいっぱいになる。
ここでようやくムロタンは自覚した。
(私、怖がってる!?)
前にムロタンの盾が透明であることのメリットについて書いたが
それに対するデメリットもちゃんと存在していた。
デメリット。それは敵の攻撃がよく見えすぎてしまうところにある。
顔面に鉄球が当たることは絶対に無いと頭で理解していたとしても、
それによって生じる恐怖心は毎回毎回蓄積されていってしまうのだ。
そうして一度根付いた恐怖は思考までもネガティヴに変えてしまう。
もしも盾を離してしまったらどうしよう。
もしも転んでしまったらどうしよう。
もしも鉄球が本当に顔面に当たってしまったら……明日から私はどうすればいいのだろう。
気づけばムロタンは大粒の涙を流し、膝から崩れ落ちてしまっていた。
かすり傷を一つ負うよりも先に、気持ちの方が折れたのである。
「ううっ……悔しい……立てない……」
ムロタンが敗北を認めたのを理解したタケは、安心した顔をしながら鉄球をホルダーに戻していく。
そして、一言呟いた後にぐたっと倒れこむのだった。
「後輩に勝てたー……これでちょっとはフクちゃんに並べたかな?……」
123
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/04(金) 22:30:02
次にタケが目を覚ましたのはベッドの上だった。
隣でムロタンやマホも横になっていることから、
決闘での負傷者が病室へと運び込まれたのだと理解する。
「あ!タケさん起きた!」
「タケさんおはようございます。」
「お、おはよう。ムロタン、マホ。」
勝負に敗れたはずの後輩たちがニコニコ笑顔だったので
タケは本当に自分たちが勝ったのか不安になってしまった。
だがその心配は無用だ。確かに勝利を収めている。
枕元に置かれた手紙がその証拠だ。
『しあさってには出発なんだから早く治しなさいよ! メイより。』
メイの書置きを読んで、改めてタケは今回の趣旨を思い出す。
この決闘はベリーズを倒しにいく者を決める戦いだったのだ。
となるとタケには一つの不安があった。
「うーん……ねぇ、ムロタン、マホ。」
「はい?」「なんですか?」
「私の代わりに2人のどっちかがマーサー王国に行ってくれない?」
「「!?」」
やっとの思いで権利を死守したタケが辞退したものだから、後輩2人はビックリ仰天だ。
その言葉の真意をまず知りたくなってくる。
「どうしてですか!?タケさん、やっぱり怖くなったんですか?」
「そんなんじゃないよ! ただ、今の私じゃ戦力にならないと思ってね。」
「「?」」
「ほら、何発も銃に撃たれたから本調子じゃないんだ……」
「「あ……」」
「万全でも勝てるかどうか分からない相手に、こんな身体じゃ挑めないよ。
番長に、帝国剣士に、KASTのみんなに迷惑はかけたくない。
でも2人なら二、三日寝たら回復するはず。 だったら力になれると思うんだ。」
「「……」」
タケの言うことはもっともだし、新人にとってはこれ以上無いチャンスでもあった。
この機を逃したら次に大舞台に立てるのはいつになるか分からないだろう。
それでも、2人は首を縦には振らなかった。
「行けないよね、マホ。」「うん。」
「どうして!?2人は十分強いじゃないか。絶対活躍できるって!」
「ダメですよ。私たちは負けたんですから。」
「ムロタンの言う通りです。 修行をやり直します。」
ルールはルール。敗北した以上は身を引く潔さは立派だった。
でも、それではタケが困るのである。
「ちょっとちょっと!今回はアンジュから4人が出撃することになってるんだよ!?
これだとカナナン、メイ、リナプーの3人で行かなきゃならないじゃないか!」
「もう1人、いますよ。」
「!」
マホの言葉を聞いて、タケはハッとした。
タケも認める新人番長には、あともう1人残されていたのだ。
「私とマホは負けたからマーサー王国にはいきません。約束ですからね。でも……」
「そうか!リカコは負けていない!」
124
:
名無し募集中。。。
:2016/03/04(金) 23:23:06
タケはマイミのような回復力は持っていなかったか・・・
125
:
名無し募集中。。。
:2016/03/05(土) 01:49:16
もしや…帝国剣士が出払った帝国に警備の名目で入りフク王とイチャイチャするのが目的だったりして?w
126
:
名無し募集中。。。
:2016/03/05(土) 11:45:57
ノリ#・ 。・リ
127
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/07(月) 02:29:59
各国での準備も終わり、合同作戦会議の当日。
モーニング帝国からはQ期3名と天気組5名の計8名がマーサー王国に向かうこととなっていた。
新人は緊張で何も出来なくなることが想像できるので
会議の場に連れてくる意味は薄いと考えての人選なのである。
だが、実際のところは先輩らもガチガチに固まるほど緊張していた。
マーサー城の控え室に着いたは良いものの、妙にソワソワしている。
「どうしようハルナン、緊張で吐きそう。」
「アユミンも?私だって指が震えてるよ。」
「えー?だってハルナンはキュートさんの訓練について行ったことがあるんでしょ?」
「だから尚更よ……もう二度とあの空間にはいたくない……」
「うわぁ……」
緊張の原因はレジェンドとも言える存在である、キュート戦士団だった。
もともとマーサー王国は食卓の騎士が守護していたのだが、
そこからベリーズが抜けたために現在の主要騎士はキュートの5名のみ。
少ないように見えるが、その一人一人が団長マイミと同じくらいの実力を備えているのである。
帝国剣士が緊張するのも無理はないと言えるだろう。
そんな張り詰めた空気の中、帝国剣士に遅れてアンジュ王国の番長4名が到着する。
「あ!カナナンとリナプー、それにメイもおるやん!」
「ということはもう一人は……」
知った顔が次々と現れたので帝国剣士らはホッとした。
以前、共に戦った者同士なので心強く思っているのだ。
あの事件以降、カナナン、リナプー、メイ、タケの4人とはちょくちょく会っているため
近況などを言い合って緊張を解いていくのも良いかもしれない。
ところが、タケだと思っていた4人目は実はタケではなかった。
もっと脚が長くて、もっと大人っぽい顔をしている女性だったのだ。
「背高っ!誰!?キミ!」
大きなリアクションで驚くカノンに対して、4人目は自己紹介をしようとしたが
慌ててカナナンがその子の口を塞ぎだす。
「あははは、この子はリカコって言うてな、ウチの新人やねん。」
「新しい番長ってこと?」
「そういうこと。まだ14歳の入りたてピチピチやで。」
「えー!?見えない!」
確かに理科番長リカコ・シッツレイのルックスは、実年齢を言われなければ分からない程に大人びていた。
絵画のモデルを務めるほどの美貌でもあるため、帝国剣士らは息を飲んでリカコを見つめている。
手が速いハル・チェ・ドゥーも、声をかけずにはいられないようだった。
「君みたいな子の血でも吸えたら僕の貧血も治るんだろうなぁ・・・・・・ねぇ、吸ってみてもいい?」
第一部でも言ったような台詞を恥ずかしげもなく吐いたので、帝国剣士らは呆れてしまった。
それでも初見のリカコには効果覿面。
口をカナナンに塞がれているので身振り手振りで感情を伝えようとするが、
その両手もメイとリナプーに抑えられてしまった。
「あなたはジェスチャーするの辞めておきなさい。」
「ごめんね。でもこれもリカコのためだからね。」
後輩の行動を寄ってたかって制限する先輩番長らに、ハルはキョトンとした顔をする。
「あの〜あんたら、何やってるの?」
「いや、これは気にせんといて。」
128
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/07(月) 02:33:33
>>125
ノノ∮‘ _l‘)<!
ノハ*゚ ゥ ゚)<新人4人は置いていきましょう
ノノ∮‘ _l‘)シュン
129
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/07(月) 12:57:10
「みんなもう来てたのか!感心だな。」
控え室の扉をマイミが開いたものだから、帝国剣士と番長らは一気にピリッとする。
歓迎ムードゆえにマイミは嵐のような殺気を抑えてはいるのだが、
それでもやはり伝説を前にしてリラックスすることなど出来なかったのだろう。
他の人よりはほんの少しだけ耐性のあるハルナンが声をかけるのがやっとだった。
「あの、マイミ様……打ち合わせはまだ先のはずですが、何の用でいらっしゃったのですか?
キュートの皆様はギリギリまで休んでもらっても良いんですよ?」
じゃなきゃ自分たちの身体がもたない、といった本心まではハルナンも口に出さなかった。
出来ればキュートと顔を合わせるのは会議の場だけであって欲しいと思っているのだ。
だがマイミもここに来るだけの正当な理由を持ち合わせていたようだ。
「会議の前に伝えておきたいことがあってな。」
「伝えておきたいこと?……」
「実はオカールのヤツの機嫌が相当悪いみたいで……誰彼構わず当たり散らすかもしれないんだ。」
「!?」
オカールと言えばキュートの中で最も凶暴だと言われている狂戦士。
常に飢えており、全方位に噛み付かんとするその姿勢は脅威だ。
そんなオカールの虫の居所が悪いなんて聞いたものだから、一同は震え上がってしまう。
「ま、まぁ安心してくれ!君たちが刺激しなければ何もしないはずだ。
もしも不当に暴行を働こうとしたならば、私が身を挺して護ると約束する!」
マイミがそう言うまでもなく、帝国剣士と番長にはオカールにどうこうする度胸など無かった。
あれだけ恐ろしいクマイチャンやモモコと同格の戦士にちょっかいかけるなんて、想像しただけで恐ろしすぎる。
出来れば平穏に、波音立てずに終わらせたい。誰もがそのように思っている。
しかし、そう上手く行きそうにはなかった。
「ごめんなさい!遅れました!」
「KAST……3名、今到着しました!」
このタイミングでKASTらが部屋に入ってきた。
トモ、サユキ、カリンは全員が全員汗ダクで、急いでここまで来たというのが伝わってくる。
だが何かがおかしい。
ここに来ると聞いていたメンバーが1人見当たらないのだ。
「あぁ、会議はまだだから気にしないでくれ。 遅刻なんかじゃないぞ。」
「それが……それが……」
「そんな青い顔をしてどうしたんだ?」
「アーリー・ザマシランが遅刻するかもしれないんです!
途中ではぐれちゃって……どれだけ急いでも開始時刻には間に合わないかも……」
報告したサユキも、その仲間であるトモとカリンもこの世の終わりのような顔をしていた。
キュートも参加する会議に遅刻するのだから、絶望するのも当然なのだろう。
そして、KASTだけでなくモーニング帝国剣士や番長らも恐れた顔をしている。
その上。マイミですらも神妙な顔をし始めてしまった。
「まずいな……このままだとオカールは確実に激怒するぞ……
そうなったら私でもヤツを止められないかもしれない……」
130
:
名無し募集中。。。
:2016/03/07(月) 15:40:52
自分も遅刻魔なのにw
131
:
名無し募集中。。。
:2016/03/07(月) 21:49:31
オカールのキャラ的仕上りがw
ほかのメンバーもさらに気になってきたw
132
:
名無し募集中。。。
:2016/03/07(月) 22:18:43
なんかもう食卓の騎士がみなぶっ飛んだ性格になってるw月日がたつのは恐ろしい・・・
133
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/08(火) 12:58:15
アーリーが到着する前に会議の時間がきてしまった。
このまま待ち続けてもしょうがないので、一同はマイミの案内で作戦室へ向かうことにする。
正直言ってこれから出会うキュートが怖くて仕方がないが、この場面でビビったら何も始まらない。
勇気を振り絞れば乗り切れると信じて、扉を開けていく。
「遅くね?」
部屋に入った瞬間、帝国剣士と番長、そしてKASTらは獣に食い千切られるような激痛を感じだす。
瞬間的に狼が飛びかかり、腕に、脚に、腹に、そして首に噛み付くかのような「錯覚」。
これはオカールの放った殺気なのだが、
イメージやオーラと呼ぶにはあまりにもリアルすぎていた。
「こらオカール!せっかく来てくれたみんなになんてことをするんだ!」
「あ、そいつらがモーニングやアンジュの戦士なの?
……この程度の殺気でビビるようじゃ戦力にならなくない?
今は恵まれてるよな。このレベルで国の代表を気取れるんだから。なぁ?」
キュート戦士団の一員、オカールの発言に一同はプライドを著しく傷つけられた。
しかしだからと言ってどうすることも出来やしない。
反抗でもしようものならば、更に噛みつかれることが目に見えているからだ。
そんなオカールを止められるのは、同格の戦士しかいない。
同じくキュート戦士団の1人であるアイリが抑えようとする。
「ダメですよ〜オカール。 これでもベリーズを倒すために立ち上がってくれた戦士なんですから。
ここで心まで折ってしまったら、本当に使い物にならなくなるじゃない。」
口調こそオカールよりは丁寧だが、ひどく冷たい目をしている。
帝国剣士その他を認めていないのは明らかだ。
だが一同はオカールとは違う意味でアイリに反論することが出来なかった。
全員が全員イナズマに打たれたかのように、彼女の魅力にシビれてしまっているのである。
一目見るだけで、少し声を聞くだけで身体に電流が走る。
アイリを目指して戦士を志したトモ・フェアリークォーツは、特に痺れているようだった。
「ううっ……この下腹部がバチバチする感じが堪らない……癖になりそう。」
話は変わるが、この部屋にはオカールとアイリ以外にもう1人のキュート戦士団員が存在している。
ただ、そのメンバーは人見知りがひどいためになかなか中心に来ようとはしない。
ずっと隅っこにいようとしているのだ。
「おいナカサキ!お前もこっちに来たらどうだ。」
「ちょっと団長!そんな簡単に名前を呼ばないでよ!大勢に見られたら緊張しちゃうでしょ……」
マイミの「嵐」、オカールの「狼」、アイリの「雷」のようにナカサキだって特有の殺気を放っていた。
ところが、彼女のオーラはあまりにも特別。
珍妙すぎるイメージに、若い戦士らは驚愕してしまう。
「え?……なにあれ?」
134
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/08(火) 12:59:14
前作からキャラ変している登場人物も多いとは思いますが、
マロほど性格が変わったキャラは居ないと思いますw
135
:
名無し募集中。。。
:2016/03/08(火) 13:39:50
ナッキーだけはnkskちゃんのままだったかw
136
:
名無し募集中。。。
:2016/03/08(火) 19:22:17
下腹部バチバチあかんやろ…
137
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/09(水) 12:57:20
ナカサキの隣に妖精なのか怪物なのか分からない奇妙な生物がいるのを、一同は見逃さなかった。
怪物とは言ってもまるで凶暴そうではなく
少し押せば倒れてしまいそうな程に貧弱に見える。
こんな動物はこれまで目にしたことがないので
おそらくはナカサキの放つオーラによって具現化されたものだと推測できるが
他の食卓の騎士のそれと比較するとあまりにも弱々しく、威厳が感じられなかった。
その怪物を見慣れているのか、マイミは一切触れずに別の話題を持ち出す。
「そういえばマイマイはどうしたんだ? もう会議が始まるというのに……」
「マイちゃんはここには来ないよ……もう戦えないんだ。」
「えっ!?」
オカールの発言に、マイミだけでなく他の戦士たちも驚いた。
マイマイと言えばキュート戦士団の中で最年少の戦士。
引退にはあまりにも早すぎる年齢だ。
「どういうことなんだ?」
「アンタは帝国とかに行ってたから分からないかもしれないけどさ、
マイちゃんはメンタルをやられちまってるんだよ……ひどく落ち込んじゃって、もうずっと寝込んでる。
とてもじゃないけど、当分は戦えないんじゃないかな。」
「そんな!!」
考えてみれば当然のことだった。
これまで仲間だと信じていたベリーズに裏切られ、更に王までも攫われている。
絶望するなと言う方が無理な状況なのだ。
伝説の存在とは言え、二十歳前の女の子には少々キツかったのだろう。
「あの……ちょっといいですか?」
「どうした?ハルナン。」
全員が沈んでいるところに、ハルナンが発言を投げかけ始める。
はじめはみな、空気が読めていない行動だと考えたが
次に続く言葉を聞いた何人かは意図を掴み取ったようだ。
「キュート戦士団からはマイミ様、ナカサキ様、アイリ様、オカール様が本日の会議に参加されるのですね。
で、マイマイ様が欠席ですか。」
「あぁ、そうなるな。」
「モーニング帝国剣士は新人4名を除いた8名が参加します。 連絡が遅れて申し訳ございませんでした。」
この状況でハルナンが状況を報告することの意味をカナナンは理解した。
番長の責任者として、自分も報告を開始する。
「アンジュからは私カナナン、リナプー、メイ、リカコの4人が来ています。
タケ、マホ、ムロタンの3名は防衛任務のため欠席させていただきます。
同じく報告が遅れてすいませんでした。」
「お、おう……」
報告を受けたマイミだけでなく、その後ろにいるオカールも「欠席」するメンバーがいる事を受け入れているのを見て、
カナナンは心の中でガッツポーズをした。
マイマイが不参加である以上、「欠席」自体は責められることのない正当な行為なのだ。
となればKASTの責任者トモがやるべきことは見えてくる。
(そうか!アーリーも欠席ということにすればいいんだ!)
オカールは若手が欠席すると知ったら激しく怒るだろう。
先ほど見せた殺気を遥かに上回った殺意を振りかざすかもしれない。
でも、欠席だったら許してもらえるのは明らかだ。
ならばその線で押し通すしかないのである。
「あ、あの!KASTからは……」
「ダメよ〜。嘘ついたらバチが当たりますよ〜」
「!?」
話そうとした矢先にアイリが割って入ったので、トモは衝撃を受けてしまった。
しかも今回は痺れる程度では済まない、まるで電気SHOCK!に撃たれたかのように苦しい。
「え!?う、嘘って……」
「あなた、これから嘘つこうとしませんでした?」
「そんな!アイリ様の前で嘘なんて!」
「ふぅん、その割には心臓が弱ってるみたいだけどなぁ」
「え!?ええ!?」
138
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/09(水) 12:57:58
>>136
不適切でしたね……やり過ぎないように気をつけます。
139
:
名無し募集中。。。
:2016/03/10(木) 01:43:37
今回のナカサキの能力はリアル本人のネタや特徴を能力化したものなのか、それとも
妖精のような怪物の元キャラの能力の影響を受けたものなのか・・・
そしてナカサキの能力面以外でもいろいろ気になることが・・・
それらのその時が来るのをおとなしく待っときますw
140
:
名無し募集中。。。
:2016/03/10(木) 08:12:32
幻獣キュフフかな?
141
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/11(金) 12:49:43
「あなたのお仲間も心臓バクバクみたい。KASTに何かあったんですかね〜?」
まるで心の中を見抜くかのような言い振りをするアイリを前にして、トモは何も言えなくなってしまった。
いや、トモだけではない。 アイリとオカール、ナカサキを除く誰もが動揺している。
マイミですら髪が額に張り付くほどの汗をかいていることからも、
今後起こりうることのヤバさが容易に想像できるだろう。
「おいおいおい!なんだよ!嘘をつこうとしてたってのか!?」
オカールの怒声を聞いた一同は、完全に縮み上がっていた。
狼に喉元を容赦なく噛み切られる思いをしているのだから、ここで元気に居られるはずがないのだ。
アーリーの遅刻を正直に話すのはマズいが、嘘が暴かれるのはもっとマズい。
その時にはイメージではなく、本当に首を斬られかねない。
「なに黙ってるんだよ!言えよ!全然ワケわかんねぇな!!
騙そうとしてたのか!?だったら絶対に許してやんねぇ!
どうなんだよ!おい!どうなんだよ!!」
だが本当に真実を打ち明けるべきなのか?
そうして制裁を受けた場合、自分たちの心が完全に折れてしまうのではないか?
トモがそう葛藤しているうちに、部屋の扉が開かれる。
「ごべんなざぃ〜〜遅れちゃいましたぁ〜〜!」
扉を開いたのは、最悪にも少しの遅れで済んでしまったアーリー・ザマシランだった。
いつもの美人顔が台無しになるくらいにひどく号泣している。
ここで一同は死を覚悟した。
もはや言い訳など通用しない。後はオカールの怒りをただただ受け入れるのみ。
ただの威嚇で首を搔っ切られるのだから、こうなれば骨まで残らないのかもしれない。
イメージで何回殺されようがじっと耐えよう。そう考えたのだ。
ところが、オカールのとった行動は想像を超えたものだった。
「お……おい、大丈夫か?」
「うぇぇぇぇん!ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
「ほらほら泣かないで、いったいどうしたの?」
「あっちの方まで行っちゃったんです〜〜」
「あっちまで行っちゃったの?怖かったね〜もう大丈夫だからね〜」
「大丈夫?……」
「うん大丈夫大丈夫。落ち着いてきた?」
「ちょっと……」
「よし、もうひと頑張りだ。」
トモは、サユキは、カリンは、そして他のメンバーらは信じられないといった顔でポカンとしていた。
てっきり激怒して暴れ回るかと思いきや、オカールは泣き叫ぶアーリーをあやし始めたのだ。
普段から小さい子供に囲まれて生活するオカールから見れば、アーリーは大きい赤ちゃんのようなもの。
ならば泣き止むように努めるのは当然のことなのである。
そんな一面を知らず呆気にとられているトモの肩をポンと叩いて、アイリがボソッと呟く。
「だから言ったでしょ〜? 嘘はダメですよ、って。」
「は、はい!……なんか、自分が恥ずかしいです。」
「うふふ。気にしないで。」
142
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/11(金) 12:52:33
ナカサキに限らず、キュートの戦闘シーンはまだずっと先かもしれません。
戦うには同格の敵が出てこないといけませんしね。
143
:
名無し募集中。。。
:2016/03/11(金) 15:51:38
なんかほっこりした♪
Dマガで見たことあるシーンだw
同格の相手というと・・・
144
:
名無し募集中。。。
:2016/03/12(土) 10:51:50
ナカサキのオーラが出した怪物はきっと快獣ブースカw
145
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/14(月) 00:35:48
更新ストップしちゃってごめんなさい。
次回更新は月曜の夜頃になります
146
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/14(月) 23:51:24
アーリーを泣き止ませたところで、オカールはドカッと椅子に座り出す。
優しい先輩でいるのはここまでだ。
卓に着いてからは敵の殲滅のみを考える戦士の顔になっていく。
「全員揃ったわけだし、そろそろ作戦会議を始めようぜ。
ベリーズをメッタ切りにするためのなぁ!!」
かつて共に戦った仲間に対してそんなことを言うオカールを見て、
「フクちゃんがこの場に居なくてよかった」とサヤシは心から思った。
食卓の騎士の大ファンである王にはとてもじゃないが聞かせたくない言葉だ。
だが、今のベリーズは英雄である以前に王を連れ去った大犯罪者。
オカールが苛立つのも無理もないかもしれない。
「……アイリが議長を務めろよ。頭良いんだろ。」
「はいはい、じゃあ何から話しましょうかねぇ。」
「んなもんベリーズのぶっ倒し方からに決まってるだろ!馬鹿か!?」
「……」
結局、進行はオカールによって強引に行われることとなってしまった。
だがこのテーマは若手戦士たちにとって非常に興味深いものだ。
怪物のようなベリーズを倒すための糸口が見えるかもしれない、そう思うと勇気が湧いてくる。
カナナンもヤッタルチャンなようだった。
「いいですねぇ、それではアンジュの詳細な戦力から紹介しましょうか。」
「アンジュの?あー、いい。そんなのはいい。」
「へ?でも誰がどれだけ強いか分からないと、作戦はたてられないんじゃないですか?……」
「そっか、まだ分かってないんだな。」
「?……」
オカールは立ち上がっては机をバン!と叩く。
そして一同の注目を集めたところでこう言い放ったのだ。
「作戦はこうだ。キュートの4人でベリーズ4人をぶっ潰す。
残りのベリーズ2人をお前ら全員で死ぬ気で倒せ。
キュートも余裕が有ったら助けてやる。以上。」
オカールの示した戦法はとてもSHOCK!なものだった。
キュートがベリーズと戦うくだりはまだ良い。
問題なのは帝国剣士、番長、KAST全員合わせてベリーズ2人分としか認めてもらえてない点である。
少なくともこの場には16人の優秀な若手が揃っている。
それらの力を総動員したとしても2人分だと言うのだろうか。
「はは……確かに言えてますね……」
ここで口を開いたのは帝国剣士のカノンだった。
とても不本意ではあるが、そう言わざる得ない理由があった。
「だって、仮にこの場でオカール様とアイリ様の2人を倒せって言われても全然イメージ湧かないもん。
たぶん私たちのうちの何人かを犠牲にしないと戦いにすらならないと思う。
それだけレベルの違う相手なんだよ……
まだベリーズ2人を倒せるって言ってもらえるだけ好評価なのかもしれない。」
「お、よく分かってんじゃん。まぁちょっと違うけどな。」
「え?……」
「倒せるとは思ってない。よくて相討ちだろ。」
「!!」
一同は悔しくって悔しくってぶち壊したい夜がある程の思いだったが、
正論ゆえに何も言うことが出来なかった。
伝説同士の戦いに参加するだけでも奇跡なのかもしれない、そう思っていた。
しかし、1人だけはそう考えていない。
「違うぞオカール!」
「あぁ!?何言ってんだよ団長!」
「ここに居るみんなだって立派に戦える。やりようによっちゃキュートだって凌げるさ!」
147
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/15(火) 23:25:19
「……根拠はあんのか?」
悲しいかな、この場にいる殆どがオカールに同調していた。
キュートより活躍出来るとか言われても、所詮リップサービスにしか聞こえないのだ。
だがマイミの言葉に嘘は一つも無かった。
「我々キュートに無くて、彼女らに有るもの……それはなんだと思う?」
「は?そんなの有るワケねーだろ。 強いて言うなら若さか?」
「そう!彼女らには若さが……」
「なるほど!私たちと違ってベリーズに手の内を知られてないってことね!」
「……ん?」
答えようとした矢先にナカサキが割り込んできたので、マイミはキョトンとしてしまった。
これでは団長としての示しがつかないので、再度ビシッと言うことにする。
「違うぞ、元気ハツラツな感じが……」
「そうか、若い子たちの必殺技を波及的に当てれば流石のベリーズも倒れるはず。」
「……いや、アイリ、そうじゃないんだ。」
今度はアイリが言葉を被せてきたので、マイミもタジタジだ。
次こそは掻き消されないように、大声を出そうとする。
「若い力で!気合を!入れれば!……」
「そういうことか!!!じゃあ全員が必殺技を使えるように猛特訓しなきゃなあ!!!」
「……」
オカールまで大声で邪魔してきたのでマイミはひどく落ち込んでいく。
嵐のようなオーラもいつの間にか梅雨のようにジメジメしてしまっている。
だが、(マイミの本意ではないとは言え)敵に対抗する指針は見えてきた。
ベリーズが把握していない新世代の台頭こそが勝利の鍵となるのである。
ところが、当の帝国剣士や番長、KASTらは一抹の不安を感じていた。
キュートの作戦を実行するには明らかに不足しているものがあったのだ。
「あのっ、私たちを活用してくれるのは嬉しいのですが……
必殺技なんて、使えない戦士の方が多いですよ?」
ハルナンの言葉に、若手らは頷いた。
ハル・チェ・ドゥーや、一部の実力を隠している者は既に必殺技を習得しているが、
全体で見たらまだまだ使えないメンバーの方が圧倒的に多いのだ。
そんな自分たちを必勝作戦の勘定に入れられては困るのである。
そんな一同を見ながら、オカールがまたぶっきらぼうに言い放つ。
「なんだよ、まだ分かってないんだな。」
「……何が、ですか?」
「やれって言えばやれ!必殺技が使えないんなら死ぬ気で覚えろ!」
「で、でも一刻一秒が惜しい状況ですし、特訓する時間なんて……」
「時間なら有るだろ。」
「えっ?」
「ベリーズの奴らを探しながら覚えるんだよ!
アチコチ走り回りながら身体を鍛えろ!心を磨け!
そしてベリーズを見つけたらすぐに必殺技をぶちかませ!
分かったか!!」
148
:
名無し募集中。。。
:2016/03/16(水) 05:59:40
オカール超スパルタwでも前大戦を勝ち抜いただけ説得力あるわ…
149
:
名無し募集中。。。
:2016/03/17(木) 03:07:01
精神と時の部屋でキューティーサーキットが出来れば
たった1日でもかなりの成長ができるんだけどな
150
:
名無し募集中。。。
:2016/03/17(木) 06:20:31
時間があるなら帝国の地下を探索するって手もあるけど…まず生きて帰って来れないなw
151
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/17(木) 08:29:05
無茶だが無理ではない。
何よりも王を救うという目的を果たすにはそれしかないと理解していた。
全員が覚悟を決めたのを理解したナカサキは、一枚の地図を出す。
「探すと言ってもアテが全くない訳じゃないわ。
目撃情報によると、ベリーズはアリアケに向けて馬を走らせている。」
アリアケ、そこは海に面した町であり、
コロシアムと言われる大型の闘技場があることでも知られている。
「船にでも乗って逃げられたら厄介なのよね……一気に捜索範囲が広がっちゃう。
だから私たちはそれよりも早くベリーズを捕まえる必要があるの。
会議が終わったらすぐに追いかけるけど、準備は出来てる?」
このナカサキの問いに対して頷かない者はいなかった。
大急ぎでアリアケに向かいながら、必殺技を覚える。
やる事はたくさんあるが、やるしかない。
「あ、でも待ってください。ナカサキ様。」
「なに?ハルナン。」
「モーニング帝国には4人のやる気ある新人が残されています。
その子たちも必ず役に立つと思いますので、迎えに行っても宜しいでしょうか?」
「えっと、新人でしょ? 言っちゃ悪いけど戦力になるの?」
「ベリーズ相手は厳しいかもしれませんが、活躍の場は有るはずです。
例えば、モモコの部下と思われる少女たちを抑えるとか……」
「なるほど、団長が言ってた例のカエル使い達ね。」
連合軍の敵はベリーズだけではない。 リサ・ロードリソースら「モモコ一派」もその対象なのだ。
もしも彼女らに妨害されたらベリーズと戦うことすらままならない。
そこで新人の力が活かされるのである。
「でも大丈夫? カエルを見て腰を抜かしてたんじゃなかったっけ。」
「そこは頑張って克服してもらいますよ。」
「そんな時間どこにあるの?」
「決まってるじゃないですか。"ベリーズを探すまでの時間"です。
多少厳しくはなりますが、ショック療法で動物大好きっ娘。に育て上げて見せますよ。」
152
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/17(木) 08:30:24
密度濃い特訓をするのは重要ですが、地下は濃すぎますねw
153
:
名無し募集中。。。
:2016/03/17(木) 18:09:29
地下は色んな意味で濃そうだw
ウィザードリィで言えばB1でいきなりグレーターデーモンの群れに遭遇するようなもんだしなぁw
154
:
名無し募集中。。。
:2016/03/17(木) 22:14:16
むしろ死神に遭遇するレベルじゃね?
殺すなと先に言っておかないと即死確実
155
:
名無し募集中。。。
:2016/03/19(土) 23:16:28
ガキダナーの中の人が新曲で「子供だね」ってw
156
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/20(日) 10:46:37
そうなんですか!これからひなフェスなので意識して聞いてみますw
今日の更新もチャンスが有れば会場から……
157
:
名無し募集中。。。
:2016/03/20(日) 13:24:58
外伝を書きたいがネタを作者さんが伏線や隠し玉にしてる可能性を考えると迂闊に書けないw
あと半年くらいは様子みないとだな
158
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/20(日) 18:49:30
すいません、諸事情で更新はまだ先になります。
今夜中には書きます。
>>155
このシーン見ましたw
結果的に名前の由来が増えましたね。
>>157
被りとか気にせず是非書いてください!
たとえ被ったとしても、本編を変更することは無いと思いますしね。
159
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/20(日) 22:57:28
その後も会議は続き、必要な情報が出揃ったところでマイミが立ち上がった。
もうさっきのようには凹んでいない。 総大将らしき凛々しい顔をしている。
最後の仕上げとして全員を鼓舞する役割が彼女には残されているのだ。
「各国からこれだけの精鋭が揃ったんだ。私達なら絶対にやれる!
踊るように、歌うように、熱狂しながら戦おうじゃないか!」
『Dancing! Singing! Exciting! オー!!』
鬨の声をあげた結果、戦士たちのテンションは最高潮に達した。
まだまだ課題は多いが、この分ならやり遂げることが出来るだろう。
熱が冷めないうちにアンジュの番長やKASTらはアリアケへと向かう準備を始める。
マイミだってそのつもりだ。
「頼もしいな!よし、私もすぐに馬を手配して……」
「あのー」
「なんだ?君は確か……」
「マーチャンです。」
このタイミングでマーチャン・エコーチームが声をかけてきたのでマイミは驚いた。
「どうしたんだ? 早く行かないと置いてかれるぞ?」
「えっと、キュートさんの武器、ボロボロじゃないですか?」
「!」
マーちゃんの指摘にマイミだけでなく、ナカサキやアイリ、オカールもピクッとする。
これは武器を悪く言われて怒っているわけでは決して無い。
職人でもなければ気づけない痛みに着眼したことについて関心しているのだ。
「よく分かったな。確かに我々の武器は手入れが行き届いていない。
メンテナンスがまったく出来ない状況にあるんだ。」
「どーしてですか?やればいいのに。」
「ははは、そうだな。やればいいだけだな。だがそういう訳にもいかないんだ……
この武器は特別製でね、『彼女』以外が調整するのは難しいようになってるんだよ。」
「?」
「『DIYの申し子』のことを知ってるかな?」
「あ!……でもその人って!」
「そう、申し子とはベリーズ戦士団の『チナミ』のこと……悔しいが、我々の敵だよ。」
160
:
名無し募集中。。。
:2016/03/20(日) 23:09:55
チナミwwたしかによく里山出てたな
はるなんもけっこう出てたよね
161
:
名無し募集中。。。
:2016/03/20(日) 23:25:30
そっかチナミも敵なんだな…武器が修理出来ないのは辛いな
てかマイハは今回の件に絡んでないのか?薬師も向こう側だとマイミ以外の怪我も治すの大変なんだな
162
:
名無し募集中。。。
:2016/03/21(月) 01:33:05
DIY♡のメンバーかつプライベートで少しだけDIYやってたことがあるらしいナカサキもさすがに職人チナミの武器には歯が立たなかったか
まぁSATOYAMAではDIY方面の活躍は全くなかったもんな
そして千奈美はDIY人員として大活躍してたな
配役の妙恐るべしw
163
:
名無し募集中。。。
:2016/03/21(月) 01:47:21
ピザ窯を作ったのにピザを食わせてもらえず未だに恨んでいる人がいるらしい…
164
:
名無し募集中。。。
:2016/03/21(月) 03:34:59
マロ・・・
165
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/22(火) 07:42:48
ベリーズ戦士団のチナミは本人の技術力もさることながら、
数多くの職人たちを取りまとめる「棟梁」としての面も評価されていた。
持ち前のコミュニケーション能力によってどんな気難しい職人とも心を通じあわせることが出来るため、
自国で製造される武器の品質を加速的に向上させることに成功していたのだ。
だが今のマーサー王国にはチナミはもういない。
食卓の騎士の武器の整備についてはチナミに一任されていたので、
たとえ故障したとしても簡単に修繕することが出来ないのである。
「こんなボロでも私たちにとっては使いやすいんだ。
新品の既製品を使うよりずっとね。」
そう言うとマイミは自身の愛用するナックルダスターをじっくりと見せてくれた。
確かに優れた造りではあるが、食卓の騎士の戦いについてこれず、あちこちダメになっている。
これでもキュートが強いのには変わりないが、ある程度はパフォーマンスが落ちるだろう。
それは良くないと思ったマーチャンが、ある提案をする。
「キュートさんの武器、マーチャンが見ていいですか?」
「?……君なら治せるというのか?」
「たぶん。」
マーチャンがそんなことを言うものだから、近くで見ていたハルはギョッとする。
そして慌てて止めに入るのだった。
「マーチャンなに余計なこと言ってるんだよ!
すいません皆さん、この子の言うことは気にしないでください……」
ハルが必死にフォローをしたがもう遅い。
話の全てをオカールに聞かれてしまっていた。
「面白いじゃんか。ちょっとだけ待ってやるから修理してみな。
ただし、キュートの時間を奪ってるってことは自覚しろよ?
『やっぱり無理でした』じゃ済まないことは分かってるよな?」
「……はい。」
「よし、よく言った。じゃあ案内してやるよ。
もう使われていない『ベリーズ工房』にさ。」
166
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/23(水) 08:40:34
マーサー王国きっての武器開発施設である『ベリーズ工房』にて、
マーチャンはキュート戦士団らの武器を修理することになった。
許された時間はたったの1時間。
期限内に完了しなかった場合、たとえ作業途中でもキュートは出発を開始することとなっている。
そうでなくてはベリーズらを取り逃がすかもしれないのだから、当然だろう。
そして、そうなった時はマーチャンがどんな罰を受けるのか想像するのも恐ろしい。
そのため、新人剣士を迎えに城へと戻るハルナンを除いた残りの帝国剣士らは、マーチャンを見守ることにした。
いざという時は身を挺して仲間を守る思いなのだ。
「それで、私たちKASTと番長たちが先にアリアケに向かうことになったワケか。」
馬を走らせながら、トモ・フェアリークォーツが喋っていた。
番長であるカナナン、リナプー、メイ、リカコと
KASTであるトモ、サユキ、カリン、アーリーの使命はいち早くアリアケに到着してベリーズを見つけ出すこと。
もちろん交戦となった場合は命を懸けなくてはならない。
恐ろしいが、やるしかないのだ。
「なんか変な感じだね、あの時の敵同士がこうして肩を並べて走ってるなんてさ。」
サユキは、数ヶ月前の選挙戦で直接対決したリナプーを横目で見ながらぽつりと呟く。
両陣営は当時、フク側とハルナン側に分かれて激しい戦いを繰り広げていたのだから、
今、同盟国として目的を共にするのは確かに奇妙な感じもする。
声をかけられたリナプーも、サユキを不思議そうな顔をして見ていた。
「最近のお猿さんは馬に乗れるんだ……!」
「いつか本当に潰すからな。」
元は敵だった者同士のやり取りがとても可笑しかったのか、
メンバーのうちの一人が声をあげて笑い出してしまった。
「んんんんんんんんんん^o^」
「「「「!?」」」」
奇怪な声が聞こえてきたので、KASTの4名はひどく驚いた。
突然の敵襲かもと思い、警戒して辺りを見回していく。
「い、いまの奇声は!?」
「あー、いや、なんでもないねん。」
「ぶひ。」
「黙ってなさい。」
167
:
名無し募集中。。。
:2016/03/23(水) 11:25:12
もしや…いまだセリフの無いあの子か?w
168
:
名無し募集中。。。
:2016/03/23(水) 23:04:48
石鹸がうんたらの子だっけ?
169
:
名無し募集中。。。
:2016/03/24(木) 01:36:08
ブログ見てきなされ
170
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/24(木) 12:53:42
「あ、あの人達の声かも!?」
奇声の正体を知らないアーリーは、馬を走らせる延長線上に突っ立ている二人を指差した。
声の主当てクイズとしては不正解だが、謎の人物の登場に一同は注目する。
「なにあれ、怪しすぎない?……」
サユキがそのような感想を抱くのも当然だった。
2人のうち片方はどこにでも居そうな短髪の少女なのだが、
そちらではない低身長の女性の方は、人間とは思えない見た目をしていたのである。
「天使……さん?」
カナナンの言う通り、その女性には真っ白な天使の羽根が生えていた。
初めは作り物の羽根ではないかと疑ったが、ちゃんとバッサバッサと羽ばたいている。
しかも、よく見ればその天使は少しだけ浮いているようにも見える。
疑いの余地のない事実に一同は目を丸くすることしか出来なかった。
どうにかして正体を突き止めたいと思っていたところで、
天使の方から挨拶をし始めていく。
「どうも〜ホワイトマナカんこと、マナカ・ビッグハッピーでーす。で、こちらが」
「マイ・セロリサラサ・オゼキングです。」
「気軽に"マナカん"と"マイちゃん"って呼んでくださいね〜」
にこやかな笑顔で自己紹介する天使マナカンを、番長およびKASTはひどく警戒していた。
この2人の所属に関して心当たりがあったのだ。
「あんたら、モモコの部下やろ。」
「えっ!?なんで分かったんですか〜!?」
「こんなだだっ広い草原で友達になろうとする奴なんておらへんやろ!」
「あ!確かにそうですね。」
「モモコの部下ならカナ達を足止めしようと思ってもおかしくないしな。」
「うん。うん。大正解です。じゃあ早速始めましょうか。」
「8対2でか?……いや、リサ・ロードリソースみたいに1万の味方がいたりとか……」
「そんなにいませんよ〜!……せいぜい1000羽がやっとです。」
マナカがそう言った次の瞬間、カナナンの身体が一気に上空へと飛ばされる。
いや、連れてかれたという方が正しい。
「なっ!?こ、これは……」
「今夜天国に連れてってあげますからね〜」
171
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/24(木) 12:55:09
奇声の主はみなさんが思っている人物で合ってますよ
ブログの特徴的な文章をもっと研究しますw
172
:
名無し募集中。。。
:2016/03/24(木) 14:46:16
大福きたーー!
173
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/25(金) 08:53:19
気づけばカナナンの周りには無数の白いハトが集まっていた。
それら1羽1羽がクチバシで服を掴み、天高くへと連れて行ったのである。
鳥の力は人間とは比べてとても微弱であるが、このハト達は戦闘用に訓練されている。
それらが100羽も200羽も集まれば痩せ型の女性を10メートル程度持ち上げることくらいは容易い。
合計1000羽の鳥類、総称して「PEACEFUL」を自在に操るのがマナカ・ビッグハッピーの能力なのだ。
「カナナンを放せ!」
鳥の操り手がマナカだと判断したメイは、カナナンに危害が及ぶ前にカタをつけるべく飛びかかった。
食卓の騎士の1秒演技をして白ハトに直接ダメージを与えるという線も無くはなかったが、
それが影響してカナナンを地に落とされてはたまったものではない。
だから飼い主兼調教師のマナカにねらいを定めたのだ。
ところが、マナカにはあらゆる直接攻撃が届かなかった。
「ごめんなさいね。」
「!」
天使の羽根を大きく羽ばたかせながらマナカは天まで登る。
よくよく見てみれば白い翼は天使の羽根などではない。
白いハトが何匹も集まって、そのように見えていただけのことだ。
だがそんな単純なトリックでも効果は十分。
攻撃の届かぬ位置まで上がったマナカに弱点は無いのだ。
「カナナンさん、天使になった気分はいかがですか?」
「最悪や!今すぐ放せ!!」
「え〜?残念だけどしょうがないですね。
ハトさん達〜カナナンさんのお望み通り、今すぐ放してあげて〜」
「え?ちょっ、おい!」
地上10メートルという高さで、鳥たちはカナナンを掴むのを止めてしまった。
つまり、無慈悲にも突き落とされる形になったのだ。
打ち所さえ悪くなければ死ぬことのない高さだが、激痛で悶え苦しむのは避けられない。
番長の司令塔の役割を担うカナナンをここで戦線離脱させる効果は大きいだろう。
ところが、アンジュの番長たちだって黙って見ているはずがなかった。
特に新人番長は、カナナンがいつ落ちてきても良いように準備していたのだ。
「え!?あれは……シャボン玉……?」
カナナンが落ちる様を見るべくマナカが下を見下ろせば、そこには人間よりも大きなシャボン玉が膨れ上がっていた。
しかもそのシャボンは特別製。
理科番長リカコの研究の末、簡単に割れないように粘着性を大幅に強化したものなのである。
それがクッションとなり、カナナンはほとんど無傷で着地することに成功する。
「カナナンさんんんんんんんん。」
「ナイスやでリカコ。ちょっと液がベタベタしすぎるのが玉に瑕やけどな。」
自分の思惑通りにコトが進まなかったので、空にいるマナカはチッと舌打ちをした。
そして、計画のズレを修正するための計算を開始する。
マナカは人を持ち上げるのも得意だが、計算も大得意なのだ。
「あんな子、データに無かったけどなぁ……
まぁいい。私とマイちゃんの力を合わせれば絶対に勝てるはず。」
174
:
名無し募集中。。。
:2016/03/25(金) 12:06:48
人を持ち上げる(物理)
175
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/28(月) 09:31:57
「今のなに!?おっきいシャボン玉だったね!」
マナカが苦悩する一方で、その仲間であるマイは目をキラキラと輝かせていた。
リカコのひと吹きであっという間に膨れ上がった巨大シャボンに興奮しているのだ。
マイは戦士とは言ってもまだ幼いため、目的を忘れてしまうコトが多々あるのである。
「ちょっとマイちゃん!?はしゃいでる場合じゃないよ!」
「あ、ごめんごめん。」
「マイちゃんはシャボン玉の子を仕留めて……そしたら私を妨げる子はいなくなるから。」
「はーい。」
そう言うとマイはリカコの方を向き、獲物を狙うような獣の目をし始めた。
ここにはリカコ以外にも敵は複数いるのだが、それでも任務を遂行しきる自信があるように見える。
当然、番長やKASTらはそれを許すわけにはいかないが。
「させないよ!……ベリーズと戦うには誰一人欠くわけにはいかないんだから。」
カリンはリカコを守るべく、マイの前に立ちはだかる。
そして他の仲間も同様にリカコを取り囲むような陣形を取り始めた。
マナカによる空中からの落下を防ぐにはシャボンのクッションは必要不可欠。
ゆえにリカコさえ守り通せば大きい損傷を受けることはないと考えたのである。
だがマナカだってモモコに認められた戦士。
持ち上げて落とすしか能が無い訳ではなかった。
「そんな陣形、すぐ崩してあげますよ。
クチバシの雨あられなんて味わったこと無いでしょう?」
マナカが合図を出すことで、計200羽の白ハトが五月雨のように一同に襲いかかった。
硬いクチバシでガンガンと叩かれるので、喰らう方は堪ったものじゃない。
そんな中、トモ・フェアリークォーツはこの状況でも怯まずにしっかりと弓を構えていた。
彼女だけはリカコを守るよりも、宙に浮くマナカを撃ち落とすことを最優先に考えていたのである。
「モモコ一派のこと、だいたいわかったよ……動物を味方につけるのがアンタらのやり方なんでしょ?
リサ・ロードリソースって奴もカエルを操ってたみたいだし、
きっとそこのマイもそうなんだろうね。大方、ヘビでも操るのかな?
でもさ……いくら動物が強くても飼い主がいなきゃどうにもならないよね。
だから私はお前を射抜く!覚悟しな!!」
トモの判断は概ね正しかった。
リサが武器にする両生類や、マナカが武器にする鳥類が強いのは事実だが、
それは操り手の指示があってこその話。
リサやマナカを戦闘不能にしてさえしまえばそれでお終いなのだ。
ところが、トモの考えには一つだけ誤りがあった。
それは、マイ・セロリサラサ・オゼキングの操る動物の種類だ。
「ヘビじゃないんだよ、爬虫類を操る子はもう居なくなったんだ。」
「え!?……(いつの間に、上に!?)」
さっきまである程度の距離をとっていたマイが、
一瞬にして頭上まで来ていたので、トモは驚かされた。
そしてガードする間も無く、後頭部へと蹴りをぶつけられてしまう。
「ぐっ!!……」
「マイが操るのは哺乳類……マイはマイ自身を操るんだよ。」
176
:
名無し募集中。。。
:2016/03/28(月) 11:19:40
ヘビの子はもういないか…
177
:
名無し募集中。。。
:2016/03/28(月) 14:07:34
もういないのか…胸がチクチク痛むな
178
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/29(火) 09:11:02
通称モモコ一派、正式名称"カントリーガールズ"。
リサやマナカなど、所属メンバーのほとんどが動物を利用した戦法をとっているが、
例外的にマイ・セロリサラサ・オゼキングだけは己の肉体を武器にしていた。
彼女の実父は優れた戦績を誇る戦士であり、
その遺伝子を濃く受け継いだことで、カントリーガールズ屈指の肉体派となったのである。
しかもマイは父から徹底的なコーチングまで受けている。
その結果として、マイの武器である哺乳類「マイ(自分自身)」には二種類の形態が存在していた。
「知ってる?人間の身体って細胞で出来てるんだよ?」
たった今トモを蹴り倒したばかりだと言うのに、既にマイはリカコの背後に移動していた。
全員でリカコを取り囲んでいたはずなのに、何故ここまでの接近を許してしまったのか?
それはマイが跳躍したからだ。
番長とKASTは前方、後方、そして横方向からの侵入を防ごうとしていたが、
マイはそれらではない上方向からやって来たのである。
マナカの操る無数の鳥による攻撃に神経を注いでいたこともあって、簡単に近づかれたのである。
そして、驚くべきはマイの異常なまでのジャンプ力とスピードだ。
「今のマイの細胞はね、だいたいウサギと同じなんだってさ。」
マイは父からウサギ(と、もう1匹)の戦い方を教え込まれていた。
その甲斐あって現在では実物の動物と同等か、それ以上の能力を戦闘で発揮することが可能となっている。
一瞬にして距離を詰めたのも、強烈な蹴りを放ったのも
マイがウサギ以上にウサギの力を体現しているからに他ならないのである。
そして今もこうしてリカコを蹴り倒そうとしている。
「君とは友達になれたかもしれないけど、ごめんなさいね。」
跳躍や移動に使う脚の筋力のすべてを破壊力へと変換し、
マイは力強い蹴りをぶちまける。
いかにも線の細そうなリカコはこれで倒れるだろうと、マイは確信していた。
「決まった!……あれ?」
蹴りの決まった感触は確かにあった。
しかし、その対象が異なっている。
リカコに当てようとした蹴りは、カリン・ダンソラブ・シャーミンのお腹で防がれていたのだ。
「え?……さっきまでそっちにいたはずなのに……」
「言ったでしょ?誰一人、欠く訳にはいかないって。」
渾身の一撃を受けても平気な顔をしているカリンに恐怖しながらも、
それをごまかすようにマイは反論する。
「それはもうダメなんじゃないですか!?だってもうトモって人はマイが倒したし!」
「トモはあの程度じゃやられないよ。」
「え!?」
後方で物音がしたので、マイは背筋を凍らせた。
そちらは後頭部に強い一撃をぶつけたトモが寝ているはずの場所だったからだ。
「君さぁ、戦う相手間違ってるよ。」
「!?……(ほ、本当に生きてる!)」
「肉体が自慢なのはいいんだけどね、それは私たちKASTも同じなんだ。
こっちには私みたいな鬼がいる。猿もいる。大女もいる。
……そして"サイボーグ"がいる。」
「さ、細胞?なんですか?」
「ぶっちゃけ勝ち目ないよ、諦めな。」
179
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/29(火) 09:13:30
前スレでも少し書きましたが、爬虫類を操るウタ・ハッピーソングの登場予定はありませんね。
脱退の理由が語られることもないと思います。
180
:
名無し募集中。。。
:2016/03/29(火) 12:33:04
出ないと分かっていたけど…うたちゃん
鬼女って自分で言うのかよwそれにしてもKAST強くなったなぁ現在と一緒で(フルーツ)ジュース封印したからかな?
181
:
名無し募集中。。。
:2016/03/29(火) 13:09:02
改造手術を受けたのか??
182
:
名無し募集中。。。
:2016/03/30(水) 00:06:02
それだと前回のマツーラと変わんないから何か別の意味でサイボーグ感出してくるんじゃないか?
183
:
名無し募集中。。。
:2016/03/30(水) 01:42:52
サイボーグはカリンでしょ?
184
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/30(水) 08:56:46
「ひどい!大女ってひどい!」
「トモまで猿って言った!!」
「ちょっと、そこは軽く流してよ……」
トモが勝手につけた異名に、KASTの面々はカンカンだ。
この仲間割れの隙をついて、マイはリカコを狙おうとするが
KASTの中で唯一、つけられた異名を気に入っているカリンに服を掴まれてしまう。
「えへへ、サイボーグだってー」
(この人、やっぱり私のスピードについていってる!)
カリンはサイボーグ。
とは言っても本当に身体が機械で出来ているという訳ではない。
かつてサイボーグと呼ばれた傭兵は全身を鋼鉄で強化していたが、
カリンの肉体は正真正銘、生身のものだ。
ではどの辺りがサイボーグなのか?
その理由は、ジュースを捨てたカリンの本来の能力にあった。
「離してくださいよ!えい!」
マイは超至近距離からの蹴りをカリンの腹へとぶつけていく。
さっきは耐えられてしまったが、同じ部位への2発目はさすがに有効と考えたのだろう。
しかしカリンの表情は少しも曇ったりはしない。
瞬き一つしないのだ。
「え?……痛くないんですか?」
「うーん、よく分からないかな。」
「な、なにそれ……」
人は高揚すると脳内麻薬が分泌されて痛みを感じにくくなるものだが、
カリンのそれは人一倍効果が強かった。
機械が痛がらないのと同じように、戦闘時のカリンは常に無痛なのである。
グレープジュースを飲んで脳機能がおかしくなった時はこの特性が弱体化しがちだが、
今のカリンはシラフのまま。
ゆえにウサギの蹴り程度では苦しむこともない。
(こんな人、相手にしてらんない!)
「あっ、行っちゃダメ。」
カリンを恐れたマイは脱兎の如き速度で逃走を図るが、
またも回り込まれて、今度は正面から両腕を掴まれる。
まるでカリンだけ時の流れが速くなっているようだ、とマイは思った。
数ヶ月前まではカリンは味方のサポートばかりしていたので今回のスピードファイターっぷりは見られなかったが、
幼い頃から訓練を受け続けてきたカリンにとって、この速度で動くことくらい朝飯前なのだ。
その速さは、カリンに内蔵されている時計が「チクタク」と進んでいるようだと形容されている。
その辺りもサイボーグと呼ばれる所以なのかもしれない、
(もう!この人、本当に邪魔だなぁ!!
だったら上に逃げてやる!!)
マイはウサギの跳躍力で上方向へとジャンプすることでカリンを振り切ろうとした。
耐久とスピードに優れたサイボーグでも、マイを掴む腕の力までは強くないと気づいていたので、
今度こそ本当に邪魔者から逃れられると踏んだのだ。
サイボーグに飛行機能まで備わっていたら万事休すだったが、幸いにもそれは無かった。
もっとも、それで逃げられるほどKASTは甘く無いワケだが。
「リンカ、ここからは私に任せて。」
「!」
185
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/30(水) 08:57:40
マイが跳びあがった上方向には、既にアーリー・ザマシランの腕が伸びていた。
そしてカリンとは比較にならぬ程の握力でマイの両肩を掴み、宙ぶらりんにする。
アーリーはたまたまここに居たわけではない。マイが上に跳ぶしかないことを予測していたのである。
カリンがアレコレ手を尽くしたので、マイの退路は自ずと限定される。
ならばアーリーはその先に手を置いてやれば良いだけ。
この詰め方はさしずめ将棋のよう。
マイのCHOICEもCHANCEも読まれていたということだ。
その様子を上空から見ていたマナカは、不思議に思う。
(あのアーリーって人は戦略とは無縁と聞いていたけど……話が違う?)
敵を囲むだけの視野の狭い戦い方をするアーリーはもういない。
ジュースを飲まない選択をしたアーリーの視野はすべてを見渡すほど広いのだ。
だからこそKAST、そして番長のためにすべき次の行動が見えている。
それはマイをぐるんぐるんにブン回して鳥を追っ払うことに他ならなかった。
「とりゃーーーーー!!」
「いやあああああああ!」
両肩を掴んだまま、ジャイアントスイングをするかのようにマイを振り回すことで
無数に集まる鳥たちを散らしていく。
これはマイにダメージを与えつつも、味方のサポートまで可能な攻撃手段だと言えるだろう。
そして決定打を与えるべく、アーリーはマイを掴む手を解放する。
「キー!飛ばすよ!」
「はいよ!」
大回転による遠心力のおかげでマイは激しい勢いで吹っ飛ばされてしまったが、
サユキ・サルベの自己流カンフーの飛び蹴りは、その勢いすらも越えていた。
連日の早朝ランニングの結果、サユキの身体はジュースを飲まずとも十分に軽くなっている。
持ち前の猿のようなすばしっこさも相まって、空中戦はお手の物なのだ。
そんなサユキの蹴りを受けたマイは、無惨にも地に落とされることとなる。
「くそぉ……」
これだけの猛攻を受けてもまだ意識があるのは日々の訓練の賜物なのだろうが、
むしろマイはプライドの方をひどく傷つけられていた。
今まで体術で遅れをとった経験なんて数えるほどしか無かったので、相当悔しがっているのである。
「マナカちゃん……ごめん。」
「マイちゃん!?なんで謝るの?」
「そのリカコって子を倒すのさ……後回しにしてもいい?」
「そういうことね……マイちゃんの好きにしていいよ。」
186
:
名無し募集中。。。
:2016/03/30(水) 14:16:39
無痛ってサイボーグってよりもゾンビじゃ…この作者の事だからきっと終盤かなりエグいシーンがでてきそうw
それにしてもこれだけのネタ入れられるの凄いわ First Squeeze!網羅してるんじゃないか?
187
:
名無し募集中。。。
:2016/03/30(水) 17:17:07
無痛ゾンビの倒し方はだいたいお約束なわけだが…
そんなテンプレ展開になるのかどうかも楽しみだ
188
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/31(木) 12:58:20
仲間の意思を汲み取ったマナカは、KASTの相手をマイに任せることにした。
となると天敵リカコのいる番長の相手をする形になるわけだが、
500の白ハトを従えるマナカにはいくらでもやりようがあった。
「番長さんはたった3人なんですよね。 そんなので私の攻撃を受けきれますか?」
天使の翼で空飛ぶマナカンの指示通り、ハト達は一斉にカナナン、メイ、リカコへと飛びかかった。
その加速力はまるでミサイルののよう。
硬いクチバシの一つ一つが番長たちの身を切り裂いていく。
「くっ……結構キツイな。」
「せっかくアーリーが追っ払ってくれたのに、これじゃ意味がないじゃない!」
カナナンの算盤「ゴダン」や、メイのガラスの仮面「キタジマヤヤ」、
そしてリカコの固形石鹸「ダイスキダー」は鳥からの攻撃を防ぐにはあまりにも無力だった。
タケの鉄球「ブイナイン」、ムロタンの透明盾「クリアファイル」、マホのスナイパーライフル「天体望遠鏡」ならば明らかに有効だっただけに、
メンバーの組み合わせがこうなってしまったことを呪うしかない。
そしてこの状況では、戦士として最も日の浅いリカコは案の定パニックに陥っていた。
「リカコは最高に気分悪いです悪い悪い悪い悪い。
今噛んだ鳥でてこい!おまえ食す*\(^o^)/*
食せないね……お腹壊すね……
鳥さんは嫌い。ぶたさんは好き……ぶたさんはどうしていない?……」
戦意喪失しつつあるリカコだったが、ここで先輩であるカナナンとメイが声を投げかける。
自らも血を流しながらのエールに、リカコは心を打たれたようだ。
「しょぼくれてる場合やないで!この状況を打破できるのはリカコしかおらんのやから!」
「ムロタンとマホは私とタケを前に、最後まで攻めてたよ……リカコはどうする?」
「!!」
ハッとしたリカコは、カバンの中から固形石鹸と少量の水を取り出し、物凄い勢いで擦り始める。
彼女の石鹸の扱いはプロ級。
固形石鹸を数秒で液体石鹸に変えてしまうことくらいは容易いのだ。
そしてそうして作り上げた液体を、ガムシャラに周囲へと撒き散らす。
「おりゃああああああ!!(^o^)」
189
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/03/31(木) 12:59:10
アルバムネタはまだ温存してますよ。
好きなアルバムの一つなので、ちょくちょく使っていくつもりです。
190
:
名無し募集中。。。
:2016/03/31(木) 14:15:23
シャボンカッター!
191
:
名無し募集中。。。
:2016/03/31(木) 20:01:08
ほぉ…
マナカの目には番長のあの子はうつってない…と
192
:
名無し募集中。。。
:2016/04/01(金) 07:47:04
しーっ!
193
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/01(金) 12:58:18
鳥たちは上手く飛ぶことが出来なくなり、次々続々と地に落ちてしまう。
羽根が濡れた状態での飛行はただでさえ難しいというのに
液体石鹸なんてかけられたのだから、もう低空飛行さえも困難だろう。
その光景を見て焦ったマナカは、天使の翼を構成するハト達に高度上昇の指示を出す。
「もっと高く上がって! あの石鹸がかからないところまで!!」
自分まで飛べなくなるという最悪の事態を恐れたマナカは、
元いた地上10mの高さより更に上にいくことでリカコの攻撃を逃れようとした。
地に足のつく状況で番長たちに対抗できる自信がないため
高いところにいるというアドバンテージだけはとにかく死守なくてはならないのだ。
だがマナカがそういう行動をとることも、カナナンは想定済みだった。
「よくやったリカコ。お次はシャボン玉や。いけるか?」
「さっきのネバネバしたシャボン玉ですか?(u_u)(u_u)」
「ううん、今度は小さくて細かいシャボンで辺り一面を覆い尽くしたれ!とびっきりアワアワなヤツやで!」
「(<_<)」
リカコはカバンから複数ののストローを取り出しては、ひとまとめにして息を吹きかけていく。
そうすることによってシャボン玉が大量発生し、あっという間に番長たちや地に落ちた鳥たちを覆い尽くす。
覆ったとは言っても近くに寄れば相手がいることが分かる程度の視覚障壁ではあるが、
遥か高いところにいるマナカンからしてみれば何も見えないも同然だ。
番長たちの位置はもちろん、味方の鳥がどこにいるかも分からない。
これでは指示の出しようがないのだ。
「えっ……うそ……どうしよう。」
ここでマナカは二択に迫られる。
このまま上空という安全圏に居続けるべきか、
それとも危険を冒してシャボンの中に突撃するべきか。
194
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/02(土) 17:19:24
マナカが二者択一を迫られている一方で、仲間であるマイは地に寝かされていた。
それどころかトモ・フェアリークォーツに肩を踏みつけられてしまっている。
踏み込みがひどく強いので、少しも動ける気がしない。
「私たちを倒すって、息巻いてなかったっけ?」
「くそう……」
マイ・セロリサラサ・オゼキングは己の戦闘能力の高さを信じていた。
1対1の素手での勝負なら(水中戦でない場合に限り)カントリーガールズの誰にだって負けない自信もある。
だから果実の国のKASTくらいは自分ひとりでなんとかなると考えていたのだ。
ところが蓋を開けてみればどうだ。父から受け継いだウサギの力では4人のチームワークに全く歯が立たない。
いやそれどころかトモ、サユキ、カリン、アーリーの誰か一人とタイマン勝負をしたとして勝てたのだろうか?
それを考えると寒気がしてくる。頭の中が嫌な思いでいっぱいになる。
そうして精神が不安定になったところをトモは見逃さなかった。
「そんじゃ終わりにしよっか。グッパイ〜」
ボウ「デコピン」はしっかりと握られ、矢の先はマイの額へと向けられていた。
いくらトモの弓の腕がイマイチとは言ってもこれだけ近ければ絶対に当たる。
そうなったが最期。カントリーは大切な仲間を一人失うこととなってしまうだろう。
それは絶対に避けたいと判断したマイは必死で首から上を横方向へと動かした。
この程度の回避で射撃から逃れられるかどうかは分からないが、とにかく生きることに必死だったのだ。
その必死さが新たな隙を生む。
「弓はね、射るだけの道具じゃないんだよ。」
トモは掴んでいた矢を放しては、マイの額にボウを強く振り下ろす。
トモにとってボウは鈍器も同然。
予想外の攻撃をマイが避けられるはずもなく、脳天に直撃してしまう。
「ああ゛っ……もうっっ!!」
ここまでのペースは完全にトモが掴んでいた。
後は4人がかりで押さえつければ難なく勝利といったとこだろう。
そうなったらまだマナカに手こずっている番長たちをサポートすることだって出来たはずだ。
ところが、状況はここで大きく転換する。
195
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/02(土) 17:23:40
「え?……トモ、何してんの?……」
サユキはつい声を漏らしてしまった。
マイの肩を踏みつけていたはずのトモが、そのマイをみすみすと逃がしたのだから
そのような言葉を発してしまうのも無理ないことだろう。
はじめはマイを舐めきっての行動かもと思ったが、そのような類ではないとすぐに確信する。
何故か?それはトモの脚から大量の血液が噴出していたからだ。
まるで何か凶暴な動物に噛み千切られたかのように。
「きゃああああ!トモ大丈夫なの!?」
「カリン落ち着いて、私は大丈夫……いや、やっぱりちょっと不味いかも。
私じゃなくて、KASTのみんながさ……」
KASTが驚くのと同じタイミングで、番長たちも信じられないといった顔をしている。
こっちもこっちで完全なる勝ちムードが一転して覆されたことに対して動揺していたのだ。
「なんやあの姿は……」
「とても、禍々しい……」
マナカに二択を投げかけるところまでは確かに上手くいっていた。
だがその後にマナカが白ハトたちを開放し、代わりの鳥を呼び寄せることは予想外だった。
その新たな鳥は白ハトと違って劣悪な環境でも生きていけるし、飛ぶことだって出来る。
つまりは羽に多少の石鹸水が付着してようが飛行能力は衰えないのである。
「この姿、ですか?……"ブラック・マナカン"ですよ。」
マナカ・ビッグハッピーは黒装束を着るかのように、大量のカラスを纏っている。
この姿になったマナカに慈悲はない。性格までもが黒々としたカラスのように凶暴化するのだ。
そして、凶暴になったのはマナカだけではなかった。
「お父さんから習ったもう一つの力、見せてあげるんだから!」
マイはネコのように、いや、ライオンのように獲物を狙う目をしていた。
彼女の父はウサギの戦い方を研究したこともあったが、どちらかと言えばライオンであった時期の方が長い。
その時に培った技術やノウハウをマイに奥の手として教えていたのだ。
獅子としての闘争心を呼び起こされたマイの実力は、何段階も上昇する。
もうKASTに遅れをとったりはしない。
196
:
名無し募集中。。。
:2016/04/03(日) 07:08:02
やはりモモコの弟子!奥の手を隠し持ってたかwまだまだ隠し持ってそう…アザマナカンとかww
197
:
◆JVrUn/uxnk
:2016/04/03(日) 14:05:26
そうか!だからウサギとライオンか!
すげー勝手にすっきりしたw
198
:
名無し募集中。。。
:2016/04/03(日) 17:25:39
実際は宇宙人ていう設定らしいけどなw
199
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/05(火) 08:42:06
「へー!カントリーの子達ってみんな二つの戦闘形態を持ってるんだ!」
「は、はぃ……そうです……モモち先輩に教わりました……」
マナカやマイが戦っている場所からいくらか離れたところで、
カントリーの一員であるチサキ・ココロコ・レッドミミーが質問に応対していた。
チサキは元から人見知りな方ではあるが、今日はいつも以上に声が震えている。
やはり、ベリーズ戦士団のチナミと話すのは特別緊張するのだろう。
そこにミヤビも割って入ってきたものだから大慌てだ。
「君たちはいい育ち方をしてるね。
戦い方が2つあれば敵を惑わすことが出来るし、
それに奥の手があると思うだけで精神的に優位に振る舞える。」
「あははは、ミヤビがモモを褒めるのって珍しいね。」
「違う!今のはカントリーの子たちを褒めたんだよ!」
「はいはい、後でモモにちゃんと言っておくからね。」
リサ・ロードリソースの猛毒ガエルによる防御形態、
マナカ・ビッグハッピーの黒カラスを纏ったブラックマナカン、
そしてマイ・セロリサラサ・オゼキングのライオン形態。
これらのような第二の刃を備えていることをミヤビは評価していた。
もっとも、第二の刃どころか第六、第七の刃まで用意しているモモコを賞賛する気は全く無いようだが。
「あ、そういえばモモはどこに行ったんだろ?」
「知らないよ、さっき出かけてからそれっきり。
まったく、そろそろ船が出るというのに……」
現在、彼女らはとある建物の中に潜伏しているのだが
ベリーズと一緒の部屋にいるというだけでチサキはとても居心地悪く感じていた。
1人でも殺人級オーラを放つ達人が何人も揃っているのだから当然の感想だ。
いくらフレンドリーに話されても辛いものは辛い。
(1人じゃもたない……マナカちゃんもマイちゃんも早く帰ってきてよ〜
リサちゃんはマーサー王様とサユ王様に食事を運びに行ったきり戻ってこないし……
あぁ〜せめてモモち先輩でもいいから一緒に居て欲しい!)
チサキが不安で押し潰されそうになっていることも知らずに、
チナミやミヤビがどんどん質問を投げかけてくる。
2人からしてみればチサキが可愛くて仕方ないのかもしれない。
「チサキちゃんもやっぱり奥の手を持ってるの?」
「というより、そもそもチサキちゃんは普段どんな戦い方をするんだ?」
この問いかけに対して、チサキは少し涙ぐむ。
他のメンバーとの実力差について普段から思うところがあったのだ。
「私はダメなんです。大したことないからモモち先輩から任務を任されないんです……」
「そうなの!?そうには見えないけどなー」
「気を使わないでください、カントリーの皆からも陸や空ではポンコツって言われるんですから……」
「あの子たちがそんな悪口を言うなんて……」
「あ、普段はみんな良い子なんですよ。でも、戦闘だけは別で……」
200
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/05(火) 08:43:53
ご察しの通り、マイが戦い方の元ネタはお父さんが所属していた球団です。
201
:
名無し募集中。。。
:2016/04/05(火) 10:53:49
西の獅子ですね
てかリサがサユ王に食事だと・・・?いろんな意味で危険が危ない!w
202
:
名無し募集中。。。
:2016/04/05(火) 21:54:13
大丈夫だ、そこにはマーサー王もいる!
203
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/06(水) 02:11:04
※あくまでifのお話ということでお願いします。
おまけ更新1
リサ「サユ様、手作りクッキー(睡眠薬入り)をどうぞ。」
サユ「まぁ嬉しい。じゃあそれとそれとそれをちょうだい。」
リサ「もっと召し上がってくれても良いんですよ?」
サユ「ううん。これでもう十分。」
リサ(薬品混じりのクッキーだけ避けられてしまった……)
リサ(よほど睡眠薬に精通していないと見分けがつかないはずなのに、何故?)
おまけ更新2
リサ「サユ様のイラストを描いて楽しもう。」
マーサー王「むっ!その画力は!!」
リサ「な、なんですか?」
マーサー王「◯◯や△△の絵を描いてみてくれないか?」
リサ「あーその作品なら私も好きなんですよ。□□とかも描けますが?」
マーサー王「君とは友達になれそうだとゆいたい。」
204
:
名無し募集中。。。
:2016/04/06(水) 06:10:09
さすがサユ王…一枚上手だったかw
ダメだぁトライアングル見てからマーサー王がゼータ王で脳内変換されるw昔は精悍で美しい王を想像してたのに・・・
205
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/07(木) 12:58:49
ブラック・マナカンは漆黒の翼を広げて急降下する。
無数のシャボンが群がる領域に突入しても、そのスピードは変わらない。
悩みのタネであるリカコを捕縛するまでは決して速度を落とさないつもりなのだ。
「させるか!」
靴の裏にソロバンを取り付けたカナナンの速度も負けてはいなかった。
リカコに危害が及ばぬよう、マナカに対して高速の体当たりを仕掛けようとする。
しかしカナナンがいくら速かろうが鳥との衝突時に発生する抵抗までは無視することができない。
その結果、マナカは誰にも邪魔されることなくリカコを抱きしめることが出来た。
「さぁリカコちゃん、一緒にお空を飛びましょうね。」
「うーーーっ(o_o)高いところコワイデス。。。」
容赦が無くなったマナカは、恋泥棒のように敵を捕まえるや否や、天高くへと飛び立っていく。
無論、高くまで上がったあとはリカコを地へと突き落とすつもりなのだ。
地上にはクッションとなるシャボン玉を膨らますことの出来る人間はもう存在しない。
となればここからはマナカのやりたいように出来ることだろう。
そうなったが最期。番長だけでなく、KASTまで全滅してしまうかもしれない。
「メイ!ここでアレを使うんや……温存してるアレをな!!」
「えっ?……いいけど、そしたらリカコはどうなっちゃうの?……」
「正直、100%安全とは言えない……でも、このまま落とされるよりは希望があるはず……」
206
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/08(金) 12:56:49
KASTの面々もライオンと化したマイに苦戦を強いられていた。
肉食獣の顎の力ならば人間の四肢を噛みちぎることくらいは容易いし、
腕(この場合は前脚と呼ぶのが正しいが)のパワーも普段とは比較にならないほど強くなっている。
しかもマイはウサギのスピードやジャンプ力までも併せ持っているため、
そう簡単に危害を被ることも少なかった。
ライオンの力を発揮する以前は、同程度の速度を誇るカリンが攻撃のキッカケを作っていたのだが……
「ちょっと待って!止まってよ!」
「うるさいなぁ……えい!!」
「キャッ!!」
いくらカリンがチクタクと高速で動こうとも、マイのひと殴りで転ばされてしまう。
興奮状態では痛みを感じにくい体質のカリンであっても、
力負けで押し切られてしまってはどうしようもないのだ。
だがカリンが殴られたことは無意味にはならない。
アーリーがマイを抱きしめて拘束する隙を作ることに成功したのだから。
「はい!もう絶対放さないからね!」
「ぐぐ……苦しい……」
アーリーの抱きしめ力はなんとライオンを超えていた。
この体格差でガッチリと固められてしまったら、流石にもう動けないだろう。
そしてマイの目の前ではサユキがヌンチャク「シュガースポット」をブンブンと振り回していた。
今すぐにでも棍を脳天に叩きつけるつもりだ。
「ちゃんと押さえててよね……今終わらせてやるから。」
サユキ・サルベは自己流カンフーの精度を上げるべく、何時間もの特訓を重ねていた。
抜け駆け何も悪くない。影練習どこも悪くない。
ふくらはぎバリ筋肉って努力の証だい。
今こそその成果を出すために、ヌンチャクによる強烈な打撃を繰り出していく。
「そりゃあっ!!」
207
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/09(土) 13:54:37
サユキの攻撃を受けてはまずいと本能で理解したマイは、咄嗟にアーリーの腕に噛み付いた。
欲を言えば切断するまで顎に力を入れ続けたいところだが
ヌンチャクによる打撃を回避することが目的なので、アーリーが激痛で腕の力を弱めたところで止めておく。
そして自身に対する拘束が緩むなり、マイは体勢を低くしてサユキの脚部に飛び掛かった。
この人間がとるには難しい四つん這いの動きをすることで
ヌンチャクを掻い潜ると同時に、サユキのふくらはぎを噛んでみせたのだ。
これでアーリーの腕の力を奪った。サユキの機動力も奪った。
既に動けぬトモが何度か矢を飛ばしているが、全く当たらないので怖くもなんともない。
唯一動けるカリンも他のメンバーと比較したら非力なので、
ガチンコのパワー勝負を仕掛ければ負けようがない。
KAST全員への勝利を確信したマイはドヤ顔でサユキから離れていく。
後は付かず離れず、自分のペースで嚙みつきにいけば不慮の事故で大逆転されることもないのだ。
「ふーっ、ちょっと苦戦したけどやっぱり私の勝ちみたいですね。」
全力を出した自分は強い。
マイはそう再認識することでますます己を鼓舞していく。
しかし、そんなマイの表情を曇らせる要素が一点あった。
こんな絶望的な状況にもかかわらず、サユキが悔しそうな顔を全くしていないのだ。
むしろ笑っているように見える。
「あー、そういうことだったの。 やっと分かったよ。」
「……何がですか? 意味が分からないんですけど。」
「ううん、いや、こっちの話。」
「関係ない話は後にして欲しいなぁ……」
「関係なら無くもないんだけどね。」
「は?」
マイがキョトンとするのを横目に、サユキはカリンに声をかけていく。
敵に勝利するための指示を出そうとしているのだ。
「カリン!その子の動きをあと一回だけ止めてくれる?」
「え?……私の力じゃちょっとしか止められないと思うけど……」
「いいのいいの。後は勝手にやってくれるみたいだからさ。」
「?」
208
:
名無し募集中。。。
:2016/04/10(日) 15:59:32
文字化けなのか暗号なのか
209
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/11(月) 12:59:23
サユキがカリンに指示を出した辺りで、突然カナナンの叫び声が聞こえてくる。
それはこれから起こりうる現象に対する警告だった。
「KASTのみんな、今すぐ伏せて!!」
「「「「!?」」」」
これからマイの動きを止めにかかる算段だったが、
それよりもカナナンの警告を優先してKAST一同は伏せていく。
彼女ならば的外れなことを口に出さないだろうと判断して、無条件に従ったのだ。
「……よし、準備はええみたいやで、メイ。」
「それでは今宵も1秒演技をお見せいたしましょう。」
「お、おう。まだ夜には少し早いけどな。」
「今回ご紹介するのは、どんな乾燥地帯にも嵐を起こす女戦士のお話。」
メイがガラスの仮面を装着した瞬間、辺り一帯にとてつも無く強い雨風が巻き起こる。
こんな状況で鳥は空など飛べやしないし、ライオンだって狩りを中断する。
メイによる「マイミの演技」は、たったの1秒で敵の体勢を壊滅させて見せたのだ。
「わっ!わっ!落ちちゃう!!」
ブラックマナカンの翼を構成していたカラス達は
雨女によるハリケーンに打ち勝つことが出来ず、そのまま落下してしまった。
こうなればマナカは掴んでいるリカコ諸共、地面に衝突してしまう。
かなり高いところから落ちたので、当たりどころが悪ければ死もあり得るだろう。
それを恐れたマナカは、慌ててリカコを手放した。
重量を半分にすることで、カラスの負担を減らし、またすぐ飛んでもらうことを期待したのだ。
そして地に落ちる寸前でそれは成功する。
「あっぶない……カラスさん達、ありがとね。」
なんとかギリギリのところでカラス達は羽ばたくことが出来ていた。
冷や汗をかかされたが、これでマナカは無傷のままだ。
しかもマナカは咄嗟の判断でリカコを落としている。
これで天敵を戦線から離脱させることが出来た。そう思っていた。
だが、そんなことはカナナンが許さなかった。
「残念やったな……救助済みや。」
「カナナンさんんんんんんんんすっきすっき〜(^o^)」
リカコをお姫様抱っこの要領で抱きかかえているカナナンを見て、マナカは開いた口が塞がらないようだ。
落下地点に素早く到達すればそれも確かに可能なのだが、
それにしても難しい行為だったはず。
「この台風の中で、よくそんなことが……」
「カナはな、嵐の中でボールの軌道を計算したことがあるんやで。」
「へ?……」
「全部計算済みや。これからアンタを倒すまでの流れもな!」
「……!!」
210
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/11(月) 12:59:46
あれ、なんか化けてました?
211
:
名無し募集中。。。
:2016/04/11(月) 14:02:07
>>207
>後は付かず離れず、自分のペースで
の後が読めないの俺だけ?
212
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/11(月) 15:09:55
機種依存文字だったのかもしれませんね。
すみませんでした。 該当箇所を以下のように読み替えてみてください。
後は付かず離れず、自分のペースでかみつきにいけば不慮の事故で大逆転されることもないのだ。
「ふーっ、ちょっと苦戦したけどやっぱり私の勝ちみたいですね。」
全力を出した自分は強い。
マイはそう再認識することでますます己を鼓舞していく。
しかし、そんなマイの表情を曇らせる要素が一点あった。
こんな絶望的な状況にもかかわらず、サユキが悔しそうな顔を全くしていないのだ。
むしろ笑っているように見える。
「あー、そういうことだったの。 やっと分かったよ。」
「……何がですか? 意味が分からないんですけど。」
「ううん、いや、こっちの話。」
「関係ない話は後にして欲しいなぁ……」
「関係なら無くもないんだけどね。」
「は?」
マイがキョトンとするのを横目に、サユキはカリンに声をかけていく。
敵に勝利するための指示を出そうとしているのだ。
「カリン!その子の動きをあと一回だけ止めてくれる?」
「え?……私の力じゃちょっとしか止められないと思うけど……」
「いいのいいの。後は勝手にやってくれるみたいだからさ。」
「?」
213
:
名無し募集中。。。
:2016/04/11(月) 15:30:26
ありがとう
214
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/12(火) 12:59:41
たった1秒の嵐の影響で、マイ・セロリサラサ・オゼキングも体勢を大きく崩されていた。
豪雨の如きプレッシャーを直で浴びたので、立つこともままならない。
暴風雨の中にいるのはKASTも同じだが、マイはノンビリしていられなかった。
まだ嵐の余韻も収まらぬうちにカリン・ダンソラブ・シャーミンが走り出していたのだ。
未来へ、さあ走り出せ!とでも言わんばかりの笑顔でこちらに向かってくる。
先ほどサユキに命じられた「マイを止めろ」という指令を果たすために、
サイボーグのように機械的に動いているのだろう。
ところが、ここでトモ・フェアリークォーツが命令を上書きしていく。
「カリン!そのまま跳べ!!」
「!?」
マイを止める最大のチャンスだったにも関わらず、カリンはトモの指示通りあさっての方向へと跳躍していった。
はじめはビビっていたマイも、自身に危害が及ぶ行為ではないと分かるなり声が大きくなる。
「え?……そんな意味不明なことしてて私に勝てるんですか?」
「そうだね。カリンはアンタに勝てない。」
「今更なに言ってるんですか?そんなのとっくに知ってるんですけど。」
「ただし、強力な助っ人がアンタを噛みきっちゃうけどね。」
「!?」
トモがそう言い放った瞬間、マイの首すじから血が噴き出していく。
いや、流血したのはそこだけではない。
マイの両方のスネもとっくに真っ赤に染まっていたのだ。
自分の周りには誰もいないはずなのに、傷だけいつの間にか負っている。
そんな不思議な現象を前にして、マイは恐怖する。
「いやっ!!なんなの!?」
「君さぁ……ちょっと牙を見せすぎだと思うんだよね。」
「ええええ?」
混乱しているところにサユキが変なことを言い出すので、マイは更なるパニック状態に陥ってしまう。
「本当に強い獣は牙を隠すんだってさ。その子のようにね。」
「!!」
またも首をガブリと噛まれたところでマイは思い出した。
アンジュの番長には存在を自在に希薄にできる獣使いがいたという事を。
「リナプー……コワオールド……」
「はーい。呼んだ?」
215
:
名無し募集中。。。
:2016/04/12(火) 14:27:21
おーりなぷーがいた事すっかり忘れていたぜ(棒)
さすが省エネ無駄な体力使わず最後美味しいところ持っていくなんてw
216
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/15(金) 07:47:11
続きは夜遅くになりそうです、、、
217
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/16(土) 04:18:24
たった1秒の嵐で一気に体勢を崩されたマナカだったが
台風の中心にいたメイの顔を見るに、焦る必要はないと思い始める。
(ふぅん、どうやら嵐を起こすのは結構疲れるみたいね。)
マナカの想像通り、メイの1秒演技はかなりの体力を消耗していた。
ほんの僅かとはいえ食卓の騎士と同等のオーラを発するのだから
それに似合ったエネルギーが費やされてしまうのである。
よって、当分は雨風が来ることはないとマナカは確信する。
そう思ったマナカは、まだ動けるカラスを何十匹も招集していく。
それらを集めて巨大な怪鳥と化したマナカは、
カナナンもメイもリカコも全部引っ括めて空へと連れ去ろうとしているのだ。
「初めっからこうすれば良かったんだ……みんな仲良く、天まで登りましょ?」
カラスの羽ばたきでフワリと浮いたマナカは
アンジュの番長らを捕まえるべく、低空かつ高速で飛翔する。
長い下積み時代を経験したマナカは、ずっと空に憧れていた。
そして今、マナカは本当に天まで登る能力を手に入れている。
この力さえあれば番長だって一網打尽に出来る。そう信じているのだ。
だが、この時マナカは気づいていなかった。
長い下積みを経て、天まで登ることができたのは彼女だけではなかったのだ。
「待ってーーー!」
「え!?」
嵐の余波に乗ったまま、マナカのところまで飛んできたのはKASTの1人、カリン・ダンソラブ・シャーミンだった。
トモの「命令の上書き」によって、ターゲットをマイからマナカへと変えていたのである。
そしてカリンは風に吹かれてゆらりゆられて到達するなり、マナカにしがみつく。
それだけでマナカにとっては邪魔だというのに、
更にカリンは身体を大きく揺さぶったのだ。
「ちょ、ちょっと!そんな揺らされたら上手く飛べない……」
「うん。だって貴方を落とすために揺らしてるんだもん。」
「くっ……だったらこうしますよ!」
マナカは指をパチンと鳴らし、カラスに急上昇するよう指示を出した。
2人分の体重なのでやや重くはあるが、あっという間に5m、10mと高度を上げてみせる。
もしも落下すればちょっとやそっとの怪我では済まないような高さだ。
こうなれば流石のカリンもビビるだろうとマナカは考えた。
しかし、その考えはケーキよりもタルトよりも大甘だった。
「刺すね。」
「は?……」
気づいた頃にはマナカの横っ腹には激痛が走っていた。
何か鋭利なものによって刺された感触が確かに残っている。
「どう?私の武器。釵(さい)って言うんだよ。」
その武器はカリンの小さな手で簡単に握れるほどに軽く小さいが、
先端は針のように鋭く尖っている。
この釵、その名も「美顔針」を速いスピードで何度も刺すのがカリン本来の戦闘スタイルなのである。
だが今のこの状況ではそう何回も刺す必要はないだろう。
密着しながら、深くまでしっかりと刺すだけでマナカは苦しんでくれる。
それはもう飛んでいられないくらいに苦しいはずだ。
「何やってるんですか……もう天まで登れないかもしれないってのに……」
「私はそれで良いと思ってるよ。」
「正気ですか?……2人まとめて地面に落ちるってことですよ?」
「うん。やっぱり私、大地が好きだから。」
やがてマナカは痛みに耐えられなくなり、
2人はまるでダイビングでもするかのように堕ちていった。
218
:
名無し募集中。。。
:2016/04/16(土) 06:15:48
天までのぼれに風に揺られてサイリウムに針に大地…ってどこまでネタぶっ込むんやw次はあなたの番かな?
219
:
名無し募集中。。。
:2016/04/16(土) 06:56:07
大地www
220
:
名無し募集中。。。
:2016/04/16(土) 09:54:37
大地くそわろたwww
221
:
名無し募集中。。。
:2016/04/16(土) 20:10:59
だいちぃぃぃ!!!
222
:
名無し募集中。。。
:2016/04/16(土) 20:32:06
コマの武器がくるのかな?
ホワッチャアアアアア
223
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/17(日) 13:40:43
リカコが咄嗟に膨らませた巨大シャボンがクッション代わりとなったため、落ちた2人に大きな被害はなかったが
カリンに刺されて流血しているマナカはもはや戦える状態に無い。
なんとか上半身を起こして、後をマイに託そうとするものの、
そちらでもまた凄惨な光景が飛び込んできていた。
「マイちゃん!?……嘘でしょ……」
KASTを倒すと息巻いていたマイは、首と両足から血を流しながら倒れていた。
その側には2匹の可愛らしい小型犬と、透明化を解除したリナプーが立っている。
ハンカチで口を拭きながら、旧知の仲であるサユキに話しかけているようだ。
「たまに本気出すと疲れる……ねぇ、もう休んでいい?」
「ダメに決まってるでしょ!まだ終わってないんだから。」
「え〜?もう終わりそうじゃない?カリンが上手くやってくれたみたいだし。」
リナプーにチラリと見られて、マナカはゾクッとする。
確かに、現在カントリーが置かれている状況は最悪だ。
番長とKASTに勝てなかったどころか、このままでは本来の目的である足止めすらもままならない。
更にはマーサー王とサユの情報を得る目的で拷問を受ける可能性だってあるだろう。
自分とマイがどこまで耐えられるか、想像するだけでも恐ろしかった。
「失敗する訳にはいかない……絶対に!絶対に!!」
マナカは最後の力を振り絞って、鳥たちに指示を出した。
その指示内容は「とにかく暴れろ」というもの。
後先考えずヤケクソに場をかき乱すことでなんとか岐路を見出そうとしているのだ。
ところが、その思惑もすぐに打ち壊されてしまう。
1秒では済まない嵐の到来で、鳥たちはたちまち飛べなくなる。
「待たせたな!もう大丈夫だ!」
演技などではない、正真正銘本物のマイミがやって来たことにマナカはギョッとした。
伝説の存在が敵として立ちはだかるのはもちろんのこと、
肩にマーチャンを乗せながら涼しい顔でここまでやって来たことにも驚いているのだ。
「流石の腕前だなマーチャン! この義足、前よりずっと走りやすいぞ!」
「えへへへ……」
224
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/17(日) 13:45:36
大地ネタが好評のようで何よりですw
大地役の吉沢さんが仮面ライダーメテオなのは有名ですが、
碧のヘアメイクをやってた人も仮面ライダーバース(後藤)なんですよね。
後者は前情報になかったので驚きましたw
225
:
名無し募集中。。。
:2016/04/17(日) 14:14:01
そうすると愛子が仮面ライダーメテオで碧が仮面ライダーバースになるのか・・・
いつか生鞘で仮面ライダーアマゾンズ書いてほしいわw(完全に色だけだけど)
226
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/18(月) 12:54:47
「おー!凄いことになってる。」
番長やKASTらが戦う平原からいくらか離れた高台で、
少年とも見間違うような短髪少女が双眼鏡を覗き込んでいた。
その短髪少女に対して、長い黒髪の美しい、もう一人の少女が応答する。
「え? 番長とKASTの勝利で順当と思ってましたけど、番狂わせでも起きたんですか?」
「うん、まぁ結果は"ガール"の言う通りなんだけどさ。そこからが凄くて」
「?」
"ガール"とは長髪少女を呼ぶためのコードネームだ。
彼女らは本名を他人に知られてはならないと命じられているため、
互いにコードネームで呼び合っているのである。
ちなみに短髪の方は"ロッカー"と呼ばれている。
「聞いて驚くなよ。 なんと、すっごい美人が登場したんだよ。」
「聞いて損しました。」
「わーごめんごめん!冗談だから冷たくしないで」
「今度ふざけたら"ドグラ"や"タイサ"に言いつけますよ。」
「それだけはご勘弁を……」
「まったく、一応副リーダーなんだからしっかりしてくださいね。」
「はぁい……」
ガールに叱られてシュンとしたロッカーだったが、
すぐに真面目な顔に切り替えて言葉を続けていく。
「でもその美人ってのがさ、キュート戦士団のマイミ団長なんだよ。」
「え!?……思ったより早く着いたんですね。」
「あのマーチャンっていう人の修繕の速さが想像を超えてたってことだね……
それに、後方から大量の馬がやって来ている。
たぶん、残りのキュートや帝国剣士が乗ってるんだ。」
「……事態は深刻ですね。」
どこで情報を得たのかは分からないが、
ロッカーとガールは今回起きた大事件について精通していた。
そして、更に知識を得たいと考えている。
「こんな高台からじゃなくて、もっと近づいてみたいな〜」
「あ……でもそれは……」
「そっか、ガールはそれをつけているんだっけ。」
ガールの足首には、囚人がつけるような鉄球が鎖で結びつけられていた。
そのため速いスピードで移動することが出来ないのである。
「本当にガールは真面目だね……そんなのつける必要ないのに。」
「自分への戒めですし、それに……」
「それに?」
「こうして自分を縛らなかったら、私はロッカーを殺してしまうかもしれない。」
「ははっ、それはお互い様でしょ。」
227
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/18(月) 12:55:50
イクタの続編を書こうにもまずはマーサー王をキッチリと終わらせなきゃですねw
今回でだいぶ話が動きましたが、それでも完結までどれだけかかるか……
228
:
名無し募集中。。。
:2016/04/18(月) 13:59:44
ここに来て新キャラ!?もしやこの二人は・・・
イクタ続編も楽しみだけどまずはマーサー王の完結頑張って下さい
229
:
名無し募集中。。。
:2016/04/18(月) 17:44:15
連載開始から約1年…ついに拳士登場キターーーー!!!
イクタ続編…楽しみだけど早くても開始は5年後くらいかなw
230
:
名無し募集中。。。
:2016/04/18(月) 18:37:27
え!?拳士の方なの?やなふなかと思ってたw
231
:
名無し募集中。。。
:2016/04/19(火) 00:49:37
おいおい…この内容でやなふなだと思われてたなんて聞いたら作者さん泣いちゃうぞ
232
:
名無し募集中。。。
:2016/04/19(火) 06:04:38
あ…ホントだ大佐って書いてあるorz
233
:
名無し募集中。。。
:2016/04/19(火) 07:34:16
それ以前に短髪少女の時点でやなふなはない
234
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/19(火) 09:13:37
今の段階で誰をモチーフにしているのか名言は出来ませんが、
ロッカーとガールの頭に「ジップ」、「おは」を付けると分かるかもしれません
235
:
名無し募集中。。。
:2016/04/19(火) 10:31:05
やっぱりかw
236
:
名無し募集中。。。
:2016/04/19(火) 17:27:42
ロッカーはわかったけどガールはわからなかった…
237
:
名無し募集中。。。
:2016/04/19(火) 18:02:05
ステッピーでわからんか
238
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/20(水) 12:57:19
「おいおい、戦いはもう終わっちまったのか。せっかくジャマダハルの試し切りをしたかったのによ。」
マイミに続いて、オカール、アイリ、ナカサキ、そして帝国剣士らもやってきたためマナカは酷く絶望した。
キュート戦士団が4人も揃っていて、その誰もが整備された武器を使いたくてウズウズしているのだから恐怖でしかない。
この状況では新たな鳥を数千単位で補充できたとしても焼け石に水だろう。
ゆえに、マナカは諦める他に道はなかった。
「降参します……煮るなり焼くなり好きにしてください。」
「そんなことをするつもりはない。ただ、代わりに何点か質問させて欲しい。」
「……………………」
「だんまり、か。」
ここでマナカに出来るのはただ1つ。
ベリーズが不利になるようなことは決して口外しないことだけだ。
この先どんなことをされようとも口を割らない覚悟がマナカには有るし、
そうであろうことはキュート達も感じ取っていた。
「どうする団長?こいつを拷問しても何も出てこなさそうじゃね?」
「困ったな……確かに意思は堅そうだ。」
連合軍としてはなんとしてもマーサー王とサユを救い出す手がかりが欲しかった。
そのためなら不本意ではあるがマナカとマイを傷つけることだって躊躇しない。
しかし、そうまでしても情報を得ることが出来なければ時間の無駄で終わってしまう。
ならばアリアケへと馬を飛ばすのを最優先にするのが良いのかもしれない。
一同が判断に困っていたところに、聞き覚えのある高めの声が聞こえてくる。
「マナカちゃーん、そういう時は無理せず喋っちゃっていいの。
自分の身が一番大事って教えたでしょー?」
「も、モモち先輩!!」
突然のモモコの登場にこの場にいる殆どが度肝を抜かされた。
今回の事件の主犯グループの1人が、ノコノコやって来たのだから驚かないはずもない。
マイミは嵐の勢いをますます強め、激怒した。
「モモコ!貴様何しにここに来たんだ!」
「何って決まってるでしょ。その子たちを迎えに来たの。」
嵐の中だろうとモモコは平然とした顔をしている。
同格の食卓の騎士の放つオーラなど、なんともないのかもしれない。
そんなモモコに対して、ナカサキも奇妙な怪獣を隣に添えながら声をかけていく。
「ちょっとちょっと、連れ戻すって正気?
こっちは帝国剣士も番長もKASTも居るってのに、無事に帰れると思ってるの?」
「あら意外。キュートのみんなはその子たちを戦力と思ってるんだ。」
「当然でしょ!連合軍の仲間なんだから。」
「私だってカントリーのみんなは大事な戦力と思ってるの。
どんなことをしたって無事に返してもらうよ。
例えば、ベリーズの情報を売ってでも、ね。」
「!?」
239
:
名無し募集中。。。
:2016/04/20(水) 14:03:13
まさかのモモコの裏切り!・・・ではなくて情報与えたところで勝利は揺らがないって自信何だろうなぁw
240
:
名無し募集中。。。
:2016/04/20(水) 23:44:50
緊迫した場面だろうに奇妙な怪獣という一文が文章としても映像としても何故かクスッとくるw
241
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/21(木) 13:04:38
いくらモモコが強くても、キュート4名を含んだ全員でかかれば難なく倒すことは出来るだろう。
だが、ベリーズの情報を提供してくれると言うのであれば、始末することは出来なくなる。
手がかりゼロの状態な一同にとって、情報は何よりも大事なのだ。
敵を許せぬ気持ちをぐっと抑えて、全体リーダーのマイミが尋ねていく。
「ベリーズの情報を売ると言ったが……いったいどんな情報を?」
「そうね、"明日の正午にベリーズ全員が集合する場所"……とか気にならない?」
「なんだと!そ、そこに王やサユも居るのか!?」
「そこまでは教えられない。 "ベリーズの情報"じゃないからね。
どうする?不服だったらこの話は無しにするけど。」
「いや……ベリーズ全員の居場所だけでも教えてもらえれば十分だ。 それでいいよな?みんな。」
マイミの問いかけに一同は首を振る。
マーサー王とサユが気にならないと言えば嘘になるが、
ベリーズを一網打尽にした後に、2人の居場所もおのずと判明するだろうと推測したのだ。
「分かった。じゃあ教えてあげる。でもその代わり……」
「交換条件という訳だな。要求を言ってみろ。」
「情報を伝えてから10分経つまではこの場から誰一人動かないでね。
手負いのマナカちゃんとマイちゃんを馬に乗せて逃げる訳だから、安全を保証したいの。」
「こちらが約束を破ってすぐに追ってきたらどうする?」
「そしたら困っちゃうけど……まさかそんなことはしないよね?」
「あぁ……騎士としての誇りが傷付く。」
マイミの対応を甘いと感じた者も何人かいたようだが、
ナカサキ、アイリ、オカールが揃って頷いていたので何も言えなかった。
騙し討ちで得る勝利に価値は無いと考えているのかもしれない。
しかし、キュートがそう思っていたとしてもベリーズも同じとは限らない。
特に目の前にいるモモコのことがカノンは信用できなかった。
「い、いいんですか?これ、明らかに怪しいですよ!?
今から教えてもらう場所にベリーズが居るってのが本当だとしても、
私たちをおびき寄せるための罠に決まってるじゃ無いですか!
だったらここでこの人たちを人質に取ったほうが……」
「だからお前たちはダメなんだよ。」
「えっ!?」
オカールの茶々入れに対して、カノンはビクッとしてしまう。
「罠とか関係無いんだよ。 そこにベリーズが雁首揃えて突っ立ってるんなら罠ごと全員ぶっ潰せば良い話だ。
探す手間が省けて明日にでも決着つけられるんならラッキーだろ。
違うか?」
242
:
名無し募集中。。。
:2016/04/21(木) 13:32:52
オカールカッコいいな…前作も罠が有ることを承知の上でマーサー王奪還に行ったんだもんな
243
:
名無し募集中。。。
:2016/04/21(木) 22:05:32
既にモモコに手玉に取られてるとはな…
244
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/22(金) 14:00:24
数十匹の狼に同時に噛まれたような思いをしたカノンは、ヘトヘトになってその場に座り込んでしまう。
残念なことに、カノンはオカールの勢いに対抗するだけの体力を持ち合わせていなかったのだ。
理屈も何も全部抜きで我を通すオカールには、誰一人反論など出来やしない。
「……決まった? じゃあそろそろ言うよ?良い?」
この場にいる全員の視線がモモコに集まった。
モモコもモモコで注目を浴びても緊張する素振りを全く見せず、情報を提供していく。
「アリアケ付近にゲートブリッジっていう橋が最近できたのは知ってる?
明日の正午、その橋の中心部にベリーズ全員が集まるの。」
アリアケと言えばコロシアムやディファ等の施設が有名だっただけに
「橋」のような屋外を指定してきたのは連合軍にとっては意外に思えた。
そして、橋の中心に居るのならばとある作戦がとれると、カナナンは考えていた。
(橋の両側からベリーズを挟み撃ちに出来る……!
ウチらの力は微力やけど、キュートの方々を両サイドから攻めさせたらいけるかもしれん!)
245
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/22(金) 14:00:53
ちょい短めの更新です。
夜ごろまた更新します。
246
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/23(土) 01:52:20
その後の一同は、契約通りにモモコらを無事に帰すことにした。
10分も猶予があれば駿馬サトタは遠く遥か彼方まで駆けていってしまうため
追いかけるのは初めっから無理な話だった。
「すいませんモモち先輩……私たちが不甲斐ないばかりに……」
気を失っているマイを抱きかかえながら、マナカはモモコに謝罪した。
番長とKASTを相手に結果を出すことが出来ず、
しかもベリーズの情報まで渡すこととなったので罪悪感を感じているのだ。
ところが、モモコが怒りや呆れの表情を見せることは無かった。
「んー、まぁこんなもんじゃない?」
「それは、私とマイちゃんがまだ未熟ってことですか……」
「いやいやいや、相手は8人もいたじゃないの。しかも各国の精鋭よ?
まさか本気で勝てると思ってたの?そっちの方がビックリだわ。」
「え……それは……」
「もう一度思い出してみて、私がマナカちゃんとマイちゃんに出した指令は?」
「足止め……です。」
「だったらもうとっくに達成してるじゃない。
番長とKASTどころかキュートに帝国剣士まで"10分"も足止めしてるのよ?」
「それはモモち先輩の話術で……」
「はいはいこの話はもうおしまい! そんなことよりさ、どうだったの?」
「え?何がですか?」
「番長やKASTと戦ってみた感想。」
「……強かったです。私はあの人たちを舐めきってたんだな、と思いました。」
「あははは、それが分かっただけでも任務を与えた甲斐があったのかもね。」
「マイちゃんも同じこと思いましたかね?」
「さぁ……その子プライド高いからなぁ……」
247
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/23(土) 02:01:51
「ねぇガール。連合軍の方もようやく動いたみたいだよ。」
双眼鏡で遠方を見ながら、ロッカーがガールに状況を報告する。
「10分経ったんですね。行き先はやっぱりアリアケですか?」
「うん。間違いなくそっちの方面に向かっていると思う。」
「じゃあ私たちの仕事はひとまずここまで、ってことですね。」
「後はアリアケにいる4人がなんとかしてくれるはずだもんね。
でも、俺たちのやるべき事はまだ終わってないよ。」
「分かってます。今度はモーニング帝国の方に向かわなきゃ……」
「帝国剣士の新人にもキュートのマイミ団長みたいな美人がいたら嬉しいなぁ」
「……」
「うわっ、せめて何かツッコミを入れてよ。」
「気持ち悪いので話しかけないで貰えますか?」
「冷たいなぁ……半年前はよく慕ってくれたのに。」
「記憶にないです。」
「ひどい……」
248
:
名無し募集中。。。
:2016/04/23(土) 06:33:40
この2人の話し方はサバイバーの役のイメージに近いのかな?
249
:
名無し募集中。。。
:2016/04/23(土) 12:05:59
まだもう2人温存するのか!
残りの拳士の登場が待ち遠しくてたまらん
250
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/23(土) 20:58:52
広大な湾に面した港町「アリアケ」に連合軍らは到着した。
いち早くマーサー王とサユを捜索したいところではあるが
もう夜も遅いため、明日に備えて宿をとらなくてはならなかった。
特に番長とKASTはカントリーとの戦いで血を流したので、しっかりとした休養が必要だ。
そういう事情もあって、決戦の場であるゲートブリッジの下見は帝国剣士のサヤシとアユミンが行うこととなった。
フットワークが軽いのはもちろんのこと
もしも敵に襲われた時でも対処できるように、実力者である2人が選抜されたのだ。
「とは言ってもウチもアユミンも土地勘がないけぇ、迷いそうじゃのぉ……」
「どっちかと言えばオダの奴の方が近いですよねー。」
「うーん。でもウチとオダちゃんが交代したらなんかマズい気がする。」
「んっ?何か言いました。」
「いや、なんでも……」
周囲を警戒しながら、サヤシとアユミンは橋へと向かっていく。
かなり巨大な橋なので遠くからでもよく見えるのだが、
実際に戦う場をしっかりと見ておきたいという思いもあって、近くまで接近する。
そしてあと数分で到着するといったところで、急にアユミンが足を止め出した。
すぐ横でパフォーマンスをしている、とても目立つ女性が気になったのだ。
「ねぇサヤシさん、アレなんですか?都会ではああいうのが流行ってるんですか?
いや、私の地元も都会なんですけどね。」
「ウチの地元も都会じゃけど、ああ言うのは見とらん……」
「でもあの道具は見たことあります。サユ様が演説したり、フク王が就任式で使ってたような……」
「拡声器じゃな。 庶民が持つとは珍しい……」
2人の視線の先には、拡声器で声を周囲に届けている大柄な女性の姿があった。
何故そんなことをしているのかは全くの謎だが、
それなりに人だかりが出来ているのでパフォーマンスとしては成功なのだろう。
ちょっと不思議な話し方をする女性に、サヤシ達もなんだか惹かれてしまう。
「裏ウララのぉ〜楽屋裏情報〜〜パチパチパチパチ〜
今夜お届けするのは、ゲートブリッジの裏情報についてでーす!」
「「え!?」
「その前にCM入りまーす。」
「「ええええ!?」」
251
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/23(土) 21:02:37
ロッカー、ガール、ドグラ、タイサ、そしてウララが拳士なのかどうかはちょっとよく分かりませんが、
Weekend Survivorの影響は結構受けてると思います。
ゲキハロやゲキジョ、ドラマの影響はすぐ受けちゃいますね。
252
:
名無し募集中。。。
:2016/04/23(土) 23:23:25
3人目登場キターーーー!
253
:
名無し募集中。。。
:2016/04/23(土) 23:52:34
えーっとどこからつっこもうか悩む?w
サヤシの変わりにオダになったら…なんだかんだで結婚ですねw
都会って・・・
ウララ〜♪ ウララ〜♪ 裏ウララ〜♪
ウララはブログネタでドグラは読んだ小説かな?
254
:
名無し募集中。。。
:2016/04/24(日) 00:28:44
いろいろあって結婚
255
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/24(日) 04:04:37
おまけ更新「CM」
ウララ「今日のゲストは仮称カミコさんでーす。」
仮称カミコ「本編に登場してないのにCMに出してもらえて光栄です。」
ウララ「仮称カミコさんはアンジュ王国の舎弟らしいですね。なんでも今は1人で雑務をこなしてるとか。」
仮称カミコ「第三部あたりで番長になれるように頑張ってます。」
ウララ「産まれは……なんと!イトシマの辺りなんですか。結構Distanceがありますね。」
仮称カミコ「たまには里帰りをしたいですね。」
ウララ「そんな仮称カミコさんですが、今日は何の宣伝に来たんですか?」
仮称カミコ「私がご紹介するのは、"水筒と、水筒と、水筒と……やかん"です。」
ウララ「これから夏が到来しますし、水分補給が大事になりますね。」
仮称カミコ「はい。4月27日に発売なのでぜひ買ってください。」
ウララ「以上でCMは終わりです。ありがとうございましたー。」
仮称カミコ「はい、ありがとうございました。」
256
:
名無し募集中。。。
:2016/04/24(日) 19:56:46
カミコCMw
257
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/25(月) 12:51:51
「な、なんですか今のCMは!」
「よく分からん茶番じゃったな……」
「どうせなら5月11日に発売される方を宣伝して欲しかったですよね!」
「アユミン???何のこと???」
ワーワー言っているサヤシとアユミンを一瞥しては、DJウララは進行を再開する。
「はい。本日2人目のゲストとしてゲートブリッジの管理者の方をお呼びしています。こんばんは〜」
「こんばんは。」
「管理者さんのお仕事って具体的にどんなことをするんですか?」
「私のすることは一つだけだよ。 大型の船が通る時に、機械を操作して橋を開閉させるんだ。」
「えー!?こんな大きな橋が開閉するんですか?見せてください!」
「ダメダメ。そう簡単には開けないよ。 お偉いさんの申請でもないとね。」
「なるほど。ここはマーサー王国の領土だから、食卓の騎士くらい偉くないと橋を動かさないんですね。」
「君も頑張って勉強して、いつか橋と私を動かせるくらいに偉くなるんだよ。」
「はい!」
「聞きたいことは以上かな?」
「あ、じゃあ橋の上で誰かが喧嘩でもしたらどうするんですか?」
「それは私にはどうしようも出来ないな。」
「ええ!?管理者なのに?」
「その時はマーサー王国の兵士に連絡を入れるよ。悪い奴を懲らしめてもらうんだ。」
「なるほど餅は餅屋ってことですね。教えてくれてありがとうございました。」
「いいえ。」
「裏ウララの楽屋裏情報、そろそろお別れのお時間になりました。
エンディングテーマは4月20日にリリースして絶賛発売中のあの曲です。
それでは、お相手はサクラッコ……じゃないじゃない、お相手はウララでした〜
see you again!」
放送が終わるなり逃げるようにどこかへ飛んで行ってしまうウララを見て、サヤシとアユミンはキョトンとする。
「本当に不思議な感じの子でしたね。」
「うん、でも結構重要な話は聞けた気がする……他のみんなにも教えてあげよう。」
258
:
名無し募集中。。。
:2016/04/25(月) 21:08:54
名前言っちゃってるしwてかCMが本編絡んでくるとは思わなかった
259
:
名無し募集中。。。
:2016/04/26(火) 12:44:58
名前だけだけどタイサが出てきた
どんなキャラなんだろう
誕生日おめで大佐であります
260
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/26(火) 13:59:37
翌朝の作戦会議にて、カナナンはベリーズを挟み撃ちにする提案をした。
橋の上での戦いではそれが最も有効だと考えたのだ。
「ベリーズが正午に橋の中心におるんやったら、この作戦は絶対に成功します。
連合軍を東側と西側に分けて、正午になる5分前にそれぞれが中心に突撃するんです。
こうすれば敵に逃げる隙を与えず、白兵戦に持ち込むことが出来ますよ。どうですか?」
カナナンは不安そうな顔でオカールの方を見た。
これまでの経験上、激怒してひっくり返されるかもしれないことを恐れていたのだ。
ところが、オカールも今回ばかりはそのような反応を見せなかった。
「いいじゃねぇか……ベリーズを思う存分ぶっ潰せるってことだろ。」
「はい!」
「早速東と西のチーム分けをしようぜ。 ただし、先陣切ってダッシュする役割は譲らないけどな。」
「あ、東西両軍の先頭はもともとキュート様にお任せしようと思ってました。
初撃でベリーズに有効打を与えられるのは皆様しかおらへんので……」
「そうそう、そうこなくっちゃな。」
東側からはキュートのマイミとナカサキ、帝国剣士のエリポン、サヤシ、カノン、アユミン、マーチャン、ハル、オダの9名。
西側からはキュートのアイリとオカール、番長のカナナン、リナプー、メイ、リカコ、KASTのトモ、サユキ、カリン、アーリーの10名が配置された。
敵軍はカントリー全員が加わったとしても合計10名であるため数の上では有利に見えるが
伝説の存在である食卓の騎士の人数で言えば向こうに軍配があがるので油断は出来ない。
「そろそろ時間だ!行くぞみんな!!」
マイミの鬨の声と共に連合軍は走りに走っていく。
大切な存在を取り戻すための戦いであるので、誰もが気合は十分だ。
そのため、速度をほとんど落とすことなく東軍も西軍も橋の中央まですぐに到達してしまう。
ところが、そこにはベリーズ達の姿も形も無かった。
「な!?……ベリーズが居ないだと……!」
あと数秒で正午だというのに、ベリーズは約束の地に姿を現さなかった。
橋の途中には誰もいなかった事から、すれ違いということも有り得ない。
つまりは、ベリーズはこの橋の上には存在していなかったということになる。
挟み撃ちを提案したカナナンの顔は、冷や汗でビッショリだ。
「え?……カナたち、騙されたってことですか?」
261
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/26(火) 14:02:21
オマケはあくまでオマケなので
本当にその場に仮称カミコが居たかどうかはご想像にお任せしますw
タイサは他の仲間と比較すると登場が早めになるはずです。
去年のハロステや、ドラマのラーメン大好き小泉さんを見て書きたいと思ってた話をやっと書けますね。
262
:
名無し募集中。。。
:2016/04/26(火) 20:35:07
ドラマの小泉さんとどうコラボするのか楽しみ♪
263
:
名無し募集中。。。
:2016/04/26(火) 22:16:45
橋爆破されたら終わりやん
264
:
名無し募集中。。。
:2016/04/27(水) 06:11:00
もしやその時間に橋の中央(の下)を船で通過する・・・とかじゃないよね?
