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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

122 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 12:56:19
タケの武器は鉄球のみ。
ゆえに、相も変わらぬ豪速球を放ることしか出来ない。
ただ、ここでタケは少しの変化を加えることにした。
狙いをムロタンの顔面に定めてぶん投げたのだ。

「とりゃっ!!」
「だから無駄ですって!」

どこに投げられた球だろうとムロタンには関係ない。
ギリギリまで鉄球の行き先を見極めて、そこに透明盾を当ててやるだけだ。
結果として今回も球は跳ね返されてしまった。
たがタケはまだ勝負を諦めていない。
跳んできたボールをキャッチするや否や、インターバルなしですぐさま投球モーションに入ったのである。
狙いは同じくムロタンの顔面。

「それはさっきやったでしょ!?効きません!」

寸分の狂いもなく同じ箇所を狙ってきたので、ムロタンは盾を動かす必要すら無かった。
ただ構えているだけでいいので非常に楽にガードすることが出来る。
ところが、ここでムロタンの身体に異変が起きる。
まったく動く必要がないと言うのに、脚が勝手に後ずさりし始めたのだ。

「え!?……わわっ!!」

多少バランスを崩したが、すぐに体勢を立て直すことでなんとか鉄球を防ぐことが出来た。
そんな風にホッとしているムロタンに対して、タケはまたもすぐに球をぶん投げる。
狙いは変わらない。ムロタンの顔面だ。

(またぁ!?)

馬鹿の一つ覚えみたいに同じところばかり狙ってくるタケの攻撃は、
盾使いからしてみればこれ以上なく簡単に捌けるはずだった。
ところが気づけば腕が震えている。膝も笑っている。
軌道を見続けねばならない目も頻繁に瞬きをしている。
喉が渇く。胸が苦しくなる。血が冷たくなる。
何より、逃げ出したい思いでいっぱいになる。
ここでようやくムロタンは自覚した。

(私、怖がってる!?)

前にムロタンの盾が透明であることのメリットについて書いたが
それに対するデメリットもちゃんと存在していた。
デメリット。それは敵の攻撃がよく見えすぎてしまうところにある。
顔面に鉄球が当たることは絶対に無いと頭で理解していたとしても、
それによって生じる恐怖心は毎回毎回蓄積されていってしまうのだ。
そうして一度根付いた恐怖は思考までもネガティヴに変えてしまう。
もしも盾を離してしまったらどうしよう。
もしも転んでしまったらどうしよう。
もしも鉄球が本当に顔面に当たってしまったら……明日から私はどうすればいいのだろう。
気づけばムロタンは大粒の涙を流し、膝から崩れ落ちてしまっていた。
かすり傷を一つ負うよりも先に、気持ちの方が折れたのである。

「ううっ……悔しい……立てない……」

ムロタンが敗北を認めたのを理解したタケは、安心した顔をしながら鉄球をホルダーに戻していく。
そして、一言呟いた後にぐたっと倒れこむのだった。

「後輩に勝てたー……これでちょっとはフクちゃんに並べたかな?……」


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