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それは連鎖する物語Season2 ♯2

716数を持たない奇数頁:2015/08/01(土) 10:53:50 ID:vyrOqEag0
 両腕で頭部のみをガードする。百を超える礫のほとんどは硬い外骨格に阻まれるが、いくつかは装甲の隙間を縫う様にベイバロンへ突き刺さる。下手な鉄砲でも、数を撃てば当たるの典型である。
 ここで今一度、【傲慢】を再動する。身体能力を向上させたソウジは一気に駆け、ベイバロンへ肉薄する。その手には【憤怒】を持ち、拳を叩きつけるついでにベイバロンへ貼り付ける。
 指向性を持たせた爆発が、ベイバロンの体を横殴りに吹き飛ばす。その圧力は、人間形態の質量しか持たない今のベイバロンでは抑え切る事は叶わない。
「小童、風情がぁぁぁあああ!!」
 二度、三度と地面をバウンドしながら、ベイバロンは体勢を立て直す。驚異的な耐久性だ。散弾攻撃や【憤怒】によるダメージなど意にも介さない。翼を広げて推進力を殺し、尾を地面に叩き付けて上体を起こし、俺に追撃する隙を一向に与えない。
 足に力を込め、ベイバロンを回り込む様に走る。【傲慢】の効果が活きてるうちに勝負を決めたいところだが、いくら単体性能が低いと言っても竜は竜。そう簡単には足止めさせて貰えないらしい。
 尤も、それはそれで構わないのだが。ソウジは決め手ではない。あくまでも囮、本命本丸は今まさに対竜攻撃の隙を窺っているクロガネに一任しているのだ。ソウジの目的は、出来る限りベイバロンを引き付け、クロガネの攻撃を正確に当てさせる事に過ぎない。
 それは、最悪、相打ちであっても構わない。人間一人と引き換えに竜を殺せるのなら破格の勝利だ。
 ベイバロンの死角へ向かって走りながら、空中で腕を振るう。迷彩魔符の一枚に触れた瞬間、ソウジの姿が三重にブレた。虚飾符、空間に術者の残像を投影する伏神オリジナルの符術である。
「小賢しいわッ!」
 残像は、羽虫を払う様に腕を振るったベイバロンの衝撃波が、蜃気楼の様に歪むソウジの残像を明るみにした。
 やば、と。声を上げる暇すらない。ソウジの体が一拍遅れて、衝撃波に殴り飛ばされた。如何に【傲慢】で身体能力を強化していようと、形なき空気の圧力からは逃げられない。巨大な壁に圧し潰された様だ。
「劔ならば、この程度の攻撃、難なく耐えたぞ。やはり貴様では、わしを倒すには力不足じゃ!」
「……俺はもともと、戦える系の人間じゃねぇんだ。兄さんや爺ちゃんみたいな化け物と一緒にするな」
 すかさず立ち上がりながら、カードケースから札を一枚引き抜く。魔符はたちまち巨大な槍に姿を変え、ソウジの手のひらの上で浮遊する。全身を巻き込む様に捻り、反発させて射出。
 【暴食】の槍がベイバロンへ飛来するが、その穂先は前へ突き出された右手と衝突するや、弾かれる様に消滅した。
「……ふぅ。俺の最大級の攻撃力を持つ【憤怒】や【暴食】を真っ向から受けて、全く堪えてないってのはちょいとショックでかいな」
「如何に貴様が天才だ神童だと持て囃されたところで、所詮は人間に過ぎん。人間一匹が、災害を抑えきれんのと同様に、わしに対抗できうるものか」
 悪竜の力を借りた劔や、世界の悪戯じみた故障(バグ)としか思えない楯一郎ならいざ知らず、と言わんばかりである。先ほどの礫によるダメージはもはや窺えない。化け物らしい回復力で完治している。
「むしろ、わしとしては不憫で仕方ない。同情も覚えよう、賞賛も贈ろう。この程度の実力しか持たぬ貴様が、よもや劔の代わりに立ち向かい、ここまで持ち堪えた事自体が奇跡。これ以上、何を望む?」
「世界平和」
「呵呵」


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