265
:
名無し募集中。。。
:2016/04/27(水) 06:39:39
ベリーズの事だからただ単に遅刻って可能性が高いようなw
266
:
名無し募集中。。。
:2016/04/27(水) 08:22:28
>>264
橋…下、つまり本を…慎(進)行する……ハッ⁉
267
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/27(水) 13:49:12
とても書きにくい流れになってる……w
お昼にあまり時間が取れなかったので続きは夜ごろ書きます。
期待を裏切ることは……出来ないかもしれませんが> <
ちなみに、アップフロントのお偉いさんのことは全然頭にありませんでしたw
以下、オマケ更新
〜マーチャンがマイミの武器と義足を修理している時のお話〜
ナカサキ「ぶっちゃけ若い子達のことどう思う?見込みありそう?」
アイリ「いや〜みんな将来有望で怖い怖い。すぐに追い抜かされちゃいそうですね〜。」
オカール「絶対そんなこと思ってないだろ。 」
アイリ「そんなこと無いよ……例えばサユキちゃん。」
オカール「あの猿っぽい子?」
アイリ「赤ちゃんみたいな顔をしている子。」
オカール「やっぱり猿っぽい子か」
アイリ「前情報だとぽちゃっとしてるって聞いてたけど、今は結構シェイプアップしているし、技のキレも鋭いかもしれないね。」
オカール「そっか、それよりもリナプーって奴の方が脅威に思えたけどな。」
ナカサキ「あら、オカールが若い子を褒めるなんて珍しい。」
オカール「だってよ、アイツらの殆どが狼の殺気でびびっちまってる時にさ」
アイリ「うんうん。」
オカール「リナプーだけ俺の殺気の毛づくろいをして、お手とお座りまで仕込んでたんだ……」
ナカサキ「うえっ……」
アイリ「すごい度胸……」
オカール「恐怖だったぜ……で、ナカサキは?」
ナカサキ「うーん、私は水泳が得意だから、泳ぎながら戦える子がいたら面白いと思うかな」
オカール「前世、魚だもんな。」
ナカサキ「うっさい!怒るよ!」
268
:
名無し募集中。。。
:2016/04/27(水) 23:44:16
やっぱりタイサはラーメン大好きなんだろうな
ラーメン拳法とか使いそうww
269
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/28(木) 01:29:32
交換条件でモモコとマナカ、マイを逃したと言うのに、それが騙されたとあれば大問題だ。
このままアテも無いままマーサー王やサユを探すとなると、絶望でしか無い。
中でも一際SHOCK!を受けていたのは、ベリーズにも剣士としての誇りが残っていると信じていたマイミだった。
「どういうことだ……お前達は本当に変わってしまったのか……」
意気消沈したマイミのオーラは、もはや嵐ではなく小雨のようになっていた。
落ち込み度合いに比例して更に雨は弱まり、やがて雨そのものが降らなくなってしまう。
それに気づいたマーチャンが、不思議がって声を出す。
「あれれ?キュートさんたち、なんか弱く見えますよ。」
「こらマーチャン!おかしなこと言うなよ!」
「だってドゥー聞いてよ。いつもみたいな怖い感じの殺気が無くなってるんだよ?」
「!!」
殺気が無くなってると言われて、マイミはピンときた。
キュート全員のオーラが消えたのではなく、「消された」のだとしたら
今になってもベリーズが見当たらないことの道理が通るのだ。
「アイリ!今は何時だ!?」
「正午まであと10秒前!」
「まずいぞ……みんな!気をつけるんだ!!」
マイミがそう言うが早いか、ゲートブリッジが動き出した。
連合軍が乗っているのもお構いなしに、機械仕掛けの橋はどんどんせり上がっていく。
ほんの数秒で急斜面へと化した足場に、一同は戸惑いを隠せなかった。
「うわ!何!?」
「これはひょっとして……」
橋が開閉する理由は一つしか無い。要は、大型船がそこを通るのだ。
近くにいたことに今まで気づかなかったことが不思議なほどに大きい船が、
分断された橋の間をのうのうと通っていく。
そして正午になったその時、船は橋と橋の中心に位置していた。
「約束すっぽかしたと思った?……そんなワケ無いじゃん。ねぇ。」
「モモの言うことだからそれもあり得ると思ったんだろうね。」
「えーー!?ひどーい。」
橋の柵にしがみつきながら、一同は絶句した。
船の甲板にはモモコだけでなく、ベリーズという曲者集団を束ねるシミハム団長、そしてミヤビ副団長が乗っていたのだ。
これほどの大物が揃って接近していたことに、連合軍たちは気づいていなかったのである、
270
:
名無し募集中。。。
:2016/04/28(木) 06:12:36
正解者いたwなる程シミハムの力で気配を消したのか…でも大型船を見せないようにしたのは誰の能力だろ?
271
:
名無し募集中。。。
:2016/04/28(木) 09:12:19
>>268
死亡確認!とか言っちゃうのかな?w
272
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/28(木) 12:58:25
よくよく見てみると、船に乗っているのはシミハム、ミヤビ、モモコだけではない。
ひどく怯えた表情で小動物のように小ちゃくなっているチサキ・ココロコ・レッドミミーもそこに居たのだ。
こんな最前線に自分が立っているのが嫌で仕方ないのか、さっきから何度も逃走を図ろうとしているものの、
上司であるモモコに服をぎゅーっと掴まれているため動けないようである。
「みんな助けて……」
チサキは船の扉から少しだけ顔を出しているリサ、マナカ、マイにヘルプを求めるが、
さすがにこの状況はカントリー達にはどうしようもならないようだった。
「チサキちゃんしっかりして。そんな感じだとみんなに笑われちゃうでしょ。」
「も、モモち先輩……私に戦いなんて無理ですよ……」
「戦い?そんなのしないよ。」
「えっ?そうなんですか?」
「私たちは橋の中心を船で通るだけ。 平和的でしょ?」
「でも……キュート様とかが許さないんじゃ……」
「うふふ、そうね。 じゃあこっちに飛び乗られる前にさっさと逃げちゃおうか。
チーナーミー!!もう出発していいよーー!」
モモコの大声は船の操縦室にまで届く。
その中には大型線の運転を任されているチナミが居たのだ。
DIYの申し子チナミは、仲良くなった船大工100人を総動員してこの船を作り上げている。
ゆえに動かし方は十分に心得ているのである。
「はいよーー!しゅっぱーつ!!」
船は所詮船なので馬ほど早く移動できるワケでは無いが、
橋の上から飛び乗られることのない位置にはすぐに移ることが出来た。
このまま沖まで向かわれてしまえば連合軍には手出しできなくなってしまう。
挟み撃ちで上手くいくと思っていたカナナンは、ひどく悔しがっていた。
「あぁ〜カナのせいや!挟み撃ちなんか提案したからこんなことに……
みんなに迷惑かけて、ほんまに馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……」
このまま自虐し続けて落ち込んでいくと思われたカナナンだったが、
意外にも立ち直りは早かった。
クシャクシャの顔をすぐに真顔に戻しては、ハル・チェ・ドゥーに指示を出す。
「しゃあないな、じゃあプランBや。いけるか?」
「当然!!」
ハルは全く躊躇うことなく橋の下の海へと飛び込んでいく。
普通なら溺れてしまいそうな高さだが、ハルはそうはならない。
泳ぎならモーニング帝国一だと日頃から自慢している彼女にとって、これの程度はなんとも無いのだ。
(待っててサユ様!!いま助けに行きますからね!!)
273
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/28(木) 12:59:52
船を見えにくくした、即ち船の存在感を無にしたのもシミハムです。
274
:
名無し募集中。。。
:2016/04/28(木) 17:51:20
マイミが船までキュートを一人ずつ投げてしまえばいいのでは・・・
とか思っちゃったよね
275
:
名無し募集中。。。
:2016/04/28(木) 18:25:39
℃-uteには910…もとい海王ナカサキと言う魚の生まれ変わりもいるから水中戦はいけそうだね
276
:
名無し募集中。。。
:2016/04/28(木) 20:29:52
快獣は元キャラ本来の超能力がそのまま使えれば空も飛べるし他にも色々とできちゃうみたいなんだけどね
277
:
名無し募集中。。。
:2016/04/28(木) 20:32:36
マイミはモモコに掴まえられてるチサキのことを人質だと思ってたりして…(笑)
278
:
名無し募集中。。。
:2016/04/29(金) 15:59:38
> ミヤビ、モモコだけではない。
ひどく怯えた表情で小動物のように小ちゃくなっているチサキ・ココロコ・レッドミミーもそこに居たのだ。
GNOのMCそのまんま…って、思ったけど放送される前に書いたのか!予告なんてあったっけ?たまにこの作者さん未来予知するよね〜w
279
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/29(金) 21:24:15
今日は更新が難しいので、続きは明日以降に書きます。すいません。
GNOとかぶってる件については全くの偶然ですw
せっかくなのでネタにしますかね。
280
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/04/30(土) 18:35:18
サヤシ、アユミンから「楽屋裏情報」を聞いていたので、カナナンらは橋が開閉することを知っていた。
そしてそこから、敵が船を利用してくるであろうことも予測していたのだ。
シミハムの作り上げる「無」がこれ程まとは思っていなかったのでさすがに驚かされたが、
それでも海上戦を想定したプランBならば対応することが出来る。
「なるほど、あのハル・チェ・ドゥーって子が泳いでここまで来るってことなのね。」
モモコはチサキの肩に肘を掛けながら、ミヤビの方を見る。
そのミヤビもチサキの頭をぽんぽんと叩きながら言葉を返した。
「確かに泳ぎはなかなか上手いようだけど、あまり強そうには見えないね。
シミハム団長、モモコ、チサキちゃん、そして私をたった一人で相手に出来ると思っているのか?」
「う〜ん、そこまで馬鹿じゃないと思うけど……チサキちゃんはどう思う?」
「えっ!?、わ、わたしですか?」
「こらモモコ、そんな事を急に聞いたら可哀想だろ。」
「知らないの?作戦を聞かれた時のチサキちゃんは半端ないんだから。」
「そうなの?」
モモコとミヤビに見つめられたチサキはたちまち耳まで真っ赤になってしまう。
なんとか良い答えをひねり出そうとするが、
カントリーの策は日ごろからモモコ、リサ、マナカが考えているためにチサキにはどうすることも出来なかった。
「ハルさんは速いと……思います……」
「……」
「……」
「あ、泳ぐスピードの話?チサキちゃんあのね、今はそういうのを聞いてるんじゃなくてね。」
「ごめんなさい……」
「モモ!チサキちゃんは時間の重要性を私たちに伝えたかったんだろ!あんまり虐めるなよ!」
チサキを間に挟んでやんややんや言い合ってるのを横目に、シミハムがスッと前に飛び出した。
そして三節棍を振り回して、ミヤビ目掛けて飛んできた鉄球を打ち飛ばしていく。
「団長!?……」
「その鉄球は……あぁ、マイミね。」
この時、モモコとミヤビはやっと気づいた。
開いて斜めになりつつある足場でも、連合軍らは戦う準備が整っていたのだ。
カナナンから手渡された「タケの鉄球」をマイミが剛速球で投げつけたことからもそれは明らかだろう。
「メイほどでは無いにしても、私も演技には自信があったのだが……さすがシミハム。見破られたか。」
「……」
モモコとミヤビも、シミハム同様に臨戦態勢を取り始めた。
マイミだけでなく、アイリやトモなど遠距離から攻撃を仕掛けることが出来る戦士らが構えているので備えなくてはならないのだ。
それ以外のメンバーだって暇をもて余したままで居るワケがないので、そちらにも警戒を払う必要がある。
「大体わかった。一人で泳ぐハルを連合軍全員で橋からサポートするつもりなのね。」
「マイミの鉄球やアイリの打球を防ぐのはなかなか骨が折れそうだな……モモコ、ここはどうする?」
「そうねぇ、じゃあ私とシミハム、ミヤビの3人で橋からの攻撃をなんとか防ぎ切りましょ。
そのうち攻撃の届かないところまで船が到達するだろうし。」
「え?ハル・チェ・ドゥーは無視するってこと?」
「それなら大丈夫、この子がいるから。」
モモコはチサキの背中を蹴っ飛ばし、甲板から海へと突き落とす。
あまりに酷い仕打ちを顔色一つ変えず行ったモモコに対して、ミヤビは目を丸くして驚いた。
「はぁ!?馬鹿なのか!?なんでそんなことを……」
「知らないの?海に落とされた時のチサキちゃんは半端ないんだから。
281
:
名無し募集中。。。
:2016/05/01(日) 01:35:15
GNOネタぶっこんできたー!しかも何の違和感もなく元々決まっていたやりとりのようにw
それにしても…モモとミヤの無茶ぶりに翻弄されてチィちゃん可哀想になるなww
282
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/02(月) 12:46:56
ハルは船を目掛けて全速力で泳いでいた。
ベリーズの本拠地に乗り込むのは確かに怖いが、今はキュートや他の仲間たちが支援してくれている。
だからこそハルは勇気を持って、サユとマーサー王の救出に向かうことが出来ているのだ。
もしも仮に二人が船に乗っていなかったとしても貢献可能なことはたくさんある。
例えば船を中から壊したり、燃料をこっそり抜き取ったりなど、様々だ。
泳ぎの得意な自分にしか出来ない仕事なので、ハルは誇りに思いながら前進していく。
(ん?……なんだあれ。)
一人の少女が海に落ちたのをハルは目撃した。
大型船から落ちたので、その少女がカントリーの誰かだということはすぐに分かったが
他に優先すべき使命があるために関わろうという気にはなれなかった。
(誰かに落とされたのかな?……でもごめんな。今はちょっと余裕がないんだ。
自分のお仲間にでも助けてもらってよ。)
余計な情報を振り切るように、ハルは手足をぐるりぐるりと回して一心不乱に泳いでいく。
ところが、今まさに船へと到達するといったところで不可解な現象が起き始めた。
なんと身体が逆に船から遠ざかっていったのだ。
(なんだ!?ハルの身体が勝手に……)
前に進もうと必死にもがけばもがくほどハルは船から離れていく。
恐怖ゆえの逃避行動などではない。物理的に何者かに運ばれているのだ。
慌てて周囲を見回すことで、前進を阻害する小さな生物の正体に気づくことが出来た。
(魚!?……それも、いっぱいいる!)
数百匹の小魚が群れになって、ハルを必死に船から引き離していた。
いくら泳ぎの得意なハルであろうと、真の泳ぎのプロが相手では分が悪い。
振り払おうとしてもスルリとかわされて、どうしようも出来なかった。
そして無駄な足掻きを繰り返しているうちに、呼吸の方が限界を迎え始める。
(やば……空気を吸わなきゃ……)
酸素を補給するためにハルは一旦、海上に上がろうとした。
その分だけタイムロスにはなるが、窒息してしまっては元も子もないので仕方のない行動だろう。
しかし、無数の魚群はそれすらも許してくれなかった。
ハルの上方向にビッシリと集まり、行く手を阻む壁となったのだ。
(おい!なんだよそれ!ふざけんなよ!)
さっき以上に手足をバタバタさせてもがくハルだったが、ほとんど効果はなかった。
それどころか何匹かの魚がお腹に体当たりをしてくるので余計に苦しくなってくる。
溺れかける中で、ハルは先ほど海中に落とされた少女と一瞬だけ目があった。
その少女、チサキはただただハルの方をじっと見つめていたのだ。
「モモコ、チサキちゃんの能力はひょっとして……」
「ミヤビも気づいた? そう、チサキちゃんは魚類を操るの。
水中での戦いなら私も敵わないかもね〜。」
283
:
名無し募集中。。。
:2016/05/02(月) 14:54:41
魚使いとは…確かにハンパなかったw
でもちぃちゃんと魚って何か接点あったっけ?
284
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/03(火) 02:16:16
魚そのものとの関連は特にありませんが、
森戸ちぃは結構泳げるらしいですね。
カントリーの5人には哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の5類を割り当てたかったので、
魚類を担当してもらいました。
以下、オマケ更新
モモコ「あなたたちも今日からカントリーの一員よ!」
仮称フナッキ「いぇーい!」
仮称ヤナミン「とても光栄です。」
モモコ「で、二人には甲殻類と昆虫類を担当してもらいたいんだけど、どっちがいい?」
フナッキ・ヤナミン「え・・・」
285
:
名無し募集中。。。
:2016/05/03(火) 07:34:39
なるほど余り物だったのねwでも魚使いでも違和感ないね
ヤナフナ可哀想…でも何となくヤナミンには蠍女や女郎蜘蛛って言葉がよく似合うw
フナッキはシャコ?素早く動き弾丸パンチを繰り出す感じ?腕が切れても再生したり
286
:
名無し募集中。。。
:2016/05/03(火) 11:22:38
テラフォーマーズやんw
287
:
名無し募集中。。。
:2016/05/03(火) 19:16:02
バレたかwでもあんな感じでイメージしちゃったんだもん
288
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/05(木) 09:27:25
テラフォーマーズは見たことがないので詳しいことは分かりませんが、
メンバーの身体そのものが人間離れするということは無いと思いますねw
とは言え、マーサー王本編でも怪しいのは多々いますが……
今日は研修生の診断テストに行ってきます。
開演前か終演後あたりに更新できるかもです。
289
:
名無し募集中。。。
:2016/05/05(木) 10:36:03
良いなぁ〜楽しんできてください
研修生のCM来たりするかな?w
290
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/05(木) 16:09:48
「マイミ様、鉄球はあと2つ残っています。」
カナナンは同士タケ・ガキダナーから借りた鉄球をマイミに託した。
自分よりもマイミが投げた方が圧倒的に強いとの判断だ。
「ありがとう。次はシミハムに防がれないようなしなくてはな……」
「そのためには、皆さんに隙を作ってもらわないといけませんね。」
カナナンが視線を送った先には、今にも矢を射ろうとしているトモの姿があった。
橋が開いたおかげで足場はかなりの急斜面になっているのだが、
両方の脚で柵を挟み込むことでガッチリと体勢を固めている。
(シミハム様には攻撃が当たる気がしないし、モモコ様は何をするのか全く予想できない。
でもね……その中でもミヤビ様は隙だらけだよ!!
そのガラ空きの胸に遠慮なくブチ込ませてもらう!)
偉大な存在を前にしながらも、トモは落ち着いて矢を放つことが出来た。
これはシミハムの「無」がキュートだけでなくベリーズのオーラまで消し去ってくれたおかげだろう。
いつもは命中精度の悪い射撃ではあるが、今回ばかりは狙い通り真っ直ぐに突き進んでくれた。
(よし!当たれ!)
矢はあっという間にミヤビの元へとすっ飛び、すぐにでも胸を突き破らんと言ったところまで到達している。
いくら食卓の騎士だろうが心臓をやられては無事にはいられないはずだ。
ここで敵の一角であるミヤビを落とすことが出来れば連合軍は相当有利になるだろう。
……だと言うのにもかかわらず、ミヤビはまるで慌てたりはしなかった。
「へぇ、なかなか良い腕をしている……でもその程度じゃ貫けないよ。」
「!?」
ミヤビは身に降る攻撃を最後まで避けなかった。
そしてさらに驚くべきは、ミヤビの胸にぶつかった矢のほうがポッキリと折れてしまったのだ。
文字通り鋼鉄の強度を誇る胸板に、トモは驚きを隠せない。
「あれ!?え?……確かに……」
ありえない出来事が起きたので、トモは軽いパニックを起こす。
そんなトモに対して、側にいたアイリが声をかける。
「ミヤビのアゴと胸は硬いから狙っても無駄よ〜。
余程の威力を持った一撃か、あるいは生身の部分への攻撃じゃないと
ミヤビには傷一つ負わせることが出来ませんからね〜。」
「そんな……噂には聞いてたけどここまで真っ平らだとは……」
「背中を向けた時がチャンスですよ〜。」
「えっと、胸と背中の区別がつきません……」
291
:
名無し募集中。。。
:2016/05/05(木) 16:17:16
ディスり合いやめーやw
アイリもトモも似たようなもんのくせにw
292
:
名無し募集中。。。
:2016/05/05(木) 16:56:27
アゴが前に出てる方が胸や!
293
:
名無し募集中。。。
:2016/05/05(木) 23:18:13
まさしく
「完璧な胸」
だなw
294
:
名無し募集中。。。
:2016/05/06(金) 07:39:27
おや?ミヤビのようすが…
http://scontent.cdninstagram.com/t51.2885-15/13151276_1776602252570096_1911435629_n.jpg
295
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/07(土) 02:48:28
ミヤビは肉体を強化するために顎と胸に鉄板を埋め込んでいた。
この手術さえしなければより女性的な身体になっていた、と言うのは本人談だ。
そんなミヤビに並の手段でダメージを与えられないのは明白だろう。
「お手本を見せてあげますからね……エリポンちゃん、準備は?」
「は、はい!大丈夫です!」
アイリとエリポンは坂の上で、しっかりと立ちながら武器を構えていた。
普通の人間ならばすぐにでも転げてしまいそうな急斜面ではあるが、ゴルフで鍛えた彼女らには平気なのだ。
これくらいで安定感を失うようでは良いショットなど打てるはずもない。
「じゃあ帝国剣士のみんな〜手筈通りにお願い〜」
遠距離攻撃の手段を持たぬサヤシ、カノン、アユミン、オダはそれぞれが小さな球を3つずつ持たされていた。
その球がまさに、アイリとエリポンが得意するゴルフのボールだ。
アイリの出した合図とともに、手に持ったボールを二人に投げつけていく。
つまり、計12個の球が飛んでくる形になるのである。
「私が11球打つ。エリポンちゃんは1球をしっかり!」
「はぁ〜〜い!!」
いつもふにゃふにゃとした顔をしているアイリがカッと眼を見開き、愛用する棍棒を振り上げる。
彼女の眼にはヒト、そしてモノの弱点がハッキリ見えるという特性があった。
ゆえにミヤビのどこを狙って打ち付ければ良いのか手に取るように分かるのだ。
(人体急所から顎と心臓を除いた全てのポイント……一つ残さず打ち抜くよ!)
本心から来る強い殺気はシミハムの無でさえも消し去ることが出来ない。
神話上の雷神であるトールが操るようなイカズチがアイリから放たれ、
ボールよりも速いスピードでミヤビの急所にブチまけられる。
「ぐっ……アイリも本気なんだな……そっちがその気なら!!」
脇差を鞘から抜き、すべてのボールを打ち落とそうとミヤビは構える。
武器の刀身こそ短いが、だからこそ俊敏な動きで複数箇所への同時攻撃にも対応することが出来るのだ。
彼女の実力であれば問題なくこなせるような容易い仕事であったが、ここでアクシデントが起きる。
突如、ミヤビの目に光が差し込まれたのだ。
「ま、眩しい!?」
この光の正体はオダのブロードソード「レフ」によって反射された太陽光だ。
常に大嵐を巻き起こすマイミとの相性は最悪だったが、今はその懸念要素をシミハムが消してくれている。
そのためミヤビの視力を一時的に奪うことが出来たのである。
そんなミヤビにアイリのボールが容赦なく襲い掛かる。
「まったくもう、世話が焼けるなぁ」
このままミヤビにHITして終わりかと思いきや、その前にモモコが立ちはだかった。
そして足で床をバンと叩くことで、謎の強風を巻き起こしたのだ。
こうして起きた風の壁は思いのほか厚く、すべてのボールが空しくも落とされてしまった。
「う……モモコが助けてくれたのか……」
「どう?頼れるでしょ?」
「(借りを作るのは癪だが仕方ない……)あ、ありがとう」
「どういたしましてっ」
モモコとミヤビが会話を交わしているうちに、もう一球のボールが飛んできた。
それはエリポンがアイリより少し遅れて、鞘入りの打刀でスッ飛ばした一撃だ。
これもアイリの攻撃同様に防いでやろうとモモコは強く足を踏む。
「頼れるお姉さんがまた守ってあげるからね〜…………ぐえっ!」
風圧を発生させてガードしようと思ったが、なんとエリポンの打球はその壁すらも突き抜けてしまった。
流石に球の勢いはかなり殺されたようだが、モモコのお腹に当たること自体は成功する。
「モモコ!?攻撃をもらうなんて珍しい……」「痛ぁい……手抜きしたつもりは無いんだけどなぁ」
「という事は、あのエリポンって子のパワーはアイリよりも優れているって事か……」
「それは確かだろうね。なんか腕の筋肉とか凄いし。
でも大丈夫。いくら強いと言ってもマイミやクマイチャン程じゃ無いんだから。」
296
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/07(土) 02:51:18
研修生の診断テストはとても楽しかったですよ〜
結果の詳細はネット記事や次週のハロステで見てもらいたいのですが、
個人的にはとても納得な受賞でした。
現場を驚かせたメンバーが賞を取るのは良いですね。
>>294
あれ!?いつの間に……
297
:
名無し募集中。。。
:2016/05/07(土) 03:15:25
服の上からならどんなに無乳でもブラのおかげで多少はあるように見えるもの
頑張って盛らなくてもね
298
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/07(土) 17:24:36
「まぁ〜、あなた凄いじゃない!」
「エリのボールが……当たった……」
アイリに褒められたエリポンはなんとも言えぬ嬉しさを噛み締めていた。
決定打では無いとはいえ、あの食卓の騎士に攻撃が届いたことに感激しているのだ。
「そこのあなたも、さっきの光はナイスアシストですよ〜」
「ありがとうございます!」
いつもは冷めた風なオダ・プロジドリもアイリに評価されるのは嬉しいようだ。
まだ気を抜けない状況だと言うのにニヤけが止まらない。
そんなオダを見て、アユミンは面白くなさそうにつぶやく。
「エリポンさんにボールを投げたのは私なのに……」
「あら、そうだったの?ごめんなさい。じゃあアユミンちゃんも敢闘賞ね。」
「えへへへっ、どうも。」
「でもみんな油断しちゃダメよ。 モモコの"空気の壁"がある限りは我々の攻撃は通用しないんですからね。
せめて気を間際らせるような手段でもあれば……」
ミヤビを狙おうにもモモコがそれを防いでしまう。
ならばまずモモコを排除する手段を考えねばならないだろう。
そしてなんと、それをやってみせる策がKASTには用意されていた。
「はいはーい!それなら私たちに任せてください!」
「サユキちゃん?どうすると言うの?」
「名付けて"人間大砲"……ウチのアーリーの馬鹿力でカリンを船まで飛ばしちゃうんですよ。」
「まぁ!そんなことが出来るの?」
「出来るよね?アーリー?」
「うん!リンカなら軽いから余裕やで。」
アーリーはトモのように両足でしっかりと柵を掴んでいた。
ゆえに両腕はフリーの状態。
これならばカリンをぐるんぐるんに回して向こうまで吹っ飛ばすことが出来ると思ったのだ。
カリンの実力でベリーズに対抗できるとは思えないが、
ちょっとだけモモコの気を逸らすことくらいなら出来るはず。
「というワケでカリン!ちょっくら行ってきてよ!」
「……いやいやいやいや」
299
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/11(水) 02:47:35
人間大砲役に任命されたカリンは、思いっきり首を横に振って拒否の意を示した。
決してベリーズだらけの船に乗るのが怖いわけではない。
ハル・チェ・ドゥーが今まさにそうしようとしているのに、
ここでカリンがビビってしまったらKASTの名折れだ。
ではアーリーの投げる力が足りず、船に到達する前に海に落下することを恐れているのか?
それも違う。カリンはアーリーの力を信じている。
遠心力を最大限に利用したジャイアントスイングならば必ず目的地に届くと確信しているのだ。
「じゃあいったいなんだって言うのよ。」
「……酔っちゃう。」
「なんだって?」
「アーリーに強く振り回されたら気持ち悪くなっちゃうよ……
ひょっとしたら朝ごはんを戻しちゃうかもしれない……」
「はぁ……」
十分強い戦士だというのに変なところで気にするカリンに、サユキは少し呆れてしまう。
「あのねカリン、あなたはマナカって人と一緒に空を飛んでたでしょ。」
「う、うん、ちょっとだけね。」
「あれで平気だったんだからどうせ今回も平気でしょ」
「そうかなぁ……全然違うと思うけど……」
「はい!早くしないと船が行っちゃうよ!決断する!」
「あ、そうだ!サユキが飛ばしてもらうのはどう?」
「私は重いから飛べないの。」
「え?ダイエット成功したってあんなに自慢してたのに。」
「アーリー!やっちゃって!!」
サユキの指示によって、アーリーはカリンの足首を徐ろに掴み出した。
そして例によってぐるんぐるんに回しては、ベリーズのいる船までぶん投げたのだった。
緊急事態ゆえにカリンの意思は二の次だ。
「いやああああああああああああ!!」
どこかの猫のキャラクターのように体重はリンゴ3つ分……とまではいかないが、カリンは軽い。
そのため、あっという間に船のある位置まで達してしまった。
後は甲板に着地して、モモコを惑わすような行動を取るだけだったのだが……
「乗せてあげないよ!!」
一部始終を見ていたミヤビが飛び上がり、
タイミング良くカカト落としをぶつけることでカリンを海に落としてしまった。
まさに100点の迎撃だったが、ここでモモコがcha cha……ではなく茶々を入れ出す。
「うわぁ〜……あんなか弱い子にそんな仕打ちするなんて引いちゃうなぁ……」
「立ち向かってきた相手に全力で応えて何が悪い!?
それにか弱い子を蹴落とす事ならモモコだってチサキちゃんにやってたじゃないか!」
「語弊がある。」
「難しい言葉を使うな!」
「チサキちゃんはか弱くないって言いたいの。」
300
:
名無し募集中。。。
:2016/05/11(水) 07:54:25
キティ!
301
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/12(木) 12:56:35
「うわっ……カリンが落ちた……」
サユキとアーリーは「しまった」という表情をしながら互いの顔を見合わせた。
まさかこうも簡単にあしらわれるなんて思ってもいなかったのだ。
そしてそんなカリンを、あのオカールも心配していた。
「大丈夫か?アレ……カリンって泳げるの?」
「えっと、人並みくらいなら泳げると思います……たぶん。」
「まぁそうだよな。泳げないのはウチの大将くらいのもんか。」
「え?マイミ様って泳げないんですか?意外……」
「沈んじゃうんだよ。筋肉と鉄の塊だから。」
「あー……」
走りと自転車が得意なマイミも、泳ぎまでパーフェクトとは行かなかった。
それが出来たら単身で船まで乗り込んでいただろうに実にもったいない。
「ねぇキー、人間大砲の作戦はどうするの?……」
「うーん、いくらアーリーが船まで投げても、ああなっちゃったら意味がないよね。」
「じゃあ辞めようか。」
「いや、その必要はないだろ。」
「「オカール様!?」」
「要はミヤビちゃん……じゃなかった、ミヤビに迎撃されなきゃいいんだろ?
じゃあさ、俺を船まで飛ばしてくれよ。逆に怪我させてやるぜ。」
「オカール様が砲弾になるってことですか!?」
「せっかくだから、人間大砲と同時に"人間魚雷"もぶっ放しちまうか。」
「「人間魚雷?」」
302
:
名無し募集中。。。
:2016/05/14(土) 01:01:17
あの人かw
303
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/15(日) 10:07:06
次回更新は明日になりそうです……
304
:
名無し募集中。。。
:2016/05/15(日) 11:20:55
外伝書くなら前スレの方に貼った方がいいのかな
305
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/16(月) 14:33:19
外伝は前スレと、このスレのどちらでも大歓迎ですよ!
前スレに書く場合はこちらで宣伝してもらえると嬉しいです。
306
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/16(月) 22:56:10
「なんだ?……」
一部の箇所で「泡」が大きく広がっていることにミヤビは気づいた。
細かな泡の集合体はまるで真っ白いあの雲のように見える。
橋の全体を覆うほどには大きくないが、向こう側が見えにくくなっているため
何が行われているのか判別がつかない。
「あれは確か……」
「モモコ、知っているのか?」
「うん。だってうちのマナカちゃんを苦しめた張本人なんだもん。」
察しの通り、この泡を発生させたのは新人番長のリカコ・シッツレイだ。
彼女の扱う固形石鹸は菌以外の何者も殺せぬほどに弱いが、
味方をサポートする能力においてはなかなかのものを持っている。
例えば、泡の向こうにいる銃撃手の姿を隠すことくらいは簡単に出来るのである。
「弾丸!」
泡壁から2発の銃弾が飛んできた。狙いはミヤビとモモコだ。
いくら二人が強者とはいえ、撃ってくる場所もタイミングも分からぬ攻撃までは避けられない。
これは喰らうのも止むなしと思ったところだったが、
三節棍を振り回して弾丸を弾いたシミハムのおかげで、なんとか助けられる。
「団長!流石です!」
「助かった……あぁ、一安心。」
「いやモモコ、安心なんかさせて貰えないみたいだぞ……」
「げっ!」
ミヤビとモモコを狙う銃弾は2発程度では終わらなかった。
今まさにバン、バン、バンと連続で襲いかかって来ている。
発砲の勢いで泡の壁がかき消されるのではないかと期待したが、
リカコが発生させるスピードの方が上回っているため依然姿を確認出来ない。
故にベリーズも、このガンナー達が本業でないことには気づいていないだろう。
「マーチャンさん\(^o^)/すごい〜\(^o^)/」
「もう!全然見えないから撃ちにくい!!……もう覚えたからいいケド。」
一人目の銃撃手は帝国剣士のマーチャンだった。
銃自体はその辺で調達した安物ではあるが、
なんでもすぐ覚える天賦の才で、見事に扱えているのである。
「マホです……ごち。」
「メイメイさんんんんんんんマホの真似似てる(^o^)(^o^)(^o^)」
そしてもう一人。
ただの拳銃をライフルのように構えているのはメイ・オールウェーズ・コーダーだ。
番長きってのスナイパー、マホのモノマネをすることでその腕前までも再現しているのである。
格上・食卓の騎士の演技は1秒が限界だが、後輩のマネならいくらでも続けられるため
まだまだミヤビとモモコを追い詰めることが出来るのだ。
307
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/18(水) 12:59:06
マーチャンとメイによる射撃はとても有効だった。
アイリとエリポンも継続してボールを打ち続けているため、ベリーズも自由に動くことが出来なくなっている。
更に鉄球を握ったマイミが投球のタイミングを虎視眈々と狙い続けているので、
そちらにも注意を払わねばならない。
船が橋から十分遠ざかるまで防衛し続けるのはなかなかに骨の折れる作業だった。
そんな攻防を続けている中で、サユキが海面で起きた異常に気付き出す。
「あ!誰か浮かんできた……カリンかな?」
船に近いところで何者かが海中から浮上してきている。
先ほどミヤビに蹴り落とされたカリンが上がってきたのかと推測したが、
カリンにしてはやや身長が高すぎていた。
「え!?……ハル……なの?」
浮かんできた者の正体はハル・チェ・ドゥーだった。
白目をむいているし、明らかに気を失っている。
泳ぎが得意だと息巻いていたというのに、今の姿は溺れているようにしか見えない。
何故ハルがこんな目にあったのか、そして何故カリンは上がってこないのか、
その理由は、海中の支配者であるチサキが動いたからに他ならない。
(あの人は確かマナカちゃんを刺したカリンって人……許せない!)
チサキは両手で海水を包み込み、水鉄砲のような形でカリンの脚へと噴出させた。
チサキは極度の緊張しいなため、並の人間より汗をかきやすくなっている。
そうして発せられた粘着性の強い汗が海水と混ざり、
動きの自由を奪う粘液へと変化するのだ。
(え!?両脚がくっついて、動かない!?)
所詮は汗なので痛みのようなものはまるで無い。
それに粘着性だってトリモチほど強力ではないため、振り解けば簡単に取り外すことが出来る。
だが、魚群の前でそんなワンアクションに気を取られるのは命取りだ。
チサキの指示を受けた魚たちはカリンのお腹へと次々と突撃していく。
(〜〜〜〜〜〜!!!!)
こんなことをされたら口の中に含んでいた空気を吐き出さざるを得ない。
外に出て空気を補給しようにも魚が壁を作って邪魔をする。
いくら戦士として強かろうと、海の中で魚に敵うはずがないのだ。
結果としてカリンもハルと同様に溺れてしまう。
(ふぅ……緊張したけど、2人目も倒したぞっ!)
308
:
名無し募集中。。。
:2016/05/18(水) 20:02:26
チィちゃんなかなかやるなw
そういやラジオで水泳得意って言ってたなぁ
309
:
名無し募集中。。。
:2016/05/18(水) 21:38:10
不忍池でアトランティスにロビンマスクが負けた時みたいだなw
310
:
名無し募集中。。。
:2016/05/19(木) 02:24:32
前スレで外伝始めさせて頂きました
よろしくお願いします
311
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/19(木) 08:49:11
さっそく見させていただきました!感想は向こうの方に書いています。
「始めた」ということは続きもあると言うことなので、
期待して待ってます。
312
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/19(木) 12:56:57
ちょっぴり調子に乗りやすいチサキは、水中戦ならば自分は無敵だと思ってしまった。
確かに魚を操る能力は便利だし、チサキ自身も泳ぎが大得意。
相手が帝国剣士だろうと、番長だろうと、難なく勝利を収めることが出来るだろう。
ところが、数秒後にはそんな自信も吹っ飛ぶことになる。
(え!?あれはなんだろう……)
チサキが目にしたのは、魚雷の如き速度で海中を突っ切る「人間」の姿だった。
船へと向かっているので本来ならば止めなくてはならないのだが、
その泳力はチサキどころか本物の魚さえも越えているため、どうにも出来ない。
おそらくは魚群で壁を作っても1匹残らず弾き飛ばされてしまうだろう。
(怖いなぁ……近づきたくないから放っておこう。
そろそろ苦しくなってきたし、息継ぎしなきゃ。)
人間である以上、酸素の補給は必要。
それはチサキも例外ではなかった。
また大量の空気を肺へと送り込むため、海面から顔を出そうとするチサキだったが……
「ぎゃ!」
その矢先に何者かに顔を踏んづけられたため、残念なことにチサキは気絶してしまった。
こんな海のど真ん中で誰が踏んだのかと言うと、人間大砲としてアーリーに飛ばされたオカールだった。
オカールの全体重がチサキの顔面にのしかかったのだ。
「おーーーい!!飛ばしてくれたのはいいけど全然船に届いて無いじゃねぇか!!
たまたま都合の良い足場が有ったから助かったけどよぉ!!」
「ごめんなさーい!だってオカール様は重……」
「わーーー!言うな言うな!分かったからそれ以上言わなくて良い!!
こっからは自力で船に飛び移ってやるよ!」
オカールはチサキの顔を蹴り上げてJUMPし、船の甲板に飛び移ろうとした。
ベリーズとしては勿論そんなことを許せるわけが無い。
先ほどカリンを落としたように、ミヤビが迎撃へと向かう。
「オカール、ここは通さないよ。」
「ミヤビちゃん!望むところだ!!」
313
:
名無し募集中。。。
:2016/05/19(木) 13:32:52
JAUPきたー
314
:
名無し募集中。。。
:2016/05/19(木) 18:53:51
エイヤサ!
315
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/19(木) 21:02:03
強い殺気を持てばシミハムの「無」をも打ち破ることが出来る。
……というのは先ほどアイリが実践してみせた通りだ。
そして今、同様のことをオカールが見せつけようとしている。
凶暴性が具現化されたような狼の群れが出現し、ミヤビの全身にドンドン噛み付いていく。
生身の体はもちろん、鉄で出来た顎や胸板さえも砕かんばかりの勢いだ。
普通の人間であればSHOCK!に耐え切れずにぶっ倒れてしまうところだろう。
しかし、ミヤビは怯まない。
オーラは所詮オーラ。本当に怖いのはオカールの両手に装着されたジャマダハルだということを理解しているのだ。
短い脇差を構えては、空中からの両突きを見事に防ぎきる。
「甘い!そんな攻撃で乗り越えられると思うな!」
(チッ、殺気も出してないのにこの強さかよ……じゃあ次はこうだ!)
ジャマダハルを脇差に当てた衝撃を利用して、オカールはまた高いところへ跳び上がる。
この時のオカールは「サクッと世界羽ばたく、そんなPowerはいかが?」とでも言いたげな顔をしていたため、
何かしでかすであろうことを感じたミヤビは最大限に警戒した。
「さすがミヤビちゃん、隙を見せないねぇ……
でもこの攻撃は隙とかそういうの関係ないから!!」
オカールは自身が落下するのと同時に、下方向へと無数のラッシュパンチを繰り出した。
その手数は尋常じゃなく、もはや人の目で捉えることが不可能なくらい多い。
しかも一撃一撃がジャマダハルによる鋭い斬撃であるので、
小さな脇差では到底防ぎきることが出来ないだろう。
言うならば考えなしのスピードとパワーのゴリ押し。
このやり方がオカールには一番合っているのだ。
ところが、こんな状況だと言うのにミヤビは冷静だった。
「まともにやり有ったら怪我しちゃうな……一対一の勝負ならね。」
「!!」
ミヤビに攻撃が届くよりも早く、オカールの身体が宙に浮いたまま停止してしまう。
本来ならそんなことは有り得ないのだが、この現象の理由にオカールはいち早く気づいた。
身動きを奪う「糸」の存在をはなから知っていたのだ。
「あーうっとおしい!モモコだろコレ!」
「せいかーい。分かっちゃった?」
「ミヤビちゃんはこんな卑怯なマネしないもんね!」
「まぁ!卑怯とは失礼ね。」
気づけばオカールはミヤビとモモコの2人に囲まれていた。
橋からの攻撃をシミハムが(汗だくになりながらも)一手に引き受けたことで、この状況を作り出したのだ。
いくらオカールが強いとは言っても、食卓の騎士2人が相手では分が悪い。
このまま糸を操られて海に落とされてしまうのがオチだろう。
だが、この状況でもオカールは絶望などしていない。
そもそも1対2の戦いとは思っていなかったのだ。
「来るぜ、魚雷がよ!」
「「!」」
オカール達のいる反対側からバシャンと言った大きな音が聞こえてた。
そしてその音を出した主は、まるでトビウオが跳ぶかのように船へと乗り込もうとしてきている。
顔に負けず劣らずの魚っぷりに誰もが驚かされたことだろう。
「『確変"派生・海岸清掃"』からの〜〜『確変"派生・ガーディアン"』!!」
「「ナカサキ!!」
316
:
名無し募集中。。。
:2016/05/19(木) 23:24:46
ナカサキ成長したな
もはや別人のようw
317
:
名無し募集中。。。
:2016/05/20(金) 00:06:39
でもナカサキって確か前は
・戦場で銃撃されてもすべて弾いたり
・バーサーカー状態のミキティ転ばしたり
・勝つためには自分の頸動脈切るほどの覚悟を見せたりと
特別派手な勝利や見せ場はなくても地味にすごいことしてた気がする
318
:
名無し募集中。。。
:2016/05/20(金) 00:12:51
“魚雷”っていうくらいだから船の動力部分を破壊してから乗り込むのかと思ってたw
319
:
名無し募集中。。。
:2016/05/20(金) 08:19:20
気づかれる前に「魚雷が来る」と教えるオカール
不意を衝く作戦かと思いきや一瞬でも身構える時間を与えてるw
320
:
名無し募集中。。。
:2016/05/20(金) 10:54:58
>>318
しーっ!w
321
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/20(金) 12:17:27
船に突撃した時のナカサキは強い殺気を放っていたため、
他の食卓の騎士の例に漏れずオーラが具現化されていた。
ナカサキのオーラと言えばいかにも弱そうな奇妙な怪物であったが、今は違う。
なんと、その怪物の容姿がウロコやエラの生えた半魚人風のグロテスクな生物に変化していたのだ。
それだけでも帝国剣士や番長、KASTらに衝撃を与えたというのに、怪獣は更にもう一段階変化する。
ナカサキが『確変"派生・ガーディアン"』と叫んだのに連動して、全身を鎧で覆った騎士のような姿になっていった。
このようにオーラの形をコロコロと変える食卓の騎士は初めて見るので、一同は戸惑いを隠せないようだ。
「ナカサキが本当に凄いのは生身の肉体の方ですけどね〜」
アイリがそう言ったことで視線はナカサキの身体に集まる。
するとどうだろうか、普段は頼りないと思っていたその筋肉が全身パンパンに膨れ上がっているではないか。
刃さえも跳ね返してしまいそうな程にカチカチになったその筋肉はまさに鎧そのもの。
このように己の筋力を自在に操作することがナカサキの必殺技である「確変」なのである。
瞬間的なパワーであればキュート随一、だというのはマイミも認めている。
「水泳時には泳ぐための筋力を、白兵戦では戦い抜くための筋力を強化出来るのがナカサキの強みだ。
私にはあの芸当はとてもじゃないが出来ないな。日々の訓練の賜物だろう。」
ナカサキのオーラの意味に気づき始める者も、チラホラ現れ始めた。
要するに、あの怪獣達は主人であるナカサキの状態をリアルタイムに表現しているのだ。
攻撃、防御、移動、踊りなどの様々な用途に合わせて筋肉量を操作するのに対応して、
怪獣も姿形を自由自在に変えていく。
今のナカサキはイメージ通り、ガーディアンとして戦うために、船の甲板に足を踏み入れた。
「まずいよミヤビ!ナカサキにまで加勢されたら大ピンチになっちゃう〜!」
「白々しいぞモモコ……ガーディアンならベリーズにもいる事は分かってるだろうに。」
ミヤビがそう言うのと同じタイミングで、船の入り口からとある人物が出てきた。
そいつが何者かなんてことは一目瞭然。説明要らずですぐに分かる。
それは何故か?理由は簡単だ。
こんなに巨大な女性は有史の中でも彼女くらいしか存在しないからである。
「クマイチャン!!」
「ナカサキ……ここは通さない!!!」
322
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/20(金) 12:18:30
不意打ちの有効性よりもその場のカッコよさを重視しちゃったということでご理解くださいw
323
:
名無し募集中。。。
:2016/05/20(金) 13:51:27
ライバル対決きたー!今も引き分け続けてるのかな?
「確変」はかつてのあの能力(名前ど忘れ)が進化した力なんだね
324
:
名無し募集中。。。
:2016/05/20(金) 14:09:19
確変はかつても確変だった気が・・・
ちなみにほぼ同じ原理で体の一部のみを変えることもできた吉澤さんのはたしか白熊化だったかな?
325
:
名無し募集中。。。
:2016/05/20(金) 16:44:51
ナカサキvsクマイチャン!
はじめの一歩の一歩対宮田みたいにあれからずっと引き延ばしになってたりしてw
326
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/21(土) 13:05:30
いつもの日常ならばブランチでも食べたくなるような昼下がりに、
クマイチャンのような巨人が出現したので若手らは凍りついてしまう。
威圧感で言えば他のベリーズも変わらないのだが、
自称176cmという規格外のサイズが更にビビらせているのかもしれない。
特に過去に直接対峙したことのあるサヤシや番長たちにとっては、心臓を鷲掴みにされる思いだ。
そんな化け物が相手なのだから比較的小柄なナカサキはすぐに吹っ飛ばされてしまうと思われたが、
全てを薙ぎ払わんとするクマイチャンの長刀を二本の曲刀で見事に受け止めていた。
「よく止めたね……私が出てくるって予想してた?」
「何千回剣を交えたと思ってるの?クマイチャンの攻撃を見切ることなんて簡単なんだからね。」
「ふふっ、そうこなくっちゃ。」
話し口調だけみれば同年代の会話のように見えるが、その表情はどちらも冷徹そのものだった。
クマイチャンに至っては殺し屋のような目をしている。
お互いに強い殺意を持ちながら、鍔迫り合いを続けていく。
「あの分だと決着が着くのは当分先ね。オカール。」
「なにが言いたいんだよ、モモコ。」
「残念だけどナカサキにはオカールに加勢する暇は無いってこと。
そろそろ海に落としちゃおうと思うんだけど、覚悟はできてる?」
「……しょうがないな、落とすなら落とせよ。」
「あら、やけに素直なのね。」
「時間は十分に稼げたからな。」
「!?」
本来時間を稼ぎたいのはベリーズの方だったはず。
船が橋から十分に離れればそれだけでミッションは完了となるからだ。
では何故オカールがこのような発言をしたのか……その理由はすぐに分かる。
「団長!!大丈夫ですか!?」
327
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/21(土) 13:06:31
前作も名前は確変でしたね。
今作では強化する部位を器用に選べるようになりました。
328
:
名無し募集中。。。
:2016/05/21(土) 13:45:27
確変の弱点は解消されてるのかが気になるところ
されてるとしたらどのように?
前作では白熊でも比較的対処はされてても克服とまではいってないくらいだったが・・・
329
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/22(日) 16:53:34
オカールの発言とほぼ同じタイミングで、バキッと言う破壊音が聞こえてきた。
その先ではベリーズの団長、シミハムが腹を抑えて苦しそうにうずくまっている。
近くに鉄球が転がっていたので、モモコは誰の仕業なのか瞬時に理解することが出来た。
「マイミか……」
モモコやミヤビ、そしてクマイチャンがキュートに応対している間、
シミハムは橋からの遠距離攻撃を全て三節棍で弾き飛ばしていた。
超人的な反射神経と巧みな戦闘技術がそれを可能としていたのだが、
1人で戦う時間があまりにも長かったため、ひどく消耗してしまったのである。
相手が格下だけならば疲れた身体でもなんとか踏ん張れただろう。
しかし、橋にはマイミがいる。アイリだっている。
いくらシミハムと言えどもそれらの強者の攻撃をただ受け続けるだけというのは辛かったようだ。
そして結果的に、マイミのブン投げた鉄球に棍を折られ、腹に強烈なダメージを負ってしまったという訳である。
この成果には帝国剣士、番長、KASTらも歓喜する。
「凄い!やっぱりマイミ様とアイリ様は凄いっちゃ!」
「それもそうやけど、これはカナたち若手勢の力も通用しとる証拠やで!」
「遠い存在と思ってたけど……ベリーズの足首を掴めるところまで来てたのかもね……」
ただの一撃のおかげで、連合軍の士気は上がりに上がっている。
逆にテンションが落ちているのはベリーズとカントリー達だ。
モモコはしまったという顔をしながら頭を抱えている。
「やっちゃったなぁ……ミヤビ、次どうする?」
「……」
「ミヤビ?」
「遊び過ぎたんだ……」
「ミヤビ?どうした?」
「これ以上調子に乗らせる訳には行かない!!本気だ!本気で相手してやる!!」
ミヤビがそう言った瞬間、この空間にいるすべての者は無数の刃によって全身を切り裂かれてしまった。
もちろん本物の刃でないことは言うまでもない。
これはミヤビの凶暴凶悪な殺気が形となった諸刃の剣なのだ。
弱者だろうと強者だろうと、相手だろうと味方だろうと関係なく、鋭い刃物で八つ裂きにしていく。
あまりにリアル過ぎる苦痛に、帝国剣士、番長、KAST、そしてカントリーの面々は戦意を喪失してしまった。
これだけでも十分脅威なのだが、ミヤビはまだ動きを止めなかった。
オーラは所詮オーラ。
相手を真に屈服させることが出来るのは自分の腕だけである事を理解しているのである。
「オカール、遊びは終わりだ。」
ミヤビはオカールに絡みついた糸を、脇差でスパスパと切断していく。
自身を宙に浮かせていた糸が切れたということは、オカールの行き先はただ一つ。
容赦なく海へと落ちていくのだった。
「うわああああああああ!」
330
:
名無し募集中。。。
:2016/05/22(日) 18:54:02
戦いが始まってしばらく経つけど船と橋との距離はどのくらい離れてるんだろう?
ところで過去ログ置き場にアクセスしてもトップページいっちゃうんだけどどうやって読むの?
331
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/23(月) 12:43:54
船と橋は、声が聞こえて表情も確認できる程度にしか離れていません。
作中では大して時間が経ってないってことになりますね。
で、まとめサイトですが恐らく消されちゃってますね……
長期間放置しちゃってたので、仕方ないとは思ってます。
近いうちに復旧しますね。
332
:
名無し募集中。。。
:2016/05/23(月) 13:11:29
勝手ながら自分が読み返したいときにお世話になってるのを貼らせてもらうと
ここと
http://ifs.nog.cc/ookami-bc.hp.infoseek.co.jp/txt/kingdom.html
ここ
http://www29.atwiki.jp/masao001/
でマーサー王は大体読めるかと
333
:
名無し募集中。。。
:2016/05/23(月) 15:24:52
ありがとう
334
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/24(火) 01:06:02
過去ログの紹介をしてくれてありがとうございます。
そのページをもとに、また過去ログwikiを復活させます。
335
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/24(火) 12:57:05
更新は夜になりそうです。
336
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/24(火) 23:03:01
オカールを落とした勢いそのままに、ミヤビはナカサキの背後にまで回り込んだ。
本来ならば一騎討ちの真剣勝負に水を差すなんて気が引けるのだが、
緊急時ゆえにそうせざるを得なかった。
「先に謝る!クマイチャンごめん!」
「「!?」」
ナカサキは両手の曲刀でクマイチャンの剣を受け止めるのがやっとだったので、
背後からくる脇差を防御するために手を回すことは出来なかった。
だが、ナカサキにはこんな状況でも使える防御法が残されている。
(背中の筋肉を強化する!)
背筋を一瞬にして逞しく膨らますことによって、
脇差程度の刃ならはね除けられる身体に変化する。
これもナカサキの必殺技である「確変」の応用だ。
全体の筋肉量のバランスから、腕の力がやや落ちるのが難点ではあるが、
いつどんな時でも自由にガードを固められるのは非常に効果的だ。
おかげでちょっとやそっとのダメージなら無視することができる。
もっとも、ミヤビの攻撃が「ちょっとやそっと」に当てはまるかと言うと、そうでは無いのだが。
「はっ!!」
ミヤビは通用しなかった脇差をそこらに投げ捨て、
その代わりに自らの顎でナカサキの背中に斬りかかった。
ミヤビの顎に仕込まれた鉄製の刃は通常の刀の何倍も鋭いため、
硬くなった背中もバターのように切断し、大量の血を流すことに成功する。
端から見れば非常に馬鹿らしい光景かもしれないが、これが何よりも効くのだ。
「あ……あぁ……」
「いくら防御力を強化しても私の刃は防げないよ。
まぁ、"海岸清掃"や"JUMP"、"Steady go!"で場を掻き回されたら流石に面倒だったけども、
クマイチャンとの決闘中だったからそんな余裕は無いよね。」
「ミヤビ!ナカサキとは私が戦ってたのに!」
「だからさっき謝ったじゃないか。」
「もう!」
ここまでの一連の流れを見て、マイミはひどく絶望していた。
せっかく善戦しかけていたというのに、
ミヤビが少し本気を出しただけで連合軍が壊滅状態になったことがSHOCK!だったのだ。
大半の若手は殺人オーラにやられ、オカールは落とされ、ナカサキも今まさに船から追い出されようとしている。
残る戦力はマイミとアイリのみ。一体どうやって戦えと言うのか?
「くそっ……せめて私が泳げれば……!!」
337
:
名無し募集中。。。
:2016/05/25(水) 01:15:58
オカール普通に落ちたのかw
何しにいったんやw
338
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/25(水) 13:00:37
マイミにはもう、投げるつけるための鉄球は残されていなかった。
つまりは連合軍には攻撃の手立てが無いということになるのだが
諦めきれないマイミは自分たちの足場に拳を叩きつけて、橋の破片を生成していった。
これらを投げることによってギリギリまで攻撃しようと考えているのだろう。
だが、そんな戦法が通用しないのは火を見るよりも明らかだ。
これまでは若手戦士らのサポートが有ったからこそ、やっと一球だけぶつけられたというのに、
それらの支援抜きでどうやってモモコやミヤビ、クマイチャンを倒しきることが出来ると言うのだろうか。
せめてアイリの協力があれば可能性が見えてくるかもしれないが、キッパリと拒否されてしまう。
「今回は諦めましょう。 ベリーズを倒しきるには戦力が不足しています。」
「何故だ!まだ勝負はついていないだろう!」
「海に落ちた仲間を救出するのが先決だって言ってるんですよ。
ナカサキはきっと平気でしょうけども、ハルとカリン、そして糸まみれのオカールが無事である保証はありません。
勝てるかどうかも分からない勝負に固執して、次回以降の勝率を落とすのは馬鹿げてます
。」
「くっ……でも、その次回があるかどうかは……」
「ありますよ。」
「えっ?」
「ベリーズにリターンマッチを申し込みましょう。 お願いすれば、きっと聞いてくれます。」
「え?え?え?」
マイミは困惑するしかなかった。
言葉の意味自体は理解できるのだが、アイリがこんな提案を自信満々に言い放つ理由が分からないのだ。
ベリーズは敵なはず。そんな敵がこちらの有利な案を聞き入れてくれるのだろうか?
マイミの頭の整理がつくより先に、アイリがモモコにお願いをし始める。
「モモコー。今日は私たちの負けです。
でもやっぱり諦めきれないので、いつか再戦しませんかー?」
「しょうがないなー。いーよー。」
「????????」
マイミの頭上にはクエスチョンマークが大挙して押し寄せていた。
何故アイリはこんな提案を出来たのか?
何故モモコはそれを簡単に承認しているのか?
全くもって分からない。
339
:
名無し募集中。。。
:2016/05/25(水) 14:27:42
しかしせっかくのチャンスをここまで何もできなかったとなると作戦立てたカナナンが責められるのではないか
340
:
名無し募集中。。。
:2016/05/25(水) 15:19:42
あぁ薄々そうじゃないかと思ったけどやっぱりそうなのねwそれならまだ「彼女」が出てこない理由も納得だわ
341
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/26(木) 13:08:13
彼女とはいったい誰のことなんでしょうねw
心当たりがありすぎて……
342
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/26(木) 21:07:57
ベリーズにはアイリの声に耳を傾けるメリットは無いように思えた。
全てを無視してこのまま船を進めたとしても、何もおかしくは無いはずだ。
だと言うのに、モモコはリターンマッチの依頼を受け入れている。
ミヤビやクマイチャンも頷いていることから、モモコが独断で決めたというワケでも無いらしい。
こんなうまい話があるのだろうか?
甘い罠に気をつけるべきでは無いのか?
いつもは同僚に簡単に騙されるマイミも、今回ばかりは疑いにかかった。
「ひょっとして、私たちを油断させている間に王やサユに危害を加えるつもりじゃないか……?」
「それはないよ!」
「!?」
突然クマイチャンが大声を出して否定したので、マイミは驚いた。
そしてその驚きが止まぬうちにミヤビが言葉を続けていく。
「今すぐ2人をどうこうするってことは無いよ。約束していい。
だって、そんなことをしたら私たちの目的が果たせなくなるからね……
少なくとも、リターンマッチが終わるまでは丁重におもてなすつもりだよ。」
「!!!……ではそのリターンマッチは、いつ行われるんだ!!!」
今のマイミは非常に興奮していた。
考えがまとまらぬうちに次々と新情報が降ってくるので、相当混乱しているのだろう。
そんなマイミとは対照的に冷静なモモコが、海面に浮かぶチサキを糸で作った網で救助しながら返答する。
「こっちも準備があるからすぐにいつとは言えないけど……
場所と日時が決まったら必ずこの子たちを寄越すから、今度は虐めないであげてね。」
この子たち、とはモモコの部下であるカントリーの面々のことだ。
連絡役として有効活用するつもりなのだろう。
しかし再戦が決定したとは言え、いつどこでやるかも未定。
その上、伝達はベリーズの配下によって行なわれるというのは怪しいどころの話ではないが、
マーサー王の命が助かるかもしれないという希望の言葉を、マイミは信じたいと思ってしまった。
「本当に……無事でいてくれるのか……」
343
:
名無し募集中。。。
:2016/05/26(木) 23:41:08
帝位継承の時といい再戦好きやなw
344
:
名無し募集中。。。
:2016/05/27(金) 06:18:10
マイミだけが知らない事情がありそうだw
345
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/27(金) 08:10:40
ここはノーコメントでw
346
:
名無し募集中。。。
:2016/05/27(金) 10:32:49
>>345
ノーコメントw
>>332
確か前読んだ時に何話か抜けていたような気がする(どこかはうろ覚えw)から作者さんに保管して貰えると嬉しいな
347
:
名無し募集中。。。
:2016/05/27(金) 11:07:05
まだ途中までしか読んでないけど確かにちょいちょい抜けてるね
348
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/27(金) 12:58:10
ベリーズの船が見えなくなってから四、五時間後。一同は宿の大部屋を借りて、そこに集まっていた。
橋の上の戦いで気を失った戦士たちも、ボチボチと目を覚まし始めている。
ミヤビに斬られたナカサキを除けば、負傷者は殆ど居ないというのは幸いであったが、
部屋の中のムードはひどく暗かった。
いくらマーサー王とサユの無事が保証されたとは言え、やはり敗北は悔しいのだ。
その中でも特に落ち込んでいるのはカナナンだった。彼女は色々と抱え込みがちな性格なのである。
「挟み討ちも、橋からの攻撃も、カナの考えた作戦はみーんな失敗しちゃいました……
ごめんなさい、本当にごめんなさい……」
頼んでもないのに土下座までするものだから、みんな困り果ててしまう。
誰もが声をかけにくいと思っている中、オカールがカナナンの肩をポンと叩きだす。
「確かに負けちゃったけどさ、あの作戦は結構面白かったぜ?アチコチ飛び回ってよぉ。
モモコの奴が焦るのは久々に見たし、それにシミハムなんかはほぼ倒したようなもんじゃん!
あともう一歩だったと思うけどなー。」
「じゃあなんで負けたんですか!やっぱり作戦の詰めが甘いから……」
「なんでかって、そりゃやっぱりミヤビちゃんが強いから……
おっと、ミヤビの奴が意地を見せたからじゃないかな。」
オカールの言う通り、ミヤビが殺人オーラを出した時点で若手戦士は無力化されていた。
何故その殺気を最初から放たなかったのかは分からないが、
それに対抗出来ない限りは結局キュート頼りになってしまうのである。
では帝国剣士、番長、KASTは居るだけ無意味か?
少なくとも、連合軍のリーダーであるマイミはそう思っていない。
「殺気を出すのはな、実は結構疲れるんだ。」
「えっ?……」
「だってそのためには敵を殺す思いで臨まなくてはならないだろう?
そんなのは疲れる。出来ればずっと笑っていたい。
そして、そう思っているのはベリーズも同じはずなんだ。」
「!」
つい昨日までは、ベリーズ戦士団は極悪非道な性格に変貌してしまったと思っていた。
だが橋の上の戦いを経ることで、そうでないことを知ることが出来た。
「ベリーズだって、今のキュートのようにリラックスする時間帯があるだろう。
そこを上手く利用して、若手のみんなが活躍できるような作戦を練ることが出来るのは、
カナナン、君だけなんだ。」
「!!」
「今はまだ上手くいかなくたって良い。
リターンマッチの時に初めて成功すればそれだけで良いんだ。
マイが居ない今、私たちの頭脳は君しかいない。やってくれるな?」
「はい!!」
カナナンの表情が明るくなるのと連動して、周囲の雰囲気も良くなっていく。
自分たちもリターンマッチまでに強くなれば、貢献できることを理解したのだろう。
だが、そのリターンマッチはいつ開催されるのだろうか?
みんながそう思ったところで、何者かが部屋の扉を叩きだす。
「どうもー、カントリーのリサ・ロードリソースでーす。」
349
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/27(金) 12:59:39
>>332
のwikiの方はスレッドそのものを載せているので、
多少見にくいかもしれませんが、話自体は網羅されていると思いますよ。
いつか時間の取れる日に話の部分だけを抽出したいですね……
350
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/27(金) 13:01:27
あーやっぱり網羅はされてないかもです。
早めに動けるようにしますね。
351
:
名無し募集中。。。
:2016/05/27(金) 13:55:38
連絡早!w
前作保管は気長にまってます
352
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/28(土) 14:30:52
連合軍たちの集う大部屋のど真ん中にリサが居るというのは、なかなかに異様な光景だった。
リターンマッチについて連絡するためにここに来たというのだが、
オカールにはそれよりも先に聞きたいことが、一つだけあった。
「なぁ……どうしてそんなに全身ずぶ濡れなんだ?泳いできたのか?」
「泳いだっていうか、泳がされたんですよ。」
(モモコにか……)
「なんでも次の戦いのアイデアを船での移動中に思いついちゃったみたいで……
チサキちゃん程じゃないけど私も泳ぎには自信がある方ですから、伝言係を頼まれたんです。
『今すぐ行きなさーい』って言われた時は『嘘でしょー!?』って思いましたけどね……」
「そのチサキちゃんって子に泳がせればいいのにな。意味わからん。」
(さっきアンタが蹴ったんだよ!気絶するほどにね!)
とりあえずリサがここまで来た経緯は判明した。
次に気になるのはやはりリターンマッチの日時と場所だろう。
リサ・ロードリソースはその件について、出し惜しみなく伝えていく。
「開催日はあさっての正午。場所はプリンスホテルです。」
「「「プリンスホテル!?」」」
日時が思ったより近かったことにも驚いたが、
それよりもホテルという意外すぎる施設が会場であることに一同は驚愕した。
そんな所で戦えるのか、一般人たちに迷惑はかからないのか等、様々な質問を投げかけたが、
リサは「行けば分かります。」の一点張りだ。
橋の上に続いて、またしても怪しすぎる開催地ではあるが、決まった以上は向かうしかない。
ところが、戦士の中にはそもそもその場所をイメージ出来ていない者も何人か存在していた。
「ねぇリナプー、プリンスホテルってどこにあるの?」
「アユミン知らないの?……あっ、そうか田舎の生まれ……」
「田舎じゃない!ただこの辺の地理に詳しくないだけ!」
「うーん、プリンスホテルはシバっていう公園の近くにあって、ここからそんなに遠くないんだけど
湾岸線を回るよりは湾を船で突っ切った方が楽なんだよねー。
あー、船乗りたーい。アイリ様、船用意してくださいよー。」
「えっ?船?……急に言われても困っちゃいますね……どうしようかしら……」
キュートのアイリを顎で使おうとするリナプーに、連合軍だけでなくリサ・ロードリソースまでも衝撃を受けた。
ひょっとしたらこのリナプー・コワオールドこそが一番の大物なのかもしれない。
はじめは困った顔をしていたアイリだったが、
何かを閃いたのか、途端に真面目な表情に変わっていく。
「いや、よくよく考えてみれば有りますね。心当たり。」
「え!本当ですか?」
「この辺りに常駐して警備任務にあたっているマーサー王国兵に頼めば、船の一つや二つは用意してくれるかもしれません。
もしも船に乗れるなら、次の戦いに備えてゆっくり休むことが出来ますね。」
プリンスホテルは比較的近い距離とはいえ、馬を足にして移動するとなるとやはり疲れてしまう。
目的地に時間通り到着したとしても、戦うにはスタミナ面で不利になるだろう。
だが、船を使えば「眩しすぎるalong the coast」や「海岸線、縁取るように続くこの道」を走る必要が無くなる。
つまりリナプーの案は楽をしたいように見えて、後のリターンマッチのことも考慮していた(かもしれない)案だったというワケだ。
話の流れを理解したマイミは、リーダーらしく流れをまとめていく。
「となると明日の夕方ごろまでは休養できそうだな。
アリアケに2日滞在し、その翌日のプリンスホテルでリターンマッチ……
それがベリーズとの最終決戦、ということか。」
353
:
名無し募集中。。。
:2016/05/28(土) 21:00:20
リナプー流石・・・w
354
:
名無し募集中。。。
:2016/05/28(土) 21:09:52
踊らされてるなぁ
355
:
名無し募集中。。。
:2016/05/28(土) 22:06:00
何気に気になるのは海に落ちたメンバーをどうやって回収したのか
切られはしても意識はありそうなナカサキが動けない3人を引きずって泳いだとか?
356
:
名無し募集中。。。
:2016/05/29(日) 02:43:50
船からのお使いならマナカの方がよかったんじゃ・・・
飛べるから濡れることもないし
357
:
名無し募集中。。。
:2016/05/29(日) 02:53:16
カリンに腹刺されたばかりやん
358
:
名無し募集中。。。
:2016/05/29(日) 03:19:58
いやー、船の上でチサキを見守ってる描写もあったし
この物語の世界の中なら戦うとかじゃなく普通に動くくらいなら大丈夫かなと
359
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/29(日) 16:27:49
落ちたメンバーを助けたのはアイリです。
満足に動けて、且つ泳げるのは彼女だけなので。
ナカサキも多少は動けたかも。
リサが伝言に向かったのも、マナカだと先日の負傷が残っているからですね。
あと、今連れてる鳥たちが連合軍を怖がっているという理由もあります。
360
:
名無し募集中。。。
:2016/05/30(月) 00:41:59
いかんw続編が始まったことによって前作を最近また読み返したから
この世界じゃちょっと切られたくらいなら平気だろって気分になってしまってるw
新人は確かに厳しいかもだけど食卓の騎士なら(特にナカサキは)まだ動けそうだなって思い込みが・・・
鳥が怖がってというのは盲点でしたが、言われてみればなるほど・・・ですね
動物の中でも鳥は特に敏感そうだし
361
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/30(月) 08:44:06
前作は無茶ばかりしてましたからねw
ナカサキが弱くなったというよりは、ミヤビの斬撃が強かったという解釈でお願いします。
362
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/30(月) 12:59:41
「それじゃあ、確かに伝えたので私は帰りますね。」
「待ってくれ!!」
帰宅準備を始めるリサ・ロードリソースをマイミが引き止めた。
彼女にはどうしても確かめておきたい事が有るのだ。
「マーサー王とサユが無事だと言うのは、事実なのか?……」
「事実です。 お世話係りである私が言うんだから間違いありません。」
「そうか、君が2人の世話を……」
「ただ、なんらかの理由で私が無事に帰れないとしたら……その時は保証出来なくなっちゃいますけどね。」
「……なるほど、分かった。無事に帰すよ。」
「では、失礼します。」
元より連合軍はリサを人質にとるつもりは無かった。
そうして得られる利益よりも、ベリーズを刺激して被る不利益の方が大きいと考えていたのだ。
こうして伝言係り兼お世話係りであるリサを解放した数時間後、
今度はアイリがとある少女を連れてくる。
童顔ではあるが身長が高く、脚もモデルのように長いこの少女は、
アリアケ周辺に駐在するマーサー王国兵の責任者だと言う。
「この子こう見えて凄いらしいんですよ〜、ほら、挨拶して。」
「はい!分かったであります! 私は"タイサ"と言うのであります!!」
「えっ?大佐?あなた、そんなに偉かったの?」
「大佐というか、タイサであります。」
「???」
口調はやけに丁寧だし、常に敬礼を忘れない姿勢も立派だが、
なんだか変な子が現れたなぁと言うのが一同の感想だった。
(自分たちを棚に置いて)こんな少女に責任者が務まるのかとも思っている。
ところが連合軍の中でただ1人、オダ・プロジドリだけは驚いたような顔をしていた。
「えっ?ど、ど、どうして?あなたはアヤ……」
「おっと、静かにするであります。」
タイサは鼻先に指を当てながら、オダに軽く微笑んだ。
理由は分からないが、素性をバラされたくないということを悟ったオダは素直に口を閉ざしていく。
(分かった。ここでは聞かない。でも後でちゃんと教えてね。
今は何をしているのか、そして、2人は無事なのかを……)
皆が静かになったところで、タイサはマーサー王国所有の船を連合軍に貸し出す旨を説明した。
決して大きい船ではないが、この場にいる全員が乗り込むには十分であるとのことだ。
他にも説明することは山ほどあったようだが、
タイサは急にそれを中断し、近くにいたトモ・フェアリークォーツをビシッと指差す。
「おい、お前生意気だな。」
「???……え?私に言ってる?」
「上官の説明を足組みながら聞くとは何事だ。」
「えーっと、上官って、君のこと?」
「口も悪いようだ。上官に対して敬語も使えないのか。」
「はぁ……こいつ、やっちゃっていい?」
トモがキレているのを感じた一同は焦りだした。
ここで喧嘩でも始められたら非常に厄介だからだ。
マイミとアイリも止めようとするが、それをオカールが更に制止する。
なんでも「面白いからギリギリまで見てようぜ」とのことらしい。
「大体さ、私は果実の国の出身なんだからマーサー王国のアンタを上官と思う気は無いんだけど?
いや、キュート様は尊敬できるけどさ。」
「国は関係無いであります。人間としての位を言っている。」
「なんでいかにも弱そうなアンタにそんなことを言われなきゃならないの?」
「じゃあ戦ってみるでありますか?」
「望むところだよ!何して戦う!?」
白熱してきた丁度その時、2人のお腹がキュルキュルと鳴り始める。
互いに長い間ご飯を食べていなかったので、お腹が空いているのだ。
そこで、2人は戦う種目を同時に思いつく。
「ちょっと表に出ろよ……良いとこ行こうぜ……」
「ふっ、この辺の店ならタイサの方が詳しいであります。」
363
:
名無し募集中。。。
:2016/05/30(月) 14:08:49
大佐はスパイなのかな?
364
:
名無し募集中。。。
:2016/05/30(月) 14:46:18
この二人は…ラー○ン対決かよw
そしてオダの「二人は無事」って言葉が気になる…あの子達何だろうか?
365
:
名無し募集中。。。
:2016/05/31(火) 05:03:30
ついにタイサが表に出てきたか
本当に王国兵なのかそれとも成りすましているのか・・・
366
:
名無し募集中。。。
:2016/05/31(火) 05:17:38
あ、でもアイリが嘘を見抜けるのならグルじゃない限り成りすますのは無理か
367
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/05/31(火) 12:52:29
トモとタイサは「Zwei」という名のラーメン屋に辿り着いた。
どこかの外国の言葉で「ニ」を意味する名を持つこの店は、数多の美食家を満足させたとして知られている。
「早食い勝負……ラーメンを先に飲み干した方が勝者ってワケだな。」
「そうであります。」
「逃げ出すなら今だぜ?さっきからブルブル震えてるじゃん。」
「これは武者震い。神の味を前にして興奮してるのであります。」
「ふん、言うだけあって舌は肥えてるようだね。」
2人がテーブル席空いててもカウンター席に座るのを、一同は窓の外から覗いていた。
特に大食いを自負しているカノンやハルは、この勝負を見届けることが出来るというだけでワクワクしている。
「このお店のラーメンはただ美味しいだけじゃない。だからこそ勝負の題材として相応しいんだろうね。」
「くそー!ハルも溺れたばかりじゃ無かったらありつきたかったぜ!悔しい!」
「あ、ハル!あれを見て!!」
「え!?」
タイサとトモの隣の席に、カリンがチョコンと座った事実にカノンとハルは驚いた。
この勝負は遊びではない。
中途半端な気持ちで席に着いたとなれば大変なことが起きてしまう。
「カリンさん……じゃなかった、そこの君も食べるでありますか?」
「うん!実は私もお腹すいちゃってて〜」
「やめとけカリン。悪いことは言わないから店を出た方がいいよ。」
「何よトモったら!私だってたまにはたくさん食べるのよ?
店長さーん、ラーメン大盛りをお願いしまーす!」
「「!?」」
カリンの注文にタイサ、トモ、カリン、ハルは天地がひっくり返るほどに驚いた。
これから起こる悲劇を思うと涙が出そうになってくる。
「カリン……私はこいつと決着をつけなくてはならないんだ。
だから、悪いけど助けることはできない……」
「何言ってるの?……トモとタイサさんも早く注文した方がいいんじゃない?」
「ラーメン、"小"で。」
「こっちも同じものを頼むであります。」
「えーー!?小盛りー!?」
いかにも食べそうな雰囲気の2人が"小"を注文したのでカリンは拍子抜けしてしまった。
ちょっとだけダラシないなと思っていた矢先に、
女性店主がカリンの前に「ラーメン大盛り」をドカンと置き始める。
「おまち!」
「え……?」
とてつもなく大きな器の上に、モヤシが天井近くまで盛り上がっている「ラーメン大盛り」を見て、
カリンは言葉をなくしてしまった。
ラーメンだというのに麺が全く見えないくらいにモヤシが敷き詰められている。
それになんだか全体的にひどく油っぽい。
その匂いを嗅ぐだけでカリンは失神しそうになってくる。
「やっぱり大盛りはヤバイっすね……カノンさん行けます?あれ。」
「さすがの私でも無理かな……よほどラーメン好きじゃないと小盛りを平らげるのも難しいと思う。」
カノンがそう言った丁度その時、タイサとトモの前にもラーメンがドンと置かれる。
大盛りよりは少な目だが、それでも大の大人が食すには厳しい量だ。
少なくとも、タイサやトモのような線の細い女子が食べるようなものではない。
「さぁ、勝負が始まるな。」
「分かってるでありますな?お前が負けたら問答無用で敬語を徹底するであります。」
「そっちこそ、私が勝ったら"お前"って呼ぶのを辞めろ。
私にはトモ・フェアリークォーツっていう名前が有るんだ。」
「約束するであります。まぁ、どうせ勝者はもう分かりきってるけど……で、あります。」
368
:
名無し募集中。。。
:2016/05/31(火) 14:37:46
この世界にも二郎があったかw
369
:
名無し募集中。。。
:2016/05/31(火) 22:30:19
二郎ってw健康志向のカリンには絶対無理なラーメンw
370
:
名無し募集中。。。
:2016/05/31(火) 23:56:09
やっぱりラーメンは飲み物なのか
371
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/01(水) 12:52:58
「始め!」
いつの間にか審判を務めることとなったアイリの合図で、トモとタイサは勝負を開始する。
「Zwei」をよく知る二人が真っ先にとった行動は、器の底に沈む麺と、山のようなモヤシの位置を入れ替えることだった。
これは「天地返し」と呼ばれる技。
麺から先に手をつけることで、時間経過によって伸びてしまうのを防いでいるのである。
技の発動後、勢いよく麺をすするトモを見てカリンは目を丸くする。
「本当に凄い!食べ方がプロ!!私が半熟玉子を食べてる間に食べ終わっちゃいそう!」
自分はトモやタイサのように速く食べられないことは自覚している。
だが、このまま残してしまうのは良くない。
そのためカリンは「チクタク動く高速移動」と「興奮状態による無痛化」を利用して、
サイボーグになることで大盛りラーメンに挑もうとした。
「よしっ!頑張るぞ…………やっぱり無理!!」
そもそもお腹の容量が少ないカリンはあっという間に音をあげてしまった。
いくら高速で動こうとも、いくらお腹の痛みを消そうとも、
食べられないものは食べられないのである。
やはり一部のプロしか太刀打ちできないのではないかと思ったが、
よく見てみるとトモも苦しい表情をしていた。
麺を半分たいらげたところで満腹感を覚えはじめたのである。
「どうしたでありますか?箸が止まってるでありますよ。」
「チッ……奥の手だ、これを使う!」
「なんでありますか!?その液体は!」
トモは小瓶に入った「赤い液体」をポケットから取り出した。
モーニング帝国での選挙戦で使った「リンゴジュース」のように見えるが、それは違う。
今のトモはもうジュースには頼らないと決めているのだ。
ではこの液体は何なのか?
トモは小瓶の中身をラーメンにブチまけながら答え合わせをしていく。
「ラー油だよ!それも激辛のね!!」
「なにぃ〜!?まさか、味を変えるつもりでありますか!?」
「そうさ!味を変えたら食べた物は別腹に入る!だからまだまだ食べられる!」
「な、なるほど……」
「減らすならまだしも加えているんだ。まさかルール違反とは言わないよね?」
「ラー油は調味料扱い……文句は言えないであります……」
ラー油を加えたトモは、先ほど以上のスピードで麺を口に運んでいく。
常人なら一口でギブアップするほどの辛さだが、トモにはこれが丁度いい。
「どうした?置いてくよ!」
「くっ……ならばこっちも奥の手を使うであります!」
372
:
名無し募集中。。。
:2016/06/01(水) 13:08:40
連帯保証人の頼みを拒否して拒否して拒否しまくった結果wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
http://waranews.livedoor.biz/archives/1598906.html
373
:
名無し募集中。。。
:2016/06/01(水) 15:22:42
ガールを呼ぶのかな?
374
:
名無し募集中。。。
:2016/06/02(木) 05:41:10
ラーメン食べるだけですら激闘へと変えてしまう作者さんすげぇw
375
:
名無し募集中。。。
:2016/06/02(木) 08:30:06
タイサがんばれ
376
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/02(木) 12:56:38
昼にあまり時間が取れなかったので、オマケ更新だけしますね。
ラーメン対決の決着は夜に書きます。
オマケ更新「小一時間前のZwei」
謎の女O「メグさーん、魚いっぱい釣ってきましたよー」
店長「うわっ、凄い数!どうしたの?」
O「なんかよく分からないけど、橋の下にいっぱい居たんですよ。」
O「食べきれないので、ラーメンのダシに使ってください。」
店長「気持ちはありがたいけど、ウチのベースは魚介じゃないし……」
謎の女M「この店が繁盛するためには深淵より出でし闇をイメージした漆黒のスープに変更した方が……」
謎の女U「スープどうこうより酒じゃない?そしたらお客さん増えるよ。」
店長「3人とも帰ってくれない?」
377
:
名無し募集中。。。
:2016/06/02(木) 13:01:53
LЯきたー!
378
:
名無し募集中。。。
:2016/06/02(木) 16:18:07
メグさん・・・?あのメグじゃないよなぁ
379
:
名無し募集中。。。
:2016/06/02(木) 16:38:09
村の後は上か田か…
他にいたっけ
380
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/03(金) 03:19:29
紛らわしかったかもしれませんね、メグは村上でも村田でもありませんw
正式な表記はMeguになります。
「Zwei サポートベーシスト」とかで検索すると何者か分かるかもしれません。
ラーメンの決着は夜と宣言しましたが、たぶん昼頃になりそうです、、、
381
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/03(金) 12:57:02
タイサは箸を置いて、店外へと出て行ってしまった。
まだ完食していないのに席を離れたものだから一同は驚く。
普通に考えれば「試合放棄」とみなされ、トモの不戦勝となるのだが、
当のトモ・フェアリークォーツの方がそれを認めなかった。
「この状況で逃げ出すような女じゃないでしょ。
一緒に戦ってきた私が、一番よく分かっている。」
トモの言う通り、タイサの闘志は衰えていなかった。
では何故に店の外へと出たのか?
それは事前に設置しておいた鉄棒で逆上がりをするためだったのだ。
「なにアレ!?いつの間にあんなモノが……」
「いやカノンさん、それよりも回転数の方がとんでもないですよ……!」
タイサは無言で黙々と逆上がりを繰り返し行っていた。
その回数も二回や三回では無い。
数十回もノンストップで回り続けているのである。
超こってりラーメンを食べた後に高速回転をしようものなら気持ち悪くなってしまうのではないかと心配したが、
ことタイサに限っては、こっちの方が調子が良いようだ。
「よしっ!お腹すいたであります!」
「カロリー消費はバッチリってワケね……」
逆上がりが行われている間も、トモは休まずに麺をすすり続けていた。
タイサのことだから、回転中の遅れを取り戻す自信が有るのだろうと推測していてのである。
そしてその予測は見事に当たっていた。
お腹を空かせたタイサが食すスピードは、さっきまで以上に加速していてのだ。
次第にトモのアドバンテージは縮まっていき、残量50グラムといったところで追いつかれてしまった。
「くっ!逃げ切れるか!?」
「いや!ここで追い抜いてやるであります!」
どちらも苦しい時間帯だ。本来ならばラーメンが嫌いになる程の苦痛だろう。
だと言うのに、トモもタイサも、笑みを浮かべていた。
その理由を「ラーメン大好き」以外に探すのは野暮かもしれない。
朝も昼も夜も夕方もずっと思うはお前のことばかり。
四六時中頭の中はしなやかな体 SO ボディライン
適度に濡れたおまえつかんでくちびるにそっと近づける
そうさトモとタイサはラーメン大好き女子戦士だ。
「トモ負けないで!」「トモ勝って!」「あとちょっとだ!」
「タイサ追い越せ!」「タイサすごいぞ!」「完食は近い!」
気づけば周囲には2人へのエールが鳴り響いていた。
トモだけでなく、ここまで健闘してきたタイサへの応援も少なくない。
いや、むしろ多いと言えるだろう。
大歓声の中で、トモとタイサは最後の一口を飲み込んでいく。
「ど……同時か……」
「もう……さすがに限界であります……」
飲み込んだタイミングで、二人は食い倒れてしまった。
椅子から転げて床に寝っ転がったのだ。
その様はまるで、少年同士が喧嘩でもした後のよう。
「……タイサさん、正直言って見くびってましたよ。考え、改め直します。」
「それはこっちもであります。 でも今は、トモと戦えて心から良かったと思っているであります。」
382
:
名無し募集中。。。
:2016/06/03(金) 14:59:58
なんやこれw
383
:
名無し募集中。。。
:2016/06/04(土) 00:03:24
お前らなにやってんだよw
384
:
名無し募集中。。。
:2016/06/04(土) 01:29:40
タイサとトモの歴史的和解w
385
:
名無し募集中。。。
:2016/06/04(土) 01:32:22
この人たち・・・(暴力的な量とはいえ)ただラーメン食べただけですよね?w
386
:
名無し募集中。。。
:2016/06/04(土) 02:31:42
しかも「小」だからなw
387
:
名無し募集中。。。
:2016/06/04(土) 12:08:07
小とはいえZweiラーメンをナメたらあかん…
388
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/06(月) 22:41:38
実はラーメン話はあと1話だけ続きます。
最近更新できなくてすいませんが、明日には書けると思います。
389
:
名無し募集中。。。
:2016/06/07(火) 01:22:32
大盛りの残りは一体だれが食べるのか・・・
390
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/07(火) 13:00:13
トモとタイサの勝負が終わって一件落着と思われたが、難題はまだ残されていた。
それはカリンの注文した大盛りラーメンをどう片付けるか、という問題だ。
サラダを食べるだけでお腹いっぱいになるようなカリンがこの量を完食するのは不可能だろう。
頼りの綱はラーメン大好きトモとタイサだが、激闘の末に食い倒れているため戦力にはならない。
「残しちゃえばいいんじゃない?」
「それはダメ!」
サユキの提案に、カリンはビクビクと怯えながら返答した。
このお店は決して食べ残しを禁止していないし、店主も大体の事情を把握しているのだが、
それでもカリンは「残す」という選択肢を取ることが出来なかった。
この席に座ることによって、"ラーメンの魔物"に取り憑かれてしまったのだ。
そんなものが存在するかどうかは定かではないが、
このまま立ち去ってしまえば周囲から「ギルティ(重罪)」と罵られてしまうような気がしてならない。
故にカリンは八方塞がりとなったのである。
この状況を救うには、仲間である連合軍が食すしかない。
では誰が食べるのか?
アーリーが、サユキの肩をポンと叩いた。
「ダイエットやめろって言われたじゃん、先生に。」
「何!?先生って誰!?」
「私たち女の子は今変化している、サボったり怠けたりしている訳じゃないのに……
マユは太ってるんじゃなくて変化してるんだよ。」
「だからマユって誰!?ていうかアーリーのキャラ変わってない!?
そんな演技しても私は食べないからね!!」
トモやタイサですら難色を示す強敵に立ち向かおうとする若手は存在しなかった。
カリンのことは可哀想だと思うが、どうしようもないのだ。
トモとタイサが無理して立ち上がろうとしたその時、1人の朗らかな声が聞こえてくる。
「なんだ、みんな食べないのか?じゃあ私が頂いちゃうぞ〜」
声の方を向いたトモとタイサはゾッとした。
2人のラーメン戦闘力は非常に優れており、
更に他人のラーメンオーラを知覚する能力も備えているのだが、
これほどまでに強力なラーメンオーラを持つ者が身近にいることに、今まで気づいていなかったのだ。
「なんでありますか!この巨大なオーラは!!」
「オーラが大きすぎて気づかなかったんだ……私たちとはモノが違う!!」
カリンの席に座ったその人は、トモやタイサ以上のスピードで麺を啜っては、あっという間に平らげてしまった。
しかもまるで苦しい顔をしていない。終始にこやかだ。
挙げ句の果てに、サイドメニューとしてウニとエビまで頼んでいる。
こんな化け物には勝てないと、2人は心から思った。
「いや〜食べた食べた。ラーメンは昔から好きだったんだ。
16歳の頃なんて、行列店をずっとずっと並んでたなぁ。」
「マイミ様……」「凄いであります……」
391
:
名無し募集中。。。
:2016/06/07(火) 13:33:29
16歳の恋なんてwなつかしいw
392
:
名無し募集中。。。
:2016/06/07(火) 13:51:24
オカールもラーメン好きだけど量ではマイミに敵わないだろうな
393
:
名無し募集中。。。
:2016/06/07(火) 14:41:47
マイミいたの忘れてたw
394
:
名無し募集中。。。
:2016/06/08(水) 00:42:13
そういやあの曲のPVはラーメン屋だったんだっけw
395
:
名無し募集中。。。
:2016/06/08(水) 06:54:37
某ラーメン大好きなコイズミさんが出て来そうな流れから一転マイミの独壇場w
396
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/08(水) 12:58:10
「それでは明日の16時に、港で待っているであります。」
お腹の中のラーメンを消化して動けるようになったタイサは、連合軍にしばしの別れを告げる。
そして、誰にも後をつけられないように注意しながら帰るべき場所へと帰って行ったのだ。
タイサの帰るべき場所、それは王国の用意した宿舎などではない。
それよりももっとボロくて汚い、
少女が寝泊まりするとは思えないような小屋こそが"彼女ら"のアジトなのである。
「あ〜疲れた!」
タイサは座り心地の良くなさそうなペシャンコのソファーに腰掛けた。
ガラ悪く足を組むその姿勢は、さっきまでの礼儀正しさとは正反対だ。
そんなタイサに対して、同年代と思わしき少女が声をかけてくる。
「おかえり"タイサ"、仕事は順調だった?」
「あぁ、いたの"ドグラ"。 順調に決まってるでしょ。私を誰だと思ってるの。」
「ふふ、そうだったね。」
ドグラと呼ばれた少女は、タイサらの属する組織のリーダーだ。
とは言え、そこに上下関係のようなものは存在しない。
8人は8人がみな平等なのである。
「まぁ、特別なことが無かった訳でもないけど……」
「何かあったの?教えて教えて。」
「……久々に友達に会った。 それと、久々に友達が出来た……かな。」
「タイサに友達が!?その性格で?……」
「絞めるよ。」
「ごめんごめん、ジョークだってば。」
「冗談に聞こえなかった。」
あります口調は実は演技。
(相手が格上でなければ)ぶっきらぼうに言い放つ今の姿こそ、本当のタイサなのである。
なかなかに面倒な性格なので組織のみんなもタイサのご機嫌をとりがちだが、
中には攻撃的に接する者もいた。
コードネーム"マジメ"がその良い例だ。
「"タイサ"!さっきから見てたけど問題起こしすぎだからね!?
よりにもよって連合軍のメンバーに喧嘩を売るなんて……
もしも何か有ったらどうするつもりだったの!?」
「"マジメ"は五月蝿いなぁ……何か有ったらアンタが止めるでしょ。そのための二人一組なんだから。」
「真面目って言わないで!」
「はぁ?コードネームなんだからしょうがないじゃない。
じゃあミナミって呼んだ方がいいの?」
「あーーーー!!本名を気軽に呼んじゃいけないって規則で決まってるんだよ!!」
「どうしろって言うの……」
397
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/08(水) 12:59:23
コイズミさんは場が丸く収まったのを確認してから店を出たのだと思いますw
398
:
名無し募集中。。。
:2016/06/08(水) 13:23:09
残りは一番アレな二人だけか
399
:
名無し募集中。。。
:2016/06/08(水) 19:33:27
コイズミさんいたのかよ!w
400
:
名無し募集中。。。
:2016/06/08(水) 19:39:20
こんなワンシーンありそうだよね
1 名無し募集中。。。@無断転載は禁止 2016/06/08(水) 19:19:32.35 0
【明日発売YJ28号】北海道3連撮シリーズ!①巻頭グラビアはモーニング娘。'16の佐藤優樹さんの超速オフショ!天よ見よ!この世紀末覇者感。どんなグラビアなの
か���� #morningmusume16 #ヤングジャンプ #佐藤優樹
http://i.imgur.com/NJVfQLA.jpg
401
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/10(金) 01:00:08
おお、まーちゃんカッコいいですね。
そう言えば作中ではあまり馬に乗せて無かったですね……
402
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/10(金) 12:56:08
「けんかをやめて〜二人を止めて〜」
タイサとマジメの間に、大柄の女性が割って入っていった。
この女性のコードネームは"ウララ"。
DJの形をとってサヤシとアユミンに橋の情報を渡した張本人なのだ。
その両手には、魚でいっぱいのバケツが握られている。
「なにその魚?……」
「さっき大人のお姉さんに貰ったの。 大量に余ってたみたいだよ。
だから今夜の晩ごはんは魚料理にしない?」
「良いね!じゃあ早速キッチンに……」
新鮮な食材を前にして、組織内のシェフであるマジメは瞳を輝かせていた。
料理得意な彼女からしてみれば、よほど腕が鳴るのだろう。
おかげで今夜のディナーは豪勢なものになると思われたのだが、
ここでタイサが水を差してしまう。
「魚嫌い。 他のにしてくれない?」
「また偏食? 成長期の時期に好き嫌いばかりしてたら大きくなんて……」
「大きくなってるじゃん。背なんかマジメよりずっと高いよ。」
「くっ……じゃあ何が食べたいって言うの?どうせまた……」
「ラーメン」
「やっぱり!」
「あ〜、魚は魚でも魚介系のラーメンなら食べたいかも。作ってよ。」
「チョット!ここにある調理器具でラーメンなんて作れると思ってるの?簡単に言わないでよ。
それにラーメンならさっき食べてたでしょ?見てたんだから。」
「マジメも見てるだけじゃなくてさ、一緒に食べれば良かったのに。」
「私はラーメンを食べる姿を見たり、すする音を聞くだけで十分なの。」
「うぇ……なにそれ気持ち悪い……」
「あんな脂っこいものを健康気にせず食べる方が気持ち悪いと思うけど!?」
「マジメは本当に美味しいラーメンを知らないんだな……可哀想に。
今度オススメのお店に連れて行ってあげるよ。そしたら考えも変わるでしょ。」
「一回くらいなら行ってあげても良いけど、絶対に好きにならないから安心して。」
403
:
名無し募集中。。。
:2016/06/10(金) 13:22:04
青葉に連れて行かれる理由が此処に在ったのか
404
:
名無し募集中。。。
:2016/06/10(金) 13:51:40
山岡がいるなw
405
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/12(日) 15:10:30
ちゃんとした更新は明日の昼になると思います。
ひとまずは、本編に繋がるかもしれないオマケ更新を……
オマケ更新「リサの帰還」
リサ「さて、用事も終わったことだしサユ様の船に戻らなきゃ。」
リサ「またお洋服が濡れちゃうけど仕方ないよね……よし、海に飛び込もう。」
謎の女O「ちょっと待ったーー!!身投げはダメーーー!!」
リサ「え!?何この糸……全身に絡まって動けない……」
謎の女O「ふぅ〜良かった、人命救助に成功したみたい。」
謎の女U「ねぇオカマリ、あの子は別に死のうしていた訳じゃ無いんじゃない?」
謎の女M「自殺にしては、冥界への扉が開かれていない……」
オカマリ「え?ウオズミちゃん、マリン、それマジ?……」
ウオズミ・マリン「「うん。」」
オカマリ「うわ〜やっちゃったー!」
〜数分後〜
オカマリ「なんだ、海を渡りたかっただけなのね。じゃあウチらの船に乗りなよ!」
リサ「えっ!良いんですか?」
ウオズミ「気にしなくて良いよ。4人で乗るには大きすぎる船だしね。」
リサ「4人ってことは、お仲間がもう一人居るんですか?」
マリン「はい、例えるならば炎熱地獄のようなお方が一人……」
リサ(炎熱?……気合いの入った熱血漢ってことかな?)
406
:
名無し募集中。。。
:2016/06/12(日) 16:47:10
関わると色々と面倒そうな人が…
407
:
名無し募集中。。。
:2016/06/12(日) 21:20:45
船燃やされるぞw
408
:
名無し募集中。。。
:2016/06/13(月) 09:40:26
あの娘は今傭兵か何かやってるのかな
409
:
名無し募集中。。。
:2016/06/13(月) 11:53:11
いくらあの人でもさすがに自分が乗る船まで燃やすほどアレじゃないと信じたいw
410
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/13(月) 12:58:39
ドグラとマジメとウララが魚料理に舌鼓を打つ一方で、
タイサは長期保存用に乾燥させた麺にお湯を注いだものを食べていた。
とても質素で栄養が無さそうに思えるが、タイサにとってはこれが一番のご馳走なのである。
「美味しい! これで明日の任務も頑張れるわ。」
タイサは健康面や性格面に様々な問題を抱えてはいるが、任務の遂行能力においては周囲から一目置かれていた。
年端もいかない少女揃いの組織の中で、最も戦士歴が長いのがタイサと「もう一人」だということを思えば、不思議でもないだろう。
そんな彼女にとって、明日の仕事はあまりにも簡単すぎていた。
「夕方に港に向かって、手配された船を連合軍に引き渡す……って言うのがタイサの仕事だったね?」
「そうだよ、ドグラ。」
「それまではアジトで待機してるの?それともラーメン屋で食事?」
「いや、オダ・プロジドリと話そうと思う。」
「え?……」
任務外の行動を取ろうとするタイサに、3人は驚いた。
しかもその内容が帝国剣士のメンバーとの接触だと言うのだから、
マジメは放っておくことが出来なかった。
「辞めた方が良いよ。タイサの身元が割れたらロクなことにならない。」
「ちょっと話すだけだってば。
それにオダは私の正体に気づいているんだから、話さない方が不自然でしょ。」
「う〜ん……オダ・プロジドリはかつての仲間だったんでしょ?」
「そう。合同若手育成プログラムの元メンバー。」
「だったら、必然的にあの2人のことも話す事になるんじゃ……」
「まぁ話すよね。無事だって教えてあげなきゃ。」
「それなら尚更許可できないよ。」
「大丈夫だよ。今の仕事のことは絶対に伏せるから。
それに、たとえ勘付かれたとしてもオダはいたずらに言いふらすような子じゃない。
だから、信じて。」
「う〜ん……」
困ったマジメはドグラの方を見た。
ここはリーダーに判断してもらおうと思ったのだ。
「タイサの意思が固いのなら、もう仕方ないんじゃないかな。
でも決して私たちの目的を話しちゃダメだよ。」
「もちろん!分かってるって。」
411
:
名無し募集中。。。
:2016/06/13(月) 13:17:13
実際にも小田までがラストエッグなんだよな
412
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/14(火) 08:37:10
アリアケ2日目の船出の時まで、連合軍には休養する暇が出来たのだが
全員が全員じっとしていられるはずも無かった。
中には己の精神と肉体を鍛えるために特訓する者がいた。
「ねぇメイ、私も滝行に付き合ってもいい?……」
「カリン!あなたも修行に興味があるのね!」
「うん……海に落とされた時に何もできなかったから、自分を鍛えなおさなきゃと思って。」
「素敵!そんなカリンのために飛びっきりの滝を案内してあげる!」
中には秘密裏に習得していた必殺技の精度をあげようとする者もいた。
「サヤシさん凄い!……今の技、なんにも見えへんかった。
しかも凄い威力。まるで草木も残らないような……」
「ふふふ。でもアーリーちゃんも有るんじゃろ?必殺技。」
「はい!でも相当気合が入ってないと出せないんです!
だからこのサイダーで洗顔してウチはやんねん!」
「だめぇぇぇ!!!もったいない!!!!」
中には新たな必殺技を開花させようと励む者もいた。
「ハル!……必殺技の出し方、教えてよ……」
「へぇ、サユキがハルに頼み事なんて珍しいじゃん。」
「そりゃ私だってみんなに貢献したいもん……そのためには背に腹は変えられない。」
「そこまで言われたら仕方ないな……あれ!?ちょっと待って!!
あそこで倒れてるのはマーチャンじゃないか!?」
「全身ボロボロ……どうしたんだろう?」
「おいマーチャン返事しろよ!!誰にやられたって言うんだ!?
服がアチコチ焦げてるじゃないか……これじゃあまるで……」
「えへへ……やっぱり勝てなかった……でも、"覚えた"よ。」
413
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/14(火) 08:42:46
>>411
はい。前にも書いたかもしれませんが、育成プログラムはエッグ(前作未登場の4期〜ラストの13期)をイメージしています。
オダやタイサはその中でも若手の部類に入りますね。
414
:
名無し募集中。。。
:2016/06/14(火) 10:09:22
まさか例の船に行ってたんじゃ…
連合軍の仲が深まってきててほっこり
415
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/14(火) 12:57:19
中には次の戦いのために武具を整えようとする者もいた。
「アユミン、マーチャンがどこにおるのか知らん? 刀を研いで欲しいっちゃけど……」
「それが見つからないんですよね。私も太刀を見て欲しいのに……
カノンさんはマーチャンを見かけたりしてます?」
「ううん、私も見てない。 明日までに作って欲しいモノが有るんだけどね……」
「カノンちゃん、新しい武器でも使うん?」
「うーん、武器っていうか……鎧。」
「「鎧?」」
中にはベリーズとの戦いに備えて、新たな対策を練る者もいた。
「カナの考えた作戦をオカール様に聞いて欲しいんです!そして判定してください!」
「聞く人を間違えてね? そういうのは団長とか、頭の良いアイリとかに……」
「いえ!オカール様のお墨付きが貰えたら安心出来るんです!」
「ふぅん、まぁ言ってみな。」
「はい、次のベリーズとの戦いですが……"シミハムを倒さない"というのはいかがでしょうか?」
「へぇ……詳しく聞かせろよ。」
中には本来の趣旨通り、休養をとる者もいた。
「アイリ様、次はあそこのお店に入りましょう。」
「まさかトモからデートに誘われるなんて! 後輩と遊ぶ機会なんて滅多に無いからソワソワしちゃう……」
「そうですか……」
「あら?ひょっとして楽しく無い?」
「そ、そ、そんなことないです!とても楽しいですよ!」
「その割には元気が無いですね。 どうかしたんですか?」
「……実は、アイリ様に相談に乗ってもらいたくてお誘いしたんです。」
「ふんふん。」
「以前までの私は自分のことを強者だと思ってました。少なくとも国内では一番強いと……
でも、最近は格下だと思っていたカリンやアーリーにも抜かされたような気がしてならないんです!
こんな不甲斐ない私がKASTのリーダーを務めて良いんでしょうか……」
「うーん、難しい話ですね〜」
「すみません、デート中にこんな話なんかして……」
「とりあえず立ち話もなんですし、お菓子でも食べながら話しましょう。
ほら、あの子たちみたいに。」
「あ!リナプーとリカコ!」
「うわ!リナプーさんイチゴ8個もとってる!(>_<)」
「イチゴは渡さん!!たとえ後輩でもだ!!」
「リナプーってあんなキャラだったっけ……」
416
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/14(火) 22:54:35
オマケ更新「The Girls Live 6月12日放送分より」
中には顔がムクんだ者もいた。
マイミ「とんこつラーメンのスープを一気飲みしちゃって……」
ナカサキ「もう!」
417
:
名無し募集中。。。
:2016/06/14(火) 23:54:20
ラーメン対決がここまでリアルと繋がるとは・・・w
418
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/15(水) 12:58:23
オダ・プロジドリは船出の十数分前には約束の場所に着いていた。
かつての戦友であるタイサと話をするにはこのタイミングしか無いと考えたのだ。
「おっ!来たでありますな。」
「"アヤノ"。今はその変な喋り方をしなくて良いと思うよ。」
「……そうね、素のままで行かせてもらうわ。」
"アヤノ"というのはタイサの本名だ。
なぜ偽名を使っているのか? なぜ口調まで変えているのか?
気にならなくもないが、それはオダにとっては些細なこと。
真に聞きたいことを、今ここで突きつける。
「今まで何をしていたの?……本当に心配したんだから……」
オダは合同若手育成プログラムでチームを組んだ3人と文通をしていた。
あまり筆マメでは無いメンバーもいたが、それでも定期的に届く手紙を見ては楽しんでいたのである。
自分がモーニング帝国剣士になった時も手紙を送ったし、
それに対するお祝いの言葉も受け取っていた。
ところが、ある時期を境に3人からの返事が一気に途絶えてしまったのだ。
一ヶ月や二ヶ月ならそういうこともあるかもしれないが、
それが1年も続いたのだから心配しない訳がない。
だからこそオダはアヤノに問いかけたのである。
しかし、アヤノは快い返事をしなかった。
「ごめん、言えないんだ。」
「どうして!?」
「連絡しなかったのは悪いと思ってるよ……でも、今はそれすらも出来ないの。」
「どういうこと……?」
「でも安心して!タグもレナコもちゃんと生きてるから!
今ごろ2人でくだらない喧嘩でもしているはずだよ。
ほら、私たちがチームになったプログラムの時みたいにさ。」
419
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/15(水) 13:00:10
>>417
時期も時期だったので舞美の発言には驚かされましたw
あ、放送日は正しくは6/9(木)の夜中でしたね。訂正します。
420
:
名無し募集中。。。
:2016/06/15(水) 17:23:21
他の二人ってタグ・レナの方だったのか…11期オーデの2人かと思ってたw
421
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/18(土) 20:32:41
数年前に開催された合同若手育成プログラムには様々なチームが参加していたが、
中でもフク、タケ、カリンを有する「ゴールデンチャイルズ」や、
リナプー、サユキ、ハルの属していた「73組」の強さは別格だったと言う。
上に挙げたメンバーの現在を思えば、当時の活躍ぶりは想像に難くないだろう。
一方で、戦士になりたてだったアヤノ、タグ、レナコ、そしてオダ達は訓練についていくだけで精一杯だった。
目立った成績を見せられなかったため、チーム名の「大佐中佐少佐先生」を覚えている者はもはや存在しないかもしれない。
「カリンさんが私に反応してなかったからさ、やっぱり忘れてるんだなーって思ったよ。」
「う、うん……」
「でも私たちは覚えている。 オダが覚えてくれて、嬉しかったよ。」
こうしてアヤノがオダに向けてくれた笑顔はとても無邪気なものだった。
名を騙っていた理由も、連合軍を騙したいとか、そう言った類のモノでは無いのは明らかだ。
敵ではないことが分かっているからこそ、オダはアヤノの違和感ある行動の意味が知りたくなってくる。
「ねぇ……マーサー王国の兵士をやっているって話は本当なの? それは……嘘じゃない?」
「何て言えば良いのかな……半分本当で、半分ウソ。」
「えっ?どういうこと?」
「ごめん、そこから先は言えないの。」
まただ。アヤノは核心に迫ろうとすると口を閉ざしてしまう。
忠誠を誓った人物に口止めをされているのか、
あるいは何処かから監視されているのかもしれない。
それでも、オダは情報収集を諦めることは出来なかった。
時間が許す限り質問を投げかけていく。
「船はマーサー王国のもの?」
「うん。正真正銘マーサー王国の所有物。整備もバッチリだよ。」
「アヤノの一言ですぐに船を用意できたみたいだけど、アヤノは偉い人?」
「……言えない。」
「アイリ様に連れてこられてたよね、元々面識はあったの?」
「それも、言えない。」
「……話変えよっか。 タグとレナコとはいつも一緒にいるの?」
「うん!今はちょっと遠いところにいるけど、基本的にはいつも一緒に行動してるよ。」
「私もみんなと一緒に過ごしたかったなぁ……どうして、誘ってくれなかったの?」
「だってオダは違うから……」
「違う?……私、みんなと何か違った?」
「あ、いや、そのね、オダはモーニング帝国剣士になったからさ!
私達みたいなポンコツとは違うな〜って思って!それだけ!あははは……」
アヤノの回答は特におかしなものではないように見えた。
ところが、アヤノの性格を知っているオダは違和感を覚えているようだ。
(アヤノって自分のことをポンコツ呼ばわりするような自虐的な子だったっけ?……
やっぱり、何か隠しているような気がする。)
422
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/18(土) 20:33:50
確かに11期オーデ参加という共通点がありましたね。
その場合の残り2人は岸本、一岡あたりになるんでしょうかw
423
:
名無し募集中。。。
:2016/06/19(日) 02:07:05
11期オーデならマリアとの関係も変わってくるかもねw
424
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/19(日) 17:45:05
「あれ?オダにしては早いじゃん。」
アユミンの声が聞こえたのでオダはビクッとする。
気づけば周囲には連合軍の面々がポツポツと集まり始めていた。
それはつまり、船出の時間が来てしまったことを意味する。
アヤノに質問したいことはまだたくさん残っているというのに、ここでお別れしなくてはならないのだ。
「大佐さん……またね。」
「近い日に再開できることを願っているであります。」
名残惜しく思うオダだったが、アヤノの可愛らしい敬礼を見てクスッと吹き出してしまった。
これが永遠の別れでは無いのかもしれないと考えながら、
整備の行き届いた船へと乗り込んでいく。
(オダ……全てが解決したらまた遊ぼうね。
モーニング帝国で任務中のタグとレナコも呼んでさ。)
場所は代わり、モーニング城の城門前。
そこでは大きな荷物を背負った少女と、大人びた黒髪の女性が話をしていた。
どうやら何らかのトラブルが発生しているようだ。
「あれれ〜!?てがたがどこかいっちゃった!」
「えーーーーー!?どうするのレナコ!それが無いとお城に入れないんだよー!!」
「ちょっとタグ!レナコじゃなくて"クール"ってよんで!ぷんぷん!」
「あっごめん……ってレナコだってタグって言ってるじゃん!あたしは"リュック"だよ!」
「あああああああっ!!!」
「今のアヤパンに言いつけちゃうもんね〜」
「すみません……」
「謝ってももう遅いからね。」
425
:
名無し募集中。。。
:2016/06/19(日) 22:46:42
リュックww
四字熟語のやつか
お前らリーダーの名前ばらすなww
426
:
名無し募集中。。。
:2016/06/22(水) 10:56:45
作者さんは舞台見に行って無いのかな?赤髪えりぽんの格好良さを是非マーサー王でも書いて欲しいんだけどなぁ
427
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/22(水) 12:58:20
ホテルを目指して直進するベリーズ船は、進行速度を通常より落としていた。
連絡係りのリサ・ロードリソースが追い着くために、速度調整をする必要があったのだ。
いつ何処からやって来るのか分からないリサをいち早く見つける目的で、
カントリーのマナカ、チサキ、マイは甲板から周囲を見渡している。
「わっ!なんだろう?あの船……」
こちらに向かって一直線にやって来る船が見えたので、チサキは驚いた。
ベリーズ船のような大型船にも臆することなくUpComing(接近)するその船は、とても異様に思える。
ひょっとしたら海賊が乗っていて、戦闘を仕掛けてくるかもしれない。
あるいは命知らずが船ごと衝突してくるかもしれない。
どちらにしても最悪な未来。
ゆえにチサキは迎撃の体制をとらざるをえなかった。
「お魚さんたち!力を貸して!!」
魚を自在に操るのがチサキの能力だというのは、橋の上の戦いで見せた通りだ。
だが、その真骨頂は今のような海のど真ん中にいる時に発揮される。
この海域に生息する魚類は小魚などではなく、
カジキマグロのような2mを超える大物ばかりなのである。
それも、大量に。
「いけー!!あの船を落としちゃえ!!」
数十ものマグロの大群に突撃されたらどんな大型船だろうとひとたまりもないはず。
あちこちを破壊されて、そのまま沈没するのがオチだろう。
ところが、奇妙な船の乗組員はまるで恐れるような素振りを見せなかった。
それどころか、興奮しているように見える。
「ありゃ〜交戦する気は無かったんだけどなぁ。
でも、相手が魚とあっちゃ……たぎっちゃうよね……」
その乗組員は釣り竿を取り出し、マグロ軍団の方に向かって針を投げつけた。
この行為は誰がどう見ても「釣り」にしか思えない。
そして、その認識には少しの狂いも無かった。
彼女は全てのマグロを釣るつもりなのだ。
「おりゃおりゃおりゃおりゃーーーー!!!」
チサキ、マナカ、マイは信じられないと言った顔でその光景を見ていた。
マグロは一本釣りするだけでも非常に難度が高いというのに、
その釣りバカは超高速で全ての魚を連続して釣り上げてしまったのである。
船に乗り切らないと判断したマグロをキャッチアンドリリースする余裕まである程だ。
一仕事終えた後の釣りバカ、その名もオカマリはとても満足そうな顔をしていた。
「はぁ〜気持ち良かった〜。 次はサメとか呼んでほしいな〜。」
428
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/22(水) 12:59:53
>>425
はい、リュックは四字熟語の時の小道具ですねw
実際の彼女も荷物パンパンらしいです。
>>426
舞台は見てません……映像化したらチェックします!
429
:
名無し募集中。。。
:2016/06/22(水) 13:26:30
じゃあえりぽんレッドの勇姿は半年間お預けか…
430
:
名無し募集中。。。
:2016/06/22(水) 13:41:07
本編にも出るんかw
431
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/24(金) 08:52:28
カントリーの3人に緊張が走った。
仮にもチサキはハルやカリンを溺れさせた実績のある戦士だ。
それがこうも容易く無力化されたので、脅威に感じているのだろう。
では今すぐ船内にいるベリーズ達を呼びに行くべきだろうか?
選択肢としてはそれも良いが、少なくともマナカとマイはそう思っていないようだった。
「ここは私たちだけでなんとかしなきゃならないんだ……名誉挽回のチャンスだからね……」
「うん!そうしよう!」
番長・KAST戦での疲労が完全に癒えた訳ではないが、やらねばならない。
彼女らにとってベリーズの期待に応えられなかったことの方がずっと辛いのだ。
「空から行くよ!その釣り針の届かないところから攻撃してあげる!!」
マナカは全身に白ハト集団「Peaceful」を纏って空へと飛び上がった。
不可侵の空中はまさに彼女の独壇場。
リカコのような天敵がいない限りは圧倒的な強さを見せつけることが可能だ。
「うわっ……空からって、そんなのアリ?……」
「オカマリ、ここは任せて……すぐに散らしてあげるから。」
「おっ、ウオズミちゃん気合い入ってる〜」
「私の"宝物"、魅せてあげなきゃね。」
これからマナカが仕掛けようとしたところで、敵船から耐え難いレベルの爆音が発生した。
どこから鳴っているのかはすぐに分かる。
ウオズミとかいう女性が構えているギターがこの音を発しているのだ。
ギターと言えばアンジュ王国のエンタメを取り仕切るムロタンも好んで弾くと聞くが、
ウオズミの演奏技術はムロタンのそれとはモノが違っていた。
ウオズミのギターが産みだす音圧は周囲の空気、水、そして人の心を震撼させる。
この場を支配する爆音を当てられたため、鳥たちは恐れて逃げてしまった。
こうなったらマナカは天まで登ることが出来ない。
「な……なんなのいったい……そのギターが武器だっていうの?……」
「いや〜、いつもは味方を鼓舞するために弾いてるんだけどね。
ま、動物相手ならこういう使い方も有るってことで。」
ギター使いウオズミは、自分だけでなくカントリー全員の天敵であることをマナカは理解した。
あんなに大きな音を出されたら鳥だけでなく、カエルや魚だって逃亡するだろう。
動物が居なければ並程度の実力しか持たないカントリーにとって、彼女はこれ以上無い強敵だ。
……いや、対抗可能な戦士が1人だけ残されている。
「マイがやる!!」
動物ではなく自分自身を操る哺乳類使いであるマイならば、音にも恐れず戦うことが出来る。
ウサギの跳躍力で敵船に乗り込んで、殴り飛ばしてしまえば勝利なのである。
釣り人もギタリストもガチンコ勝負の白兵戦は苦手に見えるので、マイの有利に思えた。
ところが、その希望もすぐに潰えてしまう。
「その2人に手ぇ出さないでもらえますかね……
さもないと、漆黒の闇から出でし紅蓮の焔によってその身を焼き尽くされちゃいますよ……」
「!?」
黒いローブを纏った大柄の女性が登場したかと思えば、マイの身体が突然発火する。
いや、発火したのはマイだけではない。
距離的に離れているはずのマナカとチサキまで燃え始めたのだ。
「うわあああ!!あ、熱い!!なんで燃えてるの!?」
「落ち着いてマイちゃん!確かに熱いけど本当に燃えてる訳じゃないよ!!
