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それは連鎖する物語Season2 ♯2

26西口:2014/09/08(月) 17:01:37 ID:LJRlUVYg0
「紹介しよう。こいつが不本意ながら妻、いや式を挙げていないからまだ婚約者か。不本意ながら婚約者の夕霧だ」
「不本意ながらこのデカブツの婚約者の夕霧。キリとでも呼ぶといいわ。いつ破綻するとも分からない関係だけど、一応貴方の義理の姉になるわね。まあよろしく」
「単刀直入に聞くけど、何で婚約したの?」
「ひ、人の愛の形は様々と言いますから……」
伏神兄弟と真川、そして先ほどまで劔と言い争っていたローブ姿の謎の女性――劔の婚約者である夕霧は、自己紹介をまじえた雑談を交わしつつ、伏神邸へと歩いている。
そこで明かされる衝撃の事実。なんと婚約するという話はまじりっけの無い事実だったのだ。
「しかし、本当に兄さんが結婚するなんて。どうやって治したんだ、あの癖」
「ああ、実はな。情けない事だが、未だに全く改善していないんだ、アレ」
癖とは言うまでも無く、女性の前に出ると石像めいて硬直してしまう極度のあがり症の事である。
「ええ、じゃあどうやって婚約まで漕ぎ着けたんの!? ま、まさか金を握らせて……!」
「伏神くん。それはただの悪口です」
ハハハ、と劔が快活に笑う。
――良かった。
彼はそう心の底から思ったのだ。
家で同然に家を飛び出していったっきり、一度も帰ってこなかったソウジの事を、劔は当然案じていた。
しかし「電話」の使い方が未だに理解できておらず、毛筆にて認めようにも何を書いていいか分からず、『仕事』の忙しさも手伝い、結局先日の結婚報告まで一度も連絡できなかった。
嫌われていたらどうしようという不安があった。何か取り返しのつかない事態に陥っているのではないかという懸念があった。
しかし、向こうから連絡が無い事をいい事に、もうソウジは家に戻るつもりは無いのだろうと無理矢理自分を納得させ、あえて彼を避けてきた。
もし連絡して、ソウジに拒絶されたらどうしよう。聡里を守れなかったと憎まれていたらどうしよう。
ガタイに似合わぬ女々しい考えに支配されていた。
それでも、劔はソウジの事を変わらずに愛していた。幸せになって欲しいと、そう願っていた。
だからこそ、劔は今のソウジの姿に、笑みを零さずにはいられなかった。
最後に見た陰鬱な無表情とは違い、今の彼の表情は喜怒哀楽に富んでいる。――まあ喋っている内容はアレだが。
この数年間がソウジに対して齎したものは、けして悪いものではなかったのだ。
それが嬉しくてたまらない。
「でも、僕も少し気になりますね。女性が苦手だといいながらも、夕霧さんとは普通に会話をしている上に、結婚までなされる。一体どのような経緯で?」
「ふむ、なれそめというやつか。うーん、と言ってもそう特別なものではないぞ」
「まあ、そうね。単純に女性が苦手とか言ってられない場所にいたってだけだもの」
要領を得ない答えに、ソウジ、真川の両名は揃って首をかしげる。
まあそうよね、とため息をついた夕霧は、何でもないような口調で
「初めて会ったのは10年前。そのときの私達は、殺しあう関係だったの」
そう、あっけらかんと言い放った。


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