したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

それは連鎖する物語Season2 ♯2

719数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:55:06 ID:vyrOqEag0
 唯一、ソウジにとって劔に勝る要素は、ソウジの戦闘スタイルは持久戦、耐久戦に富んでいる事だ。勝つ事は出来なくとも、負けなければ良い。数年間もエクリエルに鍛えられた戦闘スタイルは、より強力で凶悪な攻撃力を持つ仲間に繋げる為の引き分けゲッターとしてのものである。
 そして、最後に一つ。ソウジは闖入前に周辺に張り巡らされた伏神の結界を解析して、この場に朝霞が隠れて事に気付いていた。避難した筈の彼女が何を思ってこの場に戻ってきたのかは知らないが、これを好機と見たソウジは、ベイバロンに気取られないよう彼女と一切のコンタクトを取る事なく、思い付きの計画を決行した。
 魔符を周辺にバラ撒いたのは、自分に注意を向ける事より「姿を隠す物」の存在を自然にする事だ。事実、迷彩魔符を警戒するために、実際に姿を消した朝霞には気付きにくくなった。
 言葉による挑発は、周囲を警戒するベイバロンの意識を削ぐためでもあるが、もう一つ理由がある。移動させたり回り込んだのは、朝霞に背後を取らせるため。
 そして、ここぞというところで朝霞はベイバロンを攻撃する事に成功した。熱奪、即ち凍結。魔法の拘束では容易く引きちぎられる可能性を危惧した朝霞は、ベイバロンの内部の熱を奪って凍結させ、動きを封じる作戦を取ったのだ。
 ──超常の存在であるドラゴンは、しかし、この世に干渉する為に生物としてのルールに縛られる。生物である以上、活動する為の熱量は必要となり、熱を必要とするなら雪女にとって格好の獲物でもある。そして熱を奪われた生物は、その身体性能(パフォーマンス)を著しく損なってしまう。
 ソウジの言葉による挑発は、朝霞に言い聞かせ、攻撃パターンを誘導する為でもあった。【暴食】ほどの攻撃力でも通じない例を提示したのもその為である。
 ソウジは全てを即興で計画して、実行に移し、そして成功させた。神童と呼ばれた陰陽師、その所以は単に魔法適性が高いだけでは務まらないのだ。
 自身を二重に囮とした計画の実行中、最大の問題は、ソウジと朝霞の意思疎通が一切なかった事ではあるが……。

「お前、よく俺の考えてる事が分かったな」
「馬鹿にしてんのか? テメェの浅知恵程度、猿以上の知能があれば悟れる」
 上空に避難するベイバロンを他所に、全身の筋繊維や靭帯を傷め、倒れたままのソウジは、朝霞を見上げながら悪態を交換した。
 ──その、次の瞬間。どこかから飛来した巨大な剣が、ベイバロンの体を射貫き、地面に串刺した。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板