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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

757 ◆V9ncA8v9YI:2017/08/23(水) 18:35:45
ハルの必殺技を背中で受けたマイミは悶絶しそうになった。
非力な子供が振るっても鞭は痛いのと同じ理屈で、
しなる竹刀は実際のダメージ以上に痛みを与えてくれる。
しかもそれが予想外の方向から襲って来たので、あとほんの少し気が緩んでいたら意識が飛ぶところだったが、
マイミはなんとか耐えてみせた。
伝説とも呼ばれる彼女自身も実はまだ成長しており、
シミハムやリナプー、カリンらに立て続けに背後を取られた経験から、後方からの不意打ちに慣れてしまったのだ。
頭で考えるよりも早く背中に手が回るようにもなり、
一瞬にして右手でハルの竹刀を掴んでは、超パワーで握りつぶしてしまう。

「ああっ!竹刀が……」
「この程度なんてことないぞ!!次はサユキか!前からでも後ろからでもかかってこい!!」

この時サユキは心臓の音がドクンと聞こえるのを感じた。
絶体絶命の窮地において、自分がキーパーソンとなったことに緊張し、
鼓動音が大きくなってしまったのだとはじめは思っていた。
だが、そうでは無かったのだ。
サユキは耳が良い。
果実の国では名門コーチを呼び寄せて聴覚を鍛えるトレーニングを重点的に行なっているだが、
サユキの音を聞き分ける力はKASTの誰にも負けないくらい優れていた。
モーニング帝国城での戦いで姿の見えないリナプーの位置を察知できたのだって耳が良かったからだ。
そんなサユキの耳に今はいっている音はサユキ自身の心臓音ではない。
なんとマイミの鼓動を聞き取っていたのである。
それをサユキが自覚した途端に他の音までもドッと聞こえてくる。
次々と大きくなる心臓音だけでなく、ひどく息切れしている呼吸音やガクガクと震える脚の音を、サユキは正確に捉えていた。
サユキにとってはこの世と同等くらいに大きい存在であるマイミから発される音の組み合わせは、
「地球からの三重奏」と形容しても良いくらいだ。
そんな大きい存在が何故こうも異常音を発しているのか、
その理由にサユキは気づいてしまった。

("前からでも後ろからでも"って言った時から音が大きくなっている。
 マイミ様、ハルの技が効いていないように見えて、実は恐れているの?
 そりゃそうだ。みんながあんなに頑張ったんだから身体がボロボロになっていないはずがない。
 そこにハルから前と後ろを同時に攻撃されて、限界に近いんだ。
 だったら私もハルと同じことをしたら良いのか?……)

サユキはすぐに「ダメだ」と感じた。
いくらマイミがその攻撃を恐れているとは言え
自分からその事を口に出したのだから対策を全くしてこない事は有り得ない。
もちろんある程度は有効なのだろうが、マイミを倒しきるにはハルの"再殺歌劇"の上をいく攻撃を当てねばならないだろう。
ではどうすればいいのか?
二撃同時の上をいく攻撃とはいったいどのような攻撃なのか?

(そうか……三重奏だ。)

サユキにはハルほどのスピードは無い。
だが、マーチャンに直してもらったこの武器ならばそれを実現することが出来る。
サユキはそう確信した。


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