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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

884 ◆V9ncA8v9YI:2018/06/20(水) 01:30:42
姿もなく、音すらもなく、クマイチャンに接近して牙を剥いたのは帰宅番長リナプー・コワオールドだった。
"知りがたきこと陰のごとく"
派手で騒々しい集団・アンジュ王国の番長らの陰で、しっかりと確実に成果を出すのが彼女の仕事なのである。

「しまった……!」

クマイチャンはひどいしかめっ面をしていた。
傷つけられた腹が痛くて苦しんでいるワケではない。
リナプーの攻撃をみすみす受けた自分自身をマヌケだと恥じているのである。
シミハムのように存在そのものを"無"にするのであれば知覚できなくても仕方ないが、
目の前にいるリナプーはそこまでの域には達していない。
クマイチャンも食卓の騎士ほどの戦士ならば不意打ちに気づくべきだったのだ。
しかし、それも無理のない話だ。
今回、番長たちがとった作戦の名称は「風林火山」。
そこから「山」でお終いというイメージをカナナンに植えつけられていたため、
メイによる「山」の攻撃が完了した時点で集中力を切らさずにはいられなかったのである。
そして、この作戦は「陰」で終わりでもない。
「風林火山陰雷」を〆るのは「雷」に他ならない。

「私どうしても勝ちたいんですよ。」

小さな声がボソッと聞こえたと思いきや、間髪入れずに稲妻でも落ちたかのような爆音が轟き始める。
"動くこと雷霆のごとく"
乙女の逆襲の始まりを告げる雷鳴のように聞こえた音の正体は、マホ・タタンのスナイパーライフルの発砲音だ。
ところが、勝負時だと考えたマホは通常とは大きく異なる方法で攻撃を仕掛けていた。
そう。マホがここで動いたのだ。

(こ、こんなのアリ!?)

クマイチャンが驚くのも当然だ。
マホはなんと18丁の銃を同時に持ち、一斉に銃撃を放っていたのである。
無茶な体勢からの一斉射撃であるため、弾丸は真っすぐ飛ばないのがほとんどではあったが、
標的のクマイチャンの体躯が通常の人間よりずっとずっと大きいせいで、18発18中とは行かなくても数発はヒットさせることが出来た。
狙撃手という役割を考えると、本来であれば一発ずつ丁寧に撃たねばならないはず。
この行為は捉え方によってはズルくも見えるかもしれない。
だが、マホは番長の勝利を心から望んでいたのだ。
だからこそ、最後のこの瞬間ではじめて18連同時という意外性満点の行動をとったのである。
風林火山の次があっただけでもクマイチャンは戸惑ったというのに、
そこに更にこんな仕打ちをされたものだから、やはり相当効いたのだろう。
クマイチャンは立っていられなくなり片膝をついてしまう。

「……!!」

番長一同は今すぐにでも諸手を挙げて喜びたいと思っていた。
しかし、伝説の存在がここで倒れるはずも無い。
ただでさえ殺し屋のように恐ろしい目が、より一層鋭くなったことに気づくのにそう時間はいらなかった。

「気をつけろよ、みんな……どうやら完全に怒らせちゃったみたいだ。」

鉄球を握るタケ・ガキダナーの手は震えていた。
これから迫りくる真の恐怖を、心で理解したのだろう。


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