これは……信じられないけど……その人が発しているオーラだよ……」
「え?……それって……」
マナカの助言を聞いたマイは余計に混乱してしまった。
確かにこの炎は実体がない。 その正体はリアルに熱を感じるほど強大な威圧感だ。
だが、これほどのオーラはベリーズやキュート級の英雄でなければ扱えないはず。
ということは、この中二病の女性はそれらに匹敵する実力を持つということになる。
「フッ……これが"ミヤ・ザ・ワールド"」
432
:
名無し募集中。。。
:2016/06/24(金) 16:42:40
時止めちゃえば良かったのにw
433
:
名無し募集中。。。
:2016/06/25(土) 06:20:54
>>428
『クロックアップ』する仮面ライダーイクタ是非見てほしかった…w
434
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/25(土) 23:04:02
"熱"に関連した殺気を出す者ならばベリーズにも存在している。
DIYの申し子であるチナミが放つのは「太陽」のオーラ。
明るさの度を超えた太陽光線は周囲の全てを真っ黒コゲにする……というのはマナカ達も知っていた。
ところが、このマリンとやらが起こした熱はそれとは種類が違うようだった。
(熱すぎる……まるで身体の中を燃やされてるみたい……)
外から熱するチナミとは違って、この炎は内部を容赦なく燃やし尽くそうとしている。
つまりはレアやミディアムではなくウェルダン。
カントリー達は鉄板の上で焼かれる肉になったような思いを強いられていた。
このまま圧倒されたまま終わってしまうかと思ったところで、
マリンの頭をポンと叩く者が現れる。
「あ、痛……」
「こらマリン!オーラの横取りしない!」
「はい……すいません……」
派手な髪色と化粧をしたその木刀使いは、これまで登場してきた釣り人、ギタリスト、中二病と比べるとかなり小柄だ。
だが、只者ではないことは肌で感じることが出来た。
そもそも火炎のオーラを発したのがマリンだという認識が誤りだったのである。
値する人は、レイニャだけ。
435
:
名無し募集中。。。
:2016/06/26(日) 12:11:30
ついにレイニャ参戦…か?
そうなるとエリリンがどうなってるか気になるところ
436
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/06/29(水) 12:42:16
次回更新は明日の夜頃になります。
過去ログの復旧も近いうちにやらなきゃ……
437
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/01(金) 05:04:39
レイニャ本人が登場したことで、マナカ、チサキ、マイの3名は完全にビビりあがってしまった。
カントリーの3人だって食卓の騎士モモコに鍛えられた戦士ではあるが、
このレイニャを前にすれば誰もがイクジナシになるのだ。
追い返さねばならない立場だというのに、恐怖で少しも動けない。
「そこ通してもらっていい?用があるっちゃけど。」
レイニャは手にもった木刀で船内へと続く扉を示した。
その中にはベリーズやマーサー王、そしてサユが体を休めているため絶対に通す事など出来ないのだが
敵の側を向くだけで全身が灼熱に焼かれる思いなので、どうすることも出来ない。
そのように困窮していた時、逆に扉の方から誰かが出てきた。
船外の異変に気付いたミヤビとモモコが駆けつけてくれたのだ。
これには泣きそうになっていたチサキも一安心。
「た、助けてください!私たちじゃその人を止められないんです!」
謎の人物レイニャの威圧感が食卓の騎士と同等であることは疑いようがない。
それはチサキだけでなく、他のカントリーのメンバーだって認めている。
だが、こちらにはその食卓の騎士が2人もついているのだ。
相手側には釣り人・オカマリ、ギタリスト・ウオズミ、中二病・マリンも居るには居るが
正直言って3人合わせたところでベリーズ単体の1/10の実力にも満たない。
ゆえに難なく敵船を追っ払うことが出来るはずだった。
……のだが、ミヤビとモモコは信じられないような行動を取り始めていく。
「なんだレイニャか、久しぶりだね。」
「お〜ミヤビとモモコやん!てことはやっぱり、その中におるんやね。」
「せっかくだからちょっと顔見せてく?」
「行く行く〜」
その行為とは素通し。
なんとミヤビとモモコは少しも交戦することなくレイニャを船内に入れてしまったのだ。
カントリーの3人が呆けていたところで、敵船(だと思っていた船)から知った顔が登場する。
その人物とは同じくカントリーの一員であるリサ・ロードリソースだった。
とてもバツの悪そうな顔をしている。
「リサちゃん!」「なんでその船に乗ってるの!?」
「えっとね、なんて言えばいいのかな……その人たちはね、敵じゃないんだよ。」
リサはレイニャ達が自分をこのベリーズ船まで連れて行ってくれたこと、
オカマリ、ウオズミ、マリンの3人は見た目と違って全然怖い人では無いこと、
そして、レイニャと食卓の騎士は昔なじみであることを説明した。
「ちょっと待ってリサちゃん!ベリーズ様と知り合いで、しかもあれほどのオーラってことは……」
「マナカちゃんの想像通りだよ。レイニャ様は元モーニング帝国剣士。それもプラチナ剣士と呼ばれた時代のお方なの。
つまりは……サユ様にとってはこれ以上無いほどの友(とも)ってこと。」
438
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/01(金) 05:05:20
なんやかんやで朝になっちゃいました。
ちなみにエリチンは再登場の予定はありません。
最近話題になってるリンリンも出ませんねw
439
:
名無し募集中。。。
:2016/07/01(金) 13:14:08
出ないのか〜残念…アップフロントに残ってるかどうかが出る出ないの基準なのかな?
440
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/02(土) 16:35:12
モモコの案内で、レイニャはとある場所に招き入れられた。
ここはベリーズ船の中でも一位二位を争うほどに重要な空間。
カントリーの若手たちが外敵の侵入をなんとしてでも阻止したかった部屋なのだ。
「レイニャ?……」
「お、サユ。」
ここはサユの部屋。
捕虜を閉じ込めておくには少しばかり、いや、かなり豪華な造りになっている。
レイニャに気づいたサユは上体を起こして、いかにもわざとらしい声色でこう言うのだった。
「助けてレイニャ〜! 私ね、囚われの姫君になっちゃったの〜」
「はいはい。」
「ちょっと、その反応はなんなの?」
「だってそのノリに付き合うのは疲れようやん。」
何年かぶりの再会だと言うのに、二人の間に感動のようなものは無かった。
まるで昨日も顔を合わせたかのような対応だ。
それに、レイニャは同期のサユを全く心配していないように見える。
「ちょっとは可哀想と思わないの? 普通は私をここから救い出そうとするもんじゃない?」
「ハハッ、その必要は無いっちゃろ。」
「ん……まぁね。 」
「それくらい分かるよ。馬鹿にせんといて。」
結局レイニャはサユと少し会話しただけで外に出て行ってしまった。
本人曰く、ちょっと顔を見れただけで十分らしい。
満足そうな顔で自分の船に戻ろうとするレイニャを、ミヤビが引き止める。
「なぁ、ちょっと聞いていいかな?」
「なん?」
「そっちの船に乗ってる3人は……レイニャの後輩ってこと?」
「そう! 右も左も知らないヒヨッコやけん、ビシバシ鍛えとーよ。
ま、それでもモモコの後輩よりは一歩先に進んでるようっちゃけどね〜」
「そうか……昔のレイニャを知っているだけに未だに信じられないな……」
「もう、さっきから何なん?」
「いや、私にも後進を育てることが出来るのかなって思ってね……レイニャや、モモコがやっているみたいに。」
「いいんじゃない?一度きりの人生なんやし好きにやってみたら?」
441
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/02(土) 16:38:32
所属で登場人物を区分けしているわけでは無いですが、
やっぱり目につくと書きたくなるものなので、
アップフロントにいる方が登場し易いかもしれませんね。
ひょっとしたら第3部にはヒカルン(仮称)やニヘイ(仮称)が出てくるかも……w
442
:
名無し募集中。。。
:2016/07/02(土) 21:00:39
出てくるのか!?w
3部はどういった話になるのか今から楽しみ♪
443
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/03(日) 13:14:25
「ねぇハーチン!ハルナンさんが帰ってきた!」
「そやな。でも、ハルナンさんと一緒におる二人は誰なんやろ?」
モーニング城で留守番をしていた新人剣士4名は、帝国剣士団長であるハルナンの帰還を待ちわびていた。
ここに戻ってきたということは、新人の力が必要になったということ。
待機命令が解除されて、戦場に赴くことが出来るのを喜んでいるのだ。
大きなリュックを背負った少女たちと別れたハルナンがこちらにやって来るのを見て、
ハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンは心臓が破裂するくらいにドキドキしている。
「待たせたわね、あなた達……準備は出来てる?」
「「「「はい!」」」」
「じゃあさっそく向かいましょう。プリンスホテルへ。」
「ホテル……ですか?」
ハルナンは移動しながらこれまでの経緯を説明することにした。
ハルナンがマーサー王国を経った時点では誰もベリーズの所在を掴めていなかったが、
優秀な伝令係のおかげで次の戦場がプリンスホテルであることが判明したとのこと。
「ベリーズとはもう既にアリアケで交戦したそうよ。
どんな戦いだったのかは流石に分からないけど、死傷者は居なかったみたいね。」
「Wao! 伝説のベリーズ戦士団と戦って無事だったのは凄いですね。
さすが帝国剣士の先輩たち……ノナカみたいなドジとは違うなぁ……」
「活躍したのは帝国剣士だけじゃなくて、番長やKASTもなんじゃない?
そうそう、アンジュの番長にはリカコっていう新人もいたわね。」
「えー!?新人なのにもうベリーズと戦ったってことですか? 凄い度胸やなぁ。」
「何言ってるの。ハーチン達もこれから共に戦うのよ?」
「あはは……そうなんですけどね、まずは後方支援からさせてもらいたいなぁ……とか言ってみたりして。」
ハーチンは苦笑いで頭をかいていた。
ノナカやアカネチンも頷いていることから、同意見であることが分かる。
唯一やる気に燃えているのは、マリアだけのようだ。
「マリアは前線で戦いたいです!」
「おお、気合い入ってるのね。」
「サユ様をお助けするために、マリアのナイフを投げつけてやるんです!!!」
そう言うとマリアは愛用する投げナイフをぶん投げた。
真っ直ぐのストレートを放ったはずが、行き先は何故か後方。
どうやらスランプは継続中のようだ。
アカネチンが呆れながらツッコミを入れていく。
「マリアちゃん……そんな腕前でどうやってベリーズを倒すつもりなの。」
「ズルいアカネチンは黙ってて!」
「はぁ!?ズルいって何が!?」
「マリアの方がサユ様のことを大大大好きなのにアカネチンばっかり可愛がられてズルい!!」
「え?こんな時に何を言ってるの……」
「マリアがサユ様を救うんです!だからハルナンさん!マリアが活躍する作戦を考えてください!!!」
この時のハルナンの表情は、かなりウンザリしていた。
そしてあろうことか、この場に馬を止めてしまったのだ。
新人剣士が事態を把握するよりも早く、口を開いていく。
「ホテルに向かうのは止めましょう。」
「「「「え!?」」」」
「今のあなた達を戦場に連れて行っても足手まといになるだけ。」
「What?……じゃあ私たちはどうしたら……」
「目的地を変えます。 とても厳しいコーチに性根を鍛え直してもらいましょう。」
「「「「え〜〜〜〜!?」」」」
444
:
名無し募集中。。。
:2016/07/03(日) 17:55:08
とても厳しいコーチ…いったい誰なんだ?12期と関わりある人で厳しい人と言うと…
445
:
名無し募集中。。。
:2016/07/04(月) 00:14:34
○っ○ぃー・・・かな?
446
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/04(月) 12:59:51
目的地を変更したハルナン一行の道中はほとんど無言だった。
新人剣士4名も色々と気になることがたくさん有ったのだが、
叱られた以上、気軽に声をかけることが出来ないのである。
会話の無いまま目的地に到着するのかと思ったところで、
マリア・ハムス・アルトイネがいかにも泣きそうな声を発していく。
「ハルナンさ〜ん……マリアのこと嫌いになっちゃいましたか〜?……」
研修制時代にトップクラスの成績を収めていたのが信じられない程に、今のマリアは情けなかった。
二刀流の異名を持つ実力者とは言っても、精神年齢は年相応なのだろう。
ここで突き放すのは流石に可哀想だと感じたハルナンは、優しく答えることにする。
「嫌いでは無いのよ。 みんなの事は可愛い後輩だと思ってる。」
「でも〜さっき怒ったじゃないですか〜……うううぅ……」
「……あなた達に戦士としての自覚が不足しているから叱ったの。」
「自覚?……」
新人剣士たちの実力が折り紙付きであることはお披露目会で示した通りだ。
だが、それだけではまだ足りないとハルナンは考える。
「単純な戦闘能力なら私は新人のあなた達にも劣るでしょう。」
「そんな事は!」「ハルナンさんの方が強いですよ!」
「いいのよ気を使わなくても。 自分の実力は自分がよく知っているから。
でもね……実践となったら私はあなた達4人が同時にかかってきたとしても負ける気はしない。
これは驕りなんかじゃなくて、確信よ。」
「へ?……ハルナンさん。それはどういうことですか?」
「その答えは、厳しい厳しいコーチに教えてもらいましょう。」
そのコーチが誰なのか、新人剣士たちは気になってしょうがなかった。
アカネチンもその件についてついつい訪ねてしまう。
「コーチって、誰なんですか? 私たちが知ってる人なんですか?」
「多分知らないんじゃないかな……モーニング帝国出身らしいけど、私もお会い出来たのはつい最近だしね。」
「どんな人……なんですか?」
「えっと、アカネチンはアンジュ王国のアヤ王とマロ様のことを知ってたわよね?」
「はい。知ってます。」
「あの二人と同じくらい強い……って言ったらイメージ湧くかな?」
「「「「!?」」」」
アカネチンだけでなく、他のメンバーもアヤ王のことは知っていた。
過去の選挙戦にて現モーニング帝王のフク・アパトゥーマが大苦戦したというのは有名な話なのだ。
「Oh my god! そんな人に今から会いに行くんですか!?」
「会いに行くっていうか……もう後ろにいるよ?」
「「「「え?」」」」
「跪くのよ。」
447
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/04(月) 13:00:19
みっつぃー、という回答はとても惜しいですw
448
:
名無し募集中。。。
:2016/07/04(月) 18:07:32
ごめんなさい、よっすぃーのつもりでしたw
ドッキリの時のことを思い浮かべて3人のうちで出てくるとしたら吉澤さんかなと思っていたのですが
結局どれも違ったようでw
449
:
名無し募集中。。。
:2016/07/04(月) 21:04:30
俺もよっすぃーだと思ってたwでもそれだとアヤチョ・マロ同程度って事は無いだろうし…
450
:
名無し募集中。。。
:2016/07/05(火) 01:10:23
キッカ復活きたあああああああ!!!!
451
:
名無し募集中。。。
:2016/07/05(火) 05:15:39
なる程キッカか!それならモーニング帝国出身でアヤチョ・マロクラスも納得!でも12期と絡みあったかな?
…って推測してると作者さん更新し辛くなるかな?w
452
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/05(火) 09:18:22
正体は次の更新で書くので置いておくとして、
ヨッスィーは全く頭にありませんでしたw
つまりこういうことですね。
ヨッスィー「歴代の王で誰を尊敬してるの?」
マリア「サユ様です……」
アカネチン「ヨッスィー様です。」
マリア「!?」
453
:
名無し募集中。。。
:2016/07/05(火) 09:47:01
うんそれが見たかったwでもまぁ実際あのオーラの前でもマリアがサユ王と言えるのか?ってのもあるけどw
454
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/05(火) 13:02:29
モーニング帝国は歴史ある国ゆえに、仇なす者や害を及ぼす者も少なくなかった。
そのような反逆者らは基本的には帝国剣士の手によって罰せられるのだが、
そこで命や尊厳まで奪い取ることまでは良しとしていない。
その者が改心して国のために働いてくれるのであれば、積極的に有効活用したいと考えているのである。
元とは言え犯罪者をおおっぴらに使うことは出来ないため、そういった人物のリストはごく限られた者しか知りえていない。
その権限を持つ一人がハルナンであり、これまで説明してきた「改心した仇なす者」こそが今回のコーチというワケだ。
もっとも、リストに載るような人物は一癖も二癖もある厄介者ばかりではあるが……
「跪くのよ。」
「!?」
背後から聞こえるただの一言で、新人剣士は恐怖で縮み上がってしまった。
そして言われるがままに地べたに跪くのだった。
新人とは言え彼女らは帝国剣士。まったくもって情けないように見えるかもしれない。
だが、依頼主なはずのハルナンが大汗をかきながら「厄介者」の圧力になんとか耐えようとしていることからも、
新人らのとった行動がさほど恥ではないことが分かるだろう。
前にもハルナンが言った通り、このコーチはアヤ王やマロと同等の実力を持っている。
それは即ち、「食卓の騎士に最も近い存在」であること。
食卓の騎士やサユ、レイニャのように可視化したオーラを出すことまでは出来ないが、
周囲を屈服させるほどの威圧感を出すことくらいは容易いのである。
「ふーん。今の新人剣士の実力はこの程度なのね。」
他者を跪かせる威圧にも驚かされたが、それ以上にコーチ自身のビジュアルに一同は驚愕した。
モーニング帝国剣士の中では高身長の部類に入るマリアと同じくらいに背が高く、
更にワガママで爆発的なボディをしているため、印象としてはかなり大柄に見える。
そして極めつけなのは胸をあからさまに強調する派手な衣装だ。
薄くて軽いハルナンとハーチンが思わず自身の胸をサッと隠してしまうほどである。
サンバのカーニバルにでも出場できそうなその服は、並の神経をしていたら到底着れないだろう。
こんな馬鹿げた見た目をしているが、この場にいる誰よりも強者だというのはすぐに理解できた。
「キッカ様、本日は宜しくお願いします。」
「"本日"で終わるかな〜? キッカはどうせ暇だし、何ヶ月も付き合ってあげてもいいけどね?」
455
:
名無し募集中。。。
:2016/07/05(火) 13:53:34
歌ダンス演技スタイルとグループの看板に頼らない本人だけの実力であれば実際のきっかに勝てるやつなんてそうはいないからな
456
:
名無し募集中。。。
:2016/07/05(火) 13:57:01
こうなるとアスリートみたいな7人組の登場にも期待
457
:
名無し募集中。。。
:2016/07/05(火) 15:15:51
キッカだったのか!ことごとく予想が外れたwアイカへの憎しみは消えたんだろうか?こうなると地下の皆様の出番も在りそうだなw
458
:
名無し募集中。。。
:2016/07/05(火) 17:49:19
キッカはついに青の鎧を脱ぎ捨ててしまったか・・・
459
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/06(水) 12:58:39
キッカは胸の谷間に手を突っ込み、そこから十数枚のチャクラムを取り出した。
手のひらサイズの小型な武器とは言え、それが胸に何枚も入るような肉体の持ち主は限られるだろう。
「ハルナンちゃん、これできる?」
「……出来ると思います?」
帝国剣士でこんな芸当が出来るのは胸を絆創膏入れにしているカノンくらいだろうが、
この件はさほど重要ではないので一旦置いておこう。
大事なのは、ここから始まるんだ!
「早速特訓を始めましょ。 ルールは簡単。生き延びるだけ。」
「「「「!?」」」」
そう言うなりキッカは10枚、いや、13枚のチャクラムを新人剣士に向かって投げつけた。
得物自体はよくある投てき武器だが、キッカのパワーでブン投げられれば殺人兵器へと変化する。
しかもそれが13個も同時にやってくるのだから、しっかりと見極めなくてはならない。
「刃が高速回転してやって来とるワケか……ほな、回転には回転や!!」
既にスケート靴を履いていたハーチンは、左足を軸としてグルグルと回転し始めた。
フィギュアスケートのスピンという技術を用いることによって、
右足のブレードに加わる力と速度を増加しているのである。
強烈なスピンからの蹴り上げでチャクラムなんか跳ね除けてやろうと思ったのだが……
「ハーチン駄目!避けて!」
「アカネチン何を言うて…………なっ!?これは!!」
スケート靴に衝突したチャクラムは、跳ね除けられるどころか更に勢いを増して突き進んできた。
回転力に関しては互角に思えたが、何故にハーチンは押し負けそうになっているのか?
それは、ハーチンとキッカのそもそもの体格差にあった。
「技術はなかなかだけど、ちょっと細すぎだよね。
そんな身体で力出てる? ちゃんと朝ごはん食べてる?」
460
:
名無し募集中。。。
:2016/07/06(水) 13:13:03
現帝王もできそうだが
461
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/08(金) 12:59:30
チャクラムを蹴り落とすつもりが、逆にハーチンの方が体勢を崩されてしまった。
捌ききれなかった刃はそのまま直進を続け、
ノナカ、マリア、アカネチンの方へと向かっていく。
ここで一歩前に出たのはマリアだった。
両手剣「翔」を握ってバッターボックスに立った彼女の表情は、いつもと違って真剣そのものだ。
チャクラムどころか大気そのものを吹き飛ばすほどの勢いで、マリアはスウィングする。
「えいっ!!」
細身の強打者マリアのバッティングは素晴らしかった。
直接叩くことのできたチャクラムを数十メートル先に送っただけでなく、
それ以外も風圧の力だけであさっての方向へと飛ばしてしまった。
豆腐が主食のハーチンとは違って、マリアはハムが大好物。
その分だけ力が付いていたのだろう。
この成果にはキッカも驚いたようだ。
「すごーい! アレを全部飛ばしちゃうなんて……」
「えっへん! 次はあなたを倒しちゃいまりあ。」
「でもね……私のチャクラムは飛ばされても戻ってきちゃうんだよなぁ……」
「え?」
遠方に飛ばされた以外の全てのチャクラムがUターンをし、
四方八方からマリア達を襲いにかかった。
意思があるかの如く自由自在に動く刃の秘密は、キッカの投擲技術にある。
彼女の投げるチャクラムは、勢いを殺されない限り、いつまでも対象を追い続けるのである。
「更に、5枚追加しちゃいまーす。」
キッカは谷間から5枚のチャクラムを取り出し、後付けで新人剣士たちに投げつけた。
この時期を微妙にズラしたアフターファイブがなかなかに嫌らしい効果を発揮する。
全ての刃が同時に到達するのであれば、マリアのバッティングで吹っ飛ばすことが出来るのだが、
一振りで処理できないような絶妙な時間差で来るように計算されているため、
新人剣士たちは互いに協力する以外に助かる道はなかった。
となれば司令塔の役割を担うアカネチンの腕の見せ所なのだが……
「マリアちゃんは戻ってくる刃をもう一度吹き飛ばして!
後から来るのは私とノナカちゃんでなんとかしよう。」
「そんなのじゃダメ!アカネチンは黙ってて!」
「マリアちゃん!?……何が言いたいの?……」
「全部マリアがやるからみんなは見てて。あの人はマリアが倒すから。」
「ちょっと!今はそんなこと言ってる場合じゃ!」
462
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/08(金) 13:00:25
はい、フクもチャクラムの出し入れは可能ですねw
AAAの皆さんは残念ながら……
463
:
名無し募集中。。。
:2016/07/09(土) 12:59:34
魍魎拳奥義・龔
464
:
名無し募集中。。。
:2016/07/09(土) 13:00:26
髪斧無限還
465
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/11(月) 12:32:25
次回更新は明日の夜になりそうです
466
:
名無し募集中。。。
:2016/07/11(月) 13:25:23
アフターファイブw
467
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/13(水) 04:11:28
すいません、昼までには書きます
468
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/13(水) 12:57:40
自暴自棄にもとれるマリアの行動はあながち間違いでもなかった。
彼女の狙いは直接キッカを討つこと。
どんどん追加されて無尽蔵に増え続けるチャクラムを処理するよりは、
キッカを倒して出所を断つことこそが生き残る唯一の道だと考えたのである。
しかし、そこには2つの過ちがあった。
1つはマリアの実力ではアヤ王やマロに匹敵するキッカを負かすなんて到底不可能なこと。
そしてもう1つは……
「マリアの魔球で決めるよ!!!えいっ!!!」
そのキッカに攻撃を当てる手段が投げナイフであることがそもそもの間違いだったのだ。
一定の距離が離れている以上、ナイフを投げて攻撃するというのは確かに有効そうに思える。
だが、ご存知の通りマリアの投げナイフの腕前は絶賛スランプ中だ。
キッカの投擲技術をメジャーリーグとするならば、マリアのそれは草野球にも満たない。
結果、いつものように予期せぬ方角へ大外しするのがオチだった。
「あああああああああっ!!」
十中八九こうなることはマリアだって分かっていた。
それでも、気合いのこもった投球ならなんとかなるかもしれないという淡い期待を抱いていたのだ。
確かに窮地に覚醒する戦士だって居るだろう。
ただ、マリアの覚醒の時は今のこの場では無かったようだ。
バッティングを放棄してピッチングに注力した今のマリアは無防備に近い状態にある。
そんなマリアに複数のチャクラムが無慈悲に襲いかかっていく。
「いやあああああ!」
「マリアちゃん怖がらないで、battingの準備をして。」
「ノナカちゃん!?」
パニックになりかけたマリアを護るように、ノナカは紐付きの忍刀「勝抜」をビュンビュンと振り回していた。
この軽い刀ではパワフルなチャクラムを叩き落とすことまでは出来ないが、軌道を反らす程度なら可能だ。
音速に近いスピードで飛び回る刀身によって複数の刃を同時に防いでいる。
「ノナカのPowerじゃこれが限界……マリアちゃんの強打で打ち落として!」
「うん!マリアやるよ!」
崩れ落ちる寸前だったマリアを持ち直したノナカを見て、キッカは感心した。
自分勝手な戦士な多い昨今では稀有なバランサーだと感じたのだ。
1人で突っ込みがちなハーチンやマリアとはまた異なるタイプの戦士だと言える。
「あれ……ねぇねぇハルナンちゃん。」
「どうかしました?」
「アカネチンって子、どこいった?」
469
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/15(金) 12:59:55
これまでのキッカは、チャクラムの旋回する範囲のみを注視していた。
ターゲットはそのエリア内に存在するため、それ以外の箇所をわざわざ見る必要が無かったのだ。
しかし、対象が消えたとなれば集中する範囲を拡大しなければならない。
周囲の気配を敏感に察知して、アカネチンが後方から迫ってきていることを把握する。
(いつの間に後ろに?……まぁいいや、一発殴ってビビらせちゃおっと。)
無数のチャクラムを掻い潜った努力は認めるが、それもここまで。
キッカは遠距離攻撃を得意とするが、肉弾戦だってそんじょそこらの兵では敵わなぬほどに強いのである。
アカネチンのような子供が相手ならジャブの一発で無力化出来るだろう。
そのような風に終わりまでの道筋を冷静に考えていたキッカだったが、
振り返ってアカネチンと対面するなり、急に取り乱してしまう。
「えっ!?……その眼は……!!」
アカネチンが思ったより近くに迫っていたことも、
手に握った印刀が今まさに喉元に突きつけられようとしていたことも、
キッカを動揺させるには不十分な要素だった。
では何がキッカの心を惑わせたのか、それはアカネチンの"眼"にあった。
まったく光の通っていないその無機質な眼に、全てを見透かされているような気がしてならなかったのだ。
戦士としての経験が豊富なキッカは、その眼がどういう性質を持つものなのかすぐに理解した。
つまりアカネチンはチャクラムとキッカ自身の行動パターンを100%に近い精度で把握し、
安全にここまで辿り着けるルートを見つけた上で、刃を喉に突きつけるまでに接近したというわけだ。
平然とそこまでやってのけてしまう、この異様な眼が、キッカのトラウマを呼び起こす。
「近寄るなっっっっ!!!」
キッカは無意識のうちに、アカネチンの脳天を硬い握り拳でブン殴っていた。
身体能力自体は同期に遠く及ばないアカネチンがこのゲンコツに耐えられるはずもなく、
たった一撃でその場にぶっ倒れてしまう。
アカネチンが完全に寝っ転がったところで、キッカも我に帰る。
そして非常にバツの悪そうな顔をしながら、こう呟くのだった。
「うわ〜……やりすぎちゃった……」
470
:
名無し募集中。。。
:2016/07/15(金) 13:57:10
あの眼は怖いからな〜
471
:
名無し募集中。。。
:2016/07/15(金) 16:36:53
いまだにキッカはアイカの呪いから抜け出せてないのか?
472
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/16(土) 12:49:36
アカネチンが倒れたことにショックを受けたノナカとマリアは、僅かな時間ながらも気を抜いてしまった。
そんな状態ではキッカの猛攻を受けきれないことは明らか。
場合によってはキャベツの千切りのように全身を切り刻まれることだって有りえるだろう。
それを瞬時に察知したキッカは、今まで使用していたものと比べてやや小さめなチャクラムを投げつけた。
この小型版は他のチャクラムを制御する目的で作られており、触れた円盤が即座に旋回を停止するような動きになっている。
キッカの腕前が熟練の域に達しているからこそ出来る神業と言えるだろう。
おかげでノナカとマリア、ついでに未だに倒れこんでいたハーチンは無傷で済むことができた。
もっとも、死が寸前まで迫っていたおかげで一人残らず腰を抜かしてしまっているようではあるが。
「umm……死ぬかと思った……」
「そう、私が攻撃を止めなかったら間違いなく死んでたよ。
じゃあ全員生き残ることができなかったってことで、今日の特訓は終わりにしよっか!
ぶっちゃけもう疲れたし、また明日よろしく!」
「「「え!?」」」
一秒でも早く他の帝国剣士たちと合流しなくてはならないというのに、
ここで更にもう一日足止めされるなんてたまったもんじゃない。
ハーチン、ノナカ、マリアの3人は反発したくもなったが、それより先にハルナンが釘を刺した。
「あなた達、これから挑むべき相手がトドメの一撃を親切に止めてくれるとでも思ってるの?」
「それは……」
「お優しいキッカ様の特訓もまともにこなせないのに、どうやってベリーズと善戦出来るというのかしら?」
「「「……」」」
「キッカ様は無理難題を課してはいないでしょ?ただ生き残るだけでいいの。
逆に言えばそれすら出来ないようじゃ戦地に行っても足手まといになるだけ。」
容赦なく捲し立てるハルナンを前にして、新人剣士たちは何も言うことができなくなっていた。
やはり彼女らも己の不甲斐なさを十二分に感じているのだろう。
この光景を遠隔から監視している二人も、不憫に感じているようだった。
「あの子たちもよくやってる方だと思うけどな〜……"ガール"もそう思わない?」
「あ、意外にちゃんと特訓を見てたんですね。てっきりキッカ様ばかり見てたと思ってました。」
「え〜〜?なんでそんなこと言うのさ」
「だって双眼鏡を覗くなりすぐにキッカ様のサンバ衣装を見てたじゃないですか、"ロッカー"はいつもそう。」
「そ、それは、下心とかじゃなくてね、あの衣装を着た時の戦い方について考えてただけ!」
「着ますかね?私たちがあんな派手な衣装を……」
「着るかもしれないじゃん!もしもの話!」
473
:
名無し募集中。。。
:2016/07/16(土) 21:29:51
ロッカーの助平顔はヤバイからなw
と言ってる間にもアンジュ国にまたしても新番長が!
474
:
名無し募集中。。。
:2016/07/17(日) 06:29:15
キャベツの千切り懐かしいw
475
:
名無し募集中。。。
:2016/07/17(日) 09:43:21
確かにサンバの衣装着ることになったなw
新番長はまたCMでの御披露目だけかな?
476
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/18(月) 02:48:58
キッカとの特訓で結果を出せず、その上ハルナンにこってり絞られた新人剣士達は
アカネチンが意識を取り戻すのを待って、元気なくその場を離れていった。
その意気消沈っぷりが遠くから見ている"ロッカー"には気になったようだ。
「ねぇ、"ガール"、ちょっとくらいなら声かけても良いと思う?」
「駄目って言いたいけど……"タイサ"が既にやっちゃったみたいですからね……」
「はは、そういや帝国剣士に友達がいるって言ってたね。」
「だから1回だけ大目に見ます。ちなみに、誰と話すつもりなんですか?」
「マリア・ハムス・アルトイネ。ここで助言してあげないと、あの子はずっと抜け出せられない気がするんだ。」
「抜け出せないって……この特訓からですか?」
「いや、彼女を縛る呪縛から」
呪縛という言葉を聞いたガールは少し浮かない顔をした。
そして自分の胸に手を当てたかと思えば、泣きそうな声で一言呟く。
「私たちの呪縛もアドバイスを貰うだけで解ければいいんですけどね……」
「……そっちの方はさ、時間をかけて解決していこうよ。みんなで力を合わせて、ね。」
ロッカーとガールがこんな話をしている一方で、
キッカとハルナンの2人は本日宿泊するコテージの中に入っていっていた。
これから今回の特訓の講評を始めるようだ。
「キッカ様の目から見て、あの子たちの戦いっぷりはいかがだったでしょうか?」
「90点かなー」
「あれ!?意外に高評価なんですね……」
「200点満点中ね」
「あ、はい……」
正直言ってハルナンはキッカのことが苦手だった。
真面目に考えているのか、それとも適当にしか物事を判断していないのか、まったくもって掴めない。
同じ癖がある人物とは言え、まだ直情的に行動するアヤチョの方がよっぽど付き合いやすいだろう。
しかし現状キッカ以外に頼れる人物が居ないのも事実。
一刻も早く新人たちを一人前にするためにハルナンは打ち合わせを進めていく。
「90点の内訳、聞いてもいいですか?」
「んー、実力そのものは褒めても良いと思うよ。みんな一芸に秀でてていいじゃんいいじゃん。
ハーチンちゃんの回転力、ノナカちゃんのサポート、マリアちゃんのバッティング、そしてアカネチンちゃんの眼……
どれも一線級だよ。さすが帝国剣士に受かる子は違うね。」
「ということは、実力以外に問題があると……」
「メンタル弱いね。みんな」
「はい……」
「あと、なんとしてでも勝ってやろう、って思いが弱いかなー」
「はい……」
元々思うところのあったハルナンは、キッカの指摘を受けて痛いところを突かれたような顔をした。
お披露目会のように、相手が一般兵であれば帝国剣士らしい強さを見せる新人4人ではあるが、
ちょっと相手が強くなるとすぐに動揺し、ハーチンやノナカのように消極的になったり、
はたまたマリアやアカネチンのように無鉄砲かつ無謀に突っ込んだりしがちなのである。
中でも、ハーチンのとった行動はひどいものだとハルナンは考えていた。
「特にハーチンの戦い方は失礼に値するものでしたね……お恥ずかしい限りです。」
「ん?何が?」
「えっ、気づきませんでしたか?……彼女はまだ戦えたんですよ。だと言うのにずっと倒れたフリをしていたのです。」
「気づいていたけど」
「でしたら、何故?」
不慣れな特訓に四苦八苦しながらも、ノナカとマリアとアカネチンの3人は少なくとも頑張ろうとはしていた。
だが、ハーチンはその土俵にも上がろうとしていなかったのだ。
ただの一回チャクラムを防げなかっただけで勝負を放棄……ハルナンにはそう見えていたのである。
ところがキッカはまるで異なる感想を抱いていたようだった。
「あのハーチンって子、ハルナンちゃんに似てるかもよ?」
「はっ!?いったいどこが……体形の話ですか?」
「いやいや体形の話はしてない。
じゃあ聞くけどさ、ハルナンちゃんが同じ特訓をするとしたら、どう切り抜ける?」
不意に問われたのでハルナンは少し驚いたが、しっかりと頭をブレインストーミングさせて考えた。
そして確実に達成できると思われる答えを口にしていく。
「偶然そこを通りかかったアヤチョがキッカ様に斬りかかります。
その間、私にチャクラムは飛んできません。無事生き残ることができるのでミッション達成です。」
「えー?アヤチョ王は通りがからないでしょ」
「通りがかるんですよ。不思議なことに。」
確固たる自信を持つハルナンを見て、キッカはつい吹き出してしまった。
そしてやはり自分の考えが正しかったことを理解する。
「あはは、やっぱり似てるよ。ハルナンちゃんとハーチンちゃんは。」
「???」
477
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/18(月) 02:51:39
毎度のことですが、笠原桃奈の加入はびっくりでしたねw
以前にも書きましたが私は研修生の診断テストを見に行っていたので(
>>296
)
加入の納得度自体はとても高いです。
本作への登場は第3部か、あるいはおっしゃる通りCMですかねw
478
:
名無し募集中。。。
:2016/07/19(火) 00:07:05
出来たら本編に出て欲しいなぁ〜3部始まる頃にはカミコと共にモモニャ(カッサー?)もキャラ出来てるだろうし
てかそうこう言ってる間に帝国剣士にも13期が加入…収集つくのか?w
479
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/19(火) 13:00:25
新人剣士たちは苦悩していた。
キッカの課した特訓をクリアーする方法が、どんなに頭を捻っても思いつかないのだ。
ハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンら新人剣士には、
Q期団や天気組団のように明確なリーダーが定まっていない。
そのせいもあってか、彼女らは集まって知恵を交換するわけでもなく、個人行動をとっていた。
そんな彼女らの中でも特に思考するのが苦手なマリアは、
行き場のないモヤモヤを身体を動かすことで発散しているようだ。
「早く!サユ様を!助けなきゃ!」
マリアは両手剣の素振りを何百回も、何千回も繰り返す。
このパワフルなスイングをもってすれば、大抵の敵は簡単に打ちのめすことが出来るだろう。
しかし、キッカ相手には通用しなかった。
バッティング技術だけでは、相手が遠距離攻撃の使い手である場合に有効打を与えることが困難なのである。
となると、ミッションをこなすためにマリアがすべきことは……
「マリアさ、投げナイフの方は練習しないの?」
「!?」
急に名前を呼ばれたのでマリアはびっくりしちゃいまりあ。
しかもその声の主にまったく見覚えが無いので困惑してしまう。
「だ、だれ?……」
対面しているのは、男かも女かも分からない人物だった。
かなりの低身長なので、自分より年下だろうとマリアは推測する。
こんな子供、マリアは今まで見たことも話したことも無い。
「あぁ、心配しないで、マリアと俺は初対面なんだから知らなくて当然だよ。
俺のことは"ロッカー"って呼んで欲しいな。よろしく。」
「ろっかー?……どうしてマリアのことを知ってるの?……」
「どうしてだろうね?でも、そんなことはどうでもいいじゃん。」
「?」
「今はさ、マリアがナイフを投げるか投げないかが重要なんだから。」
「!?」
顔に出やすいマリアは、嫌悪感を全面的に表情に出していた。
心のデリケートな部分に土足で入り込まれたような気がして、嫌で嫌で仕方ないのである。
「はは、そんな怖い顔しなくていいじゃんか」
「あなた誰なの!?あっちいって!」
「やだよ。マリアを近くで見てたいんだもん。」
「ヒッ……変態さんなの!?」
この時マリアは、ロッカーを完全に敵として認識していた。
敵を追っ払いためなら武力も辞さない。
「変態さんは痛い目にあわせてあげる!」
「へぇ、どうやって?」
「この両手剣で叩きのめしちゃいまりあ!!!」
480
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/20(水) 01:10:13
マリアの両手剣「翔」による一振りは、空気をも震えさせる。
幼少期からの英才教育を経て、弛まぬ努力が実を結んだ結果、エリポンに次ぐほどのパワーを発揮できているのだ。
この力をもってすれば、迂闊に近寄ってきた"ロッカー"とやらも一撃でKO。
マリアはそう確信していた。
「ひゃあ怖い怖い、まともに喰らってたら御陀仏だったなぁ……」
「えっ!?」
マリアの視界には誰の姿も入っていない。
相手を見えなくなるくらいに遠くまで吹っ飛ばすなんてしょっちゅうだったので、今回もそうだと思っていた。
ところが、ホームランしたはずの"ロッカー"の声が何故か近くから聞こえてくる。
それもかなり下の方からだ。
「どう?驚いた? これがスウェーっていう技術だよ。
ちょっとばかし大袈裟にやりすぎちゃってるけどね。」
「なっ……!!」
スウェーくらいマリアも知っている。
上半身を後ろに反らすことで敵の攻撃を回避する、格闘技の技術だ。
同じ帝国剣士で言えば、身のこなしの軽いサヤシやアユミンが多用するイメージがある。
だがロッカーのそれは通常のものと比較して群を抜いていた。
なんと、リンボーダンスでもするかのような低い位置まで上体を下げていたのだ。
地面から頭部までの高さはせいぜい50cmと言ったところだろうか。
名付けるならばこの回避法は「低空姿勢やりすぎたversion」。
これではマリアの攻撃も当たらなくて当然だ。
「で、でもでも! こうすれば当たるから!」
マリアは構えを変えて、マサカリを振り下ろすように両手剣を地へと叩きつけようとした。
上から下への攻撃ならどんな低空スウェーでも意味がない。
むしろ無理な姿勢がたたって、堪えきれなくなるのがオチだ。
もっとも、ロッカーだってその弱点に気づいていないワケではなかった。
剣が降ろされるよりも先に立ち上がり、そのままの勢いでマリアに飛びかかっていく。
「へへ、ちょっと抱き着かせてもらうぜ」
「ひゃあ!やっぱり変態さんだった!!離れてよ!!」
「ちょっ、誤解しないでよ、これはクリンチっていう立派な戦法で……」
ロッカーも下心だけでマリアをハグしているのではない。
密着することで両手剣のリーチを無効化する、という理由が全体の6割ほどを占めている。
このままくっつかれたら自慢のバッティングを魅せることが出来なくなるので、
マリアはまとわりつくロッカーを必死で振りほどいた。
「もうっ!!」
ロッカーは運動神経が良くて厄介な相手ではあるが、体格差ではマリアの方に分がある。
そのおかげで、ちょっと叩くだけで突き放すことが出来た。
距離にして約2m。ちょうど両手剣の射程範囲内だ。
もうスウェーだのクリンチだのに惑わされたりしない。帝国剣士としての誇りをもって叩き潰すのみ。
「マリアが絶対勝つよ!武器も持ってないような人には絶対絶対絶対に負けられないんだから!!」
当たれば骨ごと粉砕されそうな斬撃が威圧感たっぷりでロッカーに迫ってきた。
今更スウェーで避けようにも、マサカリ打法にスイッチされて打ちのめされることだろう。
だからロッカーは回避術に頼るのをやめにした。
ここでとったのは防御姿勢の逆。 闘志たっぷりのファイティングポーズだった。
「武器を持ってない、か……俺たちの武器は常にココに有るんだけどね。」
481
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/20(水) 12:57:42
ロッカーが繰り出したのは、強烈な右ストレートだった。
己の肉体のみで勝負する超接近型戦闘スタイルはキュートのマイミを彷彿とさせるが、
ナックルダスターのような武具を装着していない点に差分がある。
帝国剣士が剣を武器とするのと同様に、彼女ら"拳士"は自らの拳(こぶし)を武器としているのだ。
ロッカーは小さな拳をでっかく突き上げる。
「ハァッ!!!」
攻撃の矛先はマリアの腹か?それとも頭か?
いやいや、それではデッドボールになってしまう。
ストレートの当たる場所はミットかバットだと相場が決まっているのだ。
ロッカーの渾身の一撃はマリアの両手剣に強く衝突し、そしてぶち破って行く。
「……!!」
綺麗に真っ二つになった両手剣を見たマリアは、一瞬言葉を失ってしまった。
この両手剣はマーチャン製で、とても頑丈に出来ているはず。
それを素手でぶった切るなんて、信じられないにも程がある。
「そんな……"翔"が折れちゃったら、マリアはもう……」
「もう、戦えないってか?」
「……」
今のマリアの心は、両手剣と連動して折れてしまいそうになっている。
下手すれば自信を完全に喪失して、戦士として復帰することが困難になるかもしれない。
それだけはさせない、とロッカーは強く思っていた。
「違うだろ、マリアはまだ戦えるじゃないか。」
「!!」
「俺はマリアの刀を一本しか折ってないよ。でも、マリアは二刀流って呼ばれてるんだろ?
見せてくれよ! バッターではなく、ピッチャーとしてのマリアを!!」
482
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/21(木) 14:12:18
今のマリアは、イップスに近い状態に陥っていた。
イップスとは精神的重圧によって当たり前に出来るはずのことが出来なくなることを言い、
マリアの場合はそれが「ナイフ投げ」という行為にあたっている。
初めにそのナイフ投げに失敗したのは新人お披露目会の時だった。
その時は単に緊張しすぎてナイフが手からすっぽ抜けた程度にすぎなかったが、
その数日後、サユを連れ去ろうとするモモコを狙った投球が大外れしたことで、事態は深刻化する。
世界中の誰よりも大事に思っているサユを、他でもない己のミスのせいで救えなかったことで、
マリアの心の奥深いところを蝕ばまれてしまったのだ。
これまでも嫌な気分を押し殺してナイフを投げてきたが、
それらが例外なく外れる度に心臓を締め付けられる思いになってしまう。
結果として、ここにきてマリアはナイフを握ることすら恐れるようになってしまったのだ。
元より両手剣だけでも一線級の実力を備えていたため、そちらに方針を傾けようという逃げ道も有るにはあったが、
それもたった今、ロッカーのこぶしによって絶たれてしまった。
手元に残されているのは、握るだけで恐ろしい投げナイフ「有」のみ。
となれば、自ずと敵を倒す手段も絞られてくる。
「バッチ来いマリア!今やらんでどーすんの!?」
「……!!」
マリア・ハムス・アルトイネは決断した。
全身が締め付けられそうになろうが、汗が滝のように流れようが、
脚がガタガタと震えようが、吐き気で胃がひっくり返りそうになろうが、
背筋が氷点下ほどに冷たくなろうが、重圧に潰されそうになろうが、
マリアはここで投げなくてはならないのだ。
二刀流という二つ名は、打っても投げても一流だからこそ付けられている。
どちらの戦闘スタイルを採っても、自分はサユを救える。絶対絶対絶対に救える。
そう信じてマリアは第1球を振りかぶった。
「やぁ!!!」
覚悟の末に放たれた豪速球は、真にストレートと言えるものだった。
時速160kmを超える「真っ直ぐ」は、ロッカーの胴体目掛けて脇目も振らずに突っ走る。
483
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/25(月) 12:59:54
(うおっ!?は、速い!)
マリアがプレッシャーを跳ね除けて直球を放つことが出来たのは、ロッカーにとっても喜ばしい進歩だ。
しかし、そのストレートの球速がここまでというのは流石に想定外だった。
今のロッカーの実力では到底反応出来るものではなく、腹に突き刺さるのは決定事項と言えるかもしれない。
マリアの成長を促進するという使命を果たしたとしても、ロッカー自身が死んでしまっては意味がないので、
いつもは忌み嫌っている力に渋々頼ることにした。
(聞いてるか?ファクトリー。
今まで騙してて悪いけど、俺の本名は"フジー・ドン"って言うんだ。
このままだと俺たちはナイフの一突きで死んじゃうかもしれない。
嘘じゃないよ。マリアはそれだけの力を持っている。
だからさ、右腕を作り変えさせてやるよ……ほんの数秒だけな。)
今まさに突き刺さるといったところで、ロッカーは投げナイフを掴み取った。
豪速球をキャッチした超反応も凄いが、刃を強く握っても血の一つも流れない頑丈さが人間離れしすぎている。
本来ならばそれを見た誰もが驚愕するのだろうが、
今のマリアは投てきが上手く行ったことに歓喜しすぎて、それどころでは無いようだった。
「やった!やったぁ!マリアのナイフが真っ直ぐ飛んだ!」
「はは……それは良かったね……ウッ!!」
マリアに労いの言葉を掛けようとしたところで、ロッカーは背後から蹴りを貰う。
その蹴りは意識を強制的に吹っ飛ばすような、とても強烈なものだった。
「流石にやりすぎです。」
「ごめんね……"ガール"……」
484
:
名無し募集中。。。
:2016/07/25(月) 17:05:05
共生型かな
485
:
名無し募集中。。。
:2016/07/25(月) 19:13:54
尾獣を飼ってるのか
486
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/26(火) 12:58:54
「あれ?……あなた誰?」
歓喜のあまり舞い上がっていたマリアも、"ガール"が不意に現れたことには疑問を感じたようだった。
ガールは鎖付きの鉄球を足首に巻きつけているため、否が応でも目立ってしまうのである。
気を失った"ロッカー"を早く人目のつかない場所に運びたいと考えていたガールは
適当にあしらって、この場を立ち去ろうとしていた。
「この人の仲間です。 迷惑をかけたみたいですね。ご麺ね。 それではこの辺で……」
「あ!!!マリアの投球が凄すぎて気絶しちゃったんですか!?」
「そうです。(違うけど)」
「う〜〜〜ん、ロッカーが起きたらごめんなさいって伝えてくれませんか?」
「分かりました。伝えます。 じゃあそろそろ帰りますね……」
「あと!もう一個伝えて欲しいんです!」
「まだ有るんですか?」
「ロッカーのおかげでマリアは真っ直ぐ投げれるようになりました! 有難う御座います!……って伝えてください!
おかげでキッカ様のミッションをクリアー出来そうなんです!」
「……」
マリアの視点からは不審な人物が襲いかかってきたようにしか見えなかったはず。
だというのに今回の成長はロッカーのおかげであることに気づいていたのが、ガールには意外に思えた。
仲間を褒められて嬉しかったのか、ガールは少し喋りすぎてしまう。
複雑な境遇に置かれているとはいえ、彼女もまだ幼い少女なのだ。
「アドバイス、あげます。」
「え?」
「ロッカーを倒した程度じゃ、まだまだキッカ様を満足させることなんて出来ないと思いますよ。」
「えー?そうなのかなぁ……」
「もっと訓練に訓練を重ねなくてはなりません。 それこそ血が滲むまでに。」
「でも、マリア達には時間が無くて……」
「だったら、手段を選ばなければ良いんですよ。」
「手段?……」
「マリアさん、貴方は貴方自身が一番伸びる方法に気づいているんじゃ無いですか?
でも、変なプライドや恥とかが邪魔して実行に移せていないんでしょう?」
「えっ?えっ?」
「私たちなら平気で泥をかぶります。 白い粉の中にだって自ら飛び込むでしょう。
それだけの覚悟が有るからこそ私たちは強くなれたんです。
……だからマリアさん、貴方も一切の手段を選ばないでください。
本当にすべき事に向かって、ナイフのように一直線に飛んで行ってください!」
「マリアが……本当にすべき事……」
487
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/26(火) 12:59:38
確かに尾獣に近い存在かもしれませんが、現時点では言いにくいですねw
488
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/27(水) 13:02:13
ガールと別れてから数分後。
マリアはコテージの扉を勢いよく開いては、唖然とするキッカとハルナンの前まで歩いて行った。
そして深くまで頭を下げ、大きな声で嘆願する。
「キッカ様お願いします! キッカ様を倒すための投てき技術を教えてください!!」
マリアの依頼はとてもヘンテコなものだった。
自分を倒すための技術なんて、誰が教えるというのだろうか。
1000人居れば999人が断るに決まっている。
こんなのを引き受けるのは、余程の変わり者だけだ。
「フフッ……おかしい……」
「わ、笑わないでください……マリアは本気なんです!」
「あはは、ごめんごめん。馬鹿にして笑ったワケじゃないの。
想像していたよりずっとストレートに頼んできたからおかしくって。」
「想像?……」
「マリアちゃんがそう来るのをキッカは待ってたよ。 稽古つけてあげる。」
「えーーー!本当ですか!?」
キッカがその変わり者に該当することは言うまでもないだろう。
その優れた投てき技術を教われば、マリアは確実にパワーアップするはず。
だが、無理矢理教え込んでも意味はないとキッカは考えていた。
自らが劣ることを自覚し、強き者に教えを請う姿勢こそが大事なのだ。
そして、ハルナンはマリアのそれ以外の成長についても喜んでいた。
「マリア、貴方も手段を選ばなくなったのね。」
「わ、ハルナンさん、ごめんなさい……」
「なんで謝るの?勝利のためになんでもするのはとても良いことよ。
ただ、手段を選ばなくなったのはマリアだけじゃないようだけどね。」
「え?」
ハルナンが指差す先を見て、マリアは初めて気がついた。
この部屋にはキッカとハルナンだけでなく、マリアと同期のハーチン、ノナカ、アカネチンも居たのだ。
この3人もマリア同様に、現状を切り抜けるために手段を選ばなかったのである。
「ハーチンはキッカ様がお手洗いに行っている隙に、全員で逃げ出す案を提案してきたのよ。ほれもかなり具体的な、ね。」
「ハルナンさん!言わんといてくださいよ〜」
「ノナカは『せめてハルナンさんだけでもベリーズを倒しに行ってください!』って泣きながら叫んでたっけ。」
「お恥ずかしい……」
「そして、アカネチンは……キッカ様を暗殺しようとしてたわね。」
「!?」
暗殺と聞いたマリアは天地がひっくり返るくらいに驚いた。
成功率は極めて低いが、確かに成功すればミッションを免れることができる。
究極に「手段を選ばなかった」と言えるだろう。
「みんな……いろいろ考えてたんだ……」
489
:
名無し募集中。。。
:2016/07/27(水) 13:04:59
アカネチンは1部の時からキャラ変わったなw
正式に帝国剣士になったからか
490
:
名無し募集中。。。
:2016/07/28(木) 00:05:44
マリアはゾロかよww
491
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/29(金) 13:03:35
いつの間にか夜になっていたが、休んでいる暇は無い。
課せられたミッションを明日こそ達成するために、
マリアはこれからキッカの猛トレーニングを受けなくてはならないのだ。
ロッカーとの戦いで少し疲労しているのも事実ではあるが、
ここで頑張らなくてはいつまで経っても成長することが出来ない。
「じゃあそろそろ始めよっか。サクッと終わらせるよ。」
「あ!キッカ様待ってください。 ちょっとだけみんなと話してもいいですか?」
「ん、いいけど。」
マリアの言う「みんな」とは同期のこと。
ハーチン、ノナカ、アカネチンにお願いするために近づいていく。
「ねぇみんな!マリアね、キッカ様を倒すにはみんなで協力しないといけないと思ってるの。」
この言葉を聞いたアカネチンは少しムッとした。
今日のキッカ戦で独断専行を決めたのはマリアの方だったからだ。
どの口でそんなことが言えるのかもと思ったが、
これも「手段を選ばなくなった」ことによる変化なのかもしれない。
「マリアちゃんねぇ……まぁ、いいけど。」
「何が?」
「いや、なんでもない。」
「そっか!でね!マリアが訓練している間に3人で作戦を考えて欲しいんだ!
マリアは絶対絶対絶対にナイフを華麗に投げられるようになるから!
それを踏まえた作戦を立ててね! で、後でマリアに教えてね!!」
「はいはい、私がメモに記録しておくよ。」
「ほんと!?アカネチンのメモは読みやすいからマリアは好きだよ!」
「そ、そう? えへへへ……」
普段から小さなことでケンカしがちなマリアとアカネチンではあるが、
今現在の会話からはそのような感じは薄れていた。
共通の目的が明確になったことで、真の意味で同志になりつつあるのだろう。
そんなマリアを見て、ハーチンが小声で囁き始める。
「マリアちゃん、ちょっとナイショ話や。」
「ナイショ話?ひみつのマリアちゃんなの?」
「その言い回しはよく分からんけどまぁええわ。
マリアちゃん、せっかくキッカ様に教わるんやから気合い入れなあかんで。」
「うん!もちろん!」
「こんな機会はそうそうない。せやからな、3時間でも4時間でも、いや、もっともっと食らいつくんや。
技がマリアちゃんの身体に染み込むまで頑張るんやで。」
「え!?たいへん。休憩いっぱいとらなきゃ。」
「アカンアカン。 休憩時間ですらもったいないと思わな成長できへんで。
どうしても体力的に辛いならキッカ様の動きを見学する時間でも作ったらええ。
見るのも修行って言うしな。」
「なるほど!」
自分の成長のためにハーチンがアドバイスをくれることが、マリアには嬉しかった。
絶対に言う通りにしようとマリアは誓う。
「いいか?マリアちゃん、"明日を作るのは君"なんやで。」
「?……うん。」
「明日、キッカ様を倒す時のことを思うと、今から楽しみやなぁ。」
「そうだね!」
492
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/29(金) 13:07:30
アカネチンのキャラ変の理由は
帝国剣士昇格以外にも、同期が出来たことも関係するかもしれませんね。
第一部では周り全員先輩だったので。
マリア=ゾロと言うのは、倒すべき人物に弟子入りってところが共通しているということですかねw
493
:
名無し募集中。。。
:2016/07/29(金) 13:29:19
正攻法を使わない連中だなぁw
494
:
名無し募集中。。。
:2016/07/29(金) 15:26:54
むしろこの物語における「正攻法」ってどんなのだろう?って思ったりもするw
495
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/30(土) 13:11:05
「ここをガーッとやってシューッていくの。分かる?」
「分かりました!ビューンってなってドーンですね!」
「そうそう、そういうこと。」
超のつくほど感覚的なキッカはコーチとして不向きと思われたが、
生徒マリアも常人離れした感性の持ち主だったため、奇跡的に歯車が噛み合っていた。
修行の基本的な流れはまずキッカがお手本を見せて、その後にマリアが模倣するというもの。
キッカの投げるチャクラムの枚数が1枚や2枚の時はマリアもなんとかついていけたが、
5枚、6枚、7枚となってくると習得速度も鈍りだしてきていた。
それでも初日にしては十分な成果だと考えていたので、キッカは修行の中断を提案する。
「あぁ疲れた、もう遅いし続きは明日やろっか。」
「駄目です!」
「えっ?」
「マリアはまだやれます!キッカ様の投げるところ、もっともっと見せてください!」
「う〜ん、ま、ちょっとくらいなら良いけど。」
渋々ながらも、キッカは7つの刃を構えてはそれぞれ異なる軌道で同時に投げていった。
右に曲がる刃、左に曲がる刃、落ちる刃、螺旋に回る刃、止まるように見える刃、消える刃、そして真っすぐ飛ぶ刃
これだけの変化をいっぺんにかけることはもちろん容易ではない。
どれだけの力を入れればよいのか、フォームはどうなのか、握り方の複雑さはどうか
それらは決して1回や2回見ただけで習得できるものでは無いため、
マリアは何度も、何度も、何度でも繰り返してもらうようキッカに依頼した。
「あと1回だけ見せてください!」
「……同じことをもう100回は言ってない?」
「お願いします!何か掴めそうなんです!」
「はぁ、コーチなんか引き受けなきゃ良かったよ……これが最後だからね!!」
いくらキッカが食卓の騎士に次ぐ程の実力を持っているとは言っても、疲労には勝てない。
7枚を100回以上、のべ回数にして700球も投げればどうしても精度は落ちるのだ。
つまりはこの最後の投球こそが、指導者としての質をギリギリ保つことの出来るレベルだと言える。
それでも見事に決めるあたりが流石ではあるが。
「キッカ様凄いです!」
「もうやらないよ!今日はおしまい!続きは明日!」
「あ、じゃあ最後にマリアが投げるところを見てください。」
「はいはい、それ見たら帰ろうね。」
本日の成果を見せようとマリアが振りかぶったところで、途端にギャラリーが増え始める。
そこには同期のハーチン、ノナカ、アカネチン、そして帝国剣士団長ハルナンがいた。
「あ、みんな〜マリアの練習を見学しにきてくれたの?」
「マリアちゃん、このメモを見て。」
「アカネチン?……えーーー!?」
一瞬で内容が頭に入るほどに読みやすいメモを見て、マリアは驚いた。
そこには作戦がまとめられており、その方針がマリアには信じられないものだったのだ。
マリアの驚きも止まぬうちに、ハーチンがキッカに話しかけていく。
「キッカ様お疲れさまです。ところで、今何時か知ってますか?」
「知らないけど……結構遅い時間だよね。」
「そうです。日付変わっちゃったんですよ。」
「うわ、そんなに練習してたのか……疲れるわけだ。」
「それでですねキッカ様、今日はもう"明日"なんですよ。」
「……!!ま、まさか!!」
496
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/07/30(土) 13:14:57
仮面ライダーイクタでもそうでしたが、純粋なガチンコバトルはあまり書いてないですねw
特に飯窪さん絡みになると・・・
497
:
名無し募集中。。。
:2016/07/30(土) 23:59:15
黒ハーチンは鬼かw
純粋なガチンコバトルも好きだけど心理戦や裏技的な戦いも好きですよ
498
:
名無し募集中。。。
:2016/07/31(日) 14:15:52
オダは帝王とガチタイマンを繰り広げたってのに新番長も新人剣士もなんか姑息すぎる
499
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/01(月) 12:56:59
キッカはミッションの日時を具体的に指定してはいなかった。
情報としてあるのは「明日」ということだけ。
となれば、日付が変わった瞬間に再戦を望まれたとしてもルール上なんら問題は無いのだ。
「ちょ、ちょっと待って、ハルナンちゃん……こういうの認めちゃう?」
「キッカ様のお好きなようにすれば良いのでは?」
「ホッ、そうだよね。じゃあ……」
「ただ、キッカ様ほどのお方であれば、いつ何時に勝負を挑まれても快諾してくださると思ってましたけどね。
ましてやその相手が新人であれば、先延ばしにするなんてことは有り得ないと……」
「ぐぐ……やるよ!やればいいんでしょ!」
今のキッカは背中から矢を受けたような思いだった。
長時間に及ぶコーチングのせいで身体はかなり疲労しているが、逃げることは許されない。
(軽〜く捻ってすぐにベッドで寝る!それしか道は無い!)
キッカが目指すのは短期決戦だった。
そしてその狙いは新人剣士らも同じ。
キッカのスタミナが回復するのを待たずに、ハーチンとノナカの2人が飛びかかってくる。
(わっ、こっちの2人が来るの!?)
先の戦いでは消極的だったハーチンとノナカがリスクを冒して真っ先に飛んできたので、キッカは面食らった。
投てき使いを相手に接近戦に持ち込むのはもちろん正解の一つであるのだが、
キッカはチャクラムのみでなく、腕っぷしの方も一流だということを忘れてはならない。
これだけ近ければ2人同時にラリアットの餌食になることだろう。
だがその時、遠くからアカネチンの声が聞こえてくる。
「しゃがんで!」
アカネチンの合図と同時にハーチンとノナカは体勢を低くした。
そうすることでキッカの攻撃を回避したのだ。
これはアカネチンが自身の眼によって、キッカの次の行動を予測したのに過ぎない。
本来のキッカならば「声を聞いてから避ける」ような暇も与えず攻撃を終えてしまうのだが、
いかんせん疲労のせいで若干動きがスローになっていたのである。
(くっ……ちょっとまずいな……)
500
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/01(月) 12:58:57
確かにオダは不意打ちを使用したとは言え、ガチでやってましたね。
他のメンバーも勝ちたい一心でやっているということで、ご理解ください。
501
:
名無し募集中。。。
:2016/08/05(金) 00:04:08
マナカン卒業・・・連載始まってから何人卒業していったんだろ
502
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/05(金) 12:27:01
卒業確定はショックですね……
事務所に残るのは幸いですが、関東住みの私が会える機会はもう無さそうです。
次の更新は今夜の遅くになる見込みですが、
どんどん続きを書いてカントリー達の活躍まで持っていきたいですね。
503
:
名無し募集中。。。
:2016/08/06(土) 01:12:39
これは仮面ライダーイクタ書けとの私信では?w
[9期 Blog] 平成ライダーなのに。生田衣梨奈
504
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/06(土) 04:56:45
ミッションを実施するにあたって、キッカには1つの制限が課されていた。
それは新人剣士に大怪我を負わせないということ。
あくまで最終目的はハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンの4名の強化であるために
負傷させてしまってベリーズ達の居る場へ送り出せないようでは元も子もなくなるのだ。
もっとも、その狙いがバレないようにキッカは全力で戦うように振る舞ったつもりではあったが、
アカネチンの眼の前ではそれすらも見透かされていた。
マリアと合流する前に、残りの新人3名はこのような会話をしていたのである。
「キッカ様は致命傷を与えるような攻撃は絶対にしないよ。
私たちにギリギリ弾けるような強さでチャクラムを投げている。」
「なんでそう言い切れるん?」
「筋肉と、視線がそういう動きをしてたから。」
「……ほんま凄いな、アカネチンの眼は」
アカネチン・クールトーンの黒い"眼"は全ての情報を余すことなく取り入れる。光のように反射せず吸収するのだ。
かつてクマイチャンとモモコの戦いをこれ以上ない特等席で観戦したりしたこともあったので、
キッカの取りうるアクションくらいは100%に近い精度で理解出来るのである。
(それに対して身体がついていけるか、というのはまた別問題ではあるが。)
「でもね、大怪我なんか負わせなくても私たちを負かす方法はいくらでもあると思うんだ。
例えば鳩尾を思いっきり殴って気を失わせるとか……」
アカネチンの考えに、ノナカもウンウンと頷いていく。
己の肉体を用いた攻撃であればチャクラムのように人体切断……といったことはないので心置きなく実行に移せる。
それにキッカの屈強な体を前に、新人剣士らが攻撃を止めることが出来るとも思えない。
4人の中では一番ガッシリしているアカネチンがキッカのパンチ一発で落ちたことからも、それは明らかだろう。
となれば肉弾戦に持ち込まれた時点でほぼ詰んでしまうと言えるのかもしれない。
ところが、ハーチンはこの件に関しては楽観視しているようだった。
「それならもう手を打っとるで。」
「「え!?」」
「どんな人間でも疲れたら攻撃力もスピードも弱まるやろ。しかもそれが眠い時間だったりしたら最悪や。
せやからウチはマリアちゃんに「しつこく食らいつけ」って言ったんやで。
あのマリアちゃんにガンガン来られたら流石のキッカ様でもしんどくなるやろ〜」
やっぱりハーチンは凄い、とアカネチンは思った。
自分たちに出来ることはせいぜい「自分たちの立ち回り」を変えることくらいだと思っていたが、
ハーチンは敵の状態すらも変えようとしていたのだ。発想が根本から違っている。
これで上手くいきそうだと思いかけたところで、もう一人の新人剣士ノナカの表情が暗くなっていく。
「いいのかな……」
「何が?」「どうしたん?」
「今回のmissionってノナカたち4人をpower upさせるためのものなんだよね?
それをこんな裏口みたいなやり方で通り抜けちゃって、本当にいいのかな……」
505
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/06(土) 04:58:04
そういやアメトークの仮面ライダー芸人をまだ見てませんでしたw
生田も見たようですし、録画を近いうちに見るようにします。
仮面ライダーイクタが再開するころには平成20周年とかになってそうですねw
506
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/08(月) 13:00:08
サユを救うためには1秒でも早くこの場を発たなくてはならない事はノナカも分かっている。
だが、正攻法を使わずに騙し騙し切り抜けたところで何の意味が有ると言うのだろうか?
実力が身につかず、結果的に打倒ベリーズの頭数として勘定されないのであれば無意味ではないのか。
そのような懸念をノナカは抱いていた。
「うん……言いたいことは分かるで。」
「じゃあ明日にまた出直した方が……」
「いいやそれはアカン。 作戦は今日決行せな意味がない。」
「それだと本当のSKILLが身につかない!」
「不意打ちしながら、且つウチらの実力もパワーアップしたら文句ないんやろ?」
「What's?……」
「見せてやろうやないか。 この夜に強くなるのはマリアちゃんだけやないってことを!」
身体能力は一朝一夕で改善されるものではない。
では短期間で変えることが可能なものは何か?……それは心構えだ。
今まで口に出してはいなかったが、新人剣士4名は戦いの姿勢に問題があることにハーチンは気づいていた。
「以前、フク王様に言われたことがあるんや……ウチの弱点は"攻め手"ってな。
今にも泣きそうな顔で"攻め手いっぱい話そう"って頼まれた事もあんねん。
きっとウチの戦い方がどこか消極的に見えてたんやろな……」
続いてアカネチンも、ノナカの戦い方について率直な感想を述べていく。
「ノナカちゃんも、殻を破くべきだと思ってる。」
「カラを……?」
「ノナカちゃんはバラバラな私たちを調和してくれて、本当に助かってるけど。
そのエネルギーを攻撃に回したら凄い事になると思うんだ。
現にキッカ様はハーチンとノナカちゃんはガンガン攻めない子だと思ってる。
だったら逆に2人が攻撃の要になったら……成長も出来るし、意表もつくことが出来るよね。」
507
:
名無し募集中。。。
:2016/08/08(月) 23:19:22
純粋にスキルをあげるのではなく本来持つ力を最大限に発揮するという事か
508
:
名無し募集中。。。
:2016/08/09(火) 23:06:41
これみて作者さんはどんな物語を想像するのか・・・気になるw
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hiroseyonaka/20160531/20160531223411.png
509
:
名無し募集中。。。
:2016/08/10(水) 07:44:03
イミフ
510
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/10(水) 12:02:13
それぞれがメモリを持ってるように見えますねw
511
:
名無し募集中。。。
:2016/08/10(水) 14:15:35
紫と黄緑のメモリーですねW
512
:
名無し募集中。。。
:2016/08/10(水) 23:15:51
>>510
職人さんが画像加工してくれましたw
https://pbs.twimg.com/media/CpgG5jSVIAEelkb.jpg
513
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/12(金) 12:33:46
凄い!やっぱり思うことは一緒なんですね。
続きの更新ですが、明日になります。
明日からは休暇を取れるので頻度も上がる……はず
514
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/13(土) 13:02:05
そして現在、作戦通りにハーチンとノナカは積極性を見せつけていた。
キッカを恐れずベッタリ貼りつくことで意外性を見せるとともに、
遠距離対応武器の優位性を殺すことにも成功している。
そして、キッカはそれ以外の要因でもやり辛さを感じていた。
(しんどいなぁ……これじゃあ4人分警戒しなきゃならないじゃない……)
正直言うと、昼のミッションではキッカはマリアとアカネチンにしか注意を払っていなかった。
ハーチンは早々に倒れていたし、ノナカも味方を守るばかりで全然前に攻めて来なかったので
投げナイフによる「まさか」が有るかもしれないマリアと、
何をしてくるのか全く予想のつかないアカネチンだけマークしておけば良いと考えていたのである。
ところか、今は状況が大きく変わっていた。
すぐ近くにいるハーチンとノナカがそれぞれの武器(スケート靴、忍刀)で本気で斬りかかってきている上に、
残りのマリアとアカネチンがいつ第二陣として突撃してくるか分からない。
身体と頭がひどく疲労しているというのに、4人に対応しなくてはならないのは非常に堪える。
一刻も早く負担を減らさねばならない、そうキッカは考えた。
(しょうがない、一人寝てもらうか。)
キッカは両方の人差し指にチャクラムを複数枚通し、ギュンギュンと高速回転させた。
この回転は遠くに投げるためのものではない、
近くの人間を削り取るためのドリルなのである。
(ハーチンちゃんの肉、エグらせてもらうよ……
まぁ、胸は脂肪がついてるから大事には至らないでしょ……)
515
:
名無し募集中。。。
:2016/08/14(日) 09:24:11
その娘の胸に脂肪は…
516
:
名無し募集中。。。
:2016/08/14(日) 12:30:34
竜ノ炎参式、焔群
517
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/14(日) 18:15:32
キッカはハーチンの胸部に狙いを定めて、ドリルと化した右腕を振り下ろした。
本調子ではないので本来の鋭さは損なわれているが、
人間の肉を掘削するだけの力は残っているので十分だ。
この一撃がまともに当たればハーチンは怯むはずなのだが……
(あれ!?外した……)
ハーチンの胸への攻撃をスカしたので、キッカは少し動揺した。
確実に当てる自信があったのに外してしまったということは、
キッカ自身が想像以上に疲れているのか、それともハーチンの回避判断が優れていたのか、のどっちかだ。
相手が女性である以上、胸の膨らみを考慮するとそうだとしか考えられない。
だがその原因を探る猶予もキッカには与えられていなかった。
紐付きの忍刀の切っ先が、自身の後頭部を狙っていることに気づいたのだ。
「くっ……これくらい!」
いくら満身創痍と言えどもキッカの圧倒的な強さは揺るがない。
不意を打った後方からの攻撃くらいは難なく対処出来るのである。
もちろん正面からの攻撃だって両手のチャクラムで完全にガードしている。
ゆえに、新人相手にキッカが致命傷を受けてリタイアする……という可能性はゼロに近いと言っていいだろう。
だが、それも相手を視認できている場合の話。
ハーチンに避けられて動揺したり、ノナカの攻撃を防いでいるうちにキッカはターゲットの一人を見失っていた。
(あーもう……アカネチンどこ行ったの……)
518
:
名無し募集中。。。
:2016/08/16(火) 18:43:39
無い脂肪はえぐれない
悲しいなぁ〜ハーチン
519
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/17(水) 04:46:13
キッカがアカネチンを見失ったので、ハーチンは心の中でほくそ笑んだ。
少しでも誤れば殴り飛ばされるような状況であるため表情に出すほどの余裕は無いが、
全てが目論見通りに行っているので嬉しくなってくる。
(行ったれ!勝利の鍵はアカネチンに有るんやからな!)
今まさに脇腹を刺されんと言ったところで、キッカはアカネチンの居場所を認識する。
しかし今更気づいたところでもう遅い。印刀による凶撃はもう止められないところまで来ていた。
すぐにアカネチンの腕を掴もうとしても完全に防ぎきることは不可能だろうし、
その隙にハーチンの蹴りやノナカの刀を貰ってしまうだろう。
様々な可能性を考慮した結果、キッカはアカネチンを放っとくことにした。
その結果として、印刀はキッカの横っ腹に無抵抗で突き刺さっていく。
「……で?」
「!?」
刃を体内に入れられても平気な顔をしているキッカに、アカネチンは戦慄する。
驚くべきはそれだけではない。
ハーチンのスケート靴を左手で、ノナカの忍刀を右手で……要するに素手でキャッチしてしまっていたのだ。
高速回転するチャクラムで弾くのではなく、血を流しながらもあえて自らの手で止めることによって、
ハーチン、ノナカ、アカネチンをビビらせることが目的なのである。
そして、それは想像以上に効いていた。
「ここまでの作戦はなかなか良かった。みんなで力を合わせればそこそこの強敵も倒せるかもね。
……でもさ、君たちが今相手にしているのは"三銃士"が一人、キッカなんだよ。
キャリアどうこうじゃなく、人間としての性能が違うんだ。残念だけど。」
このキッカの発言にはハッタリが大きく含まれている。
どれだけ刃で刺されてもへっちゃらな風に言ってはいるが、人間である以上そんなことはない。
このままの勢いで斬られ続けたら流石のキッカだろうと失血で倒れてしまうだろう。
だが、このように言い放ったおかげで新人剣士3名の刃を持つ力は確かに弱まった。
腹部と両手に怪我を負いはしたが、今後の攻撃がヘナチョコならば負けようがないのである。
「私たちじゃ……キッカ様に勝てない……」
「そうだよアカネチンちゃん、これに懲りたら今後は"勝つ"じゃなく"生き残る"策を考えるんだね。」
「でも……私たち以外ならキッカ様に勝てる……」
「は?」
キッカがアカネチンの言葉の意図に気づくまでに、ほんの少しの時間を要した。
その「ほんの少しの時間」さえ稼げれば十分。
それだけでもうピッチングは完了するのだから。
「マリアちゃんか!!」
常に4人に意識を配ることを心掛けていたキッカは、いつの間にかマリアを見失っていた。
何故そうなったのか?それはアカネチンの仕業に他ならない。
キッカの挙動も視線もすべてを把握する眼を持つアカネチンだからこそ、
マリアへの視線を妨害する位置に陣取ることが出来たのだ。
(ここでナイフを貰うのはまずい……でも、一本くらいなら耐えられる。
アカネチンの刃を受けたように、ここはあえて食らってあげるよ。
……反撃はそれからでも遅くない。)
520
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/17(水) 05:02:32
●三銃士について
構成員のすべてが過去にマーサー王国、モーニング帝国を脅かした犯罪者です。
今は改心して裏の仕事を生業にする者の中で、特に強い三名をこう呼びます。
それと、みんな負けん気が強いです。
1人目
→キッカです。
2人目
→過去の大事件で敵側についたロビンという人物です。
「可能性を秘めたきれいなお嬢さん5人組」というチームのリーダーを務めていますが
現在はその名に反して4名で行動しているみたいです。
3人目
→悪の博士によって製造されたSAMURAI GIRL型兵器「1059号」。
マーサー王国に攻め入りましたが、元の性格が良い子なのですぐに改心。
今は氷柱割りを得意とする空手家や、金髪のヤンキーら6名のリーダー(仮)をやってます。
521
:
名無し募集中。。。
:2016/08/17(水) 11:41:50
きたか…!
522
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/17(水) 23:03:50
投げるのは一本だけ、そこにキッカの勘違いがあった。
確かにマリアは相当不器用ではあるが、教わったことはキッチリやるタイプだ。
そんな彼女が受けた最新のコーチング内容はいかなるものだったか?
100回以上繰り返し見続けたお手本は、どのように投げていたのか?
「7本……!!」
右に曲がる刃、左に曲がる刃、落ちる刃、螺旋に回る刃、止まるように見える刃、消える刃、そして真っすぐ飛ぶ刃
キッカが何度も何度も何度も何度も投げてくれたのを忠実に再現するため、
マリアは7本のナイフを同時に投げつけていた。
もちろん手本であるキッカのキレやスピードには遠く及ばないが、
全てが確かなパワーをもって前へと突き進んでいる。
いくらキッカでもこれらをすべて受けとめたら身体がもたないだろう。
(悪いけど付き合ってらんない、ここは逃げさせてもらうよ!)
掴んでいたスケート靴と忍刀から手を放し、腹にブッ刺さる印刀もすぐに引っこ抜いた。
ナイフ群はもうすぐそこまで迫っているが、このペースなら疲れた身体でも安全地帯に退避可能だとキッカは考えていた。
だがここで余計なことが気にかかってしまう。
ハーチン、ノナカ、アカネチンの3人は何故この場に留まっているのか……それが気になるのだ。
(いやいやいやいや君たちも逃げなよ!?ナイフのコントロールが狂ったら刺さっちゃうでしょ?)
マリアの制球力が悪いのは、投球訓練での上達を見ていない3人の方がよく知っているはず。
普通の頭を持っていれば誤射を恐れて真っ先に逃げるはず。というかそうするべきなのだ。
だと言うのに彼女らは頑なにこの場を動こうとしない。
まるで、マリアが正確に投げるのを信じているかのように……
(信じてる?……そうなの?信じているの?……そういうことなの?)
ほんの僅かな時間であるが、キッカは震えてしまった。
ハーチンが、ノナカが、そしてアカネチンが逃げないのはマリアを信じているからに他ならないことを理解したのだ。
7本の刃がすべて例外なくキッカに命中することを前提に置いているからこそ、そのような行動がとれるのである。
だとすると、キッカはもう逃げられなくなる。
キッカは新人剣士の「敵」ではなく「コーチ」であるために、諦めない生徒に対してはその役割を全うする必要があるのだ。
本当に頭が痛くなるような話ではあるが、キッカは全てのナイフを受け止めなくてはならない。
(あ〜〜〜〜〜!!!もうっっっ!!分かったよ!一本残らずもらってあげる!!
コーチとして、マリアちゃんに"失敗体験"を植えつけちゃならないってことでしょ!?
痛いんだろうなぁ……苦しいんだろうなぁ…………まぁ、若い子の"成功体験"に比べたら些細な犠牲ってところか……
この年代の挫折がキツいってことは、よく理解ってるから……ね。)
キッカは一歩前に出て、両手を広げて待ち構えた。歯をくいしばって、待ち構えた。
シュート、カーブ、フォーク、ジャイロ、ナックル、消える魔球、そしてストレート
その全てが一球残らずキッカのわがままボディに突き刺さる。
523
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/17(水) 23:05:22
まだまだ全然途中ですが過去ログ置き場を復活させました。
http://hellomatome.html.xdomain.jp/
524
:
名無し募集中。。。
:2016/08/18(木) 00:28:23
キッカが言葉通り体を呈して4人に道を示そうとしているのか泣ける…よくぞアイカへの憎しみを乗り越え立ち直ったよなぁ
過去ログ感謝ですまた読み返そうかなぁ
525
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/18(木) 20:22:22
マリアの渾身の一撃をもらったキッカは、そのまま仰向けに倒れていった。
体力、気力がともに限界に達していたのか、
それとも教え子の出した結果に満足したからなのか、
キッカは少しも動こうとはしなかった。
そんな様子を見て、アカネチンがポツリと呟く。
「私たち……勝ったの?……」
ハーチンも、ノナカも、いまいち状況を掴めてないような顔をしている。
これ以上無い好条件だったとは言え、あのキッカに自分たちが勝てたことが信じられないのだ。
勝利を確信しているのはただ一人。
さっきから万歳して喜んでいるマリア・ハムス・アルトイネだけだった。
「やったーーー!!マリアたち、ミッションを達成したんだよ!!」
「そ、そうやな、ウチら勝ったんやな!」
「Unbelievable!! 信じられない!」
「これで私たち、サユ様を助けに行けるんだ!!」
新人剣士たちは浮かれに浮かれきっていた。
ミッションとして課された「生き残る」を超えて、キッカを倒してしまったのだから
それはもう嬉しいだろう。
そんな中、ハルナンだけは深刻な顔をしていた。
「キッカ様!ご無事ですか!?」
「「「「あ……」」」」
ハルナンが大急ぎでキッカに駆け寄るのを見て、新人4名はハッとした。
今のキッカは体中のあらゆる箇所から出血をしている、言わば重体の状態なのだ。
喜ぶよりも救護を優先すべきなのは明らか。
なので4人も慌ててキッカの近くに向かったが、その重体人本人に拒否されてしまう。
「あー、いい、いい。自分でなんとかするから構わないで。」
「ヒャ!!まだ息がある!」
「勝手に殺さないでよ……正直メチャクチャしんどいけど、死にはしないよ。」
普通は死んでもおかしく無い、むしろ生きてることの方が異常な程の大怪我だが、
あの時代を生きてきたキッカにとっては「しんどい」で済むらしい。
「ですがキッカ様、せめて治療はさせてください。」
「ハルナンちゃん。あの子たちの合格を取り消してもいいの?」
「えっ!?」
合格取り消しと聞いて、ハルナンならびに新人剣士はドキリたした。
正規の条件を満たしてはいるものの、キッカにダメと言われたら従うしか無い。
「今、2つの条件を新しく決めたの。それを守れなかったらベリーズのところに行かせないよ。」
「そ、それだと話が違ってきますが……」
「いいから聞いて!」
「ハイ!」
ハルナンがキッカの言いなりになったので、新人たちはもう何も言えなくなってしまった。
果たしてどんなルールが課されるのか。
その内容をキッカが告げていく。
「1つ目。 新人4人とハルナンちゃんは今すぐ身体を休めること。 明日の朝8時までゆっくりしたらどこでも好きなところに行っていいよ。」
「休み……ですか?」
「人間が十分に休みを取らなかったらどうなるのか……ってのはハーチンちゃん達の方がよくわかってるんじゃない?」
「ひぇ〜……は、はい……なんか、すいません。」
「だったら一刻も早く寝なさい。 私を治療しようとしたり、馬に乗って移動しようとしたら怒るよ。」
戦いには休養も必要。そのことをキッカは伝えたかった。
いろいろとやりたい事はあるかもしれないが、とにかく休む。
ベリーズ戦に向けて今から出来る最良の対策はそれだけなのである。
「それと2つ目……ベリーズの"眼"を持った人には一切近づかないこと。それさえ守れれば後は何も言わないよ。」
「"眼"?…」
「アカネチンちゃんだって持ってるでしょ?不思議な"眼"。」
ハーチンやノナカ、そしてマリアはうんうんと頷いた。
アカネチンの観察力は人並み外れているところがある事に気づいていたのだ。
そしてアカネチンも己の力を自覚している。
過去にサユに教わった"眼"が自分に備わっていることを理解している。
「私と同じ眼を持った人が……ベリーズにも……」
「ぶっちゃけさ、アカネチンちゃんの戦闘能力は中の下くらいでしょ」
「う……」
「ベリーズのその人の強さを同じ物差しで測るなら特上の特上。 しかもオーラだって他のベリーズに匹敵してる。」
「うわ……」
「そんなに強いのに"眼"まで持ってるの。 勝てるワケないでしょ?」
「はい……でも戦わなくならない時はどうすれぼ……」
「逃げるの。とにかく逃げる。 それだけは絶対に約束して。」
いつになく真剣に言うキッカに、一同は強く頷いた。
あれだけ強いキッカがそう言うのだから、よほど規格外の強さなのだろう。
「あの……その人、どんな人なんですか?……」
「一言で言うなら……"人魚姫(マーメイド)"、かな。」
526
:
名無し募集中。。。
:2016/08/18(木) 23:11:05
あの時代・・・確かにw普通死んでるっての多かったもんなぁ
ベリーズの"眼"はあの子か…人魚姫かぁどんなオーラなんだろ?でも個人的に魔法使いってイメージが強いんだよなぁ
527
:
名無し募集中。。。
:2016/08/19(金) 09:34:47
いや・・・ここのあの人にはマーメイドはぴったりだよ
敵の倒し方もアレだし
てかこの曲までもぴったり当てはめてしまうなんて!すげぇw
528
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/19(金) 19:47:14
各所で行われたイベントも終わり、翌日の朝が来た。
この日はプリンスホテルでの決戦が行われる当日。
実際に戦いが始まるのは正午ではあるが、
カントリーの4名は朝早い時間からモモコにとある任務を命じられていた。
「マナカちゃん、あれじゃない?マーサー王国の船って。」
「そうねリサちゃん。じゃあさっそく接触しましょ。」
リサ、マナカ、チサキ、マイは大胆にも港に着いたばかりの船へと接近していった。
この船にはキュート戦士団にモーニング帝国剣士、アンジュの番長やKASTが乗っている。
上陸するや否や敵の使いが現れたので、連合軍はピリッとした。
「何よアンタ達!ここで戦いをおっ始めようっての!?」
アユミンはエリポンの後ろに隠れながら怒声をあげた。
強い敵対心を持ちつつも、カエル軍団が怖いのである。
そんなアユミンならびに数名の警戒心を解くために、マナカ・ビッグハッピーが優しい口調で説明を始める。
「私たち4人は皆さんを戦場にご案内するためにココに来たのです。決して今すぐに戦おうなんて思ってませんよ。」
「戦場?プリンスホテルでやるんじゃないの?」
マナカに問いを投げかけたのはハル・チェ・ドゥーだ。
プリンスホテルが決戦の地であることは、確かにそこにいるリサ・ロードリソースが教えてくれたはず。
「まぁ、ドゥーさん。イケメンなだけじゃなくて記憶力まで優れているんですね!」
「えへへ、そ、そうかな?」
「はい。当初はプリンスホテルで行うつもりでした……ですが、どうしても入りきらなかったのです。」
「入りきらなかった?……」
一同はまずベリーズの巨人、クマイチャンを連想した。
あの長身が入りきらなかったから開催場所の変更も止むなしと考えたのかもしれない。
しかし、いくらクマイチャンがデカいとは言っても人間が入れないようなホテルが有るだろうか?
ましてやプリンスホテルは高級ホテル。 高さと広さは保証されているはずだ。
ではクマイチャンではなく、いったい何が入りきらなかったのか?
その疑問が解消されぬうちにマナカは説明を続けていく。
「場所が変わったと言っても大きく移動するわけではありません。
真の開催地は"シバ公園"……ホテルから歩いてすぐのところに有ります。
とても広いので、のびのびとした気持ちでベリーズ様たちと戦えると思いますよ。
それではご案内しまーす!!皆さんついてきてくださーい!!」
529
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/19(金) 19:48:24
人魚姫の正体はわざわざ言うまでも無さそうですねw
オーラはアイリの雷同様に、前作の設定が反映されてます。
530
:
名無し募集中。。。
:2016/08/19(金) 22:07:07
アババのオーラ?・・・アババ状態のアレがスタンドのように見えるのを想像して戦慄したwまぁ違うだろうけど
531
:
名無し募集中。。。
:2016/08/20(土) 05:08:58
ちょ℃-uteが
532
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/20(土) 14:39:53
活動休止じゃなくて解散なんですね……
この話を書き始めてからいろいろありましたが、一番の大事件のような気がします。
533
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/20(土) 20:43:58
カントリーに案内されなくても、ベリーズ達のおおよその居場所に目星はついていた。
シミハムの「無」のオーラでも隠しきれない程の禍々しい威圧感がそこから発せられているため、
己の身体が震える方へ歩けば自ずと辿り着けるというワケである。
ベリーズのところへ近づけば近づくほど、マイミの怒りに連動してえ嵐が激化するのも目安になるだろう。
そうして、いくらか歩いているうちに、目的地であるシバ公園に辿り着いた。
「おはよー。早かったのね?まだ約束の時間まで結構あるのに。」
そこにはモモコがいた。 シミハムも、ミヤビも、クマイチャンも近くに立っている。
橋の上で戦った面々が揃っているので連合軍はピリッとした。
「4人……カントリーも含めて8人か……残りの2人はどうした?」
今すぐに飛びかかりたくなる気持ちを押し殺して、マイミはモモコに質問した。
ベリーズは総勢6人のグループであり、ここに居ない2人も例外なく強者。
その2人に不意でも打たれたら大打撃だ。
だからこそしっかりと情報を収集する必要が有るのである。
「あぁ、そのことなんだけどね……1人はさぼり。1人は後で来る。
ほら、あの2人は朝弱いから。」
「本当か?嘘じゃないだろうな。」
「えぇ〜?モモが嘘ついたこと、今まであった?」
「有るだろ。」とモモコの味方であるはずのミヤビがツッコミを入れた。
そしてモモコの代わりに説明を補足し始める。
「騙し討ちも有効な戦略だと考えるけど、この点については嘘はないと思って欲しい。
なんなら今回の戦いの"ルール"の1つとして数えても良いよ。」
「ルールか。なら詳しく教えてもらおうか。 2人のうちどちらがさぼりで、どちらが遅刻なんだ?」
「遅れて合流するのはチナミだよ。 まぁ、約束の時間である正午までには到着するから"遅刻"では無いんだけどね。
で、どうする? チナミを待ってから正午に戦闘を始めるか、それとも今から戦うか。」
ミヤビの問いかけへの答えは決まっていた。
チナミがいない分、戦力数的に有利だという理由もあるが、
それ以上に倒すべき相手を前にして待っていられないことの方が大きいのだ。
「もちろん!今すぐだ!!」
534
:
名無し募集中。。。
:2016/08/20(土) 23:13:23
> ベリーズは総勢6人のグループであり
え?何故7人じゃないんだ?
535
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/21(日) 12:39:18
マーサー王はベリーズ戦士団ではないので、それを抜いた6人ということになりますね。
536
:
名無し募集中。。。
:2016/08/21(日) 15:32:31
あ・・・根本的な事忘れていたw
マーサー王大変失礼しました
537
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/23(火) 12:56:37
連合軍は、今回の戦いのフォーメーションを事前に取り決めている。
その中でも特に重要な役割を担っているトモ・フェアリークォーツの心臓は、
今にも破裂しそうなくらいにバクバクと鳴り響いていた。
そんなトモの弱っている部分を見抜いたアイリは、優しく手を取り、こう言うのだった。
「貴女なら大丈夫。 だから一緒に行きましょう。」
その一言で少し冷静を取り戻したトモは、アイリと共にベリーズの目の前まで歩いていく。
ここまでやってきたのはアイリとトモだけではない。マイミ、ナカサキ、オカールもだ。
キュートが最も得意とする5人組の陣形で、シミハム、モモコ、ミヤビ、クマイチャンの前に立ちはだかったのである。
「へぇ、その子がマイマイの代わりってこと?」
「そうだ。5人揃った私たちが強いことは、お前たちもよく知っているはずだ。」
モモコの問いにマイミが答えた。
いくらトモが果実の国では優秀な戦士だとしても、食卓の騎士マイマイには及ばないはずなのだが
マイミも、他のキュートのメンバーもトモを信じていた。
「まぁ、モモたちは4人だし、そっちもキュート4人にオマケが1人……
確かに丁度いいっちゃ丁度いいのかもしれないわね。」
「いや、違うぞ。」
「ん?」
「この陣形は元々5人のベリーズを撃破することを想定したものなんだ。
オマケだと決めつけちゃってたら時代に蹴られるぞ?」
当初の連合軍の想定は、キュート+トモの5人でベリーズ5人を抑えて、
残りのメンバー全員でベリーズ1人とカントリー4人を倒すというものだった。
強大な存在であるベリーズも1人だけなら、帝国剣士と番長、そしてKASTの力を総動員すれば勝てると考えたのである。
だが実際はキュートとトモが相手する予定の戦士が「さぼり」で欠席している。
これによって余裕が生じるのは連合軍にとってとても大きいアドバンテージになるだろう。
そして、アドバンテージは更に大きくなる。
「ちょっと待ってください!私たちカントリーは今日は戦いませんよ?」
帝国剣士、番長、KASTに囲まれそうになったので、マナカは焦って弁明した。
それにチサキやマイも続いていく。
「わ、わ、私たちは今日は案内役だけ任されたんです!」
「本当は今すぐ蹴っ飛ばしたいけど……モモち先輩の命令だから大人しくしてあげる。」
嘘をついているようにも見えないので、カントリーらが戦わないのは真実なのだろう。
だがそれはそれで、これからどうすれば良いのか分からなくなってくる。
アユミンも混乱しているようだ。
「え?じゃ、じゃあキュート様に加勢しにいく? でもそれじゃ邪魔になっちゃうか……
だったら遅刻してるベリーズが来るまで待機?」
せっかく上げた士気が待ちぼうけになることで下がるのだけは避けたかったが、
どうやらそれも杞憂に終わるようだった。
件の対戦相手がすぐにやってきたのである。
「いやーごめんなサイ! こいつら運ぶのに手間取っちゃってさー。」
538
:
名無し募集中。。。
:2016/08/23(火) 16:50:50
まさかマイマイいないのを逆手にカウントダウンのネタを持ってくるとは!それとも最初から計算ずみかな?
てかチナミは何もってきたんだ?w
539
:
名無し募集中。。。
:2016/08/24(水) 00:12:55
まさか流しオードンという名の大砲連射機?とかじゃ・・・
540
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/24(水) 13:33:32
カウントダウンネタをやろうと決めたのは相当前になりますが、
マイマイ不在が先に決まっていたかどうかは記憶にないですね……
真実は闇の中です。
本編の更新は夜遅くになります。
今はオマケ更新だけしますね。
『パワーアップイベント』
オカマリ「魚操れるんだ!凄いね!」
チサキ「えへへ」
オカマリ「で、魚捌けるの?」
チサキ「え?」
オカマリ「出来ないんだね。じゃあ捌き方教えてあげる。」
チサキ「ええええええええ!?」
541
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/25(木) 03:05:10
やっぱり書けそうにないので少し延期します・・・
542
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/25(木) 14:31:49
遅れてきたチナミだったが、悪びれる様子がまるで無いことは謝罪が軽いことからも分かるだろう。
そして失礼に失礼を重ねるように、連合軍一同に殺気を振りまいていく。
「暑い!!いや、熱い!?」
「なんて熱さなの!?……身体が……焼けちゃいそう……」
メンバーの中では色白な方のカナナンやカリンも、あっという間に真っ黒コゲになってしまいそうなこの熱さ。
まさに太陽そのものを具現化するのがチナミのオーラなのである。
太陽光線の灼けるような熱さの前では誰も活動することなど出来やしない。
もはやチナミはただ突っ立っているだけで勝利が約束されたようなものだった。
ところが、それだけ強大な太陽が一瞬にしてフッと消え去ってしまう。
「ありゃ!?消えちゃった……あ〜団長がやったのか……」
チナミのすぐそばでは既にベリーズとキュート、そしてトモの戦いが開幕していた。
互いに睨み合っているだけだというのに、天候は「超発達した大型台風9号10号」と「轟音と共に何百発も落ちる雷」、そして「すべて凍り尽くす吹雪」がゴチャ混ぜになっている。
「切れ味鋭い無数の刃」と「牙で全方位を嚙み殺す狼の群れ」の喧嘩も始まったと思いきや、
「凶暴凶悪な巨大怪獣」を「天から伸びる仏の掌」が必死で押さえつけてもいる。
まさに天変地異。世界の終末。
そんな光景が目の前では繰り広げられているので、トモは今にも気絶してしまいそうだし
ベリーズの団長シミハムもどこか鬱陶しく思っていた。
これでは戦いどころでは無いと考え、シミハムは自身のオーラである「無」で全ての異常現象を消し去ってしまう。
相も変わらず簡単にやってのけるシミハムに、相手のマイミだけでなく味方のモモコまで驚きを隠せないようだ。
「ムッ……嵐を消されたか。 敵ながら流石だなシミハム。」
「結構本気で放ったんだけどなぁ……まぁ、オーラなんか無くても勝てるからいーけど。」
これだけ大規模の現象を消し去ったのだから、シミハムの無が及ぼす範囲は自ずと大きくなっている。
そしてその影響が、直接的に接していないはずのチナミにまで降りかかっだと言うわけだ。
ゆえに燃えるような太陽はもう存在しない。
「やっぱりまともに戦うしか無いのか……まぁ、だからこそ製造(つく)った甲斐が有るってもんだよね。」
シミハムの無を利用する……と言ったところまでは連合軍らの作戦の通りだった。
これで食卓の騎士であるチナミとも対等に戦える。
そう思っていた。そう信じていた。
だが、現実はあまりにも非情だ。
「ねぇカナナン……ウチらの作戦って上手くいったんだよね?」
「リナプー……うん、そのはず……なんやけどな。」
「じゃあ教えてよ……アレ、どう倒せばいいの?」
チナミの通り名は「DIYの申し子」。
ひょんなことで友達になった1059号から教わったハイテクノロジーと、
大工の棟梁集団を従えることで実現したマンパワーさえあれば、
彼女に作れないものなど何も無い。
「壱奈美から九九九奈美まで総勢999体!!突撃ーーー!!」
例えば自律走行可能な機械兵を1000体近く製造することくらい、朝飯前なのだ。
543
:
名無し募集中。。。
:2016/08/25(木) 23:12:38
なんじゃそりゃー!ww
とんでもないの連れてきたな…タイムボカンシリーズのミニメカ思い出す自分はじっちゃんか?
544
:
名無し募集中。。。
:2016/08/26(金) 03:55:57
ここにきていきなりの超ハイテク化?!
予想の遥か斜め上をいく展開に良い意味で笑いが止まらないww
今後の戦いがますます楽しみだ!w
545
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/29(月) 20:03:44
漆黒の鎧で覆われた機械兵らは、そのどれもがチナミと同じ体型をしている。
つまりは長身のチナミと同じ身長。 そして手足の長さまで再現されているということ。
そんなものが1000体もやってきているのだから、恐怖を感じないわけが無い。
さすがに技術モチーフとなった1059号のように「意志」や「思考」、そして「感情」を持ち合わせるほどハイテクではないが、
近くの敵に向かって直進し、殴りかかることくらいは出来る。
つまりは機械兵一体一体が人間の兵と同じか、それ以上の実力を備えていると言えるだろう。
14対1と思いきや、その実は14対1001だったという訳だ。
人に非ざるものがあたかも本物の人のように襲ってくる光景を見て、連合軍のほとんどは混乱したが、
その中でもエリポン、サヤシ、カノンの3人だけは凛とした姿勢を崩さないでいた。
「相手は1000人……まるでお披露目の時のようじゃのう。」
「まぁ、今日はフクがおらんっちゃけどね。」
Q期の3人は、自分たちが帝国剣士としてデビューした時のお披露目会を思い出していた。
あの時は現フク王を加えた4名で1000の帝国兵を倒したのだ。
「あの黒い戦士がどういう理屈で動いているのかは分からないけど……兵が兵であることには変わりはないよね。」
顔面までフェイスガードで完全に覆った、フルアーマー状態のカノンはそのように分析する。
相手が機械であることに惑わされてはいけない。
やる事は変わらないのだ、と信じている。
ならばここはサヤシの独壇場だ。
「ウチが必殺技で攻め込む。 エリポンとカノンちゃんはカバーをお願い。」
「「分かった!!」」
サヤシは機械兵の密集する地帯に飛び込んでは、同時に居合刀「赤鯉」を鞘から解き放った。
機械もすぐに反応してパンチや蹴りを繰り出すものの、もう遅かった。
ただの一瞬にして細腕や細脚がスッパリと斬られてしまっていたのだ。
チナミをモデルにしたこの兵隊たちは、リーチこそ優れているものの耐久性には乏しい。
サヤシは形状から瞬時にその弱点を見抜き、刀でぶった切ったのである。
そして、サヤシの攻撃はそれでは終わらない。
(みんなの負担を減らすために……まだまだ斬って斬って斬りまくる!!)
この時のサヤシはいつものポンコツっぷりが嘘のようにキレッキレだった。
いや、これがサヤシの本来の姿なのかもしれない。
彼女の真骨頂は超スピードからなる容赦ない居合斬り。
相手が人間ではない「機械」だからこそ少しも力を緩めることなく全力で斬り捨てることが出来るのである。
もはや鬼神と化したサヤシはもう止まらない。誰にも止めることなど出来やしない。
超スピードで敵の元に走り込んでは、手足をスパスパと斬りまくる。
そして一仕事終えたと息をつく間も無く次の敵のところへとダッシュする。
この高速剣技こそサヤシ・カレサスがモーニング帝国最速の剣士であることの所以。
帝国で王を決める時の戦いでは模擬刀を用いていたため披露することが出来なかったが、
サヤシはこの真剣専用の必殺技「斬り注意」をずっと前からモノにしていたのだ。
近づくのも危険となったサヤシと共闘できるのは、気心の知れた戦友くらいしかいないだろう。
546
:
名無し募集中。。。
:2016/08/30(火) 06:17:40
サヤシかっこいい…やっと思い描いていたサヤシを見ることが出来たw
「キリ・ド・フォン・ルキアノス・・・」の曲が脳内で流れてくる
547
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/31(水) 00:35:52
未知の敵に対して切り込んだのはサヤシだけではなかった。
機械兵が「斬れない敵」ではないことを証明したように、
カノン・トイ・レマーネも「受けられない敵」では無いことを確かめる。
「さぁ来い!!」
両手を広げて立ち止まったカノンは、攻撃を当ててくださいと言っているようなもの。
黒い兵隊たちは長い手脚を強く振っては、カノンの鎧にブチ当てた。
(うっ!思ったより効く……)
長鞭のようにしなる攻撃は遠心力も相まってなかなかの威力だった。
生身の身体であれば一発もらうだけで腫れあがってしまうことだろう。
だが、今のカノンは完全武装をしている。
分厚く重い甲冑を身につけるだけでなく、顔面まで覆っているのだ。
今の彼女は言わば動く鎧。 中身が本当にカノンなのか疑うほどに全身を鋼鉄で塞いでしまっている。
昨日から風呂の時以外は鎧を脱がないという徹底ぶりで、フルアーマーでの行動を可能にしているのである。
(よし!痛いは痛いけど、芯には届いていない!!)
カノンに攻撃を仕掛けた機械兵には一瞬の隙が生まれていた。
その隙を見逃すことなく打刀「一瞬」で斬りかかるのがQ期団団長のエリポン・ノーリーダーの役目だ。
この刀は、空気との摩擦で熱を発するほどに速く振るうことの可能な名刀と言われている。
それを帝国剣士随一の怪力を誇るエリポンが握るのだから、弱いワケがない。
兵は肩から腰にかけて、派手に袈裟斬りされてしまう。
「うん。エリ達の力なら倒せる!」
チナミの自信作である壱奈美から九九九奈美は決して弱くはない。
それでも、国を背負った戦いを続けてきた連合軍の面々に勝てない相手では無いのだ。
自分たちの力を見事に発揮すれば打ち勝つことが出来る。
言うならば乗り越えられる壁なのである。
だとすれば怖いのは総勢1000体という頭数だけだ。
もっとも、それは相手が機械であることを忘れなかった場合の話ではあるが……
「よーし!サヤシさんに続いてやるぜ!こっちだって必殺技は有るんだからさ!!」
先輩たちの活躍を見て気を大きくしたのはハル・チェ・ドゥーだ。
愛用する竹刀「タケゴロシ」をしっかりと握って機械兵に喧嘩を売っていく。
狙いはかつてアヤチョ王に教わった必殺技「再殺歌劇」。
一撃目で相手の注意を引きつけたところで、予想外の二撃目を放つという恐ろしい攻撃を繰り出そうとしているのである。
「この技はカノンさんを気絶させたことも有るんだぜ! 喰らえ!!」
ハルの動きのキレは申し分無かった。
一撃目は見事に敵の胴に命中していたし、
そこから間髪入れずの後頭部への二撃目だってよく打ち込めている。
大抵の人間は一撃目に意識を集中するあまり、再殺を意味する二撃目に対応しきれずクリーンヒットを受けてしまうことだろう。
だが忘れてはならない、今の相手は機械なのだ。
前にも述べたがこの機械兵には意志が無い。
ゆえに一撃目から身を守ろうだとか、二撃目への注意が疎かになったとか、そういうのが全く無いのである。
全ての攻撃がコイツにとっては均等。
その結果として、竹刀による合計二発の打撃を受けたとしてもピンピンとしていた。
「あれ?……ひょっとして効いてない?」
548
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/08/31(水) 00:38:24
>>546
その曲は私の頭の中にも流れていましたw
ハルがサヤシに対抗するように走り出したのも、トライアングルを意識してます。
(必殺技名はステーシーズではありますが。)
549
:
名無し募集中。。。
:2016/08/31(水) 06:40:37
やはりあの曲は高ぶりますね〜
そして香音ちゃんはフルアーマーが似合う…某作品でもフルアーマーカノンだからイメージするのは皆一緒何だろうねw
550
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/01(木) 12:55:20
慌てて逃げるハルのように、他のメンバーにも機械と相性の悪いものは存在する。
例えば番長のリナプー・コワオールド。
彼女の透明化は相手の脳に「見るな」という信号をサブリミナル的に送り込むことで実現しているので、
暗示の類の通用しない機械兵の前から姿を消すことは出来なかった。
「あ、無理だこれ。」
犬のように噛み付いてみたものの、文字通り歯が立たない。
愛犬のププとクランだってどうすれば良いのか分からず困惑しているようだった。
打つ手がなく呆然と立ち尽くすリナプーに黒い兵隊が殴りかかったが、
"サイボーグ"の異名を持つカリンがチクタク急いで駆け寄り、攻撃を肩代わりすることで事なきをえる。
「リナプー危ない!!」
「わっ!……カリン、ありがとう。」
興奮状態にある今のカリンの痛覚はかなり鈍っている。
ゆえに強烈な攻撃を生身で受けても、影響はほとんど無いのだ。
サイボーグと言うだけあって、カリンのスピードと耐久力はまさに機械並み。
機械VS機械の戦いになるのだから、そう簡単にへこたれてはいられないのだろう。
「ここは私が引き受けるから、リナプーは安全な場所に逃げて!!」
「はーい、後はよろしく〜」
「えっ、本当に行っちゃうの?……」
全く悪びれる事なく帰って行ったリナプーを見て、カリンは少し寂しく思った。
「私も一緒に戦うよ!!」といった言葉を期待していたようだが、
そうだとしたら大きな人選ミスだろう。
そうして落ち込んでいるうちに、カリンの周りを複数台の機械が集まってきていた。
いくらカリンが機械同然とは言っても、こうも相手が多ければ苦戦は必至だ。
最悪、命を落とす事になるかもしれない。
「大丈夫、私ならやれる。」
カリンは両頬をパシンと叩いて、気合を入れ直した。
無痛状態なのにそんなやり方で本当に気が引き締まるのか疑問ではあるが、
これはある種の儀式のようなものなのだ。
弱気な自分を変えて、とある地方で「男勝り」を意味する「はちきん」な女子にならないければ生き残れないと考えたのである。
「もっと加速しよう。もう1人の私が見えるくらい速く動いて対抗しよう……それが私の必殺技。」
551
:
名無し募集中。。。
:2016/09/01(木) 14:12:30
もうブッ込んできたかw
552
:
名無し募集中。。。
:2016/09/01(木) 16:51:07
はちきんってwむしろ最近帝国の見習い剣士に入隊した子ですね
553
:
名無し募集中。。。
:2016/09/01(木) 16:52:03
×むしろ
○ちなみに
554
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/03(土) 13:11:53
この世の戦士は「技名を叫ぶ者」と「叫ばない者」に大別される。
声に出したからと言って威力や性能が特別変化するわけでは無いのだが、
人によっては言葉にすることで己のモチベーションをコントロールすることが出来るらしい。
一種の暗示のようなものだろうか。
そして、カリン・ダンソラブ・シャーミンは必殺技名を思いっきり叫ぶ側の人間だった。
「"早送りスタート"!!!」
技名を発した途端に、カリンの身体が小刻みにブレ始めた。
ただでさえチクタク時計が進むように素早いカリンの動きが、もう一段階加速したのだ。
まるでヘアアレンジ中の女子を見ていたら急に映像が早回しになったような、
発する音や声がキュラキュラ聞こえてくるような、そんな印象を受ける。
そう、カリンは己の意思でスピードを自在に操作ることが出来るのである。
通常の人間では実現不可能な超速度で機械兵の背後に回り込んでは、
両手に持った二本の釵(さい)「美頑針」で刺して刺して刺しまくる。
剣に比べると小さな針なんて機械相手には通用しないかもしれないと思われたが
装甲に叩きつけられるスピードが速すぎるあまりにショートして、火花まで起こしていた。
この行為はもはや「攻撃」よりは「溶接作業」。
ショートを利用してその熱で切断するので、「ショートカット」と呼ぶのが適切かもしれない。
武器にかかる負担が大きいため高リスクではあるが、機械相手にはこれがよく効くのだ。
まさに「何気に初めてのショートカット全然後悔してない(ちょっぴり嘘)」といった感じだろうか。
一体のボディーをあっという間に焼き切ったかと思えば、同様に他の兵隊たちも処理してしまった。
終盤にはカリンの影武者?にも思える残像が見える程のスピードだったので、真に恐ろしい。
「"早送りストップ"!……ふぅ、疲れたぁ……」
555
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/03(土) 13:13:38
カリンの必殺技をスピード系にしようとは前から決めていましたが、
はちきんネタはせっかくなので入れましたw
556
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/06(火) 12:44:13
すいません、多忙で書けていません……
明日の夜には時間を作れると思います。
557
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/08(木) 01:50:16
申し訳御座いません。忙しい日々が続くため少しだけ更新を休ませてください。
来週の月曜に復活したいと思っています。
558
:
名無し募集中。。。
:2016/09/08(木) 06:32:11
ご無理をせずに…のんびりお待ちしてますよ
559
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/12(月) 23:45:20
ギリギリでは有りますが復帰できました。 今夜中には必ず書きます。
アンジュルムの新曲PRコメント動画(と見せかけた別の動画)を見てのですが、
タケちゃんと相川さんが遠距離の的を狙うのが上手で、なんだか嬉しくなりました。
560
:
名無し募集中。。。
:2016/09/13(火) 00:15:25
俺にはこれしか言えねぇ…
頑張れ!
561
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/13(火) 03:07:47
必殺技を解除したカリンは地面にぺたんと座り込んでしまった。
超高速での移動は身体に多大な負担がかかるため、
使用後はしっかりとした休息をとらなくてはならないのである。
カリンとしてはまだまだ戦いたいとは思っているが、どうしても身動きが取れない。
そんな風にして無防備状態に陥ったカリンは機械兵たちの格好の餌食だった。
「う、うごいて……!」
速度を前借りした代償として機能停止寸前になったカリンは逃げることすらままならない。
このまま無抵抗で殴られ続けるのだろうと思われた時、
自己流カンフーガールが黒い兵の顔面に飛び蹴りをかましてきた。
「ほぁちゃー!!」」
ピンチのカリンを助けに駆け付けたのは、同じKASTの一員であるサユキ・サルベだ。
常日頃のランニングによって鍛えられた、強靭な脚力からなる飛び蹴りはとても強力。
たったの一撃で機械の頭部を破壊してみせた。
そして自身の身体が地に落ちるよりも早く、ヌンチャク「シュガースポット」を振るうことで、
近くにいたもう一体の機械兵の胸部をも破壊する。
「なるほどねぇ、確かに倒せないほどの強さじゃないな」
「サユキありがとう!助けに来てくれたんだね!」
「カリン……あんたはジュースを飲んでも飲まなくても、結局ボロボロになっちゃうのね。」
「えへへ、面目ない……」
「まぁいいよ、今は身体を休めておきな。 ここは私とアーリーでなんとかするからさっ!」
左脚でしっかりと地面を踏みしめたままで、サユキは右足の連続蹴りを次々と敵にぶちこんでいく。
ジュースを飲んでフワフワしていた時と違って、地に足をつけた時のサユキの破壊力はなかなかのもの。
チナミと同サイズの兵隊が容易に吹っ飛ぶことからもそれが分かるだろう。
もっとも、サユキの真の狙いはただ吹き飛ばすだけのものではなかった。
「アーリー!私がこうしてたくさん送り込むから、全部絞っちゃって!」
「おっけー!」
サユキが機械兵を蹴った先には、アーリー・ザマシランが立っていた。
そんなところに立ったままだと鉄の塊と衝突する恐れがあるため非常に危険なのだが、
アーリーはむしろ自分から好き好んでこの場を陣取っていた。
「遠慮なしでいくよ!そりゃあ!」
562
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/16(金) 06:54:15
サユキとカリン、そしてアーリーには奮起せねばならぬ理由があった。
その要因が、同じKASTに属するトモ・フェアリークォーツの存在だ。
彼女は今現在、キュートと共にベリーズらと直接対決をしている。
つまりは非常に過酷な戦いの真っ只中にいるということ。
ならば自分たちが気張らぬ訳にはいかないのだ。
「アーリー受け取って!!」
既にサユキは10数体もの敵を蹴っ飛ばしていた。
それらは全てがアーリーの方へと向かっている。
アーリーはこの状況を全く恐れることなく、両手を広げて、全身で受け止めていく。
「たああああああ!!!」
KASTの面々は、ジュースに頼らないと決めた日から自分自身を強化する特訓を続けてきていた。
これまでの期間にこなしてきた実戦式訓練の総数はなんと220回。
それだけの場数を踏んだからこそ、アーリーは自身の得意技を必殺技に昇華することが出来た。
やることはいつもと同じ。
相手を抱きしめて拘束するだけのこと。
では何が違うのかと言うと、"圧"が違う。
これまでのように表面だけ圧迫して搾るようなFirst Squeezeではない。
全ての力をもって、一滴も残さぬほどに搾り切るのである。
「"Full Squeeze"!!!」
束になった機械兵は超のつくほどの高圧に耐えきれず、胴から真っ二つに切断される。
一体を破壊するだけでも大変だというのに、
アーリーは複数体を同時に搾り切ってしまったのだ。
相当気合いが入った時にしか使えないという制限付きの技ではあるが、
この必殺技「Full Swueeze」を生身の人間に使用したらいったいどうなってしまうのだろうか。
563
:
名無し募集中。。。
:2016/09/16(金) 08:32:34
アーリーブリーカー!!w
いいネーミングだね
564
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/17(土) 21:06:56
Q期団やKAST以外にも、機械兵相手に活路を見出したものが現れ始めていた。
例えばアユミンは、地面を滑りやすくする戦法が今回も有効であることに気づいたようだ。
転倒したままジタバタして起き上がらない敵を見て、逆に目を丸くしている。
「おぉ……一度転んだら起き上がれないんだ……
さすがにそこまでは人間様を真似できなかったってことね。
だったらこの辺り一帯を均しちゃえば勝利確定じゃん!」
いつもの得意技を活かしているのはオダ・プロジドリも同様。
太陽光を剣に反射させて機械兵の目元に送り込むことで、
視覚情報を取り入れる感知器をダメにしていた。
「機械さんも目を焼かれたら何も見えなくなっちゃうのね。
だったら、壊し方はヒトとおんなじ。」
活躍しているのはアユミンやオダのような中堅どころだけではない。
連合軍の中では最も若いリカコ・シッツレイだって良いところを見せている。
はじめはシャボン玉にかまわず突っ走る敵兵に恐れをなしていたが、
シャボンの駅を頭からぶっかければ故障することに気づいてからは撃破数をグングン伸ばしている。
「\(^o^)/た!\(^o^)/」
「\(^o^)/お!\(^o^)/」
「\(^o^)/し!\(^o^)/」
「\(^o^)/た!\(^o^)/」
「\(^o^)/ぞーーーーっ!\(^o^)/」
周りが順調な中、リナプーはつまらなさそうな顔をしている。
彼女の特性は「機械には通用しない透明化」と「堅い装甲を破れない噛みつき」なので、
いまいち本領を発揮しきれていないのである。
そんなリナプーに対して、足裏に着けたソロバンで移動速度を上げたカナナンが迫ってきた。
「なにやっとんねんリナプー、いくで!」
「いくってどこに?」
「決まってるやろ……人形なんかじゃなく、本体を直接叩きに行くんや。」
565
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/17(土) 21:10:40
>>563
ありがとうございます。
ただ、肝心なところで誤字っちゃいましたけどね。
アーリーの必殺技の正式な名前は「Full Squeeze」
由来はLast Codeのタイトルです。
566
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/09/20(火) 12:24:33
すいません、リアルの忙しさが解消しないので更新頻度がかなり減ります。
少なくとも9月いっぱいはほとんど更新できなさそうです……
チャンスがあれば書きますが、あまり期待しないでください。
567
:
名無し募集中。。。
:2016/09/20(火) 12:56:36
無理しないで大丈夫ですよ〜気長にお待ちしております
568
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/09(日) 13:17:21
機械仕掛けの兵隊の対処法が割れた今、全てを倒しきるのは時間の問題だった。
やはりそこは各国を代表する戦士たち。血の通っていない攻撃など簡単に跳ねのけられるという訳だ。
このまま順調にいけば小一時間もかからずとも制圧できることだろう。
「ま、順調には行かないんだけどね。」
ドォンと言った轟音が突如鳴り響いた。
それも単発ではない。耳をつんざくような爆音が同時に4回も発せられたのだ。
その大きな音の発信源ではなんと鉄壁の防御力を誇るカノンが地に倒れてしまっていた。
フルアーマーの胴体部分に砲丸ほどの大きさの凹みが4か所見受けられている。
ひょっとしなくても、これらの箇所に強烈な打撃をもらったためにカノンは倒れたに違いない。
「カノンちゃん!?……え?……ついさっきまでピンピンしてたのに……」
突然の出来事に、同期のサヤシも戸惑いを隠せないようだった。
必殺技「斬り注意」の影響で修羅と化していたのに、集中力が切れてしまったのがその証拠だ。
それほどにカノンが一瞬のうちに倒されてしまったことがショックだったのだろう。
しかし黒い機械兵の攻撃がカノンの鎧の前では無力だったことは実証済みだったはず。
ではいったい誰がカノンを倒したというのか?
