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それは連鎖する物語Season2 ♯2

669剛機ホオノキ・ダン十二式 1/3:2015/07/11(土) 17:26:43 ID:v1jyJ5Ek0
 剛機ホオノキ・ダン十二式が、複数いた。
 厳密に言えば本人、もとい本機以外は剛機ホオノキ・ダン十二式ではない。同系列の別機だ。外装には所々に擦り傷が見られるが、致命的な損傷はない。
 ただし無事なのは機体だけだ。中身となる記憶領域は抜き取られており、他界人の表現をするならば、死体とでも呼べる存在だ。
 他界人であれば死体と接する事は望ましくない行動なのだが、機界人、特に生体部品の含有率が著しく低いないし生体部品を含まない個体にとっては、その限りではない。同系統の機体であれば破損原因を調べる事で自身が気をつけるべきことを理解出来るし、換装可能であれば再利用する事も出来る。
 死人を解体して再利用、と考えれば非常にグロテスク極まりない。しかし機界人にとっては、日常的と言える行為の一つでもある。友人が主要機関のベアリングが壊れたと言っていたのを聞き、自身の同規格かつ重要度の低いベアリングを貸し出す事もある。身体の物理的な貸し借りは、機会由来の部品ばかりの機界人にとっては極々当たり前の事であった。
 機械は壊れる。そして生体部品でもない限りは、一度壊れれば換えなければ直らない。逆に言えば壊れたところで、部品を換装すれば直るのだ。
 ただし、内部……多くは頭部や胸部に搭載された記録領域に限っては別だ。これに関しては、機界人の技術をもってしても、一度破損してしまえば二度と直すことは出来ない。
 その為に定期的なバックアップデータを保存し、その保存したデータの入った記憶領域を換装する事で、外面的には生を繋ぐ事は出来る。しかし一瞬でも継続性が断たれたという事は、死に変わりない。故に、剛機ホオノキ・ダン十二式は、十二式なのだ。厳密に言えば剛機ホオノキ・ダンと名乗る前に五回程度換装しているので、十二回だけ換装したという訳ではない。
 そもそも、機界人の精神、人格と呼べる物がどうやって完成したのか、それは機界人にもわからない。過去にはソースコードを読み解く事で起源を知ろうとした者もいたのだが、そういう者は、例外なく死んでいる。過負荷が原因、という訳ではない。バグと呼称出来る精神異常に苛まされ、発狂。やがて自身の記録領域やバックアップデータを物理的に破壊……自殺してしまう。
 故にソースコードを読み解く行為は禁忌とされている。それは五界統合後で自由意思という物を得てからも変わらない。むしろ、意思を得たからこそ誰もやりたがらない。誰だって、好き好んで死ぬような真似などしたくはないのだ。
 どこの世界にもタブーというものは存在している。機界人にとっては、自己の起源探究がそれであった。
 だから、剛機ホオノキ・ダン十二式が、態々同系列の機体を眺めているのは、自己の起源探究ではなかった。勿論、他界人に稀に見受けられる、死体に対して特別強い興味がある訳でもない。
 工作用に換装した腕で、眼前の死体《スクラップ》を解体していく。外装を剥げば機界人の血管や神経系である諸々のチューブや配管、配線が姿を見せる。更に奥には諸々の臓器に該当するポンプや冷却機なども存在している。
 暫く弄り回し、目的の物を見つけた剛機ホオノキ・ダン十二式の電子眼が鈍く輝く。破損しないように取り外し、眼前へと持っていく。
「――ふむ、見立て通り純正品ではないようだ」
 他界人で言うところの心臓、そこに程近い、とある部品だ。およそ他界人で言う所の成人の親指程度の大きさの部品であるが、文字通り心臓部に関わる部品である為に、重要度は高い。
 型番を確認しながら低い電子音で呟いていると、他の機体の陰から、同じ部品を手にした極彩色に塗装された機界人が姿を現す。
 ぱっと見た外見こそまるで別物だが、剛機ホオノキ・ダン十二式と同系列機だ。塗装もだが、外装の至る所に装飾が施された結果、最早別物と化している機体は、世代的には先輩と言える存在である。


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