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それは連鎖する物語Season2 ♯2

57タタリ 2/2:2014/10/22(水) 01:10:11 ID:smnMc0lo0
「で、お前はこんなところで何をやってたんだ?」
「姉さんが婚約者の弟を迎えに行くって言うから、着いていこうとしてたんだよ。……あたしは努力はした。超頑張った」
「その努力は買おう。気持ちは分かる」
 大人組が神社の神主である織守拓人(おりがみタクト)に挨拶に行っている間、俺と朝霞は適当な会話で時間を潰す事にした。朝霞の態度がいやにしおらしいと思うなかれ。これは単に夏バテしてて喧嘩腰になるのも億劫だというだけだろう。
「それだけじゃないけどな」
「どういう事だ?」
「そうだな……テメェにあたしらの事情を喋んのは癪だが、伏神の末裔ならいずれ分かる事だし、仕方ねーか」
 言いながら、朝霞は神社よりやや高い場所を指差す。そちらに視線を預けてみると、よくよく見れば一部の森が伐採されている事が分かる。火を起こしているのだろう、僅かな煙が立ち上がっている。
 先にも述べたが、伏神山は霊山であり、一部の登山ルートを除いて一般人の立ち入りは禁止されている。標高が高い訳ではなく、地盤も安定しているので雨災時の土石流などもあまり発生せず、生活は安定しているにも関わらず、だ。
 その一部が開拓されている。これは俺が五界統合学院に行く頃にはなかった。つまり、俺が実家を空けている間に何らかの介入が行われたという事に他ならない。
「あの辺に、あたしたち魔界人の移籍集落がある。区画整備で居所を無理やり造っただけの杜撰な物だがな」
「知らなかったな、初耳だ」
 必要最低限すら連絡を取ってなかった訳だから、当然といえば当然なのだが。
「伏神山が霊山って事は知ってる。僅か数十人だけとは言え、居所を与えてくれた劔さんには感謝してるよ。……まぁ、御意見役の老人たちと一悶着も二悶着もあったって聞いてるけど」
「あの老害どもは本当にしょうもないな」
「で、居住区を提供するための交換条件が、集落から一名の代表者を伏神家で生活させること。そして、定期的に集落の状況を伏神家に報告させること。最後に、代表者の親族を五界統合学院に編入させること」
「……お前、それって……」
 老害どもは、本当に姑息で卑劣な手を使ってくるものだ。誇るつもりは微塵もないが、同じ伏神の血統として実に腹立たしく思う。
 つまり、体の良い人質だ。魔界人が不審な行動を行った場合、柳瀬川姉妹がどうなっても知らないぞという脅し文句だ。わざわざ五界統合学院に朝霞を編入させたと言う事は、守手四十七氏の権力を経由して人間界政府とも手配済みだろう。
 魔界人の脅威を出来る限り分散させて、意思の疎通を物理的に切断する。そこに白羽の矢が立てられたのが、柳瀬川姉妹という訳だ。


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