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それは連鎖する物語Season2 ♯2

1数を持たない奇数頁:2014/09/05(金) 21:07:09 ID:LUyN3zHI0
つまりリレー小説なのだ

2数を持たない奇数頁:2014/09/05(金) 21:07:54 ID:vNrf4CaY0
>>1乙ポニ

337:2014/09/05(金) 21:08:41 ID:KX3IUTG20
そろそろまとめないかんね

新しいファイルに纏めようか

4数を持たない奇数頁:2014/09/05(金) 21:12:25 ID:OM.ti..A0
>>1


5どあにん:2014/09/05(金) 21:23:48 ID:GfvR5x3Y0
ゾンゲさまだけは何故かグルメ界に行ってもなんだかんだで生き残れそう

6数を持たない奇数頁:2014/09/05(金) 21:24:00 ID:LUyN3zHI0
急な思いつきだけど、前回までのあらすじとか作っておくと便利そう(自分で書くとは言ってない)

7数を持たない奇数頁:2014/09/05(金) 21:49:25 ID:PIqkC0Qo0
前回までのあらすじ:おっぱい畑

つい勢いで書いてしまったが、これじゃ前スレのあらすじか

8西口:2014/09/07(日) 21:48:45 ID:bf8Dr9po0
進捗状況は概ね良好といえる

9西口:2014/09/07(日) 21:59:43 ID:bf8Dr9po0
あ、そうだ
朝霞ちゃんにお姉さん作っていい?

10西口:2014/09/07(日) 22:05:18 ID:bf8Dr9po0
いや、やめとこう
別の設定じゃ

11西口:2014/09/07(日) 22:11:22 ID:bf8Dr9po0
あーまた新キャラが増える
俺の番になるたびに木っ端みたいなキャラが生まれてる気がするわ、気をつけねば

12数を持たない奇数頁:2014/09/07(日) 22:21:45 ID:roDwMzl60
そのうち妹を出そうとか思ってたからお姉さんいいんじゃないかな

13どあにん:2014/09/07(日) 22:40:32 ID:NIgMFQT.0
マレグチ(稀口)家は伏神一族が外交的危機に陥った時に影から支えた外交担当の一族
今は殆ど没落してマレグチを名乗っているが、マレグチ家の者は例外なく弁舌に優れている


みたいな設定盛り込もうと思ったけど機会が無くなっちまったワイ

14西口:2014/09/07(日) 22:42:30 ID:bTctr9SU0
そもそも伏神の連中は外交するのかという謎

15どあにん:2014/09/07(日) 22:42:58 ID:NIgMFQT.0
稀に口を出すからマレグチ 安直だな!

16どあにん:2014/09/07(日) 22:43:21 ID:NIgMFQT.0
昔は交易とかで家が発展したとかさ(震え声)

17西口:2014/09/07(日) 22:44:07 ID:bf8Dr9po0
というか四拾七氏が何なのかってことが重要だな!

18数を持たない奇数頁:2014/09/07(日) 22:46:01 ID:hy8uehUg0
始終名無し

19西口:2014/09/08(月) 15:25:29 ID:LJRlUVYg0
真川=サン超アウェー

20西口:2014/09/08(月) 16:31:19 ID:LJRlUVYg0
今日の五時くらいに投下するわ

21西口:2014/09/08(月) 16:59:58 ID:LJRlUVYg0
稀口の茶菓子は、昔と変わらぬ味であった。
両親に連れられ、劔兄さん、聡里と共にこの店に訪れていた頃を、鮮明に思い出せるほどに。
きっと一人だったなら、食べている間に涙ぐんでいたことだろう。真川さんと、あの三人組には感謝しなくてはなるまい。
三人組に関しては、その後のエロ本云々の話さえなければ親しくなりたいと思っていたことだろう。
逆説的に言えばもう親しくなりたいとは思わないが。何だ、伝説のエロ本って。
この上なく無駄な時間を過ごしたような虚脱感を背負い、稀口甘味処を後にした俺は、真川と連れたって兄・劔との待ち合わせ場所に向かっている。
目に映る町並みは、本当に変化が無い。
まるで過去にタイムスリップをしたかのような錯覚を覚えるが、当然そんなものは幻覚だ。
死人は死んだまま。生き返ることは決してありえない。その姿を再び拝むことなど出来ようはずもない。
あの日と変わらぬ怒りと後悔と希望と絶望とを背負って、俺はこれからも生きていくのだろう。この数年後の未来さえ見通せない不安定な世界を。

22西口:2014/09/08(月) 17:00:25 ID:LJRlUVYg0
「ところで伏神くん。一つ聞きたい事があるのですが」
待ち合わせ場所に向かう道中、真川がソウジに尋ねる。
人の姿形をしているとはいえ、今の真川は普通の人とは明らかに異質な存在だ。
他世界との交流が少ない人間界の中でも、とりわけド田舎で他世界人の往来が無いに等しい上伏町では、当然ジロジロと無遠慮な視線がその姿に注がれてしまう。
それにハハ、と苦笑を漏らすだけで、さして気分を害した様でもない真川の姿に、ソウジは改めて尊敬の念を抱いた。
ルカが懐くのも当然といえる。
人の上に立つ人間とはこの人のようなことを言うのだろう。
「聞きたい事?」
「はい。何故、帰郷をしようと思ったのでしょう。確か貴方は入学以来、長期休暇とはいえ、こちらに帰ったことは無かったはずですが」
これでも四拾七氏の末席に名を連ねていますからね。嫌でも耳に入ってくるのです。
少し申し訳なさそうにそう付け加えて、真川は質問を投げかけた。
旅の間のソウジの様子を見て、そう深刻な理由ではないと判断した上での質問なのだろう。言ってしまえばただの世間話だ。
そして、確かにソウジが帰郷した理由は深刻なものではない。ないのだが……ソウジにはどうにも、その「理由」が未だに信じられない。
もしかしたらあれは白昼夢やいたずらの類で、自分は担がれているのではないかと、半ば本気で疑っているくらいだ。
数日前、電話口で劔が何気なく言ったその内容は、それほどまでに衝撃的だったのだ。
前後の事情も含めて説明するべきか。いや、流石にそれはプライバシーの問題で兄さんに失礼か。
どう伝えるべきか考えあぐねているソウジを見て、何を勘違いしたのか真川が謝罪の言葉を呟いた。
「すみません。無神経な事を聞いてしまいましたか?」
「え、あ、いや。全然、全然。そういうんじゃないから」
どうやら変に気を遣ってしまう性質らしい。これは包み隠さずに言った方がいいだろう。
そう判断したソウジは、渋々と言った様子でポツリと語りだした。
「実は、さ。兄が一人いるんだけど、どうやら……祝言、挙げるらしくて。神前式に参加してくれって連絡があったんだ」
「それはそれは、めでたい事ですね」
真川は笑顔で言祝いだ。
めでたい。そう、めでたいのだ。
妻を娶り、跡取りを作ってようやく一人前、という旧態依然の古臭い価値観が当然のようにまかり通っているこのド田舎においては、尚の事だ。
だから、真川の反応は正しい。理想的とさえ言える。弟たるソウジが最優先で吐くべき台詞だ。
そんな事分かりきっているほどに分かっているつもりなのだが……ソウジにはそれがどうにも「信じられない」。
「兄さんが女の人と結婚って言うのがなあ……。尋常じゃない違和感を覚えずにいられない」
「……まさか、男色の気が?」
「なにとんでもない事を言ってんの!?」
しかも至極真面目腐った顔で。

23西口:2014/09/08(月) 17:00:43 ID:LJRlUVYg0
「そういう事じゃなくて。兄さんって凄い奥手って言うか、初心って言うか……。女性慣れしてないんだ」
言うなればそう、筋金入りの童貞。女性を前にした伏神劔は、まるきりのでくの坊になってしまうのだ。
10代の少女であったり、身内であった場合はそうはならないのだが、電話で聞いた相手の年齢は24歳。4つしか変わらない。
そんな女性と一対一で相対する兄が、ソウジには一切想像できなかった。
「お見合い戦績50戦50敗。何度か様子を見たことがあるけど、相手の女の人がどれだけ盛り上げようとしても、兄さんは一言もまともに返せていなかった」
「……確かにそれならば、結婚すると聞いて驚くのも無理はないですね」
「でしょう」
未だに信じられないわけはそこにある。
何か性質の悪い詐欺に引っかかっていると考えるべきか。
いや、流石にそれは考えすぎだろう。自分の知る伏神劔は、飽くまで家を出るまでの彼でしかない。
この4年間は、彼を変えるにも十分な時間だったに違いない。
あの事件で傷ついたのは、変わらざるをえなかったのは、自分だけではないということだ。
……ダメだ。シリアスに思考しようとしてもどうしても違和感が拭えない。
(会話すら出来なかったのに、結婚? 結納? 挙式? ……いや、いやいやいや。無いわ)
兄の結婚を全否定する弟。何たる非情さか。
「ところで、待ち合わせ場所とは一体どのような場所なんです?」
疑念を振り払えずにうんうん唸っているソウジを横目に微笑し、救いの手を差し伸べるように真川が再び質問を口にする。
堂々巡りに陥りかけた思考を中断し、その質問に答えたソウジは、気遣いの出来る人だなぁ、と幾度めかの関心をするのだった。
「町の中央に、講和の証として記念碑が建ってるんだよ。そこで待ってるってさ。
 造型は悪趣味だけど、使われてる金属に自然光を吸収して微発光する性質があるから、まあそれなりに綺麗だよ。そろそろ見えてくるはずだ」
「微発光する記念碑……。あ、もしやアレですか」
真川が指差した先には、開けた広場があり、その中央に特徴的なモニュメントが鎮座していた。

24西口:2014/09/08(月) 17:01:09 ID:LJRlUVYg0
ウェディングケーキめいた積載構造の噴水の上で、塔のように屹立する記念碑。
異なる五つの人種が複雑怪奇なポーズで絡み合い、その周囲をらせん状に取り囲んでいる。
何でも五界の恒久的な平和を表現しているらしいが、人体の骨格をまるきり無視したそれらは、どう控えめに表現しても地獄の業火にもだえ苦しむ亡者としか言いようが無い。
初めて見た子供は必ず泣く。纏わる怪談の数は両手足の指を用いてなお余りある。
不気味という感覚をあらん限り詰め込んだようなそれこそが、五界戦乱終結の記念碑「夢と希望の階《きざはし》」だ。
数年ぶりに拝むそれは、ソウジの記憶の底に残っていた昔の姿と寸分も違わず気色が悪い。
顔を見ずとも、傍らの真川が若干引いているのが手に取るようにわかった。
嘗ての自分もそうだったとはいえ、よくもまああんな物を待ち合わせの目印に出来るものだ。
一歩一歩近付いていくたびに、より精細なディテールが判明してきて、その不快さが加速度的に増大していく感覚は、ちょっとした心霊体験だ。
何故無駄に芸術性を取り入れようとしたのか。オーソドックスに加工岩に字を刻めばよかったじゃないか。
(四拾七氏の地位向上とか謳うなら、せめてコレの建設捨て身で止めろ、亡爺ども)
胸中で毒を吐き、知らず記念碑に釘付けになっていた視線を逸らしたソウジの視界に、一人の大男の背が映った。
短く切り揃え、刈り上げた頭髪に、日に焼けて浅黒い肌。
甚平に下駄というこの上なくラフな恰好は、とても元名家の現当主とは思えない。それは薄手の服装故に、より激しく自己主張するその隆々たる筋骨もそうだ。
190を越える長身と合わせて見ると、その男は人の形をした巌のように思えた。
彼こそが伏神聡治の実兄、伏神劔である。
――昔より、また大きくなったんじゃないか。
対象との距離、10メートル。
口元が無意識に綻んでいる事にも気づかず、ソウジは右手を上げ、「兄さん」声を掛けようとして、そのままの状態で停止した。
劔の陰になって見えなかったが、ソウジに背を向ける彼の眼前には、どうやら何者かがいたようだ。
なにやら不機嫌な様子でその陰から飛び出してきた人物を見て、ソウジは固まってしまったのだ。
透き通るような、それこそ「雪のように」白い短髪に、それとは相反するかのような褐色の肌。
一般的な和服の人間が多い街中にあって、その顔以外の全てをローブで覆った出で立ちは非常に目立つ。
その顔立ちは整っているが、その鋭い目つきは遠くから見ても分かるほどに剣呑な輝きを放っており、右目尻から頬を通り、顎先まで奔る一条の赤い刺青も相俟って、明らかに尋常なものとは思えない。
身長は160程度。体格は判然としないが、ただ立っているだけで油断の無さがうかがい知れる。
見覚えが、ある。本人を知っているわけではないが、その面影に重なる人間を、ソウジは知っていた。
だが、彼の足を止めさせたのはその事ではない。その人物の性別である。
女性であった。まがう事無き、女性であった。
「兄さんが女の人と口喧嘩してるッ!?」
「叫ぶほどの衝撃ですか……!」
実際に目の当たりにした衝撃は相当のものだったらしい。

25西口:2014/09/08(月) 17:01:24 ID:LJRlUVYg0
見れば、たしかに劔とその女性とはなにやら言い争いをしているようだ。
別に大声を上げているわけではないため、話している内容はまるで分からないが、ソウジが衝撃を受けるには十分だった。
言うまでも無い事だが、口喧嘩となれば普通に会話を交わすよりも、その押収量は増大する。
「女の人が視界に入るだけで、図体がデカい分デク人形より邪魔臭くなる兄さんが、口論だなんて。やっぱり、兄さんは竜に憑かれているんじゃ……!」
「伏神くん、お兄さんの事嫌いなんですか?」
「兄さんにとり憑くなんて、何て卑劣な竜だ! 出来る限りむごたらしくぶっ殺してやる!」
「躊躇いが無い!?」
真川の声も右から左に、ソウジは駆け出した。彼の懸念は心の底からのものであったのだ。酷い話だな。
俄かに膨れ上がる殺意。だが、その距離が近付いて徐々にその声が聞こえてくるにつれ、針をつき立てられた風船めいて、それも萎んでいく。
だが、竜は殺さなければならない。
あふれ出そうな涙をこらえ、エクリエルからの贈り物を片手に忍ばせたソウジは、劔に擬態するドラゴン(事実無根)に向かってビシリと人差し指を突きつける。
「兄さん! 兄さんの意志がまだ残っているなら聞いてくれ! 今、楽にしてやるから! 出来るだけ惨たらしく!」
「……何故、俺は数年ぶりに再会した弟に殺害を仄めかされているんだ?」
「日頃の行いじゃない?」
口論を止めたという意味では、彼の行動はファインプレーと言えただろう。
遅れてやってきた真川の取り成しによってなんとか落ち着きをとり戻したソウジは、とりあえず兄に詫びた後、促されるままにその後についていく。
その足の向く先は、上伏町の最奥にてその威容を誇る伏神山。その中腹にある伏神本家だ。

26西口:2014/09/08(月) 17:01:37 ID:LJRlUVYg0
「紹介しよう。こいつが不本意ながら妻、いや式を挙げていないからまだ婚約者か。不本意ながら婚約者の夕霧だ」
「不本意ながらこのデカブツの婚約者の夕霧。キリとでも呼ぶといいわ。いつ破綻するとも分からない関係だけど、一応貴方の義理の姉になるわね。まあよろしく」
「単刀直入に聞くけど、何で婚約したの?」
「ひ、人の愛の形は様々と言いますから……」
伏神兄弟と真川、そして先ほどまで劔と言い争っていたローブ姿の謎の女性――劔の婚約者である夕霧は、自己紹介をまじえた雑談を交わしつつ、伏神邸へと歩いている。
そこで明かされる衝撃の事実。なんと婚約するという話はまじりっけの無い事実だったのだ。
「しかし、本当に兄さんが結婚するなんて。どうやって治したんだ、あの癖」
「ああ、実はな。情けない事だが、未だに全く改善していないんだ、アレ」
癖とは言うまでも無く、女性の前に出ると石像めいて硬直してしまう極度のあがり症の事である。
「ええ、じゃあどうやって婚約まで漕ぎ着けたんの!? ま、まさか金を握らせて……!」
「伏神くん。それはただの悪口です」
ハハハ、と劔が快活に笑う。
――良かった。
彼はそう心の底から思ったのだ。
家で同然に家を飛び出していったっきり、一度も帰ってこなかったソウジの事を、劔は当然案じていた。
しかし「電話」の使い方が未だに理解できておらず、毛筆にて認めようにも何を書いていいか分からず、『仕事』の忙しさも手伝い、結局先日の結婚報告まで一度も連絡できなかった。
嫌われていたらどうしようという不安があった。何か取り返しのつかない事態に陥っているのではないかという懸念があった。
しかし、向こうから連絡が無い事をいい事に、もうソウジは家に戻るつもりは無いのだろうと無理矢理自分を納得させ、あえて彼を避けてきた。
もし連絡して、ソウジに拒絶されたらどうしよう。聡里を守れなかったと憎まれていたらどうしよう。
ガタイに似合わぬ女々しい考えに支配されていた。
それでも、劔はソウジの事を変わらずに愛していた。幸せになって欲しいと、そう願っていた。
だからこそ、劔は今のソウジの姿に、笑みを零さずにはいられなかった。
最後に見た陰鬱な無表情とは違い、今の彼の表情は喜怒哀楽に富んでいる。――まあ喋っている内容はアレだが。
この数年間がソウジに対して齎したものは、けして悪いものではなかったのだ。
それが嬉しくてたまらない。
「でも、僕も少し気になりますね。女性が苦手だといいながらも、夕霧さんとは普通に会話をしている上に、結婚までなされる。一体どのような経緯で?」
「ふむ、なれそめというやつか。うーん、と言ってもそう特別なものではないぞ」
「まあ、そうね。単純に女性が苦手とか言ってられない場所にいたってだけだもの」
要領を得ない答えに、ソウジ、真川の両名は揃って首をかしげる。
まあそうよね、とため息をついた夕霧は、何でもないような口調で
「初めて会ったのは10年前。そのときの私達は、殺しあう関係だったの」
そう、あっけらかんと言い放った。

27西口:2014/09/08(月) 17:02:04 ID:LJRlUVYg0
以上

説  明  不  足

28数を持たない奇数頁:2014/09/08(月) 17:56:14 ID:wAJRDmd60
乙ポニっさー!
これもしかして戦争経験者か

29どあにん:2014/09/08(月) 18:47:56 ID:EMjTM4uE0
劔ニーサンがガチムチだと……許せる!

30西口:2014/09/08(月) 18:49:47 ID:LJRlUVYg0
夕霧さんが朝霞に似てるって書くの忘れてたわ

31どあにん:2014/09/08(月) 19:01:05 ID:EMjTM4uE0
【登場】どあにん
【名前】ジョエル=ラザイエフ
【性別/年齢】男/17歳
【種族/種別】人間
【髪色/瞳色】金/左:緑 右:赤
【身長/体重】172cm/65kg
【学級】高等部二年生
【所属】無し
【成績(実技/筆記)】
旋律魔法:10点/18点
結界魔法:21点/30点
錬成魔法:25点/17点
操作魔法:20点/14点
書記魔法:50点/37点
呪詛魔法:9点/10点
降霊魔法:18点/18点
電脳魔法:19点/20点
【好きなもの】エロ本・運動
【嫌いなもの】ホモ
【趣味・特技】運動
【備考・詳細】三馬鹿の肉体派兼リーダー 何かするときは大抵ジョエルが発端となる


【登場】どあにん
【名前】リョタ=マレグチ
【性別/年齢】男/17歳
【種族/種別】人間
【髪色/瞳色】オレンジ/とび色
【身長/体重】170cm/67kg
【学級】高等部二年生
【所属】料理研究会
【成績(実技/筆記)】
旋律魔法:32点/20点
結界魔法:39点/45点
錬成魔法:12点/17点
操作魔法:21点/13点
書記魔法:50点/35点
呪詛魔法:10点/9点
降霊魔法:10点/13点
電脳魔法:19点/222点
【好きなもの】エロ本・甘い物
【嫌いなもの】辛い物
【趣味・特技】弁舌・料理
【備考・詳細】三馬鹿の交渉担当
       幾度と無く未成年でありながらエロ本を購入して来たのも巧みな弁舌のお陰である


【登場】どあにん
【名前】フィル=ヴェラクマレン
【性別/年齢】男/17歳
【種族/種別】人間
【髪色/瞳色】黒/黒
【身長/体重】165cm/60kg
【学級】高等部二年生
【所属】無し
【成績(実技/筆記)】
旋律魔法:32点/30点
結界魔法:35点/28点
錬成魔法:33点/38点
操作魔法:38点/22点
書記魔法:50点/45点
呪詛魔法:29点/30点
降霊魔法:19点/28点
電脳魔法:15点/20点
【好きなもの】エロ本・勉強
【嫌いなもの】運動
【趣味・特技】計算、推理
【備考・詳細】三馬鹿の頭脳担当 地味に勉強が出来るのに交友関係のせいで三馬鹿扱いに

32どあにん:2014/09/08(月) 19:02:26 ID:EMjTM4uE0
☓222点
○22点

ケジメ不可避

33数を持たない奇数頁:2014/09/08(月) 23:19:07 ID:knKq.76A0

朝霞の姉ちゃんきたあああああああ
そして劔の風貌意外だったww
ところで気になってたんだけどソウジは何で真川さんにためぐちなんだ

34どあにん:2014/09/08(月) 23:35:53 ID:EMjTM4uE0
真川さんは何となくさん付けで呼ぼうとしてもニコニコしながらタメ口でも大丈夫ですよって言いそう

35数を持たない奇数頁:2014/09/08(月) 23:37:23 ID:knKq.76A0
先輩なのに!

36西口:2014/09/08(月) 23:59:20 ID:LJRlUVYg0
ソウジくんなりに自分はすれてるんだぞってアピールしてるんだろうなぁ、って思いながら書いてた
ソウジくん可愛い

37数を持たない奇数頁:2014/09/09(火) 17:26:07 ID:3klUaBcs0
ふと思ったが操作魔法は肉体を操作する魔法だから、現実だと保健体育に分類されそうな気がする

38どあにん:2014/09/09(火) 17:59:07 ID:SMcgmGoI0
操作魔法の力で一時でも巨乳になろうとする貧乳女子生徒


アリだな

39数を持たない奇数頁:2014/09/09(火) 19:53:48 ID:PNdczykY0
西口おっつおっつ
体調不良が継続してるから直ぐに執筆には取り掛かれそうにないけど、二週間以外にはぶん投げる方針

40数を持たない奇数頁:2014/09/09(火) 19:56:07 ID:3klUaBcs0
待ってるぜ

41数を持たない奇数頁:2014/09/23(火) 12:57:50 ID:ePjlRLWU0
今日でちょうど二週間
行けそうかい、Kの人?

42数を持たない奇数頁:2014/09/24(水) 00:57:35 ID:Nyvi/Q7M0
age

43数を持たない奇数頁:2014/09/24(水) 12:00:18 ID:MyE7302M0
すまん、無理ゲーだ。次の人にパスさせて貰うんだぜ……

44数を持たない奇数頁:2014/09/25(木) 11:38:03 ID:bU/x8EN20
あら、残念

45数を持たない奇数頁:2014/09/25(木) 21:21:47 ID:PLjMgL/g0
あ、次俺か
どどどどうしよう……

46数を持たない奇数頁:2014/09/27(土) 08:30:55 ID:cIcoqR1IC
もう伝説のエロ本探すっきゃない

47数を持たない奇数頁:2014/10/01(水) 08:55:51 ID:qV.lYJyE0
今日で一週間
進捗状況はいかが?

48数を持たない奇数頁:2014/10/01(水) 21:36:17 ID:u9sIt6pk0
フッ……まだ白紙だ……
もうだめだー

49数を持たない奇数頁:2014/10/02(木) 12:36:36 ID:eI1ZcU520
お兄ちゃんの話が思い付かないなら朝霞と三馬鹿出して話の腰を折ればいいんじゃないかな
と、ふと思った

50数を持たない奇数頁:2014/10/09(木) 22:31:46 ID:88QcdURQ0
「いやいや、よさないか」
 劔は手のひらを夕霧に向けて制止した。もう片方の手は後頭部を掻き、顔は俯き気味だ。照れ隠しである。
「とりあえずあれだ。そういう話は家に戻ってからだな……」
 劔がボソボソとそう言うと、ソウジはやれやれといった感じでため息を吐いた。
「やっぱり、兄さんなんだなぁ」
 ソウジは何度目かの懐かしさと、兄の存在の温かさをかみしめる。そして、これから実家へ赴くことを考えれば、大層心強くもあった。
「では、僕はこの辺でお暇させていただきます。僕にも僕の、里帰りがありますので」
 真川は丁寧に頭を下げ、別れを告げた。ソウジから付き添ったことへの感謝を受けた真川は、三人が見えなくなるまで手を振って見送った。

 真川は懐から携帯端末を取り出す。慣れた手つきでそれを操作し、通話を開始した。

「僕です。お久しぶりです」
「ええ、実は……まあ、そんなところです」
「はい、もちろん戻りますよ」
「今は里帰り中で……そうそう彼と道中一緒でしたよ。ええ彼です。お兄さんとも会えて元気そうでした」
「え?それだけですけど。何故って?あー……何となく、ってやつですかね。では。」

 何かを遮るように通話を切った真川はふと空を見つめ、ため息を漏らす。

「さて、帰ってどう話したものだろう……。信じてもらえるだろうか……」

51数を持たない奇数頁:2014/10/09(木) 22:32:57 ID:88QcdURQ0
以上
時間がかかった癖に短くて申し訳ない
ただ真川をフェードアウトさせただけww
タタリん後は任せた

52数を持たない奇数頁:2014/10/09(木) 23:26:50 ID:Mwk94bqw0
乙ポn…真川さん帰っちゃった!?

53数を持たない奇数頁:2014/10/10(金) 00:03:01 ID:6OhfrzfY0
何でいるのかわからんかったから帰しちゃった……

54数を持たない奇数頁:2014/10/17(金) 21:36:55 ID:eISI9iWE0
ド ド ド ド 
         ド ド ド ド ド

”一週間”だ……!

55数を持たない奇数頁:2014/10/18(土) 11:11:19 ID:ne48Myqc0
田舎に新キャラ出すかどうか迷ってるが、もう結構多いから今回は見送ろうかな
そのうち誰かが拾ってくれるだろ、多分

56タタリ 1/2:2014/10/22(水) 01:08:23 ID:smnMc0lo0
 八百段の石段を上り抜け、伏神山の麓にある上伏神社へ出る。境内を少し歩くと更に蛇行して君臨する石の階段。その数、実に千五百。それが伏神本家へ通じる「舗道」である。
 無論、物資や生活消耗品などの搬入に使う車道も存在するが、そちらは馬車馬の負担を減らす様にやや勾配のあるほとんど平坦な道になっていて、人が歩く分には遠くなる。何とも恐ろしい事に、直通するなら二千三百段もの階段を歩いた方が早いのだ。
 更に恐ろしい事実をもう一つ。伏神の祭殿はもっと山頂に近かった。そこに到達する為には更に二千三百段の石段を登らねばならない。まぁ、今は過去のアレコレのせいで、中途あたりからクレーターみたく抉れて跡形もないんだけど。
「……ああ、もう。エスカレーターとか設置しようぜ、兄さん」
「えすか……れぇたぁ……? 何だそれ?」
 段差を一つ一つ踏み抜き、登りながら、先を歩く劔に提案するが怪訝な表情を返された。しまった、そもそもこのクソ田舎、電気すら通ってないんだった。
 旅行バッグは麓の分家に預け、後で届ける様に伝えてある。分家の人が馬車を出すと提案してくれた時は渡りに船と感動したものだが、兄さんが健康の為には少しくらい運動しないとなハッハッハーなんて言い出さなければこんな事には……!
 というか、オイそこの筋肉。そもそもその筋肉に少しくらいの運動が必要あるのかと問いたい。
「休憩……神社に着いたら休憩しよう、兄さん。マジで足腰がもたない……」
「おいおい。もうへばったのか? このくらい、昔は麓に行くのに何往復もしてただろう?」
「機界の利器は人を駄目にするって絶賛実感中だよ!」
 改めて帰省してみて当時の異常さがよく分かる。あの頃の俺はどうやってこの階段を下って麓の学習塾に向かい、昼には家に帰って食事を済ませ、夜深くまで外で遊び歩いていたと言うのだろうか。こんなの片道でギブアップだよ!
「まぁ、いいんじゃないかな? たぶんこの時間帯は私の妹も神社にいるだろうし、顔合わせはしておくべきだろう?」
 夕霧さんの提案に、劔兄さんが「それもそうか」と同意する。思わぬ方向からの援護射撃に感謝の極みである。ありがとう夕霧さんとやら。
 ……しかし妹、妹ときたか。俺は改めてフードを目深に被った夕霧さんの顔を横目で眺める。
 フードの裾から覗く銀の髪に、吹雪の夜を彷彿とさせる紫色の瞳は切れ長で眼光鋭い。肌は白く、それだけに顔の右半分を覆い尽す様な赤い刺青がよく映える。
 うん。もう嫌な予感しかしない。帰るんじゃなかった。
 日差しは木々に遮られているとは言っても、残暑は残暑だ。階段登りで披露はピークに達しようと言う現在、俺は汗だくである。やがて神社の鳥居が見えて来た頃には四肢を使い、登ってるのか転んでるのか判断つかない様な状態であった。
「「暑っつい……」」
 鳥居を潜り、上伏神社の境内に入った開口一番に吐いた俺の悪態は、鳥居の日陰で日差しを避けていた人物と見事にハモった。お互いに首を向けて、お互いに存在を確認し、観念した様に同時にため息を漏らした。
「まぁ、なんつーか……夕霧さんに妹がいるって聞いた時点でお前だろうと思ったよ」
「姉さんの婚約者が伏神なんて珍しい苗字の時点で、こうなる事は分かってたさ……」
 俺、および鳥居にいた人物はそれぞれ左右の鳥居の脚に腰を下ろし、息も絶えだえに諦める事にした。長い階段を登ってきた俺は疲労で、あちらさんは残暑にやられて言い争う力さえ残っていない。
 劔兄さんと夕霧さんは俺たちが知り合いだと思っていなかったらしく、きょとんとした表情でこちらを見ていた。
「あぁ、自己紹介はとっくの前に済ませてる。クラスメイトだよ、俺ら」
 そう。何を隠そう、鳥居の下で日差しを避けていた人物とは驚くべき事に、クラスメイトであるガングロ雪女の柳瀬川朝霞だったのだ。(棒読み)

57タタリ 2/2:2014/10/22(水) 01:10:11 ID:smnMc0lo0
「で、お前はこんなところで何をやってたんだ?」
「姉さんが婚約者の弟を迎えに行くって言うから、着いていこうとしてたんだよ。……あたしは努力はした。超頑張った」
「その努力は買おう。気持ちは分かる」
 大人組が神社の神主である織守拓人(おりがみタクト)に挨拶に行っている間、俺と朝霞は適当な会話で時間を潰す事にした。朝霞の態度がいやにしおらしいと思うなかれ。これは単に夏バテしてて喧嘩腰になるのも億劫だというだけだろう。
「それだけじゃないけどな」
「どういう事だ?」
「そうだな……テメェにあたしらの事情を喋んのは癪だが、伏神の末裔ならいずれ分かる事だし、仕方ねーか」
 言いながら、朝霞は神社よりやや高い場所を指差す。そちらに視線を預けてみると、よくよく見れば一部の森が伐採されている事が分かる。火を起こしているのだろう、僅かな煙が立ち上がっている。
 先にも述べたが、伏神山は霊山であり、一部の登山ルートを除いて一般人の立ち入りは禁止されている。標高が高い訳ではなく、地盤も安定しているので雨災時の土石流などもあまり発生せず、生活は安定しているにも関わらず、だ。
 その一部が開拓されている。これは俺が五界統合学院に行く頃にはなかった。つまり、俺が実家を空けている間に何らかの介入が行われたという事に他ならない。
「あの辺に、あたしたち魔界人の移籍集落がある。区画整備で居所を無理やり造っただけの杜撰な物だがな」
「知らなかったな、初耳だ」
 必要最低限すら連絡を取ってなかった訳だから、当然といえば当然なのだが。
「伏神山が霊山って事は知ってる。僅か数十人だけとは言え、居所を与えてくれた劔さんには感謝してるよ。……まぁ、御意見役の老人たちと一悶着も二悶着もあったって聞いてるけど」
「あの老害どもは本当にしょうもないな」
「で、居住区を提供するための交換条件が、集落から一名の代表者を伏神家で生活させること。そして、定期的に集落の状況を伏神家に報告させること。最後に、代表者の親族を五界統合学院に編入させること」
「……お前、それって……」
 老害どもは、本当に姑息で卑劣な手を使ってくるものだ。誇るつもりは微塵もないが、同じ伏神の血統として実に腹立たしく思う。
 つまり、体の良い人質だ。魔界人が不審な行動を行った場合、柳瀬川姉妹がどうなっても知らないぞという脅し文句だ。わざわざ五界統合学院に朝霞を編入させたと言う事は、守手四十七氏の権力を経由して人間界政府とも手配済みだろう。
 魔界人の脅威を出来る限り分散させて、意思の疎通を物理的に切断する。そこに白羽の矢が立てられたのが、柳瀬川姉妹という訳だ。

58タタリ 3/2:2014/10/22(水) 01:10:37 ID:smnMc0lo0
「幸いと言うか何と言うか、劔さんと姉さんは元々知り合いだったらしいから、形だけでも結婚という体裁を執る事で御意見役たちの意見を通したらしい。姉さんは今や伏神の本家で生活してるって話だが、少しは待遇も緩和されてるんじゃないかな」
「兄さんらしいや」
 困った人を見捨てられなかったり、理不尽な権力を嫌ったりするところは相変わらずらしく、かつての記憶と変わらぬ兄の姿にほっとため息を吐く。
 しかし、これで合点がいった。初対面の朝霞は俺にやたらと辛辣な態度を取っていたが、あれは俺がどうという問題だけではなかったのだろう。いや、第一印象が最悪だったからこそ原因は全く別とは思わないが、あれはたぶん……人間界そのものへの憎悪があったのだろう。
「ま、あたしがこの辺の事情を知ったのは、つい昨日の事なんだけどな」
「そういや、先にここに来てたって事は、俺より早く出たって事だもんな。俺は兄さんから連絡を受けた翌日に都内を出たが、お前は休日前に出立してたのか」
「あぁ。伏神ってのは少なからず嫌いだが、劔さんとは少し話して、悪意がない事は分かった。テメェは未だにいけ好かねぇが、劔さんの面子もあるし、まぁ少しくらい認めてやらんでもない」
「どんだけ上から目線だよお前」
 いやまぁ、別にいいんだけどな。ゴミ屑からゴミにランクアップしたところで実数値的な差はなかろうて。
 そんな事情を聞き終わった頃、織守と話を終えた大人組二人が帰ってきた。手には風呂敷を抱えている。おそらく織守さんち秘伝のおはぎだろう。あれは昔から美味いんだ。
「仲良さそうだな、二人とも」
「「いや、全く良くねぇよ」」
 くつくつと笑いながら歩み寄ってくる夕霧さんに向かって、顔の前でパタパタと手を振る俺と朝霞。コイツと仲がいいなんて死んでもゴメンだ。アシュリーとよろしくやってる方が百倍マシってもんだよ。

 さて。だいぶ時間を食ってしまったが、いよいよ本家に足を踏み入れる事になってしまった。
 ああ嫌だ。覚悟は決めていた筈なのに、いざ帰るとなると本当に憂鬱だ。当初の予定であった兄さんの結婚報告は聞いたのだし、もう帰っても問題ないと言うのに。
 ……って言うか。その前にもう千五百段ほど階段登らなくちゃならないってのが一番イヤなんだが。

59数を持たない奇数頁:2014/10/22(水) 01:11:26 ID:smnMc0lo0
今回短くなったし二回でいけるかと思ったが長すぎって怒られたでござる

60数を持たない奇数頁:2014/10/22(水) 01:42:55 ID:Zmz5bmng0
忘れてたが次はどあにんお願いね!

61数を持たない奇数頁:2014/10/22(水) 01:55:46 ID:cCyl9.zc0
タタリんおっつ
まだ老害が生き残ってるんか…(呆れ)

62数を持たない奇数頁:2014/10/22(水) 02:09:17 ID:Zmz5bmng0
過去の事件でいったん全滅してたとしても、空いたポストに収まりたがる奴はいっぱいいるだろうからね
何度でも蘇るさ!

63どあにん:2014/10/22(水) 07:25:31 ID:Br5L8hFc0
やりたい事・やらなきゃいけない事の山積みで嬉しい悲鳴が上がりっぱなしれす
がんばりゅ

64数を持たない奇数頁:2014/10/22(水) 18:39:36 ID:cCyl9.zc0
ソウジくんって土下座したらやらせてくれそう(人間の屑)

65数を持たない奇数頁:2014/10/22(水) 20:49:21 ID:Sy2jEpHY0
たたりん乙
やったー朝霞ちゃんがきたぞ!!

66数を持たない奇数頁:2014/10/22(水) 23:20:31 ID:Zmz5bmng0
ドキドキ!朝香ちゃんはいつデレるか?チキンレース開幕だ!

いや、朝霞の出番が少なかったってのもあるが、これまでずっとツン貫いてるし、そろそろルートに入れてもいいよなって思う反面、
誰が最初に辛抱たまらずルートに入れるのかなって思ったらこんな謎タイトルを思い付いた

67数を持たない奇数頁:2014/10/23(木) 17:39:15 ID:UGqp8o.Y0
今のところのヒロイン候補

·エクリエル
·ダミアン
·朝霞

男女比1:2で何もおかしいところはない、いいね?

68どあにん:2014/10/25(土) 21:57:47 ID:DeHnp81Y0
すまんな


おじいちゃん(強キャラ)出す

69数を持たない奇数頁:2014/10/25(土) 22:05:35 ID:sWDdU4jc0
田舎だしね、強キャラのおじいちゃんの一人や二人はいるよね

70どあにん:2014/10/25(土) 22:09:22 ID:DeHnp81Y0
そーじくんのじいちゃんの名前どうしようかなー
ニイチャンが剣だからジイチャンは盾かな

71数を持たない奇数頁:2014/10/25(土) 22:26:46 ID:sWDdU4jc0
ちなみに父ちゃんは巌斎(がんさい)だよ
前スレ>>928

72数を持たない奇数頁:2014/10/26(日) 00:03:59 ID:68XJe8HQ0
劔の名前を考えるに当たって伏神家の設定考えたけど多分活かされる事は無いだろう

73どあにん:2014/10/29(水) 23:30:26 ID:iOfsKXsw0
持病の長い文章書けない病がががが
キリのいい所で切り上げて三馬鹿も進めちゃう(ゲス顔)

74数を持たない奇数頁:2014/10/29(水) 23:31:55 ID:x8OF0eBY0
三馬鹿が本家に来るのか!?

75どあにん:2014/10/29(水) 23:38:10 ID:iOfsKXsw0
伏神山に眠る賢者の書物を探すよ!
ちなみにオチはもう考えてあるぞ ククク……

76数を持たない奇数頁:2014/10/29(水) 23:39:54 ID:UJfX1qHE0
お、投下か?

77どあにん:2014/10/29(水) 23:43:40 ID:iOfsKXsw0
ダメだ伏神家の人達の家の話が思い浮かばん
三馬鹿書いてブン投げる大悪行を実行する

78西口:2014/10/29(水) 23:46:38 ID:UJfX1qHE0
構わん、後は任せろ

79数を持たない奇数頁:2014/10/30(木) 21:00:30 ID:8TNovphY0
多分ソウジくんは中等部の頃エクリエルに何発も殴られてる

80数を持たない奇数頁:2014/10/30(木) 21:12:05 ID:gXUXZiYw0
エクリエル「君が! 死にたがらなくなるまで! 殴るのを! やめない!」
ルカ「死にたがりやめる前にお兄ちゃんが死にそうだ」(止めない)

81数を持たない奇数頁:2014/10/30(木) 21:14:16 ID:8TNovphY0
アシュリー「やっぱりクソ天使じゃないか(呆れ)」

82数を持たない奇数頁:2014/10/31(金) 13:55:49 ID:aIHEouMg0
自分が出した登場人物の服装とか考えたけど画力が圧倒的に欠如していた

83数を持たない奇数頁:2014/10/31(金) 17:23:32 ID:4fylqOxk0
エクリエルはユニセックス
ルカはストリート
ソウジはアメカジ
ダミアンはロック
アシュリーと朝霞はお姉系かギャル系
クロガネはフェミニン

84数を持たない奇数頁:2014/10/31(金) 17:31:51 ID:4fylqOxk0
※個人の感想です。

ロックなダミアンを見てみたいので誰かオネシャス

85数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 00:13:43 ID:nFENdCs.0
実は個人で楽しむようにてきとーに連鎖キャラ描いたりしてた

86数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 00:18:50 ID:wdCrz6Y.0
晒すのだ

87数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 00:42:28 ID:nFENdCs.0
でもイメージがそれぞれあるだろうしこういうのって晒してもいいんかな
顔を簡単に描いた程度だし決して影響力がある絵じゃないんだけど

88数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 00:48:23 ID:wdCrz6Y.0
いいなじゃない? 前にも一回晒した人いたし

89数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 00:49:16 ID:wdCrz6Y.0
いいなじゃないってなんだ
いいんじゃない、だ

90数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 10:56:09 ID:5gLLpsnw0
個人のイメージだからいいんじゃね?

91数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 17:34:17 ID:ORLy3Mjw0
是非とも晒すが良いのである
ハリーハリーハリー

92数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 17:57:16 ID:LwmR02UY0
ポッター

93数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 20:42:41 ID:lwHwYyZE0
何故か久遠絵が描かれたファブニルさん

94数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 20:46:39 ID:nFENdCs.0
ちょっと写真とってきます

95数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 20:58:40 ID:nFENdCs.0
シャーペンだから薄いけど
http://dl1.getuploader.com/g/saraswati2/289/rensa.jpg
全員わかったら100万円

96数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:02:56 ID:afbGeF3.0
描き分けすげー!

97数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:31:09 ID:nFENdCs.0
描き分けてるってよりムラがありすぎるだけなんです
同じキャラもう一回描いたら別人になるんです

98数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:38:04 ID:s7S1fEN20
上から一段、左から順に真川、ルカ、クロガネ、エクリエル(?)
二段、黒龍、ダグダエル
三段、朝霞、ソウジ、ダミアン、黄龍(?)
四段、緑龍、白龍、赤龍
かな?

99数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:41:49 ID:nFENdCs.0
>>98
二段目から全部正解!ルカとクロガネも正解!
真川は描いてません!

100数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:42:57 ID:s7S1fEN20
・・・アシュリー?

101数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:45:18 ID:s7S1fEN20
いや、これひょっとしてエクリエル、ルカ、クロガネ、聡理か?

102数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:45:58 ID:nFENdCs.0
正解は
左がエクリエルで右は俺が今後出そうと思ってる未登場キャラでしたー!!

103数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:48:01 ID:s7S1fEN20
oh・・・

104数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 21:50:59 ID:nFENdCs.0
しばらく前に描いたやつだから聡理とかの新しいキャラはまだでした

105数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 23:06:08 ID:wdCrz6Y.0
エクリエルイケメンだな

106数を持たない奇数頁:2014/11/01(土) 23:18:25 ID:nFENdCs.0
クールビューティーです!

107数を持たない奇数頁:2014/11/02(日) 11:57:13 ID:9Nj2cTg.0
赤龍「やっほーソウジ遊びに来たよー」
ソウジ「何しに来たクソホモ野郎」
赤龍「この世界にはなんでもTRPGというゲームがあるそうじゃないか。ソウジがGMでクトゥルフの呼び声やろう(提案)」
緑龍/黒龍/黄龍「お願いしまーす」
ソウジ「存在そのものがコズミックホラーな連中が何言ってんの!?」

108数を持たない奇数頁:2014/11/02(日) 12:17:56 ID:MmC4muicC
グダグダエルせんせーから溢れ出る強キャラ臭

109数を持たない奇数頁:2014/11/02(日) 23:38:44 ID:5fbPB6Lo0
グダグダエル先生は強キャラを直接倒すのではなく、強キャラとの決戦の舞台を整えてくれる露払い役が似合う

110数を持たない奇数頁:2014/11/03(月) 00:31:21 ID:nPLz81Cc0
あの学校の先生は皆エリート中のエリートだと思う

111数を持たない奇数頁:2014/11/03(月) 01:14:44 ID:S7GYf0Kg0
今出てる先生ってグダグダエル、ユーザス、ハヅキと辞めたカザルル先生で四人でいいのかな?

112数を持たない奇数頁:2014/11/03(月) 01:43:36 ID:S7GYf0Kg0
書いてる人によってソウジうんの口調ぶれるよね

113数を持たない奇数頁:2014/11/03(月) 01:53:26 ID:S7GYf0Kg0
家で起きた騒動とかソウジくんの病とか妹の死とかをこねくり回してたらまたソウジくんに設定生えてきたんだけど

114数を持たない奇数頁:2014/11/03(月) 08:54:21 ID:CjxIoM020
過積載いいじゃない

115どあにん:2014/11/04(火) 06:32:21 ID:d02w3gSM0
ようやく1500段を登り切って後ろを振り向くと空は橙色に染まり、麓の村々がまるで宝石をまき散らしたかのように輝いている。
幼い頃に幾度と無く見てきた光景は、今も変わらないままそこにあった事に、つい涙腺が緩みかける。
本当に泣きたくなるのは、これからだと言うのに。

「お帰りなさいませ、聡治様」

開けた瞬間、音の波がソウジの鼓膜を叩く。
屋敷中の女中全員が石道の脇で頭を深く下げている、そんな事など一切望んで居ないのに。
だからソウジは心を殺して無心になる、脇にいるのは全員石なのだ……そう考えていなければ居心地の悪さに押し潰されそうだから。
最も、玄関の前に佇んでいるのはその居心地の悪さの発生源とも言うべきか。

「……戻ったか、聡治」

伏神家27代目頭首、伏神楯一郎。
御年80を超える肉体は大きな隆起が彫り込まれている為老いによる衰えを一切感じさせない。
着物から見える肌からは勿論、顔にも巨大な傷痕が刻み込まれている事から、歴戦の強者だと言う事を認識させられる。
ソウジは幼い頃から自分の祖父はあまり好きになれなかった、なぜならば。

「……ただいま、爺ちゃん」
「ぬわぁぁあああああん!!!会いたかったよぉぉおおおお!そうじぃぃぃいいいい!!」

……超が千個付いても足りないくらいの孫LOVEだからだ。

116どあにん:2014/11/04(火) 06:32:37 ID:J5/sM53A0
「見苦しい所を見せたな、聡治」
「あー……うん、いいよ気にしなくて……」

はだけた衣装を直しながら今更威厳たっぷりに言っても遅いよ爺ちゃん、とそっと呟いた。
第一に筋骨隆々の老人がソウジの足元でゴロゴロと転がりまわるカオス過ぎる光景を見た劔や朝霞に夕霞も苦笑いしていた。
伏神一族は変人一族だと思われそうで怖い。

「ま……何はともあれ、お祖父様もお元気d」
「お前には話しておらん、黙っておれ」

何故か楯一郎は劔に対して厳しいと言うより嫌ってるようなフシがある。
息子を未だ溺愛する姑の如き嫌われっぷり、短く笑う劔だったけどその眼には微かな涙。
そして夕霞と朝霞の冷ややかな眼が劔に追い打ちをかける、その眼はあぁやっぱり変人一族だ、と無言の罵倒。
夕霞さんの表情が"なんでこんな奴と結婚しちまったんだろ、今から離婚届出そうかな"みたいな顔をしている。
ソウジは内心"やめてくれマジで"と叫び続けた、そんな事になったら余計劔が楯一郎にあーだこーだ言われそうだからだ。

「うむ、長旅で疲れたろう 上がっていけ。 夕霞さんにその妹さんもな」

背を向けて一人家の中へ入っていったのを皮切りに、女中達が本来やるべき仕事へと戻っていくのを脇目に、劔と夕霞さんは歓談しながら、朝霞は面倒くさそうなしながら家の中へ入っていった。
ソウジはと言うと荷物を置く為に自分が使っていた部屋に行こうとした際、楯一郎がソウジの名前を連呼しながら跳ねるような音が聞こえたので、ソウジはそっと聞こえないフリをした。
部屋に荷物を置いて面倒くさそうに必要最低限身支度を整える、ソウジにとって最も嫌いな時間である御意見役の老人達への報告があるからだ。
最終決定権は楯一郎にあるものの、近頃は暴走が目に余ると劔から言われていた上に楯一郎を決定を待たずして執行する事が多くなってきたからだ。
幼い頃からずっと御意見役の老害に嫌われていたソウジ、唇を軽く噛み締めてから力無く歩き始めた。



一方その頃。

「俺のセンサーがビンビンに感じてるぜ!多分あっちだ!」
「言っとくけど、股間にぶら下がってる粗末なモンの事指してるならブン殴るからな!」
「ま、待って……おいてかないで……」

三馬鹿はジョエルの無駄に元気な一声を元に道なき道を行っていた。

117どあにん:2014/11/04(火) 06:33:30 ID:J5/sM53A0
時間掛かった割にはここまでと言う体たらく
業務連絡が2つ程

・VIPRPG紅白祭りに専念したいんでちょっとローテからハズレます
・今日付けで25歳になりました

118数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 08:44:57 ID:/.zIbLUA0
乙ポニ&おめなんだぜぇ
じいちゃん…(^ω^)

紅白祭りって期限いつまでなのかな?
ローテ抜けるのって一時的にって事なんだよね?

119西口:2014/11/04(火) 08:55:54 ID:HKpU2GSg0
どあにん乙、そしておめでとう
さてどうしようか

120どあにん:2014/11/04(火) 09:16:22 ID:J5/sM53A0
>>118
そそ、一時的
12/23 23:59 期限内提出締め切り
 ・12/25 作品公開予定
 ・12/31 23:59 エントリー締め切り
 ・1/1 投票開始
 ・1/31 更新終了予定 ※遅刻、更新受付などもここで終了です。

正直MAP作り苦手なんでめっちゃ手間取ると予想される

121どあにん:2014/11/04(火) 09:24:07 ID:J5/sM53A0
じいちゃんのイメージは薙切仙左衛門みたいな感じ
性格は斉木 熊五郎になっちゃった☆ミ

違うんだ、ちょっとそーじが好きなだけのじいちゃんにしたかったのに 自分でもどうしてこうなった

122数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 09:25:50 ID:HKpU2GSg0
おう、分かった
多分木曜日には投下するぜ

123どあにん:2014/11/04(火) 09:27:53 ID:J5/sM53A0
ssmcみたいに適当なMAPを作るのは許されないんDA!
完成したらまたテストプレイ頼むかも

124数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 09:35:41 ID:/.zIbLUA0
色々ひっくるめて3ヶ月は厳しいって事か、了解

しかしビジュアルとメンタルのギャップが酷いなwwwwwwww

125数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 19:31:36 ID:HKpU2GSg0
朝霞ちゃんのお家の事情書こうとも思ったけど、なんか面倒になったから
劔と夕霧の会話だけ書いて投下するわ

126数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 19:42:44 ID:i3.smytw0
競作もあるしね

127数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 19:44:15 ID:HKpU2GSg0
せやな(完結できるとは言ってない)

128数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 19:52:01 ID:lebpsASc0
どあにん乙
そしておめでとう
テストプレイなら任せろー

129数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 20:48:54 ID:HKpU2GSg0
またもや変に盛大な設定が出てくる予感
頑張ってくれ(他力本願)

130数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 20:52:19 ID:QryxEgE.0
(実は密かにリレーキャラでもSW2.0妄想をしている)

131数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 20:55:15 ID:HKpU2GSg0
とりあえずリプレイ風に序盤仕上げてください! 誰かが何でもすると思いますから!

132数を持たない奇数頁:2014/11/04(火) 21:10:27 ID:QryxEgE.0
ダグダエル「今度こそ転校生の歓迎会を兼ねてTRPGをしよう(提案)」
ソウジ&朝霞&ダミアン「え、ヤだ…」
ダグダエル「ダンくんにGMを任せたから、詳しい事は彼に聞いてね」
三人「聞いてよ」
ダグダエル「PL三人じゃ厳しいだろうから、あと二人呼んどいたよ」
三人「なに余計なことしてくれてんの?」
エクリエル&アシュリー「呼ばれた」
三人「なんでこの二人選んだの!?」

ソウジ「…で、技能どうなった? 俺はタンクファターにするつもりだが」
ダミアン「前衛デーモンルーラー」
朝霞「前衛コンジャラー」
エクリエル「2H神官フェンサー」
アシュリー「投擲神官フェンサー」
ソウジ「前のめりにも程があるだろ!」

なんかこんな感じ

133数を持たない奇数頁:2014/11/05(水) 11:14:21 ID:30VxKSUY0
聡里が何年前に死んだかって、具体的な数字出てないよね?

