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それは連鎖する物語Season2 ♯2

605数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:43:36 ID:ss5gHwv.0
後背部の自由展開装甲が、液体めいて機体の表面を滑り、ユニット下部の露出したクロガネの周囲を覆い隠す。漆黒の闇の中、何処からとも無く伸びてきた、幾本もの姿勢固定用のアームが、その肢体を掴み、固定する。
同時にクロガネの視界も塞がれる、筈だったのだが、クロガネの視界には露出時と変わらない映像――いや、平時よりも遥かに高度に処理された映像が映し出されていた。
コネクターを通じて、ヤタガラスの電脳によって処理されたアイカメラの映像が、彼女の網膜には映し出されているのだ。それと同様に、外部の音声も、タイムラグ無しに彼女の耳朶を打っている。
まさに一匹の鴉となり、クロガネは空を切り裂くかのように飛翔する。
『アギョー・スタチューによる竜殺剣代理召喚の影響により、現在、全竜殺兵装、及び補助兵装の使用不可』
「承知しています。『カゴユミ』展開」
 脳に直接送られてきた電脳の囁きに、クロガネは肉声で応じた。コネクタは思考をも読み取るため、本来ならば必要は無いのだが、これはクロガネの癖の様な物だ。
クロガネの意志に呼応して、両翼の斉射砲が起動する。収納されていた砲身が前方に伸び、微かな駆動音と共に回転を開始する。
その砲身の奥に、ボウと妖しく光る薄紫色の「何か」がある事には、余人が気付く事は無いだろう。
伏神山腹から上伏町まで、人間の足ならば二時間以上かかるが、天駆ける鴉の翼ならば三分と掛からない。
凄惨な光景が、程なくしてヤタガラスのアイカメラに捉えられる。
胸が悪くなるような光景だった。数十体にも及ぶ竜が、逃げ惑う人々をまるで羽虫でも潰すかのような気安さで、鏖殺している。
人界の伝統的風情を色濃く残す町並みは、見る影も無くなぎ倒され、人間由来の赤・白・桃色で悪趣味に染め上げられていた。
轟く魔竜の咆哮に混じって、人々の断末魔や怨嗟の声が聞こえてくる。咆哮が含有する魔術的効果は、ヤタガラスの周囲を覆う対術障壁によって阻まれ、クロガネの体には何の影響も及ぼさない。
だがクロガネの心は、大きく揺れる。まるで呪詛にでも掛けられたかのように。
クロガネは込み上げる嘔吐感めいたものを、大きく深呼吸する事によってどうにか飲み込み、ギンと眦を決して、叫ぶ。
「全天視界モード起動! 全リミッター解除! これより戦闘駆動を開始します!」
 斉射砲が、威圧的にキュルキュルと廻る。
真紅のアイカメラが、町内全体に跋扈する竜たち全てを睥睨するかのように、禍々しくギラリと光る。
漆黒の凶鳥は雄雄しくギィと鳴き
――殺戮を開始する。


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