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チラシの裏 3枚目
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ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに
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零空間は消滅、辺りはただの砂漠へと戻っていった。
白い影に、黒い影が近づく。
「やーれやれ。派手にやっちゃったもんだなぁ 面白かったと思うのになー」
歩いていた老人は立ち止まる。
「フン、ダイナモか。お前さん生きておったのか」
「わかってないなー。俺だってしぶといんだぜ?アンタには到底及ばないけど。
…で?どの辺りにいるのかなー。シグマの旦那とゼロの旦那は」
靴音を響かせて老人が彼に近づく。
「……ゼロ。改善すべき点は多々あるようじゃが……
ワシはこれでも満足しておるぞ。
アルティメットアーマーを使ったエックスに覚醒しないお前が勝利したのだからな。
…正直ライトの奴もアレを持ち出すとは思っていなかったわい」
気がつけば、シグマも、エックスもゼロも…いつしか、二人の科学者の戦いに巻き込まれていたのだ。
「不意打ちにも屈せず最後に立ち、余力であれほどの力を見せてくれたのだから。
覚醒すれば今とは比較にならない力になっていたじゃろうがな…。
……まぁいい」
白衣を翻す。
「ワシを追いたければ、追うがよい。
そこから自力で蘇ってこそ、世界最強のロボットじゃ……」
続けてシグマの元へ。
「すみませんな、ワシの発明は未完成なのは昔からでしたなぁ……」
転がるシグマの首を見下ろし、老人は話す。
「…また蘇ったら私の所に来てくだされ、またお力になりましょうぞ。ハハハハハハハ!」
それはまたすぐのことだろうと、理解しながら。
「アイ…ゾック………!」
こうして、世界の裏で蠢く悪は、再び闇へと帰って行った。
一方、ハンターベース。
「エックス。イレギュラー事件の発生だ、直ちに向かってくれ」
セイバーを振り続けるエックスに向かいシグナスが直に指令を伝える。
「ダメよシグナス。今エックスは忙しいんだから。
今日は訓練だけで、後は休養させて頂戴」
「いや、有難うエイリア。でも、いいよ 俺がゼロを引き繋がなきゃ……」
「……そう。」
エックスはセイバーを片手に、駆け出していった。
「エイリア、お前さ。最近エックスに少し甘いんじゃないの?」
「…そうだな。先日の違反の件を挙げるわけではないが…」
「え?…そんなことないわよ。私はあの人を近くで見ていたから、調子がわかるだけ。」
「へぇ?他に理由でもあるんじゃねえの?」
「な、何よ…それじゃまるで」
自分で言っていて、何かおかしいことに気付く。
「………………も、…もしかして私」
エイリアは漸く気付いた。…暫くの間動きが停止する。
「…え?いや…… ……けれど」
「…気付いてなかったのか…自分でも」
ダグラスは頭を掻く。
「世界が半壊したというのに呑気な娘だ」
シグナスは半ば呆れていた。
「…………そうなのかしら、私。」
-
「一体…何が起こったというんだ?
…コロニー破壊作戦は、成功したと聞いたが」
零空間跡地。
吹き荒れる風の中、一人の青年が立っていた。
「…これでは、失敗したも同然ではないか」
辺りを見回すと、レプリロイドの遺体と思しき鉄片が。
「…一体、どれくらいのレプリロイドや人間が、命を落としたんだろう。
こんな争いが、一体いつまで続くんだろう」
…破片は、何も語ることは出来ない。
あれから3週間。ハンターベースは地球の復興作業に尽力。
地球は、ようやっと地表での活動が出来るまでに汚染が回復していた。
…レプリロイドが起こした災害。
これにより、レプリロイドと人間の種族としての上下が明るみとなった。
レプリロイドという種そのものへの責任。
…人間は、守られる側になり、地下へ避難。
これから、レプリロイドは責任を果たさなければならない。
世界を元に戻すという…責任を。
シグナスは世界各国へと深く謝罪。
しかし、具体的な対策や彼以上の適任者もいなく……
これほどの甚大な被害を蒙りながら、彼は世界から思ったほどの非難を浴びることはなかった。
ライフセーバー達は各地のレプリロイドを保護、手当てして周り
ダグラスは技術力のあるレプリロイドを集め、
エイリアは主に中級以下のハンター達の育成に精を出していた。
「…大型のイレギュラー反応!?貴方達、行ってくれるかしら」
割と腕の立つルーキー達に対処を任せることとした。
「…オイオイエイリア。アイツらだけで大丈夫な相手かよ」
「じゃあ人員を増やせば…」
まどろっこしくなってダグラスは言う。
「ああ、もう。 …エックスを呼べよ。アイツ、今休んでるだろ」
「………でも」
「……アイツを起こしてやりなよ、エックスも流石に喜ぶかもだぞー?」
「…何を…」
ゼロの声が聞こえる。
「…エックス ……エックス!」
霧の中から話しかけるはゼロ。
「……今お前が世界を守らなくてどうするんだ…
目を覚ませ、…エックス!」
「エックス…、 エックス!」
声が変わる。女性の声だ…
「…エイリア。」
回復用カプセルを覗き込むエイリアの姿が。
「…おきて、エックス。
イレギュラーが暴れているの。至急現場へ向かってくれないかしら」
「………ああ、解った。すぐ行くよ」
現場はコロニーの落下地点のすぐそば。廃墟となったビルだった。
「エックス。頑張ってファルコンアーマーを復元してはみたんだけど…
不完全な部分があって、フリームーブは使えないの」
「そうなのか…」
「その代わり、エアダッシュの機能をそのアーマーにつけて、
フリームーブの攻撃力をみたわ。」
「…そうなのか、有難う。オペレーション頼むよ」
セイバーを手に、エックスの久々の戦いが始まった。
スクラップと化したメカニロイドを破壊、廃墟の内部へ。
内部では転がってくる合成金属製の円形物体やブロックをゼロの形見により斬って進む。
ゼットセイバーは彼には使いこなせないらしい。ゼロのような素早い挙動がまるで出来ない。
階段を登り、壁を蹴り…繰り返しながら上のフロアへ。
途中、天井を突き破ってドリル装置がエックスを襲うが、これも回避して先へと進む。
屋上までの通路を繋ぐ扉を開けるとそこには。
-
「え、エックス隊長!来てくださったのですか!」
狭い通路で2人のハンターが息を切らしていた。
片方は歩けなくなり、もう片方が肩を貸している。
「状況報告を頼む」
「奇妙なメカニロイドのイレギュラーが屋上で暴れているんです…
何か、様子が変です……エックス隊長、お願いします!」
「様子が…。 有難う、よくやった。君達は帰還してくれ」
よくやった、という言葉にハンター2人は安堵し、ベースへ帰っていった。
その様子に、エイリアはほんの少し笑顔になった。
「すっかり先輩が板についたわね、エックス。」
「…戦闘の前にからかうのはやめてくれないか…?」
「ごめんなさい、それじゃエックス、準備はいい?」
「ああ。」
屋上の扉を開くとそこには…。
ドスン! …と大きな音を立てて落下してきた大型メカニロイドが。
どこからか現れた球形装置が信号を送ると、それは動き出した。
「…これは!」
「何か嫌な予感がするわね」
大きな動きで空を浮遊し、アームで攻撃したり口からエネルギー弾を発するイレギュラー。
「食らえ!!」
威力自慢のファルコンアーマーのチャージショットを当てる。…効かない。
「…クソッ、このメカニロイドも特殊合金製か!」
続けてゼットセイバー。
「ハァ!」
ゼロの戦い方を思い出しながら、一太刀を浴びせる。
…効かない。
「となると……」
「やっぱりアレを破壊しましょエックス。ゼットセイバーで一気に!」
「了解!」
大きく跳び、ゼットセイバーを体に対し真横に払う。
球形装置は一刀両断…は出来ず。刃がかすめた程度だ。
「これを繰り返せってことだな!」
反対側に現れた球形装置を1発、2発、3発。
…球形装置は真っ二つに叩き切られた。
「…よし!」
メカニロイドが爆発を起こす。任務完了…と思いきや。
完全破壊はならず。そこへと転がっていた。
「…!?」
その瞬間…信じられない光景を目の当たりにした。
どこからか現れた、揺らめく影が剣を目にも止まらぬ抜刀で一刀両断。
靡かせるは灰の長髪。
ボディは淡い紫色…頭部クリスタルは水色。
色は違えど、その影は……
「………ゼロ?」
メカニロイドの爆発が終わると、そこには何もいなかった。
続けて高エネルギー反応を感知する。
「エックス、避けて!」
その場から飛び退くエックス。
空からエックス目掛け、巨大なエネルギー弾が降ってきたのだ。
「……イレギュラーハンターよ。…奴をどうするつもりだ」
黒き巨体のレプリロイドがそこにいた。
-
謎の黒いレプリロイドとの戦いに入る。
襲撃してきた彼に向かい、エックスはチャージショットを浴びせ続ける。
「無駄だ」
相手の攻撃も回避出来るものだが…なかなかの強さを持っていると見える。
…それより、攻撃は効かないとはどういうことなのか。
「食らえ!」
ファルコンアーマーの必殺技、チャージショットの雨で敵を攻撃する。
…が、何も効かず。エックスの攻撃は何一つ彼には通用しなかった。
「こんな事ならアルティメットアーマーを復元するべきだったかしら…」
「…まぁいい。今日はここらで退こう …俺の名は…『ハイマックス』
……次はこうは行かぬ。お前達は奴を悪用するつもりなのだろう、イレギュラーハンター」
何かあらぬ誤解を招いたまま、黒きレプリロイドは宙に浮き、消えていった。
「…何はともあれ、任務完了ね」
「……ゼロの夢を見たと思ったら、まさかあんなものが出てくるなんて。」
…攻撃が一切効かない相手。エックスは、自分の非力さを感じていた。だが…。
「……あれは、幻だったのかな」
メカニロイドの残骸を見ると……
「…私にもよく解らない。エックス、貴方疲れてるのよ。休んだら?
「……私も、寝る。」
エックスに自分がしてあげられるのは、もう休ませることだけなのか。
大切なものを失い、戦いが終わったのに……まだ戦い続けるエックスに。
…エックスだけではなかった。
エイリアは自分の非力さに打ちひしがれながら、眠ることにした。
…こんなことが、前にもあったような気がする。
エックスのオペレート中か… いや、そうではない。
「…少し、先輩に相談してみるのもいいかしら」
翌朝。
エイリアのベッドに何者かが現れる。
「エイリア。起きてくれ、エイリア!」
「…んー…。 …エックス…?」
「ああ、俺だよ、エックスだ。早く起きてくれ!」
「……………え?」
どたばたとアーマーを着用して、歩きながら髪を整えてエックスとエイリアは廊下を歩く。
「え?無名科学者が研究結果を発表するって? ……やだ、もう顔が熱い……」
「そうなんだ。何だか解らないけど」
「エイリアはオペレーターの仕事があるから研究が進まなかったろ?
ハンター自体の身の振り方を考えるためにも聞いておいた方がいいと思って。」
「そ、そう…?あ、有難う… ……あ、先に言っててくれるかしら?あの、私みんなを呼んでくるから」
「……? ああ。解った」
世界へ向けての演説の場はハンターベースの近くだった。
レプリロイドが大勢集まる中、科学者『アイゾック』の演説が始まる。
「地球上に生き残った、レプリロイド諸君!」
「始まったよエイリア!」
-
「諸君らは今、この地球上で不可思議な現象が起こっていることを、ご存知であろうか!」
机の淵を掴み、老人レプリロイドは声をあげる。
「その現象とは、レプリロイドに珍妙な幻を見せる謎の不可思議な現象であるとされている。
それはまるで、人間が見る『悪夢』のようであると、されている!
故に我々はこの現象を、『ナイトメア現象』と呼んでいる。」
ハンターがイレギュラーとの戦いに奔走している間に、そんなことが地球上に起こっていたのか。
エックスは注意深く話を聞くことにした。
「それにかかった者は、何でも 暴走を起こしたり、イレギュラー行為に走ってしまったり、
果ては自殺にまで至ってしまうこともあるとされている…
これは実に恐ろしい現象である。」
…シグマウイルスより性質の悪いそんなものが、今世界を。
アイゾックの口から、信じられない言葉が続けて飛び出した。
「何でも、この現象は……
かの名を馳せた伝説のイレギュラーハンター、『ゼロ』の亡霊が引き起こしているという噂まで立っている。
我々は…それを『ゼロ・ナイトメア』と呼ぶことにした…」
今、エックスは聞き捨てならない言葉を聞いた。
「…ゼロが…ナイトメアの原因?」
エックスは言う。
「…そいつぁちょっと酷いんじゃないかい」
ダグラスも続ける。
「今まで我々を守ってくれた、イレギュラーハンターも、レプリフォースも今となっては最早、壊滅状態。
…我々の手は、是非自分自身で守りたいものである。」
「そこで今、有志を募ろう!我々と共に、恐るべきナイトメア現象に、今こそ立ち向かおうではないか!
このアイゾックは、強く平和を願っている!」
もし、我こそはという勇気ある者は、是非この、8つのエリアへ潜入する8名の調査員の元に来て頂きたい!
尚、調査隊のリーダーとして、この最新レプリロイド『ハイマックス』も参加してもらう。
我々の手で平和を、掴み取ろうではないか!」
「…待っているぞ、諸君!」
……エックスは震えていた。
「…間違っている。おかしい… ゼロがあれほど頑張ってやっとシグマから世界を守ろうとしていたのに
どうしてゼロが世界をおかしくするなんて言えるんだよ!」
「……でも、私達の前に現れたのは確かに…。」
エイリアは強い言葉は、今は言えない。
「…エックス、落ち着け。
私もアイゾックの調査団は少しおかしいと睨んでいる。我々も…調査に参加する必要がある。
ナイトメアの実体を掴むべく動く必要はどの道あるだろう」
「……ああ。」
「乗り込むぞ、エックス。8箇所のエリアに…!」
…エイリアが強く言えなかったその理由は…ケイン博士から、凶暴なゼロのもう一つの人格を聞いたためだ。
ゼロを素手で倒し、シグマへとウイルスを感染させ、…シグマを狂わせた。
ならば、シグマは最早… ゼロのもう一つの姿の被害者、というより… もう一人のゼロの影と言ってもいい存在だったのだろう。
『彼』がもし…… もし、ゼロの体から解き放たれ、ゼロなき世界でゼロとして振舞っていたとしたら?
…根拠はもう一つある。 以前、ホタルニクスのミッションで見せたウイルスに囲まれたゼロの姿。
それは………まさしく、あの紫色のゼロの姿そのものだったからだ。
…その戦闘力は凄まじかった。
ゼロとの戦いの運命は…まだ終わってなかったのかもしれない。
「ヒャヒャヒャ…アイゾックの爺さんの演技力は半端ねーなぁ。
さて。俺も独自調査を開始しますかね、っと。」
影で話を聞いていた男もまた、消えていった。
「それでは、これから我々は8つのナイトメア現象が深刻なエリアへと潜入することにする!」
シグナスがハンター全体に呼びかける。
デスクに座り、エックスの横顔を見ながら……。 言葉が…でない。
「…エックス、あのー………」
これは…『ゼロ』との戦い。
そして…それぞれの、過去との戦いだった。
「ん?どうしたんだい、エイリア。」
「……う、ううん、なんでもない。 …気をつけてね」
-
暖かな気温に、
吹き抜ける夜風が気持ちいい。
…月の綺麗に見えるその場所は…アマゾンエリアだ。
「静かな場所だね」
「…ええ。落ち着いた雰囲気ね 任務が終わったら行ってみたいわ。
マイマインのいたクリスタルだらけの鉱山に、キバトドスのいた冬の森に…
ネクロバットのいたプラネタリウム。」
エイリアはガラにもなく、うっとりとした様子で話す。
含み笑いをしながら、エックスは眉をひそめて話す。
「レプリロイドを殺した場所ばかりじゃないか。俺は…嫌な思い出のない所がいいな」
エイリアは俯く。
「……ごめん」
「? エイリア一人が来るなら問題ないだろ?」
エリアに入ってすぐ、救助を求めるレプリロイドの姿が見えた。
「大丈夫ですか!」
「ああ、エックスさんか!? た、助かった……」
「敵を倒す、それだけがハンターの仕事じゃないわ。
これならエックスもやる気が起きない?」
「ああ。…それもそうだね」
民間レプリロイドを救助しながら、洞窟の中へと落ちていく。
「今あなたがいる方向から見て真っ直ぐ奥にカプセルの反応があるわ。」
「有難う」
「…世界は大変なことになってしまったな。正にレプリロイドにとっても人間にとっても地獄じゃ。
お前に『ブレードアーマー』の4つのパーツのうちの一つを授けよう」
次なるアーマーはブレードアーマー。
エックスは洞窟を注意深く探索していく。
「暗い…。モニターからナビゲーション画面へと切り替えるわね」
「頼む」
「…何だ、コレ…」
「こちらからは反応は見えないけど…何があったの?」
腹から下と両腕が千切れたような形をした…単眼レプリロイドの上半身が宙に浮いている。
非常に不気味な形をしている。
「こっちに来る…!」
チャージショットで撃退。
「ど…どうしたの?」
「ステルス機能を持つと思われる奇妙なイレギュラーを倒した。
何か出てきたから送るよ」
中から出てきた青い球体をハンターベースへ転送する。
「…何度倒しても消えない……」
その先では蟷螂型のメカニロイドが何度も復活する。
ワイヤーフレームだけが残り、再生をそこから続けるのだ。
「…何も見えない…か………もしかして貴方…それはメカニロイドじゃなく…」
「…見間違いなわけがないよ。そんな幻覚は…」
…幻覚…幻。まさか。
「ナイトメア現象…!?」
そう。このアマゾンエリアに発生していたのは蟷螂のナイトメア。
何度倒しても無限に再生し、襲い掛かってくるのだ。
「厄介ね…幻覚なのに正確に貴方を襲ってくるんでしょう?」
「…おまけにダメージまであるよ。後で傷を見せる」
「………痛い?」
「…うん」
鍾乳洞を抜け、洞窟の外へ。崖から突き出た岩を乗り継ぐ形で、調査員の下へ。
「……………」
「エイリア、どうした?」
「…あ。ごめんなさい、どうやら調査員は知っているレプリロイドだったみたいで…」
「そう、なのか」
こほん、と一回咳払い。
「ここの調査員はコマンダー・ヤンマークよ。穏やかな性格のはずよ。『基本的には』。
何か得られるものがあるかとりあえず話を聞いてみるだけ…聞いてみた方がいいわ」
「穏やかな性格なんだろう?何でそんな言い方を…。
………俺がその、例外だっていうのかい」
「ええ。まぁ…」
-
扉を潜る。
トンボ型のビットを引き連れた赤色のバイザーの下に真ん丸い目を覗かせるレプリロイドが姿を現す。
「コマンダー・ヤンマーク。君に話を聞きたい」
「…アンタ、エックスだな…? 悪いがイレギュラーハンターと話すことなど何も、ない!」
「………落ち着いてくれ。君達は何か騙されているんじゃないのか?アイゾックに」
「騙しているのはアンタたちだろう!? 俺はアイゾック博士の言うことを信じるからな!」
「…ごめんエックス。話が通じる相手じゃないの」
「………くそっ」
戦闘が始まる。
「撃てえええ!」
ヤンマークの能力はビット操作。
トンボ型ビット・ヤンマーオプションからはエネルギーの弾が大量に発射される。
「うわ…!?」
まず一斉射撃。壁を蹴り逃げる。
「エックス。ヤンマークの能力は音声認識によるビットの完全制御よ!」
「完全制御…?」
「自分の手足のようにビットを使いこなす。勝つには能力で単純に上回るしかない」
バスターの乱射でヤンマークのビットを攻撃しようとする。
「フォーメーション…ガード!」
ビットが動く。どうやらエックスの弾を全て、ビットの弾で迎撃するつもりのようだ。
「なかなかの制御のようだけど…」
「あぁーー!」
チャージショットが簡単に効く。
…彼の能力は、確かに精度が高く、幅広い『作業』に向いているだろう。
だが…あまりにも弱いのだ。
「フォーメーション…ウィング!」
上下に展開、一斉射撃を行いながら近づいてくる。
「下級ハンターなら勝てない相手だな…数で押すタイプのようだし」
だが速さ、攻撃力、防御力、貫通力、移動速度…どれを取っても平均的。
優れたレプリロイドであることは間違いない、のだが。
簡単に
「フォーメーション…ファイ」
「終わりだ!」
チャージショットがヤンマークの細い腹を貫き…
「うわぁあーーーーー!!」
真っ二つにした。いつも以上に大きな爆発を発し、ヤンマークは消滅した。
…敵ではなかった。
「DNAを回収した。 …何か体が馴染まないな」
「…そりゃそうね」
「…え?」
「あ、ううん。何でもないの。 …ご苦労様。」
頭上に何かが降ってくる。…先ほど見つけた青い球に似ているが…緑色をしている。
「…これは何かな」
「調査してみるわ」
-
「どうだった?エイリア」
ハンターベースに戻ったエックスが聞く。
「うーん…反応がないものはほぼナイトメアと見てよさそうね……。
ごめんなさい。今はよく解らないわ。
この球の中身が完全な形では残らないみたいなの…。」
「ヤンマークが持っていたこの緑色の球は青い球と同サイズに効力が凝縮された…
単純に強力なものと見ていいわ。比べ物にはちょっとならないのだけど」
そして彼女は、その球に名をつける。
「ナイトメアの基本体はその奇妙な単眼メカニロイド…ならばそれはウイルスとして…
『ナイトメアウイルス』と呼ぶことにしましょう。
そしてこの青い球はナイトメアのコアであるエネルギー体。『ナイトメアソウル』と呼ぶわね」
「ふふっ… …あ、ごめん」
「…何かおかしかった?」
笑ってくれるのはエイリアには何だか嬉しい。エイリアも聞く。
「そのネーミング、エイリアが考えたのかい」
「? …ええ」
「アイリスもそんなネーミングしてたなぁと思って。」
「………そうなの?」
次なるエリアはセントラル・ミュージアム。
「静かな場所ね……ここには被害者はいないみたいね」
「よかった………」
先へと進んでみる。
「……音という音が何もしないね」
「そうね…イレギュラーまでいないなんてことはないでしょうし。」
通路の真ん中に、邪魔な柱が一本。ただの柱では、ない。
「………何だ…?これ」
「どうしたの?」
モニター画面で確認してみる。
「…奇妙ね。トーテムポール?」
「みたいだ…。 透明なものだね。…物体ではなさそう」
「ナイトメアかしら………。 触ってみて」
「…解った」
その時である。
「わ!!」
「? …エックス、エックス…!? 」
トーテムに触れた瞬間、エックスの体が消滅。
別の場所にワープしていた。
「…!?」
背景は海。…水族館の立体映像のようだ。
そこには無数のナイトメアウイルス。やられた…
ここは、トーテムポールという強制ワープのナイトメアに支配された場所だったのだ。
これに触れたが最後、仮想空間内のナイトメアウイルスの巣に放り込まれ、戦わされるハメとなる。
出口を、見つけない限り。
「ナイトメアソウルがガンガンたまっていくな、ここは…
って、大丈夫ですか!?」
勿論、巣に放り込まれたのはハンターたるエックスのみではない。
民間レプリロイドもそれに当たる。
簡易転送装置でハンターベースに避難させつつ、出口を探すと。
「…あの装置は」
チャージショットで破壊すると…
-
「…エックス!どうしたの?」
「ナイトメアウイルスの巣に放り込まれていたよ…。」
「先へ進む方法が解らないわね…」
進むと…何と今度はトーテムが実体化しているではないか。
…いや、ナイトメアであるから実体とは言えないのだが。
「食らえ!」
チャージショットで各ブロックを破壊、トーテムを蹴り…エアダッシュで飛び出したブロックも破壊。
トーテムは砕け散り、下のフロアへの道は開かれたのだった。
「……今、ナビゲーション画面において貴方完全に宙に張り付いたわね」
「ナイトメアは完全に触れられるみたいだ…」
実体があるのかないのか。奇妙な存在、ナイトメア。
「…頑張って、エックス!」
下へと進むとまたトーテム。…またワープ。
「今度は…… 砂漠か?」
砂漠の中の石造りの遺跡。
現実では絶対にありえないような地形の中、エックスはナイトメアとの戦いに明け暮れた。
「…ただいま」
「言うのはトーテムを倒してからがいいわね」
破壊、休憩フロアを挟みまた下階にトーテム。
「………恐竜展のための立体映像か」
そこにはカプセル。また一つブレードアーマーの完成に近づきながら、
エックスはまたナイトメアと戦い、救助活動もしつつ脱出。
「………少し意地悪な場所じゃないかな、今回」
「最後だしね。 …針の上…か」
針の上のトーテムにエアダッシュで突進、また転送される。
「最後は宇宙か」
大きな坂道。ナイトメアウイルスがひしめくこの場所を通り抜け、
トーテムを破壊した先…。
「………ここの調査員はグランド・スカラビッチ。また知ってるレプリロイドに当たったわ」
「それなら戦い方を教えてもらえるかい」
「貴方なら苦労はしない相手だと思う。…歴史学者だから、頭脳はとんでもないんだけど
戦闘力は大したことないと思うのね」
「うんしょ、うんしょ。」
尻をむけ、土の塊を転がしてきた中年男の姿は滑稽だった。
「…おや、エックスさんではないですか。」
「調査員か。何をしている」
「いやぁ、ここにいると色んな情報が手に入りましてなぁ。
私、古いデータには目がなくてですね」
「…ナイトメアについて教えてもらおう」
バスターを向ける。
「物騒な真似をなさる。私は逆に欲しい所ですよ?
