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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部
820
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/10/11(水) 12:59:41
この寒い時期に冷水に落とされたとあれば、ハーチンの体力と精神力は急激に消耗される。
体温はごっそりと奪い取られ、呼吸できぬ恐怖が心臓を鷲掴みにし、脳はパニック状態になる。
そこにチサキが魚の軍団をけしかけたものだから状況は最悪だ。
魚はハーチンの窮地もお構い無しに顔を、腹を、手足を目掛けて体当たりしてくる。こんなことをされたらほんの僅かに体内に残った酸素だって吐き出さざるを得ない。
しかもワカサギ達は水面側にも壁を作るように陣取っているため浮上したくてもさせてくれない。
(苦しい!苦しい!本当に死んじゃう……)
これを絶体絶命と言わずになにをそう言うのだろうか、というくらいにハーチンは窮地に立たされていた。
水、そして魚を支配するチサキ・ココロコ・レッドミミーに水中に引き込まれた時点で勝ち目は薄かったのだろう。
だが、「勝ち目は薄い」とは即ち勝つ可能性はゼロパーセントでは無いということ。
極限状態にあるハーチンにもまだ出来ることはあった。 いや、極限状態だからこそ若き日に修練して得た技能が活きてきたのだ。
スケート選手は滑るだけではない。 スピン、そしてジャンプも欠かすことのできない要素である。
ハーチンは残った力を振り絞って自身の身体を捻りきり、その勢いで周囲の魚を弾き飛ばした。 そしてそのまま水の内から外へと跳びあがっていく。
「プハァ!!息……息が出来る!!助かったぁ!!」
ハーチンが脱出した先にはまだ破壊され尽くされていない氷面があった。自分の有利な居場所に戻ることが出来たという訳だ。
だが、それでも、チサキとはこれ以上戦わない方が賢明だろう……
敵は水の支配者。そのチサキはハーチンの復帰に驚いた顔をしてはいるが、依然変わらず水中に陣取っている。
このまま戦ってもチサキの有利は変わらない。ならば諦めて逃げるのが賢い選択。長い目で見ればそれが大勝利。
(って、さっきまでのウチならそう思ってたんやろなぁ……)
ハーチンの目はただ一方向、チサキの方だけを向いていた。 彼女は幼少期の苦しい修練経験と同時に初心までも思い出したのだ。
先輩たち、そして同期たちは今もこうして苦しい戦いを繰り広げているはず。 だったら自分だってモーニング帝国剣士としてそこに並びたい。
「一緒に、この感動を共有したい!!」
マイ・セロリサラサ・オゼキングに乗っかられたマリアも、ハーチン同様に劣勢だ。
あと数発良いパンチを貰ったら倒れてしまいそうなこの状況下で、マリアは頭の中で色んなことを考えていた。
このままマイに敗北してしまえば敬愛するサユを助けられなくなるがそれでも良いのか?
目の前のマイは戦闘力だけでなく野球の腕前も優れている。マリアは戦いでも野球でも勝てないのか?
「そうじゃない!!」
マリアは全てを受け入れなかった。わがままかもしれないが、甘んじるつもりは全くない。
この状況を打破するためなら思いつく限りの手段をなんでも尽くす。そう決意し、マイに抱きつきにかかった。
「あれは!!……あの時、俺がマリアにやったのと同じだ!!」
マリアの突然の行動をみたロッカーはつい声を上げてしまった。 隣でドグラが若干軽蔑した目で見てるのも気にならないくらい熱が入る。
以前ロッカーはマリアの攻撃を阻止するための防衛法としてボクシング技術のクリンチを使用していた。それを今こうしてマリアが使っているのだ。
「なにすんのっ!放してよ!!」
いくらマイが哺乳類のパワーを活用しているとはいえ、体躯はマリアの方が大きい。 この抱きつきからは簡単には逃れられない。
そして、すぐさま襲いかかる背中の激痛によってマイはマリアがとったこの行動の意味に気づきはじめる。
「!!!…………これ、まさか……」
その痛みの発生源が、遠くから監視していたドグラとロッカーには丸分かりだった。
「あのマリアって子すごいね……マイに抱きつくと同時に空に向かってナイフを投げたんだ。」
「あぁ、そのナイフが落下してきてマイの背中にブッ刺さったんだからそりゃ痛いだろうな。」
マリアは野球の神様にごめんちゃいまりあと謝った。 クリンチも不意打ちのナイフも野球のルールに沿った戦い方とは言えないからだ。
だが、これで劣勢をある程度はひっくり返すことが出来た。 ここからはスポーツマンシップに則って戦うが出来る。
慌てて距離を取るマイに対して、マリアは挑戦状を叩きつけた。
「一球勝負しようよ……マリアがあなたの心臓に向かってナイフを投げるから、もう一度さっきみたいに打ち返してみて。」
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