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それは連鎖する物語Season2 ♯2

612数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:46:24 ID:ss5gHwv.0
ああ、死ぬ事が出来る。命も何もかもを放り出した上での、逃避としての死ではなく、その遂行を最後まで目指した、名誉の殉死を遂げる事が出来る。そうはっきりと自覚したわけではないが、へたり込んだ祢々の表情は、何処か和らいでいた。
竜が、何とも緩慢な動作で口を開け、ゆっくりと近付いて来る。その様子が、明らかに人間的な悪意で彩られている事に、しかし祢々は気付けない。そんな余裕など無かった。
自分は噛み砕かれるのか、それとも道すがら視界に映った死体の様に、弾け飛ぶのだろうか。どちらにせよ、生き残れるなどとは露ほども思っていない。
 ぺたんとへたり込み、眼を瞑る。末期を汚さぬように、パソコンを強く抱きしめる。これを守って死んだとあれば、きっと誰も自分をいらないとは言わない筈だ。
――ああ、でも。
聡治は、残念がりそうだ。
初めて会話した時には、いきなり怒鳴りつけられはしたが、その後も少ないながらに会話を交えて、彼が心根の優しい人間だと知った。もしかしたら、泣いてくれるかもしれない。
だけどやっぱり、心の何処かで残念がるだろう。祢々になど任せないで、素直に鎧を遣わせばよかった、と。
鎧を押しのけて自分でやると言っておきながら、殉死だの何だのと意味のない事を並べ立てて、結局は失敗したのでは、無能の誹りを受けても不思議ではない。
嫌だ。嫌だなあ。
何より聡治の、劔の弟の期待に答えられないのが、たまらなく嫌だった。
だが事ここに到って、出来る事などある訳もない。獣の様な臭いと、荒い鼻息が頬を撫でるのを感じる。
視界を埋め尽くす暗闇が晴れる事は、どうやら無さそうだった。


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