最強のイレギュラーハンターのDNAをね!」
「無念ーーーー!!」
岩を転がし、飛ばすだけのレプリロイドはすぐに倒された。
「彼は…一体何をしたんだい?」
「実は…彼は数ヶ月前、一度死んでるのよね…。 遺跡の盗掘をしようとしていたの。
貴方とゼロが見つかった……『禁断の地』を」
「それで、その時彼を倒したのが…」
-
「さて…次のミッションへ行きましょう、エックス。」
ハンターベースへ戻ったエイリアは、次なるポイントを指定した。
「…次の相手は少しエックスには戦いづらい相手かもしれないわね…」
「…事前に調べてあるのか…。 ……って、エイリア。
つまりは君もまた知ってるレプリロイドなのかい」
「…ええ、まぁ」
次なるミッションはレーザー研究所。曇天に浮いた空中研究所だ。
「ターゲットの場所まではここから2分かからないんじゃないかしら。」
…それはそうと、いきなり変な光景に出くわしたわね」
空に浮いたメットールに囲まれ、空に浮きながら救助を求めるレプリロイド。
「…これは一体…」
「ナビゲーション画面には映っているから…ナイトメアじゃないわね」
勇気を出して足を踏み出してみると……
「…! 歩ける!」
「見えない足場ね。光学研究の賜物かしら。」
先ほどから、妙なハエがエックスの周りを飛び、バスターを体を張って妨害してくる。
その耐久力はありえないほど強く、エックスの動きを制限するのだった。
そう。ここに発生したのはハエ型のナイトメア。動きを制限する意図だろう。
内部に進むとそこには強力なレーザー装置。
その先には何かが置かれている。
…鏡のようだ
「……兵器として使うためのレーザーを使った反射実験ね」
そしてレーザーを当てることで開く仕組みの扉。
することは…一つだ。
「エックス、鏡の付け根を狙って。それで鏡を動かせるはずだから」
レーザー光を鏡を使って誘導し……扉にぶつけて開く。
…そういうことだ。
「…面倒ねぇ
…今私の力を使ってレーザー装置を遠隔操作で起動させてみるわ!」
先へと進んでいく。
「この先は二つの扉か…調査員のいる部屋は目の前だけど、地下にはカプセル反応…。」
「下へ向かおう。この短い道のりならハンターベースからもう一度行っても時間のロスにはあまりならない」
その先が手ごわかった。
「ダメ…レーザー装置が1個以外作動させられない!」
「…なるほど。作動させるとか以前に、電源自体が他のレーザーから発せられたものということか…」
レーザーを鏡を動かし反射させ、反射させたレーザーで別のレーザー装置を作動させ…それを繰り返して最後に扉にぶつけて開ける。
「…………面倒だなぁ」
「隠し通路があるわ。その横!」
カプセルからアーマープログラムを手に入れ、一度ハンターベースへ戻りもう一度。
エイリアの言う通り、すぐに調査員の部屋の前だった。
「…調査員はシールドナー・シェルダン。
恐らく以前より強くなっていると思うわ。気をつけて」
「…彼だったのか…!」
-
以前、エックスは彼の事件を受け持ったことがある。
まだドップラー事件の影響で科学者に対する目が厳しかった頃。
ジム博士と呼ばれるレプリロイド博士の起こしたレプリロイド事件で、
彼を処分するべくエックスはジム博士のガードをしていたシェルダンと交戦、そして撃破したのだ。
ジム博士がイレギュラーとするのは誤認だというのは、処刑完了後発覚した話。
「シェルダンさん!」
「エックスか。…久しぶりだな」
口元の特徴的な紳士、シールドナー・シェルダンは水の張った最深部の池の前にいた。
「シェルダンさん、その節はすまないことをしました…。」
「…いや、いいんだ。君が言いたいことは大体解った。」
「…君はイレギュラーハンター、私はイレギュラーと誤認された博士の護衛だった。それだけの話
……すまないが私は今回こそ自分の務めを果たそうと思っている。」
「……また、戦うんですか」
有無を言わさず、シェルダンはアーマーに包まり姿を消した。
「はっ!ほっ!」
二枚連続で投げるは体の左右に着ていたアーマー。
ガードシェルと呼ばれるそれの防御力は高く、バスターを通そうとしない。
だが…
ダッシュしてシェルを回避すればすぐのこと。
「ハァアア!」
セイバーで一撃。
光の穴に体を滑り込ませワープするシェルダン。
シェルを閉じ、無敵状態で辺りを跳びまわる。
「は、速い!?」
「どうかね」
目にも止まらぬ速さ、しかも自分で制御できるものと来た。
アルマージなどよりよほど手ごわい敵と見える。
「逃がさんよ!」
ガードシェルを光の盾に替え、エックスを追ってくる。
「衝撃にあわせて打ち返す特殊シールド。
近接攻撃は禁物よ!」
「それなら!」
ヤンマーオプションを使い、そのオプションから放たれる大量の弾でシェルダンを包んだのだ。
「ぬぐっ!」
シェルダンは消え…そして奥の手を使い出した。
「見切ってみるがいい!」
4つのシェルが部屋の端に現れる。
「はぁ!」
シールドからシールドへ、どんどん移動を始めるシェルダン。
「隙が少ないな…」
「攻撃したら反撃を食らう。ここはギリギリまで見極めて!」
シェルの中でワープを繰り返しているのだろう。
どこから来てどこへ行くのか…。
「そこだ!」
部屋の中央に陣取り、移動してきた隙にセイバーを一振り。
「認めん…断じて……!」
シェルを離れると防御に乏しいシェルダンは、すぐに倒れていった。
「……あまり気の進む相手じゃなかったね」
「そろそろ、ゼロナイトメアへの糸口を掴みたいところなんだけどね」
-
精密系レプリロイド、科学者レプリロイド、防御特化系レプリロイド。
正直、これまでの3体はどれも強くは無かったといえる。
だが……運が良かっただけに過ぎない。
残り5人。
アイゾックの送り込んだ調査員の恐ろしさをここで知ることとなる。
「兵器研究所ね。私達が向かうのは巨大兵器整備ブロック。
建物自体がらせん状になった開けた場所なの」
「…物騒な場所にナイトメアが発生したものだね。」
「今は特に兵器などはないから、ナイトメアウイルスと延々と戦うことになるわね」
巨大な施設の中。
兵器研究所についてすぐ…このエリアが如何なるナイトメアに冒されているかを知ることになる。
「………な、何だ…あれ」
「え?」
「……兵器、あるよ?」
「……どれくらい?」
いや、エックスにも薄々気づいていた。
「見えないかな。………この円柱状の巨大な建物を…フルに利用するほどのメカニロイドが動いているのを」
「………かつて作られていたと、聞いているけど
…『見えない』わ」
「…………やっぱり!?」
そう。ナイトメアはそこまで巨大だったのだ。
かつてここで生み出された超巨大メカニロイド『ビッグ・ジ・イルミナ』。
それは…ナイトメアとなって復活していたのだ。
「…………男の子の夢って奴かしら…。」
エイリアの笑顔も引きつる。
「来る!」
巨大なエネルギー弾がイルミナの手から発射される。
「ナイトメアウイルスに、敵メカニロイドに、要救助者……
忙しい戦いになりそうだ!」
エネルギー弾を避けながら螺旋階段を下りていく。
この巨大な建物には外壁しか壁がない。
この建物のどこにいようと…イルミナのターゲットだ。
「動きはどう?」
「流石に距離がある、狙い撃っては来るが誘導可能な範囲だ」
「ナイトメアを発生させているコンピュータがどこかにあるはず。
探し出して破壊して!」
発生源は言うなればイルミナの電源。
メカニロイドの襲撃にあいながら、それを破壊していく。
「…強い………」
「気をつけて、イルミナの攻撃パターンが変化した!」
首が取れ、付け根からはビットを複数射出、レーザーでエックスを照らそうとする。
当たればクロスレーザーの餌食…といったところだ。
「ヤンマーオプション!」
オプションを展開、エネルギー弾の連射で素早くビットを破壊する。
全部破壊する暇などない。前方のものだけ破壊し、イルミナの電源コードへ。
「…壁!?」
侵入者を阻む壁が前後から。
「その壁は実体があるわ」
エックスから見て、前方はイルミナコードと壁、後方は防護壁、
向かって右側は外壁、向かって左には…イルミナ。
…閉じ込められたのだ。
-
「レーザーよ!……どうすればいいかしらコレ」
「うまくかわして破壊するしかない…!」
前から後ろからレーザーの雨、左からはイルミナの攻撃。
レーザー地獄…。息苦しい戦いは長くに渡り続いた。
「食らえ!!」
チャージショットに貫かれ…イルミナは電源を失い、爆発。整備施設は静まり返ったのだった。
「な、何だ?」
「イルミナを倒した時の衝撃で何かが誤作動したみたいね」
青い扉が現れた。…どうやら閉じる様子はない。
「…ターゲットはこの先かい」
「いえ…下の階にいると見られているわ」
ならばそちらが優先だ。残ったナイトメアウイルスを倒し、最下層にて…。
「アーハーン!」
「ここの調査員は…見ての通りの変わり者。…インフィニティー・ミジニオンよ」
小柄な、液体合金製のレプリロイドだった。
「何何?何でハンターがここにいるノ?もしかして え?何 イルミナちゃん壊しちゃったとか?」
「あまりにアレは危険すぎる!」
「………な、何てことをしちゃったんだヨ!アレで頭の固い君らみたいな連中を倒して、
ボクちんはg」
イルミナの頭が背後で大爆発を起こす。
「…様に褒められるつもりだったのに!」
「……………!!!!!」
エイリアは…聞いていた。
「…解ってたはいたが、やはりナイトメアを動かしていたのがお前らだったんだな。
アイゾックの好きにはさせない…行くぞ!」
「やれぇ!!」
強酸性の液体を分泌、球状の塊となる。コアとなる微小マシンによりそれはエックスに近づき…取り込み、溶かすつもりだ。
「厄介な相手よ、気をつけて!」
「くっ!」
思いのほか、その液体の耐久性は高い。破壊までにチャージショットを何発か消費することになるまでに。
「破壊しても無数に彼はその塊を生み出すわ」
「………かといって壊さなかったら増える一方じゃないか!」
ミジニオンにバスターを当てる。
「あっははん♪」
今度はチャージショットだ。
「わぁあああ!」
壁に衝突する。 本体は軽いようだ。…効いていたかはともかく。
「かかったねおバカちゃん♪」
…エックスは見た。ミジニオンの体がちぎれ、ミジニオンと同じサイズになっていくのを。
ミジニオンもまた、ちぎれた部分を再生、元通りになっている。
「…増えるのか!?」
コアはあるらしい。コアを破壊するのが先か、ミジニオンの攻撃に押しつぶされるのが先か。
増え続ける敵との戦いが始まった。
「やれぇ!」「やれぇ!」「やれぇ!」「やれぇ!」
「ほっほー!」「あっはは!」「食らえ!!」
泡がどんどん増えていく。ミジニオンは時折、腕のバスターから光の弾を発射し、拡散したりする。
「エックス…!!」
「……あまりに、…多すぎる…!」
泡。弾。ミジニオン。部屋にもう隙は存在しなかった。
「アローレイ!」
ぐるりと回転、床に突き刺さると…天井から光が降り注いでくる。
だが…そんな攻撃より何より…エックスは追い詰められていた。
泡が溶かしにかかる。
弾がエックスを攻撃する。
大量のミジニオンの突進を食らう。
こちらの方が劣勢。こんなことは今までなかった………
「ガードなら…せめて…せめてガードシェルを…!」
シェルダンから手に入れたガードシェルを使う。
焼け石に水。だが……何か対策を講じなければ。
「ほっほー!」
またもアローレイ。
ガードシェルで何とか防げはしないか…そう思ったとき。
「あーーーーーーはーーーーーーー!?」
ミジニオンが吹き飛んでいった。
「アローレイのエネルギーを吸収して…撃ったのね!」
ガードシェルの真価が発揮された瞬間。
弱点はガードシェルだった。そうと決まれば。
「最後だ!」
ガードシェルをチャージして放つ。4枚のシールドがミジニオンの周りに配置され…
「撃て!!」
4つのシールドからの一斉掃射。
「何すんだヨーーーーー!!」
4つの弾は全てコアに命中。ミジニオンはそのまま……彼自身が泡となって弾けていった。
「……今サーチしてみたわ。…どうやらカプセルの反応はその青い扉の中にあると思っていいみたい。
何が待っているかわからないけど…行きましょう、イルミナのあったところに」
-
イルミナ跡。
青い扉が宙に浮かんでいる。
「……その先で通信が繋がるかどうかはわからない。
気をつけてね」
「…ああ。行って来る」
…一体何が待ち受けているのだろう。
エイリアが調べた実例の中に、確かにゼロの形をしたナイトメアに襲われたケースは多々あった。
ゼロは一体、何をしようとしているのだろう。
『彼』と、そしてアイゾックと手を組んで。
ゼロナイトメアが何かの見間違いならいいのだが。
…先ほど、ミジニオンから聞いた名前が…聞き間違いなら、よかったのだが。
「…エックス」
彼の名を呟く。
「……ごめんね」
「エックス。ここではブレードアーマー最後のプログラムを渡そう。
このアーマーは、チャージセイバーを使うことが出来る…セイバーでの戦いを考えて作られたアーマーなのじゃ。
また、マッハダッシュもうまく使いこなしてもらいたい」
「解りました。」
そしてブレードアーマーを着用…。
スッキリとしたラインと、個性的な色使いのアーマーがエックスを包んだ。
「…これほど大きな谷が…」
底なしの谷にナイトメアウイルスが大量配備。
救助者をナイトメアから助けつつ、扉を潜ると…。
「ゼロ…。 どこじゃ… ワシのゼロは……」
老人の声がする。
…アイゾックに似ている気がしたが。
その瞬間…奴が現れた。紫色の淡く光る影。…全ての元凶『ゼロ・ナイトメア』だ。
「…お前、ここで何をしている。どうしてゼロの真似をする」
「エックス。…俺がわからないのか?」
「…ああ、解るよ 下らないニセモノだ、ってね」
「…お前達を、あれからずっと探していたんだぞ…?」
ゼロナイトメアがニヤリと笑う。
「皆殺しにするためにな!!」
内に秘めた凶暴性が姿を現す。
ゼロナイトメアが姿を消す。
「くっ!?」
部屋の端に現れる。
「……」
何も言わず、トリプルチャージを放ってくる。
チャージショット、チャージショット、電刃零。
あの時のゼロのパターンだった。
今でも避けづらいこの攻撃。
電刃零をかわしてチャージショット。
「くっ」
距離をとるが…
ピシュッ… と風を斬り、また消える。
「電刃零!」
背後から現れてエックスを斬る。
「うぁあああああ!!」
思わず距離をとる。
「逃げるなよ」
ダッシュして剣を振るう。
エックスは間一髪、攻撃をかわし跳ぶ。
「終わりだ」
軽い動作で真滅閃光を放つ。
「ぐああぁあっ…!!」
地に拳を叩き付け、地を割り…強力なエネルギーを噴射する。
威力こそ弱いものの…どれもゼロの攻撃を彼は完全にコピーしていた。
再び現れたゼロナイトメアに向かってチャージショット。
「ほう?」
また消える。
-
「…逃げるなと言っておいてお前は逃げるのか?」
「冗談はほどほどにしておけ」
エックスの背後に現れ放ったのは…
「何…!?」
1,2,3,4,5,6……
無数のチャージショットを、バスターからありえないペースで乱射し始めたのだ。
…そんなことは、ゼロには出来ない!
姿を消す。
「威勢はいいがそれだけのようだな!」
「終わりだ!」
真滅閃光。
まずはこの攻撃を回避できねば勝ちはない。
だが…エネルギー攻撃というなら。
「ハァアア!」
大きく振りかぶり、チャージセイバー。
ゼロの吹き上げたエネルギーを叩き斬る。
「食らえ!」
続けてチャージショット。ゼロナイトメアの体力を削る。
「大したものだが……お前はこの技は知るまい」
セイバーを両手で持ち、掲げる。 …すると…セイバーが伸びた。ゼロナイトメアの身長の倍するほどのサイズに。
「…さぁ終わりだ」
一振りが放たれる。
「幻夢零・改!」
「………!!」
連続して3回。ありえない速度で飛ぶ斬撃が発せられ……
エックスの体を3度に渡り切り裂いた。
「がはっ………」
口からオイルを吐く。体からも染み出る。
「その程度の奴がゼロと互角とは笑わせる」
またも真滅閃光。
「ぐあぁあああああああああああああああああ!」
「お前は所詮ゼロにも俺にも勝てん」
チャージショットを2発、そして電刃零。
「お前が役に立ったことがあるとすれば…」
消える。
「VAVAからお前を庇ってゼロが自爆するきっかけを作ったあの時くらいのものだ!」
スプレッドバスター。
言われ放題で…いてたまるか。
「うぉおおおおおおおおおお!!!」
チャージセイバーでバスターを斬る。
「これから威勢だけの者は困る」
ワープ。
「これで最後だ」
セイバーを突き上げる。
幻夢零・改の構えだ。
「死ね」
一発、二発は低速…
「そこまでだ!」
三発目は高速。緩急をつけることでクロスさせる、クロスチャージと同じ原理だ。
エックスは跳びあがり…早々にブレードアーマー最強の技を放つ。
セイバーを背中まで振りかぶり…。
「ゼロはもう…」
目を閉じ……現れたゼロの形をしたそれに向かって剣を振り下ろす。
「いないんだ!!」
地へと叩きつける。
衝撃波が発生…幻夢零・改と激突。そして……
破った!!
「うぉおおおおおおおおお……!!」
…後に残るのは空しさだけ。
………悪夢はこれで終わった。エックスは、そう思った。
「……俺も随分と鈍ったものだな。
こんな奴と一緒にされるとは、な」
エックスの背に声をかける者が一人。倒したばかりの敵と同じ声をしたその者は……
「……ゼロ!!」
-
「……ぜ、ゼロ…?」
「おお、まさか戻ってくるとは……」
「迷惑をかけてすまなかったな。現在の状況を教えてくれ」
何事もなかったかのような、ゼロの復帰。
「ダメージが回復するまで、身を隠していたんだ。」
ゼロからの言い分は、たったそれだけ。
…本当にただそれだけなのだろうか。
「…………嬉しそうね、エックス」
「当たり前じゃないか!!」
ひとまずは安心。
エイリアは、次なるミッションに彼らを向かわせる。
「俺はどうすればいい」
「ゼロは…すでにミッションを終了したエリアを頼むわ。
救助者はまだいるかもしれない」
「了解した」
「………どうしたんだい、エイリア」
「大分集まってきたわね…データ解析は3分の2まで進んできたわ」
「…ナイトメア?」
「ええ」
次なるミッションはイナミテンプル。
「…ここは数少なかった女性の有志隊員達が捕らえられている所ね。
鼻の下伸ばさないように」
「?」
「なんでもない。」
世界遺産とされているこの場所もすっかり瓦礫の山となっていた。
魚型メカニロイドを倒して鳥居を潜ると…
「うわ、何だ…この雨」
「…こちらからは確認できないわ…。 …ナイトメアね」
このエリアでのナイトメアは雨のナイトメア。
強酸性の雨が体力を奪っていくというものだ。
「ここの調査員はレイニー・タートロイド…成る程ね」
つまりはタイムリミットが設けられていることに等しい。
バリアを解き降雨装置を、救助者を助けながら何とか破壊しなければならない。
エックスの体力が尽きるその前に。
だが、そんなときに限り高耐久力の敵が多数配備されているもの。
焦らされつつも順調に倒し、降雨装置のバリア発生装置4機を破壊、
降雨装置を破壊して先へと進んでいく。
「随分大きな池だな…」
「動くバーに掴まっての移動になるわ。…随分不安定なことになるから、対応はしっかりとね」
タートロイドの場所は近い。またも雨が降り出したが…
「この隙間が気になるな…」
「そこは…針もあるし狭くて…出られないかもしれないわよ」
「一応、ね」
進んだ先にはやはりカプセル。
「危険な場所だなぁ………。」
「来てくれたか、エックス。ここでは『シャドーアーマー』のプログラムを渡そう」
シャドーアーマー。
その響きにどこかワクワクしながら、エックスはプログラムを受け取る。
洞窟内を跳びまわり、バリア装置を破壊し、降雨装置を破壊し……
面倒な作業はこれで終わり。タートロイドのいる社の前までやってきた。
ドスッ…。 大きな足音を響かせ、巨体が現れた。
…8mはあろうかというサイズだ。
「タートロイド。君がここの調査員かい」
その時。
「エックス、ちょっと…」
「ん?」
「タートロイドと話させてくれないかしら」
またも知り合いだったらしい。
-
「…タートロイド。私の声、解る?」
「おお。エイリア殿か」
「そうよ…
…聞いて。目の前にいる彼が……『エックス』よ。
あなた、エックスのこと尊敬してたでしょう?」
「…………!」
エックスが照れた。
「…おお、おお……!あなたがエックスか…!通りで優しい目をしている…。」
「……ああ。」
戦うことになると思うとエックスの表情は暗くなる。
「なぁタートロイド。アイゾックの命令だからって、こんな……
雨を降らせて女の子達を蝕むような真似はやめるんだ。 頼むよ」
「……いや、命令には逆らえはせぬ。…もう、戦うしか道はないだろう」
「…だが」
「信念を守った結果、あなたに殺してもらえるなら、私は…幸せだ。」
どっしりとしたその体についた顔は…あまりに優しげだった。
「…………ごめんね。戦いづらくしちゃって」
「………いや、いいんだ」
「でも、一度彼に言っておきたかったのよ。貴方が…エックスだ、ってこと。」
「…………タートロイド!」
「すまぬ、エックス!我が命、貰ってくれぇ!!」
「嫌だッ、戦いたくない!!」
だが戦いは始まる。
「ぐあぁあああああああああああああああ!!」
突如として大量のミサイルが甲羅から発射され、
エックスを集中砲火。
辺りが爆炎に包まれる。
「タートロイドの攻撃はミサイルの雨よ!セイバーで対処して!」
「くそっ……」
チャージセイバーで一気にそれを叩き斬り、タートロイドの甲羅を斬る。
「硬い…!?」
「タートロイドのボディは物議をかもしたほどの防御力!
