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それは連鎖する物語Season2 ♯2

304タタリ 1/3:2015/01/15(木) 14:54:19 ID:.PJOanoI0
 集落だ。
 正確に言えば、集落へと至る道だ。
 ここまで厳重な包囲網を敷いといて、雪女の集落を放置する伏神家ではない。なら、搬入経路はある程度の舗装を期待できる筈だ。
 俺とは一切関わりのない見も知らぬどこぞの誰かが地雷を起爆させ、数時間に及ぶ俺の努力を無駄にしたのだ。地雷原を脇に逸れ、回り込む様に集落を目指す事にもはや抵抗はないし、隠密を続ける意味もない。
 非正規ルートは複雑に閉ざされていたものの、そこから正規ルートに行くのはそう難しい事ではなかった。何せ、この地雷原は『侵入者/脱走者を殺す』為の布陣だ。そういう疚しい連中が正規ルートを使う筈もないのだから、警戒はしなかったのだろう。
 程なくして、鬱蒼と繁った手つかずの森を抜け、轍の入った舗道へと出た。馬車の形跡、ここが搬入経路か。だったら後は道なりに下っていけば、伏神の屋敷か、その近辺へ辿り着く筈だ。
 先程の二人の朝霞(としか言いようのない謎現象)も気になるし、後は駆け下りるだけ。……なの、だが。
「……」
 搬入経路の坂の上を見上げる。このすぐ先にあるのは雪女の集落。今はとにかく伏神の屋敷へ戻る事が最優先であると思う反面、『この先に何があるのか』を気にする俺がいるのも事実。
 ──伏神ソウジよ。警告する、警告する。この先には進むべきではない。
 第六感が全力で警鐘をガンガン鳴らす。俺、ビビるビビる。本能が先に進むのを拒絶している。
 先ほどの朝霞の電話の事もあるし、早急に本家に戻る必要がある。の、だが。
「……そもそも、魔界人が人間より身体能力的に秀でてるからって、ここまで厳重に隔離する意味はあるのか?」
 朝霞の話では受け入れられた魔界人は数十人。上伏神社の遠目から見た限りでは集落はそこまで規模が大きく感じなかったから、せいぜい十五戸から二十戸ほどで、人口は三〜四十人と言ったところか。定期的な生活必需品などの配給はある訳だし、本当に「開けた隔絶空間」という意味合いが強く感じられる。
 雪女の戦闘能力がどれほどの物かは知らないが、魔界人=戦闘狂という事もあるまい。子供や老人もいるだろうし、戦力として脅威になるのは半分ほどだろう、つまり二十人弱。
 ……いやいや、有り得ないだろう。繰り返しになるが伏神は陰陽師の名家だ。退魔封印はお手の物、地の利もあり周囲には守手四十七氏の援軍も期待できる現状で、隔離する理由づけの為にここまで濃密な地雷を設置しまくったりするか普通?
 違和感に気付くべきではなかったと後悔するも、もう遅い。屋敷の事も気になるが、こちらはこちらで異常事態だ。
 あっちには兄さんがいるし、何より爺ちゃんがいる。多少の問題なら盾一郎という人間辞めてる系の猛者が一喝するだけで収まる筈だ。
 そして。この先に向かうとするなら、恐らく。伏神の血族として、本気で、本当に、本格的な決別が必要となる気がする。
 軽く深呼吸を行い、震える膝を殴って黙らせ、頬を叩いて睡魔を追い出す。
「ッシ、行くか」


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