……いや、そんなことをわざわざ考える必要は無いだろう。
この場にいる脅威は機械兵だけではない。それは最初からわかっていたのだから。
「みんなここまで良くやったと思うよ。だけどさ、私を忘れてもらっちゃ困るな〜」
サヤシより一回りも二回りも大きい高身長。
常人では届かぬ距離にも簡単に伸ばせてしまえそうな長い手足。
そしてその両腕に装着された2機の筒状バズーカ型兵器。
敵の存在を知覚したサヤシの手足は、たちまち痺れてしまった。
「食卓の騎士っ!……ベリーズ戦士団の、チナミっ……!!」
「はいはーい。呼んだ?」
太陽のオーラこそシミハムに消されたものの、その圧倒的なまでの威圧感は健在。
過去に食卓の騎士と直接戦ったことのあるサヤシだからこそ分かる。カノンはチナミにやられたのだ。
両腕に着けられたバズーカはおそらく高速高威力の弾を発射可能なものに違いない。
通常の砲弾程度ならカノンは受け止めることが出来るが、
DIYの申し子と呼ばれるチナミの強化バズーカには流石に耐えられなかったのだろうと推測できる。
では、そんなカノンが受けきれなかった弾を、カノンより防御力が劣るサヤシがもらったらどうなるのか?
考えたくはないが、クマイチャンにぶった切られたり、マイミに殴り倒されるのと同等のダメージを負うことになるだろう。
つまりは、死だ。
ほんのちょっとでもチナミに隙を見せたら良くても重症。
それを想像するだけで息が苦しくなってくる。足取りが重くなってくる。
だが、それでは以前の何もできなかった自分と同じではないか。
サヤシ・カレサスは変わったのだ。
どんなに苦しかろうとも、辛かろうとも、歩みを前へと進めていく!
「サヤシ!!それはちゃうで!!」
「!?」
ソロバンをローラースケートのように足に着けていたカナナンが、サヤシとチナミの間へと滑り込んだ。
よく見るとカナナンだけではない。
メイにリナプー、そして新人のリカコまでこの場へと到達している。
「え?……カナナン?……みんなも……」
「適材適所ってやつや。サヤシの剣は複数相手に向いてる。せやからな、まだたくさん残ってる機械兵を始末して欲しいんや。
生憎、メイの演技もリナプーの透明化もアイツらには通用しなくてな……」
「じゃあ……」
「うん、チナミはカナ達アンジュの番長が仕留める……それが今の最善手やからな。」
569
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/09(日) 13:17:55
久しぶりになっちゃいましたね……
まずは1日1回更新ペースに戻せるように努力します。
570
:
名無し募集中。。。
:2016/10/10(月) 11:09:50
待ってました!お帰りなさい
番長達の新たな力が見れるのか…
571
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/11(火) 12:26:12
復帰早々時間が取れなくなってしまったので、
おまけ更新のみとします。
オマケ更新「マーチャンvs機械兵」
マーチャン「覚えたよ。」
ハル「ゲゲェー!マーチャンのヤツ、機械の壊し方だけじゃなくて修理方法と組み立て方法まで覚えてるーー!!
しかも新しく作った機械兵を味方につけてるーー!!!」
マーチャン「行くのよ!田辺!加賀!佐々木!」
ハル「いやいやいや、さっきジャスミン、クレマチス、ミモザって名付けてたじゃん。」
リカコ「(^o^)?」
572
:
名無し募集中。。。
:2016/10/11(火) 15:26:32
マーガレット親衛隊w
復帰早々お疲れ様です。気長にお待ちしております。
573
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/12(水) 12:56:26
「あ、君たちがアンジュ王国の番長?話は聞いてるよ〜
クマイチャンを苦戦させたり、マイミの特訓に耐えたりしたんだってね……なかなかやるじゃん。」
チナミが話しているのは先日の選挙戦でのことだ。
確かに言っていることに間違いは無いのだが、少なからず語弊もある。
クマイチャンを困惑させはしたものの倒しきることは出来なかったし、
マイミともガチの決闘をしていたら今ごろ命は無かったはずだ。
つまりは番長の力を持ってしても食卓の騎士を倒した実績はゼロだということ。
それほどまでに困難なことを彼女らは行おうとしているのである。
そんな中で、最も若いリカコ・シッツレイの様子がおかしくなってきた。
表情はグシャグシャになっているし、過呼吸になったように息が乱れている。
伝説の存在の1人と戦わねばならない状況に押し潰されたのか、今にも泣き出してしまいそうだ。
「うっ……ぐっ……」
そんなリカコの背中をサヤシが優しく撫でる。
敵の恐ろしさを知っているサヤシだからこそ、今のリカコに暖かく接することが出来るのだろう。
「落ち着くんじゃ。大丈夫。君の先輩たちはとても強い。」
リカコとサヤシの数歩前では、カナナンとリナプーとメイの3人が凛とした顔で立ち構えていた。
3人が3人とも、先輩であるマロ・テスクから教わった化粧を施している。
ガリ勉タイプ、道端タイプ、ヤンキータイプ、これらの化粧は彼女らの持つ潜在能力を更に引き出すことが出来るのである。
そんなリナプーがリカコの方をチラリと向いて、低めの声で言い放った。
その声色にはいつものような気だるさは感じられなかった。
「リカコ、"カクゴして"」
その一言にリナプーは以下のような思いを込めていた。
『
覚悟が無いならお止しなさい。(機械では無いと)生身の女子には敵わない。
経験不足なんて問題ない。勇気を見せて欲しいだけ。
完全無欠なんて関係ない。傷だらけカッコイイでしょ。
真剣なら痛いくらいでもいいわ。
正々堂々とやりましょ。怖くて当たり前でしょ。
負ける気は無いわ。でも期待してるわ。
君の声聞かせて。
』
その思いに応えるように、リカコは涙を手で拭いながら声を発した。
「泣いて……無いし!」
574
:
名無し募集中。。。
:2016/10/13(木) 11:29:28
"カクゴして"か…アンジュルムは良曲揃いだなぁ〜次はどの曲使うのか楽しみ♪
575
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/13(木) 12:46:18
番長らの覚悟も決まって、さぁ戦おうと言ったその時
不思議なことが起こった。
最大限に警戒しているはずのメイの顔面に向かってチナミが手を伸ばしたかと思えば、
いとも簡単に顔に装着されたガラスの仮面を奪い取ってしまったのだ。
「これが君の武器か〜。ちょっと見せてよ!」
「え……!?」
その略奪行為があまりにも自然過ぎたため、メイだけでなく他の番長までも反応することが出来なかった。
このような現象を起こした秘密はチナミの手脚の長さにある。
クマイチャン程では無いにせよ、チナミの体格はかなり恵まれている。
一歩の距離が常人より長いし、手を伸ばせば思ったよりも前に届く。
ゆえに、大袈裟なモーション無しで大きな行動をとることが出来るのである。
だからこそメイは自身の仮面が盗られることに対して処置することが出来なかった。
「透き通ってて綺麗なガラスで出来てるね!
これを着けていれば演技力が上がる……んだったっけ?
凄いなぁ。きっと私が着けたところで何にも変わらないんだろうなぁ……
でも、ちょっと力を加えただけで割れちゃいそう……」
「か、返して!」
「あははは、心配しなくてもすぐ返すよ。ほら!」
そう言うとチナミはメイに対してポイと投げ放った。
慌ててキャッチしてガラスの仮面の状態を確認するメイだったが、
そこに損傷のようなものはまるで見当たらなかった。
どうやらチナミは本当にただ見たかっただけのようだ。
「"仮面"、"ソロバン"、"犬"、それと"石鹸"か。
面白いよね。そんなのが本当に武器になっちゃうんだ。
今度はその武器を使っているところを間近で見せてよ!
一通り見終わって満足したら、1つ残らず壊してあげるからさ……」
576
:
名無し募集中。。。
:2016/10/13(木) 21:00:23
チナミが満面の笑顔で「壊してあげるからさ」って言ってる姿想像して恐怖を覚えた…
577
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/14(金) 12:52:05
武器を壊す、と言った発言に一同はピクリとした。
おかしな武器とは言っても長年使用しているために愛着は人一倍感じている。
その愛用品を破壊されるのかもしれないのだなら穏やかではいられないだろう。
特にリナプーの愛犬ププとクランは生物だ。
壊すとは一体どういうことなのか……想像するだけで辛くなってくる。
だが、ここで尻尾を巻いて逃げ出すワケにはいかない。
「お望み通り見せてやろうやないか。アンジュ王国の武器をなぁ!」
カナナンが指をパチンと鳴らすのと同時に、リカコがバケツ一杯分の量に相当する石鹸水をチナミにぶっかけた。
チナミだけでなく、その両腕に装着された筒状の大砲までビショビショだ。
「なんだこれ!くぅ〜〜、目が痛い!」
この攻撃を避けられてしまったら幸先悪かったが、幸いにもチナミはまるで避けようとしていなかった。
武器性能を確認したいという好奇心からか、それとも格下相手には絶対負けないという自信からか、
そもそも攻撃を回避するつもりが無いように見えている。
番長たちのプライドが傷つかないと言えば嘘になるが、今はその慢心につけ込むしか道はない。
「石鹸水なんやからそりゃ痛いでしょう……そんな状態でリナプーの姿を追えますか?……」
「うわ……クマイチャンの言ってた通りだ……リナプーも、犬も、全然見えない……」
リナプーとププ、クランは暗示効果を利用して自らの姿を非常に見えにくくした。
これで透明化というアドバンテージを活かして優位に立ち回ることが出来る。
もっとも、食卓の騎士相手にはそれだけでは足りないだろう。
「メイ、頼むで!」
「任せて……全身全霊の演技を見せつけてあげるんだから。」
メイ・オールウェーズコーダーは勇敢にもチナミに向かって突撃していった。
ここ最近の彼女の勝ち筋と言えば、過去に見た食卓の騎士をほんの一瞬だけ真似る「1秒演技」を繰り出すことであったが、
シミハムが周囲一帯のオーラを無とする以上、その効果は薄いと考えている。
ならばメイは更なる奥の手を見せるのみ。
キャスト総勢10名、感動のスペクタル超大作。
メイの必殺技「1人ミュージカル」が幕を開ける。
578
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/15(土) 11:41:22
「うーん……やっぱりここはちゃんとしなきゃダメなんだろなぁ……」
チナミは右腕に着けたバズーカの発射口を向かってくるメイの腹に合わせた。
火薬の爆発力によって発射される砲弾の威力は凄まじく、
フルアーマーのカノンをたった4発で倒した実績だってある。
生身の人間が直接受ければ死もあり得るが、
ヤンキータイプのメイの我慢強さはマイミのラッシュにも耐えられる程であると過去にチナミは聞いていた。
「1発くらいが丁度いいのかな? もっとずっと見ていたかったけど、しょうがないよね。」
開いていた手のひらをギュッと閉じる。これが砲弾発射のトリガーとなっている。
たったそれだけのお手軽操作で凶悪な砲弾が射出されるような仕組みになっているのだ。
これでもうメイはリタイア……と思われたが、
一向に弾は発射されない。
何かしらのトラブルが発生していることにチナミはすぐに気づいた。
「あ!さっき水をぶっかけられた時に火薬が湿気っちゃったのかぁ!これはヤバい!」
答えはチナミの思った通りだ。
リカコが多量の石鹸水をかけたことによって銃火器をダメにしたのである。
これでチナミは武器のメンテナンスを行うか、あるいは肉弾戦に応じるしかなくなる。
どちらにせよ一時的に戦力が大きくダウンすることは確定だろう。
となればメイにもチャンスが生じてくる。
しかしメイ・オールウェーズコーダーは番長の中では長身の部類に入ると言え、
体躯に恵まれたチナミから見たら小柄な少女に過ぎない。
長い脚によって繰り出される強烈なキックでも当てれば簡単にすっ転んでしまうに違いない。
そう考えたチナミは、突進してくるメイのお腹につま先をぶち当てた。
その一撃は全くブレれこともなく、クリーンヒットする。
「あれれ……なーんか、話と違うんだけど……」
結論から言うと、メイはチナミのキックに耐えていた。
それはまぁ良い。 ヤンキータイプのメイの根性ならそう言うこともあるかもしれない。
だが、話に聞いていた限りでは
メイがマイミのパンチを我慢していた時の表情はとても苦しそうなものだったはずだ。
だというのに今の彼女はそのような顔を全くしていない。
まるで、痛みそのものを感じていないような無表情だ。
サイボーグのように無痛状態になっているのだろうか。
579
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/17(月) 12:55:35
メイがチナミを驚かせたのは耐久力だけではなかった。
2人の身長差から考えるとチナミが攻撃を受ける可能性があるのは脚部から胸部までの範囲内。
ゆえに頭部をガードする意識は持たなくても問題はないはず。
そう思っていた矢先にカナナンが叫び始めたのだ。
「跳べ!!」
仲間の指示が来るのと同時にメイは地面を強く蹴って跳び上がった。
そしてカンフーでもしているかのような雄叫びをあげてチナミの顔面を蹴っ飛ばしたのである。
「ほぁちゃあああ!!!」
「!?……痛ったぁ〜〜〜い!!」
いくら食卓の騎士でも、ノーガードで顔を蹴られたら痛くてしょうがない。
白兵戦に特化したスキルを持ち合わせていないチナミならなおさらだ。
だが、この一撃でチナミはやっと理解することが出来た。
メイ・オールウェーズコーダーの必殺技「1人ミュージカル」の全貌を把握したのだ。
(えっと、このメイって子は他の戦士の能力をコピーするのを得意としていたはず。
最初に無表情でキックに耐えてたのは、きっとマナカちゃんが言ってたアレだ。
サイボーグのように痛みを無くしちゃうカリンをマネしたんだ。
で、その次のアチャーってのはサユキの自己流カンフーだよね。間違いない。)
チナミの中で全てが繋がった。
「1人ミュージカル」とは複数人の演技を同時に行う技なのだ。
おそらくは小技程度しか連結できないのであろうが、それでもバリエーションの広さを考えると恐ろしい。
(う〜〜〜ん……いったい何人分まで同時に演技出来るっていうの?
まさか100人とか言わないよね?だったら末恐ろしすぎるんだけど……)
チナミが体勢を整えるよりも早く、メイは自分の顔につけていたガラスの仮面を取り外していた。
それでは演技力が落ちてしまうのではないかと思うかもしれないが、ご心配は要らない。
これも演技に必要な小道具なのである。
「光を……集める!!」
「ギャ!眩しい!」
メイはオダ・プロジドリがやったように、ガラスの仮面に太陽光を集めて反射させた。
その矛先はもちろんチナミの目だ。
いくら太陽のオーラを持つチナミであろうと、日光から目を守る術は持ち合わせていなかったようだ。
ここまでうまくいっている事を確信したカナナンは、次の石鹸を準備していたリカコに指示を出す。
「リカコ! 今がチャンスや。 メイと協力して思いっきりスベらしたれ!!」
「はい\(^o^)/」
580
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/18(火) 02:40:39
℃-uteの新曲、夢幻クライマックスいい曲ですね。
タイトルも「ムゲン魂」と「クライマックスフォーム」を合わせたようでいかにも最強フォームっぽいです。
……仮面ライダーイクタの続編は生田が在籍しているうちに書けるのでしょうか
581
:
名無し募集中。。。
:2016/10/18(火) 11:03:54
流石に卒業しちゃったら難しいなぁ…仮面ライダーイクタも読みたい!でもマーサー王も続いて欲しい…わがままな読者でごめんなさいね♪
582
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/18(火) 12:59:17
配役をアユミンに変えたメイは強烈なスライディングで地面をツルツルに均してしまった。
その一帯にリカコが石鹸水を流し込むものだから、チナミはもうまともには立っていられない。
生まれたての子鹿のようにプルプル震えながら自立するのがやっとだ。
それに対して、メイはウィンタースポーツの魔法を使用可能なエリポンになりきる事で
このスベりやすい地面でも耐えることの出来る安定感を確保していた。
メイの演技の恐ろしいのは、過去にエリポンがウィンタースポーツをやっているところを見たことがないのに演じているところにある。
「エリポンならこれくらいは出来るだろう」とイメージして、それを再現しているのだ。
女優には想像力も必要ということなのだろう。
「仕上げや!これを使え!!」
カナナンはメイに対して2つのソロバンと、1つの鉄球を投げつけた。
前者のソロバンはカナナン本人が愛用しているものであり、鉄球は同期タケから預かっている代物だ。
これによりメイは相手が強大な存在でも通用する攻撃手段を取ることができるようになる。
「まさか、タケとカナナンの演技を同時に?……」
「いいえ、ダブルキャストじゃまだ足りない……これから魅せるはトリプルキャスト!!!」
両足の裏にソロバンをセットしたメイは、更に自身の太ももにグググッと力を入れ始めた。
この挙動はモーニング帝国現帝王フクが見せた「フク・ダッシュ」。
ただでさえ高速なスケート移動に、ダッシュによる爆発的な加速力まで加えようとしているのである。
そして、そこからなる鉄球の投球は165km/hやそこらじゃ済まない域に達することとなる。
まさに爆速。強者が何重にも重なったからこそこの威力が出せたのだ。
……しかし、それでもチナミには届かなかった。
「あぶな〜〜〜〜い!ギリギリ間に合ったぁ!!」
なんとチナミは素手の右手で豪速球をキャッチしてみせたのである。
純粋な戦闘タイプではないとは言え、やはり食卓の騎士。
これくらいは出来て当然といったところだろうか。
だが、メイの表情に曇りはなかった。
「さすがねカナナン。」
メイが投球したタイミングから少し遅れて、カナナンも綺麗なフォームで鉄球をチナミに投げつけていた。
それもチナミがよろめく位置を計算して、確実に命中するように仕向けていたのである。
その結果として見事チナミに当てることができた。
ただし、その当たった箇所はチナミの左の手のひらだ。
「これも危なかった……よく反応できたなー私……」
何度も言うが、やはりチナミは食卓の騎士。
カナナンとメイ、リカコの3人の力を持ってしても両手しか塞ぐことが出来なかったというわけだ。
583
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/19(水) 12:52:40
メイとカナナンの鉄球を受け止めたチナミの両手は、現在どちらも塞がっている。
そしてボールを放す間も無く、両足までも封じられることとなる。
今まさに、透明な二頭の獣に足首を噛まれてしまったのだ。
「あ!!……」
何故か忘却していたもう1人の番長の存在を思い出すよりも速く、
背後から刃物のように鋭い殺気が発せられるのをチナミは感じた。
今すぐこの場から去らないとソイツの鋭利な牙に噛まれてしまうと、本能が警告しているのがよく伝わってくる。
だが既に退路は断たれていた。
両手も両足も自由に動かせないために
いくら頭に警戒アラームが鳴り響こうとも、
いくら長年の勘が警鐘を鳴らし続けようとも、
相手の必殺技を甘んじて受け止めることしか出来なかったのだ。
「"Back Warner(後ろの警告者)"」
誰にも聞こえないような小さい声でリナプー・コワオールドは技名を呟いた。
そしてその後は間髪入れずに、チナミの背中を容赦なく喰いちぎるのであった。
いくらリナプーが存在を希薄に出来るとは言え、熟練の戦士相手に背後をとることは難しい。
それを可能にさせてくれたのが、味方の存在だ。
カナナンが、メイが、そしてリカコが目一杯目立ってくれたからこそ、
リナプーは相対的に影を薄くすることが出来たのである。
もちろん優れたその実力は埋まることなく、だ。
「やったなリナプー!!」
見事に決めてくれたリナプーを見て、他の番長らは歓喜した。
大技は確実にヒットしている。そして、背を千切られたチナミの出血量は尋常ではない。
ここまで来れば勝利は目前だ。
よほどの大番狂わせが無い限りは勝てるだろうとカナナン達は信じていた。
せっかくだからここで断言してしまおう。この戦いに番狂わせは存在しない!
壮大などんでん返しも、
圧巻のどんでん返しも、
運命の大逆転劇も、ここからは何もかも発生しないのだ!
全ては最初の筋書き通り。
「あ〜〜、やっぱりミーティングで聞いた通りだ。」
スッと姿勢を伸ばし、平気な顔をするチナミを見た番長一同は固まってしまった。
確かにリナプーの必殺技は決まったはず。
ならば何故にチナミはまだ立っていられるのか?
「"帝国剣士、番長、KASTは思ったよりも強い。"……うんうんそうだよね。身をもって感じたよ。」
言葉を続けながら、チナミはリナプーの頭を鷲掴みにした。
今のリナプーには返り血がベットリついているため容易に視認可能になっているのだが、
そんなことよりもリナプーが恐怖で少しも動けていないことの方が深刻だ。
「"思ったよりも強い。でも、想像を超えるほどじゃあ無い。"……全くその通りだ。」
チナミは力を下方向に入れて、リナプーを地面に一気に叩きつけた。
地面のコンディションが著しく滑りやすくなっているため、リナプーは少しも踏ん張ることが出来ず、
無抵抗で頭から落ちてしまう。
「よしっ! 一転び目!!」
他の番長らの声量はすっかり失われていた。
さっきまで優勢だったと言うのに、急に逆転されてしまったのだから無理もないだろう。
いや、厳密に言えばこれは逆転などではない。
そもそも番長らが優勢になったタイミングなど、一度も存在していないのだから。
「よーし、あと三転びいくよー!」
もう一度宣言しよう。
この戦いに番狂わせは存在しない。
584
:
名無し募集中。。。
:2016/10/19(水) 22:58:35
壮大な逆ドンデンガエシ…しかもこの後残り六転びさせられるのか…恐
最後にあの曲がきてくれる事を祈ろう。。。
585
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/21(金) 12:57:24
「おっと、その前に……」
チナミはその場でしゃがみこみ、リナプーに駆け寄るププとクランの頭をそっと撫でた。
その瞬間から2匹の犬はひどく震えて、立っていられなくなってしまう。
「君たちは武器なんだよね?……だったら足止めなんかに使われるのはもったいないなぁ。
ご主人様が目を覚ましたら教えてあげなよ。自分たちをもっと有効活用した方がいいってさ!」
何やら助言のようなことを言うチナミだったが、2匹は既に地に転がっていた。
お腹を敵に見せると言う「降伏」のポーズをとっているのである。
何をしようが敵わないことを動物の勘で理解し、戦意喪失したのだろう。
「あ、壊れちゃったか、じゃあもういいや。」
続いてチナミは残りの番長3人の方を見た。
今すぐにでもリナプーと同じ目に遭わせるつもりなのかもしれない。
だがチナミと番長らの間にはツルツルに磨かれた地面がある。
この位置関係を維持している限りはそう簡単には追いつかれないだろう。
「やっぱこの地面邪魔だなぁ〜、よし!吹き飛ばしちゃお!!」
「「「!?」」」
チナミは両腕に装着していた小型大砲を取り外したかと思えば、
携帯用の工具を用いて神業の如きスピードで分解し始めた。
それもただ分解しているだけではない。
リカコにぶっかけられた石鹸水をふき取ったり、不具合の生じた箇所を補修したり
と言った作業をほんの10秒で完了させてしまったのである。
しかもこれから放つ必殺技のためにカスタマイズしたというオマケ付きでだ。
「大爆発(オードン)"派生・ピストンベリーズ"!!!」
小型大砲の両筒から合計11発もの炎弾が放たれた。
1発1発がサッカーボールほどの大きさを誇る火炎はたちまち地面を焼き払い、
あっという間に更地にしてしまった。
もちろんリカコの泡も完全に蒸発したため、もう滑ることはない。
「ば、化け物……」
兵器の威力もさることながら、修理とモデルチェンジを短時間で終えてしまったことが人間離れし過ぎている。
身体能力だけ見ても怪物。
武器を使えばさらに怪物。
どのようにすれば倒せるのか、もはや分からなくなってしまった。
586
:
名無し募集中。。。
:2016/10/22(土) 10:20:40
ほぅ、イナイレ3までチェック済みとは流石ですな
587
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/22(土) 23:50:09
こうなったらもうチナミの独壇場だ。
たった数歩だけ脚を前に進めただけで、番長らに手が届くところにまで来てしまった。
もはや逃げても無駄。どれだけ遠くに行っても追いつかれるに違いない。
もっとも、番長3人は元より交戦する心構えが出来ていた。
カナナンにはソロバンがある。
メイにはガラスの仮面がある。
リカコには固形石鹸がある。
リナプーも含めて番長のほとんどが過去に「変わってるね」と嘲笑われ、
「よく言われるの」そっと笑い返した経験があると言う。
心の中じゃ牙を剥いて、だ。
普通と違った所があるならいっそ磨いて武器に変えてやればいい。
試練は尽きないが動き出さねば変わらないそれが人生だ!
「メイ!リカコ!ここからは気合い入れて……」
「あ、ちょっと借りるよ。」
掛け声を出そうとしたカナナンの出鼻をくじくように、チナミはメイとリカコの武器を取り上げた。
戦士の命よりも大事な武器を、いとも簡単に奪い取ってしまったのである。
特にメイは前にもガラスの仮面を取られた経験があるため別段警戒していたのだが、
そんな厳重体制も御構い無しに、チナミは友人から鉛筆でも借りるかのように掴み取っている。
また今回もすぐに返してくれれば嬉しいのだが、
残念なことにそうはいかなかった。
「可哀想とは思うけどさ、壊させてもらうよ。」
右手に持ったガラスの仮面と、左手に持った固形石鹸を、
チナミは勢いよく硬い地面に叩きつけた。
通常の人間のそれを遥かに超えたスペックの彼女がそんなことをするものだから
ガラスの仮面も固形石鹸も粉々になってしまった。
比喩表現とかではなく、衝撃力が強すぎるあまり本当に粉になったのである。
その光景を目の当たりにしたメイとリカコはショックを隠せないようだ。
「あ、ああ……」
しかしいくら武器が破壊されたとは言ってもまったく戦えないという訳では無いだろう。
ガラスの仮面をつけると演技力が上がるというのはつまるところ思い込みであるため、物理的な戦闘能力は変わらないはずだし、
リカコに至ってはカバンの中にまだたくさんの固形石鹸を詰め込んでいる。
要するに何も心配することは無いのである。
しかし、彼女らは簡単に割り切ることは出来なかった。
自らの信念とも言える武器をたった一瞬で砕かれた映像が目に焼き付いて離れない。
もうドン底に堕ちたような気分だ。
故にメイとリカコの耳にはカナナンの警告が入らず、
チナミに強くスネを蹴られて転倒してしまった。
起き上がる気力は、もはや無い。
「よーし、二転び目と三転び目!」
「メイ!!リカコ!!!……嘘やろ……」
588
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/22(土) 23:52:25
イナズマイレブンはゲームまではやりませんでしたが、
アニメの方はベリーズの影響もあって結構見てましたね。
589
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/27(木) 13:58:58
「嘘だろ……」
カナナンと同じような発言を、同じように青ざめながらする者が付近に立っていた。
それは天気組の雷の剣士、ハル・チェ・ドゥーだ。
同じく天気組の曇り剣士、マーチャン・エコーチームと共にこの場までやって来ていたのである。
加勢するつもりだったのだが、番長が秒殺されていく様を見て完全に震え上がってしまった。
それでも、苦しむ仲間を見ては黙っていられない。
「か、カナナン!今から助けに……」
「……いや、要らん。むしろ手を出さないで欲しい。」
「へ!?」
救助の要請を出すどころか、ハッキリと拒否の意を示したカナナンにハルは驚いた。
今のカナナンは誰がどう見ても絶体絶命。
要救助者に決まっている。
「おいカナナン!まさか番長が負けたことに責任を感じてそんなこと言ってるんじゃないだろうな!
変な気を使うなよ!ハル達は仲間なんだからさ!!
それともなんだ?ハルとマーチャンが加勢しても意味が無いとか言うんじゃ……」
「違う!!」
"違う"とカナナンは言ったが、実際問題ほとんど違ってはいなかった。
カナナンが責任を感じてチナミの攻撃を引き付けたいと思っているのも事実だし、
ハルとマーチャンの戦力を持ってしてもチナミに対抗できないことだって事実だ。
ただ、カナナンには一点だけ主張したいことがあった。
「手は出さないでいい……その代わりな、一部始終をマーチャンに見て欲しいんや。
全部覚えるまでカナが必死で耐え抜く!……せやからな、その眼で死ぬ気で見て欲しい。」
「!!」
なんとなくだが、ハルにはカナナンの考えが理解できた。
しかしそれを実現するには大きすぎる問題がある。
「カナナン!お前っ……1人で戦えるのかよ!?」
590
:
名無し募集中。。。
:2016/10/28(金) 01:03:05
カナナンカッコいい・・・マーチャンの超記憶がどこまで通じるか
591
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/28(金) 22:09:28
まだ番長が表も裏も含めて6人だった頃。
カナナン、タケ、リナプー、メイの同期4名は死を覚悟するほどに過酷な訓練を受けたことがあった。
「アヤチョにはあなた達がピンクの仏像を壊したって嘘ついておいたから、後は頑張って。」
「「「「え?」」」」
怒り狂う鬼神アヤチョ王を倒す。
それがマロ・テスクの課したミッションだった。
とは言ってもそんな状態のアヤチョとまともに戦えるはずがなく、
たったの一撃でタケがやられ、
二撃目でメイもやられ、
そしてこっそり逃げようとしたリナプーも蹴り飛ばされてしまった。
となればあと数秒で訓練そのものが終わるだろうと思われたが、
なんとカナナンはそこから十数分もアヤチョの猛攻を耐えきったのだ。
とは言ってもモーニングのカノンのように鉄壁の防御力を持ち合わせている訳ではない。
全ての攻撃をギリギリで見切って、死に物狂いで回避したのである。
カナナンの暗算力をもってすれば、初動さえ見ればどこに攻撃が到達するのかを算出することが出来る。
そこで、そろばんローラースケートによる機動力を活かすことでなんとか逃げたというわけだ。
十数分も経てば一撃を受けて倒れた味方は回復するし、
ムラっ気の強いアヤチョ王のチカラも弱まる周期に突入する。
そのタイミングを見極めて一斉攻撃を仕掛けることで番長4名は見事アヤチョに勝利したのだった。
(あの時の感覚を思い出せば……カナは無敵になれる!)
ソロバンを取り上げようとするチナミの長い手を、カナナンは思惑通りに交わした。
その後も近距離では蹴りを、遠距離では砲弾を食らいそうになったが
全て例外無く回避することが出来ている。
「なるほどねー……生半可な攻撃は当たらないってことか……じゃあどうしよっかな。」
カナナンの特性は確かに厄介ではあるが、チナミにはいくらでもやりようがあった。
例えば超高速で放たれる銃弾なら避けられないし、
そもそも周囲の地面ごと爆破してしまえば避ける意味もない。
それでも、チナミはそのような手をとることはしなかった。
その方が彼女にとっては都合が良いのである。
「マーチャン、だっけ?……せっかくだからもっと近くで見ていきなよ。
もっと楽しいモノをたくさん見せてあげるからさ。」
592
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/31(月) 12:55:21
「やっ、やぁぁぁ!!」
せっかくチナミが誘ってくれたと言うのに、マーチャンはつれなかった。
ひどく怯えた顔をしながら反対側の方を見ようとしている。
これからその眼で見なくてはならない対象がどれだけ恐ろしい存在なのか、肌で感じ取ったのだろう。
そんなマーチャンの顔をハルがしっかりと掴み、無理矢理にでもチナミの方を向けさせる。
「やだやだやだやだ!ドゥー!やめて!」
「ワガママ言うなよマーチャン……ちゃんと見ないと、カナナンの頑張りが無駄になるだろ!
ハルもここで一緒に見てやるからさ、マーチャンも頑張ってくれよぉ!!」
「ドゥー……」
ここでマーチャンはハルが大粒の涙をボロボロ流していることに初めて気がついた。
彼女だってマーチャン同様に怖くて仕方がないのだ。
リナプー、メイ、そしてリカコのようにいつ自分だって化け物に叩き潰されるのか分かったものではない。
可能であれば今すぐにこの場から立ち去りたいという思いを必死に抑え込んでいるのである。
それを感じたマーチャンは、少しだけ頑張ることを決意した。
「分かったよドゥー……マー、覚える。」
「そうだその意気だ!マーチャンに覚えられないものなんて無いんだからさ!!」
話がまとまったのを見届けてから、チナミはいくつかの工具を取り出した。
そして先ほど見せたような高速の手捌きで自身の小型大砲に手を入れていく。
「よーし、今造るとしたらやっぱりこれだよね……大爆発(オードン)"派生・metamorphose"……なーんちゃって。」
「は?……」
「え?……」
作業完了後に作り上がったものを見たカナナンとハルは、こんな状況だというのに、思わず呆けてしまった。
だって仕方がないじゃないか。
さっきまで小型大砲だったものが「鉄仮面」に変わっていたのだから。
「なっ……それはいったい……どういう……」
小型大砲にチナミが高速で手を加えているところまではギリギリ目視できていた。
だが、完了の瞬間がよく分からない。
いつの間にか鉄仮面に置き換わっていたのである。
もう技術力どうこうではなく、印象としては手品に近かった。
そんな風に呆然とする2人を気にすることなく、チナミは自前の鉄仮面をスチャッと装着する。
「いいでしょ〜。これを装着すると私でも演技力が上がりそうな気がしない?
それにさ、余った部品で"犬用の鉤爪"と"石鹸銃"なんてのも作って見たんだけどさ……マーチャン見てた?」
593
:
名無し募集中。。。
:2016/11/02(水) 00:46:45
春ツアーはノナカ・チェル・マキコマレルの独壇場となるのか…
https://pbs.twimg.com/media/CwKnhl2UAAAnrzR.jpg
594
:
名無し募集中。。。
:2016/11/02(水) 06:44:06
>>593
ごめん『JKニンジャガール』こぶしの舞台だった…が!これはこれでマーサー王的には面白いかもしれないw
595
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/02(水) 12:46:13
おおー
なんだか演劇女子部というよりはゲキハロっぽいタイトルですね。
フジー、アヤノなどのメンバーは戦闘スタイルまでカッチリ決めちゃってますが、
ふわっとしているのも何人か居るので、気づけば忍者っぽくなってるかもしれませんね。
ただ、それでも刀や手裏剣を持たせることは無いとは思います。都合上。
更新の時間が取れてないので今回はオマケ更新にします。
オマケ更新「明日やろうはバカやろう」
※アンジュ王国にて
ムロタン「マロさん美味しそうなの食べてますね。なんですかそれ?」
マロ「ナンでもライスでもめちゃ美味しいカレー。」
マロ「カツカレー大盛りにすれば良かった。それでも美味しいわぁ、ここの。」
596
:
名無し募集中。。。
:2016/11/02(水) 23:36:54
たぐっち・れなこ・らっこがまだ出てないんだっけ?たぐっちが○○の術とかいって色々翻弄してくれそう…愛理BDで何か面白いネタあるかなw
597
:
名無し募集中。。。
:2016/11/03(木) 09:16:34
出てる
598
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/04(金) 12:54:02
「ふあっ……」
気づけばマーチャンは右の鼻から血を流していた。
あまりにも不可解なチナミの動きに対して、脳が処理しきれなかったのだ。
心では「覚えたい」と願っていたとしても、肝心の頭にかかる負担が大きすぎる。
このまま見続ければマーチャンの脳はパンクしてしまうかもしれない。
「マーチャン!!だ、大丈夫なのか!?」
「だい……じょう……ぶ……」
ただ見ているだけでその眼は虚ろになっている。
誰がどう見ても大丈夫なワケがない。
そんなマーチャンに対してハルがしてやれるのは、自身の袖で鼻血を拭ってやることくらいだった。
「ごめんなマーチャン……無理して欲しくないけど、今は無理をしてくれ……」
「だいじょうぶだってば……」
ハルとマーチャンが話しているうちに、チナミはカナナンに対して飛びかかっていた。
顔には鉄仮面、右手には肉を裂くカギ爪、左手には石鹸水が射出される水鉄砲を構えているため
その姿はとても奇抜だった。赤い人ではないが〜異形〜と言っても良い程だ。
銃撃戦から肉弾戦に切り替えたチナミにカナナンは少し戸惑ったが、
それでもやること自体は変わらない。
(心を乱されたら負けや!敵がどんな武器や姿形で来ようとも、絶対に逃げ切る!)
時間を稼ぐためカナナンはお馴染みのソロバンローラースケートで後方に下がろうとする。
しかし、そのように逃走することはチナミにバレていた。
新武器の銃による石鹸水は、すでに地面にブチまけられている。
(やっぱりアレはリカコと同じ戦法を取るための武器!……す、スベる!!)
599
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/04(金) 12:54:59
はい、こぶしファクトリーっぽいような人たちは8人登場してますね。
600
:
名無し募集中。。。
:2016/11/05(土) 17:07:58
また戦士が1人いなくなるようだね
601
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/06(日) 09:23:26
カントリーをいつか卒業するのはなんとなく想像できてましたが
まさか芸能界までとは……
あくまで控える、なので
カントリーガールズ、Buono!、そしてBerryz工房の再開が何年後かにあることを期待しますか
602
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/25(金) 12:40:47
更新がストップしていてすいません、来週月曜には更新できそうです。
書かなかった理由は熱が冷めたとかではなく単に忙しかったからです。
ハローの情報はちゃんとチェックしてますよ!
ムキダシで向き合っての歌詞は、マーサー王第3部に色々使えそうだなとか思ってます。
603
:
名無し募集中。。。
:2016/11/25(金) 15:42:53
良かった〜ももち引退ショックで書けなくなったのかと…
更新お待ちしてますね〜
604
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/28(月) 23:46:14
カナナンは物凄い勢いですっ転んだ。
先ほど一転び、二転び、三転びさせられたリナプー、メイ、リカコの比では無い。
石鹸水で滑りの良くなった地面のせいで、カナナンはお腹を軸にグルグルと超高速でスピンしてしまっている。
それだけ派手に「四転び」させられてしまったのである。
食卓の騎士相手にここまでよく耐えたものだが、
こうも勢いよく転倒すれば気を失うのは必至だろう。
カナナンを含め、アンジュの番長は全滅……ということになる。
「さて、じゃあ次はキミかな。」
カナナンに興味をなくしたチナミは、次の相手としてハル・チェ・ドゥーを指名した。
鋭い爪の先を向けていることからも、その意思は十分に伝わる。
「う……やるしか……ないのか……」
いつもはビビりがちなハルも、ここは覚悟を決めるしかなかった。
本音を言えばマーチャンに代わりに戦ってもらいたいところだが、彼女は今、大事な仕事の真っ最中だ。
覚えるのに十分な時間を稼ぐために、震える足を前に出さねばならない。
「そんなに怖がらなくてもいいよ。潰す時は一瞬だから。」
「……!!!」
この時のハルは、目を剥いて驚いていた。
その表情の変化を恐怖からくるものだとチナミは予測していたが、
実のところはそうではなかった。
ハルは、信じがたい動きをする物体に驚愕していたのである。
その物体は、超高速でスピンしながらチナミの脚に衝突する。
「うわっ!!な、なんなの!?」
後方からいきなりフクラハギをぶっ叩かれたため、チナミはバランスを崩してしまった。
屈強とは言えない細脚の持ち主であるチナミは、
ソイツのインパクトに耐えきれず顔面から地面に突っ込んでいく。
そう、転ばされたのである。
「痛ーーーっ!!なにーーー!?」
鼻を打ったチナミは涙を少し流しながら後ろを振り返った。
新たな相手が不意打ちを食らわせて来たのかと予想をしたが、
その見通しは見事に外れていた。
勢いが弱まるにつれて、その回転物の正体も明らかになる。
「えっ……カナナン?……」
コマのようにグルグル回ってチナミを転ばせたのは、ついさっき戦闘不能になったばかりのカナナンだった。
白目を剥いているため、意識を失っていることは明らかだ。
それではそんな彼女が何故こんな強烈な攻撃を繰り出すことが出来たのか?
その要因はチナミの創り出した石鹸水がリカコのものと相違ないところにあった。
「そっか……再現しすぎちゃったのか。」
チナミの銃から発せられる液体が、リカコが愛用する石鹸水と同等のものであることにカナナンはすぐ気づいていた。
ならばどのようにスベれば、どのように転倒するのかは容易に計算できる。
自身の身体を武器にして、チナミにスピン攻撃をぶつける最適なすっ転び方だって難なく算出できたのである。
「すげぇ……カナナンのヤツ、一矢報いやがった……」
依然、最悪な状況であることは事実だし、
ハルが大ピンチだということは、1ミクロンも変わりゃしない。
事実、今もハル・チェ・ドゥーは震えている。
だが、その震えている箇所は身体や脚などではない。
震えているのは、心だ、
ハルの心は熱く、熱く滾っていた。
敵が強大な存在だろうと、対抗し得ることが出来ると知ったのだ。
605
:
名無し募集中。。。
:2016/11/29(火) 10:59:18
カナナン死して一矢報いるとは…流石だ
ついにヘタレチワワが狂犬に変わるときが来るか!?w
606
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/30(水) 13:07:49
「それにしても凄い計算力だなー……」
チナミは起き上がるまでのほんの僅かな時間で石鹸銃を弄くり回し、ソロバンへと作り変えてしまった。
それもカナナンが使用するものよりも桁が多く、且つ軽量に出来ている。
「まぁ、私も円周率の計算なら誰にも負けないんだけどさ、
これを使ったらもっとgenius!になれそうじゃない?そう思うでしょ?」
マジックのように武器を改造する手捌きにはハルも今さら驚かない。
自身の眼でそれを目撃したマーチャンが苦しんでいるのが気掛かりではあるが
介抱してやる余裕も無いのだ。
「……もうおしゃべりは辞めにしませんか」
「ん?」
「決着をつけてやるって言ってるんだよっ!!!」
「……そっか。」
ハルが自身を無理矢理にでも鼓舞しようとしていることが、チナミにはすぐ分かった。
そんな相手をいなすことはとても容易い。
だがそれでは面白く無いし、本来すべきことからも反する。
どうしたものかと考えたところで、とある少女の声が聞こえてきた。
「ハル!私たちも加勢するよ!」
「アユミン!?……あれ、みんなも!?」
気づけばハルの周囲には仲間達が集っていた。
モーニング帝国剣士のエリポン、サヤシ、アユミン、オダだけでなく
KASTのサユキ、カリン、アーリーまでいる。
さっきまで機械兵と戦っていたはずの彼女らが何故ここにいるのか。
その答えは1つしか無かった。
「……全滅させられちゃったか。」
そう、総勢1000体の兵隊は若き戦士らの手によって1つ残らず破壊されてしまったのである。
となれば残るはあと1人。
チナミ本人を叩くのみだ。
「そっかそっか……番長たちもそうだけど、みんな思っていた以上に結構やるんだね。
う〜ん、う〜ん、どうすればいいのかな〜!」
うんうんと唸っていてはいるが、その表情は全く困っているようには見えない。
その後ニカッとした笑顔で結論をすぐに出したのも、はなから悩んでなどいなかった証拠だろう。
「よし!刀狩りだ!」
607
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/05(月) 12:54:17
チナミが若い戦士たちと対峙している頃、
キュート+トモと、ベリーズ達は激戦を繰り広げていた。
オーラこそ可視化されなくなったが、ただならぬ気迫は色褪せてはいなかった。
「団長!一気に決めるぞオラアッ!!」
「よぅし!挟み撃ちだな!!」
瞬足のオカールとマイミは瞬き一回ほどの短時間でモモコの前後に陣取って見せた。
奇妙で不可思議なワザばかり使うモモコは後に残すと面倒なので、
早々に潰してやろうとの判断なのである。
いくらモモコが達人でも、達人級2人相手では分が悪い。
だが、こう来るであろうことはベリーズ側も承知の上だった。
「ぬあ゛あ゛あ゛ああっ!!!」
「げっ!クマイチャン!」
モモコの背後、つまりはオカールが到達するであろう地点に向けて
クマイチャンは既に長刀を振り下ろしていたのである。
長い得物ゆえに重量たっぷり。遠心力も十二分にかかっている。
こんな一撃をまともに受けたらどんなヤツだって御陀仏だろう。
「喰らってられっかよ!!」
オカールは落ちてくる長刀に対して、両手に着けたジャマダハルを秒間あたり数十回も叩きつけた。
一撃での威力で負けるなら何十何百何千回も当ててやれば良い。
そしてオカールの回転力ならそれが可能になるのだ。
同様にマイミに向けてもシミハムの重い棍が降りかかっていたが、
腕の先が見えなくなるほどの高速連打で凌いでいる。
破壊力で言えばベリーズ優勢だが、キュートは圧倒的な運動量でカバーしているのである。
しかし、今のマイミとオカールは身に降る攻撃を防ぐのに集中しすぎるあまり隙が生じていた。
そのため本来のターゲットであるモモコに逆に狙われてしまう。
「ガラ空きじゃないの。それじゃ遠慮なく……うっ!」
マイミに何か仕掛けようとしたモモコだったが、瞬時に思い直して中断した。
アイリがこちらを見ていることに気づいたのだ。
「怖っ!……はいはい分かりました。黙ってまーす。」
608
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/12(月) 12:58:35
(やっぱり……次元が違う……!)
トモ・フェアリークォーツはひどく疲弊していた。
まだ戦闘開始してから何もしていないというのに、心が疲れきってしまったのだ。
口の中はカラカラだし、目はグルグルと回っている。
弓と矢を掴む手だってさっきから震えっぱなしだ。
これでは弓道家が取るべきとされている「残心」をきちんと行えそうにない。
しかも、トモの心はここから更に乱されることとなる。
「ヒッ!?」
WARNING WARNING WARNING WARNING
トモの頭には未来で起こりうる危機の警報、
すなわちWarning〜未来警報〜がうるさく響いていた。
化け物揃いのベリーズの中でも一目も二目も置かれているミヤビが自身目掛けて一直線に走ってきたものだから
トモのパニックは尋常ではなかった。
(うわ〜〜〜!なんで私なんかのところに!?)
この場にいる戦士の中でトモが最弱だというのは紛れも無い事実。
だが、ミヤビはそんなトモを低く見たりはしていなかった。
ここに居るからにはそれなりの理由があるはず。
そう考えたからこそ最優先に潰すべき対象として選んだのである。
ミヤビの仕込み刀と脇差の切れ味はチェーンソー級。
回避しきれなかった時点で真っ二つにされることも十分ありえる。
トモが死をも覚悟しかけたその時、
モモコのマークについていたはずのアイリがトモを護るように棍棒でミヤビの刃を受け止めた。
「アイリ様!?」
ヒーローの登場にトモはホッとした。
確かにミヤビは実力者。だがアイリだってそれに匹敵する力の持ち主なのだ。
簡単に切り捨てられるようなことは有り得ない。
「ん……今はアイリとやり合うつもりは無いんだけど」
「いやいや、そう簡単にあの子を切らせるわけにはいかないからね。」
「モモコのヤツをフリーにしたとしても守る価値があるってこと?」
「一つ正解、一つは間違い。」
「へぇ?」
「守る価値があるというのは大正解。 そしてモモコがフリーになったというのは……残念大ハズレ。」
609
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/13(火) 01:59:50
オマケ更新「未来の剣士」
‐フクが帝王になってから数日後の出来事
ハルナン「マリアって、研修生の中ではトップの実力だったんですよね?」
エリポン「うん、そう聞いてる。」
ハルナン「ということは残りの研修生の実力はそれ以下ということなんでしょうか」
エリポン「そうなるっちゃね……」
ハルナン「だとすると将来が不安ですね……」
フク「ふっふっふ……」
エリポン「なん?どうしたと?」
フク「確かにマリアは成績トップだったけど、肩を並べるくらい凄い子がいるんだよ。」
ハルナン「そうなんですか?初耳です。」
エリポン「ウチらのような外部の人間は研修生には詳しくないけんね……」
フク「マリアは調子に並があるけど、その剣道家は常に安定している感じ。
派手な活躍は耳に入らないだろうけど多くの後輩に慕われているらしいよ。」
ハルナン「剣道家と言いました?ということは、ハルのように竹刀を武器に?……」
フク「ううん、違うよ。」
エリポン「意味が分からん、じゃあ木刀?それとも真剣?……」
フク「それも違う。彼女はね、剣士だけど、剣士じゃないんだ。」
ハルナン・エリポン「???」
フク「まぁ、将来のお楽しみかな」
ハルナン「それ何か月後になるんですかね」
610
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/13(火) 02:00:09
オマケ更新「未来の剣士」
‐フクが帝王になってから数日後の出来事
ハルナン「マリアって、研修生の中ではトップの実力だったんですよね?」
エリポン「うん、そう聞いてる。」
ハルナン「ということは残りの研修生の実力はそれ以下ということなんでしょうか」
エリポン「そうなるっちゃね……」
ハルナン「だとすると将来が不安ですね……」
フク「ふっふっふ……」
エリポン「なん?どうしたと?」
フク「確かにマリアは成績トップだったけど、肩を並べるくらい凄い子がいるんだよ。」
ハルナン「そうなんですか?初耳です。」
エリポン「ウチらのような外部の人間は研修生には詳しくないけんね……」
フク「マリアは調子に並があるけど、その剣道家は常に安定している感じ。
派手な活躍は耳に入らないだろうけど多くの後輩に慕われているらしいよ。」
ハルナン「剣道家と言いました?ということは、ハルのように竹刀を武器に?……」
フク「ううん、違うよ。」
エリポン「意味が分からん、じゃあ木刀?それとも真剣?……」
フク「それも違う。彼女はね、剣士だけど、剣士じゃないんだ。」
ハルナン・エリポン「???」
フク「まぁ、将来のお楽しみかな」
ハルナン「それ何か月後になるんですかね」
611
:
名無し募集中。。。
:2016/12/13(火) 05:36:30
更新キテター
アイリの発言にワクワクドキドキ!
リアルの世界でもワクワクドキドキ!
612
:
名無し募集中。。。
:2017/01/03(火) 09:46:46
ホント再開何ヶ月後になっちゃうんだろうか?作者さん元気にしてるんだろうか?
613
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 13:01:41
やっとたどり着いたこのスレ
正月で全部読んじまったわ
続きはよ
614
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/04(水) 19:53:21
長らく更新できてなくて本当にすいません……
今夜の遅い時間なら書けそうです。
615
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 20:49:51
おお!作者さん生存確認!!お待ちしております
616
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 21:21:10
宣伝不足じゃね
めっちゃ面白いんだけど
617
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 22:51:23
>>616
是非前作も読むことお勧めします
より楽しくなりますよ
作者さんの過去ログ(制作中)
http://hellomatome.html.xdomain.jp/index.html
マーサー王物語まとめサイト(6章まで)
http://ifs.nog.cc/ookami-bc.hp.infoseek.co.jp/txt/kingdom.html
マーサー王物語Wiki(6章〜最終章)
https://www29.atwiki.jp/masao001/sp/pages/62.html
618
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/05(木) 04:08:35
「お、マーク外れた?そいじゃ遠慮なく……」
自身がアイリの視線から外れたことに気づいたモモコは、
己の10指に巻き付けられている"糸"をたぐり寄せようとした。
暗器使いであるモモコの現在のマイブームはこの"糸"。
一般的なイメージ通りの「か細く」「頼りない」代物などでは無いことは言うまでもない。
(まずはキュートの脚を奪う。その次は首……と行きたいところだけど、そう簡単には行かないよね。)
その糸は髪の毛よりも細いが、硬度は鉄線以上。
しかも既に辺り一帯の石やら瓦礫やらに結びつけてあるために、
少し引っ張るだけでそれは「罠」にもなり、「凶器」にもなり得るのだ。
モモコはこの場にいる味方や相手のように激しく動いて汗を流す必要などない。
ただ指先をほんの少しばかり動かすだけで十分な攻撃を行うことが出来るのである。
しかし、思惑通りにはなかなか行かなかった。
「確変"派生・秩父鉄道"!!!」
モモコが糸を引くよりも速く、ナカサキが超高速でタックルを仕掛けてきた。
その突進力はまるで汽車そのもの。
確変による身体強化を脚部に集中させたからこそ、この馬力が実現できている。
「ぐっ……!!」
モモコのヒラヒラとした服の中には重量感たっぷりの鎧が隠されているが
それでもナカサキの突撃には不意を打たれ、いくらかのダメージを受けてしまった。
体制を立て直すまではこのまま劣勢が続くのかもと思ったが、
モモコのすぐそばには心強い味方が駆けつけてくれていた。
「ナカサキ!よくもモモを……喰らえ!『ロングライトニングポール"派生・枝(ブランチ)"』!!」
その味方は巨人・クマイチャンだった。
長刀を勢いよく下方向に突き刺し、地面に亀裂を生じさせている。
クマイチャンの愛刀を幹として、枝分かれするかのように次々と地が避けていく。
もはやこの規模の災害は「地割れ」と言うのが相応しいのかもしれない。
これだけ地面が荒れてしまえばナカサキはもうSLの如く走り回ることは出来ないだろう。
「うう……流石クマイチャンね。でもこれで終わりと思わないでよねっ!」
「向こうは派手にやってるね……クマイチャンとナカサキが戦っているんだから、無理ないか。」
「ミヤビ、余所見をしている暇があるの?私はもう貴方の弱点を見抜いていると言うのに。」
アイリは自身の"眼"でミヤビを見ていた。
以前にも触れたが、アイリの眼にはヒト、そしてモノの弱点がハッキリと見えている。
更にアイリはそれだけでなく必殺技をも使用しているし、ミヤビもそれに気づいている。
「どう見えている?……"何打"で倒せると?」
「生憎パープレイとはいかないね。私の見積もりだとダブルボギーか、トリプルボギー……」
「ゴルフとかいうスポーツには詳しくないから、分かりやすく説明してもらえるかな?」
「簡単に言えば、腕や脚を2,3本犠牲にすれば勝利を掴める、ってこと。」
「へぇ……倒せる気でいるんだ。」
この時のミヤビの低い声を聴いたトモは、恐怖で心臓が止まりそうになってしまった。。
シミハムの能力でオーラの類は見えなくなったが、純粋な気迫そのものはかき消せないようだ。
トモがひどくビビったのを感じ取ったミヤビは、少し表情を和らげてからアイリに質問を投げつける。
「でもいいの?犠牲が少し大きすぎるような気がするけども。」
「うん、それなんだけどね……さっき言ったトリプルボギーというのは私一人で戦った場合の話なの。」
「アイリ一人の場合?……ということは……」
「そう、選手とキャディーが協力すればパーどころかバーディも狙える……私の眼にはそう見えてる。」
619
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/05(木) 04:13:50
宣伝は確かに積極的には行ってませんねw
でもこうして新しく読んでくれる方も増えているので、
興味をもってくれた方が集まってくれれば良いかな、とは考えています。
そのためには過去ログの更新もせねば……
620
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 22:58:05
>>617
ありがとう!仕事忙しいけど
一週間でやっと読み終えたわw
一つ気になってるところが有るんだけど
何でモモコはメグが味方だと気付いたんだ?
自分が読み落としてるだけかも知れんけど気になる
621
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 23:00:38
>>619
過去ログは大分読めたけど
出だしから六章までの
皆の反応が見れないのが残念だな
宣伝は良いんじゃない
荒れても嫌です
622
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 23:04:41
あと過去ログでRHYMESTER好き?
日本語ラップ好きの人が
かなりの頻度で書き込んでるのに
スルーされまくっててワロタ
623
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 23:05:18
あと一応上げとく
624
:
名無し募集中。。。
:2017/01/12(木) 01:28:13
>>620
凄い!一週間で読み終えるなんてw
確か一部ログが抜けていたところあったんじゃないかな?でも、うろ覚えなんで…きっと作者さんが答えてくれるはず!w
625
:
名無し募集中。。。
:2017/01/12(木) 01:46:01
>>621
『マーサー王 2ch』とかでググれば過去ログ出てくるから、DAT落ちしたスレを読めるツール(Chromeの2chRevival等)で開ければリンクからさかのぼっていけるよ
626
:
名無し募集中。。。
:2017/01/12(木) 20:30:40
>>625
おーありがとう!
新作の方も早く続き読みたいっす
作者カモーン
627
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/13(金) 12:51:26
前作を書いたのはかなり前のことなので理由は覚えてませんねw
過去ログ整理するときに読み返すので、そのときに思い出すかも、、、
次の更新は今夜遅くになりそうです
628
:
名無し募集中。。。
:2017/01/13(金) 13:22:24
流石に作者さんも覚えてないかw
更新楽しみにしてます
629
:
名無し募集中。。。
:2017/01/13(金) 20:31:04
マジかよー
一番気になる伏線だったのに
最後まで出てこないからモヤモヤするわ
あとキャラクター紹介も全員分読みたい
名前の由来とか
630
:
名無し募集中。。。
:2017/01/14(土) 01:14:09
キャラクター紹介は全員では無いけどどこかで作者さん書いてたはず二部のメンバーはまだだったかな?
631
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/14(土) 06:29:36
力尽きたので更新はまた後になります、、、
第一部登場キャラの由来は前スレ後半にありますね。
第二部登場キャラの由来はそのうち、、、
632
:
◆wnfFWrhuHc
:2017/01/14(土) 17:30:51
ゴルフに疎いミヤビも、キャディーという言葉なら聞いたことがあった。
要は選手が気持ちよくプレイするためにサポートする役回りのことだ。
アイリを選手、トモをキャディーと位置づけるとすれば、
トモ・フェアリークォーツの支援によりアイリが戦いやすくなると言いたいのだろう。
「そうか分かった、じゃあその大事なサポート役を死ぬ気で守ってみな!!」
ミヤビは脇差を抜いてトモへと斬りかかった。
勿論ミヤビもここでの攻撃がそう簡単に通るとは思っていない。
重要なキーパーソンであるトモが狙われるのだから、先ほどのように阻止してくるだろう。
実際、すぐにでもアイリは棍棒で地面の石を叩いて飛ばしてきた。
来ることが分かっているからこそ、ミヤビは即時に対応できる。
(トモ・フェアリークォーツを狙うのはあくまで"フリ"だよ、本命はカウンター狙い。
それもとても強烈なね!『猟奇的殺人鋸"派生・美異夢(びいむ)"』!!)
今の今までトモを向いていたミヤビは
アイリの方へと急激に方向転換する勢いを利用して、脇差を強く素早く振り切った。
そうして発生した衝撃波の威力は斬撃そのものに匹敵し、
飛んできた石を弾くどころか、少しばかり離れたところにいるアイリに対して光線のように到達する。
「くっ……」
まったく目に見えない攻撃ではあったが、アイリは正確に棍棒で防いでみせた。
それでもガードした武具が破壊されてしまうほどに強い技を放ったつもりではあったので、
多少傷みこそしたものの元の形状を保っていた棍棒を見て、ミヤビはほんの少しだけ驚いた。
「ん……スッパ切れると思ってたんだけども。」
「生憎様、こっちにも優秀な整備士が付いているの。」
「なるほどマーチャンのことか、ああ見えてなかなか結構な腕を持ってるんだね…………ハッ!?」
何かに勘づいたミヤビはトモの方へと慌てて向きを変えた。
その時には既にトモは矢を射抜いた後だった。
怯え切った顔をしながらも強大な敵に向かって牙を向いていたのである。
この矢を受けたのが「背中」だったならば流石のミヤビも危うかった。
しかし、方向を変えてしまった今、攻撃が当たるのは「胸」となる。
見た目にはほとんど差が無いが、ミヤビの胸部には鋼鉄の板が埋められているため
矢が当たってもほとんどダメージは無かった。
「あっ……そんな……」
「上手く殺気を消せていた。ちょっと気づくのが遅ければ危ないところだったよ。
でも、結局は通用しない。 キャディーだったらキャディーらしくサポートに徹したほうが身のためじゃないかな?」
「……」
渾身の一撃を防がれてしまったので、トモはまたも落ち込んでしまう。
思えば橋の上での戦いの時もトモの矢はミヤビの鋼鉄の胸に阻まれていた。
やはり伝説の戦士との差は大きすぎるため、何度トライしてもダメなものはダメなのではないだろうか。
そう思っていたところに、いつの間にか背後にまで移動したアイリの声が聞こえてきていた。
「ミヤビ……あなた、何か勘違いをしているのでは?」
「勘違い?」
「私は一度もトモがキャディーだなんて言った覚えは無いよ。」
「えっ?……」
アイリはトモの首にそっと触れては、こう言い放った。
「私と同じ景色を見せてあげる。それがキャディーとしての私の務め。」
633
:
名無し募集中。。。
:2017/01/16(月) 21:56:54
愛理のゴルフ動画懐かしいなー
あのグダグダなやつ
そういえば何で愛理の武器って棍棒なの?
ゴルフクラブのウッドって事?
634
:
名無し募集中。。。
:2017/01/16(月) 22:00:36
ゴルフ漫画の風の大地のラストページみたいな
大阪弁ポエムを愛理が朗読するも
フガフガ過ぎて聞き取れない展開希望
635
:
名無し募集中。。。
:2017/01/16(月) 22:00:56
これ
http://i.imgur.com/v8wOHDE.jpg
636
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/01(水) 12:32:09
アイリに首筋を触られたその瞬間、トモの全身に電流が走った。
とは言っても高圧電流のような強力なものではない。
微弱ではあるが、ピリッとしたSHOCK!を与えてくれる。
そう。例えるならば、それは「まるで静電気」。
瞬く間に惹かれ合い、気持ちが+(プラス)へなだれていく。
(え!?ええ!?こ、これは!!)
トモの目の前には、
いや、トモの「眼」の前には信じられない光景が広がっていた。
自身の手に持つ弓の傷んでいる箇所や、
(先ほどのクマイチャンの技の影響で)地面が脆くなっている部分、
そして目の前にいるミヤビの『弱点』等々が手に取るようにわかるのだ。
この摩訶不思議なビジョンに、トモは覚えがあった。
知識として知っていたのだ。
「これが……アイリ様がいつも見ている光景……」
「ふふふ、そう。 驚かせちゃってごめんなさいね。」
対象の弱点を見抜くアイリの眼。
アイリの身体に触れている間だけ、その能力がトモにも宿ったのである。
一流のキャディーは芝のコンディションや風の状態に気を配り、
プレイヤーに対して有益な情報を提供すると言うが、
敵の弱点を見抜く眼をそっくりそのまま譲るなんて世界中のどこのキャディーがマネ出来ると言うのだろうか。
「凄い……凄すぎます……アイリ様は他人に対して眼を与えることまで出来るのですね……」
「誰にでも、ってわけじゃないのよ。」
「え?」
「よっぽどフィーリングが合わないと無理。
どこにもいないのよ、ただただ、あなただけ。」
トモは何年も前からアイリを自身のヒーローとして慕ってきていた。
だからこそアイリの経歴や戦い方をよく理解している。
そして先日初めて出会ってから以降は、一緒にお茶するなどして親密度も上げていた。
そこまでしたからこそ、トモはアイリと通じる資格を得ることが出来たのである。
感激のあまり涙を流しそうになったトモだったが、そこはグッと堪えた。
涙なんかで視界を遮るワケにはいかないのだ。
ミヤビの弱点を、しっかりと観察しなくてはならない。
(それにしても弱点って……本当にそこなの? 信じられない……どういうこと?
いや、理由なんてどうでもいい。
そこに対して矢をぶち当てる事だけを考えなきゃ!!)
弱点に攻撃を当てるまでのプロセスについて、
アイリはゴルフをプレイする時の打数に例えている。
先の4打で相手のガードをこじ開けて、5打目でトドメを指す……といった具合だ。
それに対してトモは「将棋」をイメージしていた。
この将棋とは果実の国で大流行しているボードゲームであり、
複雑なCHOICEとCHANCEを迫られるため、戦略的な思考を養えるとして、戦士も嗜むことが推奨されていた。
アーリー・ザマシランは苦手にしていたようだが、トモはユカニャ王にこそ及ばないもののかなりの実力を誇っている。
(見えた……この方法なら"詰み"に持っていける。)
637
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/01(水) 12:34:40
アイリの武器はまさにゴルフのドライバーをイメージしています。
単なる棒ではなく、球が上がりやすくなるように微妙な角度がついてるのかもしれませんね。
638
:
名無し募集中。。。
:2017/02/01(水) 20:39:12
更新キテターー
作者さんのハロプロネタ入れ込むセンス好きやな
639
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/03(金) 12:18:27
「眼を与える?……そんなことが出来るなんて初耳なんだけど……」
トモにアイリの眼が宿ったなんて、にわかには信じ難いとミヤビは感じた。
少なくとも自軍の"眼"持ちである人魚姫(マーメイド)からは聞いたことのない情報だ。
(ま、あの子はあの調子だからそんな使い方に気づいてなくても不思議じゃないか。
そもそも、トモが私の弱点を見抜けるようになったとしても大した問題じゃない。
2人まとめて斬り捨てることに変わりは無いんだから。)
ミヤビは前に踏み出し、トモの首筋に接するアイリの手を切断せんとした。
そのために使う得物は自身のオーラに負けず劣らずの凶々しさを見せる脇差だ。
刃渡りこそ短いが、その鋭利さは人間1人の手首を切り落とすには十分すぎるほど。
アイリとトモの縁を強制的に断ち切ってやろうとしたが、
それをアイリが甘んじるはずもなかった。
「させない!!」
手に持つ棍棒をビリヤードのキューのように扱い、ミヤビの胸へと強打する。
「短い脇差」と「両手を伸ばしたほどの長さの棍棒」ならリーチが段違い。
ミヤビの胸にはご存知の通り鉄板が埋め込まれているため打撃の痛みを感じることはなかったが、
衝撃が強かったので後ろに押し出されてしまう。
「うっ……」
この一連の流れに、トモは感動に近い感情を覚えていた。
トモが考えた「詰み」への道筋の通りにアイリが行動してくれたことが嬉しいのだ。
それはつまり自分の考えとアイリの考えがピッタリ一致したということ。
こんなに嬉しいことはない。
(ひょっとしてだけど、アイリ様の能力か何かで私の思考がコントロールされてるとか?
……うん、それでもいい。
二人の思いが通じて、勝利することが出来るんだったらなんだっていい。)
640
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/04(土) 14:18:41
今のトモには色々なものが見えていた。
ミヤビが普段より息を荒げているのも、意外にも多くの汗をかいているのも、
全部が弱点情報としてトモの眼に入ってきている。
頭の中の考えを100%読み取ることまでは流石に不可能だが、
ある程度の心理状態を判断したり、次の行動を予測することなら出来そうだ。
ではミヤビが次に何をするのかと言うと……
「邪魔な棒だなぁっ!!」
ミヤビは一度アイリの手首付近にまで伸ばした脇差を手前へと引き寄せて、
己の胸を叩いた棍棒に対して上から斬りつけようとした。
しかし、刀を引くまでの僅かなタイムロスが達人同士の決闘では致命的だった。
アイリはその間に迎撃準備を整えており、上から降る刃を弾くように棒を操作した。
これがミヤビを倒すための「二打目」。
マーチャンによって修繕された棍棒なら、扱い方次第では刀にも競り負けないことは実証済みだ。
「遅い!」
(くそっ……力の込もってない斬撃じゃ、やっぱり跳ね除けられるか。)
この攻防が開始する直前のトモは、ミヤビが脇差ではなく自身の顎に埋められた鋭利な刃物で棍棒を斬るだろうと予測していた。
剣を引き寄せて斬るよりは、顎を直に振り下ろした方が圧倒的に早いと考えたからだ。
だが、そのすぐ後に「眼」でよく見ることで考えを改めた。
ミヤビの顎の刃には細かな傷が無数に入っていたのだ。
その程度の傷が弱点だとは到底言えないが、メンテが行き届いているのは脇差の方であるのは明らかだ。
ベリーズにはチナミという凄腕の技師が存在するが、
流石の彼女もミヤビの肉体に直接埋め込まれている武具に限っては、
簡単に手渡すことの可能な脇差と同等のペースでメンテすることは困難だったのかもしれない。
(つまり、顎の刃よりも脇差の方を信頼しているってことなんだ。
アイリ様には整備がより行き届いている方の武器じゃないと通用しないと考えたのかも……
そして、もしそうだとしたら私の考えた「詰み」への道筋の説得力が増すことになる。
そのためにはアイリ様任せにしないで私も挑まなきゃ!!)
これまでの二打はどちらもキャディーが打ち込んでいた。
それではダメだ。本当に活躍すべきはプレイヤーで無くてはならない。
だからこそトモは弓を引いた。
手を伸ばせば届く程度の超至近距離からミヤビの弱点に当ててやろうとしているのだ。
641
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/07(火) 12:55:01
ミヤビの弱点を狙ってトモは矢を放った。
今のトモはとても集中しており、且つ二人の距離も近いため
絶対に当たることを確信していた。
「通用しない……というのがまだ分からないのかな?」
殺気を瞬時に察知したミヤビは、矢が放たれる直前に身体をトモの方へと向けた。
胸の鉄板による防御を謀ったのだ。
いくらトモの射撃が強かろうとも、こうして鉄板に阻まれてはミヤビの肉体にダメージを与えることが出来ない。
(やっぱり……私の矢は鉄板で防がれる。100発打っても全部が全部そうなる。)
「私を倒すなら顎と胸以外に当てるといい。そっちは生身だからね。
でもそう易々と当てさせてあげるつもりは無いよ。
どんな攻撃でも顎と胸と剣の三点で防いでみせる!
そう、このアイリの攻撃のように!!!」
トモが矢を射ってミヤビがそれを胸で防いでいるうちに、アイリは棍棒をブチ込む準備をしていた。
大きめのスイングで勢いをつけて、ミヤビを叩こうとしたのだ。
しかしそれだけの攻撃なのだからコッソリやろうにも目立ちすぎていた。
そのため、これもミヤビの強固で平坦な胸板でガードされてしまう。
「アイリ、振りの速度がいつもより遅いんじゃないか?」
「そんなことは……」
「いや遅い。 何故だと思う?……それはね、棍棒を片手で持っているからだよ。
トモに触れている手を今すぐ放して、両手で棒を持ち直した方が勝率上がるんじゃない?」
ミヤビの発言は、トモの精神に影響を与えるようなものにも思えた。
心が弱ければ、責任を感じるあまり潰れてしまうかもしれない。
しかしそれでも、トモの表情は少しも歪むことが無かった。
ここまでミヤビに当ててきた「一打目」から「四打目」までの全てが自身の想定と一致していたので
むしろ自信を持つことが出来たのである。
(トドメの五打目は私が射抜く!!
狙いはそこ以外に有り得ない。 絶対に穿つ!!)
642
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/08(水) 12:28:59
トモがまたも弓を構えたので、ミヤビはそれを受け止めるための体勢をとった。
さっきから幾度も繰り返している防御法によって、
矢による攻撃は無駄だと言うことを知らしめようとしたのだ。
これによってミヤビの肉体は守られる。
そのはずだった。
ドスッ
どこからか鈍い音が聞こえてきる。
その音の出所が自身の体内ということに気づくまで、そう時間はかからなかった。
そう、トモによって放たれた矢がミヤビの胸に突き刺さったのである。
胸に埋められた鉄板を突き破って、だ。
(何故……矢の威力が……急に強く?……
いや違う……矢が強くなったんじゃない。)
勉強が苦手なミヤビではあるが、頭の回転は速い。
これまでのアイリとトモの行動から、今回のような結末を迎えた原因を導き出した。
「胸の鉄板……ここが私の弱点だったというワケか……」
顎の刃が脇差と比べてメンテが出来ていないのは前に述べた通りだ。
簡単に取り外せないため、チナミも高い頻度で整備することが出来ないのである。
そしてそれは胸の鉄板も同じ。
しかもミヤビは昨日のゲートブリッジの戦いでもトモの矢を胸で受けている。
その時に生じた僅かなヒズミが、小さな小さな弱点として今日この場まで残ってしまったのである。
(思えばアイリの攻撃も、トモの攻撃も私の胸にばかり当たっていた。
私が胸で受け止めるしかないように攻撃してきたのか……)
本来なら戦闘に影響の無いような傷でも、ここまで徹底的に痛めつけられたら拡がりもする。
強固であることが自慢の鉄板を少しずつ壊していくことで
矢による射撃が通用する程の耐久力にまで落としてみせたのだ。
そうなったことは持ち主のミヤビにも気づくことが出来ない。
理解できたのは、「眼」を持つアイリとトモだけ。
「認めるよ。確かに若手は足手まといではなかった……脅威に立ち向かうためには必要……だ……」
ミヤビも底力を発揮すれば、ここからの逆転劇を見せれたかもしれない。
でも、それは今の本意では無い。
安心したような顔をしながら地に落ちていった。
643
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/10(金) 12:45:18
「勝った?……」
トモは弓を構えたままの姿勢でしばらく固まっていた。
自分の攻撃が伝説の存在に通用し、しかも撃破まで出来たことが信じられないのだ。
それでも手応えはしっかりと残っている。
矢がミヤビの胸を貫いたのは紛れも無い事実。
「あなたがやったのよ、自信を持って。」
「アイリ様……!」
頭の中ではちゃんと分かっていた。
自分がここまでやれたのはアイリの全面的なサポートが有ったからこそ。
その助けもなしにミヤビに挑んでいたら秒速で切り捨てられていたことだろう。
でも、
それでもやっぱり、嬉しいは嬉しい。
同じKASTのサユキやカリン、アーリーがどんどん力をつけていく一方で、
自分だけは活躍しきれていないと感じていた。
変な話になるが、足手まといになっていないかと悩む日もあった。
だがそれももう過去の話だ。
「やったんだ……私は勝ったんだ……」
過程はどうあれ、KASTだけでなくモーニング帝国剣士や番長らを含めてたとしても
ベリーズを倒した者はトモ・フェアリークォーツだけだ。
唯一の存在だ。
これ以上に誇れる事などそうそう無いのではないだろうか。
嬉しさを噛みしめるトモに対して、アイリは優しい声をかけていく。
「本当によくやったと思いますよ。」
「アイリ様、有り難う御座います!」
「でもね、少し体を休めた方がいいんじゃない?疲れたでしょう。」
「え?でもアイリ様が守ってくれたおかげで大怪我はしていませんし、
残りのベリーズを倒すためにまだまだ頑張れますよ!」
「いえ、疲れているのは"心"の方。」
「!」
ミヤビと対峙するだけでトモの神経は相当削り取られていた。
ぶっちゃけて言えば立っているだけでしんどかったはずだ。
アイリはトモの心の弱点を見抜き、労いの心をかけたのである。
「あはは……アイリ様の眼にはそんなところまで見えてるんですね……」
「ミヤビを倒しただけでトモは大金星。後は寝てても誰も文句は言わないはずよ。
ベリーズはキュートが責任を持ってなんとかするから、ゆっくりしててね。」
「あ、はい、じゃあすいません、少し寝ます……」
この瞬間までトモはアイリに触れていたため
実を言うと「アイリの心の弱点」がバッチリと見えていた。
つまりは、アイリが嘘をついていることに気づいたのだ。
(本当に迷惑をかけてごめんなさい、私はとっとと寝ます。
だからアイリ様もすぐに身体を休めてください。
眼を譲るのって、私には想像もつかないくらい負担がかかるみたいですね。
なのに最後まで私に触れてくれて……感謝以外の思いが浮かびません。)
トモが眼を閉じてから数秒後、アイリは気を失うように地に倒れていった。
その時の息づかいや発汗量は、眼を持つ者ではなくても弱っていると見抜ける程だった。
644
:
名無し募集中。。。
:2017/02/12(日) 08:51:59
雅ちゃん中々勝てないな
645
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/14(火) 12:39:16
ミヤビとアイリ、そしてトモが倒れたことには他の食卓の騎士らもすぐに気づいていた。
そしてちょっと一瞥しただけで戦いを再開する。
生死をかけて戦ってる以上は倒し倒されることは当然起こりうるため、構ってられないのである。
それにベリーズとキュートの実力は拮抗しているため、少しも隙を見せることが出来ない。
キュートのマイミ、ナカサキ、オカールと
ベリーズのシミハム、モモコ、クマイチャン。
それぞれ3名ずつであるため、ここからは誰か一人でも欠けたら戦況が大きく動くことだろう。
「でもさ、減らすのは大変だけど……増やすことなら簡単に出来ちゃうのよね。」
オカールの連撃をヒラリヒラリと交わしながらモモコが呟いた。
そして少し離れたところで見ているカントリーの面々を見つけては、
大きな声を投げかけていく。
「おーい!みんな見てるんでしょーっ? そんなに離れてないでこっちに来なよーっ。」
急に呼ばれたリサ・ロードリソースら4名はドキリとした。
今回の作戦ではカントリーは戦いに不参加のはずだったのだが、
モモコの気が変わってしまったのだろうか。
達人達の「気」に当てられながら、マナカが苦笑いで答える。
「えーっと……ひょっとして私たちも戦わないといけないんですか?……
いえ、マナカも本心はモモち先輩と共に戦いたいと思ってます!
でも肝心の動物たちが負傷中で……いま元気なのはリサちゃんのカエルくらいなんですよ。」
「ちょ、ちょっと!!」
カントリー達がパニックになる中、モモコは冷たく「そういうのはいいから早く来て」と言い放った。
機械のように冷徹になったかと思えば、
お次は子供をあやす保母のように「みんなは戦わなくていいの。近くで見てるだけで良いからねー。」と安心感のある言葉をかけていく。
ここで面白くないのはオカールだ。
自分との決闘は後輩と会話しながらでも務まると思っているのが容赦ならない。
オカールは気合を込めた渾身の一撃をぶち込んでいく。
「無視すんなよっ!!」
だが、しかし
オカールの強烈な突きは通らなかった。
何やらとても硬いものに防がれてしまったのだ。
そして、その硬いものには見覚えがあった。
信じられないが、彼女は確かにそこにいる。
「ミ、ミヤビちゃん!?」
646
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/15(水) 12:35:25
オカールの攻撃はミヤビの胸で防がれていた。
トモによって貫かれた穴では無い箇所で、ジャマダハルを受け止めたのだ。
初めは精巧な人形のようなものでガードされたのかと思ったが、
近くで見れば分かるリアルすぎる質感は作り物では再現することが出来ない。
攻撃を受けたミヤビの目が依然として閉じられていることから、
オカールは一つの答えを導き出した。
「マジかよ……気絶してるミヤビちゃん、いや、ミヤビを糸かなんかで操ってやがるのか。」
「せいかーい。クイズが苦手なオカールでも流石に分かったみたいね。」
「やさしくねぇなぁ……コマイ真似しやがつて!」
オカールの推察通り、モモコは指から伸びる糸をミヤビの四肢に結びつけ、
この場まで引き寄せて盾にしたのである。
ミヤビの意識が有る時には(いろんな意味で)絶対に出来ない芸当だ。
これにはカントリーの4人もドン引きしている。
「モモち先輩……いくらなんでもそれは……」
「ね、ねぇリサちゃん。」
「チぃ?どうしたの?」
「えっと、なんでモモち先輩はミヤビ様を盾にしたのかな。」
「なんでって、そりゃミヤビ様が硬いお胸をお持ちだからでしょ……」
「でも、モモち先輩への攻撃を防ぐだけならアイリ様やトモって人を盾にしてもいいはずだよね?
ジャマダハルが人の体を貫通するとは思えないもん。
なのにどうして、お仲間のミヤビ様をわざわざ連れて来たんだろう……」
「あ……確かに……」
647
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/16(木) 20:59:35
真偽は不明ですが、
福田花音が仮面ライダーイクサ(音也)と公開の噂があるようですね。
648
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/22(水) 12:35:07
「え?なになに?どうしてみんな引いちゃってるの?
あ!そうか!私がミヤビを許可無く操ってると思ってるんだ!
心配しないで。ちゃーんと打ち合わせ済みなんだから。」
少し離れた場所でキュートと戦っているシミハムとクマイチャンは心の中で「嘘だな」と思った。
その2人どころかカントリーやオカールも全然信用していない。
事実、モモコは一つの相談もなくミヤビを操っているのだからそう思われても仕方ないだろう。
「ま、そんなことはどーだっていいじゃない。
大事なのはここで勝つことなんだからさ。」
今しがたモモコが引っ張った糸には、ミヤビの右手と脇差がガチガチに固く結び付けられている。
それを素早く動かせば、オカールを切り裂く斬撃にもなるのだ。
血が通っていないような無機質の攻撃にオカールは少し驚いたが、
所詮は操り人形がとる動きの延長戦でしかない。
本来のミヤビの鋭さには程遠いため、両手のジャマダハルで簡単に受け止めてみせた。
しかし、その次が続かない。
「くっ……」
「オカールどうしたの?防御ばっかりで攻めて来ないの?」
「うるせぇ!今やってやるよ!!」
「うふふ。」
オカールの戦闘に対するモチベーションは明らかに低下していた。
実はこれこそがミヤビを操ったモモコの狙いだったのである。
オカールはこの数年で見違えるほどに強くなったが、
高みに達するほどに、おなじ食卓の騎士のミヤビの戦闘センスの高さを痛感していっていた。
そしてその感情はいつしか憧れになり、
マイミ以外に敬意を示していなかったはずのオカールが、ミヤビのことをミヤビちゃんと呼ぶようにもなったのだ。
そんなミヤビと決闘する機会が有ればオカールは全身全霊で挑むだろう。
それこそ死ぬ気で殺す気で戦うに違いない。
だが今の状況はどうか。
ミヤビと顔を合わせてはいても、対峙しているとは呼べないのではないか。
憧れの存在と真剣勝負をさせてもらえないという、なんとも言えぬ歯痒い状況は
オカールの戦意をものすごい速度で奪っていっていた。
ちなみにモモコがアイリやトモを盾にしなかった理由は、
オカールならその二人を平気で切り捨ててしまうからに他ならない。
649
:
名無し募集中。。。
:2017/03/03(金) 20:45:15
岡井ちゃんとももちもっと絡んで欲しいなー
現実で
650
:
名無し募集中。。。
:2017/03/08(水) 20:38:58
やっと追いついたー!スマホ壊れたついでに最初から読み直してきたけど…意外と進んでなかったorz
作者さん忙しいのかぁ…とこで一部読み返して気になったんだけど
> そしてマーサー王国を束ねる若き女王、マーサー王その人であった。
前作では最後まで性別明言しなかったけどマーサー王は『女』って事で良いの?
651
:
名無し募集中。。。
:2017/04/22(土) 16:54:48
もう2ヶ月か…
652
:
名無し募集中。。。
:2017/05/12(金) 22:59:28
おいおい…『拳』本格的に活躍する前に卒業だなんて
こぶしファクトリー 藤井梨央に関するお知らせ
http://www.helloproject.com/news/7016/
653
:
◆wnfFWrhuHc
:2017/05/16(火) 00:12:20
長らくお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。
とりあえずは復帰という形をとれそうです……
また失踪するかもしれませんが第三部完走までは必ず戻ってきます。
>>650
ご想像にお任せします、と言いたいですが書いちゃってますねw
>>652
工藤、藤井の卒業発表は衝撃的でした。
どちらか片方は三部で大活躍する予定で話を作っているので
今更変えることはできませんね。
654
:
名無し募集中。。。
:2017/05/16(火) 01:02:37
>>653
お帰りなさい!ほんとーーーーに!!お待ちしていましたw
やっぱり無意識に書いちゃってたのねマーサー王の性別は取りあえず見なかったことにしておきますw
その二人も衝撃的だったけど帝国データバンク剣士か番長かはたまたファクトリーに人が追加される可能性も…CMで出すにしても肝心のあの人が離脱中だし…
何はともあれ続き楽しみに待ってますね
655
:
名無し募集中。。。
:2017/05/16(火) 01:05:48
>>654
CMはDJの方だから出来るね…素で勘違いしてたorz
656
:
◆wnfFWrhuHc
:2017/05/16(火) 08:53:41
(どうすりゃモモコのヤツを斬れるのかね……)
鉄壁ミヤビに阻まれることなくモモコに攻撃を当てる方法は無いものか、
オカールは普段あまり使わない頭脳をグルグル回して考えた。
目にも止まらぬフットワークでモモコの背後に回り込み、
ミヤビによる防御が間に合わぬうちに斬るのはどうか?
いや、あのモモコが死角対策を怠ってるとも思えない。
下手すれば返り討ち。甘い罠にかけられるところだろう。
では目には目を歯には歯を、の要領で自分も人質を取るのはどうか?
その辺で無用心に立っているカントリーの誰か(チサキが適任か)を捕まえて、ミヤビと人質交換……
(いや、やめよう、絶対に応じてくんないだろーし)
前に書いたが、モモコがアイリあるいはトモを壁とした場合もオカールは容赦なく斬るつもりでいた。
非情なワケではない。食卓の騎士同士の戦いにはそれだけの覚悟が必要なのだ。
例え模擬戦のような訓練だろうと実戦を想定した空気感の中で戦いに望まなくてはならない。
特にクマイチャンやナカサキはこれまでずっとずっとそのような姿勢で闘い続けていた。
オカールだってそうだし、モモコだってそうだろう。
例えオカールがカントリーの4人全員を人質にとったところでモモコは動揺せずに普段通り動くに違いない。
(あーもうめんどくせえ!結局、正面突破しかないじゃん!!)
オカールはジャマダハルを構え、怖い顔をしてキッと前を睨みつけた。
あれこれ策を講じるのをやめにしてゴリゴリのゴリ押しで現状を打破すると決めたのである。
しかし忘れてはならない。オカールには今のミヤビ相手にはモチベーションが上がらないという懸念要素が残っている。
この戦意喪失をなんとかしないと勝ち目なんか無いのだが、
オカールにはちゃんと自身を鼓舞する自己流の方法が用意されていた。
(本当に情けねぇよなぁ……倒すべき相手がすぐそこに居るのに立ち止まっちまうなんてよ……
何が食卓の騎士だってハナシだよ、本当に。
そんな俺は、こうでもしなきゃ分からないのかね!!)
オカールは刃を己の横っ腹に突きつけ、そのままザシュッと刺していった。
薄皮をちょっぴり切ったとかそういうレベルではない。
引き抜いたジャマダハルの刀身ほとんどが紅く染まっていたことから
相当深くまで入っていたことがよく分かる。
カントリー4名はその行為の異常さに恐れ慄いたが、
モモコだけはあいも変わらず普通の顔をしていた。
「ワオ、気つけのつもり?」
「追い込んだんだよ、俺自身をな!」
「ふーん、背水の陣ってヤツ。怖い怖い。」
657
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/16(火) 08:57:37
(トリップ忘れたので色々試します)
研修生3人の所属先はとても気になりますね。
現実の展開次第で3部に登場するかもです。
658
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/17(水) 12:58:19
オカールの腹からは血がドクドクと流れ出している。
このペースで流血し続ければものの数分で動けなくなってしまうことだろう。
こうしてオカールはやらねばならない状況を作り上げた。
もはや立ち止まっている暇は無い。
「秒殺でカタをつける!!」
モモコ目掛けてオカールは突進していった。
ウェイトがそこそこ増えたので、かつてのような高速移動は出来なくなったが
その代わり有り余るほどの貫禄と威圧感を持って走っている。
これをノーガードで受けてはひとたまりもないと感じたモモコは、ミヤビの腕と刀に括り付けられた糸を操作した。
鋭い斬撃によって、突っ込んでくるオカールを斬り捨ててやろうとしているのである。
その行為にはオカールもすぐに理解し、
両手のジャマダハルで降りかかる刃を受け止めていく。
「効かねえよっ!!」
オカールは腕に力を加えて、ミヤビの攻撃を強く跳ね返した。
いくら「ミヤビの身体」と「ミヤビの刀」からなる攻撃であろうと
そこに「ミヤビの心」が無ければその威力は何段階も落ちる。
ならば深手を負っている今のオカールでも十分対処可能だ。
「俺は今、モモコと戦ってるんだ……どいてくれよ!!」
意識無きミヤビに対して、オカールは強めの蹴りをぶつけようとした。
邪魔をしてくる障害物はなんであろうと跳ね除けようと思ったのだ。
しかし、ここで予想外のことが起きる。
それはオカールにとって予想外なだけでなく、カントリーの4名にとっても思っていないことだった。
「嘘でしょ!?」
「なんか、意外な展開だね……」
結論から言うとオカールの蹴りはミヤビに届かなかった。
気を失っているミヤビをかばい、攻撃を肩代わりする者が現れたのだ。
その者の行動の意味が、オカールには全く理解できなかった。
「は?……どういうことだ?……どうしてお前がミヤビちゃんを守ってるんだよ!?」
659
:
名無し募集中。。。
:2017/05/17(水) 13:22:45
>>657
おー!さっそく更新来てる!!ミヤビを守ったのは誰なんだろう?普通に考えれば某自称リーダーなんだろうけど…
きっと斜め上いって爆○王がカナトモそっちのけでミヤビを守る展開とみた!(違w
660
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/18(木) 13:07:00
オカールの蹴りを代わりに受けたのはモモコだった。
"モモコが仲間のミヤビを守った"と書けば別段おかしなことはないように思えるが、
前提として、彼女は気を失っているミヤビを盾のように扱ってきている。
だと言うのにそんなミヤビを今更かばいだしたので、
支離滅裂な行動をとっているようにしか見えないのだ。
そして、カントリーの面々も普段のモモコからは考えられない動きに戸惑いを見せている。
「モモち先輩……実は優しい人だったの?……いや、でも……」
チサキは過去のモモコが行って来た非人道的な仕打ちを思い出していた。
お菓子はカレンダー上で4のつく日にしか食べてはならないとか、
規則を破ったものにはセロリを強制的に食べさせるとか、
想像するだけで鳥肌が立つほどにおぞましい鬼畜の如き所業モモコは行って来たのだ。
今回もただの優しさなどではなく、何か裏があるに決まっている。
「でも、理由はどうあれミヤビ様をモモち先輩が守ったのは事実なんだよね……」
「マナカちゃん……」
カントリーらが混乱しているようだが、今この場で最も取り乱しているのは他でもないオカールだ。
相手の真意が見えぬまま、フリーズしてしまっている。
モモコはモモコで攻撃が全く聞いていないようなポーカーフェイスを維持しながら、
静止するオカールの隙を見ては、背後へとトコトコ歩いていった。
「ねぇオカール、ここまでの接近を許してよかったの?」
「……はっ!!」
モモコの持ち味は暗器による、あらゆる距離からの攻撃だが
だからと言って接近戦が苦手というわけではない。
モーニング帝国の訓練場でクマイチャンに大打撃を与えた時のように、
モモコには超至近距離でも実現可能な攻撃手段が備わっているのだ。
オカールが今更そのことに気付こうがもう遅い。
モモコは既に、オカールと背中合わせになるような立ち位置に陣取っている。
「モモアタック!!」
661
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/19(金) 13:04:58
モモコは他の食卓の騎士のような超パワーや超スピードを備えてはいない。
それでも長年戦士をやっているだけあって、
若手と比べたら十分化け物と呼べるくらいの身体能力は持ち合わせている。
そんな彼女の筋肉の中でも特に発達しているのが尻の筋肉だ。
そして更に、モモコの服の中には内部からの衝撃に反応して鋭い刃を外部に突き出す装置が仕込まれている。
これらが合わさった結果としてモモコのヒップアタック、通称モモアタックは激痛を伴う攻撃手段となっているのだ。
もしも仮に近隣諸国の戦士を集めた大運動会でも開催されるのであれば、
尻相撲の優勝者はモモコで確定と言って良いかもしれない。
「くあっっ……!!」
ノーガードでモモアタックを受けたオカールはその場に倒れこんでしまった。
流石に気を失うとまではいかなかったが、
鋭く重い衝撃をモロに受け止めた結果として、足腰の骨に異常をきたしてしまったのだ。
これではそう簡単には起き上がれない。
オカールの腹からは血が流れ続けているので一刻も早くケリをつけたいところだが、
こんな身体では「立ち上がれ乙女達」とはいかないのである。
涼しい顔でオカールをここまで痛めつけるモモコを見て、リサ・ロードリソースは頭の中であれこれ考えていた。
(やっぱりモモち先輩は強い。 ミヤビ様を庇ったのも、全てはモモアタックをオカール様に当てるため?……
いや、やっぱりまだ理解できない。
モモアタックを当てるだけなら他にも手段はあったはず。
なのにどうして、わざわざ敵の蹴りを受けるなんていうリスクの大きい方法を選択したの?……
これじゃあまるで、「私は身体を張ってでもミヤビを守りますよ」ってあからさまにアピールをしているみたい。
でも、そんなことを誰にアピールする必要があるの?
ベリーズのお仲間に?
オカール様に?
それとも……私たちに?)
662
:
名無し募集中。。。
:2017/05/19(金) 13:16:59
さすがハロプロ運動会尻相撲優勝者なだけはあるw
体はって後輩達に何かを伝えようとしているのか・・・
663
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/22(月) 12:42:21
「クソッタレが……ここで終わってたまるかよ……」
機動力を奪われたとしてもオカールは止まらない。
クマイチャンの起こした地割れによって足場がガタガタになっていると言うのに、
這ってでもモモコの元へと向かおうとしている。
こんなコンディションでモモコに勝てるのかどうかは疑問だが、
動くことすら諦めたら、その瞬間に勝率は0パーセントとなってしまう。
だからこそオカールは執念と根性を見せて、前進し続けたのである。
いざ、進め!Steady go!の精神を忘れなかったからか、
ここで強力な援軍が駆けつけてくれた。
「加勢、するよ。」
「なんだ……ナカサキかよ」
隣にナカサキが並んだことに気付いた時点で、オカールはわざとらしく溜息をついた。
「自分一人でもモモコに勝てたのに」と言いたげだが、
内心はとても心強く感じている。
「しゃあねぇな、一緒に戦いたいなら共闘してやってもいいけどよ。」
「ふふっ、お願い。」
「でもさ、あっちは放っておいていいのか?シミハムとクマイチャンに二人がかりりで来られたら……」
「団長は絶対に負けない、でしょ?」
「ハッ、違いないや。」
会話をしているうちに、ナカサキはオカールをおんぶしていた。
壊れたオカールの脚の代わりになろうとしているのである。
「うっ重……でも気にしないでね、下半身を確変させたらこのくらいなんともなくなるから!」
「あ、今ムカッときた」
絶体絶命のピンチだったが、前進を諦めなかった結果としてオカールは勝利の可能性を潰さずに済んだ。
今回のケースではそれで良かったのかもしれないが、
同時刻の異なる場所にいる集団は、いくら「前へ前へ」と思い続けていてもどうにもならなかったようだ。
「さーて、これで全部折り終わったかな?」
そこに立っているのはベリーズのチナミただ一人だけ
帝国剣士、番長、KASTら若手戦士らは一人残らず地に寝かされている。
チナミの刀狩りによって、なにもかもを折られてしまったのだ。
664
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/24(水) 12:28:25
書く時間を取れてないので
ひとまずオマケ更新にします。
オマケ更新
もしも近隣国の大運動会が本当に開催されたら
サユキ「たいへん!カリンが前の競技で怪我しちゃった!」
アーリー「えー!じゃあ国別対抗リレーはどうなるん!?」
トモ「ランナーが揃ってない以上棄権するしかないだろうな……悔しいけど」
ユカニャ「諦めるのはまだ早いわ!」
AST「「「!?」」」
ユカニャ「あのお方に代走を頼むよ……みんなついてきて!」
トモ「ま、まさか……」
この続きはDVDマガジンを見てください。
665
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/24(水) 12:32:43
この後はこうなります(DVDマガジンのネタバレ注意)
http://livedoor.blogimg.jp/cutesokuhou/imgs/c/e/cefee43a.jpg
666
:
名無し募集中。。。
:2017/05/24(水) 14:52:33
こっちの世界のマイミに頼むなんて…なんて命知らずなw
負けたりした日には地獄の特訓が…
667
:
名無し募集中。。。
:2017/05/25(木) 22:23:13
それぞれの戦い方や特徴的に
オカールをおぶるよりもナカサキ自身が攻めていった方がモモコに勝つ可能性はあると思うんだけど
その辺ナカサキはオカールをどう使うのか…
今後も目が離せないな
668
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/02(金) 08:36:05
チナミは物理的なものと精神的なものの、計2つを破壊していた。
そのうちの1つ目は「武器」だ。
武器職人の彼女にとっては、相手の得物を折ることなど赤子の手をひねるように容易く行うことが出来る。
そうしてサヤシの居合刀を、アユミンの太刀を、ハルの竹刀を、オダのブロードソードを、
サユキのヌンチャクを、カリンの釵を、アーリーのトンファーを真っ二つにしてみせたのである。
しかもそれらの自慢の武器を壊してみせたのが、つい先ほどにほんの短納期で作った「鉤爪」なのだから衝撃は大きい。
唯一、エリポンの打刀だけはその重厚さゆえか刀身を切断できていなかったが、
長い腕と暴力的なまでの身体能力差で強引に奪い取っては、刀をその辺に投げ捨てていた。
自分より力強かった戦士が簡単にあしらわれたため、アーリーが感じるショックは計り知れなかっただろう。
「そんな……エリポンさんまで……」
武器が壊されたりしたら大抵の戦士は、戦闘能力が半減する。
特に、剣術を扱うモーニング帝国剣士にとっては戦う術そのものを奪われてしまったに等しいだろう。
だが、KASTは違った。
彼女ら果実の国の戦闘集団は(今この場に居ないトモも含めて)戦うのに武器を必須としない。
「だったら!ウチがやったるわ!!!!」
恐怖からなる涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも、アーリーは勇気を振り絞ってチナミに飛びかかった。
そして今出せる全力のパワーで抱きしめるのだった。
アーリーが力でエリポンに遅れをとっていたのはもう昔の話。
220を越える実戦経験で鍛えられたアーリーの膂力は、過去の何倍にも強化されていたのだ。
「"Full Squeeeeeeeeeze"!!!!」
固い柱だろうと、鉄の機械兵だろうと、なんでも圧してしまうアーリーの必殺技が決まった。
そして、KASTの猛攻はこれで止まりはしない。
アーリーがチナミを抑えているうちに、
サユキは大空を飛翔し、カリンは大地をしっかりと踏みつけながら倒すべき敵に接近していたのだ。
サユキは強烈な蹴りを首にぶち当てて、
カリンは得意の高速行動でチナミの細い足を数十発もの突きで壊そうとした。
「二人とも今や!!」
「「たぁーーーー!!!」」
669
:
名無し募集中。。。
:2017/06/03(土) 20:45:28
やったか!?
670
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/06(火) 13:00:16
「痛ーーーーーーーーっ!!」
KAS(カリン・アーリー・サユキ)の猛攻を浴びたチナミは、たまらずに苦痛の叫びをあげていた。
これだけ苦しんでるのだから、この息もつかせぬ波状攻撃は有効だったのだろう。
これにはKASだけでなく帝国剣士らも手応えを感じている。
しかしそんな中で、ハル・チェ・ドゥーは険しい顔を続けていた。
「これじゃダメだ……さっきと一緒だ……」
ハルはアンジュの番長たちがチナミと戦う様をその目で見ていた。
さっきだって番長らの攻撃は効いたように見えたし、
チナミだって苦しみ悶えていた。
それでも、勝てなかったのだ。
今回もチナミは右手にとっておきを隠し持っている。
この一瞬のうちに、新たな武器を精製していたのである。
「あぁ危なかった、団長が三節棍を使ってなかったらどうなることだったか」
チナミの持つ武器は、二つのヌンチャクをドッキングさせたような「四節棍」だった。
多節棍の整備に手馴れていたチナミは、
アーリーにギューっと締め付けられた状態でもこの武器を作り上げてしまったのだ。
依然変わらずアーリーにホールドされたまま、手首のスナップを効かせるだけで連結ヌンチャクをヒョイと操っていく。
狙いは蹴りを決めた後に地面に着地せんとする、サユキの顔面だ。
四つも棍があるのだから、ちょっとやそっと離れていようが届くのである。
「そりゃ!」
「!!!」
最も破壊力のある棍の先端をぶつけられたサユキは、たまらずノビてしまった。
まさかこの状況からチナミからの反撃が来るとは考えにくかったし、
覚悟できていたとしても空中での防御はどうしても不十分になる。
ゆえにほぼノーガードで連結ヌンチャクによる手痛い打撃を受けることになったのだ。
「だ、大丈夫!?」
これに動揺したのはアーリーだ。
仲間がやられてもチナミを抱きしめ続ける任務遂行意識は立派だが、
そこに若干の緩みが生じてしまった。
そのちょっとの隙間なら、細身のチナミは抜けられる。
「やった!これで自由の身だーー!!」
「あっ!!」
焦ったアーリーがもう一度チナミを捕捉しようとしたが、
その時点で、敵は既に攻撃の構えをとっていた。
連結を解放し、元の二つのヌンチャクに戻して両方の手で持ったうえで、
まるでトンファーを扱うかのようにグルグルと回転させ始めたのである。
おさらいになるが、このヌンチャクはさっきまでカギ爪だったものをチナミの超絶技術力で加工したものだ。
ゆえに鉄製。
鉄の硬度に回転力が加わり、さらに長身かつ腕の長いチナミが高くから振り下ろしたのだから、
アーリーの両肩にかかる衝撃は弱いはずがなかった。
「うぐっ……」
肉をエグられたかのような痛みに耐え切れず、アーリーの脳は意識を遮断してしまう。
となればKASで残されたのはカリンのみ。
頼れる味方が次々と倒れゆくのは辛いが、ここは一人でやるしかない。
必殺技の超スピードで圧倒することだけをカリンは考えている。
「"早送りスタート"!……ああっっ!!」
必殺技を使おうとした瞬間、カリンの全身に激痛が走った。
戦闘時のカリンはアドレナリンの効果で痛みを感じにくいはずなのだが、
この痛みはそのガードすらもブチ破って襲って来る。
カリンの「早送りスタート」は肉体の限界を超えて行動の速度を一時的に加速させる必殺技。
しかし無理のある技ゆえに発動にはある程度のインターバルを必要とするのだ。
機械兵を倒す際に一度使ってしまったため、
いざここで「早送りスタート」を行おうとしても、身体が言うことを聞かないのである。
痛みに苦しむカリンを見て、チナミが共感する。
「分かる〜!私もいますっごく身体が痛いんだ! そこのアーリーって子にハグされてから腕の筋肉がブチブチ言ってて……
こんな時はさ、治療するに限るよね!」
そう言ってチナミはどこからともなく細かな針を数十個取り出した。
そして次の瞬間、信じられないような行動をとったのだ。
「仲良しの、頭がすっごく良いお医者さんに教わったんだけどさ、この針治療ってのが効くんだよ。」
「!!?」
チナミはなんと自身の両腕に細かな針を次々と刺していったのだ。
これは明らかな自傷行為。頭のネジがどこかに飛んでしまったのかと思ったが、
チナミはいたって真面目。
「うーん効く〜〜!! 元気百倍!これでまだまだ戦えるね。」
「えっ!?ど、どういうこと?……」
671
:
名無し募集中。。。
:2017/06/07(水) 06:53:20
あれ?針といえばちゃんさん…
672
:
名無し募集中。。。
:2017/06/07(水) 09:23:27
針治療…なるほど反撃のチャンスはまだあるわけだね
673
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/07(水) 13:01:34
医学の力が凄いからか、それともチナミが単純だからか、
チナミは筋繊維の損傷した腕をブンブンと振り回せるくらいには回復していた。
どうやら針で刺すという行為には確かに治療効果が有るらしい。
千切れた繊維が元どおりに復元されると言ったようなことは勿論無いが、
疲労や気怠さを取り除く分には効果的なのかもしれない。
(そう言えば……!)
針を顔面に刺すことで美容効果が見られることについてはカリンも知識として知っていた。
幼少時代に訓練に明け暮れていた時や、KASTの汚れ役担当だった時はそのような行為を試すことはなかったが、
ジュースを捨ててからのカリンは、「これからは女子力も鍛えなきゃ!」と考えを改めたため、
専門書を片手に自らの顔に針を刺したことも何度かあったと言う。
愛用している武器の名の由来もきっとここから来ているのだろう。
(私も針を身体に刺せば、元気いっぱいに動けるのかな?……
必殺技を使ったせいで傷んだこの身体を、また動かすことが出来ると言うの?……)
絶体絶命のピンチを打開するために、カリンはすぐにでも針治療を試みたいと思ったが、
今のカリンには知識も道具もなかった。
彼女が知るのは美容に関することだけ。訓練なしのぶっつけ本番で医療行為など出来るわけがない。
それに、針として代用し得る"釵"も先ほどチナミに折られてしまっている。
ゆえにカリンに出来ることは何も無かった。
なすすべも無く、元気百倍になったチナミの蹴りを腹で受け止めていく。
「それーーっ!!」
「うっ……」
いくらカリンが痛みを感じにくい体質でも、強烈な攻撃をまともに受ければ沈む。
折るつもりで叩きまくった脚で蹴り飛ばされてしまったのだから、
両者間の実力差は想像を大きく超えていたようだった。
「ふぅ、流石にこれでもう終わりかな?」
サユキ、アーリー、カリンを連続で倒したチナミはここらで一息つきたかった。
しかし、後輩の若き戦士は僅かな休息さえも与えてくれない。
少しでも休もうものなら、日光を送り込んで目を焼くつもりなのだ。
「うげっ!眩しい!!!」
674
:
名無し募集中。。。
:2017/06/08(木) 08:15:52
出たな帝国一の曲者が
675
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/08(木) 13:12:17
チナミの目に光を送り込んだのはオダ・プロジドリだ。
ブロードソードは折られてしまったが、その折られた刀身を持つことで、
鏡のように太陽光を反射させていた。
刃を直接握る形になるので手からの出血は回避できないが
KASの3名が果敢に挑んだ様を見て、オダ自身も何かしなくてはならないと強く思ったのである。
そして、そのように思ったのはオダだけでは無かった。
二人で示し合わせたかのように、アユミンが既に動き出していた。
(リカコちゃん、君の武器をちょっと利用させてもらうよ!!)
チナミの周囲には、リカコと戦う時に飛び散ったシャボン液が撒かれていた。
それを踏めば転倒する恐れがあるため、KASの3人は意識的に避けていたが、
「スベり」を味方につけるアユミならわざわざ回避する必要はない。
むしろ逆に勢いを付けて、フクダッシュをも超える高速スライディングを実現させているくらいだ。
スライディングキックが狙う先はカリンが散々痛めつけたチナミの細足。
オダに目を潰されたチナミがこの攻撃を避けられるはずもなく、
スネにまともに喰らって大転倒してしまう。
「イっ……!!!」
「やったぁ!決まったぁ!」
大打撃を与えることに成功したアユミンは無意識のうちにガッツポーズをしていた。
それだけの手応えを感じていたのだ。
しかし相手は食卓の騎士。決して油断してはならない。
だからこそアユミンとオダはすぐに次の攻撃の体勢をとっているし、
エリポン、サヤシ、ハルだってそこに続こうとしている。
アンジュの番長らとKASの3人の戦いが無駄では無かったことを証明するためにも
ここでビシッと気を引き締めないといけないのだ。
「もっと色々やりたかったけど、流石に潮時かぁ……そろそろ、ケリをつけようか」
「!」
チナミの呟きに、一同は嫌でもピリリとした。いや、むしろ焦燥感でジリリキテいる。
チナミの右手には例によっていつの間にか作られた武器が握られており、
その武器でこの戦いを終わらせようとしていることが分かる。
「剣……?」
「そうだよ。君たち5人をこの一本の剣で相手するから。」
剣術のプロを前にしてよく言ったものだが、
チナミには対等以上に相手できる確信があった。
剣技の面で言えば帝国剣士らに分があるのは確かだが、
エリポンは、サヤシは、アユミンは、ハルは、そしてオダはこの「技術」を知らないのだ。
「見せてあげる……だから、よーく見ててね。」
676
:
名無し募集中。。。
:2017/06/08(木) 20:17:29
『ピリリ』に『ジジリキテル』か!やっぱ上手いなぁw剣を得意とする帝国剣士にどんな"剣"を見せるのか…
677
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/09(金) 13:14:57
「身」を「断」つ「刀剣」。
その技術はそのように表現することが出来る。
現にチナミが剣を持ち、斬るべき対象を一瞥しただけで
帝国剣士たちは自身が一刀両断されるイメージを思い浮かべてしまった。
(こ、これはまるで……!)
サヤシはベリーズ戦士団のミヤビが発したオーラを連想した。
ミヤビのオーラは周囲のものを全て輪切りに切断し、普段見れない裏側まで見られたような気にさせてしまう、
超が付くほどの殺人的なオーラだった。
規模こそ違うが、チナミが構えることで感じた映像はそれにとても似ている。
それもそのはず。
ベリーズやキュート、そしてサユらが見せている可視化可能なオーラは
元を辿ればこの「技術」から来ているのだ。
「言っておくけど、これは私の必殺技なんかじゃないよ。
訓練次第で誰でも使える。ベリーズのみんなも、キュートだって使えるんだ。
でも……鍛錬を怠るとすぐに使えなくなっちゃう。」
人間の脳は無意識のうちに身体能力を抑制している。
人体への負担を抑えるため普段は10%程度しか使わないようになっているのだ。
そこを、キャパシティいっぱいの100%まで使えるようになれば便利だと思ったことはないだろうか?
歴戦の戦士たちもそれは思った。
でも、それでは留まらなかった。
キャパシティいっぱいに埋まったとして、そこから更に強くなるにはどうすれば良いのか?
