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それは連鎖する物語Season2 ♯2

1901/2:2014/12/15(月) 20:08:19 ID:bBEsXoXg0
リリリ、リリリ、と静寂を侵すでもなく、寧ろ彩るような虫の声に聞き入るかのように、彼女は眼を閉じ、身動ぎもしない。
艶めく黒曜石の如き黒い髪。どこか陶磁器めいた無機質さを湛えた白い肌。
総身を包む瀟洒なドレスから覗く手足は、彼女の名前を象徴するかのように昏く、鈍い輝きを放っている。
半機人の少女――クロガネは一人、深夜の伏神山でひっそりと、静寂の渦中にいた。
「……これは、少々予想外の事態ですね」
誰にともなく、クロガネは呟いた。
周囲に人影はない。
だが彼女の言葉は夜闇の漆黒に溶ける事無く、「彼」の耳朶を打っていた。
「全面的に同意だヨ、01《ゼロワン》。いやはや、まさかこんな東の辺境に《竜》がいるとは。それも1や2では利かないほど。
 対策室の情報収集能力というのも、存外当てにならない。これでは作った意味がない」
電子的な通信手段によるものではない。それは紛れもなく肉声だった。
クロガネ以外の何物もいないはずのだというのに、「彼」の声は真実、周囲の大気を震わせていた。
「結果論的な物言いになってしまいますが、やはり貴方についてきて頂いて正解でした、室長」
「もうセンセイとは呼んでくれないのかい? おじさんは寂しいヨ」
おどけた調子で言う「彼」にクロガネは心底面倒そうにため息を吐いた。
あからさまにうんざりとした表情を浮かべる彼女を見たら、ソウジなどの普段のクロガネを知っている人間は驚くことだろう。
楽しそう、というわけではないが、今の彼女は驚くほどに喜怒哀楽に富んでいた。
恐らく彼女自身も自覚しているわけではないのだろう、その仕草はこの上なく自然であった。
「阿呆なことを言っていないで、早急に対象の護衛に向かってください。私は《竜》を追います。
 下手をすれば、貴重な《龍憑》のサンプルが失われる事態になりかねませんからね」
「サンプル、か。無機質な呼び方だね。お前もすっかりウチの連中と似てきてしまった」
「……室長」
「ああ、ああ、分かったヨ。怒らないでおくれ。はあ、若者に酷使されるのも老人の宿命かな」
肩を竦めているのであろう事がはっきりと分かるような声音で言い、「彼」はクロガネのそばを離れる。
周囲には、誰もいない。当然、誰かが走り去る音もなどするはずもない。
だというのに、鬱蒼と茂る樹木の間から降り注ぐ月光は、確かに「それ」を浮き彫りにしていた。
起伏に富んだ山肌を難なく駆ける影を。
疾走する影「だけ」を。
「さて、01ご執心の男の子か。ここはセンセイとして、しっかりと見極めなければね」
心の底から楽しそうに、「彼」は笑う。
人の形を失いながらも、一つの執念と、己の内で蠢く竜の力のみで存在を維持する異形。
人間でも、魔人でも、天使でも、機械でも、幽霊でもない第六の存在。
第六世界対策室長にして、悠久の時を生きる《竜憑》。
ズールー・イングリッド・エンド――ジ・エンドはまるで人間の


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