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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

587 ◆V9ncA8v9YI:2016/10/22(土) 23:50:09
こうなったらもうチナミの独壇場だ。
たった数歩だけ脚を前に進めただけで、番長らに手が届くところにまで来てしまった。
もはや逃げても無駄。どれだけ遠くに行っても追いつかれるに違いない。
もっとも、番長3人は元より交戦する心構えが出来ていた。
カナナンにはソロバンがある。
メイにはガラスの仮面がある。
リカコには固形石鹸がある。
リナプーも含めて番長のほとんどが過去に「変わってるね」と嘲笑われ、
「よく言われるの」そっと笑い返した経験があると言う。
心の中じゃ牙を剥いて、だ。
普通と違った所があるならいっそ磨いて武器に変えてやればいい。
試練は尽きないが動き出さねば変わらないそれが人生だ!

「メイ!リカコ!ここからは気合い入れて……」
「あ、ちょっと借りるよ。」

掛け声を出そうとしたカナナンの出鼻をくじくように、チナミはメイとリカコの武器を取り上げた。
戦士の命よりも大事な武器を、いとも簡単に奪い取ってしまったのである。
特にメイは前にもガラスの仮面を取られた経験があるため別段警戒していたのだが、
そんな厳重体制も御構い無しに、チナミは友人から鉛筆でも借りるかのように掴み取っている。
また今回もすぐに返してくれれば嬉しいのだが、
残念なことにそうはいかなかった。

「可哀想とは思うけどさ、壊させてもらうよ。」

右手に持ったガラスの仮面と、左手に持った固形石鹸を、
チナミは勢いよく硬い地面に叩きつけた。
通常の人間のそれを遥かに超えたスペックの彼女がそんなことをするものだから
ガラスの仮面も固形石鹸も粉々になってしまった。
比喩表現とかではなく、衝撃力が強すぎるあまり本当に粉になったのである。
その光景を目の当たりにしたメイとリカコはショックを隠せないようだ。

「あ、ああ……」

しかしいくら武器が破壊されたとは言ってもまったく戦えないという訳では無いだろう。
ガラスの仮面をつけると演技力が上がるというのはつまるところ思い込みであるため、物理的な戦闘能力は変わらないはずだし、
リカコに至ってはカバンの中にまだたくさんの固形石鹸を詰め込んでいる。
要するに何も心配することは無いのである。
しかし、彼女らは簡単に割り切ることは出来なかった。
自らの信念とも言える武器をたった一瞬で砕かれた映像が目に焼き付いて離れない。
もうドン底に堕ちたような気分だ。
故にメイとリカコの耳にはカナナンの警告が入らず、
チナミに強くスネを蹴られて転倒してしまった。
起き上がる気力は、もはや無い。

「よーし、二転び目と三転び目!」
「メイ!!リカコ!!!……嘘やろ……」


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