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それは連鎖する物語Season2 ♯2

613数を持たない奇数頁:2015/06/23(火) 21:46:38 ID:ss5gHwv.0
「……これ、いつまで続くんだ」
「んー、ソナーの反応を見るに、あと数分で終わりそうなんだけど……」
「それ、たぶん百回は聞いた」
 ジョエル、リョタ、フィルの三人組は、未だに横穴を彷徨い続けていた。
一体何キロメートル歩いたのだろう。体感的には、もう伏神山の山裾を何十週もしたと言われても、違和感のない程に時間が過ぎている。
しかし先頭を行くフィルの旋律魔法による測定では、横穴の全長はたかだか数百メートル程度であり、もう既に出口に到達していてもおかしくはないのだ。だが現実の彼らは、未だに闇の中を彷徨っているままであり、巧妙の一つすら見えはしなかった。
何か魔術的な偽装が施されているのは火を見るより明らかなのだが、その痕跡がどうにも読み取れないのだ。
考えられる可能性としては、ここが結界の内部であるという事くらいであろうか。それにしては、侵入する際に発生するある種の違和感の様なものを感じ取れなかったが。
どうにかここから抜けようと、先程から試行錯誤は繰り返してみた。
しかし然程の備えもない現状に置いては、打てる手にも限りがある。精々前方、もしくは後方に全力疾走したり、壁や床、天井に穴を掘れる程度だ。当然ながら効果がある訳もなく、結局こうして、彼らは漫然と歩いている。
通常ならば、絶望的な状況だ。汗で体がぐっしょりと湿り、気力も体力も魔力も底を尽き、もっと罵詈雑言を吐きながら、地面を這いずり回っていてもおかしくないと言えよう。
しかし何故だろうか。彼らは確かに少々ウンザリしてはいるものの、別段強硬に発したりする様子などは、まるで見て取れない。彼らの神経が図太い事を抜きにしても、これは少々異常である。
理由は二つ。一つは、何故か力が一切尽きない事が挙げられる。
何時間もここに滞在している上に、幾度か全力で疾走しているにも拘らず、一切の疲労感を彼らは感じていないのだ。体力の無いフィルですら、である。
そのフィルが、恐らくはこの三人組の中でも、最も強い違和感を抱いているだろう。この横穴に侵入した当初から、横穴の全長測定や、痕跡の探知などの為に、幾度も魔法を使っているにも拘らず、魔力の欠乏などに起因する疲労感などが、一切訪れないのである。
フィル自身はそれなりに優秀な魔術師であるが、流石に何の供えも無くそんな事を続ければ、下手をすれば倒れかねない。だのに、彼は今だ意気軒昂であった。
そして二つ目は、時間感覚が狂っているためである。
彼らは確かに、体感的には数時間横穴を彷徨っていると自覚している。しかしより精確に言うと、「気付けば」数時間経っていたのだ。
何も作業をせず、ただ歩いているだけでも、気付けば時間が大分過ぎてしまう。忘我状態と言うか、何も考えずに体を動かしている時間が、あまりにも多いのだ。
――その状態が、実はどんどんと長くなってきている事に、彼らは気付いていない。人を静かに食い殺す、無限回廊の腹中に収められてしまった事に。
「そういえばさあ、俺昨日夢見たんだよ」
 列最後尾のフィルが、口を開く。
「マジか。相手は誰だ。朝霞様か?」
「どういやらしかったの? まさか素足で踏んで貰ったのかい……!」
「何で淫夢前提なんだお前ら。俺だって哲学的な夢くらいは見るぞ」
「ああ、人は何故おっぱいに惹かれるのか、とか」
「何言ってるんだ。おっぱいは女性についているから良いのであって、それ単体に惹かれることなんてほぼ無いだろう」
「だが岩肌がおっぱいで構成された断崖があったらどうする」
「しめやかにロッククライミングをするね」


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