100%では満足できず、110%、120%を目指したのである。
その解として、身体能力に加えて殺気を強化することに至った。
相手を斬るイメージを極限にまで高めれば、その強すぎる思いは他者へと伝播する。
そうすれば相手を萎縮させたり、行動を制限することが出来るので
相対的に己のキャパシティを越えた力を持つことが可能になるのである。
しかしチナミが言ったように、この技術は鍛錬を怠ることで使えなくなってしまう。
常に上昇志向を持たないと維持することは困難なのだ。
もっとも、遥かなる高みに届きつつあるベリーズやキュートは無条件で使えるし、
サユが現役復帰した時も容易に実現可能だろう。
「それじゃあ斬るね。イメージ出来たと思うけど、一撃で終わるから。」
チナミがスパッと剣を一振りするだけで、帝国剣士らは倒れてしまった。
殺人的オーラの基礎技術でも、これだけの圧を持っているのだ。
これぞ強者が強者であり続けるための技術、
「断身刀剣(たちみとうけん)」の真の威力なのである。
678
:
名無し募集中。。。
:2017/06/09(金) 23:37:37
カントリー解散って…マーサー王第二部始まってからのハロプロ変化が激しすぎる。。。
679
:
名無し募集中。。。
:2017/06/10(土) 04:29:31
まるで後輩たちに培った技術を見せてやっているかのようですなぁ
680
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/10(土) 15:24:35
帝国剣士のエリポン、サヤシ、カノン、アユミン、ハル、オダ
番長のカナナン、リナプー、メイ、リカコ
KASTのサユキ、カリン、アーリー
機械兵との戦いに疲労していたとは言え、たった1人に計13人の戦士が倒されてしまった。
要所要所で「勝てるかもしれない」と感じることも有ったが
結局はこれだけの実力差があったということだ。
「ほんとに疲れた。ほんとに。 早くみんなのところに戻ろっと」
一仕事終えたチナミはベリーズとキュートが交戦している辺りに移動しようとしたが、
ここで、忘れてはならない人物の声が聞こえてくる
「マーチャンね……全部覚えたよ……」
マーチャン・エコーチームはこれまでの戦いをすべて見ていた。
途中、頭が割れそうなくらいの頭痛に襲われることも何度かあったが、
それでもずっとずっと見続けていたのだ。
涙と鼻血が止まらず流れ続けているし、目も霞む。吐き気だってひどいもんだ。
脚にいたっては立っているのが不思議なくらいにガクガクと震えているが、
マーチャンはこの重労働を最後までやり遂げたのだ。
「全部って、どこからどこまでのことを言ってるの?」
「全部。」
「はは、そっか」
噂に聞いていた以上に興味深い子だなと感じたチナミは、
ニッコリとした顔をしながらマーチャンに近づいていった。
まだまだ面白いことが出来そうだと考えたのだろう。
しかし、それはすぐに叶わなくなる。
脳と体の限界を迎えたマーチャンは、糸の切れた操り人形のように倒れてしまったのだ。
「あ……やっぱもう無理か」
当然か、とチナミは考えた。
むしろ極限状態で最後まで意識を保ち続けたことの方を誉めてあげるべきだろう。
「これで本当の本当におしまいかな。
じゃあみんな、また明日ね。」
チナミはベリーズらの待っている方へと歩いて行った。
その際の足取りは、先ほどのマーチャン以上にガクガクと震えているようだった。
681
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/10(土) 15:27:43
カントリーガールズの件についてはまだ頭が追い付いていません……
メンバーもファンも混乱しているように見えるので、
実際にどうなるのか詳細が決まってから様子を見たいですね。
682
:
名無し募集中。。。
:2017/06/11(日) 11:23:59
針治療を覚えたマーチャンがみんなを復活させて大逆転!とはならないか…
てか「明日ね」って…キューティーサーキット以上の地獄が待ってるのかw
カントリーの件だけじゃなくて20周年に向けてハロプロ全体が大きく変わるらしいし見守るしかないね。。。
683
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/11(日) 14:39:46
チナミが一仕事終えた一方で、
キュート(+トモ)とベリーズの戦いも最終局面を迎えつつあった。
ここではマイミVSシミハム・クマイチャンと、ナカサキ・オカールVSモモコの2戦が同時に進行されており、
頭数が不利なマイミは苦戦を強いられていた。
(まただ!また忘れてしまった……)
背に襲い掛かるクマイチャンの刃をギリギリのところで避けながら、マイミは心の中で嘆いた。
1対2の戦いだということは十分理解しているはずなのに、
時にはシミハムの存在を、そして時にはクマイチャンの存在を忘却してしまっているのだ。
これはベリーズが事件を起こした日にシミハム・ミヤビの2人を相手にした時と同様の現象。
つまりはシミハムが自身、あるいは相方の存在感を完全に消滅させることで
マイミに1対1で戦っていると錯覚させているのである。
(集中しないとシミハムとは戦えない、しかし、集中しすぎるとクマイチャンを忘れる……
相変わらず戦い難い相手だ……)
しかし、シミハムの放つ「無」はその程度では済まない。
意識をもっと強めれば、こんなことだって出来るのだ。
「あれ?……私はいったい誰と戦っていたんだ?……」
シミハムは自分自身とクマイチャンの両方の存在感を消し去ってしまった。
こうなってしまえばマイミは直前までに誰と、何人と戦っていたのかすら忘れてしまう。
「ハッ!ナカサキとオカールがモモコと戦っている!助太刀しなくては!!」
あろうことかマイミは倒すべき敵を誤認して、
存在しないことになっているシミハムとクマイチャンに背を向けて走り出してしまった。
凶悪な三節棍と長刀がすぐに襲い掛かかってくるとも知らずに……
そのマイミが向かおうとしている方では、
ナカサキがオカールを背負った状態でモモコと戦おうとしていた。
脚を壊されたオカールが戦うには確かにこの方法しか無いのだろうが
決しては軽くはない重量を抱えながら戦うため、ナカサキのパフォーマンスが低下することが予想される。
「ねぇナカサキ、その状態で戦えるの?確かオカールの体重は……」
「おい!言うなよ!!」
「安心して。私の確変で下半身を強化したら最大60kgは耐えられるから」
「お前本当に怒るからな」
684
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/12(月) 12:57:41
(重石込みでも普段通り動けることは分かった。
でも、この辺りは私の支配下なのよ?それを分かってる?)
モモコは周囲に見えない糸をビッシリと張り巡らせている。
この糸は単純な足止めとしても有効だし、
ちょいと引っ張るだけで、糸の括り付けられた石を飛ばすことだって出来る。
そして極め付けは優秀なボディーガードであるミヤビ(気絶)の存在だ。
オカールに突破出来なかったこの障害をどのように乗り越えるのかは見ものである。
(ん?……あれ?……ナカサキ、なんかおかしくない?)
さっきまでは余裕しゃくしゃくなモモコだったが、
相手側に起きた異変に気づいてからは余裕が少し無くなってくる。
ポーカーフェイスゆえにそれを外部に知らせてなどはいないが、
頭の中は、現状を把握するためのモノローグでいっぱいだった。
(えっと、ナカサキは下半身の確変って言ってたよね?
実際にナカサキの太ももの筋肉はいつもより太くなっている。それは間違いない。
じゃあ、腕まで太くなっているのはなに?……
あの子、私に嘘をついていたってこと?
いや……私だけじゃない、オカールにも嘘をついているんだ。)
モモコが結論を出すのが早いか、
ナカサキはあの重量のオカールを片手で持ち上げていた。
これには味方のオカールも黙っていられない。
「お、おい、お前何してんだ?……脚になってくれるんじゃなかったのかよ?」
「ごめんねオカール。モモコに勝つには多分この方法しか無いんだ。
挟み撃ちって古典的だけどやっぱり有効だよね。」
「え?意味がわからない、だから俺はもう歩けないんだってば……」
「前後や、左右からの挟み撃ちだったら確かに無理。でもね……」
「ああそうか……そういうことか……本気?」
「本気だよっ!!上から下からの挟み撃ちを見せてあげよう!!」
「うおおおおおい!!や、やめろ!!」
そう言ってナカサキは確変後の筋力でオカールを遥か上空へと投げ飛ばした。
足を壊されたオカールでも、目標に向かって落下することなら出来る。
モモコはそれをなんとか防ぎたいところだが、
挟み撃ちと言うのだからナカサキは下方向からの攻撃を仕掛けてくるのだろう。
両方を完全に防ぐのは流石のモモコでも厳しい。
(まったく馬鹿な作戦を…でも、それで本当に倒せる気でいるの?
どうやって私のところまで接近してくるのか、見せてもらおうじゃない。)
685
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/12(月) 22:31:05
ナカサキを寄せ付けずにオカールを対処すればミッションクリアー。
モモコはそのように考えているし、それを実現する自信だって持ち合わせていたが
今のナカサキの状態を唯一の懸念材料だとみなしていた。
(あの姿のナカサキが一番厄介なのよね……
派生でもなんでもない、ただの"確変"がどれだけ恐ろしいか。)
モモコの言う通り、ナカサキは必殺技「確変」を使用していた。
ただし、それは泳力特化の「派生・海岸清掃」や白兵戦に優れた「派生・ガーディアン」、
脚力強化する「派生・秩父鉄道」などではない。
ただの「確変」をしているのである。
それは即ち、全身のパフォーマンスをバランスよく向上させているとうこと。
その分、体を巡る血液量はべらぼうに増えて疲弊しやすくなってしまうが
どんな状況にも対処できるという意味ではこの形態が原点にして頂点なのである。
(ナカサキは確変の力で私の罠を掻いくぐるつもりに違いない。
だったら、その行動に合わせてカウンターを決めてあげる。
さぁ、どう出る!?)
モモコはナカサキの一挙手一投足を見逃すまいと、相手を凝視した。
1秒経過……ナカサキは動かない
2秒経過……ナカサキは動かない
3秒経過……ナカサキは
(って動かんのかーーーい!!)
モモコは心の中でツッコミを入れていた。
オカールをどれだけ高くぶん投げたのかは知らないが、すぐには落ちてくるはず。
ならば挟み撃ちをするためにはナカサキは急いでモモコに接近せねばならない。
なのに彼女は一歩も移動しようとしないのだ。
(もう!じゃあナカサキは無視!オカールをなんとかしなきゃ!)
シビレを切らしたモモコが顔を上にあげようとしたその瞬間、
さっきまで静止していたナカサキが途端に走り出した。
これにはモモコも面食らう。
(はぁ!?今動くの?……)
意識が上に向いた瞬間を突かれたものだから、モモコは慌てざるを得なかった。
急いで対応しようと一歩前に出るが、実はそれすらも過ち。
ナカサキは持ち前のキレで、すぐさま前進を取りやめたのだ。
急停止するナカサキに対して、モモコは急に止まれない。
前に出ようとした時の勢いのままスッ転んでしまう。
(しまった!……やられた!!)
ここでモモコはナカサキの強みが確変だけでなく、ダンサブルな動きも含まれていたことを思い出した。
今、ナカサキが見せたように華麗な足技で相手を転倒させる「アンクルブレイカー」は、
数年前に狂犬の如き強敵にも浴びせた高等技術なのである。
しかし、モモコだってただで転んだりはしない。
この失敗をバネにして、自身の立ち位置を優位に持って行こうとしている。
(前に転ばされた? 分かった、転ばされてあげる。
その代わり、もっともっと転んでやるんだから!!)
686
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/12(月) 22:35:23
モモコはでんぐり返しをするように、グルングルンと回転しだした。
その目的は今いるポジションから離れることにある。
ナカサキは先ほど、オカールを上空へと強くぶん投げていたが、
その目的地はさっきまでモモコが立っていた位置に違いないし、
実際にナカサキはそのように投げていた。
ならば大袈裟に前方へと転がりまくれば落ちゆくオカールから逃れることが出来るのだ。
そうなれば着地もままならないオカールは勝手に潰れて、
モモコvsナカサキの一騎討ちの状況に持ってくことが出来るだろう。
ところが、その策は上手くいかなかった。
それにいち早く気づいたのは、これから起こりうる悲劇を身を以て経験したことのあるチサキ・ココロコ・レッドミミーだった。
「モモち先輩だめです!も、戻って!!」
「え!?…………ぐえっ!!!!」
突然重い物体が落下してきたので、モモコは心身ともに強い衝撃を受けた。
もはや何が落ちてきたのかを疑うまでもない。
オカールだ、オカールがモモコの元に落下してきたのである。
ここでモモコはハッとした。
そう、この状況はゲートブリッジでアーリーがオカールを投げた時の再現なのだ。
(オカールが重すぎて……落下予測地点より手前で落ちたってこと!?)
あの時、オカールは船に乗り込むつもりで飛ばされたが、
それより手前の海に落ちたところを、海にいるチサキの頭を踏んづけることで生還していた。
今回も同じ。
ナカサキはモモコに当てるつもりで投げたのだが、
重さのあまり、モモコが前進したところに落下していた。
お笑いみたいな結末だが、(ナイショ)Kgの重りを予想外かつマトモに受け止めるのはかなりのダメージだ。
身体能力で他の食卓の騎士に劣るモモコは、もう立てなかった。
「くっ……まさかナカサキがここまで計算していたなんて……」
「(えっ!?)…そ、そうよ!ぜんぶ計算どーり計算どーり!」
「一杯喰わされたわ……まるで女優のような演技力ね。」
最後のくだりは置いといても、あのモモコを騙そうとする姿勢をとったナカサキはたしかに女優の資質があるのかもしれない。
それならば、不恰好に落下しておかしな形でモモコへのトドメを差し、
決して笑ってはいけない状況にもかかわらずカントリーの面々を吹き出しそうにさせてるオカールは、
世が世ならばお笑いの世界でやっていけただろう。
ファンであるトモの心を震わせ、
素晴らしい感動と共感を生んだアイリのスキルは、
歌手として生きていくのにピッタリと言ったところだろうか。
今は戦いの場に身を置いていないあの戦士も、
決して歩き続けることを諦めてはいない。
きっと視野を大きく広げて舞い戻ってくるに違いない。
そして、キュートで忘れてはならないのは団長マイミだ。
彼女の資質はナカサキ同様に女優だと言える。
だが、種類がちょっとだけ違う。
女優は女優でも、殺陣を得意とするアクション女優なのだ。
その才能の全てを、今この瞬間から惜しみなく見せつける。
687
:
名無し募集中。。。
:2017/06/13(火) 01:46:10
℃-uteの解散に合わせてそれぞれの進路うまく取り込んでるなぁ…そして今ここにはいない"彼女"はこのまま出ないで終わるなんて事は。。。
688
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/13(火) 18:16:54
「あれっ!?……なんだ、私たちは勝利していたのか?」
モモコとミヤビが倒れているのを目撃したマイミは、
倒すべき敵を全て倒したのだと判断してしまった。
もちろん、それは事実ではない。
存在感の消え去ったシミハムとクマイチャンがすぐそこまで迫ってきているのだ。
(後ろガラ空きだよ……このチャンス、絶対に逃さない。)
クマイチャンは刃渡り300センチという非現実的なオバケ長刀をブンと振り下ろし、
マイミの首をはねようとした。
好敵手と何千回も死闘を繰り広げてきた経験からか
相手を殺める行為であったとしても、クマイチャンが躊躇をすることはなかった。
恐ろしい殺し屋の目をしながら刃をマイミの首へとぶつけていき、
一瞬にして硬い骨まで到達させる。
刀を握る手の感触からそれを感じ取ったクマイチャンは、あとちょびっとだけ力を入れれば完全に切断できるはずだと考えた。
ところが、斬撃はそこで強制的に止められてしまう。
(!?……刀が動かない!)
食卓の騎士は全員が全員バケモノのようだが、
その中でもマイミは群を抜いてバケモノじみていた。
首の筋肉に力を入れることでクマイチャンの刀をギュウっと挟んでしまったことからもそれが分かるだろう。
「思い出したぞ……お前が残っていたな。クマイチャン。」
「くっ……」
斬撃をもらう前までは、マイミは確かにクマイチャンの存在を認識できていなかった。
だが、そんな状態でも痛みは等しく襲ってくる。
マイミは首の痛みを感じた瞬間に、条件反射的に刃を首で掴み取ったという訳だ。
このような芸当は特別な訓練を受けた者だとしても不可能で有るため、
決して真似しようなどとは考えないでほしい。
「なるほど……この状態だとよく分かるな。」
「……何が?」
「クマイチャンが本当に殺す気で斬りかかってきたということが、だよ。
どういうことかは分からないが、武器から伝わる殺気だけは消えないみたいだな。」
「!!!」
シミハムの「無」のオーラは存在感だけでなく、殺気までも完全に消し去るはず。
だからマイミは大雨を起こせないし、クマイチャンだって重圧で相手を押しつぶすことも出来ないのだが、
マイミは確かに殺気を感じると口にしている。
それがハッタリではないことは、刀を握るクマイチャンがよく知っていた。
(私の刀から、マイミの嵐のような殺気が伝わってくる!!
そうか、マイミも本気で私を殺す気なんだ……)
チナミが帝国剣士に存在を教えた「断身刀剣(たちみとうけん)」は殺気を相手に伝播することで、強さのキャパシティを100%以上にする技術だ。
その殺気やそれをさらに発展させたオーラは、通常は空気を伝わるものだが、
相手を直接傷つける「武器」にはより濃厚な殺意が色濃く残っていた。
シミハムは空気中の殺気やオーラを消すことは出来ても
直接武器を伝わる殺意までに影響を及ぼすことは出来なかったという訳だ。
「だったら、こうすれば辿れる。」
マイミは手を伸ばして、クマイチャンの刀をガッシリと掴んだ。
手が切れて流血するが、そんなのは大した問題ではない。
クマイチャンを見失いために刃を握り続けようとしている。
689
:
名無し募集中。。。
:2017/06/14(水) 12:37:10
『食卓の騎士』勢揃い(一人不在)
色々な思いがこみ上げてきて久しぶりにマーサー王第一部読み返えしたくなるな…
http://stat.ameba.jp/user_images/20170613/22/c-ute-official/3e/7e/j/o0480040613960110020.jpg
http://scontent-nrt1-1.cdninstagram.com/t51.2885-15/e35/19052068_629144050612054_7941626613156806656_n.jpg
690
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/14(水) 16:11:40
マイミはまるで登り棒を昇っていくかのように、
両手で刀を掴みながらクマイチャンの方へと接近していった。
刃を躊躇なく握るだけでも恐ろしいのに、しかも速い速度で迫ってくるのだから
もはや恐怖というほか無いだろう。
しかし、追われる側に立つクマイチャンの顔は依然変わらず凛々しいままだった。
「叩き落としてあげる!」
左手を刀から放したかと思えば、クマイチャンはマイミの顔面へと掌をぶつけていった。
ただの掌底でもクマイチャンのそれはダテじゃない。
人類ではまず到達し得ない高さからなる位置エネルギーの全てが破壊力に変換されたので
マイミは大砲でも喰らったかのような思いだった。
そしてクマイチャンは長い手をさらに振り切ることによって、
マイミの後頭部を硬い地面に叩きつけることにも成功する。
「どうだぁっ!!」
もっとも、クマイチャンもこの程度でマイミが気絶するとは思っていない。
ここではマイミが刀を手放してくれることだけを期待していたのだ。
これだけのインパクトなのだから普通は刀を持つどころでは無いはずなのだが、
それでもマイミは、強く握っていた。
「クマイチャン良いのか?」
「な、なにが!?」
「片手を放しても良かったのか?」
「!」
クマイチャンが気づいた時にはもう遅かった。
これまでクマイチャンは両手で刀をしっかり握ることで、マイミが刃の側から加える力にも耐えていたのだが、
一時的に掌底を放ったせいで、今は片手でしか握っていない。
それでは、抑えきれなくなったマイミの力はどこに作用するのか?
答えは刀そのものだ。
鉄扉をも捻り切るマイミの怪力に耐えきれず、クマイチャンの長刀が真っ二つに折れてしまう。
「ああっ!!」
チナミも先ほど若手戦士らの武器を壊していたが、
エリポンの打刀「一瞬」だけは破壊することが出来ていなかった。
その打刀はエリポンがかつての剣士団長から受け継いだものであり、
戦士の強さ同様に刀の質も高かったため、他の武器のように壊せなかったのである。
クマイチャンの長刀だってそれに匹敵するくらいに優良な品だし、
チナミによるメンテナンスも行き届いていたはずだった。
だというのに壊されたのだから、マイミの力は恐ろしい。
しかし、(かなりショックではあるが)クマイチャンは刀を折られたとしても、心までは折れていないようだった。
「本当に凄い力だ……でも、これで刀を放したね。」
691
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/14(水) 16:12:45
>>689
おお、噂には聞いてましたが本当に舞波がいますね。
それだけに一人いないのが惜しい……
692
:
名無し募集中。。。
:2017/06/14(水) 18:38:12
>>689
ちなみに今の舞波…現役に混じっても全然違和感ない
つんく♂さんの見る目流石だわ
http://i.imgur.com/mzcf6hG.jpg
693
:
名無し募集中。。。
:2017/06/14(水) 19:02:48
>>689
ちなみに今の舞波…現役に混じっても全然違和感ない
つんく♂さんの見る目流石だわ
http://i.imgur.com/mzcf6hG.jpg
694
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/15(木) 13:03:29
刀を折ったということは、即ち、握るべき武器が無くなったということ。
これまでマイミは刃を伝う殺気を頼りにクマイチャンの存在を捉えてきたので、
結果的に自ら道しるべを手放す形となってしまった。
このまま敵の存在を見失い、ジリ貧になるかと思われたが……
「クマイチャンの殺気がこもってるのは、なにも刀だけじゃないだろう?」
「へ?」
敵の掌が自身の顔から離れるよりも速く、
マイミはクマイチャンの腕に対して右手と左手の計10本の指を突き刺していった。
どの指も5cmは肉に食い込んでおり、クマイチャンが絶句するには十分なほどの激痛を与えていた。
「〜〜〜っ!!!」
「思った通りだ。 刀を握るよりも、クマイチャンの肉体に触れる方が強い殺気を感じられる。」
マイミの狙いは殺気そのものの発信源であるクマイチャン自身に触れ続けることにあった。
この要領で攻撃していけば近いうちに勝利することが出来るだろう。
しかし、それをクマイチャンが黙って見ているはずもなかった。
「だったら!そう来るんだったら!こうしてやる!!!」
クマイチャンは大きく立ち上がり、マイミの指が食い込んだ腕を天高くへと上げていった。
腕の深くまで入っているため指は簡単には抜けず、マイミの身体ごと天に持ち上げられてしまう。
この次にクマイチャンがとる行動は想像に難くないだろう。
「まさか……この高さから私を地面に叩きつけるつもりか!?」
「そうだよ!それが嫌なら指を抜けばいいんだ!」
「絶対に抜くものか……ここで抜けるはずがない。」
「じゃあ落としてやるっ!!今すぐにだっ!!」
天高いところにあった腕が、一気に地面へと振り降ろされた。
自称176cmの落下距離は数字以上に大きく感じられ、
マイミが地面にぶつかる衝撃も、それに比例して、十分に大きかった。
「ぐあぁっ!!」
「まだ放さないか…じゃあもう一発!!」
クマイチャンは先ほどの再現をするために、また腕を高い上げていく。
この地獄のフリーフォールはマイミとクマイチャンのどちらかが音をあげるまで続くのだろう。
マイミは、そう思っていた。
だが、クマイチャンはそう思っていない。
(シミハム!!もうそろそろ良いんじゃない!?)
クマイチャンは、そう離れていない位置に立つシミハムにアイコンタクトを送った。
連続フリーフォールでは異常な生命力のマイミを倒しきれないと思っていたので
ベリーズ戦士団の団長であるシミハムに協力を仰いだと言うわけだ。
シミハムはマイミとクマイチャンの戦いから少しばかり離れていたが
それは決してさぼり等ではない。
ただひたすらに力を蓄えていたのだ。
あのマイミでも、ひとたび喰らえば立てなくなるほどの強烈な攻撃を実行するために、
時間をかけて準備していたのである。
695
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/15(木) 13:04:21
もう何年も経つのに舞波は全然変わってませんねw
安心しました。
696
:
名無し募集中。。。
:2017/06/16(金) 10:17:02
こっちのマイハは出てくるのかな?℃-ute解散・キッズ集合で当初の予定と変更になる可能性も?
697
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/17(土) 12:20:51
ただのジャブよりは大きく振りかぶって繰り出すパンチの方が高威力であるように、
強い攻撃というものはどうしても予備動作が大きくなる。
ヒットさえすればその後の展開を優位に運ぶことが可能だが、
モーションが読みやすいせいで大抵は避けられてしまうだろう。
そのため多くの戦士は小さく確実に当てていくか、あるいはフェイントを織り交ぜるのだが、
自分の存在を消し去ることで、予備動作すらも相手に感じさせないシミハムにはそんなことを気にする必要が無かった。
シミハムの必殺技「きよみず、"派生・鶴の構え"」からの、180°(ワンエイティー)×180°(ワンエイティー)
彼女はこれまでの時間、
ダンス技術のターンを連続して自ら回転し続けることと、
手に持つ三節棍を勢い付けてブンブンと回し続けることの二点に専念していた。
マイミに気づかれることなく己と武器の回転を延々と繰り返すことで、
棍の先端にかかる遠心力を膨大なものにしていったのだ。
後は、クマイチャンがマイミを天から地に叩きつけるタイミングで、
カウンターを喰らわすように、力が最大限までに蓄積された棍を下方向からぶつけてやれば、
流石の耐久力を誇るマイミであろうと壊すことが出来るだろう。
(シミハム!今からマイミを持ち上げるから、そこに合わせてねっ!!)
はたから見ればもうボロ雑巾のようになっているマイミを、クマイチャンはまたも持ちあげた。
腕に食い込む指の力が相変わらず強いので、やはりトドメを刺さねばならないと判断したのだろう。
最高到達点に達したところで恐怖のフリーフォールが再開されると思ったが、
ここでとんだ邪魔が入ってしまう。
「団長を放せっ!!!」
この戦いに割って入ったのはキュート戦士団の一人、ナカサキだ。
モモコ戦で見せた確変状態を維持したまま、
両手に持った2本の曲刀でクマイチャンの横っ腹を滅多斬りにする。
「ぐっ!ナ、ナカサキ!!」
不意打ちを喰らったクマイチャンは思わず片膝を地につけてしまった。
「私がマイミを放さないんじゃなくて、マイミが放してくれないんだぞ!」と訂正したいところだが、
クマイチャンにはそれよりも気になることが有った。
「ナカサキ……どうして私がいる事に気付けたの?」
シミハムは自分とクマイチャンの存在感を消していた。
それを認識することが出来るのは味方であるベリーズ同士と、
クマイチャンの腕に指を刺したマイミだけのはず。
部外者のナカサキには感知できないようにシミハムは調整していたのだが、
今の相方がクマイチャンだというところに誤算があった。
「えっ?だってそりゃ分かるでしょ。」
「どういうこと!?」
「団長があんな高いところまで上がったり下がったりしてるんだもん。
クマイチャン以外の誰がそんなことを出来るっていうの?」
「……!!!」
698
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/17(土) 12:23:07
マイハ再登場は私にも謎ですが
当初の予定と変わるということは、大いにありそうですね。
699
:
名無し募集中。。。
:2017/06/17(土) 19:26:16
シミハムもクマイチャンもうっかりしすぎw
タッグマッチになるのかそれとも分かれるのか…今後も楽しみ
作者さんいつも乙です
700
:
名無し募集中。。。
:2017/06/17(土) 20:26:19
180°って何かと思ったら「よろせん」の焼き肉だねw
流石クマイチャンのライバルナカサキ!と思ったのにまさかの身長でバレたとはw
701
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/20(火) 13:21:02
まずい。
シミハムはそう感じていた。
クマイチャンを助けるべくナカサキを叩く案もあるが、
そのためにはせっかく棍に蓄えた力を解放しなくてはならないので
マイミを倒すにはまた一から力を貯める必要がある。
手負いのクマイチャンがこれからそれだけの時間を稼げるかは微妙なところだ。
ではナカサキを無視して、今まで蓄えた力をいきなりマイミにぶつけてしまうのはどうか?
いや、それもダメだ。
マイミの生命力を考えると、クマイチャンのフリーフォールにシミハムの攻撃を合わせて、やっと倒せると言ったところだろう。
クマイチャンがナカサキにちょっかいを出されている現状では
当初の予定通りにマイミを地面に叩きつけることが難しいので、
失敗に終わる可能性が高いのだ。
いろんな可能性を考慮してモタついているうちに、マイミが次の行動を取り始めてしまった。
「隙有り!!」
マイミは敵の腕を鉄棒に見立てて懸垂をしたかと思えば、
その上昇する勢いを利用して金属製の右脚でクマイチャンの顎を蹴っ飛ばしたのだ。
何回も地に落とされたとは思えぬ鋭い蹴りにクマイチャンの意識が飛びそうになったが、
長い脚で地面をしっかりと踏み締めることで、なんとか踏みとどまる。
しかし、それも長くは続かなかった。
ナカサキによる斬撃の雨あられが襲って来たのである。
「そりゃーーーーっ!!」
「うぐっ……く、苦しい……」
クマイチャンとナカサキの実力が拮抗しているとは言え、
武器の長刀を失い、しかもマイミに腕を掴まれたままの状態では満足に戦うことは出来なかった。
ほんの短い時間でクマイチャンは踏みとどまれなくなり、
力無く地面にぶっ倒れてしまった。
ミヤビ、モモコに続いてクマイチャンまでも倒れたのだから、ベリーズ側にとっては大打撃。
普通に考えればこのまま押し切られてしまうのだろうが、
シミハムはこの状況に勝機を見出していた。
クマイチャンが倒れるということは、マイミも高い位置から落下するということ。
そこに対して力がMAXにまで溜まった棍をぶつけてやれば、
一番の強敵であるマイミを撃破することが出来る。
そうすればこの場に残るのはほぼ無傷のシミハムと、確変を長時間使いすぎて身体に負担をかけているナカサキのみ。
どちらが有利なのかは火を見るよりも明らかだろう。
702
:
名無し募集中。。。
:2017/06/21(水) 00:09:54
ワクワク
703
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/21(水) 21:35:22
絶対に避けられない攻撃であり
それでいて当たれば必ず勝利できる攻撃をシミハムは解き放とうとした……のだが、
このタイミングでとある人物がやって来たので動作を瞬時に取り止めた。
「ただいまーー!あーキツかったーーー!」
戻って来たのは先ほどまで若手戦士らの相手をしていたチナミだった。
全身ボロボロ、足取りはフラフラ、いかにも疲労困憊といった様子だ。
「この仕事さぁ、ほんっとに割に合わないよ……あれ?モモコが倒れてる。 やられちゃったの?」
「あのねチナミ、状況を見なさいよ。」
「うわっ、みんな倒れまくってる。」
ミヤビ、クマイチャン、アイリ、オカール、トモの5名が意識を失っており
モモコも喋れはするものの立てないでいる。
実力が拮抗した勢力のぶつかり合いなのだから、こうなるのも無理ないだろう。
「うーん、戦う気力があるのは2人ってとこかー」
「2人って、マイミとナカサキのこと?チナミはどうなの?」
「いやいやいやいや、もう身体が限界だよ!当分は肉弾戦は無理だからね!」
チナミとモモコはベリーズの一員なのでシミハムの姿が薄ぼんやりと見えているのだが、
自軍の団長を「戦う気力がある」とはみなさなかったようだ。
それもそのはず。シミハムは「勝つための攻撃」から、「行動を制限するための攻撃」に切り替えていたのだ。
その攻撃によって、マイミの脚が瞬時に破壊される。
義足部分ではなく生身の腿に三節棍をぶつけたのである。
「なにっ!!?」
シミハムは蓄積された力の全てを、マイミの機動力を潰すことに費やした。
この程度ではマイミはダウンしないのは折り込み済み。
事情が変わったので、今は移動手段を制限することを最優先に行動しているのである。
そしてマイミの脚を破壊した勢いのまま、
ナカサキの二の腕に鋭い蹴りを喰らわせることにも成功する。
その結果としてナカサキは腕から噴水のように血を吹き出してしまった。
血の巡りが良すぎるあまり、ひとたび傷つけば即大量出血になるのが確変の弱点。
ナカサキは数秒も経たずにフラつきだす。
「ううっ……クラクラする……」
「大丈夫かナカサキ!……くそっ!またしてもシミハムにやられたのか!」
もう存在感を消す必要がないと判断したシミハムは、己の姿をマイミの前に現した。
容易に動けぬマイミとナカサキに対して、ほとんど無傷のシミハムはまだまだ元気いっぱい。
圧倒的優位なままマイミ達にトドメを刺すかと思われたが、
ここでモモコが意外な発言を口にする。
「さて、それじゃあ逃げよっか。シミハム。」
モモコの提案に、ベリーズの団長シミハムはコクリと頷く。
704
:
名無し募集中。。。
:2017/06/21(水) 23:03:17
やっぱり退却するのか…ベリーズの真の目的はやはり・・・
ところで今週中か来週…もしくはハロコン初日で判明するカントリー移籍組はどういう扱いになるんだろ?娘。に入ったら帝国剣士になるんだろうか?
705
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/22(木) 22:29:57
「なんだと?……」
マイミには、ベリーズ達が「逃亡」を選んだことが理解出来なかった。
「卑怯だぞ」だとか、「最後まで戦え」だとか言いたいのではなく、
今の戦況はどう考えてもベリーズ優勢なはずなので
それを放っぽり出して逃げる理由が全くもって分からないのだ。
そうして混乱しているところに、モモコが余計に混乱しそうなことを喋りだす。
「言っておくけどこっちには貸しがあるんだからね。 認めないなんて言わせないよ。」
「か、貸し?」
「はぁ、忘れたの? おとといアリアケで戦った時にリターンマッチを受け入れてあげたじゃない。
だから今日もこうしてプリンスホテルそばのシバ公園で戦ってるんでしょ。」
「あぁ……そうだったな……」
「そう、そして次はこっちがリターンマッチを申し込む番。
時刻は明日3月3日の18時、場所は"武道館"。 そこで待ってる。」
「!?」
武道館という施設の名にマイミは覚えがあった。
いや、若手戦士を含めてもその名を知らぬ者は居ないと言ってよいだろう。
この施設はかなり古くに作られた円形の大型闘技場であり、
当時はこの舞台で闘えるということが最上級の名誉だったらしい。
今はもう闘技場としては使われていないが、現在でも多くの現役戦士達がこの大舞台に憧れを抱いているのである。
(特に果実の国のKASTが顕著だ。)
「本気で言っているのか!? あの武道館だぞ!」
「本気も本気よ。だってそこが今の私たちの本拠地なんだから。」
「本拠……地……」
「そう。だからね、明日にはマーサー王とサユが武道館の一室に軟禁されるの。
これは嘘なんかじゃない。ホント。」
連合軍の最大の目的はマーサー王とマイミの救出だ。
その2人が武道館に居るとなれば、嫌でもノコノコとやってくるはず。
モモコは相手がそう考えると思って情報を漏らしたのだが、
どうやら逆効果のようだった。
「軟禁なんかさせない……今すぐお前達を倒して阻止してみせる!!
いくぞナカサキ!2人でシミハムを倒すんだ!!」
脚の壊れたマイミは二本の腕で体を持ち上げて、手押し車の要領でシミハムの元へと向かっていった。
いくら不利な状況とは言え、敬愛する王が危険に晒されるとなれば動かずにはいられないのだ。
シミハムは仕方ないと言った顔で棍を構えるが、
存在感を消そうとするよりも早くモモコが叫びだす。
「あなたたち、今よ!」
「「「「はい!」」」」
モモコの呼びかけにカントリーのリサ、マナカ、チサキ、マイが応えたかと思えば、
無数のカエルとカラスがマイミへと跳び(飛び)かかった。
リサ・ロードリソースの操る両生類と、マナカ・ビッグハッピーの操る鳥類が
主人の命令に従い、マイミの行動を妨害し始めたのである。
「邪魔をするなぁっ!!!」
以前にやって見せたように大嵐のオーラで動物らを吹き飛ばそうとしたが、
シミハムの無のせいで、それは発動しなかった。
前に行きたくても進めずにもどかしい思いをマイミがしているうちに
チサキ・ココロコ・レッドミミーとマイ・セロリサラサ・オゼキングは倒れたベリーズを次々と馬に乗せていく。
カントリー達はこの時のために予め人数分の馬を用意していたのだ。
「ねぇマイちゃん、クマイチャン様はどうやって運ぼっか……」
「大きすぎて馬に乗せられないね……あっ!」
二人が困っていると、普段モモコが乗り倒している駿馬サトタの方からクマイチャンのところに駆け寄ってきた。
そして騎手の巨体もなんのそのと言った感じで自分の背に乗せていく。
「す、すごい……なんでか分からないけどモモち先輩が乗るよりシックリくる気がする。」
「チサキちゃん何か言った!? ほら、準備出来たなら早く逃げるよ!」
「は、は〜い!」
馬に乗った、あるいは乗せられたベリーズとカントリー達は、
負傷したマイミでは追いつけないスピードで遠い先へと逃げて行ってしまった。
例え腕がちぎれる勢いで走ったとしても何にもならないだろう。
「また……救うことが出来なかった……」
身体よりも先に心が限界を迎えたマイミは、
深い絶望に耐えきれずその場に倒れこんでしまった。
706
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/22(木) 22:36:42
カントリー3人の振り分けと研修生3人のデビューは
なかなか無視できない大きな転機になるような予感がしてます。
もともと考えている話の本筋に影響しないか、
あるいは多少影響してでも書きたいと強く感じたのであれば
三部の流れが変わるかもしれないですね。
707
:
名無し募集中。。。
:2017/06/23(金) 23:44:33
それは楽しみ!でも三部が始まる頃にはまた加入や卒業…新ユニットが出来ていたりして?w
708
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/26(月) 20:26:38
「んっ……」
チナミとの戦いで意識を失っていたカリンが目を覚ました。
起きてからしばらくの間は寝ぼけていたが、
自分が寝ていた場所がいちごのベッドでは無いことに気づくのに、そう時間はかからなかった。
(お外だ……時間は夕方?……それに、みんなもいる。)
辺りには帝国剣士がいた、番長がいた、そしてキュート戦士団もいた。
みんながみんな、うなだれているように見える。 幸せそうには全く見えない。
カリンが最悪の事態を理解しかけたところで仲間であるアーリー、トモ、サユキが声をかけてきた。
「あ!起きたぁ!」
「よく寝てたね。起きたのはカリンが一番最後だよ。」
「必殺技で無理をしすぎたから疲れちゃったのかな。」
"起きたのはカリンが一番最後"。
つまりはここにいる全員が寝てたか、気を失っていたということ。
カリンは信じたくない現実に確信を持ってしまった。
「私たち……負けちゃったんだ……」
カリンの言葉を聞いた仲間たちは黙ってしまった。
なんとか無理して明るく振舞おうとしたが、
敗北という事実が少しでも頭をよぎるだけで現実に戻されてしまう。
以前、チナミが2つのものを折ったと言ったのを覚えているだろうか。
1つは文字通り、若手戦士たちの武器を折っている。
そしてもう1つは「心」だ。
圧倒的なまでの力をみせつけられて、しかも対抗しうるための武器まで破壊されたので
もういくら頑張っても敵わないと、痛感させられている。
「あ、そうだ!キュート様はどうなったの!?マイミ様!マイミ様はどこですか!」
こんな時は、強大な存在であるキュートに頼りたいとカリンは考えた。
そうすれば次に進む指針を示してくれるだろうと思ったのである。
しかし、それも叶わない。
「…………」
「マイミ……様?」
一人で座り、虚空を見つめているだけのマイミを見て、カリンは衝撃を受けた。
いつも連合軍の先を行くマイミの姿はどこにも見当たらない。
敗北のSHOCK!で廃人のように呆けているその様からは
リーダーシップを少しも感じ取ることができなかった。
キュートの他のメンバーであるナカサキ、アイリ、オカールも黙って下を見ている。
団員である彼女達から団長に喝を入れてもらうことは期待できないだろう。
キュートがこの有様なのだから、若手戦士が何くそと奮い立てるわけもない。
完全に士気が落ちてしまっているのだ。
「マイミ様!ベリーズはどっちに行ったんですか!?追いかけなくて、いいんですか!?」
「カリンか。 ベリーズは……」
「知ってるなら、教えてください!!」
「いや、もういいんだ……どうせ、勝てないと。」
「えっ!?」
マイミの口からこんなにも弱気な発言が飛び出すなんて、
カリンだけではなく他の若手らも想像だにしていなかった。
こんな状況でどうやってベリーズに勝てると言うのだろうか。
いや、そもそもどうやってベリーズと戦えば良いのか?
マイミが、キュートがこのままでは、何も始まらない。
(タケちゃん……フクちゃん……こんな時、私はどうすればいいの?
2人に側にいて欲しいよ……カリンだけじゃなんにも出来ないよ……
みんなを動かす方法を、私に教えてよ!!!)
これからカリンかすべきことはただ1つだけ。
連合軍の士気は完全に下がっているように見えるが、
中には闘志の炎を消していない者だって何人かは存在する。
その者たちを見つけ出して、マイミに挑むしかないのだ。
自分たちが力を合わせれば食卓の騎士マイミをも凌駕することを、ここで示すしか無いのだ。
709
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/26(月) 20:28:24
あとちょっとでハロステの号外が始まりますね。
良い結果になることを祈ります。
710
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/26(月) 21:45:28
おっ、こぶしには入らないんですね。
話作りの観点だとちょっと杞憂でした
711
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/26(月) 22:55:52
太刀魚、という結論に至りました。
なんのことかはいずれ
712
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/28(水) 13:00:05
(あれ?……この音は……)
正体不明の金属音が鳴っていることにカリンは気づいた。
大多数が何もせずじっとしている中で、その人は次に向かって動き出していたのだ。
「マーチャン!なにやってるの?」
「武器作ってるの。」
マーチャン・エコーチームは諦めていなかった。
ここら一帯にはチナミの作った機械兵の残骸があちこちに転がっていて、
それらの部品を利用して新たな武器を作ろうとしているようである。
どこから拾ったのかは知らないが工具も一式揃えられているようで、
製作に必要な環境は整っているみたいだ。
周りが闘志を失っているにもかかわらず、黙々と作業を進めるマーチャンを見てカリンは感動する。
そして、マーチャン以外にも熱を失っていない戦士はまだいるのではないかとも思い始めてきた。
だったら、カリンは動くしかない。
「ねぇマーチャン。」
「なに?」
「すごーく細い針とかって作れるかな? 刺しても痛くないくらいに細いやつ。」
「たぶん。」
「今作ってる武器の後でいいから、細い針を20本作って欲しいな。頼める?」
「う〜〜〜〜ん、いいよ。」
「さすがマーチャン!」
これでカリンは戦う力を取り戻すことが出来る。
次にすべきは仲間探しだ。
みんなが落ちている中、1人だけ喜びを隠しきれていない人物がいることにカリンは気づいている。
モチベーションの低下もなく、武器も破壊されていない人なら、
強力な味方になってくれるはずだとカリンは考える。
「トモ!一緒に戦って!」
「カリン?……突然なに言ってんだ?……」
「私にはお見通しだよ。 トモ、全然落ち込んでないでしょ!」
「ちょっ!……バカ、なにを言って……」
確かにトモは他の若手戦士と違って、対ベリーズ戦で屈辱的な思いをしていなかった。
それどころかミヤビにトドメを刺すことが出来たので有頂天にもなっている。
周りが暗くなっているのでウキウキを表に出さないようにしていたが、
カリンにはバレバレだったようだ。
「トモ、自信に満ち溢れているよ。 誇らしいなら胸を張りなよ!」
「だから大声で言うなって……」
「違う!大声で言わなきゃダメなんだよ!
みんな聞いて!私たちはこれからマイミ様に決闘を挑むんだ!
力を貸してくれる人がいるなら、一緒に来て!!」
「はぁ!?」
713
:
名無し募集中。。。
:2017/06/28(水) 21:31:57
>>711
こぶしもつばきも新メンなかったのはちょっと以外だった…耳赤の帝国剣士とちっちゃい番長と困り眉の果実の戦士は出番はあるのかな?
714
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/30(金) 23:59:16
オマケ更新「武道館への道中で」
「はいカントリーのみんな集合〜」
馬にまたがったままの状態で、モモコはカントリーガールズの4人を呼び寄せた。
オカール・ナカサキ戦での負傷が痛むが、決してそれを顔に出したりしない。
明日の最終決戦で重要なピースになりえる4人に指示を与え終わるまでは、
苦しい顔なんてしていられないのだ。
モモち先生は教え子一期生たちに向かって話を始める。
「まずは残念なお知らせ。私たち5人は武道館の中では戦えないの。」
「えっ!?そうなんですか?……楽しみだったのに」
「そうよマイちゃん。ガッカリした? でも野外もいいものよ。」
「私たちカントリーガールズは動物を味方につけるから、野外で戦う方が戦力になるということですよね?」
「リサちゃんの言う通り。 明日は出し惜しみ無しでよろしく。」
「私の武器は鳥さん達なので雨が降るのだけが怖いですね……」
「マナカちゃん安心して。 雨は絶対に降らない。」
「えっ?でも雲が出て来てますけど……」
「雨は降らないの。」
「そ、そうですか……分かりました……」
「チサキちゃんはどう?さっきから黙ってるけど」
「えっと、武道館の近くって海とか川とかありますか?……魚が居ないと私は戦えないから……」
「んー、周りに池?かなんかあったでしょ? 魚も多分いるんじゃない?」
「そうですか、安心しましたぁ。」
「ま、3月で寒いし、池に氷がはってたらチサキちゃんは無能になっちゃうけどね!」
「もう〜!モモち先輩!」
715
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/01(土) 00:08:14
>>713
三部をお待ちくださいw
716
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/04(火) 13:06:02
マイミに決闘を挑むというカリンの発言に一同は騒然とした。
さっきまで下を向いていたナカサキ、アイリ、オカールまで顔を上げる程だ。
しかし、肝心のマイミには響かなかったらしく、
カリンの言葉をただ繰り返すだけだった。
「そうか……私と決闘か……」
相手にされないことは覚悟していたので、カリンは次々と準備を進めていく。
まだ困惑中のトモの手を無理やり引っ張っては、
アンジュの帰宅番長リナプーの前へと歩いていったのだ。
「うわ……」
厄介者がやってきたのでリナプーは露骨に嫌な表情をしたが、
それにも構わずカリンは勧誘していく。
「リナプーも戦えるよね!」
「いやいや、どこをどう見たらそう思えるの……」
たいへん失礼な話だが、トモにもリナプーからはやる気を感じ取ることが出来なかった。
いつものように元気なく地べたに座っているようにしか見えないのだ。
「そう、リナプーはいつもと同じなの!」
「え?」
「普通の人が元気なかったら心配するけど、リナプーはいつも元気ないよね!
ということはそんなに落ち込んでないんじゃない?」
「うわうわうわ、めんどくさ……」
「それに、リナプーの武器は"壊れていない"。」
「!」
カリンは急にしゃがみだし、リナプーの武器兼愛犬であるププとクランの頭を撫で始めた。
他の戦士の武器が物理的に破壊されているのに対し、この犬二匹は怪我の1つも負っていない。
「この子たちはまだやれるよね?……まぁ、飼い主のリナプー次第だけど。」
「はぁ……しょうがないな、やるよ。やれるに決まってるでしょ」
「やったー! これで仲間が4人になったね!」
カリンがピョンピョン飛んで喜んでいるところに、
もう1人の戦士が声をかけてきた。
今まではカリンが誘う形だったが、今回はその人の方から志願してきたのだ。
「私もその仲間に入れてもらえませんか?」
「オダちゃん!」
志願兵の名はオダ・プロジドリ。
強力な助っ人の登場に驚きつつもカリンは喜ぶ。
「もちろんだよ!でもどうして?」
「もう負けたくないんです。 相手が伝説の存在だろうと、私は勝たないといけないんです!!」
オダはこれまでサユやチナミと戦い、どちらも敗北していた。
プラチナ剣士やベリーズ戦士団が相手なので負けて当然だとみなは思っているが、
それではオダ・プロジドリのプライドが許さないのである。
その気迫にたじろぎながらも、トモ・フェアリークォーツが疑問点を投げかける。
「えっと……戦うのは止めないけどさ、いったいどうやって挑むつもりなの?
だって、剣は折られちゃってるのに……」
「剣が無いからと言って戦わないのは、剣士として二流では?」
「お、おう……」
「それに私は信じてるんですよ。」
「信じてる?何を?」
「いざ挑むその時になれば、私の手に剣が握られていることを……です。」
717
:
名無し募集中。。。
:2017/07/04(火) 14:36:38
マーチャン・カリン・オダ・カナトモ・リナプー。。。なる程そうきたか!
718
:
名無し募集中。。。
:2017/07/04(火) 23:30:30
マーサー王関係ないが…よこやんが仮面ライダーフォーゼ好きらしい
http://ameblo.jp/morningm-13ki/entry-12289692613.html
もしマーサー王完結後仮面ライダーイクタ復活する際には参戦確定かな?
719
:
名無し募集中。。。
:2017/07/05(水) 00:51:57
あと5年はかかるから生田も横山もいないかもなw
720
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/05(水) 12:45:29
おお。新たなライダー好きメンバー!
仮面ライダーイクタは本当にいつになるのかわからないので、オマケだけ書きますw
横山「宇宙キターーー!」
生田「おお!横山はフォーゼになるっちゃね。」
真野「ウチュウキターーー!」
生田「真野さんはやっぱりなでしこやね。」
佳林「お前の運命(さだめ)は俺が決める。」
生田「!?」
721
:
名無し募集中。。。
:2017/07/05(水) 17:50:48
>>720
植村「さぁて、稼ぎますか」
生田「・・・(それ、後藤さんじゃなくて伊達さんやけん!)」
722
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/07(金) 12:55:03
>>721
碧の彼氏役ネタですねw
昨日、藤井が予定より早く引退することが発表されましたね。
とても驚きましたが、いくら考えても真相に辿り着くのは不可能そうなので
あまり詮索しないようにします。
次回更新は今日の夜遅くになります。
723
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/08(土) 05:47:06
やっぱりまだかかりそうです。。。
724
:
名無し募集中。。。
:2017/07/08(土) 11:47:47
良かったバースネタ伝わったw
藤井の件は永遠の謎のままなんだろうな…
更新楽しみにお待ちしてます
725
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/10(月) 13:05:35
着々と仲間を増やしつつあるカリンを見て、ハルとサユキは戸惑っていた。
戦士としてここで立ち上がるべきだということは十分に理解しているが、
マイミと同等の存在であるチナミに植え付けられた恐怖のせいで動けずにいる。
食卓の騎士を相手にするという思考自体を拒否してしまっているのだ。
「どうしてアイツらは戦えるんだ?……言っちゃ悪いけど、どこかおかしくなってるんじゃ……」
確かに、カリンやマーチャンは恐怖心を感じる機能がマヒしているのかもしれない。
リナプーやオダだって同様だ。
彼女らは普段から何を考えているのかよく分からないので、
常識離れした思考回路の持ち主だと思えば、今の選択も納得いく。
だが、トモ・フェアリークォーツは比較的正常な判断を下せる人間だったはず。
だと言うのにカリン達の側についている。
その事実がサユキを困惑させていた。
「ハル……私は自分が情けないよ……」
「サユキ?」
「カリンはともかく、トモまで前に進んでるって言うのに……私は立てもしないんだ……」
「情けなくなんかないだろ! 周りを見ろよ! 座ってるやつの方がずっと多いくらいだ!
だからさ、泣きそうな顔をやめてくれよ……こっちだって泣けてきちゃうじゃないか……」
「 ハル……」
激しく揺らいでいたサユキの精神は、ハルの慰めのおかげで安定に向かいつつあった。
しかし、その安定も長くは続かない。
むしろ急転直下。失意のどん底に突き落とされていく。
「一緒に……戦わせて……」
ここにこて、KASTのアーリー・ザマシランが目に涙を浮かべながらカリンに訴えたのだ。
全身がプルプルと小刻みに震えていることから、彼女はひどく恐怖していることが分かる。
それでも、味方の力になりたい一心で身体に鞭打って立ち上がったのである。
あからさまに恐れている者の参戦にハルは驚愕したし、
サユキは今いるこの空間に耐えきれず、地に顔を伏せてしまった。
726
:
名無し募集中。。。
:2017/07/10(月) 13:29:13
これで3…次は彼女次第か…
一人p…はするのかな?w
727
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/11(火) 13:09:27
「アーリー!嬉しい!」
同門の仲間が勇気を振り絞ってくれたことがカリンには何よりも心強かった。
アーリーが参加表明をしたので、同士の数はこれで6人になる。
残念ながらそこから手を挙げる者は現れなかったが、
勝ちたいという意志を持ったこのメンバーならやれる。カリンはそう信じていた。
「よしっ!早速みんなで飛びかかろう!」
「ちょっと待ってよ、カリン。」
「え?……トモ、どうしたの?」
「いくらなんでもね、作戦も組まずに挑んで勝てるはずがないでしょうが。」
「あっ……そっか、そうだよね。」
「今のマイミ様はやる気がない。それが幸いかどうかは置いといて、少なくとも攻め込むタイミングはこっちが決められるはずだよ。」
「うん、うん。」
「それに……多少は時間を稼いだ方が好都合だしね。」
そう言いながらトモは工具を持ちながらせっせと働くマーチャンの方をチラリと見た。
マーチャンの同僚オダ・プロジドリもコクリと頷いている。
そうして彼女ら勇気ある戦士たちは攻め方について小一時間ほど議論し、
納得いく結論が出たところでマイミの方を向きだした。
「マイミ様!準備が出来ました!今から挑戦させて貰いますね!」
「あぁ……好きにしてくれ……」
マイミの返事は相変わらず虚ろなものだった。
これから攻撃を受けるというのに、まるで危機感を感じていないように見える。
ベリーズとの戦いで義足が潰れて立つことが出来ないとはいえ、
少しも構えようとしないのは流石にプライドが傷つく。
そんなマイミに向かって、トモが矢尻を突きつける。
「すぐに慌てさせてあげますよ……アイリ様から受け取ったこの力で!!」
「!?」
トモが矢を放った瞬間、閃光がマイミの脚を目掛けて光速で迸った。
この現象は、いや、このイメージはアイリの得意とする「雷」のオーラに類似している。
本家に比べたら微かな光ではあるが、可視化可能なオーラを若手が発現出来るということが既に規格外。
今まで無気力だったマイミも、流石に驚愕することとなった。
(アイリの能力を継承したのか!?……いや、そんな馬鹿な!
あるいは……トモは、物凄い勢いで成長している!?)
728
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/12(水) 13:08:46
「ふふっ、そういう事なのね。」
さっきまで下を向いていたアイリが、何かを理解したような表情でクスリと笑っていた。
おそらくはトモの考えていることを察したのだろう。
そんなアイリとは対照的にマイミはまだ混乱している。
ベリーズやキュートのような天変地異の如き威圧感を発するには
気が遠くなるほどの量の鍛錬をこなしたり、実践経験を豊富に積む必要がある。
少なくともオーラの原型である「断見刀剣」くらいはマスターしていないと話にならない。
では何故、トモはアイリのように雷光を飛ばすことが出来たのか?
年齢こそアイリに近いが、戦士としての経験の差は明白だったはず。
そんな彼女の成長を何が押し上げたのか?
(ベリーズとの戦い……か?)
マイミは、トモがキュート4人に加わってベリーズらと戦った時のことを思い出していた。
あの時のトモは決して足手まといになどならず、
頼れるアイリのサポートを受けて強敵ミヤビの硬い胸を突き破っていた。
その密度濃い時間が人間一人を遥かなる高みに連れていってくれたのかもしれない。
(そういうことだったのか!……若手全員が成長してくれればベリーズにもきっと対抗出来る!!)
自分の中で答えを出したマイミは、希望で胸が踊っていた。
若手戦士らの可能性を信じ、また戦ってみたいと強く思ったのだ。
この調子なら以前のようなリーダーシップを取り戻して連合軍を率いてくれたことだろう。
しかし、ここでマイミは気づいてしまった。
トモの発したように見えた光が、オーラと呼ぶにはあまりに微弱であることを。
そして、その光からはごく僅かな殺気さえも感じられなかったことを。
「……真似事か?」
マイミは真相に辿り着いた。
オーラのように見えた雷光は、実はオーラでもなんでもない。
ただの光だったのだ。
大方、光を操るのが得意なオダが、トモの射撃のタイミングに合わせて日光を反射させたのだろう。
(ガッガリだな、トモ・フェアリークォーツ。 君にはアイリのような能力は無かったワケだ。)
光はマイミの太ももを示していて、トモの矢もそれを追いかけるように同じ目的地へと向かっている。
これがアイリの電撃オーラであれば、弱点を知る眼で見破った箇所に対して攻撃を仕掛けたのだろうが、
トモにはそんな眼は存在しない。
つまり、この飛んでくる矢は弱点狙いでもなんでもない……マイミはそう考えた。
(はぁ……撃ち落とすのも面倒だ。 好きに攻撃させてやろう。)
729
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/13(木) 13:09:52
厳しい鍛錬を積んできたマイミの肉体は、極限までに鍛え抜かれている。
ゆえに防御力も常人離れしており、
ベリーズならともかく、若手の攻撃くらいはノーガードで耐えることが出来るだろう。
自身の膝に向かいつつあるトモの放った矢だって、大したことないと思っていた。
だが、その予測は見事にハズれたようだ。
(!!?……なんだこの痛みは!)
矢で太ももを貫かれたマイミは、耐え難き激痛を感じてしまっていた。
当たり前と言えば当たり前なのだが、マイミにとってはこれが一大事。
このレベルの攻撃であれば多少の痛みを感じることはあっても、悶絶するほどではなかったはず。
では何故こんなにも苦しいのか?
何らかの技術のせいか? それとも矢に毒でも塗られていたか?
その答え合せは、射撃を行なった張本人であるトモがしてくれた。
「弱点に当たったんですから、痛いに決まってるじゃないですか。」
「弱点だと?……いや、そんなはずは……」
トモの発したオーラのように見えたものは、矮小なまがい物だった。
アイリのような弱点を見抜く眼だって備わっていない。
では何故、トモはマイミの太ももが弱点だと知ることが出来たのか?
混乱し、戸惑うマイミに対してアイリが声をかける。
「相手の弱点を把握するには、なにも特別な眼を持つ必要なんてありませんよ。」
「えっ?……」
「トモは自分の頭で考えて、そして見抜いたんです。
団長……あなたを倒すためにはどこを狙えば良いのかを。」
730
:
名無し募集中。。。
:2017/07/14(金) 00:01:31
後に『ローズクォーツの眼』と呼ばれるトモの必殺技の誕生であった…(嘘
ODATOMOのコンビネーションにはまだ何か秘密がありそう
731
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/14(金) 13:14:24
今回戦いを挑んだ勇気ある戦士たちは、挑戦前に作戦会議を開いていた。
その場でトモはこのように語っている。
「マイミ様の今の弱点は太ももだと思ってる。
普段から義足使いだから負荷が集まりがちって理由もあるけど、
それ以前に、あの腿の痛々しい傷を見れば分かるでしょ?
さっきナカサキ様に聞いたんだけどさ、シミハムの強い一撃をまともに貰ったらしいよ。」
「じゃあ、狙うならそこね!」
興奮して前のめりになるカリンを宥めて、トモが言葉を続けていく。
「まぁ最終的には弱点狙いで行くけどさ、無計画に突っ込んでも通用しないと思うんだよね。
どうにかして不意を突きたい……そこでオダ・プロジドリ、貴女に頼みがあるんだけど。」
「私ですか?」
「例えば……私が弓で射った先に光を当てることは出来る?
それも私が自分の意思で光線を出したような感じに。」
「出来るに決まってるじゃないですか。 私はモーニング帝国で二番目に鏡を扱うのが上手いんですよ?」
「そ、そっか、じゃあヨロシク。(……二番目?)」
この時に話した通りにトモはマイミを騙すことが出来た。
ここまで二転三転して驚きを与え続けたので、ただの射撃が有効打となったのである。
しかし、ご存知の通りマイミの身体は頑丈だ。
矢が腿を貫いた程度では決して倒れたりしない。
「確かに驚いたが……この程度で私を倒せると思ったか?」
「そうは思ってませんよ。 私に出来るのはマイミ様の意識をちょびっとだけ逸らすだけ。」
「意識?いったい何を言って…………まさか!!」
この瞬間までマイミはある戦士の接近に気づいていなかった。
その戦士の名はオダ・プロジドリ。
光を相手に当てることばかりが注目されがちだが、
彼女は周囲の光の屈折を理解した上で、あたかも透明化したかのように振る舞うことが出来る。
トモのオーラを具現化するために手鏡で光を反射した後は、
すぐさま攻撃に移るべく、木立を抜ける風のように、ここまでやって来ていたのである。
しかし今のオダには戦闘に必要な要素が1つ足りていない。
そう、武器を持っていなかったのだ。
(手ぶらでここまで?……また驚かされてしまったが、剣が無いなら何も怖くはないな。
スネを蹴っ飛ばして転んでもらおう。)
マイミの考える通り、武器が無ければオダは大した攻撃を行うことが出来ない。
エリポンのような筋力があれば肉弾戦も行けたかもしれないが、
生憎にもオダにはそんなパワーは備わっていなかった。
ではオダは何をしにここまで来たのか?
無論、剣士として相手を斬るためだ。
「オダんごーーーーーーーーーーー!!」
「ふふっ、マーチャンさん、信じてましたよ。」
オダがマイミへの攻撃を開始する直前、マーチャンが一振りの剣をぶん投げた。
その剣はオダのブロードソード「レフ」を修理したもの。
完成したてホヤホヤの剣がオダの手に収まっていく。
「行きます!!」
732
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/19(水) 13:51:57
"剣なしで戦えなければただの二流剣士"とオダは言っていたが、
それでもやっぱり剣はあるに越したことはない。
マーチャンの技術力や集中力を信頼して、
この瞬間までに武器の修理を間に合わせるだろうと踏んでいたのだ。
トモの示してくれた弱点に対して更に追い打ちをかけるために、
たった今届いたばかりの剣を振り下ろそうとする。
(剣が飛んで来ただと!?……いや、必要以上に驚くこともない。
攻撃手段が打撃から斬撃に変わったところでやることに変わりは無いんだ。)
マイミは少し身体を起こして、右脚による蹴りを繰り出そうとした。
腿から先の義足はベリーズ戦でボロボロになってはいるが、
迫り来るオダを転ばずには十分な強度だ。
実際、マイミの鋭い蹴りならそれが可能だろう。
だがここで信じられない光景が目に入ってくる。
(……えっ?)
蹴ろうとして前に出した脚は、既に腿から切断されていたのだ。
痛みはない。出血もない。視覚以外の四感は傷つけられたことすら認識していない。
それでも確かにマイミの脚はスパッと斬り落とされている。
いったいいつ斬られたのか?それも分からない。
マイミの動体視力はかなりのものなのだが、
オダの斬撃は知覚できないほど速いということか?
(いや違う!しっかりしろ!どこも斬られていないじゃないか!!)
右手で太ももに触れることでマイミは現実に戻ることが出来た。
脚が切り落とされたというのは錯覚。
ちゃんと腿は有る。 その先の義足だってくっついている。
何故だかマイミは斬られたと勘違いさせられていたのだ。
よくよく見てみれば、そもそもオダは剣を振り切ってもいない。
だったら攻撃を受けているはずが無いだろう。
では、
それでは何故マイミは思い違いをしてしまったのか?
トモがやってみせたようにインチキのトリックでもしてみせたのか?
違う。
そんなものでは無いことをマイミは気づいていた。
だからこそマイミは急いで起き上がり、オダの胸を強く蹴っ飛ばす。
「来るなっ!!」
「うっ!……」
それなりに加減したので骨などに影響が出る事は無いだろうが、
2,3mも跳ね飛ばしてしまうのはいささか大人気なかったかもしれない。
それだけマイミは必死だったのだ。
「今のは確かに"断身刀剣"……いつの間にそんな技術を!?」
マイミが言った通り、オダは以前にチナミから受けた技術「断身刀剣(たちみとうけん)」をこの場で使用していた。
己の実力のキャパシティを超えるために、「相手を斬る」という強い思いを持って斬撃を放ち、
その思いを見事にマイミの脳へと届けたのである。
この技術を習得できたのはオダが天才だから……などと言った言葉で片付けることは出来ない。
サユに負け、チナミに負け、……それでも強者に勝ちたいと思うその執念が昇華したからこそ
実現し得たと言えるだろう。
733
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/20(木) 13:17:34
「オダのやつ、あんなこと出来たのか……」
有効打に繋がらなかったとは言え、見事に「断身刀剣」を決めたオダ・プロジドリを見たハルは歯がゆく感じていた。
後輩が1つ上のステージに上がっているというのに、自分は立ち上がりさえしていない。
何故自分にはあと少しの勇気が無いんだろう、と思うと涙がこぼれてくる。
きっと隣で苦しんでいるサユキ・サルベも同じ思いに違いない。
そんな2人とは対照的に、トモは張り切って指示を出して行く。
「ほらみんな行くよ! 私達ならまだまだマイミ様を驚かせられるはず!
次に仕掛けるのは誰かな〜!?」
マイミはオダの断身刀剣に気を取られていたが、
気づけばKASTのカリンとアーリーが自身の周りをぐるぐると回り続けていた。
2人ともマイミから一定の距離を保っており、どちらが先に仕掛けてくるのか分からないようになっている。
トモの「驚かせられるはず」という発言から、カリンかアーリーのどちらか、
あるいは両方が派手な攻撃を繰り出してくるのでは無いかとギャラリーは予想したが、
ターゲットであるマイミはその"誘導"に引っかからなかった。
(落ち着け!落ち着け!落ち着くんだ私!
目に見える光景に騙されるんじゃない。 しっかりと五感を働かせるんだ。
ほら、耳をすませば聞こえてきたじゃないか。
私の周りを回っているのはカリンとアーリーだけじゃない。
……リナプーだって、そこにいる!)
オダとの一件で学習したマイミは、カリンとアーリーの間に透明化したリナプーが居ることを突き止めた。
リナプーの化粧「道端タイプ」は相手の視覚に直接訴えるかけるので強力だが、
音や匂いまでは消し去ることはできない。
故に、耳の良い者なら居場所を特定できるのである。
マイミはリナプーに向かってストレートパンチをぶつけようとする。
(待てよ……この程度で私を驚かせられると思っているはずが無いよな?
まだその先があるに違いない。
そう言えばリナプーは犬を二匹飼っていた……そいつらはどこに行った?)
マイミはリナプーへの攻撃を取りやめて、全神経を鼻へと集中させた。
そして上方向から犬らしき匂いが飛びかかって来ていることに気づく。
何を隠そうマイミだって犬派であり、多くの犬を飼ってきたのだ。
匂いの嗅ぎ間違いなど起こり得ない。
(狙いは犬による攻撃だったという訳だな。
タネがバレれば単純なものだ。楽に避けさせてもらおう。)
734
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/21(金) 13:13:36
マイミはリナプーの愛犬ププとクランの背格好だって把握している。
どちらも小型犬であり手足も短い。
その小ささはちょこっと離れるだけで攻撃が届かなくなるほどだ。
匂いの発せられる位置と、二匹の身体的特徴を考慮して、
マイミは絶対に攻撃の届かない安全圏へと後退した。
ほんの数歩の移動だが犬のリーチから逃れるには十分。
完全に安心しきっていたところで、
マイミの額から血が吹き出していく。
「な……!?」
リアルな痛みが感じられることから、
オダのやってみせたような断身刀剣によるイメージではないことはすぐに分かった。
マイミは確かに攻撃を受けたのだ。
思考が追いつかずフリーズしているところで、お次は右腕の二の腕から血が流れ出した。
傷跡を見るに、刃物というよりは鉤爪で引っ掛けられたように見える。
爪を武器として扱う若手戦士はこれまで1人もいなかったはず。
そんな武器をこの場で新たに受け取り、マイミに傷を負わすほどに上手く使いこなせる者が居るとは考えにくい。
居るとすれば、普段からツメを身体の一部のように扱っている者……いや、動物くらいだろうか。
(まさか……リナプーの犬は武器を着けているのか?
リーチが伸びたのもそれが理由かっ!)
マイミの推測通り、ププとクランはマーチャンの製作した鉤爪を両の前脚に装着していた。
これは数時間前の戦いでチナミが作ってみせたものと同一。
マーチャンは製造法を覚えていて、すぐに形にしてみせたのである。
これまでのププとクランはリナプーのサポートを主に行っていたが、
これによって積極的に攻撃を仕掛けることが出来るようになった。
また、今まで以上に飼い主への注意を反らすことも可能になっている。
「そうだ!リナプーはどこに!?」
ププとクランに意識を配りすぎるあまり、マイミはリナプーを見失っていた。
この感覚はシミハムを相手取っている時のそれに似ている。
もっとも、リナプーは大技を決める際にも気配を消すなんてケチな真似はしない。
ここぞという時に大物ですら食ってしまうほどの存在感を発するのだ。
(後ろか!……いや、もう遅い!)
マイミの防衛本能が物凄い勢いで警鐘を鳴らしている。
後方から強烈な一撃が来ることにハッキリと気づいているのに、
この状況からとれる手立てはほとんど無かった。
リナプーはチナミにも決めたことのある必殺技の名称をポツリとつぶやき、マイミの背中に噛み付いていく。
「"Back Warner(後ろの警告者)"」
声こそ小さかったが、その様は狼狽えるマイミを見て爆笑しているかのようだった。
735
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/07/22(土) 12:42:08
背中の筋肉に力を入れて一時的に硬化したので大事には至らなかったが、
それでもリナプーの歯はマイミの背中の肉に突き刺さっていた。
いつもは省エネなリナプーもこの時ばかりはFULL CHARGEで働いているからこそ、牙を通すことが出来たのだろう。
マイミは右腕でリナプーを追っ払おうとするも、何故か腕が動かない。
それどころか万力で締め付けられるような激痛まで感じられる。
その理由は、アーリーが腕に抱きついているからに他ならなかった。
「"Full Squeeze"!!!」
機械兵の束ですらグシャグシャに潰してしまうアーリーの抱擁が炸裂する。
骨太で屈強なマイミの腕を折ることまでは出来なかったが、
抱きしめ続けている間は腕一本の動きを封じることが出来ているようだ。
マーチャンの手が空かなかった都合上、
アーリーはトンファーを修理してもらうことが出来ず、素手での出陣となってしまったが、
このような足止めならぬ腕止めに専念すれば相手が伝説の存在だろうとパフォーマンスを落とせているのである。
しかし、マイミにはまだ左腕が残っている。
(この左でリナプー、そしてアーリーに一発ずつパンチをお見舞いして体勢を整えさせてもらおう。
……と、私が思っているとでも考えているのかな?
そっちにはカリンがまだ残っているはず。 必殺技を二連続で使ってきたのだから、カリンが続かない手はない。
ならば、この左手はカリンを迎え撃つために使わせてもらおう!!)
ここまで驚かされ続けたマイミは警戒心を強めていた。
次に来るであろうカリンを先に迎撃しようと辺りを見回すが、
不思議なことにその姿は見当たらなかった。
むしろ、カリンが居ると思っていた場所に異なる人物が立っていたのだから
マイミはまたも驚いてしまう。
(何故ここに?……サポート役では無かったのか?……)
その戦士は、両手に燃える木刀を持ちながらマイミに立ち向かってきていた。
その火炎が放つ明るさはとても目映く、
さとのあかりをもたらす、ホタルのようだった。
「マーチャンの必殺技行くよ!!"蹂躙(じゅうりん)"!!!」
736
:
名無し募集中。。。
:2017/07/22(土) 20:15:20
さとのあかりコンボきた!
737
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/07(月) 13:05:40
更新出来てなくてごめんなさい。
腰を据えて続きをかけるのは今週末になりそうです。
今日から5日間は本編以下オマケ以上の番外編を書こうと思います。
番外編1「モモち先輩の後輩探し旅〜アンジュ王国編〜」
ベリーズ戦士団でもあり、カントリーガールズでもあるモモコは、
カントリーのメンバーを補強するために各地を歩き回っていた。
特に狙い目なのは近年優秀な若手を多く輩出しているアンジュ王国と果実の国だ。
将来有望なホープを、自国の軍に加入する前に奪い取ってやろうと目論んでいるのである。
そんなモモコは、アンジュ王国のピザ屋で腹ごしらえをしている真っ最中だった。
「さすが趣味大国アンジュ王国……料理の技術も進んでるわね。
小さなお店が出してるピザがこんなにBuono!だなんて予想外だったわ……
ただ、店員さんがみんなチンチクリンなのは気になるけど。」
自分のことを棚に上げてモモコは店員批判を始めた。
アンジュ王国の若者はスタイルがとても良い子と、そうでもない子に分かれがちであり、
たまたまモモコの近くにいた店員2名が後者寄りのスタイルだったという訳である。
「あぁん!?なんやと!disってくれるやないか!」
小学生のような見た目をした店員がモモコを睨みつけながらこっちにやって来た。
この店員、可愛らしい顔をしているというのに非常にガラが悪い。
同じ地方の方言でも、カナナンの言葉遣いとは大違いだ。
「あら怒っちゃった?ごめんなさいね。私、嘘がつけなくて」
「カッチーンときた。もうあかんわ、キレたわ。本気見せたる……今すぐこの店から追い出したるわ!!!」
「ふーん、やってみたら?」
はじめのうちは、モモコも余裕を保っていた。
食卓の騎士である自分がこんな小娘に負けるワケが無いと思っていたからだ。
だが、チビ店員が緑色のカゴを取り出してからはモモコの表情が曇り出す。
そして、そのカゴから"武器"を取り出した時にはモモコの顔は恐怖に染まりきっていた。
(まさかこの子の武器は!……ヤバい、この子、リサちゃんのカエルよりタチが悪い!!)
「ハハッ!ビビっとるなぁ!店中ミンミン五月蝿くしておられへんようにしたるわぁ!!」
奴らが解放されたらもうモモコには打つ手がなくなる。
となれば多少大人気ないが全力の武装で阻止するべきか。
そう思っていたところにもう1人の店員が現れ、ガラの悪い店員の頭をポカリと殴り出した。
「痛っ!……なんや、カミコか。」
「フナッキ、今なにしようとしてたの?」
「えっと、その、ムカつく客がおったからな、ちょっと懲らしめようと」
「お客様でしょ」
「はい、お客様です。ムカつくお客様を懲らしめようと……」
「それ、店に開放するつもりだったの?……」
「あ……いや……」
「ふーんそうなんだ。フナッキも"舎弟"にしてもらうように"番長"さん達に口利きするつもりだったけど、
店をメチャクチャにするんだったらもう知らない。」
「えぇ〜!そんな〜!」
なんだか分からないが、助けられたという事をモモコは理解した。
そして話ぶりから察するに、カミコというチンチクリン店員がアンジュ王国の番長候補である"舎弟"であり、
フナッキというチンチクリン店員は"舎弟"を目指すフリーの戦士だということも分かった。
ならば、スカウトせざるを得ない。
「あなたフナッキって言うのね。 ちょっとだけ話をしない?」
「はぁ!せやからアンタはいったい誰やねん!お前のせいでカミコに怒られたやんか!」
「私?私はね、フナッキちゃんの未来の上司ってとこかな。」
「はぁ〜?」
738
:
名無し募集中。。。
:2017/08/08(火) 06:35:25
ピザーラお届けきた!w
739
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/08(火) 13:37:23
番外編2「モモち先輩の後輩探し旅〜果実の国編〜」
まずは3名による目撃情報をお聞きいただこう。
証言者その1、モーニング帝国元帝王サユ
「とても可愛い子が果実の国にいたの!お人形さんとかプレゼントしたらついてきてくれるかな?」
証言者その2、プラチナ剣士レイニャの後輩マリン
「あれは女神?それとも妖精?……失礼、取り乱しました。私が見たのはただの大天使でした。」
証言者その3、果実の国の王ユカニャ
「可愛い!!可愛すぎるっ!!デコ出しも良いけど前髪を作ってあげたいっ!あ〜〜〜KASTに入ってくれないかなぁ」
これらの証言を聞いたモモコは内心穏やかではなかった。
自分はかなり可愛いはずなのに、サユもマリンもユカニャもその子ばかり可愛がる。
そんなのがモモコにとって面白いわけがないのだ。
だからモモコは単身、果実の国へと向かった。
その可愛い子に差を見せつけてやろうと思っている。
「ねぇねぇそこのあなた。この辺で可愛い子を見なかった?」
「可愛い子ですか?……」
聞き込みをするためにモモコはその辺にいたオデコの広い子に声をかけた。
見た目はとても幼く見える。 この前出会ったフナッキと同じくらいだろうか?
その少女は最初はビックリしたような顔をしていたが、すぐに回答をする。
「はい!可愛い人はすぐ近くにいます。」
「へ?どこどこ」
「私の目の前です! モモコ様が一番可愛いですよっ!」
「まぁ〜〜〜〜!よく分かってるじゃないの!」
突然褒められたのでモモコは思いっきり照れてしまった。
だが、同時に違和感も覚えていた。
「って……あなた、私のことを知ってるの?」
「当然です!ずっと尊敬してましたので!」
「なるほど、ということはあなた、戦士なのね?」
「ご名答です! 特定の団体には未所属ですが個人的に研鑽を続けていました。
モモコ様のことをは数々の文献でお目掛けしていたのです。あこがげ、あこがげ…………憧憬を感じています!!」
「(あこがげ?)うふふ、見る目あるじゃない。」
「そこで大変申し訳なく存じますが、お手合わせをお願い出来ないでしょうか?」
「手合わせ?まぁちょっとくらいなら良いよ。 ファンサービスしなきゃね。」
「感謝いたします!私はこの6つのボーグを武器にして挑みます!」
(ボーグ?防具?……防具のようには見えないけど……)
オデコ少女は手のひらほどの大きさの球体を右手で握っていた。
これはカプセルと言うのが正しいのだろうか。 中に何かが入っているように思える。
腰にも5つのカプセルをセットしており、何をしてくるのか全く読めない。
それに少女は挑むと言ったものの、自分からは攻撃を仕掛けずに静止し続けていた。
そこでモモコは勘付く。
「ふーん……カウンター狙いってとこね。」
「!!」
「私が迂闊に手を出したら正体不明の攻撃で"逆に"やられていた……そうでしょ?」
「はい……返す言葉もございません……」
いくらカウンターに自信があるとは言え、自分からアクションを起こさない相手は恐るるにたらない。
この少女は待ちに特化した戦法を取るあまり、能動的に戦うことが出来ないのだ。
モモコが何もしないだけで困り顔になったのがその証拠だろう。
だが、モモコは負けていないが勝っていないのも事実。
それに6つのカプセルに何が入っているのかも、とても気になる。
少なくともモモコのような大物でさえ喰らう自信があるほどの脅威がそこには詰まっていたはずなのだ。
「……マイちゃんのような直情型ならすぐに返り討ちにあってたんだろうなぁ……」
「マイちゃん?どちら様ですか?」
「ねぇ、貴方さえ良ければカントリーガールズに入らない? もっと強くしてあげられると思うんだけど。」
「か、カントギー?……」
(ふふっ、結局可愛い子は見つからなかったけど、収穫はあったようね。)
740
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/09(水) 13:00:38
番外編3「モモち先輩の後輩探し旅〜モーニング帝国編〜」
スカウト旅から帰ってきたモモコは、早速カントリーのメンバーに成果を話していた。
「というわけで秋頃から果実の国出身のヤナミンちゃんが仲間に入るから。」
「「「「えー!?」」」」
「それとあともう1人」
「ヨォー!まだだー!まだいるー!」
「アンジュ王国出身のフナッキちゃんも来るから仲良くしてあげてね。」
突然のサプライズに現メンバーの4名はびっくり仰天だ。
普段はおとなしいチサキも変なポーズと動きで驚きを表現している。
モモコを除けば最年長のリサだって、まだ事態を把握できていないような表情だ。
「フラッと外出したと思えばそんな事をしてたとは……
たった数日で二カ国を回って、スカウトを成功させちゃうなんて流石ですね……」
「いや、二カ国じゃなくて三ヶ国。モーニング帝国にも行ったのよ。」
「あれ?そうだったんですか?」
「でもフリーで将来有望な子にはなかなか会えなくてね……」
モモコでも難しいことがあるんだなと一同が思ったところで、
少し冷静さを取り戻したチサキが話に入ってきた。
「それはそうですよ。モーニング帝国の優秀な子はみんな研修生になっちゃいますから。」
「そうなの?チサキちゃん詳しいのね。」
「はい。だからフリーの人は私みたいな役立たずしか残っていないと思ってます……
いや、それでも私なんかよりは強そうでしたけど……」
「……んん?」
ここでモモコは違和感を覚えた。
何故チサキはこうも知ったような口をきくのか?
それは、つまり。
「チサキちゃん、モーニング帝国の出身だったの?」
「あれ……言ってなかったですか?」
チサキのカミングアウトに、モモコを含めたカントリー全員が驚いた。
これまでずっとマーサー王国出身だと思っていたが、
実はモーニング帝国剣士らと同じ地で生まれ育っていたのだ。
「いやいやいやチサキちゃん、だったらなんで帝国の研修生にならなかったの?」
「モモち先輩ひどい!私の実力でなれるワケないじゃないですか!」
「あー……んー……」
チサキの自信のなさと卑屈さはいつか矯正せねばならないと思いながらも、
モモコは今後のための質問を追加していく。
「ちなみにチサキちゃん、剣とか握った事ある?」
「無いですよぉ……」
「んー……そうよねぇ」
「いったいなんでそんな事聞くんですか?」
「いや、そのね、将来的に面白いことができそうだなって思って。」
「な、なんだか嫌な予感がするんですけど……」
741
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/10(木) 13:04:48
番外編4「舎弟たちの日常」
アンジュ王国には番長制度と舎弟制度が存在する。
7人の番長は戦闘能力が高いだけでなく、国を動かすための重要な業務をそれぞれ司っており、
例えば勉強番長カナナンは教育を、運動番長タケはスポーツを、音楽番長ムロタンは興行を盛り上げるために忙しく働いていた。
そんな番長になるべく日夜奮闘しているのが、番長候補である舎弟だ。
素質を認められた彼女らはいつか番長になる日を夢見て訓練に励んでいる。
とは言え研修生扱いなのでお給料の方はやや心もとない。
単身で都にやってきて一人暮らしをしている舎弟カミコは、アルバイト終わりに城の訓練場に通うのが常だった。
「こんばんはー誰かいます?」
「おおっ、カミコさんお疲れ様です。」
「カッサーだけか。お疲れ。」
今現在、舎弟として認められているのは
黒髪長髪の美しい小柄な少女カミコと、
若干12歳とは思えぬ程に(見た目は)大人っぽいカッサーの2名だ。
舎弟認定がちょびっとだけ早かったので、カッサーはカミコを先輩として敬っている。
「カミコさん、あの、その……」
「お土産が欲しいんでしょ?はい、ピザ持ってきてるよ。」
「うおおおおお!よっしゃああああ!」
「ふふ、そんなに嬉しい? じゃあ私も先にご飯にしようかな。」
カミコは少食だが、育ち盛りのカッサーは人よりよく食べる。
少人数ではあるがテーブルにピザを広げて、訓練前の腹ごしらえとすることにした。
食事中の話題は、自分たちの将来についてだ。
「カミコさん、カミコさんは何番長になりたいとおもってますか?」
番長は自身の役割にあった役職名を与えられている。
勉強番長、運動番長、文化番長、帰宅番長、音楽番長、給食番長、理科番長という名は唯一無二のものであり、
その分野に秀でたものしか獲得することはできない。
「カッサーは気が早いよ。私たち、本当に番長になれるか分からないんだよ? それに役職名だって選べるわけじゃないよね。」
「私は自転車番長か深海魚番長のどっちかで悩んでるんですよ!どっちが良いですかね!?」
「って、聞いてないし……」
「で、カミコさんは何か決めてますか?」
「私?私は……別に何もないよ。正直言ってやりたいことも無いし……」
カミコは目の前のカッサーを、そして先輩の番長らを羨ましく思っていた。
時には(というかいつも)騒々しくて面倒な人たちではあるが、
自分の好きなことに向かう時の集中力は凄まじいものがある。
あんな風に何かに一途になれたら……カミコはそう思っていた。
「私はですね!カミコさんは美術番長が似合うなって思ってるんですよ!」
「び、美術?……」
「はい!」
「ちょっと待ってよ、私は絵も上手くないし、芸術にだってそんなに興味がある訳じゃない。
第一、美術番長になるなんて言ったらアヤチョ王になんて言われるか」
「似合ってると思いますよ。」
「だから何が!」
「カミコさんをモデルにしたら、良い絵が描けると思いましたもん。」
「えっ……」
モデル、という単語にカミコはドキリとした。
まったく興味が無いと言えば嘘になる。
「で、でも、絵画のモデルならリカコさんのほうがずっと美人だし、スラッとしてるし、ていうか既にやってるし」
「そうですねーリカコさん美しいですもんね。」
「もうっ、からかわないで。」
「でもカミコさんの絵を見たい人、たくさん居ると思いますよ。 雑誌の表紙になったら盛り上がりそうですね。」
「もういいってば、」
「雑誌の名前はどうしましょうか。MODEはカッコよくないですか?」
「ほらビザ冷めちゃうよ!」
この時カミコがどのような感情を持っていたかどうかは定かでは無いが、
数ヶ月後、アンジュ王国には「美術番長」という役職が新たに追加されたという。
742
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/11(金) 15:02:46
番外編5「モーニング帝国研修生の日常」
昨日加入したばかりの新人研修生、ヨコヤンの表情はひどく強張っていた。
モーニング帝国の研修生が日々厳しい訓練を積んでいるのは理解していたし、
新人でも容赦無く実戦形式の組み手に放り込まれることだって覚悟していた。
ただ、初回の相手が研修生最強と知られる存在になることだけは想定外だったのだ。
「よ、よ、よろしくお願いします!」
「ふふふ、そんなにかしこまらなくてもいいよ。」
「カエディーさん……」
その人、カエディーは小柄なヨコヤンよりずっと背が高いので、実年齢よりも年が離れているように見える。
面構えだって歴戦をくぐり抜けた戦士に匹敵するほどに凛々しい。
先日、帝国剣士に選ばれたマリアと対等に渡り合ったという噂があるのだが、
それも真実に違いないと、ヨコヤンは心で理解していた。
「こ、これからカエディーさんと戦うと思うと緊張しちゃって……」
「良い心構えだね。」
「えっ?……」
「組み手をただの練習ではなく真剣勝負だとみなしている……だから緊張してるんでしょ?
そういう思いで訓練に臨むヨコヤンは必ず伸びる。 私が保証するよ。」
「そんな大層なものじゃないですよぉ……」
大ベテランのカエディーと新人ヨコヤンの実力差が大きい事は、誰が見ても明らか。
これだけ差があるとちょっとした判断ミスで大怪我を負ってしまうかもしれない。
どちらかと言えば、そういう意味でヨコヤンは緊張していたのだ。
生き死にをかけた真剣勝負をする気で挑む……という点では確かにカエディーの考えた通りであるが、
意識レベルには大きな差があった。
(とにかく全力で挑まなきゃカエディーさんに叩き潰されちゃう!
いくら模擬刀を使うと言っても当たれば痛いし…………あれ?)
ここでヨコヤンはおかしなことに気づいた。
帝国剣士を目指す者たちの組み手なのだから、片手あるいは両手で模擬刀を握るのが普通なのに、
カエディーの手には刀が握られていなかったのだ。
完全に手ぶらでヨコヤンの前にやってきている。
「あの、カエディーさん、剣は……」
「ん?……あぁ、気にしないでくれ。私はこれで良いんだ。」
「あ、ハンデってことですか?」
「違うよ。決してヨコヤンを低く見ているわけじゃない。
これが私のスタイル。最も力を発揮できる戦い方なんだよ。」
「???」
剣士を志す者が剣を持たないなんて、ヨコヤンには全く意味が分からなかった。
とは言え、組み手に臨むカエディーの瞳は真剣そのもの。
おそらくは徒手空拳によって剣より速いスピードで攻撃してくるのだろうと予測したヨコヤンは、
剣一本分のリーチを有効に生かそうと、付かず離れずの距離で戦うことに決めた。
「さぁヨコヤン、そろそろ始めようか!」
「先手必勝です!てーーい!」
ジャズダンスという舞踏術を幼少から学んでいたヨコヤンは、
独特のリズムでカエディーとの距離を詰め、相手の拳がこちらに届かないギリギリのところで剣を振った。
この攻撃方法なら、決定打を与える事は出来なくても、リスク無しで一方的に相手を削ることが可能。
そう思っていたところで、不思議なことが起こった。
(私の剣が消えた!?)
一瞬、たったの一瞬でヨコヤンの握っていた模擬刀がどこかに消え去ってしまった。
それだけでも混乱するには十分だと言うのに、
お次は正体不明の重く鋭い攻撃がヨコヤンの背中に打ち込まれていく。
この痛みは模擬刀による斬撃のようにしか思えないのだが、
相対するカエディーは模擬刀どころか武器そのものを持っていなかったはず。
最初から最後まで何が何だか全く分からぬまま、ヨコヤンは痛みに耐えきれずその場に倒れてしまった。
「あうっ……やっなりカエディーさんは強いですね……」
「ヨコヤンも最初の一撃はなかなか良かったよ。力が入ってた。」
「でもカエディーさんには通用しませんでした……」
「ねぇヨコヤン。私たちは年もそんなに離れていないんだから呼び捨てでも構わないんだよ。
呼び捨てが嫌ならアダ名とかでも良い。」
「無理です! カエディーさんをアダ名で呼ぶとか絶対無理ですからっ!」
743
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/12(土) 20:09:09
アリアケでの橋の上の戦いが終わった後、マーチャンは偶然にも尊敬する先輩に出会っていた。
そして、その場で間髪入れずに決闘を申し込んだのだ。
そんな礼儀知らずな提案に乗る人物などそう居るはずがないのだが、
帝国剣士を引退してもなお好戦的な性格の変わらぬ"悪ノ娘"は「ええよ!」の一言で受け入れた。
そして、そのままマーチャンをコテンパンに叩きのめしたのだった、
2人の実力は、以前にオダがサユに挑んだ時と同じくらい離れていると言っても良いので、
この展開は当然なのかもしれない。
それでもマーチャンは何回も何回も挑み続けたのだが、結局一勝もできなかった。
だがその代わり、大きな収穫を得ることが出来たらしい。
「そりゃーーーー!!」
刀身まるごと燃えてる木刀を二振り構えて、マーチャンはマイミの脚に飛びかかった。
狙いはトモの示してくれた弱点である太ももだ。
そこに必殺技である「蹂躙(じゅうりん)」をぶち込もうとしているのだろう。
しかし、マイミだってそれを黙って見過ごすわけにはいかない。
相手がカリンではなくてマーチャンだったというのは想定外だったが、
フリーになっている左手で迎撃するという対処法に変わりはないのだ。
しかし、阻止しようと左手を伸ばした瞬間に、
マイミの腕に無数の小さな穴が空き、そこから多量の血液が流れはじめる。
(何っ……これはいったい!?)
これは必殺技「早送りスタート」で高速移動化したカリンによる仕業だ。
マーチャンのサポートをするために、邪魔になるマイミの腕に針で穴をあけて一時的に無力化したのである。
一撃一撃の威力は大したことないがこうも連続でやられたら腕は痺れるどころでは済まない。
こんな状態になった左手ではマーチャンの必殺技を防げそうにない。
右手は依然変わらずアーリーにがっちりとホールドされている。
こうなってしまえば迫りくるマーチャンを止めるのは無理か?
いや、そんな事はない。
「まだ脚が残っている!!」
シミハムにやられてガタガタになってはいるが、金属製の義足はしっかりとついている。
この脚でさっきオダを退けたようにマーチャンを蹴っ飛ばしてやればいい、マイミはそう考えたのだ。
ところが、そこに落とし穴があった。
オダに対してうまくいったからと言って、その迎撃法をそっくりそのまま繰り返してはいけなかったのである。
「その蹴り、もう覚えてますよ。」
「!」
マーチャン・エコーチームは一度見た攻撃は全て覚えてしまう。
そしてそれは自分自身だけではなく、他者に対しての攻撃も同様に記憶するのだ。
マイミの蹴りを軽々と掻い潜り、マーチャンは太ももへと燃える木刀を下ろしていく。
744
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/13(日) 22:48:30
マーチャンが覚えたのはマイミの蹴りだけじゃない。
彼女はチナミと若手戦士らの戦いをずっとずっと見続けてきた。
あの時チナミが見せつけたのは武器を修理する技術のみではなく
己のキャパシティ限界を超える技術も示していたのだ。
マーチャンがそれをやってのけることを、同期のハルは予感していた。
「マーチャンやるのか……"断身刀剣"を……!!」
まだマーチャンの木刀は敵の脚に届いていないというのに
マイミの瞳には、金属で出来た義足が強く凹まされて、赤く熱を持つイメージが映っていた。
これはマーチャンが自身の殺気を木刀に乗せて、マイミへと一早く届けたということ。
伝説の戦士に対抗しうる術である断身刀剣を、
モーニング帝国剣士はオダ・プロジドリだけでなく、マーチャンも習得していたのだ。
しかし、現段階の彼女らのそれはまだ未熟であるのも事実。
殺気を飛ばして相手の脳に直接伝えるということまでは出来ているが、
伝搬できているのはあくまでイメージのみ。痛くも痒くもない。
ゆえに次の行動を事前告知してやっているのに過ぎないのである。
だが、その後に来る必殺技を絶対に回避できないのであれば話は変わってくる。
マイミの右腕はアーリーに掴まれているし、右足は蹴りを空振ったばかりで自由が利かない。
自身が苦しむことが確定している必殺技「蹂躙(じゅうりん)」を待つのは恐怖でしかなかった。
「うおりゃああああああああああああああ!!」
マーチャンの蹂躙(じゅうりん)は何も特殊なことをするわけではない。
攻撃したい箇所に向かって燃える木刀を叩きつける。それを二刀流でひたすら繰り返す、それだけの技である。
ただ、その間は何があっても非情に徹すること……それだけがポイントだ。
「きぃえええええええええええええ!!!!」
「ぐっ……」
木刀の持つ高熱はマイミの金属製の義足へと伝わっていく。
痛みに強い伝説の戦士も耐えうる熱には限界があるのか、マイミは苦悶の表情を浮かべていた。
だが、マーチャンはそれでも攻めの手を止めたりしない。
愛する後輩マーチャンの背中に強烈な火傷を負わせたレイニャがやったのと同じように、
相手が倒れるまでは、木刀の乱打を決して中断するつもりは無いのである。
745
:
名無し募集中。。。
:2017/08/14(月) 14:42:36
マイミはこれからマツーラの二の舞となるのかそれとも…
746
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/16(水) 07:16:40
この苦痛から逃れるために、マイミの身体は勝手に動き出した。
必殺技「Full Squeeze!」によって抱え込まれている右腕をアーリーごと動かして、
木刀の連撃だけに集中しているマーチャンにぶつけてやったのだ。
アーリーはそれなりに身長がある方だし、胸囲だってKASTの中では圧倒的TOPと言われているので
決して軽いという訳ではないのだが、
文字通り火事場の馬鹿力を発揮したマイミにとってはその重さは無いも同然だった。
勢いよく衝突したためアーリーはあまりのショックにマイミの右腕を放してしまうし、
ぶつけられたマーチャンごとそのまま吹っ飛ばされることになる。
(……!!)
思いがけない出来事にリナプーは取り乱し、マイミを噛む顎の力を少しばかり緩めてしまった。
そのほんのちょっとの弱体化が命取り。
マイミは上体を前に倒してリナプーの牙から放れたかと思えば、
頭を素早く後ろに振って、後頭部をリナプーの顔面にバチンとぶつけだした。
勿論これをただの頭突きと思ってはいけない。リナプーからしてみれば岩石が降ってきた程のインパクトのはず。
ゆえにしばらくはうずくまる事しか出来なくなってしまう。
「ひとまずは窮地を脱したか……次はトモ、お前だな。」
マイミにキッと睨まれたトモは全身がビリビリと痺れるのを感じた。
それでも、ここで怯えた顔を見せてはいけないとトモは強く思っていた。
マイミを倒すための策はまだ尽きていないのだ。
その証拠に、闘志を絶やさぬ戦士がマイミの前に立ちはだかっている。
「トモは私たちのリーダーなんです、一兵士の私が立っている限り、リーダーの首は狙わせません。」
何がリーダーだと、トモは心の中でクスッと笑った。
そういうお前の方が自分たちを導いた先導者(リーダー)じゃないかと思っているのだ。
絶望に打ちひしがれていた若手戦士達の真のリーダーであるカリンは、両手に釵を構えてマイミの行く手を阻まんとした。
「なるほど。カリン、君が私を止めると言うんだな。」
「そうです。」
「それは良いが……超スピードの反動か?立っているだけで辛そうじゃないか。
そんな身体でどうやって私を止めようというんだ。」
マイミの言う通り、カリンは全身小刻みにプルプルと震えていた。
つい先ほどまでマーチャンをサポートするために必殺技「早送りスタート」で高速化していたため、
その反動が一気に返ってきて思うように動けなくなってしまっているのだ。
この現象はチナミと戦う時にも起こっていた。要するに、連続して超スピードの動きを実現することは不可能なのである。
そして、そのことはカリンも十分に理解している。
「私がもう一度"早送りスタート"を使うには、身体をしっかりと休めないといけません。」
「ああ、そこで休んでいればいい。休み時間は10分か?1時間か?1日でもいいぞ。」
「いえ、5秒あれば十分です……マーチャン!お願い!!」
「なんだと……?」
休息に必要な時間が5秒と短いのがまず意外だったし、
急にマーチャンを呼びつけたこともよく分からない。
それに、気絶させるつもりでアーリーをぶつけたマーチャンの意識がある理由だって明確ではない。
マイミがそうして混乱しているうちに、カリンによる反撃のシナリオは進んでいく。
747
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/17(木) 03:51:42
「カリン!」
名前を呼ばれたマーチャンはすぐに起き上がって、カリンの方へと走っていった。
強烈な一撃をもらったマーチャンがどうして元気でいられたのか?
それは、以前にマーチャンはその攻撃を"覚えた"ことがあったからだ。
モーニング帝国の次期帝王を決めるためにQ期と天気組が訓練場で戦った時のことを思い出してほしい。
その時にフク・アパトゥーマは必殺技「Killer N」をハルにぶつけて、
近くにいるマーチャンとアユミンを巻き込み、まるごと一掃していたが、
その時にマーチャンは「味方が横から衝突してくる」という経験をしていたのである。
一度体験したことならマーチャンは覚えることが出来るし、二度目からは対応してしまう。
マイミのパワーからなる攻撃だったので完全な無傷とはいかなかったが、
カリンの要望に応えることくらいならまだまだ十分可能なのだ。
「マーチャン、アレは持ってる?」
「もちろんだよ、ほら。」
マーチャンはポケットから毛のように細い針を20本ほど取り出した。
これはマイミに決闘を挑むずっと前にカリンがマーチャンにオーダーしていた新兵器だ。
マイミにはその用途が全く分からなかったが、
チナミの行動を余すことなく見ていたマーチャンには手に取るように分かる。
この針はカリンを刺すためにあるのだ。
マーチャンはカリンの腕、腰、脚に容赦なくぶっ刺していく。
「そりゃそりゃそりゃ〜〜!!」
「あ〜〜〜っ!!!」
その行為は傍からは仲間割れにしか見えない。
だが、これも立派な治療なのだ。針治療のおかげでカリンの身体はみるみる回復していく。
もちろん針治療はそんな即効性のある治療法では無いのだが、
カリンは現にチナミが針治療ですぐに回復したのを目撃しているため、そういうものだと思い込んでいる。
この思い込みが非常に有効に働き、少なくとももう一度だけ必殺技を発動することを許してくれたのだ。
(私には知識が無い……だから今はマーチャンに頼ってるけど、いずれは自力で治療できるようになってみせるね。
でも、そのためには目の前のマイミ様を倒さなきゃ……)
「私の必殺技、"早送りスタート"で!!」
さっきまでガチガチに固まっていたカリンは、約束通りの5秒のインタバールで回復してみせた。
時計がチクタク進むようにカリンの動きは超速化していく。
その速さはもはやマイミの目でも追えぬ程となり、一切知覚されることなく背後へと回り込むことを可能にする。
748
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/18(金) 05:32:22
カリンの狙いはマイミの弱点だ。
とは言っても最初にトモが見抜いた弱点である太ももでは無い。
リナプーが噛みついた背中が新たに発生した弱点だと、カリンはみなしたのである。
噛み跡に対してカリンは釵を突き刺していく。
「っ!!!」
傷口に針を押し込まれたため、マイミは当然の如く激痛を感じた。
だがこれでは痛みと共に、カリンが背後にいることまで伝える形となっている。
その情報を頼りに、マイミは反射的に両手で自身の後方をぶん殴ったのだが、
カリンは既にそこには存在せず、二つの拳は空を切るだけだった。
ではどこに行ったのかと言うと
もう一方の弱点の太ももにダメージを与えるために、大胆にもマイミの正面に瞬間移動していたのだ。
(確信した!マイミ様は早送りになった私を追えていない!)
カリンの必殺技「早送りスタート」は速すぎるため、受け手側はガードしようにも間に合わない。
つまりカリンはノーガードの相手に対して好き勝手に攻撃することが出来るのである。
今回もこうしてマイミの太ももを一発、二発、三発と蹴っ飛ばしている。
ただでさえ傷んでいたところにトモの矢とマーチャンの熱を受けて、更に蹴りを入れられるのは辛いだろう。
流石のマイミも絶叫してしまう。
「うああああっ!」
(マイミ様、ごめんなさい……でも時間ギリギリまで攻めの手を緩めるつもりはありません!!)
反撃が来るよりも速く、カリンはまたもマイミの背後に回りこんだ。
ここでまたリナプーの噛み跡を狙う線もあったが、カリンはそうしなかった。
狙いが分かりやすすぎると先読みされて反撃を受ける可能性があるので、
ピョンと跳びあがり、マイミの後頭部に蹴りを入れる選択肢を選んだのだ。
もちろんこの攻撃に対するガードも無く、見事にクリーンヒットする。
(行ける!この調子で繰り返せばマイミ様に勝てる!)
カリンは勝ちを確信した。
そして次の行動にすぐさま移るためにひとまず地面に着地しようとしたのだが、
ここでカリンの身体に異変が起きる。
地に足をつくと同時に、全身の骨が砕けるような激痛が襲ってきたのだ。
(!?……この痛みはなに!?)
カリンは興奮状態になると無痛状態になるということは以前に説明したかもしれない。
脳内でアドレナリンが分泌されることでサイボーグのように痛みを感じにくくなるのである。
しかし、そんなカリンでも痛みを感じる例外のケースが存在する。
身体を無理に酷使した反動が返ってきた時の苦しみは、いくら軽減しようにも和らがないのだ。
「どうやら時間切れのようだな……」
「えっ!?」
マイミに指摘されたカリンはひどく狼狽した。
確かにこの症状は"早送りスタート"による高速化が切れた時と同じだ。
全身が痛いし、それに身体が少しも動かなくなる。
ただし、それは超スピードを数分は維持し続けた場合の話だ。
今は時間にして30秒も高速化していないはず……なのに反動が返ってきたことにカリンは戸惑っている。
だが、考えてみればそれは当然のことなのだ。
カリンは自分の身体のことをちゃんと理解していないので、針治療で回復すれば繰り返しいくらでも速くなれると誤解しているが、
身体は酷使すればするだけ、それにあった休養をしっかりととらねばならないのである。
針治療によって一時的に身体を騙していたがそれも長くは続かなかったというわけだ。
「マーチャン!もう一度私に針を刺して!」
「ダメだよ……だって針はもう、無いんだもん。」
「そんな……!」
749
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/19(土) 05:33:44
もはやカリンには打つ手はない。誰の目にもそのように見えた。
だが若手軍にはこれまで何度も煮え湯を飲まされてきたので、マイミはこの局面で油断することはしなかった。
目にも見えないほどの拳速でカリン、そしてマーチャンの鳩尾を強打したのだ。
いくらカリンが超スピードで動けたとしても至近距離からの速攻は避けられないし、
攻撃自体が見えなければマーチャンも対応することが出来ない。
結果的にカリンとマーチャンは簡単に気を失い、倒れてしまった。
「残るは今度こそあと一人……トモを倒せばすべてお終いだな……」
マイミは遠くで弓を構えるトモの方を向き、フラつきながらもそちらへと歩いていった。
来させまいとトモも矢を二、三発放ったが全て右腕で跳ねのけられてしまう。
予測不能な攻撃には不覚をとることも多かったマイミだが、来ると分かっている攻撃は怖くない。
このまま全弾防ぎきってトモの元へと到達するつもりなのだ。
トモも矢を打ちながら「この攻撃は無駄なんじゃないか?」と思うこともあったが、決して攻撃を止めたりはしなかった。
ここで諦めたらNEXTに繋がらないことをよく分かっているのである。
そんなトモの心拍数がひどく上がっていることに対して、アイリが心配していた。
(とても辛そう……そうだよね、本当は逃げ出したいくらい怖いんだよね。
だってウチのマイミは化け物にも程が有るんだもん。我が団長ながら本当に呆れるよ。)
アイリも若い頃に強大すぎる存在を相手にしたことがあるので、トモが恐怖する気持ちは十分わかっていた。
そして同時にここで退いては何にもならなくなると強く感じていることも、読み取っていた。
立場上、手助けをしてやれないことに多少歯がゆく感じながらも、
トモが諦めずに矢を放ち続ける限りは大丈夫だと確信している。
(きっと気づいているよね? ウチの団長は数を数えられていないってことに。
マイミはあと一人、トモだけ倒せば良いって思っている……そんなはずがないのにね。)
マイミは既にトモの襟首を掴んでいた。
嘘みたいな話だが、本当に矢を全部弾いてここまで来てしまったのだ。
そしてカリンやマーチャンにしてみせたように、トモの腹に強烈なパンチをお見舞いする。
ここまでノーダメージでやり過ごしてきたが、マイミの一撃はそんな事もお構いなしにトモの意識を断っていく。
地面にドサッと倒れたことから全てが終わったとマイミは考えていた。
しかし、そうはいかなかった。
アイリの予測通り、そしてトモやカリンら勇気ある戦士達が期待していた通りに、
悔しさをパワーにした者が新たに立ち上がったのだ。
「ハル!!いくよ!!!」
「おう!サユキ!!」
その戦士の名はサユキ・サルベとハル・チェ・ドゥー。
2人ともさっきまで恐怖に押し潰されそうになっていたし、現に涙で顔がグチャグチャになっているのだが、
いつも側で戦ってきた同志たちの勇敢な姿を見て、心を強く揺さぶられて、立ち上がることを決めたのだ。
そして不思議なことに、
チナミ戦で破壊されたはずの武器が、サユキとハルの手には綺麗な状態になって握られていた。
750
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/22(火) 14:32:55
実は今、こぶしの音霊目的で三浦海岸に来てます。
海でメンバーが遊ぶ姿を見れたので既に満足しちゃってますが、
夜のライブも楽しみにしてます。
携帯の充電が待てば、開演前or終演後に続きを書きたいと思います。
751
:
名無し募集中。。。
:2017/08/22(火) 15:04:37
>>750
こぶしが海で遊ぶ姿。。。はまちゃんのはまちゃんやあやぱんのあやぱんが見れたなんて…なんて羨ましい!w
楽しんできて下さい♪
752
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/22(火) 17:41:03
KASTのトモとカリン、そしてアーリーはサユキが立ち上がってくれることを信じていた。
伝説の存在に恐怖したとしても、最後まで俯いたままでいるヤツでは決してない。
そう確信していたからこそマーチャンにサユキの武器の修理を依頼していたのだ。
おかげでトンファーを治すことが出来ず、アーリーは素手での参戦となってしまったが、
その代わりにこうしてサユキがヌンチャクを力強く握れたのだから、安い代償だ。
そして、KASTから依頼を受けたマーチャンは、ハルの竹刀も直さねばならないとすぐに思った。
帝国剣士にはサヤシやカノンなど他にも仲間は多くいるが、
マーチャンはとにかくハルに戦って欲しかったのである。
幸いにも竹刀の修理には時間がかからなかったため、マイミに挑む前に問題なく2つの武器をピカピカに完成させることが出来た。
そしてその武器をサユキとハルに渡したのは、高速化状態にあったカリンだ。
マーチャンが必殺技「蹂躙(じゅうりん)」でマイミを叩いているうちに武器置き場へとダッシュし、
味方の活躍に心を激しく揺さぶられているサユキとハルの前に置いたのである。
長年連れ添って来た同志が強大な存在に立ち向かう中で、自分だけが何も出来ていない様が辛くない訳がない。
その苦しみから解放される手段はただ1つだけ。
カリンの残した武器を持ち、ヤケクソでもいいから全力でぶつかることだけだ。
「やってやる!やってみせるんだ!!」
「うおおおおおお!!」
しかし、いささかヤケクソ過ぎるように見えた。
いくらマイミがひどく疲労困憊しているとは言え、無策で突っ込めば返り討ちにあうのは必至。
そうすればせっかく奮起したといつのに無駄ゴマにしかならない。
そんな悲しく虚しい結末が有って良いのだろうか。
そうだ。有って良いはずがない。
それをよく知っている2人は、無鉄砲に見えてなかなかクレバーに振舞っていた。
竹刀が当たるくらいの距離までマイミに近づいたところで、
ハルが目をカッと見開く。
(喰らえっ!!必殺、"再殺歌劇"!!)
自暴自棄のフリをするのはここまで。
仲間たちの戦いから、マイミが予想外の攻撃に滅法弱いことは十分確認できている。
ハルは自身の速度を一段階上げて、マイミの弱点である太ももに雷の如き一撃をピシャリとぶつけるのだった。
一瞬遅れてマイミも反応し、ハルの攻撃を覚悟して受け止めようとしたが、
そうすること自体がハルの必殺技の術中にハマっている証拠。
ハルの真の狙いは一撃目とほぼ同じタイミングで叩き込まれる二撃目にある。
その二撃目の狙いは、リナプーが作りカリンがさらに育てた第2の弱点である"背中"。
緊張を全くしておらず緩みきっている背中への再殺はさぞかし痛かろう。
753
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/22(火) 17:42:44
夕方ごろにまたメンバーが海で遊んでました。
はまちゃんのはまちゃん?不思議なことに見覚えないですね……
754
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/22(火) 19:53:33
音霊見て来ました!
人数こそ少なくなりましたが、最初から最後まで力強い、メンバーもファンも汗だくになる良いライブでした!
この話も早く三部に入りたいものですね、、、
755
:
名無し募集中。。。
:2017/08/23(水) 00:27:38
> 見覚えないですね……
ヒドいw楽しんで来たようで良かった…熱中症で倒れた人いるって聞いて少し心配でしたw
ついにトリプルレットも参戦!まさしく「今だ!ダッシュで向かって行こう」って感じが出てて良いですね〜
756
:
名無し募集中。。。
:2017/08/23(水) 00:28:28
>>755
訂正
×トリプルレット
○トリプレット
757
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/23(水) 18:35:45
ハルの必殺技を背中で受けたマイミは悶絶しそうになった。
非力な子供が振るっても鞭は痛いのと同じ理屈で、
しなる竹刀は実際のダメージ以上に痛みを与えてくれる。
しかもそれが予想外の方向から襲って来たので、あとほんの少し気が緩んでいたら意識が飛ぶところだったが、
マイミはなんとか耐えてみせた。
伝説とも呼ばれる彼女自身も実はまだ成長しており、
シミハムやリナプー、カリンらに立て続けに背後を取られた経験から、後方からの不意打ちに慣れてしまったのだ。
頭で考えるよりも早く背中に手が回るようにもなり、
一瞬にして右手でハルの竹刀を掴んでは、超パワーで握りつぶしてしまう。
「ああっ!竹刀が……」
「この程度なんてことないぞ!!次はサユキか!前からでも後ろからでもかかってこい!!」
この時サユキは心臓の音がドクンと聞こえるのを感じた。
絶体絶命の窮地において、自分がキーパーソンとなったことに緊張し、
鼓動音が大きくなってしまったのだとはじめは思っていた。
だが、そうでは無かったのだ。
サユキは耳が良い。
果実の国では名門コーチを呼び寄せて聴覚を鍛えるトレーニングを重点的に行なっているだが、
サユキの音を聞き分ける力はKASTの誰にも負けないくらい優れていた。
モーニング帝国城での戦いで姿の見えないリナプーの位置を察知できたのだって耳が良かったからだ。
そんなサユキの耳に今はいっている音はサユキ自身の心臓音ではない。
なんとマイミの鼓動を聞き取っていたのである。
それをサユキが自覚した途端に他の音までもドッと聞こえてくる。
次々と大きくなる心臓音だけでなく、ひどく息切れしている呼吸音やガクガクと震える脚の音を、サユキは正確に捉えていた。
サユキにとってはこの世と同等くらいに大きい存在であるマイミから発される音の組み合わせは、
「地球からの三重奏」と形容しても良いくらいだ。
そんな大きい存在が何故こうも異常音を発しているのか、
その理由にサユキは気づいてしまった。
("前からでも後ろからでも"って言った時から音が大きくなっている。
マイミ様、ハルの技が効いていないように見えて、実は恐れているの?
そりゃそうだ。みんながあんなに頑張ったんだから身体がボロボロになっていないはずがない。
そこにハルから前と後ろを同時に攻撃されて、限界に近いんだ。
だったら私もハルと同じことをしたら良いのか?……)
サユキはすぐに「ダメだ」と感じた。
いくらマイミがその攻撃を恐れているとは言え
自分からその事を口に出したのだから対策を全くしてこない事は有り得ない。
もちろんある程度は有効なのだろうが、マイミを倒しきるにはハルの"再殺歌劇"の上をいく攻撃を当てねばならないだろう。
ではどうすればいいのか?
二撃同時の上をいく攻撃とはいったいどのような攻撃なのか?
(そうか……三重奏だ。)
サユキにはハルほどのスピードは無い。
だが、マーチャンに直してもらったこの武器ならばそれを実現することが出来る。
サユキはそう確信した。
758
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/24(木) 18:18:11
サユキが愛用するヌンチャク「シュガースポット」は木製だったが、
チナミの物作りを学習したマーチャンの修理によって、鉄製に生まれ変わっている。
重量が増したおかげで多少使いにくくなっているものの、破壊力は比べ物にならないくらいに上がっている。
これを上手く当てれば大抵の敵の意識を飛ばすことが出来るだろう。
しかしマイミはそういった「大抵の敵」には当てはまらないことは誰もが分かっている。
ならば当てるには工夫が必要だ。
(私の強みを全部出しきるんだ……これまでの努力が実を結ばないはずがない!!)
サユキは地面をタンと強く蹴り、宙に跳び上がった。
それもただ真上に跳ぶのではなく、マイミの右肩に向き合うように斜め方向にジャンプしている。
サユキの両手にはそれぞれ鉄製ヌンチャクが握られていることから、
マイミは自身のどこが狙われているのか瞬時に判断することが出来た。
(まさか、太ももと背中を同時に叩こうとしているのか!?)
その推測は7割当たっていた。
サユキはマイミの横方向から攻めることが出来るので、
右手のヌンチャクで第1の弱点の太ももを、
左手のヌンチャクで第2の弱点の背中をいっぺんに叩けるのである。
それに気づいたマイミはすぐに弱点である傷口をガードし始めた。
疲弊から、脚を使って回避できないのはとても苦しいが、
弱点を手で抑えればサユキの攻撃から確実に自身を守ることが出来る。
ここさえ乗り切れば、後は地面に着地したサユキを殴るだけで終了する……マイミはそう思っていた。
だが、サユキの真の狙いは第1の弱点や第2の弱点ではなかったのだ。
それに気づいたアイリは背筋がゾッとするのを感じる。
(見えている!?……いや、聞こえているというの?
