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それは連鎖する物語Season2 ♯2

290数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:06:01 ID:Vo0LwshY0
「それでは結界の儀を」
 八隅に貼った札が静かにそして着実に空気を塗り替えていく。具体的な変化はない。だが確実に閉ざされていく感覚がある。そして、この変化が外界に伝わったとき、この戦いの幕が上がる。

 冷気が頬を抱いた。――今、絶対零度の激情を以って、腹に溜めし殺意を抜刀せん。

 時計回りに回転しながら右後方で結界を張り終えた者の首に手刀を打ち込む。首が横に伸び、それとは反対側の肩と頭部が激しく衝突し、力なく倒れた。
 一人。
 間髪を置かず年長者をあえて外し、比較的若い者共の集まる席へ切り込む。中でも体躯に恵まれたものを選び、抜き手にて心臓を破壊。足首を掴んで振り回す。頭部などは優れた鈍器だ。一掃する。
 二人。三人。四人。五人。六人。七人。八人。
 状況を理解したものが動き始める。だが愚かだ。無防備に年長者のほうを見やる。意思の疎通を図る暇など与えない。後頭部を蹴り飛ばすと頭は回転しながら年長者にめり込んだ。
 九人。十人。
 三秒。ここまでは思惑通り。だが、この発煙はなんだ。何らかの術であろうが、術の発動が早すぎる。所作もなかった。書記魔法の一種であろうが、札の類は結界分の八枚以外持ち込めぬはず。着物までも自分自身で検めたのだ。見逃すはずがない。だが、今はそんなことを思案しても仕方なし。術者の首を捻り切った。
 十一人。
 伏神の叡智が牙を剥く。式神が、魔力の奔流が迫りくる。だがこの日の為に研鑽を積んでいたのだ。我が破魔の方術に隙は無し。これのみに没頭してきた。何かに突き動かされ、尋常ならざる執念を以って。術というものは、生み出すことは難く、壊すことは易し。霧散しろ。瓦解しろ。貴様らも、それの存在も、あの日より許せんのだ。
 殺到したそれらを破り、術者の腕を無造作に引き抜く。その腕を胸に突き立てる。近くにいた二人の頭を鷲掴みにし、それでもって頭部を挟み潰した。三つの頭は原型を留めていない。
 十二人。十三人。十四人。
 七秒。
 後ろか。いかに白煙に覆われようが、血の臭いに塗れようが気付かぬはずもない。振り返り見ればやはり……いや、これは頭部の無い死体。放られたのか。同胞の死体を、このように扱うか屑め。この着物、この死体はあの煙を発生させた術者か。今全てがわかった。着物のはだけた奥に見える刺青が全てを物語った。巧妙に偽装した書式魔法である。通常、書式魔法は札のような平たいものに刻む。そうでなくては均一に、正常に魔法が発動しないからだ。もしそうでないものに書式魔法を記そうものならその工程は途方もなく複雑化する。それを複雑に形を変える人体に刻むなど聞いたこともない。前代未聞の秘術。一端の畏敬の念を抱きつつ、この状況の先に戦慄する。それほどの秘術を記した屍を晒しておくわけがない。死体の胸が裂け始めている。そこから覗く異常に肥大化した心臓に見えるのもまた書式魔法の文様。お見事。額より滴る一筋の冷や汗をもって、その極地に至った技に敬意を表そう。
 だが、覚悟執念においては、負けはしない。


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