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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

4 ◆V9ncA8v9YI:2016/01/09(土) 22:10:19
「ごちそうさまでしたー。」

アカネチンは、食事が終わると決まってハルナンの後をついていく。
彼女らは重要な任務を任されているため、日に三回、とある場所に向かわねばならないのだ。

「アカネチン、ちゃんとお弁当は持った?」
「はい!カバンの中に入れています。」
「じゃあ行くわよ。サユ様のお部屋へ。」

ハルナンとアカネチンの任務。それはこの国の先代の王であったサユの元に食事を届けることだった。
この国では昔からのしきたりで、元帝王はモーニング城の地下で隠居することが義務づけられている。
地下室に缶詰めという訳ではないが、なるべくは外に出ないほうが望ましいとされているのである。
その目的や詳しいことは末端の剣士であるアカネチンにはまったく分からないが、
研修生時代に比較的サユと仲が良かったということもあって、給仕係に任命されたのだ。
朝、昼、晩のご飯を届けるために、唯一サユにアクセス可能なハルナンについていくのが日課になっている。

「それにしてもサユ様がこんな庶民的な料理を食べるなんて意外でした。」

アカネチンが運ぶ料理は、ご飯の上に焼鳥つくねを乗せて、その上から甘いタレをかけた丼ぶり料理だった。
このいかにもB級グルメな見た目の丼ぶりを先代の王サユが好むというのは有名な話であり、
信奉者も「サユ丼」と呼んで、食堂の在庫が切れるくらいに食べまくったという。
それを運んでいると、アカネチンもヨダレが出そうになってくる。

「お腹減ったなぁ……」
「アカネチン。さっきお昼ご飯を食べたでしょ?」
「思ってません!サユ丼を食べたいなんて思ってません!」
「あなたがサユ丼って言ったらダメでしょ。立場的に……」

そんなやり取りをしながら、ハルナンは厳重に施錠された扉のカギを開けていく。
ここから階段を下ればサユの部屋はすぐそこだ。
さっさとサユ丼をお届けしようと思っていたところに、とんだ邪魔が入る。

「アカネチンばっかりズルい!ハルナンさん、マリアも連れていってください!」
「「!?」」

登場したのはアカネチンやハーチンと同期の新人剣士である、マリア・ハムス・アルトイネだ。
ハルナンとアカネチン以外の帝国剣士らは城外の監視を行っているはずだというのに、
こちらの任務を羨ましく思うあまり、本業を疎かにして尾行してきてしまったのである。

「マリア?あなたの仕事はエリポンさん達と一緒に城門を見張ることでしょ?」
「ハルナンさん!アカネチンばっかりズルいんです!」
「まったくもう……」

この時アカネチンは、マリアが仕事熱心すぎるからこんなことを言うのだと考えた。
研修生時代のマリアは相当なエリートだったため、いろんな仕事をこなしたいのだろうと推測したのである。
当時はともかく今は同格。アカネチンも言いたいことは気にせず言うようにしている。

「マリアちゃんは監視任務の方に行きなよ、ここは私がちゃっちゃと終わらすからさぁ」
「ズルい!アカネチンがそうするならマリアはドゥーさんにベッタリくっつくことにする!」
「ちょっと!?なんでそこでドゥーさんが出てくるの?意味が分からないんだけど……」
「とにかくマリアも地下室に行きたいんです!ハルナンさんお願いします!」
「ハルナンさん!こんな訳分からないこと言うマリアちゃんなんか放っといて早くいきましょうよ!」

新人二人の喧嘩にハルナンは頭を抱えてしまった。
天気組団のハルやマーチャンを超える問題児はそうそういないと思っていたが、現にこうして二名存在している。
後輩育成の難しさを改めて痛感する。


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