サユキちゃんの耳はマイミの"第3の弱点"を確かに捉えているんだ。)
前にも書いた通り、サユキの聴覚は非常に優れている。
そして更に、この緊張の場面においてその能力はもう一段階研ぎ澄まされてる。
彼女には聞こえていたのだ。
ハルの竹刀を掴んだ時も、太ももを手で抑えた時も、
マイミの右腕の骨がギシギシと軋む音を発していたことを。
「これが私の必殺技……"三重奏(トリプレット)"!!」
一本目のヌンチャクはトモが見抜き射抜いた太ももへと向けられた。
二本目のヌンチャクはカリンが拡張した背中の傷穴へと向けられた。
それらの攻撃は当然のようにマイミにガードされてしまったが、
サユキの攻撃は二連同時を超える三連同時攻撃だ。
天高くまで飛翔する超人的な跳躍力は、他でもない強靭な脚力が生んでいる。
ふくらはぎバリ筋肉は努力の証。
そのサユキの努力の賜物とも言えるキックが、アーリーが抱きつくことで作った"第3の弱点"、マイミの右肩に炸裂する。
「なんだと!?そんな……この痛みは!!!」
マイミの肉体および骨格はとても頑丈に出来ている。
しかし、そんなマイミでも万力のように強いアーリーの抱きつきの後では骨太を維持できなかったようだ。
サユキの蹴りによる駄目押しで、右腕の骨が砕け散る。
「これが私たちの力です!!いい加減に倒れてくださいっ!!」
サユキの言葉を聞いたマイミは、自分は孤独な戦いをしていたのだと初めて気付くことが出来た。
"私たち"という言葉はKASTだけでなく、勇気を持って立ち上がった全ての戦士のことを指すのだろう。
みんなで結束すればどんな強者にも勝てると数年前に学んだはずなのに、どうして自分はそれに気づけていなかったのか。
そんな大事なことを忘れていたのだから、このような結末になって当然だろう。
力尽きかけたマイミは後ろに倒れながら、そのような事を思っていた。
ところがここで状況が一転する。
意識が断ち切られる寸前、マイミの視界によく知る人物が入って来たのだ。
(オカール!?)
その人はキュートの仲間オカールだった。
いつの間にかすぐ側にまでやって来ていたのである。
自分にも頼れる味方がいた事を思い出したマイミは心から安堵する。
「来てくれたのか……すまないが私はもう駄目のようだ……
オカールの手で、若い戦士達を倒してくれないか?……」
759
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/25(金) 16:32:48
「甘ったれてんじゃねぇ!!」
「!!?」
倒れくるマイミの後頭部を思いっきり蹴っ飛ばしながら、オカールはそう叫んだ。
蹴られた勢いのままに直立してしまったマイミは、これ以上ないくらいに混乱している。
いったい何がどうしたと言うのだろうか。
「オカール?……」
「団長さぁ……ホントなんにも分かってないよな。」
「な、なんだと?」
「この勝負はヤツらがアンタに売った喧嘩だ。 バトンタッチなんてもんは存在しねぇんだよ。
キュート戦士団長マイミが最後まで立っていたら勝ち。ぶっ倒れたら負け。ルールはそんだけだ。
例え俺たちキュートが助太刀したとしてもな、アンタが寝てたら無意味だろうが。」
「しかし、私はもう心も体も限界で……正直言って戦えそうにない……」
「あーーーもう!まだそんな事言ってんのかよ!!
いいからさっさと周りを見ろ! 腑抜けてんのは団長ただ1人なんだよ!!」
「!!!」
顔を上げたマイミは、周囲の状況を見て驚愕した。
今現在立ち向かって来ている若手はハルとサユキだけだと思っていたが、
それは大きな勘違いだったのだ。
「おいオダァ!大丈夫か?意識あるのか!?」
「んっ……アユミンさんも立ち上がったんですね。」
「……当然だろ、あんなもん見せられたら、ね。」
「私、安心しました。 ここで奮起しなかったらアユミンさんは二流剣士以下になっちゃいますもんね。」
「なんだとオダァ!!」
「メイ、リカコ、やる気はみなぎってるか?」
「うん!」「はい!\(^o^)/」
「KASTのみんな、知らんうちにカッコよくなっとるなぁ……でも、ウチら番長も負けへんで。
相手は依然変わらず強敵、カクゴして挑むんや!!」
「「おーーー!!」」
エリポンが、サヤシが、カノンが、アユミンが、
カナナンが、メイが、リカコが立ち上がり、闘志の炎を燃え上がらせている。
先ほどまで戦っていた者たちを「勇気ある戦士」と区分する必要はもはや無いだろう。
全員が全員、例外なく勇気ある者に変貌したからだ。
それを見たマイミは胸を強く打たれる。
そして、これから自分が何をするべきなのか明確に理解したようだ。
「オカール、下がっててくれ。」
「お、なにすんだ?」
「将来有望な戦士たちと拳を交えるに決まっているだろう!それも全力でなっ!!」
マイミが力むと同時に、暴風雨のようなオーラが半径100mに吹き荒れた。
ちょっとばかし乱暴ではあるがこれでこそ本来のマイミだ。
そして若手戦士らも今さら嵐に怯んだりはしない。
天変地異のようなオーラにも決して恐れる事なく、立ち向かおうとしているのだ。
展開が上手く運んで満足気なオカールのもとに、ナカサキとアイリがニヤニヤしながら寄ってくる。
「オカールやるじゃないの。」
「発破をかける天才ね。」
「へへ、よせよ。」
対ベリーズに向けて、マイミと若手の両方を焚きつけることが出来たのでこの3人はとても満足していた。
だが、マイミの次の言葉を聞いてちょっとだけ後悔をし始める。
「本気の本気で行くぞ! 私の必殺!"ビューティフルダンス"で皆殺しだ!!」
「「「えっ」」」
どうやらやる気を引き出し過ぎてしまったようだ。
この後、鬼神の如く暴れまくったマイミを止めるのには苦労したらしい。
760
:
名無し募集中。。。
:2017/08/25(金) 17:00:25
やはりトリプレットはオカールも入れて3人だね
…それにしても団長ってば単純w
761
:
名無し募集中。。。
:2017/08/25(金) 22:38:55
やる気を出しすぎたマイミは一瞬本来の目的を忘れていそうだなw
762
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/08/28(月) 15:18:58
「んっ……」
マイミとの戦いで意識を失っていたカリンが目を覚ました。
起きてからしばらくの間は寝ぼけていたが、
自分が寝ていた場所がいちごのベッドでは無いことに気づくのに、そう時間はかからなかった。
(お外だ……時間は夜?……それに、みんなもいる。)
辺りには帝国剣士がいた、番長がいた、そしてキュート戦士団もいた。
みんながみんな、起きたカリンを朗らかな表情で見ている。
カリンが事態を理解しかけたところで仲間であるアーリー、トモ、サユキが声をかけてきた。
「あ!起きたぁ!」
「よく寝てたね。起きたのはカリンが一番最後だよ。」
「必殺技で無理をしすぎたから疲れちゃったのかな。」
どこかで聞いたことのある言葉をかけられたが、カリンの心境は以前と大きく異なっている。
この世界はスバラしいよね、この世界は捨てたもんじゃない。
そう強く感じてた。
「私たち、ベリーズを倒しにいけるんだね……!」
周りにいるみんながニッコリと微笑んでいることからも、カリンの推測が正しいことが分かるだろう。
もうこの場にはベリーズとの戦いを恐れる者に など存在しない。
奮起した若手戦士らはもちろんのこと、マイミだってやる気を完全に取り戻している。
「本当に見苦しい姿を見せてしまった……心から反省しているよ。カリン、君が頑張りをみせてくれたこらこそ我々は大きな過ちを犯さずに済んだんだ。」
「そんなそんな……」
「ところでカリン、既に他のみんなには聞いていたのだが……」
「はい?」
「私は改めて連合軍のリーダーを務めたいと思っている。 こんな私だが、着いてきてくれるかな?」
「はい!もちろんです!」
カリンだけでなく、全員が全員同じ思いだった。
自分たちの前を突っ走るのはマイミしかいない。そう思っているのである。
あんな事が起きたのだから、もう二度と立ち止まったりはしないと信じている。
「それじゃあ団長。いや、リーダー。 そろそろ目的地を発表した方がいいんじゃない?」
「そうだな、ナカサキ。」
ベリーズとの再戦場所はこれまで若手たちには知らされていなかった。
だがもはや隠しておく必要はないだろう。
その場所の重みに圧倒されることはあっても、怖じ気付くような彼女たちでは無いのだから。
「ベリーズとは明日の夜、武道館で戦う。そこに居る王とサユを我らの手で取り戻すんだ。」
「「「武道館!?」」」
武道館という名を聞いて驚かぬ者はいなかった。
前にも触れたが、この施設は戦士たちの憧れの舞台。
ここで戦えることこそが最上級の名誉なのである。
果実の国のKASTたちは特に強い思い入れを持っており、喜びもひとしおだった。
「武道館で……戦えるんですね……」
トモ・フェアリークォーツが涙を流したのを見て、一同は驚いた。
マイミ戦では冷静に見えたトモが今こうして顔をグシャグシャにしているのを見ると、
改めて特別な場所だということを再認識させられる。
そして、心震えているのはKASTだけじゃない。 帝国剣士も、番長も、キュートだってそうだ。
GRADATION豊かな"たどり着いた女戦士"たちは、MISSION FINALにFULL CHARGEで挑んでくれるに違いない。
763
:
名無し募集中。。。
:2017/08/29(火) 21:14:24
詰め込んだなw
764
:
名無し募集中。。。
:2017/08/30(水) 00:36:33
リアル『仮面ライダーイクタ』が見れる日も遠くはない?!
@
えりぽんが今後やりたいこと
仮面ライダーか戦隊モノに出たい。アクションも素で頑張る
@
えりぽん名古屋BDイベ
やりたいことありますか?の問いに
えりぽん<仮面ライダーとか戦隊モノやりたい!ああいうの大好き!えりは変身する前からいろいろ(アクロバット)やるから!
変身すると大人の力でなんとかなるじゃんwだから変身する前からやる!
スタントいらずをアピるえりぽんかわいい
765
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/01(金) 09:00:43
恐怖に打ち勝つ心と、戦うためのモチベーションは揃えることが出来た。
しかしやる気だけでは怪物たちに勝つことは出来ない。
作戦が必要なのだ。
そのために彼女らは自軍と敵軍の戦力分析から始めることにした。
武器修理に忙しいマーチャン以外が一箇所に固まり、地べたに座っていく。
ここで進行を務めるのはナカサキだ。
作戦会議をマイミやオカールに任せたらえらいことになるし、アイリの発言はメンバーの耳にうまく入らない可能性があるので、
人見知りだろうがなんだろうがナカサキが頑張らないといけないのだ。
「えっと、それじゃあ私たちがどれだけ戦えるのか整理しようか。
まずはキュートね。マイミ団長は無傷、私ナカサキは出血が酷かったけど明日の夜まで休めば5割の力は取り戻せそう。」
マイミは無傷、という発言に若手戦士らは引っかかった。
どう考えても大怪我だし、そもそも腕を骨折していただろうと言いたかったが
ふとマイミの方を見てみると何故か傷が殆ど癒えているように見える。
本人もアハハと笑っているし、一同は深く突っ込まないことにした。
「アイリとオカールは?」
「怪我の方はそうでもないけど心身への負担が大きくて……私も出せて5割程度かな。
でも"眼"の方は大丈夫。
ここにいる全員の弱点がちゃんと見えてますよ〜」
「ナカサキもアイリも情けねぇな、俺は100%全力で動けるぜ!!」
「嘘でしょう? その脚、ちょっと叩いただけで砕けちゃいそうだけど」
「チッ、アイリの前じゃカッコつけらんねぇか……
そうだよ。 モモコのヤツにやられて脚が折れちまってる。
まぁ明日の夜までには走れるように持ってくから心配すんなよ。」
アイリの弱点を見抜く眼の前では、どんなハッタリも無意味だということが示された。
なので若手たちは自分たちの体調を正直に伝えようと決めたが、
ここでおかしなことに気づく。
次のアユミンの言葉と同じことをみなが思っていたのだ。
「あれ?……ひょっとして、私たちってそんなに怪我してなくない?……
ベリーズと本気でやり合ったのに、変なの……」
帝国剣士のエリポン、サヤシ、カノン、アユミン、ハル、マーチャン、オダ
番長のカナナン、リナプー、メイ、リカコ
KASTのトモ、サユキ、カリン、アーリー
以上15名は打撲こそしていたが、骨や内蔵に影響を与える大怪我はほとんどしていなかった。
伝説の存在であるチナミ(と、場合によってはミヤビとマイミ)と真剣勝負をしたと言うのに、これはおかしい。
「ふふ、上手くやったんだね。」
「えっ?ナカサキ様、上手くってなんですか?」
「あ、いや、違うのアユミンちゃん。 みんなが致命傷を貰わないように上手く回避したって言いたかったの!」
「なるほど!」
思い返せば若手が倒れた要因の大半は、極度に疲労を感じていたり、あるいは心を折られた事にあった。
そのため幸いにも身体への直接的な影響が少なく、明日までにしっかりと体を休めれば100%に近いパフォーマンスを発揮できるのだ。
なんと幸運な事だろうか。
本当に運が良かったと、マイミと大半の若手たちはそう思っていた。
766
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/01(金) 09:08:41
おお、生田が特撮に触れてる!
運動神経もそうですけど、ライダー俳優はグループアイドル(ぱすぽ、夢アド)に所属していたり、元おはスタ出演者(仮面ライダーキバ、チェイサー)の人が多いので
生田がなっても全然おかしくないんですよね。
近いうちになることを期待してます。
767
:
名無し募集中。。。
:2017/09/01(金) 13:14:44
やっぱりマイミだけが知らないのかw
是非ともえりぽんには仮面ライダーやって欲しい!でも撮影で長期間拘束されるから娘。やってる間は難しいかなぁ
768
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/02(土) 12:01:50
自分たちの戦力は整理できた。次は敵であるベリーズ達だ。
そして、モモコの部下であるカントリーだって忘れてはならない。
両生類を操るリサ・ロードリソース、
鳥類を操るマナカ・ビッグハッピー、
魚類を操るチサキ・ココロコ・レッドミミー、
そして哺乳類(自分)を操るマイ・セロリサラサ・オゼキング。
彼女らは(1人を除けば)身体能力こそ大したことないが、動物を操る技能はとても厄介だ。
直接的に戦ったことのあるカナナンが4人の負傷の度合いについて話していく。
「マナカとマイの2名は番長とKASTで撃退したことがあります。
本当ならその時点で再起不能にするべきやったけど、モモコが来たせいで叶いませんでした……
その日から数えて3日近く休めていることもあって、明日の戦いでは本調子で挑んでくるかもしれません。
残るリサとチサキについてはほぼ無傷ですね。 コンディションはバッチリやと思います。」
一同はため息をついた。
ベリーズと戦っている最中にあの動物の群れが襲ってくると考えると、とても面倒だ。
そいつらが横槍を入れてこなくてもベリーズは強敵だと言うのに。
「ナカサキ様、ベリーズの様子はどんな感じでしたか?」
「そうねえ……正直なところ、満身創痍に見えたかな。」
「えっ!?」
いくらベリーズが強いとは言っても、キュートと激戦を繰り広げたのだから、無事でいれられるはずがなかったのだ。
途中退散したシミハムは比較的健康だとしても、
クマイチャンの腕はマイミに多数の穴を開けられているし、
ミヤビの胸はトモの知恵と勇気の矢が見事に貫通していた。
モモコはとても重い物体(オカール)に衝突して骨に異常をきたしていて、
チナミは若手戦士との戦いの果てに「もう肉弾戦は無理!」と発言している。
それでも彼女らが強いことには変わりないのだが、シミハム以外は5割の力を発揮することも難しいかもしれない。
となると、一同は案外楽勝かもしれないと思いはじめてきた。
だがそんなことはあり得ないのだ。
キュートが何か言おうとする前に、リナプーがお気楽ムードを諌めだす。
「馬鹿かな、みんなは」
「えっ?リナプーどうしたん?……」
「ベリーズはさ、6人いるんでしょ。」
「!!」
リナプーの言う通り、ベリーズ戦士団は6名で構成されている。
無を司るシミハム、冷気を纏うモモコ、太陽のように明るいチナミ、
刃の如く鋭いミヤビ、重圧で押し潰すクマイチャン
そして、もう1人。
ベリーズきっての天才と呼ばれた"人魚姫(マーメイド)"が存在するのだ。
何人たりとも彼女の前では溺れてしまう。
769
:
名無し募集中。。。
:2017/09/02(土) 12:33:44
リサコははたしてSSAに…もとい武道館に現れるのか?
770
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/04(月) 13:09:17
倒すべき強敵は6人いる。
それをしかと認識するだけで一同はピリッとした。
これからの戦いに、楽勝など絶対にあり得ないのだ。
恐れることは無いが同時に甘くみてもならない。 気を抜けばすぐに脱落すると考えて良いだろう。
ではその強敵に勝つ確率をどのようにして上げるのか?
"攻め方"は非常に重要になってくる。
「ちょっといいですか?ナカサキ様。」
「なに?カリンちゃん。」
「武道館はとても大きくて広いんですよね?」
「え?……そ、そうだと思うけど……それがどうかしたの?」
「私、昔に調べたことが有るんですけど、
武道館には北、北東、東、南東、南、南西、西、北西の全部で8つの入口があるらしいんです。
ということはベリーズの全員とは戦わなくて良いと思いませんか?」
「???」
ナカサキだけでなく、マイミとオカールの頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいた。
キュートの中ではただ1人、アイリだけが理解したようで、
カリンの提案に補足をし始める。
「ナカサキ。 もしも自分たちが武道館の中にいて、マーサー王を外敵から守るとしたらどう守る?」
「えっ、そりゃさっきカリンちゃんが言ってた8カ所の入り口に兵を配置するでしょ。
それと、突破された時のために王の周りには警備を置く。とびきり強い兵をね。」
「じゃあ、明日ベリーズはどうすると思う?」
「え?……そりゃさっき私が言ったみたいに……あっ!」
ここでナカサキは気づいた。
武道館の全ての入り口をカバーするには、ベリーズとカントリーでは人数的に余裕が無いのである。
6カ所にベリーズを1人ずつ配置したとしても、残る二ヶ所は実力の落ちるカントリーだけで抑えなくてはならない。
現実的にはマーサー王とサユを監視する者も中に残るはずなので、最低3ヶ所の入口が"穴"になるはずだ。
「ひょっとしたら警備の甘い入り口から侵入したことが、他の入り口にいるベリーズにバレるかもしれません。
でも武道館は偉大で、大きくて、広いんです!!
追っ手が間に合う前にマーサー王とサユ様を外に連れ出してしまうのはどうでしょうか!?」
「なるほど!カリンちゃんの作戦いいね!」
確かにこの攻め方なら敵の強大な戦力をほとんどスルー出来る。
上手くいくかもしれない。
そう思っていたところに、カリンと同じくらいに武道館のことを調べていたサユキが意見を出した。
「カリン、あなたなら知ってるよね?」
「え?サユキ……なんのこと?」
「近年よく使われる扉は一階席に入るための正面西口と、その近くの階段を昇って二階席に入るための西南口と南口だけ…ってことをだよ。」
「あっ……」
「確かに他の5つの入り口も有るには有るけどさ、長いこと封鎖されてるよね。
開くかどうかも分からない扉を数に数えるのはあまり良くないんじゃない?」
「うう……確かに……」
771
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/05(火) 12:43:02
「いや、カリンの案はいけるんじゃないか?」
そう言って注目を集めたのはマイミだった。
アーリーとサユキに折られたはずの腕をシュッと前に出しては、言葉を続ける。
「入口が封鎖されていたとしても、例えそれが頑丈だとしても、壁は壁だ。
私がナカサキのどちらかなら破れる。」
団長の発言は馬鹿げたものではなかった。
マイミの怪力があらゆるものを破壊するほどだというのは衆知の事実だし、
ナカサキだって確変で腕を集中的に強化すれば壁くらい壊せる。
ベリーズも封鎖されている箇所に防衛の人員を割くとも思えないので、
壁の破壊をスムーズに行えば、ノーガードの道を突き進むことが出来るだろう。
ナカサキは苦笑いをしながら大きな溜め息をつき、観念したようにサユキとカリンに声をかける。
「はぁ……そう言われたらやるしか無いか……
じゃあ2人とも、その場合はどこの壁を壊せばいいの?」
「西口が正面入り口なので、正反対の東口が良いと思います!ね、サユキ?」
「そうね。 あ、でもカリン、東口は二階にあるけどどうやって上がる?」
「外壁をかけあがるとか?……でもそれだとよっぽど身軽じゃ無いと……」
困った顔をしているサユキとカリンの肩をナカサキがポンと叩く。
「じゃあ決まりね。」
「「え?」」
「あなた達、かなり身軽でしょ? 道連れよ……私と一緒に来て!」
「「!!」」
サユキの跳躍力とカリンの敏捷性は先ほどのマイミとの戦いでしっかりと示されていた。
それをナカサキは高く評価したのだ。
だからこそ裏口突破という重要任務にスカウトしたのである。
これでチームは3人。 だがこの人数ではまだ心許ない。
「他には動ける子いる? まぁ、無理にとは言わないけど……」
「ウチにやらせてください!」
「わ、私も!」
ここで手を上げたのは帝国剣士のサヤシとアユミンだ。
どちらもダンスの技術を戦闘に取り入れており、身のこなしは国内でもトップクラス。
マイミ戦で立ち上がることの出来なかった彼女らはとても口惜しく感じていて、
今後はどんな危険任務も率先して行う覚悟が出来ている。
そんな2人の決意を断る理由はどこにも無かった。
「よし!じゃあこの5人で壁を壊して、王とサユを救いましょ!」
ナカサキ、サヤシ、アユミン、サユキ、カリンが属する"チームダンス部"がここに結成した。
最重要任務に挑む彼女らを活かすべく、これから残り3組のチームも誕生していく。
772
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/06(水) 16:35:03
"チームダンス部"が裏口の壁をぶち破ったとしても、そこに敵がうじゃうじゃ居たら奇襲の効果が薄まってしまう。
そうならないためには他のメンバーがベリーズの注意を十分に引かねばならない。
具体的には正規の入り口である「西口(正面入り口)」、「南西口」、「南口」の三点に他の3チームが同時に乗り込むことにより、防衛で手いっぱいにさせる必要があるのだ。
これらの表口には1人ないしは2人のベリーズが待ち構えることが予想される。
ならば対抗するためにはそれぞれのチームにキュートを振り分けるのが良いだろう。
「よし、じゃあアンジュの番長たち! 私と一緒に組もうじゃないか!」
「「!?」」
マイミは大きく腕をひろげてカナナン、リナプー、メイ、リカコの4人を抱きかかえた。
実はマイミはこの番長たちのことをとても気に入っていたのである。
以前モーニング帝国城で相対した時に、メイは地獄の腹筋チェックに根性で耐えていたし、
カナナンは野球勝負で見事にマイミの裏をかいていた。
極めつきなのはリナプーだ。先ほどの直接対決でマイミに傷を負わせたのは高評価だったようだ。
グイグイ来るマイミにはじめはアンジュの番長たちも戸惑っていたが、よくよく考えて見たら悪い話でもない。
マイミという信頼できる存在が味方につくのは文句なしに有難いし、
チームワークの面で考えると番長が1チームに固まるというのも非常にやり易かった。
リナプー以外の番長はこれまでにあまり良いところを見せられていないので、
最終決戦で結果を出してイメージを変えたいという思いを込めて、
マイミ、カナナン、リナプー、メイ、リカコは"チーム下克上"と名乗ることにした。
それを見たアイリもチームを作り始めようと、KASTのトモに声をかけた。
「それではトモ、私たちも組みましょうか。ミヤビを倒した時みたいに、ね。」
「お言葉ですがアイリ様……私はアイリ様と同じチームになる訳にはいきません。」
「えっ!?」
突然の拒否にアイリは眼が飛び出るほど驚いたが、その理由を聞いてすぐに納得する。
「ベリーズに対抗するには敵の弱点を正確に知る必要があると思うんです。
そして、私たちの中でそれを見抜く力が有るのは耳の良いサユキと視野の広いカナナン……そして、アイリ様と私だけ。
この4人はそれぞれが別のチームに分かれて役割を全うした方が良いと思いませんか?」
「ふふ、そうね、その通りね。」
アイリは寂しい想いもあったが、ベリーズに勝つために冷静に頭を働かせているトモを見て嬉しく思っていた。
そしてすぐに気持ちを切り替えて、他のメンバーを次々と指差していく。
「エリポンちゃん! カノンちゃん! マーチャンちゃん! アーリーちゃん。 良かったら私と組みませんか?」
トモにフラれたかと思えば、(カノンを除けば)いかにも扱いにくそうな戦士たちを勧誘していったので一同は驚いた。
もちろん誘われた張本人たちも驚愕しているが、ここで断るわけもない。
それにしても何故このメンバーを選んだのだろうか? 共通点は何なのだろうか?
真意も分からぬまま、アイリ、エリポン、カノン、マーチャン、アーリーのチーム名は"チーム河童"と名付けられていた。
「さて……ってことはお前らは余り物ってワケだな?」
ハルとオダ、そしてトモをオカールがニヤニヤしながら見ていた。
アイリの誘いを断ったトモならともかく、ハルとオダの2人は軽く落ち込んでいるようだ。
「すんません……オカール様と組むのは、ハル達みたいな余り物になっちゃいます。」
「あ?気にすることはねぇよ。 俺の人生も似たようなもんだ。お似合いっちゃお似合いだな。」
「はは……」
「ただな、俺とチームを組むからには2つのルールを絶対に破らないことだけは約束しろよ。」
「「「?」」」
オカールがギロッと睨んだので3人はビクッとした。
そしてその緊迫感のままオカールが話を続ける。
「お前ら、さっきウチの団長に死ぬ気で立ち向かってたよなぁ?……あれは良かった。なかなか見どころあったぞ。
だからな、ベリーズにも同じくらい、いやそれ以上の気合いでぶつかれ!それがルールだ!
ちょっとでも気を抜いたらぶっ飛ばすからな!!」
「「「はい!」」」
「それともう一個、武道館に入るときは俺が一番乗りだ。絶対に、絶対に邪魔すんなよ?」
「は?……」
「"ライブハウス武道館へようこそ!"、このセリフを一度言ってみたかったんだ!! もしも俺より先に武道館でそんなこと言う奴がいたら容赦無く潰す!!」
オカール、ハル、オダ、トモのチーム名は"チームオカール"
彼女らはリーダーの決めたルールを絶対に死守しなくてはならない。
773
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/07(木) 18:19:38
結成後は同じチーム同士で集まり、細かなところを詰めていった。
連合軍もここまで共にしてきたのだから、誰がどれだけの力量なのかは十分に把握できている。
そのため、実践時を想定した作戦は比較的スムーズに決まったようだ。
「気づけばもう夜じゃないか。 よし、作戦の決まったチームから身体を休めていこう!」
連合軍リーダーマイミの指示に、メンバー達は素直に従っていった。
もちろん自分たちの実力不足を憂い、もっとトレーニングしたいという気持ちも無くは無いが、
ギリギリまで身体を酷使するよりは、
しっかりと休養をとった方が明日の決戦でより良いパフォーマンスを発揮できると理解しているのだろう。
今いる場所から武道館まではそう離れていないため、明日の昼過ぎにでも出発すれば指定時刻までには十分間に合う。
夜しっかり寝て、午前中にイメトレなどを行えばバッチリだ。
しかしただ1人、十分な休養をとれない……いや、とろうとしないメンバーが存在した。
それは武器修理にかかりっきりのマーチャン・エコーチームだった。
「マーチャン、休まなくて本当に大丈夫か?」
「明日の朝早く起きて、そこで作業再開すればよくない?」
1人黙々と工具を扱うマーチャンを心配して、同期のハルとアユミンが近くまで来ていた。
マーチャンは作戦会議にもろくに参加せず作業をぶっ続けで行なっていたので、相当に疲労が溜まっているはずなのだ。
それでもマーチャンは手を止めたりしなかった。
「頭の中がね、なんかグチャグチャしてるの。 すごーく変な感じ。
マーチャンが今すぐ武器を作らなかったら、きっと忘れちゃう。明日は覚えてないと思う。
だからマーチャンが今やらないといけないの!ドゥーとアヌミンはあっちで休んでて!」
マーチャンの脳はチナミの創作活動を見て強い刺激を受けていた。
一回見ただけで何でも覚えられる才能の持ち主が、
今すぐカタチにしないと忘れてしまうと言うのだから、余程の高等技術なのだろう。
そうやって没頭するマーチャンの背後に、カリンが登場した。
そしてマーチャンの両肩に手を置いていく。
「マーチャンは凄いね。立派な武器をどんどん作っちゃう。
みんなのためだから、今のマーチャンを止めちゃいけないんだよね?それはカリン、よく分かった。
でもせめてマッサージくらいはさせてもらえないかな?
作業の邪魔にならなければで良いんだけど……」
そう言うとカリンはマーチャンの肩をギュッギュッと揉みはじめた。
例の針治療ほどの回復効果は無いが、緊張して硬くなっていた筋肉がほぐれてとても気持ちが良い。
「んー……別にマッサージさせてあげてもいいよ。」
「わぁ、気に入ってくれたんだ!」
一連の光景を見ていたアユミンとハルは互いに顔を見合わせて、
慌ててマーチャンの脚と腕のマッサージを開始した。
どれだけ効果が有るのかは分からないが、少しでも疲労を回復できるのであればやった方が良いとの判断だ。
(ところでアユミン、マーチャンは何時まで武器の修理をするつもりなんだ?)
(さぁ?……まさか朝までとか言わないよね?)
774
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/08(金) 13:07:01
「やばっ!寝ちゃった!!」
アユミンが目を覚ましたのはふかふかのベッドの上だった。
どう見てもマーチャンが作業をしていた屋外には見えない。
ハルもちょうど同じタイミングで起きたようで、事態を把握できず周囲をキョロキョロと見回している。
そんな寝起きの2人に淹れたてのお茶を差し出しながら、カリンが説明をはじめていった。
「よく寝てたね。ここはプリンスホテルのお部屋。時間はもう朝の9時だよ。」
「えっ?……」「ハル達、マーチャンをマッサージしてたんじゃ……」
「マーチャンが夜中まで作業してたから、2人とも眠くて寝ちゃったんだね。
お外はとても寒いし、マーチャンと私で2人を部屋まで運んであげたの。」
「そうだったんだ……」「なんかごめん……」
「ううん、2人に付き合ってもらってマーチャンとても嬉しそうだった。
こんな良い代物が出来たのも2人のおかげだと思うよ。」
カリンは鞘に収められた太刀をアユミンに、そして予備を含めた竹刀数本をハルに手渡した。
どれもピカッピカッ!に修理されており、2人の手によく馴染む。
「さすがマーチャン……なんか持っただけで強くなったような気がする。」
「あ!そう言えばマーチャンはどこに?」
ハルの問いかけに回答すべく、カリンは部屋の隅の方を指差した。
そこではベッドから落ちたマーチャンが、非常にだらしない格好で寝ていた。
寝相はどうあれ、熟睡できているのなら最終決戦への影響は少なさそうだ。
「そうだ、カリンちゃんは寝なくも大丈夫なの? マーチャンに最後まで付き合ってたんでしょ?」
「アユミンちゃん、私なら大丈夫だよ。 昨日はみんなより長い時間気絶してたし、それに……」
「それに?」
「ヨガのポーズで2時間も瞑想したら頭スッキリになっちゃった!」
「よ、ヨガ?……」「瞑想?……」
それぞれが各々に合った方法で休息し、時は流れていった。
そして今現在の時刻は、ベリーズと約束した時間の10分前。17:50だ。
連合軍は決戦の地である武道館から目と鼻の先のところにまで到着している。
チームダンス部のナカサキ、サヤシ、アユミン、サユキ、カリン
チーム下克上のマイミ、カナナン、リナプー、メイ、リカコ
チーム河童のアイリ、エリポン、カノン、マーチャン、アーリー
チームオカールのオカール、ハル、オダ、トモ
全員が全員、戦うための覚悟を決めていた。
775
:
名無し募集中。。。
:2017/09/08(金) 23:29:50
決戦前にカントリーマナカ復活!!過去に例のない脱退後の復帰をどう作品に取り入れるのか楽しみ
http://www.helloproject.com/news/7559/
776
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/09(土) 12:29:54
復帰はとても嬉しいですが、今までに無いことなので戸惑ってますw
話にどう反映されるのかは自分でもまだ全然わかってないですね。
何かしらはあるとは思いますが。
777
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/09(土) 13:47:57
武道館は水が深く溜まった河川に囲まれており、
堀の外側にいる連合軍たちが武道館のある内側へとたどり着くためには
少しばかりの坂道を登り、そこに建てられた厳かなつくりの外門をくぐる必要がある。
ただそれだけのこと。時間にして数分もかからないはずなのだが、
4つのチームは想定外の事態に直面して固まってしまっていた。
「あれはいったいなんだって言うの?……」
そう言葉にしたメイだけでなく、全員の視線が門の前にある"何か"に注がれていた。
それは鉄の塊だ。
塊とは言っても手を伸ばせば抱えられるようなケチなものではない。
縦幅も横幅も人間ふたりがめいっぱい手を伸ばした時よりも長さがあり、
高さだって連合軍の最高身長のマイミよりずっと高い。
それがいったい何なのかは全く分からなかったが、
それが"何者"による作品なのかはすぐに理解することが出来た。
感じるのだ。
その鉄塊の内側から、太陽が発するような灼熱のオーラがだだ漏れになっている。
となればその中には"彼女"が居るとしか思えない。そう考えたマイミがその名を叫びだす。
「チナミ!!お前なんだな!」
「あ、やっぱりバレちゃった?」
鉄塊の上部にあるフタがパカッと開き、そこからベリーズのチナミが顔を出した。
遮るものがなくなったため太陽光線は容赦なく連合軍に襲いかかったが、
マイミの怒気からなる大嵐がそれをいくらか軽減してくれた。
晴れ女VS雨女の対決はひとまず引き分けというところだろうか。
「チナミ……その鉄の塊はいったい何なんだ?……」
「新しいお家か何かに見える?」
「まったく見えないな、大砲と車輪がついている物体が家なわけないだろう。」
マイミの言う通り、大きな鉄の塊にはこれまた巨大な大砲が取り付けられていた。
おそらくは固い鉄の壁で身を守りながら一方的に砲撃を行う機械なのだろう。
「うんうん、だいたい正解。でも惜しいよマイミ……これは車輪じゃなくてね、"キャタピラ"って言うんだよ。」
「きゃ、きゃた?……」
「知るわけないよね。 理論上はずっと未来に実現されるはずの技術なんだから」
「チナミ……さっきからいったい何を言っているんだ!?」
この鉄塊の両側にはそれぞれ4つずつの車輪が取り付けられている。
そしてその車輪群には、複数枚の鋼板で作られたレールが巻かれていた。
この機構はキャタピラと呼ばれ、どんな悪路でも走行できるようになっているのである。
つまり、この鉄の塊は乗り物なのだ。
操縦士であるチナミの命令で自由に走るし、いつでも砲弾をぶっ放すことが出来る。
まるでタイムスリップで未来からやってきたようなこの高等かつ複雑な機械は、
「DIYの申し子」と呼ばれるベリーズの開発担当・チナミの超次元技術でしか創り出すことは出来なかっただろう。
「爆発(オードン)"派生・戦国自衛隊"……この"戦車"の力、見せてあげる。」
連合軍とベリーズの戦いは最終局面を迎えている。
ベリーズも出し惜しみをする気はさらさらない。
778
:
名無し募集中。。。
:2017/09/09(土) 23:34:32
千奈美のチナミによるあの名場面の再現来るー?!
779
:
名無し募集中。。。
:2017/09/10(日) 01:53:52
名場面ってあれか…!
780
:
名無し募集中。。。
:2017/09/10(日) 09:04:50
戦国自衛隊で戦車といえばもう…!
781
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/10(日) 14:25:40
この戦いに臨む前にベリーズ達も作戦会議を行っていた。
そこで決まった内容は単純明快。「殺す気で戦う」だ。
今までの二戦も殺気を振りまいてはいたが、ここからは更にもう一段階ギアを上げる。
一切の慈悲を持たぬ事が未来に繋がると信じ、全身全霊で攻撃していく。
「みんな避けて!」
危機を察知したナカサキは大声で連合軍に警告した。
特に戦車の砲台の直線上に立っている戦士は、蹴り飛ばす勢いで容赦なく吹っ飛ばした。
かなり荒い対応だったがその判断に間違いはなく、
ほんのコンマ数秒後には轟音と共に砲弾がぶっ放される事になった。
高速で且つ重量感のある砲弾はそのまま前方を突っ切り、
必殺技の名前通りの大爆発を起こして、周囲の木々を一瞬にして消し炭にしてしまう。
これを人間が喰らっていたら痛いどころでは済まなかっただろう。
1撃でも被弾すればそれでお終いだと考えると、この戦車という乗り物はなんと恐ろしい兵器だろうか。
しかし、だからと言って尻尾をまいて逃げるわけにはいかない。ここを乗り切らねば武道館には辿り着けないのだ。
ではどう戦うべきか?このあまり広くない場所で、この大人数がそう何回も砲弾を回避しきることが出来るのか?
全員が答えを出すよりも早く、マイミが叫んだ。
「ここは私に任せろ!お前たちは急いで武道館へ迎え!!」
マイミは勢いよくJUMPし、大胆にも戦車に取り付けられた大砲に抱き着きにかかった。
そして拳をギュッと強く握り、チナミを守る鉄の壁に強烈なゲンコツを食らわせたのだ。
「大層な乗り物じゃないか。だが所詮は鉄製だ。鉄の壁を私が壊せないとでも思っているのか?」
この行動は無謀に見えてなかなか有効だった。
戦車による砲撃の射程は遠距離にまで及ぶが、自身を撃つことは出来ないためマイミの位置は安全地帯だと言える。
つまりはマイミは一切の攻撃を受けることなく一方的に戦車を攻撃できるのである。
「あー、確かにマイミが全力で叩き続けたら壊されちゃうかもね。」
「そうだろう。」
「でもさ、私がマイミを相手にすることを想定してないと思ってる?対策ならね、山ほどあるんだよ。」
「だったらその対策とやらを見せてみろ!!」
マイミがこの場を引き受けた事に感謝する間もないほどに早く、連合軍たちは急いで外門をくぐっていった。
あのまま場に残り続けるとチナミの砲弾に狙われてしまい、マイミの邪魔になる可能性が大きかったので
命令に従ってすぐさま武道館へ向かうことこそが最善の道だと判断したのだ。
外門をくぐった先には憧れの武道館が待ち構えていたが感傷に浸っている時間は無い。
「チームダンス部」は武道館を左から回って東口へと、
「チーム河童」と「チームオカール」、そしてマイミ以外の「チーム下克上」は武道館を右から回って西口へと向かっていく。
距離自体はさほど無いので正面入口である西口にはすぐに到達できたが、
そこでは最悪の人物が腕組みしながら連合軍たちを待っていた。
あまりの寒気に身体を巡る血液が凍りつきそうになってくる。
「お? 思ったより大勢で来たのね。チナミじゃ食い止めるのに限界があったのかな?
……でもみんなの武道館ツアーはここでお終い。許してにゃん。」
西口正面入口の防衛担当は予測不能の暗器使いであるモモコだ。
彼女は既に数多の罠を設置し終えている。
782
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/11(月) 13:08:31
モモコの登場に一同は肝を冷やした。
そしてそれだけではない。
モモコが居るという事は、彼女らも居るという事だ。
「リサちゃん!マナカちゃん!チサキちゃん!マイちゃん!準備は出来てる!?」
「「「はい!」」」
応答とともに無数のカエルとカラスが飛び(跳び)出した。
これらは言うまでもなくモモコの後輩であるカントリーガールズ達が操っている動物だ。
カエルとカラスの不気味さに、連合軍の中にはトリハダを立たせている者も何人かいたが、
罠と動物が敷き詰められたこの地帯を攻略しなくては正面入り口から堂々と入館出来ないことは、みんな分かっていた。
「私の暗器とリサちゃんのカエル、マナカちゃんのカラス、そしてマイちゃんの身体能力……
これらをぜーんぶ総動員して西口を死守するつもりだけど、あなた達に勝機を見出す事が出来るかしら?」
モモコのその言葉を聞いた連合軍たちは視線をカントリーの1人、チサキに集めた。
彼女の名前だけはモモコに呼ばれてなかったのだ。
注目されてることに気づいたチサキは耳を赤くしてモモコに訴える。
「も、モモち先輩ひどいです! なんで私だけ無視するんですかぁ!?」
「あー……その、ごめん、チサキちゃんが何すれば良いのか思いつかなかった。」
「ひどい!!確かに私は無能ですけど……」
「"陸地では"、ね。」
「えっ?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、そのうちチサキちゃんにも出番が回ってくるはずだから。」
モモコとチサキが漫才のようなやり取りをしているところに、アイリが割って入ってきた。
自軍を勝利に導くための交渉を始めようとしているのだ。
「ねぇモモコ……あなたは今、西口を死守するって言ったよね?」
「ん?そうだけど。」
「じゃあ西口以外は通っても全然構わないってことだ。」
「どうぞお好きに。 担当じゃないところなんて知らなーい。」
ここでアイリはニヤッとした。
そして二階にある西南口や南口に続く階段を指差して、連合軍に指示を出していく。
「モモコおよびカントリーガールズは私たち"チーム河童"が引き受けます!
"チーム下克上"と"チームオカール"は急いで上に!!」
アイリがそう言うや否や、両チームは一目散に階段へと走っていった。
リサとマナカが動物で行く手を阻もうとするが、モモコの「行かせときなさい。」の一言で制される。
これでこの場に残ったのはカントリーガールズのモモコ、リサ、マナカ、チサキ、マイと、
チーム河童のアイリ、エリポン、カノン、マーチャン、アーリーだけになった。
「人数的には互角か、まぁ大多数よりは今くらいの人数の方が防衛しやすくて楽だから良いんだけど、
アイリの行動……ちょっと不可解すぎない?」
「……何が?」
「いくら罠と動物が怖いとは言っても兵力を分散させずに集中させた方が突破しやすくなるもんじゃないの?
どうしてわざわざ階段を登らせたのかか……なんか、別の目的があるように見えるんだけど。」
「……」
「ま、理由はどーだっていいわ。ただね、二階に行った子たちはちょっと可哀想かもしれないわね。
だって、西南口と南口を守るのはモモちみたいに優しくない、とってもこわ〜い人たちなんだもの。」
783
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/12(火) 13:00:07
二階へ続く階段には罠のようなものは仕掛けられていなかったため、チーム下克上とチームオカール達は難なく進む事ができた。
どうやらモモコが担当以外をどーだっていいと考えているのは本当なのだろう。
そして、二階には「怖い人」が待ち構えているという言葉も真実だということを、一同はすぐに痛感する。
「隙だらけだよ、斬ってくれと言っているようなものだ。」
ハルはゾッとした。
目的地に向かって走っている最中に、背後から突如そのような声が聞こえたので頭が真っ白になる。
その声はベリーズの現・副団長ミヤビのものだ。
自分のテリトリーにハルが侵入してきたので、容赦も躊躇もなく刀を振るったのである。
この斬撃を放つまでの一連の動作に関して、若手戦士らは気配すら感じとる事が出来なかった。
シミハムのように無を司っている訳では無いが、
思いのままに気配を消し、ここぞと言う時に殺気を放つ事くらいは
達人の域に達しているミヤビには容易かった。
しかしそのやり方も同じ達人級には通用しない。
もう少しでハルに刃を突き刺せるといったところで、ミヤビはオカールに頭突きを食らってしまう。
攻撃の狙いは鉄板でガードされていない横っ腹だ。
「させるかよっ!!」
「くっ……オカールか」
いつも好戦的なオカールだが、今回はいつも以上の高揚を感じていた。
なんせ目の前には長年目標としていたミヤビが相手として立ちはだかっているのだ。
しかもモモコに良いように使われた時の操り人形状態ではなく、ちゃんと意識がハッキリとしている。
つまり本気の死合いが出来るということ。これがどれだけ嬉しいか。
「西南口はミヤビちゃん……おっと、ミヤビが守ってるってことか。」
「そうだよ。」
「よっしゃ決まりだ!ここは俺たちが引き受けた! チーム下克上の奴らはさっさとアッチ行ってろ!
それとチームオカールの奴らに言っておくけどよぉ……」
以前までのオカールなら「お前らは手出しするな」と言っていたかもしれない。
ところが、今この時のオカールの意識はほんのちょびっとだけ変わっていた。
「相手はあのミヤビだ。 つまんねぇ攻撃は一切通用しねぇよ。
だからやるなら殺す気でやれ!!さもないと俺がてめぇらの首をかっ切るぞ!!」
「「「はい!!」」」
オカールに負けず劣らずの大声でチームオカールのハル、オダ、トモは応えた。
敵の食卓の騎士も、味方の食卓の騎士もどちらも怖くて仕方ないが、
ここは「死ぬ気」で、いや、「殺す気」でやるしかないのだ。
根性を見せねばその瞬間に斬り倒されてしまう。
そして、残ったチーム下克上の面々は南口に向かって走っていた。
成り行き上このような形になってしまった事を若干不安に思っている。
「ねぇカナナン……」
「なんやリナプー」
「なんか私、嫌な予感しかしないんだけど。」
「…………カナもや。」
そうこう喋っているうちに、途中離脱したマイミを除いたチーム下克上のカナナン、リナプー、メイ、リカコは南口に到着した。
これまでの入り口にはベリーズが1人ずつ立っていたというのに、今回ばかりは扉がガラ空きになっている。
運が良いと考えたリカコは大はしゃぎで南口に走っていった。
「みなさんんんんん!ここ、誰も防衛してませんよ\(^o^)/」
お気楽に扉に向かうリカコに対して、メイが声を荒げる。
何も分かっていないリカコに強大、いや、巨大すぎる敵の存在を気づかせてやらねばならないのだ。
「待って!上!上を見て!!!」
「へ?」
784
:
名無し募集中。。。
:2017/09/12(火) 16:31:08
チーム下克上は悪夢再びだな…勝利への光が見えないorz
せめてあといっと…一人いれば
785
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/14(木) 14:13:12
"自称176cm"
彼女をひとたび前にすれば、センチメートルという単位がどの程度の長さを表すのか分からなくなってくる。
その巨人の名はクマイチャン。文字通りの大物だ。
クマイチャンは自分に気づかず真下にやってきたリカコに対して軽く刀を振っただけなのだが、
あまりの高さと勢いに、リカコには鉄の物体が急降下したように見えたようだ。
(や、やば、やば、ヤバイ、死ぬ!これを受けたら死ぬ!)
超高速で迫り来る刃に直撃したら確かに命が危ういだろう。
最悪即死、良くても致命傷に違いない。
それを本能で感じ取ったリカコはアスリートの如き瞬発力を発揮し、
長い脚によるストライドであっという間に退却した。
これには流石のクマイチャンも面食らう。
「ありゃ、空振っちゃった……思ったより動けるんだね」
クマイチャンはこれまでのリカコの戦い方を見聞きして、「戦闘能力が低いため石鹸による特殊戦法に頼らざるを得ない戦士」だと思い込んでいた。
だが本当に運動神経の悪い者が一瞬にしてあのスピードを出すことが出来るのだろうか?
下手したらマイミさえも抜きかねない初速じゃなかったか?
それに、クマイチャンはそれ以外の心配事も抱えていた。
「あれ?そう言えばキュートはいないの?……」
連合軍はキュートと若手の組み合わせでチームを編成して
それぞれの扉にチーム単位で攻めてくるだろうと、
ベリーズ達も作戦会議の場で予測していた。
だが目の前にいる"チーム下克上"はアンジュの番長だけだ。キュートは1人も含まれていない。
チナミ戦でマイミが離脱したので他のチームと違ってキュートが1人足りないのである。
これだと一方的なワンサイドゲームになるのは明らか。
それで本当に良いのだろうか?
だが、ベリーズの作戦会議ではこうとも言っていた。
"相手がどんな状態であろうと全力で叩き潰せ"
それを思い出したクマイチャンは一切の迷いを振り切って、全てを押しつぶす重力のオーラを全開にする。
「キュートの事はどうでも良いか! 誰が相手だろうと斬るだけだし!!」
この戦いにタイトルをつけるとしたら「あまりにも出すぎた杭 vs 番長の総力戦」と言ったところだろうか。
総ての戦力を出し切ることが出来なければ、番長たちに勝ち目は無い。
786
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/15(金) 14:39:06
カナナン、リナプー、メイ、リカコの身体がズシリと重くなった。
この押し潰されてしまいそうな圧迫感は何回味わっても慣れやしない。
本当に嫌な感じだ。まともに呼吸することすら困難になってくる。
本当ならばこんな状況で戦闘など出来るはずが無いのだが、
今の若手戦士らはベリーズの殺人的オーラに対抗する術をキュートから教わっていた。
この方法は誰でも出来るようなお手軽なものでは無い。
帝国剣士が、番長が、KASTがここまで辿り着いたからこそはじめて伝授することが出来たのだ。
メイはその時アイリから言われた言葉を思い出しながら、対抗術の使用を開始する。
(大事なのは『自分を信じること』と『強く思うこと』……そう言ってくれてましたね。)
先日のマイミとの戦いにてマーチャンとオダが断身刀剣(たちみとうけん)を見せていた。
これは自分の強い意志を相手に直接伝搬することで己の強さのキャパシティを超える技術であり、
マイミに攻撃の視覚的イメージを先出しで見せて動揺させることに成功していた。
この技術はマーチャンやオダの専売特許などでは決してなく、ここまで辿り着いた若手戦士なら誰でも使える素質が有ると言える。
そう、断身刀剣が使えると『自分を信じること』がまず大事になってくるのである。
(やれる、絶対にやれる、メイだって番長のみんなだってここまで頑張ってきたんだから絶対にやれるんだ!!)
では、その断身刀剣で具体的にどのような意志をクマイチャンに飛ばすべきなのか?
天変地異を起こしてクマイチャンを弱体化させるイメージか?
駄目だ。そのような芸当は食卓の騎士の域に達さないと実現出来ない。
それでは、クマイチャンの重力のオーラを消し去るようなイメージか?
それも駄目だ。クマイチャンだって常に殺気を放ち続けている。 完全に消すことは困難だ。
ではどうすれば良いのか?その答えはとても単純だ。
「お前の殺気なんかに負けるもんか!!」……そう『強く思うこと』が何よりも大事なのである。
その強い意志はクマイチャンに伝播するだけでなく、自分の頭の中にも何度も何度もコダマする。
その共鳴はやがて己の手脚にも伝わり、凶悪なオーラにも負けない身体を具現化してくれるのだ。
つまりは単なる「気の持ちよう」だ。だがこれがなかなかどうして馬鹿にできない。
平然とした顔でカナナン、リナプー、メイ、リカコが立ち上がる様はクマイチャンに小さく無いプレッシャーを与えたようだ。
「立ち上がった?……」
「負けない……私たち番長は絶対に負けない!!」
「そっか、そうか!この戦いは楽に勝たせてもらえなさそうって事なんだね!」
787
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/19(火) 14:00:57
「負けるものか」と強く思っているのは番長たちだけではない。
チームオカールに属するハル、オダ、トモの3人だって
ミヤビの発する刃の如き殺人的オーラに斬り捨てられないように必死に踏ん張っている。
オカールの足手まといなどではなく、仲間として戦うためにトモは矢尻をミヤビに向けた。
(凄いプレッシャー……少しでも気を抜いたら心臓を突き破られちゃいそう……
でも、私も帝国剣士の2人もまだやれている!!
強い意思を持てば私たちでも対抗できるんだ!)
トモはミヤビの胸目掛けて矢を放った。
狙いはもちろん、昨日トモが貫通させた傷痕だ。
そこを射抜かれるのを嫌ったミヤビは全神経を集中させて矢を叩き落とそうと構えるが、
そのタイミングでオダがミヤビの目に直接太陽光を反射したため
迎撃体勢を取り続けることが出来なくなってしまった。
「うっ……くそッ!!」
このまま無防備に射抜かれてしまうことだけは避けたいと必死で身体を右にズラしたが、それでも横っ腹にかすってしまった。
若手のみの力で強敵に血を流させたことに、トモとオダは確かな手応えを感じる。
そして、カントリーガールズとチーム河童が相対する西口ではもっと特異なことが起きていた。
エリポン、カノン、マーチャン、アーリーらが「負けるものか」の精神でモモコの放つ冷気に耐えているのに対して、
カントリーのリサ、マナカ、チサキ、マイの4名は苦悶の表情でうずくまっているのだ。
どうやらモモコの弟子たちはアイリの殺気に耐える術を習得できていないらしく、雷撃のオーラを容赦なく受けているようだ。
しかもメンバーだけでなくカエルやカラス達だって地面に横たわってしまっている。
考えてみればそれもそうだ。 人間でも習得が難しい断身刀剣を動物達がそう易々と使えるはずがないのである。
アイリの雷のオーラを一度浴びてしまえば、半人前や半カエル前、半カラス前が太刀打ちすることなど不可能だ。
モモコもこうなる事は理解しているはずなのだが、わざとらしい顔で焦り出していた。
「あら〜どうしよっかな。アイリが近くに居る限りはまともに動けないかぁ……」
788
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/20(水) 13:08:41
動物ではベリーズやキュートの殺気に耐えられないと書いたが、例外もいる。
それがリナプーの愛犬ププ&クランだ。
2匹はチナミという強大な存在の恐怖を身を以て知りながら、
愛するリナプーのために勇気を振り絞ってマイミに立ち向かっていた。
恐怖を克服したププとクランは、今現在、更に化け物じみた巨体のクマイチャンに突撃している。
高さの関係で喉元に噛み付くことは出来ないが、マーチャンに誂えてもらった爪で右脚左脚を引っ掻くことなら出来るのだ。
「あでっ!!」
リナプーの犬2匹は飼い主同様に透明になっている。
引っ掻かれた痛みはさほど無いようだが、
何をされたのか分からないクマイチャンは反射的にひょいと片足を上げて傷口に目をやっていた。
そこをすかさずカナナンがリカコに指示を出す。
「今や、撃て!!」
命令を下されるまでもなく準備に入っていたリカコは、
新武器の鉄砲を構えてクマイチャンの足元に発射した。
鉄砲は鉄砲でもリカコの扱うこの銃は「水鉄砲」だ。
そしてその内部には石鹸水がたっぷりと詰め込まれている。
つまり、クマイチャンはヌルヌルの石鹸水が巻かれた場所に上げていた足を戻す形になる。
そんなことも知らずに地面を力強く踏みしめたので、面白いくらい簡単にバランスを崩してしまった。
手をバタバタさせて今にも転んでしまいそうだ。
「わっ!わわっ!なんだ!?」
「よし!ダメ押しで体当たりしたれ!」
カナナンの声と共にメイがクマイチャン目掛けて走っていった。
彼女はこの時モーニング帝国帝王のフク・アパトゥーマの演技をしており、
爆発的なスピードを生む"フク・ダッシュ"でクマイチャンとの距離を一気に詰めていく。
天然気味なクマイチャンも流石にまずいと判断したのか、全力パワーの張り手でメイを跳ね返そうとした。
ところが掌が当たる直前でメイの動きが変化する。
同じく帝王の技である"フク・バックステップ"で突然後退したのだ。
みるみる顔が小さくなるメイに対応しきれず、クマイチャンは余計にバランスを崩してしまう。
そして、そこに更に追い討ちをかけたのがリナプーだ。
メイがダッシュした前方ではなく、クマイチャンの後方から思い切りの良い体当たりをぶつける。
「なっ……!?いつの間に後ろに……」
カナナンの言葉にあった「ダメ押しで体当たり」はメイではなくリナプーにあてられた指示だった。
全く予期せぬ場所からの体当たりにクマイチャンは耐えきることが出来ず、顔面から地面に落ちてしまう。
正直言ってププとクランの引っ掻きも、リナプーの体当たりもクマイチャンにダメージを与えることは出来ていない。
だが、自称176cmの高さからの床へのキスとなれば話は別だ。
世界最高峰の身長が生み出す位置エネルギーはとてつもない破壊力に変換されるのだ。
(勝てる! この調子ならカナ達は勝てる!!)
789
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/22(金) 08:29:22
「……」
クマイチャンはゆっくりと顔を上げた。
地面に強打したせいでおでこも鼻も真っ赤になり不恰好だが、
番長達はそれを見て笑う気には少しもなれなかった。
目が恐ろしすぎたのだ。
「みんな!気を抜いたらアカンで!」
身体が重力でズシリと重くなるのは気持ちが負けている証拠。
そうなっては勝てるものも勝てないのでカナナンは味方に声かけして勇気付けるが
敵の殺し屋のような目を見て気圧されずにいるのはなかなかに難儀だった。
一同が心を整えられていないうちにクマイチャンの方から動き出す。
「ロングライトニングポール、"派生・シューティングスター"」
その技の名は聞き覚えがあった。
ただでさえ大きいクマイチャンが大ジャンプでさらなる高みに到達する様を見て、
カナナン、リナプー、メイは悪夢を思い出す。
これは以前、モーニング帝国の訓練場を瓦礫の山にしたのと同じ技だ。
天高くの最高到達点に達したクマイチャンが高速で落下して来るのもあの時と同じ。
だが、今の状況は当時とは大きく異なる。
モーニング帝国の時はみなが地に足をつけていたが……
「ここって、二階なのに……」
メイの言う通り、番長達は二階の南口前にいる。
そんな事もお構いなしにクマイチャンは落下してきて、その勢いで足場をぶった切ったものだから
二階の床は爆撃でも受けたかのように崩壊してしまう。
カナナン達はなんとか気力を維持してクマイチャンの発する重力に耐えようとしていたが、
流石に正真正銘本物の重力には争うことが出来なかった。
武道館の足場が崩壊したため彼女らは無惨にも地面に堕ちてしまう。
「い、いまシャボンを(>_<)」
大きく、粘着性のあるシャボン玉を作ってクッションにしようと考えるリカコだったが
焦って膨らませても自分一人をカバーするのが精一杯だった。
本気を出せば犬のような身体能力を発揮できるリカコや、
空中戦が得意なサユキをモノマネしたメイは上手く受け身をとって被害を最小限に抑えたものの、
身体的に特殊な技能を持たないカナナンだけは強く背中を打ってしまった。
(ヤバイな……この感じは確実に骨折してる。
でも、しくじったのがカナで良かった。
アンジュ王国の番長はまだ戦える。」
790
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/25(月) 12:58:41
番長がクマイチャンに苦戦しているのと同様に、
正面西口のチーム河童の面々もモモコ率いるカントリーガールズに苦しめられていた。
先ほどまではアイリの殺気でリサ、マナカ、チサキ、マイ、そして動物たちを制圧していたはずなのだが
いったい何が起きたと言うのだろうか
「アイリ様!大丈夫ですか!?」
エリポンが声をかけた先では、アイリが頭を抱えてうずくまっていた。
これはモモコに何かされた訳ではない。
自身の体調不良のせいで動けなくなっているのである。
食卓の騎士のアイリほどの人物が何故このように消耗してしまっているのか、
モモコには覚えがあった。
「あらま、アイリったら相当キツそうね。
昨日トモちゃんに"眼"を与えたのが負担になってるんじゃない?」
「そ……そんなこと……」
図星だった。
ミヤビを倒すため、そしてトモの成長を促すためとは言え、
眼の力を他人に与えるなんて荒技を行使して無事に済むはずがなかったのだ。
今のアイリの実力は普段の半分以下。
「殺気を放てて」、「相手の弱点を見抜いて」、尚且つ「強力な棒術で戦う」のがアイリの強みなのだが、
今はそのうちの1つしか出来そうもない。
となれば落雷のオーラも満足に打てないため、カントリーと動物たちは好き放題に動けるのだ。
「カエルさん達!!今のうちに跳びかかっちゃえ!!」
さっきとは一転元気になったリサ・ロードリソースがチーム河童に対して一斉攻撃の命令を出した。
同じくマナカ・ビッグハッピーもカラス達を解き放っていく。
どちらか一方だけでも強力だと言うのに、両生類と鳥類にいっぺんに来られたものだから
エリポンとアーリーは対応に追われることになる。
「マーチャンには効かないよ。 だって火を使えるもん。」
マーチャンは自身の木刀に火を灯した。
メラメラと燃える炎は動物の天敵。
この火炎さえあれば一方的にカエルやカラスを蹂躙できると思ったが、
その直後に飛んできた、水鉄砲による水流であっという間に消火されてしまう。
水を飛ばした犯人はカントリーの魚類担当、チサキ・ココロコ・レッドミミーだ。
滝のように流れる汗を手中に集めて勢いよく噴出させたのである。
「あーーーーーーっ!!何するの!マーチャンの火なのに!!」
「わーー!ごめんなさいごめんなさい!」
791
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/26(火) 13:09:17
火さえ無ければ怖いものは何もない。
さっきまで敬遠していた動物たちが一瞬にしてマーチャンに集まっていく。
「む〜〜〜〜〜っ!!」
マーチャンは大自然育ちなのでカエルを気味悪がったりはしないが、
こうも全身モミクチャにされてしまえば流石に動けない。
持ち前の学習能力もこの状況では無意味だろう。
「相変わらずリサちゃんとマナカちゃんの攻撃はえげつないわねぇ〜」
アイリが戦力外になって暇になったモモコは、地べたにペタリと座りこみながら後輩の戦いを見ていた。
合計1万匹の両生類「カエルまんじゅう」と、合計1千羽の鳥類「PEACEFUL」が揃った様はまさに圧巻。
いくらエリポン、マーチャン、アーリーが名の通った戦士だとしても数の暴力で制圧すれば終いなのだ。
この調子で疲弊させれば防衛完了、なんだかんだ勝利してしまうのでした。めでたしめでたし。
……とはいかなかった。
「モモち先輩、あれ見て。」
「おっ、頑張ってる子もいるじゃない。」
マイ・セロリサラサ・オゼキングの指さす方には、
カエルもカラスも物ともせずズシリ、ズシリとマイペースで歩き続ける戦士がいた。
その者の名はカノン・トイ・レマーネ。帝国剣士最古参の"Q期組"に属する剣士だ。
彼女は橋の上の戦い以降、戦闘スタイルを少しばかり変更しており
全身を重量感たっぷりの鉄鎧で覆うようになった。
フェイスガードも装着しているため顔の表情だって見えやしない。
つまり今のカノンは生身を完全に晒していない状態なので、
カエルが触れることによる気色悪さを一切感じていないのである。
しかも鎧込みの総重量が100kgをオーバーしているため、いくら複数の鳥が頑張っても持ち上がることはない。
結果的に何物にも邪魔されることなくゆっくりと、ゆっくりと歩くことが出来ているのだ。
こんな重装備の兵隊の前ではリサとマナカはお手上げ。
陸地では汗の水鉄砲くらいしか撃てないチサキだって手伝いようがない。
「マイがやる。」
キッと目つきを鋭くしたマイは、ウサギのような跳躍力で飛び掛かった。
そしてカノンの腹に右拳と左拳の高速ラッシュをお見舞いしていく。
しかし殴る対象は鉄製だ。いくらマイの戦闘能力が高くてもこれは自殺行為。
殴った拳の方が傷つき、流血してしまう。
「うぐっ……」
「無駄だよ、そんなヤワな攻撃じゃ私の鎧は破れない。」
カノンの考えた動物対策がこのフルアーマー装備だ。
どれだけ大量で押し寄せてこようが、鎧を壊すだけのパワーが無ければカノンにダメージを与えることはできない。
カエルだろうと、カラスだろうと、魚だろうと、そして目の前のマイだろうとそれは同じだ。
カノンはマイの首を左手で掴み、右手に持った出刃包丁「血抜」で斬りかかろうとした。
それを見たリサとマナカ、そしてチサキはオロオロとしていたが
プレイングマネージャーだけは冷静さを保っていた。
「しょうがないわね、モモち先輩が助けちゃいましょ。」
そう言うとモモコはこぶし大の大きさの石をカノンの顔面に向かって投げつけた。
その投球は最初はヘナチョコだったが、
ターゲットであるカノンに近づいた途端にスピードがグンと加速する。
重い身体のせいで回避性能に劣るカノンはフェイスガードでモロに受けてしまい、
その衝撃に驚いて、マイを掴む手を放してしまった。
「!?……なにこの石、顔に貼り付いて取れない!!」
「磁石よ。それも超強力なね。
そう言えばあなたの三代くらい先輩の帝国剣士も全身に鎧を纏ってたっけ。
懐かしいなぁ〜思い出すなぁ〜」
モモコは軽口を叩きながらも、超強力電磁石を投げ続けることをやめなかった。
その数が10,20,30を超えても投球を止めやしない。
「お……重……動けな……い……」
鎧を破れないなら破らなくても良い。
相手が重ければもっと重くすれば良い。
最終的に超強力電磁石を50は投げたところでカノンは重さに耐えきれず倒れてしまった。
「あなたの先輩はそこからも耐えたよ。 もう少し努力が必要みたいね。」
792
:
名無し募集中。。。
:2017/09/26(火) 15:34:50
モモコ相手にフルアーマーは自殺行為だわなw
793
:
名無し募集中。。。
:2017/09/26(火) 16:23:39
先輩って誰だっけ?エリリン?
794
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/26(火) 19:34:05
先輩はエリチンですね。
6期の亀井モチーフのキャラでした。
795
:
名無し募集中。。。
:2017/09/26(火) 19:45:39
エリリンじゃなくてエリチンでしたか
懐かしいです
796
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/27(水) 13:07:32
他のチームがベリーズ達と戦っている隙に、
チームダンス部のナカサキ、サヤシ、アユミン、サユキ、カリンは武道館を逆方向からグルリと周り、
東口のある地点まで到達していた。
入り口となる扉自体は二階にあり、且つここには階段など無いのだが、
身軽なメンバーで構成されたチームダンス部にはそんな事は関係ない。
木から木に飛び移ったり、壁を駆け上がったりする事で易々と登ってしまえるのだ。
ここで一同は改めて東口の扉と相対する。
「思った通り。 やっぱり封鎖されてたか。」
サユキが押したり引いたりしてみたが扉はビクともしない。
頑丈に施錠されているのか、それとも長い期日利用されなかった結果開かなくなったのか、
どちらにしろ簡単には通してくれないようだ。
とは言えチームメンバーに焦りはない。ここまでは想定通り。
サヤシがナカサキに頭を下げてミッションの遂行を依頼する。
「ナカサキ様、ここからは頼みます。」
「う、うん……確変・派生"The Power"!!」
その必殺技の名を叫んだ瞬間、ナカサキの両腕の上腕二頭筋が一気に肥大化する。
負荷の大きいパンプアップで大量の血液を腕に集める事により、キュート戦士団の中でもNo.3相当のパワーを一時的に実現させることが出来るのだ。
こうして得た、さくっと世界羽ばたくめちゃ偉大な力は
キュートNo.1の破壊力を誇るマイミには流石に及ばないが、
純粋なパワーだけなら4番手5番手のオカールやアイリに大きく差をつけている。
そんな怪力ナカサキが両手の曲刀によって繰り出す連撃が、弱いはずがない。
「そりゃそりゃそりゃそりゃ〜〜〜〜!!」
一撃ごとに火花が飛び散るほどの衝撃に、後輩達は期待を膨らませた。
このペースで斬り続ければ、封鎖された扉なんて簡単にぶっ壊せると思っているのだ。
しかし何やら様子がおかしい。
ナカサキはもう5分以上も斬り続けていると言うのに、一向に扉は破られないでいるのである。
「ハァ……ハァ……こんなに、硬いのか……」
そこいらの扉ならもちろん軽くねじ伏せていたことだろう。
だが、今現在相手しているのはあの武道館の大扉なのだ。
彼女らが産まれるずっとずっと前からここに立ち誇っていた武道館の造りは
決して弱くなかったという訳だ。
「ナカサキ様……」
「いったいどうしたら……」
ナカサキでダメなら他のメンバーがやるべきか?
いや、それも期待できないだろう。
サヤシの居合刀、サユキのヌンチャク、カリンの釵、どれもが強力な武器ではあるが扉を破るには物足りない。
ところが、通用しないことを分かっていてもチャレンジを申し出る者が1人存在した。
それは帝国剣士の一人、アユミンだ。
酷な話ではあるが……彼女のパワーは帝国剣士の中でも弱い部類にある。
ハルナンやハルと同様に非力な戦士だと言えるだろう。
「私にやらせてください……必殺技で決めます。」
非力である事はアユミンも自覚していた。
所詮自分にはアメ玉を斬る程度の力しかない、そう思うこともあった。
実際、一朝一夕でエリポンのような筋力を身につける事は難しいだろう。
だが、キャンディを斬る程度の攻撃でも、それを繰り返し連鎖していけばどうなるだろうか?……
アユミンはそれに賭けて大太刀を握りだす。
797
:
名無し募集中。。。
:2017/09/27(水) 18:50:28
アユミンはナカサキ以上の連撃を見せるのか、それとも…
そういや確変してないナカサキのパワーってどのくらいなんだろう?
798
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/28(木) 13:13:04
アユミンの武器は故郷である北部で名刀とされていた大太刀「振分髪政宗」だ。
身長ほどもある太刀を巧みに操って己の力不足をカバーするというのな彼女のやり方だった。
しかし、その名刀を持ってしてもモーニング帝国の新帝王を決める戦いでは(優勢だったとは言え)エリポンを倒しきることが出来なかった。
その時点でショックが大きいのに、最近になって味方たちがみるみる力をつけていることにも焦りを感じていた。
ハルやマーチャンは必殺技を編み出しているし、いけ好かないオダだってきっと奥の手を隠し持っているに違いない。
あいつはそういう奴だ。アユミンはそう確信していた。
(いつの日か、フクさんが言ってたっけ。
必殺技は特別な技なんかじゃ無い。自分のやれる事の延長線上にあるんだ。
私にやれる事……やっぱ、これだよね。)
ナカサキが扉相手に苦戦している間に、アユミンは既に荒れた床を綺麗に均していた。
今立っている場所から扉までの直線5メートルは特にツルツルに仕上がっていて、
ちょっと足を踏み入れただけで滑って転倒してしまいそうになる。
そのスベりを自由自在に制御するのが天気組の「雪の剣士」アユミンの真骨頂。
スベりの勢いを前進するための推進力へと変換して、ハイスピードで扉へと突撃していく。
それもただ突っ込むだけじゃない。 故郷の大太刀を思いっきり振って、扉を真っ二つにせんばかりに斬りかかろうとしているのだ。
その時のアユミンの形相は物凄く、
あたかもタイマンで相手に鉄拳を食らわせようとしている時のような顔をしていた。
「たぁーーーーっ!」
大きな刀を持って高速で突っ込む攻撃方法なのだから
相手が生身の人間だとしたらそれだけで決着がついたかもしれない。
だが、今相手しているのはあの武道館だ。
渾身の攻撃にも負けることなく、技の衝撃は逆にアユミンに跳ね返ってしまう。
大太刀込みでもアユミンのウェイトは軽いため、反動でまた5メートル近くは吹っ飛ばされてしまったが、
こんなのは最初から折り込み済み。
キャンディを斬る程度の力しか無いと自覚しているアユミンははなから一撃で決まるとは考えていなかったのだ。
全ては連鎖。 連鎖の応酬がものを言う。
だからこそアユミンは自身が元いた地点に吹き飛ばされるように攻撃する角度を計算していたのである。
(まだここからだ!二連鎖!三連鎖!いくらでも繋いでやる!!)
元いた地点、それは即ちツルツル地帯の始点に戻ったということ。
ならばアユミンはもう一度高速の突っ込み斬りを繰り出すことが出来る。
その後も幾度となく武道館に跳ね除けられてしまうが、彼女は諦めない。
四連鎖、五連鎖、もう数が数えられなくなっても同じことを繰り返した。
いつまで繰り返すのか?
無論、キャンディが砕けるまでだろう。
「これが私の必殺技、"キャンディ・クラッシュ"!!!」
一撃の威力は決して高く無いかもしれない。
ただし、トータルの破壊力は現帝国剣士の誰の必殺技よりも上をいく。
たった今、こうして武道館の扉が音を立てて崩壊したのが何よりの証拠だろう。
799
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/28(木) 13:15:48
私のイメージだと素のナカサキの力はオカールやアイリと大差ない感じです。
キュート戦士団のパワーは一位二位と、その他の三位四位五位とで大きな差が有ると思っていただければ。
800
:
名無し募集中。。。
:2017/09/28(木) 18:33:27
なるほど!
確変しても3位って素のナカサキはオカールやアイリよりも更に劣るほどなのかと一瞬思ったけど
(マイミ=超人>アイリ=一流戦士>ナカサキ=…みたいな)
そうではなくて超人>>>>>>一流戦士ってことだったんですね
801
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/09/29(金) 13:04:29
●場面1 : 武道館東口 「チームダンス部 vs 扉」
アユミンの努力は実を結び、武道館の扉を破壊した。
そう、確かに壊したのだが……その扉の先にあるモノを見て一同は絶望してしまう。
「こんなの……あんまりだよ……」
石の壁。それもかなり巨大な石壁が行く手を阻むように設置されていたのだ。
扉の造りと比べると新しく見えるのでおそらくはベリーズの誰かが置いたのだろうが、誰の仕業かはこの際関係ない。
考えるべきことはただ1つ。「どうやってこの壁を壊すか?」だ。
まず思い浮かんだのは扉破壊の貢献者であるアユミンとナカサキだ。 ところが、貢献しすぎたせいで2人とも疲弊しているようである。
「ハァ……ハァ……すいません、私は……もう少し休まないと……」
「……ごめん、私も連発は厳しい。」
完全に息が切れているアユミンと、あまりの高負荷で血管を切らし腕から血を流すナカサキを見たら、これ以上頑張れとは頼めなかった。
二人ともある程度インターバルを置けばもう一度必殺技を出せるのかもしれないが、奇襲を目的とするチームダンス部にはそれを待つ暇は無い。
カリンが自身を早送りして壁に立ち向かおうとしたが、すぐにサユキが制した。
カリンの必殺技は身体に負担をかけすぎる。ここぞと言うときまで温存しておきたい。
「だからさサヤシ、私たちがやるしかないでしょ。」
「そうじゃなサユキ。 もう一秒も無駄に出来ん。すぐに取り掛かろう。」
●場面2 : 武道館西口 「チーム河童 vs カントリーガールズ」
エリポンとマーチャン、 そしてアーリーは群がる動物たち相手に体力を消耗しつつあり、
完全防備で対抗せんとしたカノンはモモコの電磁石の山に押し潰されている。
この状況を突きつけられたアイリは自身をとても不甲斐なく感じていた。
体調の著しく悪化しているアイリには「棒術で戦う」「殺気を放つ」「眼で弱点を見抜く」の3つを同時に行使することは非常に難しく、
せいぜいこのうちのどれか1つを選ぶので精一杯だった。
エリポン、マーチャン、アーリーの3人を動物群から救助するだけなら簡単だ。雷のような殺気のオーラを振りまけば良い。
そうすればカエルとカラス、そしてリサやマナカらカントリーガールズを無効化出来るので、状況を打破出来るだろう。
だが、その後のモモコの対応はどうすれば良いのか?
ベリーズの中では純粋な身体能力が低いとはいえ、若手たちがサポートなしで楽に倒せる相手では決してない。
それにモモコのことだから平気な顔でまだまだ罠を仕掛けているはず。 本当にここで「殺気」というカードを選択しても良いのか?
そうこう悩んでいるうちにエリポンやアーリー達はどんどん疲弊していっている。
(どうすれば良いの!?何を選べば正解だと言うの?……)
●場面3 : 武道館南口 「チーム下克上 vs クマイチャン」
二階から落ちた衝撃で、カナナンの脚は完全に折れていた。こんな状態では上半身を動かすのがやっとだ。
しかしクマイチャンはそんな事も御構い無しに攻め手を緩めない。
長刀を思いっきり地面に叩きつけて、文字通り地を割ってしまったのである。
「ぬああああああっ!!」
地割れを起こすなんて規格外にも程がある。
こうして生じた亀裂にハマったら、どれほどの距離だけ落下してしまうのだろうか?
場合によっては二階から落ちるよりダメージを負うことになるのかもしれない。
「カナナン!ほら行くよ!」
身動きの取れないカナナンをリナプーが急いで背負った。
とは言えリナプーは力の強い方の戦士ではない。人を一人背負っただけで著しく移動速度が低下する。
しかも地割れのせいで足下は非常に歩き難くなっている。 番長らの機動力の低下は避けられないだろう。
そんなリナプーとカナナンに対してクマイチャンは容赦なく刀を振り下ろした。
超高度から繰り出される斬撃の破壊力は一撃必殺級。
番長たちがこれに耐えるには防御力が不足しているため、必死で逃げるしか回避策は無かった。
なんとかメイがサユキ物真似の飛び蹴りをクマイチャンの手首に当てることで斬撃の角度を反らしたものの、
クリーンヒットしたと言うのにクマイチャンは痛がる顔1つしなかった。 ほとんど効いていない証拠だ。
ここまでの戦いで番長たちは痛感する。 自分たちには「機動力」と「防御力」、そして「攻撃力」が絶対的に足りていないのである。
この状況でどうやって怪物に勝つのか?どんな策を講じれば巨人に勝てるのか?
考えがまとまらぬうちに最若手のリカコが亀裂に躓き、そこを目掛けて自称176cmの位置からなる振り下ろしがノータイムで襲いかかってきた。
「リカコ!!避けて!!」
喰らえばもちろん即死。 それに耐える防御力も、回避するための機動力も、リカコには備わっていない。
802
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/02(月) 13:06:42
●場面3 : 武道館南口 「チーム下克上 vs クマイチャン」
リカコが斬られそうになる絶体絶命の状況下で、摩訶不思議な出来事が起こった。
あろうことかクマイチャンの刀が空中で静止したのだ。
これはクマイチャンの意思で止められたものでは無い。当人だって非常に不思議そうな顔をしている。
「???……なんだ?……見えない壁があるぞ?……」
"見えない壁"、その単語を聞いたリカコは雷にでも打たれたような顔をしてすぐに横を振り向いた。
色黒で露出の高い服を着た派手目女子が近くに寄り添っていたことに、どうして気づかなかったのだろうか。
「なんで?!な、な、な、なんで!!?……ム、ム……」
リカコがその名を呼ぶよりも早く、後方から破裂音が鳴り響いた。その音は間違いなく銃声。
目にも止まらぬ速さで射出された銃弾はクマイチャンの肩に撃ち込まれ、血液を流させる。
「痛っっっっっ!!……なんなんだ!?新手なの!?」
「……ごち。」
番長もクマイチャンも状況を掴めていない中で、息もつかせぬ間に更なる何者かが跳び上がってきた。
それは球体。 カナナンもリナプーもメイも丸いものがやってきたことを認識する。
いやいや違う。よく見たらそれはただの丸いものじゃない。
何よりも頼れる同士がやってきたのだ。
「うおりゃああああ!!渾身のストレートを喰らえっ!!」
丸くて頼れる同士がブン投げた鉄球の時速は160km。
しかもそれが高速スピンでクマイチャンの肩に衝突したものだから、傷口をガリガリとエグっていく。
これが痛くないわけがない。
「あ゛あ゛あああああああああ!!!」
「よっしゃ番長のみんな!まだまだどんどん畳み込むぞ!!」
●場面2 : 武道館西口 「チーム河童 vs カントリーガールズ」
「動物を操ってるのはそこのリサ・ロードリソースとマナカ・ビッグハッピーよ!やっちゃいなさい!!」
突然高い声が聞こえてきたと思えば、その指示に沿うように二人の戦士が飛び出してきた。
その二人のスピードはなかなかのものであり、
片方は両足に装着したローラースケートで、もう片方は高速アクロバットの繰り返しで速さを実現しているようだ。
一人はリサの腹をスケート靴に取り付けられたブレードで切りつけて、一人は紐付きの刀をマナカにブン投げている。
攻撃を受けたリサとマナカは痛みのあまりカエル・カラスへの攻撃指示を中断してしまい、
群れに襲われていたエリポン、マーチャン、アーリーは無事解放されることになった。
つまりはアイリが「殺気を放つ」というカードを切らずとも、3人が助かる運びとなったのである。
リサとマナカのフォローに入ろうとマイが動こうとするも、すぐに新手の二人に阻まれる。
この手はずの良さにはモモコも舌を巻く。
「へぇ〜、いいタイミングで入ってきたじゃないの。いつから見張ってたんだか。怖い怖い。」
モモコのイヤミもどこ吹く風で新規参入組のリーダー、いや、"剣士団長"がアイリのもとに歩いてきた。
そしてあろうことかアイリのアゴをクイッと持ち上げてはこう言い放ったのだ。
「アイリ様、私に使われてみませんか?必ずや勝利に導いてあげますよ。」
●場面1 : 武道館東口 「チームダンス部 vs 扉」
「ここは私に任せて。」
その声が聞こえた瞬間、石壁の破壊作業に取り掛かろうとしていたサヤシとサユキはゾクッとした。
まるで巨大な瞳にギロリと睨まれたような感覚を覚えたのだ。
慌てて後ろを振り向くが、そこには怪物などいやしない。
居たのは一人の女性だ。背はそこそこ高めだが、せいぜい160cmより少し上程度。化け物とは言い難い。
一点だけ普通ではないところをあげるとするならば、顔のほとんどを覆う程の大きいサングラスを装着していることくらいだろうか。
その人を見たナカサキはちょっぴり驚いた顔をするが、すぐにクスッと笑って話しかける。
「来たんだね。 じゃあさっさとやっちゃってよ。」
サヤシ、アユミン、サユキ、カリンの4名はその女性が何者なのかは知らなかった。 が、見当はつく。
怪物と間違うような殺気、大きなサングラス、そしてナカサキと同格であるという事実。
一同は確信した。この人がこれから繰り出す必殺技ならば石壁も容易く壊せることを。
「DEATH刻印、"派生・JAUP"!!!」
彼女が行なった行為は、高く跳び上がった後に石壁めがけて巨大な斧を振り下ろしただけだった。
たったそれだけ。それだけだというのに頑丈な壁はあっという間に崩壊する。
キュート戦士団No.2のパワーを誇る彼女にとって、この程度は朝飯前ということなのだろう。
803
:
名無し募集中。。。
:2017/10/02(月) 16:06:59
何という胸熱な展開!!
・・・そしてようやくキュート最後の戦士の登場!もう出て来ないのかと思ってたw
804
:
名無し募集中。。。
:2017/10/02(月) 23:44:33
クマイチャンていつも被弾してるよなw
805
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/03(火) 13:08:04
●場面0 : 武道館外門 「マイミ vs チナミ」
今からほんの少し前、連合軍のリーダーマイミが戦車の装甲にパンチのラッシュを浴びせている時のことだった。
自分とチナミの決闘を、何者かの集団を横切ろうとしていることにマイミは気づいた。
熱い戦いの最中なので本来ならば気にも留めないのだが、
集団の先頭が大きなサングラスを身に着けたよく知る女性だったものだから、無視せざるを得なかった。
「おお!!もう元気になったのか!!」
「ふふ、まぁね……ところで団長、手助けいる?」
正直言って今のマイミはギリギリの戦いを強いられていた。やはり人間対兵器はちょっとばかし無理があったのかもしれない。
ここで同志が助けてくれるのはとても嬉しい……のだが、マイミがその申し入れを受け入れることはなかった。
集団の顔ぶれを見て、ここよりもっと相応しい戦場が先にあることを悟ったのである。
「助太刀は不要だ!皆のところへ急ぐんだ!」
「そう言うと思った。了解。」
●場面1 : 武道館東口 「チームダンス部」
そして時間は現在に戻る。
集団を率いていた人物の名はマイマイ。
かつてはキュート戦士団の知将と呼ばれていた、食卓の騎士最年少の戦士なのである。
そんな人物が急きょ参戦してきたのだから、若手らは目をキラキラさせて羨望の眼差しを送った。
ところが年月を経てナカサキをも凌ぐネガティブ思考になったマイマイはそれを簡単には受け入れない。
「いや、そういう無理とかしなくていいよ。」
「えっ?」「無理なんて全然……」
「いいのいいの、マイが尊敬されるタイプじゃない事くらい自分がよく知ってるから。」
「……」
ほんのちょっとのやりとりで、オカールとは違ったタイプで近寄りがたい人物だと一同は理解した。
多少クセがあるようでも心強いのは確かだ。 キュート戦士団が二人もついてくれるなんて思いもしなかった。
心のシャッターを依然変わらず閉じているマイマイに対して、サユキも声をかけていく。
「そういえばオカール様が、マイマイ様はメンタルをやられたって言ってましたけど治ったんですね!本当に良かったです。」
「メンタル?……あ〜あれは嘘。」
「えっ?」
"嘘"という衝撃告白にサヤシ、アユミン、サユキ、カリンは固まってしまった。
どうしてそんな嘘をついたのだろうか?全くもって事情が分からない。大人の事情というやつか?
詮索するつもりは元からなかったが、質問タイムになるのを遮るようにナカサキが喋りだす。
「ほらみんな早くいくよ!私たちの本分は壁の破壊じゃなくて奇襲なんだからね!急いで急いで!」
●場面3 : 武道館南口 「チーム下克上 vs クマイチャン」
以前にも書いた通り、この戦いのタイトルは「あまりにも出すぎた杭 vs 番長の総力戦」だ。
総ての戦力を出し切ることが出来なければ、番長たちに勝ち目は無いとも書いたはずだ。
そして今この場にアンジュ王国の最高戦力が勢ぞろいしている。
「タケちゃん!ムロタン!マホ!!来てくれたんか!」
「おう!カナナン、リナプー、メイ、リカコ、待たせたな!!」
「リカコ〜〜〜怖くて泣きそうになってたんじゃないの?〜〜」
「リカコすぐ泣くもんね」
「な、泣いてないし(>_<)」
運動番長タケ・ガキダナーと音楽番長ムロタン・クロコ・コロコ、そして給食番長のマホ・タタン
国に残っていたはずの彼女らが何故やってきたのかは分からないが、理由なんて今はどうでも良い。
目の前に立ちはだかる巨人をなんとかするのが何よりも先決だ。
「突然現れたからちょっと驚いたけど、4人が7人になったくらい何とも無いよ!!」
そう言うとクマイチャンは長刀をムロタンに向かって振り下ろした。
五万の援軍ならまだしも、追加でやってきたのはたったの3人なのだからそう思って当然だろう。
しかし、それではまだアンジュの番長の戦力を読み違えているとしか言いようがない。
彼女らは常日頃から同期同士でチームを組んで戦ってきたため、それがガッチリと組み合った今が最も強いのだ。
「バリアー!」
ムロタンは透明の盾でまたもクマイチャンの斬撃を防いでみせた。
純粋なパワーならクマイチャンの方が圧倒的に上なので、このまま押し切られたら流石のムロタンも防げないのだが、
そうなる前にリカコがすかさず石鹸銃を構えてシャボン液を発射する。狙いはクマイチャンの目だ。
こうして視力を奪ったところにマホがスナイパーライフルによる狙撃をしたものだから、クマイチャンは避けられない。
その銃弾のターゲットはヒタイか?心臓か? いや、そんないかにもな人体急所ならクマイチャンは死に物狂いで回避する恐れがある。
だかはマホは先ほど銃弾をブチ込んだ肩と寸分違わぬ箇所に二発目をプレゼントしたのだ。これが後から効いてくる。
806
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/03(火) 13:09:39
「ぐっ……よくも……」
「余所見してんなよ!次はこっちが相手になるぜ!!」
クマイチャンの目が少し慣れた頃には既に、タケだけではなくメイ、リナプー、カナナンもその手に鉄球を持っていた。
そして各自が一斉に豪速球、モノマネ豪速球、消える魔球、少し遅めの投球をマホが傷つけた肩に向かって投げつける。
これ以上壊されたくないと強く思ったクマイチャンは必死で初球、第2球、第3球を刀で弾き落としたが、終盤で軌道が変化するカナナンのカーブ(プロ仕込み)だけは迎撃することが出来なかった。
番長から見ればさしずめ「形勢不利も次のカーブで見事にドンデンガエシ」といったところだろう。
今まで彼女らは臥薪嘗胆の思いで耐えてきた。 幾度も転ばされる事もあったが七転び八起きの精神で立ち上がっている。
ここから乙女の逆襲が始まる。
●場面2 : 武道館西口 「チーム河童 vs カントリーガールズ」
他の場面と同様にこちらにも心強い味方が駆けつけてくれた。
それはモーニング帝国剣士団長のハルナンと、新人剣士のハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンの計5名だった。
他所のマイマイや追加番長のケースと異なり、この5人の登場にはエリポンやカノン、マーチャンらはさほど驚いていなかった。
元より合流予定だったという理由もあるが、それ以上に彼女らがここまで辿り着くことを信頼していたのである。
ただ一人、アーリーだけはハルナンの存在にムムッとした表情で警戒している。
過去の選挙戦のとき、果実の国の面々はロクな目に合わなかったので好意的に受け入れられないのは当然なのかもしれない。
そんなアーリーの肩をエリポンが軽く叩き、安心感を促していく。
「大丈夫っちゃよ。ハルナンは勝利の執念だけは誰よりも強い。 きっと皆が勝てる案を考えてくれるはずっちゃん。」
その通り。ハルナンは勝つつもりだからこの場に現れたのだ。
勝利のためなら大先輩であるアイリからリーダーの座を奪う事もいとわない。
「このチームのメンバーを見たときに驚きました。
カノンさんはともかくエリポンさんにマーチャン、そしてアーリーちゃん……すっごく扱いにくそうなメンバーだな、と。
でも、このメンバーならモモコに勝てると思ってアイリ様は選出したんですよね?
任せてください。ここから先は私が代わりにスペシャルチームを導いてあげますよ。」
「……」
弱点を見抜く眼をおいそれと使えない今、アイリはハルナンの真意を見破るのに苦心していた。
その実力を本当に信用していいのかは分からないが今は任せるしかない。そう感じて頭をコクリと下げた。
こうして指揮権が移るや否や、ハルナンが指示を出し始める。
「そうですねー、ちょっとこのフィールドはゴミゴミしてて見難いですね。動物たちが邪魔なのかな?……
よし!新人剣士のみんな!モモコ以外のカントリーガールズを追っかけ回してヨソに連れ出しちゃいなさい!
ノルマは一人一殺……出来るわよね?」
「「「「はい!」」」」
指示を受けてすぐに新人剣士の4名はリサ、マナカ、チサキ、マイの元へ走っていった。
ハルナンの狙いは動物の群れを遠くに隔離してからモモコを楽に倒す事なのだろう。
だがその手に乗ってやる義理はない。カントリーの4人は意地でも逃げまいとしたが、
逆にモモコの方から指示が飛んでくる。
「そうねぇ……リサちゃん、マナカちゃん、チサキちゃん、マイちゃん、ここは相手に乗っかりましょう。どこか遠くに逃げちゃいなさい。」
「「「「えっ!?」」」」
「もちろんどこでも良いって訳じゃないのよ……自分を活かせるフィールドに向かって走りなさい。」
「「「「!!」」」」
モモコの指示を受けたカントリー4名はそれぞれバラバラに逃げていった。互いに共闘するつもりは毛頭ないらしい。
ならば新人剣士4名も同様にバラバラに追いかけることになる。
さっそくハーチンが自分のターゲットを決定し、ローラースケートで追跡していった。
「よっしゃ!じゃあそこのチサキって子を追いかけ回したろ!どう見ても一番弱いしな!みんなも早いもん勝ちやで〜」
「ひえええええ!追っかけてこないで〜〜〜!!!」
ハーチンの言う通り、戦う相手を自分で選択できるのは新人剣士たちにとって大きなアドバンテージだ。
すこし考えた結果、ノナカはリサを、マリアはマイを、
そしてちょっと考えるのが遅れたアカネチンは余ったマナカを追いかけることとなった。
807
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/03(火) 13:13:46
さすがに今回は投稿時に本文長すぎと言われちゃいました。なので分割してます。
ちなに今の位置関係を整理するとこんな感じです。
●武道館外門
チナミ vs マイミ
●武道館西口
モモコ vs アイリ、エリポン、カノン、ハルナン、マーチャン、アーリー
リサ vs ノナカ
マナカ vs アカネチン
チサキ vs ハーチン
マイ vs マリア
●武道館西南口
ミヤビ vs オカール、ハル、オダ、トモ
●武道館南口
クマイチャン vs カナナン、タケ、リナプー、メイ、ムロタン、マホ、リカコ
●武道館東口
ナカサキ、マイマイ、サヤシ、アユミン、サユキ、カリン
>>803
マイマイは実は最初から出すつもりでしたw
>>137
の文もそれ前提で書いてますね。
>>804
あれっ?そうでしたっけ。体が大きいから的になりやすいんですかねw
808
:
名無し募集中。。。
:2017/10/03(火) 13:27:18
千奈美で戦国自衛隊が出てきてからずっとドキドキしてる…
809
:
名無し募集中。。。
:2017/10/03(火) 16:16:37
ハルナンの指示、ゾクゾクするねぇ
810
:
名無し募集中。。。
:2017/10/03(火) 19:09:52
もう作者さんがノリノリで書いてるってのが伝わってくるね〜てか小ネタブッコミ過ぎ!w
マイマイ登場したのは嬉しいけど前作で完全に破壊された顔がどうなっておるか心配・・・
12期とカントリーは『なんかぁ意外な組合せだね…』どう戦うのか楽しみ
811
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/04(水) 13:38:58
「ハァ……ハァ……急がなきゃ……」
チサキは武道館の周囲をぐるりと囲んでいる、お堀に向かって走っていた。
ここらで水場と言えば唯一そこだけ。魚類を自在に操るチサキはお堀にさえ辿り着けば優位に立てるのだ。
ローラースケート使いのハーチンに追われて恐怖していたチサキは、
目的地に到着したと思えばすぐにお堀へと飛び込んだ。一刻も早く水中へ入りたかったのである。
しかしここで酷な事が起きる。 水に飛び込んだはずのチサキは何か硬いものに顔面をビタンと強打する。
「ぎゃ!」
チサキの飛び込みを阻んだものは何か?……答えは「氷」だ。
今の季節は3月。暖かくなり始めたとは言えまだ寒い。
アリアケの波打つ海と違って、この武道館のお堀の水は静かに留まっている。 なのですっかり氷が張っていたのだ。
これでは水中に入ってお魚に味方してもらうことが出来ない。
いや、それより深刻なのは……
「ははははは!笑いが止まらんな! 氷の張ったスケートリンクはウチの独壇場やで!」
「嫌ぁあああああああ!!」
水の状態を自分にとって都合の良い方に持っていくのはどちらになるのだろうか。
ハーチンとチサキの勝負は、水をより制した者が勝利する。
リサ・ロードリソースは木々の茂った木陰地帯に逃走していた。
その理由はもちろんカエルのため。カエルがより活発に動ける条件がここには揃っている。
「まぁ、こんなところに来なくても勝てるんだけどね。 ノナカちゃんだっけ?……あなた、前にカエルちゃん達の前で何も出来てなかったでしょ。」
リサはモーニング帝国城でサユをさらった時のことを言っていた。
その時にカエルの群れを見て平気そうだったのはエリポンとハルナン、そしてマーチャンくらいだった。
ノナカを含む他のメンバーはあまりの気味の悪さに震え上がっていたのである。
だが、ノナカだって無策でリサを戦闘相手に選んだわけではない。
「確かにカエルに囲まれるのはHorrorですね。 見た目が、その、言ったら申し訳ないけど……」
「気持ち悪いんでしょ? 別にいいよ。この可愛さはわかる人にしか分からないし。」
「Yes、そうです。 だから私は見ないで戦うことにします!」
「!?」
敵を前にしてノナカは目を完全につぶってしまった。
本来ならばあり得ない行為だが、ノナカの耳の良さをもってすればこの状態でも戦えるかもしれない。
そしてノナカは更なる能力……妄想力を発揮する!
「Wao! カエルちゃん達がとってもfancyな見た目になりました!」
「えっ?……」
ノナカは持ち前の妄想力で、カエルのビジュアルを自身の画風通りの姿に変えてしまった。
他人にとっては珍妙なキャラクターに見えるが、ノナカにはこれが可愛く思えるのである。
ノナカとリサの勝負は、己の画力をよりアピールした者が勝利する。
812
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/04(水) 13:39:59
マイとマリアは芝が適度に生えた平原に辿り着いた。
カントリーガールズの中でも動物に頼らず己の肉体のみで戦うマイならではの選択だろう。
「マイは自分の強さに自信を持ってる。だから小細工なしの場所を選んだよ。」
「うん!マリアも望むところだよ!」
「あとね、マイはスタイルとセクシーさにも自信を持ってる。」
「え?、あ、うん、脚長いよね、あ、その、セクシーさも良いと思う」
「でしょ。」
マイの変なペースに乗せられてしまいそうになったが、今はそんなことをしてる場合ではない。
キッカとの修行の成果を発揮して、敵を早々に撃破せねばならないのだ。
「マリアは野球に自信を持ってるよ!えいっ!」
あんなに訓練したのだから、マリアのナイフ投げのコントロールは遥かに向上していた。マイの胸元に正確に飛んで行っている。
本来ならば見事にストライクが決まるのだろうが、
マイはそのナイフの軌道を正確に捕らえて、右拳を下方向から叩きつけることに成功する。
ブン殴られたナイフは数十メートル以上は遠くの方へ吹っ飛んでしまった。 これはまさに"ホームラン"と言うしかない。
「今のが野球?マイよく知らないけど、結構カンタンなんだね。」
「え?え?……」
勝敗を決するのは知識量か、それとも遺伝子か、
マリアとマイの勝負は、より野球を極めた者が勝利する。
そこから近い平原で、マナカとアカネチンも戦いを開始していた。
マナカは既に臨戦態勢にあり、カラスを身に纏って漆黒の翼を大きく広げているり
最凶の状態である「ブラック・マナカん」になっているのだ。
「アカネチンだっけ?ご生憎様だけど、君が勝つ可能性は万に一つも無いと思うよ……だって、マナカはカントリーで一番強いから。」
「そ、そんなことやってみなきゃ分からないじゃない!!」
「ふふ……あぁ、それにしても、どうせタイマン勝負をやるならハル・チェ・ドゥー様とやりたかったなぁ。」
「え?……」
「あのカッコいいイケメンハル様と二人っきりなんて……キャー!妄想しただけでドキドキしてきちゃう!
そうだ!アカネチンをさっさと倒したらハル様の方に直行しようかな。」
(この勝負……絶対!絶対!絶対に負けられない!!)
下馬評通りなら99.9%でマナカが勝つカード。
アカネチンとマナカの勝負は、より愛が強い方が勝利する。
813
:
チサキとマイは夜更新します
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/05(木) 12:58:49
カントリーの4人が散り散りになった今、モモコはたった1人で連合軍6人を相手取る形になっている。
アイリが相変わらず地面にへたり込んでたり、カノンが磁石の山に下敷きになってる事を考えると今すぐ6人全員でかかれる訳ではないが、
少しばかり話が上手く進みすぎていることをハルナンは懸念していた。
「即決で決めちゃいましたね。 そんなに自分の実力と、カントリーの子たちの力を信頼してるんですか。」
「まーね。私の強さのことは言うまでもないし、それに、あの子たちには私の暗器を一つずつ貸してるの。 4勝0敗もあり得ちゃうかもなぁ。」
モモコは7つの暗器を自在に操る戦法を得意とするのだが、現在はその半数以上を後輩たちに託していた。
例えばマナカには「超強力電磁石」を預けている。彼女にはこの暗器がピッタリだとモモコが判断したのである。
複数羽のカラスを身に纏ったマナカは武道館のてっぺんと同じくらいの高さまで飛び上がり、そこから磁石を次々と落としていった。
「わっ!!危ない!」
この高さからならアカネチンは反撃しようがない。
しかも、次々とカラスの口から石を供給されるのでマナカはいくらでも空から投下できる。
最初のうちはアカネチンも眼の力で石の軌道を先読みして回避していたが
地に転がる磁石が増えるにつれて引力と斥力の関係が複雑化し、落下する石の動きが急変するため避けきれなくなってしまう。
「痛い!……うぅ……手にぶつけた……」
「互いにくっ付き合う磁石ってマナカとドゥー様みたいだと思わない? 嗚呼、まさに恋はマグネット。」
「うるさい!」
一方、木陰のノナカは目をつぶったまま周囲の音を敏感に感じ取っていた。
いくつもある小さな呼吸音の中に、一つだけ大きな呼吸音が混じっている。
それはヒトの呼吸。つまり倒すべき敵リサ・ロードリソースはそこにいるのだ。
目が見えなくても場所さえ分かれば斬りかかることが出来る。ノナカは忍者の俊敏さでそこに一瞬で辿り着いた。
リサの身体からはカエルの呼吸は聞こえない。即ちカエルを纏ったりはしていないと言うこと。
個人の戦闘力は並以下のリサに肉弾戦は不可能なはず、そう考えてノナカは刃を突き刺そうとした。
……が、その瞬間ノナカの頰からパン!と言う大きな音が鳴り出す。
音源はノナカではない。リサに思いっきりビンタを喰らったことで破裂音が響いたのだ。
「What's !?」
ただのビンタならノナカはここまで驚きはしない。
驚くべきは音の次にやってきた激痛だ。奥歯が抜けてしまいそうなくらいに痛い。
おもわず目を開けそうになってしまった程である。
「見えないよね〜? 教えてあげよっか、私の手は金属が貼り付けてあるの。
これでほっぺたをパンって叩いたんだよね。もっとたたいてあげようか? パン・パン・パン、パン・パン・パパンってね。」
これも言うまでもなくモモコからレンタルした暗器の一つだ。
手のひらに薄くて軽い金属の板をペタリと貼り付けることでビンタの威力を強化しているのである。
これがあればリサにも接近戦が可能になる。
そして、そんなリサが畳み込むなら今がチャンス。
今日一番のリズムでノナカの両頬を往復ビンタする。
「パパパパン!パパパパン!パパパパパパパパパパン!」
814
:
名無し募集中。。。
:2017/10/05(木) 14:04:51
意外な組合せかと思ったらかなりカントリーに有利な組合せだった!
しかもモモコの暗器との相性も抜群だし…恋マグ、リズムときて次は何の暗器(曲)なのか?
815
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/05(木) 23:58:36
自身の投げたナイフを簡単にホームランされてしまったのでマリアはひどくショックを受けた。
マイは運動神経抜群であるため、マリアの球種を見てストレートつまらん(つまらん)なんて小生意気ガールのような感想を抱いたのかもしれない。
(だったら変化球だ!キレッキレのを投げて撹乱しちゃいまりあ。)
マリアの狙いはこうだ。まずは思いっきり高めに投げナイフを放ることで、暴投だと思わせて一旦油断させる。
ところがその暴投ナイフは実はフォークボールの要領で投げられている。最高点に到達したところで急降下するのだ。
さすがにその変化は捕らえられないだろうと考えてマリアは自慢の強肩でナイフをぶん投げた。
「えいっ!!」
誰がどう見ても大暴投。こんなのを打とうとしたり、あるいはキャッチしようとする者は存在しないだろう。
野球を少しでもかじった人間ならストライクゾーンにかすりもしない球を無理して追いかける事は決してない。
しかし、マイは違った。
野球を知らない彼女はそんなルールには捉われない。なんであろうと自分への攻撃は受け止める思いだ。
ウサギのトレーニングを積んだ末に培った跳躍力で空高くにあるナイフをキャッチしようとするつもりでいる。
だがあれだけの上空にあるとどれだけ必死にジャンプしても届かないかもしれない。それは自信家のマイだって流石に自覚していた。
だからここは少し癪ではあるが、モモコに借りた暗器を使うことにする。
「これを使うと脚が長くなるんだよ。マイはもともと美脚だから意味ないんだけどね。」
その暗器はブーツに仕組まれており、足先にググッと力を入れることで機構が作動する。
ガシャンガシャンと言う音とともに靴の底が一瞬にして持ち上がり、あたかもマイの脚が50cmほど伸びたように見える。
このように特殊な仕掛けが組み込まれた靴は"美脚シークレットブーツ"と呼ばれ、
足がコンパクトなモモコでも人並みの歩幅をに入手に入れるために開発されたのだとマイは思っていた。
ウサギの力を持つマイがこのシークレットブーツを使えば、脚が飛び出る時の勢いを持ち前の跳躍力にプラスすることが出来る。
結果的に規格外の大ジャンプが実現可能になるのだ。
そうしてマイはナイフがフォークボールとして機能する前に、即ち、落下するよりも前に掴み取る。
そして自身が着地するより早く、空中に浮いたままの状態で振りかぶり、マリアに投げ返したのである。
その様はまさに野球選手そのもの。今すぐ避けなくてはならないはずのマリアはついついマイをじっと見続けてしまった。
(なんで?……この子、どうしてこんなに野球が上手なの?……)
ナイフを横っ腹に受けてもマリアは変わらずマイを見続けた。その時流した涙は痛みからではない。感動からだ。
その視線の意味に気づいてないマイは着地するや否や、脚を伸ばしたままでモデル風のポーズをとり始める。
「あ、そうか、マイがイケメンだから惚れちゃったのかぁ……」
"クールな男気取ってる背伸びが素敵"、マイはそう自画自賛していた。
816
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/06(金) 00:01:31
リサ、マナカ、マイと、ここまではカントリー側のメンバーが優勢にある。
しかし残りの一人であるチサキはモーニング帝国の新人剣士ハーチン・キャストマスターに大苦戦を強いられていた。
「ほらほらほらぁ〜!!逃げんなやぁ〜!!!」
「キャーーーーー!!」
氷上(表情)の魔術師と称されるハーチンは変顔をしながら嬉々としてチサキを追っかけまわしていた。
スケート選手の才能がある彼女にとって、お堀の水が凍っているのは好都合どころの話ではない。
シャーッと華麗に滑って敵に追い付いては、靴裏に取り付けられたブレードでチサキの肌を傷つける。
「痛い!!……やだぁ……もうやだよぉ……」
「なんだか弱いものイジメしているようで気が進まんなぁ……うへへ、ふへへへ」
このまま逃げ続けても何にもならない事は、チサキもちょっとずつ理解し始めていた。
ならば立ち向かうべきか?しかし水に入れないチサキに何が出来るのか?
ここで彼女は思い出した。自分の靴にはモモち先輩から拝借した暗器が仕掛けられているのだ。
「えっと……確かこう使うんだっけ……えいっ!」
この暗器は足で地面をバン!と強く踏むことでその機能を発揮する。今は地ではなく氷を踏んでいるが効能に変わりはない。
この靴は下部から空気を取り入れて、その空気を内部で圧縮し、上部から一気に吹き出す仕組みになっている。
つまりこれを使えば(選挙戦でモモコがクマイチャンにやってみせたように)飛んでくる瓦礫などを空気の壁で防ぐことが出来るのである。
しかしこの暗器は飛び道具が襲い掛かってきた時にこそ真価を発揮するもの。つまり今使っても何の意味もない。
むしろ最悪なことに、そうして飛び出した風はチサキのスカートを思いっきりめくりあげてしまった。
「え?……」
チサキはあまりの事態に一瞬フリーズする。
相対しているハーチンもそのスカートの中身を至近距離で目にすることになった。これには流石のハーチンも動揺を隠せない。
「お、おう……色仕掛けってやつか?悪いけどウチは今のところそういう趣味は……」
「いやあああああああああ!!忘れて忘れて忘れてぇええええええ!!」
羞恥のあまりチサキは耳どころか全身真っ赤になる。
「心の中に風が吹くたび乙女の頬は燃えてゆくのよ」という言葉を誰かが言っていたが、
チサキの場合は「スカートの中に風が吹くたびチサキの全身は燃えてゆくのよ」と言ったところだろうか。
おや、気づけばチサキは頭から湯気が出るほどに茹で上がっているようだ。
まるで氷をも溶かしてしまいそうなほどに。
817
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/06(金) 13:11:52
チサキの体質は少し特殊だった。
常人と比較して異常なほどに血液の巡りが良く、ちょっとしたことですぐに真っ赤になってしまうのである。
驚くべきはその時にチサキが発する熱量だ。
場合によっては体温がお湯よりも高くなり、その熱を周囲に伝導させることも可能となっている。
今もこうして、チサキの足下の氷がジワジワと溶けていっている。
「あーもう!!穴があったら入りたいよーーー!!」
チサキは自身の身体で最も熱くなっている頭部を思いっきり氷にぶつけだした。
ただでさえ溶けかけているところに高熱の物体が勢いよく衝突してきたのだから、
水場に張っていた氷はあっという間に砕け散ってしまう。
そこを起点として周囲に次々とビビが入っていき、ハーチンの足場もろとも崩壊させていく。
「はっ?……」
あまりの衝撃映像を前にして、ハーチンはうまく事態を把握することが出来なかった。
砕け散るスケートリンクの上で滑った経験の無いハーチンは、為すすべもなく水中に落ちてしまう。
(冷っ!!なんやこれ!心臓が止まりそうや!……いや、それよりヤバイのは……)
ハーチンが水中で目にした光景、それは先ほどのカエルやカラスに負けず劣らずの数だけ存在する魚群だ。
この魚の種別名はワカサギ。
本来はこんなお堀に生息する魚では無いのだが、おおかたどこかのプレイングマネージャーが前日までに仕込んでくれたのだろう。
そう、水中ならば無敵になれる可愛い後輩のために一肌脱いだのだ。
(お魚さんたちお願い、あの人を倒して……そして、出来ればさっきまでの記憶を全部消しちゃって!!)
アカネチンは空から降り注ぐ磁石から逃げ回っていた。
とは言えアカネチンの眼を持ってしても磁石の引き寄せ合う力を全て見抜くことは困難であり、
既に10発ほどはぶつけられている。
人体急所に当てられていないのが不幸中の幸ではあるが、もしも頭に当たったら一発でアウトだろう。
(このまま逃げてちゃラチがあかない……私からも攻撃しなきゃ!!)
向こうが上から下に仕掛けてくるなら、こちらは下から上に攻撃すれば良い。
いつも愛用する印刀では上空まで届かないので、アカネチンは地面に転がる磁石を一つ手にした。
これを思いっきり投げて、的当てのように空飛ぶマナカにぶつけてやろうと思ったのである。
「えいっ!」
遠距離の敵を相手するなら自分も遠距離攻撃……という発想は良かったかもしれない。
だが、普段あまり物を投げないアカネチンの肩はさほど強くなかったので、
投げられた磁石の勢いはすぐに弱まり、むしろ地上にちらばる磁石の方に引き寄せられてしまう。
つまり、アカネチンにはどうやってもマナカを撃ち落とす事など出来ないのである。
「そんな……あぁ、もしもマリアちゃんがいれば当てられるかもしれないのに……」
アカネチンは無意識のうちに同期のマリアに頼っていた。
確かに彼女の強肩なら磁力の強さを上回るパワーで投球できるかもしれない。
「マリア?……あぁ、あっちでマイちゃんに半殺しにされている子のことね。」
「えっ?……」
「マイちゃん強いからなぁ、マリアって子はもう助からないかもね。命も危ういかも?
あ!それじゃあ私のことマリアと呼んでいいわ今日から。
ドゥー様との結婚を祝福してくれたらね〜。」
「そんな……マリアちゃんが……」
818
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/08(日) 16:59:37
「マリア大丈夫かな〜心配だな〜」
マリアとマイが戦っている平原から少し離れたところで、コードネーム"ロッカー"が双眼鏡を覗き込んでいた。
以前に打倒キッカのために協力したよしみで、かなりひいき目に見ているようだ。
そしてその隣にはもう一人の仲間がいるのだが、それはいつもの相方"ガール"ではない。
所属組織のリーダー的存在である"ドグラ"だ。
彼女もまた真剣そうな表情でマリアとマイを観戦していた。
「私の見込みだとマリアがマイを打ち破るのは相当厳しいと思う。」
「そうなの?」
「マイ本人は知らされていないようだけど、彼女は伝説と呼ばれた戦士の実子……つまり、レジェンドの血を引いてるんだよ。
戦い方も直々に教わっていたようだし、生半可な力じゃ太刀打ちできないはず。」
「へぇ〜さすがアヤパンは野球に詳しいなぁ」
ドグラの話は真実。
マイは名選手から才能を受け継いだうえに、更に同一人物の名コーチから英才教育を受けてきたのである。
そのルーツが野球というスポーツだとは気づいていないようだが、実力は本物だ。
自分ひとりの力だけで、両生類・鳥類・魚類を操る仲間たちと肩を並べていることからもそれがよく分かるだろう。
「次はこっちから行くよ!」
マイはウサギのスピードを発揮して、マリアとの距離を一瞬にして詰めてしまった。
50m走なら今現在武道館にいる他のメンバーにも後れをとることもあるだろうが、
塁と塁の間の距離ならば身に染み込んでいるため、それ以下の長さなら誰にも負ける気がしない。
もちろんマリアだって黙ってみている訳が無いので、二刀流と呼ばれる所以の両手剣を構えて思いっきり振り切った。
しかしマイが衝突寸前で体勢を低くするヘッドスライディングで飛び込んだので、マリアの打撃は空振りに終わってしまった。
ここで自身の戦い方を「ウサギ」から「ライオン」へ切り替えたマイは容赦なくマリアのスネに噛みつきだす。
「ああっ!!」
獲物を狩る獅子がここで攻め手を緩めるはずがない。
脚を痛めて機動力を無くさせてからが本番。モモコ借りた美脚シークレットブーツを利用して一気に背を伸ばしながら、
ライオンの力で強化した握り拳をマリアの顔面に思いっきり叩きつける。
「っ!!!!」
「まだだよ!マイが勝つまで攻撃は終わらないんだ!」
マイはそのままマリアを押し倒し、更なる追撃を喰らわそうとした。
力関係だけでなく体勢まで下になったマリアは誰がどう見ても不利だ。
遠くから見ている解説・ドグラは最初の予想を変えようとしていないし、
ひいき目のロッカーだってマリアの敗北を確信せざるを得なかった。
「ここまでか……もっとやってくれると思ったんだけども。」
819
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/10(火) 13:08:35
リサ・ロードリソースのビンタを受けたノナカは顔をひどく腫らしていた。
せっかく最近はシュッとしきたというのに、これではムクんで見られてしまう。
ただ、見た目はともかくとしてビンタの威力自体はさほどではない。これくらいならノナカは耐えられる。
武器を手に入れたとは言え、元々戦闘向きではないリサには意識を断つほどの攻撃力は無かったという事だ。
(痛い……とても痛いけど我慢できる! 目もCloseさせたままでいられる!)
(嘘でしょ?あんなにビンタしたのに効いてないの?……こうなったらやっぱり戦意そのものを奪い取るしかないようね。)
ガチンコ勝負になればもちろんノナカが勝つだろう。運動神経が段違いだ。
だが、リサにはカエルがついている。
今のノナカは目をつぶってカエルを見ない事によってこの状況でもまだ戦えているが、
無理矢理にでも目をこじ開けられてしまえばカエルを直視することから逃れられず、戦意喪失してしまうことだろう。
(さっき、この子はカエルさん達がファンシーになったって言ってたわよね。
どんな見た目をイメージしてるのかはよく分からないけど、リアルなカエルさんが一番可愛いに決まってる!!
