首相が緊急事態宣言を決定した7日。首相官邸や国会で進む事前の手続きがテレビ中継され、日本中の耳目が集まっていた。こうした中、正月明けで人けもまばらな自民党本部9階会議室で、二階氏とその右腕である林幹雄幹事長代理ら党観光立国調査会の面々が、観光業界団体の幹部ら約30人と向き合った。宣言が解除されれば、停止中の観光支援事業「Go To トラベル」を速やかに再開すべきだとの立場で一致した。
首相が緊急事態宣言を決定した7日。首相官邸や国会で進む事前の手続きがテレビ中継され、日本中の耳目が集まっていた。こうした中、正月明けで人けもまばらな自民党本部9階会議室で、二階氏とその右腕である林幹雄幹事長代理ら党観光立国調査会の面々が、観光業界団体の幹部ら約30人と向き合った。宣言が解除されれば、停止中の観光支援事業「Go To トラベル」を速やかに再開すべきだとの立場で一致した。
良好とされてきた党との関係も微妙だ。後見役の二階俊博幹事長は、首相が観光支援事業「Go To トラベル」の全面停止を発表した際に「勝手にしろ」と周囲に激怒。首相は多人数でのステーキ会食を批判された12月14日以降、二階氏と会食していない。今月13日の党外交部会では米連邦議会議事堂をトランプ大統領の支持者らが一時占拠した事件で、首相が強いメッセージを発しなかったことに不満が噴出した。
政府による緊急事態宣言の再発出が、立民の提案から3週間後だったと指摘。枝野氏は「根拠なき楽観論によって対応が遅れたことを認め、最悪を想定した対応へ転換すべきだ」と迫ったが、首相は「ご指摘のようには考えていない」と明確に否定した。
立民の提案もアピール。まず徹底的な防疫によってウイルスを下火にし、その後に経済活動を再開させる「ゼロコロナ」を主張し、観光支援事業「Go To トラベル」の対応をはじめ、経済をより重視してきた従来の政府との違いを打ち出した。
さっそくロイターは“Japan's ruling party invites more women to meetings, as long as they don't talk”(日本の与党は女性議員が会議に参加することを容認するが、発言は認めない)と題した記事を世界に配信し、BBCも「自民党、女性議員に党会議『見せる』が、発言は認めず 方針表明」と報道した。あまつさえ、自民党の前近代性が世界に流布されたことになったのだ。
Go Toトラベルは緊急事態宣言で停止期間が延長されたが、同調査会の面々は再開に動いている。菅首相が緊急事態宣言を発出した今年1月7日、二階氏や林氏ら同調査会幹部と官公庁、旅行業界幹部が自民党本部に集まり、宣言の解除後に早期にGo Toトラベルを再開するよう求める提言を決定。政府は第3次補正予算でGo Toに約1兆円の予算を追加した。
この間、首相は「コロナ対応に明け暮れる日々」(自民党関係者)を余儀なくされたが、自身肝煎りの観光支援策「Go To トラベル」停止の判断が遅れるなど、一連の対応には「後手」批判が噴出。国民に大人数での会食自粛を求める中、自民党の二階俊博幹事長らとの「ステーキ会食」で謝罪する事態も招いた。時事通信の世論調査では、就任後の昨年10月に51.2%だった内閣支持率は、今年1月に34.2%まで急落した。
菅首相といえば昨年末、全国各地で新型コロナの新規感染者が急増する中、国民に対して「静かなマスク会食」を呼び掛けながら、自身は朝、昼、夜と「ハシゴ会食」を続け、さらに観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止を表明した夜に東京都内で、自民党の二階俊博幹事長を含む複数の知人と「豪華ステーキ会食」に舌鼓を打っていた事実が発覚。国民から怒りの声が上がった。
しかしコロナ禍による景気低迷に加え、世界的な物価高に内閣支持率は低迷し、最近では29%まで下落した。19日の会見でアーダーン首相は“I know what this job takes, and I know that I no longer have enough in the tank to do it justice.”と述べた。ようは「力が尽きた」というわけだ。