アルマージやマイマインのそれとは比べ物にならない!」
「……動きを止めるにはどうすればいい!」
「ミサイルの発射口よ!それを破壊して、中にセイバー攻撃を叩きこんだり、バスターで攻撃するの。
そしたら内部からタートロイドを攻撃できるわ!」
「……ああ」
斬って、タートロイドの甲羅についた発射口を破壊する。
「…うっ! …くっ!」
斬る、撃つ。 …なんでこんなことをしなきゃ。
「そうだ、それでいいのだエックス!
…メテオレイン!!」
甲羅でぐるんぐるんと回転、水の球を撒き散らす。……ユーモラスなその技。
絶対に…絶対に攻撃向きではない。
「クソッ…クソぅ……」
チャージセイバーを当てる。
ドスン、ゴスンと壁に激突し続けるタートロイドの巨体。
もう…倒すしかないのか。
「タートロイド…もう一度聞く。信念を曲げる気はないか」
「…ない」
「俺に倒されてそれで幸せなのか!!」
「そうだ…!トドメを刺してくれ、エックス!」
壁へ飛ぶ。壁を蹴る。そして………
「ぐぉああああああああ!」
背中を一刀両断するチャージセイバー。
ミサイル発射口から広がったヒビは……大きくなり、そしてボディごと砕け散った。
「有難う…本当に、有難う… そしてすまない…エックス」
「…タートロイド…。」
「……すまない。私の……製作者を止めてくれないか」
「…アイゾックか」
「いや…そうではない…私の製作者の…名…は…ゲ……………」
そのまま、息を引き取った。
「…エイリア。どうして…どうして彼らのことを知っているんだい」
「………後で話すわ」
エイリアは思い出していた。…3年前のことを。
-
3年前…。
一人のイレギュラーハンター、エックスによりシグマが倒されたその翌日。
冷房のよく効いた研究室にて、彼女は研究員全員の拍手で出迎えられた。
「いやぁ、よく頑張ったねエイリア。どうだった?イレギュラーハンターは。」
研究室の沢山のメンバーに出迎えられる中、
コーヒーを飲んで待っていた一人の長身の青年がいた。…彼女のライバルだ。
「結構ハンターも捨てたものじゃないと私は思ったわ。
シグマっていう実力者がいなくなっても…まだ強い人達は残っていたのね」
「興味深いな。もしかして君が担当したハンターがそれというわけかい?」
「ええ。そういうことよ …名前は…… 『エックス』。」
「………! …ハハハ、それは驚いた。
シグマを倒したハンターをオペレートしたのがエイリア…君だっていうのかい」
「ええ。あのゼロが勝てなかったハンターにすら勝ったっていう話だし」
「…成る程。じっくり聞かせておくれよ、エックスの話。
そして、機会があるなら次も必ず彼をオペレートするようにお願いしたいな。」
「エックスとゼロ…か」
エイリアは呟く。
「…ゼロ。次はセントラルミュージアムに向かってくれないかしら。
あそこならナイトメアソウルが稼げそうだし。」
「ああ。いいだろう」
「エックスは北極エリアね」
「北極か…カウンターハンターのいた場所でもあるね」
北極圏に存在する氷の洞窟内。
凍りついた坂道からミッションは始まる。
「ブレードアーマーのマッハダッシュを使ってね。
雪崩がいつ来ても対処できるように」
そう、ここでは雪や氷のナイトメアが猛威を振るっていた。
「避難用のポイントに救助を待ってるレプ……メカニロイドがいます」
いつもならレプリロイドを救助している所なのだが…
「大丈夫か?」
「ワオ、アオーーーン!!」
尻尾を振る。
ここでは犬型メカニロイドが救助を待っていた。
「同型のメカニロイドがイレギュラーとして混ざってたりするから…
見誤って噛まれないようにね」
更なる高速化を果たしたブレードアーマーの能力『マッハダッシュ』で高さを稼ぎ、雪崩を飛び越える。
「まだまだ来ると思うわ」
雪崩を数回に分け飛び越えると……
「今度は上から降ってくるね」
「侵入者を阻むためのものね、これは」
クレバスを飛び越えた先には…
「カプセルの反応があるけど上ね……
調査員のいるポイントに向かうには、まず洞窟を一旦下の方へ降りないと」
雪崩のナイトメアをマッハダッシュで…今度は突き抜けながら下へ。
「…氷の塊が降ってきた!?」
「氷…どんな?」
「直方体型の氷のブロックだ……」
「宙に浮いてゆっくり落ちて来るイレギュラーはもしかして…」
「ああ。ナイトメアの上に乗ってる!」
イレギュラーの乗った氷のブロックは…エックスを生き埋めにしようとしている。
イレギュラーを倒しながら氷の上へ。
その上のフロアで。
「……この縦穴は…壁を蹴って上へも行けないし…。」
「…何とかならないかしら その上に調査員がいる感じなんだけど」
そしてナイトメアで出来た氷のブロックが列になって落下してくる。
「仕方ない。このブロックを乗り継ぐしか!」
マッハダッシュで上へ、また上へ。救助者を助けながらずっと上へと登っていく。
「…私から見れば完全に宙に浮いてるわ……」
ナイトメアの上を走り、空気を蹴って駆け上がる。
そしていよいよ。
「ここの調査員は…ブリザード・ヴォルファング。…………気をつけて」
「何か、声のトーンが低いね。…そんなに強い敵なの?」
「…え?ああ…その…ごめん、ヴォルファングには話したいことがあるの」
-
扉を開くとそこは暗闇。
「イレギュラーハンター…俺を始末しに来たか」
暗闇の中で目が光る。
「…………ヴォルファング。私のことを恨んでる?」
「……何も知らなかったのだろう。仕方ないことだ
蘇ったからには…今度は俺は役目を果たすのみだ」
暗闇が晴れ、狼型のレプリロイドが姿を現す。
「だが、アンタが俺を始末したのも仕事なら、
俺がそのハンターを倒すのも仕事だ!済まないが消えてもらおう!」
大きく雄たけびをあげ、戦いが始まる。
「三角跳びの使い手よ…気をつけて…」
「……何となく、解った。
君はこの戦闘ではオペレートしなくていい…俺が、倒す」
「えっ…、ま、待ってエックs」
通信を切る。これで…1対1だ。
エックスは思った。エイリアも自分と似ている。
きっと同じなのだ。シェルダンを始末したことに負い目を感じていた自分と。
「アイスフラグメント!」
氷の塊をマシンガンのように吐き出す。
「ペンギーゴのショットガンアイスよりも数段速いな…!」
素早く移動して回避。
「逃がさん!」
ヴォルファングは機敏に動き、天井にはつらら、床には氷のトゲを発生させてくる。
「ヴォルファングが走った場所全部に発生するのか!?」
動いた場所全てがトラップになる。
氷の生成、破壊の追いかけっこの形となるだろう。
チャージショットで氷のトゲを一気に破壊、ヴォルファングへ当てる。
だが…天井のものは破壊できない。
「しまった…!」
上から降り注ぐ氷のトゲ。
トゲは一斉に降りはしない。
それぞれの時間差を考え、合間を縫って回避する。
「行くぞ!」
壁を蹴る、天井を走り…エックス目掛け跳びかかる。
「甘い!」
エックスは飛びのき、チャージセイバーを一発。
床、壁、天井。
速い上に部屋というフィールドをフルに使った戦い方をする強敵だった。
しかし天井が使えなくともエックスの方が攻撃力において遥かに上。
マッハダッシュを使えば機動力でも上回る。
最後にはそれが物を言い…
ヴォルファングはチャージセイバーで斬られていった。
「ぐぉおおおお………!」
……しかし、流石に話が出来すぎている気もする。
エイリアの知るレプリロイドが何故、こんなに?
ナイトメアソウル、DNAデータを入手し帰還したところをエイリアは待っていた。
「…お疲れ様。…貴方に任せちゃってごめんなさい」
「こっちこそ、要らない気遣いだったかもしれないな。
……過去に何かあったからこそ、エイリアの手ですっきりさせたかったろ?」
「そうね…。気持ちは…嬉しかった。
…けどどうやら…これからに持ち越しになりそうね。
ナイトメアウイルスの解析、終了したわ。」
改まってエックスに椅子を向け…エイリアは話を始める。
「…私から、話があります」
-
「解ったの。…ナイトメアの正体が」
「…ナイトメアは…私が思ったとおり。…ウイルスだった
高いエネルギーを持った…ね」
最近はシグマウイルスのような、可視プログラム体の研究も盛んである。
そして次にエイリアはそのナイトメアの作用を説明する。
「ナイトメアは…その高いエネルギーでレプリロイドやメカニロイドに取り付き、
それを操ってしまうの。…場合によっては、自らをデリートする場合もあるみたいね」
そこまで聞いて、エックスは思っていた。
「…まぁ、貴方もそこまではイレギュラー化と同じだと思うでしょう?」
「…ああ。そこまでは、ほとんど同じだ」
「…でも、ナイトメアの本当の恐ろしさは、ここからよ」
「………。」
「ナイトメアは、一見ただのイレギュラー化に見えるけど、
一つ違うところがあるの。
…それは、あるコードのみ受け付けて、そのコードを入力することで
ナイトメアに取り付かれたレプリロイドを…自在に操ることが出来るようになるの」
「…それじゃあつまり」
「そう。ナイトメアの本当の狙いは…。『破壊』ではなく、
…『支配』だったのよ」
世界を変えるべく、レプリロイドを狂わせたシグマがいる。
純粋な破壊のためにウイルスを使用した、真のゼロがいる。
世界を変えるべく、ナイトメアウイルスはレプリロイドの支配をもくろんでいたのだ。
でも、そのナイトメアを作り出したのは一体?
「………でも。
そんなことが一体出来る奴なんているのか?
ケイン博士の技術力でも…ドップラー博士の技術力でも無理だ。
洗脳は確かに以前から出来たみたいだけど大掛かりなものだし…
後は単純に破壊行動を起こさせたり、それ以外のときは動きを止めたりとかその程度だった」
「…一人、思い当たる人物がいるわ。
………こんなものを作るのは、また…こんなものを作れるのは、『彼』しかいない」
ヤンマーク、スカラビッチ、シェルダン、ミジニオン、タートロイド、ヴォルファングの生みの親。
「…私の研究所時代の同僚……『ゲイト』」
「……………同僚?」
「ええ。
私がいた研究所にいた、天才…としか言いようのない、素晴らしい頭脳を持つレプリロイドよ」
だが、天才は天才故の孤独をいつも抱えていたのである。
「彼は、素晴らしいレプリロイドを作り出したわ。
あらゆる方面でね。…貴方達が戦った相手もそれ。
ナイトメアの力を取り込んで、姿形が変わってしまったものもいたけれど……
全て、彼の作り出したレプリロイドよ」
「でも、高性能ゆえに、その仕組みを誰も理解できなかった。
…そして、理解できなかったのは仕組みだけじゃない。…ゲイトという、存在自体もよ」
「あまりに高性能すぎたレプリロイドを作り続けた彼は、いつしか
それを理解させることに必死になり…孤立していった。
そしてその内……上層部は彼を邪魔者と扱うようになった。」
「…そして、彼は処罰を食らったのよ。
色んな形で………事故に見せかけて、彼のレプリロイドを全て処分されるという、ね
…私も、騙されてその始末を手伝わされた」
エックスを見つめる。
「……それだけの理由で?」
「…ええ」
…理解できない仕組みのレプリロイドにだって、その存在は理解されているものもいるのだ。
彼女の目の前に、彼女の理解できない存在がいて…それを理解するのに日々頑張っているのだから。
いや、それが例え理解できなくとも……
「俺だって、まだ機能が理解されない部分が沢山あるのに…」
-
ヤンマークは、改造を施され事故を起こし死亡。
タートロイドはあまりにも強力な装甲を持つために周囲から妬まれ疎まれ嫌われ、最終的に自害。
シェルダンの守っていたジム博士のイレギュラー認定も誤認だった。
ヴォルファングを始末する命令を出したのは他でもない、彼の上司であり
ミジニオンは性格の問題を理由に事故に見せかけ破壊された。
スカラビッチは探究心が高じてエックスとゼロの見つかった禁断の地に踏み入ったところをエイリアに倒されただけなのだが。
「…言いづらいことなんだけどね。
ゲイトは…究極のレプリロイドとされたエックスとゼロ、貴方達を目標としていたの。
いつか、貴方達を越えられるレプリロイドを作れるように、ってね。」
「………そういえば、言っていたね。最初にシグマのアジトに潜入する前の日。」
「え?」
『研究所で同僚に言っておくわ、ゼロ以外にも目を付けるべきハンターがまだいるって。』
…エイリアの、過去の言葉である。
「…私、そんな恥ずかしいこと言ったかしら………」
頬を染め、顔を赤くしながらエイリアは頭を掻く。
「…そして…全てを失ったゲイトは研究所を出るときに私に言っていたわ。
いつか、自分の研究を理解できなかった下等な者達を…思いのままに支配してやる、って。」
「…………それじゃあ」
「ええ。その時出た言葉が『支配』 ナイトメアが…ゲイトが作り出したものだとするなら、
これは…彼の研究を理解できなかった世間への…『復讐』 そしてナイトメアウイルスは…彼の憎しみの心、そのものなのよ」
「…………だとしたら、止めなきゃ」
「…エックス」
「ゲイトの悲しみも理解は出来るよ、けど…間違っている。
今は人間もレプリロイドも、世界のこれからがかかった大切な時期なんだ。
それを、復讐のために滅茶苦茶になんてされたくはない」
「…ええ。そうね」
「…エイリア。ゲイトの作ったレプリロイドを始末した時、辛かったろう…」
「……正直ね。戦いへの憧れっていうのも実は持っているけど……
ああいうのは…嫌だった」
お互いに敵を倒す辛さは理解している。
……意見が一致した時だった。
「…よし。ゲイトを倒そう……!絶対に!」
窓のない暗き研究室。
フラスコを片手にした、一人の科学者の姿があった。
「8体中6体が倒されたか…流石だなぁ、エックスは
さて…そろそろ気づく頃かな、エックスとエイリアは。」
セントラルミュージアム。
「な…何故、俺が…負ける…?」
「ハハハハハ…!まさかゼロ、お前がハイマックスを倒すとはな!
エックスですら倒せなかったあやつをいとも簡単に倒してくれるとは!」
アイゾックは自分の側のレプリロイドを倒され、偉く上機嫌だった。
「黙れ。その減らず口を聞けなくしてやる!」
跳びかかる。
「おっと、危ないのう…」
腕から電撃の檻を発する。
「くっ……!?」
「すまないのうゼロ。やられてあげたい所じゃが…
お前の戦う姿をもう少し見ていたくなってな。」
ゼロは新調したセイバーを床に突く。
「お前のことはワシが一番理解しておる。お前自身よりもじゃ… …今日の所はここまでじゃ。
体を休めておくのじゃな、ゼロ!ガーッハッハッハッハッハ!」
「待…て…!アイゾック!」
「おお、ゲイト様ですか。これから戻りますわい」
「敗北の割りに随分調子がいいものだな、アイゾック。
これから僕は少しエックスに挨拶をして来ようと思う。お前はどうする?」
「ワシは少し準備に取り掛からせてもらいますわい。ハイマックスをパワーアップさせねば!」
そしてその翌日、ハンターベースに等身大ホログラフィが現れる。
整った顔に切れ長の目。白衣を身にまとう若き科学者の姿がそこにあった。
「流石だね、イレギュラーハンター・エックス。僕の作り出したレプリロイドをことごとく倒してしまうとは」
「誰だお前は!」
「僕はゲイト。レプリロイドの新たな統率者、理想国家を目指す者」
-
「お前…自分が何をしているのか、わかっているのか!?
