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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

20 ◆V9ncA8v9YI:2016/01/13(水) 08:38:41
旧知の友であるシミハムが牙を剥いたことに驚きを隠せ無いマイミだったが、
だからと言ってやるべきことは変わらなかった。

「我が国に、そして我らが王に仇なすならば排除するのみ……それを分かっているんだろうな?」
「……」

シミハムから返事は返ってこなかった。
正確には返事をしたくても出来ないのだ。
ベリーズ戦士団のシミハムとキュート戦士団のマイミは
数年前の大事件の末、それぞれ声と両脚を失ってしまっている。
ゆえに以降は不便な生活を強いられることになったのだが、
だからと言って2人の強さは変わらない。それどころか当時より数段増している。

「洗脳されているのか、何か考えがあるのか……そんなのは分からないが関係ない。
 キャプテンであるお前を捕らえて、ベリーズを一網打尽にしてやる!!」

マイミは暴風雨の如き殺気を全開にし、片脚のハンデを感じさせない程の速度でシミハムに殴りかかった。
素手でも鉄扉を捻じ曲げるパワーの持ち主であるマイミが、
本来の武器であるナックルダスターを拳に装着しているのだから威力は絶大だ。
彼女が本気を出せば岩石さえもクラッシュしてみせることだろう。
しかし、その攻撃はシミハムには届かない。
確実にヒットさせる自信が有ったというのに、鉄拳はシミハムの数㎝前で止まってしまう。

「!!……相変わらずのキレだな。」

マイミが目測を誤ったのではない。むしろ非常に正確だった。
当たらなかったのは衝突する直前にシミハムがほんの少しだけ後退したからなのだ。
それも顔色や上半身の動きをまったく変化させず、
ただ爪先だけのちょっとした移動で回避したのである。
全てを破壊するパンチを、シミハムは必要最低限の動きで避けてみせたということになる。
全ての攻撃は、シミハムの前では「無」になる。
そして、キャプテンの真骨頂はこれから披露される。

「はっ!!……しまった!」

事もあろうに、マイミはさっきまで目の前にいたはずのシミハムを見失ってしまった。
一対一の状況で敵を見逃すなんて致命的すぎる。
だがこれはマイミが間抜けだという訳ではない。
シミハムが特殊能力を発揮しただけの事なのだ。
とは言っても瞬間移動や透明化などの超能力の類を発動した訳ではない。
彼女がやったのは、パンチを当てるくらい接近したマイミの右斜め後方にピョイと跳びこんだだけのこと。
それだけで十分死角に入ることが出来たのである。
ではこれの何が特殊能力か?
それは、シミハムの放つオーラの特性ににあった。

(くっ……何も分からない!!)

闘争心のある者であれば誰もが大なり小なり殺気やらプレッシャーを放つものだ。
マイミだけでなく、食卓の騎士に属する者は長年の経験からそのようなオーラを任意に知覚することが出来ている。
それによって背後からの不意打ちから身を守ることが可能になっているのである。
ところが、シミハムからはそのようなオーラが全くと言っていいほど感じ取ることが出来ない。
矛盾した表現になるかもしれないが、シミハムは「無」を放っている。
大した人物に見えない大した人物。
それがシミハムだ。


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