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それは連鎖する物語Season2 ♯2

615数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:47:18 ID:ss5gHwv.0
 光明と、洞窟の内観とは異なる風景を湛えた「出口」は、まるで冗談の様な唐突さで、彼らの眼前に現れた。
それはまるで直方形に切り取った空間に、別世界の光景を無理矢理合成したかのような不自然さであり、魔界の秘境にでも生息する珍妙な生物が、口を開けて待っているようであった。
 何の躊躇いも無く飛び込んでいった夕霧が、向こう側からくいくいと手招きをしている。尻込みする他二名を押しのけて、リョタがズイと前に進み出た。
「ここは俺が先陣を切る。そしてラッキースケベを装ってあの胸に全力で飛び込んでやる」
 眼を鋭く細め、見据える先は夕霧の胸元だ。声を潜めずによくもまあそんな事を言える物だ、と夕霧は半ば感心しつつも、無反応を貫いた。あまり関わりたくないのだ。
「馬鹿野郎……! そんな危険な事をお前にさせられるか! 女体の神秘で、全身の血液が食べるラー油になっちまうかもしれないだろうが。だから俺が行く! 俺があの山脈をクライミングしてやる!」
「お前こそ、女性の体温で眼球がゆで卵になるかもしれないぜ。だからここは俺に任せろって。な? 感触、匂いに質感や幸福度は、後で五・七・五で情感たっぷりに纏めて発表するから」
「都都逸という手は無いのか、リョタ」
「てめえフィル! 何余裕ぶっこいてんだ! コイツはあれだぞ、飽くまで故意ではありませんって面して、あの二つの大雪山を踏み荒らそうとしてやがんだぞ! 世が世なら市中引き回しの上に、皮むいてホクホクになるまで茹でて、刻んだ玉葱と挽肉と共にカラッと揚げられるような暴挙だぜこいつは!」
「ふう、つくづく君って奴は……。何故、そうまでして胸に拘るんだい? 君が朝霞様に惹かれるのは、何故なのか。それを己に問うといい」
「朝霞様……。朝霞様は、基本的に俺たちを毛虫を見るような眼で見て、言葉の中にナチュラルに罵倒の言葉を混ぜてくださって、三メートル以内に近付いたら殺すといわんばかりの威圧感を放っていて、でも雑談くらいには付き合ってくれて、高いアイスクリームを献上すると、ちょっと嬉しそうにする所が凄い尊い。可愛い。踏み躙られたい」
「其処だジョエル!」
 ビシィ、と効果音が付きそうな勢いで、フィルは人差し指を突きつける。
勇んで「出口」に飛び込まんとしていたリョタも、興味深いとばかりに視線を回らせている。夕霧は本当に嫌そうな表情を浮かべながら、何事かを呟いている。
「君は朝霞様の何に踏まれたいんだ! 女性の何に、何処にぐりぐりと踏み躙られたいんだ!」
「そうか……! 俺は、俺は、女の子の足に蟲を潰すかのように踏まれたいんだ!」
 咆哮を上げるジョエルを、腕を組んだフィルが満足げに眺めている。リョタが、してやられたと言わんばかりの表情を浮かべ、口元に手をあてた。
途端、彼らの首に長い長い紐が巻きついた。


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