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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

469 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/15(金) 12:59:55
これまでのキッカは、チャクラムの旋回する範囲のみを注視していた。
ターゲットはそのエリア内に存在するため、それ以外の箇所をわざわざ見る必要が無かったのだ。
しかし、対象が消えたとなれば集中する範囲を拡大しなければならない。
周囲の気配を敏感に察知して、アカネチンが後方から迫ってきていることを把握する。

(いつの間に後ろに?……まぁいいや、一発殴ってビビらせちゃおっと。)

無数のチャクラムを掻い潜った努力は認めるが、それもここまで。
キッカは遠距離攻撃を得意とするが、肉弾戦だってそんじょそこらの兵では敵わなぬほどに強いのである。
アカネチンのような子供が相手ならジャブの一発で無力化出来るだろう。
そのような風に終わりまでの道筋を冷静に考えていたキッカだったが、
振り返ってアカネチンと対面するなり、急に取り乱してしまう。

「えっ!?……その眼は……!!」

アカネチンが思ったより近くに迫っていたことも、
手に握った印刀が今まさに喉元に突きつけられようとしていたことも、
キッカを動揺させるには不十分な要素だった。
では何がキッカの心を惑わせたのか、それはアカネチンの"眼"にあった。
まったく光の通っていないその無機質な眼に、全てを見透かされているような気がしてならなかったのだ。
戦士としての経験が豊富なキッカは、その眼がどういう性質を持つものなのかすぐに理解した。
つまりアカネチンはチャクラムとキッカ自身の行動パターンを100%に近い精度で把握し、
安全にここまで辿り着けるルートを見つけた上で、刃を喉に突きつけるまでに接近したというわけだ。
平然とそこまでやってのけてしまう、この異様な眼が、キッカのトラウマを呼び起こす。

「近寄るなっっっっ!!!」

キッカは無意識のうちに、アカネチンの脳天を硬い握り拳でブン殴っていた。
身体能力自体は同期に遠く及ばないアカネチンがこのゲンコツに耐えられるはずもなく、
たった一撃でその場にぶっ倒れてしまう。
アカネチンが完全に寝っ転がったところで、キッカも我に帰る。
そして非常にバツの悪そうな顔をしながら、こう呟くのだった。

「うわ〜……やりすぎちゃった……」


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