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それは連鎖する物語Season2 ♯2

529タタリ@目算ヘタで章数がズレた:2015/04/16(木) 22:15:54 ID:NzkwlVZU0
 ベイバロンの思惑を瞬時に理解した劔は大地を蹴って疾駆する。足の裏で爆薬が爆ぜたかと思う程に巨大な土柱を巻き上げ、ベイバロンを守護すべく前に出る蒼竜へ刃を滑らせる。
 同時、空を翔けていた絶望の群れが二手に別れ、それぞれの目的地へと降下する。半数はベイバロンの元へはせ参じ、もう半数は麓の上伏町へ強襲する。
 魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)。大気を激しく揺さぶるそれは、もはや空気の振動ではなく衝撃波である。山林の木々を薙ぎ倒し、土砂をひっくり返し、麓の町並みを次々と倒壊させていく。
 異変に気付いた町人たちは、空を見上げる。大勢の絶叫は山を駆け巡り、劔の耳朶を打つ。彼らは、この世の終わりが降り注ぐ光景を、どう受け止めたのだろうか。
「のう、伏神劔よ」
 黒刀一閃。しかしそれは蒼竜の背鱗に阻まれる。山の中腹まで響き渡る、護るべき民草の恐怖が、劔の集中力を削いでいく。舌打ちし、今度は速度を重視した一瞬百撃。蒼竜の背鱗が次々と捲れあがり、旋風に吹かれた木の葉の如く飛んでいく。
 そこへ、他の蒼竜が大きく顎を開き、劔へと牙を剥く。殺気を感知し、咄嗟に蒼竜の影へ飛び退る。魔竜の咆哮は蒼銀の閃光として、高エネルギー波を撃ち出した。
 鱗を剥がれた蒼竜もろとも撃ち破る魔竜の焔波(ドラゴン・ブレス)の余波を受けた劔の体が木っ端の様に吹き飛ばされる。高エネルギーからなる衝撃波は体内で反響し、内臓や骨肉を破壊していく。
「ぐ、ぁぁああ!!」
 しかし、それでも。劔は倒れない。否、倒れる事を許されない。何故なら彼は守護者であり、弱き者たちを護る為の剣として生を受け、命を帯びたのだから。

「この事態を理解しておるか? これは、今、お主が反旗を翻したからこそ、伏神の民が死に行くのだぞ」

 だから──ベイバロンの言葉を受け、劔の体が動きを止めた。
「分かっておるのだろう? 伏神は内情はどうあれ、人間界政府と調和を図り、上伏の町を守ってきたのだ。貴様は伏神の暗部を崩すために、今日まで手管を用いて、伏神の基盤(システム)を破壊する為の準備を重ねてきた」
 そう、上伏町は辺境に存在する。未だに他界の文明に浸らず、古来から変わらぬ生活を続けている田舎だ。にも関わらず他所の地との流通が盛んで、かつ人間界政府へのコネクションもあり、五界統合学院へ複数人も編入できるだけの権力を有しているのは、偏に伏神のネームバリューによるものだ。
 伏神という重鎮が存在するからこそ上伏町が機能し、先の大戦を経てなお安寧を維持する事が出来ていた。
 伏神を潰すという事は、それらの権利を放棄するに等しい。劔はなにも、五年間を己が鍛えるだけの自己満足的な使い方をしてきたのではない。伏神の名がなくとも、一定の文化水準を保つ為の根回しも並行して進めてきたのだ。
 全ては決戦の日の為に。
「俺は、伏神が与えるまやかしの平和を終わらせ、真なる平和を掴み取る為に、ここにいる!」
「左様。伏神は所詮、かつての栄光に固執した欲望の具現にすぎん。だが、だからと言って、彼奴らは貴様の革命を望んでいたのやら?」
 ギクリ、と。劔の肩が震える。
「貴様は大義を掲げ、正義を抱え、仁義を以て伏神が操るまやかしの平和とやらを壊そうとした。その陰で虐げられる魔界人を救う事もその一端であろう? ……おや、それでは辻褄が合わぬな」
「……黙れ」
「魔界人を受け入れたのはここ最近の事なのだろう? しかし、貴様は五年前のあの日から、伏神への革命を企てていた。現在ある平和を捨てさせる事を民に強要する、内密の革命家として」
「……黙れ!」
「確かに、今の平和は伏神の掌の上だ。それはまやかしに過ぎん。伏神の闇部を知る貴様にとっては事実であろう。だがわしから言わせれば、それを現実として平和を享受する民を慮る事をしなかった貴様も、伏神と同じく欲望の化身なのではないか?」
「だ・ま・れぇ!」


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