世界が滅びかけたんだぞ!」
「解っているさ。だから今が絶好のチャンスなんだ
やっと時代が僕に追いつこうとしているんだ…誰にも邪魔はさせないよ」
「お前…!」
「詳しいことは研究所で話すこととしよう…
研究所の入り口を開けておく、いつでも入ってくるといいさ」
ゲイトからの通信は途絶えた。
「…エックス。今のままじゃまだ心配よ。貴方は今までのエリアを捜索して準備に当たって。
残り2人の調査員の所へはゼロに向かわせるから」
「ああ…有難う」
「…それで、次のミッションは?」
「やっと動けるようになったようね、ゼロ。
それじゃゼロにはこのミッションに行ってもらうわ。
…先輩、オペレートお願いします」
「何だか久々ね……任せて。」
エイリアやゼロですら名前の知らない、切り揃えた桃髪の女性が現れる。
最初のシグマの反乱の際、エイリアがエックスをオペレートする傍ら、
ゼロをオペレートしていた女性だ。
カウンターハンターの戦いまではゼロは死亡。
復帰後すぐゼロは研修生アイリスを自らのオペレーターに抜擢、
それと入れ替わるようにして彼女は新人ハンターのスカウトへと仕事を変えていた。
臨時オペレーターだったエイリアの手本となった女性がここに現れたのだ。
たどり着いた先は火山。だが…
「どういうことだ。マグマが青いぞ」
「こちらからだと見えないわ。エイリアからの話によるとこれがナイトメアという事になるかしら
……色だけは涼しげで新鮮かも知れないけど」
「温度も低ければよかったんだがな。俺はマグマの中に入る趣味はない」
「ないの?」
散々自爆し続けたゼロなら或いは。彼女はそう思っていた。
どんな趣味だ、そう思われながらもゼロは飛び降りる。
「…何だこれは……」
赤い、輪のような巨大な物体があるのがわかる。
「今度は何?」
「メカニロイドのようだな。輪のような形をしているが…よく見ると尾を噛んだ蛇のようにも見える」
「反応がない。…これもナイトメアって事ね。様子は?」
「ボディの4箇所に緑色のコアらしきものがあり…そこから弾を発射している。
動き自体は左右に動くだけの単純なものだ。…すぐに片付ける」
新たなるゼットセイバーは前のものより長かった。
そして、以前のものより遥かに攻撃力が高い。それは、一切揺らがないセイバーの形からも見て取れる。
「ハァ!!」
コア破壊など容易い。ゼロは厄介なそのレプリロイドのコアを次々と破壊し…
沈めていった。
ナイトメアで出来た虫がゼロにまとわり付く。
「セイバーやバスターは効かない。
ならば、虫には虫を…というわけだ。ヤンマーオプション!」
オプションからの弾でそれを破壊し、下へと潜っていく。
「炎が噴出する箇所がある様子。うまく避けて潜っていって」
広い部屋に出た。…と思うと。
「…何だ、ここは」
「どうかしたの、ゼロ」
またも赤い輪が目の前にあったのだ。
「……またあのナイトメアだ。もう一度だけ、相手をしてやろう」
ぐるぐると部屋を回るそれを倒し、扉を潜ると…。
「その部屋の上部に…随分古い、装置のようなものの反応があります」
「多分カプセルだろう… 向かうぞ」
-
ゼロは博士に一つ…聞きたいことがあった。
「ゼロ。蘇ったようじゃな」
「気がついたら傷一つない体で目覚めていた…貴方が蘇らせたのではないのですか」
「残念ながらそれは違う…。 私自身君の体がどのようになっているか解らんのでな」
「となるとあの老人…か」
「それもよくは解らんな…エイリアという子にシャドーアーマーのプログラムを渡してはくれんかな。」
「解りました」
先へと進む…と。
「………………」
「また?」
「坂道の上だな」
……赤き蛇は3度現れた。
一回の戦闘に割りと時間のかかる相手。
出るたびに正直ため息をつかざるを得ない。
「…………4度目だ。しかもマグマが下から迫っているぞ」
「ご愁傷様」
マグマの中から姿を現し、攻撃を仕掛ける。
場所が場所であるだけに…輪の4箇所にあるこのコアを攻撃するチャンスは限りなく少ない。
「少し本気を出してみようか」
ガードシェルを発生させる。
これは…エックスにはタダの光の壁でしかないが、ゼロにはもう一つ使い方が存在する。
ゼロがそれを使う場合、セイバーにもその効果は及ぶのだ。
セイバーを光が包み込み……威力が倍増…いや、それどころではないものとなる。
もっとも、相手は柔らかなメカニロイドに限られるのだが。
「食らえ!!」
コアは一撃で破壊される。次に飛び出したときには反対側を破壊する。
ナイトメアスネークはいとも簡単に敗れたのであった。
「…………もういないだろう」
だがまだいた。
「全く…」
今度はマグマから飛び出してくる。前回よりは楽なものだったが…さすがにゼロの怒りが頂点に達した。
「この技はゲイト戦まで取っておくつもりだったが…気が変わった」
ゼロが拳に力を溜める。
「食らええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
レプリロイドの世界に降り立った破壊の神…ゼロ。
彼が使う技の中で…恐らく最強とされる2つの技のうちの1つが今放たれる。
片方は幻夢零。エックスには見せなかった…ゼロナイトメアが用いた幻夢零・改の元となった技。
アースクラッシュから始まる、これに類する一連の技の中で最強とされるものである。
改とは言うものの、エネルギーの消費を少なくして威力を削り放つものであり、元の技の威力には届かない。
そして今そのもう一つが放たれるのだ。
この技をエイリアが見たら、思ったであろう。
エックスとの戦いで…この技を使用されなくて本当に良かったと。
拳を地面へと叩き付けると…そこからエネルギーは噴出しない。
遥かそらの上から、巨大な光の滝が降り注いだのだ。
その大きさは、大小ある様々な滝の中で間違いなく大きな部類。
辺り一面…見渡す限りそのすべてが、光の滝に覆いつくされ……覆いかかる全てを突き抜け、注ぎ込み…飲み込み……通り抜けるのだ。
回避のしようもないその究極の技。
ナイトメアスネークは一瞬にして消し炭と化した。
その技の名前は……
「…烈光覇。」
知らずオペレーターは震えていた。
「ゴッドバーード!!」
マグマのナイトメアを操る力を持った調査員、ブレイズ・ヒートニックスとの戦いだが、やはりゼロの敵には非ず。
炎を纏い恐るべき勢いで駆け巡る技を軽々とかわし…
「旋墜斬!」
落ちながらセイバーを振り、その首を掻き切ったのだった。
「ぎぁぁぁぁああああ!!」
-
「ゼロ。最後はリサイクル工場に行ってもらいます。
…もっとも、まだ救出されていない者もいるかもしれないから
各地を探す必要がありそうだけど」
「…解った。リサイクル工場と言えば………スクラップの山か」
立ち上る熱、蠢くプレス機とナイトメアウイルス。
リサイクル工場内は人を寄せ付けぬ危険な雰囲気を漂わせていた。
「……何故プレス機が動いている?」
「こちらからは反応がない。恐らくはコレもナイトメアね」
「……何でもかんでもナイトメアか」
「汎用性が極めて高いわね…。 ウイルスを用いた可視プログラム類の総称に最早なりつつあるわ。
或いは…エックスとエイリアが対決したイルミナの例からも考えて
ナイトメアにより動かされたものは何でも…存在を感知されなくなる可能性もある」
「………面倒なことだな」
すぐにライドアーマーが目に入る。が……
「プレス機が動いているのにライドアーマーに乗るのは自殺行為よ」
「乗らんぞ、誰かさんでもあるまい。」
その頃、エックスはくしゃみをしていた。
「スクラップが動き、メットールが背の低さを生かして住処にし…
ナイトメアウイルスが自在に動く……最後まで残していた意味が解った」
誤作動を起こす超巨大プレス機の下を潜りながら、彼はどんどん奥へと進んでいく……
「何だ、これは」
青い扉。イルミナ跡に現れたものと同じようなものだ。
潜ってみると……。
「…ゼロ、ゼロ? ………反応が消えた…一体どこに…」
モニターはゼロの視界を捉えている。
ナビゲーション画面の範囲を広げ…ゼロの反応を追尾してみる。
「…いた」
そこは施設の地下だった。
「…おい、これはどういうことだ。ベルトコンベアまで動いているぞ」
「……これもまた反応がないから…」
「いや、もういい」
プレス機は容赦なくゼロを潰しにかかる。ベルトコンベアは蠢き、
救助者もおり、ナイトメアウイルスは彼らを狙い、床には何故かトゲが大量。
そんな状況が、かなりの距離の間続いている。
「床に至っては凍っているぞ……とんでもない悪意を感じるな。最早笑えてくる」
「…笑ってみたら?」
さすがにゼロでも進むことは困難。
苦難の末、救助者全てを救出した上で進めたのは奇跡といえた。
「こんなの誰も進めないわよ………」
最後にプレス機自体が巨大メカニロイドとしてゼロに戦いを挑んできたが…
これは割りと簡単に倒すことが出来、最深部まで漸くたどり着いたのだった。
「ここにいるのは何だ」
「調査員はメタルシャーク・プレイヤー。…変わった名前ね」
「…そうか?」
「ええ。人間以外の動物をモチーフとして開発した場合、
大体はファーストネームが能力、ファミリーネームにモチーフの生物が入るものよ」
扉を潜るとそこはスクラップの海だった。
「…来る」
-
鉄の海を泳ぐ音はとても五月蝿い。
鰭のみを出しガシャガシャと音を立てて泳ぎ…スクラップを巻き上げ飛び出してきた。
オイルの海を悠々と泳ぐ下劣なレプリロイドも以前存在していたが。
「シャッシャッシャ!スクラップの仲間になりに来たみたいだなぁ…ゼロ!」
「それはお前だ。今もこうしてスクラップにまみれている…お似合いだ」
碇のような先端部をしたモリを手に、プレイヤーは笑う。
「そのスカした面は気に入らねぇなあ……決めた。お前は特別に苦しめて殺してやるよ!!」
戦いが始まる。
プレイヤーは潜り、背びれだけを出して先ほどのようにガシャガシャと鉄の海を泳ぐ。
「メタルアンカー!」
飛びあがりモリの先端、碇を飛ばしてくる。
それは鉄の海を跳ね回る。
「翔炎山!」
ヒートニックスの能力。地を駆け摩擦で炎を吹き上げるセイバーで敵の体を払い、斬り上げる。
「こいつぅ!!」
鉄の海を泳ぐプレイヤーはとても硬いボディを持っている。
そのボディが鉄の海を一度蹴れば、スクラップはたちまち巻き上げられる。
だがゼロは跳んだ。
氷狼牙の能力で高く高く…。そしてそのまま技へつなげる。
「旋墜斬!」
体重をかけ、プレイヤーの腹にセイバーを突き刺す。
「…へへ、まだやりてぇこともしてないのに、やられてたまるかよ…!」
プレイヤーが大きく跳ぶと叫ぶ。
「出でよ……! カメリーオ!」
「?」
「ににににー!ゼロさんじゃないですか!」
すると…何と部屋の中に3年前死んだはずのカメリーオが現れたではないか。
「プレイヤーの名は伊達じゃない…って所ね」
舌をムチのように使って攻撃するその攻撃を再現する。
「貴様…!!」
「いい顔すんなぁオイ…出でよ……ヒャクレッガー!!」
「ぜ…ゼロ…さん…」
今度は部屋の隅にかつてゼロの部下になる予定だった男、ヒャクレッガーが現れた。
手裏剣を大量に投げてくる。
「ぐっ!?」
「まだまだ行くぜ!?出でよ……ホーネック!」
「うぐぐぐ……!!隊長…!」
そしてホーネックが現れ、パラスティックボムを乱射する。
「お前………!!」
「なあ、お前強いみたいだし、こうやっていたぶって殺すだけはちょっとつまらなく思えてきたぜ」
ヒャクレッガーの手裏剣を回避しながら。
「俺はなぁ、こうやって戦闘方法として不完全に蘇らせることも出来るが
完全な復活もさせられるんだ」
「なぁ、俺らの仲間にならないか?どうせこれからはゲイト様の世界だ、」
カメリーオの舌を回避しながら。
「いくらでも死んだお前の知り合いを復活させて」
ゼットバスターでホーネックを撃つ。
「お前の好きなように従わせることが出来るんだぜ!?」
「…黙れ!!」
跳びあがり旋墜斬。
「動揺してるみたいだなぁ…まぁいい、俺にこうやって敗れれば考えも変わるさ!
出でよ………!」
「円水斬!!」
ぐるりと回転、プレイヤーを切り刻む。
三日月斬より数段素早い、水を纏ったその剣はプレイヤーの体を綺麗に真っ二つにしていった。
「なぁぁぁぁ…!?」
爆発を起こすプレイヤーの体。
しかし彼は………爆発の中で立っていた。
「…全員蘇っちまええええええええええ!」
「!?」
プレイヤーの腕からDNAデータがバラ撒かれる。
プレイヤーは最後の力で……大量のイレギュラーを復活させたのだ。
「おびただしい数の特Aクラス以上のイレギュラーが復活していく…!!」
「……エイリアとエックスに伝えろ。戻るのが少し遅れるとな」
「ほう…懐かしい顔、知らない顔…沢山いるな」
-
「やぁエックス、奇遇だねー」
「お前、ダイナモ……!そこで何をしている」
アマゾンエリアから繋がる、アマゾンエリアのナイトメアに満たされた別空間にて。
エックスは草原の上でダイナモと遭遇していた。
「何を? あー、実はさ。ちょっとパワーアップをしたくなったものだから…
集めてるんだよねー、ナイトメアソウル。」
「…何」
「エックスのボウヤも集めてるんだろ?なーなー、俺にもちょーっとくれよ!」
ダイナモはそう言うと腕に集中させた力を床にぶつける。
「うあぁぁあああ!!」
ダイナモのこの技は更に強化。ダイナモのいる位置以外の全範囲を攻撃できるまでになっていた。
一瞬怯んだが負けずにダイナモにチャージセイバーを食らわせる。
「さてさて…どれだけ持ちこたえられるかなぁ」
セイバーをぐるぐると回転させ、分裂した刃が次々と飛び出してくる。
「奴の弱点…一体なんだ?」
背後に回りチャージショットを食らわせつつ、ダイナモに色んな武器を試してみる。
「弱点ー?俺にそんなものはないってー」
斬りつける。…自ら弱点があると告げる者もいないだろうし、本人が気づくものではないだろう。
増してや、能力から判断の出来ない人間型の場合は。
だが、やはり存在した。
「メテオレイン!」
「ぎああぁあ!?」
弾む水の球がダイナモの体を押し上げた瞬間、ダイナモから悲鳴が。
それと共に……見つけた。ナイトメアソウルだ。
「お、オイ!ハンターが人の物取るなよ!」
「盗品だろう、それに本来の持ち主に当たる奴にこれから会いに行く所でね!」
「滅茶苦茶するねー」
続けてメテオレイン。ボロボロと落としていくナイトメアソウルを手に入れ、
ダイナモに最後にチャージセイバーを当ててトドメ。
「ちっ……マジだもんなー、これだからヤだよハンターさんたちは」
「今本気にならないでいつ本気になるっていうんだ」
「アンタらはいつだってそーだろ?
…ま、いいや。俺はここまでにしておくぜ。…ああ、そうそう」
ダイナモはエックスから距離を取り、転送装置を取り出しながら言う。
「アイツらはマジに気をつけた方がいいんじゃねえかな。
シグマの旦那より危ないかもしれないぜ?」
「ゲイトのことか?」
「何せ俺がこうやって使ってるナイトメアの力を一番自在に使える奴なんだからさ。
それだけじゃない、アイツらのアジトは半端じゃない場所だぜ。気をつけるんだな。
…まー、言っても止まる奴じゃねーか?じゃあな!」
ダイナモは去っていった。
「まぁそれだけじゃないけどな。 ゲイトって兄ちゃんはもう一つ何か隠してそーな感じがするんだよなぁ
それに…ヤバい奴らしいしな……ああいう、恨み憎しみで動いてる輩が一番何するかわかんないのさ」
それからハンターベースに帰ったエックスはエイリアに出迎えられる。
「…エックス、おかえりなさい。…準備は、いい?」
「……ああ。いつ出発になる?」
「3時間後よ。それまで休んでいて…ゼロも向かわせるから、負担は減ると思うけれど」
エックスは思っていた。
ゲイトもアイゾックも、科学者レプリロイド。ハイマックスはゼロに倒されている。
…研究所での罠は危険だとは思うが、今自分達にとって脅威となるものは何もない。
なのに、ゲイトは何故そこまで余裕でいられるのだろう?
そして…どうして自分は不安に陥っているのだろう。
「結局、ゲイトを止めることまで貴方にお願いすることになっちゃったわね…」
「俺はイレギュラーハンターだからね。 …エイリアもオペレートを手伝ってくれ」
「…ええ」
エイリアの中にはある気持ちが渦巻いていた。
…いつもいつも、自分はエックスを見ているばかりだ。
それで…本当にいいのだろうか。本当に自分で出来ることは背中を見送り、遠くからオペレートすることだけなのだろうか?
オペレートすることの大事さは知っているつもりだ。けれど……。
-
「ふう…。 よし、行って来る!」
「気をつけてね、エックス……」
一方、ゼロと桃髪のオペレーターの方も。
「シャドーアーマーの最後のデータはダグラスに渡したか?」
「うん。もうエックスはシャドーアーマーを着ているはず」
「俺は少し遅れて向かうことになりそうだな」
ゼロナイトメアとハイマックスに初めて会ったあの場所のすぐ近くに…それはあった。
「大きな穴が開いているみたい…研究所がまさか地下にあったなんてね」
「…確かに。奥はよく見えないな…飛び込んで見るよ」
穴の中は真っ暗。何も見えない…… どんどん落下していく。
そして、床に着地した時…
「奥に何か明かりが見えるな。エイリア、聞こえるかい?」
「………エイリア?」
「…ごめ…、電波じょ…たいが悪…みた…。」
「……そうか…解った。エイリアは繋がるときまで待機しててくれ。俺一人で進むよ
ゲイトを…とめてくる」
入ってすぐに、トゲの壁があるのがわかる。それ以外には登る道もない。
忍者を模したシャドーアーマーの能力が発揮される。壁の針を何事もないかのように登る。
「ガイアアーマーも同じ能力があったが、この場合特に機動性が落ちることもない。優れたアーマーだ…」
バスターから手裏剣型のバスターを放ち、上へ。
「氷の坂道……戻らせるつもりは全くないな」
ナイトメアにより凍った床にも敵が沢山。
倒しながら進んでいく。
すると、エックスの耳に高い音が聞こえてきた。
「今度はレーザーか…」
レーザー装置の攻撃の合間を縫って上のフロアへ。
「…マグマのナイトメアか!」
色は青ではなく赤。床下から湧き出、引いていくマグマのナイトメアをかわして更に先へと進むと……。
「……何…だ、これ」
ドクン、ドクンと心音のような音が響く。
ジジジジ…と電撃の中から現れたのは…奇怪な存在だった。
「うっわぁ…」
紫や赤の球体がごろごろと繋がり、脈動した…塊。中心には目。
「ガハハハハ、よく来たのうエックス。これは偶然出来たとは言え侮れたものではないぞ?
ナイトメアが増殖に増殖を繰り返し作り上げた怪物…『ナイトメアマザー』じゃ!」
「ナイトメアマザー!?」
よく見ると2体存在する。
巨大な部屋の中を巨体がぐるぐると移動する。
「うわぁああ!?」
ギリギリでの回避となる。
ギギ、ウィー… 機械音を発し、ナイトメアマザーの目が飛び出る。
「コイツ!?」
床を炎の雨にする。ジェルシェイバーのような液体窒素を床に走らせる、電撃をエックスの真上に落とす。
あらゆる現象を意のままに操る能力があるようだ。
「おらぁああ!」
チャージして放つはセイバー。三日月型の金色の斬撃はナイトメアマザーの目を切り裂く。
だが。
「…硬い…!」
一発目の攻撃で解った。これは長い戦いになるだろうと。
またも回転。いつ止まり、目を出すかも解らない。だが止まってはいられない。絶えずナイトメアマザーは動き続けているのだから。
「今度は何だ…!?」
ナイトメアマザーは上を向き、その瞳からマグマを乱射させ始めた。
…火山弾が上から次々と降り注いでくる。
「…どう避けろっていうんだよ!!」
様々な攻撃を組み合わせるナイトメアマザー。その戦いは削り、削られ…
サブタンクも使い切っての、長い長い…ボロボロの戦いとなっていた。
「…終わりだ!!」
セイバーの出力を最大にし、三日月の刃を柄から二回射出する必殺の技。
エックスの周りを三日月がぐるぐると8の字を描き跳び、その中にあるもの全てを死に至らしめる。
シャドーアーマー最強の能力により、ナイトメアマザーは漸くその動きを停止したのだった。
真っ二つになり飛び散る目の中身、そしてマザーを構成するナイトメアのかけら。
グロテスクな光景に思わず目を伏せた。
-
トーテムポールが行く手を阻むゲイト研究所。
ミジニオンの兵器研究所に現れたように並んで現れる鳥型のメカニロイド…のように見えるナイトメアを倒しながら
上へ、上へと彼は進んでいく。
氷、レーザー、マグマ、トーテムポール、鳥…
どうやら全てのエリアのナイトメアをここは集めていたようだ。
「エイリア、どうやら電波状態がよくなったみたいだ。」
「…ホントね。…先へ進みましょう」
だがここでゲイトからの通信が入る。
「やぁ、よくここまで来たねエックス…そしてエイリア。
君はいつも研究所の中でトップだった。
きっと君とエックスのコンビならここまでたどり着けると信じていたよ」
「…いいえ、貴方は自分の思うままに研究を進めていっただけ。
私よりも優秀な頭脳を持っているはずなのに。」
「……どんな優秀な頭脳も正しく使われなくては意味がない。
…お前とエイリアの差は、きっとそこにあるはずだ。」
「聞き飽きた言葉を並べてくれるね、君達は…。
まぁいい… 実はね、僕も僕一人の力じゃここまでは来れなかったんだ
…君達がここまで来た褒美に見せてあげようか。これを」
取り出したのは…鉄片。
「何だと思う? …タダのガラクタだと思ったよ 『始めは』。
…そうだな、これを何処で拾ったか言えば解るかな?君とゼロとが戦った、禁断の地だよ…」
「……まさか」
「…いい反応だね。そう、そうだよ。ゼロの欠片だ!
僕はゼロのDNAを手に入れることが出来たんだ!」
「…ゼロの、DNA…!?」
「天にも昇る気持ちだった…!
レプリロイドを研究する誰もがたどり着けない境地…
聖域に踏み込んだんだ!」
彼は…社会の裏に身を隠していた、コロニー破壊失敗を嘆いた一人の若者に過ぎなかった。
復讐など、本当はとうにあきらめていたのだろう。
…だが。
シグマと同じだった。彼もまた…ゼロの体が持つその力に心を狂わされた一人だったのだ。
…ゼロが持つ根源的な悪に染められ、復讐の炎が再び燃え上がったのだ。
「笑いが止まらなかったよ…!
ハイマックスやナイトメアウイルス…こんなに完璧なものが
こんなにも簡単に出来てしまうんだから!」
「………許せない」
「そうだ、いいぞエックス!
欲を言えば、ゼロが死んだままだったら君は更に怒っていたんだろうがね!」
「ゼロの力をそんなことのために利用するなんて許せない!
…ゲイト、お前は絶対に俺が捕まえて見せる!」
「望むところ…! 研究所の最上階で待っているよ、エックス!」
「それじゃ先に向かうことにするよ、エイリア。」
「…ええ。」
ハイマックスの強度の理由がここでわかった。
ゼロは…単にウイルスにかかって攻撃力を強めただけではない。
ゼロはウイルスにかかり、真の力を手に入れたその時…何者の攻撃も受け付けない、究極の体になっていたのだ。
どんな攻撃も弾き返し、傷の一つもつけない…謎の力。
…その真のゼロの力をもし、ゲイトがハイマックスにつけていたとしたら。
だが…不完全なのだろう。
ハイマックスは事実、ゼロに一度破られている。
ゼロの攻撃はセイバーとDNAデータを用いた技の2種類が存在する。
技を食らわせた後はセイバーでの攻撃が効いたとゼロからの報告にはあった。
恐らく、DNAデータを乗せた攻撃がハイマックスに打ち込まれることで
ハイマックスは一時的にゼロのDNAの効力を得られなくなるのだろう。
そこに攻撃力の高い、ゼロ自身の攻撃を浴びせることでダメージを与えることが出来る。
…その特性は、きっとハイマックスがずっと持ち続けたものなのだろう。
-
一方ハイマックスとゼロとの戦いは、中盤にさしかかっていた。
「何度でもバリアを張りやがる…怖いのか?」
「何とでも言うがいい。死ね、死ね…オリジナル…!」
立方体を二つに割った、直方体型のバリアを腕の左右から発生させ、自在に操る。
これがハイマックスに新たに加わった能力だった。
バリアを張り突進を続けるハイマックス。
「無駄だと言っているだろう!」
ガードシェルを使って強化したセイバーによりハイマックスもろとも攻撃。
だが…ハイマックスに直接ダメージを与えることはこの技だけでは不可能。
「死ぬがいい」
小型のデスボールをゼロに向かい放ち続ける。
「翔炎山!」
ハイマックスに炎を吹き上げる剣を浴びせ…
「落鋼刃!」
上から、プレイヤーの技をハイマックスの体へと叩き込む。
セイバー自体を鋼で包み、当たると同時に爆破するものだ。
「ぐはっ…!?」
ハイマックスがバランスを崩す。効いているようだ。
「デスボール!」
彼の代名詞と言える必殺技。巨大な圧縮エネルギーが地を這う。
ゼロのセイバーにより分解、小さな球となってゼロを追う。
「ぬっ……」
「はああああ!」
またもハイマックスはバリアを張る。
そして…
「ぬん」
左右へバリアを解き放つ。
「押しつぶされるがよい」
飛ばされたバリアがどこからか一つに合わさって現れ…一つの非常に重い立方体となってゼロに降りかかる。
「烈光覇!!」
バリアの破壊に成功する。
…ハイマックスの攻撃は全てここで破られた。
どれもゼロには対処可能な攻撃。いずれハイマックスはゼロの前に敗北するほかなくなる。
「おの…れ…おのれ…おのれ…おのれ…おの…れ…!!!」
ハイマックスが…壊れた。
「デスボール、デスボール、デスボール、デスボール、デスボール、デスボール…」
狂ったように、その腕からデスボールを乱射し始める。
「狂いやがったか」
最早ゼロのDNAの防御力は得られない。その力はデスボールを生成することに費やされているからだ。
「ハァ!!」
斬るとデスボールも斬られ、小さな球となり対処が難しくなる。
高速で打ち出されるデスボールの対処はとても困難。
…体力と体力の戦いへと変化していった。
だが…すでに大分体力の削られていたハイマックスと、数発食らったのみのゼロとでは差は歴然。
「終わりにさせてもらおう!」
壁を蹴り、高く跳びあがったゼロは…
「落鋼刃!!」
技を放つ。
肩から胸へ、胸から腕へ、腹へ、脚へ…顔へ…。
亀裂が入り……
砕け散っていった。
「ガーーーッハッハッハッハ!!!」
煙の中、満足げに笑う科学者の顔があった。
-
「エックス。俺とお前とで同時に入るぞ…いいな」
「ああ!」
ナイトメアの空間への入り口を示す青き扉。
再生したアルティメットアーマーを手に入れたエックスと
ゼロは同時に扉へと体当たりを仕掛けるが…
「!?」
エックスは一人だった。
雨が降りしきる研究所内。そこには蟷螂のナイトメアの姿もあった。
「…もう勘弁してくれ」
ゼロの着いた先はプレス機のナイトメアの部屋。
それぞれが道を進んでいくこととなった。
二人は道を進んだが…
プレス機は行く手を阻むタイプのナイトメアであるため、エックスの方がやや早い。
「………」
彼はいつしか、ゲイトの部屋の前にやってきていた。
「…クソッ、最深部についても先へ行けない…!?」
「ヒャヒャヒャ…プレス機ばかりの場所につくとは、お互い運が悪いねぇゼロの旦那ー」
「貴様……!!」
「なぁ、ちょっと本気で戦ってみないかい?最強の神サマよ」
おちゃらけた表情で現れたのは勿論この男。
「逃げ道もない。これでお前のことも本気で殺れそうだ…」
「ハハッ、怖いこと言っちゃいけねえよー?こーんな…
夢ん中でさ!」
バイザーの割れたダイナモの背後には無数のセイバー。
「…いいだろう、付き合ってやろう。どうせゲイトの奴はすぐやられる」
破砕音がこだまする中…ゼロは剣を構える。
「エックス。ここは…どうやら電波状態がとてもいいみたい。通信、出来るわ」
「………なるほど。行こう、エイリア」
暗い部屋の中…。
エックスはとうとうたどり着いた。ゲイトの部屋に。
「フフ、流石だね…全て壊されたよ」
「あきらめろ、ゲイト。お前一人じゃ…何も出来ないだろ!」
「私からも言うわ。…ゲイト、貴方はこんな人じゃないはず。目を覚まして」
「月並みな言葉だねぇ…君達。
…悪いけど半端な気持ちで科学者やってはいなかったんだよ、僕もね。
だから…最後の実験くらいさせてくれよ」
「……まさか!!」
「すでにゼロの欠片は埋め込んである。
エイリア、君の言う最強のハンターと戦えるなんて夢のようだよ。願ってもいないことだった!