134数を持たない奇数頁:2014/11/05(水) 11:52:53 ID:MKAcsOcs0
とりあえず小ネタとかを含めて中等部に上がる前辺りで考えてた
何となく中等部から入学したと考えれば、逃げ出した件とかとも合致しなくもないし

135数を持たない奇数頁:2014/11/05(水) 15:12:14 ID:lB57E22E0
つまり要約するとソウジはJC6の妹に剣道で負けていた

136数を持たない奇数頁:2014/11/05(水) 15:14:05 ID:lB57E22E0
JSだった

137数を持たない奇数頁:2014/11/05(水) 17:56:27 ID:30VxKSUY0
やべえ、考えが文章として纏まらん
これじゃ設定の羅列になっちゃうやばいやばい

138数を持たない奇数頁:2014/11/05(水) 18:09:32 ID:UFFqn54Q0
作中の設定説明は1回か2回でいいよなぁ、と最近思い始めた
あとの細かいのは場面と一緒に見せていきたい

139数を持たない奇数頁:2014/11/06(木) 08:54:39 ID:nCtYb.aA0
というかこれお兄ちゃんとじいちゃんのどっちが頭首なんだ

140数を持たない奇数頁:2014/11/06(木) 09:04:35 ID:1FPTg.nQ0
壮健と言っても既に80超えてるおじいちゃんに当主は任せられないんじゃないかな

141西口:2014/11/06(木) 09:37:08 ID:nCtYb.aA0
投下しますわ

142数を持たない奇数頁:2014/11/06(木) 09:37:25 ID:nCtYb.aA0
夜の森林は、月明かりすら遮る漆黒の要塞である。
人工灯のない人間界の奥地にあると来れば、それは言うまでもない。
獣すら近寄らぬそこに跋扈する魑魅魍魎は、はたして悪鬼の類か、それとも精霊か。
「彼」の容姿のみを見れば、誰もが前者だと答える事だろう。
草臥れた漆黒のスーツに身を包んだ、巌の如き頑健な肉体を持つ青年。
その眼光は右手に握る太刀のそれにも劣らぬほどに冷たく輝いており、その瞳で射竦められて正気を保てる者はそういないだろう。
地面に横たわり、首元に太刀の切っ先を突きつけられているローブ姿の女性は、その数少ない一人であった。
「届かせて貰ったぞ、キリ。些か手古摺ったがな」
青年――伏神劔は、普段弟に向けているそれとは打って変わったような、ゾッとするほどに冷たい声音で呟いた。
地面に横たわる夕霧を逃がすつもりなど毛頭無いのだろう。勝敗が決したと思しき場面でありながら、総身には未だ緊張が漲っている。
夕霧はその顔を無感情な目で見返し、やがて大きなため息を吐いた。
「……ええ、完敗ね。情けないことこの上ないわ、劔」
そうして彼女は恭順の意思を示すかのように両目を閉じる。
フードから投げ出された白雪色の髪は土に汚れ、見る影もなくなっている。
普段の彼女ならばこの上ない渋面を浮かべるだろうが、疲労の極致にいる今となってはそんな事言っていられないのか、何も言わない。
いや、ただ諦めているのだろう。
人は死ねば唯の肉。その見てくれを演出する必要などない。
彼女は死を覚悟しているのだろう。このような状況に陥ってしまったがゆえの、当然の報いだと。
「殺しなさい。一廉の戦士なら、敗者を辱める様な事はしないんでしょ? 私は守った事ないけど」
「そもそも尖兵たる露払いにそんな矜持は求められないものなんだが。というか、それ以前に――」
――約束をたがえる気か?
どこか砕けた声音で、劔は言う。
夕霧はいまさらといったタイミングで、この上ない渋面を浮かべた。
「ストーカー気質ね。何でまだ覚えているのよ」
「差し迫ってきたからだよ。早急に君が欲しくなった」
「斬新な婚活ね。まあ、貴方みたいな人間の所に嫁いでくる人間なんているわけないとは思うけど」
「……相変わらず、口が減らないな」
ぼやきながら刀を引き、納刀。
キン、という特徴的な金属音が、一瞬だけ夜のしじまを侵した。
「俺が勝ったら何でも言うことを聞くんだろう? 死ぬ事は許さんぞ」
手を差し伸べて、劔は言う。
渋々といった様子でその手を取り、立ち上がった夕霧は、「仕方ないわね」と本当に嫌々といった様子で呟く。
「14歳の頃から6年間、貴方に負ける日が来るなんて思わなかったけど、もうダメね。今後貴方に勝てるようになるヴィジョンが浮かばないわ
 よくもまあここまで鍛え上げたものだわ。何かきっかけでもあるの?」
「ああ、ちょっとな」
劔の顔に、微かに陰影が差す。その中に微かに灯るのは、憎しみの色だろうか。
夕霧が初めてみる表情だった。
戦争当時の機界人めいた冷徹さや無感動さを纏った彼の姿には慣れていたが、そこまで剥き出しの感情を面に出す劔の姿は、初めてだった。
「……本当に、何があったの?」
「――妹が死んだ」
表情を見られまいとしているのか、劔は天を仰いだ。
「母が死んだ。叔父が死んだ。祖母が死んだ。従兄弟が死んだ。使用人が死んだ。彼ら、彼女らの子供も死んだ。沢山、沢山な」
きつく握り締めた劔の右手から血が流れる。気付く夕霧だが、話の腰を折ることも出来ず、無言のまま続きを促す。
「父が、老害どもが見果てぬ妄執に取り付かれたせいで、皆死んだ。だというのに、伏神はまだ残り、そこにへばり付く老害どももまだ大量にいる」
「貴方、まさか……」
「伏神を潰す。あの死にぞこないどもを、一人残らず地獄に叩き落してやる」
劔の視線が、夕霧のほうへと戻る。
「夕霧。君たち雪女全体にではなく、君個人に頼む。力を貸してくれ」
そうして、頭を下げた。

143西口:2014/11/06(木) 09:37:47 ID:nCtYb.aA0
「あら、どうかしたの?」
伏神邸、自室。
伏神劔は開け放った窓から見える、茜差す伏神山の光景に目を細め、見入っていた。
じっとりと汗ばんではいるものの、薄手の甚平一枚という格好は妙に涼しげである。
それと正反対のような暑苦しいローブを纏った夕霧が、その後姿に声を掛けつつ、開け放たれた障子戸を閉めつつ入室する。
「物思いにふけるなんて、貴方らしくもない。耄碌でもしたのかしら?」
「いや、お前の手を取った日を思い出してな。そうか、あの日からもう四年も経つのか」
「走馬灯を見るには早すぎるわよ。まだ何も終わってはいないわ」
その傍らに寄り添うように座り、夕霧は忠告めいた口調でそう言う。
「ああ、そうだな。……チャンスは明日の夜。ソウジと朝霞ちゃんに気付かれる前に全てを終わらせよう」
「ええ、分かっているわ。そのためには、貴方の右腕の力が必要になる。ちゃんと使いこなせているのね、その竜の力」
劔は首肯のみで以ってそれに応じ、右腕を撫でる。
分厚い筋肉に鎧われたそれは、強靭ではあるものの、さしておかしな部分は見当たらない。
――今はまだ、であるが。
「しかし、まさかお前と結婚する事になるとはな。都合がいいとはいえ、流石に予想外だったぞ」
「それは私の台詞よ。伏神家は前々から嫌いだったけど、上が「ああ」じゃ腐ってて当然ね」
「耳の痛い話だ。全てが終わったら、婚姻関係を解消してくれて構わない」
「……して欲しいの?」
眉を顰めながら、不機嫌さの塊のような声でそんな事を言った夕霧に、劔は驚いた。
夕霧は劔の顔を真っ直ぐ見つめ、「私が妻じゃ迷惑かしら」と続ける。
「いや、そういう事じゃなくて、お前の自主性を重んじようと思ってだな」
「答えになってないわ。貴方はどうかと聞いているの」
ずずいと身を乗り出して聞く夕霧。その勢いに気圧され、仰け反る劔。その巨体を威圧する眼光はただ事ではない。
彼女は今、紛れもなく怒っている。
「あーと、それは、だな……」
「口ごもらない。好きか否かを、娶るに足るか否かだけを答えなさい。今すぐに。ナウ」
「す、あー。好き、だよ。お前が妻になってくれるのなら嬉しい」
「……そう、ならいいわ」
潮が引くように萎んで行く彼女の怒り。
睨んだ相手の心臓を鷲掴みにするかのような威圧感も、また同時に。
劔は心底からの安堵のため息を漏らした。
「貴方気付いていなさそうだから言っておくけれど、私貴方の事大好きなのよ。勿論恋愛的な意味で。
 突き放すような事言わないで頂戴。悲しくなるから」
「は、初耳なんだが」
「初めて言ったもの。ああ、恥ずかしい。顔から火が出そうだわ」
顔を逸らしながらそういうが、夕霧の声音は飽くまで平坦である。
だがそれが紛れない真実であることが分かる程度には、劔と彼女の関係は深い。
劔は無言のままその頭を抱き寄せ、夕霧もされるがままだ。
窓の外。伏神山に野鳥の声が木霊する。
少し紫がかった夕空に、沈み行く夕陽。徐々に降りてくる夜の帳が、それらを美しく演出する。
劔にとっては慣れ親しんだ光景だ。幾度となく流し見してきた光景だ。
だが改めて見ると、そのためいきでも出そうなほどに幻想的な風景はどうだ。
これで見納めかもしれない。
そう無意識かに思っているのだろう。二人はただ黙って、日が没するその時まで共にその光景を眺めていた。

144西口:2014/11/06(木) 09:40:22 ID:nCtYb.aA0
以上、今回は短めで

劔の夕霧への呼び方変わってたらいいな、とかいう妄想の下よくわかんない過去編の回想
説明不足の設定羅列
夕霧&劔のイチャイチャ(?)とデスノボリライジング
全部やれてるかは知らないけど、後は任せた

145数を持たない奇数頁:2014/11/06(木) 12:18:27 ID:o8ZmQX620
乙ポニ

何だよコイツら…末永く爆発しろよ…
キリって呼び名はいいね。今や形式的な婚姻関係だけど、つい素が出ちゃうとかなら俺得ですな

146数を持たない奇数頁:2014/11/06(木) 22:34:28 ID:nCtYb.aA0
次Kの人でいいんだっけ?

147数を持たない奇数頁:2014/11/06(木) 23:32:08 ID:.IjIfjkg0
西口乙
何やら事件が起こりそうな雰囲気
次はKの人だと思う

148数を持たない奇数頁:2014/11/06(木) 23:35:21 ID:cD9FtIOY0
あいむナナ砲布教中のPOK

西口おっつおっつ&パス了解だぜ。ただ競作の方の締め切り近いからそっち優先でちょっと遅くなるかも

149数を持たない奇数頁:2014/11/11(火) 00:23:08 ID:t.Uag8Yw0
伏神三兄弟はきっと幼い日劔onソウジon聡里で三連肩車とかやってたに違いない

劔「ハッハッハ、まるでトーテムポールだな」

ソウジ「そ、そうだな……」プルプル

聡里「兄さん、小刻みに震えないで下さい。私が重いとでも言いたいんですか?」

150数を持たない奇数頁:2014/11/24(月) 19:56:00 ID:snNFXz.A0
こっ↑ここ↓

151数を持たない奇数頁:2014/11/28(金) 08:44:09 ID:F8zmCKPg0
Kだけど競作で燃え尽きたのかまるで筆が進まないからパスしたい早漏

152数を持たない奇数頁:2014/11/28(金) 08:54:05 ID:3Rb/KDus0
残念だのう

153数を持たない奇数頁:2014/11/28(金) 09:04:38 ID:F8zmCKPg0
年のせいか寒くなってきたせいか、色々とモチベーションが上がらんのよねぇ……

154数を持たない奇数頁:2014/11/28(金) 09:12:58 ID:3Rb/KDus0
まあ今までドバッと出しすぎたんよ
バランスとってると思いなさいな

155数を持たない奇数頁:2014/11/28(金) 09:13:55 ID:F8zmCKPg0
うん、そうするわ

156数を持たない奇数頁:2014/11/28(金) 09:58:07 ID:4jd8kEXc0
Kの人は毎回ガッツリ気合い入ってるから、たまにはガス抜きも良かろうさ
乙ポニ

157数を持たない奇数頁:2014/11/28(金) 20:09:07 ID:k7zJ8ZMc0

続きは俺に任せろー

158数を持たない奇数頁:2014/12/01(月) 00:27:02 ID:K4xcidQs0
 邸内の杉林の奥、離にひっそりと佇む茶室に、無数の灯りが微かに揺れる。薄暗い茶室の中には、昏い眼光とか細い息遣いが潜んでいた。

 その一つがため息を吐くように発す。
「まさかあれが帰ってくるとはのぉ」

 他の一つが口の中を汚く鳴らす。
「あれを呼んだは劔のようじゃ。まだあれに情があったか……」

 また他の一つが鼻息で灯を崩す。
「それよりまさかあの朝霞の娘を娶るとは……。なんぞ企みがあると見た……」

 そのまた他の一つが音もなく笑う。
「然り……朝霞にあれ、時が時だけに臭いよる……」

 それのまた他の一つが歯を擦る。
「それならようやっとあれに使い道が生まれたのぅ。あれも駒に成れる日がくるか……」

 それらは一同に灯りと共に身体を揺らし、浮かぶ顔に数多のしわを刻んだ。
「そりゃあええ……そりゃあええ……」

159数を持たない奇数頁:2014/12/01(月) 00:28:42 ID:K4xcidQs0
短いけど以上に候!
次はタタリ殿お頼み申す!!

160数を持たない奇数頁:2014/12/01(月) 00:34:57 ID:YaxKR0Cg0
朝霞の娘…?
ここ夕霧(お姉ちゃん)じゃなくて?

161数を持たない奇数頁:2014/12/01(月) 00:38:51 ID:K4xcidQs0
いつの間にか朝霞が苗字だと錯覚していた
俺は悪くない!

162数を持たない奇数頁:2014/12/01(月) 00:44:23 ID:K4xcidQs0
 邸内の杉林の奥、離にひっそりと佇む茶室に、無数の灯りが微かに揺れる。薄暗い茶室の中には、昏い眼光とか細い息遣いが潜んでいた。

 その一つがため息を吐くように発す。
「まさかあれが帰ってくるとはのぉ」

 他の一つが口の中を汚く鳴らす。
「あれを呼んだは劔のようじゃ。まだあれに情があったか……」

 また他の一つが鼻息で灯を崩す。
「それよりまさかあの柳瀬川の娘を娶るとは……。なんぞ企みがあると見た……」

 そのまた他の一つが音もなく笑う。
「然り……柳瀬川にあれ、時が時だけに臭いよる……」

 それのまた他の一つが歯を擦る。
「それならようやっとあれに使い道が生まれたのぅ。あれも駒に成れる日がくるか……」

 それらは一同に灯りと共に身体を揺らし、浮かぶ顔に数多のしわを刻んだ。
「そりゃあええ……そりゃあええ……」

163数を持たない奇数頁:2014/12/01(月) 00:44:48 ID:K4xcidQs0
修正完了ギリギリセーフ

164数を持たない奇数頁:2014/12/02(火) 14:09:20 ID:wtnWyj5.0
そろそろ朝霞とフラグ立てとくか

165西口:2014/12/05(金) 21:02:39 ID:ORyPlius0
先に言っておく
1月22日から2月3日くらいまで、俺は死んだと思ってくれ

166数を持たない奇数頁:2014/12/05(金) 21:26:51 ID:kifkx6Xs0
いったい何が…研修?

167数を持たない奇数頁:2014/12/05(金) 21:34:45 ID:ORyPlius0
ヒント:発売日(人間の屑)

168タタリ@仕事なう 1/3:2014/12/13(土) 15:30:52 ID:7jPJxPCY0
 夜中、不意の気配に目が覚めた。
 片目だけを薄く開けて自室をゆっくりと見渡す。昔取った杵柄というか、エクリエル達と共に乱層区画に出入りしてるせいで、気配の察知が敏感になってるのは常人離れしている様でなんか嫌になる。
 俺が実家を逃げる様に飛び出してからも、使用人たちが甲斐甲斐しく手入れしてくれていたお陰で、自室はかつてと変わらない状態でいつでも使える様になっていた。寄宿舎よりも広いし、実に快適である。
 そんな光源一つない真夜中、薄らと目を開けると、そこには銀髪の女が立っていた。……自分で言っといてなんだが、このシチュエーションすごいコワイ。
「……お前、何やってんの?」
「チッ、起きたか。とりあえず蹴り起こそうかと思ってたんだがな」
 身を起こしながら銀髪の侵入者こと柳瀬川朝霞に答える。枕元に置いていた腕時計を手繰り寄せ、現在が午前一時である事を確認する。いやマジで何してんだコイツ。人の安眠妨げるとか万死に値するぞ。
 とりあえずはだけた寝間着を居直しながら、文机からランタンを取り出してマッチで火を付ける。ここでようやく視界が良好になった訳だが、朝霞の姿を見て怪訝に思う。
 彼女は寝間着ではなく、平時の私服だった。いや、私服というには厚手であり、肌の露出を限界まで制限している。昼に比べて夜は幾分かマシだと言っても、まだまだ熱帯夜は続いている。人間でも参る様な残暑を、雪女である彼女が厚手の服で耐えられるとは思えない。
「……クソ、マジ眠い。アタマ働かねぇ。殺されてぇのかお前」
「やれるもんならやってみろ人間風情が。……あ〜、いや待て、今のは言葉の綾だ。そうじゃなくてだな、何て言えばいいか」
「夜這いじゃなけりゃ相談だろ。ちょっと待て、準備するから。先に聞いとくが、俺の部屋に入る前に後ろは確認したか?」
「うんにゃ、それは大丈夫だ。魔界人の知覚をなめんなよ」
「自信過剰の自意識過剰で何よりだ。年頃の女を連れ込んだとか、使用人に見られて噂とかされたら恥ずかしいし」
 アクビを噛み殺しながら荷物を漁り、八枚のカードを取り出す。機能は単純な消音。それを部屋の四隅の天井と床それぞれに投げ放ち、部屋全域に結界を張る。
 書記魔法は事前準備が必要な分、準備さえ済ませておけばどんな魔法体系より早く発動させる事が出来る。また、文字や記号として保管する事が可能な性質上、一所のみに魔法効果を限定する結界魔法との相性は良い。
 あらかじめ文字を設置さえしてしまえば、任意のタイミングで時間差発動を行えるところもメリットの一つと言えよう。先日のドネルクラル戦では人質奪還のため敵拠点を攻撃する必要があったゆえ結界として使用する事はなかったが、伏神家は元より陰陽師の家系、攻勢より防衛に重きを置いている。実はこちらが正しい使い方なのだ。

169タタリ@仕事なう 2/3:2014/12/13(土) 15:31:23 ID:7jPJxPCY0
 そもそも普段から乱層区画で戦闘を行う場合には、エクリエルやルカと言った攻撃力カンストしてる様な化け物と一緒なのだから、わざわざ俺が前衛に立つ必要がないってのが一番の理由である。いやアイツら本当に凄いんだって。地面えぐったり地形変えたり焦土にしたりは当たり前なんだから。マジで。
「とりあえず音が漏れない様にしたから、普通に話していいぞ。このカードなら……まぁ十分がいいとこだがな」
「……お姉ちゃんから話は聞いてたが、お前って実は凄い奴なのか?」
「アホ吐かせ。この程度なら学院生は誰でも出来る」
「いや、確か書記魔法ってあらかじめ文書に込めた魔力で効果が上下するから、全て均等な魔力量でないと結界は維持できないだろ」
 魔力を別に保存しておき、術者の魔力に負担を掛けずに済むのも書記魔法の特徴だ。反面、作成後に魔力量を調整する事が出来ないので、複数枚を同時に使用する場合の運用が難しいというデメリットもある。
 現在構成している消音の結界にしても、カードに充填した魔力が均等・一定でなければ結界が崩壊してしまい、カード自体が消滅する事もある。故に、書記魔法使いは用途に応じて魔力量ごとにカードを分別するか、全て均一にして互換性を持たせるかのどちらかを選ぶものだ。ちなみに俺は基本的には後者である。【憤怒】や【怠惰】などの特殊な物を除き、どのカードを起点にしても連鎖(コンボ)を行えるよう調節している。
「魔力量を均等にするって事は、ミリ単位の誤差も許されない、機械の様な精密さが必要な筈だが……まぁいいか。テメェの技量には一切興味がねぇ。本題に移ろう」
「人の安眠を妨害してまで頼み事しようとしてる奴の台詞じゃねぇ!」
 なんなのコイツこんな夜中に喧嘩売りに来たの? 今なら高価買取期間中だよ?
「昼間、あたしが一人で行動してた事を覚えてるか?」
「ああ。神社でへばってたな」
「あれな。実は、伏神山を攻略しようとして失敗してたんだ」
「うん。ごめん、一から説明頼む」
 伏神山を攻略とかちょっと何言ってるか分かりませんね。あれかな、現実と仮想の区別もつかないRPG廃人の末路がこれって事かな。俺はこうならないよう気を付けよう。ゲームは一日一時間が基本だね。
「いや、この山が霊山で一般の立ち入り規制してるのは分かるが、あの警戒は正直、異常すぎるぞ。魔界人のあたしもドン引きだ」
「俺が上伏にいた頃はそんな事はなかった筈だが、具体的にどう異常だった?」
「簡潔に言うなら辺り一帯すべてが結界の地雷原。たぶん、伏神の中でもごく僅かな人間しか歩き方を知らないだろうってくらい密集してる。あれは侵入者や脱走者を殺す為の配置だと思った」
「それマジ? 俺の知らない間に上伏も物騒になったもんだ……。いつからここは世紀末になったんだか」

170タタリ@仕事なう 3/3:2014/12/13(土) 15:32:00 ID:7jPJxPCY0
 とは言うものの、だいたいの見当は付いてる。この場合、何を以て「侵入者」や「脱走者」とするのかが問題だが、現状の伏神の情勢を鑑みればすぐに解答は見えてこようと言うもの。
 上伏は伏神の領地である。市井は伏神の決定には逆らえないし、霊山立ち入れば祟られると教育されてる者が面白半分に立ち入る事はない。……いや、ごめん、あるわ。
 幼少期や少年期の一時期、その手の度胸試しが流行った事がある。子供ながらの怖いもの知らずによるものだが、爺ちゃんや親父にこっぴどく叱られた事を思い出した。主犯の俺は特に厳重に。
「で、お前はどうしたいんだ? というか改めて聞くが、俺に何をさせたいんだ?」
「もちろん、攻略のサポートをして欲しい。あれは明らかに──あたし達を敵視している。理由は反乱防止と、幽閉の為ってところか」
「十中八九そうだろうな。伏神が山の一部を開放してるってだけでも充分に異常事態なのに、きな臭いとは思ってたんだ」
 さて、朝霞の趣旨は理解した。理解した上で再三述べるなら、だからなんだ、である。
 見も知らず、特に仲の良い訳でもない──というか最大の天敵である──柳瀬川朝霞ちゃんの同胞の為とか言われたって、素直に従う理由も義理もあるまい。夕霧さんにでも頼めよ。
「そもそもお前、考えが足らなすぎるだろ。俺だって伏神の血族なんだぞ。探られてるなんて伏神に密告されたらどうするつもりなんだ。兄さんと夕霧さんが築いてきた物をお前のワガママで潰すつもりかよ」
「お前が本当に心底から伏神の人間なら、そんな忠告はしねぇだろ。あたしが起こしに来た時点で人を呼んでる。だからあたしの事情を話そうと思ったんだよ」
「どんな博打屋だよ。一か八かってレベルじゃねーぞ。勝率低すぎる賭けだろそれ」
「でも、勝った。ならあたしはそれでいい。さあ手伝え」
「すいませんね柳瀬川さん、朝一でいっぺん死んでくれませんかね」
 眠いっつってんのに隠密登山とか本当に勘弁してくれ。付き合う動機なんてないんだってば。
 仮に付き合うとしても、俺に出来る事なんてたかが知れてる。地雷の設置場所どころか存在そのものを今知ったのだ。探知しながら歩ける様ならいいが、曲がりなりにも伏神は陰陽師の名家だぞ。やってみない事には何とも言えんが、俺みたいな一介の学生が攻略できるならお前も最初から苦労せんだろう。
「頼めるなら地雷を無力化していきながら里まで行きたいんだが、最悪、あたしの前を歩いてくれるだけでいいからさ」
「本当に最悪すぎるだろ!」
 俺に死ねと!?

171数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 15:32:52 ID:7jPJxPCY0
攻略の流れまでいけなかった…無念

172数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 17:57:23 ID:7jPJxPCY0
次はどあにんかと思ったが、そういやしばらくパスって話だったっけか
じゃあ次は西口?

173数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 18:56:05 ID:TE3619920
タタリンおっつ

どうしようここから

174数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 18:58:59 ID:TE3619920
思いつかねえからクロガネ書くか

175数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 20:18:22 ID:3zm5GINc0
三馬鹿が地雷原攻略する話にしてもいいのよ?

176数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 20:19:22 ID:TE3619920
俺じゃああいつらを扱いきれない

177数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 20:33:39 ID:3zm5GINc0
実はこの夜会話イベントは、先に三馬鹿が邸内に侵入してるのをソウジが見つけて少し話をする
その後、部屋に戻ったら朝霞がいて登山計画の話をする
あれ、じゃあ地雷原を抜けてきた三馬鹿って実は何げに凄くない?ってソウジが考える流れにするつもりだったが、俺には書けなかった…

178数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 21:20:31 ID:htF7xwgI0
たたりん乙
これはそろそろソウジ死ぬな
新主人公の設定でも考えておこう

179数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 21:29:10 ID:TE3619920
また新キャラ出てきたんですが

180数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 22:08:04 ID:cTqyg5Vw0
たたりんおっつおっつ。
暇な時にでもwikiに纏めようかなぁ。そろそろ文庫本1冊くらいにはなってそう

181数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 22:22:53 ID:3zm5GINc0
ドネルクラル編で一巻
実家編(仮)で二巻でいいじゃないか

182数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 22:25:54 ID:/icVoA760
朝霞とエロ本の辺りまでで大体65000文字辺りだから、多分丁度今くらいで一冊になると思う

183数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 22:28:50 ID:TE3619920
自分なりの文章にアレンジしてドネルクラル編を書くのも楽しいかもな

184数を持たない奇数頁:2014/12/13(土) 22:32:16 ID:cTqyg5Vw0
(おっ、連鎖版の競作か?)

185数を持たない奇数頁:2014/12/14(日) 23:16:03 ID:I3VhgwF60
そういや結界の地雷原はどことどこを隔てるんですかね?

186数を持たない奇数頁:2014/12/14(日) 23:20:20 ID:glWR7u1.0
あ、ごめん、そのへん書いてなかったね
伏神の家周辺以外の山全部のイメージだった(一般人は立ち入れないので問題はない)
特に魔界人の集落周辺は特に厳重

187数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 14:41:04 ID:bBEsXoXg0
ちょっとみじかいけど、早くKの人の話が見たいという個人的な欲望と
未読本を積みすぎたという個人的な事情によって投下を敢行する(今から投下するとは言ってない)

6時ごろにやるわ

188数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 15:35:23 ID:fIV6ghss0
相変わらずはええなwwwwwwww
wktk

189数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 20:07:43 ID:bBEsXoXg0
6時ごろ(大嘘)
投下しますな

1901/2:2014/12/15(月) 20:08:19 ID:bBEsXoXg0
リリリ、リリリ、と静寂を侵すでもなく、寧ろ彩るような虫の声に聞き入るかのように、彼女は眼を閉じ、身動ぎもしない。
艶めく黒曜石の如き黒い髪。どこか陶磁器めいた無機質さを湛えた白い肌。
総身を包む瀟洒なドレスから覗く手足は、彼女の名前を象徴するかのように昏く、鈍い輝きを放っている。
半機人の少女――クロガネは一人、深夜の伏神山でひっそりと、静寂の渦中にいた。
「……これは、少々予想外の事態ですね」
誰にともなく、クロガネは呟いた。
周囲に人影はない。
だが彼女の言葉は夜闇の漆黒に溶ける事無く、「彼」の耳朶を打っていた。
「全面的に同意だヨ、01《ゼロワン》。いやはや、まさかこんな東の辺境に《竜》がいるとは。それも1や2では利かないほど。
 対策室の情報収集能力というのも、存外当てにならない。これでは作った意味がない」
電子的な通信手段によるものではない。それは紛れもなく肉声だった。
クロガネ以外の何物もいないはずのだというのに、「彼」の声は真実、周囲の大気を震わせていた。
「結果論的な物言いになってしまいますが、やはり貴方についてきて頂いて正解でした、室長」
「もうセンセイとは呼んでくれないのかい? おじさんは寂しいヨ」
おどけた調子で言う「彼」にクロガネは心底面倒そうにため息を吐いた。
あからさまにうんざりとした表情を浮かべる彼女を見たら、ソウジなどの普段のクロガネを知っている人間は驚くことだろう。
楽しそう、というわけではないが、今の彼女は驚くほどに喜怒哀楽に富んでいた。
恐らく彼女自身も自覚しているわけではないのだろう、その仕草はこの上なく自然であった。
「阿呆なことを言っていないで、早急に対象の護衛に向かってください。私は《竜》を追います。
 下手をすれば、貴重な《龍憑》のサンプルが失われる事態になりかねませんからね」
「サンプル、か。無機質な呼び方だね。お前もすっかりウチの連中と似てきてしまった」
「……室長」
「ああ、ああ、分かったヨ。怒らないでおくれ。はあ、若者に酷使されるのも老人の宿命かな」
肩を竦めているのであろう事がはっきりと分かるような声音で言い、「彼」はクロガネのそばを離れる。
周囲には、誰もいない。当然、誰かが走り去る音もなどするはずもない。
だというのに、鬱蒼と茂る樹木の間から降り注ぐ月光は、確かに「それ」を浮き彫りにしていた。
起伏に富んだ山肌を難なく駆ける影を。
疾走する影「だけ」を。
「さて、01ご執心の男の子か。ここはセンセイとして、しっかりと見極めなければね」
心の底から楽しそうに、「彼」は笑う。
人の形を失いながらも、一つの執念と、己の内で蠢く竜の力のみで存在を維持する異形。
人間でも、魔人でも、天使でも、機械でも、幽霊でもない第六の存在。
第六世界対策室長にして、悠久の時を生きる《竜憑》。
ズールー・イングリッド・エンド――ジ・エンドはまるで人間の

1912/2:2014/12/15(月) 20:09:09 ID:bBEsXoXg0
「彼」が去り、真に一人となったクロガネは依然として眼を閉じている。
比喩ではなく、瞼の裏に映し出される光景をただぼう、と眺めていた。
先日、伏神ソウジに渡した指輪から送られてくる彼の生体情報が、そこには所狭しと表示されている。
プライバシーを考慮して、映像・音声の類は送られてきてはいないが、彼の体内全てをリアルタイムでモニタリングしているので
少なくとも今どういう状態なのか、何をしているのかは完全に分かってしまう。
ソウジはこの事実を知らないのだ。
故に、クロガネはなんだか悪いことをしているような気分になるが、これもソウジの安全のためだと己に言い聞かせる。
これで彼が、いわゆる思春期の男性によくある「アレ」でもしていたら、その罪悪感も一入だったろうが、幸いにも今の所はそのような情報は送信されてきてはいない。
そういった類の現象に嫌悪感やいらぬ羞恥心を抱かないのだから、半分とはいえ機械の体というのは便利な物だ。
いつもは少々疎ましく感じることもあるが、今日ばかりは感謝しなければ。
網膜に映る情報は、ソウジが未だ深い眠りについていることを示している。
ジ・エンドも向かったことだし、今ばかりはいいだろうと、クロガネは瞼を開けた。
伏神山。腐っても霊地と呼ばれるだけの事はあり、青白い月光に照らされるそこは、どこか神聖な静謐が満ちている。
その光景を美しいと思えないのは、自分の半分が機械だからだ。
その様な言い訳は通用しないということを、彼女は知っていた。
機械人にも、芸術家はいる。詩人はいる。作家はいる。コメディアンだっている。
だからこの心の冷たさは、自分自身の問題なのだろう。
鈍く輝く己の腕を撫ぜると、指先のセンサーがその冷たく、つるりとした触感を生体脳に伝達する。
本当にそれが冷たいという感覚なのだろうか。
稼動年数10年。「調整」に要した時間を含めれば、生誕14年。自我が目覚めて以来抱いてきたその不安は、今尚褪せる事無く彼女の胸にあり続ける。
彼女はずっと、人間に憧れ続けてきた。
国際的な定義での「人間」ではない。生身の体と、感情などという非合理なタスクを保有する機・霊界以外全ての世界に存在する生物。
それになりたいと、ずっと、ずっと思い続けていた。
過去形だ。恐らくこの先ずっと、彼女の些細にして見果てぬ夢は、膨大な過去の底に埋もれたままだろう。
学園に編入し、自分と対策室員、研究者を除く人間に接したとき、彼女は悟った。
人であるのは、自分にはあまりにも荷が重過ぎると。
「普通」の人間に比べて、自分の心はあまりにも無味乾燥で、ズレていて、機械的だった。
何となく同じように振舞えるだけで、喜怒哀楽を理解できていない存在が名乗るには、人間というものはあまりにも重過ぎる。
こんな両腕では、支えきれないほどに。
「……仕事もせずに何をやっているんでしょう、私は」
クロガネは軽く息を吐くと、その思考をすぐに外へと追いやった。
いっそ完全な機械ならば、こんな感傷に浸る事もなくなるのだろうか。……いや、より一層人への渇望が強くなるだけだろう。
クロガネはまるで踊るような足取りで――結界をかわすためだ――その場を去る。
まぎれもない「人間」が一人、そこにはいたが、それに気付いているモノが果たして存在したろうか。
変わらぬ調子で鳴き続ける虫々の声が、真夏の夜空に音高く響いた。

192数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 20:10:14 ID:bBEsXoXg0
以上、短いね

あと一個目の最後間違えた

×ズールー・イングリッド・エンド――ジ・エンドはまるで人間の
◎ズールー・イングリッド・エンド――ジ・エンドはまるで人間のように、くつくつと。

193数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 20:23:04 ID:VaxfmItE0
西口おっつおっつ。
年末に向けて忙しい時期だから、ちょいと遅れるかも分からんが年内にはどうにかするわ

194数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 20:25:20 ID:wARm7Ds60
大丈夫、18時128分だ(彼真顔)

西口おっつおっつ
そして「竜は一体二体ではない」という辺りが俺の考えてる展開とマッチしててシンクロ二シティ

195数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 20:33:23 ID:bBEsXoXg0
今更だけど学校いってたら竜に殺されかけて、里帰りしたらそれと似たようなのがうじゃうじゃいるとかソウジくんハードすぎるな

196数を持たない奇数頁:2014/12/15(月) 20:37:04 ID:wARm7Ds60
よくあるよくある

197数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 10:28:08 ID:Es3piGSc0
旅行や観光の先々で死体に出くわす小学生グループを思うと全然序の口ですよ

198数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 18:34:34 ID:dy3bx9tY0
俺の番で大きく動かすべきか、無難に遠投するかで区切る場所が変わってきそうだなぁ

199数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 18:53:04 ID:p80IZB5g0
一応、それぞれの動きを俺の偏見主観で纏めると、
ソウジ&朝霞→夜のスニーキングミッション(未定)
劔&夕霧→明日から革命起こすわ(確定)
三馬鹿→真夏の夜のエロ本探索
伏神家→革命に気付いてないっぽい?

ってところじゃないかな

200数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 18:58:41 ID:dy3bx9tY0
とりあえず(時間的な意味で)夜の登山中。
兄夫婦と三馬鹿と伏神家の動向にはあまり触れない感じかなぁ

201数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 18:58:54 ID:1d/yIvTk0
ポケモンオメガルビー、一応殿堂入りしたぁ

あぁ^〜カガハルええんじゃ^〜
カガリに詰め寄られるハルカ想像すればメシは何杯でもいける

202数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 18:59:12 ID:1d/yIvTk0
ごめん、スレ間違えました

203数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 19:29:38 ID:z9VSx6K60
俺はKの人のがっつり長文が読みたい(人間の屑)

204数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 19:54:12 ID:5bCIopAo0
カガハルだと思うじゃん?
デルタやったらたまげるで

205数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:03:32 ID:1d/yIvTk0
別にいいよ
どっちにしろ二次創作でイラスト描くんで

206数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:15:55 ID:1d/yIvTk0
しかし最近のポケモンは変に重苦しいな
XYやったことないけど重いらしいし
半分読み飛ばしてるわ

207数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:21:30 ID:z9VSx6K60
たぶんソウジくんとエクリエルは論者

208数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:22:45 ID:1d/yIvTk0
ヤウジとヤクリエルですなwwwwwwww

209数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:27:31 ID:dy3bx9tY0
>>206
XYは過去の戦争で云々、ポケモンの生体エネルギーを使った兵器云々ってのが関わってたりする
敵方の目的は「この世界の幸福は上手く分配されてないから、生存者を選んで再配分する」って感じだったか
BW辺りからストーリーが重くなったような気がするなぁ……

210数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:40:59 ID:z9VSx6K60
「アドライグ」を「ウェールズの赤き龍」っていうととってもかっこいい

211数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:48:15 ID:1d/yIvTk0
>>209
まぁ元々、初代の頃から重い話はあったけど、BWからその上にクドい演出が入ってきて、俺はなんか嫌になったわ
特にBWは散々引き伸ばした挙句勝手に終わった感あって、2やる気起きんかったから買ってない、XYも同じ動機で買ってない
オメルビもミツル戦までにモチベ保てずに惰性で戦ったわ正直

グラードンイベが頂点であと惰性

個人的な感想でごめんね

212数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:52:55 ID:dy3bx9tY0
個人的に何が不満かって、リメイク前では波乗り入手時点で入手できた冷ビ(捨てられ船にて入手可能)が入手できなくなってた事だな
開始前「普段通りキモクナーイ。草四倍? 冷ビ拾えるから楽勝っしょwww」
開始後「冷ビ拾えないじゃないですかー! やだー! ……レベルをあげて物理で殴るか」
とかそんな感じだったわ

とりあえず競作に関しては今8kb。
朝霞がどれだけ伏神家の情報知ってるかで変わってくるんだよなぁ。主に設定との兼ね合いを利用した無茶苦茶理論で

213数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 20:57:10 ID:1d/yIvTk0
そういやなんか冷凍ビーム拾えてなかったな
冷凍パンチとかどこだっけ? まぁエッジとメガシンカあるしいいや・・・みたいな感じで進めてた

しかし、流石に強いメガラグさん

214数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 21:27:58 ID:1d/yIvTk0
にしてもなんやこいつ、この・・・ヒガナ?
勝手に現れてなんか凄いことしてるけど、相変わらず主人公が蚊帳の外やな
Lを思い起こさせる鬱陶しさがあるわ

215数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 21:29:55 ID:vr23cYTU0
グラカイ倒したあとにちょろっと出た程度でいっさい伏線なしにアホみたいに現場をかき乱してったよな

216数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 21:37:51 ID:1d/yIvTk0
もう一つの世界とか急に言われても・・・ねぇ?

加えて「想像力足りないよ」とか「期待してないよ」とか大誤算に好き勝手言いやがってこのガキャ〜・・・
Lさんの時から思ってたけど、最近のポケモンは上から目線で論破するのが好きなんかね

217数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 21:51:56 ID:tvxtGAxA0
ヒガナ「隕石がもう一つの世界に行ったらそこの人達死ぬよ」
俺「いや、知らんがな(´・ω・`)」
ヒガナ「装置グシャー」
俺「何やってんのこのサイコ女!?」

218数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 21:55:21 ID:1d/yIvTk0
レックウザ「きたで」
ヒガナ「おっしゃ! ゲンシカイキや!」
レックウザ「え? ムリムリ」
ヒガナ「なんでや! なんでゲンシカイキでけんねん! うわああ私今までなにしてきたんやあああああ」
俺(なんかすげーことなってんぞ、帰っていいかなぁ)

ピカー

レックウザ「あ、それそれ」
俺「え? 俺?」
レックウザ「お前とならゲンシカイキできるわ」
ヒガナ「あ、じゃ、代わりにお願いしまーす」
俺「えぇぇぇえぇ・・・???(ドン引き)」

219数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:06:02 ID:tvxtGAxA0
あれ誰が一番の功労者かって言ったら、隕石探してくれたマツブサ/アオギリのお陰だよね

220数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:09:41 ID:z9VSx6K60
お前らポケモンの話はそこまでにしておけよ
俺がわかんないから(人間の屑)

221数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:11:43 ID:1d/yIvTk0
すんまへん、スレ誤爆から完全にポケモンの話になってしまった

なにはともあれカガリちゃんもデレてくれてよかったよかった(百合厨)

222数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:13:27 ID:tvxtGAxA0
リレー地方
男主人公:ソウジ
女主人公:アサカ
ライバル:ダニアン
博士:ダグダエル
闘ジム:ルカ
電ジム:クロガネ
鋼ジム:ダン
妖ジム:エクリエル
悪ジム:アシュリー
?ジム:?
?ジム:?
?ジム:?
炎四天王:アドライグ
草四天王:ウロボロス
霊四天王:ファブニル
地四天王:ボヮンロン
竜四天王:ヴェイパー

三つの?ジムに三馬鹿入れようと思ったが思い付かなかった

223数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:14:21 ID:tvxtGAxA0
ごめんよ、つい興が乗ってしまって…

224数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:17:16 ID:z9VSx6K60
なんで四天王が五人いるんですかね?

225数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:18:22 ID:vr23cYTU0
竜チャンピオンの間違いです!五人目の四天王なんていない!

226数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:35:27 ID:1d/yIvTk0
そう言えば一つ謝らなくてはならないことが・・・
しばらくここの本編のまとめが出来ない状況が続いてすみません

私情も色々あるのですが、自分の方で今WindowsWriterが使えない状況もありまして・・・
媒体をメモ帳に変えさせてもらってよろしいですかね

227数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:37:56 ID:z9VSx6K60
いいんじゃね? ほぼ好意でやってもらってたわけだし

228数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:45:44 ID:XeK0QAVU0
ありがとうございます〜

229数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 22:46:20 ID:vr23cYTU0
ありがてぇ、ありがてぇ

230数を持たない奇数頁:2014/12/16(火) 23:06:57 ID:1d/yIvTk0
http://ux.getuploader.com/saraswati2/download/321/%E3%83%AA%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81%EF%BC%9A%E5%9B%9B%E5%91%A8%E7%9B%AE.txt

というわけで三周目まではまとめていたので、四周目のまとめをば
じわじわまとめていきます

wikiの方にもまとめて頂いてるようなので、流用してもらっても構いませんで

231数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 18:04:11 ID:Tv2mUhQc0
【速報】俺氏、暴れる

とりあえず9000文字超えたからそろそろ自重しようと思う。誤字脱字確認したら投下するんだぜ

232数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 18:13:57 ID:zTg6iOYc0
きたああああああああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼あああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!

233Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:16:18 ID:Tv2mUhQc0
 月が淡い微笑みを湛える夜天の下、聡治と朝霞は屋敷を抜け出す。
 攻略とは要するに、朝霞は正規の道以外――つまり監視の目を潜り抜けて、魔界人の集落へと潜り込みたいのだと、聡治は受け取っていた。
 夕暮れ時に集落の規模を確認した限りは、あの領域だけで全ての食料を賄う事は出来ないのだ。
 詳細こそ不明ながら、少なくとも物資の遣り取りの為に安全な道が存在する事は確かであろう。
 勿論その道がどの道かは聡治には分からないし、仮に知っていたとしても、監視の目を潜り抜けたいのなら使う道理はない。
 ただその場合確実に言えるのは、そんな道は間違いなく関係者か、あるいは魔法的に監視されている為、通れば露見する。
 故に地雷原とも呼称出来る立入禁止区画……正確に言えば、伏神家の屋敷とそこへ到る為の道、一部の登山道を除いた場所を、攻略する必要があるのだ。
 聡治がその地雷原を攻略する必要性は一切ない。
 精々朝霞からの評価が良くなる程度の利点しかなく、その利点も大きな物ではない。
 零が百になれば心が動くかもしれないが、零が一になる程度では、大した動機にはならない。
 むしろ欠点の方が大きい、というよりも大き過ぎる為、本音を言えば申し出を断り、久方振りの実家での安眠を満喫したいのだ。
 それでも聡治が動いてしまったのは、多大な好奇心故の事だ。
 四年という歳月の間に、伏神家は大きく変化している事は、聡治も理解している。
 表面的な部分では懐かしさを感じるのだが、一歩踏み込んでしまえば、何とも言えない不気味さを容易に感じ取る事が出来る。
 それに……と、聡治は自身の左腕へと視線を向けた。
 ――妙に疼くのだ。
 意識を向けなければ気にならない程度なのだが、それでも、伏神山に近付くに連れて、違和感が徐々に増してきているように、聡治は感じていた。
 左腕と言えば夏季休暇の前、禁書事件の際に真川敦……ではなく、彼を殺めたドネルクラルによって一度切断された。
 その事件の際に白龍の左腕が一時顕現し、あれ以降一切の反応がなかったのだが、今はこうして違和感を訴えている。
 ならば左腕が疼く原因はと考えるが、流石に、近くに竜がいるからという安易な事ではないだろうと、聡治は考える。
 聡治に分かるのは左腕が違和感を訴えている事と、その違和感は伏神山へ近付くに連れて増してきているという事だけだ。
 黙々と考えながら敷地を抜け出し、暫く歩けば文字通りの意味での伏神山であり、ここから先は、例えるならば地雷原だ。
 考え事をしながら踏み抜いて死ぬのは馬鹿馬鹿しいと、溜息と共に思考を入れ替えた聡治は、改めて眼前の光景に意識を向ける。
 ――確かに、朝霞が言う通りに、異常な密度での警戒が行われているらしかった。
 ぱっと視界に映っただけでも、両手では数え切れないだけの札が樹の幹に貼り付けられている。
 通りからでも見える場所である為か、流石に朝霞が言っていたような殺害を目的とした物は構築されていないようだ。
 精々、近付きたくないと感じる程度の畏れを芽生えさせる程度の物であり、それにしても、その結界が張られていると知っていれば、意味を持たない程度である。

234Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:16:33 ID:Tv2mUhQc0
「……四年前はなかったんだがな」
 聡治の記憶にある伏神山には、そのような結界は張られていなかった。
 本当に近付いてはならない場所には流石に、人払いの結界が張られていたが、山の入り口から張られていた記憶はない。
 幸い、配置や札の記述を読む限りは、侵入した事が露見するような構成ではないようだ。
 そもそもそのような構成であれば、朝霞が一度挑んだ時点で、大騒動に発展しているだろう。
 つまり朝霞はそれなりの深さまでは潜り込んだが、彼女が言うところの地雷原に辿り着き、引き返す事を余儀なくされたようだった。
 暫く道沿いに張られた結界を眺め続けていた聡治だったが、このままではどうにもならないと、朝霞に向かって結論を告げる事にした。
「……無理だな。何が無理って夜目が利かないのに符術……ああ、書記魔法の群れを掻い潜れって時点で、そもそも俺には無理だ」
 幸い月明かりに照らされているお陰で、道沿いに展開されている結界……その発生源である札は読める。
 しかし鬱蒼と茂る森では月明かりが差し込む事はなく、文字通り何も見えない状態になる。
 そんな状況下で読み取れという事は、翼も無しに空を飛べ、あるいは玉もないのに球技を始めろと言われる程度に無理なのだ。
 仮に操作魔法で、視力強化が出来ればまた話は別なのだが、というところまで聡治が考えると同時、朝霞に肩を叩かれる。
 何だと振り向くと同時、目元に激痛が走った。
「――ッ!?」
 明確に感じ取った二箇所への衝撃は、宛ら目潰しを受けたかのようであった。
 暫く目元を押さえて悶絶する聡治だったが、徐々に収まってくる痛みに、ゆっくりと目を開いていく。
 先ほどよりも鮮明に広がる視界は、それこそ、聡治が仮に……と考えていた操作魔法を受けた際の明度であった。
「お、前」
 朝霞が何をしたのか理解出来ない程、聡治は馬鹿ではない。
 方法は酷く暴力的だが、操作魔法を掛けてくれた事は間違いない事だ。
 涙目のまま朝霞の顔を見やれば、褐色の健康的な顔に、嗜虐的な笑みを貼り付けていた。
「これで見えるだろ? なら、もう無理じゃないな」
 態とやりやがったな、という抗議の叫びが聡治の喉元まで込み上げて来たが、それをぐっと呑み込んだ。
 文句は山ほどあるのだが、一々吐き出して騒ぎにしても面倒なだけなのだ。
「……無理だと判断したらすぐに退き返すぞ」
「その位は、あたしもアホじゃないから分かってる。テメェに言われるまでもない」
 赤字覚悟の喧嘩大安売り。
 そんなフレーズが脳裏を過ぎり、聡治は大きく溜息を吐き出すのだった。

235Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:16:50 ID:Tv2mUhQc0
 伏神山の山中は足場が悪い。
 霊山として扱われているのは良いのだが、逆に言えば人の手が殆ど加わっていない山は、自然の思うが侭に隆起と陥没をした地形となっている。
 ただでさえ札を見つけてはそれを読み取りながらである為、足取りは遅々としており、体力と精神力だけは経過時間以上にごっそりと削られていく。
 昼間に朝霞が到達したのは、里までの道程の二割程度であった。
 逆に言えばその段階から既に致死率の高い符術が仕掛けられていたという事であり、実際、伏神山に入って暫くも歩かない内に、それらに出くわした。
 種類も豊富である為に、聡治が覚えていないような構成の符術は迂回し、覚えている物は解除して進む。
 聡治の体感的には既に半日程経過したように感じられていたのだが、胸元から取り出した携帯電話の表示を見る限りは、数時間程度しか進んでいなかった。
 何度も迂回を強いられた為に、歩数で言えば往復する程度には進んだものの、距離としてはようやく折り返したかどうかというところである。
 携帯電話の湛える朧気な光を眺めた聡治は、目潰しされずともこれで確認出来たのでは? と考えるが、もう遅い。
 そもそも、最後に充電したのが五界統合学院の寮を出る前であり、電池は切れ掛かっている。
 下りは速いだろうが、それでも時間的には間に合わない。昇った事は露見するだろう。
 言い訳を考えておこうかとも思う聡治だったが、言い訳の思考に気を取られて、致死性の高い物を見落として命を落とす事ほど、馬鹿らしいことはない。
「っと……また密度が上がってきたな」
 先ほどまでは、まだ解除せずに通れる道があったのだが、最早一々解除しなければ通れないほどに、札は密集している。
 不幸中の幸いなのは、密度を上げたが故に、複雑な物が一気に姿を消している事である。
 尤も、それは解除出来なかった物と比べればの話であり、何の知識もない者が解除出来る程単純という訳ではない。
 何の知識が無い者が見れば、樹の幹に変な文字の書かれた札が貼られているだけにしか見えないだろう。
「……ん?」
「どうした?」
「……いや、何でもない」
 自身の思考の何処かに違和感を感じた聡治だったが、何に違和感を感じたのか理解する前に響いた朝霞の声に、それを思考の隅に追いやった。
 何にせよ、今は目先の地雷原の処理が優先される。
 変に迂回を求められない為、ここからは一気に進む事が出来るだろう。
 札を剥がし、あるいは構成を変化させて無力化させていると、視界が僅かに良くなっているのを感じ、聡治は頭上を見上げた。
 鬱蒼と茂る木々の隙間から覗く空は、夜天の漆黒から群青色へと移ろいつつある。
 もうじき夜が明けると思うと、里帰り早々、徹夜で地雷処理をしていた事に気づき、聡治は溜息を吐いた。
 ただ、明るくなる分には困る道理は……抜け出したのが露見して怒られる事を除けば、ない。
 明るくなれば、幾ら山が木々に覆われていると言っても、操作魔法の補助無しで見る事は可能だ。
 そうすれば数時間も操作魔法で視界を確保してくれている朝霞の負担もなくなる。
「……負担、も」
 やや眠気で鮮明さを欠いた思考に浮かび上がった事柄を、そのまま流しそうになるも、聡治は必死に掴み上げた。
 自分で使うならまだしも、他人に数時間連続で操作魔法が使えるほど、朝霞の実力は高かっただろうか?
 学院での授業態度は……そもそも授業であまり見かけない為詳しくは知らないが、たまに見る朝霞は、確かに操作魔法には長けていた。
 自分で使うならまだしも、他人に操作魔法を掛けるのは中々に負担が大きい。
 根本的に操作魔法というのは、生体を魔力で補助する技術全般を指す。
 動作の補助として扱えば身体能力強化、逆に負荷を与えれば弱化となる。魔法というよりも、最も初歩的な魔力操作を突き詰めていった結果の技能と言える。
 操作魔法は他人に掛けるのも可能ではあるが、対象が持っている魔力の干渉や、想定外の挙動を起こされる事で、補助の心算が負荷になる事もある。
 眼球だけの補助ならばいけるのか? と思う聡治ではあるが、操作魔法などまともに使えなくなって久しく、朝霞の実力を全て知っている訳でもないので断言は出来ない。
 何にせよ、今更、朝霞の真偽を問うたところで事態が変わる訳でもない。
 質問は、全てが終わってから。
 ひとまず目先の地雷を処理しようと手を伸ばすと同時、伏神山の何処かで爆音が轟いた。

236Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:17:08 ID:Tv2mUhQc0
 劔が目を覚ましたのは、空がまだ漆黒から群青色へと移ろいつつある、夜とも朝とも区別がつかない時間であった。
 普段であれば空が群青色に染まりきり、山の稜線から朝日が顔を覗かせる寸前が劔の起床時間であったが、今日だけはそうではなかった。
 今日の事を想い、神経系が鋭敏になっていたという訳ではない。
 ただ単に伏神山に響いた爆音――それが、劔の耳朶を打ち据えたからに他ならなかった。
 反射的に飛び起きれば既に、閨を共にしていた夕霧は窓際に寄り、伏神山の方角を眺めている。
「何があった」
 何にせよ普段通りの朝ではないと、出来る限り声を荒げずに問い掛けながら、劔は夕霧の傍らに立ち、山の方を見やる。
 伏神山の一角では濛々と煙が立ち昇っていた。宛ら、何かが爆発したかのように。
 思わず間の抜けた表情を浮かべそうになった劔だったが、脛から響いた痛みにはっと我に戻る。
 ちらりと視線を横に向ければ、鋭く目を細めた夕霧がおり、先ほどの痛みは夕霧が蹴っ飛ばした為の物らしい。
 何にせよ冷静に戻った劔は、状況把握の為に思考を廻らせる。
 どう考えても山中に仕掛けていた指向性対人符術が作動した規模の爆発であり、つまり誰かが伏神山へと立ち入ったという事に他ならない。
 誰が、というのは分からない。
 麓には人払いの結界がある為、何も知らない部外者が迷い込んだという事はなさそうではある。
 ならば魔界人集落から誰かが逃亡したのか、とも考えたのだが、それもなさそうであった。
 場所が明らかに集落からは離れており、そこへ辿り着くにしても幾つかは絶対に解除しなければ辿り着けない場所だ。
 符術に精通している者がいれば話は別だが、山中に仕掛けられた物は別として、集落周囲は忌々しくも、本来の出入り口以外には複雑な物が仕掛けられているはずなのだ。
 そうなってくれば、可能性は必然的に絞られてくる。
「まさか――」
「――劔様っ!」
 脳裏に過ぎった想像を口にしようとする寸前、転がり込むように侍従の老人が部屋に飛び込んで来る。
 普段であればありえないような行動を見て、劔は、自身の表情が思わず歪んでしまったのを感じ取っていた。
「急ぎでも来室の知らせは欲しいところだが」
「申し訳ございません! しかし、早急に知らせねばならない事故にっ」
 侍従が叫ぶ様に告げたのは、屋敷のどこにも、聡治の姿が見当たらないという事であった。
 また、伏神山への侵入者に関しての緊急会議が開かれる為、そこへ急いで欲しいというのは、考えてはなかったが、十分に予想出来る事であった。
 想像通りの出来事が起きている事に、劔は思わず顔に手を当てて仰天する。
 その体勢のままで大きな溜息を吐き出すと、ゆっくりと開いた目を細め、目先に迫った決断に対する思考を廻らせる。
 ――本来であれば、神前式の際に行動を起こすべく、計画を練ってきたのだ。
 しかし、伏神山に侵入者が現れたとなれば、御意見番の者達は確実に集まる事であろう。
 表向きには心配を装って。
 本音では、本家の勢力を口論にて削ぐ為に。

237Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:17:22 ID:Tv2mUhQc0
「……夕霧」
 十年来の好敵手、そして現在は婚約者である女性の名前を呟けば、分かっているという言葉が短く、そして鋭く返ってくる。
「すぐに行くと伝えておいてくれ」
「畏まりました。その、聡治様は」
「何とも言えん。捜索だけは続けてくれ」
 了解の返事も程々に、慌しく去っていった侍従から劔は視線を外し、夕霧へと視線を向ける。
 決意の済んだ美しい顔立ちではあるが、僅かながらに戸惑いを隠しきれていない様子である。
 心配は要らないと微笑みを投げ掛けた劔に返ってきたのは、脛蹴りという肉体言語であった。
「事は計画通りにすべきだと思うのだけど」
「かもしれないな。ただ、都合が良いと言えば都合が良いんだ」
 それに、という呟きの直後。
 出来れば口にしたくない恥ずかしい言葉ではあるが、それでも、言わなければ伝わらない事だと、紅潮しかけた表情を隠すように、劔は視線を逸らす。
 何を言わんとしているのか察しが付いたらしく、夕霧は大きく溜息を吐くと、呆れた表情を浮かべた。
「気にしなくても良いわ。最初からそういう式だって覚悟は決めてたから」
 そういう式というのは、伏神家の膿を搾り出す為の決起の事だ。
 幾ら女性に疎い劔でも、神前式が女性にとって憧れの式である事は、流石に理解している。
 ただでさえ申し訳なく思っていたのだ、好意を知ってしまったのなら、尚更。
 式を紅く染める必要がないのならそれに越した事はない。
 この決起自体で式が破綻するのだが、それでも、いつかは式を開き直す事だって可能なのだ。
 劔はそっと、夕霧の体躯を抱き寄せる。
 柔らかな女体の感触は、力一杯抱き締めてしまえば壊れてしまいそうなほどに儚く感じられる。
 かつてはそれも含めて女性が苦手であったのだが、夕霧とだけは、幾度となくぶつかりあってきた為に、そうでない事は理解している。
 下手をすれば、もう二度と味わう事のないその感触。
 常人よりもやや体温の低い身体を抱き締めれば、不思議と、身体の深奥で疼く不快な熱も引いてくる。
「劔」
「俺は負けんさ。……俺にはこいつがある」
 視線の先にあるのは劔自身の右腕ではあるが、そこに宿るのは人間の力ではない。
 劔はかつて――そう、聡理を失った日。喪失感を埋めんとばかりに擦り寄ってきた竜を、無理矢理に押さえ込んで、己の力としていた。
 竜の名前を、劔は知らない。名乗った気もするが、単純に興味が無かった為に覚えていないのだ。
 流石に、竜の全てを解き放つ事は危険である為出来ないが、全身に薄らと、あるいは右腕限定で顕現させる事は、これまでの訓練で可能となっている。
 伏神家の膿は、流石に腐っても御意見番であり、実力が高い者も多い。
 それでも所詮は人間の身であり、元から劔は高い実力を備え、更に竜の力を帯びれば、負ける道理はない。
 それに……と、呟いた劔は視線を夕霧に戻し、手触りの良い銀髪を指先で梳き、撫でる。
「護るべき者を護る時の男ってのは、不思議と、誰にも負ける気がしないからな」
 そんな劔に対する夕霧の返事は、照れ隠しの脛蹴りであった。

238Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:17:59 ID:Tv2mUhQc0
 爆音はあの一度きりであり、伏神山は再び静寂に包まれていた。
 爆音の際に、聞き覚えのある声が、無事に下山したら朝霞に踏んで貰うだのと言っていたのを聞いた。
 そして木々の隙間から、それぞれ金、橙、黒の頭髪が覗いたのは、間違いなく聡治の幻聴と幻視だ。
 どうにも聞き覚え、そして見覚えのあるそれらだったが、決して知り合いの物ではないのだと、聡治は現実逃避を行っていた。
 確か伏神山にエロ本を探しに行くとは言っていたが、まさか本当に探しに行っているはずがないのだ。
 あれは伏神山に住まう物の怪であり、爆音が響いたのは、経年劣化を起こした札が誤作動を起こしたのだろう。
 そう結論付けて、魔界人集落を目指して淡々と処理を続けて、十分ほどが経つ。
 迂回路を探す必要が無い分は、処理の時間を含めても、十分もあれば相当進む事が出来る。
 木々の隙間から開けた地が垣間見え、もう少しで地獄のような夜も終わると、聡治が安堵の溜息を吐こうとする寸前。
 ぞくり――と、まるで電流が流されたかのように、聡治の左腕が跳ねた。
 違和感止まりだったそれが、いきなり感じた衝撃に、聡治は左腕を押さえた。
 幸い、その衝撃は一度だけであり、暴れる左腕を抱える滑稽な様を、朝霞に見られる事はなかった。
 ちらりと視線を向ければ、朝霞は怪訝な視線を向けてきているが、直に興味もなくなったらしい。
 ついと視線を逸らした先は、木々の奥に見える魔界人集落だ。
 視線を周囲へと向ければ、流石に集落周辺という事もあってか、規模は小さいながらも複雑かつ殺傷性の高い物が張り巡らされている。
 流石にそれを処理する事は出来ず、もしも処理するならば、多少集落に影響は出るが、物理的に作動させて処理する他になかった。
「悪い、俺の知識で解除出来るのはここまでだ。見た感じ、一帯を囲むように貼られてるから、迂回も出来ん」
「そうか……チッ、目と鼻と先だってのに」
 ちらりと視線を向けて来た朝霞が、何を言おうとしているかは、大体予想がついた。
 登頂前に言っていた、聡治を前面に押し出す感じで行けば、どうにか行けるのでは? とでも言いたいのだろう。
「三人分引っ掛かれば通れる道が出来るが、生憎俺達は二人しかいないからな」
 聡治は敢えて、物を投げて作動させるのも無理だと言わない。
 確かに物体の動きを感知して作動する物もあるのだが、山に仕掛けられているのは対人用だ。
 厳密に言えば実体を持つ人間に対して作動する物であり、殆どの霊界人と大体の機界人は引っ掛からない。
 前者は基本的に実体が無いので、実体を顕現させた状態で突っ込まない限りは大丈夫だ。後者は生体部品を多用していなければ引っ掛かる事もない。
 つまり範囲内で石が横切ろうが動物が入ろうが作動せず、その代わり子供が入り込んだ場合でも作動するという物である。
「集落の様子ならここからでも見えるだろ? これで勘弁してくれ」
 あふっと欠伸を漏らしながら視線を集落へと向ける聡治だったが、流石に夜とも朝とも判別出来ない時間のせいか、人気はない。
 建物自体は木造であり、そして夕方見た通り、自活出来そうな領域とは言えなかった。
 ただ予想とは異なり、集落一帯を囲むようにしてある。正規の道など、そもそも存在しないようであった。
 ならば、どうやって集落の食料を賄っているというのだろう。
 一々周囲の結界群を解除している訳でもないだろうし、山中を突っ切って食料を運ぶのは非効率的だ。
 そもそも――この集落に誰かが住んでいるのだろうか?

239Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:18:33 ID:Tv2mUhQc0
「なぁ、朝霞……お前」
 視線を集落から、横にいる朝霞へと戻せば、しかし、聡治の視線の先に朝霞はいなかった。
 ふらりと、まるで誘われるような素振りで地雷原へと歩んで行くその背を見つけ、聡治は反射的に叫び声を上げた。
「馬鹿、止まれ!」
 作動範囲内に入ったのを視認した聡治は、直後に訪れるだろう惨劇から目を背ける。
 身を伏せて衝撃に備えるも、その衝撃どころか、爆音さえ響く事はなかった。
 恐る恐る身体を起こして朝霞の方を見やれば、範囲内にいるにも関わらず、符術は発動していなかった。
 経年劣化で破損しているのか、とも思う聡治だったが、見た限りはどれも正常なはずであった。
「朝、霞?」
 呆然と呼び掛ける聡治の声に反応してか、朝霞はゆっくりと振り返った。
 切れ長の紫の眼に、健康的な褐色の肌。そして新雪を思わせる白く輝く澄んだ銀髪。
 それらは朝霞と同じ物だったのだが、その顔は朝霞の物とは異なっていた。
 尊大さなどどこにもなく、御伽噺で語られるような、淡く儚いという言葉が良く似合う悲しげな表情。
「ちょっと待て……お前は誰だ? そもそも、何で作動してないんだよ」
 震える声で問い掛けた聡治の言葉は、雪女らしき女性に届く事ない。
 ただ短く、唇を動かして何かを告げた直後、まるで春先の陽光で雪が解かされるが如く、その女性は姿を消した。
 助けて――聡治が聞き間違えてなければ、確かに、目の前で消えた女性はそう告げていた。
 いよいよもって、夢でも見ているのか。先程のはやはり幻視だったのか。
 脳内を蠢く、不快とも感じられる思考の錯綜に立ち尽くす聡治だったが、懐から響く無機質な電子音に、はっと我に返る。
 携帯電話の背面には見慣れない数列が並んでいた。
 一瞬、脳裏を過ぎったのは夏季休暇前の、ドネルクラルからの呼び出しだ。
 ただ奴は既に死んでおり、そもそも、背面に表示される数列は、一切似ていなかった。
「も」
『この馬鹿! テメェ今どこをふらついてんだ!?』
 鼓膜を叩いたのは甲高くも威圧感のある、それでいて喧嘩腰の口調であり、間違いなく朝霞の物だ。
「っ……電話で大声出すなって。……そもそも、何で俺の電話番号知ってんだよ」
『そんな事は後だ、大変なんだよ! だから、早く戻って来い!』
「状況が分からん。せめて何がどう大変なのか」
『劔さ』
「……あ? おい、朝霞? 兄さんがどうしたんだ? おい……くそ、こんな時に充電切れかよ!」
 突如として途絶えた声に、携帯電話を見れば、ついに充電が切れて沈黙してしまっていた。
 今まで持ったというべきか、それとも、重要な情報が伝わる寸前に切れやがったというべきか。
 どちらでも構わないと、携帯電話を懐に戻した聡治は、踵を返して山を駆け下りていく。
 魔界人集落の件も気になるのだが、やはり身内の事の方が、聡治にとっては優先される事であった。
 胸元はざわつき、そして、比例するかのように左腕の違和感が再発している。
「一体、何が起きてやがる……」
 そんな聡治の独白は、誰が答えるでもなく、伏神山に溶けて消えた。

240数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 18:19:47 ID:Tv2mUhQc0
ぱっと見直したけど劔→夕霧の呼び方って「キリ」だったかな。まぁ真面目な雰囲気だったから名前で呼んだという事にしておこう

241数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 18:35:12 ID:zTg6iOYc0
Kの人乙
夕霧こんな可愛かったのか(池沼)

242数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 20:03:29 ID:d4pLbK/Y0
乙ポニ
まさかの最初から朝霞偽者説

しかしごく短期間での執筆なのに早い・長い・上手いと三拍子そろってる
すげぇ

243数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 20:15:08 ID:Tv2mUhQc0
ちなみに今週一杯貰っていいのなら誰とは言わんが死人が出てた

そうそう、そろそろwikiにまとめて来ようと思うんだけどちょいと提案がある
ホモショタドラゴン(赤)とかは龍って表記だけど、序盤だと竜になってんのよね
wikiに纏めるにあたって龍に直しておこうと思うけどどうよ

244数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 20:25:48 ID:d4pLbK/Y0
最初は竜表記で、気付いたら龍になってたよね
編集しちゃっていいと思います

245数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 20:30:08 ID:Tv2mUhQc0
あとついでに俺個人の今まで投げた分での誤字とか、表現の修正やらもやっておこう
ここをこう直してくれってのがあったら対応しておく

246数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 20:51:22 ID:Tv2mUhQc0
というか禁書事件編、もう少し編集すりゃ普通の文庫本1冊分くらいになるのね……(2014.06/30のどあにんまでで大体9万文字)

247数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 21:12:47 ID:y81cW2yo0
LLDより長いのか……

248数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 21:18:12 ID:Tv2mUhQc0
ちなみに今日の俺の分まで、全部合わせて15万。容量的には311kbほど
まぁ誰が何日に書いた一文が差し込んでる事を考慮したら15万を少し下回るくらいかな

とりあえずメモ帳にまとめ終えたからwikiに反映してくる
ログインできないのは本当に面倒だなぁ……

あ、暇があったら誰が何文字かってのも出してみるわ
部分部分で(俺が)見やすいように改行したり ◇ 入れたりしてるから厳密な量じゃなくて大体の量で

249数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 21:31:28 ID:Tv2mUhQc0
とりあえず編集してみた。各編はひとまず仮称で

250数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 21:41:24 ID:zTg6iOYc0
Kの人がぶっちぎりで多いんじゃないですかね

251数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 22:00:38 ID:Tv2mUhQc0
そう思うじゃん?
◇ ◇ ◇ ◇ 152005
西口:36306文字(23.9%)
Kの人:47126文字(31.1%)
クロ:15520文字(10.2%)
タタリ:33671文字(22.2%)
どあにん:19382文字(12.8%)
        (参考資料:ノベルチェッカーを利用した人力調査)
◇ ◇ ◇ ◇

15万文字の内訳は大体そんな感じ。改行やら空白やらで全文ぶっこんだ時とは微妙に差はあったりする。
割合は結構細かな数値を四捨五入してるからぴったり100にはならなかった

252数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 22:05:00 ID:vsF.QP9Q0
俺と西口が僅差な事に驚いたが、まあ最初の頃はけっこう書いてたわ俺
最近の更新で少しずつ量が減ってきてるだけだった

253数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 22:09:05 ID:Tv2mUhQc0
タタリは盛り上がってる部分でパスが回ってくるとテンションが上がってる風に感じた
逆に自分から流れを作るってところでは無難なパス回しが多かった感じがする

クロが少な目なのは間違いなく俺がキラーパスを抛っているせいだと思う

254数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 22:09:42 ID:Tv2mUhQc0
(そうでもなかった)

255数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 22:10:09 ID:zTg6iOYc0
改めて一番最初の文読み返してみたらちょっと笑った
誰だこいつ

256数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 22:31:26 ID:vsF.QP9Q0
あー、確かにテンションに任せて書けるところはけっこう筆が乗るかも
後のこと考えたりしてるとちょっと難産かな

といいつつ設定の説明をする時が一番速筆になるという設定厨ぷり

257数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 22:49:48 ID:p/njgTTg0
乙乙
最近読めてさえいないまずい
ギリギリ10%いってて良かった
でもよく考えると確かパスしてないでここまで少ないとなると申し訳なさでいっぱいです!
本当すいません

258数を持たない奇数頁:2014/12/17(水) 23:41:23 ID:zTg6iOYc0
まず楽しむのが第一だから、義務感を持ちすぎるのは逆によくない
適度にリラックスしていこう

259数を持たない奇数頁:2014/12/18(木) 15:40:51 ID:dcSYIeuc0
ところで次ってクロたんよな?
37ニキまだ本調子じゃないっぽいし?

260数を持たない奇数頁:2014/12/18(木) 15:45:45 ID:AzHFGuZU0
だぜ。

ぶっちゃけ今回は兄さん大暴れする所まで書こうか悩んだけど、流石に進め過ぎな感じしたから自重した

261数を持たない奇数頁:2014/12/18(木) 17:09:41 ID:dcSYIeuc0
俺も兄さん大暴れを想定してるぜ
まあ兄さん大暴れっていうか爺ちゃん大暴れだけど

262数を持たない奇数頁:2014/12/18(木) 21:12:46 ID:LJCl69tI0
多分今のお兄ちゃんってクソ強いよね

263数を持たない奇数頁:2014/12/18(木) 23:31:58 ID:Nl6g/VdI0
よっしゃあ読み終わったぞ!
大変なところで回って来てしまったえらいこっちゃ

つーか文章のレベル高すぎて俺だけ浮いてるパターンだわこれww

264どあにん:2014/12/22(月) 22:37:32 ID:L8pHNnOQ0
紅白提出したんでローテ復帰しまーす
迷惑かけてスマンカッタ

265数を持たない奇数頁:2014/12/22(月) 23:05:49 ID:DynYwu9o0
よっしゃーこれで勝てる!

266数を持たない奇数頁:2014/12/23(火) 07:33:00 ID:idY5tgwM0
ふぇえ…ぉにぃちゃんぃなくてさびしかったょぅ…

267数を持たない奇数頁:2014/12/25(木) 01:39:11 ID:L3dcf60g0
そういや、今の所くっころしそうなキャラが一人もいないな
よし、次はくっころ系男キャラを増やそう

268数を持たない奇数頁:2014/12/25(木) 08:19:27 ID:ZXmAqevs0
劔夕はくっころ系っぽくないか?

269数を持たない奇数頁:2014/12/25(木) 08:59:03 ID:L3dcf60g0
いや、あの二人は敵に捕まった途端に自害しそう

270数を持たない奇数頁:2014/12/25(木) 09:07:45 ID:L3dcf60g0
いや、でも朝霞とダミアンはくっころしそうだな

271数を持たない奇数頁:2014/12/25(木) 09:15:14 ID:ZXmAqevs0
朝霞はともかくダミアンは自死するって選択肢は選ばないんじゃないかな
どんな手を使っても生き延びる事を優先して考えると思うが

272数を持たない奇数頁:2014/12/25(木) 11:23:51 ID:EpTXNmjk0
本気でくっころ言う人は今のところいないと思う
言いそうな連中は相手に生殺与奪を委ねる前に行動を起こしそう

ネタ含めてならアシュリー辺りがにやにやしながら言いそうな気はする

273数を持たない奇数頁:2014/12/26(金) 22:04:48 ID:QUGQu.s20
次の手番回ってくるまで、旧競作の設定で話かいてよう

274数を持たない奇数頁:2014/12/26(金) 22:26:47 ID:3bmHHXjg0
ぶっちゃけ筆が進まないなら学院に留まる連中の話でお茶を濁してもいいと思うんだぜ

275数を持たない奇数頁:2014/12/26(金) 22:33:35 ID:pj5E5COE0
話は大体思いついてるんだけどどうもPCが目の前にあるとVIPに行ってしまって
あとなんか辻褄合ってるのかどうかわからんくなって遡って色々読んでた

>>273
なんと懐かしい

276どあにん:2014/12/26(金) 23:48:21 ID:s/ShSk3o0
ダミアンくんはひねくれてるから
「殺すなら殺せ、ただし俺は絶対にタダでは死なねぇ」系男子

277数を持たない奇数頁:2014/12/26(金) 23:49:11 ID:QUGQu.s20
ダミアン「許しは請わぬ(鋼鉄の意志)」

278数を持たない奇数頁:2014/12/26(金) 23:55:59 ID:QUGQu.s20
晒すとは限らないがそこそこ快調だ
書き出しの大まかなストーリーがあるって楽で仕方がないわ

279数を持たない奇数頁:2014/12/27(土) 18:45:51 ID:/9QcFw/Q0
そういえば劔と夕霧の設定出てねぇな
初登場は誰のところだっけ。二人共西口のところかな?

280数を持たない奇数頁:2014/12/27(土) 19:06:52 ID:RnzoZDXs0
俺だな
全然考えてねえわ

281数を持たない奇数頁:2014/12/30(火) 01:06:13 ID:04vbQsq60
もしかして劔と夕霧の設定って貼った方がいいのかね

282数を持たない奇数頁:2014/12/30(火) 06:57:48 ID:FBFVATBM0
田舎キャラだし(学院関係者じゃないし)ないならないでも構わないが、あって困るものでもないとは思う
あとおじいちゃんもか

283数を持たない奇数頁:2015/01/02(金) 22:03:14 ID:HS9hRhFQ0
そろそろ……というか二週間過ぎたけどどうよ?

284数を持たない奇数頁:2015/01/02(金) 22:31:49 ID:230bUBYg0
あとちょっとなんだけど年末年始で進められてない……
明日か明後日には必ず出しますスミマセン

285数を持たない奇数頁:2015/01/02(金) 22:35:26 ID:HS9hRhFQ0
まぁ年末の忙しい時期だったから仕方無い

286数を持たない奇数頁:2015/01/03(土) 18:35:15 ID:/cTqd1Vc0
獣人キャラにありがちな、満月のときにケモ耳出ちゃう病みたいなの大好き

287数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:01:10 ID:Vo0LwshY0
 伏神の屋敷には、並の寺院が収まってしまうほどの広い中庭がある。
 一族の者も普段近付かぬそこに、早朝であるにもかかわらずぞろぞろと老人が吸い込まれていく。
 守手四十七氏が一同に会する時にのみ使われる、遠い昔に建てられた、伏神の会堂がそこにあった。

 伏神家当主劔の前を臣老達が頭を下げつつ横切っていく。腰の大きく曲がった者、隻腕の者、目の見えぬ者、多くが何かを患い、どこかを失っていた。
 劔は今一度覚悟の緒を固く締めた。彼らは決してか弱い老爺などではない。何人かはかつて名を馳せた剛の者ではあるが、伏神が為と嘯き、私利私欲を恣にしてきた害虫である。そして、妹の命を奪った憎き仇である。除かねばならない。一切の情に蓋をし、凄惨なる蛮行を以ってして屠る以外なしと、そう強く念じた。

 夕霧は祈った。中庭を覗ける一室で静かに、劔の武運を、その無事を。
 適材適所、そう言って己のみが戦いの場に赴く劔の策を呑んだのは、その合理性と勝算よりも、彼の優しさと不器用さを理解していたから。
 劔が会堂に入ったことを確認し、夕霧は自らの役割に没頭するため、目を閉じ集中力を練り始めた。祈りを力と変えるために。

288数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:01:49 ID:Vo0LwshY0
 伏神の会堂に入るにはしきたりがある。
 一つはあらゆる術符と武具の持込を禁ずるということ。そのために来た者は例外なく身体を検められる。たとえ当主であろうとも、護身のためであろうとも、事実、劔も刀を預けている。
 そしてもう一つ。全員が揃ったところで、堂外に声と姿が漏れぬように結界を敷くことである。会堂の中でのことは伏神の家の中でも秘中の秘であった。そのため、結界を敷くための札だけは、例外的に天の四隅地の四隅合わせて八枚、堂内に持ち込むことを許されている。

 会堂の中は装飾を排除した質素な造りとなっている。あらゆるものが持ち込まれぬよう、あるのは上座と下座のみ。ただ合議をするための空間だった。
 会堂に揃いし当主と守手四十七氏は、一言も言葉を発することなく結界を敷く準備に取り掛かった。雑談であれ外に聞かれることがあってはならない、当然のことである。
 重く冷たい空気のまま、着実に進行していく結界の儀を、劔は鋭い眼光で監視した。不測の事態を生まぬため、確実に事を為すために。奸臣共がこちらの決意に気付いていようがいまいが関係なく、一切の小細工を許すつもりはなかった。

 しかし、思いもしない来客が劔の思考を乱す。

「変わらぬ空気だ。少しばかり懐かしい」

 かつての伏神家27代目当主であり、祖父である、伏神楯一郎その人であった。

289数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:02:42 ID:Vo0LwshY0
 お祖父様が何故ここに。
 いや、その巨躯の奥に守手四十七氏の付き人が見える。唆されたか。だが何のために。四十七氏にさとられたか。いやそれならば奴らはのこのこ出てきはしない。
 しかし、奴らの狙いが何にせよ、これでは討てぬ。人質になるほど耄碌されてはおられぬだろうが、必ず死角を生む。老害共がそれを利用しないはずがない。
 無論、それでもお祖父様を傷付けずに誅すことは出来る。自負もある。だが時間はかけられない。時間がかかれば、逃がしてしまうこともあるやもしれぬ。老いたとは言え守手四十七氏に手練れは多い。おそらくは一瞬の隙で虚を衝かれよう。

「ささ、楯一郎様はこちらに」
 守手四十七氏のどいつかが言った。このまま流されてなるものか。切り札はこちらにあるのだ。
「ここではあまり口を開かぬのがしきたりではございますが、お祖父様に、今この場でお聞きしたいことが一つございます」
 四十七氏の誰もが眉をしかめる。
「……手短にな」
 異を唱える者もいたが、お祖父様がそれを制止した。
「お祖父様、此度の侵入者に心当たりがおありでしょうか?」
 その問に対し、お祖父様は呆れたように息を吐き、即答する。
「無論ない。今この場ではあったとして言えるわけもないが、事実として心当たりはない」
 当然の反応だ。そして、これでここにはいられぬはず。

「聡治が屋敷に見当たりません」

 お祖父様はみるみるうちに表情を強張らせ、拳を強く握った。それはそうであろう。あれほど聡治を溺愛しているお祖父様だ。杞憂であろうと思っていても確かめずにはいられないと読んだが、的中したようだ。
「…………失礼する!」
 そう言い残し、足早に会堂を後にするお祖父様を止めるものは誰もいなかった。やはり、お祖父様は聡治が屋敷にいないことを知らなかった。守手四十七氏が裏で情報を操作していたことが容易に想像できる。目的はまだわからない。こちらの動きが掴まれているやもしれぬ。だがこれで問題ない。合議が始まってしまえばこちらのものなのだ。

290数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:06:01 ID:Vo0LwshY0
「それでは結界の儀を」
 八隅に貼った札が静かにそして着実に空気を塗り替えていく。具体的な変化はない。だが確実に閉ざされていく感覚がある。そして、この変化が外界に伝わったとき、この戦いの幕が上がる。

 冷気が頬を抱いた。――今、絶対零度の激情を以って、腹に溜めし殺意を抜刀せん。

 時計回りに回転しながら右後方で結界を張り終えた者の首に手刀を打ち込む。首が横に伸び、それとは反対側の肩と頭部が激しく衝突し、力なく倒れた。
 一人。
 間髪を置かず年長者をあえて外し、比較的若い者共の集まる席へ切り込む。中でも体躯に恵まれたものを選び、抜き手にて心臓を破壊。足首を掴んで振り回す。頭部などは優れた鈍器だ。一掃する。
 二人。三人。四人。五人。六人。七人。八人。
 状況を理解したものが動き始める。だが愚かだ。無防備に年長者のほうを見やる。意思の疎通を図る暇など与えない。後頭部を蹴り飛ばすと頭は回転しながら年長者にめり込んだ。
 九人。十人。
 三秒。ここまでは思惑通り。だが、この発煙はなんだ。何らかの術であろうが、術の発動が早すぎる。所作もなかった。書記魔法の一種であろうが、札の類は結界分の八枚以外持ち込めぬはず。着物までも自分自身で検めたのだ。見逃すはずがない。だが、今はそんなことを思案しても仕方なし。術者の首を捻り切った。
 十一人。
 伏神の叡智が牙を剥く。式神が、魔力の奔流が迫りくる。だがこの日の為に研鑽を積んでいたのだ。我が破魔の方術に隙は無し。これのみに没頭してきた。何かに突き動かされ、尋常ならざる執念を以って。術というものは、生み出すことは難く、壊すことは易し。霧散しろ。瓦解しろ。貴様らも、それの存在も、あの日より許せんのだ。
 殺到したそれらを破り、術者の腕を無造作に引き抜く。その腕を胸に突き立てる。近くにいた二人の頭を鷲掴みにし、それでもって頭部を挟み潰した。三つの頭は原型を留めていない。
 十二人。十三人。十四人。
 七秒。
 後ろか。いかに白煙に覆われようが、血の臭いに塗れようが気付かぬはずもない。振り返り見ればやはり……いや、これは頭部の無い死体。放られたのか。同胞の死体を、このように扱うか屑め。この着物、この死体はあの煙を発生させた術者か。今全てがわかった。着物のはだけた奥に見える刺青が全てを物語った。巧妙に偽装した書式魔法である。通常、書式魔法は札のような平たいものに刻む。そうでなくては均一に、正常に魔法が発動しないからだ。もしそうでないものに書式魔法を記そうものならその工程は途方もなく複雑化する。それを複雑に形を変える人体に刻むなど聞いたこともない。前代未聞の秘術。一端の畏敬の念を抱きつつ、この状況の先に戦慄する。それほどの秘術を記した屍を晒しておくわけがない。死体の胸が裂け始めている。そこから覗く異常に肥大化した心臓に見えるのもまた書式魔法の文様。お見事。額より滴る一筋の冷や汗をもって、その極地に至った技に敬意を表そう。
 だが、覚悟執念においては、負けはしない。

291数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:06:23 ID:Vo0LwshY0
「我は青女、我は白魔、六花の衣を纏いて、現世の穢れをここに雪がん。淡く舞い降りよ……『晶結界・風花』」

 会堂内の気配が朧になった直後、夕霧は極限まで高めた集中力を注ぎ込み、究極の完成度で結界を張った。
 楯一郎の入堂にも心を乱されることなく、凍てついているかのような不動の冷静さで劔を信じた。
 合議を外に漏らさぬよう守手四十七氏が張った結界、その紙一枚ほど内側に、繊細な処刑場を拵えた。その性質は空間隔離。その特性は隠密。魔法耐性の優れたその結界はあらゆる魔法の突破を拒絶する。そして発動が早く、何より静かに展開される。変化は体感気温が0.5度前後下がるのみであり、感覚器官の衰えた老人などにはわかるはずもない。欠点は強度であるが、魔法が効かぬのであるから、劔並みの膂力でなければ破れはしない。だがタイムリミットは1分。1分後、全てが融解する。
 夕霧はもはや中の様子を窺い知れない。二重の結界が全てを覆い隠している。きっとそこは地獄となり、一つの暴力が狂奔しているのだろう。

「どうか、劔……」

 夕霧が天を仰ぐ。伏神の山に、雨が落ちた。

292数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:07:11 ID:Vo0LwshY0
 十五人。十六人。十七人。十八人。十九人。二十人。二十一人。
 爆発の刹那、屍を掴んで端に群がっている者共のほうへ投げた。爆発が先だったか放るのが先だったかはわからない。右腕には大きな傷を負ったが、幸いかなまだ動く。これで手間が省けた。十一秒。
 ふと一瞬の気流が目の前を過ぎった。嫌な予感がして流れる先を追う。信じ難い光景だった。抉られている。結界も、会堂の壁までも。人一人が通れるほどの穴が、間違いなく空いている。南無三。
 いや、そうではない。そうではないはずだ劔。今呆然としていては全てが水泡に帰す。身体を動かすのだ。結界が消えてしまったわけではない。結界の支点は全くの無傷ではないか。十二秒。まだ間に合うはずだ。脱した者を即座に仕留め、穴を塞ぐ。夕霧ほどのものではないが、簡単な障壁なら俺にも張れる。
 二十二人。二十三人。
 穴に気付き、足を踏み出した二人の首を握りつぶし破壊。結界の外に、会堂の外に出た。穴を障壁で一旦塞ぐ。障壁を背に辺りを見回した。中庭はうって変わって静まり返っている。五感が研ぎ澄まされる。
 居る。一人、間違いなく居る。荒い呼吸、こちらへ向かってきている。逃げぬのか。他に人の気配は無い。時間がない。打って出るほかない。いざ――。

293数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:07:42 ID:Vo0LwshY0
「劔!!!!!」

 夕霧であったか。おそらくは結界の異変を察し駆けつけてくれたのだろう。
 そして、俺は迂闊であった。
 右下腹部より伸びる萎れた腕からは、骨とは違う硬さが感じ取れた。障壁ごと貫かれた筋骨と内蔵が悲鳴をあげる。血液などは激しい勢いで飛び散っていた。
 これか、この機界の腕が、結界を、会堂を、障壁を打ち破ったのか。

「謀を成すときにこそ、重きものを犠牲にせねばなりませぬ。劔様、貴方様は楯一郎様ごと我々を討つべきでしたな……」

 振り向くと、崩れ落ちる障壁の向こうに、昏いものを宿す鋭い眼光があった。細く、今にも枯れ落ちる枝のような肢体があった。そして、左腕が無かった。
「貴様……その隻腕、赤津五郎兵衛佐……!残った腕まで捨てていたか……!!」
 五郎兵衛佐は嗤う。
「それが謀るということにございますゆえ。残った片腕だからこそ捨てる価値があり、破った檻だからこそ潜む意味があり申す……」
 今にして思えば、爆発した死体、それを放り投げられたときに想像するべきだったのだ。それを可能にした力の存在を。
 蒙昧な己を恥よ、劔。

 二十秒。

294数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:10:16 ID:Vo0LwshY0
以上
>>251で字数ワーストだったから頑張ってみた
長かったから推敲とかマジもう無理TRPGしよ
タタリんにあとは任せた!!!

295数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:19:19 ID:zxyUU4fo0
クロたんおつ!
お兄ちゃああああああああああああん!!!!!!!!

296数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:25:28 ID:g/Y0IQo.0
文章力たけーなぁ……

297数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:27:33 ID:zxyUU4fo0
そういや最後のおっさんの名前は「ゴルベーザ」と読めばいいのかな

298数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:40:00 ID:rkvN3sJY0
おつおつ
複雑なものではないが、実はドネルクラル戦時にソウジの左腕を引っ掻いて硬化の書記魔法使ってたのよね
まあ学院での書記魔法理論は、伏神の符術理論の上位互換ってことでいいか

299数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:51:33 ID:Vo0LwshY0
>>295
お兄ちゃん素手で頑張ってる!
刀あったらもう終わってそう

>>296
ありがたや
久しく褒められたことなかったから超嬉しい

>>297
ごろべえざです
そんなやつはしりません

>>298
もう色々忘れてしまっていた
里帰り編しか読み直してなかったのが災いしたああああああ

300数を持たない奇数頁:2015/01/05(月) 12:32:49 ID:WModalw20
クロおっつおっつ。

個人的には上位互換ってよりも汎用的かどうかってとこで違うように感じるわ
学院だから「生徒がいろんな場面で対応出来るように」という理論を重視
伏神符術は「札の使用を前提とした構築を行い、事前に仕掛けて防衛や迎撃などに特化」の方面で発展してきたと考えれば、兄ちゃんの驚きも納得出来る

301数を持たない奇数頁:2015/01/08(木) 20:16:14 ID:a1oZjm8c0
ソウジくんに対する好感度表作ったらどんな感じになるんだろう
劔ニーサン除いたらトップは多分ダミアンかアドライグ、大穴でヴェイパーだな

302数を持たない奇数頁:2015/01/14(水) 11:34:08 ID:jeppL0mk0
十日経過したのかな

進捗状況はどうですか?

303数を持たない奇数頁:2015/01/14(水) 11:48:42 ID:1Xv9DW2g0
ソウジくんを実家に帰らせるか、集落を覗かせるか迷ってる
という序盤あたりで右往左往

もう少しかかります…ごめんなさい…

304タタリ 1/3:2015/01/15(木) 14:54:19 ID:.PJOanoI0
 集落だ。
 正確に言えば、集落へと至る道だ。
 ここまで厳重な包囲網を敷いといて、雪女の集落を放置する伏神家ではない。なら、搬入経路はある程度の舗装を期待できる筈だ。
 俺とは一切関わりのない見も知らぬどこぞの誰かが地雷を起爆させ、数時間に及ぶ俺の努力を無駄にしたのだ。地雷原を脇に逸れ、回り込む様に集落を目指す事にもはや抵抗はないし、隠密を続ける意味もない。
 非正規ルートは複雑に閉ざされていたものの、そこから正規ルートに行くのはそう難しい事ではなかった。何せ、この地雷原は『侵入者/脱走者を殺す』為の布陣だ。そういう疚しい連中が正規ルートを使う筈もないのだから、警戒はしなかったのだろう。
 程なくして、鬱蒼と繁った手つかずの森を抜け、轍の入った舗道へと出た。馬車の形跡、ここが搬入経路か。だったら後は道なりに下っていけば、伏神の屋敷か、その近辺へ辿り着く筈だ。
 先程の二人の朝霞(としか言いようのない謎現象)も気になるし、後は駆け下りるだけ。……なの、だが。
「……」
 搬入経路の坂の上を見上げる。このすぐ先にあるのは雪女の集落。今はとにかく伏神の屋敷へ戻る事が最優先であると思う反面、『この先に何があるのか』を気にする俺がいるのも事実。
 ──伏神ソウジよ。警告する、警告する。この先には進むべきではない。
 第六感が全力で警鐘をガンガン鳴らす。俺、ビビるビビる。本能が先に進むのを拒絶している。
 先ほどの朝霞の電話の事もあるし、早急に本家に戻る必要がある。の、だが。
「……そもそも、魔界人が人間より身体能力的に秀でてるからって、ここまで厳重に隔離する意味はあるのか?」
 朝霞の話では受け入れられた魔界人は数十人。上伏神社の遠目から見た限りでは集落はそこまで規模が大きく感じなかったから、せいぜい十五戸から二十戸ほどで、人口は三〜四十人と言ったところか。定期的な生活必需品などの配給はある訳だし、本当に「開けた隔絶空間」という意味合いが強く感じられる。
 雪女の戦闘能力がどれほどの物かは知らないが、魔界人=戦闘狂という事もあるまい。子供や老人もいるだろうし、戦力として脅威になるのは半分ほどだろう、つまり二十人弱。
 ……いやいや、有り得ないだろう。繰り返しになるが伏神は陰陽師の名家だ。退魔封印はお手の物、地の利もあり周囲には守手四十七氏の援軍も期待できる現状で、隔離する理由づけの為にここまで濃密な地雷を設置しまくったりするか普通?
 違和感に気付くべきではなかったと後悔するも、もう遅い。屋敷の事も気になるが、こちらはこちらで異常事態だ。
 あっちには兄さんがいるし、何より爺ちゃんがいる。多少の問題なら盾一郎という人間辞めてる系の猛者が一喝するだけで収まる筈だ。
 そして。この先に向かうとするなら、恐らく。伏神の血族として、本気で、本当に、本格的な決別が必要となる気がする。
 軽く深呼吸を行い、震える膝を殴って黙らせ、頬を叩いて睡魔を追い出す。
「ッシ、行くか」

305タタリ 2/3:2015/01/15(木) 14:55:15 ID:.PJOanoI0
 坂の中途から正規ルートへ復帰した為、集落は本当にすぐ目と鼻の先だった。
 雪女の集落の第一印象は、簡潔に見たままを述べるなら「廃村」である。というかそれしか言葉が見つからない。
「一ヶ月や二ヶ月ってレベルじゃねーぞ、この荒み具合は……」
 程々に均された地面からは雑草が生い茂り、木製の(粗末な)家屋は苔と蔦に侵食されつつある。ここで肉が腐った様な嫌な臭いでもすれば、集落に足を踏み入れる勇気なく撤退しただろうが、予想に反して臭いは全くしなかったのは幸いと言えるのだろうか。
 劔兄さんや夕霧さんが、現状を放置しているとは思えないし、朝霞に嘘を教えていたとも思えない。となると少なくとも二人は「雪女の集落は健在である」と認識していたのだろう。情報収集の中間で意図的に健在な偽情報に歪められていたのだとするのなら、そんな七面倒臭い事をする犯人は限られてくるだろう。
 さて、ここで問題。だとすれば、雪女たちはいったいどこへ消えたのか。搬送用の舗装された経路を辿れば確実に伏神に察知されるだろうし、山林地帯はご存知の通り地雷原である。
 ……考えるまでもない。ここまであからさまだったらば、小学生にだって理解できる。
 手近な家屋の戸を開ける。舞い飛ぶ埃は手拭いの類を持ち合わせていないので服の襟で塞ぎながら、朽ちた床を踏み抜かぬ様に忍び足。
 やはり生活臭は感じられない。しかし、整頓された後に消失したとも考えられない。いくつか家屋を覗いて、中には食事の支度の最中だったのも見受けられた。
 争った形跡はなく、ある日忽然と、集落単位で神隠しに遭ったとしか言えない現状。さて、これをどう脳内処理したものか。この場に朝霞がいなくて本当に良かった。
 集落は半径三十メートルほどの円形に切り拓かれ、やや斜面になっている。井戸の中身も確認したが、特に目立つ物もない。
 目を引くのは、集落の中央に建てられた……何これ、祭殿? らしき謎の建造物。上伏神社とも趣が違うし、もしかすると魔界人の宗教に関する造詣なのかも知れない。
 中に安置されているのは御神像か、と勢い込んで開けてみると、そこにあったのはおよそこの場に似つかわしくない機械が一つ。
「……ノーパ、ソ?」
 機界の技術で構成された情報処理用端末をパソコンと呼ぶのだが、これは更に小型化・軽量化された携帯性モデルのノート型である。こんな電気も通ってない場所に何故、とか疑問は山ほどある。全く意味が分からない。
 祭殿のあちこちを警戒して罠がない事を確認し、ノーパソを触ってみる。爆発したり電流が走ったりなどの罠はなし。開いてスイッチを押すが反応なし。どうやら電池が放電しきってる模様。
「書記魔法でも電撃を発生させたりは出来るが、流石に電流を継続的に流すのは無理だよな」
 というかそもそも、パソコンなど授業くらいでしか触らないのでよく分からない。誰か専門家でもいればいいのだが、あいにく思い付く人物は現在ここにはいない。
 腕時計を見る。朝霞からの電話が来てからかれこれ二十分は経過している。流石にこれ以上、屋敷の異変を放置する訳にもいくまい。
 ノーパソは持っていくとして、……正直、何が何だか分からないが、一つだけ言える事がある。


 伏神とは金輪際、縁を切る事にする。まさか、ここまで腐敗が進んでいるとは思いも寄らなかった。
 責任は俺にもあるだろう。だから、これからやる事はきっと、過去の決別と、現在の精算になるだろうさ。
 ──多分ね。

306数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 14:57:24 ID:.PJOanoI0
三つに分ける予定だったが、意外と二つで収まっちゃったよ!

という訳で名前欄の数字は無視して俺分投下完了
集落やノーパソについては自由にしていいし、こっちで処理してもいい、自由とはそういうことだ

307数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 16:44:53 ID:XQyslnOs0
タタリんおっつ
ついに電脳魔法が役立つ日が来るかもしれないな

308西口:2015/01/15(木) 17:08:12 ID:XQyslnOs0
以前にも言ったが、22日から来月3日まで僕はずっとゲームやってますので競作かけないです
その間に回ってきたらパスって事でどうか一つ

309数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 17:43:50 ID:sDv/5OwU0
じゅ、十三日間もゲームだってぇ!?

310数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 18:06:29 ID:XQyslnOs0
ぶっ通しちゃうで!

311数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 18:40:02 ID:FWNrXjEE0
元々やりたかった事があって、ゴルベーザさんが機界の腕持ってたから便乗ついでに設定合わせたってのが理由
今のところ設定上にしかない電脳魔法の事もあるし、機界関連なら暗躍してるクロガネが活躍しやすそうだってのも勿論ある

312どあにん:2015/01/15(木) 19:12:22 ID:yaMEbquo0
その中で三馬鹿を進めようと画策する俺ェ!

313数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 19:13:06 ID:XQyslnOs0
案ずるな、ほんへは俺が進める(まわってきたら)

314数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 19:31:04 ID:FWNrXjEE0
あ、忘れてたけど次はどあにんね
一応ねんのため

315数を持たない奇数頁:2015/01/15(木) 20:12:18 ID:YVSYBKYY0
タタりん乙
まさか集落がこんなことになっていようとは

>>311
ゴルベーザちゃうわ!

316どあにん:2015/01/16(金) 09:56:42 ID:LXl53cME0
よかろう、承った……ただし話の流れをどうしようかは全く思い浮かばない

317どあにん:2015/01/16(金) 10:01:00 ID:LXl53cME0
ざっと、
劔ニーチャンを少し進める(此処で少し竜を関わらせる)→楯一郎じっちゃとソージ君合流→三馬鹿一気に終わらせていい所で登場させちゃう

こうする(鋼鉄の意志)

318どあにん:2015/01/16(金) 10:30:33 ID:LXl53cME0
あとなんかニーチャンがじっちゃも倒すみたいな流れになってるけど……
やりたい事あるんでガン無視していいのかなぁ

ニーチャン<じっちゃが老害の暴走放っておいてるなんておかしい じっちゃもころころしなきゃ…(使命感)
じっちゃ(好き勝手し始めた原因探ってただけなんだがのぅ…)

319数を持たない奇数頁:2015/01/16(金) 10:39:11 ID:MRFRX1cY0
じっちゃには手かけたくないからあの茶室から出て行かせてんじゃないの
お兄ちゃんはじっちゃじゃなくて伏神家を憎んでるんだし

320どあにん:2015/01/16(金) 10:42:59 ID:LXl53cME0
いや、老害ズが楯一郎もなんとかするべきだったって発言してたし……
フーム……

321数を持たない奇数頁:2015/01/16(金) 10:45:08 ID:MRFRX1cY0
不自然におじいちゃんを出て行かせたから対応されたんだ
謀企てるなら非情になれ、って意図での発言でしょう文脈的に

322どあにん:2015/01/16(金) 10:47:36 ID:LXl53cME0
なんだどあにんの文章読解力ガバガバじゃねぇか よぉし、次はロウソクだ(自戒)

323どあにん:2015/01/16(金) 10:52:44 ID:LXl53cME0
読み直し中…

  ブス…  ∫ ;′ ∫  ,;′
   ブス…',. -――-゙、  ;'  ジジジ…
    ;  /      へ `>、'; ∫
   _;'___{.  ,>-/、/=;´イヽ;'_  
  /三三j='rー、\_>、)_℡, >;;〉三'`、ジジ…
 /三三└'゙ー:;‐;;‐;;'`ー;;ヾ'`"´三'三;`、
 囮ヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱ囮
 囮災炎災炎炙災炒炎災灸災炭囮
 ◎┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴◎

324数を持たない奇数頁:2015/01/16(金) 12:17:35 ID:/sbUewgc0
俺は当初、じっちゃvs兄ちゃんを予定してたよ
で、途中で忠臣みたいなジジイが兄ちゃん諸共じっちゃを爆殺しようとして「尻尾を見せたな!」ってじっちゃ無双
上の方でじっちゃ無双するって発言した頃はこんな感じにしたかったが、じっちゃ出てったし集落がスルーされそうだったからとりあえず集落確認させた

325どあにん:2015/01/16(金) 12:21:30 ID:LXl53cME0
とりあえず じっちゃ<罠?はて、そんな物あったのか?
くらいの人外っぷりを発揮

326数を持たない奇数頁:2015/01/16(金) 12:27:36 ID:/sbUewgc0
ああ、うん、じっちゃのイメージはそんな感じだね
そもそも忠臣を皆殺しにした兄ちゃんを圧倒して、竜の力を使ってようやく五分に拮抗するレベルで考えてたわ
人間を超越した兄ちゃんと、人間の限界まで鍛えたじっちゃの構図で

327数を持たない奇数頁:2015/01/16(金) 19:06:19 ID:hZC8byqY0
おっつおっつ。

読み直してて思ったんだが、じっちゃんが27代目なら兄ちゃんは29代目なのかな
初代→【省略】→じっちゃん(27代目)→叔父(28代目)→兄ちゃん(29代目)って感じで

328数を持たない奇数頁:2015/01/16(金) 19:21:16 ID:MRFRX1cY0
だと思う

329数を持たない奇数頁:2015/01/16(金) 19:55:53 ID:Fq/p3gaQ0
>>321の言う通りの意図でございました
今になってみればちょっと無理矢理感があったかも申し訳ない
でもあそこは実は密かに五郎兵衛佐のじっちゃ嫌いも込めた部分だから
何かしら引っかかってくれたことは嬉しい

330どあにん:2015/01/17(土) 17:49:39 ID:M0fmEyFE0
竜vs兄ちゃんになりそう

331数を持たない奇数頁:2015/01/17(土) 19:39:29 ID:6VYhIfSs0
いいんでない?
一匹や二匹じゃきかない量の竜の処理をソウジ君に押し付けるのは忍びない

332数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 19:42:12 ID:AYOX3Abs0
設定書くの忘れてたから俺も忘れてたけどお兄ちゃんは28歳で夕霧は24歳です

333数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 19:55:30 ID:AYOX3Abs0
24歳、雪女です

334数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 20:03:57 ID:i3DTCGvY0
(尻の)アナとイキの女王やめろ

335数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 20:06:11 ID:WuxVAQOU0
ちなみに五郎兵衛佐は94歳です

336数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 20:13:03 ID:AYOX3Abs0
元気なジジイだな

337数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 20:30:45 ID:AYOX3Abs0
お家騒動編終了した次を実はもう見据えてる
作った以上ルカくんのヒロイン力を上げなければという妙な使命感があるのだ

338どあにん:2015/01/18(日) 20:47:44 ID:J94dScys0
>>335
すまん、頭に享年が付いた

339数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 20:50:17 ID:AYOX3Abs0
催促とかじゃ全然ないんだけど、いつ頃に書きあがりそう?

340どあにん:2015/01/18(日) 20:54:22 ID:J94dScys0
モチベーションが足りればあと1週間前後かなぁ

竜と会話してその後の展開はマルナゲ
後はソージ君とじっちゃ合流(じっちゃは集落の惨状にブチ切れ)
三馬鹿一気に終わらせる

ふふふ、地獄だ…

341数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 20:55:09 ID:AYOX3Abs0
よし、後は任せたKの人

342数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 21:09:21 ID:90DU7auQ0
個人的にはもっとエグくてドロドロした話の予定だったけど、平和に済むならそれに越した事はないな
ぶっちゃけ俺の番で暴走が許されたら1人で2万文字↑の文章量的な意味での大暴走+死者多数という物語的な意味での大暴走になってたと思う

343数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 21:32:08 ID:AYOX3Abs0
いいんだぜ?

344どあにん:2015/01/18(日) 21:51:47 ID:J94dScys0
ふえぇ…もう既に死者が大量に出てるよぉ…

345数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 21:55:01 ID:90DU7auQ0
いや、もう過ぎたからなぁ

346数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 22:07:18 ID:P3CwDlFs0
クロたんが老害抹殺しまくって、俺が集落単位で臭わせたからな
相当数が犠牲の犠牲に…

347数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 22:37:40 ID:WuxVAQOU0
なんか俺が大量虐殺者みたいになってるんだが!
だってお兄ちゃんが伏神潰すとか言うから!
俺は学園でキャッキャウフフな明るい青春をやりたくて参加してるのに!
いつの間にかこんなところまで連れてこられて!
どうしてこうなった!

348数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 22:43:28 ID:AYOX3Abs0
サスケくんだって木の葉潰すとかいってたけど特別何かしてた記憶ないしへーきへーき

349数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 22:56:03 ID:OLFSydh.0
サスケくんはサイコホモが出しゃばってたからね
そもそも雷影1人殺せない癖にレボリューションとか言ってたからね

350数を持たない奇数頁:2015/01/18(日) 22:58:11 ID:WuxVAQOU0
レボリューションのときには輪廻眼開眼してたから!
雷影一人殺せなかった頃とは全然違うし!

351数を持たない奇数頁:2015/01/21(水) 20:25:32 ID:19/Fx0X.0
明日から西口がゲームの世界に旅立ってしまうのか。時期的に俺に回って来そうなぁ

352西口:2015/01/22(木) 21:55:44 ID:EhZVbVLo0
無事飛び立った
いや、マジで面白いから本当に来月までずっとやってるかも

353どあにん:2015/01/23(金) 21:38:31 ID:EH8/mgUM0
流石にRPGツクールリレー作品参加しながらこっちはキツいな
もしかしたら2〜3日程遅れるかも知れぬ

354数を持たない奇数頁:2015/01/27(火) 12:48:41 ID:YV3H9tys0
そろそろかな?

順番的にゲームの世界に旅行中な西口を飛ばして俺かな
内容次第だけも多分、きっと、暴走する可能性が極めて高いと伝えておこう

355西口:2015/01/27(火) 13:01:08 ID:fp8B9nYQ0
出来がお察しだったので復帰します(テノヒラクルー)

356数を持たない奇数頁:2015/01/27(火) 13:05:35 ID:fp8B9nYQ0
二周目やる気起きねえよアレじゃ
一番好きになったキャラクターがスポット参戦で扱い最悪ってどういうことだクソッタレ

357数を持たない奇数頁:2015/01/27(火) 19:50:20 ID:DIFGdlOI0
Oh……それはきつい
了解ですぜ。どあにん&西口待ちつつ暴走準備を整えとくわ

358数を持たない奇数頁:2015/01/28(水) 17:59:38 ID:KjvDbQaE0
と言うわけで進捗の程はどうですか?

359どあにん:2015/01/28(水) 23:04:45 ID:QCMh3k7U0
もう少し待って頂きたい
>>353から片っ方出来上がったん
遅番明けだが今全力で書いてる

360数を持たない奇数頁:2015/01/28(水) 23:07:40 ID:KjvDbQaE0
おk、もう遅いしあまり根詰めすぎずにね

361どあにん:2015/01/28(水) 23:13:23 ID:QCMh3k7U0
兄ちゃんが竜とバトろうとしてる辺りまでは書けてるから
最悪そこでブン投げる

362数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 00:06:59 ID:Eg17dEm.0
ダミアン「お体に触りますよ…」

363数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 00:17:16 ID:3JbBKveM0
ソウジ「まるで蛇博士だな」

364どあにん:2015/01/29(木) 20:29:39 ID:ZIeM9lgg0
体調が変だと感じ始めたので投下
三馬鹿編は必ず終わらせる故ご容赦を……



「劔様……儂は長きに渡って夢想しておりました、この手で貴方様を葬る事を。
 貴方様は我らの理想の障害、無視できぬ壁……故に貴方様は此処で永遠にお眠りを」

劔に突き刺さった機界の腕を捻り、臓器を破壊しようと五郎兵衛佐は目論む。
最新鋭の機界の腕は人間では覆せぬ圧倒的な力、そう思っていた。
モーターが作動を始め、筋繊維を破壊しながら回転を始めた刹那、劔はその下腹部に突き刺さる意志無き殺意を掴み止めた。
聞いた事の無いような音が辺りに響き渡る、五郎兵衛佐は危機を感じてその手を引き抜こうとしても微動させる事すら出来なかった。

「ご老人、玩具で遊ぶには少し歳を食い過ぎでは無いか……なぁ!」

震脚、発勁……大地の力と己の膂力を組み合わせた渾身の手刀。
タンパク質とカルシウムの塊は刃となって機界の腕を、派手な音と共に断ち切った
切断面から溢れだすドス黒い液体が劔の身体に振りかかるよりに疾く、五郎兵衛佐の懐に潜り込んだ。

息を吐き出し、大地を蹴った力をそのまま攻撃へと転じる、五郎兵衛佐が残った腕で防御を図るもあまりにも遅い。
地を蹴った脚は音すらも置き去りにして老人の皺が刻まれた顔の中央を捉えた。
骨が砕ける感触、水分が押し出される感触、付与した衝撃が頭部を強制的に運動させる。
人体の可動域を超えて首が回る、1回転、3回転、8回転、13回転。
15回転目前してズタズタになった筋繊維と極限まで捻れた皮膚の細胞が限界を迎えて千切れ飛ぶ。
そこでようやく音が耳に入る、人の頭部を宙を舞って結界にぶつかり砕け、血に塗れた脂肪塊がボタリと落ちた。

「次に死にたいのは、どいつだ?」

残る老害達を睨みつけた刹那、何かが空から急降下する音。
圧倒的な質量を誇る何かが、空から落ちてくる。
何か不味い事になったと、劔は咄嗟に空いた穴から結界の外へと飛び出した刹那
地震が起きたかのような凄まじい揺れ、まるで風船の如く割れる結界、舞い上がる砂埃。
哀れにも逃げ遅れた老人達も数人宙を舞い、無慈悲に地面へと叩き付けられた。

だが、そんな者達をも気にせず声を漏らす老人達は一斉にそれを向かって頭を地面へと付けてひれ伏した。
無駄にプライドばかりが大きい老害があそこまでひれ伏す存在、劔の腕が疼く。
自分を開放しろと言わんばかりの鼓動、皮膚が裂ける程爪を立ててその鼓動を抑えこむ。

「なるほど、これこそが老害が増長した原因か」
「おお、おお……竜よ、竜よ……!」

蒼色の鱗、巨大な羽、地を抉る強靭な爪、劔の腕に封じたそれと似たような物、竜が目の前に居る。
竜はそんな老人達を汚物を見るかのような冷たい目で一瞥した後、劔に瞳を向ける。
宝石の如く澄んだ青色の瞳、瞳孔が目まぐるしく収縮を繰り返すした後、視線だけを足元の老人達へ向ける。

「……頭首が見当たらぬようだが」
「賢しくも劔様の機転により取り逃がしまして……しかし貴方様の力を持っ」

言い切るよりも早く爪が地を抉り、足元に居た哀れな老人達は無残な挽肉へ変わり果てる。
守手四十七氏、長きに渡って伏神を支えつつも腐らせてきた老人達の終わりは、あまりに呆気無い最期。
劔は哀れな老人達だった物に対して、何の感慨も湧かなかった。

「与えられし役割も果たせぬ癖に強請る豚に生きる価値は、無い」
「成程、老害共が増長した理由はコレか……大凡ロクでも無い事を願ったのだ、ろうッ!」

反撃する間も与えずに倒しきる、抉られた腹部の傷も浅くは無い。
出血多量で動けなくなる前に戦いを終わらせる、吠えながら飛びかかる、悠然と佇まう竜目掛けて。

365数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 20:31:36 ID:5xcBqErM0
やったぜ

366どあにん:2015/01/29(木) 20:57:02 ID:ZIeM9lgg0
首が何回転もするのはバンビーナのあっち向いてホイ的なイメージで

367どあにん:2015/01/29(木) 20:58:44 ID:ZIeM9lgg0
此処までなんだ……
このままフートンで眠らせて貰う……

368数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 21:00:28 ID:YDb22o7.0
おやすみ

369数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 21:00:32 ID:/as1UMZ20
おっつおっつ。オフトゥンに包まれて、安らかな眠りをー

370数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 21:13:09 ID:5GFqqiL.0
どあにん乙
竜がここできたか
めちゃんこ激しい戦いになりそうだ

371数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 21:24:58 ID:Eg17dEm.0
どあにん乙
早ければ月曜には上げるぜ

372数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 21:28:05 ID:Eg17dEm.0
イヤサレッヤー

373数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 21:54:05 ID:unzppus60
乙ポニぜ

374数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 22:05:57 ID:Eg17dEm.0
とりあえず2kbほど書けたから多分明日にはいけるわ
Kの人のを見たいという願望を原動力に更に加速!

375数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 22:49:10 ID:Eg17dEm.0
ロリ暗殺者というものもいいですな、という事で増えそうキャラが
流石にやりすぎな気もするが

376数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 23:15:17 ID:.UwCc9Ek0
西口次第になるけど多分(最低でも文章的に)暴走しそうかなぁ
閑話程度に学院内での小話捻じ込んだりしつつ、多分騒動の大半を片付けてクロには後始末寸前で投げそうな気がする
気がするだけで未定だけどな

377数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 23:18:36 ID:5GFqqiL.0
騒動片付けてくれるなら後始末は俺に任せろー

378数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 23:25:11 ID:.UwCc9Ek0
言質はとったからこれで安心して大暴れ出来るぜ

とりあえず本当に西口次第でどの方向性で暴走するかが決まるというプレッシャーを掛けておく

379数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 23:27:50 ID:5GFqqiL.0
俺は学院に帰ってからやりたい放題させてもらうぜ!

380数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 23:29:07 ID:Eg17dEm.0
え、マジで
俺だまだ長引くつもりでいたんだが

381数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 23:33:04 ID:S2s8xKho0
俺ももう1〜2巡くらいするもんだとばかり
この流れで騒動が終結すると、ソウジくんが帰る頃には実家片付いてるような気がする

382数を持たない奇数頁:2015/01/29(木) 23:35:11 ID:.UwCc9Ek0
いや、西口の文章量だといい感じのところまで持っていかれるかなって思ってたからさ
続けるつもりなら続ける感じで繋ぐけどな。まぁ、つまり西口は書きたいように書いて俺に押し付けてくれればおkって事だぜ

383数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 16:28:22 ID:m8KA5AKU0
三馬鹿が対竜戦を決着させるきっかけになる、みたいな流れにしたいとふと思った

384数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 18:02:12 ID:DefNsAu.0
あ、今日中は無理だ
やっぱり月曜でオナシャス

385数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 18:35:24 ID:m8KA5AKU0
むしろ昨日の今日で書き上がる方が異常に早いんだがな
もっとゆっくりでええねん

でないと遅筆の俺が余計際立つねん…

386数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:06:13 ID:DefNsAu.0
ちょっと思ったけど日本って竜全然いないんだよね
竜っていう概念自体が中国産ってのもあるんだろうけど
それ以上に蛇が神聖視されてるせい、ってのが大きそう
竜扱いされてる日本神話上の存在は大体蛇としての側面持ってる気がする

387数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:07:40 ID:9WZqFFpg0
西側の神話でも結構そうだと思う

388数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:09:49 ID:DefNsAu.0
西側の竜って邪悪の象徴めいた側面があるから
往々にして英雄とか聖人にぶっ殺されるよね

東洋では水の神格存在だからか神聖なものとして描かれる事多いけど

389数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:23:05 ID:9WZqFFpg0
西洋竜も蛇ベースのキメラだからね
邪悪の象徴というか、大きく見られてるからこそ、神々の踏み台にされてる感はある

クロノスに追い出されたオピオン、アポロンに殺されたピュトン
ゼウスにタイマンで勝ったテュポン、その妻のエキドナ
ギガスも下半身は蛇だそうで

390数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:26:08 ID:DefNsAu.0
神話以降でも聖ゲオルギウスにアスカロンでぶっ殺された毒っ吐きドラゴンやらがいるね

391数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:27:06 ID:DefNsAu.0
あ、あとヌアザを殺したクロウ・クルワッハも竜だったな

392数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:27:22 ID:9WZqFFpg0
ドラゴンの造形って割と後発なんかね

393数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:32:45 ID:DefNsAu.0
元ネタが蛇信仰だったはずだから、キリスト教の影響は強そう
たしかあそこの教義では蛇は悪いもののはずだから
とすると割と昔からあるんじゃない?

394数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:38:38 ID:9WZqFFpg0
蛇が神格化されていき、神々が超人的な力を持つように、蛇も怪物的に描かれてドラゴンの造形が誕生(まだ蛇扱い)
それを蛇でもないトカゲでもない、独自のドラゴンというジャンルで独立した、みたいな感じのはず

けど旧約聖書のリヴァイアサンは竜とも蛇とも言われたり・・・
基本神格化された蛇がドラゴンってことでいいんだろうな

395数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:42:14 ID:DefNsAu.0
まあ色々言ったけど、要はおにいちゃんの竜の名前(つけたのはお兄ちゃん)を蛇にしようと思っている

396数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 21:58:20 ID:yYbn9nx20
西洋竜ってトカゲじゃないの?

