したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

それは連鎖する物語Season2 ♯2

168タタリ@仕事なう 1/3:2014/12/13(土) 15:30:52 ID:7jPJxPCY0
 夜中、不意の気配に目が覚めた。
 片目だけを薄く開けて自室をゆっくりと見渡す。昔取った杵柄というか、エクリエル達と共に乱層区画に出入りしてるせいで、気配の察知が敏感になってるのは常人離れしている様でなんか嫌になる。
 俺が実家を逃げる様に飛び出してからも、使用人たちが甲斐甲斐しく手入れしてくれていたお陰で、自室はかつてと変わらない状態でいつでも使える様になっていた。寄宿舎よりも広いし、実に快適である。
 そんな光源一つない真夜中、薄らと目を開けると、そこには銀髪の女が立っていた。……自分で言っといてなんだが、このシチュエーションすごいコワイ。
「……お前、何やってんの?」
「チッ、起きたか。とりあえず蹴り起こそうかと思ってたんだがな」
 身を起こしながら銀髪の侵入者こと柳瀬川朝霞に答える。枕元に置いていた腕時計を手繰り寄せ、現在が午前一時である事を確認する。いやマジで何してんだコイツ。人の安眠妨げるとか万死に値するぞ。
 とりあえずはだけた寝間着を居直しながら、文机からランタンを取り出してマッチで火を付ける。ここでようやく視界が良好になった訳だが、朝霞の姿を見て怪訝に思う。
 彼女は寝間着ではなく、平時の私服だった。いや、私服というには厚手であり、肌の露出を限界まで制限している。昼に比べて夜は幾分かマシだと言っても、まだまだ熱帯夜は続いている。人間でも参る様な残暑を、雪女である彼女が厚手の服で耐えられるとは思えない。
「……クソ、マジ眠い。アタマ働かねぇ。殺されてぇのかお前」
「やれるもんならやってみろ人間風情が。……あ〜、いや待て、今のは言葉の綾だ。そうじゃなくてだな、何て言えばいいか」
「夜這いじゃなけりゃ相談だろ。ちょっと待て、準備するから。先に聞いとくが、俺の部屋に入る前に後ろは確認したか?」
「うんにゃ、それは大丈夫だ。魔界人の知覚をなめんなよ」
「自信過剰の自意識過剰で何よりだ。年頃の女を連れ込んだとか、使用人に見られて噂とかされたら恥ずかしいし」
 アクビを噛み殺しながら荷物を漁り、八枚のカードを取り出す。機能は単純な消音。それを部屋の四隅の天井と床それぞれに投げ放ち、部屋全域に結界を張る。
 書記魔法は事前準備が必要な分、準備さえ済ませておけばどんな魔法体系より早く発動させる事が出来る。また、文字や記号として保管する事が可能な性質上、一所のみに魔法効果を限定する結界魔法との相性は良い。
 あらかじめ文字を設置さえしてしまえば、任意のタイミングで時間差発動を行えるところもメリットの一つと言えよう。先日のドネルクラル戦では人質奪還のため敵拠点を攻撃する必要があったゆえ結界として使用する事はなかったが、伏神家は元より陰陽師の家系、攻勢より防衛に重きを置いている。実はこちらが正しい使い方なのだ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板