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それは連鎖する物語Season2 ♯2

440タタリ 1/3:2015/02/26(木) 13:42:55 ID:9qe1ssXs0
 本家への道のりを駆け下りるにつれ、ドネルクラルの時と同じ竜の気配がより強く感じられた。
 隠密で山林を登っていた時に比べ、道なりに下りるのは流石に早い。数時間もかけた登山距離は、十数分で下山しきろうとしていた。
 本家まではもう目と鼻の先だ。本格的に本腰を入れて事態に当たらねば、俺なんて木っ端も同然だ。一度吹き飛んだ右腕を押さえながら、山道から石段に差し掛かり、
「くせ者!」
 頭上から、幼い少女の叫び声が聞こえ、漆黒の影──としか形容のしようもない──が稲妻の如き速度で木々を巡り、俺の背後を追従していたアギョー・スタチューへ飛来した。ルカとの戦闘訓練で培った俺の動態視力が、その手に懐刀らしき凶器を捉えた。
 しかし、視線が追い付くのと、反応が間に合うのは全くの別問題である。指先一本すら反応する事あたわず、飛来する影の懐刀がアギョー・スタチューのアイカメラを正確に突く。
 ギィン、と金属特有の甲高い悲鳴が朝の山林に劈く。事態を把握する暇もなく背後からの怪音に、思わず両手で耳を塞ぐという戦闘態勢にあるまじき反応を示してしまった。
「ソウジ様に近付く貴様は何奴だ」
 黒装束の少女(?)らしき人物は俺とアギョー・スタチューの間に着地し、片手を広げて俺を庇う様に仁王立ちする。一瞬だけ、もう片手に持っていた懐刀を流し見て、即座に放棄する。
 刀は折れており、影の直撃を受けたアギョー・スタチューは仰け反りつつも自動姿勢制御(ジャイロバランサー)の影響で何事もなかった様に身を起こした。そのアイカメラには傷一つついていない。
 少女とアギョー・スタチューの視線が交錯する。ビリリと空気を震わせる程の、張り詰めた殺気が辺りに充満した。
 と盛り上がってるところ悪いんだが、ここで一つばかり物申したい。俺はさっさと本家の様子を見に行きたいのだが、寄り道した魔界人集落では謎の集団失踪の痕跡を発見してしまうわ、クロガネの監視用ロボットが現れるわ、じいちゃんには押し倒されるわ、何かニンジャっぽいアトモスフィア漂う少女の攻撃を受けるわ、さっきから足止めばかり喰らいまくってそろそろストレスがマッハで堪忍袋の緒がぶっち切れそうなんだがもーどーすればいいんでしょうかねコレ。
「ってどいつもこいつもいい加減にしろよォ! 緊急事態なのに小イベント挟みまくってたら話すすまんだろうがァ!」
 俺を守る様に立ち塞がった少女と、アギョー・スタチューのアイカメラが同時に俺に向き直った。あまりに無関係かつ唐突な絶叫を予期してなかったのだろう、アギョー・スタチューは定かではないが少女の黒装束ごしに見える目がまん丸に見開かれている。
「この状況を分かりやすく喩えるなら『○○分以内にダンジョン脱出だ!』って時間制限イベントで事ある毎にパーティ会話が発生したりエスケープ不能なイベント戦が乱発してるのに時間だけはきっちりカウントされてる様なもんだぞ! しかも状況はさっぱり整理されてないのにあれこれ謎が謎を呼びまくってていい加減フラストレーション溜まりまくるわ! 小イベント起こすならせめて一度に全部済ませろチックショウ! もはや何が何だかもうワケ分かんねぇよ!」
『ミスター。あまりの展開に錯乱されてる事については心中お察ししますが、錯乱しすぎて貴方の言動こそ理解不能です。ほら、木々の隙間から澄み渡る青空を仰ぎ見ながら深呼吸して落ち着きましょう、ヒッヒッフー』
 俺の発狂じみた叫びとアギョー・スタチューから響く冷静なボケ倒しが飛び交う中、突如現れた少女はこの事態をどう処理したものか判別つかなかったのだろう、先程の剣呑な態度とは打って変わり急にオロオロしだした。アギョー・スタチューに対する妙な敵意とか、この現状に対応できず全部吹っ飛んだらしい。
 彼女が何者かは知らないが、この後に及んで竜以外の存在が現れたという事は、彼女は味方……とまでは言わずとも、少なからず敵ではないだろう。現在の伏神家は全て敵だと仮定するなら、さっきから俺を守ろうとしている素振りも鑑みて兄さんの関係者かも知れない。


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