さぁ…最後の実験だ。」
白衣を脱ぎ捨てると同時に、ゲイトの姿は変化していた。
金色に輝く、ゼロを模した流線型のボディに。
白衣は背中でマントへと変わり、ヘッドパーツは長く美しく伸びていた。
「はじめようじゃないか、エックス!」
そのパワーで部屋の床が崩れ…吹き飛び…宙に浮く。
複雑な戦いに適したバトルフィールドに変化していった。
-
ゲイトの腕から巨大なエネルギー体が放たれる。
「…!?」
「見えないのか、エイリア!」
「…間違いない。……ナイトメア!」
ナイトメアで出来た弾を高速で撃ち出すゲイト。
弾は一箇所に留まり、ゲイトの操作で小さく分裂、ナイトメアの弾となってエックスを襲う。
「くっ…!」
逃げるしかない。
「待て!」
ゲイトは自由自在にこちらを追いかけてくる。…この能力はまるで。
「フリームーブ!? エックスのファルコンアーマーも使えていたけど、まさかゲイトまで!」
続けて放たれた弾からはナイトメアウイルスが。
「クソッ…!」
プラズマチャージショットで破壊する。
「かかってきてみるがいい!」
ゲイトは自由自在に飛び続ける。
「ノヴァストライク!」
光の矢となってエックスはゲイトを貫く…だが。
「…? 何をしたのかな」
「…え!?」
「ノヴァストライクが…効かない!?」
最強の技すらも…ゲイトの前には一切効かない…。
「クソッ!!」
もう一度ノヴァストライク。その後またプラズマチャージショット。
…ゲイトの体には何一つ通用しない。
ハイマックスでは不完全だった。真のゼロが持つといわれる何者をも通さない究極のボディを……ゲイトは手に入れていたのだ。
「素晴らしいパワーだよエックス!!だがその様子。今のが君の最強の攻撃かな」
続けてナイトメアの弾を放っていく。今度の色は緑。
「何!?」
この弾はエックスを追い続ける。
「そこにこれでどうかな?」
ゲイトは水色の弾を放る。
「うあぁぁあ……… うっ!!」
吸い寄せる力を持つ弾。
これによりエックスは奈落の底へと引きずりこまれるか…二つのナイトメアの弾に取り込まれるかになる。
「負けるか!!」
プラズマチャージショットで攻撃する。
ナイトメアの弾が弾け、ゲイト自体にもダメージが及ぶ。その時だった…。
「うっ!!?」
「……ゲイト!?」
ナイトメアが弾けた破片に当たり、ゲイトが苦しみだした。
「…まさか」
彼のボディは全ての攻撃を受け付けず、ナイトメアに強く親和性を持っている。
故に…… エックスの力により破壊され、歪みの生じたナイトメアを取り込むことで、ゲイトのボディ自体が歪み始めるのだ。
「…何!?」
ナイトメアはナイトメアの力で滅ぼす。…そういうことか。
ゲイトにはナイトメアでの攻撃しか攻撃方法は存在しない。…自分の全ての攻撃が、自分の首を絞める術となりうるのだ。
「だが……俺自体がナイトメアの弾を壊すことでダメージを負う……」
「大丈夫、エックス…!」
「大丈夫だ。……ゲイト。お前のボディをお前の力で破壊してみせる!」
「望むところ…。これで文字通り、どちらの体が先に散るかの勝負になったようだねエックス!」
白衣のマントを翻し、またもナイトメアの弾を放る。
緑と紫。ナイトメアウイルスと緑のナイトメアの弾がそれぞれの動きでエックスを追い詰める。
「食らえ!!」
マグマブレード。ヒートニックスから得たこの炎の刃によりナイトメアは破裂する。
「うあっ…!」
エックスの体にダメージ。だがゲイトはこれを避け、新たにナイトメアを放る。
赤と水色。…赤は見たことのない色だ。
「動きを鈍くするナイトメアだ…だがそれだけだと思うなよ!」
体が動かない。体内での信号伝達が遅らされているのだ。それだけではない。水色のナイトメアによって吸い寄せられていく。
「う…!あああ…!!」
何とかエアダッシュで壁にしがみつく。
「醜いねぇ」
続けて黄色のナイトメア。これは分裂弾を放つものだ。
「…うっ……!」
叩き落すべくゲイトが近づいてくる。その時を見計らい…
「食らえ!!」
ナイトメアを破壊する。
「なっ…!?」
またも飛沫にゲイトの体が変異を起こす。
「くっ……!」
だが…変異し続け、どんどんゲイト自体がウイルスに冒されていくことで、いったい何が起こるのであろうか。
彼の体は限界にどんどん近づいていくのだろう。だが…
-
「まだ…だ!」
「クソッ…!?」
何度も何度も。お互いに命を削りながらナイトメアをぶつけ合う。
「く…」
セイバーを使ってナイトメアを破壊したり、特殊武器を使ったりしながら。
いかに奇をてらい、ゲイトに弾をぶつけるか。
だが、何をしてもこちらにはダメージは跳ね返ってくる。
…確実にピンチは訪れている。
…だがゲイトの体の変異がとうとう高レベルにまで達し始めたようだ。
浮いているだけで息の上がるゲイトだが…エネルギー出力は更に上昇し続けているのだ。
「失せろぉおおおお!!」
エックスの目の前でゲイトがナイトメアを放ろうと手を振り上げたその瞬間。
「!?」
ゲイトすら知らぬ変化が起きた。
ゲイトの手から……その瞬間、妖しく輝く刃が出来、床も、壁も、空間も全てを切り裂いたのだ。
「……どうやら、追い詰められた僕に更なる力が備わったようだねぇ……!」
「やめてゲイト!」
「これだから実験はやめられない!」
ナイトメアを放り続け、エックスの注意をそこに向けたところでナイトメアの刃で切り裂く。
「うああああああああああああああ!!」
切り裂いたボディからナイトメアがエックスのオイルを吸収する。
エックスの体が下へと落ちていく。
「だがまだ奈落の底に落ちるには早いか…しぶといね!」
またもナイトメアの刃。
エックスは紙一重で避けるが…反撃の手段が見つからない。
この攻撃は反撃のしようがない。ナイトメアとして破壊し、飛沫をゲイトにぶつけることが出来ない…
「エックス…逃げて!もうゲイトには勝てないわよ!」
「あと…もう少しなのに…!!」
ゲイトは実際、物凄い力を手にしているのだろう。何者にも傷つけられない力をつけたのだから…。
このまま完全にゼロの力を手に入れてしまった暁には、世界はナイトメアに蝕まれ続けることになる。
ここで…ここで止めなければ。
「ゲイト…!!」
ノヴァストライクを繰り出す。
「どうしたんだい」
通過する。ナイトメアの刃が空間を切り裂く。
「あぁああああああ!!」
「逃げ道などどこにもない、あきらめるんだねエックス!」
近づき、エックスを叩き落とす。エックスの体が宙に浮く床へと落ちていく。
「まだまだ…!」
ゲイトにナイトメアの刃を繰り出させ続ける。
もし、ナイトメアの力を食らうことでゲイトが更なる力をつけたのだとしても。
…ゲイトの力とて無限に続くものではないだろう。
無限に沸き続ける力ではあっても、一時的な枯渇はありうるものだとすれば……。
そこを狙えばきっといつかは……。
全ては仮定だ。100回に1回の…いや、もっと少ないかもしれないチャンスに賭けるに等しい。
「甘いねエックス!!」
ゲイトは腕を振りかざす。
「…何?」
だが放たれたのは破壊の出来る、ナイトメアの弾だ。ゲイトの力が一時的に尽きた…!
緑色の弾だ。これなら…!
「……悪夢は結局、お前を滅ぼすんだ!」
エックスが跳ぶ。そして…変形。
「ノヴァストライク!!」
ナイトメアの弾へ突進。勢いよく弾けとび…ゲイトへと吸収されていく!
「嘘だぁあっ………!!」
ゲイトのボディに亀裂が生じ……
光が噴出する。眩い光の中で大爆発を生じ、ゲイトのボディが砕けていった。
満身創痍のエックスは胸に手を当てながら……。
倒れたゲイトをじっと見つめるのだった。
-
「くっ……ゼロのDNAの力を持ってしても…勝てなかったか!!
…解析が、不完全だったからな……」
「……終わったか」
「エックス…」
ゲイトは息を切らしながら笑みを浮かべる。
「ふ…フフ…だが……
だが、まだ…終わりじゃない!!
こんなこともあろうかと…策は練っていたんだ…」
奥の空間が歪み…何かが顔を出す。
「…あ…悪魔を…復活させたよ!………シグマを…ね!」
「ええい…調子に乗るなぁ…小僧!
あの…程度では、私は…死なぬわぁああ…!」
またも。
「ぐうう…邪魔だぁああ…失せろぉおおおお…!!!」
口から巨大ビームを発射。各所が崩壊したゲイトの体はそれに飲み込まれていく。
「ぐあぁああああああああああああ………!!」
「あ…後は…邪魔者は…もう、お前達…だけだぁぁ…
ち、地下で…待ってるぞぉぉ…!」
不完全な復活のシグマはまたも闇に紛れ、消えていった。
「大丈夫か、エックス!」
「ゼロ…!」
ダイナモとの戦いの最中にゲイトが敗れたことで空間が不安定になったらしく。
ゼロはナイトメアの空間を脱出し、この部屋まで来ていた。
「シグマが…?」
「ああ。研究所の地下にいるらしい。急ごう!」
地下へと向かうその道中。ハイマックスを倒した部屋で、笑っていたはずのアイゾックが倒れていた。
「…行くのじゃ、ゼロ。
お前こそが、世界最強の…ロボットじゃあ…」
最早息をしていない。
だが…確かにそう聞こえた。
「……どうしたの?ゼロ。…アイゾックが倒れているわね。
どうしたのかしら…」
それは製作者からの、ゼロへの最後の言葉だった。
-
研究所の地下は奇妙な色をしていた。
床は血のような赤に染まったその地下室には…お約束の通りの8つのカプセル。
ゲイト製作のレプリロイドを8体とも倒すと…シグマの居場所への一人用のカプセルが現れた。
「ここから先は俺が戦おう。…お前は逃げろ」
「でも……!」
ゼロはお構いなしにカプセルへ足を乗せる。
「暇をもてあましている場合ではないだろう。行け」
「……………。」
一人残されたエックスは考える。
自分に何か出来ることはないか…と。
研究所はシグマが死ぬと同時に恐らく崩れるだろう。
ならば………。
「…行こう。」
彼は走り出した。…ゲイトを助けに。
「ジネ”!ジヌンダ!デロォオオオオオオ!!」
最早まともに喋ることすら適わぬ。
第二形態となったシグマは巨大なボディの口から、巨大なビーム砲を放とうとしていた。
「ハァ!」
一発斬る。
「おぉおおおおお!!!」
…どうやら刃の通りは悪くない。
まずは強化したセイバーを更に特殊武器ガードシェルでセイバーをコーティング。
「…ダグラス。このパーツを使わせてもらうぞ」
そしてパワードライブのパーツを用いる。短時間の間、攻撃力を上げる代物だ。
「…さあ最後だ、シグマ」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
シグマの顔を強化に強化を重ねたセイバーで一気に叩き斬る。
シグマの顔が真っ二つに割れ…一発で内部まで裂いていく。
最強のセイバーの切れ味は…シグマにその一太刀でトドメを刺した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ボディが爆発する。辺り全体が爆発に包まれる。
シグマの顔はヒビ割れ…いよいよ最期の時を迎えていた。
「む、無駄だ…無駄だ!私は蘇るぞ!?解るだろ、ゼロ!お前ならわかるだろ!?なぁ!?」
最早何か助けを求めるようなシグマの声。
そんなシグマを哀れみながら、ゼロは言う。
「これからの世界は忙しいんだ…もう、二度と蘇るな…永遠に眠っておけ。」
シグマの顔が熱を持ち……爆ぜる。
研究所の地下を震源とし…地震が巻き起こった。
シグマは死んだが…それでもゲイトのような者が、現れ続けるのだろう。
自分が…いる限り。
最早死ぬ事もままならない。ゼロはこれからの自分のことを…考え続けていた。
「…………エックス…!」
「お、おい、エイリア!」
結局、ゲイトとの戦いまでエックスにやらせてしまった。
…これが自分の過去との決別になるのか…今のエイリアにはまだわからない。
ただ……彼女は思っていた。こんな、力になれない役目ではもういたくないと。
いつになるかは解らない。どういう形になるかも…解らない。
エックスの力となれるように…どんな形でもいい、彼を全力で支えること。
彼がたとえこの先、どんな答えを出そうとも。
エイリアは、それを心に決め…走り出すのだった。
-
ハンターベース技術部。
そこには、ダグラスとおそろいの眼鏡をかけた…いや、かけさせられた、
彼と親子ほどの外見年齢差が見られる少女がいた。
「私イヤですよー、こんなのー!
まん丸眼鏡じゃなくもっと可愛いのがつけたいんですー!」
「あー、もう最近の娘っこってのは面倒だなぁもー…」
広いオデコが特徴的な、幼い少女レプリロイド。
彼女は部屋の入り口に立つエックスを見るなり、ぺこりとお辞儀をする。
「あ。こんにちはー、エックスさん!
私、ダグラスさんの元でメカニック技術を学んでいる者です!」
「ダグラスの弟子かい?…よろしく」
エックスの気の抜けた返事に彼女の眉毛はハの字になる。
「あのー。どうかしましたですか、エックスさん?元気ないみたいですけど」
「ああ。エックスはいつも割りとそんな感じだよ。」
「ダグラス!!」
エイリアの一喝。
「そういう一言がエックスを更に考え込ませてしまうのよ……」
小声でダグラスに囁く。
そして振り向きエックスに。
「…あ。エックス、気にしないでね?」
そしてエックスはダグラスに聞きたいことを聞く。
「ダグラス… 所でゲイトのことだけど」
「ああ。ゲイトか。アイツの体は…もうダメだな。ありゃ完全にイカれちまった」
「……そうか」
エックスとエイリアの表情が暗くなる。
「でも面白いものでな。精神から蝕まれたこいつは、シグマの攻撃を受けて
精神から治ってきているみたいなんだ。」
「…ということは?」
エックスが言う。
「ああ、だから…ゲイトの人格そのものは何とかなるんじゃねえかな。
………これを取り除くのは時間がかかりそーだが……お前が言うならがんばってみるさ。」
「…本当?」
今度はエイリアが。
「まぁ、コイツがしてた通りプログラム研究が現在盛んだからな。
レプリロイドやめることにはなっても、何とか別の存在として生きていけるだろーな」
その言葉を聞いて、二人は安心した。
その様子を見てパレットが言う。
「二人とも、今は忙しいんですか?」
「…そうではないけど、ちょっとミッション後だからね。体を休めておきたい」
「私は暇だから後でお邪魔しようかな」
「はいっ!息抜きしたくなったらいつでも来てくださいねー!」
元気すぎるなぁ、この子は…。
そう思い、エックスは軽く手を振って挨拶する。
続いて廊下を歩くとシグナスとライフセーバーの話し声。
「うむ…かなりの実力の持ち主だな……やはり任務をやらせてみて、正解だった」
「やはり最近のレプリロイドは出来が違うということでしょうかな。
オペレーター見習いにしておくには勿体無い所です。」
切り揃えた桃髪の、ゼロのオペレーターが姿を現す。
「あ、そうそうエックス。この子を紹介したいんだけど…
私がオペレーター出向いてハンターとしてもスカウトした、期待の娘よ。」
「あら、あなたは…!」
エイリアも彼女に目をつけていたようだ。もっとも、こちらはオペレーターとしての彼女にだが。
「お嬢様なのに頑張るわよねー…」
「はい…。はじめまして…エックスさん。私…現在オペレーター養成学校の学生の身の…」
濃紫色の長い髪は前髪も隠し、目がほとんど見えない。
褐色の肌と泣きボクロ、エックスを超える長身の体格に…何よりやたらと目立つその張り出した胸。
エックス達と比べ遥かに大人の雰囲気を漂わせた新人だった。
「そうか。君、なかなか強いみたいだね。即戦力になってくれると嬉しいんだけど」
「いえ、今はまだ見習いの身ですので。
あの…と、所であの……ぜ…ゼロさんは…」
ゼロの話になった途端、急に様子が変わった。
「……あーあ、また始まった」
桃髪のオペレーターはやれやれと首を振る。
「……もしかしてゼロが怖いのかい。」
「…また始まった……」
今度はエイリアが。
「い、いえ!そんなことはないんです!ただその…やはり有名なハンターの皆さんにはご挨拶をしておかねばとその…」
顔が真っ赤になる。ゼロのこととなるといつもらしい。
オペレーターを志す彼女が、ハンターとしてのエイリアの先輩のスカウトに応じたのも、
彼女がゼロのオペレーターであったことは無関係ではなかろう。
「ゼロなら確か今パトロール中のはずよ。後3時間は戻らないと思うわ」
「そ、そう、ですか…」
「この子、これから帰る所でね…一度ゼロに会わせてあげたかったんだけど。」
彼女はしょぼんとして去っていった。
「……俺もそろそろ今日は休むことにするよ。 …ちょっと最近、疲れてるみたいだ」
「うん。…そうした方がいいわ。何かあったら私が呼ぶから…安心して寝ていて」
エックスの部屋の前まで送り届ける。
-
「そして、エックスが危険のない存在であったとしても…
私には不安もある。
エックスが……エックスが、『進化』という名の戦いに、巻き込まれるのではないかと…」
ケイン博士から聞いた、ライト博士の言葉の続きだ。
エイリアは考える。
ゲイトの作り出したレプリロイドは、ゼロのDNAの力を手に入れることで更なる力を得た。
ゲイト自身も、そしてハイマックスの存在もである。
…だとするならば、…もしこれが…ライト博士の危惧した進化という名の戦いの序章であるのならば。
自分には、一体何が出来るのだろう。
…エイリアは、ずっと考えていた。
だが時間は待ってはくれない。今日も世界の復興のための戦いは続いている。
「どうか、未来の世界の人々よ…
ロックマンエックスが……世界の希望であることを…
忘れないで欲しい」
…そうして、シグマの正体を探る戦い、シグマが世界の裏に回っての戦いが終わり…
物語は、最終章に差し掛かるのである。
だが…鍵を握る、キーパーソンがまだ一人…ばかり足りない。
それは、ナイトメアの影響が過ぎ去ってすぐの…雨の降りしきる町の、路地裏のこと。
「レッドさん、レッドさん!ガキが倒れてやがりますぜ!」
「……あん?」
痩せながらも筋肉のついた………壮年の男が少年に近づく。
「大分怪我を負っているように見えるな……。」
体躯の老人が言う。
「この小僧からは、何かただならぬ気配を感じるわい…」
「ほっとけよ、そんなん!ひぇひぇひぇ…」
「……どうします、リーダー。」
翼をはためかせて青年が言う。
「…おいボウズ。てめぇ…歩けるか」
すると…少年は反射的に跳ね起き、驚くべき速度で壮年の男の鎌を奪い、思い切り斬りつけた。
だが男は反射的に跳び退き、顔を傷つけられるだけで済む。
ボス!リーダー!レッドさん!ガキ!!何しやがる! …様々な声が沸きあがる。
「…ほう?」
したたるオイルを指でぬぐう。
「……誰だよ、アンタ…」
「俺ぁレッドだ。」
「………アンタ達…何なんだよ。…イレギュラーハンターじゃ、ないよね?」
「イレギュラーハンター? ハッ、やめて欲しいねぇ。アイツらの名なんて聞きたくもねぇ。
……そんなことはいいとしてだ。お前、なかなかいい筋してるな…俺らんとこに入らねぇか?
…その腕、磨いてみねぇかい。
まぁ…行く宛てがあるなら別だけどよ」
「…………」
無言で頷く。
「こんなのを入れるのか、レッドさん。俺はごめんだ…」
双剣を構え青年が言う。
「…お前がそういうなら、…戦ってみりゃあいいさ。ボウズ、名前は?」
「アクセル」
-
しまったオペ子一人名前バレしてたぁぁぁぁ
-
「エイリア、君の同僚なんだろ?それに俺は…これ以上、レプリロイドを失いたくないんだ。」
ゲイトの事件を締めくくる一言が発せられた。
「言ったはずだ、エックス。引き金を引くのをためらうなと」
この言葉に始まった戦いから…3年と少しの間のこと。
3年、6年、9年………それから世界に歳月は流れた。
世界の各地が復興作業が続くその世界。
少しづつ、町も再建を始めた…。 だが、完全復興までは大分かかる。
誰もがその日を病に蝕まれることなく食いつなぐのが精一杯という、瀬戸際の社会では…もうない。
だが、以前のように何不自由ない、秩序の行き届いたしっかりとした社会では、決してない。
それぞれがそれぞれのルールで社会を取り締まり、貧しい中で様々な生き様が交錯する。
あの戦いの責任は誰にある?これから誰がこの社会を引っ張っていくと思う?誰に頼ればいい?頼れないなら強くなるため何をすればいい?
情報も世情も何もかもが乱れた…人とレプリロイドの果てない欲望が作り出したこの、不安定な世界。
何をしても不安、何があるか全くわからない。
新たなる犯罪、新たなるイレギュラーが増え続ける…混沌の時代がそこに到来していた。
「エックス。このイレギュラー事件のことなんだけど」
「…どれどれ。少し見せてみてくれないか」
エックスは…戦うことをやめた。
戦いは何も生まないことをイヤというほど味わったためだ。
何度も考えた末だ。…彼はその判断に後悔はしていない。
エイリアも、同じような苦しみを抱えていたから。 …解るのだ。
でも、一方で思っている部分もある。
エックスが最終的に行き着く答えが本当にこれなのだろうかと。
でも…今それを口にしたところでただの…
「イレギュラー事件が発生したみたいだ。ゼロ、頼むよ」
「解った。エイリア、オペレートを頼むぞ」
「はいはい」
「場所は町の中心部に位置するハイウェイの上。ゼロ、気をつけてね」
合間を見計らい、エックスが話しかける。
「なあエイリア。その場所って確か……」
『俺達に逆らうとは馬鹿なことをしたな
命は一つしかないんだ。大事に使うべきだったな!ハハハハハ』
…思い出した。あの時VAVAに掴まれ、ゼロに助け出されたあのハイウェイだ。
「…懐かしいな」
いつぞやのような蜂の形をした、けれど比べ物にならないほどの強化を施されたヘリをゼロは攻撃する。
3度に渡る戦いにより、崩れたハイウェイを彼は進み…
トンネル内でイレギュラーとの戦いを繰り広げることとなる。
-
道路上へ出る通路にはスイッチを押すと一時的に開く上への壁。
再び閉じる前に駆け上がり、高速道路上を走っていると……
「どいてどいてーーー!」
素っ頓狂な声が夜空に響く。
「おいそこのお前、何をしている!」
ゼロの目に、怪しい少年の姿が映った。
後ろから吹き出るような髪の色は茶。
顔にはX字の傷。黒きボディにホバー用のウィング。
手には銃。
どうやら彼は何かから逃げているようだ。
「ちょっと何してるの、早く逃げないと!掴まっちゃうよ!?」
「お前、一体何を…」
そうゼロが言った瞬間。
巨大なメカニロイドが落下してきた。これがターゲットとなった巨大イレギュラーらしい。
『メガ・スコルピオ』と呼ばれる、蠍型メカニロイドだ。
「全く…何が起ころうとしているんだ…?」
崩れ行く高速道路を渡り歩きながら、メカニロイドとの距離をとる。
安全に戦える場所まで誘導したところで…
「ねぇアンタ、ゼロだよね?」
「…だったらどうする?」
少年は気さくにゼロに話しかける。もっとも、時が時であるためその喋りは却って浮く。
「よかった!ちょっとこれを倒すの手伝ってくれないかな?