397数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 22:00:25 ID:DefNsAu.0
爬虫類とかその手の類を纏めてドラゴンって呼んでたって聞いた覚えがある

398数を持たない奇数頁:2015/01/30(金) 22:28:22 ID:HxW8dgR.0
爬虫類ってトカゲ(蛇)と鰐と亀しかいないらしいね
トカゲ(蛇)と鰐はドラゴンのイメージ強いが、亀型ドラゴンってほぼいないよね
昔の人は亀=爬虫類って発想がなかったのだろうか

399数を持たない奇数頁:2015/02/01(日) 16:02:02 ID:K3JHvv3w0
暴走予定と言ったけど、環境がちょいと動きそうだからもしかしたらパスも辞さない状況に陥るかも分からん
多分パスに至る事はないとは思うけど念のため書いとく

400数を持たない奇数頁:2015/02/01(日) 20:01:32 ID:.UVI7p3o0
え、マジで!?
さっさと書き上げなきゃやべえ!

401数を持たない奇数頁:2015/02/01(日) 20:05:54 ID:.UVI7p3o0
サトリんが死んだのは四、五年前だったか

402数を持たない奇数頁:2015/02/01(日) 20:10:19 ID:K3JHvv3w0
一応動くとしたら2月3日以降だな。今のところどう動くか本当に予想がつかんのよね
>>401
聡治が中等部に転がり込む云々で、今が高等部二年だから大体それくらいだな

403数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 10:29:04 ID:vuZYJwwA0
現在12kbほど
いい感じの落しどころ見つけたら投下するわ

404数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:09:23 ID:vuZYJwwA0
一応投下できる程度には書いた
が、話が一ミリも進んでない

405数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:21:11 ID:2H5/4.YY0
wktkしておく

現在進行形で心身ともにくそったれな状況だが、西口が納得した上で投下するなら、まぁどうにかやってみるわ
明日急がしめで、明日以降こちらの状況が動くだろうから筆が進みにくいが頑張ってみる

406数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:22:50 ID:vuZYJwwA0
すまんKの人、俺がこれ以上書いたら確実にグダグダになる
後は任せた

407数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:24:12 ID:vuZYJwwA0

「いぇと、まあこりき、なべ」
 唱える。「我が意の下に頭を垂れよ」、と。
呪文と言うにはあまりにも幽か。それ以前に、言語とすら言えぬ。乳飲み子の呻きに等しき『それ』は、口より発せられる「意思」。
言語という体系が成立するよりも、遥かに以前。歴史の霞の彼方に消えた、人がまだ自然と一体であった頃の名残。「原初の令」、言霊。
いかなる魔術的な意味合いも存在せぬそれは、翻せば、いかなる魔術的な干渉をも跳ね返す。人を超越した霊的存在と接触を試みる際に、それはほぼ唯一の矛にして盾となる。
「竜」を屈服させるには、必須とすら言える。
伏神劔の内側に漲る、野獣めいた衝動。いや、それは事実野獣なのだ。吠え叫び、猛り狂い、欲望のみを原動力として動く、「衝動のみで構成された形無き野獣」。それは意思を持つ暴力、人を侵す病。神を志す哀れなる魔、「竜」。
劔は己の内に横たわる、眼前にて威容を誇るモノと同種の存在に語りかける。いや、命じる。「我が意の下に頭を垂れよ」、と。
「竜」は叫ぶ。吠える。人間風情が何様のつもりだと、全力を込めて猛る。全身を押し潰されそうなほどの衝動が、彼の体内を駆け巡った。
 だが彼は、それをねじ伏せる。「黙ってひれ伏し、俺に振るわれていろ。竜風情が」。
粗暴にし獰猛。けして折れず、曲がらぬ彼という「意」が作り出した言刃《コトノハ》に、人に寄らねば顕現すら出来ぬ竜などが抗えるはずも無い。彼の筋肉を引き千切らんとしていた衝動が、潮が引くかのように消えうせていく。
「黒鱗、世を犯す能をここへ。撃翼、地を踏み砕く能をここへ。珠瞳、草木薙ぎ払う能をここへ。鎧え、鎧え、鎧え。我が銘は天羽々斬。其を規定するその名の下、総てを疾く用立てよ」
 ――『悪路王』。

408数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:24:42 ID:vuZYJwwA0
蒼き竜が瞠目した事を、一体どれほどの者が認識できただろう。
彼の巨体から見れば、豆粒と形容して差し支えない、筋肉質な男。その内側から、山をも揺るがしかねない闘気が、殺意が、まるで濁流のように放たれているのに恐怖していると、一体どれほどの者が理解できただろう。
それほどまでに、蒼竜の行動は早かった。
『悪路王』。劔の「竜」を縛るその名をいい終わるか終わらないかの内に、それの爪は既に振り下ろされていた。
 その巨体からは想像がつきそうも無いほどの俊敏さ。敵の眼前にいながら、悠長に言霊を紡いでいた劔の迂闊さを抜きにしても、それは驚嘆すべき物であった。
防げぬ、避けれぬ、弾けぬ。普通ならばそうなるはずだった。そう、普通ならば。
だが――
「護ッ!」
 圧倒的質量の爪が劔を引裂くかに思えたその刹那、響いたその声は、幾重にも重なっていた。
精確には二十三重。半壊した会堂を抱く伏神邸の中庭を取り囲むように表れ出でた「彼ら」は、それぞれの年代や性別による声音の差はあれど、少しも乱れず、完全に同時に叫んでいた。
言葉は鍵となり、その漆黒の装束に織り込まれた書記魔術を起動する。二十三人が判を押したかのように翳した左手の、その延長線上にいる劔の眼前に、簡易障壁が術者の数だけ重なって展開する。
それは、劔と竜の爪の僅かな隙間のみを断つ局地的な物ではあったが、その部分の強度だけで言えば、夕霧の『晶結界・風花』にも匹敵する程の物であった。
人が放てる術式で、抉れてしまう強度。当然、竜の一撃を完全に防ぐ事などできよう筈も無い。
鋭き爪は、二十三層もの障壁をまるで紙でも引裂くかのように軽々しく砕いていく。一瞬だ。瞬きする時間を稼ぐ程度しか、その障壁には意味が無かった。
たかが一瞬。されど、一瞬。人が瞬き出来るほどの時間。

それだけ稼げれば十二分だ……!

 空間を切り裂くかのように直進する閃光。銀色の尾を引くそれは、例えるならば飛翔する氷の鏃。伏神邸の家屋、その屋根にしゃがみ込んでいた夕霧の右手より放たれ、音も無く飛来する。
 蒼竜の爪が結界を砕くよりも早くその左前足に突き立ったそれは、それとほぼ同時に、刹那の時すら経ずに四ツの術式を発動する。
一ツ、結界隔離。竜の左腕を包み込む。その内部で駆動する術式の影響を、外部に漏らさぬための措置。融解した氷の鏃が、その内部を水で満たす。
二ツ、呪詛・操作の複合術式「奪熱」。竜の巨大な足に内在する、膨大な熱エネルギーを奪い取り、絶対なる零度にて凍結させる。余波を受け、結界内を満たしていた水も凍る。
三ツ、奪い取った熱を、脆弱なる小結界にて隔離する。抽出された純粋なる熱エネルギーは、泡沫が如き矮小な空間にも、容易に収まった。
急激な温度変化に耐え切れず、蒼竜の爪に亀裂が走る。その時にこそ、彼女の術式が真価を発揮した。
小結界が、熱に耐え切れずに崩壊する。隔離した熱エネルギーが、結界内全体に満ちる。溶岩が如き高熱は、内部を満たす氷を融かし、蒸発させる。――一瞬で。
四ツ、反応促進。錬成魔法の加護を受け、文字通り爆発的な勢いで発生した水蒸気が、結界に尋常でない圧力をかける。その負荷に耐えかね、結界に小さな一穴が穿たれた。
途端、ピュウと言う甲高い音を立て、穿たれ穴から水蒸気が噴き出る。それは宛ら推進器の様に結界を、ひいてはそれに包まれた蒼竜の腕《かいな》を大きく動かし、その機動を無理矢理捻じ曲げる。
逸れた。
爪は劔の体に一条の傷すら付けること叶わず、横合いの地面を抉り取るのみであった。

409数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:25:05 ID:vuZYJwwA0
体勢を崩しそうになり、蒼竜は残る三足を踏んばり、何とかそれを押し留める。必然的に生まれる微かな硬直、隙。それが致命的な物にならなかったのは、単に運が良かったからだろう。
「悪路王」
烈風が吹き荒ぶ。不可視の力場が、劔の全身を覆う。蒼竜は翼を翻し、一息に飛び退った。伏神家の広大な中庭であればこそ、その巨体でも自由に動くことが出来る。
両者の距離、およそ八メートル。もう先ほどの様な奇襲は通用しそうもない程の距離。
伏神劔の「変化」は、既に終了していた。
右腕。指先から肩口までを覆うのは、光沢など存在しない漆黒の竜鱗。どこか鎧めいた堅牢さを匂わせるそれは、彼の左腕が元々、丸太のように太かったせいもあろうが、左袖を突き破り、その全体を外気に晒していた。
「『竜』の力……!」
 蒼竜は呻き、歯噛みする。まるで己の誇りを貶められたとでも言うように。
劔は口角を吊り上げ、ニィと笑った。
「相変わらずいい腕だな、夕霧。助かったぞ」
「どうも。信頼してくれるのは嬉しいけど、いい加減敵の前で無防備になる悪癖どうにかならないかしら? ひやひやするのだけれど」
 心底ウンザリしたような口調で、夕霧は呟くが、劔はそれをまたも笑うことで受け流す。そうする事を分かっていたようで、夕霧は深々とため息を吐くだけで、そこで会話を終わらせた。
そんな劔の元へ、駆けてくる影がある。半壊した会堂から飛び出てきたそれは、胸元に長大な刀剣を抱いた、小柄な人間のものだった。
それは中庭を取り囲む集団と同様の装いをしており、頭のてっぺんからつま先まで、漆黒の装束で覆われており、性別や詳細な体つきすら特定できない。
だが一四〇にも届かぬ小柄な身長と、歩調から漲る若々しさ。刀の重さに振り回され、足取りが稀にもつれそうになっている所を見るに、幼年であろうことは想像に難くない。
影は劔の元まで行くと跪き、捧げ奉るかのように両手に乗せた刀を、スイ、と劔へと差し出した。
劔の表情から笑みが消える。
彼は何も言わず刀を受け取ると、間を置かず抜刀する。鯉口を切る清廉な音と共に表れ出でた刀身が、鞘からその身を表す先から、黒々と染まっていく。
それは劔の左腕のそれと同じく、光を反射せぬ黒。竜の力の影響を受けている事は、誰の目にも明らかであった。
「祢々、これをソウジに。対話も許可する」
 一歩、進み出た劔は振り向きもせずに言う。そして後ろでに鞘を差し出し、落す。
祢々と呼ばれた影はそれを危なげなく掴むと、音もなく遠ざかって行った。
劔はそれを気配でもって確認すると、再び一歩踏み出す。つつ、大きく息を吸い込み、次の瞬間、それを全精力をこめて吐き出した。
「露払衆、任務復唱!」
 すると、跪いていた二十三人の黒装束たちが一斉に立ち上がり、右手で作った拳を、心臓の位置に叩きつける。
「非戦闘員の保護、並びに四拾七氏配下の排除であります!」
 先ほどと同様、一切乱れぬ完璧な斉唱であった。それを受けて、劔は一歩進みつつ、続ける。
「然り。これは露払衆最後の任務である。今日を堺に、伏神という呪はこの世より消えうせる。汝ら二十四剣、皆押並べて人へと還るのだ。一本たりとも折れること許さぬ! 散れ!」
「応ッ!」
 一陣の風と共に、二十三の影と、夕霧はその場より掻き消えていた。

410数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:25:19 ID:vuZYJwwA0
「狗の躾が行き届いているようだな、伏神劔。頭領冥利に尽きるか?」
 竜が嘲る。
その言葉に劔は憤るどころか、興味深そうに目を細めた。
「それを知っているという事は、貴様どうやら四拾七氏、ないしそれに近しい者、という事らしいな。一つ聞きたいことが出来たぞ、竜」
「答えると思うか?」
「答えぬのならそれでもいい。だが問わせて貰う。――お前は五年前、もうこちらに来ていたか?」
 問いの意味が、理解できなかった。
蒼竜は怪訝そうに顔を歪め、無言だ。
劔は答えろと催促するでもなく、しばらくその表情を眺めていたが、やがて「……そうか」と小さく呟き、安堵にも似た表情を浮かべた。
「どうやらお前は、五年前の儀式とは何のかかわりも無かったようだ。良かったな、竜。貴様は一度殺すだけで済ませてやる」
 右手に携えた刀を腰溜めに構え、伏神劔は轟然と言い放った。
蒼竜は、嗤う。笑う。哂う。
「図に乗るなよ、狗め。竜の力の片鱗を振るえるだけで得意顔とは、片腹痛いぞ!」
 両翼が広がり、旋風が劔の頬を撫でた。
その風の中に、どこか刃めいた寒々しさを感じつつも、伏神劔は不動だ。その瞳に一片の容赦も、油断も無い。
「伏神家終代当主、伏神劔。一刀、馳走仕る……!」

411数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:25:44 ID:vuZYJwwA0
身内の醜態というものは、時として自分の痴態を拝まれるよりも心にクる。それを俺は今、痛いほど実感している。
朝霞はまだいい。実態がどうあれ、対外的には彼女は身内だ。だからこれはまだ大丈夫だ。何が大丈夫なのかは自分でも分からないが、兎にも角にもまあ大丈夫だ。
しかし今回は事情が違う。クロガネに見られた。同校生というだけで、何の戸籍上の繋がりもない後輩の少女に見られた。
泣き乱しながら孫を押し倒す祖父の姿を。しっかりばっちり淀みなく。
「ぬわああああああんソウジいいいいいいいいいいいん!! 心配したよおおおおおん! 何でこんな所にいるんだ! いや、そんな事より無事で良かったあああああああああああああんんんん!!!!!」
 やめて。これ以上気まずい空気を流さないで。クロガネの同情的な視線が一層強くなるの。

……今の状況を説明しようと思う。
まずここは言わずもがなではあるが、山道だ。まだ伏神邸へは戻れていないが、位置関係から見てあと数分もしないうちに戻れるはずであった。
そんな俺を足止めした要素は三つ。
一つ。突如館のほうから響いた轟音と、それに伴う濃密な気配。俺はそれに覚えがあった。
「狡猾」竜ドネルクラル。学園で遭遇したあれと、その時に感じた気配は驚くほどにそっくりだった。
 唯一つ違うことを上げるとすれば、あの時よりも濃密に思えたことくらいだろうか。まるでほぼ同じ位置に、一息に二体の竜が沸いたような、そんな気配だった。
 背筋を怖気が駆け、思わず駆け出そうとした俺を押し留めるものがあった。
それが二つ目の要素。クロガネから貰った指輪が発光したのだ。
青白く光るそれに度肝を抜かれた俺は思わず足を止め、そちらに視線を向ける。すると、指輪の内部で簡易な書記魔術が起動し、空間に文字を投影し始めた。
「DS301/αSTATUEの転送を開始。指輪所持者は可能な限りその場に留まれ」
 それは機界言語の簡潔な文章だった。
DSなんたらとかいう文字列の意味はさっぱり分からなかったが、クロガネが手ずから渡してきた物品だ。危険なものという事もないだろう。
それに、たしか危険があった場合には自立兵装だかいうものを転送するとか言っていた。恐らく今から送られてくるものはそれだろう。
伏神邸の事は心配だ。それこそヒッジョォーに心配だ。が、何せあそこには伏神楯一郎というよく分からない生き物が一匹いる。すぐにどうこうなるという事はないだろう。
そう判断し、俺は指輪の警告どおりにその場に静止した。
すると数秒も経たぬ内に、「それ」は現れた。
甲冑。
ずんぐりとした形状をしてはいるが、「それ」は家にもある人間界の前時代の鎧に酷似していた。
艶めく群青色のボディ。丸みを帯びた太い手足。稼動範囲が狭いように思えるが、なぜか正座した状態で唐突に出現したことを見るに、その類の心配は必要ないようだ。
座っている状態だというのに、その頭はこちらの顔を見下ろせるほど高い位置にあり、兜の奥で妖しく光る二つの赤光に見つめられていると、尋常でない威圧感を覚える。
危険はない。それは分かっているのだが、想像していたよりも巨大なそれに思わず圧倒されてしまい、俺は何を言ったらいいかしばし迷ってしまった。

412数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:26:00 ID:vuZYJwwA0
『ミスター、ご無事でしょうか?』
「……クロガネ、か?」
 その巨体からは想像もつかない涼やかな声に、少し驚く。
『部分的に肯定です。この機体は私そのものではありませんし、私が操作しているわけではありません。
 ですが、機体を通じた通信も出来ますし、アイカメラが捉えた映像はリアルタイムで私もモニタリングしています』
 何を言っているのか、詳細には分からなかったが、文脈から考えるにこのデカブツは、携帯電話と同じような機能をも備えている、という事らしい。
『気付いていらっしゃるとは思いますが、竜が出現しました。事態が収拾するまで、この「アギョー・スタチュー」に護衛を務めさせたいのですが、構いませんね?』
 やっぱり、そうなのか。クロガネが断言している以上、あの気配は勘違いの類ではない、という事だろう。
そしてその竜は、恐らくあの無人の集落と、伏神が抱える「闇」と、無関係ではないはずだ。
それを垣間見たものが絶望し、竜へと堕ちたのか。それとも竜が何らかの目的のために、あの状況を作り出したのか。それは分からない。
が、こんな狭い世界で、二つの異常事態が全く関係ない所で進行していた、と考えるほうが不自然極まりない。
間接的にせよ、直接的にせよ、あの竜は伏神が作った物、なのだろう。
ならば、ただ何もせずに護られている訳にはいかない。
「なあ、クロガネ。俺――」
「ソウジィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」
 はい死んだ! 今シリアスな空気が死んだよ!
横合いから弾丸のように飛んできた祖父に押し倒され、俺は地面に転がる。その上に覆いかぶさるようにして伏神楯一郎は奇怪な叫び声を上げた。

 そして、冒頭の状況に戻る、という訳だ。
うーん、死にたい。機械を通じてすら伝わってくる、クロガネの哀れみの視線が刺さるようだ。

413数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:26:58 ID:vuZYJwwA0
以上
露払衆と劔に関する設定だけ個別に書きたいんだがいいだろうか

414数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:40:36 ID:2H5/4.YY0
おっつおっつ。とりあえず現実逃避の不貞寝という名の体力回復したら読んで、そこから調子次第で書き始めようかな

設定はばっちこいとだけ

415数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 13:04:09 ID:vuZYJwwA0
【露払衆】
名の通り、露を払う者達。
伏神家の影の実働部隊であり、闇そのもの。
構成員は皆名を捨て、銘と呼ばれる固有の符牒を与えられる。
例として、長船〇七や祢々切〇六など。

元々露払というのは、伏神の家が興ってから連綿と続く風習である
「真の世継に降りかかる災厄を一手に引き受ける為に産み出される子供」の事を指し
露払衆とはその世話と延命の為に傍につけられる者の事を表していた。
しかし、時代を経るにつれ、穢れ・災厄を背負った子供を寧ろ貴重な戦力として見るようになり
現在の様な形へと変質していった。
劔が頭領と呼ばれる理由もそこにある。

ある代、露払衆の頭領を務めていた当主の兄が突如反旗を翻し、実権を奪取するという事態が起こった。
当時の四拾七氏の人間によって鎮圧されはしたが、その事態を重く見た彼らと前当主により
露払の風習は凍結される次第となった。(代替手段は別に用意された)

しかし、聡治の父である巌斎はかつての伏神を取り戻さんと志し、その凍結を解除。
露払として伏神に仇為す者を悉く切り伏せよ、という思い「のみを」込めて、長男に劔と名づける。
そして聡治に兄として接させ、兄弟愛という物を学ばる事により心に枷をつけようと目論んだ。
結果は功を奏し、劔は露払の人間として文句無い働きをするまでになった。
聡里が死にいたり、聡治が家を出るまでは。

416数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 15:40:44 ID:2H5/4.YY0
K、再起動。心身ともにある程度回復したから書き始めていくわ

やろうと思った事が潰れたか……まぁいいや、切り替えるに限る
それにしても大分状況がごちゃごちゃしてきたなぁ。悉く苦手方面に傾いたから長引きそうだ

417数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 16:19:06 ID:vuZYJwwA0
げっ、マジかヤッチマッタ

418数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 16:41:07 ID:Rcy5p1520
乙ポニぜ
お兄ちゃん私設兵団持っとったんかぁ、いいね影の集団

Kとクロたん次第では俺のやりたい(放題な)展開に持っていけそうだ

419数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 16:53:33 ID:Rcy5p1520
というか確かクロガネって現地入りしてたっけか
戦闘はロボットに任せてクロガネ本人は暗躍させるのがベターかな

420数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 17:54:39 ID:2H5/4.YY0
んー……どうしようかなこれ本当に。今までで一番キツいパスかも分からん

これ露払衆は夕霧(その他周辺関係者も)確保して安全な場所まで離脱したって事でいいのかな。「周囲にまだ生き残りがいるぜヒャッハー!」な感じではなさそうだけど
とりあえず爺ちゃんGo villageにして、下山中にスタチューにPC押し付けつつ祢々回収して、屋敷突入でパスる感じかなぁ。今回は兄さんに触れないでおこう。あと学院の閑話捻じ込みどころじゃないわ
精神面が今くそったれだから、話動かそうとしたらどうしてもバッドになりそうだから、今回は暴れないでおく

421数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 17:57:41 ID:vuZYJwwA0
うん、そんな感じ。>露払衆は夕霧(その他周辺関係者も)確保して安全な場所まで離脱した
お兄ちゃんに気兼ねなく暴れさせようと思って

422数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 18:06:45 ID:2H5/4.YY0
把握。とりあえず今日中に書ける範囲でそぉい! するわ
明日以降暫くPC触れん可能性も浮上してきたしな

423数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 21:08:15 ID:ub9HU38c0

まさかここまで強いとは思ってなかったすげぇwww
一瞬に応酬が詰まってて凄いバトルだこりゃ真似できん

424数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 22:07:40 ID:2H5/4.YY0
ごめん、今日を逃したら暫く身動き出来なさそうだから短いけど区切りがいいからぶん投げる

425数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 22:08:36 ID:2H5/4.YY0
 大型犬に盛大に懐かれると、時折、こういう状況に陥るのだろう。
 問題があるとすればじゃれ付いて来るのが犬ではなく祖父である事、そして家族間で行われるには過剰なスキンシップを、知人の化身とも表現できる存在に観察されている事であろう。
 死んだ魚のような虚ろな眼をした聡治は、暫くの間現実逃避に徹する事に決めた。祖父がじゃれ付いているのは夢の話で、クロガネの機械甲冑《アギョー・スタチュー》に観察されているのも、夢の話なのだ――
 そんな訳あるかと、じゃれ付いて来る楯一郎を思わず蹴っ飛ばした聡治は、転倒の衝撃で投げ出してしまったノートパソコンへ視線を向けた。投げ出した際に近くで剥きだしになっていた岩石に叩き付けられたらしく、樹脂製の外装には一条の亀裂が走っており、閉じられていたそれを開けば、液晶画面が見事に割れていた。
 重要な情報源が失われた事に対して一瞬、思考が真白に染まる。それでも、僅かに残った理性が、授業で習ったパソコンの構造を思い返していた。
 外装も液晶画面も所詮は飾りだ。記憶媒体となる部分が無事であれば、それを他の機材と接続する事で中身を確認出来る。
 幸い叩き付けられたのは液晶側であり、記憶媒体などの重要部分が詰っている側は無傷だ。いや、外面的に無傷なだけで、中身は破損しているかもしれない。
 それでも僅かに見えた希望に平静さを取り戻した聡治は、破損したノートパソコンを抱え上げると、思わず蹴っ飛ばしてしまった楯一郎の方へと視線を向けた。
 流石にただの学生として平穏な日々を生きている聡治の蹴り程度では何ともないらしい。先程よりかは理性的な雰囲気を纏わせている楯一郎は、何事もなかったかのように立っていた。
 視線が機械甲冑の方へと向けられている。深く刻まれた皺で全盛期の厳しさが薄れたとは言えど、双眸を細めると威圧感を感じる。その正体を精査するかのような視線に、機械甲冑が身悶えするかのように身動ぎした。
 少々クロガネに言いたい事が喉元まで込み上げて来たが、嚥下。今は馬鹿げたやりとりをしている場合では、決してないのだ。
「……爺ちゃん、聞きたい事があるんだ」
 意を決して告げれば、楯一郎の視線がじろりと聡治に向けられた。先程までの孫馬鹿っぷりは嘘のように掻き消えている。代わりに存在しているのは静か過ぎる気迫だ。
 びくりと、聡治は身体を跳ねさせる。かつて伏神山に無断で立ち入って怒られた際とも違う、今まで見た事のない祖父の雰囲気に、自然と背筋が伸びる。
 暫し無言のまま聡治を見ていた楯一郎だったが、大きな溜息と共に、雰囲気が和らぐ。それでも孫馬鹿の雰囲気を感じさせない程には張り詰めた雰囲気を纏っていた。

426数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 22:08:51 ID:2H5/4.YY0
「魔界人集落まで行って、きたんだ。……何だよ、あれ? 朝霞の知り合いが住んでるんじゃないのかよ」
 兄である劔が、朝霞に嘘を教えていたという訳ではないだろう。わざわざ嘘を吐く理由もないし、電話も誰かの手助け無しでは扱えないような機械音痴が、ノートパソコンなどを置くはずがない。
 そもそも、根本的に現状を理解してなお、何もしないという事は、聡治の知る劔の性格を考えるとありえない。良くも悪くも実直な気質であり、身内となる者が蔑ろ……以前の得体の知れない状況に追い込まれているのに、何もしないはずがないのだ。
 聡治が家出して今日に至るまでに、劔が完全に変わってしまっているという例外を除けば、劔が状況を把握していないと考える他にない。
 つまり何処かで情報が改竄されており、現在は伏神家に関する雑事から離れた視点にある楯一郎ならば、という聡治の希望は、直後に潰える。
 何を言っているのだと、きょとんとした表情を浮かべた楯一郎を見て、聡治は眉を顰めた。
「聡治、何を言っているのだ? 集落はきちんと」
「だったら! ……だったら、ちょっと見てきてくれよ。俺だと分からない事でも、爺ちゃんなら何か分かるかもしれない」
 怪訝な表情を浮かべる楯一郎だったが、数秒程聡治の眼を覗き込んで、冗談で言っているのではないと悟ったのか、無言で頷く。
「……聡治は先に帰ってなさい。此処まで来たのだ、道は分かるだろう?」
「分かった。劔兄さんの方も、何か不安だからな」
 気をつけろと、短く告げた楯一郎は踵を返すなり、集落の方向へと駆けて行った。その足取りは老人にしては非常に軽快であり、はっきり言って聡治よりも速い。
 あっという間に茂みに飲まれて消えた祖父をいつまでも眺め続ける事もなく、聡治は楯一郎とは逆、麓の方向へ身体を向ける。
 そして走り始める寸前、ふと、機械甲冑へと視線を向ける。相変わらず正座の体勢だが、これは動けるのだろうかと、首を傾げかける。
『移動可能と質問前に回答しておきます。ミスター・ソウジが全力で逃げようとも、影のように追従しますのでご安心を』
 何か嫌だなと感じつつも、動けないからこの場から動くなと言われるよりはましである。
 斜面を駆け下りる最中に視線を後ろへやると、正座のまま、本当に影のように追従する機械甲冑に、聡治は思わず苦笑するのだった。

427数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 22:10:20 ID:2H5/4.YY0
2000文字って地味に一発で書き込めないのか……まぁとりあえずそんな感じでクロにパスするよ

とりあえず向こう一週間は無理っぽい。その先は分からんけど、(よほどふざけたペースで回ってこない限りは)次回までには落ち着いてるはず

428数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 22:13:54 ID:vuZYJwwA0
おお、Kの人乙
修羅場を乗り切ってくだされ

429数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 23:11:54 ID:ub9HU38c0

うーんどうしよう全く続きが思い浮かばない

430数を持たない奇数頁:2015/02/09(月) 18:22:03 ID:CM2/c0rI0
粗製K。一週間無理っぽいとは言ったが本当に一週間無理とは思わなかったぜ

クロすまんな、焦りやら何やらでやらかしちまったようだぜ……

431数を持たない奇数頁:2015/02/18(水) 10:15:01 ID:0mb1R6OU0
気付けば二週間以上すぎてたがクロたん無事かえ?

432数を持たない奇数頁:2015/02/18(水) 21:57:41 ID:TiE8okaY0
すんませんパスさせてください
タタりんお頼み申す

433数を持たない奇数頁:2015/02/18(水) 22:04:11 ID:LjcyhTw.0
お、おう
これクロたん初パスじゃね?

434数を持たない奇数頁:2015/02/18(水) 23:52:54 ID:TiE8okaY0
そうだと思う
なんか1回パスしたら癖になりそうで怖かったから今まで踏ん張ってきたけどマジもぅ無理
最近全然ここに関われてないわ

435数を持たない奇数頁:2015/02/19(木) 23:15:49 ID:dZUxbUxs0
クロたん……愛してるよ……ンヒュヒュヒュヒュ……グヒュッ……。

436数を持たない奇数頁:2015/02/24(火) 19:20:01 ID:oEjaJs420
読み返しててふと思ったが、祢々たんが劔兄ちゃんから受け取った物って、もしかして鞘だけ?

437数を持たない奇数頁:2015/02/24(火) 19:24:42 ID:Vm1LiBQ60
せやで

438数を持たない奇数頁:2015/02/24(火) 20:30:58 ID:oEjaJs420
了解した

とりあえずソウジくんが祢々たんと遭遇してものすごい外道プレイ始めたから先に西口に謝っとくわ

439数を持たない奇数頁:2015/02/24(火) 20:34:16 ID:Vm1LiBQ60
祢々の設定は身長以外一切決めてないから如何様にしていただいても構わないぜ

440タタリ 1/3:2015/02/26(木) 13:42:55 ID:9qe1ssXs0
 本家への道のりを駆け下りるにつれ、ドネルクラルの時と同じ竜の気配がより強く感じられた。
 隠密で山林を登っていた時に比べ、道なりに下りるのは流石に早い。数時間もかけた登山距離は、十数分で下山しきろうとしていた。
 本家まではもう目と鼻の先だ。本格的に本腰を入れて事態に当たらねば、俺なんて木っ端も同然だ。一度吹き飛んだ右腕を押さえながら、山道から石段に差し掛かり、
「くせ者!」
 頭上から、幼い少女の叫び声が聞こえ、漆黒の影──としか形容のしようもない──が稲妻の如き速度で木々を巡り、俺の背後を追従していたアギョー・スタチューへ飛来した。ルカとの戦闘訓練で培った俺の動態視力が、その手に懐刀らしき凶器を捉えた。
 しかし、視線が追い付くのと、反応が間に合うのは全くの別問題である。指先一本すら反応する事あたわず、飛来する影の懐刀がアギョー・スタチューのアイカメラを正確に突く。
 ギィン、と金属特有の甲高い悲鳴が朝の山林に劈く。事態を把握する暇もなく背後からの怪音に、思わず両手で耳を塞ぐという戦闘態勢にあるまじき反応を示してしまった。
「ソウジ様に近付く貴様は何奴だ」
 黒装束の少女(?)らしき人物は俺とアギョー・スタチューの間に着地し、片手を広げて俺を庇う様に仁王立ちする。一瞬だけ、もう片手に持っていた懐刀を流し見て、即座に放棄する。
 刀は折れており、影の直撃を受けたアギョー・スタチューは仰け反りつつも自動姿勢制御(ジャイロバランサー)の影響で何事もなかった様に身を起こした。そのアイカメラには傷一つついていない。
 少女とアギョー・スタチューの視線が交錯する。ビリリと空気を震わせる程の、張り詰めた殺気が辺りに充満した。
 と盛り上がってるところ悪いんだが、ここで一つばかり物申したい。俺はさっさと本家の様子を見に行きたいのだが、寄り道した魔界人集落では謎の集団失踪の痕跡を発見してしまうわ、クロガネの監視用ロボットが現れるわ、じいちゃんには押し倒されるわ、何かニンジャっぽいアトモスフィア漂う少女の攻撃を受けるわ、さっきから足止めばかり喰らいまくってそろそろストレスがマッハで堪忍袋の緒がぶっち切れそうなんだがもーどーすればいいんでしょうかねコレ。
「ってどいつもこいつもいい加減にしろよォ! 緊急事態なのに小イベント挟みまくってたら話すすまんだろうがァ!」
 俺を守る様に立ち塞がった少女と、アギョー・スタチューのアイカメラが同時に俺に向き直った。あまりに無関係かつ唐突な絶叫を予期してなかったのだろう、アギョー・スタチューは定かではないが少女の黒装束ごしに見える目がまん丸に見開かれている。
「この状況を分かりやすく喩えるなら『○○分以内にダンジョン脱出だ!』って時間制限イベントで事ある毎にパーティ会話が発生したりエスケープ不能なイベント戦が乱発してるのに時間だけはきっちりカウントされてる様なもんだぞ! しかも状況はさっぱり整理されてないのにあれこれ謎が謎を呼びまくってていい加減フラストレーション溜まりまくるわ! 小イベント起こすならせめて一度に全部済ませろチックショウ! もはや何が何だかもうワケ分かんねぇよ!」
『ミスター。あまりの展開に錯乱されてる事については心中お察ししますが、錯乱しすぎて貴方の言動こそ理解不能です。ほら、木々の隙間から澄み渡る青空を仰ぎ見ながら深呼吸して落ち着きましょう、ヒッヒッフー』
 俺の発狂じみた叫びとアギョー・スタチューから響く冷静なボケ倒しが飛び交う中、突如現れた少女はこの事態をどう処理したものか判別つかなかったのだろう、先程の剣呑な態度とは打って変わり急にオロオロしだした。アギョー・スタチューに対する妙な敵意とか、この現状に対応できず全部吹っ飛んだらしい。
 彼女が何者かは知らないが、この後に及んで竜以外の存在が現れたという事は、彼女は味方……とまでは言わずとも、少なからず敵ではないだろう。現在の伏神家は全て敵だと仮定するなら、さっきから俺を守ろうとしている素振りも鑑みて兄さんの関係者かも知れない。

441タタリ 2/3:2015/02/26(木) 13:43:41 ID:9qe1ssXs0
「本家はすぐそこだし、重要なイベントが盛りだくさんで進む前に、ここらでいったん総集編(セーブ)しとくぞ! ここから先はノーリターンポイントっぽいしね!」
「え、あ、うぇ?」
 オロオロする少女。思考はほどよくフリーズしかけてる模様。よし、俺とクロガネの華麗な機転で、便利なイベント進行係を獲得できた。いや半分くらいは本音だが、もうこの際、利用できるもんは出涸らしになるまで利用してやろう。俺もワルよのう。
「はい、それじゃまず、君の名前と所属は?」
「う、あ、……露払衆の一振り、の……祢々、です」
 ようやく自分でも理解できる言語での話になったと思ったら、いつの間にか尋問されてる現状に脳が追い付いておらず、しどろもどろに答える事しか出来ない少女・祢々。嗚呼おいたわしや。でもそんなん俺にはカンケーないもんね! こちとら帰省途中から今の今までトラブル続きで八つ当たりできるなら何でもいいわ!
「そっか、祢々ちゃんね。……女だよな? 俺らはこれから伏神の家のゴタゴタにクビ突っ込もうと思ってるが、あんたはいったい何しに来たんだ? つーか味方なのか?」
「は、……はっ! 劔様の指示により、ソウジ様を筆頭に、伏神本家に残っていた非戦闘員を安全な場所まで誘導する任を仰せつかっております!」
「やっぱり兄さんの関係者か。しかし、何だね。君の受けた任務を完全に無視する形になって申し訳ないんだが、俺は本家に行こうと思うんだ」
「なりません! 現在、劔様は蜥蜴の様な奇怪な物の怪と交戦しております! ソウジ様は事態が収拾するまで御身の安全を最優先すべきです! その為に私が参りました!」
 ここに来てようやく理性を取り戻した祢々ちゃんが、膝を突いて頭(こうべ)を垂れながら、真摯に意見を述べる。うぅん、もうちょっと混乱してくれてた方がこちらとしても話が早くて助かるんだが。
 しかしトカゲの化け物ときたか。これでクロガネと祢々ちゃんの双方から、異なる経路で竜の情報が出てきたとなれば、もう疑いの余地はないな。非常に不本意だが、竜の恐ろしさは身を持って理解している。仮に今回出現した竜がドネルクラルと遜色ない暴威であるとするなら、それを屠るには同じく竜でなければ叶わぬだろう。
 その予測を力業でなんとかしてしまいしうな理外の埒外の存外な化け物は、さっきすれ違ってしまったところだ。
 祢々ちゃんの剣幕に圧倒されてしまい、話の取っ掛かりを見失ってしまった感は否めない。服従のポーズのまま微動だにしない祢々ちゃんをどうしたものか、アギョー・スタチューに視線を送る。無言のまま、チュインチュインとアイカメラが明滅する。俺の判断に任せる、って意味と受け取ろう。
「とりあえず、現在の戦況を整理しよう。まず家の方では兄さんが竜と交戦中、俺とクロガネ──そこの機界の傀儡は俺の仲間だ──で竜退治に参戦しようと思ってて、爺ちゃんは魔界人集落の調査、夕霧さんや朝霞は露払衆とやらに避難誘導されてると。……伏神の老害連中はどうしてる?」
「劔様の手により」
「なるほど。邪魔だてはないって事ね。……魔界人集落の集団失踪と、集落に安置されてたノーパソの謎が残ってる訳で……そうだクロガネ、アギョー・スタチューでこのノーパソを解析できたりしないか?」
『戦闘機能に重点を置いた機体ですので、高度な電脳魔法(ハッキング)は行えませんが、一応の申し訳程度の機能なら備わっております』
「構わない。謎を謎のままにしておくのはどうも性に合わなくてな。一歩でも前進できるきっかけになるならそれに越した事はない」
 手荷物になっていたノーパソをアギョー・スタチューに投げ渡す。巨体のずんぐりした指で器用にノーパソをキャッチしたアギョー・スタチューは、腹部のコンソールを開いてノーパソを繋ぎ、そのまま収納した。放電しきっていたし、まずはアギョー・スタチューからある程度電力を供給しなくては起動すらできないだろう。
 さて、ここからが本番だ。

442タタリ 3/3:2015/02/26(木) 13:44:29 ID:9qe1ssXs0
「時に祢々ちゃん。君は俺を安全な場所まで避難させる事が任務なんだよね」
「肯定です」
「聞きたいんだが、安全な場所ってのはどこを指してるんだい?」
「はっ? いえ、それはもちろん上伏の町ですが……」
「そこに敵性戦力はいないと言いきれるかい? 今朝方、俺は諸事情により書記魔法の地雷原を時には無力化し、時には迂回して山林を歩き回っていたんだが、俺とは別の不審人物が地雷を起爆させていた。これは兄さんや君たちにも認識できていない勢力がいるって事にならないかい?」
「そ、そんな事が……ですが、しかし……」
 まぁ、地雷に引っかかってた奴はだいたい想像つくんだがね。というか不本意ながら知人だ。言わないけど。
「そこのアギョー・スタチューは恐らく、君よりよほど戦力になるのは、先の不意打ちで理解しただろう? 俺としては今しがた初めて存在を知った露払衆よりよほど頼りになる護衛なんだが、君たち露払衆がアギョー・スタチューより有能である証明はできる?」
「あぅ、あぅう……」
「一連のやり取りを見ていただろう? 魔界人集落に不審な機械があって、それを解析もしてくれるのがコイツだ。戦闘力も君が不意打ちで証明してくれた通り、ちょっとやそっとじゃ傷一つつかない。加えて、麓の町には君たちが認知できていない伏兵がいないとも限らない。状況の変化をいっさい無視して何かあった場合に君は責任を取れるのかな? 切腹一つじゃ済まないんじゃないの?」
「う、う、……ひぐっ」
「ああ、勘違いしないでくれ。君が悪い訳ではないし、責めてる訳でもない。ただ戦況は絶えず変化する。受けた任務を第一に遂行する事が兄さんへの忠誠心という訳ではなく、柔軟に対応して任務を完了する事こそ至上だと思わない?」
「ぐす、ひっく……そ、ソウジ様、の……お、っしゃる、通り、すん、です……」
「何より、俺は兄さんの勝利を確信しているが、万に一つも兄さんが負けてしまえば上伏の地のどこにも安全地帯なんてないんだ。だったら、万が一をなくす為のささやかな手助けをしたいんだが、君はどう思う?」
「そ、そんな事、私には、決め、決められ……ふぇえ……」
「もちろん、君にも立場はあるだろう。だから折衷案だ。君はこのまま俺を護衛してくれ。そして、俺は現在この場で最も安全だと思ってる兄さんの元へ行く。そしてこの機械には兄さんの手助けをしてもらおう。現状を客観的に鑑みて、最も効率の良い行動だと思うけど、どうかな?」
「くすん、ひぐっ、うええええん!」
 こちらの理論武装に対抗できるだけの要素を持ち合わせておらず、覆面の内側で号泣し始めた祢々ちゃん。アギョー・スタチューのアイカメラがめちゃくちゃ非難がましい冷たい視線を送ってくるがガンスルーでございます。勝てばよかろうなのだ。
 泣きじゃくる少女の手を引き、その背後にアギョー・スタチューを侍らせ、俺はようやくこの場を収められた事で後腐れなく決戦に臨む事ができようと言うものだ。
『……幼い少女を言葉責めで泣かせて悦に浸るとは、なかなかの弩クソ変態ヤロウですね。ミスターの評価を大幅に改めざるを得ません』
 緊急事態ゆえ致し方ない。ここは超法規的処置って事で温情を要求する。

443数を持たない奇数頁:2015/02/26(木) 13:47:43 ID:9qe1ssXs0
ソウジくんド変態外道プレイにハマるの巻

どあにん任せた

444数を持たない奇数頁:2015/02/26(木) 14:34:50 ID:2bCFyFLQ0
タタリン乙
やっぱりソウジくんは変態じゃないか(呆れ)

445数を持たない奇数頁:2015/02/26(木) 15:06:04 ID:9qe1ssXs0
鞘について完全に失念してた
まぁ祢々ちゃんそれどころじゃなかったしいいか

446どあにん:2015/02/26(木) 18:02:35 ID:q9XhsW7U0
承った
じっちゃと三馬鹿の話を進める 予定だ

447どあにん:2015/03/07(土) 20:44:23 ID:sebwPvW60
進捗は思わしく無いが……なんとか間に合わせる

448数を持たない奇数頁:2015/03/07(土) 22:35:43 ID:pkSchBqQ0
ツクールで忙しそうだし、実際忙しいだろうから無理ない範疇でね

449数を持たない奇数頁:2015/03/07(土) 22:46:49 ID:VfwCi7Jw0
無理そうなら西口にブン投げればいいよ

450数を持たない奇数頁:2015/03/08(日) 18:15:58 ID:VUmtoc7Y0
「ドアニン=サンは甘えが酷すぎる!いやーっ」

451どあにん:2015/03/11(水) 23:22:02 ID:jIzmNyJw0
明日くらいにはできそうデェス

452数を持たない奇数頁:2015/03/11(水) 23:52:01 ID:dPJL/oes0
やったぜ。

453どあにん ◆kCddW1pw9Q:2015/03/12(木) 17:29:42 ID:9irJEW5o0
「面妖な……」

伏神楯一郎の息は切れていない、衣服の乱れすらも無い。
土を盛り固めただけの道路を踏み締め、吹き抜ける風が若干火照った身体を撫でる。
目の前に広がる廃墟は確かに楯一郎が最終決定を下し、楯一郎の命によって集った大工達が建てた家々がこんなにも前時代的で、粗末な物だとは思わなかった。
当然そこに住まう者が誰も居ない、不気味な静けさだけが集落を包み込んでいた、集団で逃げたとは考えにくい。
ならばと一縷の望みに賭け、楯一郎は大きく息を吸って一瞬押し留めた、刹那。

――山が、震えた。


超人的な肺活量から繰り出された呼びかけの声。
発声の衝撃で近場の木は薙ぎ倒され、脆くなった壁は粉々に砕け散った。
これだけの声で呼び掛ければ何かしらの反応が得られると睨み、その目論見は功を成した。
当然、楯一郎が望む結果では無く。
楯一郎の背中に突き刺さる何者かの視線、それも一つ二つでは無い。
両の手を使っても到底数えきれる数では無い、入り交じる好機と殺意の目線が無数に楯一郎の背に突き刺さる。

「……成程、此処の者らは皆、"羽蜥蜴"の腹の中、と言う訳か」

薄暗い中でも視認した、集落中央にあった祭壇ににあるべき物が何も無い。
大凡察しが付いた、道理であの耄碌達が集落の場所だけは一任させて欲しいと懇願してきた訳だが、鬱陶しいし小事なので一任させたのは失敗だった。
愛しき孫はこの光景を見てしまったと言う事か、後で時間を掛けて謝罪せねばなと呟いたその時だった。
藪が震え、何かが楯一郎に向かって飛び出す、赤い瞳をギラつかせ純白の牙をその肌に突き立てんとするもそれはならなかった。
楯一郎は一瞥すらせずに裏拳でそれを払うと触れた箇所は一瞬で血霧となって墜落、足元に転がったそれは青い鱗に覆われており羽の生えた、小型の竜。
兄弟と言うべきか、それを殺されたのを切っ掛けに方八方からそれが一斉に飛び出し、楯一郎に向かってくるがその表情には曇りすら無い。

「羽蜥蜴の仔か、準備運動にはなるだろう……伏神家27代目頭首:伏神楯一郎の命、簡単に取れると思うな仔蜥蜴達よ」

ガラスを硬い物で引っ掻くような鳴き声が増えていく。
まずは此処を切り抜ければなるまい、楯一郎は拳を構えた。

454どあにん ◆kCddW1pw9Q:2015/03/12(木) 17:30:12 ID:9irJEW5o0


時は少々遡る。
先頭に立つジョエルは山刀で邪魔な枝や藪を切り拓き、その後をリョタとフィルが追いかける。
甘味処でソウジ達と別れ、店仕舞いと明日の開店準備を済ませてから家を出た為、日は沈みかけていた。
麓の店で山刀と光源、買えるだけの食糧等を買い込んで3人は伏神山に眠る秘宝を求めて出発した。
とは言え、何処に秘宝が眠っているかも分からない無計画な行進なので道無き道をジョエルの勘頼りに突き進む。
左手は創造魔法の初歩中の初歩・光源で辺りを照らしながら、ジョエルはポケットに押し込んでいたチョコレートバーを取り出し、封を切って口に運んだ。

「俺の勘だと、そろそろ何かがありそうな気がするんだがな!」
「とか言ってオメーの勘の的中率20%ぐらいじゃねーか!」

ようやく追いついたフィルが汗を拭いながら水を飲み下す。
体力自慢のジョエルやリョタはともかく、フィルは体力が無い為どうしても行進が遅れがちになる。
足手まといにならないようにと、自分に言い聞かせながら岩に腰掛けた次の瞬間だった。

「あ……っ」

岩が崩れ、フィルが斜面を転がり落ちる。

「フィル!?」

リョタが叫び、ジョエルがすぐさま斜面を下るも間に合わない。
7mほどを転がり落ちるも、幸い途中の木々や岩にぶつかる事は無く、軽傷のみで済んだが全身を打ったのですぐさま動く事はできない。

「フィル!大丈夫か!?」
「大丈夫……ですけど、少しこのままで……」

少しずつ自分のペースで息を整えるフィル、遅れてリョタが斜面をゆっくりと降り、フィルに操作魔法:痛覚軽減を掛けてやる。
脳を非常に軽い麻痺状態にさせ、痛みを和らげる魔法であるがこれが功を成した。
さほど時間も掛からずに自力で立ち上がれるまでに回復したフィルが身体に付いた土を払っている途中、不意に前方に何かがあるのを見つけた。

「んっ……あれは……」
「洞窟だ!すげぇなフィル!」
「お宝の匂いがプンプンするぞ!行くぜ!」

455どあにん ◆kCddW1pw9Q:2015/03/12(木) 17:30:28 ID:9irJEW5o0


フィルに降りかかった災いが転じて福を成した。
未踏の地にて獲物を待ち受けるかのように拓けた洞穴を、3人は躊躇いなく突き進む。
……と言えど、3人が期待したようなシチュエーションなど用意されてなどいない、
様々な殺人的罠、突如崖が崩れてしまい、落ちそうになった仲間を二人がかりで救出する等所詮物語だけのシチュエーション。
奥に突き進むにつれ、明らかに人の手が加わった掘り方へ変わっていくだけにとどまったのだ。
心底つまらなさそうに歩みを進める三人の目の前に、錆びた鉄の門が姿を現したので三人は一瞬だけ顔を見合わせ、一切の躊躇いも無く門を開いた。
待ち構えているのは秘宝を護る守護者か、それとも罠かと期待するもそれすらも無く、だだっ広い広間の中央に灰色の台座が存在するだけの場所だった。

「おいおい、此処まで何のイベントも無いとかつまんねぇぞ!?」
「まー物語のように宝を護るドラゴンとかそういうのが無いだけラッキーじゃね?」

ジョエルをリョタが宥める間、フィルだけは一人中央の台座へと歩み寄って確認する、台座に安置されているのは一冊の分厚い本。
表紙の文字は掠れて読み取れないものの触っただけでも理解出来る、これこそが伏神山に眠る秘宝、賢者の書物なのだと。

「これが……賢者の書……!」

フィルの心臓が高鳴る、一体どのような内容なのか。
ジョエルとリョタも駆け寄って来たので、三人で本を持ってページを開こうとした、その時だった。
部屋が揺れる、それも尋常じゃない揺れ、まるで山全体が揺れているかのような強烈なそれ。
立っていられず転ぶ三人に襲いかかる不幸、それは来た道が崩落してしまい、道を完全に塞がれてしまった事。

「おい、やべぇぞ!帰れなくなっちまった!」
「マジかよ!?クッソォ!こういうタイプの罠かよ!?」

慌てるジョエルとリョタ、フィルは賢者の書物をバッグの中へ仕舞いこんだ。
フィルとて帰れずこのままこの洞窟で朽ち果ててしまう恐怖に駆られたが、だからこそ冷静になるべきと踏んでいた。
呪詛魔法:振動断絶を展開、ジョエルとリョタの口周りの空気から振動を伝える能力を奪う……即ち、声を発しても音が伝わらない状態へと変化させたのだ。

「慌てないで、静かにして……こういう時こそ冷静にならなきゃいけないよ。
 確かに僕達は閉じ込められてしまった、けど……耳を澄ませてみなよ、何かが……聞こえないか?」

不気味なほどの静けさが包み込む空間の中に混じる、微かな風の音。
フィルはその微かな風の音が発せられる場所へとゆっくりと近づき、手を触れた時だった。
緑色の紋章が一瞬浮かび上がったかと思った刹那、岩肌と思われた場所に人一人がやっとくぐれる程度の大きさの扉が、姿を現した。

「ほらね、何か微かな魔力を感じると思った……きっとこの扉の先が、外に繋がってると思う」

フィルが扉を開けると同時に呪文を解除、ジョエルとリョタがその後を追って走りだした。

456どあにん ◆kCddW1pw9Q:2015/03/12(木) 17:31:37 ID:9irJEW5o0
時間掛かった割にはここまで言う体たらく&爺ちゃん無双の前準備
次回かこの物語終了間際に賢者の書の正体判明させてシメたい所

457数を持たない奇数頁:2015/03/12(木) 23:05:39 ID:0uykbGaE0
どあにん乙、仔ドラゴンの登場で今お兄ちゃんと戦ってる竜の設定固まったわ

そういやKの人に聞きたいんだけど、現状の展開で困ってる所ってどこ?
出来る限り解消して渡したい

458数を持たない奇数頁:2015/03/13(金) 07:04:23 ID:RxIz7Yzo0
乙ポニ
子ドラゴンときたかー
俺の考えてたのよりだいぶパワーダウンしてるけど、想定の範囲内ではあるなー

459数を持たない奇数頁:2015/03/13(金) 13:09:50 ID:TR2U2xuU0
ぼくのかんがえたぜつぼうてきなシチュエーション

お兄ちゃんとアギョーがどうにか蒼竜を倒したと思ったら、三十体くらい同レベルの蒼竜が空を覆いつくしてた
全蒼竜の意識はノーパソにバックアップされてて(情報思念体が本体)、全部が意識を共有してる
数体がお兄ちゃんやアギョーに襲いかかり、残り全部が上伏町を襲いに行く
的な絶望的な状況にしようと思ってた

460数を持たない奇数頁:2015/03/13(金) 14:08:39 ID:0h7SX3/60
どあにんおっつおっつ

前回のは精神状態がF×CKな事になってたからなぁ
まったく困ってるっていう訳ではないから、西口がやりたいようにやれば良いんだぜ?

461数を持たない奇数頁:2015/03/13(金) 21:29:10 ID:.jMouO/60
今お兄ちゃんどんな服着てたっけ

462数を持たない奇数頁:2015/03/13(金) 21:40:03 ID:0h7SX3/60
まぁ本音を言えば西口でお家騒動編終わらせてくれても構わんのだぜ?

勝手に豪華な剣道着っぽい服装を想像してた

463数を持たない奇数頁:2015/03/13(金) 21:43:02 ID:.jMouO/60
おk、進行速めよう
流石に終わらせるのは無理だが、とりあえず聡里が何で死んだのかとかは全部説明しちゃおう

464数を持たない奇数頁:2015/03/13(金) 21:49:25 ID:0h7SX3/60
(ぶっちゃけた話、クロガネの話はダークファンタジーで兄さんの話はラブコメだって話してた頃、兄さんじゃなくて聡治の方に許婚発覚にしようかなーと考えてたりした)

とりあえず、最悪の場合は学校の方の話を書いてお茶を濁そう

465数を持たない奇数頁:2015/03/16(月) 22:15:11 ID:xT7uMDAY0
割と色々設定をはっつけたり、前まで考えてた設定をぶん投げることになるかもしれん
まあ今から書き始めるから、出来上がる頃にはどうなってるかは知らんがな!
はい、できる限り速く書きます

466数を持たない奇数頁:2015/03/17(火) 00:39:34 ID:lMcBdNtU0
ドネルケバブって何で本盗んだんだっけ

467数を持たない奇数頁:2015/03/17(火) 01:09:17 ID:lMcBdNtU0
ちょっと読み返してみて思い出した
多分ダミアンが一番かいてて楽しい、可愛い

468数を持たない奇数頁:2015/03/17(火) 01:26:29 ID:7E2VOiLk0
白龍の座に自分をねじ込もうとした

469数を持たない奇数頁:2015/03/17(火) 07:35:00 ID:3u8IOnl60
ねじ込もうというか、同じ領域に立つ為じゃなかったっけ?

470どあにん@仕事中:2015/03/17(火) 19:13:16 ID:2WHYUX4U0
不完全な竜だから禁書の力を使って
神と崇め奉る龍になろうとしたんよ

あとダミアンくんに友達が出来てなにより

471数を持たない奇数頁:2015/03/17(火) 22:28:14 ID:lMcBdNtU0
競作と並行して進めるから、いつもより大分かかりそう
パスはせんがね。すまん

472数を持たない奇数頁:2015/03/19(木) 20:35:29 ID:I6ozBrCY0
今ようやく7KBちょっと
大体予定の3割弱程度は書いたから、かかっても来週の今くらいには行けるかもしれない(行けるとは言ってない)

473数を持たない奇数頁:2015/03/19(木) 23:24:46 ID:I6ozBrCY0
何とか12KB。
そろそろ一区切りつくが、流石にそろそろサトリの死んだ理由とか説明したいからもうちょっと書くぜ
もうちょっと待っててKの人

474数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 12:47:02 ID:wPzqGEho0
ああダメだ、書けん聡里関連の話
前言翻すようで情けないが、6時ごろに途中で投下しますわ
待たせたのにすまん

475数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 12:57:36 ID:jJYoYVwU0
これは6時128分の流れかな?
まぁ年度末+競作で少々ばたばたしてるからゆっくり書いていくわ

476数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 13:07:23 ID:SbDCEDIQ0
ヒャアー待ちきれねえぜ!

