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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

381 ◆V9ncA8v9YI:2016/06/03(金) 12:57:02
タイサは箸を置いて、店外へと出て行ってしまった。
まだ完食していないのに席を離れたものだから一同は驚く。
普通に考えれば「試合放棄」とみなされ、トモの不戦勝となるのだが、
当のトモ・フェアリークォーツの方がそれを認めなかった。

「この状況で逃げ出すような女じゃないでしょ。
 一緒に戦ってきた私が、一番よく分かっている。」

トモの言う通り、タイサの闘志は衰えていなかった。
では何故に店の外へと出たのか?
それは事前に設置しておいた鉄棒で逆上がりをするためだったのだ。

「なにアレ!?いつの間にあんなモノが……」
「いやカノンさん、それよりも回転数の方がとんでもないですよ……!」

タイサは無言で黙々と逆上がりを繰り返し行っていた。
その回数も二回や三回では無い。
数十回もノンストップで回り続けているのである。
超こってりラーメンを食べた後に高速回転をしようものなら気持ち悪くなってしまうのではないかと心配したが、
ことタイサに限っては、こっちの方が調子が良いようだ。

「よしっ!お腹すいたであります!」
「カロリー消費はバッチリってワケね……」

逆上がりが行われている間も、トモは休まずに麺をすすり続けていた。
タイサのことだから、回転中の遅れを取り戻す自信が有るのだろうと推測していてのである。
そしてその予測は見事に当たっていた。
お腹を空かせたタイサが食すスピードは、さっきまで以上に加速していてのだ。
次第にトモのアドバンテージは縮まっていき、残量50グラムといったところで追いつかれてしまった。

「くっ!逃げ切れるか!?」
「いや!ここで追い抜いてやるであります!」

どちらも苦しい時間帯だ。本来ならばラーメンが嫌いになる程の苦痛だろう。
だと言うのに、トモもタイサも、笑みを浮かべていた。
その理由を「ラーメン大好き」以外に探すのは野暮かもしれない。
朝も昼も夜も夕方もずっと思うはお前のことばかり。
四六時中頭の中はしなやかな体 SO ボディライン
適度に濡れたおまえつかんでくちびるにそっと近づける
そうさトモとタイサはラーメン大好き女子戦士だ。

「トモ負けないで!」「トモ勝って!」「あとちょっとだ!」
「タイサ追い越せ!」「タイサすごいぞ!」「完食は近い!」

気づけば周囲には2人へのエールが鳴り響いていた。
トモだけでなく、ここまで健闘してきたタイサへの応援も少なくない。
いや、むしろ多いと言えるだろう。
大歓声の中で、トモとタイサは最後の一口を飲み込んでいく。

「ど……同時か……」
「もう……さすがに限界であります……」

飲み込んだタイミングで、二人は食い倒れてしまった。
椅子から転げて床に寝っ転がったのだ。
その様はまるで、少年同士が喧嘩でもした後のよう。

「……タイサさん、正直言って見くびってましたよ。考え、改め直します。」
「それはこっちもであります。 でも今は、トモと戦えて心から良かったと思っているであります。」


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