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それは連鎖する物語Season2 ♯2

426数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 22:08:51 ID:2H5/4.YY0
「魔界人集落まで行って、きたんだ。……何だよ、あれ? 朝霞の知り合いが住んでるんじゃないのかよ」
 兄である劔が、朝霞に嘘を教えていたという訳ではないだろう。わざわざ嘘を吐く理由もないし、電話も誰かの手助け無しでは扱えないような機械音痴が、ノートパソコンなどを置くはずがない。
 そもそも、根本的に現状を理解してなお、何もしないという事は、聡治の知る劔の性格を考えるとありえない。良くも悪くも実直な気質であり、身内となる者が蔑ろ……以前の得体の知れない状況に追い込まれているのに、何もしないはずがないのだ。
 聡治が家出して今日に至るまでに、劔が完全に変わってしまっているという例外を除けば、劔が状況を把握していないと考える他にない。
 つまり何処かで情報が改竄されており、現在は伏神家に関する雑事から離れた視点にある楯一郎ならば、という聡治の希望は、直後に潰える。
 何を言っているのだと、きょとんとした表情を浮かべた楯一郎を見て、聡治は眉を顰めた。
「聡治、何を言っているのだ? 集落はきちんと」
「だったら! ……だったら、ちょっと見てきてくれよ。俺だと分からない事でも、爺ちゃんなら何か分かるかもしれない」
 怪訝な表情を浮かべる楯一郎だったが、数秒程聡治の眼を覗き込んで、冗談で言っているのではないと悟ったのか、無言で頷く。
「……聡治は先に帰ってなさい。此処まで来たのだ、道は分かるだろう?」
「分かった。劔兄さんの方も、何か不安だからな」
 気をつけろと、短く告げた楯一郎は踵を返すなり、集落の方向へと駆けて行った。その足取りは老人にしては非常に軽快であり、はっきり言って聡治よりも速い。
 あっという間に茂みに飲まれて消えた祖父をいつまでも眺め続ける事もなく、聡治は楯一郎とは逆、麓の方向へ身体を向ける。
 そして走り始める寸前、ふと、機械甲冑へと視線を向ける。相変わらず正座の体勢だが、これは動けるのだろうかと、首を傾げかける。
『移動可能と質問前に回答しておきます。ミスター・ソウジが全力で逃げようとも、影のように追従しますのでご安心を』
 何か嫌だなと感じつつも、動けないからこの場から動くなと言われるよりはましである。
 斜面を駆け下りる最中に視線を後ろへやると、正座のまま、本当に影のように追従する機械甲冑に、聡治は思わず苦笑するのだった。


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