477数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:25:29 ID:wPzqGEho0
用事できたんで今から投下するわ

478数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:25:52 ID:wPzqGEho0
 右前肢を軸に、周囲一体をなぎ払うが如き尾撃を放つ。
 その速度は疾風と称して然るべき程のものであり、伏神劔も回避する事が叶わなかった。
 ギャリィ、と硬質な音が響くと共に、竜の蒼穹めいた竜鱗と、尾に対して垂直に立てられた劔の黒刀とが激突し、火花が散った。
 一瞬だけ耐えるが、もとより質量に差がありすぎる。地から足が浮いた劔は、尾の勢いに捕らえられて一回転、茶室の壁に叩きつけられた。
「遅いなぁ、狗」
 蒼竜は嘲笑う。追撃をかけようともせず、不動である。
 必要ない、と思っているのだろう。総身に、傲慢とでも形容すべき自信が漲っていた。
 ガラ、と瓦礫を踏み分け、伏神劔が今しがた新たに穿たれた穴から、のっそりと出る。
 その所作はどこか大儀そうだが、外傷は見当たらない。ただ眉を顰めて、漆黒の竜鱗に包まれた左腕を開閉していた。
――些か、鈍い。
 伏神劔は考える。これは果たして内に巣食う竜の抵抗によるものなのか、それとも蒼竜の能力によるものなのかを。
 恐らくは前者なのだろうが、かといって後者の可能性も切り捨てられない。竜の力というものは全く馬鹿馬鹿しく、想像や想定など無意味なのだから。
 敵対生物への重圧の負荷。機動の制限。そういった類のものがあると想定して動こう。
 即決、即断。
 時間経過によって効力を増す呪詛があるのならば、様子見は最小限に留めるべきだ。劔は地面を蹴り飛ばし、吶喊する。
 だがそれを予期していたかのような、横薙ぎの爪撃が迎え撃つ。
 視界がそれを捉えるよりも早く、頬を撫でる風よりその動きを劔は感じ取る。先ほどと同じように黒刀を立て、防御する。
 刀にかかる凄まじい重圧に、しかし今度は逆らわない。あえて地面をけり、蒼竜の腕の進行方向へと跳躍した。
 空中に投げ出されるが、損傷は軽微。器用に体勢を整えた劔は、危なげなく着地した。
 だが勢いを殺しきれずに少しの間地面をすべり、次手を打つまでに一瞬の間が空いてしまう。
 致命的。そう判じたのだろう、蒼竜は既に動いていた。
 両翼を広げ、低空飛行。開け放たれた口腔には、剣呑な輝きを湛えた牙が、幾十も生え揃っていた。
 その速度は、やはり電撃的。
 だが、悪手であった。
 蒼竜の息がかかり、その巨大な口の投げかける影に全身がすっぽりと覆われた瞬間、劔は動く。
 あらん限りの力を込めて地面を蹴り飛ばし、思い切り横合いに飛んだのだ。
 強化された脚力は容易にその体を危険域から逃す。傍らを、巨大な影が通過しようとしていた。
 爬虫類めいた構造ゆえに、上顎に視界を遮られた竜には、その姿は視認できない。
 閉じた口は虚空を切り、驚愕する間もなく、伏神劔の姿が蒼竜の視界に入る。その時、既に振るわれていた黒刀を防ぐ術を、竜は持ち合わせていなかった。
「ッッガァァァァァァァァ!!」
 思わず閉じた瞼ごと、蒼竜の右目の眼球が切り裂かれた。
 爪を、尾を滅茶苦茶に振り回し、何とか報復を遂げようとしたが、無意味。飛んでいた事が仇となった。
 姿勢を低くした劔にそれらは全て掻い潜られ、苦もなく距離を取られる。
 二の太刀を警戒した竜はそれ以上の攻撃を諦め、大きく飛翔した。
 蒼穹に翻る一対の翼。空を制された構図となったが、実態は大きく違う。「空に追いやられた者」と「追いやった者」だ。
「人、間、風情がぁ!」
 威圧的な咆哮。だが、劔は表情を変えず、ただその姿を眺めているだけだ。
 演技をしている、様には見えない。心底から追い詰められた、獣の様な表情をしている。
 そもこの重圧があの竜に因る物だったとしたら、こうも早くあそこまで無防備な姿は晒さないだろう。
 となるとこの身を戒める重圧は、忌々しくも内なる竜の仕業か。だがそれにも、幾分か慣れてきた。
 次はもう少し巧く動けるはずだ。
 そう確信を得ると共に、劔の胸中には一つの懸念が浮かび上がっていた。
 蒼竜の、能力が分からない。
 もとより重圧が能力ではないだろうと思っていたし、不要な仮説を切り捨てられたのは収穫とも言えるかもしれない。
 だが、やはり敵の手が見えないという状態は気色が悪い。体の使い方が分かってきた今、様子を見るべきだろうか。
 竜に対して半身に構え、黙考。その間も、竜は咆え猛り狂う。
「肉を削ぎ、骨を砕き、臓腑を潰してくれる! ただで死ねると思うなよ、苦痛の渦の中で、千々に砕いて」
「喧しい。さっさと来い」
 竜鱗に覆われた左腕を、クイと引く。空気が震え、竜の怒気が膨れ上がっていくのが、手に取るように分かった。
 急降下。迫り来る脅威を、伏神劔は極めて冷静に見据えていた。

479数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:26:31 ID:wPzqGEho0

「竜の性質、というものについてお話していませんでしたね、ミスター」
遡る事十数分前。伏神山を駆け下りる道中で、アギョー・スタチュー――クロガネは唐突にそんな事を言い出した。
「いえ、唐突ではありません。そもそも身分を明かした時点で語るべき内容でしたから」
 タイミングを逸してしまい、今までお話出来ませんでしたが、とクロガネは続ける。
「性質、っつっても大概の事は聞いてると思うけどな。人にとり憑いて、その存在を喰らって、こっちの世界に出てくる化物、だろ?」
「それが全て、という訳ではありません。例えば、竜がその存在を取り込んでいくプロセスなどは教えていないはずですが」
「いや、そりゃ聞いてないが……。そもそも、それって知る必要あるか?」
「はい。ミスターの身の安全のためにも、そのエゴを満たすためにも」
 何だよエゴって。肩越しに振り返り、眉を顰めて聞き返すソウジだが、クロガネは素知らぬ顔でそっぽを向き、アイカメラをチュインと動かすのみであった。
 ソウジは大きくため息をつくと、渋々といった口調ではあったが、話してくれと頼んだ。
 いいでしょう、と何故か鷹揚に頷くクロガネ。少々ひっかかりはしたが、話の腰を折るほどの事でもないので、ソウジは黙っている。
「まず如何な竜とはいえど、とり憑いた人間の精神を即座に掌握できるわけではありません。というより、強く拒絶されれば排除されかねないほど微かな存在なのです」
 クロガネ曰く、人の精神世界というものは砕くことは容易であるが、乗っ取るとなると相当な手間がいるのだという。
 しかし精神が壊れては、竜が居つく世界も壊れるという事。それは紛れもない自殺行為であるため、竜は滅多な事ではその愚を犯さない。
 だから竜はこっそりと精神世界に留まり、宿主に取り入るのだ。
「取り入る?」
「竜は大きな渇望を抱えた人間にとり憑き、それを埋める為の力を貸与します。力の貸与、これは即ち竜と宿主との結びつきを強めるための行為であり
 その囁きに乗り、力を振るう度に竜は深く精神世界に食い込んでいき、その活動域を広めます」
「それは、つまり……」
「はい、人格を貪られていく事を意味します。感情や思考回路に変質が生じ、往々にしてより渇望が強まります」
 例えば、ドネルクラルに憑かれた風紀委員、伊庭甲子郎。彼が抱えていたものは、異常なまでの他者への羨望だ。
 嫉妬と自己嫌悪、承認欲求と変身願望の入り混じったそれは、ドネルクラルの付け込む絶好の隙だった。
 才能、記憶、経験などを含む、あらゆるパーソナルデータの窃盗。伊庭甲子郎が心底欲した物だ。
 だがそれには、対象を殺害しなければならない。
 葛藤もあっただろう。倫理観がブレーキもかけたろう。
 しかし結局、彼は何人もの人間を殺し、その顔を奪い取っていった。

480数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:26:42 ID:wPzqGEho0
「最後にどうなってしまったかは、わざわざ語って聞かせるまでもないでしょう」
「自業自得、っつうにはあんまりにも理不尽すぎるな。望んで手に入れた力じゃねえってのに」
 同感です、と黒い甲冑は首肯した。
 人間ならば誰しも、「表に出せない望み」などというモノは多かれ少なかれ抱いている。
 そしてそういう望みは往々にして、他者に苦痛を強いる物。故に表に出せず、また社会もそれを望んでいる。
 そういった望みを持つこと自体を、一体誰が責められよう。そういった自己中心的な考えの一切ない人間のほうこそ、寧ろ気色が悪くさえある。
 重要なのは、それを己のうちへ押し込めているかどうかだ。
 その為にこそ「モラル」や「良心」というものがあり、そして人は「諦める」事が出来るのだ。
 それがあるから、「ヒト」は「人間」たりえる。社会を築き、その一員として生きる資格を持つのだ。
 だからこそ竜の力は、条理を犯す力はあってはならない。
 それは「人間」を「ヒト」へと、獣へと堕とす力だ。人間が培ってきたモノを、無為へと帰す力だ。
 こうまでも「人間の仇敵」という言葉が合致する存在を、伏神ソウジは未だかつて聞いた事がなかった。
「だからこそ、竜は撃滅しなければなりません。出来る事ならば、ミスターにも近寄っては欲しくないのですが……」
「言われなくたって、あんなヤバイ奴らに自分から関わったりなんかしねえよ」
「例えばルカ氏。例えばエクリエル委員長。ご友人があれに襲われるとなれば、たとえ怪物の腹中であろうと飛び込んでいく種類の人間である、と私はミスターを認識していますが」
 違うのですか、と聞かれソウジは言葉に詰まった。
 反論する材料が無い、というか、似た様な事を既にやってしまっている。
 あの時は、こんなに常識はずれな存在が相手だとは思っていなかった、と言い訳することも出来ないではない。
 が、仮にもう一度あの日へ戻ることが出来たとして、二人が害されるのを指を咥えて見ていられるかと問われれば、断じて否という他なかった。
「それでも構いません。以前にも言った通り、貴方の自由を侵害するつもりはありませんから。
 ですがこれも以前言った通り、私は貴方を守ります。ですから貴方が無茶をすれば無茶をするほど、私の身にも危険が降りかかるという事をお忘れなく」
「……善処するよ」
 期待していますよ、とアイカメラをチュインと動かすと、更にもう一つ、と人差し指を立てながらクロガネは付け加えた。
「もしこの先竜と対峙することがあったとしたら、注視するべき点をお教えします」
「注視ったって、あんなのと戦う事になったら細かい事にまで気なんて回らねえぞ」
「いえ、簡単な事です。姿を見れば判別はつきますから」
 それ即ち、本性を露にした竜が人に近いか否か。
「宿主の体をただ操るのではなく、完全に我が物とした竜は、竜でも人でもない『第三の存在』として産声を上げます」
「第三の存在?」
「『人竜』。人の姿をした異形です」
 この世の異物たる竜が、完全にこちらの世界に適合した時、竜は持てる全能を一切のロス無く振るうことが出来る。
 体を相応しき物に作り変え、その巨体を最も体力の消耗が少ない姿、即ち人のそれへと変貌させる習性があるのだ。
「その過程で、竜形態も人間のそれへと近付いていきます。ですから、竜の姿形である程度強さが把握できるのです」
「つまり、爬虫類っぽいほうが弱いのか」
「竜には特殊な力がありますから、一概にそうとは言い切れませんが、認識としてはそうズレてはいません」
 ですから、ミスター。
「人の体で、竜翼を纏う存在とは決して相対しないように。独力では、私にも対処しきれない敵ですから」

481数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:26:58 ID:wPzqGEho0
 一閃。
 空間を抉るかのごとき漆黒の一撃は、容易く蒼竜の巨大な尾を両断してみせた。
 バランスを崩し、墜落していく竜。伏神劔は蒼竜のその巨大な背を蹴って空中に躍り、着地する。
 その眼前に落ちる巨体。撒き散る粉塵を黒刀の一振りにて払い、走る。
 蒼竜は接近に気づき、その右前肢の爪にて迎撃を試みるが、寝そべったような状態での苦し紛れの攻撃だ。あたるわけが無い。
 その範囲に入る前に急停止。虚しく空を切る爪がその前を通過するのにタイミングをあわせ、急加速する。
 その程度の負荷をかけた程度で筋肉が不調を訴えるほど、伏神劔はヤワな鍛え方はしていない。
 蒼竜は焦る。せめて跳ね飛ばそうと右前肢を往復させようとするが、当然間に合わない。
 黒刀が翻る。右前肢の付け根に朱線が走ったかと思うと、冗談のようにズレ、ぼとりと音を立てて右前肢が地面に落下した。
 それだけでは終わらない。蒼穹に屹立するかのように振り上げた黒刀を、劔はまを置かずに振り下ろした。
 人の体でいえばわき腹部分に当たるだろうか。全身の筋肉を引き絞るかのような全力の一撃が、その箇所を轟音と共に抉り取った。
――これ以上は危険か。
 斬撃の余波が、地面を抉り取った瞬間には劔はそう判じており、全力で飛び退っていた。
 整った体勢であったとはどうにも言いがたい状態だったため、着地が少々不恰好になってしまっていた。が、その判断は正解だった。
 竜の体がわずかに浮き、土ぼこりを上げてすぐに沈む。出来損ないの突進、といった動きだった。
 事実、それは突進と言えた。蒼竜がまだ損傷していない左半身の二足で、地面を蹴り飛ばしたのだ。
 その射程内には、一瞬前まで劔のいた地点も当然含まれていた。だが、無駄だった。
 もしも体当たりをせず、再び飛翔する事を優先していたのなら、もしかしたらまだ勝ち目はあったかもしれない。
 だが、現実はそうとはいかなかった。
 吶喊。斬撃。斬撃、斬撃、斬撃。
 右後肢が。表皮が。羽根が。竜鱗が。顎が。裂ける、砕ける、抉れる、断裂する。
 嵐の如き連撃。蒼竜にそれに抗する術など既に無い。
――どうした。どうした、どうした、どうした。
 ただの動物が相手なら、既に幾度も絶命しているであろう攻撃を何度も繰り返しながら、劔は少し焦る。
 どうした、このままでは死ぬぞ。なにをされるがままになっているのだ。
 スムーズに、事が運びすぎている。手応えというものが無さすぎる。
 、、、、、、、、、
 あまりにも弱すぎる。

 劔は警戒していた。恐れていたと言ってもいい。竜の持つ埒外の能力を。
 だから、様子見のつもりの攻撃を続けていた。
 攻撃と攻撃の間に、あえて隙を幾つか挿入してみた。だが、蒼竜は動かない。まるで木偶の坊のように、倒れ伏したままだ。
 劔は焦れた末、術中に嵌る覚悟で打って出た。
 斬撃。
 奔った黒い閃光は、まるで水面でも切り裂くかのように、蒼竜の太い頸に難なく入り込んで行き、苦も無く両断。
――ほら、どうした。死んだぞ。
 気構えを整える。全神経を集中して全天を監視する。どのような微細な異変さえも見逃さぬぞ、と。
 だが――
 斬り飛ばされた劔の後方十数メートルの位置にぐしゃりと落ち、残された巨体は深く深く沈みこみ、停止した。
 そこに、生命の波動は感じ取れない。
 死んでいた。何の疑い様も無く。
「…………ッ!?」
 伏神劔は絶句した。
 掛け値なしの圧勝。身体、精神、内奥の竜、複合術式「悪路王」。全てに異常なし。
 だからこその、拭いがたい違和感が、そこにはあった。

482数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:27:11 ID:wPzqGEho0
 伏神劔は、今までに二度ほど竜と対峙した事があった。
 一度目は「露払衆」としての任務中。そして二度目は、五年前。
 伏神聡里がこの世を去った日。彼は竜と相対し、そして敗北していた。
 あの日、伏神邸で一体何が起こったのか。それは劔も完全には把握していない。
 だが二つだけ、理解している事があった。
 一つ。五年前、彼の妹が、両親が、大勢の使用人が死亡したあの事件の首謀者が、当時の四拾七氏であるという事。
 そして、二つ。自分に、その陰謀を喰い止めるだけの力がなかったという事。
 だからこそ、彼は力を欲した。
 四拾七氏を駆逐せしめるほどの力を。また同じような事が起きたとき、それを喰い止められるだけの力を。
 竜の囁きが聞こえてきた時は、しめたと思った。
 忌まわしき伏神の術と、鍛え上げた精神力でその行動の自由を極限まで奪い取り、その能力とあふれ出る魔力を核に、複合術式「「悪路王」を作り上げた。
 この力さえあれば、あの日の竜すら打倒できる。劔はそう確信していた。
 だが、それは死力を尽くした先にこそある物だとも、彼は思っていた。
 自分の力に酔いしれる事が出来なくなる程度には、劔は絶望の味という物を知っている。
 悪路王は不調だった。竜の拘束が完全ではなく、動きに支障が出た。だのに、手傷と言える物を負っていない。
 運が良かった。実力差がありすぎた。そんな言葉で納得がいくような事態では決してない。
 ありえない事だと言って然るべき異常であった。
 竜という存在については、少しではあるが劔も知っている。
 それと、自分で体験したあの絶望的なまでの力を総合して考えると、こうも手応えのない戦いになどなるわけも無いのだ。
 勝利、などと思い上がれるわけもなかった。
 故に、彼に油断などなかった。

483数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:27:21 ID:wPzqGEho0
 耳朶を打つ微かな風切り音。
 それが徐々に近付いてきている事に気付いた時、黒刀を握り締めた右手は既に動いていた。
 ギィン、と金属音と共に弾かれたそれが何であるかを考える余裕はない。
 日の光を遮り、中空に躍る「何か」。返す刀でそれを斬り捨てんとしたが、しかしそれは叶わなかった。
 剣閃に視線が追いつき、劔は驚愕する。
 黒刀。竜鱗すら両断するその一斬を阻んだものは、握り固められた拳だった。
「何か」。ヒトの女性に酷似した容貌をしているが、それをしてヒトだと形容できる人間などいるだろうか。
 空気を震わせるが如き、威圧感。
 翠緑の双眸の奥に、「獣」などという言葉では到底表現しえない獰猛さが光っている。
 艶めく黒い髪と、楚々とした細面にそれは驚くほど不釣合いで、まるで趣味の悪いキグルミを着込んでいるかのように思えた。
 甚だ不気味。度し難い不自然さ。
 無理にヒトを装おうとしているそれは、しかし逆にその異形が「何」であるかを大声で喧伝しているかのようであった。
 竜。
 今しがたの在り得ないほどの弱敵とは、比較にならない量の濃密な存在感を振りまくそれが、一体他の何であるというのか。
 反作用で弾かれた刀を腰溜めに構え直しつつ、劔は大きくしゃがみ込む。
 と、その頭部のあった場所を、致命的な威力を伴った「竜」の蹴りが通過した。
――空中でこの威力だと……!
 驚愕しつつ、しかしそれを身体制御とは切り離す。動揺や恐れは、この場においては即ち死である。
 視線の先で、蹴りの勢いに振り回されたらしい「竜」が、こちらに背を向けていた。
 好機。
 体を引き絞るように力を込め、居合の要領で黒刀を抜き放つ。
 空間をも断つかのような一撃。だがそれは、何者をも断つ事は出来なかった。
 ガキィ。
 下から救い上げる蹴撃が、力任せに刀を弾く。「竜」は、空中で逆立ちでもしたかのように反転し、逆しまの状態で劔と対面していた。
 物理法則を全く無視した動きだ。しかし現実として、劔は刀を無理矢理持ち上げられ、両腕を大きく開き、この上なく無防備な状態である。
 口唇が、軋みを上げそうな程ゆったりと持ち上がり、乱杭歯が露になる。
 竜が、笑った。

 浮かべた笑みを一瞬で消すと、竜は口を閉じる。その唇の肉が、内部から少しだけ盛り上がった。
 それが何であるかは、すぐに分かった。
「竜」は口に溜めた空気を推進剤に、先ほど弾いた「鏃」をプっと吐き出す。
 それは機械的な直線軌道を描き、過たず伏神劔の胸に、服を突き破ってザクリと突き立った。
 だが、それだけだ。
 そのチクリとした痛みなど気にも留めず、劔は体勢を整えると間を置かずに踏み込み、黒刀を振りぬいた。
 が、「竜」は劔の方へと向けた足で虚空を蹴り飛ばし、後退。刀は空を切るに留まった。
「カカ、元気じゃのう」
 空中に「立ち」、劔に背を向ける「竜」は、しわがれた声で言う。束ねた長髪が、ユラリと揺れる。
 その声に、劔は覚えがあった。
 喚起された様に、彼の脳裏を絶望の記憶が埋め尽くす。彼の全てが失われた、五年前のあの日の記憶が。
「貴様、あの時の……!」
「『あの時』では分からんぞ、伏神劔。儂はあの雪女の様に、貴様と夫婦になった覚えはない」
 言いつつ、「竜」はクルリと振り返った。
 その顔立ち。逆光に遮られない、精細なディテールを目の当たりにして、伏神劔は稲妻に打たれたかのような錯覚を覚えた。
「もしや、『これ』が死んだときの話か?」
                、、、、
 己の顔を指差して、「竜」は、「伏神聡里」は嗤う。

 と、それに呼応したかのように、周囲の森林から飛び出した何かが、蒼穹にその大翼を広げた。
 澄み渡る蒼い竜鱗が、陽光を受けて微かに輝く。
 数にして、四十七。蒼竜『達』は、その威圧的な巨体で陽光を遮断し、極大の闇を伏神劔に投げかけた。

484数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:28:11 ID:wPzqGEho0
以上
姿を変える人竜がサトリと同じ顔をしてる理由は全部他人に投げる

485数を持たない奇数頁:2015/03/24(火) 12:26:21 ID:GKohoarw0
西口乙ポニ

過去の竜事件、まさかの聡理真犯人説?

486数を持たない奇数頁:2015/03/24(火) 21:09:25 ID:TKFLK9fA0
西口おっつおっつ
競作も進めつつ、昨年は回避された年度末に苛まされつつだからだいぶゆっくりになるよ

487数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 16:27:34 ID:YHzIIFG60
ゆっくりすると言ったな。あれは嘘だ

……えー、まぁ要約すると最近人事異動があったのね(公には今月の頭からだけど実質先月から)
それ関係で色々とばたばたしてて駄文書くどころじゃねぇ! って有様だったり、新しく配属された部署の上司から
「今年この資格取ってきてね。余裕があればあとこれかこれのどちらかひとつ。両方でも構わんよ?
 あぁ、そういえばあの資格まだ持ってなかったっけ? ならそっちも今年取りに行こうか。この部署だと必要だから」
とかそんな有様だったり、更に明後日には昨年のハラキーリ! サムラーイ!! の後処理で入院するかどうかが決まったりで、何が言いたいかというと
・人事異動に伴う勉強を強いられているんだ!
・体調面に関する通院を強いられているんだ!
という状態だったりするから落ち着くまでorさっさと病院にぶち込まれるまではまともに駄文を書く状況にはならなさそうだからクロにそぉい! させて貰いたいんだぜ

488数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 16:30:26 ID:cZs24AEU0
わお・・・リアルに専念してください

489数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 17:40:43 ID:fVFcWIps0
激動やなあ
言い方悪いが、こんなの遊びみたいなもんだから、気にせず専念してくだされ

490数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 17:54:38 ID:L1H7RfRw0
承った
身体は大事にしろよ!
前回パスしたからここが俺の正念場だな

491数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 19:02:56 ID:YHzIIFG60
とりあえず六月末くらいまでで片付くかな?
・入院→上司「入院するなら実際に担当となる迄に入院してくれ」との事。とりあえず今担当予定の奴は一ヶ月もあれば終わるかな?
・資格→初っ端に言われた奴は少々鬼門、どちらか取れと言われた片方は過去問覚えゲーでもう一方は事前知識もあまりないという鬼門だから前者狙う。
 職場で必要だと言われた資格は講習を受けて、その講習を寝て過ごさん限りは落ちない程のだから問題なし

そんな感じ。競作に関しては脳内ではキリのいいところまでは行ったけど文章化は厳しいから短くなるかもなぁ
(さっさと病院にぶち込まれれば、前回の事を考えれば大体二週間弱……麻酔云々を考慮すれば一週間程度は自由になるからそこで詰めれるだけ詰める感じ)

492数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 19:27:16 ID:cpqpSiB.0
リアルの都合を推してまでやる事でもないしな
給料が出る訳でもないし

都合が悪ければパスしたって構わない
リレー小説とはそういうものだ

493数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 19:51:15 ID:YHzIIFG60
んー……仕事が辛いからー、って訳でもないんだよなぁ
単純に今までは残業とかが殆どない部署(あるとしたら課どころか部も絡んで対応するレベルの大事)だったけど、今の部署は割かし残業あるのよね
業務内容自体は別段……というより薬品の取り扱いでテンション上がる俺としては前の部署よりも楽しいんだよなぁ。多分今の生活リズムに慣れれば普通に残業しつつ資格勉強しつつ駄文書けるようになると思う

494数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 19:58:03 ID:3MajSA4A0
やべぇ有能そう
出来る社員オーラがパねぇ

495数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 20:00:49 ID:cpqpSiB.0
どこぞの酸素吸引式二酸化炭素排泄機のクソ社内ニート(の俺)とは大違いな有能オーラ

496数を持たない奇数頁:2015/04/05(日) 20:01:55 ID:YHzIIFG60
前の部署だととんだ無能だったよ(白目)
まぁ、そんな感じで。多分次回が来る頃にはひとまず業務の勉強に関しては落ち着いてるかな?

497数を持たない奇数頁:2015/04/09(木) 02:15:40 ID:DpB8D1GI0
もしかしてルカくんって凄い可愛いんじゃないかと最近思ってる

498数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 21:13:23 ID:kThi3wJw0
クロだけど
色々考えたが皆のやりたいこと全方面でよくわかってないし
自由に動かして平気そうなキャラがいない緊迫した状況な雰囲気するし
西口のバトンが凄くいい感じに仕上がってるから適当な文でお茶濁したくないし
俺に出来ること皆無な気がしてるけど2連続パスはあれだし
色々涙目なんですがどうしたらいいでしょう助けてください

499数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 21:25:43 ID:zr/R8wBA0
つ、学院内の閑話でお茶を濁す

500数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 21:27:14 ID:/mzsscGY0
クロたんのやりたい展開をやればいい
リレー小説は何より自分が一番楽しまなくてはいかん
前の人の流れとか、他の人の狙いとかを気にしてくれるのは凄くありがたいが
それに雁字に搦めとられて、身動きが取れなくなっては本末転倒だ

慰めにはならんだろうが、少なくとも俺はクロたんの文章が読みたい -3-

501数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 21:27:27 ID:/mzsscGY0
なんだ文末のムカつくやつ

502数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 21:43:53 ID:h.0ZKEhA0
>>499
西口ので読者は「お、おおおお、おおおおおおおおおおお!!」
ってなってるところだからここで急にそんなんやったら読者がキレちゃう……

>>500
やりたい展開は多分もう頓挫したというか今はやめとこうと思った
正直なところわからんところが多くなりすぎてキャパオーバーしたという
皆どうやって状況整理してんの……

503数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 22:14:05 ID:hcesXWfk0
全体を理解したり、描写する必要はないんじゃないかな
問題が同時多発してるだけで、個別に解決していく為に焦点を当てて書きたい事を書いていけばいいさ
それこそ学院内の事でも構わないんじゃないかな。学院生の誰かの日常を書いて、「そういやソウジ(や朝霞)はどうしてんのかな?」みたいな感じでカメラを伏神に戻したところでパスするとか

504数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 22:15:07 ID:/mzsscGY0
そもそも俺のガバガバ文章は大して盛り上がってないです

505数を持たない奇数頁:2015/04/14(火) 23:01:09 ID:h.0ZKEhA0
ダメだ浮かばん
風呂に入ってくるしかねぇ
風呂なら何とかしてくれるはずだ

506数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 01:07:21 ID:L3STKaL60
思い……ついた……!
もうやらかそう

507数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 01:19:47 ID:sQ0RJn2c0
ソウジくん「綴る…っ!」

508数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 19:04:27 ID:o/ZY6fhc0
ふとみんなは学院の上位連中ってどれくらいの実力想定してるんだろうかと気になった
(まぁ上位と言っても研究者気質故に実技が優秀な奴もいれば武力的な理由で実技優秀な奴とかで色々なんだろうけども)

509数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 19:12:55 ID:sQ0RJn2c0
戦闘特化の奴は正規軍人にも勝てるレベルを想定してる
特殊部隊員にはボコられるが

510数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 19:30:21 ID:snmNXG/E0
あくまで学生レベル
中にはプロに匹敵する実力者もいるだろうが、その道では下位、よくて中位って程度
はじめの一歩の鷹村さんみたいなのが一人くらいはいてもいいかなーとは思ってるが

511数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 20:07:13 ID:L3STKaL60
各世界のトップクラス想定してる

512数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 20:29:38 ID:snmNXG/E0
けっこう意識の差があるな
作中に出るかどうかはおいといて、ひとり一系統1キャラくらい最高クラス考えとく?

513数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 20:32:11 ID:sQ0RJn2c0
エクリエルがトップクラスって認識あるし、俺はいいや
ただでさえお兄ちゃんあんなのにしちゃったし

514数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 21:29:27 ID:o/ZY6fhc0
話題振った本人としては(成績を基準として)満点付近だと大体その道の本職と肩を並べる水準で考えてたわ
実技:筆記=25:25辺りが一般的な素質を持った人物が程々に勉強した程度。努力した一般人が30:30辺り、40超えは才能ありくらい

515数を持たない奇数頁:2015/04/15(水) 22:01:18 ID:snmNXG/E0
学年があるから、あの点数は「その学年のレベル」だと思ってる
点数の高さはあくまで適性であって、能力の高さのいわゆる応用力は別物って感じで

516数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 00:58:17 ID:O/SE3.t60
ダメだやはり俺にはやらかせない
もうここまできて何かやっても邪魔になるだけだわ
かといって邪魔にならない繋ぎも思い付かない
パスさせてください
タタリ様あとはよろしくお願いしますすみません

517数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 07:49:41 ID:vMcaXF1A0
むう、了解した
あちこちで乱戦状態なのがネックだな

着手するのは競作終わってからになると思う
ていうか競作もまともに進んでない

518数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 08:40:36 ID:ILf8ar3k0
ふと思ったが今回の竜の名前って出てきたっけ?

519数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 08:42:37 ID:gAlJe0tc0
ないね
考えてはいたけど、タイミングが無かった

520数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 09:09:08 ID:ILf8ar3k0
思い付かないからその名を公開すべきそうすべき

521数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 09:19:00 ID:gAlJe0tc0
「産み増やす能力」を持ってるって考えてたから、特に捻りも無く「ベイバロン」
元ネタは言わずもがな、バビロンの大淫婦
本体の聡里(?)の名前だから、蒼竜の名前ではない

522数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:07:26 ID:NzkwlVZU0
競作終わってからと言ったな?あれは嘘だ。

思い付いた展開の半分くらいぶち込んだのが出来ちゃったけど、けっこう大量に被害が出てしまった
一応、被害が出る前まで切ることができるように場面転換を挟んだから、その場面だけ削る事は可能
なんか俺、こういうのばっかり速筆なのはなんでだ

523数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:08:09 ID:W5CJmhpg0
惨劇の貴公子たたりん

524数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:09:31 ID:gAlJe0tc0
悲劇上等! 早く! 早く!

525数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:10:03 ID:vMcaXF1A0
惨劇の奇行死?(難聴)

526数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:10:31 ID:vMcaXF1A0
お、おお?
いいのか?このままいくよ?

527数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:11:08 ID:gAlJe0tc0
構わん

528タタリ 1/3:2015/04/16(木) 22:12:58 ID:NzkwlVZU0
 空を絶望が覆い隠す。
 地を絶望が埋め尽す。
 飛翔する蒼銀の竜の群れが伏神山の周辺を周回している異常な光景を仰ぎ見て、劔は愕然と呟きを零した。
「ば、か、な……!?」
 これだけの竜が同時多発的に発生する可能性もないとは言えないが、異常の一言に尽きる。そもそも竜とは人の欲望を糧に顕現するものだ。しかし空を覆い、地に伏せる竜の群れは統率がとれている。
 何かに従う様な動きは、欲望に忠実な竜らしくない。
「これは、貴様の仕業か、竜よ!」
「呵々。よもやこの期に及んで出た疑問がそれか。耄碌でもしたか、伏神劔よ?」
 竜の鱗や尾などが表面化しているものの、聡理の姿形をした人型の何かは、老人の様に嗄れた声で哄笑する。
「如何にも。……改めて考えると、こうしてお主と面と向き合って話すのは初めてよな。我が名はベイバロン。“崩れぬ群れ”のベイバロン」
「ベイバロン……!!」
 右腕の悪路王を喚起し、黒刀を握る手に力を込める。同時、空から四体の竜が二人の間に割って入る様に舞い降りた。衝撃で地面が抉れ、亀裂が走る。
「邪魔だ、退け!」
「そう喚くでない。童(わっぱ)は気が短くて仕方ないわい」
 劔の猛突を、ベイバロンを護る様に立ちふさがる四体の竜のうちの二体が身を乗り出して線上に躍り出る。黒刀一閃、右の蒼竜の右と、左の蒼竜の首を同時に刎ねる。
 しかしそれまでだ。生き残った方の蒼竜は身を捻って丸太ほどの大きさもある尾を打ち付ける。辛うじて右腕の悪路王で攻撃を受け止める事ができたものの、両者には埋め難いほどの重量差がある。
 十数メートルも一気に跳ね飛ばされた劔は地面に黒刀を突き立て、無理に着地する。ベイバロンとの距離が遠のいた。
 悪路王の力を持ってすれば、蒼竜は敵ではない。とは言え決して楽に倒せる怪物という訳でもなく、全身全霊をかけた一撃でなければ両断する事もままならず鱗に弾かれる事だろう。
 全力で攻撃する以上、それは後続の攻撃につなげる事のできないテレフォンパンチでしかない。故に、複数が同時に反撃してきた場合、対処がひと呼吸遅れてしまう。それは竜を相手取るには致命的な隙である。
 先の攻防では、竜の尾の軌道上にたまたま右腕があった為に防御する事ができたが、その僥倖がいつまでも続くとは思えないし、ベイバロンの手札にはあと四十六の盾がいる。
 最後に、もう一つ。劔には決着を急ぐ理由がある。
「悪路王を使い過ぎたな、伏神劔。そろそろそ奴を御すのも限界なのではないか?」
「……クソッ!」
 竜を殺す為に宿した竜。劔は術式と、何より強靭な精神力で、本来ならば己が喰われる運命を捻じ曲げて悪路王の力を恣(ほしいまま)にしていた。慣れもあるが、慎重に使い続ければ数日は常に悪路王を顕現したままでいられる。
 しかし、それはあくまでも慎重(スローペース)な運用を行った場合だ。全力で使用すればいずれ意識の隙を突かれベイバロンに殺されるか、悪路王に喰われるかのどちらかだ。そうでなければ蒼竜を殺す事が出来ない。
「ふむ。勝てぬとも負けぬなら、こうして睨み合う道を選ぶか。そうなれば戻ってきた盾一郎の援護や、露払衆による避難も完了すると。顔に似合わず賢しらな男よ。
 では一つ、余興を行ってしんぜよう。のう、伏神劔や。お主は伏神という、否、四十七氏という基盤(システム)そのものを壊す為に、今回のクーデターを謀ったのだったな」
「……だからなんだ?」
「どれ、わしが手伝うてやろう」
「っ、馬鹿! やめろ!」

529タタリ@目算ヘタで章数がズレた:2015/04/16(木) 22:15:54 ID:NzkwlVZU0
 ベイバロンの思惑を瞬時に理解した劔は大地を蹴って疾駆する。足の裏で爆薬が爆ぜたかと思う程に巨大な土柱を巻き上げ、ベイバロンを守護すべく前に出る蒼竜へ刃を滑らせる。
 同時、空を翔けていた絶望の群れが二手に別れ、それぞれの目的地へと降下する。半数はベイバロンの元へはせ参じ、もう半数は麓の上伏町へ強襲する。
 魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)。大気を激しく揺さぶるそれは、もはや空気の振動ではなく衝撃波である。山林の木々を薙ぎ倒し、土砂をひっくり返し、麓の町並みを次々と倒壊させていく。
 異変に気付いた町人たちは、空を見上げる。大勢の絶叫は山を駆け巡り、劔の耳朶を打つ。彼らは、この世の終わりが降り注ぐ光景を、どう受け止めたのだろうか。
「のう、伏神劔よ」
 黒刀一閃。しかしそれは蒼竜の背鱗に阻まれる。山の中腹まで響き渡る、護るべき民草の恐怖が、劔の集中力を削いでいく。舌打ちし、今度は速度を重視した一瞬百撃。蒼竜の背鱗が次々と捲れあがり、旋風に吹かれた木の葉の如く飛んでいく。
 そこへ、他の蒼竜が大きく顎を開き、劔へと牙を剥く。殺気を感知し、咄嗟に蒼竜の影へ飛び退る。魔竜の咆哮は蒼銀の閃光として、高エネルギー波を撃ち出した。
 鱗を剥がれた蒼竜もろとも撃ち破る魔竜の焔波(ドラゴン・ブレス)の余波を受けた劔の体が木っ端の様に吹き飛ばされる。高エネルギーからなる衝撃波は体内で反響し、内臓や骨肉を破壊していく。
「ぐ、ぁぁああ!!」
 しかし、それでも。劔は倒れない。否、倒れる事を許されない。何故なら彼は守護者であり、弱き者たちを護る為の剣として生を受け、命を帯びたのだから。

「この事態を理解しておるか? これは、今、お主が反旗を翻したからこそ、伏神の民が死に行くのだぞ」

 だから──ベイバロンの言葉を受け、劔の体が動きを止めた。
「分かっておるのだろう? 伏神は内情はどうあれ、人間界政府と調和を図り、上伏の町を守ってきたのだ。貴様は伏神の暗部を崩すために、今日まで手管を用いて、伏神の基盤(システム)を破壊する為の準備を重ねてきた」
 そう、上伏町は辺境に存在する。未だに他界の文明に浸らず、古来から変わらぬ生活を続けている田舎だ。にも関わらず他所の地との流通が盛んで、かつ人間界政府へのコネクションもあり、五界統合学院へ複数人も編入できるだけの権力を有しているのは、偏に伏神のネームバリューによるものだ。
 伏神という重鎮が存在するからこそ上伏町が機能し、先の大戦を経てなお安寧を維持する事が出来ていた。
 伏神を潰すという事は、それらの権利を放棄するに等しい。劔はなにも、五年間を己が鍛えるだけの自己満足的な使い方をしてきたのではない。伏神の名がなくとも、一定の文化水準を保つ為の根回しも並行して進めてきたのだ。
 全ては決戦の日の為に。
「俺は、伏神が与えるまやかしの平和を終わらせ、真なる平和を掴み取る為に、ここにいる!」
「左様。伏神は所詮、かつての栄光に固執した欲望の具現にすぎん。だが、だからと言って、彼奴らは貴様の革命を望んでいたのやら?」
 ギクリ、と。劔の肩が震える。
「貴様は大義を掲げ、正義を抱え、仁義を以て伏神が操るまやかしの平和とやらを壊そうとした。その陰で虐げられる魔界人を救う事もその一端であろう? ……おや、それでは辻褄が合わぬな」
「……黙れ」
「魔界人を受け入れたのはここ最近の事なのだろう? しかし、貴様は五年前のあの日から、伏神への革命を企てていた。現在ある平和を捨てさせる事を民に強要する、内密の革命家として」
「……黙れ!」
「確かに、今の平和は伏神の掌の上だ。それはまやかしに過ぎん。伏神の闇部を知る貴様にとっては事実であろう。だがわしから言わせれば、それを現実として平和を享受する民を慮る事をしなかった貴様も、伏神と同じく欲望の化身なのではないか?」
「だ・ま・れぇ!」

530タタリ@目算ヘタで章数がズレた:2015/04/16(木) 22:16:28 ID:NzkwlVZU0
 深々と、次々と。ベイバロンの言葉は鋭利な魔剣と化して劔の深層へ抉り込んでいく。それらは致命傷として、決して癒えぬ傷を劔の内部に刻んでいく。
 大義を。正義を。仁義を。
 およそ思いつく限り、あらゆる装飾を用いて固く堅く閉ざした目的を、明け透けに剥がされた。心を穢される事に耐え切れない劔は、聡理と同じ身形をしたベイバロンへ、三度目の疾駆を試みる。
 竜が止めに入るなら、もうそれで構わない。この身はとうに命を捨てた。たとえ刺し違えようとも、ベイバロンだけは息の根を止めてみせる、その一心で。
「嗚呼、そうじゃそうじゃ。一つ重要な事を言い忘れておった」
 だが、劔の予想に反して、蒼竜たちは動かない。反応できぬ程の速度でもない。突進をブロックされると思っていたが、身じろぎ一つしない。
 ベイバロンに何の思惑があるかは知らないが、その思考すら放棄する。もはや一秒たりとも余談は許されない。この下卑た悪竜は必ず殺す。
「うああああああああああああああ!!」
 右腕に封じた悪路王に命ずる。全身全霊、最速最大の一撃を。聡理の姿を騙るこの竜を、一刀で斬り伏せる事を!!
「伏神聡理のことなのじゃが。あの小娘はなかなか強情でな、こうしてわしに体を乗っ取られていながら、まだここに生きておるぞ」
 自分の頭をトントンと指で叩きながら、まるでかつての聡理の様に優しく微笑みつつ、そう囁いた。
 ベイバロンの首が刎ねる刹那、音速にも匹敵しかねぬ勢いで迫る黒刃が、喉元を斬り開く直前でピタリと静止した。
「な、に?」
「大義の元にわしを殺すより、親愛なる妹の為に刃を止めるか。貴様の革命こそまやかしに過ぎぬわ、復讐の男よ!」
 隙だらけな劔の胸に手を充てがい、ベイバロンは哄笑した。

531タタリ@目算ヘタで章数がズレた:2015/04/16(木) 22:17:43 ID:NzkwlVZU0
 空から降り注ぐ絶望に、逃げ惑う民は叫ぶ。助けてくれ、死にたくない、どうして自分がこんな目に、と。
「落ち着いてください! 慌てず、しかし迅速に避難を!」
 覆面こそ外しているが、黒装束の男たち露払衆は上伏の民を誘導しながら、幾人かは強襲する蒼竜の群れに刃を向けていた。
 劔の下した命は「上伏の民に被害を出さず、露払衆全員が生き残ること」である。彼らの瞳には、決して揺るがぬ意志があった。どちらの条件も果たす事を信じて疑わぬ目をしている。
「来るぞ、供えろ!」
 先陣を切って飛来する蒼竜が、全てを薙ぎ払う魔竜の咆哮を放つ。空からの衝撃波ではなく、至近からのそれは、人々を塵芥の如く吹き飛ばし、内部から破壊せしめようとする。
 衝撃波が届く寸前で、露払衆の数名が札を前方に投げた。それらは中空で弾け、魔竜の咆哮とは逆位相の音波をぶつけて衝撃波を無効化する。
 が、人間の叡智風情が古来より災厄とされてきた竜の脅威に勝る道理なし。咆哮は若干の衝撃緩和こそ果たしたものの、そんな物は焼け石に水だ。建造物を粉微塵に砕き、前方で間近に受けた露払衆らは内側から弾け飛び、血漿を撒き散らして死亡した。
 その余波で避難が遅れていた上伏の住人もいくらかが吹き飛ばされ、超高速で瓦礫に打ち付けられていく。その体は有り得ぬ方向に捻じ曲がり、呻き声どころか指先一つも動く事はない。
 それほどの災厄が、空から群生してやってくる。その数、二十弱。後続する蒼竜は上伏町を包囲する様に、避難しようとする民の頭上を翔けて追い抜き、巨大な脚で何人かを踏みつぶしながら着地した。
「くそ! 出合え出合え!」
 逃げる事は不可能であると判断した露払衆が剣を抜き、脚、尾、翼、頭、あらゆる箇所に剣を突き立てようとする。しかし、劔の黒刀ならばともかく、普遍の刀剣では鱗の表面を削る事すら適わない。
 長い首を伸ばした竜の顎が、露払衆の一人の胴体を喰らう。人間の作る刃物など比べようもない強靭な牙にとって、人間の体など脆弱な血袋でしかない。牙は肉も臓物も骨も裂き、砕き、貫いていく。
「外が駄目なら……内側なら……!」
 だが、今まさに喰われようとしている露払衆は、死の瞬間まで使命を諦めてはいなかった。黒装束の内部に仕込んだ起爆用の呪符が眩く光る。
 蒼竜の口の中で、露払衆の体が爆発した。血煙と臓物の雨を降らせる代償に、蒼竜の内側から強大な爆撃。それは蒼竜と言えどもその身を大きく仰け反らせ、地に倒す事に成功した。
 蒼竜による包囲網の一端を突破した。後続の露払衆は甲高い笛の伝令で方方に散っていた仲間を呼びかけ、避難先を誘導しようした。
 ……少なくとも。彼は最期まで、そのつもりでいた。
 濛々と立ち上る土煙と血煙の向こうから蒼竜の爪が空間を薙いだ。笛を吹き鳴らすべく大きく息を吸い込んでいた彼は、恐らく、蒼竜の爪が自らを三分割する事に死してなお気付かなかっただろう。それを僥倖、幸運であるとは言い難い事ではあるが。
「む、キズ……!?」
 二人の露払衆に先導されていた住民の一人が、彼らの血漿をその身に浴びながら、しかし眼前に突き付けられた現実に愕然と膝を落とした。もはや逃げる気力も湧かない。
 命を賭した捨て身の爆撃を咥内で受けた蒼竜はブルンと頭(かぶり)を振って、何事もなかったと言わんばかりに悠然と立ち上がった。ずしん、と後肢で大地を踏み締めるだけで、地震かとまごう程の振動が起こる。住民のほとんどは振動にバランスを崩し、その場に倒れ込むが、それは決して地震だけが原因ではないだろう。
 死が、目の前にいた。抗えない結末を前に、彼らは茫然と、身じろぎ一つしない。まるでそれが、あるがままの自然の摂理であるかのように。
 しかし、災厄とは得てしてそういうものである。矮小な人間の力だけで退けられるのならば、それは災厄などと称して恐れられる事はなかろう。

 つい十数分間ほどの出来事ではあるが、今となっては聞き慣れた、耳にする者全てを竦み上がらせる幾度目かの魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)。それを音と認識するより早く、その場にいた全ての住民の体が、内側から爆ぜた。

532数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:20:15 ID:NzkwlVZU0
加速するお兄ちゃんイジメの巻

533数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:22:03 ID:vMcaXF1A0
自分で読み返して「来るぞ、供えろ!」に大草原不可避
なにを供えると言うんだ、備えろよ

534数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:24:56 ID:gAlJe0tc0
首でしょ

535数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:25:41 ID:gAlJe0tc0
あ、タタリんおっつ
盛 り 上 が っ て ま い り ま し た

536数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:43:56 ID:vMcaXF1A0
本当は、ソウジが途中で駆けつけてお兄ちゃんを叱咤激励し、町の蒼竜退治に行ってもらうって展開にしたかった
ベイバロン周辺の竜はアギョー任せで「コイツは俺が止める」的な感じでソウジはベイバロンと一騎打ち

ってのを入れたかったが、お兄ちゃんイジメに興が乗ってしまい断念した

537数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:56:50 ID:O/SE3.t60
タタリ様お疲れ様にございます
やべえええええええええええ
こんなんもう勝てる気しない

538数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 22:58:32 ID:gAlJe0tc0
出した俺も忘れてたけど、そういえばソウジ君の影の中になにやら強そうなのがいるんだよな

539数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 23:10:06 ID:vMcaXF1A0
もし収拾がつかなそうならデウス・エクス・マキナとしてアドライグ召喚すればいいよ
こういう時の為に、一回だけピンチの時に駆けつけるって言わせたし
ウロボロスの時はアドライグの都合もあったしノーカンだと思ってる

540数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 23:14:55 ID:gAlJe0tc0
次どあにんだったか

541数を持たない奇数頁:2015/04/16(木) 23:16:20 ID:vMcaXF1A0
あ、そだね、どあにんヨロ
アーイイ、上位存在に嬲られる人間イイ…

542どあにん:2015/04/16(木) 23:45:53 ID:v7cG4n0A0
タタリンおちゅん
やっべぇよ……これどうやって収集つけんだよ……こんなに大規模になるとは思わなかったよ……

じっちゃと真川さん街に向かわせて、あと誰か戦わせるかなぁ

543どあにん:2015/04/17(金) 00:07:18 ID:piprKrmo0
なるべく早めには書き上げるつもりだけど
GW祭りの提出期限が2週間に迫ってるんでもしかしたら遅れるかも すまぬ

544数を持たない奇数頁:2015/04/17(金) 00:23:47 ID:uFxOjFck0
つか競作あるしな

545どあにん:2015/04/28(火) 10:47:56 ID:lTcSNltc0
今日中にGW祭り作品を完成させ、5月頭ぐらいまでに書き上げる
フフフ、中々ハードですな……

546どあにん:2015/04/30(木) 19:36:25 ID:nxEofK2g0
GW祭り作品提出したので今から書き始めます
最悪パスります

547数を持たない奇数頁:2015/04/30(木) 20:59:52 ID:GM9VpxRI0
カラダニキヲツケテネ!

548どあにん:2015/05/12(火) 19:49:01 ID:K/KSfVY20
展開がおもいうかばねぇ……
書けても短い……もうゴールしちゃってもいいよね……?

549数を持たない奇数頁:2015/05/12(火) 19:51:16 ID:aPH6IEkE0
どあにんがしたいようにしてええんやで
あとは俺が引き継ぐ

550どあにん:2015/05/12(火) 20:01:32 ID:K/KSfVY20
日付変わるまで抵抗してダメだったらブン投げる

551数を持たない奇数頁:2015/05/12(火) 20:03:19 ID:aPH6IEkE0
おk、ウォーミングアップをしながら待っていよう
後続に控えてるKの人が大体何とかしてくれると思うから、気楽に行こうぜ(屑)

552どあにん:2015/05/13(水) 00:11:23 ID:bCJE4FA60
血、肉、骨……それら全てが道路を赤黒く染め上げる。
空で飛翔していた仔竜達が地へ舞い降り、その肉をクチャクチャと音を立てながら喰らい、湧き出る血を舌で器用に啜る。
その中で運良く、否……運悪く絶命を免れてしまい、もがき苦しんでいる民に襲いかかるのは更なる不運。
生きながらにしてその身を喰われる、想像を絶する苦痛を味わいながら命を落とす民。

災害と呼ぶも生温い、これが、竜。

既に露払衆の半数以上は、覆しようの無い絶望を前に戦意を失っていた。
ある者は戦意を失いつつも健気に立ち向かうものの、敵わず仔竜の腹の中へと消えた。
ある者は目の前の絶望から逃避するかのように、その白刃を己の心の臓へ突き立てた。
ある者は度重なる絶望と己の無力さを享受してしまい、正気を手放す事で恐怖を打ち捨てた。
そのような中でも戦意を失わず、二人で仔竜の群れを相手取る人物が二人。

白刃が閃くと仔竜達の首がボトリと地面に転がり、鮮血が噴水めいて噴き出すのを見届けた真川敦は、刃に付いた血を振るい払って、再び空を見る。
仔竜達が嘶いて大気が震える、魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)が地へ向けて一斉に放たれる。
無味無臭無色無遠慮な殺意の衝撃波が束ねられて地で戦う二人に襲いかかる、しかし……それが到達する事は無い。
やや年齢を重ねた一人の女性が埃塗れの魔術書を開いた、およそ戦いには似つかわしく無い割烹着を来た稀口茶店のおばちゃん。
口を開いて呪文を詠唱、人の耳では感じ取れぬ音域と言語が光となって収束した刹那、空を覆い尽くしていた絶望が消え去り、一瞬だけだが美しく輝く月が姿を見せた。

「やんなっちゃうねぇ、一体何が起こっているんだい?」
「分かりません、ですが……」

刹那、真川が居る位置に衝撃波が襲ったので、真川は前転でそれを回避した。

「今は戦わなければ、護る為に」
「稀口は外交でソウちゃんの一族を支えて来た、戦いは専門じゃ無いんだけど……ねぇ!」

口を開いて呪文を詠唱、人の耳では感じ取れぬ音域と言語が光となって収束した刹那、空を覆い尽くしていた絶望が消え去り、一瞬だけだが美しく輝く月が姿を見せた。
真川の背筋に冷や汗が流れる、声を媒介とした超高音の衝撃波を発する今は失われし魔法形態、触れれば肉は当然血すら跡形も無く振動で分解され尽くされる。
そのような魔法を操る事が出来ながら戦いは専門では無い、伏神を影から支え続けた一族達は怪物揃いか。
だが、今は心強い味方。
真川の白刃が閃き、襲いかかってきた仔竜達の首がボトリと地面に転がった。

553どあにん:2015/05/13(水) 00:11:55 ID:bCJE4FA60
長い時間掛けたにもかかわらず全然ダメですまんな
賢者の書のオチだけはキッチリとやりきる

554数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 00:19:40 ID:g.25Oqpk0
おお、乙ポニ




…え?希口のおば、ちゃん?え?ぇえ?

555数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 00:23:17 ID:Ugu6HCv60
どあにん乙
よし、とりあえずソウジくんをお兄ちゃんと合流させよう

556数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 00:53:48 ID:Ugu6HCv60
とりあえずプロットは出来た、遅くとも来週には投下する

しかし、書いてる人で割と強さに差が出そうだなこいつら
俺劔兄さんに屠殺されるだけの、ショッカー戦闘員めいたサンシタとしか思ってなかったのに

557数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 07:14:52 ID:g.25Oqpk0
じいちゃん≧悪路にいちゃん>アギョー>>>ベイバロン≧仔竜>>>>>露払衆=ソウジ>>>一般人
このくらいだと思ってる
真川さん(真)はベイバロンと=で結んでいいかな、程度に

558数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 20:17:04 ID:Ugu6HCv60
ちょっと読み返してみて、自分の中のお兄ちゃんのキャラが固まってきたな
死にたがりを克服して、曲りなりにも前に進み始めたソウジくんと違って
お兄ちゃんは聡里始め家族とかが死んだ頃のまんま、伏神を潰す事「しか」考えてない
夕霧とか露払衆とか、他の人間と関わる事によって、辛うじて人としての理性を保ててたけど(まあこれが今回仇になったわけだが)
お兄ちゃんも十分に狂ってるわ
その関わってきた他人も、志を同じくする同士とでも言うべき存在で、聡里が死んだ日を否応なしに思い出させる存在
エクリエルがソウジくんにとっての治療薬足り得たのは、それこそ無関係な他人だったからこそなのかもな、とちょっと思ったり

あれ、エクリエルちゃんヒロインじゃねえのこれ?
これ終わったらルカくんの話でも書こうと思ってたけど、エクリエルの話もありだな

559数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 20:18:21 ID:Ugu6HCv60
あ、一時的な憎しみとか狂気とかを抱え続けてる、ってヤクザ天狗=サンだわこれ

560数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 20:19:05 ID:3pZ8NW/A0
おっつおっつ。

時期的にそろそろ「ヒャッハー、国家資格試験の勉強だァ!」ってなるからパスする可能性が高い

561数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 21:48:53 ID:9ddi1iAM0

まさかの参戦者になんだか希望が見えてきたwww

562数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 22:20:21 ID:g.25Oqpk0
個人的に、ドネルクラル単体の戦力が100としたら、ベイバロンは10くらいのイメージ
ただ仔竜も同等かちょい下くらいで、戦力9・5が無尽蔵に湧くとかそんな強さ

個人的な意見なので意味はないがな!

563どあにん:2015/05/13(水) 23:02:43 ID:bCJE4FA60
一線を引いたけど緊急時って事で一時復帰する超実力者って素敵やん?

564数を持たない奇数頁:2015/05/13(水) 23:17:08 ID:izHtgYUU0
正直拳を握って立ち上がりました

565西口:2015/05/14(木) 11:42:08 ID:2Ke3LAk60
リアルでちょっと洒落にならない事態が発生したので、パスさせて頂いて宜しいでしょうか…?

566数を持たない奇数頁:2015/05/14(木) 13:34:54 ID:2Ke3LAk60
一週間ちょっと手がつけらないだけだから、間が空いても良いんなら書くが

567数を持たない奇数頁:2015/05/14(木) 16:13:26 ID:3IF8jDwQ0
一週間程度なら問題ないんでね?
俺とか1ヶ月はザラだし

568数を持たない奇数頁:2015/05/20(水) 19:15:06 ID:I/xCJZ2Y0
書き始めるまでもう少し時間を頂きたいが
もし書き始めたrmここでチマチマ切ってこの編長引くのもアレだから、結末近くまで長めの書こうかと思ってる
なお予定は未定であり、ニンジャは存在しない

569数を持たない奇数頁:2015/05/20(水) 20:12:43 ID:O2N/dxyQ0
ニンジャなら下水道でピザ食ってるよ

570数を持たない奇数頁:2015/05/20(水) 20:49:35 ID:eWG.saqc0
それの音サルボボ いいえ、ニンジャが居ます

571数を持たない奇数頁:2015/05/20(水) 20:51:34 ID:Z0lcGoVs0
へいへいレツゴーけんかーする〜
大切なもの〜protect Mybolls

572数を持たない奇数頁:2015/05/20(水) 21:28:51 ID:PjZYZMIM0
いっそ結末までぶっこんでくれた方が俺としては助かる。もっと言えばパス受けても書き始めるのは来月のこの頃になる
というか勉強やら「俺のこの手が黒く染まっていく――」だったりで競作の感想も手がついてねぇ……どっかで時間作ってやらないと

573数を持たない奇数頁:2015/05/20(水) 22:11:38 ID:I/xCJZ2Y0
その願いはかなえたいが、どうも速度が追いつかんのよ
オチまでは考えてあるから、終わらせられるっちゃ終わらせられるんだがね

ま、なんにせよ競作は遊びだからさ
リアルの用事を優先して当たり前なんだよ、気にしないで

574数を持たない奇数頁:2015/05/21(木) 22:01:33 ID:awJIetQI0
とりあえず書くに当たって一つ相談がある
ソウジくんのオリジナル魔法は「七つの大罪」と「八つの枢要罪」のどっちを採用すべきだ

575数を持たない奇数頁:2015/05/21(木) 22:08:15 ID:awJIetQI0
あとソウジくんに呪符ケースもたせて(てか持ってることにして)よか?

