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それは連鎖する物語Season2 ♯2

482数を持たない奇数頁:2015/03/23(月) 15:27:11 ID:wPzqGEho0
 伏神劔は、今までに二度ほど竜と対峙した事があった。
 一度目は「露払衆」としての任務中。そして二度目は、五年前。
 伏神聡里がこの世を去った日。彼は竜と相対し、そして敗北していた。
 あの日、伏神邸で一体何が起こったのか。それは劔も完全には把握していない。
 だが二つだけ、理解している事があった。
 一つ。五年前、彼の妹が、両親が、大勢の使用人が死亡したあの事件の首謀者が、当時の四拾七氏であるという事。
 そして、二つ。自分に、その陰謀を喰い止めるだけの力がなかったという事。
 だからこそ、彼は力を欲した。
 四拾七氏を駆逐せしめるほどの力を。また同じような事が起きたとき、それを喰い止められるだけの力を。
 竜の囁きが聞こえてきた時は、しめたと思った。
 忌まわしき伏神の術と、鍛え上げた精神力でその行動の自由を極限まで奪い取り、その能力とあふれ出る魔力を核に、複合術式「「悪路王」を作り上げた。
 この力さえあれば、あの日の竜すら打倒できる。劔はそう確信していた。
 だが、それは死力を尽くした先にこそある物だとも、彼は思っていた。
 自分の力に酔いしれる事が出来なくなる程度には、劔は絶望の味という物を知っている。
 悪路王は不調だった。竜の拘束が完全ではなく、動きに支障が出た。だのに、手傷と言える物を負っていない。
 運が良かった。実力差がありすぎた。そんな言葉で納得がいくような事態では決してない。
 ありえない事だと言って然るべき異常であった。
 竜という存在については、少しではあるが劔も知っている。
 それと、自分で体験したあの絶望的なまでの力を総合して考えると、こうも手応えのない戦いになどなるわけも無いのだ。
 勝利、などと思い上がれるわけもなかった。
 故に、彼に油断などなかった。


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