僕もほら、イレギュラーハントは結構得意なんだけどさ」
「…関係者なんだろう?……止むを得ないが、後で話は聞かせてもらうぞ」
「あー、うん…解った!僕の名前は『アクセル』。後で全部話すから!」
「説明してもらうからな、アクセル!」
ゼロは新型の転移装置にて、一時安全な場所へ避難させる。
メガスコルピオの攻撃は尾からの射撃に、ハサミでの攻撃。
単純な攻撃方法であるスコルピオはやはりゼロの敵ではない。
だが…。
「どうにも戦いにくい相手だな」
接近戦は難しい相手。
そこで…アクセルに切り替わる。
「任せて!」
アクセルは跳び、ホバー能力でジャンプの頂点位置で浮遊しながら銃を撃つ。
彼が持つ銃『アクセルバレット』が敵の脳天へと弾丸を打ちつける。そして…
「おっとー!」
その爆発から逃げる。
ひとまずはミッションコンプリートのようだ。
「………ハンターベースまで来てもらうぞ、アクセル」
手錠をはめる。
「え?…あの、僕別に逃げるつもりってわけじゃあないんだけど……」
「いいから来い」
アクセルを重要参考人として連行することとなった。
「…レッドアラート?…ああ、あのならず者の集団か」
-
「ヒャーハハハハハハハ!
バレちゃあ、仕方ねえ!!死になァッ、ハンターさんよォ!!」
密林の中、衝動に身を任せ、バンダナに迷彩服の戦士は両手のマシンガンをぶっ放し、
イレギュラーハンターを次々と撃ち殺していく。
素手での格闘、武器を使った近接戦、銃や重火器を用いた遠距離戦。
何でもこなす腕だけは立つ問題児がかつて…一人いた。
それがレッドだった。
だが戦いは終わりを告げる。
それは煙の立ち上る、薄暗い軍港。
「カーネルさんもジェネラル様もハンターにやられちまったしなぁ……この有様じゃあ」
「…ああ。おエライさんもバカやったもんだ。俺もそろそろ見切りをつけようと思ってたトコでな」
黄色い潜水艦をバックに。
レプリシーフォース所属の男とレッドの会話。
「…俺はこれから…そうだな。
腕を生かして、食っていけねぇ奴らをまとめあげられる
何かこう、コトを始めようかね……」
男はレッドの言葉に顔をしかめる。
「…危険な仕事はするなよ?レッド。」
肩で笑ってレッドは返す。
「そうでもしなきゃこの先、生きてらんねぇだろうが。
…お前さんこそこれからどうするつもりなんだい。俺んトコにゃ、来ないか?」
「オレは…落ち着いた仕事がいいな。…パン工場とか、小学校の先生とかさ………。」
男はにへらと笑って、楽しそうにこれからを話す。
半ば呆れたようにして息をつきながら。
「…ハァー…そうかい、そうかい…
……気楽なもんだぜ。…ま、嫌いじゃねえがよ。なんだかんだでお前みたいなのが
これからも案外しぶとく生きてくのかもな…」
「………まぁ、何だ。 …お互い、これから頑張ろうよ」
「ああ、解った。…じゃあな……… …あ。お前名前なんつーんだったか?」
「オイオイ…。
オレの物忘れ激しいのがうつったか?レッド。オレの名前はね…」
「………あー、そうだったそうだった。悪りいな。あァ、覚えとく。」
そんなこんなで、一人の元・レプリフォースの男が作り上げた組織…
『レッドアラート』。
凄腕の鎌使いレッドをリーダーとして、来るものは拒まずの精神で彼に惹かれた者達、
或いは身寄りのない者を引き取ったりなどして様々な経緯で集まった賞金稼ぎたちの集団。
彼らは滅んだ世界の中で、弱体化したハンターに代わり名声をあげていた。
実力者が集まるこの集団はハンターより迅速に、頼みにくい物事、調べづらい物事まで解決してくれるからだ。
アクセルはレッドに拾われた者で、
その実力はレッドアラート内でレッドに次ぐ2番手とされていた。
「ごめん、悪いことしちゃったかな…?」
「『悪いことしちゃったかな…?』」
「あー、ゴメンゴメン!
…でもさ。レッドアラートだって、ちゃんと真面目に仕事してたんだよ」
「してた…?」
「そんな顔しないでってば。
…レッドがさ。ある日…変わっちゃったんだ」
ゼロは手錠をはめたアクセルを連行し、ハンターベース司令室へと移動する。
「お疲れ様ですー、ゼロさんっ!」
オデコの小さな女の子とすれ違いながら。
「お、何か今の子カワイかったね!何て言うの?」
「…話を聞いてもらう気はないようだな」
「わー、ゴメンゴメンってば!」
-
「おかえりなさい、ゼロ。 …その子が参考人?」
エイリアが言う。
「お前達の内輪揉めのせいで、どれだけの被害が出たと思っている!!」
エックスが続ける。
「落ち着け、エックス。
……それで、ゼロ。何か情報はつかめたか」
シグナス。
「…どうやらレッドアラートから逃げてきたのには訳がありそうだ。これから追々聞くこととしよう」
その時。
「!? …何者かに通信がジャックされたわ!」
「よし、繋げろ」
「……?」
「よぉ、イレギュラーハンターの皆さんよ。
俺ぁレッド。…レッドアラートのリーダーを努めさせてもらってるモンだ」
映った姿にその声。アクセルは声をあげる。
「レッド!?」
エックスが言葉を被せる。
「…お前は黙っていた方がいい。」
「なぁ、そちらに一人ガキが来ていやぁしないかな?
俺達の要求はただ一つだ。そのガキ、アクセルを俺らの所に返してもらいたい。
手荒な真似ァしたくないんだ。」
シグナスはアクセルに視線を移す。
「…ごめん、僕はもう…」
シグナスは冷静に彼に語りかける。
「お前達の企みが解らない以上、嫌がっているアクセルをそちらに返すことで何があるかわからん。」
「そうかい。…言うだけ言っては見たものの…すぐに返してもらうことぁできそうにないな。
…そこでだ、ここで俺から少し提案があるんだ。
ハンター対決、ってのはどうかな? 勝ったらアクセルはアンタらにくれてやる。
だが負けたらアクセルはこっちに返してもらう」
エックスが吼える。
「ふざけるな!お前達の戦いのせいに巻き込むんじゃない!」
「現役を引退した腰抜けにゃあ黙っててもらいたいね。
これから8箇所のポイントを指定して、俺らがいる所にアクセルを連れて来てもらおう。
そこで勝負だ。…いいな? 俺らだって負けるわけにゃあいかねえ。腕利きの奴らを集めさせてもらうぜ
じゃあな、イレギュラーハンターさんよ!」
レッドからの通信が切れた。
「………クソッ、また戦いが始まってしまう…なんでこんな無益なことが毎回、毎回…」
頭を悩ませるエックス。エイリアもつられて暗くなる。
「…エックス」
そこにアクセルが声をかける。
「…エックスが言っていることは、解るよ?面倒を起こした僕が言っちゃダメかもだけどさ。
でも…戦わなきゃ解決できないことって…あるんだよ」
幼い言葉は的を得ていた。
「…そう言うなら、お前には覚悟があるんだな?」
ゼロは彼を見下ろす。
「…もちろんさ。 …ダメなんだよ。僕の手でレッドを止めないと。
僕はハンターになりたいんだ。…こんな所で捕まっていられない」
「まだ言っているのか!」
「本気だよ!僕、エックスとゼロに憧れてたんだよ?
レッドアラートに入る前、
僕イレギュラーハンターに入りたかったんだから!」
「……憧れだけで勤まる仕事じゃ、ないんだ。」
エックスの言葉は厳しく、辛く…悲しかった。
「エックス、その辺にしておけ。
…もうアクセルを返して解決する問題でもあるまい。」
「…とにかく、僕はこれからゼロと一緒に行くからね!
絶対見ててよ!」
押収した銃を投げる。
「………いいだろう。…俺を、納得させてみせろ」
「!
ありがとうエックス! よーし!行くよゼロ!」
「元気なことだ…。」
凸凹な身長の二人の戦いが始まる。
-
着いた場所はジャングルの奥地。
「あっついなー、僕さ、こういう蒸し蒸ししたところ、苦手なんだよね」
「なら交代するか?」
嫌味でもなく、ゼロは言う。
「冗談。僕の力をエックスに見せるためにも、やっぱりここは僕が戦わないとね!」
「いいだろう。やってみろ」
アクセルに任せゼロは転送装置で姿を消す。
「どうかな、僕が作った新型転送装置は。」
コンピュータの中から合成音声が発せられる。ゲイトだ
「ああ。ゲイト… 具体的にどこが変わったのか教えてくれるかしら」
「二人交代で戦うことが出来るようになった、と言えば解りやすいかな」
ゲイトが力説する。
「待機中のハンターはこの装置から戦っているハンターの姿を見ることが出来て、
いつでももう一人のハンターの居る地点を目標として転送することが出来る。
緊急時なんかには便利だろうね。」
「後、場所を選ばないから通信妨害があろうともすぐに駆けつけることが可能になったんだよ。
より自由な戦いが可能になるはずだ」
「そういうわけだ。お手並み拝見と行くぞ」
「まっかせときなよ!」
森林を進む。
「ルインズマン、って言われてるね。
遺跡なんかを守護しやすいようにああいう格好してるんだって。耐久力もなかなかのものらしいよ」
「俺に説明しているのか」
彼の武器はアクセルバレット。拳銃である。
「よ、っと」
ルインズマンを倒しながら進むと遺跡を探索中の民間レプリロイドが助けを求めていた。
「大丈夫ー?」
「いやぁ、助かったよ」
簡易転送装置にてハンターベースへと転送していく。
モアイの並ぶ遺跡を進むと。
「結構な崖だねえ」
「俺なら跳び越えられるが」
「跳ぶ、か。それもいいけどそれよりは僕なら…」
ひょいとジャンプ、そのまま背中の翼と足から噴射する。
「ふふふーんと」
ホバー能力。彼の代表的な力の一つである。
「それで……超えたところでまだまだトゲだらけか…嫌な所だねー」
そう言った瞬間。
「む?」
アクセルが何と、トゲの上を平然と動き出したではないか。
「…お前、そんなに強いボディを持っていたのか」
「………」
暫くしてトゲの植物を乗り越え。
「詳しくは後で話すよ…」
-
森の高台の一番上。森を見渡せるそこは太い柱を中心として
円形に石の床が広がっている。
「アクセル、ゼロ。そこが敵との待ち合わせのポイントみたい」
「あれれー?」
そこにはモアイがびっしり。誰もいない。
「…倒せ、ってことだね」
エックスバスターは腕を水平に伸ばさないと十分な効力を成さない。
しかしアクセルバレットは敵の位置をお構いなしに攻撃できるのだ。
「あー、もうしつこいなー……」
モアイは空を飛び、岩の塊をアクセルへ向けて撃ってくる。
ぐるりとローリングして回避しながらどんどんこちらも撃つ。
「…ふー…。」
何とか全て破壊。輪になったモアイは森の茂みへと消えていった。
「強力なエネルギー反応!」
「ウッホーーーウ!」
それを見届けた途端、レッドアラートは姿を現した。
レッドアラート・メンバーの一人ソルジャー・ストンコングだ。
「ストンコングさん!哲人って言われたアンタまでこんなことに協力してるの?どうしちゃったの!」
「ワシは…ただ、リーダーに借りがあるのだよ。アクセル、悪く思わないでくれ」
盾を構えた腕を地面へ叩き付け…がっしりとした体躯の老人は戦いを始める。
「ガイアシールド!」
腕についた岩のような丸盾を飛ばす。
「よっと!!」
ホバーで浮きつつ回避、バレットを連射。
「ホーーーーウ!」
石斧を取り出しアクセルに向けて振り下ろす。
「ぅわわぁっ!」
慌てて距離をとる。
「危なっかしくて見てられん」
ゼロがここで強制交代。
盾に対し剣。ゼロの攻撃が始まる。
「トウ!」
「タァ!」
「セァ!」
大きく踏み込み三段斬り。
「ぬぉぉぅ…!?」
「これは避けられるか…!?」
柱にしがみつき、長い盾を投げる。
すると盾は二つに分かれ……周り込み、柱を中心にゼロを潰しにかかる。
「だが少しばかり距離が足らなかったんじゃないか?」
盾は円形の場所をぐるりと囲うように動くが…足りなかった。
「………!」
「本当にタダの計算ミスか」
跳びあがり空中でセイバーを振るう。
「うぉおおおおお!!!」
ストンコングがその厚い胸板をたたき始める。
「来るか」
突進だ。
円形の足場をぐるりぐるりと走り始める。
その速さは素早く、ゼロといえどそう簡単に追い越せるものではない。が……
その巨体を跳びこせるならそれ以前。飛び越し後ろから斬りつける。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
ストンコングの体から閃光が発し…球状に爆炎が上がり砕け散る。
「盾を飛ばすまでは考えはよかったが…そんなものか。」
-
「………なんだ、お前は!?」
ゼロの前に現れたのはルインズマン。岩で出来たごつごつとした遺跡の守護者。
「……!…!…!!」
ジェスチャーで何かを伝えようとする。
ゼロはお構いなしにセイバーを抜いた…その瞬間。
「待ってってばゼローーーー!」
「…なんだお前か」
そう。彼はアクセルだった。
「えっとね。僕のアクセルバレットの能力の一つなんだけどさ。
僕、実はこうやって変身できるんだ。この、コピーショットで倒した相手にね。」
「………お前、流体金属か何かで出来ているのか」
いつぞやのどこかのダブルを思い出しながら。
「ううん。そんなことはないよ?
でもどうしてか解らないけど、僕は相手のDNAをこうやって手に入れることが出来るようになってたんだよね。
DNAがルインズマンのそれそのものになるから、僕は森の中を自由に、トゲを気にせず歩けるようになった、ってわけ。
…普通に歩いたら痛いもんね。」
「へぇ…面白い能力だねー」
「わわぁ! 君いたの!?」
おデコの目立つあの子が後ろにいた。
「あれ?こうやって会うのは初めてだったっけアクセルー。」
「いっつの間に名前まで…。 この前の聞こえてた?」
「ゼロさんに連行されてる時ー? 何か話してたかな?」
どうやら聞こえてはいなかったようだ。
「いや、いいよいいよ。それじゃ僕これからミッションに向かうから」
「あ、少し待ってて。エイリアさん今技術室で休憩してるところだからー。」
続いてのミッションは海上。
レッドアラートはレプリシーフォースが放棄したバトルシップの多数を自分のものとしていた。
「経験を積んでからの方がよかったんじゃないのか?ここは相手の巣の中だぞ」
「気にしない気にしない。 さ、行こうよゼロ」
いきなり船に入るなり、爆弾を二人に向かい投げつけるレッドアラート隊員達。
「ターゲットのいる船はこの船じゃないわ、救助者だけ助けて後は無視して先へ進んで!」
「了解ー」
救助者を救出、次の船へと跳び移ろうとすると…
鳥型の大型メカニロイドが行く手を阻む。台の上に乗っている…
よく見るとこれは砲台の一種であり、敵はぐるりぐるりと回転しながら甲板を高速で滑っているようだ。
「不恰好な敵だな」
「これ、ゼロには向かない敵じゃないのー?」
アクセルの真価が発揮される。
銃の照準を敵へと向け、集中砲火。だが…
「わわっと…!」
さすがに撃っている間に動くことは出来ないらしい。
攻撃と回避の両立は難しいようだ。
…敵が壊れる。
「よくやった。次へ行くぞ」
「最短ルートで行くならその次の船にターゲットがいるわ。その船も無視して」
敵を倒しながら先へと進む。
「………うわぁ」
3本の首が海から顔を出し、船を覆う。3体の海竜型メカニロイドのようだ。
「…こういうデカイのはゼロにお任せ、っと。交代!」
ゼロにより、炎を吐き出す3本の動かぬ首が次々に刻まれていく。
「さ、次だね次ー!」
「アクセル、着地に注意して!!」
降り立った先は…なんとオイルの上。
「!?」
「アクセル、すぐにホバーを!」
オイルの上からホバーで浮く。その瞬間…船に炎が放たれた。
「あっぶないなー……!!」
燃え盛る船上。…でも船そのものには燃え移らない様子。ここは…出来が違う。
「バトルシップの母艦みたいね。こんなものを燃やすなんて…
アクセル、そこにブリッジが見えるわね?」
「…あれかな。」
「あれは巨大なメカニロイドになっていて、あそこにターゲットが乗り込んでいるの。
そこを目指す…んだけど、」
「!」
コンテナとコンテナに挟まれたエリアがせり上がり、武装を満載した壁に変化する。
「まずはそれを破壊して」
-
これは僕の出番だ。そう思ったアクセルだが…
「代われ」
強制交代、ゼロが壁へと突進…壁をセイバーでガリガリと削り続ける。
「早っ…!?」
「ゼロらしいわね…」
壁は遠距離に攻撃をするが、セイバーでその前に破壊すればまん前にいるのが最も安全。
攻撃を開始する前に武装は一気に削られ…壁は斬り崩されたのだった。
「行くぞ」
その先で待っていたのは管制室。
腕が生え、頭が飛び出、人型メカニロイドの上半身の形を取る。バルカン砲が360度に配置され…ぐるぐると回転し始める。
「イルミナ級にエックス垂唾……」
戦闘が始まる。まずはゼロに交代、下部の回転バルカンを次々に潰していく。
そしてアクセルに交代、空へ浮きバレットを乱射し続ける。
「はっはー!」
顔が変化。どうやら敵は砲弾をぶっ放すつもりらしい。
「食らえ!」
ゼロはセイバーでこれを跳ね返し管制室に当て…爆発させる。
続けてアクセルに再び交代、銃弾を当て続け…
「やったわ!!」
バトルシップが崩壊。…海の中へ消えていく……。
「空のコンテナがあっちにあるわ!それに乗って!」
間一髪脱出。瓦礫を乗り継いでいった所…。
「…出て来なよ」
渦潮から姿を現したのはレッドアラートのメンバー・スプラッシュ・ウオフライだ。
「よぉ、裏切り者」
「やぁ、卑怯者。」
嫌よ嫌よも何とやら…というレベルではない。
お互いがお互いを元から機会があれば殺すつもりだったのだ。
「いいチャンスが巡ってきて、こちとらお前に感謝してるくらいだぜぇ!!」
「そりゃどーも。」
「ひぇひぇひぇ!しっかしお前らバカだなぁ!わざわざ…」
「俺が戦いやすい地形にしてくれるなんてよ!!」
こっちが不利になっても勝てないことを解らせてやるんだよ。
…そう思いながらアクセルは笑う。
戦いが始まるなり、ウオフライは海水へ潜る。
「あらよー!」
「ゼロ。ここは僕に任せといてよね、こんな奴はすぐに片付けるから、さ」
「ひゃっははは!」
ウオフライは勢いよく跳び出ると手に持っていた薙刀・Dグレイブでアクセルを連続で斬りつけようとする。
「よっと。おっと…甘い甘い!」
「てめぇ!」
単調なその動きをあざ笑い、距離をとって弾丸を放つ。
「そのホッソい体、穴だらけにしてやるよ♪」
「生意気言ってんじゃねぇ!!」
彼の必殺武器、スプラッシュレーザーが口から放たれる。
圧縮された水が貫通力を持ち、敵を貫くのだ。
「うわぁっと、ばっちぃ!!」
口から放たれた水を間一髪で避け、また銃を放つ。
「テメェにはそれで十分さ!」
グルグルと薙刀を回転させて歩く。
「ウザい攻撃するねぇ」
攻撃は弾き追いかけてくる癖に動きは遅い。別の瓦礫へ跳び移り……
「最後だよ!」
バレットに力を込め……巨大な弾が放たれる。
「チャージショットか!?」
ゼロは言う。だが…違う。赤い弾がウオフライに激突、貫通。大きな衝撃で吹き飛ばし……
「ちきっしょおおお!!」
貫かれたウオフライを海へと帰して行った。
アクセルの手元に海から何かが取り出される。
「よっと♪」
手で握りつぶす。…これで終了らしい。
「今のは何だ」
「ああ、DNAデータだよ。武器生成に必要なのはこの後コイツの体から出るでしょ?」
「……コピーするのに必要な弾というのはそれか」
「そ、コピーショットって言うんだ。覚えといてね」
-
「…しかしお前もアレだな、ゼロ。
一番最初に女の子と仲良くなった割にエックスにもアクセルにも先を越されるなんてなぁ」
「……何のことだ。」
「いや、最初はお前に凄い嫉妬してたものだけど、今となってはなんかな……ま、頑張ろうや」
ダグラスは技術室へ去っていった。
ふと目をやると、ベンチの上で同じ袋のおやつをアクセルとおデコの目立つ娘が二人で一緒に食べている。
「あー、ヘホー!(あー、ゼロー!)」
「食べながら喋っちゃダメでしょアクセルー。」
「楽しそうで何よりだ。」
「ああ。ごめんごめん、僕自身のこと話さなきゃならないんだっけ?」
「…いや、別に後でも構わんが。」
「いやいや。やっぱ今ここで話しておくよ」
「ポップコーンを口に入れながら話さないことだな」
アクセルが話し始める。
「変身能力がある、そこまでは話したよね」
「コピーショットを使うらしいな」
「そ。それでね 僕はその能力を持っているからレッドに追われているみたいなんだ」
「…やはり組織でもお前だけなのか、その力を持っているのは」
「他に見たことないからね、そんな能力持ったレプリロイド。」
…合点が行った。
「けど…僕の能力もそんなに万能じゃあないんだ。」
「…というと」
「限度があるみたいなんだ。背丈が僕と近いレプリロイドじゃないと難しいみたい。
…ああ。とはいっても、エックスとか、ここにいるキミとかは大丈夫。
ゼロになると…難しいけど行けるんじゃないかな?」
「広いじゃないか」
「あくまで僕と同じく人間に近い形であることが一つの目安かなぁ。
例えば…」
イレギュラーハンターの功績として、過去ハンターが撃破したイレギュラー達が並べられている。