その目を開けて、現実を見せてあげるんだから。)
リサは指を咥えて、カエルにしか聞こえない音を発することで指示を出した。
この時出した指示の内容は二通り。
一つは通常のカエル200匹が一斉に飛びかかってノナカの動きを止めるというもの。
そしてもう一つは、本物の牛並みのパワーを誇るウシガエルがノナカの腹に突進するというもの。
ヘビー級のボディーブローを無抵抗で受けたノナカは苦しみのあまり目を開けてしまいそうになる。
「oops!!」
「どう?苦しかったら無理せず目を開けてもいいんだよ?」
「こんなのまだまだ平気……こうやってAtackされることは分かってたから……」
「ふぅん、聴覚で察知したから覚悟出来たってこと?」
「Yes, その通り。」
「だったらその耳を潰してあげる! カエルさん達!大声で鳴いてちょうだい!!」
「!?」
リサの指示通りにこの場にいる全てのカエルがゲコゲコと鳴き出した。
その騒音レベルは凄まじく、ノナカの耳が機能しなくなる域まで達している。
これでノナカの聴覚というストロングポイントは失われた。
どこから、どのタイミングで、どのような攻撃が来るのかはもう分からない。
820
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/11(水) 12:59:41
この寒い時期に冷水に落とされたとあれば、ハーチンの体力と精神力は急激に消耗される。
体温はごっそりと奪い取られ、呼吸できぬ恐怖が心臓を鷲掴みにし、脳はパニック状態になる。
そこにチサキが魚の軍団をけしかけたものだから状況は最悪だ。
魚はハーチンの窮地もお構い無しに顔を、腹を、手足を目掛けて体当たりしてくる。こんなことをされたらほんの僅かに体内に残った酸素だって吐き出さざるを得ない。
しかもワカサギ達は水面側にも壁を作るように陣取っているため浮上したくてもさせてくれない。
(苦しい!苦しい!本当に死んじゃう……)
これを絶体絶命と言わずになにをそう言うのだろうか、というくらいにハーチンは窮地に立たされていた。
水、そして魚を支配するチサキ・ココロコ・レッドミミーに水中に引き込まれた時点で勝ち目は薄かったのだろう。
だが、「勝ち目は薄い」とは即ち勝つ可能性はゼロパーセントでは無いということ。
極限状態にあるハーチンにもまだ出来ることはあった。 いや、極限状態だからこそ若き日に修練して得た技能が活きてきたのだ。
スケート選手は滑るだけではない。 スピン、そしてジャンプも欠かすことのできない要素である。
ハーチンは残った力を振り絞って自身の身体を捻りきり、その勢いで周囲の魚を弾き飛ばした。 そしてそのまま水の内から外へと跳びあがっていく。
「プハァ!!息……息が出来る!!助かったぁ!!」
ハーチンが脱出した先にはまだ破壊され尽くされていない氷面があった。自分の有利な居場所に戻ることが出来たという訳だ。
だが、それでも、チサキとはこれ以上戦わない方が賢明だろう……
敵は水の支配者。そのチサキはハーチンの復帰に驚いた顔をしてはいるが、依然変わらず水中に陣取っている。
このまま戦ってもチサキの有利は変わらない。ならば諦めて逃げるのが賢い選択。長い目で見ればそれが大勝利。
(って、さっきまでのウチならそう思ってたんやろなぁ……)
ハーチンの目はただ一方向、チサキの方だけを向いていた。 彼女は幼少期の苦しい修練経験と同時に初心までも思い出したのだ。
先輩たち、そして同期たちは今もこうして苦しい戦いを繰り広げているはず。 だったら自分だってモーニング帝国剣士としてそこに並びたい。
「一緒に、この感動を共有したい!!」
マイ・セロリサラサ・オゼキングに乗っかられたマリアも、ハーチン同様に劣勢だ。
あと数発良いパンチを貰ったら倒れてしまいそうなこの状況下で、マリアは頭の中で色んなことを考えていた。
このままマイに敗北してしまえば敬愛するサユを助けられなくなるがそれでも良いのか?
目の前のマイは戦闘力だけでなく野球の腕前も優れている。マリアは戦いでも野球でも勝てないのか?
「そうじゃない!!」
マリアは全てを受け入れなかった。わがままかもしれないが、甘んじるつもりは全くない。
この状況を打破するためなら思いつく限りの手段をなんでも尽くす。そう決意し、マイに抱きつきにかかった。
「あれは!!……あの時、俺がマリアにやったのと同じだ!!」
マリアの突然の行動をみたロッカーはつい声を上げてしまった。 隣でドグラが若干軽蔑した目で見てるのも気にならないくらい熱が入る。
以前ロッカーはマリアの攻撃を阻止するための防衛法としてボクシング技術のクリンチを使用していた。それを今こうしてマリアが使っているのだ。
「なにすんのっ!放してよ!!」
いくらマイが哺乳類のパワーを活用しているとはいえ、体躯はマリアの方が大きい。 この抱きつきからは簡単には逃れられない。
そして、すぐさま襲いかかる背中の激痛によってマイはマリアがとったこの行動の意味に気づきはじめる。
「!!!…………これ、まさか……」
その痛みの発生源が、遠くから監視していたドグラとロッカーには丸分かりだった。
「あのマリアって子すごいね……マイに抱きつくと同時に空に向かってナイフを投げたんだ。」
「あぁ、そのナイフが落下してきてマイの背中にブッ刺さったんだからそりゃ痛いだろうな。」
マリアは野球の神様にごめんちゃいまりあと謝った。 クリンチも不意打ちのナイフも野球のルールに沿った戦い方とは言えないからだ。
だが、これで劣勢をある程度はひっくり返すことが出来た。 ここからはスポーツマンシップに則って戦うが出来る。
慌てて距離を取るマイに対して、マリアは挑戦状を叩きつけた。
「一球勝負しようよ……マリアがあなたの心臓に向かってナイフを投げるから、もう一度さっきみたいに打ち返してみて。」
821
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/11(水) 20:53:43
ウシガエルは重量感のある体当たりを何発もノナカの腹に喰らわせていた。
とっくに血反吐を吐いているのだがそれは外には見えない。ノナカが全身をカエル群に覆われているからだ。
苦悶の叫びを何度もあげているのだがそれも外には聞こえない。カエル達が大声で鳴いているからだ。
視力どころか聴力さえも役に立たない環境でノナカが何も出来ずにいるのを見て、リサは安堵の表情を浮かべた。
一時期はどうなることかと思ったがこれでミッション遂行。 カエルの前に人は無力なのだ。
そう思っていたところでリサはある異変に気付く。 カエルの集まりの中からノナカの手が飛び出て、何か光るものを持ってるように見える。
(あの光はなに?………………う、嘘でしょ!?カエルさん達!今すぐそいつから離れて!!)
リサは急いで指笛を鳴らしノナカに集まるカエル群を散らした。 ゲコゲコ五月蝿い状況なので笛の音も普段の何倍も大きくなっている。
そしてカエルが命令を聞くより先にリサはノナカの元に走り、掌の金属で光体を思いっきりはたき落とす。
これはノナカが奥の手として用意していた爆竹。 音を司る忍者として「無音」で斬れる忍刀以外に「爆音」を発する爆竹も扱えるのである。
爆竹に殺傷能力は無いが、カエルのような小動物を焼き尽くす程度の威力は備えている。ノナカはこれでカエル群を吹っ飛ばそうと思ったのだ。
ところがリサ本人がカエルに代わって爆竹による破裂炸裂の直撃を浴びたので、想定外の大火傷を負わせることが出来た。
「熱い……」
思わぬ損害だったがリサはめげない。 焦げた指にガリッと噛みつき、さらなる指示を出す。 出し惜しみなしの最凶の形態になろうとしている。
「絶対絶対許さない! 今、私は猛毒を持つカエルさん達を身に纏ったの。斬撃でも爆撃でも当ててみなさい、体液があなたにかかってジ・エンドなんだからね!!
それに、どうせ見えてないようだから教えてあげるけどあなたの足下にも同じ毒ガエルさん達がビッシリと敷き詰められてる……どういうことか分かるよねっ!?あなた、もうそこから一歩も動けないよ!」
リサ・ロードリソースの怒声にノナカはゾクッとした。 怒気にビビったワケじゃない。毒がもたらす危険なアディクションに肝を冷やしたのだ。
ノナカの聴覚は確かに周囲のカエルの呼吸を捉えている。 目を開けていないので色で判別出来ないが、以前城の前でエリポンとハルナンにも同じことをしたのだからハッタリではないのだろう。
だが違和感がある。 リサの説明はあまりにも懇切丁寧。くどいくらいに毒ガエルの存在を強調している。
ほっとけばノナカを毒で倒せるというのに何故わざわざ正直に話すのか?……ハッタリ以外の理由で何がある?
「あ、そういうことか……見えてきた……」
これまでのリサの行動からノナカは暗闇の中で全てを理解した。そして、勝利のための光明を見つけることが出来た。
まさに「頭の中にイメージさえ描ければ摑み取れそうさ」と言った感じだ。
「見えた?……目を閉じてるあなたに何が見えると言うの?……」
「"My Vision"」
アカネチンのいる平原、現在の天気は磁石の雨あられ。
マナカ・ビッグハッピーは更に多くのカラスを呼び寄せて、次々とモモコの電磁石を地上へと落としていっていた。
"眼"でマナカとカラス、そして石の動きを見抜いてるおかげでアカネチンはその殆どを避けていたが、
どうしても何個かの直撃は喰らってしまう。 背中は痛々しくも血が滲んでいる。
それでも、アカネチンは動きを止めなかった。 マナカからマリアがピンチと聞いたその時から一貫して奇妙な行動を取り続けている。
(あの子どうしちゃったの?……この絶望的な状況下でヘンになっちゃったのかな。)
マナカは計算が大の得意。そんなマナカでも敵の行為の真意を読み取ることは出来なかった。
アカネチンは腰を落として低い姿勢をとったかと思えば、愛用する印刀「若葉」の先で地面をガリガリと削り出したのだ。
そして何やら大地に文字でも描くように線を引き続けている。
でもそれは文字なんかじゃない。 大きな円を描いたかと思えば、その中にまた円を、そしてまた円を描いている。 意味がわからない。
「まるで大きな的ね。 中心に向かって石を投げれば良いのかな?」
何重にも重なる円の中心にアカネチンが来たタイミングで、マナカは超強力電磁石をぶん投げた。
球技は得意な方ではないがその時の投球はなかなか上手くいき、的のど真ん中にいるアカネチンの脳天にヒットする。
この時のマナカは心が踊った。 アカネチンが倒れるのを見て解放感さえ感じていた。
なかなかしぶとかったが結局ノーダメージで完全勝利。 これ以上ない結果と言って良いだろう。
そう、この時点までは。
「スッピンのあなたで、勝負できる?」
「え?……何か言った?」
事態は急転直下。 天空の支配者マナカは一気に地へと堕とされる。
822
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/12(木) 13:01:36
リサ・ロードリソースは嘘をついている。
その嘘とは猛毒のカエルを身に纏っていることか? いや、それは真実だ。
ノナカの攻撃がリサに引っ付く毒ガエルを潰せばそこら中に体液が飛び散ることだろう。
ではその毒ガエルが足の踏み場も無いくらいに敷き詰められているということが嘘なのか?
生憎ながらそれも真実。 赤やら黄やらの警戒色を示すドギツいカエルがそこら中にいる。
ノナカが今いる位置から一歩でも歩けば確実に潰してしまうに違いない。
では何が嘘だと言うのか……それがノナカには分かっていた。
超聴力でリサの心拍音を聞いたり呼吸の粗さを判別したりと、メンタリズム的な理由で気づいたのではない。
ノナカは自分の頭で考え、これまでの違和感を一つに繋いでみせたのである。
「あなたはどうして火傷を負うRiskを冒してまでわざわざ爆竹をハタきにいったの?
まるでカエルを身を挺して守ったみたいに。」
「えっ?いったい何を言って……」
「あなたはどうして自分についてるカエルがPoisonを持つことを私に教えてくれたの?
まるでカエルに攻撃してほしくないみたいに。」
「ちょ、ちょっと待って」
「あなたはどうしてカエルが絨毯みたいに敷かれていることを私に教えてくれたの?
まるでカエルを踏みつぶしてほしくないみたいに。」
「……」
ノナカの質問責めに耐えきれなかったのか、リサはとうとう黙りこくってしまった。
ここまで来たらもう答えは決まったようなものだ。
要するに、リサには両生類を武器とする戦士として致命的とも言える欠点が存在していたのである。
鳥類を武器とするマナカのようには、また、魚類を武器とするチサキのようには、割り切ることが出来ていない。
「あなたはカエルを武器なんかしたくないんですね、だって、カエルをLove……愛しているから」
「……っ!」
図星だった。
これまでの違和感ある行動は全てカエルを傷付けたくないという思いから来ている。
武器を武器と思えない、両生類「カエルまんじゅう」に愛着を感じすぎている、それがリサ・ロードリソースの戦士としての弱点に他ならなかった。
となればノナカは勝利のVisionがすでに見えている。 目を瞑っていても明らかだ。
「今から言うことは脅しじゃありません……これからあなたに向かって忍刀を投げつけます。
狙いはNeck……"首"です。一撃でかっ切ります。私の実力なら、まず、しくじらない。」
「……!!」
「もちろんあなたが毒ガエルのガードを解除しなければ毒液が飛び散ってノナカも無事じゃ済みません。
……でも、カエルがとっても大事なあなたはそうはしないでしょう?」
「馬鹿にして!!」
ノナカの挑発で頭に血が上ったリサは毒ガエルに更なる指示を出した。それは首の徹底ガードだ。
リサ・ロードリソースはこれでもカントリーガールズ、つまりモモコの愛弟子だ。勝利のためなら手段を選んではならない。
カエルが自分のために切り捨てられるのは断腸の思い……いや、それどころか半身を失うほどに苦しいが、
敵が首を狙うと分かっているのであれば他を疎かにしてでも毒ガエルを首に集結させることを躊躇わなかった。
そして毒液をノナカ・チェル・マキコマレルに飛ばして勝ち星を掴み取る……それが彼女の使命なのである。
だが、勝利するためにはリサ・ロードリソースはここで冷静にならなくてはならなかった。
ノナカがわざわざ「首を狙う」と宣言したことに対して違和感を覚えなくてはならなかったのだ。
「もう気を張らなくていいですよ、Relaxしてください。もう終わりましたから。」
「え?」
ノナカがそう言った時点で、リサは自分の腹から大量の血が流れていることに気づいた。
既に切られていたのだ。 音を司るノナカによって、無音で忍刀「勝抜」を投げつけられていたのである。
腹の傷はとても深く、失血による体力低下でリサはその場で膝をついてしまう。
「Sorry...私、嘘をついてました。 本当は首なんか狙ってません。」
「…………バカだ、私、本当にバカだ。」
リサが毒ガエルを首に移動させた結果としてお腹周りのガードが手薄になったことを、ノナカはカエルの呼吸音から判断していた。
だからノナカは刃で毒ガエルを潰すことなくリサを直接斬ることが出来たのである。
一点補足すると、ノナカがカエルをの居ない場所を斬った理由は毒液を受けたくない以外にもう一つある。
それはリサ・ロードリソースに対する慈悲。 彼女の思いを汲み取って、カエルへの被害が最小限になる勝ち筋を選んだのだ。
リサがカエルを犠牲にしてまで勝利するVisionを描けていなかったのに対して、
ノナカは殺す道と生かす道の両方のVisionを光なき闇の中でしっかりと思い描けていた。
ノナカとリサの勝負はノナカが勝利した。
勝因は、勝利のVisionを描く力の強さ。
823
:
名無し募集中。。。
:2017/10/12(木) 16:15:56
ヤバい鳥肌たった…ノナカ格好良すぎる!
824
:
名無し募集中。。。
:2017/10/12(木) 19:25:53
完勝やん
ぐうの音も出ないほどの
825
:
名無し募集中。。。
:2017/10/12(木) 21:17:45
なんかスゲー
ハロプロネタ使ってるし面白い
826
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/13(金) 13:37:10
マリアがマイに対して挑戦状を叩きつけたが、それを受け入れる理由がどこに有るのか。
不意打ちを貰ったとは言え負傷度合いで言えば圧倒的にマリアが傷ついている。わざわざ土俵に乗っかる事なんて有り得ない。
普通に考えればそうなのだが、
「いいよ、受けてあげる。」
マイはあっさりとマリアの条件を飲んでしまった。これがマイなのだ。
もちろん彼女はこの性分を厄介だとは思っていない。
「有難うございまりあ。ペコりんこ。」
「感謝なんかいいよ、勝つのはマイだから。」
マイ・セロリサラサ・オゼキングという少女の出自は定かではないが、才能があり、それでいて良きコーチングを受けてきたことはマリアも気づいていた。
だが自分だって名コーチに遅くまで特訓に付き合ってもらったのだ。
その時の成果を活かすために、大きく振りかぶってからナイフを投げつけた。
対するマイはマリア・ハムス・アルトイネのナイフを打ち返すべく、このタイミングで美脚シークレットブーツを動かした。
そしてブーツをすぐに脱いだかと思えば、その一足を両手で持ち始めたのである。
それはまるで打者が持つバットのよう。マイはこれが一番飛ばしやすい打ち方であると気づいたのだろう。
後は最初にやってみせたようにナイフにブーツをぶつけるだけだ。
(なんか変だぞ?……)
身構えたマイだったが、ナイフがなかなかやって来ない。非常にスローに感じる。
さっきは「心臓を狙う」とまで言っていたのに、こんなヘナチョコを放るなんておかしい。
とは言えマイがやる事に変わりはない。
ここで完膚なきまでにぶっ飛ばせばマリアを意気消沈させることが出来る、そう思っていた。
ところが、打ちごろのナイフがマイの近くに来たところで突如ホップする。
(えっ!?……まずい!)
野球のルールを知らずにマリアの上をいっていた天才が、ここにきて初めて精彩を欠いた。
急激な変化に対応できず、マイはナイフに対してタイミングを合わせられなかった。要するに、空振ったのだ。
その投げナイフは何にも邪魔されることなく胸に突き刺さる。
「嘘だ……マイが打てないなんて」
痛みよりも真剣勝負に敗北したという現実の方がマイには堪えたようだ。
全身の力が抜けて、もう立てない程の悔しさを感じている。
しかしこの勝負には不可解な点が多い。 傍から見ていたロッカーは何が起きたのか全然わかっていなかった。
「なんだ?……普通の投球に見えたけど、なんで打てなかったんだ?……」
「あれは現代の魔球、"ツーシームジャイロ"!!」
「ドグラどうした?急に大声出しちゃって。」
「ジャイロボールの一種で、球に螺旋の回転を加えることで通常とは異なる投球を実現してるんだよ。
なんでも、打者からはスローなボールに見えて、しかも終盤で浮き上がるから打ちにくいとか……
それにしてもジャイロは習得難度が高く、今の球界にも使い手は少なかったはず……マリアは誰にこの投法を!?」
「マリアが凄いのは分かった。」
幼き頃から英才教育を受けてけたマイが打てなかった理由、それはマリアの魔球が新しい技術だった点にあった。
もちろんマイの父は新旧問わず優れた技術を戦闘に関連付けて教えてはいたのだが、
数年前からマイはモモコの下についたので、それ以降解明した技術はどうしても教えられなかったのだ。
もっともマリアはそんな背景事情なんて知らなかっただろう。
キッカという感謝してもし尽くせない存在に教わった投げ方で勝ちたい。 ただその一心で投げていたのだ。
「なぁドグラ……マリアも、そして他の同世代の戦士たちもなかなか驚かせてくれると思わない?」
「そうだね。タイサがあんなに主張してた理由が今ならよく分かるよ。」
「だからさ、俺は思うんだ! マリア達ならきっと俺たちを"普通の人間"に戻してくれるんじゃないかって!!」
「……」
「なんだよアヤパン、なんか言えよ。」
「……今は"ドグラ"だよ。たぶん、この先もずっと。」
場外の出来事も知らず、マリアはマイの近くに駆け寄った。胸に突き刺ささったナイフの手当てをしようと思ったのだ。
しかし、マイはそれを拒否する。
「辞めてよ、そんな優しさは要らない。さっさと仲間のとこにいきな。マイは動けないんだからチャンスでしょ。」
「でも! 」
「どうしても情けをかけたいって言うんだったら……一ヶ月後、再戦して。 それがマイの1番の願い。」
「えっ?」
「モモち先輩にお願いして一ヶ月だけパパに修行つけてもらうんだよ!そしたらマイはもう君になんか負けない!絶対に打つ! だから、もう一回だけ戦ってよ!!」
「うん、うん、分かった、何回でもやろうよ。マリアももっともっと強くなるよ!」
マリアとマイの勝負はマリアが勝利した。
勝因は、ほんのちょっぴりだけ先を行っていた野球の技術。
827
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/14(土) 14:32:03
ハーチンは周囲を見渡した。 氷は割れはしたが水面にまだいくつか残っている。
これを利用しない手はないと考えたハーチンは華麗にジャンプし、よりチサキに近い氷に飛び移った。
この行動に戸惑ったのはチサキだ。 水中から脱出された時点で予想外だと言うのに、そこから逃げずに更に迫ってくるなんて恐怖でしかない。
(あの人をもう一度水の中に落とさないと……)
チサキは両手を合わせて水鉄砲を作った。 手の中の水を圧縮することで水流を外に飛ばそうとしているのだ。
ただしチサキの水鉄砲はそんじょそこらの子供の遊びとはレベルが違う。
赤面により高温になった自身の汗を混ぜ込んだ熱湯を、非常に高い水圧で噴出させていく。
(熱っ!!いや、痛っ!!)
チサキのお湯鉄砲は見事にハーチンの脚に命中した。その結果、ジャンプの勢いを失ってすぐ下の水に落ちてしまう。
落下した先には丁度チサキがいた。 水中でにらめっこする形になっている。
(良かった、ちゃんと落ちてくれた。 後はこのまま底まで沈めれば終わるんだ……)
泳ぎの得意なチサキは息だって普通の人より長く続く。 息止め勝負ならハーチンに完全勝利できるだろう。
さっきは魚をスピンで振り切られてしまったので、今回はチサキ自らハーチンの腕を掴みにかかった。
ところがここでハーチンが予想外の行動を取り始める。なんとチサキに抱きつきだしたのである。
(ペアの相手を付き合ってくれや!!)
(え?え?なに!?なんなの!?)
スケートにはソロだけでなく2人で魅せる競技も存在する。ハーチンはチサキを抱きかかえたまま、さっき自分がやったようにスピン&ジャンプで水上へと脱出する。
そして着地先である硬い氷面にチサキの背中を強く叩きつけた。
「ぎゃあ!……痛い……苦しい……水の中に入らなきゃ……」
「逃すと思うか!アホがっ!!」
慌てて退散しようとするチサキの背中に向かって、ハーチンは鋭い蹴りを繰り出した。
スケート靴のブレードがチサキの背の肉をぱっくりと切り裂き、多量の血液を噴出させる。
「ああああああああっっっ!!!」
「甘ったれんなや!まだ終わらんからなっ!!」
いたいけな少女が顔を真っ赤にして泣き喚いてる姿を見たら大抵の人は攻め手を緩めるだろう。
だがハーチンはそうしない。好機を逃すまいと更に二発、三発、四発の蹴りを入れていく。
ここまでされたらチサキも黙っていない。周りに水もないと言うのに水鉄砲で高圧の水流を飛ばし、脂肪の少ないハーチンの横っ腹を抉り取ったのだ。
「あああ!もう!あっち行ってよ!!来ないでよ!!」
チサキが飛ばしたもの、それは自身の血液。
高温の汗よりもグツグツに煮えたぎっている血を手中に集めてハーチンに噴射したのである。
水鉄砲を撃つための血なら十分大量に流している。ハーチンが近づく限り、チサキはこれを何回も発射することだろう。
しかしそれでもハーチンはひるまなかった。ガンガン接近し、ブレードでチサキの胸を蹴りつける。
「なんなの!!どうしてこっちに来るの!!」
「ウチが帝国剣士やからに決まっとるやろがい!ここで逃げて帰ったら先輩たちにどう顔向けしろ言うんや!!」
「はぁ!?さっきから剣なんて持ってないじゃない!」
「スケート靴がウチの剣や!剣の形をしてるかどうかは大したことやあらへん!大事なのは誇りや!剣士として戦うことさえ出来てれば立派な剣士や!」
「ええ?……剣士ってなんなの……?」
この時点では2人はもう限界に近かった。
チサキは何か所も斬られて血を流しすぎているし、ハーチンだって酸素不十分のまま戦っているとこに血鉄砲を受けすぎている。
この状態で水に入ってももう何にもならないのかもしれないが、チサキは這ったままの姿勢でなんとか水場に到達し、小指だけ入れることが出来た。
しかしそれもそこまで。 阻止するためにやってきたハーチンに首を掴まれてしまう。
「あぁっ……」
チサキの願いは叶わず、自身のフィールドである水中に入ることはできなかった。だが、小指の一本だけは水面に触れている。
その時に発生した水の波紋は、チサキの思いを水中にいる魚たちに超音波のような形で伝えてくれる。
そして、その時のチサキの思いは「どんな形でもいい、勝てるなら剣士として戦ってもいい、だから勝ちたい!」というものだった。
主人のその強い思いに応えるために1匹の魚が勢いよく外に飛び出し、
ハーチンの胸を鋭いヒレで一閃、斬り裂いた。
「は?……え?……」
チサキのためにハーチンを斬った魚の名は"太刀魚"。 この魚の見た目と鋭利さはまさに刀剣のそれと言っても良い。
満身創痍のところに鋭い斬撃を受けたハーチンはたまらず倒れてしまう。
「どういうこと?……私、勝ったの?……」
ハーチンとチサキの勝負はチサキが勝利した。
勝因は、水中に潜む刃を引き出した彼女の可能性。
828
:
名無し募集中。。。
:2017/10/14(土) 17:17:14
おぉ!ここにきて番外編3の伏線回収とは!まさかの太刀魚wちなみに太刀魚じゃ切れないけど…
ノコギリエイ・ノコギリザメ・ノコギリダイとまだまだ『剣』になりそうな魚いるしね
829
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/15(日) 13:51:50
そうですね、確かにタチウオじゃ切れないですよね。
勢いで書いたので容赦してくださいw
今日は続きを書けないかもなので、久々のオマケ更新です。
オマケ更新 アカネチンvsマナカ
マナカ「さぁカラスさんたち!いつもみたいにあの子を空に連れてってあげて!」
マナカ「そして地面に容赦なく落とすの。 この必勝パターンで今日も勝利よ!」
カラスA「いやぁ……ちょっと厳しいっス。」
カラスB「言っちゃ悪いですけどあの女の子の体重は……」
マナカ「そうなの……じゃあ他の戦法を考えるね。」
アカネチン「?」
830
:
名無し募集中。。。
:2017/10/15(日) 18:03:48
チサキの力で太刀魚が堅く鋭なったって事にしよう
カラスなかなかひどい事をw
逆にハーチンは >脂肪の少ないハーチンの横っ腹を抉り取ったのだ。でウェイトアップする事になるのか…w
831
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/16(月) 13:07:34
マナカからマリアが劣勢との情報を聞いたとき、アカネチンは耐え難い恐怖心に襲われていた。
たまにワケの分からないことを言う奇人ではあるが、マリアの実力は本物だと強く信じている。ハーチン、ノナカともども頼れる同期だ。
そんな同期が追い詰められたと聞いて、もう自分を助けてくれる人は居ないのではないかと恐怖したのである。
このまま弱気なままだったらアカネチンは順当に敗北したことだろう。 ところが、帝国剣士としての誇りを持つ彼女はそうしなかった。
両頬をパン!と叩いて気合いを入れ直し、同期がピンチなら自分が助けねばと心を入れ替えたのだ。
そしてアカネチンは自分が恐怖したことから戦いに勝利するためのヒントを得た。 恐怖しない動物は存在しない。そこに解決策がある。
大抵の動物は自分より強い動物に恐怖する。 しかしアカネチンは強者とは言えない。 ではどうすれば良いのか?
ならば「強い動物に見せかければ良い」、アカネチンはそう結論付けた。
そこからのアカネチンの行動は早かった。 印刀で地面をガリガリと削り、巨大な円が何重にも重なっている絵を描いたのである。
そしてここからが最後の仕上げ。言わば画竜点睛。 その円の中心に自ら飛び込み、マナカによる天からの投石を誘導したのだ。
マナカの磁石がちゃんと自分に吸い寄せられるように、アカネチンはこっそりと地上に落ちてた磁石を拾い上げて頭の上に置いていた。
遠い空にいるマナカの視点からは、自分の投げた石がまっすぐにアカネチンの方に落ちて、見事頭部に衝突したように見えたことだろう。
こうしてアカネチンは何層も重なった円のど真ん中で気絶したフリして横たわることが出来た。
この絵を見た途端、カラス達はパニックを起こす。 アカネチンが書道で鍛えた表現力のおかげでそのイメージがカラスの脳内に直接入り込んだのである。
全てのカラスが思い思いにそこから逃げようとしたものだから、空中のマナカはコントロールが取れなくなる。
「ちょ!ちょっと!みんないったいどうしたっていうの!? あの絵がなんだって言うのよ…………あっ!!!」
ここでマナカはその絵が何なのかようやく気づくことが出来た。
それは「眼」の絵。
巨大なバケモノの大きい瞳が地上から自分たちを睨んでいるように見えたのである。
農家の人々が鳥よけのためにハデな色をした目玉のマークを設置することを聞いたことが無いだろうか。 アカネチンはそれを数段大掛かりにしたものを作り上げたのである。
こうなればカラスはもう言うことを聞かない。 武道館のてっぺんほどの高さにいたマナカはもう空に留まることが出来ず、無惨にも地に堕とされてしまう。
「嫌ぁぁあ!!!」
グシャッと言う音が鳴った。何かが潰れた音だ。 その光景を見たくなかったアカネチンは必死で眼をそらす。
あの高さから落ちたのだから勿論無事では済まないだろう。 アカネチンは同期達を助けるために、既に別の方向を向いていた。
「みんな待っててね、今すぐ行くから。」
アカネチンとマナカの勝負はアカネチンが勝利した。
勝因は、同期愛の強さ。
.
..
...........
と、決めつけるのはまだ早かった。
ガン!!という打撃音とともにアカネチンの頭に激痛が走る。
「え!?え??」
「待ちなさいよ……勝負は終わってないんだから。」
彼女は鳥使いで終わる人間ではなかった。
そう、彼女自身が鳥なのだ。
空から落とされても、あちこちの骨が折れようとも、血反吐を吐いたとしても、
"不死鳥"マナカは使命を果たすまで何度でも蘇る。
「勝つのは私!!ここで終わりなんて絶対に認めない!!!」
マナカは磁石でアカネチンを何度も何度も殴った。アカネチンが動かなくなるまで殴った。
そして勝利を確信するや否や、糸が切れたように眠りだす。
訂正する。
アカネチンとマナカの勝負はマナカが勝利した。
勝因は、もはや愛とも呼べる、生への執着の強さ。
832
:
名無し募集中。。。
:2017/10/16(月) 15:02:08
殺人やん…
833
:
名無し募集中。。。
:2017/10/16(月) 20:46:35
マナカの狂気に震えた…
834
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/18(水) 12:53:04
ハーチンとの一戦を終えたチサキは1人歩いていた。
勝利したとは言っても大怪我人なので満足に歩けるはずがないのだが、
自分たちの師であるモモコと交わした2つの約束を守るためにチサキは足を止めなかった。
その約束とは「どんな事があっても暗器を返しに来ること」、そして「どんな事があっても帰還してくること」の二点だ。
昨日、暗器をレンタルしたときに、なんらかの理由で別れて戦う際のルールとして定めていたのである。
どんな事があっても……それはつまり、大怪我を負ったとしても帰ってこなくてはならない事を意味している。
更には敗北したとしても、動けない状態にあったとしても、このツグナガ憲法を破ることは決して許されない。
この約束にどんな意味があるのかは正直言って分からなかったが、必ず守らなくてはならない。
だからチサキは怪我をおして他のみんなの所にゆっくりながらも進もうとしている。
(みんな……無事、だよね?)
チサキは心配していた。
カントリーの仲間が負けることはないと固く信じているのだが、
自分が相手したハーチンは想像していたよりずっとずっと強かった。
それと同等の力を持つと推測できる新人剣士とガチンコでやり合ったら、負けないにしても動けない状態には追いやられてるかもしれないと思ったのである。
そんなチサキが、リサが得意とするフィールドである木陰地帯にたどり着いた。
その時の反応は言うまでもなく絶句。
リサ・ロードリソースが大量の血を流して目を閉じている様を見て、チサキはひどく動揺してしまう。
(嘘……リサちゃん負けたの?……敵は!?敵はどこに……!!)
辺りを見回したがそこには誰もいない。いるのは何百何千ものカエルばかり。
その敵がリサを倒してさっさと他の場所へ向かったというのは想像に難くなかった。
これでチサキは気づく。 カントリーガールズは自分以外全敗の可能性があることを理解したのだ。
(※実際はマナカが勝利しているが、今のチサキはそれを知り得ない。)
となればこれからチサキは他の仲間のいる場所にも訪ねて、モモコとの約束を果たすためにレンタル暗器と仲間を全て運ばなくてはならない。
チサキの借りた風壁発生器、マイの借りた美脚シークレットブーツ、リサの借りたビンタ強化金属はなんとか持っていく事が出来るかもしれないが、
マナカの借りた超強力電磁石や、リサ、マナカ、マイらはチサキが1人で運ぶのは骨が折れる。
どうすれば良いのか狼狽したところで、カエル達がリサに集まり始めた。
そしてなんと、彼らの力を集結させてリサをひょいと持ち上げたのである。
「えっ?……助けてくれるの?」
普段はリサの指示しか聞かないカエル達が協力してくれるというのだからチサキは驚いた。
実はこれもリサの指示。
リサ・ロードリソースが気を失う間際、チサキが考えたのと同様にカントリー全滅の可能性に気付き、瞬時にカエルに命令を出していたのである。
その内容は「自分たちに被害が及ばないレベルでマナカ、マイ、チサキを助ける」というもの。
運搬を手伝う程度であれば命令の範疇内だ。
「ありがとう、それじゃあ次はマイちゃんのところに行こうか。 マイちゃんは強いから、もう敵を倒しちゃってるかもしれないけど。」
835
:
名無し募集中。。。
:2017/10/18(水) 13:13:57
モモコの指示にいったいどんな理由が・・・
836
:
場面の順番を当初の予定から変えました。
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/19(木) 13:36:08
●場面1 : 武道館東口 「チームダンス部 vs ...」
キュートの最年少マイマイの助けもあってダンス部らは壁を破る事が出来た。
これでやっと裏口を通れるようになった。 要するに、奇襲を仕掛ける事が可能になったのだ。
後はマーサー王とサユのいる場所に直行して救い出せば良いだけなのだが、
そうは問屋が卸さなかった。
「みんな伏せて!!」
チームダンス部が武道館の内部に一歩足を踏み入れるかと言ったところで突如ナカサキが叫び出す。
そしてその直後に膨大なエネルギーを持つ打撃が彼女らに襲いかかってきた。
その不意打ちになんとか対応できたのはキュート2名。
ナカサキは二本の曲刀で、マイマイは斧で攻撃を受け止めたが、非常に苦い顔をしている。 あまりの衝撃に受け止めた手を痺らせたのだろう。
「そんな……通れると思ったのに……」
カリンの目の前、武道館の内側にはよく見知った人物が立っていた。
その人は化け物集団ベリーズの中では身体が小さく、オーラだって天変地異を巻き起こしたりしない。
なんせ"無"なのだ。当然だろう。
そんな人畜無害な見た目をする敵に対してサヤシ、アユミン、サユキ、カリンは恐怖した。
もちろんこれは恥などではない。 ベリーズを束ねるキャプテン、シミハムを前に無傷で済む者など存在しないのだから。
そんなシミハムに対してナカサキが声をかける。
「ちょっと驚いたけど、ここでシミハムが登場することはなんとなく予想してたよ。 一撃目を受け止めたのがその証拠。」
「……」
「そしてシミハムの対策は若い子たちにもレクチャー済み……この勝負、楽に勝てるとか思わないでね。」
「……!」
「マイマイ、準備はいい?」
「チェケラー!」
マイマイの珍妙な合図とともに、サヤシとカリンがシミハムに飛びかかった。それも左右から挟み撃ちするかのようにやってきたのだ。
だがこの程度を捌くなんてシミハムにとっては朝飯前。 得意の三節棍を右に飛ばしてカリンを跳ね除けたかと思えば、その勢いで反対側のサヤシまでも吹っ飛ばしてしまう。
こうして実力差を見せつけることで若手を怯ませようとしたシミハムだったが、思惑通りにはならなかった。
サヤシとカリンが飛ばされたのと同じタイミングでアユミンとサユキも立ち向かってきたのである。
もちろんシミハムはこれにも対応する。 新手だってたったの二発殴れば引っ込める事ができる。
ところが若手たちは諦めなかった。
アユミンとサユキがやられたらサヤシとカリンが復帰し、またサヤシとカリンがやられたらアユミンとサユキが戻ってくる……という流れを延々と続けて行く。
更にそのローテーションにナカサキとマイマイも加わるものだからシミハムには休む暇が無くなってしまった。
ここでシミハムは相手の狙いに気づく。
「どう?シミハム、こうも連続で相手されると存在感を消す暇がなくなるでしょ」
ナカサキの言う通り、誰かに触れ続けている間はシミハムは自分の存在を無にすることは出来なかった。
となれば最も有効な戦法である不意打ちを使う事が出来ない。
このままだとガチンコ勝負を強いられ続けてしまうのである。
この無限ループを可能にしているのはダンス部らの激しい運動量だ。 疲労にも負けず、絶対に勝つと言う意思をもって食らいついている。
もちろんシミハムだってそう簡単に負けるつもりはないが、キュート2名を含んだメンバーを相手し続けるのは流石に骨が折れる。
既にシミハムは汗だく。 このまま継続すればジリ貧と言ったとこだろう。
これには多くのメンバーが手応えを掴んだ。歓喜した。
しかし、サヤシはなんとも言えぬ違和感を覚えていた。
(シミハムはいつも2人以上のチームで勝負を仕掛けてきたと聞いちょった……
時にはミヤビを、時にはクマイチャンを無にすることで有利に振る舞ってたはずなんじゃ。
今回はどうして1人だけなんじゃろか……いや、それともまさか)
その時、シミハムの攻撃を受けていなかったはずのアユミンが吹っ飛ばされた。
しかも何やら様子がおかしい。 胸に空いた小さな穴から血液を流しているようだが、シミハムの棍ではこのような外傷にはならないはず。
そしてなにより、アユミンがひどく苦しみもがいている。 まるで呼吸困難になったかのような苦しみ方だ。
それを見てナカサキとマイマイは攻撃の正体にやっと気づいた。
シミハムもニヤッと口元を緩ませ、これをチャンスだと思い、今まで"無"にしていた者を解放する。
(え?……ここは海の中?)
自分たちは武道館の入り口にいたはずなのに、アユミンには周囲一帯が海の奥底に見えていた。
それもそうだろう。
何故なら、ここは人魚姫(マーメイド)の支配する領域なのだから。
837
:
名無し募集中。。。
:2017/10/19(木) 13:57:42
これはリシャコ…だから順番を変えたのか
こんなにも早く結婚するとは思わなかった
838
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/20(金) 13:00:35
アンジュ王国では王のアヤチョと裏番長マロが談話していた。
話題は今現在、武道館で行われている戦いについてだ。
「ねぇカノンちゃん、タケとムロタンとマホちゃんはもう武道館についたかな?」
「時間的にそろそろってとこじゃない? まぁ、あのマイマイ様がついてるんだから迷って遅刻ってことはないでしょ。」
「あの人ね、急に来たからアヤびっくりしちゃった。」
「私もよ。 ま、タケ達は進軍できなかったことを悔やんでるようだったから丁度良かったね。渡りに船ってやつ。
国防に関しては舎弟2人がいれば十分だし、アンジュ王国的には全然問題ない。」
「ウチから7人も送り込んだんだから、ハルナン褒めてくれないかなー。」
「どうかしらね。あの子たちが成果でも出せば感謝してくれるんじゃない?」
「成果出すでしょ。 アヤよりずっとずっと弱いけど番長はみんな強いよ。」
「うーん、相手がベリーズ様だからなぁ〜……特に宇宙一強いクマイチャン様と当たったりしたら全滅しちゃいそう。」
「あははは、宇宙一はないよ。カノンちゃん馬鹿だね。」
「ムッ……前から言いたかったんだけどさ、アヤチョはベリーズ様をナメすぎじゃない?もうちょっと敬意ってものを……」
「ナメてなんかないよ。ナメられるわけがない。」
「ん?……」
「何年か前にね、アヤが山奥の滝で修行したことがあったんだ。 その時のアヤは精神が研ぎ澄まされて本当に無敵って感じだった。
万能感、全能感に包まれて、どこの誰でも良いからとっちめてやりたい気持ちになったの。」
「物騒な……で、そこでアヤチョはベリーズのどなたに負けたの?」
「えっ!カノンちゃん凄い! アヤまだ何も言ってないのにどうして分かったの?」
「いいから続けて。」
「うん、山を降りたら凄い強そうな人がいたから決闘を申し込んだの。背後から不意打ちを喰らわせたんだ。」
「それは決闘を申し込んだとは言わない。まぁいいや、続けて。」
「そしたらね、次の瞬間アヤは溺れちゃった。」
「……うん。」
「ベリーズ戦士団のリシャコ、あの人には絶対に勝てないって思った。 ほら見て、思い出すだけで指が震えるの。」
「でしょうね。」
「たぶんあの人は今のベリーズの中で最強だと思う。 そうじゃないとあの強さは説明できない。」
「ふふん。」
「なんでカノンちゃんが得意げなの。」
「だって、リロは私の親友だから。」
「はぁ〜?」
839
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/24(火) 13:09:35
アユミンには自分が本当に海の奥底にいるかのように思えていた。
リシャコの見せる"深海"のビジョンのせいだけでそう錯覚しているワケではない。
胸を槍で一突きされたその時から、全くと言っていいほど酸素を体内に取り込めていないのである。
口を大きく開けて息を吸おうとも、必死でもがこうとも、どんどん意識が朦朧としてくる。
もはや限界だと思った時、マイマイが走ってきてアユミンに強烈なボディーブローを叩き込んだ。
これは決して裏切り行為ではない。 アユミンを救助するためにこうしたのだ。
この一撃で横隔膜がググッと上がって、肺の内部に含まれる異物を口から吐き出させることに成功する。
その異物とは"血液"だ。 ほんの数滴の血をアユミンは吐き出していく。
「ゲホッ……ゲホッ……」
「手荒でごめん。この方法しかなかった。」
アユミンがなぜ苦しんだのか、一同はすぐに理解した。
彼女らは事前にキュートから、ベリーズ最後の一人であるリシャコの特殊技能について教わっていたのだ。
異国の美女を彷彿とさせる顔立ちのリシャコは三叉槍の名手であり、ふくよかな体型の割にはベリーズで一番の瞬足だとも言われている。
そして他の食卓の騎士同様に殺気も凄まじく、深海のオーラを放つことが出来る。
だが、彼女の真に恐ろしい点はそんなことではない。 特筆すべきは"眼"だ。
アカネチンやアイリのように常人とは異なる世界がリシャコの眼の前には広がっているのである。
「私には分かるんだ。 君を溺れさせる一点が。」
歴戦の経験から、人体のどこを傷つければ肺の内部に血液を送り込むことが出来るのかリシャコには見えている。
人間は簡単に溺死する動物であり、肺の中にほんの数CCの水を入れるだけでもがき苦しむという。
人体は気管に水が入った時点で咳き込むように出来ているので、そうそう肺の中に水が入り込むことは無いのだが、
リシャコは槍で肉体に穴を開け、直接血液を注入することで無条件に溺れさせることが出来るのである。
アユミンが苦しんだ理由も同じ。 リシャコはほんのちょびっとの傷をつけるだけで人を死に追いやれるのだ。
そして、リシャコの怖い点はもう1つある。
「ナカサキ、マイマイ、さっきから全然攻めてこないけど……私を放っといていいの?」
「「……」」
ナカサキとマイマイに闘志が無いはずがない。今はただただ攻めあぐねている。
リシャコには「暴暴暴暴暴(あばばばば)」と呼ばれる超反応のカウンター技術が備わっており、
敵から攻撃を受けた際には100%必ずその方向に対して鋭い槍撃を返すことが出来る。
その一瞬だけ我を失って意識が飛んでしまうのが難点ではあるが、現在のリシャコはその空白期間を0.1秒まで短縮している。
このカウンターは不意打ちにも有効であり、かつてアンジュ王国のアヤチョ王でさえも一撃でねじ伏せたと言う。
840
:
名無し募集中。。。
:2017/10/24(火) 23:37:52
『あばばばば』が無意識のカウンターって強過ぎw
叶うことならアイリとリシャコのマーメイド対決も見てみたかったな…
841
:
名無し募集中。。。
:2017/10/25(水) 11:32:39
我を忘れてあばばるリシャコに不意打ちなんかしてよくアヤチョ王は生きていられたなと思ったが
その頃にはもう制御できるようになっていたんだね
842
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/27(金) 13:06:25
あれから長い年月が経ちましたので、サユのマリコ同様にリシャコも色々と制御できるようになった感じですね。
リシャコとアイリの対決があるのかどうかは言えませんが、少なくともお互い本調子での戦いは無さそうです。
ちょっと忙しい時期に入っちゃったので、次回の更新は来週月曜ごろになりそうです……
843
:
名無し募集中。。。
:2017/10/27(金) 23:34:08
本調子の戦いは見れないのか…そういやアイリは今も雨が降ると強くなるんだろうか?
週明け楽しみにしてます
844
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/30(月) 13:07:43
ナカサキとマイマイに手が残されていないという訳ではなかった。
リシャコはカウンターこそ鋭いが、通常の攻撃は反応出来ないほどではない。
なので防戦を意識して戦えば隙を見出すことが可能なのだ。
しかし、チームダンス部にはそんな悠長に構えている暇はなかった。 この状況を速攻で切り抜けてマーサー王とサユを救い出さねばならない。
その思いが焦りを生んだのか、サヤシとサユキ、そしてカリンの3人が同時にリシャコに飛びかかっていく。
「ちょっ!何やってるの!!」
ナカサキが声を掛けようとも3人は止まらなかった。
ハタからは無策に見えるが彼女らにも考えがある。リシャコの無敵の特性の裏をかく起死回生の一手を見出したのだ。
サヤシ、サユキ、カリンは単体では食卓の騎士には敵わないものの、一流の戦士であることには疑いようがない事実。
すぐに対応を考えて、咄嗟のアイコンタクトで意識を合わせるくらいは難なくやってのけた。
そして、寸分違わぬ程の完全に一致したタイミングでリシャコに殴りかかることだって彼女らには可能なのだ。
(ウチら3人で同時に攻撃を仕掛ける!)
(こうすれば誰にカウンターを当てれば良いのか分からなくなるでしょ!)
(もしもカウンター出来たとしても貰うのは一人だけ……残り二人からの攻撃は避けられない!)
波状攻撃ではなく、全くの同時攻撃。これこそがリシャコを喰らう最善の策だと考えていた。
だが、それはあまりにもリシャコを甘く見すぎている。
「ふぅ……無駄だと思うよ。」
そう言葉を残した直後、リシャコは修羅へと変貌を遂げる。
リシャコの獲物は長い槍。 その槍による突きだしでまずは右側から来るサヤシの胸に穴を開けた。
その次は背後から迫るカリン目掛けてノンストップで二度の突きを放った。
最後は上空。 一瞬にして槍を引き寄せて上から落ちて来るサユキの肺にも血液を送り込む。
対処にかかった時間はそれぞれ0.1秒。合計して0.3秒。
同時に攻撃を仕掛ける案自体は悪くない。しかし、それを有効打に変えるには条件がある。
3人程度ではなく100人がかりで攻めること。 あるいは、槍撃を10発はもらっても無事でいられる者が攻めること。
そのどちらかを満たせない限りはリシャコの時間をほんの数秒も奪うことは出来ないだろう。
「だから言ったでしょ、無駄だって。」
845
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/31(火) 13:24:48
(くっ……このまま溺れるワケには……)
サユキは両手の鉄製ヌンチャクをグッと強く握り、味方であるはずのカリンとサヤシの腹に先端部を強くぶつけた。
先ほどマイマイがアユミンにやったように、二人の肺から血液を排出させようとしているのだ。
深海の苦しみの中で力を入れるのは一苦労だったが、サユキはそれを見事にやってのけた。
「ケホッ……ケホッ……」
「ありがとう、サユキ……」
二人を助けたらお次は自分だ。 カリンに当てたヌンチャクをぐるりと回すように引き戻すことで遠心力を働かせ、
必要最小限の労力で自分の腹に強烈な一撃をぶつけていく。
(うっ!!……分かってたけだやっぱりキツい……)
鳩尾にヘビー級のボクサーがパンチするようなものだから苦しく無いはずがなかった。
だが、溺れて気を失うよりはずっとマシ。 これで3人はまだ戦える。
サユキはリシャコに向けてビシッと指差して、挑発するように言い放つ。
「確かに恐ろしいカウンターだけど、致命傷には程遠いよね……これくらい、全然対処できちゃうよ?」
「うん、そうだと思う。」
「!?」
リシャコが素の顔のまま簡単に返したので、サユキは逆に心を乱されてしまった。
アイデンティティとも言えるカウンターに耐えたと言うのに、何故にこうも落ち着いているのだろうか?
ワケがわからなくて頭の中が混乱しているところに、ナカサキが強めの声を発した。
「あなた達、もう自分からリシャコに仕掛けるのはやめな!……カウンターはもう貰っちゃダメ。 時間はかかるけど向こうから攻めてくるのを待つの。それならまだ防げるから!!」
ナカサキは一撃必殺でもなんでもないリシャコのカウンターをひどく警戒していた。
例えマーサー王とサユを救い出す時間が延びようとも、安全策を選ぼうとしているようだ。
しかし、それが本当に安全策と言えるのかは疑問だった。
「ねぇナカサキ、私の普通の攻撃なら防げるって言った?」
「そうよ。驕りなんかじゃない。これまで何百回も手合わせしてるんだから実力くらい知れている!!」
「うん、そうだね。 食卓の騎士の訓練ではタイマンでの真剣勝負をよくやったね。
でも……今はちょっとちがうんじゃないかな?」
「えっ?」
次の瞬間、周囲に響き渡るような轟音と共にナカサキの脚が破壊された。
今までリシャコに注力していたあまり、忘れてはいけない存在を忘れてしまっていたのだ。
その名はシミハム。
目一杯力を込めた三節棍をぶつけることでナカサキの機動力を根こそぎ奪ったのである。
「シミハム!!!!よくも……」
この時、一同の視線はシミハムへと注がれた。
つまり、リシャコから目を離してしまっている。
ここでシミハムがちょいと"無"が包み込む範囲を変えてやれば誰もがリシャコの存在を忘れることになる。
結果、リシャコはなんの苦労もすることなくナカサキの胸に槍を突き刺すことに成功する事が出来た。
「……!!」
「ほら、普通の攻撃も防げない。」
846
:
名無し募集中。。。
:2017/10/31(火) 14:13:24
シミハム&リシャコのコンビえげつないほど強いな…今のところ好機が見いだせない
847
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/02(木) 13:10:27
「くっ……ぐぐぐぐ……」
ナカサキは確変の応用で体内の器官を無理矢理にでも動かしていった。
肺と気管をポンプのように圧縮させて微量の血液を喉へと送り込む。これでひとまず溺死は免れた。
「そんな事も出来るんだね。人間じゃないみたい。」
(リシャコ……私から見たらあなたの方がよっぽど怪物なんだけど!)
しかし安心したのも束の間。 すぐにまた大きな音が鳴ったのでナカサキはついそちらを見てしまう。
そこではリシャコと入れ替わるように存在感を消していたシミハムが、マイマイの腹に打撃を食らわしていた。
さっき自身を無で包んでからそれほど時間が経っていないため三節棍に力を込められておらず、
マイマイが負うダメージもそれほどではないのだが、
シミハムの攻撃の目的はどちらかと言えば視線を自分に向けることにあった。
ナカサキもそれに気づくがもう遅い。
(しまった!!このままだとまた忘れてしまう……忘れちゃう…………何を、忘れるんだっけ?)
もうチームダンス部の頭の中にリシャコは存在しない。その情報は完全に欠落している。
彼女らには強敵シミハムが前に立ちはだかっているようにしか思えていなかった。
その強敵を打倒するために、サユキが声を上げる。
「さっきみたいに圧倒的な運動量で制圧しましょう!シミハムが消える隙を与えないために!」
サヤシ、アユミン、サユキ、カリンは急いでシミハムに立ち向かおうとした。
しかし、身体が満足に動かない。 非常に息苦しくて脚が重いのだ。
なぜ自分たちはこのような状況にあるのか?
そのことを、たった今現れたリシャコがアユミンの胸を一突きしたことで理解する。
「リシャコ!!」
「そうか……私たちが動けないのって……」
満足に動けない理由、それはリシャコに溺れされかけたからに他ならない。
よく考えてみてほしい。海水浴で溺れかけた後に全力疾走できる人がいるだろうか?いないだろう。
サヤシも、アユミンも、サユキも、カリンも一度リシャコに胸を刺されている。
血液を排出できたから問題が無いと思ったら大間違い。 生還したとしてもまともに動けなくなってしまうのだ。
普通は救助された後は数分間は安静にしないといけないはず。
では、短期間に二回も溺れさせられたアユミンはどうなるのだろうか?
「ーーーッッッ!? ーーーーーーーッッッッ!!!!」
アユミンは地面にうずくまり、先ほど以上に苦しみもがいていた。
地獄の苦しみであることはもはや説明するまでも無いだろう。 リシャコの繊細な一撃は人をこうも苦しめるのである。
「可哀想……このままだと本当に溺れ死んじゃうよ。
でもね、私は女の子が苦しむ姿を見たいわけじゃないんだ。
もう安心していいよ。 ウチの団長がお腹を叩いて血を吐き出させてくれるみたい。」
リシャコがそう言うと同時に、"無"から三節棍が高速で飛び出してくる。
直線的に放たれたそれはアユミンの胴体を強く押し出し、遥か後方まで吹き飛ばす。
「アユミン!!!」
サヤシが叫んだ時にはもう遅かった。
飛ばされたアユミンは今いる二階から地面へと突き落とされてしまう。
848
:
名無し募集中。。。
:2017/11/02(木) 23:30:18
シミハムって黒子みたいだね
849
:
名無し募集中。。。
:2017/11/03(金) 13:53:29
存在の記憶も消せるとかチートすぎ
850
:
名無し募集中。。。
:2017/11/05(日) 14:48:48
本人のみならそうでも無いんだけど(それでも厄介な技だが)他者の存在まで消せるのは本当に強い
しかもまだ『小さな巨人』と呼ばれていた頃の力を温存しているし…
851
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/05(日) 14:54:46
アユミンの身軽さなら二階から落ちてもリカバリーできるはず。
だが今の彼女は二回も溺れているのだ。 そんな状態でくるくるアクロバットを決めれる者がどこにいるだろうか。
受け身を取れず地面に落下したであろうことは想像に難くない。
「アユミン……!」
同士の戦線離脱を間近で見たサヤシは当然のようにショックを受けていた。
それでもここで呆然として良いわけがない。 気を病む間も無く居合刀を構えてシミハムへと斬りかかる。
リシャコの攻撃を受けた後なので呼吸はひどく困難だが、気合と根性で足を動かしていく。
(消える前に斬る!必勝法はそれしかないじゃろ!)
敵を間合いにさえ入れてしまえばサヤシの斬撃は速い。 食卓の騎士だろうと深くまで刃を入れれば致命傷になるに違いない。
しかし、間合いを重要視する点はシミハムだって同じ。
相手のリーチ以上、かつ、己のリーチ以下の距離を見極めて、そこにサヤシが到達した時点で棍を肩に叩きつける。
「ぐっ……」
この時のコツは打撃音を大袈裟に出すことだ。これでチームダンス部らの注意を引くことが出来る。
それはつまりリシャコがフリーになるということ。
無のオーラは注目を浴びなくなった彼女の存在感を無条件に消失させていく。
シミハムのタッグ戦はこのサイクルの繰り返し。
これを打ち破れない限りはシミハムの作ったセットリストに沿ってダンスし続ける続けるしかないのだ。
だが、ここでその予定調和にアドリブを加えてやろうと考える者が現れる。
その名はカリン。キュート戦士団長マイミに最後まで抗った女だ。
ベリーズ戦士団長シミハムを崩すキッカケもこのカリンが作り出す。
(忘れちゃう……だめ、忘れる前にやるべきことをやるの! 私の"早送りスタート"で!!)
カリンは両手に釵を持って、自身の動きを超加速をせる必殺技「早送りスタート」を発動させた。
とは言ってもシミハムやリシャコにダメージを与えるために加速したわけではない。
攻撃の矛先は自分自身。 それもリシャコに貫かれて傷になっている胸を釵で何十回も斬りつけたのだ。
そんな自殺行為をするものなのだから周りは注目せざるを得なかった。シミハムやリシャコだけでなく、味方のナカサキ、マイマイ、サヤシだって奇異の目でカリンを見ている。
「カリン……いったい何をしてるんじゃ?……」
カリンはサイボーグと呼ばれてはいるが身体は当然生身。 リシャコにやられた時以上に痛々しく血をダラダラと流している。
それでもこの行為には意味があった。 これからの功績を考えれば服ごと開けられた穴なんて些細な代償だと考えているのだ。
(胸元のあいた服を着た私の、サインに気づいて!!)
852
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/05(日) 14:58:01
確かにシミハムは黒子レベルのチートですねw
更に、今後は自分と味方以外も消しちゃうかも……
853
:
名無し募集中。。。
:2017/11/05(日) 22:21:53
そ、それは・・・シミハムはいったい何をするだ?
854
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/07(火) 13:11:37
カリンの奇行にリシャコは戸惑った。
自分の胸を滅多刺しにするという行為は、リシャコの攻撃を意識してのことなのは明らかなのだが、
その意図が読めない。何を考えているのかさっぱり分からない。
何を血迷ったらこんな自傷をする考えに至るのだろうか?
(傷でグチャグチャになった胸なら心臓を突き刺さないとでも思った?
残念だけど、君を溺れさせる一点は今も私の眼に見えているよ。)
自分の技量を、そして自慢の眼を甘く見られたと考えたリシャコは不機嫌になり、眉間にシワを寄せた。
そしてカリンに苦しみの一撃を与えるために三叉槍を構えだした。
だが、ここでリシャコの頭に一つの懸念がよぎる。
カリンはリシャコの攻撃を誘導するためにわざと挑発的な行為をしたのではないかと思ったのだ。
(このまま君を溺れさせるのは簡単だよ……でも、今の君は目立ちすぎている。
きっと、突き刺した瞬間、消えてた私の存在はみんなに気づかれちゃうんだろうね。
動けないナカサキはともかくマイマイはほとんど無傷……自分を犠牲にしてマイマイにカウンターを入れてもらうのが狙いか。
だったらカリンちゃん。君を攻撃しなければ良いよね。)
リシャコは文字通り矛先を変えた。 新たな攻撃対象はマイマイだ。
無のオーラのおかげで絶対に認識されない一撃を、マイマイの胸に突き刺そうとする。
……のだが、その刃は心臓までは到達しなかった。
「そこだ!!!」
「!!?」
マイマイは巨大な斧を振り回し、リシャコのお腹に刃を入れた。
槍と斧のリーチ差や、リシャコの腹の脂肪が常人よりちょっぴり厚めだったこともあって致命傷には至らなかったが、
それでも血液はドクドクと止まらずに流れている。
「どうして?……どうして、私がいることが分かったの?……」
リシャコにはマイマイに反撃を受けた理由が理解できなかった。
シミハムの力が弱まって存在を消せきれなかったのかとも思ったが、そんな事はない。
現にマイマイは槍が胸に突き刺さるその瞬間までリシャコの姿が見えていなかった。
ただ、リシャコの取るであろう戦法だけは頭から消えていなかったのだ。
「凄いねカリンちゃん。おかげでリシャコに一発当てられたよ。」
「お役に立てて……光栄です……」
カリンが残した強烈なサイン。それには「胸を痛めつける敵がこの場に存在する」というメッセージが込められていた。
シミハムを認識しているのだから、正体までは分からなくても「姿を消されている誰か」がいるかもしれないことは皆が念頭においている。
そんな中で胸にちょっとでも痛みを感じれば、誰もが目の前の敵に対して必死で抵抗することだろう。
その結果としてマイマイはリシャコを斬ることが出来たという訳だ。
この流れはベリーズの中でも頭の悪い4人に含まれるリシャコには理解しにくかったようだ。
(どうして!?……どうしてなの?、全然分からない。
いや、でも大丈夫。 今は私が目立ってるからみんなシミハムに注目していないはず。
あとはシミハムがなんとかしてくれる!!)
確かにリシャコの思う通り、ナカサキとマイマイ、サヤシにカリンはリシャコの方を向いている。
ところが、ただ1人だけシミハムから目をはなさない者がいた。
それはKASTの1人、サユキ・サルベだ。
カリンのことだからあの奇行には意味があると確信したサユキは、何が起きようともシミハムを凝視し続けていたのだ。
それどころか、これ以上好き勝手に消えたりさせないためにヌンチャクを三節棍にぐるりと巻きつけている。
「……!!」
「へへ……もう逃がさないよ。私はアンタを忘れない。」
855
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/08(水) 13:04:29
マイミがクマイチャンの肉に指を食い込ませた時に存在を無に出来なかったのと同じように、
サユキに三節棍を掴まれてしまえばシミハムは姿を消すことが出来なくなる。
もちろん武器を手放せばフリーになるので無のオーラの力を行使できるのだが、
マーサー王誘拐時にマイミ1人を相手取った時と違って今はキュートが2人も存在している。
この状況で手ぶらになるのは流石に心許ないと考えたのである。
ならばやる事は一つだ。 シミハムではなくサユキに武器を手放して貰えば良い。
シミハムの強みは無のオーラや三節棍だけではない。 舞踏を舞うかの如き体捌きこそが真骨頂。
彼女はこの場にいる誰よりもダンスをうまく踊る自身があった。
「ハッ!……」
サユキが気づいた時にはシミハムは既に背後に回っていた。
存在感を消したわけではない。ただのフットワークで一瞬にしてここまで到達したのである。
棍から手を放さないままなので動きが制限されそうなものだが、それでもこの高速移動を実現しているのだから大したものだ。
そしてもう片方の手を挙げて、サユキの首めがけて一気に振り下ろそうとする。
「危ないっ!!」
突然の大声と共に、シミハムの背中に何者かの頭部が突き刺さった。
ロケットのように飛んできたのは下半身を負傷していたはずのナカサキだ。
だが驚くことはない。ナカサキは人体操作で筋肉を自由に操ることができるため、
腕を最大限に強化すれば自分ごと吹っ飛ばすことくらいは可能なのである。
激痛で声無き絶叫をしたシミハムは、我に返るや否やすぐに体勢を整えようとするが、
そこにマイマイまでやってきたので簡単にはいかなくなる。
姿も消せず、棍も満足に使えない今、どうやってナカサキとマイマイを凌げば良いのだろうか。
なかなか骨が折れる作業だなとウンザリする一方で、シミハムはある種のチャンスだとも考えていた。
それはリシャコがキュート戦士団のマークが完全にハズれたことに関連している。
カリンの奇策のせいで、存在を無にしてからの胸への一撃……という戦法はとれなくなったが、
そんなことをしなくてもリシャコは十分強い。
ここでカリンやサヤシをさっさと片付けてもらえば人数上の不利はほとんど消えるのである。
そう考えてリシャコの方を一瞥したシミハムだったが、ここでまた驚かされることになる。
なんとカリンがリシャコにパンチを仕掛けようとしていたのだ。
「えいっ!」
ご存知の通り、リシャコには超反応のカウンター性能が備わっている。
どんな攻撃だろうとたった0.1秒間で返してしまうのは何度も見せただろう。
今のカリンは「早送りスタート」の影響で拳のスピードが何倍にも速くなっているのだが、
いくら攻撃を速くしたところでリシャコの反応速度には敵わない。
どうあってもカウンターから逃れる事は出来ないのである。
つまりは自殺行為。
だが、シミハムには過去の実績からそれが考え無しの愚か者の行動には思えなかった。
何かある……そう確信している。
856
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/09(木) 13:33:03
マイマイに斧で斬られたとは言え、リシャコのカウンターが鋭いことには変わらない。
攻撃をされた方向に向かって、0.1秒という短さで正確無比な一撃を繰り出している。
これではカリンはいくら必殺技による超スピードを手に入れたとしても槍撃から逃れる事は出来ないだろう。
それはカリンも十分理解していた。苦しみを受け入れる覚悟だって出来ている。
ただし、その槍を胸で受け止める気は全くなかった。
(0.1秒あれば、打点をズラせる!!)
カリンがこの極々僅かな時間にとった行動は、ほんの数センチ身体をズラしただけだ。
その程度の移動は回避にはならない。槍の刃は貰わざるを得ない。
だが、その鋭い一撃を加えられるポイントが滋養強壮効果を高めるツボに変わったらどうなるだろうか?
早送りスタートによる酷使でカリンの身体には大きな負担がかかっているが、その負荷が軽減されるのではないか?
カリンはそれに賭けていた。
これまで何回かマーチャンに(チナミ譲りの)針治療を受けたことがあったので、どこを刺せばどうよくなるのかはカリンも理解しつつあった。
通常であれば細い針を使用するのがベターだが、リシャコのカウンターは心臓へと繋がるルートの一点のみを傷つけるほどに繊細であるため、十分に代用品としてなりえたのだ。
そして、この賭けの結果は上々だった。
心臓の代わりに鎖骨付近のツボを刺激された結果、カリンのパンチのスピードはここにきてグンと伸びていき、
リシャコの胸の、心臓がある位置に対して強烈な拳をお見舞いすることに成功する。
「!!!!!」
正直言うと、肉体的なダメージはたいして与えられていない。
身体の強さもさることながら、リシャコはこの場にいる誰よりも胸の脂肪が厚いため芯まで到達していなかったのだ。
それでも、精神的なダメージは計り知れないほどに甚大だ。
無敵のカウンターにまで昇華させた「暴暴暴暴暴(あばばばば)」を打ち破ったのが若手であること、
心臓を狙うことを得意としていた自分が逆に心臓をやられてしまったこと、
その二つがリシャコの心をひどく傷つけたのである。
「そんな……やだ……負け、負ける……」
冷静に考えればリシャコは全然不利ではない。 効かないパンチを貰ったくらい、いくらでも挽回できる。
だが今のパニック状態にあるリシャコには、正常に思考することすら難しかった。
勇気付けるために声でもかけてあげれば持ち直す可能性もあったが、ベリーズの団長にはそれも出来ない。
シミハムは仲間を激励することも叶わない己の運命をひどく悔やんでいく。
857
:
名無し募集中。。。
:2017/11/09(木) 13:40:58
カリン凄い!まさか針治療をこんな風に使ってくるなんて
てかリシャコがパニック状態?これって・・・かなーりっ!やばーいっ!んじゃないか?
858
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/10(金) 13:30:05
直接励ますことは出来ないが、シミハムは別のアプローチでリシャコを落ち着かせる方法なら持ち合わせていた。
ただ、出来ればこの手だけは使いたくないとも思っている。
単純にエネルギーの消耗が激しいと言う理由もあるが、それ以上にこの手段は残酷であるため使うのを躊躇していたのだ。
だが背に腹は変えられない。決意したシミハムは力を行使する。
「あれ……私、なんでボーっとしてたんだろう。」
リシャコはキョトンとした顔をしていた。
さっきまでカリンにやられたショックで動揺していたというのに、まるでそれを忘れてしまったかのような素振りを見せている。
そしてナカサキとマイマイ、サユキらにシミハムが囲まれているのを思い出しては、そちらへと走り出す。
カリンは勿論それを黙って見逃すわけにはいかなかった。
「行かせない!貴方は私が食い止める!」
息苦しく、身体にかかる負荷も限界近いが、カリンは歩みを止めなかった。
また先ほどのようにリシャコのカウンターを無に出来れば勝利の道は必ず開けるはずなのだ。
それにこれは孤独な戦いじゃない。
フリーになったサヤシだって、勇気を持ってリシャコの進行方向に立ちはだかっている。
カリンとサヤシの2人の力を合わせれば強敵リシャコを撃破することだって夢じゃないと信じているのである。
「絶対に食い止める……それを出来るのはウチ1人しかいないんじゃ!!」
(えっ?……)
カリンは胸の奥がゾワッとするのを感じた。
何やらとてつもなく恐ろしい違和感を覚え始めている。
そしてその違和は、マイマイがサヤシのフォローに入ることで恐怖へと変わっていく。
「無理しないで!マイも手伝うよ。2人がかりでリシャコを止めよう。」
「マイマイ様……お願いします!」
孤独じゃないと思っていた。
チームダンス部には心強い仲間がたくさんいると思っていた。
だと言うのに、これではまるで、カリンはこの世に存在していないかのようじゃないか。
自分の存在を証明するためにもカリンは大声で叫びだす。
「ちょっと待って!!みんな、私が見えないの!?」
本気の思いを込めた声なら届くと思っていた。
だが、カリンの方に目を向ける者は1人としていなかった。
聴覚が優れていて、志を同じくするサユキまでもが無視を決め込んでいる。
もちろん彼女らに落ち度は全くない。
カリンはこの空間に存在していない事になっているのだから、気づきようが無いのだ。
「だったら……無理矢理にでも振り向かせてみせる!!」
カリンはリシャコの超反応カウンターを思い出していた。
リシャコはどんな攻撃に対しても瞬間的に反撃するはず。
そんなリシャコの背中に対してカリンは精一杯の力で殴りかかった。
……そして、その全力パンチは何にも防がれることなく通ってしまう。
「そんな……味方だけじゃなくて敵までも……」
考えようによってはカウンターを貰うことなく攻め放題に出来るので非常に有利なのだが、
存在を無にされたカリンの精神的ショックはあまりにも大きく、これ以上仕掛ける気にはどうしてもなれなかった。
さらに追い討ちをかけるように「早送りスタート」の制限時間が切れてしまう。タイムアウトだ。
ここまでみんなの為に精一杯尽くしてきたカリンは、独り孤独に倒れていく。
859
:
名無し募集中。。。
:2017/11/10(金) 20:32:39
絶対リシャコ暴走すると思ったのにまさかそんな方法で回避するなんて…そしてカリン無念
860
:
名無し募集中。。。
:2017/11/10(金) 20:54:47
ほんといろんな意味で運命って残酷ね…
そしてそれがカリンじゃなければそこまでのダメージを負わずに済んだかもしれないのに…
861
:
名無し募集中。。。
:2017/11/10(金) 22:11:57
アプカミ『清水佐紀 Dance Live』で歌わずにひたすら踊っているキャプが静寂の中三節棍振り続けるシミハムと重なる・・・
シミハムが声を失ったのはこれを予言していたのか!?w
862
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/11(土) 13:33:39
シミハムも無尽蔵にモノを消せるわけではない。
対象がより強大だったり、数が多かったりするとそれだけ疲れてしまうのだ。
また、消される相手が協力的かどうかによっても消耗の度合いが変わってくる。
そのため同じ仲間のリシャコよりは、敵対視されているカリンを無にする方がよっぽど骨が折れるのである。
そんなカリンが動けなくなった今、力をこれ以上行使し続ける理由はないだろう。
シミハムは自身の無のオーラを操作し、気を失ったカリンを白日の下に晒しだす。
「えっ!?……か、カリン……」
ボロボロの姿で横たわるカリンが突如現れたものだから、サヤシは驚きを隠せなかった。
ナカサキとマイマイだって「しまった」という顔をしている。
キュートほどの戦士だろうとシミハムのオーラを知覚することは困難なのだろう。
そしてそれはキュートだけでなくベリーズだって同じ。
今回のカリン消失は打ち合わせ無しの完全アドリブだったため、味方であるはずのリシャコも全くと言って良いほど気づくことが出来なかった。
カリンが再登場したことでリシャコのプライドがまた傷つくことになるが、
そのカリンがもう戦えない状態にあることと、ほんの僅かでも落ち着きを取り戻せたことで、リシャコがパニック状態に戻ることはなかった。
むしろ天敵が倒れたことでやる気が増しており、シミハムに対してキラキラした眼でアイコンタクトを送っている。
(さすが団長だね、助かったよ。 またさっきみたいに奇襲をかけたいから私の存在を消してほしいな。)
無茶言わないでよ、とシミハムは思った。
さっきから高頻度でシミハムとリシャコを交互に消している上に、今回は味方ではないカリンまでも消したのだ。
いくらベリーズの団地も言えどももう汗だく。相当疲弊している。
それにカリンを元に戻したということは、カリンの胸元のサインは依然変わらずチームダンス部らの脳裏に焼き付いているということ。
仮に存在の消えたリシャコが胸を一刺ししたところで、先刻のマイマイのように跳ね除けられることだろう。
つまりは、もう交互に存在を消す戦法は限界なのだ。
また、シミハムがその戦法に踏み切れない理由はもう一つあった。
それはさっきからずっとシミハムを見つめ続けているサユキ・サルベの存在だ。
サヤシ、ナカサキ、マイマイが思わずカリンを見てしまったのに対して、サユキは頑なにシミハムをマークし続けている。
仲間の消失に気づけなかった悔しさも勿論有るだろう。唇を強く噛み締めるあまり血を流しているのがその証拠だ。
それでもサユキはチームの勝利のために格上のシミハムから目を離さない。
ただただ凝視され続けること、その行為がシミハムにとってはこの上なく厄介だった。
「……」
シミハムは決意した。
もう自分やリシャコを消すのは辞めよう。 それで体力を使い果たしてしまえば逆にピンチを招きかねない。
だがその代わり、別のモノを無にしてやろうと考えている。
「反抗的な者」よりも「協力的な者」よりも消しやすいモノ、それは「意思を持たぬモノ」だ。
シミハムはそのモノを消失させることで、これまで以上の戦闘力を発揮することが出来る。
奇襲でもなんでもない、ベリーズの団長としての真の強さでチームダンス部を一人残らず殲滅させる自信が彼女にはある。
863
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/11(土) 13:41:27
リシャコ暴走のルートも考えてましたが、ここは冷静でいてもらいたいのでこうなりましたw
カリンじゃなければというのはまさにその通りですね。
マーチャンとかなら多分平気です。
アプカミは毎週チェックしてるので今週のも見てみます。
先週のtiny tinyの清水がフラフープを組み立てるコーナーも多節棍を意識できますよw
864
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/16(木) 12:34:42
次回更新は土曜日ごろになります……
間が空きすぎちゃうので簡単な裏話でも。
当初の想定では第二部のラスボスはリシャコでした。
(というかつい最近までそう思ってました。)
第一部の実質ラスボスのアヤチョのように、どうやってギミックを攻略するかというのを書きたかったんですよね。
ですが、実際にリシャコを登場させてみると(やっぱり違うかも)と思い始めてきました。
格で言えば十分過ぎるんですけど、ラスボスにはもっと相応しいキャラがいるんじゃないかと考えを改めることに……
なのでラストバトルは当初の想定から大きく変更しそうです。
このスレ以内に完結するのはちょっと厳しそうなので、
第二部の2スレ目前半あたりでケリをつけますかね。
865
:
名無し募集中。。。
:2017/11/17(金) 12:57:48
リシャコ暴走モードになったら全滅ルートになりそうw
リシャコでないとするとラスボスはいったい誰になるのか…予想と言う願望としてはあの方達なんだけど。。。
866
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/11/21(火) 13:02:40
まだかかりそうです……
867
:
名無し募集中。。。
:2017/11/21(火) 18:59:18
ゆっくり待ってます
868
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/01(木) 14:07:27
たいへん長らくお待たせしました。
なんとか仕事も落ち着き、少しずつですが更新できるようになりました。
最後までお付き合い願います。
869
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/01(木) 14:08:08
●場面4 : 武道館西南口「チームオカール vs ミヤビ」
チームダンス部にはマイマイが、
チーム河童にはハルナンと新人剣士4名が、
チーム下克上には番長3名がそれぞれ助っ人として駆けつけてくれたが、
チームオカールにだけはそのような援軍は到着していなかった。
脚部をひどく痛めたオカールと、ハル、オダ、トモの合計4名でミヤビを倒さなくてはならないことに変わりはないのだ。
だが、勝機が全く無いというわけではない。
昨日のマイミとの戦いで一皮も二皮も剥けたのか、ハルもオダもトモもなんとか喰らい付いていていた。
(大事なのは気持ちで負けないこと!ミヤビのオーラは怖いけど、ハル達なら耐えられる!!)
並の戦士ならミヤビの放つ鋭い刃物のような殺気にばっさりと斬り捨てられてしまうことだろう。
だと言うのに、オカールだけでなく他の3人も戦意を喪失させずに立っていることから、若手らが並の戦士の域を脱却したことが分かる。
全ての基本は「断身刀剣(たちみとうけん)」。 敵に負けない自分を強く思い描き続けることで凶悪なオーラにも飲まれず済むのだ。
そしてこれは攻撃にも応用できる。
オダは「冷たい殺気」と「熱のこもった思い」の両方を自身のブロードソードに乗せて、ミヤビへと斬りかかった。
天変地異のようなビジョンを起こすことは流石にできないが、
その殺気と思いは、あのミヤビに「自身が斬られる光景」を錯覚させることに成功する。
「なんだと!?……まさか既にここまで出来るようになっていたなんて……」
現実の斬撃の方はミヤビの脇差によって防がれてしまったが、それでも若手の成長を見せつけて動揺させることには成功した。
この勢いに続こうと、トモがボウから矢を発射しようとする。
狙いは昨日の戦いでも貫いたミヤビの胸だ。
その矢には殺気以外にも、経験から裏付けられた確固たる自身がしっかりと乗っかっていた。
(あの矢を受けるのはまずい……だから、こうさせてもらうよ。)
ミヤビは少し体勢を変え、トモに対して肩を向けた。
胸の真っ平らさを真横から見せつける形になるのだが、
なんとそれが影響して、正確に狙ったはずの矢がミヤビの身体を外してしまう。
「あれっ?……どうして……」
「"消失点"という言葉を知ってるかな? 君の矢は、もう私の胸には届かない。」
平行に引かれた線であっても、近くに寄れば幅が広く見えるし、遠くに行けば行くほど狭く見える。
トモが慎重に狙いをつけているところに、女性とは思えぬほどに平坦な胸を急に見せたのだから、距離感が激しく狂ったのだ。
昨日のvsアイリ&トモの時は、ミヤビは自分の硬い胸でわざと受けて全弾ガードしようと努めていたが、
胸を貫かれてからは回避に力を入れようと考えを改めたらしい。
「おいトモ!ガッカリしてる暇なんかねぇぞ! 攻めの手を一瞬たりとも緩めるな!さもないとミヤビには勝てねぇ!!」
オカールは脚部の激痛にも負けずに根性だけでミヤビの元へと辿り着いた。
そして強力な必殺技をミヤビの唇へと当てていく。
「喰らえ!!"リップスティック"!!!
870
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/02(金) 13:57:43
力強く叫んだ技名とは対照的に、オカールの繰り出した右手には殺気がほとんど込められていなかった。
「リップスティック」という必殺技はとても繊細で、そして「必殺」だというのに相手の命を奪うことを目的としない。
殺すのはただ1つ。相手の冷静さだ。
右手のジャマダハルの刃の切っ先が、正確にミヤビの唇を傷つける。
「!!!」
殺気の無い一撃ゆえにミヤビは反応が遅れ、オカールの思惑通りに斬られてしまった。
唇は人体でもかなり皮の薄い箇所。
ちょっと切っただけで刃は血管へと到達し、大袈裟に血液を噴出させる。
真っ赤な血はまるで塗りすぎた口紅のようにミヤビの唇を真っ赤に染める。
痛みはほとんど無いが、顔から流血し続けることは即ち脳に送り込む血液量が減少するということ。
伝説の戦士なので唇からの出血程度でパニックを起こしたりはしなかったが、
今後は脳に酸素が十分に行き渡らないまま戦い続けなくてはならない。
こんな状況下で冷静さをいつまでも保ち続けることは出来ないだろう。
そんなミヤビに対してオカールは追撃を打ち込んでいく。
左手の刃でミヤビの首を攻撃しようとしているのだ。
「まだ終わりじゃ無いぜ! リップスティック、"派生・パイン"!!!」
ジャマダハルの刃をブッ刺して、カットされたパイナップルのようにグルリと円を描けばミヤビの首に穴が空く。
そうすれば更に出血させて苦しませることが出来るだろう。
だが、同じような手を何回も喰らうようなミヤビではなかった。
顎に取り付けられている刃物を素早く下ろして、オカールの攻撃を弾いていく。
「二刀流はオカールの専売特許じゃない!!この顎の刃と脇差で全て受け切ってやる!!」
オカールのパインを弾くや否や、ミヤビはその場にしゃがみだした。
そして右手に構えた脇差でオカールの右ももを一気に斬りつける。
「猟奇的殺人鋸(キラーソー)、"派生・愕運(がくうん)"!!」
「ちょっ!わっ!」
怨念混じりの凶刃がオカールの負傷した脚へと容赦なく襲いかかった。
これをまともに貰えば二本の脚はたちまち真っ二つになることだろう。
それはまずいと判断したオカールはその場でわざと転ぶことにした。
ガクーンと不恰好に転倒することになったが、脚を失うよりはずっとマシだ。
しかし、窮地はまだ続いていく。
「そんな体勢で避け続けられるかな?……猟奇的殺人鋸(キラーソー)、"派生・堕祖(だそ)"!!!」
この派生技は力強い斬撃を4連続で繰り出すというもの。
地面に向けて叩きつけられる刃を一回避けたとしても、
「堕祖(だそ)」「堕祖(だそ)」「堕祖(だそ)」「堕祖(だそ)」と更に威力を増して次々と放たれていく。
音楽記号の「だんだん強く」を意味する「CRES.(クレッシェンド)」を体現する技なのだ。
4連撃目をまともに貰ったならば、命の保証はされないだろう。
「すげぇ……なんて戦いだ……」
ハルは戦闘中であるのに、食卓の騎士同士の攻防をただ突っ立って見ていた。
恐れをなしたのではない、達人級の真剣勝負に見惚れているのである。
そしてこの戦いには学ぶべきことが多いと、強く認識する。
(学ぶ……とは言っても、教わることは出来ないんだろうな。
ミヤビは敵だし、オカール様だって優しく教えてくれる感じでもない。
だったら……盗むか?)
これからすべきことに気づいたハルは、オダとトモを呼び寄せた。
そして素っ頓狂にも聞こえる言葉を口に出す。
「ハル達3人で怪盗チームを結成しよう! 名前はそうだな……怪盗セクシーキャットなんてどうかな。」
「え?」
「は?」
871
:
名無し募集中。。。
:2018/03/03(土) 14:45:14
待ってました作者さん!
おかえりなさい!!!
872
:
名無し募集中。。。
:2018/03/04(日) 13:42:15
お帰りなさい!首をながーくして待ってました!!再開早々アツいバトル…何気にミヤビにひどいこと言ってるしw
怪盗セクシーキャット…元々構想にあったのでしょうけどうまくルパンレンジャー合わせてきましたねぇw
873
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/04(日) 15:19:24
「盗むのはお宝やハートじゃない、技術(スキル)だよ。」
「あー、はい、分かりました。 食卓の騎士の技を目で盗むってことですね。」
ハルの厨二病にある程度の理解を示しているオダは、隣でキョトンとしているトモに要約することにした。
つまりはミヤビとオカールの戦いをしっかりと観察し、
自分達の成長に繋がるような技術があれば積極的に取り入れよう、という事なのだ。
彼女たちはこれまでの密度濃いツアーのおかげで戦士として戦う基礎がしっかりと身についている。
昨日、マイミと戦った時のような成長力があれば、短時間でさらなる飛躍を見せる事だって不可能では無いのだ。
(えっと、言いたいことは分かったけど「怪盗チーム」とか「セクシーキャット」とかって何?)
(そこは突っ込まないであげて!ハルさんあれで結構真剣だから!)
(はいはい……まぁ、私も"おバカねこバカ"だから、このチーム名は別に嫌じゃないしね。)
しかし大義があるとは言え今は真剣勝負の真っ最中。
そんな時に観察している暇なんか有るのか、と思うかもしれない。
確かに一刻も早くミヤビを撃破せねばならない状況であれば、全力で攻撃に集中する必要があるだろう。
だが、チームオカールの本来の役割は陽動だ。
チームダンス部が裏口から奇襲を仕掛けることを悟らせないように、
そして、勘付いたミヤビが裏口に向かうことを防ぐためにここで足止めすることが何よりも大事。
つまりは戦いが長びく分には全く問題ないのである。
とは言えハル、オダ、トモの3人がただただ突っ立っていて良い訳がない。
地面をゴロゴロ転がるオカールに堕祖(だそ)の4連撃目を振り下ろそうとするミヤビの目に向かって、
オダが反射させた太陽光を送り込む。
「くっ……またこれか……」
「いいねオダ! 後はハルに任せて!!」
目を焼かれて一時的に視力を失ったミヤビは格好の的に見える。
怪盗として技術を盗むことも大事だが、やはり決めれるところはカッコよく決めたいので、
ハルはミヤビの生身の部分、腹と背に竹刀をぶつけようとした。
二ヶ所への同時攻撃を実現する「再殺歌劇」はハルの得意とする必殺技。
これで大ダメージを与える目論見だったが……
「まだ殺気の乗せ方が下手だね……この程度なら、見なくても防げるよ。」
「えっ?……ハルの竹刀を素手で!?……」
攻撃の意思が強過ぎるあまり、ハルの殺気はダダ漏れになっていた。
これでは達人級の敵にはすぐに察知されて、
今回のように目をつぶったミヤビに簡単にキャッチされてしまう。
動揺したハルはミヤビの蹴りが迫っていることにも気づけず、軽く3,4メートルは吹っ飛ばされる。
(い、痛い……やっぱりハルの技は食卓の騎士には通用しないのか?……)
ハルは昨日の戦いでマイミにも「再殺歌劇」が通用しなかったことを気にしていた。
他のメンバーに先駆けて必殺技を習得できたのは良かったのだが、
最近になってそのパワー不足に課題を感じ始めている。
強者の技を盗んで「再殺歌劇」を強化すること、それもハルの急務と言えるだろう。
874
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/04(日) 15:22:00
>>871-872
本当にお待たせしました……
セクシーキャットについては、御察しの通り、元から決めていました。
(本家セクシーキャット2人+ぬんとぅん)
怪盗とこじつけたのはルパンレンジャー決定以降ですねw
875
:
名無し募集中。。。
:2018/03/05(月) 16:57:03
うおおおおおおおおお復活かー
楽しみが増えた増えた
876
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/06(火) 14:15:23
ハルの必殺技が防がれたことに対して、オダもトモも心を乱されてしまった。
「殺気が強すぎると察知され易くなる」という現実を前に、どうすれば良いのか分からなくなったのだ。
強めるのが良いのか?弱めるのが良いのか?
こうして生じた悩みは、ただでさえコントロールの不得意な彼女らの殺気を著しく不安定にさせる。
そんな後輩らの異変を感じ取ったのかどうかは定かではないが、
オカールが寝っ転がったままの姿勢で怒鳴り声をあげる。
「細かいコト気にする必要ねぇよ!殺気なんかぶちまけっぱなしで良いんだ!!
本当に大事なのはよぉ、気づかれても避けられない一撃をブツけることだろっ!!!」
オカールは上半身を起こしては、右手に装着されたジャマダハルで、まだ目の慣れていないミヤビに斬りかかった。
「ミヤビちゃん、今からどこを狙っているか分かるよなぁ!? リップスティック"派生・ぱんつ"!!!」
「ハァ!?」
オカールはあろうことか、ミヤビの股に向かって斬撃を繰り出していた。
これがおふざけではなく大真面目であることは先ほどのハル以上にダダ漏れになっている殺気からもよく分かる。
当然この狙いはミヤビにも120%伝わっているし、女性として、いやそもそも人としてこんな攻撃を受ける事は許されないので、
ミヤビは向かってくるオカールを必死で蹴っとばそうとした。
しかし、その瞬間に殺気の方向性が変わった事に気付く。
狙いはもう股ではない。 胸だ。
昨日トモの矢に貫かれたミヤビの胸に対して、トゲトゲしい気迫が打ち込まれていく。
「さっきの攻撃はフェイク!?」
「もう遅いよ!リップスティック"派生・ぶら"を喰らえ!!」
オカールの捻りが加えられた刃が、ミヤビの脂肪の少ない胸をガリガリと削り取る。
普段は硬い鉄板によってガードされているが、穴の空けられた部分までは守ることが出来ない。
気の遠くなる痛みにミヤビは悶絶してしまう。
「ーーーーーーッッッッ!!」
あんなに強くて隙の無いミヤビにダメージを与えるオカールを見て、ハルは改めて尊敬の念を強めた。
しかし、尊敬は出来るのだが、
(必殺技のネーミングセンスは盗みたく無いなぁ〜〜〜)
オダも、トモも、同感だったという。
877
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/09(金) 02:33:27
●場面3 : 武道館南口 「チーム下克上 vs クマイチャン」
手負いの巨人、クマイチャンが鋭い目つきで番長たちを睨みつけているが、
その恐ろしさも、プレッシャーも、今は半減以下に感じられた。
何故か?それは今この場にアンジュ王国の最高戦力が勢ぞろいしているからだ。
既に前線を退いた表番長アヤチョと裏番長マロや、
番長候補として修業を積んでいる"舎弟"2名を欠いてはいるものの、
先輩番長カナナン、タケ、リナプー、メイと
後輩番長ムロタン、マホ、リカコの合計7人の力を合わせればどんな強敵にだって立ち向かうことが出来る。
「さっきまでは4人だったけどな、今は7人や……戦術の幅もぐっと広がる。」
2階から落とされたせいで脚を負傷したカナナンだったが、
不安そうな顔をまったく見せていないことからも、自身の言葉が嘘ではないことを物語っている。
「カナナン、ここは当然アレでいくよな?」
「せやなタケちゃん、フォーメーション"風林火山"を見せたれや!!」
「おう!」
カナナンの指示と同時に運動番長タケ・ガキダナーが走り出した。
"疾きこと風のごとく"
盗塁王のような脚力でクマイチャンの元に駆け寄っては、
大袈裟に身体を捻ったトルネード投法で豪速球をブン投げる。
これには流石のクマイチャンも回避することが出来ず、腹で受けてしまう。
「う゛っ……」
痛みと屈辱のせいで更にピキピキと怒ったクマイチャンは、自慢の長刀をタケへと振り下ろそうとした。
破壊力満点の斬撃をまともに喰らえば当然即死なわけだが、
そうはならないための指示をカナナンは既に出し終えていた。
「準備は出来てるな?行け!リカコ!」
「\(^o^)/はーーい\(^o^)/」
無数の細かなシャボン玉が大量発生し、クマイチャンの視界を一気に奪っていく。
"徐かなること林のごとく"
理科番長リカコ・シッツレイは、タケが攻撃を仕掛けている裏で石鹸水を黙々とかき混ぜることで、
クマイチャンの反撃をこのタイミングで妨害するためのシャボンを準備していたのだ。
隙間なく敷き詰められたシャボン玉は、入り組んだ木々の枝のように、すべてを隠してしまう。
こんな状況では刀をターゲットに向けて真っすぐ振るうことは叶わず、
何かとてつもなく固いものに阻まる。
3m級の長刀がぶつかっても破壊されないものはそうそう存在しない。
クマイチャンはすぐに、ムロタンの透明盾に防がれたことに気づいた。
「またか!さっきからそればっかり!」
「あれ?飽きちゃいました?それじゃあ魅せ方を変えましょうか。
防御だけじゃ芸が無いですもんね。熱い私の攻め、魅せてあげます。」
音楽番長ムロタン・クロコ・コロコの透明盾は軽そうに見えて、その実は重量感たっぷり。
"侵掠すること火のごとく"
盾を持つ手に力を入れては、押して押して押しまくる。
このヒいてしまうような押しの強さが尋常ではないことは、
盾と剣の衝突によって、お互いの肌を黒く焦がすような火花がジリジリ、ジリリと散っている事からも分かる。
シャボンのせいでまだ視力がハッキリしないクマイチャンは、
下方向から来る打撃の猛攻に手間取っていた。
「痛っ……でも、こんな攻撃で参る私じゃないからね」
「分かってますよ、だからこっちも総大将に出てもらいます。」
「えっ?」
その時、無数のシャボン玉を全て吹き飛ばす程の圧が、とある人物から発せられた。
"動かざること山のごとく"
その人はアンジュ王国の象徴。雄大にドッシリと構えている。
木彫りの像のように美しいその女性は、ただそこに立っているだけで存在感を示していた。
(あれは、噂に聞いてたアンジュのアヤチョ王?……どうしてここに?……)
もともと目のあまり良くないクマイチャンには、
その人が確かにアヤチョ王に見えていた。
いや、そう見せられていたのだ。
878
:
名無し募集中。。。
:2018/03/12(月) 13:19:35
おお!風林火山!!アヤチョをどうするんたろう?と思ったら、なる程。彼女がいたか
879
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/03/13(火) 13:08:55
佇まいや所作を見ればアヤチョ王そのものなのだが、その実は当人ではない。
これは演技。
そして、本物以上に本物に見せてしまう演技力を備える人物なんて、彼女以外には存在しないだろう。
「アヤ知ってるよ。 勝つのはね、番長なんだよ。」
メイ・オールウェイズ・コーダー。
女優となった彼女の発した声は、味方であるはずの番長たちにも錯覚を起こすほどだった。
あんなに強い王がここまで来てくれたという心強さは一同のテンションをより一層高めてくれる。
そして、メイはそれだけで終演しようなどとは思っていなかった。
精神を滝行で鍛えるという面でメイとアヤチョは大きくシンクロしている。
こうして同調することで生じた強い心を持って、メイは更にキャストを増やし始めた。
「"1秒演技"……アヤはね、巨人にもなれるんだよ。」
その瞬間、クマイチャンは自身の身体がズッシリと重くなるのを感じた。
巨大な手で上から押さえつけられるような感覚。
これはまさにクマイチャンが得意とする"重力"のオーラのそれだった。
メイは1秒という短い間だけなら食卓の騎士だって演技することができる。
そしてそこに元から行なっていたアヤチョの圧もプラスされるものだから、
クマイチャンには山のように大きいアヤチョ王に押しつぶされそうになるビジョンが見えていた。
「ぐっ……」
しかしそこはやはり本家食卓の騎士。
オーラでペチャンコに潰される前に意識を強く持って、持ちこたえることが出来た。
だが、1秒のこととは言え今の攻防は相当堪えたようで、
知らず知らずのうちに肩で息をしてしまっていた。
相手の司令塔カナナンに向けられる声からも、相当の疲労が感じられる。
「ゼェ……ゼェ……確かに、君たちは強いね……
でも、風林火山ってやつももう終わりでしょ?」
「どうしてそう思います?」
「え?だって、風に林に火に山に……全部見せてもらったし」
クマイチャンの言うことはもっともだ。
風のタケ・ガキダナー
林のリカコ・シッツレイ
火のムロタン・クロコ・コロコ
山のメイ・オールウェイズ・コーダー(アヤチョ・スティーヌ・シューティンカラー)
それぞれの担当分が既に終わっているのである。
それを理由に僅かばかり油断しているクマイチャンを見て、カナナンはほくそ笑む。
「そうですか、そうですか、やっぱり知らなかったんですね。」
「え?」
「"風林火山"には続きがあるんです。 ほんまは、"風林火山陰雷"って言うんですよ。」
「え?」
"知りがたきこと陰のごとく"
全く知覚のできない正体不明の牙が、クマイチャンの横っ腹に深く刺さっていく。
880
:
名無し募集中。。。
:2018/03/15(木) 13:37:24
陰雷…知らなかった汗
勉強になるなぁ
881
:
名無し募集中。。。
:2018/04/30(月) 09:47:03
こんなの見つけたw『仮面ライダーイクタ』を思い出す。。。
「仮面ライダーハルカゼ」
https://youtu.be/WwFq0ucaXNY
882
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/06/19(火) 08:35:24
久しぶりとなってしまってごめんなさい……ゆっくり出来る範囲で復帰します。
ハロプロの人事が激動すぎて、書き進めないとあっという間に取り残されてしまいますね。
まずはオマケ更新をします。
>>737-740
の続きみたいなものですかね。
マナカ「まさかチーたんがモーニング帝国出身だったなんて……」
マナカ「まぁ、私も果実の国出身だから似たようなものですけどね。」
モモコ・リサ・チサキ・マイ「えっ!?」
モモコ「いやいやいや、初耳なんだけど……」
マナカ「はい。初めて言いましたので。」
モモコ「はぁ……てっきりみんなマーサー王国の生まれだと思ってたわ。」
モモコ「あ!ひょっとしてリサちゃんとマイちゃんも……」
マイ「えっと……」
リサ「私たちの生まれは……」
モモコ「ごめん、やっぱり今は言わなくていいわ。この先何が起きるか分からないからね。」
リサ「そうしましょう。」
マナカ「でもそんなに意外でしたか〜? 果実の国には私みたいな人、結構いますよ〜」
リサ「そう言えば果実の国の女子は半数が”あざとい”気質だと聞いた事があるような……」
モモコ「ユカニャ王も、この前会ったヤナミンもそうだったわね……末恐ろしい国だわホント。」
883
:
名無し募集中。。。
:2018/06/19(火) 22:26:58
おお!さっそくまなかんw
ハロプロの流れが早すぎて…ホント残りの二人もどうなるかわからない状態だもんなぁ
気長にお待ちしてます
884
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/06/20(水) 01:30:42
姿もなく、音すらもなく、クマイチャンに接近して牙を剥いたのは帰宅番長リナプー・コワオールドだった。
"知りがたきこと陰のごとく"
派手で騒々しい集団・アンジュ王国の番長らの陰で、しっかりと確実に成果を出すのが彼女の仕事なのである。
「しまった……!」
クマイチャンはひどいしかめっ面をしていた。
傷つけられた腹が痛くて苦しんでいるワケではない。
リナプーの攻撃をみすみす受けた自分自身をマヌケだと恥じているのである。
シミハムのように存在そのものを"無"にするのであれば知覚できなくても仕方ないが、
目の前にいるリナプーはそこまでの域には達していない。
クマイチャンも食卓の騎士ほどの戦士ならば不意打ちに気づくべきだったのだ。
しかし、それも無理のない話だ。
今回、番長たちがとった作戦の名称は「風林火山」。
そこから「山」でお終いというイメージをカナナンに植えつけられていたため、
メイによる「山」の攻撃が完了した時点で集中力を切らさずにはいられなかったのである。
そして、この作戦は「陰」で終わりでもない。
「風林火山陰雷」を〆るのは「雷」に他ならない。
「私どうしても勝ちたいんですよ。」
小さな声がボソッと聞こえたと思いきや、間髪入れずに稲妻でも落ちたかのような爆音が轟き始める。
"動くこと雷霆のごとく"
乙女の逆襲の始まりを告げる雷鳴のように聞こえた音の正体は、マホ・タタンのスナイパーライフルの発砲音だ。
ところが、勝負時だと考えたマホは通常とは大きく異なる方法で攻撃を仕掛けていた。
そう。マホがここで動いたのだ。
(こ、こんなのアリ!?)
クマイチャンが驚くのも当然だ。
マホはなんと18丁の銃を同時に持ち、一斉に銃撃を放っていたのである。
無茶な体勢からの一斉射撃であるため、弾丸は真っすぐ飛ばないのがほとんどではあったが、
標的のクマイチャンの体躯が通常の人間よりずっとずっと大きいせいで、18発18中とは行かなくても数発はヒットさせることが出来た。
狙撃手という役割を考えると、本来であれば一発ずつ丁寧に撃たねばならないはず。
この行為は捉え方によってはズルくも見えるかもしれない。
だが、マホは番長の勝利を心から望んでいたのだ。
だからこそ、最後のこの瞬間ではじめて18連同時という意外性満点の行動をとったのである。
風林火山の次があっただけでもクマイチャンは戸惑ったというのに、
そこに更にこんな仕打ちをされたものだから、やはり相当効いたのだろう。
クマイチャンは立っていられなくなり片膝をついてしまう。
「……!!」
番長一同は今すぐにでも諸手を挙げて喜びたいと思っていた。
しかし、伝説の存在がここで倒れるはずも無い。
ただでさえ殺し屋のように恐ろしい目が、より一層鋭くなったことに気づくのにそう時間はいらなかった。
「気をつけろよ、みんな……どうやら完全に怒らせちゃったみたいだ。」
鉄球を握るタケ・ガキダナーの手は震えていた。
これから迫りくる真の恐怖を、心で理解したのだろう。
885
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/06/21(木) 13:05:52
●場面2 : 武道館西口 「チーム河童 vs カントリーガールズ」
改め、
「チーム河童&ハルナン vs モモコ」
次の攻め手を考えるために、ハルナンは頭の中で状況を整理することにした。
倒すべき相手はモモコただ1人。
ハーチンら新人剣士がカントリーの4人を追っかけ回したおかげでこの状況を作り出す事が出来ている。
その新人剣士がカントリーに完勝する確信は無いが、
ハルナンの見立てでは両者の実力は近いレベルにあるため、一定の時間は稼いでくれるはずだ。
つまりはしばらくの間はモモコを一人ぼっちに出来るということになる。
それに対して味方はアイリ、エリポン、カノン、マーチャン、アーリー、そしてハルナンの6名。
数だけ見れば圧倒的優位に立っている。
(でも……そんなに楽な戦いでも無いのよね。)
ハルナンは今いる西口の戦いに突撃する前に、ある程度の時間、観察をしていた。
なので味方のコンディションはしっかりと把握できている。
まず、アイリは昨日トモ・フェアリークォーツに”眼”の力を分け与えたことによって無理が祟り、ひどく疲弊している。
もはや立つことも辛い状態にあり、アイリを強者たらしめる三大要素である「眼」「雷のオーラ」「棒術」を複数同時に使用することは到底出来やしない。
次に、全身を金属の鎧で纏ったカノン・トイ・レマーネだが、
モモコの暗器の一つである超強力電磁石を大量にぶつけられたため、重さのあまり動けなくなっている。
鎧が頑丈なため、潰されて圧死……ということは無いのだろうが、一歩も動けないままでは戦力になり得ないだろう。
残るエリポン、マーチャン、アーリーの3人はカエルやカラスらに一斉に襲われたことで負傷しているが、まだまだ全然戦える。
なのでこの3人を主軸にして戦うことになるのだろうが……
(はぁ……それにしてもなんて使いにくい3人なの。)
エリポン・ノーリーダー
マーチャン・エコーチーム
アーリー・ザマシラン
ちょっと個性的すぎるな、とハルナンは頭を抱えていた。
それぞれの戦士の実力は疑いようが無いのだが、性格がぶっ飛んでいるメンバーばかりであるために、素直に指示を聞いてくれるのか不安になってくる。
仮に言うことを聞いてくれたとしても、各々で得意分野が異なるので効果的に操ることが難しい。
(アイリ様、あなたはどうしてこの面倒な人達と共に戦おうと思ったんですか?
そして、この場を引き受けたと言うことは、モモコ様を倒す確信を持っていたという事ですよね。
……どうやって?)
出来ることなら直接アイリに聞きたいところだが、今のアイリの体調では喋るのも辛そうだし、それにモモコに聞かれてしまうリスクだってある。
ならば、アイリの意図をハルナンが自力で読み取るしかないのだ。
(超がつく程の難題……でも、やるしかないか。
だから皆さん、思う存分私に使われてくださいね。)
886
:
◆V9ncA8v9YI
:2018/06/27(水) 13:06:03
アーリー・ザマシランは苦悩していた。
頭ではハルナンの指示に従うべきだと分かっていても、身体の方が拒否反応を起こしているのだ。
モーニング帝国の選挙戦ではアーリーら果実の国の戦士は天気組についたのだが、その結果は散々だった。
トモとカリンは二人掛かりでカノンと引き分けるのが精一杯であり、
サユキは同格と思っていたリナプーに敗北してしまった。
トモ、サユキ、カリンの3人は強い。KASTの主軸だとアーリーは信じている。
そんな3人が無様に散ることになったのは、KASTが辛酸を舐めることになったのは、
全てはハルナンの側についたことがキッカケではないか。
そう思うとアーリーは身体を動かすことが出来なくなる。
(どうすれば……どうすればええんや……)
こうした迷いは心を弱める。
食卓の騎士と対峙するには「お前には負けない」という強い思いが必要なのだが、
今のアーリーはそれすら出来ず、モモコの放つオーラに負けそうになってしまう。
モモコのオーラは背筋が凍るような冷気そのもの。
血も涙も無いような冷ややかな視線がアーリーの手足を凍り付かせる。
それがイメージだと理解していても、アーリーは本当に冷たさを感じ、その場に縛り付けられてしまう。
このままではまずい。 アーリーどころかハルナンやアイリもそう思った時、
とある人物が大きな声を出して場の空気を変え始める。
「ハルナン!!今からエリが超カッコいい必殺技を繰り出すっちゃん。バシッと決まるように指示出しお願い!!
そしてアーリーちゃん。今は休んでてええよ。 戦うのは、エリのカッコよさに惚れた後でも平気やけんね。」
叫び出したのは、モーニング帝国剣士団長を務めるエリポン・ノーリーダーだった。
先の選挙戦ではアーリーはエリポンと直接対決を繰り広げていたが、ハルナンと違って嫌なイメージは全く感じていなかった。
エリポンの必死さを間近で見たからこそ、当時は敵同士であっても好感を持てたのだろう。
そんなエリポンが自らすすんで後輩であるハルナンの指示に従おうとしている。
これにはアーリーも心を動かされた。
「あの……エリポンさん、やる気なのは良いんですけど。」
「なに?ハルナン。」
「私、あなたの必殺技を知らないんですが、どう指示しろと。」
「ふふ、エリの得意技は魔法に決まってるっちゃろ。」
そう言うとエリポンは刀をモモコに突きつけ、自身の必殺技名を前面に押し出した。
「”遅々不意不意(ちちぷいぷい)”、魔法にか〜かれ!」
「え?」
「あー!かかっちゃった〜!」
「え?」
887
:
名無し募集中。。。
:2018/06/27(水) 18:57:35
えりぽんの魔法ww
封印したんじゃないのか
888
:
名無し募集中。。。
:2018/06/27(水) 22:20:17
えりぽんの魔法凄く懐かしいw
ハルナンの作戦をこの3人がどうかき回してくれるのか楽しみ
889
:
名無し募集中。。。
:2018/08/18(土) 09:13:08
ハルナンの作戦がなんなのか判明する前にはるなん卒業だなんて…
890
:
名無し募集中。。。
:2018/12/08(土) 11:18:29
仮面ライダーれいなの制作はまだですか?wてかマーサー王の続きも・・・鞘師も事務所卒業してしまったのに
1 名無し募集中。。。 2018/12/08(土) 09:27:23.33 0
モーニングダイアリー #69
どんなクリスマスケーキを食べてるかという話題で
横山 仮面ライダーケーキ!w
森戸 ちょっとーw
加賀 ちょっと待ってくれw
横山 ふっはっははははははは
森戸 いやいやいやいや、もうさ、違う
加賀 全然違うw
横山 毎年恒例なんですよー
森戸 それは弟が食べてるということかな?(小声)
横山 私がーあのー真ん中にーあるーフィギュアがほしくて買ってるw
森戸 だって可愛すぎるでしょw
加賀 ヤバイでしょ…
(中略)
森戸 なんかさぁ、弟が欲しいって言ってんならわかるけどさぁw
加賀 ふふふふ
森戸 可愛いねよこやんが頼んでるの?w
横山 はい、ベルトとかも買ってます
森戸 え、かわいいー!
加賀 やばーい!
森戸 弟も別に好き?
横山 はい!弟も別に買ってます!
森戸 別に買ってるの!?
加賀 別に買うの!?あははははは
891
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/01/07(月) 13:59:59
新年あけましておめでとうございます。
長い間書かなくて本当に申し訳御座いません。
今夜の遅い時間あたりから続きを書けそうです。
リハビリみたいな感じで細々とした再開になりそうですが……
こう書くと病気のように見えますが、
飯窪さんの卒コンや(横山も見たという)平成ライダーの映画を楽しんだりしていたので
心配しないでくださいw
>>890
仮面ライダーイクタの続編ですか……
そういえば最新の放送でビヨンドライバーというベルトが登場しましたね。
ビヨンド……BEYOOOOONDS……
892
:
名無し募集中。。。
:2019/01/07(月) 17:31:36
お元気そうで良かった。そして再開宣言!首を長くして待ってましたw
てか『BEYOOOOONDSドライバー』だ…と?
♪いっちゃん!いっちゃん!すげージャン!いっちゃん!いっちゃん!すげージャン!♪
何故か電王に変身するいっちゃんの姿が脳裏に浮かぶww
893
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/01/08(火) 04:21:10
(私はスポーツに詳しくないんだけどな……)
どうしたものか、とハルナンは思った。
エリポンの魔法とは即ちスポーツのこと。そのスポーツ特有の絶技を魔法のように見せているだけなのだが、
そのバリエーションが多彩すぎるゆえに、味方のハルナンでさえも全貌を掴めていなかった。
ましてや秘密にしていた必殺技ともなればなおさら何をしてくるのか分からない。
しかし、だからと言って指揮する立場を放棄する訳にも行かなかった。
(エリポンさんはアーリーを勇気づけるためにモモコに立ち向かおうとしている。
ということは、必殺技の"遅々不意不意(ちちぷいぷい)"とやらは十中八九攻撃型のはず。
だったら、相手の手の内を知るための駒として利用できるかしら?……)
ハルナンはエリポンの必殺技どうこうよりも、モモコの攻撃手段が気になっていた。
モモコは7つの暗器を使うことで有名であり、その全てを駆使されれば万に1つも勝ち目はなかったかもしれない。
ところが、先ほどモモコはカントリー4人に自身の暗器を一つずつ分け与えたとハッキリ口にしていた。
それによりハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンら新人剣士が苦戦を強いられることになるだろうが、
モモコの残りの暗器は単純計算すれば7マイナス4で3になる。
そして、そのうちの2つがさっきから使用している「磁石」と「糸」だとすれば、後は1つだけだ。
その1つさえ判明すれば戦略はぐっと立てやすくなる。
ハルナンはモモコに聞こえないくらいの音量で、近くのエリポンに問いかけた。
「エリポンさん、その必殺技って接近技ですか?」
「うん!相手目掛けて突っ込んじゃうよ〜」
「思った通りです。思う存分やっちゃってください!」
「おう!」
ハルナンは予測していた。
これまでモモコが磁石と糸しか使わなかったのは、距離が離れていたからであると。
エリポンの突進で無理矢理にでも接近すれば、もう1つの暗器を見せてくれると踏んだのだ。
894
:
名無し募集中。。。
:2019/01/08(火) 10:20:51
再開ありがとうございます。
ハルナン酷いwでもエリポンなら期待以上の活躍を見せてくれる・・・はず?
895
:
名無し募集中。。。
:2019/01/08(火) 19:34:22
つ、ついに再開
燃えて来たぜ
896
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/01/09(水) 02:42:32
「ねぇハルナン、マーチャンの出番まだぁ〜?」
「まだよマーチャン。今はイクタさんが反……いや、活躍するところを見ておきなさい」
ハルナンは"イクタさんが反撃されるのを見ておきなさい"と言いたいところだったが、
すぐに引っ込めて別の言葉を続けた。
ただでさえ自分のことをよく思っていないアーリーの前で、ネガティブな表現は使えないと判断したのだ。
だが、残る1つの暗器をマーチャンにしっかりと覚えてもらいたいというのも本音である。
モモコの攻撃方法は複雑かつ奇怪ゆえに当事者は何をされたのか分からないが、
ある程度距離をとれば知覚できるかもしれない。
エリポンが耐えられる間は、マーチャンには見ることに徹してもらいたい。
「ちょっといつまで引っ張るつもり?早くその魔法とやらを見せてほしいんだけど」
自分を無視して会話し続ける連合軍に対して、モモコがイラっとしたような口調で言い放った。
言われた相手がフクだったなら大慌てになっただろうが、
エリポンは自分のペースを崩すことなく、余裕の表情で返していく。
「ここでクイズ!エリの必殺技"遅々不意不意(ちちぷいぷい)"はどんな魔法でしょ〜か?」
「人をイラつかせる魔法?」
「ブブー!不正解!」
「たぶん合ってると思うけどね……」
「エリの魔法は、"時を操る"。」
「は?……」
エリポンはゆっくりと深呼吸をしたかと思えば、じっとモモコの方を見つめだす。
これにはモモコも唾を飲んだ。
言動のほとんどがハッタリだとは思いつつも、"時を操る"ことがどういうことなのか気になってしまう。
警戒レベルを極限まで高め、どの位置どの方角から攻撃されても磁石と糸をけしかける事が出来るように準備していく。
そうしてこのまま1秒、5秒、10秒、20秒と時が流れ続けた。
「って何もしないんかいっ!」
結局一歩も動こうとしないエリポンに対して、モモコは突っ込まざるを得なかった。
だが、こうしてモモコのペースを崩すことこそがエリポンの狙い。
相手の心が乱れ切った今こそが動き出す時だと確信する。
「GET SET, GO!」
897
:
名無し募集中。。。
:2019/01/10(木) 01:12:56
エリポンを捨て駒にするとは…流石にハルナンwでもマーを最大限活かすならこの方法が最適何だろうなぁ
でもエリポンはモモコ相手にするのは相性良さそうだから一矢報いそう
「GET SET, GO!」秋ツアータイトルか…今の変化の激しいハロプロで前作のように時事ネタをストーリーにするのは難しいだろうから、本筋に関係ないところで取り込んでいくって事かな?
898
:
名無し募集中。。。
:2019/01/10(木) 02:15:28
生きとったんかワレェ
899
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/01/10(木) 09:50:39
一応三部までの大枠は決めてしまっているので、時事ネタは入れられたら入れるという感じですね。
オマケ更新はその比率が特に多めになるかもです。
オマケ更新「滑舌」
ハルナン「それにしても武道館で戦えるなんて光栄ですよね。」
アイリ「あなたもDUDOKANに思い入れが?」
ハルナン「はい。今すぐにでも拳を挙げて”我が帝国剣士人生に一片の悔いなし!”って叫びたいくらいです。」
ハルナン「それ以外にも言ってみたいセリフが有りますしね……」
アイリ「そう言えばオカールもDUDOKANでどうしても言いたい名台詞が有るとか言ってたっけ。」
ハルナン「ははっ、案外同じセリフのことを言っているかもしれませんね。」
900
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/01/11(金) 08:50:17
「よーいドン」を意味する言葉を呟いたかと思えば、エリポンはモモコ目掛けて駆け出していった。
それはただのダッシュだと言うのに、ハルナンにはフク・アパトゥーマ帝王の”フク・ダッシュ”以上の速度と勢いに感じられる。
「速い!エリポンさんにこんな走行術が?……」
エリポンは運動神経抜群なうえにあの筋力量なので足が速いこと自体は不思議では無いのだが、
周囲の者の意識をここまで置き去りにするレベルでは無かったはずだ。
ハルナンだけでなく、マーチャンやアーリーもエリポンのスタート時の動きを捉えられておらず、
やっと知覚出来た頃には既にトップスピードに到達していたことに驚いている。
まるで本当に時を操ったかのようだ。
そんな中、ターゲットとされているモモコだけはなんだかつまらなさそうな顔をしていた。
(必殺技ってその程度?)
