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それは連鎖する物語Season2 ♯2
305
:
タタリ 2/3
:2015/01/15(木) 14:55:15 ID:.PJOanoI0
坂の中途から正規ルートへ復帰した為、集落は本当にすぐ目と鼻の先だった。
雪女の集落の第一印象は、簡潔に見たままを述べるなら「廃村」である。というかそれしか言葉が見つからない。
「一ヶ月や二ヶ月ってレベルじゃねーぞ、この荒み具合は……」
程々に均された地面からは雑草が生い茂り、木製の(粗末な)家屋は苔と蔦に侵食されつつある。ここで肉が腐った様な嫌な臭いでもすれば、集落に足を踏み入れる勇気なく撤退しただろうが、予想に反して臭いは全くしなかったのは幸いと言えるのだろうか。
劔兄さんや夕霧さんが、現状を放置しているとは思えないし、朝霞に嘘を教えていたとも思えない。となると少なくとも二人は「雪女の集落は健在である」と認識していたのだろう。情報収集の中間で意図的に健在な偽情報に歪められていたのだとするのなら、そんな七面倒臭い事をする犯人は限られてくるだろう。
さて、ここで問題。だとすれば、雪女たちはいったいどこへ消えたのか。搬送用の舗装された経路を辿れば確実に伏神に察知されるだろうし、山林地帯はご存知の通り地雷原である。
……考えるまでもない。ここまであからさまだったらば、小学生にだって理解できる。
手近な家屋の戸を開ける。舞い飛ぶ埃は手拭いの類を持ち合わせていないので服の襟で塞ぎながら、朽ちた床を踏み抜かぬ様に忍び足。
やはり生活臭は感じられない。しかし、整頓された後に消失したとも考えられない。いくつか家屋を覗いて、中には食事の支度の最中だったのも見受けられた。
争った形跡はなく、ある日忽然と、集落単位で神隠しに遭ったとしか言えない現状。さて、これをどう脳内処理したものか。この場に朝霞がいなくて本当に良かった。
集落は半径三十メートルほどの円形に切り拓かれ、やや斜面になっている。井戸の中身も確認したが、特に目立つ物もない。
目を引くのは、集落の中央に建てられた……何これ、祭殿? らしき謎の建造物。上伏神社とも趣が違うし、もしかすると魔界人の宗教に関する造詣なのかも知れない。
中に安置されているのは御神像か、と勢い込んで開けてみると、そこにあったのはおよそこの場に似つかわしくない機械が一つ。
「……ノーパ、ソ?」
機界の技術で構成された情報処理用端末をパソコンと呼ぶのだが、これは更に小型化・軽量化された携帯性モデルのノート型である。こんな電気も通ってない場所に何故、とか疑問は山ほどある。全く意味が分からない。
祭殿のあちこちを警戒して罠がない事を確認し、ノーパソを触ってみる。爆発したり電流が走ったりなどの罠はなし。開いてスイッチを押すが反応なし。どうやら電池が放電しきってる模様。
「書記魔法でも電撃を発生させたりは出来るが、流石に電流を継続的に流すのは無理だよな」
というかそもそも、パソコンなど授業くらいでしか触らないのでよく分からない。誰か専門家でもいればいいのだが、あいにく思い付く人物は現在ここにはいない。
腕時計を見る。朝霞からの電話が来てからかれこれ二十分は経過している。流石にこれ以上、屋敷の異変を放置する訳にもいくまい。
ノーパソは持っていくとして、……正直、何が何だか分からないが、一つだけ言える事がある。
伏神とは金輪際、縁を切る事にする。まさか、ここまで腐敗が進んでいるとは思いも寄らなかった。
責任は俺にもあるだろう。だから、これからやる事はきっと、過去の決別と、現在の精算になるだろうさ。
──多分ね。
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