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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部
827
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/14(土) 14:32:03
ハーチンは周囲を見渡した。 氷は割れはしたが水面にまだいくつか残っている。
これを利用しない手はないと考えたハーチンは華麗にジャンプし、よりチサキに近い氷に飛び移った。
この行動に戸惑ったのはチサキだ。 水中から脱出された時点で予想外だと言うのに、そこから逃げずに更に迫ってくるなんて恐怖でしかない。
(あの人をもう一度水の中に落とさないと……)
チサキは両手を合わせて水鉄砲を作った。 手の中の水を圧縮することで水流を外に飛ばそうとしているのだ。
ただしチサキの水鉄砲はそんじょそこらの子供の遊びとはレベルが違う。
赤面により高温になった自身の汗を混ぜ込んだ熱湯を、非常に高い水圧で噴出させていく。
(熱っ!!いや、痛っ!!)
チサキのお湯鉄砲は見事にハーチンの脚に命中した。その結果、ジャンプの勢いを失ってすぐ下の水に落ちてしまう。
落下した先には丁度チサキがいた。 水中でにらめっこする形になっている。
(良かった、ちゃんと落ちてくれた。 後はこのまま底まで沈めれば終わるんだ……)
泳ぎの得意なチサキは息だって普通の人より長く続く。 息止め勝負ならハーチンに完全勝利できるだろう。
さっきは魚をスピンで振り切られてしまったので、今回はチサキ自らハーチンの腕を掴みにかかった。
ところがここでハーチンが予想外の行動を取り始める。なんとチサキに抱きつきだしたのである。
(ペアの相手を付き合ってくれや!!)
(え?え?なに!?なんなの!?)
スケートにはソロだけでなく2人で魅せる競技も存在する。ハーチンはチサキを抱きかかえたまま、さっき自分がやったようにスピン&ジャンプで水上へと脱出する。
そして着地先である硬い氷面にチサキの背中を強く叩きつけた。
「ぎゃあ!……痛い……苦しい……水の中に入らなきゃ……」
「逃すと思うか!アホがっ!!」
慌てて退散しようとするチサキの背中に向かって、ハーチンは鋭い蹴りを繰り出した。
スケート靴のブレードがチサキの背の肉をぱっくりと切り裂き、多量の血液を噴出させる。
「ああああああああっっっ!!!」
「甘ったれんなや!まだ終わらんからなっ!!」
いたいけな少女が顔を真っ赤にして泣き喚いてる姿を見たら大抵の人は攻め手を緩めるだろう。
だがハーチンはそうしない。好機を逃すまいと更に二発、三発、四発の蹴りを入れていく。
ここまでされたらチサキも黙っていない。周りに水もないと言うのに水鉄砲で高圧の水流を飛ばし、脂肪の少ないハーチンの横っ腹を抉り取ったのだ。
「あああ!もう!あっち行ってよ!!来ないでよ!!」
チサキが飛ばしたもの、それは自身の血液。
高温の汗よりもグツグツに煮えたぎっている血を手中に集めてハーチンに噴射したのである。
水鉄砲を撃つための血なら十分大量に流している。ハーチンが近づく限り、チサキはこれを何回も発射することだろう。
しかしそれでもハーチンはひるまなかった。ガンガン接近し、ブレードでチサキの胸を蹴りつける。
「なんなの!!どうしてこっちに来るの!!」
「ウチが帝国剣士やからに決まっとるやろがい!ここで逃げて帰ったら先輩たちにどう顔向けしろ言うんや!!」
「はぁ!?さっきから剣なんて持ってないじゃない!」
「スケート靴がウチの剣や!剣の形をしてるかどうかは大したことやあらへん!大事なのは誇りや!剣士として戦うことさえ出来てれば立派な剣士や!」
「ええ?……剣士ってなんなの……?」
この時点では2人はもう限界に近かった。
チサキは何か所も斬られて血を流しすぎているし、ハーチンだって酸素不十分のまま戦っているとこに血鉄砲を受けすぎている。
この状態で水に入ってももう何にもならないのかもしれないが、チサキは這ったままの姿勢でなんとか水場に到達し、小指だけ入れることが出来た。
しかしそれもそこまで。 阻止するためにやってきたハーチンに首を掴まれてしまう。
「あぁっ……」
チサキの願いは叶わず、自身のフィールドである水中に入ることはできなかった。だが、小指の一本だけは水面に触れている。
その時に発生した水の波紋は、チサキの思いを水中にいる魚たちに超音波のような形で伝えてくれる。
そして、その時のチサキの思いは「どんな形でもいい、勝てるなら剣士として戦ってもいい、だから勝ちたい!」というものだった。
主人のその強い思いに応えるために1匹の魚が勢いよく外に飛び出し、
ハーチンの胸を鋭いヒレで一閃、斬り裂いた。
「は?……え?……」
チサキのためにハーチンを斬った魚の名は"太刀魚"。 この魚の見た目と鋭利さはまさに刀剣のそれと言っても良い。
満身創痍のところに鋭い斬撃を受けたハーチンはたまらず倒れてしまう。
「どういうこと?……私、勝ったの?……」
ハーチンとチサキの勝負はチサキが勝利した。
勝因は、水中に潜む刃を引き出した彼女の可能性。
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