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それは連鎖する物語Season2 ♯2

238Kの人 ◆0Dte0ep.fg:2014/12/17(水) 18:17:59 ID:Tv2mUhQc0
 爆音はあの一度きりであり、伏神山は再び静寂に包まれていた。
 爆音の際に、聞き覚えのある声が、無事に下山したら朝霞に踏んで貰うだのと言っていたのを聞いた。
 そして木々の隙間から、それぞれ金、橙、黒の頭髪が覗いたのは、間違いなく聡治の幻聴と幻視だ。
 どうにも聞き覚え、そして見覚えのあるそれらだったが、決して知り合いの物ではないのだと、聡治は現実逃避を行っていた。
 確か伏神山にエロ本を探しに行くとは言っていたが、まさか本当に探しに行っているはずがないのだ。
 あれは伏神山に住まう物の怪であり、爆音が響いたのは、経年劣化を起こした札が誤作動を起こしたのだろう。
 そう結論付けて、魔界人集落を目指して淡々と処理を続けて、十分ほどが経つ。
 迂回路を探す必要が無い分は、処理の時間を含めても、十分もあれば相当進む事が出来る。
 木々の隙間から開けた地が垣間見え、もう少しで地獄のような夜も終わると、聡治が安堵の溜息を吐こうとする寸前。
 ぞくり――と、まるで電流が流されたかのように、聡治の左腕が跳ねた。
 違和感止まりだったそれが、いきなり感じた衝撃に、聡治は左腕を押さえた。
 幸い、その衝撃は一度だけであり、暴れる左腕を抱える滑稽な様を、朝霞に見られる事はなかった。
 ちらりと視線を向ければ、朝霞は怪訝な視線を向けてきているが、直に興味もなくなったらしい。
 ついと視線を逸らした先は、木々の奥に見える魔界人集落だ。
 視線を周囲へと向ければ、流石に集落周辺という事もあってか、規模は小さいながらも複雑かつ殺傷性の高い物が張り巡らされている。
 流石にそれを処理する事は出来ず、もしも処理するならば、多少集落に影響は出るが、物理的に作動させて処理する他になかった。
「悪い、俺の知識で解除出来るのはここまでだ。見た感じ、一帯を囲むように貼られてるから、迂回も出来ん」
「そうか……チッ、目と鼻と先だってのに」
 ちらりと視線を向けて来た朝霞が、何を言おうとしているかは、大体予想がついた。
 登頂前に言っていた、聡治を前面に押し出す感じで行けば、どうにか行けるのでは? とでも言いたいのだろう。
「三人分引っ掛かれば通れる道が出来るが、生憎俺達は二人しかいないからな」
 聡治は敢えて、物を投げて作動させるのも無理だと言わない。
 確かに物体の動きを感知して作動する物もあるのだが、山に仕掛けられているのは対人用だ。
 厳密に言えば実体を持つ人間に対して作動する物であり、殆どの霊界人と大体の機界人は引っ掛からない。
 前者は基本的に実体が無いので、実体を顕現させた状態で突っ込まない限りは大丈夫だ。後者は生体部品を多用していなければ引っ掛かる事もない。
 つまり範囲内で石が横切ろうが動物が入ろうが作動せず、その代わり子供が入り込んだ場合でも作動するという物である。
「集落の様子ならここからでも見えるだろ? これで勘弁してくれ」
 あふっと欠伸を漏らしながら視線を集落へと向ける聡治だったが、流石に夜とも朝とも判別出来ない時間のせいか、人気はない。
 建物自体は木造であり、そして夕方見た通り、自活出来そうな領域とは言えなかった。
 ただ予想とは異なり、集落一帯を囲むようにしてある。正規の道など、そもそも存在しないようであった。
 ならば、どうやって集落の食料を賄っているというのだろう。
 一々周囲の結界群を解除している訳でもないだろうし、山中を突っ切って食料を運ぶのは非効率的だ。
 そもそも――この集落に誰かが住んでいるのだろうか?


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