したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

758 ◆V9ncA8v9YI:2017/08/24(木) 18:18:11
サユキが愛用するヌンチャク「シュガースポット」は木製だったが、
チナミの物作りを学習したマーチャンの修理によって、鉄製に生まれ変わっている。
重量が増したおかげで多少使いにくくなっているものの、破壊力は比べ物にならないくらいに上がっている。
これを上手く当てれば大抵の敵の意識を飛ばすことが出来るだろう。
しかしマイミはそういった「大抵の敵」には当てはまらないことは誰もが分かっている。
ならば当てるには工夫が必要だ。

(私の強みを全部出しきるんだ……これまでの努力が実を結ばないはずがない!!)

サユキは地面をタンと強く蹴り、宙に跳び上がった。
それもただ真上に跳ぶのではなく、マイミの右肩に向き合うように斜め方向にジャンプしている。
サユキの両手にはそれぞれ鉄製ヌンチャクが握られていることから、
マイミは自身のどこが狙われているのか瞬時に判断することが出来た。

(まさか、太ももと背中を同時に叩こうとしているのか!?)

その推測は7割当たっていた。
サユキはマイミの横方向から攻めることが出来るので、
右手のヌンチャクで第1の弱点の太ももを、
左手のヌンチャクで第2の弱点の背中をいっぺんに叩けるのである。
それに気づいたマイミはすぐに弱点である傷口をガードし始めた。
疲弊から、脚を使って回避できないのはとても苦しいが、
弱点を手で抑えればサユキの攻撃から確実に自身を守ることが出来る。
ここさえ乗り切れば、後は地面に着地したサユキを殴るだけで終了する……マイミはそう思っていた。
だが、サユキの真の狙いは第1の弱点や第2の弱点ではなかったのだ。
それに気づいたアイリは背筋がゾッとするのを感じる。

(見えている!?……いや、聞こえているというの?
 サユキちゃんの耳はマイミの"第3の弱点"を確かに捉えているんだ。)

前にも書いた通り、サユキの聴覚は非常に優れている。
そして更に、この緊張の場面においてその能力はもう一段階研ぎ澄まされてる。
彼女には聞こえていたのだ。
ハルの竹刀を掴んだ時も、太ももを手で抑えた時も、
マイミの右腕の骨がギシギシと軋む音を発していたことを。

「これが私の必殺技……"三重奏(トリプレット)"!!」

一本目のヌンチャクはトモが見抜き射抜いた太ももへと向けられた。
二本目のヌンチャクはカリンが拡張した背中の傷穴へと向けられた。
それらの攻撃は当然のようにマイミにガードされてしまったが、
サユキの攻撃は二連同時を超える三連同時攻撃だ。
天高くまで飛翔する超人的な跳躍力は、他でもない強靭な脚力が生んでいる。
ふくらはぎバリ筋肉は努力の証。
そのサユキの努力の賜物とも言えるキックが、アーリーが抱きつくことで作った"第3の弱点"、マイミの右肩に炸裂する。

「なんだと!?そんな……この痛みは!!!」

マイミの肉体および骨格はとても頑丈に出来ている。
しかし、そんなマイミでも万力のように強いアーリーの抱きつきの後では骨太を維持できなかったようだ。
サユキの蹴りによる駄目押しで、右腕の骨が砕け散る。

「これが私たちの力です!!いい加減に倒れてくださいっ!!」

サユキの言葉を聞いたマイミは、自分は孤独な戦いをしていたのだと初めて気付くことが出来た。
"私たち"という言葉はKASTだけでなく、勇気を持って立ち上がった全ての戦士のことを指すのだろう。
みんなで結束すればどんな強者にも勝てると数年前に学んだはずなのに、どうして自分はそれに気づけていなかったのか。
そんな大事なことを忘れていたのだから、このような結末になって当然だろう。
力尽きかけたマイミは後ろに倒れながら、そのような事を思っていた。
ところがここで状況が一転する。
意識が断ち切られる寸前、マイミの視界によく知る人物が入って来たのだ。

(オカール!?)

その人はキュートの仲間オカールだった。
いつの間にかすぐ側にまでやって来ていたのである。
自分にも頼れる味方がいた事を思い出したマイミは心から安堵する。

「来てくれたのか……すまないが私はもう駄目のようだ……
 オカールの手で、若い戦士達を倒してくれないか?……」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板