576数を持たない奇数頁:2015/05/21(木) 22:13:03 ID:n7FUnMUo0
良いんじゃね

577数を持たない奇数頁:2015/05/21(木) 22:28:59 ID:qMzjvXRI0
俺は七つの大罪モチーフだと思ってた
ケースに関してはそれぐらい持ってると思ってた

578数を持たない奇数頁:2015/05/21(木) 23:28:33 ID:awJIetQI0
おk、分かった
七つの大罪+呪符ケースありで行くわ
気長に待っててくれい

579数を持たない奇数頁:2015/05/28(木) 20:17:33 ID:hOBUGXvw0
今回割と難産な気がするなあ
一週間かけて予定の四分の一程度しか書けてないわ、話全然進んでねえし
ただここで投げるとまた風呂敷広げちゃうから、少しでも纏めてから投下したい
やっぱり結構時間食っちゃいそうだわ、すまぬ

580数を持たない奇数頁:2015/05/28(木) 20:23:45 ID:X9WQYUSU0
そろそろ俺が実家教習やら資格勉強でoh……になるから好きなだけ時間を使ってくれ
少なくとも6月の末位までは駄文書くどころじゃないかなぁ……相変わらず手が黒く染まってるし。いや、染まってるのは関係ないけど

581数を持たない奇数頁:2015/05/29(金) 08:02:04 ID:VxlhSXMk0
むしろ一週間で四分の一できたなら、1ヶ月あれば完成するって事じゃないか
だいたい俺のターンで1ヶ月くらい待たせてるし、俺は一向に構わん


しかしこれ纏められるのか…?(主戦犯の発言)

582数を持たない奇数頁:2015/05/29(金) 22:08:10 ID:he2bekBM0
一応着地点は見えてるんだよね
ただ20kb書いて話がピクリとも動いてないというね
フフ…後三倍か…
ウィンガーディアム・レヴィオーサ…(重篤な精神汚染)

583数を持たない奇数頁:2015/06/01(月) 21:08:05 ID:ZCejbQuk0
そういや戦争って何年前だっけ

584数を持たない奇数頁:2015/06/01(月) 21:41:06 ID:99rSemTc0
特に決まってなかった気がする

五界云々をぶっこんだ本人としては半世紀ほど前に表面的な終戦で考えていた
少なくとも他界人間で本音はどうであれ表面上では手を取り合える程度には和解するのに半世紀はいるかなぁと

585数を持たない奇数頁:2015/06/01(月) 21:42:44 ID:ZCejbQuk0
半世紀かあ
ちょっと具体的に決めることになりそうだが、いいだろうか

586数を持たない奇数頁:2015/06/01(月) 21:45:54 ID:99rSemTc0
俺は別段構わんよ。
ぶっちゃけ学院設立の為の時間も加味して最低でも聡治が生まれる以前かなぁとは考えてるけどね

587数を持たない奇数頁:2015/06/02(火) 06:58:18 ID:ic1lAvTw0
兄ちゃんと夕霧さんは経験者だと思ってた
いや、終戦宣言が半世紀前で、その後も紛争があったとすれば問題ないか

588数を持たない奇数頁:2015/06/09(火) 00:01:32 ID:cc.RfC1.0
とりあえず40kbほど書けたら投下するよ…全然話進んでないけど…
もうゴールしてもいいよね…

589数を持たない奇数頁:2015/06/14(日) 20:26:25 ID:frFkJAz20
とりあえず投下できるには出来るが、Kの人は試験終わりそうだろうか
出来れば終わってから渡したい(というか話進んでないから足掻きたい)

590数を持たない奇数頁:2015/06/14(日) 21:48:46 ID:CpdJYs8A0
来週が試験だから今パスしても良いんですぜ?
書き始めは来週以降になるし、結局競作の感想文まだ書けてない上に内容が試験内容で上書きされたから読み直し必須、更にFEifが出るからなぁ……まぁ再来週くらい書き始めになると思う

591数を持たない奇数頁:2015/06/14(日) 21:51:23 ID:frFkJAz20
おk、もうちょい粘る
FEifは俺も買うから、24日までには投下するマン
正直時間掛けすぎたと思ってる

592数を持たない奇数頁:2015/06/21(日) 10:42:33 ID:U.yxSdRY0
とりあえずこれ以上書いても変な風になっちゃいそうだから、二日後には諦めて投下するわ
一ヶ月も掛けた挙句、話全然進んでねえってどういう事だ俺は。アホか
すまんKの人、大言壮語をはいてしまった。

593数を持たない奇数頁:2015/06/21(日) 11:35:31 ID:fqM.xZo60
待ってるぜ、欲望のままに仕上げるがいいさ!

っていうかコレをどう収束するのか我が事ながら気になるわ

594数を持たない奇数頁:2015/06/21(日) 18:12:23 ID:YHe0EaOU0
ヒャッハー、絶対に落ちたとも確実に受かったとも断言できない出来栄えで結果発表まで胃が痛くなったKが通るぜぇー!
具体的に言えば後一問当たれば合格だけど後全部が何とも言えん状態だぜぇー!

了解だぜ。凶作の感想仕上げやらFEifとかやりつつまったり進めるんだぜ

595数を持たない奇数頁:2015/06/21(日) 20:53:39 ID:YHe0EaOU0
ヒャッハー、テキストに載ってなくて気になってた問題をggったら回答合ってたみたいで胃が痛くなくなったKが通るぜぇー!

596数を持たない奇数頁:2015/06/22(月) 22:09:02 ID:AX7qxBNw0
水曜までには投下できるが、先に謝っておく
長くなりすぎた(現時点で50KB)

597数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:38:16 ID:ss5gHwv.0
投下するけどあれだ、説明不足な点が否めない
分かんないとことかあったら聞いてくれると助かる(人間の屑)

598数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:39:22 ID:ss5gHwv.0
ゾル、と、「それ」は生えてくる。
光を反射して青白く煌くそれは、鱗だ。竜の皮膚を覆いつくす、蒼い鱗。それが苗木の枝のようにゆっくりと、伏神劔の胸部から「生えて」いるのだ。
――先刻、口から吐き出した物体か!
放心から立直った劔は、即座にその事に気付くがもう遅い。うちで猛り狂う竜と、体内に打ち込まれた楔――崩れぬ群のベイバロンの「種子」の強制力が、彼の膝を強制的に折らせた。
「がっ、……ぐ、ああ……!」
 獣染みた呻き声を上げて、劔は身を捩る。しかし、何も出来ない。ベイバロンの「種子」は謂わば即効性の毒であり、先刻の激しい運動でそれが回りきった状態となってしまった劔は、竜を押さえつけるので精一杯なのだ。
胸から顔を覗かせ、根を張って皮膚にへばり付き、肉を喰らってどんどんと皮下へ侵蝕していく鱗を、如何する事もできないのだ。
ベイバロンが、愛しい妹の面相を宿した竜が、呵々と笑う。
「露払衆が聞いて呆れるのう、伏神劔。己が軽挙を誹られて、怒り心頭に発してみれば、妹に似ているから、という理由でその斬撃を止めてしまう。半端、全くもって中途半端極まりない。昔の貴様は、もう少し芯のある男であったと思うが、何ゆえそこまで鈍った?」
 ――ああ、嫁か。
瞳に嘲笑の色を浮かべながら、吐き捨てる様に言う。顔を上げた劔の、満腔の憎しみが込められた眼光を涼しげな顔で受け流し、竜は笑声を交えながら、続ける。
「あの女、夕霧と言ったか? あれが貴様に、人としての心を残してしまった。しかし、奴は貴様から復讐心を抜き去るほどの存在足りえなかった。故に貴様は、過去を捨て去る事も、復讐を徹底する事も出来ず、そうまで中途半端になってしまった。……皮肉、よのう。復讐の為の同志が、結局は一番の足枷とは」
 ベイバロンの口唇が、三日月の如く引き裂ける。劔は荒れ狂う竜の力を必死に押さえ込みながら、「黙れ」と声を絞り出す。だが、蚊の鳴く様なそれに他者を威圧する力はなく、徒にベイバロンの嘲弄を煽るのみであった。
鱗の「枝葉」は、既にびっしりと鱗に覆われており、それは徐々に背、首、腹を侵していく。その速度は、先ほどのそれに倍するほどの物であり、劔への圧力も、秒刻みに強まっていた。
ああ、もうすぐだ。
もうすぐで、こいつの心は折れる。
ベイバロンはこの上ない歓喜の念を覚えると共に、嗜虐心を募らせていく。この男が、「もう止めてくれ」と泣き叫ぶ姿は、どれほど滑稽なのだろう。想像するだけで涎が出そうだ。
見たい、見たい。どうしても。この半端者の泣き顔が。

頬を上気させ、喜悦に表情を歪めるベイバロンは、「竜」という常識の埒外たる絶対者は、しかし知らない。
 己の抱いている感情が、戦場では等しく「油断」と呼ばれる類の物であるという事を。

「足枷なんかじゃないさ」
 空間そのものを喰らい尽くしたかのような漆黒。それは馬上槍めいた円錐形を取り、空を裂いて飛来する。
微かに耳朶を打つその音に反応し、その槍へと視線を回らせたベイバロンは、咄嗟に防御しようと両腕を交差させ、掲げた。
しかし槍は、ベイバロンの腕に叩きつけられるその瞬間、まるで花が開いたかのように、その穂先を広げ、瞬く間に暗幕めいてベイバロンの周囲を覆った。暗幕は酷く狭い範囲で展開し、劔とベイバロンとの間に壁を作る。
「小賢しいッ!」
 襲撃者の正体など、わざわざ確かめるまでもなく分かる。そして、その実力の程も。「元」神童の無能の分際で、この竜を止められると思うな。
魔力の篭った怒声。およそ少女の見た目には似つかわしくない、万象をなぎ払う魔竜の咆哮が、暗幕を一息に吹き散らした。間を置かず、ベイバロンは足下の地面が抉れるほどの力を込めて、吶喊。槍の射線上で、呆けたように突っ立っている襲撃者に、一瞬で肉薄した。
驚愕の表情のまま固まる、伏神聡治。それは己の必殺を、あえなく弾かれた事へのものなのか、「敵」と見定めた者の面立ちが、亡き妹と同一の物であったことに対する物なのか。
どちらにせよ、敵対者の接近に何の対応も出来ない木偶人形と、彼は化していた。
やはり、とベイバロンは笑う。
「芸が無いのだ。失せよ、無能」
 そして勢いのまま、右拳を振りぬく。
聡治の、兄とは似ても似つかないほどの矮躯は、その一撃の下に無残に砕かれる――筈であった。
そこにいたのが、本当に伏神聡治であったのならば。

599数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:40:34 ID:ss5gHwv.0
 ベイバロンの拳は、過たず聡治の腹部を貫通していた。だが、拳には感触も反動もなく、まるで霞を散らしたかのような虚しさだけが残った。
よもや、躱されたというのか。瞠目するベイバロン。彼女の視界は次の瞬間、膨大な炎に埋め尽くされた。
伏神聡治――いや、それを模した虚像から溢れ出した【憤怒】の炎が、実像の伏神聡治の内に滾る激情のまま、ベイバロンへと殺到したのだ。
それは、言うなれば炎の濁流だった。波頭の如く押し寄せ、刹那の間も置かずにベイバロンの周囲を覆うと、天をも焦がさんばかりに高く、高く立ち昇った。
「――がっ、ぎ、いいいいいいいいいい!!!」
 突然の奇襲。そして、そこに込められた竜をも殺傷せんばかりの膨大な熱量。さしものベイバロンであろうと、絶叫を抑えきれない。
どこか少女の声音が残る、獣めいたそれを聞きながらも、伏神聡治は素知らぬ顔をしていた。能面のようになった表情からは、極限まで感情が削ぎ落とされている。
ただ一つ込められているものがあるとすれば、それは殺意だ。
『こいつだけは、何があっても鏖殺する』
決意をも超えた、「決定事項」とでもいうべき思念を湛えた、十代の少年が浮かべるべきではない表情を、彼は当然のように浮かべている。
聡治は今、劔の傍らに、先ほどまでベイバロンが立っていた位置にいる。横目でチラリと、立ち昇る火柱を眺めていたが、数秒も要さずに興味を失ったらしく、蹲る劔の胸元、彼をいまだ侵蝕し続けている鱗へ、一枚の呪符を投じた。
 七大罪【怠惰】。停滞と衰退を表すそれは、力が及ぶ限りならば、どんな術式であろうと、その進行を食い止め、衰えさせ、やがて完全に消し去る。
 それは、竜の力にも有効であったらしい。鱗の侵蝕は瞬く間に止まり、やがてボロボロと剥がれ落ちていく。同時に劔に働いていた強制力も薄れていき、彼の顔に滲んでいた脂汗が、スゥと引いた。
そこでようやく劔は顔を上げ、突然の闖入者が己の実弟であると気付いた。浮かんだ表情は、戸惑いと気恥ずかしさ。そして驚愕と悲嘆である。
――こいつ、こんな表情をするようになってしまったのか。
立直ったと思っていた。自分と違って、前に歩き始めていると、勝手に思い込んでいた。考えてみれば、いや考えるまでもなく、そんな事ありえる筈もないというのに。
自分にとっても、聡里は可愛い、大切な妹だった。しかし自分は飽くまでも露払衆の頭目。外向きの用事が多く、あの子と顔を合わせる機会は、聡治に比べれば著しく少なかった。
思い入れが、違いすぎる。
これでも、相当に立直った方なのだろう。その心に生じた変質が、不可逆のものであったというだけの話だ。
「大丈夫、兄さん?」
 劔に向けられる視線は、声音は、先日までの聡治と変わらない。
聡里の死がもたらした爪痕の生々しさを、愛しい弟の心の傷を見せ付けられているようで、見ていられなかった。
立てる? と差し出された手を取るでもなく、全身に力を込めて何とか立ち上がる。そして小声で呪文を詠唱。「我が意の元に頭を垂れよ」。拘束術式がその力を増して、荒れ狂う竜を無理矢理押さえつけた。
しかし、術式の反動を無表情の下受け流せる余裕は、今の彼にはなかった。全身の筋繊維が引き千切られるような激痛に、劔は酷く顔を歪め、口の端から血を流した。
しかし、もう膝はつかない。体を大きく仰け反らせながらも、悲鳴をかみ殺し、地面をを踏みしめて、反動に耐えた。
走りよろうとする聡治を手で制して、十数秒。やがて、ぜぇぜぇと荒い息を吐きつつも、両の足で立てる程度には回復し、劔は火柱と聡治との間で、視線を彷徨わせる。
ここを離れろ。生きていて良かった。強くなったな。不甲斐ない姿を見せた。
掛けるべき言葉が幾つか思い浮かぶが、どれもこれもが口から出る前に、喉元で霧消する。
「無事?」
 だが、掛けられた、昨日と変わらぬ聡治の声音。それは過去の、平和だった頃の伏神家、上伏の町を想起させ、劔の口は知らぬ内に動いていた。
「……すまない」
 きょとんとした表情を浮かべる聡治。だが劔は構わず続ける

600数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:41:32 ID:ss5gHwv.0
「俺が、俺が未熟だったから、愚かだったから、屋敷が、使用人たちが、上伏の街が1 砕かれている、焼かれている、人が、人が死んでいる! 身の程を知らなかった、周りを見ていなかった! そのせいで、そのせいで皆が……夕霧も……!」
 纏まりのない、子供の泣き言の様な言葉だった。だからこそ、彼の心情が推し量れよう、と言う物だ。
すまない、すまないと、幾度も繰り返す劔。聡治は何も、声すら掛ける事も出来ず、その姿を黙って眺めていたが、ボウ、という空間を叩くような独特な音と共に、炎に吸い込まれ、吹き荒れていた風が止まった事を感じ、火柱のあった方角へと視線をやった。
翼だ。
吹き散らされた業火の只中に、巨大な一対の翼があった。灰褐色のそれはどういった構造をしているのか、互いに折り重なって完全な球体を形作り、「憤怒」の炎から彼女を守っていた。
伏神聡里の姿をした竜――ベイバロンの体を。
やがて翼はゆっくりと開き、ベイバロンの姿を外気に晒した。その頭部に張り付いているのは、聡治の今は亡き妹と同じ面相。しかしそこには、彼女ならば浮かべないであろう醜悪な笑みが浮かんでいる。
彼女の肩甲骨のあたりから広がる翼が、二度ほどはためくと、宙に浮いていたその体が徐々に下降し、ベイバロンは音もなく着地する。
「兄さん」
 ベイバロンの復活に気付き、謝罪の言葉を一時止めていた劔が、唐突に掛けられた言葉に、一瞬だけ身を竦ませる。
劔の眼前。まるで劔を背後に庇い、ベイバロンに向かうような位置に立つ聡治は、振り返らずに言う。
「状況は、人伝に聞いただけだから、完全に分かってるわけじゃないけどさ。この惨状が兄さんの所為な訳ないじゃないか。だって町の人を殺してるのはこいつの子供なわけだし、それを指示してるのはこいつだ」
 だから悪いのはこいつだよ、と聡治は断じる。子供の様な理屈だが、だからこそ正鵠を射ているとも言えるかもしれない。
聡里と同じ顔をした竜と向き合っても、彼の表情は変わらない。瞳は揺るがない。ただ真っ直ぐと、眼前の「敵」を見据えていた。
「詭弁ですね、『兄様』。この状況を引起したのは、間違いなく劔『兄様』の軽挙ですよ」
 聡里の口調で、聡里の声音で、嘲るようにベイバロンは言う。
耳朶を打つその聞きなれた、そしてもう一度聞きたいと心から願った声は、呪術めいて劔の体を硬直させた。
 しかし、聡治は瞳も逸らさない。徐に一歩、踏み出し、その距離を徐々に埋めていく。
「黙ってろ蜥蜴モドキ。お前の寝言になんざ欠片も興味ねえんだよ」
「手酷いお言葉ですね。貴方の所為で死んだ妹に掛ける言葉とは、とても思えません」
 動じない。迷わない。
腰の両側に吊り下げた、二つの呪符ケース。その内右側のケースから、一枚の呪符を取り出す。
引き裂かれた呪符から、刻まれた呪文が蛇のようにのたうちながら、聡治の腕に流れ込む。それは流入中にも絶えず展開と発動を繰り返し、刻々とその紋様を変化させていった。
呪文は瞬く間に聡治の全身を覆いつくすと、僅かに光り、やがて何の痕跡も残さずに、消えた。
七大罪【傲慢】。
その効果は、彼の考案した七つの符術の中でも、指折りの単純さを誇る。
単純な、身体能力強化だ。
ベイバロンが翼を翻し、加速を開始する。それを視覚ではなく、肌で感じ取った聡治は動く。
今度は左のケースから取り出した符を二枚投擲し、ベイバロンの進路上に障壁を展開。漆黒のそれは竜の行く手に立ち塞がると共に、その視界を遮った。
ベイバロンはそれに怯む事も無く吶喊。伸ばした翼の先端を鞭めいて振るい、障壁を容易く砕く。だが、割れ砕けた障壁は霧散する事無く、空中に散らばり、陽光を遮って微かな陰に覆われた一帯を作り出した。
進路上には、誰もいない。聡治も、そして劔もだ。
「兄さん!」
 中庭全体に、声が響く。散らばった障壁によって音を反響し、その出所を推察させない。
臭いがする。風を切る音がする。伏神聡治は、過たず儂に近付いてきている。そう確信するベイバロンを他所に、聡治はただ簡潔に言い切る。
「もし自分が悪いと今でも思ってるんなら、少しでも上伏の人達を助ける為に動けよな!」

601数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:42:07 ID:ss5gHwv.0
 叫びながら、聡治は重力に身を任せる。目標は眼下。砕けた障壁の影に己の姿を潜り込ませ、逆光を背負う聡治は、上方からベイバロンの首筋を狙う。
重力に絡め取られ、矢めいて加速する聡治。突き出された右足が、今にもベイバロンの細首に叩き込まれんとしたその瞬間、ベイバロンはぐるりと旋回し、上空を、即ち聡治を仰ぎ見る。
両者の視線が、正面からぶつかり合う。そして両者は、互いに笑みを漏らした。
回転の勢いのまま、ベイバロンは蹴撃を放つ。聡治の長く、無防備に伸ばされた足は、しかしその致命的な攻撃に当たることはなかった。
接触の瞬間、聡治の姿が大きくぶれる。そしてそれは、やがて霞のように消え去って、後には虚空だけが残った。虚像だ、またしても。
生まれる、一瞬の静寂。
いや、それは正しく静寂とは言えない時間であったことを、ベイバロンの五感は十二分に承知していた。空間に散らばる障壁の破片が、一瞬だけ、軋むような音を立てたのだ。
ベイバロンの周囲に半球状に広がるそれらは、次の瞬間、爆発的な速度で収縮する。ベイバロンからすれば、それは幾千もの鏃が飛来してくるかのように思えただろう。
そこには、逃げ場など何処にもない。人間ならば、考える間もなく絶命した所だろう。
だが、ベイバロンは竜だ。条理を逸脱した存在だ。
ベイバロンは、再び咆哮を放つ。物理的な衝撃が周囲に拡散し、木の葉のように障壁の破片が吹き散らされる。一気に周囲が明るくなり、太陽を仰ぎ見る形となっていたベイバロンは、唐突に降り注いだ陽光に、一瞬だけ眼を細めた。
少しだけ狭まった視界は、同時に竜の六感をも鈍らせ、結果「その音」をを聞くまで、ベイバロンは聡治の接近に気付くことができなかった。
ジャリ、と靴が地面を踏みしめる音を聞くまでは。
前方、進行方向に視線を巡らせるベイバロン。眼と鼻の先と言えるほどの近くで、右腕を大きく振りかぶる伏神聡治の後方遠くで、伏神劔がうろたえた様子で立っている。
位置関係は、何も変わっていない。
奇襲のタイミングを、完全に読み間違えたのだ。
迎撃。いや、間に合わない。
咄嗟に顔の前で交差させた両腕に、人が出せるものとは思えない程の、尋常でない圧力がかかる。加速していた事が仇となった。その威力は、砲弾のそれと遜色ない物だったと言っていい。
翼が翻る。
静止。そして後方へと飛翔する。聡治の腕力によって「射出」される形となったベイバロンは、空中で旋回。慣性を無視するように停止する。
上空数メートルから聡治らを見下ろし、ベイバロンは未だに笑みを崩さない。
「暴力的な兄じゃのう。妹の顔を殴りつけるとは」
 聡治は答えない。眉一つ動かさない。
代わりとばかりに、後方の兄を振り返ると、ニカリと、彼らしくない少年的な笑みを浮かべた。
「『俺を置いて逃げる』んじゃない。『俺に託して救助に向かう』んだ。ここは俺に任せて先に行け、ってな」
 その言葉を聴いた劔は、何処か安心した様でいて、絶望した様にも見える複雑な表情を浮かべ、少しばかり逡巡すると、「すまない」と小さく呟いて踵を返し、伏神邸の正門へと向かっていった。
遠ざかっていくその背中を眺めながらも、空中のベイバロンは何もしない。ニヤニヤと浮かぶ笑みから考えるに、その方が面白いと考えているのだろう。
その態度も油断といえる態度ではあるが、流石にもう奇襲は喰わないだろう。注視されている事を、肌で感じられる。
――【傲慢】ではダメか。
既に効力が切れた肢体を軽く動かす。少しだが、疼痛があった。やはり反動が小さい。効力が薄かった証拠だ。
七大罪【傲慢】の効果は、単純な身体強化。そしてその強化率は【憤怒】と同様、聡治の意識と密接に関係していた。

602数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:42:46 ID:ss5gHwv.0
必要なのは、思い込みだ。
己が相手よりも強いという思い込み。出来るのならば、自分こそが最強だという思い込み。現実や結果を全て無視した、白痴の如き自尊心こそが、【傲慢】をごうごうと燃え盛らせる燃料たりうる。
七大罪の中では、言ってしまえば、聡治とは最も相性が悪いとさえ言える符だった。
実戦経験の少なさに起因する、戦術眼の未熟さこそあれど、聡治は基本的に現実主義者である。厳然たる危険を目の前に、なおも自分の力を信じられるほど、彼は幼くない。
今まで【傲慢】符を使った事は何度かあったが、それらは全て、勝算があった上での行動だった。全てここぞというタイミングで、勝てると確信した相手にのみ使用していた。
今回のように、勝てるか分からない――いや、確実に負けると理解できてしまう相手に使用したのは初めてだった。そういう意味では、先ほどの攻撃は実験的な意味合いもあったのだ。
結果は、まあ大体予想通りだった。
少しの間だけなら、ある程度の強化は出来る。結構な速度を持っていた竜を、カウンター気味に殴り飛ばしても、反作用によるダメージは全くと言って良いほど無い。
だが、やはり継続時間が短すぎる。ストックが100枚なり200枚なりあるなら話は別だが、戦闘中の連続使用は控えた方が良いだろう。
それ以前に、かの竜に対して打撃は鬼門だ。何せ、慣性の法則を無視した飛行を行う相手だ。どれだけ力を込めようと、打撃方向へと飛ばれたら為す術は無い。
一応、効果的な打撃方法も幾つか思いつきはするが、どれもが主戦術にするには奇襲的な要素が強く、即効性が低い。トラップの一つとして、記憶の片隅に留めておく程度にしておこう。
 今のところの感想としては、ベイバロンは単体ではそれほど強くない、と感じる。何というか、戦闘経験が圧倒的に足りてないのだ。
簡単なフェイントに二度も引っかかる程度の練度に、己の勝利を戦闘中に確信し、慢心して隙を見せる間の抜け方。これで弱敵ならばよかったのだが、生憎と相手は竜だ。生存確率が少しばかり上昇したに過ぎない。
アレが気まぐれに振った手が掠りでもすれば、恐らくは大きな負傷を負う事になるだろう。【傲慢】を使っていればある程度は軽減できるだろうが、どれほどのダメージになるのか、さすがにそれを実験する勇気も、必要もない。
だというのに、向こうはこちらの切り札とさえ言える三つの符術――即ち【暴食】【傲慢】【憤怒】を以ってしても、見る限りでは傷一つ付けられていないと来た物だ。
全く、嫌になる。甚だしく不公平だ。聡治はため息を漏らさざるを得なかった。
しかし、まあ良い。ここまでは許容範囲内だ。もとより、竜を倒そうなどとは思っていない。
聡治は左手を撫ぜる。
少し前、生えてきたばかりの腕。この身に、人ならざる力が宿る証。しかし右掌に感じるぬくもりは、何の変哲もない己の体温のみであり、本当にこれが、「龍」の力によって生成された物なのか、疑問を抱かずにはいられなかった。
――お前の力が俺の力っていうのは、嘘だったのかよ、白龍。
恨むぞと呟くが、その口調はどこかおどけて聞こえた。
紛れもない危機を目の前に、聡治の心にはしかし、微塵の恐れもないのだ。
聡里を装う龍に対する、断固たる怒りと殺意を差し引いても、彼の精神状態はやや異常であった。
下手を打てば、死ぬ。最善手を組み上げても、命の保障になるわけではない。そんな事、百も承知である。「死にたがり」が再発したのかもしれない。能動的な自殺衝動が。
だが、それだけではない。聡治は確信している。
身の内より湧き出てくる高揚感。そして、仄かな緊張感。こんな心地の良い感情が、其の様な暗い情動であるわけが無い。
彼は、竜を倒せない。だから、竜を倒せる準備が整うまでの時間を稼ぐ。
彼は、死にたくない。だから、どれほど敵が強大であっても、決して諦めない。
彼は、もう誰にも死んでほしくない。だから、何があっても退くつもりはない。
俺に任せて先に行け。それは決して、適当に言った言葉ではない。彼は、この場を「任されている」。人々を救い、竜を屠る為の一刀だと、認められているのだ。
過大な役だとは思う。役者不足が過ぎるとも。だが、そこに介在する彼女の、クロガネの信頼が、そこからは窺い知れた。
竜を倒す為の準備。それが何なのかは分からないが、護衛対象を一時的とはいえ危険に晒すような方法だ。彼女の性格から考えて、その効果は折り紙付きとさえ言えるだろう。
この考えもまた、信頼ゆえのものだろう。
誰かを信じ、誰かに信じられる。そんな当たり前の行動が、彼の心の中に不思議な明りを点し、その恐怖を消し去る。我ながら何とも単純な脳味噌だと、聡治は苦笑した。
誰かを守る為の戦いか。悪くない。

603数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:43:00 ID:ss5gHwv.0
聡治は左のケースから、符を一掴み取り出し、無造作に空中にばら撒いた。木の葉めいて散らばるかに思えたそれが、風に漂ったのはほんの一瞬だった。
それは地面に対して垂直に、空中にて静止する。
「錬成符」や「障壁符」などという基本的な物から、二度も竜の目を欺いた、伏神固有の「虚飾符」など、その種類は多岐に渡っていた。
パチン、と指を鳴らすと、それに呼応して魔符群が、その姿を消した。聡治の動きに、思わず視線を回らせていたベイバロンも、その光景を目撃し、僅かに目を細めた。
さて、大盤振る舞いと行こう。どうせ元値はタダなのだ。
「一つ、良い事を教えてやるよ、竜」
 地面を踏みしめて、一歩。見下ろす竜の眉間に、深い険が現れた。
「聡里が俺の事を『兄様』と呼んだ事は一度もない。あいつは『お兄様』と呼ぶ」
【傲慢】を一枚取り出し、ビリと破く。溢れ出し、流れ込む呪文に塗れながら、聡治は完全に表情の剥がれ落ちた顔のまま、言い放った。
「粗末な嘘だな、竜。――来い。どちらが無能か教えてやる」
「驕るなよ、出来損ないが。格の違いというものを、分からせてやらねばならぬようだ」

604数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:43:24 ID:ss5gHwv.0
 走る。走る。走る。
地を踏みしめて、蹴り飛ばす。まるで空でも駆けるかのような軽やかさで、彼女は山道を走り抜ける。
伏神山は、伏神家にとってはまさに城砦とでもいうべき地であり、魔界人租界の周囲に設置されていた地雷原ほどではないにせよ、その術式的防備は厳重である。
しかし少女――クロガネ・DSはそれらのどれ一つにすら触れる事無く、まるで無人の野を行くが如くに走り抜ける。
まるで罠や監視魔符の位置が見えているかのように――いや、事実彼女の眼はそれらを捉えているのだ。人と同様の見た目と、血の通う肉を持ちながらも、やはり彼女は一般的な「人間」の垣根を大きく飛び越えた存在であるのだ。
でなくば、竜殺しなどやってはいられない。
その身に纏う、肩部が大きく露出した漆黒のドレス――ワンピース、と言った方が正しいだろう――は風に翻り、はためく。その裾を煩わしげに押さえながら、クロガネは大きく跳んだ。
足下の地面は、クレーターめいた大きく抉れ、彼女はその反動のまま、大きく飛び上がった。風が頬を撫で、一瞬だけ重力を振り切った見返りとばかりに、心地よい浮遊感が彼女の体を包んだ。
だが、それもすぐに終わりを迎える。
彼女の体は放物線を描き、やがて重力に絡め取れ、地に落ちていくだろう。しかもその眼前には、落差数十メートルにも及ぶ、巨大な崖がぽっかりと口を開けている。
もしもこのまま落下すれば、如何な彼女とて、無事では済まないだろう。他ならぬクロガネが、それを一番承知している。
しかし、彼女の表情は一切動かない。心にも、漣ほどのざわめきも起こらない。彼女は確信しているのだ。己の「生」を。
体を大きく開いて、風を受け止める。頭が上がり、クロガネは空中を泳いでいるかのような、人間的錯覚を覚えた。それを馬鹿馬鹿しいと思わず、大切な宝物のように心の奥底にしまいながら、少女は黒髪を靡かせ、呟く。
「『ヤタガラス』、転送シークエンス開始」
 それは一瞬の出来事だった。
空間が揺らぐ。それは落下するクロガネの露出した肩に、ピッタリと寄り添うように追従し、その肩幅に沿うように横に広がっていく。
そしてクロガネの肩幅を大きく逸する長大な物となった。その全長、およそ五メートル。
座標特定。空間連結完了。彼女の体内で、音も無く幾十もの術式が走り、「それ」を人の世界に引きずり出す。
可装飛行ユニット「ヤタガラス」。
光を吸収する全き黒の翼が一対。それらの下部には、六つの円筒を一纏めにした様な鋼鉄の機材が、それぞれ一つずつ取り付けられている。もしその場に機界の文明に詳しい人物がいたならば、それが「斉射砲」と呼ばれる火器の発展形だと分かるだろう。
ユニットの最前方には、鴉の名前が示す様に、真紅色のアイカメラを輝かせる不吉な顔つきの鳥の顔の様なものがある。
胸部に該当する部位から、足めいた機材が二つ伸びている事を除けば、それはまさにカラスだった。
クロガネの肩を鷲掴みにする両足、即ち神経接続機《ナーブコネクター》は、既に彼女との同調を終えている。彼女は指を動かすかのような気安さで、ユニット後部の推進器や、各種スラスターを操る事ができる。
それを証明するかのように、推進器がボウと高熱を吐き出す。
ヤタガラスの長大な翼が、パラシュートめいて風を受け止め、得られた僅かな抗力によって、落下速度は緩くなったにせよ、クロガネはいまだ重力に捕らえられている。
しかし点火した推進器が、その落下軌道を捻じ曲げる。地面に対して垂直であったベクトルが、徐々に並行に。遂には完全に重力を振り切り、クロガネは足下の樹林を眺めるような体勢で、一路、上伏町を目指す。

605数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:43:36 ID:ss5gHwv.0
後背部の自由展開装甲が、液体めいて機体の表面を滑り、ユニット下部の露出したクロガネの周囲を覆い隠す。漆黒の闇の中、何処からとも無く伸びてきた、幾本もの姿勢固定用のアームが、その肢体を掴み、固定する。
同時にクロガネの視界も塞がれる、筈だったのだが、クロガネの視界には露出時と変わらない映像――いや、平時よりも遥かに高度に処理された映像が映し出されていた。
コネクターを通じて、ヤタガラスの電脳によって処理されたアイカメラの映像が、彼女の網膜には映し出されているのだ。それと同様に、外部の音声も、タイムラグ無しに彼女の耳朶を打っている。
まさに一匹の鴉となり、クロガネは空を切り裂くかのように飛翔する。
『アギョー・スタチューによる竜殺剣代理召喚の影響により、現在、全竜殺兵装、及び補助兵装の使用不可』
「承知しています。『カゴユミ』展開」
 脳に直接送られてきた電脳の囁きに、クロガネは肉声で応じた。コネクタは思考をも読み取るため、本来ならば必要は無いのだが、これはクロガネの癖の様な物だ。
クロガネの意志に呼応して、両翼の斉射砲が起動する。収納されていた砲身が前方に伸び、微かな駆動音と共に回転を開始する。
その砲身の奥に、ボウと妖しく光る薄紫色の「何か」がある事には、余人が気付く事は無いだろう。
伏神山腹から上伏町まで、人間の足ならば二時間以上かかるが、天駆ける鴉の翼ならば三分と掛からない。
凄惨な光景が、程なくしてヤタガラスのアイカメラに捉えられる。
胸が悪くなるような光景だった。数十体にも及ぶ竜が、逃げ惑う人々をまるで羽虫でも潰すかのような気安さで、鏖殺している。
人界の伝統的風情を色濃く残す町並みは、見る影も無くなぎ倒され、人間由来の赤・白・桃色で悪趣味に染め上げられていた。
轟く魔竜の咆哮に混じって、人々の断末魔や怨嗟の声が聞こえてくる。咆哮が含有する魔術的効果は、ヤタガラスの周囲を覆う対術障壁によって阻まれ、クロガネの体には何の影響も及ぼさない。
だがクロガネの心は、大きく揺れる。まるで呪詛にでも掛けられたかのように。
クロガネは込み上げる嘔吐感めいたものを、大きく深呼吸する事によってどうにか飲み込み、ギンと眦を決して、叫ぶ。
「全天視界モード起動! 全リミッター解除! これより戦闘駆動を開始します!」
 斉射砲が、威圧的にキュルキュルと廻る。
真紅のアイカメラが、町内全体に跋扈する竜たち全てを睥睨するかのように、禍々しくギラリと光る。
漆黒の凶鳥は雄雄しくギィと鳴き
――殺戮を開始する。

606数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:43:57 ID:ss5gHwv.0
吶喊。抜刀。納刀。その繰り返しだ。
だがその効果は凄まじく、彼の周囲には、夥しいほどの仔竜の死体が転がっていた。
「……ハァ、流石にこれ程の数ともなると、一苦労ですね」
 真川敦は心底ウンザリした様に溜め息を吐きつつも、その歩を緩める事は無かった。走り回っていなければ、『また』死にかねない。
幾ら「彼女」がいるとはいえ、だ。
 吶喊。抜刀。納刀。
霊質で形成された刃が、仔竜の体内で即座に実体となり、鱗の頑健さも何もかもを無視して、その巨大な首を寸断。敦は静止せずに駆け抜ける。
一瞬前まで彼がいた空間を、丸太のような仔竜の尾が、空間を切り裂くかのような音を立てて通過していった。
「いや、いや、流石真川のお坊ちゃん。あたしゃあ、もうそんなに走り回れないよ」
 割烹着を身に付けた、この戦場において明らかに異質な存在。稀口のおばちゃんは朗らかに笑いながら、しかしその目線を仔竜たちからは逸らさない。
古びた魔術書と、詠い唱える呪文が、彼女の声そのものを矛、そして盾へと変じさせる。彼らを囲む様に展開する仔竜らが、ある群では木の葉のように吹き飛ばされ、またある群では、吐き出した必殺の咆哮をかき消され、怒り狂って暴れ回っている。
――貴方の場合、そんな事をする必要が無いだけでしょう。
真川は思わず苦笑しつつ、またも刃を閃かせる。首を失った仔竜の巨体を潜り抜けるように走り、束の間の置き盾とする。
その合間にも、耳にはワンワンと酷い音が響いてきていた。稀口女史にその魔術的作用を打ち消されてはいるものの、竜の絶叫はその音を完全に失ったわけではない。
音とは空気を伝わる波。即ち衝撃である。大幅に減じられつつも、やはり数十体分ともなると、それだけで武器となるほど大きかった。
その音圧は凄まじく、己の周囲に、音の結界とでも言うべき物も発生させているらしい稀口女史はともかく、もしまともな人間がこの場にいたならば、良くて昏倒・失神。悪ければショック死をしかねない程だった。
全く、霊体とは便利なものである。
だからこそ、この童話の竜の様な生物達は奇妙だった。物理的な存在ではないはずの敦の体を、一度ではあるが削ったのだ。
幸いというべきか、この場は霊質に富んでいる。傷は自動的に修復したが、やはりあまり気分のいいものではなかった。屍肉を喰らっているような気分になって、真川は大きく顔を顰めた。
故に彼は、もうこれ以上一撃たりとも喰らわない覚悟で、走り続けていた。疲れを感じない霊体であるからこそ、とれる方法だ。
一応、その作戦は今の所上手くいっている。霊体にも影響を与えると思しき魔竜の咆哮も、稀口女史という想定外の闖入者によって、無力化に成功した。
だが、一体いつまで持つだろうか。斬ろうが薙ぎ払おうが、巨翼を翻して飛来する仔竜たちは尽きる様子が無い。どころか、その密度は増す一方だ。倒した数より、襲い来る数の方が多いのだ。
ジリ貧だ。何とか打開策を見つけねば、いずれ破綻する事だろう。
進路を塞ぐように振るわれた仔竜たちの尾、前腕、牙を用いた飽和攻撃を、神速の居合いで以って無理矢理進路をこじ開ける事で、回避する。
身体の一部を抉られた竜の絶叫を背後に聞きながら、急制動・反転。
そして、一閃。
地面を踏みしめ、満腔の力を込められて放たれた斬撃は、居並ぶ仔竜らの首を、纏めて斬り飛ばすには十分な威力だった。延長していた刀身が一瞬で収縮し、鮮血がその軌跡を残酷に彩った。
見事な一撃だった。しかし、あまりにも見事過ぎた。
敦の疾走が、一瞬だが停滞する。その傍らには、猛り狂う仔竜がいた。振り上げられた前腕の先で、鋭い鉤爪がギラリと光る。
――不覚……!
瞠目し、来る一撃への心構えを整えかけた敦は、しかしその行為が無駄だったと理解する。
 僅かな風が、彼の頬を撫でた。

607数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:44:10 ID:ss5gHwv.0
しかし目の前で起こった現象は、そんな生易しいものではない。衝撃波の壁とでも言うべき物が、仔竜の巨躯を傾かせたかと思うと、その足を地面から無理矢理引き剥がし、遂には弾き飛ばしてしまった。
 稀口女史の魔術だ。敦は疾走を再開すると共に、視線を回らせた。その先では割烹着の女性も、敦に視線をやって、「まだまだ甘いな」とでも言わんばかりの、微笑を浮かべていた。
「すみません、助かりました!」
「気合入れな、坊ちゃん。あたしらがここで暴れてる限り、こいつらはこっちに寄ってきてくれるんだ。こんな大舞台で倒れたとあっちゃあ、男が廃るって物だよ!」
「それは、一大事ですねッ!」
 飛び上がりながら、呪文を詠唱。大気が凝固して、空中に即席の足場を形作る。それを蹴り飛ばして、敦は再跳躍。十数メートルの高さまで飛び上がった彼の下方を、仔竜が地を揺らしながら駆け抜けていった。
仔竜は体当たりが失敗したと見るや、四足を踏ん張って急停止する。そしてそのまま踵を返し、再度攻撃を試みる。だがそれは、稀口女史の音の壁によって阻まれ、叶う事はなかった。仔竜群の一つに凄まじい勢いで叩きつけられ、嫌な音と共に翼が拉げる。
敦は空中で身を捻り、危なげなく着地する。舞い上がった砂埃の向こうでは、大量の仔竜達が、依然として彼らを包囲していた。だがどうした事か、猛り狂う咆哮は聞こえど、仔竜たちはその包囲を強めるでも緩めるでもなく、遠巻きに彼らを眺めているのみであった。
まるで、彼ら二人を恐れているかのように。
――いや。
「……鳥の鳴き声、かい?」
 鳴り止まぬ仔竜たちの咆哮に混じり、聞こえてくるか細いそれを、稀口女史は聞き逃さない。キィと、甲高くも雄雄しいそれは、やがて大気を振るわせるほどの大音声へと変貌を遂げた。
その段になって、ようやく真川もその鳴き声に気付いた。
詠唱と、つま先で地面に描いた術式による簡易防壁を眼晦ましとして使用し、竜の突進をやり過ごす。飛来する瓦礫を避け、猛追する数多の竜の攻撃を掻い潜り、稀口女史の傍らに立つ。
共に、空を見上げる。
青い鱗を纏った仔竜達が行き交う、絶望に染まっていたはずの空に、今、高校と照る太陽が顔を覗かせていた。
そして、それが地上に降り注ぐのを遮る影が、一つ。
響き渡る鳥の鳴き声が、一際強くなる。心なしか、仔竜の咆哮が弱まっているように思えた。
仔竜たちは、確かに恐れを抱いていた。ただしそれは、真川らにではない。俄に開けた蒼穹を行き交う、漆黒の陰にだ。
あれは――
「鴉、か?」
 およそ生物が出すべきではない速度で、縦横無尽に飛び回る陰。それは時折、晴天にあってなお冴え冴えと輝く針の様なものを撃ち出して、追いすがる仔竜を血霧と化していた。
体系化・効率化の波から逃れた「旧魔術」とでもいうべき力の担い手である稀口女史は、目端にその姿を一瞬捉えるのが精一杯であった。
が、真川は「生まれながらの災厄」とさえ謳われる存在が、大手を振って通学する五界統合学院に籍を置き、尚且つ学内の治安維持を担う風紀委員を、エクリエルに代わって統括・指揮する立場に身を置く男だ。
造作も無い事、とまでは言わないが、彼の知る限りのあらゆる術式で強化された視力は、見上げた空を乱舞するその凶鳥の姿を捉えていた。
 真川のその言葉を聴き、稀口女史も得心がいった様に頷いた。
「鴉、鴉か。確かにそうだねえ。この鳴き声といい、ちょろっとしか見えないが、あの姿といい、確かに鴉だ。この蜥蜴もどきと敵対してるってことは、仲間――」
「――とは、限らないでしょう」
 真川が言葉を引き継いで、続ける。その通りだよ、と言わんばかりに、稀口女史は頷いたが、数瞬の後、突如ニッとふてぶてしく笑った。
「鴉、か。今でこそ不吉の象徴みたいに言われちゃいるが、過去には神からの使いとも言われていたんだ。これが吉兆か、それとも凶兆か。賭けに乗ってみるつもりはあるかい、坊ちゃん?」
「――ここで引いたら、男が廃る。でしょう?」
 知らず、眉間に刻まれていた皺が解れる。更なる不確定要素の出現に、引き締めざるを得なかった頬を、無理矢理持ち上げて、真川敦は何ともぎこちない笑みを浮かべた。
も少しハッタリを効かせられれば、合格点なんだがね。そう胸中で呟きながら、稀口女史は無言で、敦の答えを待った。
「ならば、是非も無し。賭けに勝って生き残り、これ以上誰も死なせない! そうすれば、大団円が待っているというものです!」
「よく吹いたよ坊ちゃん! さあ、大盤振る舞いと行こうかねぇ!」
 陽光を反射する銀の閃きと、姿無き音の塊が乱れ飛ぶ。
仔竜の数体かが激怒の咆哮を喚き散らし、殺戮の坩堝と化したその場における、たった二人の獲物へと殺到した。

608数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:44:23 ID:XEYMRE4k0
死闘。疑う余地など一切無い、正真正銘の命の取り合い。それを眼下に眺めながらも、しかし鴉は――クロガネは機動を止めない。
様々な思いが湧き上がらんとする胸中に、あえて暗幕を引き、彼女は断固として、一個の殺戮機械として、絶望に染まっていた空を舞うのだ。
それこそが、最も彼らの助けとなる行為であり、その行為でしか、クロガネには彼らを助ける事などできない。
ならばそれを断固たる決意で、彼女の持つ全能を用いて行う事に、逡巡の余地などあろう筈もない。心配や再開を喜ぶ事は、後でも出来るのだ。
前方を塞ぐように現れた数対の仔竜を、最小の機動で躱す。標的の陰すら掴む事もできず、のろのろと振り返ろうとした一群は、グリンと一八〇℃回転した速射砲の蜂の巣めいた砲身が、鴨撃ちめいて容易くその巨体を穿ち砕いた。
血霧が淡く彩る空を駆けながら、クロガネは祈る。
――どうか、歌ってください。ミス柳瀬川。
「それが、この状況を打開する唯一の鍵なのです……!」

609数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:44:41 ID:ss5gHwv.0
 涙すら出なかった。
ビチャリと湿った地面を踏みしめる音と、ヌチャリと血液その他諸々で出来た謎の液体が糸を引く音は、もはや一組のセットの様に、少女の耳朶を打っている。
下は見ない。自分がどれだけ死者を冒涜した行いをしているのか、それを直視するのが怖かったからだ。さりとて、視線を前方から逸らすわけにはいかないので、自覚はせざるを得なかった。
人の死には慣れている。「中身」が零れ落ちた状態の人の亡骸で、キャアキャアと驚けるような人生は、残念ながら送ってはいない。
だが同時に、それを踏みしめて平然としていられるような殺伐とした世界にも、彼女はいなかった。魔道に落ちかけたことは幾度もあれど、その都度、多くの人間が彼女を引っ張り、外道の道へと引き戻していたのだ。
――瀬戸さん。柏さん。
特に仲の良かった二人の名前が、喉下から出かかった。死人は皆仏であり、丁重に弔わねばならない。そう教えてくれた彼らは、この状況を見たらどう思うだろう。
――あるいはこの「中」に、彼女らは「いる」のだろうか。弔ってほしいと、そう願っているのだろうか。
そこは正に地獄だった。倒壊した家屋や建築物の上や下に、酷く悪趣味な色合いの、赤黒い液体・固体がベチャリと付着している。それが生き物のなれの果てである事、そして散らばる指や顔の半身などが目に付けば、押並べて人間由来の物であるという事には、容易に気付けるだろう。
元が何人であったのか。そんな予想すら寄せ付けぬほど、徹底的に砕かれ、潰されている。漏れ出た、あるいは搾り出された種々の体液は洪水のように溢れ、奇跡的に通行可能な程度には「綺麗」な道、つまり少女――祢々が走る道を隙間無く染めていた。
まさに屍山血河だ。そこが現実の世界であるなどとは、到底信じられそうにない程の、凄惨な光景。
眼を、耳を塞ぎたい。何もかも放り出して、平和な所に逃げ出したい。
如何な露払衆とて、祢々はまだ少女だ。そんな欲求が湧き上がってくるのは、当然と言えた。寧ろそんな物を抱えながら、なお足を止めていない方が、異常とさえ言える。
『ミス祢々、ストップ。二十秒後に上空を竜が通過します。良しと言うまで、近場の建築物の陰に潜り込んでください』
 あまりにも唐突に、あまりにも平坦なトーンの声が、祢々の耳朶を打った。それが誰の声であるかを認識するより前に、彼女の体は動いている。
道の傍らに建って「いた」建物の陰、その健在の隙間に素早く体を滑り込ませる。折り重なった建材は運よく安定しており、長方形の機材を抱えた小柄な少女が一人入った程度では、崩落を起こす危険性はなさそうだった。
機材、要するにノート型のパソコンだ。彼女にはそれが何なのかは一切分かっていないが、聡治とその友人らしい黒い鎧に、出来る限り守り抜く様にと言いつけられている。
命が危なくなったら置いてでも逃げろ、と言われた気もしたが、恐らくは気のせいだろう、と祢々は断じた。
自分は死守しろと命ぜられた。自分は劔様の命令通り、聡治様を守る為に行動している。方法は迂遠ながら、これが最も聡治様の安全を守る事に繋がるのだ。
何も考えず、命令に従って己の身命を賭す。そうしている限りは、恐怖や悲しみを脇に除けておける。だからこそ、この任務に志願したのだ。
胸に抱えたパソコンをギュウと強く抱きしめて、祢々は危険が去るのを待った。すぐ近くから漂ってくる濃密な死臭を、認識の外に追い出そうとしながら。
ややあって、バサリと天空を切り裂くかのような音が響き、やがて遠ざかっていった。
『OKです。再び道なりに進んでください』
 再び、耳元で声が響く。
つくづく、不思議な道具だなと、己の右耳に差し込まれた「無線機」だとかいう、黒い楕円形の機械に感心しながら、祢々は素早く路地に飛び降りて、どす黒く染め上げられた道を走り出す。

610黒龍<致し方無いな、定命の者よ……:黒龍<致し方無いな、定命の者よ……
黒龍<致し方無いな、定命の者よ……

611一文抜けてたから張りなおし@西口:2015/06/23(火) 21:46:03 ID:ss5gHwv.0
家々が薙ぎ払われ、開かれた空。遠方に見える羽蜥蜴――どうも竜というらしい――の群の中を飛び回る黒い影が、絶望に染まる空にポッポと赤い点を作り出していた。
鎧は、あれを味方だと言っていた。だから恐れる必要などないと。だがあの影は、この地獄を作り出したのであろう竜達を、鎧袖一触に蹴散らす存在だ。それを「味方だから」の一言で、安心して眺めている事など出来よう筈も無い。
彼女にしてみれば、どちらも十把一絡げのバケモノだ。見つからないように、目をつけられないように、縮こまるようにして、駆け抜ける。
やがて周囲を流れていた廃墟然とした町並みが、徐々にその様相を変じさせてきた。徹底的に、町内の端から端までを、畑でも耕すかのような丹念さで砕き潰していた、先程までの街区とは違い、そこは破壊の跡が疎というか、どうにも「雑」に思えてならなかった。
疑問を抱えつつも、祢々は歩度を緩めない。時折入る鎧からの指示に従い、先程のそれと比して、圧倒的に綺麗になった道路をタタタと駆け抜けていく。
 玄関部を大きく抉られ、内装を曝け出す羽目となってしまった民家に飛び込んで、上空を回遊する暴威の視界から逃れようとジッとしていた祢々は、まるで雷にでも打たれかの様な唐突さで、はたと気付いた。
そうだ。この街区にはその成れの果ても含め、「人」がいないのだ。
祢々が身を伏せる和室には、木片と土、そして畳を張り替えたばかりらしく、芳しい藺草の匂いが立ち込めている。鉄の臭いは、しない。
 ならば表の町並みについても、説明できようという物だ。人がいないからこそ、竜はこの区画を半ば放置するかのようにおざなりに破壊して、他方へと散っていたのだろう。
もしくは逃げ散る人々を追い立てた結果、そういう形になったのかもしれない。どちらにせよ、もしその仮説が事実だとすれば、一つの簡潔な事実が浮かび上がる。
あの竜たちは、人を殺す事「だけ」を目的としている。食らうのでもなく、破壊の余波に巻き込むのでもなく、殺害そのものを目的としている。何かに統率されているとは思えない無秩序さながら、その「指針」ともいうべき物は決して曲げていない。
 ゾッと、怖気が奔った。
先程までの風景から、十分に推察できる事だったが、しかし改めてその事実を認識してしまうと、恐怖心が物理的な重量すら伴って襲い掛かって来るかに思えた。
見つかれば殺される。他の何を置いてでも、あの巨体は自分を殺す為「だけ」に爬行する。守ってくれる者はもう、いない。
恐怖が鎌首を擡げ、少女の心の中を塗り潰そうと暴れる。だが祢々は、誇りも名誉もないが、矜持だけは持ち合わせる「露払衆」が一振り、祢々切丸は強いてその衝動を飲み込んだ。己を律する術は心得ている。
しかし、本当の恐怖を前にしては、そんな物気休めにすらならなかった。
鎧の事務的な声が耳朶を打ち、祢々はこれ幸いとばかりに、路地へと躍り出る。一人ぼっちでジッとしているのが、この上なく恐ろしかった。敵だろうが味方だろうが、どうでもいい。自分以外の「人間」の傍にいたい。
無意識にもそう思ってしまった事を、誰が責められよう。どう取り繕おうと、祢々は所詮10に届く程度の童女に過ぎない。それに何のかんのと言えど、彼女の周りには常に、保護者とも言える大人達が何人もいた。真に孤独な時間というものを味わうのは、初めてだった。
自分は露払衆が一振り。常人とは隔絶した異端。その思い上がりとさえ言える強烈な自負が、少女の恐怖に対する嗅覚を鈍磨させる。胸の内をそれ一色に塗りつぶされかけながらも、それが恐怖だと認識する事すら出来ないという状態が、どれ程危険な事か。
四つ辻を曲がった先で、何処か歪な笑みの様な物を浮かべ、己を真正面から見据える正真正銘の化物――竜の視線を浴びた時、祢々はそれを嫌というほど理解した。
『――ミス祢々! コンピューターを捨てて逃げて下さい! 今すぐに!』
 恐怖に押し潰され、思わず聞き流していた鎧の声に、漸く意識を向ける事が出来た。しかし、少女は動かない。
死への恐怖に、身が竦んでいた。
同年代の少女に比べて、祢々は確かに死というものに慣れ親しんでいるが、死への恐怖とは畢竟未知への恐怖だ。一度も死んだ事もない者が、それを真の意味で克服する事など、出来よう筈もない。
しかしその恐怖の中に一点、別の感情が入り混じっていた。
安堵だ。

612数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:46:24 ID:ss5gHwv.0
ああ、死ぬ事が出来る。命も何もかもを放り出した上での、逃避としての死ではなく、その遂行を最後まで目指した、名誉の殉死を遂げる事が出来る。そうはっきりと自覚したわけではないが、へたり込んだ祢々の表情は、何処か和らいでいた。
竜が、何とも緩慢な動作で口を開け、ゆっくりと近付いて来る。その様子が、明らかに人間的な悪意で彩られている事に、しかし祢々は気付けない。そんな余裕など無かった。
自分は噛み砕かれるのか、それとも道すがら視界に映った死体の様に、弾け飛ぶのだろうか。どちらにせよ、生き残れるなどとは露ほども思っていない。
 ぺたんとへたり込み、眼を瞑る。末期を汚さぬように、パソコンを強く抱きしめる。これを守って死んだとあれば、きっと誰も自分をいらないとは言わない筈だ。
――ああ、でも。
聡治は、残念がりそうだ。
初めて会話した時には、いきなり怒鳴りつけられはしたが、その後も少ないながらに会話を交えて、彼が心根の優しい人間だと知った。もしかしたら、泣いてくれるかもしれない。
だけどやっぱり、心の何処かで残念がるだろう。祢々になど任せないで、素直に鎧を遣わせばよかった、と。
鎧を押しのけて自分でやると言っておきながら、殉死だの何だのと意味のない事を並べ立てて、結局は失敗したのでは、無能の誹りを受けても不思議ではない。
嫌だ。嫌だなあ。
何より聡治の、劔の弟の期待に答えられないのが、たまらなく嫌だった。
だが事ここに到って、出来る事などある訳もない。獣の様な臭いと、荒い鼻息が頬を撫でるのを感じる。
視界を埋め尽くす暗闇が晴れる事は、どうやら無さそうだった。

