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それは連鎖する物語Season2 ♯2

411数を持たない奇数頁:2015/02/02(月) 12:25:44 ID:vuZYJwwA0
身内の醜態というものは、時として自分の痴態を拝まれるよりも心にクる。それを俺は今、痛いほど実感している。
朝霞はまだいい。実態がどうあれ、対外的には彼女は身内だ。だからこれはまだ大丈夫だ。何が大丈夫なのかは自分でも分からないが、兎にも角にもまあ大丈夫だ。
しかし今回は事情が違う。クロガネに見られた。同校生というだけで、何の戸籍上の繋がりもない後輩の少女に見られた。
泣き乱しながら孫を押し倒す祖父の姿を。しっかりばっちり淀みなく。
「ぬわああああああんソウジいいいいいいいいいいいん!! 心配したよおおおおおん! 何でこんな所にいるんだ! いや、そんな事より無事で良かったあああああああああああああんんんん!!!!!」
 やめて。これ以上気まずい空気を流さないで。クロガネの同情的な視線が一層強くなるの。

……今の状況を説明しようと思う。
まずここは言わずもがなではあるが、山道だ。まだ伏神邸へは戻れていないが、位置関係から見てあと数分もしないうちに戻れるはずであった。
そんな俺を足止めした要素は三つ。
一つ。突如館のほうから響いた轟音と、それに伴う濃密な気配。俺はそれに覚えがあった。
「狡猾」竜ドネルクラル。学園で遭遇したあれと、その時に感じた気配は驚くほどにそっくりだった。
 唯一つ違うことを上げるとすれば、あの時よりも濃密に思えたことくらいだろうか。まるでほぼ同じ位置に、一息に二体の竜が沸いたような、そんな気配だった。
 背筋を怖気が駆け、思わず駆け出そうとした俺を押し留めるものがあった。
それが二つ目の要素。クロガネから貰った指輪が発光したのだ。
青白く光るそれに度肝を抜かれた俺は思わず足を止め、そちらに視線を向ける。すると、指輪の内部で簡易な書記魔術が起動し、空間に文字を投影し始めた。
「DS301/αSTATUEの転送を開始。指輪所持者は可能な限りその場に留まれ」
 それは機界言語の簡潔な文章だった。
DSなんたらとかいう文字列の意味はさっぱり分からなかったが、クロガネが手ずから渡してきた物品だ。危険なものという事もないだろう。
それに、たしか危険があった場合には自立兵装だかいうものを転送するとか言っていた。恐らく今から送られてくるものはそれだろう。
伏神邸の事は心配だ。それこそヒッジョォーに心配だ。が、何せあそこには伏神楯一郎というよく分からない生き物が一匹いる。すぐにどうこうなるという事はないだろう。
そう判断し、俺は指輪の警告どおりにその場に静止した。
すると数秒も経たぬ内に、「それ」は現れた。
甲冑。
ずんぐりとした形状をしてはいるが、「それ」は家にもある人間界の前時代の鎧に酷似していた。
艶めく群青色のボディ。丸みを帯びた太い手足。稼動範囲が狭いように思えるが、なぜか正座した状態で唐突に出現したことを見るに、その類の心配は必要ないようだ。
座っている状態だというのに、その頭はこちらの顔を見下ろせるほど高い位置にあり、兜の奥で妖しく光る二つの赤光に見つめられていると、尋常でない威圧感を覚える。
危険はない。それは分かっているのだが、想像していたよりも巨大なそれに思わず圧倒されてしまい、俺は何を言ったらいいかしばし迷ってしまった。


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