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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

858 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/10(金) 13:30:05
直接励ますことは出来ないが、シミハムは別のアプローチでリシャコを落ち着かせる方法なら持ち合わせていた。
ただ、出来ればこの手だけは使いたくないとも思っている。
単純にエネルギーの消耗が激しいと言う理由もあるが、それ以上にこの手段は残酷であるため使うのを躊躇していたのだ。
だが背に腹は変えられない。決意したシミハムは力を行使する。

「あれ……私、なんでボーっとしてたんだろう。」

リシャコはキョトンとした顔をしていた。
さっきまでカリンにやられたショックで動揺していたというのに、まるでそれを忘れてしまったかのような素振りを見せている。
そしてナカサキとマイマイ、サユキらにシミハムが囲まれているのを思い出しては、そちらへと走り出す。
カリンは勿論それを黙って見逃すわけにはいかなかった。

「行かせない!貴方は私が食い止める!」

息苦しく、身体にかかる負荷も限界近いが、カリンは歩みを止めなかった。
また先ほどのようにリシャコのカウンターを無に出来れば勝利の道は必ず開けるはずなのだ。
それにこれは孤独な戦いじゃない。
フリーになったサヤシだって、勇気を持ってリシャコの進行方向に立ちはだかっている。
カリンとサヤシの2人の力を合わせれば強敵リシャコを撃破することだって夢じゃないと信じているのである。

「絶対に食い止める……それを出来るのはウチ1人しかいないんじゃ!!」
(えっ?……)

カリンは胸の奥がゾワッとするのを感じた。
何やらとてつもなく恐ろしい違和感を覚え始めている。
そしてその違和は、マイマイがサヤシのフォローに入ることで恐怖へと変わっていく。

「無理しないで!マイも手伝うよ。2人がかりでリシャコを止めよう。」
「マイマイ様……お願いします!」

孤独じゃないと思っていた。
チームダンス部には心強い仲間がたくさんいると思っていた。
だと言うのに、これではまるで、カリンはこの世に存在していないかのようじゃないか。
自分の存在を証明するためにもカリンは大声で叫びだす。

「ちょっと待って!!みんな、私が見えないの!?」

本気の思いを込めた声なら届くと思っていた。
だが、カリンの方に目を向ける者は1人としていなかった。
聴覚が優れていて、志を同じくするサユキまでもが無視を決め込んでいる。
もちろん彼女らに落ち度は全くない。
カリンはこの空間に存在していない事になっているのだから、気づきようが無いのだ。

「だったら……無理矢理にでも振り向かせてみせる!!」

カリンはリシャコの超反応カウンターを思い出していた。
リシャコはどんな攻撃に対しても瞬間的に反撃するはず。
そんなリシャコの背中に対してカリンは精一杯の力で殴りかかった。
……そして、その全力パンチは何にも防がれることなく通ってしまう。

「そんな……味方だけじゃなくて敵までも……」

考えようによってはカウンターを貰うことなく攻め放題に出来るので非常に有利なのだが、
存在を無にされたカリンの精神的ショックはあまりにも大きく、これ以上仕掛ける気にはどうしてもなれなかった。
さらに追い討ちをかけるように「早送りスタート」の制限時間が切れてしまう。タイムアウトだ。
ここまでみんなの為に精一杯尽くしてきたカリンは、独り孤独に倒れていく。


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