「この、バイオレン、とか アジール、とか。 シグマとか。そういう感じの奴は多分無理。
レッドアラートのみんなにもなってみようとしたけど…無理だった。」
「…どういう理屈だろうな」
「多分、変身に凄く力が要る。正確には『今の僕じゃ無理』なのかも」
「…ほら、アクセル、ゼロ。次のミッションが始まるわよ。…急いで!」
話はここまでだった。ミッションが…始まる。
「お姉さん、エイリアっていったっけ?何をそんなに急いでるのさ。」
「次のミッションは…緊急なのよ。」
次なるミッションはすぐ近く。
高速道路内に作られた、レーシングマシン用のサーキット。
使うのは勿論、ライドチェイサーだ。
「そのライドチェイサーは使いづらいから気をつけてね、アクセル。」
「お、新型かなー?凄く乗り心地がいいよ」
「…アクセルにやらせて大丈夫か?」
エックスが言う。
「うーん。見てみるしかないわね…」
「具体的に何をすればいい」
ゼロは聞く。
「見えないかしら。サーキット上に爆弾が沢山仕掛けられているの。
それを一つ残らず回収して欲しいのね。…敵の妨害を潜り抜けた上で。」
「そんなの簡単だよー!」
ライドチェイサーは好みが分かれるとされる。
アーマーはごつごつとしていて、好むのはVAVAやエックスくらいのものだが。
エックスが愛用するは昔ながらの加速力に優れた「チェバル」
ゼロが愛用する、攻撃性に優れた「アディオン」
女性陣はもっと違ったものを好むらしいのだがそれは置いておいて。
…そう。このライドチェイサーは正に…彼向きと言えた。
「ひゃっほーう!」
チェイサーはノロリノロリと走り始める。
爆弾を回収し、敵を蹴散らしながら進み始める。
少し、速くなり始める。横転したトラックを横目に、もっとスピードがついていく。
更に速くなる。速度を落とす床に一瞬だけ触れて爆弾を回収、そして…
-
いつしか、乗りこなすのが難しいまでに加速し続けたチェイサーは手がつけられない速度に達していた。
「1週で全て取りつくすつもりなの!?」
何回も何回も巡れば時間内には取りきれるだろう。そういう推算だった。
だが…何回も、ではない。1ラップでアクセルは、全ての爆弾を手に入れようとしていた。
「道が途切れてるぞ!」
「そんなの知らないねっ!」
ジャンプ台から豪快に飛ぶ。着地してすぐにボディを急に曲げ爆弾を2個回収。
そして…
「終わりぃー!」
あっという間のタイムで彼はサーキットから安全を取り戻したのだった。
後は…サーキット上部の『彼』を倒すだけ。
「ブヒブヒーー!オラオラー!どけどけぇ!このイノブスキー様に跳ねられてぇかー!」
個性的な男が現れた。
体ごとバイクへと変形するそのレプリロイドは…ヘルライド・イノブスキー。
「何だ。ロードアタッカーズの残党か」
ハイウェイで暴走していた、エックスに撃たれたレプリロイドの総称だ。
「ああぁん!?て、テメェ今なんつった!!」
「…ロードライダーズの方か?」
砂漠でエックスのチェバルを劣化チェバルで暴走していた暴走族だ。
「テンメェェェェ!上等だぁオイ! タイマンで勝負しろやぁ!」
「だそうだ」
「じゃあ僕下でチェイサーに乗ってるね、アレ楽しいー!」
戦いは始まった。
「ブヒブヒー!続けぇ続けぇ!続けぇ!続けぇ!」
戦いの舞台は金網の檻。
彼の特殊武器・ムービングホイールが彼のボディ後部から射出され…
走る彼に続いていく。
そして放つ。
「全く騒がしい奴だ…」
武器をウオフライのDグレイブに持ち替え…
「水烈閃」
勢いよくグレイブを突き出す。
「ぶひぇぇええええ!!」
イノブスキーの体がグッサリと刺される。
「口ほどにもないな」
そのまま跳びあがり、上から一撃。そのまま横へ縦へと払い続ける。
それは巨体を軽々と持ち上げていく。
「………オイ…マジやべえ…!」
「お前がこの程度で弱音を吐くほうに俺は驚くがな」
「テメェ……!」
暴走を始める。金網の周りを高速で回転し続ける。
「タイマンか…」
見ると周りには爆弾を抱えたイノブスキーの部下が沢山。
恐らくは、イノブスキーの攻撃で壁に激突させられたゼロに向かい、爆弾を一斉に投げ込むつもりなのだろう。
「食らわなければいい話だ。…来い。決着をつけてやる」
「ブヒヒヒヒヒヒ!!」
挑発に乗ったイノブスキーは変形、ゼロへと向かってくる。
「来い」
持ち替え、セイバーを構える。そして…
こんな相手には勿体無い技…そう思いながらも放つ。
単なるガードではない。
イノブスキーの体が当たった瞬間、ゼロはそれを一直線に払った。
ゼロの側へ向かうイノブスキーの体に、払われる剣が食い込み…裂く。
一刀両断。早くも今回最強の技がここで放たれる。
「獄門剣」
ゼロはセイバーを戻した。
「ねえゼロゼロ! このチェイサー、僕がもらっちゃっていい?」
「む…」
「ああ。これね、実はアクセル用に作ったもので、実は名前も決められてないのよ。」
「私の好みじゃあないんですけどねー…」
「キミが作ったの!?」
おデコの娘が作ったとされるその名無しのチェイサー。…アクセルはきっと、これを大事にし続けるだろう。
その証拠にそれ以後、彼は危険な任務にそれを乗ってきてはいない。
-
「あれ?迎えに来てくれたんだ!ごめーん。 あ、それじゃ私行って来ますねー!」
紫色の髪の少女に連れられ、オペレーター養成学校へと登校していくおデコの女の子。
「行ってらっしゃーい。」
エイリアが見送りに出ていた。
「へぇ…制服かぁ なかなかこういうのも…」
ハンターベース入り口にアクセルはいた。
「……健全ねぇ」
「な、何だよ」
「………記憶がない?」
ゼロが来るまでの間はエックスが話を聞く。
「うん。レッドに拾われる以前の記憶が…僕にはないんだ。名前だけは覚えてたんだけど。
一体僕がどうして変身能力を持っているのか…そこも解らない。」
「………記憶喪失、か」
誰かがデータを抜き出したか、はたまた製造されてすぐに放り出されたか。
「そうだ…レッドが突然変わった、って前言ったよね」
「そうだったな」
背もたれに体を預けながら。
「…いきなりのことだから、少し驚いちゃったんだよ
『お前の持っているDNAデータを俺に渡せ』って…。」
「………DNAデータを。」
「うん …次の日から、僕以外の何人かのハンターがメキメキ強くなり始めちゃって。
以前勝ってた相手に全く勝てなくなったんだよ…」
エックスが顔をしかめる。
「……そんなお前がこれから大丈夫なのか?」
「待って待って。最初こそ戸惑ったけど、レッドを除いたら全く勝てなくなったのは1人にだけだよ
他は何とか勝てる相手だと思うし…僕だって強くなってるって!」
「…信じよう」
そういったところで次なるミッションのときがやってきた。
「待たせたな、アクセル」
ゼロがやってきたのだ。
まずは転送。
「さてさて!次は何処で誰と戦えばいいのかな」
エイリアの声が聞こえてくる。
「今から行く先はコンビナート。……レッドアラートが火をつけている。…正直、危険過ぎる
辺りは文字通り火の海。
「な、何だよコレ…!?」
タンクの上で、油を含んだ炎に照らされる男の顔があった。
そう…レッドだ。
「さぁ来いよアクセル… お前がどこまで強くなったか、ここで見てやるよ」
大型人型メカニロイドをアクセルが遠距離から撃つ。
火炎放射を備えたものはゼロが近距離で対処する。
「…ゼロ。ちょっと僕に代わって。そこの飛行レプリロイドになる」
「…任せた」
空の上から様子を見る。
「クソッ、何だよコレ…!!」
「見渡す限り爆弾だらけでしょう…?」
「それだけじゃないよ!救助するべき民間レプリロイドが沢山残ってるじゃん!…爆弾の前に!」
「動けねえのさ……」
分析のために呼ばれたダグラスの声。続けてゲイト。
「確かに。その爆弾は…移動する物体を感知して作動するもののようだね…
待ち合わせ箇所である施設内部への唯一の入り口に行くためには……」
「爆弾をいくつも解除しなきゃならなくなるの!?」
「敵もその程度の爆弾じゃ死なないことは見通してるよ。 …君達がね」
「何て野郎だ…」
「…クソッ!飛んでいこうにも時間が足りなかった!!」
変身解除。1つ目の爆弾が作動する。
「助けてくれーーー!お願いだぁあ!」
「火が、火がぁ!」
「急がなきゃ!!」
跳びまわり、爆弾を回収。
「次の爆弾が動き始めたぞぉ!」
「あああ!!」
「次はあっちよアクセル!」
「ええい…!!」
「次は遠くみたいだ、急ぐんだゼロ」
「チィッ!」
馬車馬のように駈けずり回り、爆弾を回収、人々を助けてゆく。
ダメージは…もう気にしている暇などない。
「おー、おお…いい動きしやがる…。」
-
そして爆弾は全解除。
コンビナート内部へ戦いはもつれ込む。
「敵の場所…どこか解る?」
「ごめ……さい 熱…影響かし… 通信…でき……の!」
通信機器が動かなくなった。
「…やっばいよコレ……」
火の海に頼りなく浮かぶ足場を乗り継ぎ、救助者を助け先へ、先へ。
「そこの人!」
「え?あぁああ!?」
見ると背後には竜のイレギュラー。噛まれる寸前でタッチ、転送装置で転送。
「あそこ、行き場所が全くないよ!?」
「クソッ……アクセル、頼んだぞ」
飛行レプリロイドに変身し移動、救出。
そんなこんなで救出活動は難航しつつ、死傷者は出さずにカプセルの前までやってきた。
「…こ、この先だね」
「ぜぇ…はぁ…はぁ…げほっ」
息を切らしたゼロとアクセル以上に苦しんでいるレッドアラートメンバー。
「ハイエナード…!」
フレイム・ハイエナードだった。
「アクセルゥ……お前…お前が俺を殺しに来たのかぁ…!?」
「アンタらが待ってたんじゃないの!」
「…苦しい、俺、もう苦しいよ…暑い…暑い…!!あつい……熱い…熱いぃいい…熱い…熱い…!!熱い!!
どうすれば治る… どうすれば… が、ががが…がああああがぁぁぁぁぁ!!!!」
「!?」
イレギュラー化を発症。
それも自我を崩壊させるほどの重度のものだ。
彼は突如として跳びあがり…炎の海を歩く、全長20mはあろうかというガゼル型メカニロイドへと跳び移る。
「とりあえず奴を倒すぞ!」
「うん…」
アクセルはガゼルの関節に向かいバレットを乱射。
ガゼルの動きを止めるとともに、しゃがませる。…これなら登れる。
「ゼロ!」
交代し、二段ジャンプを駆使しガゼルの背へ。
「助けてくれええええええええええ!!」
「来るよゼロ!ハイエナードの能力は…」
叫んだ後…ハイエナードは…増えた。
「分身だ!」
ゼロの周りをグルグルと高速回転し、炎を吐き出す。
「サークルブレイズは着弾すると燃え広がるから気をつけて!」
「炎系ならさっさと言え」
Dグレイブを手にする。水烈閃の構えだ。
「どれが本体だ…?」
敵の攻撃を避けながら小刻みに斬っていると…。
「ギャォオオオ!」
「これか…」
感触があった。後はコレを追いながら…
「水烈閃!!」
グレイブを真っ直ぐに突き出し突き刺す
炎を抑えるこの技で攻撃を加え続けるのみ。
だが相手とて炎を吐くだけではない。
時折り突進し、位置を入れ替え、シャッフルする。
「…何なんだコイツは…!」
本体の位置を把握し…
「水烈閃!」
突く。斬る。この連続でなんとか……
「空中まではハイエナードは追わない。解るよね」
交代。
「交差した時を見計らい…撃つのさ!」
跳びあがり、ホバーで空中からスプラッシュレーザーを真下へ見舞う。
「ぅ…ぉぉおおおあ…あぁぁぁぁあああああああ…冷てぇぇぇぇぇぇ!!!」
脳天から股下までを高圧水流で貫かれ、風通しもよくなり二重に冷たい。
「……………」
そのままガゼルに振り落とされ…炎の海の中へ。
もう、熱さを感じることもなかろう。
「………イレギュラーになっちゃったのかな、みんな」
「ウイルス反応は見られなかったのだがな」
一方、その頃。
「……………。」
青き彼は、悩み続けていた。
-
「イレギュラーハンター。
世界を滅ぼしても尚人間に尻尾を振る愚かなる生き物… そうは思わんかね」
「…イレギュラーハンターは確かに気に食わないが…
これといって俺から何かしようって気はねぇな …アンタ誰だ。」
「私か? お前達を強くするために現れた者だよ、レッドアラート。」
それが数ヶ月前のことだった。
「ふぁーあ…眠いなぁ」
今日は休日。オデコの娘は学校が休みで今起きたばかりだった。
「エイリアさぁん…おはようございますー。」
ダグラスを親代わりとし、毎日ハンターベースを家にした生活。
身寄りのないアクセルもハンターベースに住まうこととなっている。
「…あれ?エイリアさん、シグナス総監。何か静かですねぇ」
「あら、おはよう♪」
「どうしたんですか?エイリアさん。」
次なるミッションはトンネルベース。
「ライドアーマーって僕初めて乗るんだよね!」
「…やめておいた方がいいかも知れんぞ、今回は最新式ライドアーマーらしいからな。」
ライドアーマー・ゴウデン。
遠距離攻撃に特化したショット能力の高いライドアーマーだ。
「やっほぅ!」
乗り込み、壁を突き崩し、敵を撃ち殺しながら先へと進んでいく。
時には踏み潰したりもしながら。
「随分荒々しい使い方だな」
「へーきへーき。結構これ丈夫じゃない!」
毒ガスが床に立ち込めるフロアでは壁を破壊して更に先へ。
「おお!? ライドアーマーが沢山だね。こりゃ楽しいや!」
ライドアーマー・プロトライドに乗った敵たちが大勢押しかける。
「さぁ、いくらでも相手しちゃうよー!」
そう言った次の瞬間。
「あれ?動かな…あれ?」
「だから言ったんだ…!」
ライドアーマーが爆発。一気に使い物にならなくなってしまった。
「………えっと」
ライドアーマーは大勢押しかけてくる。
「お前、相手できるのか」
「まっずいなー…ぜ、ゼロ…お願いできる?」
「喋ってる暇もないみたいだな」
敵のパンチをかわすも、他のライドアーマーが攻撃をする。
「ちょっ…」
身動きが取れなくピンチ…と思われたその時。
「!?」
突如として辺り一帯が超高温に包まれる。
逃げ場のない死の炎が辺りを包み、敵ライドアーマーは動力炉を一気に暴走させられ爆発。
敵ライドアーマーが爆風避けとなり、アクセルは1mほど吹き飛ばされるだけで済んだ。
「…大丈夫か。」
そう、今の攻撃はギガクラッシュ。
…エイリアの上機嫌の理由がやってきた。
「……エックス!!」
-
「どう?久々の現場は」
「…正直、あまり戦い心地はよくないかな。」
「エックス!本当に戦ってくれるのかい!?」
「……ずっと考えてたんだ。武器を持って生まれてきた事の意味って奴を…ね」
「…でも、考えるよりまず…コンビナートで逃げ惑ったり動けずにいるレプリロイド達を見て…
思ったんだ。今こうやって見てるのは…いいことじゃない」
後ろめたさは今でもある。けれど…今は戦うときなのだ。エイリアが声をかける。
「……辛いかもしれないけど。…嫌味かも知れないけど。…嫌われるかも知れないけど。
………やっぱりね、」
エイリアの口からこの一言が発せられる。
「…やっぱり貴方には現場が似合うのよ。…私は、そう思う。」
「確かに…その言葉は傷つくね」
「…でもライドアーマーも似合うと思うわ。
さ、私に嫌なこと言われたストレスを発散しちゃって!」
ゼロは特定の人物のため戦う。
アクセルは自分のために戦う。
『他人が傷つくのは耐えられないでしょう? 自分に対する痛みは耐えても…。』
彼を突き動かしたのは青きロボットが持ち続ける真理だった。
それは否定のしようがない。…例えそれを気付かせたのが…善でも、悪でも。
「いっけぇ!!」
ライドアーマー・ライデンⅡ.
4本脚で支えられたボディから繰り出されるドリルが強力な近距離戦闘向けライドアーマーだ。
トンネルベース中心部のライドアーマー戦でエックスは鬼神のごとき動きを見せた。
敵をドリルで貫き穴を広げ、敵の体にドリルを突き刺し突進し、
時には大きく跳んで地盤を破壊、巨大な穴を作り出す。
ライデンⅡは正に豪快な戦い方をしたい彼の欲求に答えた形のライドアーマーと言えた。
だが、自分に似合ったライドアーマーに乗っていたのは何もエックスだけではない。
「キャーッキャキャキャ!壊れろ壊れろー!わーいわーい!!」
レッドアラートメンバーの一人。少年レプリロイド バニシング・ガンガルンである。
「やめろ!トンネルベースを破壊するんじゃない!」
「何をー!? 生意気だな。ライドアーマーでボクと勝負するっての?身の程知らずな大人だねー!」
カンガルー型巨大ライドアーマーはアームでジャブを行う。戦闘開始だ。
ドリルと拳。二つのライドアーマーのアームが激突する。
「わぁああ!?」
「うぐっ!!」
跳びあがり、踏み潰す爆破攻撃を行う。
ガンガルンのライドアーマーはジャンプで回避、そのままダッシュパンチへとつなげる。
「くそっ!」
「ほらほらー、かかって来なよー」
その後もボディとボディがぶつかり合い火花を散らす。そして…
「やったなぁあ!」
ガンガルンのライドアーマーが爆発。中からガンガルン本人が現れる。
「ガンガルン自体も強い格闘家だよ、気をつけて!」
「俺も今降りて戦うよ」
ライドアーマーを飛び降り、戦いがスタートする。
「ちっち、ちっち、ちっち…」
ステップを踏み、部屋の中を跳びまわるガンガルン。
「三角キーーーック!」
脚に炎を巻きつけ小さな体で重いキックを放ってくる。
「速い…」
これを回避、チャージショットを放つ。
「食らえ!」
新たなるチャージショットは3発同時。巨大なプラズマチャージショット一つに、
2つの小さなエネルギー弾が付属する形である。
「わぁ!?わわ!」
追尾攻撃は強い。
「行くぞ」
跳びあがり、再びチャージショット。
「わぁ…!」
相手と一定の距離をとっていればガンガルンの動きには対応できる。
こちらの方が速いのだから。
「舐めるなよ!!」
今度は近づきアッパー。これを回避してまた一撃。
「ううう…!」
「エクスプローーージョン!!」
「何だその名前!?」
腕から気を発し、一直線に爆発させる。技の名前としては珍しいものだ。
敵との位置をずらし回避、そしてそのまま…
「三角キーーッ」
「トドメだ!!」
またもチャージショット。敵を貫いていく。
「わぁああん…!」
幼き少年レプリロイドは戦いの末…敗れていった。
そして、ハンターベースに帰ってきた彼の背中に……あの声がかかる。
「三角キーーーック!」
「ガンガルンか!?」
振り向きバスターを向けた。だが…そこには。
「……ご、ごめん」
引きつり笑いのまま両手を挙げるエイリアの姿が。
「も、物真似してみただけよ……」
-
「なっ…………アンタ一体、何をしたんだ!?」
「見ての通りだ…DNAデータの正しい使い方って奴だレッドよ…。」
モニターに映るは今までにない、レッドアラートメンバーの戦闘性能。
「………。」
「どうだ?これでお前の部下達も世界に誇れる働きっぷりが出来るようになっただろう」
「……すまねぇな。恩に着るぜ」
「……日本って女の子多くないかしら?」
救助者レプリロイドのリストは…女性ばかり。
「タートロイドに向かわせたイナミテンプルも日本だったね。
だが…気のせいじゃないかな?統計はあまり詳しくはないのだが」
次の場所は日本のラジオタワー。
らせん状のその塔の屋上でレッドアラートが電波をジャックしているらしい。
「アクセル、鼻の下伸ばさないようにね」
「ここにいるレッドアラートのメンバーも女の子ならよかったのになー…
まぁ、いないけどさ…」
ラジオ塔は巨大メカニロイドにより警備されていた。
ヤドカリ型のそのメカニロイドは、ドリルをらせん状の床に突き刺し、エックスらを殺そうとしてくる。
「救助者達を巻き込まないように迅速に助け出さないと…」
かといって先に回りこまれる可能性もある。その「先」に救助者がいたら目も当てられない。
螺旋通路に整列して救助を待つ女性達を次々と助けていく。
瓦礫の上を伝い、中層へ。
ここは展望台であり、円形に通路が走っている。
「ここでメカニロイドを倒しましょう!」
口からのビームと同時にチャージショットを敵の口に叩き込む。
「よっと!」
アクセルに交代、敵の腕を攻撃し、腕をまたホバーで避けて口へ集中砲火。
「倒したわ!…うん。下層へ落下していったけど被害はないみたい」
「上へ急ごう」
上ではバットンボーンなどがはびこっていた。
「DNAデータをコピーできる敵もいるみたいだね…」
敵を倒し、螺旋階段を登りずっと、ずっと上へ。
そして……
「アクセル。ここから先は俺がやる」
「ターゲットの位置を確認…」
エックスの顔の角度を調整。
「そう。その方向に飛び出てまっすぐ走って!
すぐにレッドアラートがいるから取り押さえるの!」
3…2…1…。
「動くな!」
瓦礫から飛び出てすぐにダッシュ、ソレを追い詰めた。
「なななな、何するダスかぁ!?」
「あっちゃー、コイツだったんだ…!」
まんまると太ったシルエットのレプリロイドが姿を表す。
トルネード・デボニオン。レッドアラートきってのお笑い芸人だ。
「自分のコントを1発ギャグを世界に流すつもりだよ、コイツ…」
「エックスさんダスかぁ……?
