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それは連鎖する物語Season2 ♯2
480
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:26:42 ID:wPzqGEho0
「最後にどうなってしまったかは、わざわざ語って聞かせるまでもないでしょう」
「自業自得、っつうにはあんまりにも理不尽すぎるな。望んで手に入れた力じゃねえってのに」
同感です、と黒い甲冑は首肯した。
人間ならば誰しも、「表に出せない望み」などというモノは多かれ少なかれ抱いている。
そしてそういう望みは往々にして、他者に苦痛を強いる物。故に表に出せず、また社会もそれを望んでいる。
そういった望みを持つこと自体を、一体誰が責められよう。そういった自己中心的な考えの一切ない人間のほうこそ、寧ろ気色が悪くさえある。
重要なのは、それを己のうちへ押し込めているかどうかだ。
その為にこそ「モラル」や「良心」というものがあり、そして人は「諦める」事が出来るのだ。
それがあるから、「ヒト」は「人間」たりえる。社会を築き、その一員として生きる資格を持つのだ。
だからこそ竜の力は、条理を犯す力はあってはならない。
それは「人間」を「ヒト」へと、獣へと堕とす力だ。人間が培ってきたモノを、無為へと帰す力だ。
こうまでも「人間の仇敵」という言葉が合致する存在を、伏神ソウジは未だかつて聞いた事がなかった。
「だからこそ、竜は撃滅しなければなりません。出来る事ならば、ミスターにも近寄っては欲しくないのですが……」
「言われなくたって、あんなヤバイ奴らに自分から関わったりなんかしねえよ」
「例えばルカ氏。例えばエクリエル委員長。ご友人があれに襲われるとなれば、たとえ怪物の腹中であろうと飛び込んでいく種類の人間である、と私はミスターを認識していますが」
違うのですか、と聞かれソウジは言葉に詰まった。
反論する材料が無い、というか、似た様な事を既にやってしまっている。
あの時は、こんなに常識はずれな存在が相手だとは思っていなかった、と言い訳することも出来ないではない。
が、仮にもう一度あの日へ戻ることが出来たとして、二人が害されるのを指を咥えて見ていられるかと問われれば、断じて否という他なかった。
「それでも構いません。以前にも言った通り、貴方の自由を侵害するつもりはありませんから。
ですがこれも以前言った通り、私は貴方を守ります。ですから貴方が無茶をすれば無茶をするほど、私の身にも危険が降りかかるという事をお忘れなく」
「……善処するよ」
期待していますよ、とアイカメラをチュインと動かすと、更にもう一つ、と人差し指を立てながらクロガネは付け加えた。
「もしこの先竜と対峙することがあったとしたら、注視するべき点をお教えします」
「注視ったって、あんなのと戦う事になったら細かい事にまで気なんて回らねえぞ」
「いえ、簡単な事です。姿を見れば判別はつきますから」
それ即ち、本性を露にした竜が人に近いか否か。
「宿主の体をただ操るのではなく、完全に我が物とした竜は、竜でも人でもない『第三の存在』として産声を上げます」
「第三の存在?」
「『人竜』。人の姿をした異形です」
この世の異物たる竜が、完全にこちらの世界に適合した時、竜は持てる全能を一切のロス無く振るうことが出来る。
体を相応しき物に作り変え、その巨体を最も体力の消耗が少ない姿、即ち人のそれへと変貌させる習性があるのだ。
「その過程で、竜形態も人間のそれへと近付いていきます。ですから、竜の姿形である程度強さが把握できるのです」
「つまり、爬虫類っぽいほうが弱いのか」
「竜には特殊な力がありますから、一概にそうとは言い切れませんが、認識としてはそうズレてはいません」
ですから、ミスター。
「人の体で、竜翼を纏う存在とは決して相対しないように。独力では、私にも対処しきれない敵ですから」
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