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それは連鎖する物語Season2 ♯2
478
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:25:52 ID:wPzqGEho0
右前肢を軸に、周囲一体をなぎ払うが如き尾撃を放つ。
その速度は疾風と称して然るべき程のものであり、伏神劔も回避する事が叶わなかった。
ギャリィ、と硬質な音が響くと共に、竜の蒼穹めいた竜鱗と、尾に対して垂直に立てられた劔の黒刀とが激突し、火花が散った。
一瞬だけ耐えるが、もとより質量に差がありすぎる。地から足が浮いた劔は、尾の勢いに捕らえられて一回転、茶室の壁に叩きつけられた。
「遅いなぁ、狗」
蒼竜は嘲笑う。追撃をかけようともせず、不動である。
必要ない、と思っているのだろう。総身に、傲慢とでも形容すべき自信が漲っていた。
ガラ、と瓦礫を踏み分け、伏神劔が今しがた新たに穿たれた穴から、のっそりと出る。
その所作はどこか大儀そうだが、外傷は見当たらない。ただ眉を顰めて、漆黒の竜鱗に包まれた左腕を開閉していた。
――些か、鈍い。
伏神劔は考える。これは果たして内に巣食う竜の抵抗によるものなのか、それとも蒼竜の能力によるものなのかを。
恐らくは前者なのだろうが、かといって後者の可能性も切り捨てられない。竜の力というものは全く馬鹿馬鹿しく、想像や想定など無意味なのだから。
敵対生物への重圧の負荷。機動の制限。そういった類のものがあると想定して動こう。
即決、即断。
時間経過によって効力を増す呪詛があるのならば、様子見は最小限に留めるべきだ。劔は地面を蹴り飛ばし、吶喊する。
だがそれを予期していたかのような、横薙ぎの爪撃が迎え撃つ。
視界がそれを捉えるよりも早く、頬を撫でる風よりその動きを劔は感じ取る。先ほどと同じように黒刀を立て、防御する。
刀にかかる凄まじい重圧に、しかし今度は逆らわない。あえて地面をけり、蒼竜の腕の進行方向へと跳躍した。
空中に投げ出されるが、損傷は軽微。器用に体勢を整えた劔は、危なげなく着地した。
だが勢いを殺しきれずに少しの間地面をすべり、次手を打つまでに一瞬の間が空いてしまう。
致命的。そう判じたのだろう、蒼竜は既に動いていた。
両翼を広げ、低空飛行。開け放たれた口腔には、剣呑な輝きを湛えた牙が、幾十も生え揃っていた。
その速度は、やはり電撃的。
だが、悪手であった。
蒼竜の息がかかり、その巨大な口の投げかける影に全身がすっぽりと覆われた瞬間、劔は動く。
あらん限りの力を込めて地面を蹴り飛ばし、思い切り横合いに飛んだのだ。
強化された脚力は容易にその体を危険域から逃す。傍らを、巨大な影が通過しようとしていた。
爬虫類めいた構造ゆえに、上顎に視界を遮られた竜には、その姿は視認できない。
閉じた口は虚空を切り、驚愕する間もなく、伏神劔の姿が蒼竜の視界に入る。その時、既に振るわれていた黒刀を防ぐ術を、竜は持ち合わせていなかった。
「ッッガァァァァァァァァ!!」
思わず閉じた瞼ごと、蒼竜の右目の眼球が切り裂かれた。
爪を、尾を滅茶苦茶に振り回し、何とか報復を遂げようとしたが、無意味。飛んでいた事が仇となった。
姿勢を低くした劔にそれらは全て掻い潜られ、苦もなく距離を取られる。
二の太刀を警戒した竜はそれ以上の攻撃を諦め、大きく飛翔した。
蒼穹に翻る一対の翼。空を制された構図となったが、実態は大きく違う。「空に追いやられた者」と「追いやった者」だ。
「人、間、風情がぁ!」
威圧的な咆哮。だが、劔は表情を変えず、ただその姿を眺めているだけだ。
演技をしている、様には見えない。心底から追い詰められた、獣の様な表情をしている。
そもこの重圧があの竜に因る物だったとしたら、こうも早くあそこまで無防備な姿は晒さないだろう。
となるとこの身を戒める重圧は、忌々しくも内なる竜の仕業か。だがそれにも、幾分か慣れてきた。
次はもう少し巧く動けるはずだ。
そう確信を得ると共に、劔の胸中には一つの懸念が浮かび上がっていた。
蒼竜の、能力が分からない。
もとより重圧が能力ではないだろうと思っていたし、不要な仮説を切り捨てられたのは収穫とも言えるかもしれない。
だが、やはり敵の手が見えないという状態は気色が悪い。体の使い方が分かってきた今、様子を見るべきだろうか。
竜に対して半身に構え、黙考。その間も、竜は咆え猛り狂う。
「肉を削ぎ、骨を砕き、臓腑を潰してくれる! ただで死ねると思うなよ、苦痛の渦の中で、千々に砕いて」
「喧しい。さっさと来い」
竜鱗に覆われた左腕を、クイと引く。空気が震え、竜の怒気が膨れ上がっていくのが、手に取るように分かった。
急降下。迫り来る脅威を、伏神劔は極めて冷静に見据えていた。
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