モモコはこの現象の理屈をおおよそ掴んでいた。
要するに、エリポンは動きに緩急をつけていたのだ。
完全なる静止から一気に最高速度まで上げることで体感速度には大きなギャップが生じる。
更には動かない時間を呆れさせるくらいに長くとることで集中力を低下させ、急に動いたエリポンに咄嗟に対応できなくさせる狙いもあった。
こうした工夫を積み重ねた結果、エリポンが神速の如きスピードを得たと誤認させたのだ。
(この子はスポーツを戦闘に取り入れていると聴いてる。
必殺技のモチーフはさしずめ徒競走っめとこかな?
確かにはじめはビックリしたけど、それじゃあ私は殺せないよ。)
モモコは糸を手繰り寄せ、その糸の先にある罠を起動させた。
それは見えないくらいに細い糸で構築された網。
エリポンとモモコの間に人間1人を包み込むほどの網を展開していく。
(このまま捕縛してあげる。速く走れば走るほど網にかかるまでの時間が短くなるだけだよ。)
901
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/01/16(水) 02:51:57
モモコの繰り出した糸はキメ細かくあるが、さすがに透明とまではいかない。
そのため、一旦落ち着いて、冷静な目で見れば目視は出来るはずなのだ。
しかし今のエリポンは相当の勢いをつけて走っている。
そんな状況では決して目視など出来やしない。モモコはそう確信していた。
ところが、魔法使いにはそのような常識など通用しなかった。
「分かる!」
エリポンが言葉を発したその瞬間、モモコの仕掛けた網はバッサリと切り捨てられた。
モーニング帝国で最も速い剣、打刀「一瞬」が火を吹いたのである。
彼女の鍛え抜かれた筋肉からなる振りの速さであれば、確かに、自身が罠にかかるより先に斬る事が可能だ。
しかし、そのためには対象となる網が見えていないといけないはず。
この状況でエリポンはどのようにして見ることが出来たというのか?
その答えが分からないモモコはほんの少しだけ心を乱してしまった。
そして、その僅か数秒が命取りとなる。
今もなお走行中のエリポンはすぐそこまで来ているのだ。
(しまった!接近されすぎた!
もう1回糸を出すか?……いや、同じように対処されるに違いない。
じゃあ磁石を投げつけて刀を重くする?……それもダメ。多少重くしたくらいじゃ止まらなさそう。
だったらこれしかないか……)
エリポンの斬撃が今まさに襲い掛かるその時、
モモコは自身の小指を打刀「一瞬」の刀身へと当てにかかった。
刀 vs 指という戦い。十中八九どころか、万に一つも指が勝つことはありえないだろうが、
あろうことか刀を握っていたエリポンの方が転倒してしまう。
「!?」
「はぁ……この場をしのいだのは良いけど、手の内を晒しちゃう形になっちゃったか……」
902
:
名無し募集中。。。
:2019/01/31(木) 00:21:59
>>899
鞘師復帰もオマケであるかな?って思ったけど小説の中では現在進行形だったw
>>901
かませ犬かと思ったエリポンが予想以上の健闘wあとはモモコどこまで食らいついていけるか?ってところか…ハルナンの予想を良い意味で裏切って欲しい
903
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/04/15(月) 11:19:03
(最後の暗器を使った!)
エリポンの刃がモモコの小指に負けたというのに、ハルナンは歓喜していた。
モモコの暗器を全て把握出来たことにより、チームでの勝率が上昇したと喜んでいるのだ。
「マーチャン!今の見た!?」
「うん……よく分からないけど、あの小指は危ない。」
「そうよ!小指なのよ!それさえ気をつければ勝ち筋は見えてくるの。」
ハルナンや新人剣士らは、この武道館に到着する前にベリーズに関する情報を共有していた。
その中でも特に有益だったのがアカネチンによる「モモコの暗器情報」だ。
アカネチン・クールトーンはかつてモモコとクマイチャンの決闘をその眼で見ており、
当時どのような暗器を使用していたのかハルナンに伝えていた。
7つ道具のうち4点をカントリーの後輩に託したと言うならば、残りは3点。
そしてその内訳が「磁石」「糸」、そして「小指に取り付けられた透明色の武具」であることが確定した。
それぞれは強力でも、ここまで分かれば戦いようは有る。
「マーチャン!アーリーちゃん!ここからは超接近戦にシフトよ!
小指にだけ気をつければ一方的に攻め込むことが出来るっ!!」
磁石と糸は中遠距離用。近づけばモモコが出すのは小指のみ。ハルナンはそう踏んだのだ。
だが、それをアイリは良しとしなかった。
「待って……モモコがその程度で攻略出来るとは思えない……
まだ何か隠しているかもしれないよ?……」
「8つ目の暗器が有ると言いたいんですか?」
「……それは無いと思う。あの子は限られた暗器だけで勝利することを誇りに思っているから。」
「だったら何の問題も無いじゃ無いですか。さぁマーチャン、アーリーちゃん行きましょう!エリポンさんのカタキを討つのよ!」
「……」
904
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/04/17(水) 08:40:54
ハルナンの指示と同時にマーチャンは走り出した。
待機命令にフラストレーションが溜まっていたので、やっとこの時が来たと喜んでいるようだ。
しかしモモコとは距離が少しばかり離れている。
「あのねぇ、そう易々と近づかせるワケないでしょ?」
モモコはエリポンを止めようとした時のように、糸を引っ張ることにより、とある仕掛けを作動させた。
それは目には見えないほど細い糸で組まれた網だ。
マーチャンの進行方向にセットすることで足止めを試みるが、
これはモモコには珍しく悪手だった。
「それ、もう覚えたよ。」
見えない網を知覚することは出来ないが、
同じようなシチュエーションならば先ほど見て覚えている。
学習能力の非常に高いマーチャンなので、すぐに対策をとることが可能だ。
「えいっ!!」
マーチャンは既に木刀に火をつけており、その木刀を前方に強く振ることで火の粉を飛ばしていく。
その火は自身の行動を阻害する網に燃え移り、一瞬にして燃えカスへと変えてしまう。
「ありゃ……糸だと相性最悪か……だったらこれならどう?」
ほんの少しだけ焦った顔を見せたモモコは、すぐに次の行動を取り始めた。
その行為は単純。超強力電磁石をマーチャンに投げるだけだった。
磁石の投球もカノンに散々やってみせたので、覚え済みのマーチャンは楽々回避してみせることだろう。
だが、マーチャンに出来るのはそこまでだ。
間髪入れずにひたすら投げ続けられれば、回避ばかりして前へと進むことが出来ない。
磁石を弾き飛ばそうにも、燃えかけの木刀を当てれば木刀の方が砕けてしまう。
となればマーチャンがモモコの元へ近づくのは不可能になるのだ。
確かに、マーチャン1人だけならそのような展開になっただろう。
「私が守ります!」
バシン!という音とともに磁石は地へと落ちていった。
そう。アーリー・ザマシランのトンファー捌きによってはたき落とされたのだ。
彼女が戦闘のモチベーションを取り戻し、持ち前のパワーが発揮されればこの程度は容易いのである。
「わ〜!アーリーちゃんすごーい!」
「いえいえ!さっきの炎も凄かったですよ〜!」
「じゃあ、2人で突撃しよっか!」
「はい!!」
糸はマーチャンに燃やされてしまう。
磁石はアーリーに落とされてしまう。
ここでモモコは大袈裟に頭を抱えて、分かりやすく困り始めた。
「ど、ど、どうしよう〜!?このままだと本当に接近されちゃうよ〜!」
明らかに人をおちょくっているような動作にもかかわらず、マーチャンとアーリー、そして指揮官のハルナンがおかしく思うことは無かった。
作戦が順調に行っていることに酔ってしまっているのかもしれない。
「予想通り!後は小指にだけ気をつけて!!」
905
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/04/19(金) 09:14:09
マーチャンとアーリーを邪魔するものはもう存在しない。
ゆえに、そこから2人がモモコの元へと近づくのはあっという間だった。
敵の息遣いも感じられるほどの距離。ここはもう木刀とトンファーの間合いだ。
ここまでこれたのはハルナンの作戦が上手くハマったのもあるが、
それ以上にエリポンの行動がアーリーを勇気付けたことが大きいだろう。
(私、食卓の騎士と戦える!!)
テンションが上がり切ったアーリーは、「この先ビシバシ行くぜ」と心で思っていた。
涙は当分封印、言い訳当分封印、後悔は絶対封印、
さ乱れて。
「せやぁーーーー!!」
左右に持ったトンファーでの乱打。
彼女のパワーからなる重い一撃が、上方向から五月雨のように降ってくるので、
低い位置にいるモモコは、単純な攻撃方法ながらも非常に捌きにくいと感じていた。
食卓の騎士は全ての能力値において現役世代を上回っている訳ではないのは、
以前、エリポンがアイリより力強いスイングをしてみせたことからも分かるだろう。
モモコが意外と筋肉質とは言え、単純な力比べならアーリーには敵わない。
(磁石で受け止めることも出来なくはないけど、逆にこっちの腕がイカれちゃいそうだわ……
となると今は全部避け切るしかないのよね。
ただ、厄介なのは……)
自分を慕ってくれるフク・アパトゥーマがよくやるようにバックステップでアーリーの五月雨から逃れたモモコは、
その場ですぐにしゃがむことで、右側から迫り来る木刀を避けてみせた。
ステップ先にマーチャンが仕掛けてくることを読んでいたのだ。
「あ!かわされちゃった!……でもそれも覚えたよ。」
(めんどくさっ!!)
このまま回避し続けるのにも限界がある。
出来ればアーリーだけでも潰しておきたい。そうすれば相当楽になるだろう。
そこでモモコは小指を使うことを決意した。
モモコの小指には、アンジュのムロタンが盾に使用しているものと同じ材質の武具が取り付けられており、
透明色であるため、注視しないと存在することすら知覚できない程だった。
アーリーが気持ち良く攻撃を仕掛けてきたところで小指を突き出し、
トンファーに当ててやれば攻撃の軌道をそらすことが出来る。
そうすればアーリーはバランスを崩し、転んでしまうことだろう。
エリポンのようにダッシュで向かってきている訳ではないので大転倒とはいかないだろうが、
復帰前に磁石を二、三ぶつければ苦痛により動きを止められる。
(ネタが割れている今、小指は多用できない……ここで確実に決めよう。)
906
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/04/23(火) 23:04:31
「待てーっ!!」
モモコの思惑通りにアーリーは追撃を仕掛けてきた。
トンファーによる振り下ろしの軌道をモモコは完全に捉えている。
そのため、後は小指をちょんと当ててやれば作戦成功だ。
それだけでトンファーは意図せぬ方向に逸らされ、アーリーは立ってられなくなることだろう。
しかし、モモコの策は失敗に終わった。
狙いに気づいた戦士がこの場に存在したのだ。
「させないっ!!」
「!」
モモコの左肩に強烈な蹴りが入った。
その蹴り技の主は、さっきまで倒れていたはずのエリポン・ノーリーダーだ。
激しい転倒によるダメージを負っていたものの、ギリギリのところで堪えて、アーリーのピンチを救ったのである。
モモコはポーカーフェイスを通すことで、エリポンの登場にも左肩への激痛にも動揺を見せなかったが、
突然のキックをお見舞いされたため、流石に体勢を維持出来ず転んでしまった。
「アーリーちゃん気を付けて!今、小指を使われるところやった!」
「エリポンさん!……はいっ!!」
怪我人とは言え、エリポンが復活したことは連合軍にとって大きなプラスだ。
これでエリポン、マーチャン、アーリーの3人がかりでモモコを追い詰めることが出来る。
「イヒヒヒヒっ!叩き放題だよっ!!」
「くっ……」
地面を滅多叩きにするマーチャンの攻撃を転がりながら回避するモモコだったが、
その動きからは段々と余裕が感じられなくなってきた。
それもそうだ。避けたところでエリポンとアーリーの追撃が迫ってくるのだから息をつく暇も無いのである。
そして、もう1名の追加によりモモコはますます避けられなくなる。
「みんな!私も協力するよ!!」
「「ハルナン!」」
指示を出すだけで持ち場を動こうとしなかったハルナンがここにきて参戦してきた。
身を危険に晒すことになるが、それよりも攻め手が4人になることがより有利になると判断したのだ。
彼女の扱うフランベルジュは波打つ刃を持ち、少しかすっただけで血を流させる。
エリポンの打刀、マーチャンの木刀、アーリーのトンファーらとのコラボにより、モモコが苦戦することは必至だろうとハルナンは考えていた。
しかし、当のモモコはそうは思っていなかったようだ。
(うん、今だ……今こそ好機。)
四方を囲まれたモモコは、自分からマーチャンの元へと飛びかかった。
そして、ROCKにエロティックに抱き寄せられるかの如く、身体をくるりと回転させることでマーチャンの打撃を回避し、
相手の懐へと潜り込んで見せたのである。
「え?え?なに?」
「良かったー。この動きは学習してなかったのね。
じゃあ、これも知らないよね?」
「!?」
モモコがピッタリくっついてきたかと思えば、次の瞬間、マーチャンは苦悶の表情で膝をついてしまった。
いつの間にやら腹から多量の血が流れ出ている。
誰がやったのか?モモコに決まっている。
どのような攻撃手段をとったのか?モモコのことだから暗器を使ったのだろう。
しかし、磁石と糸と小指だけでどうやってマーチャンにダメージを与えたというのか?
「は?……え?……」
ハルナンは現況の理解に苦しんでいた。
今までの材料だけでは真相に辿り着く事は難しい。
そうして狼狽えているハルナンを見て、エリポンとアーリーにまで動揺が伝播していく。
この場で冷静なのは、モモコただ1人。
「ハルナンって言ったっけ。あなた、大きな読み違いをしてるよ。」
「!?」
「その読み違いのせいで、あなた達はマーチャンという戦力を失うことになったの。」
そう言うとモモコはマーチャンのお腹を目掛けて、力強く磁石をぶん投げた。
至近距離から負傷箇所に石を投げられた経験のなかったマーチャンは、避けられずに直撃を受けて、悶絶してしまう。
「おかげで1番厄介な子を倒せたんだけどねっ!ハルナンありがとぉ〜!」
907
:
名無し募集中。。。
:2019/05/01(水) 09:45:04
更新来てた!さすがモモコ…クセモノ揃いのメンバーに対しても一枚も二枚も上手だわw
908
:
名無し募集中。。。
:2019/05/01(水) 23:54:49
この展開はまずいと考えたアイリは、足元の石を打ってモモコへと飛ばしていった。
しかし衰弱しきったアイリの攻撃が通用するはずもなく、軽々とキャッチされてしまう。
「邪魔しないでよ〜ここからが良いところなんだからさぁ。」
モモコはハルナンの方を向き、言葉を続けていった。
今から答え合わせが始まるのだ
「ねぇハルナン、あなたは私が嘘をついていたと思ってるでしょ?」
「……」
「でも残念。嘘なんて一言もついていないんだ。
"7つの暗器を持っている"、これは本当。
"カントリーの4人に1種類ずつ暗器を渡した"、これも本当。
全部がぜーんぶ真実なの。」
そうなると矛盾が生じてくる。
7から4を引いたら、モモコの手持ちは3個になるはず。
だが、モモコは確かに「超強力電磁石」「操り糸」「アクリル小指サック」の3点に加えて、
マーチャンにトドメをさしたもう1点の暗器を使用していた。
「数が合わないって思ったでしょ?ううん、ところがどっこい合っているの。
ハルナンにも分かるように、カントリーの子たちに渡した暗器の内訳を教えてあげるね。
リサちゃんにはビンタ強化金属を、
チサキちゃんには風壁発生器を、
マイちゃんには美脚シークレットブーツを、
そしてマナカちゃんには……超強力電磁石を貸してあげたのよ。」
「!!」
それを聞いてハルナンはハッとした。
"超強力電磁石"が、モモコの手持ちと、後輩へのプレゼントとで重複していたのだ。
石は単一の道具ではなく複数個存在している。
「計算の得意なハルナンはすぐに私の手持ちが3個だと思ったんでしょうね。
さんすうのお時間ならそれは大正解。拍手!パチパチ〜!
でもね、私たちの生きる世界じゃそれは不正解なんだ。
勝手な決めつけが誤算を生み、その誤算が油断に繋がって、味方のマーチャンを危険に晒したワケ。
指揮官として失格としか言いようが無いわね。」
「!……」
909
:
名無し募集中。。。
:2019/05/03(金) 00:09:00
見つけちゃった!!!!!!
マーサー王もライダーイクタも大好きでした
相変わらずに面白いですワク2しちゃいます><
連休中にどこまで追いつけるか分かりませんがお陰様で充実したGWが送れそうです
作者さんが今もヲタして執筆してくれている事に大感謝♪
&フクちゃんのアパトゥーマは元ネタどこから来てるのでしょうか、、?
超今更な亀レス感想してしまうかもしれませんがお許しくださいスミマセン;><
910
:
名無し募集中。。。
:2019/05/03(金) 02:24:05
前スレ最後に書いてあるよ
911
:
名無し募集中。。。
:2019/05/03(金) 11:50:12
アドバイスありがとうございます!
探してみたら初見で見つけられず深掘りするとネタバレしそうだったのと
読み進めると他にも元ネタ分からない名前が多数となってきたので
読み切るまでに解きながら踏ん張ってみることにしました;><
スレ汚してしまってゴメンナサイ
はるなん黒い…w
912
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/05/03(金) 17:12:38
ハルナンは気が遠くなるような感覚に陥った。
己の判断が誤った結果、自軍が不利になったことにショックを受けているのだ。
しかしいくらハルナンが名の知れた指揮官とは言え、作戦ミスはこれまで何度もあったはず。
だと言うのに、何故ここにきて言葉を失うほどに自信喪失してしまったのか。
それは、全責任をハルナンになすりつけるべく、モモコが意図的にコントロールしたところにあった。
「分かりやすい例としてマーチャンをあげたけど、他の子への指示もひどいものだったよね?
エリポンにはとっておきの必殺技を出させといて通用しなかったし、
アーリーもその場に立ちすくんじゃってるよ。何すれば良いのか分かってないんじゃない?」
全部が全部ハルナンのせいという訳ではないが、
モモコはその100%をハルナンの重荷にしてやろうと仕掛けたのである。
例えそれが事実と食い違っていたとしても、
「モモコが指摘して」「ハルナンが黙り込む」という構図さえ作ってしまえば、周りはそう受け取ってしまう。
こうなればハルナンの指揮官としての信頼度は地に堕ち、この後の戦略の幅は大きく制限されるはず。
モモコはそう考えていたし、本来であればそうなったことだろう。
しかし、エリポンはそれを許さなかった。
「ちょっとちょっと〜誰の必殺技が通用しないですって〜?」
「……なに?」
こんな状況で発言しだすエリポンに、モモコだけでなくハルナンもアーリーもアイリも注目せざるを得なかった。
空気を読まないにも程がある。
「通用しないもなにも、ご自慢の必殺技は失敗に終わったじゃない。豪快に転んでたでしょ。」
「あーそっかー、アレを失敗と思われちゃったのかー」
「何が言いたいの。」
「だって、さっきのは一打目やけん。」
少し離れたところにいたアイリは衝撃を受けた。
"一打目"という言葉を聞いて、エリポンの必殺技が、自身の必殺技「トゥー・カップ・ベクトル」と似た構造だと気づいたのだ。
(え?え?あの子の必殺技ってなんて名前だったっけ?……)
エリポンの必殺技の名前は「”遅々不意不意(ちちぷいぷい)”」。
その名前から速度に緩急をつけて相手の意表をつく技だと思い込まされていたが、
それだけではないのかもしれないと、アイリは考えを改め始める。
(必殺技を出す前に、エリポンは自身の技を「接近技」だとと言っていた。
それと、「相手目掛けて突っ込む」とも言っていた……
接近……"アプローチ"ってこと?……)
アイリやエリポンが好むゴルフにはいくつかの打ち方があり、
その中にアプローチと呼ばれるショットがある。
アプローチとはボールをカップに寄せる打ち方であり、まさに接近のための技と言っても良いだろう。
カップのすぐそばにまで接近(アプローチ)するだけでも十分凄いのだが、
エリポンはその程度では必殺技とは認めなかった。
(エリポンの必殺技名は"ちちぷいぷい"、
ちちぷいぷい……ちちぷいぷい、ちっぷい、チップイン……ええぇ〜?そういうこと〜?)
アイリが必殺技の全貌を理解しかけたところで、
エリポンがモモコ目掛けて打刀をビシッと突き付けた。
「エリの必殺技は絶対決まる。ハルナンの作戦は失敗じゃないってことを証明してあげるっちゃん。」
913
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/05/03(金) 17:19:02
すでに回答もありますが、
第一部のキャラ紹介は前スレ終盤にありますよ〜
ただ、そのキャラ紹介自体もネタバレが詰め込んであるので、
名前の由来だけで良ければ今からここに書いちゃおうと思います。
第二部のキャラも合わせて書いちゃいましょう。
914
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/05/03(金) 18:08:03
名前の由来だけ抽出してまとめました。
第二部初登場のキャラには★マークをつけています。
■モーニング帝国剣士フク・アパトゥーマ :団地妻
エリポン・ノーリーダー :空気読めない+リーダーではない+仮面ノリダー
サヤシ・カレサス :植物を枯れさす
カノン・トイ・レマーネ :トイレのモノマネ
ハルナン・シスター・ドラムホールド :いもうと+太鼓持ちアイドル
アユミン・トルベント・トランワライ :れいなの好きな弁当を先にとったエピソード+すべりキャラ
マーチャン・エコーチーム :ヤッホータイ
ハル・チェ・ドゥー :ハルーチェ+どぅー
オダ・プロジドリ :自撮りのプロ
ハーチン・キャストマスター :素人時代にツイキャスのキャス主
ノナカ・チェルシー・マキコマレル :チェル+巻き込まれる
マリア・ハムス・アルトイネ :ハー娘。+明日も嬉しいこと&楽しいこと、いっぱいあるといいね
アカネチン・クールトーン :クルトンが好き
■アンジュ王国の番長
アヤチョ・スティーヌ・シューティンカラー:捨て犬+シューティングスター+唐揚げを投げたエピソード
マロ・テスク:そのままマロテスク
カナナン・サイタチープ:埼玉は安いイメージと発言したエピソード
タケ・ガキダナー:親戚マイミのキャラ名+子供っぽい
リナプー・コワオールド:ブログで昭和時代の人の名前に「子」が多いと発言
メイ・オールウェイズ・コーダー:スマイレージはいつもこうだ
★ムロタン・クロコ・コロコ:ワニ好き+むろたんコロコロ
★マホ・タタン:ハロコンでひな壇から立たずに応援したエピソード
★リカコ・シッツレイ:写真集発売インタビューでの「お先に失礼します。」
■果実の国のK(Y)AST
ユカニャ・アザート・コマテンテ:あざとい+困り顔+石川県の方言「〜てんて」
トモ・フェアリークォーツ:フェアリーズのファン+ローズクォーツ
サユキ・サルベ:さるべぇ
カリン・ダンソラブ・シャーミン:男装好き+wonderful worldの時の髪型が社民党党首っぽい
アーリー・ザマシラン:ハーモニーホール座間での公演に遅刻
■カントリーガールズ
★リサ・ロードリソース:道資源を道重と聞き間違えたエピソード
★マナカ・ビッグハッピー:大福
★チサキ・ココロコ・レッドミミー:元CoCoRo学園+元ロコドル+赤耳
★マイ・セロリサラサ・オゼキング:セロリ嫌い+シチューサラサラだね+ひなフェスソロのソロ名オゼキング
■謎の集団 ※全てコードネーム
★ドグラ:ドグラマグラを読破したエピソード
★ロッカー:ジップロッカー
★マジメ:真面目とよく言われる(言われてた)
★クール:クールビューティー
★タイサ:大佐
★リュック:ハロステ四字熟語のコーナーで大きいリュックを背負ってた
★ウララ:舞台Week End Survivorの役名+ブログの裏ウララ+ハルウララ(後付け)
★ガール:おはガール
915
:
名無し募集中。。。
:2019/05/03(金) 19:59:40
由来の概要ありがとうございます!
現在アンジュJ=J+ねちんまでしか登場してないので気付けなかった子だけ答え合わせたのですが
おかげで胸のつかえが取れました♪m(_ _)m
(未だ登場してない子は楽しみにとっておくとしますw&先にはこぶしも出てくるようで嬉しい!><)
今の心境…りんc怖すぎ!w
916
:
名無し募集中。。。
:2019/05/04(土) 02:29:14
久しぶり名前の由来みると改めてひどいなw(良い意味で)謎の軍団は当時と今とでは本名変わっていそう…てかちゃんと出てくるのか心配苦笑
917
:
名無し募集中。。。
:2019/05/04(土) 14:43:18
こぶしは未だ正式に登場している訳ではないんですね…;ジェケニンかな・・・><w
「勝ったよトモ!トモは負けなかったんだ!」鳥肌(りんcらしいサイコっぷりが怖すぎてw)
「食卓の騎士様はなぁ!〜」鳥肌(反旗したマロの信念とその理由が格好良すぎて!)
「!?」x6「だって猿が喋ってるんだもん……」「殺す。」爆笑(夜中だったのに声出して笑っちゃいましたw)
「カナナンが、タケが、メイが必死だから。それだけ。」彼女らしさに感動し思わずに涙(マジw)
できるだけ亀レスは避けるつもりですが台詞が凄すぎたココだけはどうしても感想書きたくて…m(_ _)m
本作中ではりなぷ〜推しになりそうです…w凄いなぁ、、、TT
918
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/05/24(金) 08:42:10
必殺技は非常に強力な攻撃手段ではあるが、当然、一朝一夕で身につくようなものではない。
エリポンの同期の中ではフク・アパトゥーマとサヤシ・カレサスの2名が幼少のころから戦闘訓練を積んできていたが、
その二人でさえ必殺技を習得できたのはつい最近の話だ。
それでは、フクやサヤシより戦士として戦ってきた日が浅いエリポンは必殺技を使えないのか?
いや、決してそんなことはない。
過去に熱中したもの、夢中になったものが有れば、それが今現在のエリポンを作り上げる基礎となっているはず。
自分を自分たらしめるアイデンティティが何物なのか気づくことが出来れば、必殺技へと昇華することが出来るのだ。
(エリにとってはそれが"ゴルフ"!!ゴルフに必死になった経験ならフクにもサヤシにもカノンちゃんにも負けない!)
エリポンはゴルフに誇りを感じているが、"ゴルフが上手い"とはいったいどういう状態を指すのだろうか。
例えば超パワーの力自慢がゴルフを始めたら試合で活躍できるだろうか?
あるいは類稀なる集中力の持ち主がクラブを握ったら優れたプレーを連発できるだろうか?
どちらのケースも、1ホールか2ホールくらいならプロを上回ることも有り得るかもしれない。
しかし18ホール回ってトータルで勝利することはまず無いと言って良いだろう。
プロは試合の流れを上手く組み立てられるという理由もあるが、
それ以上に環境のコンディションを読むことが出来るのが大きい。
芝の状態、天候、気温……これらの要素が全て一致することなんてことは殆どあり得ない。
どれか1つでも条件が異なっていれば、例え同じ打ち方をしたとしてもボールは狙い通りに飛んでくれないのである。
コンディションを正確に把握し、その状況に適したショットを打つことが非常に重要。
そして、そのコンディションの中でも最も重視すべき要素が”風”と言えるだろう。
919
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/05/24(金) 08:43:47
「今ならエリの必殺技は決まる!」
エリポンは両手で握った打刀を振り下ろし、足元の石をゴルフボールみたいに飛ばそうとした。
しかしその行動はモモコに読まれている。
石の1つも当てられたくなかったモモコは、糸を引っ張ることで前方に網を素早く設置した。
細かな糸で織られた網は無色に近く、常人にはまず視認することは出来ない。
この一瞬で網によるガードに気づくことなど到底不可能だろう。
だが、それはエリポンが目だけに頼っていた場合の話だ。
エリポンには長年培ってきた”風を読む”力が備わっている。
いや、ここは”空気を読む”と言い換えるのがより正しいかもしれない。
網が起こした空気の微細な動きを感知し、モモコの防御行動を理解したのである。
(エリは空気が読める!!これくらいヘッチャラやけん!!)
エリポンは腕の筋肉に力を入れて、通常の5割増しのパワーで石を打ち込んだ。
石はエリポンの期待に応えるかのように薄い網をぶち破り、
そのままの勢いでモモコの額へと衝突していく。
「!?」
はじめから大きな力で打とうとすれば、それに連動して殺気も強まるため、怪しんだモモコに回避されていたかもしれない。
エリポンは空気を的確に読み取り、網を破るギリギリの力だけをショットに込めたことで、
モモコの裏をかいて流血させることに成功したのである。
見事なアプローチだったと言えるだろう。
「ハルナン見てた〜?ハルナンの指示通り、必殺技でモモコをギャフンと言わせたけんね。」
「はい!見てました!エリポンさん流石です!!」
この時のハルナンの口から出た賛辞は、嘘偽りの無い本心だった。
作戦ミスをモモコに詰められて落ち込んでいたところにエリポンが必殺技を決めてくれたので、
ハルナンは救世主に救われたかのような思いになったのだ。
それを見て面白く思わないのはモモコだ。
「ちょっとちょっとちょっと!何を勝った気でいるの!?
石を額にぶつけられただけなんだけど!?まだまだ全然ピンピンしてるんだけど!?」
「え?結構ヤバそうに見えるっちゃん」
「どこが!?」
「ほら、そんなに頭に血が昇ると余計に大怪我に見えるけんね。」
「!!」
頭部の皮膚は血流が良いため、ほんの少し傷ついただけで血が止めどなく流れていく。
血液はやがてモモコの右目に入り込み、視界の半分が奪われることになる。
冷静さが売りのモモコもこうなれば少なからず動揺してしまう。
ましてや、完全なる格下と思っていたエリポンにここまでコケにされたのだから、落ち着こうにも落ち着くことができない。
それを見てアイリは感心する。
(本人も気づいてないと思うけど、あの必殺技の本質は”空気を読む”ことじゃない、”空気を変える”ところにあるんだ!
彼女の行動が味方を勇気付け、相手を取り乱させる……まるで魔法みたいに……!)
1vs1の勝負ならエリポンは脅威にはなり得ない。
だが、複数人のチーム戦であれば状況は大きく変わってくる。モモコが苦しんでいるのがその証拠だ。
この結果を見てアイリはクスッと笑い出した。
チーム河童の人選が正しかったことを確信したのだ。
(モモコを倒すには正攻法じゃダメ。
あっと驚くような、環境をぶっ壊すような破天荒さを持ち合わせないとモモコには勝利できない。
エリポンとマーチャン、そしてアーリーの3人は期待通りの仕事ぶりを見せてくれたんだね。
ただ一人だけ期待ハズレに終わってしまったけど、勝機はまだ有る!)
アイリの想定はおおよそ的中していた。
しかし、一点だけが事実と異なっている。
一人だけ期待ハズレと言っているが、エリポンはそうとは全く思っていなかったのだ。
「ハルナン。」
「!」
エリポンは小声でハルナンの名を呼ぶと、モモコの死角から小石を刀で打ち飛ばした。
そして、その先にある身動きの取れない鎧にコツンと当てていったのである。
「追い討ちをかけるなら今だよ……ハルナンなら活かせるよね?」
「はい。もちろん。」
920
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/05/24(金) 08:49:25
>>916
フジー・ドンのような本名登場済みのキャラ以外は変わってるものも有りますねw
そして登場までにまた変わっちゃうかも……
>>917
その辺りのセリフは私も好きだったので嬉しいですね。
マロのキャラは当初から決めてましたが、リナプーは書いてるうちにこうなったような……
921
:
名無し募集中。。。
:2019/05/24(金) 13:00:51
>>919
『空気を変える』…コンサートだと別の意味で空気変えてるけどw
期待はずれのハルナンがどう挽回するのか楽しみ
>>920
当時と状況が違うからなぁ…例の件ネタにするととんでもない名前になりそうw
前作のメグとか後で意味知ってビックリw
922
:
名無し募集中。。。
:2019/05/25(土) 12:26:18
アカネチンのやったーご飯だ-とマリアちゃんの子供口調が可愛くて思わず推し変しそうになったのですが
食卓の騎士相手でも対等に話すりなぷーが面白く何とか踏みとどまれましたw
あのキャラは漫画家さんがよく言うキャラが勝手に動いたってやつだったんですね><
現在きっかの特訓を受けてる最中です大分現行に追いつけるまでもう三歩!
923
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/13(木) 11:12:36
本編を進めたいところでは有りますが、ちょっと方針を変えてオマケ相当の話を書こうと思います。
期間は6/13〜6/19の一週間を考えていて、
時系列で言えば、二部と三部の間の話になります。
二部の後の話なので人間関係が微妙に異なっていることが有りますが、そのうち分かることになると思います。
オマケのタイトルはタイトルは「カントリーのこれから」です。
勝手な路線変更で申し訳御座いませんが1週間だけお付き合いください。
924
:
名無し募集中。。。
:2019/06/13(木) 12:26:31
今日から!?楽しみに待ってます!
カントリーかぁ。。。二部のあとってことは前回のおまけにもつながってくるのかな?
ついでにアンジュやこれから発表される果実・帝国の新人や二人の王との別れも読んでみたいなぁ
925
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/13(木) 12:43:09
「果実の国出身のヤナミン・ギーガグ・オトギヒメです。以降お見知ぎおきを。」
「アンジュ王国のフナッキ・カツメイトや!世話になるんでよろしゅう!」
モモコが新たに連れてきたヤナミン・リーガル・オトギヒメとフナッキ・カツメイトの挨拶を、先輩たちはポカンとした顔で聞いていた。
カントリーの新人がどんな人物かと思いきや、あまりに子供すぎて驚いたのだ。
チサキはその感想をうっかり口に出してしまう。
「こ、子供……」
「はぁ〜?あんただって子供やろが!」
「ひぃ!この子怖い!」
フナッキがガラ悪くガンをトばしてきたのでチサキは完全にビビってしまった。
身長は小さいながらもドスのきいた声をしているので、なかなかに迫力があるのである。
そんなチサキを庇うようにマイが立ちはだかる。
「マイちゃん!」
「チぃはこう見えてマイより2歳も年上なんだよ。見えないけど。」
「マイちゃん……あまりフォローになってないよ……」
「それに君たち2人の方が子供なのは事実だよね。胸だってペッタンコじゃん。マイのセクシーさには遠く及ばない。」
「今はペッタンコやけど胸くらいすぐに大きくさせたるわ!」
「ふふ、どうだか。」
顔を合わせるなりギャーギャー言いだした子供たちを見てモモコはため息をついた。
そんなモモコに対して、新人のヤナミンが質問を投げかける。
「あの〜モモち先輩。カントギーは私とフナッキを含めて7人だとお聞きしていたのですが……」
「あぁマナカちゃんがいないのよ。あの子は修行中。そうよねリサちゃん。」
「ええ。今朝から5,6時間は訓練し続けていますね。」
「ごどく時間も!」
「マナカちゃんはとある一戦以降、人が変わっちゃってね。強くなりたい一心でトレーニングに没頭してるの。」
「失礼ですが……その一戦で敗北を?……」
「ううん。勝負には勝ったのよ。ただ自分で自分を許せないとかで……」
モモコが説明を続けている最中にフナッキこ怒鳴り声が聞こえてくる。
「こうなったら力でねじ伏せたるわ!奥歯ガタガタ言わせたる!」
「後悔しても知らないよ。こっちこそ先輩の力を見せてあげるんだから。」
興奮するフナッキとマイを見て慌てて止めようとするリサだったが、
モモコは面白がりながら場を支配した。
「いいじゃない!喧嘩しなさい喧嘩!」
「ちょっと!モモち先輩!」
「せっかくだから先輩と後輩のどっちが強いのかハッキリさせちゃいなさい!
チサキ&マイのペアと、ヤナミン&フナッキのペアでタッグマッチよ!」
「「え〜!」」
「「やってやる!」」
926
:
名無し募集中。。。
:2019/06/13(木) 20:15:50
やなふなキターーーー!!!!!
未だロスが醒めやらず彼女の動画を日々見返してしまってる状況なので
由来一覧に含まれていなかったヤナちゃんが登場した時はまた会えたと本当に嬉しかったです><
ごどく時間ヤバイw
&凸凹な歯車が噛み合うとヤバイ元サブリーダー図も遂にその本領を発揮してきそうで胸熱!
自分の中で話中のエリポンが遂にえりぽんに育った瞬間でした
#えりぽんかっこいい!
927
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/14(金) 12:32:18
「お先にいくよ!」
チサキが体勢を整えるよりも先に、マイがダッシュで飛び出した。
兎が如き俊敏さで狙うは小生意気ガールなフナッキだ。
強烈なパンチを腹にお見舞いして黙らせてやろうと思ったのだ。
事実、フナッキは肉弾戦が得意ではなかったので、マイの攻撃が当たればその通りになっただろう。
しかしヤナミンがそれを許さなかった。
「フナちゃん!危ないわ!」
フナッキよりも更に戦闘向きでは無さそうな風貌のヤナミンが間に入ってきたので、マイは不思議に思う。
しかしモモコが連れてきた以上、どんなに可憐な少女であれ、相手が戦士であることは間違いない。
そう判断したマイは自身の勢いを少しも緩めようとはしなかった。
その鬼気迫る迫力にヤナミンは一瞬たじろぐが、決して恐れたりはしない。
彼女には心強い味方が6匹もついているのだ。
「よし!君に決めた!」
ヤナミンの腰周りには6つのカプセルらしきものが取り付けられている。
そのカプセルを1つ手に取ってはすぐさま開き、
中に収納されていた味方を外に解放していく。
そして、マイの繰り出す渾身のパンチにぶつけていったのだ。
「い……痛い!?」
ヤナミンを狙ったはずの拳が何やら硬くて小さいものに当たったので、マイは激痛を感じることになった。
それもそのはず。
マイのパンチは、小柄な亀の甲羅に衝突していたのである。
「亀!?」
亀を操る姿を見て、マイだけでなくリサやチサキも驚いた。
「亀……つまり、ヤナミンは爬虫類を操る戦士という事!?」
リサの予想は間違ってはいない。だが、それだけではまだ足りない。
先輩たちが自分の能力を見誤ってくれたので、ヤナミンはクスリとする。
「うふふ、亀がいたかはって爬虫類使いとか決めつけちゃってたら、時代にナントカですよ?」
このヤナミンフィーバーっぷりを1番面白く無さそうな顔で見てるのは、同じ新人のフナッキだった。
「別に守ってくれなんて頼んでへんけど。ていうかあの程度の攻撃、全然防げたし。」
「まぁ〜、フナちゃんったら素直じゃないのね。可愛い。」
「ガキ扱いすんなや!!」
イライラが重なるフナッキがストレスを解消する方法は1つしかなかった。
それは自分が活躍する事だ。
フナッキは肩にかけた紐の先にある緑色の箱のフタを開けては、チサキを指差した。
「よう分からんヤナミンと違ってこっちの武器は単純明快やで……
私は虫を操る戦士なんや!行け”ミンミン”!!
ミンミキミキミキミキミキミキミキ、ジャーン!」
「え?」
フナッキがそう叫んだ瞬間、箱の中にいた十数匹のセミが一気に飛び出し、チサキの顔面に張り付いていった。
そしてそれだけじゃない。五月蝿い鳴き声に呼ばれた他のセミ達までもがどこかからやってきて、チサキに群がっていく。
「ひーーーーーーー!!」
こんな状況でまともに立っていられる者なんてそうそういるはずもない。
チサキはショックのあまり我を見失ってしまう。
可愛い顔をしておぞましい戦法を取るフナッキを見て、リサ・ロードリソースは戦慄した。
「気持ち悪い虫を女の子に集中させるなんてむごすぎるわ!どうしたらそんな非人道的な戦法を思いつくの!」
「……」
この時のモモコは、リサに対して何か言いたげな顔をしていた。
928
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/14(金) 12:38:29
>>924
はい。このスレのカントリーのオマケとリンクしてますね。
現実の流れが速いので、ヤナフナ登場が三部になると遅すぎるため今回のような形をとりました。
今日や明日に発表される新メンバーは……やはり診断テストで活躍した人が選ばれるのでしょうか。
>>926
正式に二部が終わった時にキャラクター紹介を更新しますね。
その時にはヤナミンとフナッキも入っていると思います。
929
:
名無し募集中。。。
:2019/06/14(金) 18:17:11
よこやんも蝉を操るのか
930
:
名無し募集中。。。
:2019/06/14(金) 21:00:38
思ったけどフナッキの戦法って季節によって出力が変わっちゃいそうですねw
ヤナミンボールは爬虫類でなかったら名前に由来してるのかな…
931
:
名無し募集中。。。
:2019/06/15(土) 07:01:16
>亀がいたかはって爬虫類使いとか決めつけちゃってたら、時代にナントカですよ?
さすが果実の国出身w能力はポ○モンだね
フナッキはミンミンロックか・・・夏以外はどうするんだろ?
おまゆう?>リサ
932
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/17(月) 03:23:05
「うわっ、チぃ大丈夫かな……」
セミに囲まれたチサキを見て焦るマイだったが、その余所見が命取り。
彼女に相対していたヤナミンは、一瞬の隙をついては亀をカプセルに戻し、
そして新たな味方をカプセルから解き放っていく。
「あれは!」
死角ゆえにマイには認識できなかったようだが、外野のリサにはハッキリと見えていた。
ヤナミンは亀の次に蜘蛛を出現させたのである。
虫を操るという点はフナッキと同じ、しかしヤナミンは既に亀も操っている。
「ヤナミンの操る生物は種族にとらわれない?……」
「その通りよリサちゃん。腰につけた6つのカプセルには違った種類の生き物が入っているんだってさ。」
リサ・ロードリソースは両生類を、
マナカ・ビッグハッピーは鳥類を、
チサキ・ココロコ・レッドミミーは魚類を、
マイ・セロリサラサ・オゼキングは哺乳類(自分)を武器としていた。
爬虫類だけは事情があって欠番になっているが、
フナッキ・カツメイトも昆虫類「ミンミン」を操るように、それぞれが違った種別の生物となっている。
そんな中、ヤナミン・リーガル・オトギヒメだけは例外的に、上にあげた6種類を全て使役することが出来るのだ。
"カプセルに収納可能な小動物でないといけない"、"自力で捕獲しなくてはならない"、"愛情を持って育てなくてはならない"、
"一度に6匹までしか連れていくことはできない"、"2匹以上同時に戦わせることは出来ない"……といったマイルールは存在するが、
その制限さえ満たせばヤナミンは種族の垣根を超えてしまう。
ヤナミンはそんなモンスター達を収納可能な己の武器を、カプセル「ポケット」と呼んでいた。
「マイさん、チサキさんの方を見てて良いのですか?」
「ハッ!」
声をかけられたマイは、ヤナミンの方を振り向くなり反射的にパンチを繰り出していた。
さっき邪魔をした亀がいなくなった事に気づいて、もうガードされることは無いと考えたのだ。
だが、ヤナミンはもう既に「蜘蛛の糸」という罠を張り終えている。
訓練された亀の甲羅が普通の亀の甲羅よりも堅かったように、
訓練された蜘蛛の糸は普通の蜘蛛の糸よりも太く、切れにくくなっていた。
足が糸に絡まったマイはその場で転倒し、おでこを地面に強くぶつけてしまう。
「……!!」
「急に攻撃だなんて怖い事しないでください……わたくし、"逆に"お返ししたくなっちゃいますわ。」
ヤナミンの戦闘スタイルを理解したリサはゾッとした。
要するにヤナミンはカウンターを得意としているのだ。
襲い来る攻撃を瞬時に見極め、亀の甲羅や蜘蛛の糸などを用いることにより、
自分は全くの無傷のまま相手にだけダメージを負わせることに成功している。
「そして何より恐ろしいのが、その悪質な戦法がモモち先輩に酷似しているということ!」
「リサちゃん?」
933
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/17(月) 03:30:09
ヤナミンのカプセル「ポケット」は言わば暗器のようなもの。
モモコの暗器7つ道具に対して、ヤナミンのカプセルは6つという違いはあるが、
手の内を隠しつつ、ここぞという時に使用しては、相手に何もさせない様はまさにそっくりだ。
ヤナミンはカントリー加入前からモモコのことを尊敬しており、
記録で読んだ戦闘スタイルを自身のものに取り入れたため、このようになったのである。
しかしそうなると直情的なマイには分が悪いなんてもんではない。
このままムキになったらドツボにハマってしまうのではないかとリサは心配したが、
モモコは最悪の事態には陥らないのではないかと予測していた。
「リサちゃん、"女子三日会わざれば刮目して見よ"っていうでしょ?マイちゃんだってあれで成長しているのよ。」
「あっ……」
マイはゆっくりと起き上がるなり深呼吸をし、ヤナミンの顔をじっと見つめだした。
「……うん。よく分かった。」
「何がですか?」
「今のマイは君には勝てない。悔しいけど相性が悪すぎる。」
「まぁ!……勝負を諦めたのですか?」
「諦める?そんなことしないよ……君を倒すのはマイじゃないってだけ。」
そう言い残すなりマイはチサキの方へと駆けていった。
"自分ではヤナミンを倒せないこと"、"チサキならヤナミンを倒せる可能性があること"、
決してムキにならずに、その2点を冷静に判断したのだ。
正直言って敗北を認めるのは身体が裂けてしまいそうなくらいに悔しいが、
アンジュの番長や、果実の国のKAST達、そしてモーニング帝国のマリアとの戦いを経て、
自分が最強の存在では無いことを自覚してからは、目をそむけたくなるような事実もしっかりと受け止められるようになったのだ。
「チぃ!今助けるからね!!」
マイはチサキに纏わりつくセミを掴んでは投げ、掴んでは投げていった。
高い身体能力からなる手捌きはあっという間にセミを散らしてしまい、チサキを解放することに成功する。
自分がセミに出す指示より早く追っ払うマイを見て、フナッキは焦り始めてきた。
「ひとのセミちゃん達に何すんねん!信じられんわほんま!
で、でもまぁええわ。そのチサキって人は見るからに弱そうやから脅威にならなさそうやし、助けるだけ無駄ってもんやろ。」
「そうかな?今のチぃ、結構怒ってると思うけどね。」
ムキになりがちだったマイが成長してクールになったように、
チサキは過去の経験から、怒りの感情を露にするようになった。
もう大人しいだけの彼女はもういない。
ちょっと怒りっぽくなったのが玉に瑕だが、闘争心は以前の数倍以上に跳ね上がっている。
「もうっ!!!!!本当にあったまきた!!!!チぃがやるんだよ!!!!」
チサキには魚を操る以外にも、手のひらに集めた水を高圧の水鉄砲にして飛ばす特技がある。
これまで水の代わりに自身の汗や血液を飛ばしたことがあったが、
今回はそれとはまた異なった液体を噴出させようとしていた。
その液体の正体に気づいたフナッキとヤナミンは恐れおののいていく。
「ま、待て、ちょっと待てや、その手の中の液体はまさかセミのおしっ……」
「本当に最悪!!!!!顔ベトベトだしなんか臭いし!!!!全部そっくりお返しするからね!!!!」
「チサキさん落ち着いてください!そんなに怒ぐと可愛いお顔が台無しですよ?」
「うっさい!!!あんた達チぃのこと舐めてるんでしょ!!!!」
「「舐めないぞっ?」」
「絶対舐めてる!!!!!!!!」
怒り狂ったチサキは液体を見境なく噴出させていった。
934
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/17(月) 03:33:48
ヨコヤンもセミを扱いそうではありますが、一応他の武器を持たせていますw
フナッキの武器が季節でどうなるかは……だいぶ先に明らかになるかもしれませんねw
ヤナミンの武器はお察しの通りポケモンです。
ポケモンのモチーフになった小動物ならなんでもアリにしようとしています。
935
:
名無し募集中。。。
:2019/06/17(月) 13:18:34
リサちゃん心の言葉が声に出てるw
しかしこうやって見るとカントリーってほんと名言だらけですね
チィちゃん悪霊に憑かれちゃったから今から除霊だ><w
936
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/17(月) 17:43:21
長いことカントリーにスポットが当たってなかったので、ネタが溜まってましたね。
そう言えば誤記が有りました……正しくは以下です。
「「舐めないぞっ?」」
↓
「「舐めてないぞっ?」」
937
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/18(火) 09:07:17
ヤナミンとフナッキはワーキャー言いながらチサキの水?鉄砲から逃げていった。
2人の能力ならばよりスマートに回避できるはずなのだが、
チサキの放出する液体に何が何でも当たりたく無いと思うあまり、大きく取り乱してしまっている。
「もうっ!!当たらないなぁ!」
「チぃ、その攻撃も良いと思うけど、マイはやっぱりお魚を使うチぃが見たいな。」
マイはそう言うと、チサキの前に大きな水槽を置いていった。
この水槽の中では太刀魚が泳いでおり、ハーチン戦以降にチサキが習得した新たな特技を再現できるようになっている。
しかし成功率はあまり高くなく、五分といったところ。
「で、でも……」
「今、あの子達は混乱してるし、走り回って疲れてる。絶対に当たるよ。
それにもしもセミがチぃを襲ってきたらマイが絶対に守るから。」
「なんやと!?」
聞き捨てならないセリフに怒ったフナッキは、全てのセミをチサキとマイの方へと飛ばしていった。
セミは見た目が怖いだけでなく、騒々しくもあるため、相手の集中力を著しく奪うことだって出来る。
そんなセミが大勢集まったのだから普通なら耳を塞ぎたくなるものだが、
マイに勇気付けられて集中を高めたチサキは、静かに水槽に自身の手を入れていった。
水の中で泳ぐ太刀魚と対話をしているのだ。
「何をワケの分からんことをしてんのや!今まさにセミが来とるっちゅーのに!」
「分かってないなぁ……チぃの刃は凄いんだよ。マイが保証する。」
「刃?……刃物の類をお持ちのようには見えないのですが……」
太刀魚との対話を終えたチサキは静かに前の方を見た。
狙いは親友のマイを苦しめたヤナミンだ。
何やらセミがワラワラと飛んでいて鬱陶しいが関係ない。
そいつらごと斬ってやろうとチサキは決意した。
「邪魔しないで Here We Go!」
「は?」「え?」
チサキがそう言った瞬間、太刀魚が水槽から飛び出していった。
その勢いとスピードは凄まじく一瞬にして直線上にいるセミ達を散らしていく。
そして離れた場所にいるヤナミンの元へとあっという間に到達してしまう。
(まずい!防がないと!)
ヤナミンはいつでもカウンターを出せるように常に身構えている。
チサキが怪しい行動を開始した時点で蜘蛛をカプセルに戻しており、すぐに次の一手を出せるように備えていたのだ。
超スピードで射出されるチサキの”刃”を避けることなんて今更出来ない。ならば受け止めるのみ。
ヤナミンは亀をもう一度出して、真正面からガードすることにした。
しかし、ハーチンと死闘を繰り広げたチサキの思いは甲羅の硬さを超えていた。
“斬撃”自体は亀で防ぐことが出来たが、そらによって生じる衝撃までは消すことが出来ず、
ヤナミンは後方に倒れて尻もちをついてしまう。
「痛いっ!……わたくしが戦闘で怪我をするなんて……」
ヤナミンも、フナッキも、もはや先輩を舐めてなんていなかった。
少しでも気を緩めたら敗北してしまう……そのように考えを改めた。
そんな中、ひとりの女性が戦場に乱入してくる。
「訓練終わり〜お腹すいちゃったわ〜。
ってアラ?……みんな何やってるの?……」
938
:
名無し募集中。。。
:2019/06/18(火) 13:53:25
> ハーチンと死闘を繰り広げたチサキの思い
読んでた当時は氷と水で相手が決まったのかな?程度に思っていたけど、その後帝国でハーチンとチサキが無二の友となることを考えると胸が熱くなる
939
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/18(火) 20:52:24
登場したのは長時間の訓練を終えたマナカ・ビッグハッピーだった。
初お披露目の新人2人が先輩たちとタッグマッチをしていたと聞くと、興味を持ち始めた。
「へぇ〜そうなんだ〜。じゃあ私はチぃたんとマイちゃんに加勢しようかな。」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
突然の参戦発言を聞いたモモコは頭を抱え出した。
非常に困ったような顔をしながらも、渋々マナカの要望を承認する。
「う〜〜〜〜〜〜〜ん、まぁ、いいかな?
あんまりやりすぎるんじゃないよ?」
「うふふ。流石モモち先輩、話が分かりますねぇ。」
ルール上不利になる新人2人よりも、チサキやマイ、そしてリサの方が焦ったような顔をしている事にヤナミンは気づいていた。
何かとんでもない事が起きてしまいそうな気がしてならない。
「ねぇフナッキ……ここは慎重にいった方が……」
「そんな暇あるかい!あのマナカって人が疲れている今がチャンスやろが!」
訓練後で大汗をかいているマナカをターゲットとしたフナッキは、全てのセミを向かわせた。
しかしマナカは少しも心乱される事なく、愛鳥たちに指示を出していく。
「ねぇみんなもお腹空いたよね? ご飯の時間よ〜!」
そこからの光景は惨いものだった。
1000匹以上のカラスが一斉に現れては、フナッキの操るセミ達をバリバリと喰い散らかしてしまったのだ。
「あ……あ……」
セミの命はとても儚い。
“子供やカラスにゃ狙われる”と歌詞にあるように鳥が天敵であることは把握していたが、
こうも一瞬で全滅してしまうことにフナッキはショックを隠せなかった。
「ごちそうさまでした〜。カラスちゃん達もとっても喜んでるよっ!
あれ?心折れちゃったのかな?じゃあ次はあなたかな……」
指名されたヤナミンは小動物のように小刻みに震えていたが、応戦の意思は失われていなかった。
カプセルから珍妙なピンク色の生物を出しては、鳥たちに見せていく。
この生き物は両生類のウーパールーパー。
小さな虫やら小魚やらを餌とするが、場合によっては鶏肉までも食べてしまう生き物だ。
そして、戦闘用に訓練されたヤナミンのウーパールーパーはその気になれば生きた鳥さえも捕食する事が出来る。
通常より知能の高いマナカのカラス達もそれを感じ取ったようで、怯えて攻めあぐねていた。
「見た目は可愛いのに強かだよねぇ。」
「わたくしに言ってますか?ウーパーちゃんに言ってますか?」
「うーん……どっちかと言えば……”マナカ”かな。」
マナカは鳥に頼らず単身でヤナミンの元へと走っていった。
本人が直々に来るとは思わなかったのでヤナミンは驚いたが、
ウーパーと亀をスイッチする準備だけは怠らなかった。
パンチやキックを繰り出そうものなら亀の甲羅でガードしてやろうと思ったのだ。
(さっきのマイさんのように防ぐ!!)
予想通り、マナカはヤナミンに接近するなりパンチを繰り出してきた。
後はそこに甲羅を当ててやればガード成功のはずだった。
ところが次の瞬間、ヤナミンの視界からマナカが消えてしまう。
(!?)
もちろん本当に消えたわけでは無い。
ダンスを踊るかのようにターンを決めて、一瞬にしてヤナミンの背後へと回り込んだのだ。
そしてその勢いのまま右足を高く上げて、ヤナミンの細い首にカカトを叩きつける。
「!!!…………」
「残念。もうノびちゃったの?久しぶりに楽しい闘いが出来ると思ったのに。」
容赦ない仕打ちを受けて倒れるヤナミンとフナッキを見て、リサとチサキとマイは黙りこくってしまった。
いったいいつからだろうか。
自分たちとマナカの実力に差がついてしまったのは。
940
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/18(火) 20:55:54
>>938
ハーチンvsチサキの構想は14期加入よりずっと前からしていたので、私も驚いていますw
三部ではそういうシーンを多く書きたいなとは思ってますね。
941
:
名無し募集中。。。
:2019/06/19(水) 00:04:21
>マイはそう言うと、チサキの前に大きな水槽を置いていった。
突如大きな水槽を取り出せるマイcの暗器が一番凄い気が…w
ヤナcボール、亀>蜘蛛と来た時に
浦島太郎>蜘蛛の糸でやっぱりおとぎ由来なヤナcが助けた動物を召喚できるんだ!
次は鶴か雀か狐が来るぞ〜><と初めて読みが当たったと浮かれてたら単なる偶然でしたw
マナカンと生まれた距離から人間関係入り乱れそうな予感
942
:
名無し募集中。。。
:2019/06/19(水) 06:55:20
マーサー王はまるで未来を予見してたかのような出来事が起きるからねぇw
マナカン病で弱体化してると思いきや強くなっている?しかも狂気すら漂わせて・・・ちょっとイヤな予感
943
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/19(水) 09:00:32
先輩と新人の対戦から十数分経っても、リサ・ロードリソースはまだその場に留まっていた。
セミの羽根やらを箒で掃きながら、先ほどの出来事を思い返していたのだ。
(マナカちゃん、流石にやりすぎだよ……)
タッグマッチの流れは途中までは良かったはずだ。
チサキもマイもヤナミンもフナッキも、苦しみながらも充実していた。
だが、マナカが現れて実力を見せつけたところでおかしくなり始めた。
あんな負け方をしたらヤナミンとフナッキは心に傷を負うかもしれない。
(私がもっと強ければ……マナカちゃんを止められたのに……)
日に日に成長していく仲間達に比べて、自分だけは頭打ちであることをリサは自覚していた。
カエルの操り方のバリエーションを増やしてはいるものの、劇的には変わっていない。
また、リサの細腕では、マイやマナカのように肉弾戦に対応することだって出来ない。
どうすれば強くなれるのか……彼女には分からなかった。
「モモち先輩に相談してみるか……」
掃除が終わったリサはゴミ袋をマーサー城の一般兵に預けては、モモコの部屋に向かうことにした。
やはりここはプレイングマネージャーに教えを請うのが1番だと判断したのだ。
「モモち先輩入りますよー……って、んん??……」
扉を少し開けたところでリサは異変に気付き始めた。
どうやらモモコは他の誰かと話しているようだ。
行儀悪くも室内を覗き見したリサは、そのメンツの豪華さに驚愕する。
(フク王、アヤチョ王、ユカニャ王!?どうしてモモち先輩のお部屋に!?)
モーニング帝国のフク・アパトゥーマ、
アンジュ王国のアヤチョ・スティーヌ・シューティンカラー
果実の国のユカニャ・アザート・コマテンテ
マーサー王国の近隣諸国の王がこの場に集まっているのだから驚くなというのが無理な話だ。
ちなみに室内には果実の国のアーリー・ザマシランもいた。
おそらくは、戦うことのできないユカニャ王の護衛のためについてきたのだろう。
(まぁ当然っちゃ当然よね。護衛なしのフク王とアヤチョ王の方がよっぽどおかしいわ。
非公式な場だから大所帯を引き連れることは出来なかったってこと?……
秘密裏にいったい何を話しているというの?……)
リサの頭の中にクエスチョンマークが沢山沸き上がったところで、モモコが言葉を発し出す。
「以上がプロジェクト名”ケンニン”の全貌よ。 偶然とは言えあの子達の実力をお見せすることが出来て良かったわ。で、どうかしら?」
「モモち先輩の計画は完璧すぎます〜〜!もう全部受け入れちゃいます〜〜!」
「うん。フクちゃんだけじゃ偏りがあるから国の人とじっくり話しなさい。」
「そんな!モモち先輩への反対意見は全部握り潰しますよ!」
「それがダメだって言うの。後で私からハルナンにも連絡しとくわ。 じゃあユカニャ王はどう?」
「かぁ〜〜〜わいかったですねぇ〜〜〜!可愛い可愛い可愛い。私の癒し。」
「まともな王はいないのかな?」
「コホン、失礼。 ばい菌であるファクトリーを滅菌消毒するための戦力強化に繋がる良い計画だと思いました。
ただ、果実の国を強化するにはもう一声欲しいかなと……」
「具体的には?」
「マナカちゃん。」
「本気で言ってる?……まぁ該当者ではあるけど……ちょっとだけ準備期間が欲しいかな。」
「どれくらい経てば良いですか?」
「”定年”まで、なんちゃって。」
「はぁ。”永遠”に待ちますよ。」
「冗談冗談。マナカちゃんをどうにかし次第すぐに手配するよ。 で、アヤチョ王はどう。」
「アヤは別にいいですよ。ウチはもともと変な人が多いし、あの子も変な人だし、全然平気。」
「でもアンジュ王国って舎弟制度とかあるんでしょ?舎弟を経ずに番長……って睨まれたりしない?」
「あー、それならもう1人声をかけている子がいるから大丈夫ですよ。 カノンちゃんが言うには将来の裏番長候補っていう子が。」
「へーそうなの。その子と同じタイミングなら批判が集中することがないか。」
944
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/19(水) 09:05:40
チサキは元々魚入りの水槽を持っていて、マイがそれを素早く取りに行ったのだと脳内補完してくださいw
マナカはアカネチンに追い詰められたことが悔しくて性格が変わってしまいました。
当時はアカネチンを舐めきった結果として痛い目を見たので、今ではどんな相手にも容赦しません。
945
:
名無し募集中。。。
:2019/06/19(水) 13:07:11
ついにプロジェクト『ケンニン』始動・・・リサとマイがどうなるのか気になる
> マナカちゃんをどうにかし次第
モモコが言うと若干の恐怖を感じるw
北の里へ強制送還かな?
946
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/19(水) 13:07:53
モモコと王達の話はまとまりつつあったが、ここでユカニャ王が一石を投じた。
「該当するメンバーについては問題ないと思いますが、私はカントリーの軸の方を心配しています。」
「ふぅん。と、言うと?」
「リサ・ロードリソースちゃんの事を言ってるんですよ。いくら他が活躍しても軸となる彼女がフラついたら無意味ですよね?
マナカちゃんの登場に狼狽えているようでしたが、資質に問題は無いのでしょうか?」
話の流れは掴めていないが、自分が槍玉に挙げられている事はリサも理解することができた。
「やっぱり心配?フクちゃんとアヤチョ王と同感?」
「えっと……」「アヤはその子のこと知らないけど弱かったら軸にはなれないと思います。」
「そうね……じゃあ資質の有無を本人に証明してもらっちゃおうか。」
そう言うとモモコは半開きの扉を開けて、覗き見中のリサの姿を露わにした。
「「「「!!」」」」
「あ、いや、これはその……」
「ねぇリサちゃ〜ん。そこのお偉いさん達がね、リサちゃんが弱かったら任せられないって言ってるよ〜?
そうなったら私の計画が頓挫しちゃうんだ〜」
「あの、モモち先輩?そもそも計画っていったい……」
「詳しいことはまだ知らなくて良いの。今リサちゃんがやるべき事は何?頭良いから分かるよねぇ?」
「私の……強さを示す事です……」
「その通り〜〜!」
死んだ目をして回答するリサに対して、モモコは何やら楽しげだった。
「ところでユカニャ王、どうやったら資質を確かめられると思う?この場の全員を今すぐ皆殺しにすれば分かってくれる?」
「何をメチャクチャ言ってるんですか……そうですね……例えば、ここにいるアーリーと善戦したら認めてあげても良いですけど……」
「あたし?」
壁に寄りかかっていたアーリー・ザマシランはキョトンとした顔をしていた。
いきなり指名されるなんて思っていなかったのだ。
「そう。リサ・ロードリソースと本気で戦ってあげて。」
「え〜」
「え〜じゃないの。何が不満なの。」
「もしもそれで怪我でもしたら、帰りの道中……ユカを護れなくなる。」
「……外ではユカニャ王と呼びなさい。 それに、アーリーは強いから大丈夫よ。」
「でも〜」
なかなかウンと言わないアーリーに対して、ユカニャは声のトーンを少しだけ低くした。
「じゃあこういう事にしましょう。 そこのリサ・ロードリソースは今にも私の命を狙っている。 そうイメージしてみて。」
「命を……」
その瞬間、アーリーの顔が険しくなった。
そしてスタスタとリサ・ロードリソースの元に歩いていき、
いきなり首を鷲掴みにする。
「絶対に許さない。」
「!?……く、苦しい……」
947
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/19(水) 18:59:45
リサの首を絞めるアーリーの圧は凄まじかった。
彼女の狙いは窒息ではない。首の骨を折ってしまおうとしているのである。
激痛なうえに酸素まで取り入れることが出来ないため、リサの意識はすぐに朦朧とし、手足がまるで動かなくなった。
あっけなく決着がつくと思われたところで、モーニング帝国の王、フク・アパトゥーマが割って入ってくる。
「ストップストップ!こんなのフェアじゃないよ!」
真剣勝負を邪魔するフク王に一同は驚いたが、次に続く主張は真っ当なものだった。
「リサちゃんの得意な戦法はカエルを操ることなんでしょ?
ウチの子達もカエルに苦しめられたって言ってたよ。
と言うことは、リサちゃんの真の力を見たいなら、こんな室内で戦うべきじゃないのでは!?
モモち先輩、屋外の訓練場で仕切り直した方が良いと思いませんか?」
「フクちゃんの言うとおりね。ユカニャ王はどう思う?」
「そうですね……アーリー、手を放してあげて。」
「ユカ……ユカニャ王がそう言うなら。」
フクのおかげで命拾いしたとリサは思った。
だが、同時に「本当に命拾いしたのか?」という考えも頭をよぎる。
KASTの一員として活躍したきたアーリーは、武道館で出会った時よりももっと強くなっているように見える。
カエルを味方につけたところで、果たしてこの怪物に勝てるのだろうか?
(多分、私が勝てるなんて誰一人思っていない。)
そんな雰囲気をより顕著に出していたのがアヤチョ王だ。
足は屋外訓練場に向かいつつあるものの、どこかよそ見をしながら歩いている。完全に上の空だ。
もはやリサへの興味などとっくに失っているのだろう。
そんな事を考えながら落ち込むリサにモモコが近づき、話しかけてきた。
「リサちゃんあんなに弱かったんだね。私ビックリしちゃった。肉弾戦まるでダメじゃない。アーリーちゃんと同じ土俵に全然上がれてなかったよ。」
「馬鹿にしにきたんですか……そんな事、私が1番よく分かってますよ。」
「それもあるけど、ちょっとしたアドバイスがしたくてね。」
「アドバイス!?な、なんですか!?」
「うふふ、”自分で考えなさい”。」
「え……」
「ちょっとはマシな頭を持ってるんでしょ?それくらい自分で考えなさいよ。馬鹿じゃないんだから。」
「……」
辛辣な発言をするモモコを見て、ユカニャはリサを気の毒に思った。
後輩を理不尽にこんな目に合わせたうえに暴言を吐いて突き放すなんて、いったい何を考えているのだろうかと感じている。
ところが、フクは全く別の感想を抱いていた。
(モモち先輩はやっぱり凄い。勝負の行方、分からなくなったな。)
そうこうしているうちに一同は屋外訓練場に到着した。
モモコはその場にいた3名のマーサー王国兵に声をかけ、訓練場をあけ渡すようにお願いする。
「ちょっとだけ場を借りていい?あと、このことは誰にも言わないでほしいなぁ」
「はい!マオピン誰にも言いません!」
「ふふ、良い子良い子。」
残り2名の兵は、各国の王が揃うこの状況に驚きを隠せていないようだったが、その中でも最も幼い兵は素直に応答してくれたようだ。
「さ、準備は整ったよ。それじゃあ仕切り直しね。」
948
:
名無し募集中。。。
:2019/06/19(水) 22:29:58
昨夜に後輩達が脱ぎ散らかした靴をいつも揃えてるとあやちょが言ってましたが
蝉の羽根を片すリサcの姿が重なりますねこういう細かな描写好き><
隠語?のファクトリーの対象につばきも含むかなと巡らせてたらマオピン&さおりんおみず?きた!
人間関係が複雑化してきたうえ登場人物の裾野まで広がって益々楽しみです!
949
:
名無し募集中。。。
:2019/06/19(水) 23:44:17
一昨日ハーチンの話していたと思ったら今日突然はーちんSNS開始するとか…マーサー王には何かあるんじゃないかと思ってしまうw
帝国にマオピンがいるって事はもう一つの"ファクトリー"はどうなるんだろ?
950
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/20(木) 13:02:39
再開の合図と同時に己の体が重くなった事をリサ・ロードリソースは感じた。
首を絞められてもいないのに息苦しいし、手足も痺れてくる。
このままではさっきと同じ結末になってしまうので、リサは指笛を吹いてカエル達に指示を出していった。
ホームであるこの場にはおびただしい数のカエル達が潜んでいる。
それらが一斉に襲いかかれば人間1人くらいは容易く制圧出来ることだろう。
ただし、それは相手が並の人間だった場合の話だ。
選挙戦や武道館の戦いを経たアーリー・ザマシランの実力は、並などとは到底呼べやしない。
「邪魔だよ。」
たった一言、そう発するだけでカエル達は動きを止めてしまった。
まるで蛇に睨まれたカエル。
アーリーという存在に全てのカエルが恐怖しているのだ。
そしてそれはリサも同じ。
アーリーは強者が強者たる技能である「立見刀剣」を当然のように習得しており、
トンファーでリサをタコ殴りにする様子を強くイメージしては、リサの脳へと伝播させていた。
結果としてリサは殴られてもいないのに強打を何発も受けたような思いをし、心が今にも折れそうになってくる。
やはり自分はアーリーには勝てないのか。
ユカニャ王が言うようにカントリーの軸として認められない存在なのか。
そうして諦めかけたところで、モモコの言葉が頭に浮かんできた。
“自分で考えなさい”
そうだ。
この苦しい状況を打破する方法は自分で考えるしかないのだ。
幸いにも、それを考え抜くだけの知能は備わってる。
チサキやマイよりずっとずっと優秀な頭脳こそが、リサ・ロードリソースのカエルに次ぐ第二の武器なのである。
その一点だけなら、彼女はマナカ・ビッグハッピーをも上回るだろう。
(ここから逆転する方法……それは……)
1つハッキリしていることがある。
それはアーリーと同じ土俵に乗ってはいけないということだ。
リサの戦闘能力は著しく低い。 アーリーと殴り合いの喧嘩して勝てるはずがない。
だったらそんな勝負は初めからしないに限るのである。
では、どうすれば良いか?
(私の有利な状況を今から作り上げる!!)
アーリーの方を自分の土俵に乗せること。それが唯一と言って良い程の勝ち筋だ。
ではリサの土俵とは何か?それはもちろんカエルをよって相手を翻弄することだろう。
だが今のカエルはアーリーに恐れをなしている。
何故怖がっているのか?それはカエルの強さがアーリーを下回っているからだ。
ならばカエルの強さを底上げしてやれば良い。
カエルのパフォーマンスを向上する方法については心当たりがある。
昔は恥ずかしがってその行為を真面目にやらなかったが、今ならどんな恥をかいてでも儀式をやり終える自信がある。
そうしないとリサは戦士として死んでしまうのだから、羞恥など感じている暇は無いのだ。
しかし、本当にその技が決まるのかという懸念はある。
それを確かめるために、リサはモモコに質問を投げかけた。
「モモち先輩!答えてください!」
「なあに?」
「今現在!食卓の騎士のうち何名が城に残っていますか!?」
「えっとねぇ、キュートは5名全員城にいて、私以外のベリーズは野暮用で外に行ってたかな。」
「!」
なんたる好都合。なんたる偶然。
いや、これは偶然などではなく、この状況を予見したモモコが裏で手を回していたに違いない。
リサはすぐにそのように気づいていった。
これだけお膳立てしてもらったのだから確実に決めるしかない。
決意したリサは、大袈裟に両手を振り上げ出した。
「見せてあげます……私の”必殺技”を……!」
リサ・ロードリソースは本日この場で必殺技を初披露することになる。
必殺技、それはマナカ・ビッグハッピーですら未習得の技能であった。
951
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/20(木) 13:03:33
必殺技が発動されてから10分ほど経っただろうか。
最終的にこの場には立っていたのは、ズブ濡れ状態のリサ・ロードリソースだった。
同じくビショビショになったアーリー・ザマシランは地面に転がっている。
体力をゴッソリと奪われたうえに強烈な攻撃をお見舞いされたため、意識こそあるものの身体がもう限界なのだろう。
だが不思議なことに、全身に負わされた打撲の痕ではなく、比較的ダメージの少ないお腹の方アーリーは抱えていた。
「あれは卑怯だよ〜!面白すぎるもん!キャハハハハ!」
「ちょっ、……笑わせる技じゃないんですけど!」
「あははは、ごめんごめん、でもモモコ様やフク王だって笑ってるよ?」
「なっ……」
アーリーの言う通りモモコとフクは下を向きながら笑いを堪えていた。
完全にツボに入ってしまっているようだ。
「いやぁ今回ばっかりは参ったわ。まさかあんな面白必殺技を出すとは思ってなかった!ほんと予想外!」
「モモち先輩まで!」
リサの必殺技がよほど特異だったのか、さっきまで興味を失っていたアヤチョ王までが積極的に話しかけてくる。
「なになに!?さっきのアレどういうことなの〜? アヤ全然分からなかった!もう一回やって!お願い!」
「や、やりません!」
一同がワーワーやっている中で、ユカニャ王がアーリーにデコピンをコツンと当てていた。
そして膨れっ面で文句を言いはじめる。
「私の命が狙われてるって設定だったんだけど? このままだと殺されちゃうじゃない。」
「あー、あー、ゴメンナサイ。今日だけは死んで!」
「ちょっと!!!」
「だってアレは無理だもん〜」
「まったく……」
プンプン怒っているユカニャに向かって、お次はモモコが声をかけてきた。
そろそろこの場を締めようとしているのだろう。
「じゃあユカニャ王、判定はどうだったかしら。」
「ふふ。合格ですよ。アーリーがここまで負かされたのだから、リサちゃんを認めない理由が有りません。」
「ほい。じゃあ”ケンニン”は予定通り進めるってことで。」
それから数ヶ月の時が経った。
モモコとマナカが突然姿を消したため、カントリーのチサキとマイ、ヤナミンとフナッキはアタフタと狼狽えている。
せっかく良いチームになりかけていたというのに、どうしてこんな事態になったのかまるで把握できていないのだ。
そんな中、リサ・ロードリソースだけは冷静だった。
同士である4人に向かって、とある質問を投げかけていく。
「ねぇみんな……私たちカントリーはこれから大変になると思う。 辛いことだって増えると思う。 だから聞かせて。私についてきてくれる?」
チサキ、マイ、ヤナミン、フナッキの4人は一瞬ポカンとしたが、すぐに回答を口にしていった。
「え?何言ってるの? そりゃついていくに決まってるけど……」
「マイは考えるの苦手だから、リサちゃんに色々と決めてほしい。だからついていくよ。」
「愚問ですわ。わたくしもギサちゃんについていきます。」
「どうしよっかな〜。ま、メイクの仕方とか教えてくれたらついてってあげてもええけどな。」
「そっか、安心した。」
“カントリーのこれから” めでたしめでたし
952
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/20(木) 13:09:48
予定より1日多くかかってしまいましたが、オマケ更新は終了です。
明日からは通常更新に戻ります。
早く第三部に入って、ファクトリー関連の話を進めなくてはなりませんからねw
OMAKEのOMAKE
もしもナレーターがヤナミンだったら
ヤナミン「“カントギーのこげかが” めでたしめでたし」
953
:
名無し募集中。。。
:2019/06/20(木) 13:46:47
リサの儀式って…一躍時の人にしたあれかwそりやかなわないわww
それにしてもリサのカエルの能力ってこの動画が公開される前に決めてたんでしょ?なにか目に見えない何かに誘われているみたい
オマケ更新お疲れ様でした。本編も楽しみにまってます。
954
:
名無し募集中。。。
:2019/06/20(木) 18:11:18
リサはタイサも操れるかな?
955
:
名無し募集中。。。
:2019/06/20(木) 21:10:07
OMAKE面白かったぁ〜!
カントリーの面々はチャートの波が激しいところが魅力ですね
しかし喋り方に特徴ある子は強いですねリカコcの絵文字にしろ読むだけで頬が緩んじゃいます><
タイサ操れる笑ったw
チィcもひょっとすると食卓の騎士の一人を…w
956
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/21(金) 12:56:01
エリポンがモモコを出し抜いた今、その勢いを利用して攻めていくのがセオリーのはずなのだが、
ハルナンが次に出した指示はその逆を行っていた。
「エリポンさん!アーリーちゃん!ここは一旦退きましょう!さぁさぁ早くこちらへ!」
言うが早いかハルナンはすぐに走り去ってしまった。
突然の退却命令にアーリーは混乱したが、エリポンが迷わずそれに従ったため自分もついていくことにした。
「よし、ここまで来れば大丈夫。もう安全ですよ。」
大きな鎧が転がる地点まで辿り着いたところで、ハルナンはホッと一息をついた。
この時点で彼女らはモモコから十数メートル離れており、
マーチャンがやられたようなヒップアタックを喰らう恐れが無いという意味では確かに安全かもしれない。
「はぁ……見くびられたものね。安全圏なんてどこにも無いのにさっ!!」
モモコは電磁石をフルパワーで投げつけた。
1発や2発だとアーリーにトンファーで撃ち落とされる可能性もあるため、複数個の磁石を連続で放っている。
モモコの暗器は組み合わせにより近距離・中距離・遠距離のどのレンジにも対応するため、
この程度離れたくらいじゃ逃走したことにはならないのである。
許容量を超える弾数にアーリーは焦ったが、ハルナンとエリポンは不思議と平気な顔をしていた。
ここでモモコも真意に気付き始める。
「あっ……そういうことか。」
ハルナンらを狙う磁石の軌道は勝手に逸れて、転がる鎧へとぶつかっていった。
思い返してみれば、モモコはこの鎧に向かって何十個もの磁石を投げつけることで鎧の動きを止めていた。
となればこの場で最も強い磁力を発するのは、多数の磁石がくっついた鎧ということになる。
そのため、いくらハルナンやエリポン、アーリーを直接狙おうしても決して当たらないのである。
「向こうの攻撃は当たりませんがこちらはやりたい放題出来ますよ!さぁエリポンさん!」
「よっしゃ!」
エリポンは磁石では無い普通の石を打ち付けて、モモコへと飛ばしていった。
ノーガードでスイングに専念できるため、石のスピードは通常の何倍にも及び、
かすったモモコの耳から血を流させることに成功した。
「くっ……」
「エリポンさんナイスショットですよ〜!この調子でどんどん行きましょう!」
「させるわけないでしょっ!!」
エリポンによって放たれた石の雨あられにも恐れることなく、モモコは前進していった。
そして大胆にもその場で高く跳躍する。
「磁石が鎧に引きつけられる?……いいじゃない。だったら逆に利用するまでよ!!」
空中のモモコは磁石を投げる腕に力を込めて、斜め下方向に思いっきりぶん投げた。
ターゲットはハルナン達ではなく鎧だ。
渾身のジャンプシュートの勢いはただ投げるだけよりも大きく増加し、
地球の重力と磁石自体の引力も加わることで、とてつもない破壊力を生み出すこととなった。
「モモち流の散弾よ。とくと味わいなさい。」
磁石が鎧に衝突すると同時に大きな破裂音が発生し、衝撃のあまり、鎧にへばりついてたはずの磁石が周囲に飛び散っていく。
散弾は無差別に周りを襲うが、距離が近い分、モモコよりもエリポン、ハルナン、アーリーの方が多く受けてしまった。
腕に、肩に、腹に、胸に、頭に多量の磁石をぶつけられたので、3人が3人とも苦悶の表情を浮かべることになる。
決定打にはなり得なかったが、ここでのダメージは軽くないはず。もう決着も近いだろう。
しかしそんな状況にもかかわらず、ハルナンとエリポンは自分たちよりも別の心配をしていた。
「ハァ……ハァ……エリポンさん、鎧にはまだ磁石がくっついてますね……全部吹っ飛ぶと思ったんですが、アテが外れました……」
「ううん。ハルナンは知らんと思うけど、こっちの方が都合が良いっちゃ。後はエリがなんとかする!」
そう言うとエリポンは立ち上がり、驚くことに、鎧に強烈な蹴りを入れ始めていった。
それも一発では終わらず二度三度……
硬い鎧にそんなことをするのだからエリポンの脚は折れてグニャグニャになってしまう。
そんな光景を前にして、アーリーだけでなくモモコまでもパニック状態になる。
「ちょ、ちょっと何してるの!?おかしくなっちゃったの!?」
957
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/21(金) 12:57:07
🐸←タイサ
もちろん操れませんw
958
:
名無し募集中。。。
:2019/06/21(金) 23:00:33
3分ほど行動の理由を考えてみたけど全くに展開が読めない、、
&カノンcダメージは負ってなかったと思うけど眠ってるのかな…w
959
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/22(土) 13:34:25
鎧の装甲の強度は限界に近かった。
いくら硬く作られてるとは言え、昨日チナミ、本日モモコ、のように連日ベリーズに叩かれ続けたのだから
ダメージが蓄積しないはずが無かったのだ。
そんなところに、肉体派エリポンの渾身の蹴りを何発もぶつけられたらどうなるだろうか。
初めはちょっとしたヒビ・亀裂だったとしても、そこから歪みが生じ、最終的には鉄であっても裂けてしまう。
「何を……何を企んでるの!?」
エリポンの行動を異常に思ったモモコは、これ以上好きにさせてはまずいと考えた。
鎧の破壊活動に夢中になっている今がチャンス。
相手の懐に入り込み、凶悪な尻をぶつけるのだった。
「モモアタック!!これでもうおかしなマネは出来ないでしょ!」
「……!」
モモコは暗器の機能でお尻の部分を尖らせて、マーチャンを仕留めたようにエリポンに刺していった。
鋭利な先端はしっかりと肉に食い込み、腹部から多量の血液を流させる。
強烈なヒップアタックをノーガードで受けたエリポンはもはや立てなくなってしまったが、
その顔には全くと言って良いほど悲壮感が漂っていなかった。むしろ充実している。
「後は任せたよ……」
「なんですって?……まさか……まさか!!」
モモコはすぐに鎧を目視し、やや大きめの穴が空いている事実を確認した。
そのサイズは小柄な人間ならばギリギリ通れる程度の大きさだ。
これ以上穴が広がってしまっては都合が悪いと判断したモモコは、鎧にくっついている電磁石を無理やり動かしては、穴そのものを塞いでいく。
「はは……もう遅いけんね。」
「遅い?……どういうこと?」
「有難い言葉を教えてあげるっちゃ。"女子三日会わざれば刮目して見よ"ってね……」
エリポンがそう言い残して目を閉じると同時に、モモコの背中に激痛が走る。
瞬時に反応して後ろを振り向くモモコだったが、そこには”何者”も存在していなかった。
そうしてモモコが一瞬静止する隙をついて、ソイツはモモコのスネに強烈なローキックをぶつけていく。
「くっ……誰!!誰なの!!」
言葉ではそう言いつつも、モモコはその正体に気づいていた。
だが、どうしても辻褄が合わないのだ。
まだ戦えたというのは理解できる。動けなくしただけで大怪我を負わしたわけではないからだ。
しかしいったいどうやって表に出てきたと言うのか!?
そして、今現在こうして超スピードでモモコを翻弄しているのはどういうことなのか!?
それが理解できないためモモコは彼女を彼女だと認められずにいた。
「もう誰だっていい!今この場で仕留めてやれば同じこと!!」
モモコは両手両足に括り付けられた全ての糸を引っ張り、先に結ばれた磁石を全て引き寄せようとした。
こうすれば攻撃範囲はモモコの周囲全域に及ぶため、相手のスピードが早くても確実に倒せると思ったのだ。
ところが、期待した通りの石はやって来ない。
それもそのはず。
モモコの頼りにしていた糸までも、このほんのちょっとの時間で全て切断されていたのだから。
「えっ……」
予想外のことが立て続けに起こったのでモモコはまたしても硬直しかけた。
だが、ここで狼狽えたら完全に相手の思うツボだ。
お次も背後から襲いかかってくると判断したモモコは先回りして後ろを向き、攻撃を受け止めようとした。
……はずだったのだが、その姿があまりに予想を超えていたので、驚愕のあまり結局フリーズしてしまった。
「カノンちゃん……なの……よね?」
その正体は、やはりカノン・トイ・レマーネだった。
だが、しかし、今の彼女の姿は本当にカノンと呼んでよいのだろうか。
全身がスラッとしていて、腕も脚もあのハルナンよりも細い。
まるで別人。以前、橋の上で戦った時はこんなにスリムでは無かったはずだ。
そうして目を丸くしているモモコの顔面に向かって、カノンは思いっきりキックを喰らわせる。
全体的に線が細くなりはしたが、これまで体重を支えてきた筋力は据え置きだ。故に攻撃力は微塵も落ちていない。
「うぐっ……」
カノン・トイ・レマーネの豹変に驚いたのはモモコだけではなかった。
アイリやアーリー、そして同じ帝国剣士のハルナンまでもが今にも目玉が飛び出てしまいそうな顔をしている。
何故カノンがああなったのかは定かでは無いが、状況が好転するなら使わぬ手はない。
「カノンさん凄いです!その調子でもっともっと追い詰めちゃってください!」
「いやぁ〜、それがそういうわけにも行かないんだよね。」
「えっ?」
「この必殺技、あと58秒で終わっちゃうんだって!」
「えー!?」
カノン・トイ・レマーネの必殺技は命を燃やす。
儚く散ってしまうことから、彼女はその技を「泡沫」と名付けていた。
960
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/22(土) 13:35:59
というわけで、眠ってはいませんでしたw
961
:
名無し募集中。。。
:2019/06/22(土) 18:21:24
動けないからいっかと寝てるカノンcを起こしてるのかと思ってました
てかロビンマスク理論w
まさか痩せて俊敏になるとは思いもしなかったです58秒とかほんと上手い、、
そういえば昨日にニコ生でタケcが山木さんの雨乞い動画を
アンジュで観て爆笑してたと言ってたらしいんですけど
またもやな同調知って作者さんに平行世界として15期メンバー書いてもらおうかと考えちゃいました
北研愛生cに加え一般からも2人も入って期待大な加入でしたね><
962
:
名無し募集中。。。
:2019/06/23(日) 11:22:19
やべ汗カノンのことすっかり忘れてたw超高速&時間制限でクロックアップ的な感じ
> "女子三日会わざれば刮目して見よ"
なるほどこの戦いを経験したからこそあのときリサに話したのか
963
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/24(月) 13:25:56
自身の身体能力を一時的に上昇させるという効果は、カリンの必殺技「早送りスタート」に非常に似ている。
異なる点は、カノンの必殺技「泡沫」は事前準備および使用後の副作用が重すぎることだ。
カノンが己の必殺技の片鱗を見たのは、数年前、フクが王座を勝ち取ってから数日後のことだった。
(もうあの時みたいに悔しい思いはしたくない……王を守れるくらい強くならなくちゃ!)
ハルナンら天気組との決戦では、フク・アパトゥーマ以外のQ期組は途中で倒れてしまっていた。
自分たちの不甲斐なさを痛感したエリポン、サヤシ、そしてカノンはそれまで以上に訓練に熱中することとなったのだ。
「ハァ……ハァ……」
「カノンちゃん大丈夫?朝から何も食べてへんやん!」
「エリポンの言う通りじゃ。いつもみたいにお腹いっぱい食べた方が……」
「これくらい平気だよ……それよりもっとトレーニングしなきゃ!!」
身体を心配するエリポンとサヤシの声を聞かずに、カノンは必死で訓練に励んでいった。
調子は最悪だったが、夜になる頃には身体が軽く感じて、事実いつもよりもスピードが出ていた。
不思議と頭も冴えてきたため、ある種の高揚感を抱きながら剣の打ち込みを続けていると、
やがて本当に燃料切れになってしまい、ぶっ倒れてしまった。
その際にエリポンとサヤシに迷惑をかけてしまったので、翌日からはしっかりと栄養を摂るようにしたのだが、
あの時感じた高揚感がどうしても忘れられずにいた。
そして数ヶ月おきに同期にこんな相談をするようになったのだ。
「明日は24時間の絶食を試してみる……倒れちゃったら、ごめんね。」
はじめはエリポンもサヤシも猛反対したが、やがてカノンに協力するようになった。
カノン・トイ・レマーネの目の奥で燃える炎が、決して自暴自棄から来るものではないと気づいたからだ。
止められないのであればカノンが無事に絶食を終えられるように全力でサポートする。それが最善策だと考えたのである。
そしてそのような断食訓練を何回か経験したところで、エリポンとサヤシはカノンの異変に気付き始める。
「ねぇ……カノンちゃん……めっちゃ痩せてない?」
「え?」
「2日前はいつものカノンちゃんだったのにどうなってるんじゃ???」
絶食48時間を超えた時点で、カノンの肉体は大量の脂肪をエネルギーへと変換し、
ハルナン以上のスリムボディーへと変えさせたのだ。
言わば何十キロもの重りを脱ぎ捨てたようなもの。
その姿のカノンのスピードはサヤシをも超えるようになっていった。
もちろん飲まず食わずの状態で激しい動きを続けられる訳が無いのですぐに倒れてしまうが、己のこの状態は切り札になり得るとカノンは確信していた。
(だから私は、アリアケの決戦の後から絶食を開始したんだ。2日後のプリンスホテルの決戦のために。)
ベリーズとの戦いの日程をおさらいすると以下のようになる。
28日 アリアケの橋の上での戦い
1日 アリアケでの休養日
2日 プリンスホテル改めシバ公園での戦い
3日 武道館での戦い
カノンは28日の時点で2日の戦いを意識し、飲み食いを控えることにした。
そして、自身の身体の変化が周囲にバレないように、全身を覆うフルアーマーを装着しようと考えたのとその時だった。
結果、2日の時点ではチナミのバズーカですぐに倒されれてしまったため「泡沫」を披露する機会は無かったが、
それが功をそうして、3日の武道館の戦いでは自身も踏み入れたことのない境地である断食3日目に到達することが出来たのだ。
感覚からして自身の身体はもう1分も持ちそうにない。
だが、今の自分ならば食卓の騎士と同等の強さを発揮することが出来る。
そして何より、頭が澄み渡るように冴えているのだ。
どうすればモモコに有効打を与えることが可能か、手に取るように分かる。
時間制限付きではあるが、これこそがカノンの求め続けた「王を守る強さ」では無いだろうか。
Oh my wish! 進め
Go for it! 挑め
Oh my wish! 自分を磨け
わかるだろう 進むべき道や
キラキラと輝くために
すべきこと
そのように思いながら、カノンはモモコの腹に蹴りをぶつけていく。
964
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/24(月) 13:30:11
Oh my wishリリース当時の痩せ方をイメージしていただければと思います。
>>961
15期の話はオマケとかで書いてみたいですね。
特にここ最近は北海道研修生の躍進が目覚ましいので、師匠も含めて色々と関連づけられそうです。
>>962
はい、女子三日〜の繋がりは意識しました。
ぶっちゃけると後付けなんですけどねw
965
:
名無し募集中。。。
:2019/06/24(月) 13:33:59
Oh my wish! の挿入歌であやうく泣きそうになった…
966
:
名無し募集中。。。
:2019/06/25(火) 01:34:03
泡沫後の副作用が気になります、、リバウンド程度で住みますよう;><
作者さんが15期をごっちんやりほ2の再来
第3の黄金期かの如く書いたら現実もそうなってしまうのではとか謎期待して、、w
OMAKE好き先々の楽しみがまた増えました!
967
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/25(火) 14:11:55
モモコの身体も限界に近づいていた。
平気な顔をしているように見えるが、昨日のキュート戦での負傷も引きずっているため、
ここでカノンの攻撃を受け続けるのはとてもまずい。
こうなったら徹底抗戦するしかない。モモコはそう考えた。
「ツグナガ拳法……"派生・貫の構え"」
全ての力を小指に集中させて、カノンが蹴りを繰り出したタイミングで相手の太ももへとぶっ刺した。
アクリルで包まれたモモコの小指は非常に硬く鋭くなっており、
屈強な脚の筋肉さえもドリルのように貫いてしまう。
「!!!」
「ふぅ〜ん。痛覚は残ってるんだ。痛いでしょ〜。何秒我慢出来るかなぁ〜?いーち、にーい、さーあん。」
ただでさえ辛い状況なのに指を刺されたものだから、カノンは苦しみ悶えてしまった。
だが逆に言えば接近した今がチャンス。
両手の拳をギュッと握り、モモコの胸にパンチのラッシュを叩き込んだ。
「おりゃああああ!!」
「ちょっ、やめてよ!放すから!」
モモコが小指を抜いたおかげでカノンはまたも自由に動けるようになった。
脚から血が吹き出ているが、そんなのを気にしている暇はない。
鎧のそばに落ちている出刃包丁「血抜」を拾い、モモコに斬りかかっていく。
「そんな物騒なモノ持ち出さないでよっ!!」
モモコは電磁石を3個、4個投げて出刃包丁の刃にくっつけていく。
それだけでかなりの重量になるため、本来であれば包丁を持っていられなくなるはずだった。
しかし、今の覚醒したカノンはこの程度の重さをものともしない。
むしろ重量感の増して破壊力の増した得物を振り下ろし、モモコの頭に叩きつけていく。
「あっ……」
「磁石が邪魔して刺さらなかったか……でも威力は十分でしょ!」
脳天で喰らったモモコの視界はもはやグチャグチャだった。
吐きそうなくらいに苦しいが、クリンチをするようにカノンに抱きついては、
先ほどとは逆側の太ももに小指を刺していく。
「また痛みの我慢大会してみる?……いぃーち。にぃーい。」
「くっ……やめてよ!!」
カノンはくっついてくるモモコを思いっきり蹴飛ばした。
その時の手応えは十分すぎるほどに有り、骨の何本かを折ったような感触が今でも足に残っている。
あと少し、あと少しでモモコに勝利できるんだ!
カノンは心からそう信じていた。
「アーリーちゃん、こっち来て。緊急作戦会議よ。」
「え?……どうして?……もう勝ちそうなのに……」
「いいから黙って従って!時間が無いの!!」
「意味わからないです!まだ58秒経ってませんよ!」
「もう時間が無いっていってるの!!」
968
:
名無し募集中。。。
:2019/06/26(水) 00:41:40
頭部に刃を向け磁石が邪魔で刺さらなかったって言葉に思わず我に返ったんですけど
メチャ命の奪い合いですね
刺さらなくて良かった、、w
969
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/26(水) 13:11:34
さぁ、あと一息だ。
そう意気込んで足を踏み込もうとしたその時、カノンは身体がズシンと重くなるのを感じた。
異変は重さだけではない。 悲鳴を上げてしまいそうな程に頭が痛むし、手足には殆ど力が入らない。視界もボヤボヤと霞んでいく。
カノンにはこの症状に心当たりがあった。
(エネルギー切れ?……)
もう何もする気が起きず、油断すれば意識まで断たれてしまいそうなこの感覚はエネルギー切れに違いない。
しかし、宣言してからは58秒の猶予があったはず。 まだ58秒に達していないのに何故動けなくなってしまったのか?
立ってられないカノンに対して、モモコがその解説をし始めた。
「2つの誤認があなたをそうさせたの。」
(誤認……)
「1つは時間感覚の誤認。 カノンちゃん、どうせ、まだ30秒くらいしか経っていないとでも思ってたんでしょ?」
「え……」
「あー返事はしなくていい。そこのハルナンに答えてもらいましょ。 ねぇハルナン、カノンちゃんが58秒って言ってから倒れるまで何秒かかった?」
指名されたハルナンはドキリとした。
ここで答える義務は無いが、同士のカノンに真相を伝えないのは心苦しいため回答してしまった。」
「……50秒。」
「!?」
「その通り〜。じゃあなんでカノンちゃんが20秒も誤認しちゃったか分かるかな〜?シンキングタイムスタート!いぃ〜〜ち!にぃ〜〜い!」
モモコがわざとらしく長めにカウントしたのを聞いて、カノンはハッとした。
そういえば先ほどもモモコはゆっくりと数を数えていた。
そのカウントに引きずられて、カノンは無意識のうちに実際の時間よりも遅く数えてしまっていたのである。
「気づいたようね。それが1つ目の誤認。」
「で、でも!」
「んん?アーリーちゃんどうしたのかしら。」
「それでも50秒だったらまだ58秒に達してない!カノンさんが倒れた理由にならない!」
「そ。2つ目は自己評価の誤認。アーリーちゃんの言うとおりよ。」
(自己評価!?)
カノンには全く見当がつかなかった。
自分のことは自分がよく分かっているはず。
いったいモモコは何を言っているのだろうか。
「カノンちゃん。返事はなくて良いからよく思い返してみて。
あなたはその必殺技を実践で使ったことがある?
また、必殺技の最中に負傷して血を流したことはある?
お仲間のハルナンですら痩せてるカノンちゃんを知らなかったところを見ると、訓練でしか試したことが無かったんじゃない?」
「!!!」
全てがモモコの言う通りだった。
必殺技「泡沫」は敵のいないトレーニング中にしか発動させたことはない。
そのため、その状態で怪我をしたことなんて一度もなかったのだ。
「無傷で58秒動けるのならば、血をダラダラ流し続けてる今はもっと短い秒数しか動けないに決まってるじゃない。
まぁ、それでも50秒も頑張れたのは立派だと思うけどね。」
「……」
「でも、もう動けない。 理由は2つの誤認。ね、良い教訓になったでしょう。」
970
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/26(水) 13:18:48
>>968
磁石がうまくくっつかなかった場合は、モモコは他の手段で回避しようとするので
頭から切られるような事態には多分なっていないと思いますw
971
:
名無し募集中。。。
:2019/06/26(水) 22:15:25
本当に泡沫で終えちゃった、、
てか数えてたなら伝えなかったのはハルナンの落ち度だw
972
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/27(木) 13:21:18
「うわああああああ!!」
カノンは絶叫し、モモコ目掛けて飛びかかった。
相手が絶対に動けないと確信していたモモコは反応することが出来ず、頰にパンチを貰ってしまう。
(えっ!?……58秒っていうのはブラフだったってこと?……)
真っ先にカノンが嘘をついたことを疑ったモモコだったが、すぐにその考えを取りやめた。
相手の顔を見ればよく分かる。カノンは今、無理をして動かぬ身体を叩き起こしているのだ。
モモコの説明が長かったおかげで、限界を超えるための体力をちょっぴりだけ取り戻したのだろう。
それを理解したモモコは、ひどく哀しい顔をする。
(あのまま諦めてくれればどれだけ良かったか……
酷だけど……カノンちゃんは手を抜いていい相手ではない。やるしかない。)
ベリーズ達は本日行ったミーティングにて、相手の命を奪う覚悟で戦うことを決意していた。
クマイチャンだって、ミヤビだって、相手が誰であろうと殺す気で刃を振るっている。
そんな中でモモコだけが甘い考えを持つわけにはいかなかった。
「ツグナガ拳法”派生”……」
モモコのツクナガ拳法には3つの派生技がある。
「派生・貫の構え」によって、ピンキー(小指)のドリルでカノンの肉体に穴をあけるのが良いだろうか。
いや、今の限界を超えたカノンはそれでは止まらないだろう。
「派生・謝の構え」によって、相手の攻撃の軌道をそらして技を台無しにしたうえで、「許してにゃん」と謝るのが良いだろうか。
いや、真摯に向かってくるカノンに対してそれは礼に欠ける。
やはり、ここは礼を正すべきだ。
カノンが剣士として己の全てを突きつけて来ようとするのであれば、モモコだって剣士として立ち向かわなくてはならない。
「……”閃の構え”」
一閃、モモコは小指でカノンの胸を切り裂いた。
指の振りが速すぎるあまり、その”斬撃”は火花をもたらし、
まるでモモコの小指からビームが発せられたかのように見えていた。
「あ……あああ……」
脚だけでなく胸からも大量出血しているカノンには、限界を超える力は残されていなかった。
彼女の脳は急激に酸素を欲している。だが、血液を流し続けている今、酸素を送り込むことは叶わない。
これ以上の活動を許さぬカノンの身体は、意識を強制的に断つ選択をする。
「カノンさん!カノンさぁん!!」
大声を出して駆けつけようとするアーリーだったが、ハルナンにしがみつかれ、制されてしまう。
「アーリーちゃん落ち着いて!」
「だって!早く治療しないと本当に死んじゃう!」
「分かってる!分かってるから私たちは今すぐにでも勝利しないといけないの!
もうエリポンさんもカノンさんもマーチャンも戦えない!
アイリ様と、アーリーちゃんと、私の3人でやらないといけないの……」
「うっ……うっ……」
「私を信用できない気持ちは理解できる。でも、今は私の話を聞いて。」
2人が言い合っているところで、モモコとアイリは突然の来客に気づいた。
それは、カントリーのメンバーであるチサキ・ココロコ・レッドミミーだった。
疲労困憊で今すぐにでも倒れてしまいそうだが、モモコの命令通りにこの場にやってきたのである。
「……勝ったんだね。」
「はい……でもごめんなさい……私、もう、眠くて戦えません……」
「ううん。いいの。みんなも連れてきてくれて、本当に有難う。」
モモコはチサキが連れてきた大勢のカエルの側をチラリと見た。
そのカエルらは気を失っているリサ、マナカ、マイの3名をこの場に連れてきている。
「モモち先輩」
「……なに?」
「私も、みんなも、モモち先輩のことを信じてます。 この後何があったとしても、攻めたりなんかしません。」
「……」
「だから……勝ってください。」
全ての力を使い果たしたのか、チサキは最後の言葉と同時に倒れてしまった。
せっかくリサ、マナカ、チサキ、マイがこの場に戻ってきたというのに、これでは全く戦力にならない。
だが、モモコは決してそんな事は思っていなかった。
「ありがとう……残る相手はアイリとハルナンとアーリーちゃんの3人だよ……みんなで協力して倒そう。」
モモコは予備の糸を取り出し、思いを込めて、投げつけていった。
973
:
名無し募集中。。。
:2019/06/27(木) 18:32:09
動けないカントリーのメンバーに糸?モモコがやろうとしていることは・・・あの曲のイントロが聞こえてくるw
974
:
名無し募集中。。。
:2019/06/28(金) 12:11:34
暗器返却のため帰還促してたのかと思いきや
ここまで都合の良くタチ悪い協力って言葉は久々に聞きましたw
975
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/28(金) 15:36:18
●場面1 : 武道館東口 「チームダンス部 vs シミハム&リシャコ」
シミハムはすでに”それ”を消し終えていた。
以前にも述べたが、シミハムは敵対する者よりは協力的な者の方が消しやすく、
また、意思を持つ者よりは無生物の方がより簡単に存在を消すことが出来る。
精神のすり減り具合から、もうシミハムとリシャコを交互に消滅させると言うような芸当は出来なくなるが、
ここからのシミハムは、無駄な消耗なしで戦いに臨むことが可能になる。
「……!」
シミハムは数メートル先にいるナカサキ目掛けて攻撃を仕掛けた。
下半身を故障しているナカサキに追い打ちをかけることで、チームダンス部の戦力を大幅にダウンさせようと考えたのだ。
(シミハムは何をしようとしているの?こんなに離れてるのに攻撃が通るわけが……)
自分とシミハムの距離は十分に離れていると判断したナカサキは、いたずらに逃げずに、観察に徹することにした。
何かの罠であることを警戒したのだ。
だが、これは罠でもなんでもない。
シミハムの武器はあっという間にナカサキの元へと達し、腹に強烈な一撃を喰らわせる。
「!!?……な、何を!?」
シミハムはただ普通に、己の武器を使って攻撃しただけ。
だと言うのに、食卓の騎士であるナカサキともある者が全く防御することなく受けてしまったのだ。
「……」
シミハムは武器を手前に引っ張り戻そうとした。
そしてそのついでに、自分を延々と監視し続けているサユキ・サルベの背中へとぶつけていく。
「えっ!?……」
果実の国の中でも上位の実力者であるサユキまでもがシミハムの攻撃をただただ受けていた。
サユキはシミハムの一挙一動を逃さず監視していたはず。ボーッとしてなんかはいない。
では何故このような事が起きるのか?
どうやら、この状況を理解できていないのはナカサキやサユキ、マイマイにサヤシらチームダンス部だけではないようだ。
同じベリーズのリシャコも混乱を隠せずにいた。
「団長さすがだね!……あれ?でも、どうやって遠くにいる相手に攻撃を当てたの?……」
リシャコと同様のことを被弾したナカサキとサユキも思っていた。
(あれ?……全然思い出せない……)
(私とナカサキ様……今、どんな攻撃を受けたの?……)
((シミハムは素手なのに、いったいどうして???)
シミハムが自身の無のオーラで消したのもの、それは「三節棍」だ。
自身が愛用する武器の存在感さえも消してしまったのである。
今のはほんの小手調べ。
武器を消す事がどれだけ恐ろしいか、チームダンス部はとくと思い知ることになるだろう。
976
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/28(金) 15:41:51
>>973-974
場面が移ってしまったのでモモコの行動の答え合わせはまだ先になりますが、
ご想像の通りのことが起きると思いますw
糸をやたらと推してたのもこの時のため……
977
:
名無し募集中。。。
:2019/06/28(金) 23:10:00
なんていいタイミングでwてかシミハム戦続いてたの忘れてた汗
もう一度最初から読み返さなきゃ…マーサー王からwって、ログ置き場みれなくなってる?
978
:
名無し募集中。。。
:2019/06/29(土) 10:57:27
シミハムの能力って応用力高すぎてほんと無敵ですよね
今アニメでJOJO5部見返してるのですがキングクリムゾンくらいは強い気がします
こうやったら視認できて破れるかなとか投げかけたい質問を堪えるのに必死ですw
979
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/06/30(日) 15:46:35
過去ログは本当に再整理しないといけませんね。
次スレ立つ頃には無いと困りますしね。
シミハムのルールについては私も把握していない可能性もありますw
以前と今とで考えが変わっちゃったとかで……
980
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/07/01(月) 03:28:41
ログ置き場を新しく作成しました。
https://masastory.web.fc2.com/
第一部と第二部をすべてアップしました。
誤記修正などは行わず、そのまま上げています。
※文章の修正・変更は随時行っていく予定です。
981
:
名無し募集中。。。
:2019/07/01(月) 11:41:54
ログ置き場復活ありがたい!個人的には新狼消滅で幻の作品となった仮面ライダーイクタの続編がまた読みたいんで掲載してくれるの期待してます
982
:
名無し募集中。。。
:2019/07/01(月) 23:22:34
作成お疲れ様です。。m(_ _)m
元より記憶力が乏しく初編イクタ共に歯抜けどころでないほど
ゴッソリ物語を失念してしまっているので
再掲載の暁には自分も利用させていただきます><
983
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/07/02(火) 13:03:42
この状況でも変わらず、サユキはシミハムを凝視し続けていた。
シミハム本体に視線を集中させるあまり、その武器にまで注意を払えておらず、
結果的に三節根の存在を忘れる形になったのは悲劇と言えるだろう。
(仕掛けてくる!)
とは言え、棍を振ろうとするシミハムの腕の動きは見える。
襲いくる攻撃に備えてナカサキは身構えたが、
攻撃方法の全貌を把握していないために前方への防御しかしていなかった。
シミハムは三節根を手足のように扱うことが出来る。
ナカサキが前方向を守ろうとするのであれば、打撃の軌道を少し変えてやれば良い。
右方向から打ち込めばナカサキの腕は大きく負傷する、シミハムはそう考えた。
「危ないっ!!」
「!」
そんなナカサキのフォローに入ったのはサユキだった。
敵の武器が見えていないにもかかわらず、ナカサキの右側に走り込み、鉄のヌンチャクで根を受け止めたのである。
「サユキちゃん!?」
「ナカサキ様……無事で良かった……」
サユキの行動にシミハムは驚いた。
殺気を可能な限り放たないように抑制していたつもりだったが、
手首の動きの変化を見透かされたと言うのだろうか。
とは言ってもモーションの違いはとても些細なものだったはず。
何故サユキはそれを感じ取ることが出来たのか?
結論は出なかったが、ここで改めてシミハムはサユキを脅威だと認定した。
今も自分を見続けようとするなら、そうさせておけば良い。
目視ではどうにもならない攻撃を繰り出すまでだ。
「シミハム!……うん、分かったよ。」
アイコンタクトを受け取ったリシャコは、シミハムを護ることの出来る位置に陣取った。
少しでも相手が攻めてこようものならお得意のカウンターで反撃するつもりなのだ。
守られる側のシミハムはと言うと、棍を派手に大きくブンブンと回し続けていた。
こうすることで根の先に遠心力を蓄積させているのだが、
武器の見えぬ周囲の者には、シミハムがまるで激しいダンスを踊っているかのように見えていた。
「これ……とてもまずいんじゃ……」
サユキだけでなく、ナカサキ、マイマイ、サヤシの3名も今の状況が切迫していることに気づいていた。
シミハムの得物を視認出来てはいないが、このまま放っておけば強烈な一撃が襲いくるであろうことは感じ取ることが出来る。
恐らくは、ガードすればその腕ごと破壊されてしまうような攻撃を繰り出してくるのだろう。
だが、シミハムの前にはシミハムと同じくらい恐ろしいリシャコが仁王立ちしているのである。
シミハムを止めるには、リシャコをなんとかしなくてはならないのだ。
984
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/07/02(火) 13:09:39
>>981-982
仮面ライダーイクタのMOVIE大戦の方は私もログを残してないんですよね……
新狼のログを持っている人が現れない限りは難しそうです……
985
:
名無し募集中。。。
:2019/07/02(火) 14:17:35
>>984
ガーン・・・作者さんも持ってないのかorz
前のスマホの2chmeteにまだ保存されてるからなんとかしたいけど取り出し方がわからない
986
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/07/03(水) 12:37:48
連合軍側の戦力を整理しよう。
下半身の故障により移動が制限されるナカサキ、
負傷しているうえに、一度”溺れさせられた”ために、これ以上肺に攻撃を喰らうわけにはいかないサヤシとサユキ、
そして、比較的ダメージの少ないマイマイだ。
この4人でリシャコを短時間で倒さなくてはならない。
となれば一番戦えそうなマイマイが代表に立って戦うのがセオリーではあるが、サヤシには心配事があった。
(なんでじゃろか……マイマイ様からは他の食卓の騎士とは全然違うような気がしちょる……
本当に失礼じゃけど、クマイチャン様と対峙した時のような恐ろしさが全然感じとれん……)
同じような感想はサユキも抱いていた。
もちろんマイマイが弱いと言いたい訳ではない。
実際、リシャコに斧による有効打を与えたのもマイマイだ。
そのような戦果は今のところサヤシもサユキも挙げられていない。
しかし、食卓の騎士の一員であることを考えると物足りないのも事実。
マイミ、ナカサキ、アイリ、オカールが味方についた時のような心強さが、マイマイの場合には全くと言って良いほど無いのである。
「マイマイ!ここは動く時だよ!」
後輩のそういう思いを感じ取ったのか、ナカサキからマイマイに発破をかけていった。
しかしマイマイの返事は快いと言えるものではなかった。
「分かってる、分かってるけど……」
この時のマイマイはひどく震えていた。
それを見てナカサキは憤りまで感じ始める。」
「いったいどうしたっていうの!?いつもはそんな風じゃないじゃん!
リシャコとは何回も戦ってきたのに、どうして今更怖がっているの!?」
「違う……違うんだよ……」
なかなか攻めてこないマイマイに対して、相手側のリシャコまでもがイラつき始めてきた。
せっかく構えて待ち構えているのに、これでは張り合いがない。
それに、このまま後輩に無様な姿を見せ続けるのも容赦ならない。
「ねぇマイマイ、やる気あるの?」
「……!」
敵にまで呆れられる先輩の姿を、サヤシとサユキはもう見ていられなかった。
だが、これには何か裏があるに違いないとサユキは考えた。
敵を油断させるためか、それとも何かの時間稼ぎか。
何か他の真意があるはずと推察したサユキは耳を澄ましていった。
持ち前の耳の良さでマイマイの心音、呼吸音を聞き取ろうとしたのである。
(え……そんな……ありえない……)
サユキがキャッチした音、それはただただ怯える音だった。
この状況に恐怖し、今すぐ逃げ出したいと考えている。
それを理解したサユキはもはや幻滅や落胆をしなかった。
絶望したのだ。
こんなメンタルで戦いに臨む食卓の騎士が存在することが信じられずにいるのである。
(……)
一方で、シミハムはマイマイがこんな状態にある理由に辿り着きつつあった。
とても馬鹿げていて、にわかには信じがたいような理由だが、
マイマイの性格ならばそれもあり得ると思ったのだ。
この状態のマイマイをナカサキさえも知らないと言うのは少し驚きだが、
きっと今のようなケースに出くわす機会が無かったのだろう。
そして、シミハムの仮説が正しければ、倒す相手の順番を考慮する必要がある。
まずはナカサキだ。そしてその次にマイマイ。
大事なのはマイマイより先にサヤシやサユキら後輩を倒してしてしまわないこと。
それに注意することで、シミハムとリシャコの優位をキープすることが出来る。
987
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/07/03(水) 12:41:57
>>985
取り出し方は分からないですね、、、お役に立てなくてすいません。
テキスト形式で見れればあとはこっちで編集出来ますが、、、
988
:
名無し募集中。。。
:2019/07/03(水) 13:27:59
仮面ライダーイクタはイラストも載ってる専用のまとめサイトがあったはずだけど消えちゃった?
989
:
名無し募集中。。。
:2019/07/03(水) 17:21:25
https://www48.atwiki.jp/nagosan/sp/
これ違いますか?
990
:
名無し募集中。。。
:2019/07/03(水) 20:27:09
それそれ!ありがとう!
991
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/07/04(木) 01:54:16
そちらは本編の仮面ライダーイクタをまとめったくださった方のWIKIですね。
実はその後に仮面ライダーイクタのMOVIE大戦っていう話も書いてたんですよ。
そっちの方のデータは新狼と共にお亡くなりに……
992
:
◆V9ncA8v9YI
:2019/07/04(木) 01:56:52
次スレ立てました。
話の続きは次スレの方に書きます。
SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部②
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1562172958/
993
:
名無し募集中。。。
:2019/07/04(木) 08:12:28
壊れかけのスマホでどこまでできるか分かりませんがテキスト形式でお渡しできるよう頑張ってみます!
新スレ乙です。復帰してから一気にスレがのびましたねw
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