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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

43 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/02(火) 01:51:05
マリアの放つ強烈なスイングは、帝国剣士の中でも上位の破壊力を誇っていた。
これをひとたび受ければ、大の大人だろうと場外まで吹っ飛ばされてしまうだろう。
ましてや相手は小柄なモモコだ。
例え帝国剣士であろうと、ホームラン王であるマリアの打力ならば圧倒することが出来る。
もっとも、それは「ヒットすれば」の話だが。

「えっ!?……消えた……」

マリアは馬上のモモコを殴り落とすつもりで両手剣を振り切っていた。
ところが、そこにはもうモモコは居なかったのだ。
それだけではない。モモコの乗っていた「馬」ごと消滅していたのである。
ではどこに消えたのか? その答えは同期のアカネチンがすぐに教えてくれる。

「マリアちゃん後ろ!」
「!?」

アカネチンの言葉通り、馬とその上に跨るモモコはマリアの背後に突っ立っていた。
まるで瞬間移動だ。マリアは馬の移動する軌道すら認識することが出来ていない。
先ほどまで激昂していたマリアも、この奇妙な現象を前に困惑したようだった。

「え?え?いったいどうして?」

馬の走るスピードが速いというのはまだ理解できる。
競走馬ともなれば70キロもの時速で走るというのだから、速いのは当然だ。
だが、それほどまでの速度を出しながらも、且つ急に止まることの出来る馬なんて聞いたことがない。
だというのにこの馬は確かにマリアの前方から後方まで超スピードで走り抜け、
そしてその場にピタリと止まって見せたのである。
信じられないキレの良さだ。

「あ……あ……でも、倒さなきゃ……」

戸惑いで頭の中がひどくグチャグチャになってはいたが、サユを守りたいという熱意までは押しつぶされていなかった。
敵に背後を取られたのであれば、すぐに振り向いてから斬りかかれば良いだけの話。
むしろその回転力をパワーに変えて剣をぶつけてやろうとも思っていた。
ところが、その行動を同期のアカネチンに制されてしまう。

「だめ!!動いちゃだめ!!」
「えっ?……」

アカネチンの制止は少しだけ遅かった。
いつの間にかマリアの周囲に張り巡らされていた「謎の糸」は、マリアの動きに連動して肉に食い込んでいく。
紐で縛られたハムのようになったマリアの二の腕はすぐに変色し、そして血液が噴出しだす。
一本一本が鉄のように固いその糸は、腕の薄皮など簡単に裂いてしまったのである。

「いやあああああああああああ!!」

バットを振り切る前に止められたため人体切断とまではいかなかったが、
それでもマリアは意気消沈するには十分すぎるほどのショックを受けてしまった。
これではもうモモコに立ち向かうことなど出来やしない。

「いや〜助かった助かった。あなた、"アカネチン"って言うんだったっけ?」
「……なんですか。何が言いたいんですか。」
「何って?私は礼が言いたいの。あなたがその子を止めてくれたおかげで、モモは人殺しにならずに済んだんだから。」
「……」
「信じてたよ。あなたが私の技を見切るくらいのことは、ね。」


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