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それは連鎖する物語Season2 ♯2

618数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:48:00 ID:ss5gHwv.0
「まあ、そろそろあんなザル警備の洞穴に置くのは止めるようにと、本家に言うつもりでしたし、丁度良かったと言えましょう。これは私が持ち出した事にします。君たちもこの件については早々に忘れるように。以上」
 そこまで言い切ってから、ああそうだ、と思い出したように付け加える。
「今外は危険ですから、出ないように。邸内の部屋は自由に使っていいですから、一先ず、騒動が治まるまでゆっくりして行きなさい」
「え、危険って、何かあったんですか?」
「何でも、下水道に有毒ガスが充満してしまったらしく、それが地表に漏れ出てるんだそうです。住民達の避難は済んでいるのですが、ガスの除去にどうやら明日まで掛かるらしくって。ま、リョタくんも旅行気分を味わえると思って、一晩我慢していただければ」
 その言葉に、ゴクリと唾を飲み込む三人。その横目でチラチラと、夕霧の顔を窺っている。その顔には、喜びの表情も浮かんでいるが、それ以上に恥らっているようにも見えた。
「え、えーと、泊れるのは嬉しいんですけど……」
「その、女の人と一つ屋根の下、っていうのはどうにも……」
「何ていうか、その、恥ずかしいです……」
「え……、今まで私に散々遠まわしなセクハラをしておいて?」
 まるで年頃の少女の様にモジモジとする姿は、三馬鹿の称号に違わない醜態である。拓人は「若いですねえ」と笑った。
「心配せずとも、夕霧さんはここには宿泊しませんよ。こう見えましても彼女は、本家の頭首さまのご内儀ですからね。本宅の方へお戻りになりますよ」
「……そういう事よ。ここへは、賢者の書についての進言があると彼が言うから、夫の代理として来たの。まあその話し合いの最中に、貴方達が賢者の書を手にとってしまったから、私が取り返しにいく羽目になってしまったけど」
「つまり俺たちはナイスタイミングだった、と」
「バッドタイミングよ」
「まあそういう訳で、実はまだ話し合いの途中なんですよ。話の内容も、そこそこに重要な物になってしまいますから、出来れば君たちには席を外して頂きたいのです」
「そんな事言って、俺たちが何処かへ行った隙に、子供に言えないアレやコレをするつもりじゃないんですか!?」
「……これは独り言なのですが、予てより蒐集していた壷咲花蕾の官能小説群が、ようやく揃いましてね。現在は書庫に全巻収めてあります」
「こんなとこでダベってる暇はねえ! 行くぞ手前ら!」
「「応!」」
 リョタの鶴の一声に、ジョエルとフィルが応え、バタバタと走り去っていった。その後姿にひらひらと、拓人は手を振っていた。
「いやあ、元気な子達ですねえ。将来が楽しみでなりませんよ」
「私は心配しか出来ないのだけれど。はぁ、全く朝霞ったら、どういう学園生活を送っているのかしら。全てが終わったら、姉として問い質さなくてはいけないわね」
 ややあって、完全に人気がなくなると、夕霧は凭れ掛かっていた障子戸をピシャリと閉めた。


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