613数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:46:38 ID:ss5gHwv.0
「……これ、いつまで続くんだ」
「んー、ソナーの反応を見るに、あと数分で終わりそうなんだけど……」
「それ、たぶん百回は聞いた」
 ジョエル、リョタ、フィルの三人組は、未だに横穴を彷徨い続けていた。
一体何キロメートル歩いたのだろう。体感的には、もう伏神山の山裾を何十週もしたと言われても、違和感のない程に時間が過ぎている。
しかし先頭を行くフィルの旋律魔法による測定では、横穴の全長はたかだか数百メートル程度であり、もう既に出口に到達していてもおかしくはないのだ。だが現実の彼らは、未だに闇の中を彷徨っているままであり、巧妙の一つすら見えはしなかった。
何か魔術的な偽装が施されているのは火を見るより明らかなのだが、その痕跡がどうにも読み取れないのだ。
考えられる可能性としては、ここが結界の内部であるという事くらいであろうか。それにしては、侵入する際に発生するある種の違和感の様なものを感じ取れなかったが。
どうにかここから抜けようと、先程から試行錯誤は繰り返してみた。
しかし然程の備えもない現状に置いては、打てる手にも限りがある。精々前方、もしくは後方に全力疾走したり、壁や床、天井に穴を掘れる程度だ。当然ながら効果がある訳もなく、結局こうして、彼らは漫然と歩いている。
通常ならば、絶望的な状況だ。汗で体がぐっしょりと湿り、気力も体力も魔力も底を尽き、もっと罵詈雑言を吐きながら、地面を這いずり回っていてもおかしくないと言えよう。
しかし何故だろうか。彼らは確かに少々ウンザリしてはいるものの、別段強硬に発したりする様子などは、まるで見て取れない。彼らの神経が図太い事を抜きにしても、これは少々異常である。
理由は二つ。一つは、何故か力が一切尽きない事が挙げられる。
何時間もここに滞在している上に、幾度か全力で疾走しているにも拘らず、一切の疲労感を彼らは感じていないのだ。体力の無いフィルですら、である。
そのフィルが、恐らくはこの三人組の中でも、最も強い違和感を抱いているだろう。この横穴に侵入した当初から、横穴の全長測定や、痕跡の探知などの為に、幾度も魔法を使っているにも拘らず、魔力の欠乏などに起因する疲労感などが、一切訪れないのである。
フィル自身はそれなりに優秀な魔術師であるが、流石に何の供えも無くそんな事を続ければ、下手をすれば倒れかねない。だのに、彼は今だ意気軒昂であった。
そして二つ目は、時間感覚が狂っているためである。
彼らは確かに、体感的には数時間横穴を彷徨っていると自覚している。しかしより精確に言うと、「気付けば」数時間経っていたのだ。
何も作業をせず、ただ歩いているだけでも、気付けば時間が大分過ぎてしまう。忘我状態と言うか、何も考えずに体を動かしている時間が、あまりにも多いのだ。
――その状態が、実はどんどんと長くなってきている事に、彼らは気付いていない。人を静かに食い殺す、無限回廊の腹中に収められてしまった事に。
「そういえばさあ、俺昨日夢見たんだよ」
 列最後尾のフィルが、口を開く。
「マジか。相手は誰だ。朝霞様か?」
「どういやらしかったの? まさか素足で踏んで貰ったのかい……!」
「何で淫夢前提なんだお前ら。俺だって哲学的な夢くらいは見るぞ」
「ああ、人は何故おっぱいに惹かれるのか、とか」
「何言ってるんだ。おっぱいは女性についているから良いのであって、それ単体に惹かれることなんてほぼ無いだろう」
「だが岩肌がおっぱいで構成された断崖があったらどうする」
「しめやかにロッククライミングをするね」

614数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:46:52 ID:XEYMRE4k0
先頭のフィルも、後ろを向いて会話へと参加する。出口があるにせよ、どうせ暫くはたどり着けそうにも無いのだから、大丈夫だろうという判断だ。明りもあるし、探査用の旋律も絶えず投射し続けている。何か変化があれば、すぐに感じ取れるだろう、と。
それを軽率と誰が言えようか。彼らは所詮、学生なのだ。
ぽふん、と後頭部に柔らかい何かが当たるとともに、花の香の様に甘い匂いが、フィルの鼻腔を擽った。布の感触越しに伝わってくる仄かな温もりが、人の体温であると気付いたフィルは、彼の中ではそこそこの素早さで、前方へ跳んでいた。
「……うっわあああああああああ!!!」
「ヤメロー! ヤメロー! 俺にそっちの趣味はないぞ!」
 必然、彼のすぐ後ろにいたリョタが、押し倒される形で地面に倒れこむ破目になり、ぎゃあぎゃあと喚きながら、二人して地面を転がった。
唯一無事だったジョエルは、呆然としていた。友人二人の無様な姿に、では無い。フィルがいたであろう空間、その後方に突如として出現した、人影にである。
ローブで全身をすっぽりと覆っているが、その着古した布の下から僅かに覗く柔らかな膨らみ、そして何より、フードの奥に見えるその面立ちは、あからさまに女性のものであった。
美女である。そして何よりも、彼らが様々な理由から敬愛して止まない、柳瀬川朝霞に似ていた。瓜二つ、とまではいかないが、少々あどけなさの残る彼女の顔が、年月を経て完成に到れば、こうなるであろうと容易に想像できる程だ。
しかし彼女の日に焼けた褐色の肌とは違い、女性の肌は新雪の様に透き通る純白である。
そしてどういう意味があるのか、その楚々とした面には、顔の半分を覆うほどの大きな刺青が施されていた。それは夜天の月の様に妖しく輝いて見え、女性の蠱惑的な魅力を引き出すと共に、どこか抜き身の刃めいた剣呑さが感じられた。
深い深い夜のような、紫色の眼光に正面から見据えられ、ジョエルは金縛りにあったような心地で、女性の顔を眺める事しか出来なかった。
「朝霞、様?」
「……『様』?」
 我知らず呟いていた言葉が、功を奏したことに、ジョエルは気付かない。彼の口にした何反応して、どこか空虚な昏い輝きを宿していた瞳に、仄かに感情の光が灯った。
スッと、徐に女性が近寄ってくる。一瞬ビクリとしたジョエルだが、美女がこちらに寄って来るという状況は、酷く得がたい物だと漸く気付き、不動の姿勢で待ち構える。
「何というか、女の子につけるには些か不穏当な敬称に感じるのだけれど。……貴方達は、朝霞とはどういう関係なの? 友達か、それとも彼氏?」
「奴隷です!」
「下僕です!」
「卑しい豚でございます!」
 いつの間にか起き上がっていたフィルとリョタも加わり、銘々勝手な事を――しかし似通った意味合いの言葉を――口にする。
女性は押し黙る。というか、呆気に取られているのだろう。暫くして、大きな溜め息と共に「何をやっているのかしら、あの子は」という呟きを漏らした。
その所作は何処か所帯じみた印象をジョエルらに与える。コイツは人妻属性があると見た。ジョエルの双眸が怪しく光った。
「あのう、お言葉を返すようですが、貴方は朝霞様とどういう関係なのでしょうか……?」
 先程の失態を恥じるようにしつつ、おずおずとフィルが切り出す。
「柳瀬川夕霧。あの子の姉よ。……ここを抜けたら、貴方達の名前も教えてちょうだい。朝霞の僕くん達」

615数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:47:18 ID:ss5gHwv.0
 光明と、洞窟の内観とは異なる風景を湛えた「出口」は、まるで冗談の様な唐突さで、彼らの眼前に現れた。
それはまるで直方形に切り取った空間に、別世界の光景を無理矢理合成したかのような不自然さであり、魔界の秘境にでも生息する珍妙な生物が、口を開けて待っているようであった。
 何の躊躇いも無く飛び込んでいった夕霧が、向こう側からくいくいと手招きをしている。尻込みする他二名を押しのけて、リョタがズイと前に進み出た。
「ここは俺が先陣を切る。そしてラッキースケベを装ってあの胸に全力で飛び込んでやる」
 眼を鋭く細め、見据える先は夕霧の胸元だ。声を潜めずによくもまあそんな事を言える物だ、と夕霧は半ば感心しつつも、無反応を貫いた。あまり関わりたくないのだ。
「馬鹿野郎……! そんな危険な事をお前にさせられるか! 女体の神秘で、全身の血液が食べるラー油になっちまうかもしれないだろうが。だから俺が行く! 俺があの山脈をクライミングしてやる!」
「お前こそ、女性の体温で眼球がゆで卵になるかもしれないぜ。だからここは俺に任せろって。な? 感触、匂いに質感や幸福度は、後で五・七・五で情感たっぷりに纏めて発表するから」
「都都逸という手は無いのか、リョタ」
「てめえフィル! 何余裕ぶっこいてんだ! コイツはあれだぞ、飽くまで故意ではありませんって面して、あの二つの大雪山を踏み荒らそうとしてやがんだぞ! 世が世なら市中引き回しの上に、皮むいてホクホクになるまで茹でて、刻んだ玉葱と挽肉と共にカラッと揚げられるような暴挙だぜこいつは!」
「ふう、つくづく君って奴は……。何故、そうまでして胸に拘るんだい? 君が朝霞様に惹かれるのは、何故なのか。それを己に問うといい」
「朝霞様……。朝霞様は、基本的に俺たちを毛虫を見るような眼で見て、言葉の中にナチュラルに罵倒の言葉を混ぜてくださって、三メートル以内に近付いたら殺すといわんばかりの威圧感を放っていて、でも雑談くらいには付き合ってくれて、高いアイスクリームを献上すると、ちょっと嬉しそうにする所が凄い尊い。可愛い。踏み躙られたい」
「其処だジョエル!」
 ビシィ、と効果音が付きそうな勢いで、フィルは人差し指を突きつける。
勇んで「出口」に飛び込まんとしていたリョタも、興味深いとばかりに視線を回らせている。夕霧は本当に嫌そうな表情を浮かべながら、何事かを呟いている。
「君は朝霞様の何に踏まれたいんだ! 女性の何に、何処にぐりぐりと踏み躙られたいんだ!」
「そうか……! 俺は、俺は、女の子の足に蟲を潰すかのように踏まれたいんだ!」
 咆哮を上げるジョエルを、腕を組んだフィルが満足げに眺めている。リョタが、してやられたと言わんばかりの表情を浮かべ、口元に手をあてた。
途端、彼らの首に長い長い紐が巻きついた。

616数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:47:30 ID:ss5gHwv.0

「出口」の向こうで、詠唱によって精製した紐を手に持った夕霧は、それらを荒々しく手繰り寄せる。リョタらは釣り上げられた回遊魚よろしく、次々と引きずり込まれ、地面――板張りの床に、背中を強かに打ち付けた。
 三人揃ってグワーッ、などと悲鳴を上げた後、見下ろしてくる夕霧の絶対零度の視線に背筋をゾクゾクといわせつつ、しかしリョタだけは、周囲に広がる風景に覚えがあった。
 障子や木窓から降り注ぐ日光に、淡く照らされる室内。そこにデンと居座り、圧倒的な存在感をかもし出すのは、数百キロはありそうな神輿である。
金箔や種々の装飾を施された輿は、薄闇の中にあっても尚光り輝かんばかりの絢爛さであり、成人男性一人が乗り込めそうなほどの大きさがある。
リョタには見慣れた物だった。物心が付いたころから、年に一度の祭事の日には、これを担いだ成人男性や、それに付き従って山車や鉾を持った人々が街を練り歩くのを、何度も眼にしてきている。その行列についていった事とて何度もある。
 スクっと立ち上がり、周囲を見渡してみる。和室かと思っていた室内は、どうやらそんな上等なものでもないらしい。
そこは古びた蔵だった。むき出しの石壁には所々皹が入り、漂う空気は何処かジメっと生臭い。床はそれなりに綺麗ではあるが、見上げてみれば、積もった埃によって梁が薄らと灰色がかっていた。
周囲には、神輿以外の祭具も同様に保管されていた。しかし神輿も含め、こんな所でちゃんと保管できているのかは甚だ疑問である。
「汚い所でしょう。でも、物は傷まないのよね、ここ」
 こんな事をしても喜ばせるだけだと気付いた夕霧は、未だに地面に横たわるジョエル達を努めて無視し、リョタの隣に並び立つ。しかし彼の鼻の穴が、体臭を嗅ぎつくさんとばかりに開かれた事に気づき、間を置かず彼からも距離を取った。
「あの、ここって伏神の神社なんですか?」
「精確には、その神輿殿ですね」
 ガラリと、引き戸が開け放たれ、外気が流入してくる。黴臭い匂いが一掃され、代わりに青々とした清風の香りが、彼らの肺を満たした。
引き戸の向こうには、リョタの見知った光景が、伏神山中腹の神社の境内があった。そしてその光景の半分以上を己の体で隠す存在にも、彼は当然見覚えがあった。
「ド、ドエロス師匠!」
「その呼び方、人前ではやめてくれませんかねえ。外聞が悪い」
 鴉の羽根の様な、漆黒の長髪で陽光を照り返し、神主――いや、宮司である織守拓斗は苦笑した。夕霧は彼の横顔を、ゴミを見るような眼で眺めていた。

617数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:47:48 ID:ss5gHwv.0
 黴臭い神輿殿から退去一行は、今は神社の敷地内に建てられた織守邸の居間に場所を移している。分家とはいえ伏神の聖地にその居を構えているだけあり、見事な枯山水を望める大きな中庭を擁した、立派な邸宅であった。
真夏の山中にありながら、心地よい涼しさに包まれた居間で茶を啜りながら、リョタ達は数時間にも及ぶ大冒険を、不純な動機と不適切なまでに卑猥な表現を織り交ぜつつ、何とも情感たっぷりに、織守と夕霧に語って聞かせていた。
「伝説のエロ本、ですか。何というか、それはまた随分と君らしい」
 拓人は何とも楽しげに笑っているが、夕霧はと言えば、彼らと卓を囲む事すら嫌だと言わんばかりに、開け放たれた中庭側の障子戸に寄りかかりつつ、渋面を浮かべていた。
 指貫と狩衣という、何とも時代錯誤な装いながらも、拓人のある種超然とした雰囲気はそこに違和感を差し挟ませない。眼鏡が光る涼やかな目元は、何とも理知的である。
彼が「ドエロス師匠」などという直球の罵倒に不快感を表さないのは、何もその温厚な気性が全てという訳ではない。全ては彼が、リョタ・マレグチに師匠と呼ばれて然るべき薫陶を授けたが故である。
その詳細な内容は今回は省くが、少なくともリョタの、延いては彼の友人二人の信頼を勝ち得る程度には、親密な関係であるという事は明記しておこう。
「しかし残念ながら、君達が手に入れた『賢者の書』は、その手の素晴らしい書籍ではないですよ。もしそうならば、あのような穴倉に保管なんてせずに、私が自宅の書庫で独占しています」
「なんて説得力なんだ……!」
「畜生! 女体と体液と豊富な語彙が飛び交うドエロイ本だと思ってたのに……!」
「オノマトペを巧に交えた軽妙洒脱な文章で紡ぎだされる、めくるめく肌色の世界があると思っていたのに……!」
「然るべき場所に訴えたら、私は貴方達から慰謝料を毟り取れると思うの」
 眉間を押さえる夕霧とは裏腹に、拓人は実に楽しそうに、カラカラと笑う。リョタたちから受け取った『賢者の書』の表紙を撫ぜると、それが一体どういったものなのかを、簡単にだが説明し始める。
「まあ要するに、これは伏神の歴史書兼奥義書の様な物でしてね。彼の家が数千年の時間を掛けて築き上げた全てが、詰まっています。
 持ち出しはもとより、閲覧も厳禁です。直系である聡治くんや劔……様はともかく、臣下の家であったマレグチくんでも、この事が本家の偉い人に露見すれば、まあ良くて記憶が、悪ければ存在を消されかねませんよ」
「――触手で!?」
「馬鹿野郎、スライム娘にだろ!」
「人間の処理を担当していた女の子が、何故か僕に一目ぼれ。そして始まる肉欲に塗れた学園ラブコメ。……ふふ、素敵だね」
「オーソドックスではありますが、女性だけで構成された暗殺者集団に、新たな遺伝子を取り込むために種馬として飼われるというのも、中々に心が躍りませんか?」
 眼鏡のブリッジをくいと押し上げ、眼を細めた拓人の言葉が、三人の鼓膜を揺すぶった。
こいつ出来る、というジョエルとフィルの視線。衰えは無いようだと安堵するリョタの視線。そしてさっさと死ねばいいのにという夕霧の視線。その全てを笑って受け流しながら、拓人は話を続ける。

618数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:48:00 ID:ss5gHwv.0
「まあ、そろそろあんなザル警備の洞穴に置くのは止めるようにと、本家に言うつもりでしたし、丁度良かったと言えましょう。これは私が持ち出した事にします。君たちもこの件については早々に忘れるように。以上」
 そこまで言い切ってから、ああそうだ、と思い出したように付け加える。
「今外は危険ですから、出ないように。邸内の部屋は自由に使っていいですから、一先ず、騒動が治まるまでゆっくりして行きなさい」
「え、危険って、何かあったんですか?」
「何でも、下水道に有毒ガスが充満してしまったらしく、それが地表に漏れ出てるんだそうです。住民達の避難は済んでいるのですが、ガスの除去にどうやら明日まで掛かるらしくって。ま、リョタくんも旅行気分を味わえると思って、一晩我慢していただければ」
 その言葉に、ゴクリと唾を飲み込む三人。その横目でチラチラと、夕霧の顔を窺っている。その顔には、喜びの表情も浮かんでいるが、それ以上に恥らっているようにも見えた。
「え、えーと、泊れるのは嬉しいんですけど……」
「その、女の人と一つ屋根の下、っていうのはどうにも……」
「何ていうか、その、恥ずかしいです……」
「え……、今まで私に散々遠まわしなセクハラをしておいて?」
 まるで年頃の少女の様にモジモジとする姿は、三馬鹿の称号に違わない醜態である。拓人は「若いですねえ」と笑った。
「心配せずとも、夕霧さんはここには宿泊しませんよ。こう見えましても彼女は、本家の頭首さまのご内儀ですからね。本宅の方へお戻りになりますよ」
「……そういう事よ。ここへは、賢者の書についての進言があると彼が言うから、夫の代理として来たの。まあその話し合いの最中に、貴方達が賢者の書を手にとってしまったから、私が取り返しにいく羽目になってしまったけど」
「つまり俺たちはナイスタイミングだった、と」
「バッドタイミングよ」
「まあそういう訳で、実はまだ話し合いの途中なんですよ。話の内容も、そこそこに重要な物になってしまいますから、出来れば君たちには席を外して頂きたいのです」
「そんな事言って、俺たちが何処かへ行った隙に、子供に言えないアレやコレをするつもりじゃないんですか!?」
「……これは独り言なのですが、予てより蒐集していた壷咲花蕾の官能小説群が、ようやく揃いましてね。現在は書庫に全巻収めてあります」
「こんなとこでダベってる暇はねえ! 行くぞ手前ら!」
「「応!」」
 リョタの鶴の一声に、ジョエルとフィルが応え、バタバタと走り去っていった。その後姿にひらひらと、拓人は手を振っていた。
「いやあ、元気な子達ですねえ。将来が楽しみでなりませんよ」
「私は心配しか出来ないのだけれど。はぁ、全く朝霞ったら、どういう学園生活を送っているのかしら。全てが終わったら、姉として問い質さなくてはいけないわね」
 ややあって、完全に人気がなくなると、夕霧は凭れ掛かっていた障子戸をピシャリと閉めた。

619数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:48:10 ID:ss5gHwv.0
「……まあ何にせよ、賢者の書を手に入れられたのは、幸運だったわね」
「そうですねえ。でなければ、自前の魔力で賄わざるを得ませんでしたよ」
 先ほどまでリョタが座っていた座布団に、今度は夕霧が座った。自然と向かい合う形となった拓人の眼を、彼女はジィっと見つめる。
「本当に、この本が代わりになるの?」
「ええ。彼らに語ったことは本当ですからね。万を超える術式と、数百年を経て蓄えられた膨大な魔力。この本は謂わば、一個の巨大な神秘と言える物となっているのです。それこそ、この霊山と張るくらいの。司書の方々に露見すれば、禁書指定どころか焚書指定を受けて、荼毘に付されれかねない代物ですよ」
「まさに、霊山の術式を書き換えるには、打って付けという訳ね」
 ズズズ、とすっかりと冷めてしまった緑茶を啜り、一息。拓人はやや間を置いた後、「ええ」と首肯する。
「仔竜を上伏町に解き放ったという事は、今日にでも儀式を始める腹積もりなのでしょう。上伏に打たれた結界の楔を、町民や配下の竜そのものの血で穢し、破壊する。そうする事で、既に結界の術式が書き換えられたこの伏神山は、丸裸となってしまいます。
 そこを彼の竜――ベイバロンといいましたか? アレの力を持って位相差障壁を砕き、結界を流用した術式と、釣り餌で以って『竜骸』を引きずり出す。その釣り餌たりうるソウジくんは、今この場にいますからね。ベイバロン、いや伏神の亡霊どもには絶好のタイミングと言えます」
そして、我々にとっても。お茶請けにと用意した稀口の羊羹に舌鼓を打ちながらも、朗々と語る拓人の眼からは、笑みが消え失せていた。
「不愉快だ、実に。四拾七氏の八十年にわたる妄執が、実を結んでしまうなんて。ですから、台無しにしましょう。奴らの時間を全て無為に帰してしまいましょう。そしてついでに、貴方の大切な物も守ってしまいましょう。私が敷設した反転陣で竜骸を――『オロチの首級《クビ》』を、より深くにぶち込んでくれる」
 そして、夕霧の顔を正面から見据えて、言う。
「何度も言いますが、竜に喰らわれた貴方の同胞の魂は、永久に失われる事となります。反転陣はこの賢者の書に彼女らの魂をくべて、起動するわけですからね。――覚悟は出来ていますか?」
「何度も同じ事を聞かないで。伏神の怨念に一泡吹かせられて、その上朝霞が生き残る。私達はそれ以上は望まないわ」
「劔はいいんですか? 一応旦那様でしょう」
「……あの人は、私が望まずとも生き延びてくれるわ。じゃなきゃ、私が好きになるはずないもの」
「惚気ますねえ。彼に聞かせてあげれば、きっと喜びますよ」
「煩いわね。早く話を続けなさい」
 拓人は「結構」と、言葉を引き継ぎ、銀縁の眼鏡の奥で何処か陰気な笑みを浮かべた。
「それでは、茶番を終わらせるとしましょうか」

620数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:54:45 ID:ss5gHwv.0
以上、ちょっと長くなりすぎた

纏めると

ソウジくん:伏神邸でベイバロンと交戦中。クロガネの竜殺兵装の召喚が完了するまでの足止め。

クロガネ:本体は飛行ユニット「ヤタガラス」を装備して、上伏町の仔竜を駆逐中。
      アギョー・スタチューが竜殺兵装を代理召喚し、ベイバロンへの奇襲の為に待機している。

真川&稀口女史:上伏町で竜と交戦中。

祢々:パソコンを朝霞に届ける為に上伏町へ。しかしその途中で竜に会い、絶体絶命。

三馬鹿:賢者の書を手に入れるが、それはエロ本ではなかった。現在は織守邸にてドエロイ本を観賞している。

夕霧&拓人:三馬鹿から賢者の書を受け取り、ベイバロンの「竜骸(オロチと呼ばれる竜の遺体)を取り込んで龍へと到る」という目的を利用しようと暗躍中

621数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 22:05:06 ID:KKcgzkS20
おっつおっつ。
とりあえず何事も読んでからだな。

622数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 22:07:09 ID:4E4rImG20
頑張りすぎィ!
西口おつポニ

読むのはこれからだが

623数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 22:58:10 ID:M9RaWHec0
まだ読んでないけどしゅごいいいいいいい

624数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 10:07:34 ID:WhauINNc0
>>610>>611の文章が重複してるが些細な問題ですね

祢々ちゃん絶体絶命のピンチが一番気になる
しかし…すまぬ祢々ちゃん、ソウジにメタい逆ギレかまさせてしまって…
ていうか真川さんとおばちゃんつえぇ!

625数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 10:34:29 ID:/foDTcSo0
名前のとこに書いてあるが、一文抜けたから張りなおしたのよ
正直抜けた分だけ投下すればよかったわ、すまんな

真川さんは霊体っていう雑魚竜のガチメタ特性持ってるから無双できてる、と考えてる
おばちゃんは普通に強い

626数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 10:47:24 ID:WhauINNc0
ああ、名前欄読んでなかったすまんぬ
混乱回避として610は削除してもいいかも分からんね

627数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 11:16:22 ID:/foDTcSo0
せやなあ
どあにきたら相談してみよう

628どあにん:2015/06/24(水) 12:36:54 ID:4FN1TX3Y0
おっつおっつ
処理は仕事終了後にやるぜ

あと賢者の書がエロ本じゃないのは合ってるけど
そんな大した物でも無いのに!
もっかい回って来たらやりたかった事やって、オワリ!

629数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 13:14:00 ID:/kjWEKmg0
関係無いけど兄さん見てたら競作前スレも落としといて

630どあにん:2015/06/24(水) 18:16:56 ID:c7D6kyoo0
処理完了です……

631数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 18:17:59 ID:/foDTcSo0
ワザマエ!

632どあにん:2015/06/24(水) 18:19:43 ID:c7D6kyoo0
黒龍たんが一瞬でやってくれました

633数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 20:08:12 ID:iDSqq/C.0
さすが僕らのおっp黒龍さんだぜ!

634数を持たない奇数頁:2015/06/24(水) 20:20:54 ID:Yr3EIlbE0
とりあえず困った時の学院に残った面子の夏休み風景で茶を濁す事も辞さない状況だということは理解した

635数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 12:18:44 ID:XIVHu7k20
閑話だ、閑話を捻じ込むのだっ!
具体的には委員長関係(アシュリー&エクリエル)、最近影の薄い面子(グダグダエル、剛機ホオノキ・ダン十二式)辺りを書いて第三部の伏線をそこはかとなく散りばめておくのだっ!

636数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 16:50:14 ID:AdDQQHFU0
密やかにダミアン竜憑化というネタを考えてるが普通にありそうで怖い
違和感ないのが怖い

637数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 18:14:50 ID:IN.6xEBc0
ダミアンは何か竜と意気投合してお兄ちゃん以上に使いこなしそう
あいつにはそんな雰囲気がある

638数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 18:29:18 ID:3xvBEp5c0
ダミアンはもっとヤバイ何かを宿したりしそう
それでそいつに「こいつやべぇ」とか引かれそう

639数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 18:32:41 ID:8JyckAD20
ダミアン「復讐するまで力を貸せ、復讐が終わったらこの体をくれてやる」


とか考えたけどこれ良く考えたら呪印もらったサスケや

640どあにん:2015/06/28(日) 21:58:02 ID:3FAHzan.0
ダミアンくんほんへは最後は悪魔崇拝に傾倒し過ぎて大悪魔と契約しちゃって終わる 予定でした

641数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 22:00:47 ID:XIVHu7k20
ごめん、やっぱり閑話的に学院に残っているだろう面子の話でお茶を濁す方向性になりそうだ
FEif暗夜ハードでちまちまやってるけど大体ケアレ=スミス氏降臨で気分転換に文章進めてるから最短来週には投げれるかも

642数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 22:01:58 ID:IN.6xEBc0
同性婚できるのが各国一人ずつという悲しみ
ツクヨミと同性婚したかったです

643数を持たない奇数頁:2015/06/28(日) 22:06:01 ID:O10tr58M0
大体やり直しの原因は
・サイラスのやっつけ負け
・エリーゼorアクアが敵の遠距離攻撃の範囲にいて普通にやられ
・マイユニ無双失敗

結婚はハロルド&エルフィしか成立してないなぁ……

644数を持たない奇数頁:2015/06/29(月) 11:39:36 ID:7uqEkyi.0
真川さんの新技考えた
披露するタイミングがあるかどうかは分からんが

645どあにん:2015/06/29(月) 23:28:54 ID:aN1GU35I0
ぼく 明日にクトゥルフとネクロニカのルルブ購入を決意

646数を持たない奇数頁:2015/06/29(月) 23:30:10 ID:fvOmScyI0
ついでにサプリも買おうぜ
帝国かガスライト

647数を持たない奇数頁:2015/06/30(火) 06:55:16 ID:9nYiFPGM0
兄さんCoCは持ってなかったっけ?

648零字:2015/06/30(火) 06:59:42 ID:uJeW5iYY0
クトゥルフなら2010もオススメ
ちなコレに収録されてるもっと食べたいならげーます出来ると思うで
俺経験あるし

649零字:2015/06/30(火) 07:00:06 ID:sVj48MvI0
連鎖とは関係なくてすまんな

650数を持たない奇数頁:2015/06/30(火) 11:55:54 ID:1c9oDOnA0
まさかのD20版だったり?

651数を持たない奇数頁:2015/07/02(木) 22:13:09 ID:t90hRRwc0
個人的にはアシュリーとエクリエルは犬猿の仲のだけど仕事上では手を取り合える(ただし全力で相手の手を潰そうと力を込める)関係だと思っている

652数を持たない奇数頁:2015/07/02(木) 22:18:47 ID:e5Iub5qc0
相手を潰すために、事態に対してオーバーキルレベルの策を張り巡らせそう

653数を持たない奇数頁:2015/07/02(木) 22:23:49 ID:t90hRRwc0
とりあえずパスされたところからの内容がてんで思いつかんから学院の閑話書いてるんだけど、何かサビ残して書類仕事してるサラリーマン的な哀愁が漂い始めている

654数を持たない奇数頁:2015/07/02(木) 22:47:29 ID:SScStpU60
お互いに喧嘩しつつの極限魔法合戦で敵勢を巻き込みながら気付いたら二人を残して敵を全滅させてた感じとか

655数を持たない奇数頁:2015/07/05(日) 21:21:56 ID:.Sfu8I8Y0
というかこれ学院の規模どうなんだろう? 何か俺が考えてるのって凄く……大き過ぎます……な感じがしてきた

俺はちょっとした学園都市(敷地内に学校を中心として生活に必要な施設、機関を詰め込んだ形)を想像してた
学校という意味では一校だけど各地区に校舎や各種施設があって、通学する生徒や職員を支える施設があって、それを動かす従業員がいて、街っぽくなってる感じで

656数を持たない奇数頁:2015/07/05(日) 21:27:14 ID:.Sfu8I8Y0
ああ、地区分けしてるのは専攻分野の問題と考えてる

657数を持たない奇数頁:2015/07/05(日) 21:28:10 ID:0elNkWcI0
俺のイメージとしてはホグワーツ+ダイアゴン横丁が一番近いかな
クソでかい学校+その周囲を覆うでかい森
+外縁部にそれぞれの世界の人間が馴染みやすいように作られた街みたいな

娯楽施設とか、購買に売ってないようなちょっとマニアックなものは外縁部の町に買いに行く、みたいな

658数を持たない奇数頁:2015/07/05(日) 21:36:17 ID:.Sfu8I8Y0
Oh……規模的には同じくらいで考えてるっぽいけど生活に関わる部分を内側か外側かで違うっぽいね

……明日にでも個人的イメージ図でも作って投げてみようかな。みんなの方向性から逸脱してるなら脳内イメージを訂正しないと

659数を持たない奇数頁:2015/07/05(日) 21:41:29 ID:0elNkWcI0
正直書いた人がちだと思ってる
俺はデカけりゃ後は何でもいいと思ってる

660数を持たない奇数頁:2015/07/05(日) 21:48:56 ID:.Sfu8I8Y0
とりあえず一つ言えるのは俺が考えているのだと初っ端の話し合いでたったりーんが提案していた規模の数倍規模程度の在学者数になってるわ

661数を持たない奇数頁:2015/07/05(日) 22:34:42 ID:KkSseZuU0
汝の欲すべきことを行うがいいと思うよ
某学園都市クラスの敷地があってもいい
リレーとはそういうものだ

662数を持たない奇数頁:2015/07/06(月) 21:28:32 ID:dJQ95ZLg0
ヒャッハー、もう面倒だからエクリエル、剛機ホオノキ・ダン十二式、九条泰生の閑話だけぶっこんじまおう

・エクリエル、サビ残で書類仕事をするサラリーマンの哀愁を知る
・【速報】剛機ホオノキ・ダン十二式氏、次回更新時も現行機を選択
・泰生は犠牲になったのだ……アシュリーの特技、その犠牲にな……
の三本立てでいく。おそらく13000〜15000文字程度になるはず

663数を持たない奇数頁:2015/07/06(月) 23:37:43 ID:urvvTaTQ0
ヒャッハー! 新鮮なKの人だ!
完成はいつ頃になりそうですかね?

664数を持たない奇数頁:2015/07/07(火) 09:28:43 ID:gf/UANAQ0
本音を言えば他キャラのも書きたかったけどネタが思い付かないのも相俟って断念。

とりあえず頑張れば今日明日中、特に頑張らなければ今週中。「今作は速さより堅さだよ、エンブレマー」ってなったら暗夜ハードやり直すから来週中かな

いや、マジで今作は速さで避けるよりも堅さで受けきった方が楽だわ。分隊組んで双方に天照らすとか回復着けてたらハンマー辺りを持ち出されない限りは突破される気がしない
(ただしすり抜け狐共を除く)

665数を持たない奇数頁:2015/07/07(火) 09:36:29 ID:cORJJCHw0
狐だけは許さない
エルフィいなかったら詰んでた

666数を持たない奇数頁:2015/07/07(火) 09:49:25 ID:gf/UANAQ0
すり抜けか、攻撃不可のどちらかだけなら良かったんだがな……

あ、俺はマイユニで無双した。試行回数は24回、マイユニに執事就けて敵陣のど真ん中に突っ込むだけという戦略もへったくれもないごり押しだった

667数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 08:08:54 ID:5.2W6hE60
インキン配信されて「成長吟味する理由は見つかったか? 相棒」とかそんなノリになったのでたぶん来週のパターンかな

668数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 17:25:20 ID:v1jyJ5Ek0
今気付いたけど二週間過ぎてたから、結局書き直して中途半端な上に予定よりも少なくなったけどぶん投げよう。

669剛機ホオノキ・ダン十二式 1/3:2015/07/11(土) 17:26:43 ID:v1jyJ5Ek0
 剛機ホオノキ・ダン十二式が、複数いた。
 厳密に言えば本人、もとい本機以外は剛機ホオノキ・ダン十二式ではない。同系列の別機だ。外装には所々に擦り傷が見られるが、致命的な損傷はない。
 ただし無事なのは機体だけだ。中身となる記憶領域は抜き取られており、他界人の表現をするならば、死体とでも呼べる存在だ。
 他界人であれば死体と接する事は望ましくない行動なのだが、機界人、特に生体部品の含有率が著しく低いないし生体部品を含まない個体にとっては、その限りではない。同系統の機体であれば破損原因を調べる事で自身が気をつけるべきことを理解出来るし、換装可能であれば再利用する事も出来る。
 死人を解体して再利用、と考えれば非常にグロテスク極まりない。しかし機界人にとっては、日常的と言える行為の一つでもある。友人が主要機関のベアリングが壊れたと言っていたのを聞き、自身の同規格かつ重要度の低いベアリングを貸し出す事もある。身体の物理的な貸し借りは、機会由来の部品ばかりの機界人にとっては極々当たり前の事であった。
 機械は壊れる。そして生体部品でもない限りは、一度壊れれば換えなければ直らない。逆に言えば壊れたところで、部品を換装すれば直るのだ。
 ただし、内部……多くは頭部や胸部に搭載された記録領域に限っては別だ。これに関しては、機界人の技術をもってしても、一度破損してしまえば二度と直すことは出来ない。
 その為に定期的なバックアップデータを保存し、その保存したデータの入った記憶領域を換装する事で、外面的には生を繋ぐ事は出来る。しかし一瞬でも継続性が断たれたという事は、死に変わりない。故に、剛機ホオノキ・ダン十二式は、十二式なのだ。厳密に言えば剛機ホオノキ・ダンと名乗る前に五回程度換装しているので、十二回だけ換装したという訳ではない。
 そもそも、機界人の精神、人格と呼べる物がどうやって完成したのか、それは機界人にもわからない。過去にはソースコードを読み解く事で起源を知ろうとした者もいたのだが、そういう者は、例外なく死んでいる。過負荷が原因、という訳ではない。バグと呼称出来る精神異常に苛まされ、発狂。やがて自身の記録領域やバックアップデータを物理的に破壊……自殺してしまう。
 故にソースコードを読み解く行為は禁忌とされている。それは五界統合後で自由意思という物を得てからも変わらない。むしろ、意思を得たからこそ誰もやりたがらない。誰だって、好き好んで死ぬような真似などしたくはないのだ。
 どこの世界にもタブーというものは存在している。機界人にとっては、自己の起源探究がそれであった。
 だから、剛機ホオノキ・ダン十二式が、態々同系列の機体を眺めているのは、自己の起源探究ではなかった。勿論、他界人に稀に見受けられる、死体に対して特別強い興味がある訳でもない。
 工作用に換装した腕で、眼前の死体《スクラップ》を解体していく。外装を剥げば機界人の血管や神経系である諸々のチューブや配管、配線が姿を見せる。更に奥には諸々の臓器に該当するポンプや冷却機なども存在している。
 暫く弄り回し、目的の物を見つけた剛機ホオノキ・ダン十二式の電子眼が鈍く輝く。破損しないように取り外し、眼前へと持っていく。
「――ふむ、見立て通り純正品ではないようだ」
 他界人で言うところの心臓、そこに程近い、とある部品だ。およそ他界人で言う所の成人の親指程度の大きさの部品であるが、文字通り心臓部に関わる部品である為に、重要度は高い。
 型番を確認しながら低い電子音で呟いていると、他の機体の陰から、同じ部品を手にした極彩色に塗装された機界人が姿を現す。
 ぱっと見た外見こそまるで別物だが、剛機ホオノキ・ダン十二式と同系列機だ。塗装もだが、外装の至る所に装飾が施された結果、最早別物と化している機体は、世代的には先輩と言える存在である。

670剛機ホオノキ・ダン十二式 2/3:2015/07/11(土) 17:27:03 ID:v1jyJ5Ek0
「こちらもだ、同志剛機ホオノキ・ダン十二式よ。型番を見る限りは粗末な廉売品のようだ。見よ、本来ならばSaw-CraftWarksとあるべき部分がSow-CraftWarksとなっている。発音は同じだがな」
「おお、素晴らしき発見だ、歌舞機ウキヨエよ。此方などはSaw-OraftWarksだぞ。ソウ・オラフトワークスか。単に刻印を失敗して繋がったのか、それとも本当にそういう風につけたのかは不明だが」
「しかし助かったぞ、同志剛機ホオノキ・ダン十二式よ。私は軍用機の気が強く、この手の作業は不得手でな」
「気にするではない、歌舞機ウキヨエよ。私と歌舞機ウキヨエは同系機ではないか。三年以内に製造された工作作業腕《エンジニア・アーム》で手を打とう。片腕で良い」
「相変わらず工作作業を嗜むのだな。良かろう、片腕で良いという謙虚さに感動した。安藤工業製の八一式工業工作腕を用意してやる」
「これは思わず小躍りしたくなる褒賞だ。人間であれば鼻歌でも歌いながら作業でもするのだろう」
「勿論、その分はしっかりと働いて貰うぞ。私達の様に機械由来の機界人には死活問題であるからな」
 勿論だとも、と、普段よりも波長の大きい声で返事をした剛機ホオノキ・ダン十二式は、解体を進めて行く。
 ――剛機ホオノキ・ダン十二式が解体作業に至った経緯などは、ある程度は形式に則って説明が出来る。元々五界統合学院へ在学、卒業後は機界人向けの部品流通管理機関へと就職した先輩に、日雇いのアルバイトとして雇われたのだ。
 機界人向けの機械部品は、各地の自治体が認可した製造所で作られた物だけが公に流通している。他界人で言うならば、行政が認可した薬や医療器具が流通しているのと近しい感覚であろう。
 所謂純正品と称される物は、例えば元々は人間界の金属加工業から発展して、各種換装品を手掛ける安藤工業や、精度が極めて高い、細々とした部品を扱う機界の老舗Saw-CraftWarksなどがある。
 純正品と称されるだけあり信頼性は極めて高く、アフターサービスも手厚い。ただし高価である。
 そこに付け入るように、認可されていない製造所で作られた廉価品も、裏では流通している。剛機ホオノキ・ダン十二式も、公言こそしていないが、重要度の低い幾つかの部品は廉価品を使っている。特に重要度の低さの割りに損耗しやすい箇所などは、一々純正品を使っていられない。身内含めて全て純正品を使っているのは、富裕層程度だろう。
 精度が悪いという理由で認可されていない製造所もあれば、作業環境が悪く公害の懸念がある為に認可されていない製造所もある。理由は何だって良いが、使い勝手の良い安価な部品というのは、機界人であれば誰だって欲する物だ。
 廉価品だと理解して扱う分には、まだ良い。信頼性が低い為、余程の貧困層でもなければ、重要度の低い場所にしか使わない為だ。
 ただし純正品を装った粗末な廉価品に関しては別だ。純正品だと思い重要機関で使っていたら、実は廉価品であり、致命的な破損を起こしたという事件は、決して少なくはない。
 場合によっては悪意を持ってわざと粗悪品を流通させ、誤作動や破損を目論む者だって存在している。
 その為に、流通状況を管理して純正品と、それ以外を明確に区別して取り扱える仕組みが必要とされた結果、そのような機関が生まれたのだ。

671剛機ホオノキ・ダン十二式 3/3:2015/07/11(土) 17:27:22 ID:v1jyJ5Ek0
「ふむ、目に付く限りではSaw-CraftWarksを騙った部品が多いな。細々とした部品が主である為に騙りやすい、というのもあるのだろうが」
「逆に言えば、ここ最近は信頼性が高く重要機関に用いられる部品に粗悪品が紛れ込む傾向にある、という事か」
「その通りだな、同志剛機ホオノキ・ダン十二式よ。上司への報告書には、この手の部品の監視強化を提案しておく事にする」
「それは私としても助かるぞ。私は生体部品を使っていないからな、歌舞機ウキヨエ達の仕事が、直接健康に関わってくるのだからな」
「それに関してだが、次回更新時は戦闘機ではなく、流行のアンドロイド型にすればどうだろうか? あちらなら、一々作業毎に腕部を換装する煩わしさもない。その上、省エネルギーかつ省スペース化が図られている」
 時代は他界人との共存を図りやすいアンドロイド型が主流になりつつあると、歌舞機ウキヨエは言う。単調な電子音ながら、どこか憂いの帯びた響きであった。
 人間ならば肩を竦めて見せるのだろうと思いながら、剛機ホオノキ・ダン十二式は首を振る。
「――確かに、総合的な利点、欠点を考慮すればそれが良いのだろう。……ただ、効率重視が最も良い選択ではないというのは、最近の機界人の思考パターンの傾向なのかもしれない」
「つまりは、次回更新時も現行のままで行くと」
「機界人の中で、特に私達のような機械部品で構成された機界人は、自身と他人の境界線が曖昧だ。例えば歌舞機ウキヨエと右腕を交換したとしよう。その腕は、果たして私の物か? それとも歌舞機ウキヨエの物か? 所有権の事を言うならば、勿論歌舞機ウキヨエの物なのだが、自分自身が、”自分”だと認識して良いのは換装直前部分までなのか? それとも換装後も含めた全身なのか? あるいは、換装時に取り外した所有権が自身の部品も含めてなのか?」
 腕が壊れれば腕を付け替える。規格さえ合っていれば、前の腕と同じ形式である必要はない。
 それと同じく、記憶領域の互換性さえあれば、他系列の機体に換装する事だって可能なのだ。
「この機体は、私が私だと胸を張って断言する為に変えられないのだ。主流だからと機体その物を換装してしまうと、いつか自己という物を失いかねない。機界には前例があるだろう?」
 各界において忘れ難い惨事という物は存在しているのだろうが、機界において忘れ難い惨事と言えば、大体の機界人は自己同一性喪失病と答えるだろう。
 かつて、各方面に優れた機体が開発された。今後の発展と規格統一化による手続き簡略化の思想の下、支援金を出してその機体への換装が政府主導で進められた事があった。
 当初こそは良かったのだが、自身と他人の境界線が曖昧となって行き、自己同一性を喪失。無気力化、及び注意力散漫となり、大規模な人災が相次いで発生した惨事である。また、規格統一化という思想の下で産業の多様性が失われ、多くの失業者が発生した事も、惨事の一部として語られている。
 その惨事を教訓として、今日では多様なあり方が認められている。本来ならば質実剛健さが求められる戦闘機である剛機ホオノキ・ダン十二式が工作作業に勤しんだり、歌舞機ウキヨエが派手な外装を纏っていたりと、行動面や外見に関して、機界人は互いに必要以上に口出しをする事はない。
「……すまなかった、どうやら失言のようだったな」
「ふふ、片腕分を両腕分にするか、八三式工業工作腕で妥協してやろう」
「ならば両腕分にしておこう。流石に、最新型は用意出来ない」
「存外の利益となったな。勿論、その分だけは真面目に働かせて貰おう。さぁ、作業の続きと行こうではないか」

672エクリエル 1/4:2015/07/11(土) 17:28:02 ID:v1jyJ5Ek0
 別段、空席だった風紀委員長の席に戻る事は難しい話ではなかった。
 元々は高等部への進学時に、乱層区画の調査及び研究が主となり、作業量的に過負荷傾向となる為に学院側が行った処置だ。本来ならば副委員長であった真川敦を委員長とし、適当な人材を補佐として、副委員長に宛がうという話だった。しかし真川敦本人が委員長となる事を拒み、空席としたいという意見を出した為、審議の結果に委員長を空席とする事になったのだ。
 当時は二進も三進も行かなかった為に承諾したのだが、現在ではある程度の余裕が出来た事。そして戻らねばならない程に、学院内での面倒事が増えてきた事から、一学期の後半からは仮として、風紀委員長へと戻っていた。二学期からは、正式に学院側から任命されるに違いない。
 各学区から上がってきていた先日の巡回報告の書類から視線を起こしたエクリエルは、風紀委員長室の壁に掛けられた時計へと視線を向ける。
 時刻は午後二時過ぎ。冷房が効いている空間である為に涼しいのだが、外の暑さは最高潮に達している頃であろう。窓の外を見やれば、雲一つない蒼穹に、太陽が燦々と輝いている。地表では陽炎が揺らめき、遠くの景色は歪んで見えた。
 幸い――いや、ある意味不幸ではあるのだが、まだ帰る訳には行かなかった。巡回報告で発見された施設や備品の破損に対する改善の提案書、来週の巡回人員と経路の指示書、室内の新設備の検証報告書という風紀委員長として作成しなければならない書類を作っていない。学生である為にしなければならない課題類も、少量ずつでもやらないと後半に苦しくなる。挙句、学院から指示されている乱層区画の調査報告書も作らなければならない。
 普段ならばそれだけで良いのだが、夏季休暇中の折り返す頃には、夏季執行部会が行われる。一学期の報告、二学期に執り行われる行事が議題となるが、それに対する資料や、事前に来ている質問等に対する回答の準備もしなければならない。
 具体的には各行事の警備体制案だったり、有事の対処マニュアルだったりだ。多くは例年の物から、人名や規模を調整するだけで済むのだが、一部は一から作り直す必要のある物もある。
 寮の自室でやらないのは、単に幾つかの書類が委員会室から持ち出し不可能な事と、冷房や照明の利用費が、委員長室では経費で落とせる事が大きな理由だ。もっと言えば、自室に備えている機材を使うよりも、委員長室に備えられた機材の方が性能が良いというのもある。紙類も、経費で落とせる。
 一般生徒からすれば職権乱用だと指摘されそうではあるが、相応の仕事はしている心算なので、苦情などは言わせない。苦情を言う者は、まずは仕事を一通りこなし、それでも苦情があれば言って欲しいものだ。勿論、そうした上で苦情があれば改善はする。尤も、風紀委員長……書類仕事の嫌いな副委員長も含めた、風紀委員会の上層部の仕事をこなした上で苦情を言える者がいれば、の話なのだが。
 学院は広い。苦情を言う余裕がある者は幾人かはいるだろう。ただそういう者達は、十中八九何らかの集団の上層部にいる者だ。指摘すれば自身の首を絞める事にもなる。
 そんな下らない事を考えながら、エクリエルは書類を作ろうとパソコンに向かう。キーボードへと手を乗せると同時、机上に置かれていた電話機から電子音が響き始めた。
 小さく息を吐き出し、画面の表示を見る。図書文化委員長室と表示されたそれを見れば、極々自然に眉間に皺が寄る。
 出来れば出たくはないのだが、出なければ、恐らく私用の携帯電話の方に掛けられる。無論、嫌がらせの為か一瞬だけだろう。それを此方からでは電話出来ないように連続して続けられる。非常に煩わしい。

673エクリエル 2/4:2015/07/11(土) 17:28:36 ID:v1jyJ5Ek0
「……風紀委員長だ。図書文化委員長、何の用だ?」
『何の用って、ナニに決まってるじゃない。禁書盗難、あの件って今はどうなってるの? あと一冊戻ってきてないんだけど』
 甘ったるいその声は、図書文化委員長のアシュリーの物だ。それを知覚すると同時、一層眉間に皺が深く刻まれる。
 思わず、私の知った事か、と返してやろうとも思うも、止める。脳内に関連する情報を上げていき、繋がるようにそれらを組み立てていく。
 あの一件は、結局は図書文化委員会に所属する人員によって引き起こされた物、というのが表向きに公表されている。その者には一週間の監視付き停学、という処分が下された。なお、盗んだ本は禁書と公表されていない。図書本館から持ち出し出来ない資料として軽度の処分としている。禁書盗難など、本来ならば退学処分がされても不思議ではない。
 表向きでない部分を突き詰めていけば、語られぬ者達と呼ばれる集団が関わってくる。そこで脅された結果、盗難に至った。その為、情状酌量の余地ありという事で、ある程度の虚偽を交えて、他方からの文句を言われない形で解決としたのだ。
 取調べによると犯人が盗んだ禁書は二冊。異界連結理論、そして生命変換法。組み合わせて運用すれば、五界統合時に等しい騒乱を生む原因となりうる。
 ただ残りの一冊に関しては関与を認めなかった。各種の自白を促す魔法や機材を利用しても口を割らなかった。狂人でもなければ、確実に関与しておらず、そもそも狂人であれば脅しに屈指ないだろう。故に、無関係だと断言出来るだろう。
 判明しているのは盗まれた事、という一点のみだ。監視を行う魔法を潜り抜けた事を考えれば、それなり以上に魔法に対する教養がある事は間違いない。しかし内部の人員などのように、構造の弱点を的確に突けるのならば、その限りではない。
 なお、”語られぬ者達”と呼ばれる者達を脅した犯人に関しては、校外に所属する者、という方向で結論付けられた。その為、外部機関への調査が依頼されている。
 エクリエルは、それを納得していない。校外の者が関与するには教師層以上の関与か、あるいは諸々の監視を抜けられる者でなければ不可能だ。前者はともかく、後者であれば、そもそも脅して盗ませるまでもなく、犯人自身で動く方が確実だ。
 委員長が納得していないのにそう結論付けられたのは他でもなく、教師層や生徒会から圧力を掛けられ、エクリエルの指摘事項が握り潰されたからだ。エクリエルとしては、失踪した伊庭甲子郎の件も合わせて疑うべきだ、というのが本音だ。しかし、圧力によって禁書盗難事件とは無関係とされてしまった。
 その事が脳裏を過ぎると、電話の相手が毛嫌いしているアシュリーである事と相俟って苛立ってくる。
「……調査中だ。そもそも、そちらが管理を徹底していれば起き得なかった事案だろう。大人しく報告を待つ事も出来ないのか?」
『あら、今日は随分と攻撃的ね。生理中かな?』
 くつくつと、鼓膜を叩く笑い声は、人によっては甘美な響きに感じられるのだろうが、今は非常に耳障りなだけだ。
 受話器越しでも聞こえるように、エクリエルは舌打ちを一つ吐き捨て、すっと目を細める。
「……用件はそれだけか?」
『クソ真面目なクソ天使なら何日前に、だとか、そういう事言うかと思』
 叩き付けるように……もとい、受話器を叩き付けて通話を終了とする。
 下品な上に不愉快極まりない相手に、いつまでも付き合う事程無駄な事は存在しない。
 溜息と共に胸中で渦巻いた黒々とした感情を吐き出す。多少は落ち着くものの、それでも、苛立ちは収まらない。
 拍車を掛けるかのように、再び電話機が鳴る。画面には、やはり図書文化委員長室の文字。拳を電話機に叩き付けそうになったが、止めておく。始末書の追加など、煩わしい事この上ない。

674エクリエル 3/4:2015/07/11(土) 17:28:58 ID:v1jyJ5Ek0
『冗談だよ、別に、貴女の生理周期なんて知っても……まぁ、多少は面白いように使えるけどね? 具体的に言』
「用件を言え。下らん戯言に付き合う心算はない」
『……ああ、そう。まぁ二学期からは風紀委員長に戻るらしいから、諸々の仕事で忙しいよね。うん、これは失敗失敗。弄るのは用件を済ませてからにするよ』
 こほんと、態とらしい咳払いの後、アシュリーの用件とやらが鼓膜を揺らす。
 正式な表明はまだだが、夏季休暇の何処かで夏季執行部会とは別に臨時部会が執り行われるとの事だ。どこで仕入れた情報かは不明だが、大方、彼女が”甘やかせた”相手を上手く使って、仕入れたのだろう。
 単純に図書文化委員長という事で一般生徒とは隔絶した人脈がある上に、独自の人脈を持つアシュリーからの情報は、それなりには信用出来る。
 尤も、彼女が嘘を吐いていないという前提の元に成りたつ信用ではあるのだが、委員会関係では互いに嘘は吐けない。信用しても良い。それ以外は、大体逆の事をすれば間違える事はない。
『夏季執行部会は例年通りの一学期の報告と二学期の行事に関して。で、臨時部会の方は一学期後半の諸々、って言えば通じるよね? エクリエルも、一応当事者だった訳だしね』
「なるほど。それで、禁書関係の報告を求めた、と」
『まだ未解決だからね、そういう所を突かれるのって嫌だからさ。それまでに、出来る限り身奇麗にしておきたいのよね』
「そういう事ならば先に言え。貴様との個人的な付き合いは畜生と交わる事と同程度には唾棄すべき事だが、委員会関係での付き合いならば私情は持ち込まない」
『獣姦並みに嫌って、どれだけ私の事を嫌っているのだか』
「普段の言動を完全な第三者に記録してもらい、それを確認すると良い。自身の欠点など、案外自身では気づけないものだ」
『ごめん、それそっくりそのまま貴女に返すよ』
「欠点など既に理解している。ただ、直す心算は現状ではない。……関係書類は、本館へ届ければ良いのだろうか?」
『……いや、図書文化委員長室でお願い。すぐに送れる?』
「まだ纏め終えていない。今日中に現状分は終わるだろう。……一七〇〇までには届ける」

675エクリエル 4/4:2015/07/11(土) 17:29:16 ID:v1jyJ5Ek0
『ん、五時ね。りょーかい。直接受け取るよ。学園祭は図書文化委員が関わるからさ、その関係で連日委員長室に缶詰だから』
 折角の夏休みなのに嫌になる、と、心底嫌そうな口振りで吐き出された愚痴には、不本意ながら同意しか出来ない。
 委員長というのは、どこも似たようなものだ。何らかの行事が近づけば、行事に関係する書類仕事や会議に忙殺される日々を送る羽目になる。特に自身が率いる委員会と密接に関わる行事となれば、私的に勉強をしどころではない。だというのに試験は待ってはくれない。そうして、委員長というのは、大体成績を落とす破目になる。
 風紀委員会は、大規模な催し毎に忙殺される。安全に対する体制や、有事の対処などは風紀委員会の管轄である為、どのような方向性の催しでさえ、密接に関わる羽目となる。
 文化祭で忙殺される図書文化委員長、体育祭で忙殺される保健体育委員長に比べれば、瞬間的な負荷は幾分か軽い。ただ継続して負荷を掛けられる為、どちらがましなのかは兼任するか、あるいは幾つかの委員長を体験しなければ分からない。
『……あ、こっちの用件は終わり。そちらからは何かある?』
「……特には、ない。強いて言えば禁書盗難に関して、もう一度監視系統の確認をしたい程度だ」
『あー……まぁ、委員達には、生徒会に睨まれると言えば多少は協力的に出来るかもね。正直、エクリエルと私的に関わるのは真っ平御免だけど、委員長同士なら、程々には付き合いたい人物だからさ。分かったよ、とりあえず案内の人員は用意しておく。……ところでさ、具体的に言うとエ』
 用事が済めば、そこまでで良い。アシュリーの思いついた碌でもない考えに耳を傾ける事もなく、受話器を戻す。
 数秒程電話機を注視したが、掛け直しはなさそうであった。その為、優先順位の上がった、禁書関係の報告書の作成の為、作りかけのデータを開く。
 二冊分の事件概要と経緯、結果に関しては既に作成済みであり、そもそも提出し、確認印が入った原紙は文書保管用の棚に収められている。
 残り一冊文に関しては、それの流用で殆どどうにかなる。結果の部分が書けないだけであり、調査段階で判明した諸々を纏めていけば、それで良い。
「――どこの阿呆だか知らんが、全く以って煩わしい」
 足元の鞄からファイルを取り出したエクリエルは、纏める為にそれを捲っていく。

676数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 17:30:53 ID:v1jyJ5Ek0
結局アシュリーの甘やかし方がちょっとエロスヴァティに関わりそうな雰囲気になりつつあったりなかったりして、まぁ、その、なんだ、とりあえず二学期で委員会関係の話に持っていきたいなぁ、という俺の欲望を駄々漏れにした結果の産物をぶん投げてパスするんだぜ

677数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 18:45:11 ID:QdcNOZpU0
Kの人乙!
さて、読むのだ

678数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 19:17:29 ID:QdcNOZpU0
漂うは中間管理職の哀愁

679数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 21:45:15 ID:kf0sTmi20

実は西口のところから読めてないため時間がかかるかパスになりそう

680数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 21:46:22 ID:QdcNOZpU0
正直俺のパートは無駄に長いだけだから斜め読みでよい

681数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 21:48:41 ID:kf0sTmi20
全部読む!
あらゆるやりたいことが溜まっていってどうしようもないことになってきた!
ああ今日の分の録画を撮るために溜まったアニメ消化してこないと

682数を持たない奇数頁:2015/07/11(土) 23:28:36 ID:9lt2jb4o0
Kの人乙ポニ
学園祭に関しては俺も個人的にやりたい事があったりするが、それをやる為にはソウジくんに対する朝霞好感度が低すぎることがちょっと懸念
ドネルケバブの件で一切関わらなかったから、今度こそ少しでも好感度上げようと思った矢先に革命が発生したというね

683数を持たない奇数頁:2015/07/12(日) 23:48:50 ID:Wg4dPbsA0
よし読み終わったぞ
ソウジつえぇ
エクリエル素敵
俺もこのまま学院編しようそうしよう

684数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:36:47 ID:.TclDJl20
 夕焼けがにじむ旧校舎に生徒の影は無く、ただ木々の陰が少しだけ触れていた。
 窓ガラスから入り込む夕日が、教室の静けさの中に混じっていく。
 揃えられていない机だけが少し賑やかな、そんな風景だった。
 しかしたったひとつだけ、夕暮れを拒むかのように、カーテンに閉ざされた教室が最上階の隅にあった。
 電灯も点けられていない暗い教室ではあったが、揺れるカーテンが何かの存在をにおわせている。
 まったく夏休みだというのに。
 男は困ったように微笑み、大きな欠伸をしながらゆっくりと歩き出した。

 弦楽器の音色が薄暗い空気を震わせる。
 やがてそれは音楽となり、誰もいない廊下を駆け抜けていった。
「えらくご機嫌な音色だ。踊っているようでもある」
 どこからともなく低い声がした。
「ふふ……揃ったようだね」
 弦楽器を弾いていた者はそれを構えたまま語りかける。それはしっとりとした女性の声であった。
「集まってくれてどうもありがとう。さっそくだが我々へ幾つかの依頼が来た」
「どれでもいい。どれにしろ、面白いことにするのだから」
 話を割った声の主は、前髪を払う素振りをして気取る。声の調子も独特で、その抑揚には何らかの自負があった。
「私は全部承っても構いません。丁度新しいものが出来上がったところですので」
 その口調はお淑やかながら、少女のような高い声だった。
 それに答えるかのようなタイミングで弦がゆっくりと引かれる。
「君たちには悪いが……実はもう決めてある。“薔薇”からの依頼にね」
 静寂の中に微かなざわめきか生まれた。
 やがてそれはそっと消えて、笑い声や机を叩く音に変わった。
「気に入らない……が、それ故面白くもなる。気に入った」
「かつてない大仕事になりますね。きっと、そういう人です」
 奏者は曲に思えないような奇妙な演奏を始めながら、残る一人に尋ねる。
「貴方も踊りませんか?」
 どこからかしっかりと声がした。
「愚問」
「誰かいるのかい?」
 男が教室の戸を開くと真っ赤な夕陽が遠くに見えた。
 夕日を反射してきらきらと光る教室の中には、男しかいなかった。
 男は髪を掻き分けながら教室を後にする。
「おかしいなぁ。たしかカーテンは閉まっていたはずで、楽器の音もしてたのに」

685数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:39:52 ID:dPvjMmtc0
以上
久しぶりに参加できたぞ
この戦いが終わった後にやりたいことやるためのキャラを
色々伏せながら出しただけという

これ連鎖って呼べるのだろうか

タタリん頑張れ!

