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それは連鎖する物語Season2 ♯2

673エクリエル 2/4:2015/07/11(土) 17:28:36 ID:v1jyJ5Ek0
「……風紀委員長だ。図書文化委員長、何の用だ?」
『何の用って、ナニに決まってるじゃない。禁書盗難、あの件って今はどうなってるの? あと一冊戻ってきてないんだけど』
 甘ったるいその声は、図書文化委員長のアシュリーの物だ。それを知覚すると同時、一層眉間に皺が深く刻まれる。
 思わず、私の知った事か、と返してやろうとも思うも、止める。脳内に関連する情報を上げていき、繋がるようにそれらを組み立てていく。
 あの一件は、結局は図書文化委員会に所属する人員によって引き起こされた物、というのが表向きに公表されている。その者には一週間の監視付き停学、という処分が下された。なお、盗んだ本は禁書と公表されていない。図書本館から持ち出し出来ない資料として軽度の処分としている。禁書盗難など、本来ならば退学処分がされても不思議ではない。
 表向きでない部分を突き詰めていけば、語られぬ者達と呼ばれる集団が関わってくる。そこで脅された結果、盗難に至った。その為、情状酌量の余地ありという事で、ある程度の虚偽を交えて、他方からの文句を言われない形で解決としたのだ。
 取調べによると犯人が盗んだ禁書は二冊。異界連結理論、そして生命変換法。組み合わせて運用すれば、五界統合時に等しい騒乱を生む原因となりうる。
 ただ残りの一冊に関しては関与を認めなかった。各種の自白を促す魔法や機材を利用しても口を割らなかった。狂人でもなければ、確実に関与しておらず、そもそも狂人であれば脅しに屈指ないだろう。故に、無関係だと断言出来るだろう。
 判明しているのは盗まれた事、という一点のみだ。監視を行う魔法を潜り抜けた事を考えれば、それなり以上に魔法に対する教養がある事は間違いない。しかし内部の人員などのように、構造の弱点を的確に突けるのならば、その限りではない。
 なお、”語られぬ者達”と呼ばれる者達を脅した犯人に関しては、校外に所属する者、という方向で結論付けられた。その為、外部機関への調査が依頼されている。
 エクリエルは、それを納得していない。校外の者が関与するには教師層以上の関与か、あるいは諸々の監視を抜けられる者でなければ不可能だ。前者はともかく、後者であれば、そもそも脅して盗ませるまでもなく、犯人自身で動く方が確実だ。
 委員長が納得していないのにそう結論付けられたのは他でもなく、教師層や生徒会から圧力を掛けられ、エクリエルの指摘事項が握り潰されたからだ。エクリエルとしては、失踪した伊庭甲子郎の件も合わせて疑うべきだ、というのが本音だ。しかし、圧力によって禁書盗難事件とは無関係とされてしまった。
 その事が脳裏を過ぎると、電話の相手が毛嫌いしているアシュリーである事と相俟って苛立ってくる。
「……調査中だ。そもそも、そちらが管理を徹底していれば起き得なかった事案だろう。大人しく報告を待つ事も出来ないのか?」
『あら、今日は随分と攻撃的ね。生理中かな?』
 くつくつと、鼓膜を叩く笑い声は、人によっては甘美な響きに感じられるのだろうが、今は非常に耳障りなだけだ。
 受話器越しでも聞こえるように、エクリエルは舌打ちを一つ吐き捨て、すっと目を細める。
「……用件はそれだけか?」
『クソ真面目なクソ天使なら何日前に、だとか、そういう事言うかと思』
 叩き付けるように……もとい、受話器を叩き付けて通話を終了とする。
 下品な上に不愉快極まりない相手に、いつまでも付き合う事程無駄な事は存在しない。
 溜息と共に胸中で渦巻いた黒々とした感情を吐き出す。多少は落ち着くものの、それでも、苛立ちは収まらない。
 拍車を掛けるかのように、再び電話機が鳴る。画面には、やはり図書文化委員長室の文字。拳を電話機に叩き付けそうになったが、止めておく。始末書の追加など、煩わしい事この上ない。


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