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それは連鎖する物語Season2 ♯2

287数を持たない奇数頁:2015/01/04(日) 23:01:10 ID:Vo0LwshY0
 伏神の屋敷には、並の寺院が収まってしまうほどの広い中庭がある。
 一族の者も普段近付かぬそこに、早朝であるにもかかわらずぞろぞろと老人が吸い込まれていく。
 守手四十七氏が一同に会する時にのみ使われる、遠い昔に建てられた、伏神の会堂がそこにあった。

 伏神家当主劔の前を臣老達が頭を下げつつ横切っていく。腰の大きく曲がった者、隻腕の者、目の見えぬ者、多くが何かを患い、どこかを失っていた。
 劔は今一度覚悟の緒を固く締めた。彼らは決してか弱い老爺などではない。何人かはかつて名を馳せた剛の者ではあるが、伏神が為と嘯き、私利私欲を恣にしてきた害虫である。そして、妹の命を奪った憎き仇である。除かねばならない。一切の情に蓋をし、凄惨なる蛮行を以ってして屠る以外なしと、そう強く念じた。

 夕霧は祈った。中庭を覗ける一室で静かに、劔の武運を、その無事を。
 適材適所、そう言って己のみが戦いの場に赴く劔の策を呑んだのは、その合理性と勝算よりも、彼の優しさと不器用さを理解していたから。
 劔が会堂に入ったことを確認し、夕霧は自らの役割に没頭するため、目を閉じ集中力を練り始めた。祈りを力と変えるために。


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