686数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:41:41 ID:j7ZQS/zo0
クロタンオツタン

687数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:45:01 ID:j7ZQS/zo0
あれ、旧校舎ってクロガネの巣じゃなかったっけ?

688数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:46:36 ID:.TclDJl20
え?そうなの?
もう色々完全に忘れてるやばい

689数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:53:08 ID:v12c9Rgc0
乙ポニ

最後に出てきた男は見回りかなにか?

690数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:53:24 ID:mmjvdezk0
クロおっつおっつ

>>687
いつから旧校舎が一つだと錯覚していた……?

691数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 21:56:35 ID:.TclDJl20
旧校舎は二つあったッ!!

>>689
先生です

692数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 22:12:01 ID:v12c9Rgc0
とりあえず二連チャンで番外みたいな流れになってるし、俺は本編に戻そう
ベイバロンどうしようかな。今のところ誰もあの設定拾ってないし、当初の予定とはちょっと変わるがリサイクルしてみようかな

693数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 23:13:53 ID:M.hriPlk0
おじいちゃん視点も進展させようとして書いてみたら「これ書いた奴は頭おかしいな」ってくらい酷くなった
なんかおじいちゃん、空とか飛びだした

694数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 23:15:43 ID:j7ZQS/zo0
余裕だろ

695数を持たない奇数頁:2015/07/19(日) 23:17:25 ID:M.hriPlk0
そうだよな、おじいちゃん先々代当主だもん、空くらい飛ぶよな
よかったよかった

696数を持たない奇数頁:2015/07/20(月) 05:23:17 ID:.wmKhde60
伏神家当主は化け物じゃないと務まらないのか……

697数を持たない奇数頁:2015/07/20(月) 06:59:42 ID:/Cm263U20
札を空中に投げ、それを足場に空を走ってもらおうか

698数を持たない奇数頁:2015/07/20(月) 11:50:13 ID:2o8K/DBg0
じいちゃん論外クラス認定
これにはソウジとベイバロンも思わず苦笑い

じいちゃん書くのクッソ楽しいんだ

699数を持たない奇数頁:2015/07/20(月) 11:57:09 ID:otOzjMIs0
爺ちゃんは何かいても許される感ある

700数を持たない奇数頁:2015/07/20(月) 16:21:02 ID:JUx8h7iE0
ベイバロン「あいつが何をしても不思議じゃない」
ソウジ「もう全部じいちゃんだけでいいんじゃないかな」

こんな感じでちょっぴり仲良くなっちゃったわ

701数を持たない奇数頁:2015/07/22(水) 23:00:46 ID:ZOalySwE0
戦闘前の軽い会話を入れようと思ったら、なんか哲学というか宗教じみた話になってきた
なんだこれは、俺はどこに着地しようとしてるんだ

702数を持たない奇数頁:2015/07/22(水) 23:01:40 ID:cQUxZEWc0
最近だらしねえな

703数を持たない奇数頁:2015/07/22(水) 23:05:32 ID:ZOalySwE0
ていうか俺の中でソウジくんの煽りスキルはカンストしてるのかってくらい相手を怒らせる天才になってきた
誰だよコイツそげぶかよ

704数を持たない奇数頁:2015/07/23(木) 19:43:31 ID:V9ZQhPu20
ぶっちゃけ伏神家騒動がこんなに長引くとは思ってなかった。
竜関係がダークファンタジーなら、兄からの電話はラブコメだー! とか書いた本人としては、聡治の方に許婚云々とする心算だったりしたんだよなぁ。まぁ今の方が面白そうだから良いけど

705数を持たない奇数頁:2015/07/24(金) 00:16:12 ID:jy3OXdSs0
正直、俺は番外編がくるまで、伏神家アシュリー乱入ルートを諦めてなかった
番外編にちょろっと出たくらいなら、学院から空間移動する流れで登場させるつもりだった
で兄や祖父(無理やり)公認の次期妻みたいなノリにするつもりだった>つまりラブコメ

もうここまで来ると終わらせた方が早く思えるがなんで宗教じみた話になってんだろ
そういやドネルクラルの時も似たような事しでかしてたな俺…

706数を持たない奇数頁:2015/07/24(金) 23:24:05 ID:gSnu/HMA0
もうちょいで終わりそうではあるのだが、これ完全にドネルクラル戦の焼き増しでしかない気がする
俺がこういう種類の戦闘しか書けない馬鹿のワンパターン野郎である事を主張してる様にしか思えない

707数を持たない奇数頁:2015/07/25(土) 19:31:15 ID:3g4uIO0o0
七つの大罪って【傲慢】と【憤怒】以外の設定出てたっけ?

708数を持たない奇数頁:2015/07/25(土) 19:34:09 ID:UGLhPfJk0
【怠惰】が魔法の解除で、【暴食】が飢餓感と結びついた槍っぽい攻撃かな?

709数を持たない奇数頁:2015/07/25(土) 19:41:51 ID:73E3ha3Q0
ありがたや、ありがたや

710数を持たない奇数頁:2015/07/25(土) 19:43:50 ID:A62hPzRc0
聡治の厨二シリーズの事なら暴食もあるな

出した本人としては↓のような設定で書いていた

古びた軍用札に複雑な構成式を多重筆記(言語の圧縮や重ねる事で式密度向上、省スペース化)で書いてコーティング(劣化防止、導通良好化)した物。
普通は複数枚の札を組み合わせて作る書記魔法だが、聡治が無駄に頑張ったせいで一枚で発動できるようになった。そのせいで携行禁止の扱いに。
(規定枚数以上に機能を分散させた場合なら問題なかった、という経緯を個人的には考えていたりする。)

711数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 09:09:29 ID:L7bBEMxc0
できちゃったみたいなの…(///

問題は、つい勢いに任せてベイバロンを倒しちゃった事だ
倒したのはクロガネだが

712数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 09:28:35 ID:mu4J7z6A0
かまへんかまへん
正直風呂敷広げすぎた

713数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:52:38 ID:vyrOqEag0
「よっこらしょ」
 間抜けな掛け声と共に、大型動物よりなお巨大な翼持つ竜が仰向けに倒れ込んだ。巨体は地面を抉り、クレーターと共に土埃を巻き上げる。
 竜が見に纏う強固な鱗はあらゆるダメージを軽減させる、鋼より硬質な素材である。ちょっとやそっとの事では傷一つ付くまい。地面に倒れたところで、その外装を貫通する事はできない。
 だが、衝撃は別だ。投げ飛ばされる速度は尋常ならざる、全体を高速で地面に打ち付けられた竜は致命傷とまではいかずとも、内臓や骨などの重要器官に重篤な振動を受け、その身を激痛が迸る。
 そして、激痛に耐えつつ起き上がるには、その身体はあまりにも巨大で、鈍重すぎた。
 尾を抱え込む様に投げ飛ばした張本人、伏神楯一郎は素早く回り込み、地面に仰け反る様に頭を垂らした竜の頭部に左手を添える。
 ──人外であっても、脳みそを鷲掴みにする様な圧迫感は理解できる。人間を木っ端の様に扱う超常の存在は、楯一郎を前に死を予感した。
 伏神無手流・万意穿孔浸通撃。浸透勁と呼ばれる、硬い外部から振動のみを全体に反響させる、伏神に伝わる内部破壊の拳技。
 鱗があらゆるダメージを軽減するというのであれば、鱗の内部を直接攻撃してしまえばいい。竜との遭遇直後、何手か試してダメージを殺してしまう鋼より硬質な皮膚を持つ竜を相手に、楯一郎はそう判断した。
 ストン、と。ともすればコミカルにさえ聞こえる軽快な音を鳴らし、楯一郎のゆったりと動く右拳が竜の頭部を打ち付けた。瞬間、竜の頭蓋の内部、脳や脊椎が衝撃を受けて爆発四散する。
 傍から見るならば、それは魔法の様に思えるだろう。この場に五界統合学院の研究室がいれば、どう判断を下しただろうか。
 が、現実には、楯一郎が使った魔法は肉体活性、賦活活性などの操作魔法一種しか用いていない。……と言ったならば、おそらくどんな魔法研究者も鼻で笑う事だろう。
 背後から迫る牙。楯一郎は今しがた殺害した竜の体を蹴って飛び上がり、巨大な竜よりなお高く、上空から地上へ打ち下ろす様に拳を振った。その拳は竜には到底届かぬ距離でありながら、鉄球重機(モンケーン)ほどもあろう巨大なハンマーを振り降ろされたが如く、首の伸びきった竜の頭部が圧し潰された。
 伏神無手流・大鵬点衝百歩撃。その名の通り、百歩の間合いにすら届く拳撃である。冗談でもなければ事実、楯一郎の拳は竜を圧殺したのである。
 竜の死骸に着地したと同時に疾走。魔界人の集落にある竜の姿は七頭。うち六頭が絶命し、残る一頭めがけて楯一郎は音を置き去りにする程の速度・脚力で駆ける。
 距離は至近とは言い難く、目測で二十メートル。それでも楯一郎にしてみれば一瞬だ。その程度の距離であれば、楯一郎の射程範囲に届いている。
 竜は大きく咢(アギト)を開き、全身全霊を持って慟哭を放った。人間の脆弱な肉体など、莫大なエネルギー量からなる衝撃波、魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)を以てすれば弾け飛ぶ。
「こ・ざ・か、しいわッ!」
 弾け飛ぶ筈なのに、楯一郎は竜に匹敵する声量を発してこれを相殺した。仔竜が開けた大きな口が、呆れ果ててポカンと開いている様に見える。
 弾丸の様な速度で飛び上がり、生物であれば心の臓があるだろう位置に拳を当てる。外部から確認はできないが、内部ではダイナマイトが爆ぜる程の衝撃によって粉砕されている事だろう。
「よし。一丁上がり」
 轟音を立ててその場に倒れ込む竜の腹にどっかと腰を下ろし、空を見上げる。楯一郎は知る由もないが、ベイバロンと名乗る竜の眷属は未だ、空にも、本家にも、上伏町にも存在する。ようやっと半分ほどが討伐できた訳で、それでも上空を飛行周回する竜の群れは順次、上伏町を襲撃している。
「町には希口もおるし、そうそう心配する事もないじゃろうが。どれ、もうちっと数を減らすとするかの」
 上空をぼんやりと眺めながら、楯一郎は手を翳す。自分の手と竜の影を同時に遠近法で観察し、距離を測っているのだ。
 およそ五〇〇メートルと言ったところか。流石にこの距離では百歩撃も届くまい。百歩撃とは空気を打つ振動を百歩の間合いまで直線的に与える拳技である。距離が開くほど振動は拡散し、その威力は半減する。仮に届いたところで竜に致命傷を与える事は出来ない。
 竜が伏神山を降下する際に百歩撃で狙撃するという手もあるが、竜の行動に頼りすぎて積極性がないし、何より確実とは言えない。狙撃だのタイミングを合わせるだのと言った細かな作業は苦手なのである。
 そうなると、答えは一つしかない。実に単純で明快な話である。
 遠距離攻撃で撃ち落とすのが難しいのならば、直接出向いて討ち落とせばいいのだ。
「……こりゃあ、明日は筋肉痛じゃな」
 屈伸運動で軽く足腰を解した後、楯一郎は腰を落として力を溜め、全身の筋肉を爆発させるが如く跳び上がった。

714数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:53:02 ID:vyrOqEag0
 楯一郎は人間という理解の範疇に留まる存在でありながら、理外の能力を宿した、人間を超越した人間である。
 そも、楯一郎の一連の行動は魔法ではなく技術である。彼が唯一行った身体強化の操作魔法は、かつて太古の時代には「仙術」と呼ばれる森羅と肉体の調和による夢想の境地によるものだ。その強化率は、しかし、五界統合以後の八種魔法が確立した現在では不可能ではない──どころか他の魔法より一層劣る。
 故に、楯一郎の超常じみた行動は魔法に起因しない。それは楯一郎という人間が、幼少より培ってきた技術である。

 垂直跳びで、およそ五〇メートル。竜の群れが帯空している距離までまだ足りない。五〇メートルも跳び上がれる事自体が常識を超えているが、それでもまだ飽き足らず。
 楯一郎は空中で再び足を打ち付けた。まこと有り得ない事に、楯一郎の体が更に上空へと跳び上がる。
 彼は何をしたか。実に単純に、蹴って、跳んだのである。空気を。
 気体や液体は粘性があり、つまり抵抗がある。この粘性はぶつかる速度が増す毎に圧力が強くなり、圧力を受けた流体は硬度を増す。高所から落下した物が水面にぶつかる時、水面がコンクリートの様に固くなるという話の正体がそれである。
 楯一郎は超高速で空気の壁を蹴り、そこを地面として再度跳んだに過ぎない。故に、これは魔法ではなく技術である。例え楯一郎以外の何者にも再現できなくとも、これは決して魔法ではないのだ。
 数度ほど空気を蹴って跳び続け、遂には竜群と同じ高度まで到達する。よもや、竜もこれほど化け物じみた化け物が、空を跳んでくるとは予想だにしなかっただろう。
 最後の空中跳躍で竜の背に飛び乗った楯一郎は、振り落とそうとする竜が暴れようとも難なくバランスを取り続け、頸骨を軽く鳴らしてけたけたと笑う。
「さぁ、楽しく踊ろうぞ、羽蜥蜴ども。音頭はわしが取ろう」


「うん、日頃から化け物じみてるとは思っていたが、存外マジモンの化け物だな、あの人」
 ベイバロンと睨み合う最中、集落の方から祖父が空を飛んで行くという飲み込み切れない事実を目の当たりにしたソウジは、もはや笑う事しかできない。いつの日か受けた祖父の拳骨の痛みが想起(フラッシュバック)するが、あれは楯一郎にとって万分の一以下の出力だったのかも知れない。もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな。
「……面妖な男よ、伏神楯一郎め」
「面妖とかそんなチャチな存在(もん)じゃ断じてねぇ。もっと恐ろしい論外クラスだよアレは」
 殺虫剤を喰らった蚊蜻蛉が如く、次々と墜とされていく竜群を呆然と眺めている二人の、何と滑稽な事か。二人に共通する感想は「もはや楯一郎なら何をしでかしても驚かない」である。
「口惜しいが、あれを相手に真っ向から攻める事は不可能じゃな。絡めとらねばならん。手数も時間も惜しい、貴様を喰ろうてさっさと目的を果たすに限ろう」
「そう言うなよ。宴もたけなわって時間でもねぇ。今なら大特価サービスだ、一瞬で焼き殺してやるぞ」
「くかか、ほだえるなよ、小童。楯一郎や劔ならいざ知らず、貴様ごときに討ち取られるわしではないわ」
「あっそ。人の親切心を無碍にする奴はロクな大人になれないぞ、聡理」
 じり、と両者が踏み締める砂利が音を鳴らす。ベイバロンはどうやら、劔の時のように仔竜の援軍を呼ぶつもりはないらしい。そもそも空を周遊する竜群は楯一郎と死闘を繰り広げているし、町を襲った竜も何者かに阻まれ、戦力を割いていられないのだろう。
 付け入る隙があるとすれば、ここだ。今、この瞬間こそが、ベイバロンを討ち取る絶好の機会なのだ。
 卑小な人間を圧倒的に超越する質量(エネルギー)。高次元の存在だからこそ抱く事ができる、徹底的な、決定的なまでの傲岸不遜。
 あとは手持ちの手札で、ベイバロンの身を一瞬でもいい、クロガネの対竜攻撃を確実に決める為の隙を作ればよいだけだ。
 問題はそれが出来るかどうか。確かに、ベイバロンは油断していよう。ソウジを相手に心底から慢心し、意識の欠片ほどしか気にかけていないだろう。
 絶対的強者。ドネルクラルに比べて、単体戦力としては数段は格が下がるだろうが、それでもなお余りある強大な存在。人間にとっては、獅子も虎もさほど変わりはない。どちらが強いか論じるのは大いに結構だが、しょせん人間ではどちらであっても太刀打つ事は出来やしないのだ。
 故に人間は知恵を得た。己より巨大な、強大な存在を、如何に効率よく御す事ができるのか。

715数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:53:23 ID:vyrOqEag0
 ──人間の歴史は殺害の文化である。古来より、有象無象、生者死者を相手に、様々な殺害方法を際限なく模索し続けてきた。
「……ドネルクラルは、殺す事が出来た」
「む?」
「損傷(ダメージ)による機能停止。お前たちドラゴンと呼ばれる存在は、人間より遥か高次元に位置する存在でありながら、まるで生き物の様に死んでしまう」
 黒龍(ファブニル)によって亜空間に連れ去られた時、エクリエルの魔法で干渉する事が出来た。赤龍(アドライグ)や緑龍(ウロボロス)はあれほど超常の天災を巻き起こしながら、互いに蹴ったり受けたりと物理的な攻防を行っていた。ドネルクラルは【憤怒】で焼け爛れ、真の姿は白龍の腕で引き裂く事が出来た。ベイバロンは言わずもがな、楯一郎の手により次々と子飼いを失っている。
 ドラゴンは世界を構成する存在でありながら、あまりにも「世界の影響を受けやすい」事は、ドネルクラル戦以後ずっと疑問に感じていた事だった。
「詰まるところ、お前たちには、この世界に干渉する為のルールがあるんだろ?」
「……なにを言っている?」
「簡単な話だ。お前たちドラゴンは──この世界に干渉する為に、この世界の生命体(ルール)に縛られてしまう。それが高次元存在(ドラゴン)のルールだ」
 高次元の存在、それこそ神に匹敵する存在であると言うのなら、人間ごときが敵う相手ではない。そも、万能であると言うのなら端から人間に憑依し、欲望を満たし、征服する必要すらない。
 にも関わらず、ドラゴンと呼ばれる存在は、どいつもこいつも回りくどい。赤龍(アドライグ)は初対面で言った、「探すのに苦労した」と。「人間は不便である」と。
 神が箱庭を弄ぶように、ドラゴンがこの世界に干渉できるというのなら、絶対に出ない言葉だ。人間の欲望を満たして乗っ取るなど愚の骨頂。初めから人間の意思などアリを踏み潰す様に消してしまえばいい。
「……消してしまえばいい、のに。お前たちにはそれが出来ないんだろ?」
「貴様……ッ!」
「お前たちは世界に干渉する為に、自らの情報量を削って、生命体にまで身をやつして、初めてこの世界での行動が可能になる。だから、その器として、最も知性のある人間を選ぶんだ。自らの能力制限を、選んだ人間に補わせるんだ」
 赤龍(アドライグ)たちがソウジ以外に干渉しない、否、できないのはそれが原因か。奴らはどれだけ情報量を絞ろうと、人間には耐えられない程の質量を持つのだろう。それは白龍(ヴェイパー)と同化したソウジだからこそ、辛うじて会話が成立しているに過ぎない。
「わしを愚弄するか! 貴様ら人間風情が、わしらと同等と吐(ぬ)かすか!」
「同等? 勘違いすんな、羽蜥蜴。お前は人間よりずっと優れた『生物』だよ。有象無象の塵芥を相手に、何をムキになる必要があるんだ? 図星でも突かれたか?」
「貴様、貴様、貴様ァ!」
「だけどな、覚えとけ。──人間は、自分より遥かに強い生物を相手に、殺害する為の方法を模索し続けてきたんだ」
 同胞を守る為に、食料を得る為に、繁栄を築く為に。あらゆる外敵を殺す為に、木の枝を槍として、石ころを弾丸として、自然な地形を罠として、手段の限りを尽くしてきた。
 ──人類の歴史は、殺害の文化である。曰く、
「……この世界に干渉する為に、世界の生命体(ルール)に縛られた存在。だがそれが、元がどれだけ絶望的な存在であろうとな、生きているのなら神様だって殺せる筈だ!」
 芝居がかった調子で空を指差しながら、激昂するベイバロンへ一歩踏み出す。
「頭上注意だよ、ベイバロン!」
「ぬっ!?」
 ほんの半歩ほど後退しつつ、ベイバロンは上を見上げる。先ほど、ソウジがバラ撒いた迷彩魔符による攻撃への警戒心を解いてはいなかったろうが、それでもこの攻撃は感知できなかったのかも知れない。その焦りが、竜の思考を鈍らせた。
 それもそうだろう。ソウジが指差す先には、魔法の気配など一切ないのだから。
 突如、ベイバロンの足元が炸裂した。それは魔竜の装甲を吹き飛ばす程の威力こそないものの、地面を抉り、体勢を崩させるには十分な程度のものである。
「こんな初歩の初歩みたいな口車に引っかかってんじゃねーよ爬虫類!」
 ベイバロンを指さして笑いながら、間髪入れずソウジは足元の砂利を蹴たぐる。小さな礫は空中の符を通過し、爆発的に加速してベイバロンへ襲いかかる。一撃一撃が散弾銃にも匹敵するそれを、足元を掬われたベイバロンは避ける事ができない。

716数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:53:50 ID:vyrOqEag0
 両腕で頭部のみをガードする。百を超える礫のほとんどは硬い外骨格に阻まれるが、いくつかは装甲の隙間を縫う様にベイバロンへ突き刺さる。下手な鉄砲でも、数を撃てば当たるの典型である。
 ここで今一度、【傲慢】を再動する。身体能力を向上させたソウジは一気に駆け、ベイバロンへ肉薄する。その手には【憤怒】を持ち、拳を叩きつけるついでにベイバロンへ貼り付ける。
 指向性を持たせた爆発が、ベイバロンの体を横殴りに吹き飛ばす。その圧力は、人間形態の質量しか持たない今のベイバロンでは抑え切る事は叶わない。
「小童、風情がぁぁぁあああ!!」
 二度、三度と地面をバウンドしながら、ベイバロンは体勢を立て直す。驚異的な耐久性だ。散弾攻撃や【憤怒】によるダメージなど意にも介さない。翼を広げて推進力を殺し、尾を地面に叩き付けて上体を起こし、俺に追撃する隙を一向に与えない。
 足に力を込め、ベイバロンを回り込む様に走る。【傲慢】の効果が活きてるうちに勝負を決めたいところだが、いくら単体性能が低いと言っても竜は竜。そう簡単には足止めさせて貰えないらしい。
 尤も、それはそれで構わないのだが。ソウジは決め手ではない。あくまでも囮、本命本丸は今まさに対竜攻撃の隙を窺っているクロガネに一任しているのだ。ソウジの目的は、出来る限りベイバロンを引き付け、クロガネの攻撃を正確に当てさせる事に過ぎない。
 それは、最悪、相打ちであっても構わない。人間一人と引き換えに竜を殺せるのなら破格の勝利だ。
 ベイバロンの死角へ向かって走りながら、空中で腕を振るう。迷彩魔符の一枚に触れた瞬間、ソウジの姿が三重にブレた。虚飾符、空間に術者の残像を投影する伏神オリジナルの符術である。
「小賢しいわッ!」
 残像は、羽虫を払う様に腕を振るったベイバロンの衝撃波が、蜃気楼の様に歪むソウジの残像を明るみにした。
 やば、と。声を上げる暇すらない。ソウジの体が一拍遅れて、衝撃波に殴り飛ばされた。如何に【傲慢】で身体能力を強化していようと、形なき空気の圧力からは逃げられない。巨大な壁に圧し潰された様だ。
「劔ならば、この程度の攻撃、難なく耐えたぞ。やはり貴様では、わしを倒すには力不足じゃ!」
「……俺はもともと、戦える系の人間じゃねぇんだ。兄さんや爺ちゃんみたいな化け物と一緒にするな」
 すかさず立ち上がりながら、カードケースから札を一枚引き抜く。魔符はたちまち巨大な槍に姿を変え、ソウジの手のひらの上で浮遊する。全身を巻き込む様に捻り、反発させて射出。
 【暴食】の槍がベイバロンへ飛来するが、その穂先は前へ突き出された右手と衝突するや、弾かれる様に消滅した。
「……ふぅ。俺の最大級の攻撃力を持つ【憤怒】や【暴食】を真っ向から受けて、全く堪えてないってのはちょいとショックでかいな」
「如何に貴様が天才だ神童だと持て囃されたところで、所詮は人間に過ぎん。人間一匹が、災害を抑えきれんのと同様に、わしに対抗できうるものか」
 悪竜の力を借りた劔や、世界の悪戯じみた故障(バグ)としか思えない楯一郎ならいざ知らず、と言わんばかりである。先ほどの礫によるダメージはもはや窺えない。化け物らしい回復力で完治している。
「むしろ、わしとしては不憫で仕方ない。同情も覚えよう、賞賛も贈ろう。この程度の実力しか持たぬ貴様が、よもや劔の代わりに立ち向かい、ここまで持ち堪えた事自体が奇跡。これ以上、何を望む?」
「世界平和」
「呵呵」

717数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:54:16 ID:vyrOqEag0
 ベイバロンの言葉に軽口を返しながら、ソウジは左拳を握り、力なく開いた。
 ──試してみるか。
 自分の記した書記魔法、その最大級・最高級の術式を施したカード、七大罪。序盤から景気よく使い続けてきた為に、残り枚数は僅かである。
 そして、一撃一撃が如何に強力であろうとも、それは人間規格での話だ。七大罪単品ではベイバロンの防御力を超える事が出来ないのは既に承知の上。
 ならば、初の試みに賭けてみるのも悪くはない。その結果がどうあれ、仮に自分が死したとしても、問題ない。
 ソウジは本命ではない。ベイバロンを確実に無力化できる術を持つのはクロガネであり、そのクロガネは先ほどからずっと勝機を窺っている。
 ベイバロンの意識をこちらに向けたまま、隙を作る。ソウジの役割分担はそれだけでいい。せいぜい、派手に立ち回って派手に散れればそれで構わない。
「右手に【暴食】を、左手に【怠惰】を」
 今一度、【暴食】の槍を展開する。巨大な槍は渦巻く暴風の鎧を纏う様に、空中に鎮座する。
 同時に。ソウジの全身を、まるで鉄の処女(アイアン・メイデン)に貫かれた様な幻覚の激痛が襲いかかる。
 魔力の奔流。明らかなオーバーフロー。ソウジのキャパシティを軽く超えた合成術式は、内側から回路を食い破らんばかりに回転数を増していく。
 そもそも、ソウジが七大罪を一度に一枚までしか起動させない理由は、それ一つが己の魔力放出量の限界値に設定していたからだ。
 貯水タンクが満タンであっても、蛇口から出せる最大水量には限界がある。ソウジが七大罪を開発した際、一枚あたりの魔力量の設定を、自身の限界値ギリギリに指定したからこそ、同時起動を行えないのだ。
 限界という事は、七大罪以外のカードとの併用も行えないという事だ。正確に言えば、七大罪のカードを起動してから次のカードを起動させる為の貯水時間(タイムラグ)が発生するのだ。
 五界統合以後の解釈に言わせれば、魔法は学問であって奇跡ではない。筋肉を酷使すれば筋肉痛になる様に、魔法を過度に行使すれば魔力炉が損傷する。
 故に、七大罪は設定段階(デフォルト)で同時起動ができない。更にそれを合成するとなれば、激痛に耐えながら暴発しようとする術式を制御し続けなければならない。
「捨て身の特攻でもしようと言うのか?」
 だからこそ、この場ではただ漫然と戦うより価値がある。奥の手が通用しないなら、自棄を起こして無茶を通そうとする。傍目から見て、これ以上に派手なパフォーマンスもあるまい。
 尤も、それだけで終わらせる気はないのだが。
「ぐ、クク、ぅがッあああ!!」
「民の為、命を賭す。その意気や潔し、と言いたいところだが……で、わしがそれを黙って喰ろうてやるとでも思うておるのか?」
 合成が終了するより先に、ベイバロンが駆ける。その速度は人間の知覚を容易く凌駕する。【傲慢】の能力強化がなければ目で追う事すらままならない。
 手のひらに浮かばせた未完成の槍を横薙ぎに振るう。ソウジの最大級の攻撃力を誇る【暴食】は擦過するだけで地面を扇状に抉りとった。
 が、その先にベイバロンはいない。視界に影が差し、飛翔(うえ)から背後に回り込んでの奇襲であると気付くのに数瞬を有した。単純に知覚速度の差と、合成魔法のフィードバックダメージで思考が鈍化しているせいだ。
「く、そがぁ!」
「如何な一撃に全てを賭けようと、当たらなければどうという事もない。戦況を見誤ったな、若輩の戦士よ!」

718数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:54:43 ID:vyrOqEag0
 背後から音速に達そう程の勢いで、竜爪が迫る。それは狙い過たずソウジの心臓を、背中から貫くには容易いだろう。
 時間にしてコンマ一秒にも満たない刹那。クロガネの対竜攻撃を今から行っても間に合うまい。ソウジは為すすべなく、死に至る以外の運命を選べない。
 ただし、それは。
 この場において、ソウジが一人で戦っている場合の話だ。
「なんつってな」
 己が命を削ってまで作り出そうとした未完成の合成魔法を、路傍に石を投げ捨てる様な気安さで放棄したソウジは、最後の力を振り絞り【傲慢】の膂力を以て背後からの攻撃を全力で回避した。ブチブチと無茶な機動を行った事で、全身の筋繊維や靭帯が千切れる音が聞こえてきた。
 ──如何に【傲慢】の効果で身体能力を強化しているとは言え、ソウジではそれを活かせる程、元の身体能力が高くない。故に背後からの一撃を避ける事など不可能な筈であった。
 それを理解していたからこそ、ベイバロンは最後の爪撃をかわされた事に驚愕を隠せない。
「馬鹿な……!」
 あからさまに、最後の攻撃ミスはベイバロンが原因であった。最後の最後で、全身の動きが鈍ったのを感じた。全身が重い……いや違う、動きが遅くなった。故に、ソウジは紙一重で回避する事が出来たのだ。
「いつからそこにいた、小娘ッ!」
「いつから? 馬鹿なのか、お前。あたしは最初から、テメェの最期まで、ずっとここに居たよ」
 ベイバロンの背後。朝の日差しを浴びて輝く長髪は雪原を想わせる蒼銀。冬の夜空の様に深く澄んだ紫の双眸に、それら全てと相反する要素である褐色肌が強烈な印象を与える少女。
 柳瀬川朝霞が、ほんの一瞬前までは誰もいなかった筈の場所に、まるで幽鬼の様に忽然と現れては、ベイバロンの背に触れていた。
「ぐぬ、この程度の、拘束など……!!」
 竜の膂力で正体不明の拘束を無理やり解除する。バキバキとベイバロンの全身から、何かがひび割れる音と共に、翼をはためかせて空へ飛び立つ。

 いつから、とベイバロンは問うた。ならばソウジはこう答えるべきだったろう。
 そんなの最初からに決まってんだろ! と。

 そもそも、理由をつけて劔をこの場から退散させたのは、注意を自分一人に引き付ける為であった。町の被害を食い止める事も理由の一つであったのは事実だが、それ以上に二人で戦闘を行うのはソウジにとって不利であった。
 まず、ソウジは劔と連携を取る事が出来ない。ベイバロンと劔の戦闘は、【傲慢】を起動させたソウジであっても付け入る隙のない高レベルなものである。むしろ、余計な手出しをして劔の足を引っ張る可能性すらあった。
 また、ソウジは対竜攻撃の為に隠密行動を取っているクロガネと連携を取れるのに対し、クロガネと劔の連携が取れない事もそうだ。竜をも破る攻撃性能を持つ二人が連携を取れないのは、乱戦において危険度が高すぎる。
 故に、ソウジはこの場で劔を撤退させ、ベイバロンと一騎打ちの構図に持ち込んだ。如何にドネルクラルと比べて見劣りするとは言え、ベイバロンとの戦力差は決定的に致命的でありながら、ソウジはその役を買って出た。

719数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:55:06 ID:vyrOqEag0
 唯一、ソウジにとって劔に勝る要素は、ソウジの戦闘スタイルは持久戦、耐久戦に富んでいる事だ。勝つ事は出来なくとも、負けなければ良い。数年間もエクリエルに鍛えられた戦闘スタイルは、より強力で凶悪な攻撃力を持つ仲間に繋げる為の引き分けゲッターとしてのものである。
 そして、最後に一つ。ソウジは闖入前に周辺に張り巡らされた伏神の結界を解析して、この場に朝霞が隠れて事に気付いていた。避難した筈の彼女が何を思ってこの場に戻ってきたのかは知らないが、これを好機と見たソウジは、ベイバロンに気取られないよう彼女と一切のコンタクトを取る事なく、思い付きの計画を決行した。
 魔符を周辺にバラ撒いたのは、自分に注意を向ける事より「姿を隠す物」の存在を自然にする事だ。事実、迷彩魔符を警戒するために、実際に姿を消した朝霞には気付きにくくなった。
 言葉による挑発は、周囲を警戒するベイバロンの意識を削ぐためでもあるが、もう一つ理由がある。移動させたり回り込んだのは、朝霞に背後を取らせるため。
 そして、ここぞというところで朝霞はベイバロンを攻撃する事に成功した。熱奪、即ち凍結。魔法の拘束では容易く引きちぎられる可能性を危惧した朝霞は、ベイバロンの内部の熱を奪って凍結させ、動きを封じる作戦を取ったのだ。
 ──超常の存在であるドラゴンは、しかし、この世に干渉する為に生物としてのルールに縛られる。生物である以上、活動する為の熱量は必要となり、熱を必要とするなら雪女にとって格好の獲物でもある。そして熱を奪われた生物は、その身体性能(パフォーマンス)を著しく損なってしまう。
 ソウジの言葉による挑発は、朝霞に言い聞かせ、攻撃パターンを誘導する為でもあった。【暴食】ほどの攻撃力でも通じない例を提示したのもその為である。
 ソウジは全てを即興で計画して、実行に移し、そして成功させた。神童と呼ばれた陰陽師、その所以は単に魔法適性が高いだけでは務まらないのだ。
 自身を二重に囮とした計画の実行中、最大の問題は、ソウジと朝霞の意思疎通が一切なかった事ではあるが……。

「お前、よく俺の考えてる事が分かったな」
「馬鹿にしてんのか? テメェの浅知恵程度、猿以上の知能があれば悟れる」
 上空に避難するベイバロンを他所に、全身の筋繊維や靭帯を傷め、倒れたままのソウジは、朝霞を見上げながら悪態を交換した。
 ──その、次の瞬間。どこかから飛来した巨大な剣が、ベイバロンの体を射貫き、地面に串刺した。

720数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:57:53 ID:vyrOqEag0
以上である

書いてる途中で気付いたが、俺いつの間にか三人称で書いてた
たぶん前回はお兄ちゃん視点、今回冒頭はじいちゃん視点で書いたから、そのままソウジ視点も三人称にしてたみたい
書き直すのも面倒だからそのまま投下したけどな!

721数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 11:11:04 ID:.nxapyfE0
じいちゃん強過ぎワロチ

722数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 11:19:52 ID:mu4J7z6A0
乙!

723数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 16:49:30 ID:L7bBEMxc0
じいちゃんはギャグみたいな強さにしようと思ってたらバグじみた強さになった
遠くを見たら自分のじいちゃんが空飛んでてみ。自分の正気を疑うよ

724数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 18:30:01 ID:L7bBEMxc0
毎回これ言うの忘れてすまん、次どあにんぜ!

725どあにん:2015/08/01(土) 19:24:52 ID:BccLWpmM0
まさかぼくもじっちゃがこうなるとは思わなかった……。
後はパパッとまとめて、賢者の書(真)でオチ付けて終わりかな

726数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 19:30:26 ID:mu4J7z6A0
ちょっと待て
となるとまたもや俺が新章の口火を切るのかッ!?

727数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 19:32:25 ID:L7bBEMxc0
兄ちゃんが革命する時、じいちゃん戦を入れようと思ったのよ
で、兄ちゃんは辺りの雑魚(という名の強者臣下)を容易く蹴散らすのにじいちゃんの異次元の強さに負けるってする予定だった

誰だよこんな化け物にしたの…

728数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 19:36:49 ID:L7bBEMxc0
事件後の後日談みたいなのを一周入れてもいいんじゃないかな
みんなで仲良く帰る的なあれ

729どあにん:2015/08/01(土) 19:37:44 ID:BccLWpmM0
>>727
それも私だ(全ての悪意を引き受ける)

730数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 20:17:23 ID:etGa8LEA0
おっつおっつ。

とりあえず冒涜的に昼寝した勢いのままに現状まででメモ帳纏めたから、追々wikiの方にぶん投げとくよ
ちなみに現在の文字数は約24万(厳密に言えば23万9千程度)文字。9万幾らかが禁書騒動編で14万幾らが伏神騒動編。
(大体文庫本サイズの小説2冊分と言えば視覚的な部分で通じやすいと思う)

意外な事に、一番長い行が俺ではないというね(最長はが一行で412文字。俺は以外にも211文字)
誰の文かを探しながら読み直すのも面白いかもしれない

731数を持たない奇数頁:2015/08/03(月) 20:27:52 ID:sP5.srVE0
文庫2冊分とすると、みんなで文章寄せ集めてるにしては意外と適切な文量で展開できてるってことなんかな

732数を持たない奇数頁:2015/08/03(月) 20:36:25 ID:OMRemYww0
希望があれば土曜日にでも全編通しての文章量の割合を出すんだぜ?

多分だけど西口が一番だと思う。次点で俺、たたりん、どあにん、クロの順になるはず

733どあにん:2015/08/16(日) 23:17:31 ID:HIIzzawA0
VIPRPG 夏の陣作品提出がかなり遅れそうなので全力で作ってます
連鎖も遅れちゃいそう、ごめんね

734どあにん:2015/08/16(日) 23:43:53 ID:HIIzzawA0
ザクッと進めて次の人が頑張って!ぼくはもう一方を頑張る!


「がっ……はぁっ……!」

その口から真っ赤な塊がゴボリと漏れ、空色の鱗がドス黒い血で染め上げられて行く。
何が起きたのか教えてくれ、と言いたげな表情でベイバロンもソウジも朝霞も、突如飛来した巨大な剣を見やる。

『間に合ったようですね、ミスター。』

突如上空から知った声がする、何事かと思って上を見上げると、前時代的甲冑が空を飛んでいる。
背部に装着されたバックパックから青白い炎を吹かしながら機械甲冑《アギョー・スタチュー》がその場で静止しており、
舞い上がる砂埃を腕を防ぎながらソウジが吠える。
もしやクロガネが、クロガネが操るアギョー・スタチューが、こんな事をしたのかと。

「クロガネェ!お前、何のつもりだ!」
『申し訳ありませんミスター……私には、やるべき事があるのです』

それだけを言い放つと同時に空中で姿勢を変え、ベイバロンに向けて急降下する。
まさかと、ソウジが走りだすも視界は熱を帯びた爆風で塞がれ、鼓膜を痛い程叩く轟音が阻み続ける。
アギョー・スタチューがベイバロンに突き刺さった剣を乱暴に引き抜き、刀身に付いた血を払うと木々とソウジの服にその飛沫が付着し、ドロリとした感触が服越しに伝わる。
やめろ、やめろとソウジが反芻するもそれがアギョー・スタチューに届くはずが無い。

『往ね、蜥蜴』

刀身に青白い文字、大凡ソウジが知り得ない物であったが、それから発せられるのは魔力であると言うのは理解出来た。
振り上げ、一閃。
ベイバロンの巨体に頭頂から赤い筋が走る、断末魔を上げる間も無く竜の巨体はその中身をブチ撒けながら、真っ二つに別れた。
光が失われ鉄塊を思わせる無骨な剣の刃が根本から折れて地面に突き刺さる、奇しくもベイバロンの墓標となるかのように。

『"竜"一体に対しこの有り様ではコストパフォーマンスは最悪ですね、"竜の墓標"<ドラゴングレイヴ>の完成は程遠い、か』

その行為に対して怒りを顕にするのは、ソウジ。
拳を握り締め地へ降り立ったばかりのアギョー・スタチューの腰部を思い切り殴りつけると
小気味の良い金属音が辺りに響き渡り、拳に電撃を流されたような鋭い痛みが走る。
機械、総じて金属をカルシウムとタンパク質とその他諸々の微細な化学物質を入り混じった物<肉体>でどうにか出来るとは微塵も考えていない。
考えては居ない……が、ソウジはそれを忘れる程の怒りを、この前時代的甲冑型にぶつけたかった。

『ミスター、いきなり何をするんです? あぁ、トドメを刺す役割を取られて怒ってるんですか?』
「違う!そうじゃねぇ!コイツには聞きたい事が山ほどあった!何故殺した!?」

クロガネの明らかな疑問を抱いているような唸り声が聞こえる。
何故こんなにも怒るのか、憎き敵を殺して何が悪かったのか理解出来ていない様子が伝わってくる。

『ミスター、この蜥蜴は罪無き街の人々を虐殺したのですよ、今殺さずして何時殺すと言うのですか?』
「何故こんな事をしたのか色々聞いてからでも遅く無かっただろうが!コイツ……竜の目的が分からず仕舞い!それになんだ、あの巨大な剣は!?」

頭がグチャグチャになって、自分でも何を言ってるのか半分程分からなくなっているとソウジは自覚している。
だが、聞かずにはいられなかった。
竜を真っ二つに断つ程の武器を、誰が、何の目的を持ってしてクロガネに装備させたのか。
カメラアイがソウジを見据え、スピーカーからそれについて話そうとした、その時だった。

突如アギョー・スタチューがガクンと揺れたかと思うと、機械的な口調でそれが聞こえてくる。

『――セキュリティ・クリアランスに抵触、この情報の開示は認められておりません。
 情報の開示が認められるのは創造者、若しくは管理者の立ち会いの元のみとなっております――』


それだけ言うと、アギョー・スタチューは何も言わずに飛び去ってしまった。
何が何だか分からない、もはやもう何も物言わぬベイバロンを亡骸を殴りつける事でしか、やり場の無い怒りを発散出来なかった。

735どあにん:2015/08/16(日) 23:44:25 ID:HIIzzawA0


倉庫の奥。
光源魔法の頼りない光の元、三人は一冊の本を囲みながら生唾を飲み、入念に確認を行っている。
倉庫の戸締まりは完璧、傍らにティッシュを用意し、そして書記魔法:言霊視の準備も整っている。
表紙は風化して読めない、かなり年季の入った本に、三人の期待は否応なしに高まる。

「しっかしフィル……まさか一冊取り上げられちまうとは参ったな」

ジョエルが股間を膨らませながら、精力剤を流し込む。

「僕も驚きました、まさか賢者の書が"2冊"存在していようとは……」

フィルは息を荒げながら、ゆっくりとズボンを下ろす。

「なんだっていい、シコるチャンスだ!」

リョタは頬を思い切り緩ませながら、言霊視の呪文を唱える。
皆、思い思いの準備を整え、時刻は12時を回った。
三人は一冊の本をまるで聖地へ祈りを捧げる信者の如く、手を合わせてお辞儀、そして深く土下座をした。
それを2分程維持した後、三人は顔を見合わせ、ゆっくりと、そのページをめくった――



本には派手な色の服を来た道化師が玉乗りをしながらジャグリングを成功させるコツを事細かに説明する内容。
三人は顔を顰めながら次のページをめくると、次はこれまた道化師が人を確実に笑わせる仕草、話題運び等を説明している。
そこで三人は気付いてしまったのだ、賢者の書……もとい、伝説のエロ本の正体を。
伝説のエロ本では無く、伝説の……ピ"エロ"本であったのだと――


それに気付いてしまった三人はあまりのショックとこれまでの疲労も相まって、泡を吹きながら倒れた。
隙間風でめくれた最後のページには、伏神家秘伝の隠し芸集 著・伏神楯一郎の文字が、刻まれていた――

736どあにん:2015/08/16(日) 23:44:47 ID:HIIzzawA0
短くてごめんね!

737数を持たない奇数頁:2015/08/16(日) 23:45:49 ID:Moet43D60
どあにん乙
……よし、締めるか

738数を持たない奇数頁:2015/08/16(日) 23:49:20 ID:Moet43D60
……ん?
なんでベイバロンの隙突く為に戦ってたのに、ソウジくんキレてんだ?

739どあにん:2015/08/16(日) 23:56:33 ID:HIIzzawA0
まーたガバガバだよ(白目)

740数を持たない奇数頁:2015/08/18(火) 09:04:21 ID:15RC/tf.0
まぁ、クロガネに一撃を任すとは言ったけど、殺すとは聞いてないし、多少はね
クロガネの対応を見るに生死に関わらずベイバロンとの以後の接触は出来なさそうだし

741数を持たない奇数頁:2015/08/18(火) 12:32:03 ID:7fqiAjXk0
これはもはや劔兄ちゃんのケジメ案件なのでは?

742数を持たない奇数頁:2015/08/18(火) 12:35:38 ID:n2UTfxb60
そもそも妹斬れなかった時点で…

743数を持たない奇数頁:2015/08/18(火) 12:42:44 ID:NEr3UD5E0
妹斬れない・町は守れない・弟に死地を任す
リレー民(主に俺)による壮絶なお兄ちゃんイジメ

744数を持たない奇数頁:2015/08/18(火) 12:50:03 ID:n2UTfxb60
お兄ちゃん株回復の為にもう一波乱起こす心積もりぞ我は

745数を持たない奇数頁:2015/08/21(金) 10:14:14 ID:qNWH5InI0
長々と引っ張った後に言うのも迷惑かかりそうなんで、早めに言っておく
パスさせて下さい

746数を持たない奇数頁:2015/08/21(金) 11:25:32 ID:.hER11tk0
Oh…しょうがないね

747数を持たない奇数頁:2015/08/28(金) 21:03:10 ID:X0fnQ.JI0
というか順番的に西口パスなら次俺?

業務的な問題と新企画の問題とで今回はおそらく無理だわ

748数を持たない奇数頁:2015/08/28(金) 21:11:22 ID:rsITA01I0
まさかのキラーパス
次はクロたん?

749数を持たない奇数頁:2015/08/28(金) 21:17:31 ID:X0fnQ.JI0
クロも参加してるからなぁ……とりあえず議論関係が落ち着いたら俺は動けるようになるかな
業務? 時間だけ掛かって疲れないか、時間はかからんけど精神的に疲れるかの二択だから、多少はどうにかなる

750数を持たない奇数頁:2015/08/28(金) 21:38:02 ID:rsITA01I0
向こうがある程度見通し立つまでこっち保留にしとく?
西口orKの人から再開って事にして

751数を持たない奇数頁:2015/08/28(金) 21:41:34 ID:Ro72k4Kg0
待ってくれるんなら西口から再開していただければ

752数を持たない奇数頁:2015/08/28(金) 21:47:59 ID:3Z5qS50o0
クロだけどそうしてもらえると助かる

753数を持たない奇数頁:2015/09/09(水) 22:56:38 ID:hcdPSX4I0
ソウジくんが田舎から帰って来たと思ったらガングロ雪女と仲良くなってたでござるの巻で
エクリエルが軽くおこするみたいなのを再開したら書きたいです(書けるとは言ってない)

754数を持たない奇数頁:2015/09/19(土) 23:14:54 ID:hec9CsAE0
出した本人としては、経歴的に色々と黒々とした物を抱え込んでいたりすると考えてる
その辺はいい感じのタイミングで出すとして、まぁリレー小説なんて書いたもの勝ちだからなぁ

755数を持たない奇数頁:2015/09/22(火) 16:36:34 ID:1SkWCWUI0
文化祭前になんとか少しでも朝霞の好感度パラメータを上げたい系男子

756数を持たない奇数頁:2015/09/22(火) 18:54:23 ID:0HI8lct.0
現状でもそれなりに上がってるんじゃないですかね(適当)

757数を持たない奇数頁:2015/10/03(土) 08:38:55 ID:oIHdZaBQ0
思い返してみたが、全くと言っていいくらい上がってない気がしてきた

①姉ちゃんの婚約者がウマの合わないクラスメイトの兄貴だった
②一夜のうちにクーデター発生、クラスメイトが行方不明(幻影朝霞に連れられ地雷原攻略中)
③打ち合わせなく対ドラゴン戦に巻き込まれる

朝霞視点だとこんな感じじゃない?

758数を持たない奇数頁:2016/05/12(木) 21:48:02 ID:vUc29hzI0
長らく止まってるので何か書こうかと思ったけどネタがない
SS書こうにも展開にがっつり制限掛けそうな奴しか思いつかんというね

759数を持たない奇数頁:2016/05/12(木) 21:50:59 ID:fd8sCiz.0
ええんやで

760数を持たない奇数頁:2016/05/12(木) 21:59:50 ID:vUc29hzI0
なら生きる天動説さんの過去話でも書いておこうかなぁ

761数を持たない奇数頁:2016/05/12(木) 22:01:46 ID:fd8sCiz.0
学園でしこたまソウジくんを殴ってから(風紀委員を)やりはじめたんや

762数を持たない奇数頁:2016/07/11(月) 15:05:08 ID:/bI6vi0.0
ちょっと間が空いたので再会させたいな、と思う
まあ書き始めるのは俺なので、俺の都合が良い日に俺が再会させる(クズ)

763数を持たない奇数頁:2016/07/11(月) 21:33:47 ID:/bI6vi0.0
全然文章かけてなかったのに、連鎖の続き書き始めたら何故か筆が乗ってる
リハビリテーションとして暫く書き進めよう
そしてKの人に無茶振りをする

764数を持たない奇数頁:2016/07/14(木) 00:19:16 ID:.idYcX5c0
とりあえず10KBほど
俺以外の人が書くかわかんないし、今度こそ終わらせよう
例えこの10倍かかっても…!

765数を持たない奇数頁:2016/07/14(木) 11:57:53 ID:SyMI/VhQ0
僕は書くタタリ!(語尾)
どんな展開だったか思い出す為に読み返したが、自分で書いた展開にちょっとドン引きしたわ
当時はそんなに気にしてなかったが、改めて読むと殺しすぎた感がすごい

766数を持たない奇数頁:2016/07/14(木) 13:04:05 ID:.idYcX5c0
お兄ちゃんの無能感

767数を持たない奇数頁:2016/07/15(金) 19:28:23 ID:ej82tHGQ0
なんとなく思い付いた、五郎兵衛佐さんの部下
雑談スレに誤爆してしもうた…

藤骨 三両寧(とうこつ みりょうね)
柳眉 関亭(りゅうび かんてい)
甲斐 夏央(かい なつお)
春針 紫杏(はるばり しあん)

768数を持たない奇数頁:2016/07/15(金) 19:30:18 ID:N6X/MhLg0
三両寧さんの生まれた頃から罰ゲーム感

769数を持たない奇数頁:2016/07/15(金) 19:33:06 ID:ej82tHGQ0
スカルミリョーネの難易度がハンパねぇ
最初は骨見 両寧(ほねみ りょうねい)にするつもりだったが、骨(ボーン)だと頭骨(スカル)にならないし…

770数を持たない奇数頁:2016/07/27(水) 13:28:59 ID:/vKQyRVU0
二週間かけて20KB(満身創痍)
改めて文章力の低下を感じることですね?

771数を持たない奇数頁:2016/07/27(水) 18:15:09 ID:2QGZdiJI0
最初から全部読み返したから、それなりにストーリーは思い出した
ずっと停止してたし、いくらでも時間かかってええんやで
一番いいのを頼む

772数を持たない奇数頁:2016/07/27(水) 18:57:36 ID:N/oBnvyY0
(ぶっちゃけラブコメ云々言っていた時、兄ちゃんじゃなくて聡治の方に許嫁発覚イベントで想定していた俺ェ……)

773数を持たない奇数頁:2016/07/27(水) 19:07:57 ID:/vKQyRVU0
あまり期待してはいけない(戒め)
自作以上に勢いで書いてる感あるので割としっちゃかめっちゃか

まあ何にせよ今回で終わらせたい

774数を持たない奇数頁:2016/07/27(水) 19:17:37 ID:O5n6WwGg0
>>772
俺の手番が回ってきたらソウジくんにめっちゃラブコメさせるつもりだぜ
別に新章でもできる事だから、回ってきた展開がよほどでない限りはいける

775数を持たない奇数頁:2016/07/29(金) 00:17:31 ID:Vlx9Ik820
本編で説明するつもりはないけど、伊庭くんがドネルクラルに早期に乗っ取られたのは
他人のパーソナリティを窃盗するという能力のせいで精神の分裂が生じてしまい
竜の侵食速度が通常の数倍で進んだからって考えてる


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