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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

725 ◆V9ncA8v9YI:2017/07/10(月) 13:05:35
着々と仲間を増やしつつあるカリンを見て、ハルとサユキは戸惑っていた。
戦士としてここで立ち上がるべきだということは十分に理解しているが、
マイミと同等の存在であるチナミに植え付けられた恐怖のせいで動けずにいる。
食卓の騎士を相手にするという思考自体を拒否してしまっているのだ。

「どうしてアイツらは戦えるんだ?……言っちゃ悪いけど、どこかおかしくなってるんじゃ……」

確かに、カリンやマーチャンは恐怖心を感じる機能がマヒしているのかもしれない。
リナプーやオダだって同様だ。
彼女らは普段から何を考えているのかよく分からないので、
常識離れした思考回路の持ち主だと思えば、今の選択も納得いく。
だが、トモ・フェアリークォーツは比較的正常な判断を下せる人間だったはず。
だと言うのにカリン達の側についている。
その事実がサユキを困惑させていた。

「ハル……私は自分が情けないよ……」
「サユキ?」
「カリンはともかく、トモまで前に進んでるって言うのに……私は立てもしないんだ……」
「情けなくなんかないだろ! 周りを見ろよ! 座ってるやつの方がずっと多いくらいだ!
 だからさ、泣きそうな顔をやめてくれよ……こっちだって泣けてきちゃうじゃないか……」
「 ハル……」

激しく揺らいでいたサユキの精神は、ハルの慰めのおかげで安定に向かいつつあった。
しかし、その安定も長くは続かない。
むしろ急転直下。失意のどん底に突き落とされていく。

「一緒に……戦わせて……」

ここにこて、KASTのアーリー・ザマシランが目に涙を浮かべながらカリンに訴えたのだ。
全身がプルプルと小刻みに震えていることから、彼女はひどく恐怖していることが分かる。
それでも、味方の力になりたい一心で身体に鞭打って立ち上がったのである。
あからさまに恐れている者の参戦にハルは驚愕したし、
サユキは今いるこの空間に耐えきれず、地に顔を伏せてしまった。


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