オイラを…オイラを今のうちに倒して欲しいんダス…」
「…? どうしたんだ」
「だ、段々…頭が痛くなってきたダスよ…段々オイラがオイラじゃなくなっていくようで……うぁぁぁう!!」
遅かった。
「同じだよ…ハイエナードと」
「…今楽にしてやるからな…。」
デボニオンが体を高速回転させ始める。
「グルグルンダス!!」
ボルトトルネード。強力な磁場を発生させる雷の嵐だ。
「通信が使えなくなった…!」
デボニオンは太っているのはシルエットのみ。彼の本体は極度に細いのである。
それ以外は表皮型のシールドであり…
攻撃時には展開される。
「ある意味、ストンコングよりシールドを活用するかもしれない。気をつけて!」
「寒かったダスかぁ……?」
渾身のギャグ、ワイパーを回避してのエックスのチャージショットがデボニオンの細い体をポッキリと折る。
「………。」
その死に方、その言葉は…目に染みた。
-
「……しかし驚いたな。これがDNAデータか…センセイ。」
「クックク…満足してくれて何よりだ…。
DNAデータは使えば使うだけ効果をあげるもの…更なる力を手に入れたいかね?」
センセイと呼ばれた彼は口元を歪め提案する。
「ん? …ああ。このままでも仕事にゃ何の問題もないだろうよ…。
悪いが俺らはこれ以上の力は必要ねえな…」
その言葉にこめかみが動く。
「…ならんぞレッド。…奴らを…イレギュラーハンターを倒せると思っているのか、その程度の力で…」
「何の話だ?」
「お前達は更なる力を手に入れるべきなのだよ」
「……オイ…アンタ、俺らを謀って何をしようってんだ?」
「…それはだなぁ…」
「いやぁそれでさそれでさー。エックスの部屋って案外…」
「ええぇえ!?それ意外だよーアクセル…」
長い、長い間談笑し続けるアクセルとおデコの娘の姿。
…彼女に話し続ける彼は、どこか必死ささえ見て取れる。
「……………次のミッションのこと、聞かれちゃってたみたいね」
大事な戦いなのはわかっている。
レッドとの戦いに次ぐ重要度であると言っていい。彼から聞いた話の通りならば。
次の日。話し疲れ寝てしまったと思われた彼は、毛布の中で目を覚ます。
「…………。」
『一人でも出来るって所、エックスに見せて安心させてあげて。 エイリア』
書置きだった。
目の前には…一丁だったはずのアクセルバレットが二丁。
次の行を読む。
『アクセルへ この銃は、正規ハンターになったら、きっと返してね? がんばー!』
おデコの娘かららしい。ドリンクもつけられている。
「………」
ごくりと飲む。アクセルバレットをくるりと回し、ホルスターに収める。
『早起きして、お弁当作ってきたんだ』
「…………。」
ピンク色の包みがある。ドリンクを片手にお弁当箱の、その名前を発見する…
『ZERO』
「ぶほっ、ごほっ、げほっ…!!!」
通りでこの行は字体が違うと思った。
飲み物を喉に詰まらせたアクセルは、ゼロからのお弁当を食してダグラスの飛行機へと向かう。
…バツの字の傷を、指で押さえながら。
「行くよ、カラスティング」
戦闘機が無数に連なった空の上。彼は飛行機を乗り継いでいかねばならない。
「救助者は昨日エックスが助けてある! 空母まで一直線に進んでいけ!」
ダグラスとサインをかわし、アクセルは……跳んだ。
「いっくぞー!」
高度4000mでアクセルバレットが火を吹く。
飛行機から飛び降りては攻撃、撃ち落とし別の飛行機へ。飛行機の動きに乗っかり撃ち落としまた別の飛行機へ。
どんどん、危険な道を乗り継いでいく。
「大分飛行機は落としたかな…?」
そうしていった結果…巨大な飛行船へとたどり着く。空母だ。
「…鳥!?」
メカニロイドが竜巻を起こす。砲台がビームを吹く。アクセルは銃で撃ち抜き、更に先へと進む。
待っていたのはレプリロイド。コピーショットで変身、気付かれないようにどんどん奥へ。
非常用回復アイテムも入手、倉庫などのある船体後ろへ移動し……
敵を倒す。ハッチを蹴破り…出た先は。
「…………来たな、アクセル」
「やぁ、カラスティング。」
アクセルのバツ字の傷をつけた張本人。彼の親友にしてライバルだった青年…カラスティング。
Vハンガーと呼ばれる双剣の使い手だ。
「どうだ、イレギュラーハンターに行って何か見つけたものはあったか」
「……さあ。どうだろうね あるとしたら、これから見ることになるんじゃないかな」
同時に取り出し両手でクロス。二丁アクセルバレットを装備する。
「格好ばかりつけやがって」
巻き起こる風。黒き翼が空を翔けた。
-
「ウィンドカッター!!」
Vハンガーから放つ真空波が甲板に傷をつける。
「…!」
ダブルバレットを撃ち出す。
更に速まった連射速度でカラスティングを攻撃する。
「その程度で撃ち落せると思ってやいないだろうな!」
甲板に降り…凄まじい速度でダッシュ。剣を交差させ斬る。
「その手には…また乗らない!」
とっさに回避、
「やぁああ!!」
コピーショットを放つ。
「っく」
「お前の弱点はその隙の多い動きだ!」
地を蹴り宙を舞う。その翼もまた剣のように使い、アクセルを斬り滑空する。
「それくらいのハンデくらい必要じゃないの?」
「何……!」
「情けない声だ…」
剣を交差させ衝撃波を放つ。
「ちょっとおおげさにしてみただけじゃん」
両方の翼にそれぞれ弾丸を撃ち込む。
「ならそんな反応は…もう無しだ」
カラスティングはVハンガーの両方を投げる。
「双燕舞!」
「!?」
二つの刃が空を舞い、微妙な風向きにより変化しアクセルを斬る。
「くそっ…!!」
1発目は腹に。2発目は背中に。
「どうだい、風のブーメランは!」
ぐるりと後方回転、同時に剣を交差させ衝撃波を作り出す。
「うぁぁぁぁあ!!」
速い動きを捉えられるような技は現在持ち合わせていない。
ならば……。
「コピーショット!」
「…遅い」
「ボルトトルネード!!」
アクセルを中心に、電撃を帯びた竜巻が発生、カラスティングを包んで上昇していく。
風を名乗る以上、きっとこの攻撃が通用するはず…!だが。
「…中々、やるな」
弱点ではなかった。
遠くへ飛び、またもウィンドカッターの嵐。
アクセルは構わず銃を撃ち込む。
「くっそぉ…!!」
戦いはアクセルが押している。あと1つほど明らかになれば…勝てる。
「行くぞおおおおお!」
「…カラスティング!!」
アクセルへ向け、剣を交差させながら、きりもみ回転でアクセルの首を取ろうと急降下。
「今だ…!」
アクセルは二丁バレットを、落下するカラスティングへ向け…
「うぉおおおおお!!」
「行けえええええ!」
跳びあがるアクセルと飛び降りるカラスティング。攻撃は果たして…?
「らぁぁぁあああああ!」
「うごっほ…!!」
銃弾に真上へ持ち上げられるカラスティング。
そのまま上空へ上昇…そして床へと叩きつけられたのである。
「ぎあぁぁぁぁぁぁ!!!」
黒き翼がバサバサと舞い、アクセルの視界を多い尽くす。
「…だから入れるのはヤだったんだよ」
「でも、入ってなければこうやって出て来てもいない」
「……屁理屈じゃないか」
-
「レッド。お前はアクセルのことをどう思っているのだね?
逃げ出したのだろう……。」
「……ああ。アイツは…もう俺は止めはしねぇさ。
アイツには、こういう埃臭せぇ場所は似合わねぇよ…」
そんな父親の顔のレッドをニヤリと笑う。
「…フフフ… そうか。ならば……」
彼の部屋にぞろぞろと入ってくるレッドアラートの実力者達。
「…な、何だ?お前ら」
「…ぐううう…」
「うげぇぇぇ…」
「ぉぉぉぉぉぉ」
「………お、オイ、どうしやがったお前ら!
…アンタ、まさか」
「少し、パワーアップの謝礼が貰いたくてな」
「仲がよくて結構。こやつらにはお前を殺すように指示してある。
そして…その後奴ら自身も死ぬようにな…」
それは…人質だった。
「どうする?私の命令を聞けば奴らは苦しんだ記憶は消え、
日常が戻ってくるはずだぞ…?」
「…何がしてぇんだ、テメェは!!」
「一芝居打ってもらおう。」
口の端を吊り上げる。
「逃げ出したアクセルを捕まえろ!
そしてエックスとゼロのDNAを私へと寄越すのだ!!」
「偽りの青、蘇りし赤……見える、見えるぞい」
電子の海に浮かぶ六角形のパネルで構成されたサイバーフィールド。
表にも裏にも重力が働くこの美しい迷宮を通過した先に待っていたのは…
レッドアラートのメンバー、スナイプ・アリクイックだった。
「世界の歴史は、それ即ち戦いの歴史…
過去から今に至るまで積み重ねられた情報の山は死体の山。」
「何が言いたい。」
「全てはあらかじめ決まっておることなのじゃよ…
それに抗うことは出来ん………」
心臓部へと繋がる電脳世界の芯での戦いは壮絶なものとなった。
エックスと違い芯の周りを360度沿って、重力を無視し移動できるアリクイックと違い、
芯は単なる筒でしかないエックス達にとっては、即落下となるからである。
だが、新しいエックスバスターは芯を通り抜け敵を攻撃することが可能。
角度をつけた攻撃が出来るようになったことで戦いは有利に進んだのだ。
「見事じゃあああ…!!」
アリクイックの体がデータとなり解け……吸収されていった。
これにてレッドアラートの指定ポイント8箇所は全て攻略。
後はレッドアラートの出方を待つだけとなった。
「親父、鯖。」
「あいよーっ!」
モノクロで悪い音質のテレビが野球の中継を映し出す。 …これはオプションでこうやって設定しているのだ。
寂れた町の寿司屋。カウンター前の席に腰掛ける、男の背中があった。
「………旨い」
彼はわかっていたのだ。明日…自分が死ぬことを。
デボニオンから、自分のファンが経営すると言われる
この店を紹介されたことがきっかけで通うようになった。
-
「イレギュラーハンターからレプリフォースに移った男がいる。」
長い髪の男が入ってくる。
「…………。」
「そのレプリフォースに行った男の部下に、レッドアラートを立ち上げた男がいる。」
「おう兄ちゃん、何食うんでい」
メニューを指差す。
「そのレッドアラートを立ち上げた男にはイレギュラーハンターへ行ったガキがいる…と。
中々面白いもんだねー」
ダイナモだ。
「で、コロニーを落とす大馬鹿モンがいるってぇワケか」
「おいおーい…物騒なこと言わないでくれるかなぁ」
「誰もお前さんだなんて言っちゃいねえよ。
………ガキねぇ …へっ、俺ぁあんなのの親になった覚えァねえ」
あがりを一口。
「アイツはな。こんなつまんねぇ俺とは違うのさ」
「へぇー…部下の皆さんが聞いたら成仏できないんじゃないかなぁー?」
「DNAデータを吸収してってどんどん汚い仕事やっていってたからなぁ…
…後悔してもしゃあねえが」
話を戻す。
「アイツは…俺とは違うのさ
これから…、どんなところにだって行けて…どんな奴とでもつるめるだろう。」
お茶を置く。
「アイツは……何にでも変身できるのさ」
それが、彼の目をつけたアクセルの変身能力だった。
ダイナモは苦笑する。
「親父ギャグだっねぇー…俺白けますわそういうの。」
「親代わりってんなら、アイツが必要とするかどうかはともかく
すぐにでも見つかるんだろうよ」
「あの跳ねっ返りがねえ」
ダイナモは高級なネタを食べ続ける。
「…ダチも必要だが……それより、アイツもそろそろ年頃だしな」
「案外、ハンターんトコでいいオンナでも捕まえてたりしてな?」
「ヒャーッハッハッハッハ!」
笑うダイナモの声に被り、ヘリの音が外から聞こえてくる。
「御殿へお迎えみたいだぜ旦那?」
レッドに似合うとは到底思わない物々しい出迎え。
…裏で蠢く彼のものだ。
「…ウルせぇお出迎えご苦労さん…
さて…『ウザいクソ親父』を全うしに行くか」
果たして彼女はレッドの言う所のいいオンナなのだろうか。
「アクセルぅ、ハンバーグ巻あとアボカド巻取ってー!」
ハンターベースは決戦の日を前に、回転寿司屋へやってきていた。
明るい雰囲気の中、彼らは思い思いのネタを取っていく。
「ねえママー、僕大トロ4つウニ5つ頼んでいいかな!」
「誰がママよ。」
エイリアがピクリと反応する。アクセルはニヤニヤと笑いながら
話をエックスに振る。
「えー?そう思うでしょ、パパ。」
「…俺、君よりそんなに上に見えるかい」
エイリアが顔を逸らす。…耳が赤い。
「アクセルー、さすがにエイリアさんはそういう年じゃないでしょー?
…私はアクセルのお姉ちゃんですからねっ!」
「ハァ?それはないよ、僕がお兄ちゃんでしょー?」
一夜限りの休息…親子連れの多い中、彼らもふざけてみる。
続きは戦いが終わってからまたふざけあえるといいな、などと思いながら。
「じゃあ俺は海老にするかな。…はい、来たよ」
「サラダ巻ね、ありがと」
「お茶…。」
「は、はい!」
ゼロが座る隣の席に、アルバイトの紫髪の女性が来ていたが
おデコの娘は黙っておくことにした。
その頃、ハンターベースではシグナスがポイントRにレッドアラートのアジトを発見していた。
…正確には、裏で蠢く『彼』のアジトだ。
-
あいつのことか ああ知っている
話せば長い そう テスト期間の話だ
知ってるか?学生は3つに分けられる
講義にも出てテスト勉強する奴 講義には出る奴 テスト勉強だけする奴
この3つだ あいつは――
履修生へ 必修科目からの撤退は許可できない 受験せよ
だろうな 一発勝負だ
10日前――大学を巻き込んだ戦争があった
『エリア301号教室』で大規模な試験!
上も下も学生だらけだ!
2回生、掩護に向かえ!
よう相棒、俺たちにお似合いのテストだ
彼は『教室の妖精』と呼ばれた優等生
『彼』の情報源だった男
ドイツ語Ⅰ接近!すべて撃墜し、単位を確保しろ
リスニングでお出迎えだ
私は『彼』を追っている
今までのリスニング問題より速い
旧館のスピーカーだ! 油断すんな
答案用紙が白いのがいる、噂に聞いた奴か
怠け者どもには贅沢な墓場だ
ここは『大学』 死人に口なし
そして――『妖精』の言葉で、物語の幕は上がる
あれは良く晴れた暖かい日だった
生き残るぞ!試験番号0811036
-
R地区に存在する…レッドアラートのアジトと見られる地点への道…
『パレスロード』。
チームはエックスとアクセル。
ゼロはハンターベースの守護に当たる。
彼らは長い長いアジトへの一本橋を走り始めた。
「な、何だよコレ…!」
ドガッ、と音を立てて落下してきたのは…
「モルボーラー…!?」
悪夢再び。
いつぞや、アルマージのいた鉱山でエックスを追いかけ回した掘削用モグラメカニロイドが…
前回とは比べ物にならない強化を施され帰って来たのだ。
「アクセル、動きは速いな!?逃げるんだ!」
「何かヤバそう…!!」
前からは敵の大群、後ろからはモルボーラー。
追いかけられつつ、敵を倒し、橋から転落しないように気をつける。
「あぶなーーーい…!!」
ゴツンゴツンとモルボーラーは腕を叩き付け、スピードを上げてこちらへ近づいてくる。
と思えば、近づいてきたところで回転、アクセルを弾こうとしてくる。
「…………どうしよう」
こんな状況下で、全く先が見えない。
長い長いパレスロードを走り切るしかないのだ。
「グライドアーマーは…ゆっくりとした移動しか出来ないからな…」
「何のための飛行機能だよ、もー……」
その代わりかつてなく攻撃力の高いアーマーと言える。
ホバーでさっさと移動、どんどん進んでいきそして…
「見えた!!」
レッドのアジト、『クリムゾンパレス』だ。
「後はコイツを倒すだけだね!」
通路も広くなった。これで全力で戦えるというものだ。
交代。
「エクスプロージョン!」
ハンマーを吹き飛ばす。これで相手は防御手段攻撃手段を失い、突進しかできなくなるはず。
「食らえ!!」
チャージショットを放つ。やはり効いている。
「エックス、危ない!」
「!!」
モルボーラーの新たなる能力はレーザー。
鼻先から極太のレーザーを照射し、360度回転するのだ。
「…ふう」
グライド飛行で回避。再びエクスプロージョンを当て…
「最後だ!」
モルボーラーは走りながら爆発、クリムゾンパレス入り口ともども爆発していった。
「………行こう」
クリムゾンパレスは綺麗な形をした城だった。
「…げええ!!?」
「何だあのデカイのは…」
巨大な鉄の塊が上のフロアへのを転げ落ちてくる。更に上の階でも、その上の階でも。
途中まで進んだ所で…アクセルに交代。
ワープした先は霧のかかった中庭。柱が何本も立っている。
そう高い場所ではないはずなのに、その下には何もない。……空間として歪んでいると見ていいのだろう。
…彼が現れた。レッドだ。
「よう、やっと来たなアクセル。」
「やぁ、レッド。元気で何よりだよ」
レッドは…よく見ると宙に浮いていた。
「センセイのおかげで力がみなぎってきてなぁ!
…ま、おかげでこのザマだが。」
DNAデータを注入され続けた結果だった。
「さ、世間話はここまでにしようじゃないか。
アクセル… 行くぞ!」
-
柱の上でのアクセルとレッドの対決が始まる。
アクセルは柱を跳び渡り続け、レッドの元へと踏み込み…
「ぉおおおおおお!」
ダブルアクセルバレットを乱射する。
「消し飛べぇぇえ!」
鎌を振りかざし、衝撃波を発する。
「波断撃…!?」
ガンガルンからゼロが得たはずの技だ。
「DNAデータってまさか」
「そうだ、その通りだ…!」
黒い闇に紛れワープ。
アクセルを斬りつける。まともに動くことは出来ないようだ。
「随分な格好じゃないか」
続いてコピーショット。効かない相手とはわかっているが。
「ハハハハハ、おかしいか!?」
巨大な竜巻を発生させる。デボニオンの技、雷神昇のようである。
「ああ、おかしくて笑いも出ないね!」
巨大ランチャーを装備…そのままレッドを撃つ。
「ぐぉおおおおお…!?」
レッドがよろける。
「…それに何なんだい、ここ」
続けて変身。高威力なランナーボムへ変身する。
レッドが分身、アクセルの前に現れ鎌を振るう。
「いたっ……!」
爆弾をレッドの前に放り投げる。
「これがレッド、アンタのアジトだってのかい!?」
前、後ろ、右。
レッドの視点の様々な場所に移動し、レッドを狙い撃つ。
「僕らのアジトはこんな所じゃなかったはずだ」
Gランチャーを装備、上からバズーカを放つ。
レッドはすかさず逃げるがそれを追い…
「やるねぇ…」
「僕らのアジトは…薄暗くて!」
ダブルバレットを乱射。
「汚くて!」
コピーショットを発射。
「埃まみれだけどみんなでそれなりに楽しくやってきた場所のはずだよね!」
再びGランチャー。
「くっ………焼きが回ったかねェ」
攻撃の隙もない。今の状況ではレッドはまともに戦えもしない。
「そろそろ本気のことを言ってくれ…」
トドメのための銃へと変更する。
「……何のことだ?…戻って来いよアクセル。」
言葉とは裏腹に彼は卑怯者として遠くへワープ、鎌を片手に憎まれ口を叩く。
「テメェは結局どこにも行けやしないんだからよ!」
本心と逆を言って見せる。
レッドの言うことなどもうわかってる…。
やるなというのは、やれという遠まわしな意味。
戻って来いというのは……。
もどかしい気持ちが彼を包み…引き金を引かせた。
「お笑いじゃあるまいしさァァァァァァ!!」
最強の銃、レイガンを放つ。真っ直ぐに飛んだ光は……
柱の集まったこの場所の端から橋までを一瞬で進み…。
レッドの腹を突き抜ける。
「…………………!!」
-
…遠くならバレまい。…にやりと笑い、その場に倒れた。
辺りが一変。突然室内へとワープする。
「…へへッ………ヘヘヘヘ……」
「強くなったじゃねえかアクセル。よくトドメを刺したな」
レッドは嬉しそうだ。
「……何の音だよこれ」
「…崩れ始めてるのさ。
俺の……死が確定すると同時に…な……」
柱が次々に、崩れ始める。
「……さぁ行きな。センセイはこの先にいるぜ…」
「アクセル!」
「やだよ!!レッドも行こう!」
「アクセル、甘ったれてんじゃねえ…!
…お前はな。…お前のやりたいように生きていきゃいいんだ。」
「ああ、解ったよ!でもとりあえずこっちへ来て!まだ間に合うから!」
「アクセル!もうダメだ、逃げるぞ!」
エックスが取り押さえる。
「ヘッ、何も解っちゃいねえ……」
アクセルのいた柱は残り、
レッドの周りの柱が崩れていく。
「…俺は、先に行って待ってる。
……お前は、まだまだ焦なくていい。 ゆっくり生きて………いずれ…来な。」
レッドの足元が崩れる。
「レッドーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
彼の体が落下していく。
霧が彼の体により形を変え…奈落の底へ続く穴になる。
落ちる音さえ聞こえないまま……彼は落ちて行った。
「…アクセル。君は待っていろ 俺がこの先を進むから」
転送装置で交代、エックスが進んでいく。
行く手には二つのワープ装置。
エックス達は知らなかった。
…実は両方のワープ先でスイッチを押さないと動かせない仕組みなのだ。
二手に分かれなければならないところだが、
エックスはそれを知らず単身進み始める。
……左へ向かった。
左はトラップ地獄。敵を弾き飛ばす音波、メカニロイドが狭い足場の中にいたり
潜るのが困難なレーザートラップがあったり。
「どういう繋がりをしているんだか解りやしない…」
だがその一方で、右を進む者が一人居た。
ここで右側を突破した時、更なる深部への扉が開かれるのだ。
「ライドアーマーがこんなに…」
エックスが来なくて正解だった模様。
ライドアーマーに乗った兵がいつぞやの如く大量配備され
次から次へと現れる。
「流石にこんな相手がいるなんて予想外でしょう?
…さあ、ライドアーマーさん…かかってらっしゃい
私が相手するわ。…新人ハンターの…エイリアがね!」
エイリアは右側フロアの転送条件をパス。
ここでエックスは知らずに合流フロアへ移動、そのまま深部へと進むことが出来た。
「………。」
合流フロアにて、狼型メカニロイドが現れた。
「後はエックス達の元へ進ませないよう、この敵たちを食い止めるだけね」
-
クリムゾンパレス上層。
霧に包まれたテラスにメカニロイドが大量に配備されている。
モアイ型メカニロイドを乗り継ぎ、長い道のりを突き進み扉を潜る。
「何か嫌な予感がする……」
空間的におかしな繋がりのこの城には何があってもおかしくない。
…でも、ここまで奇妙な空間があろうとは予想しただろうか。
「………えっ」
静まり返った部屋に時折、心音だけがこだまする。
夜の海のような真っ暗な空間の中に浮かぶは小さな光の粒。
ぼんやりとした明かりが9つばかり。
…墓だった。
中心部と、彼らが倒したレッドアラートの8人の物と思われる墓に明かりがついている。
恒例のイレギュラー達の復活だが…これは奇妙。
よく見ると光の粒が集まり、空間の奥で巨大な螺旋を形成し昇っていくのが解る。
…一体どこへ?
墓の中へとワープすると、そこは……ジャングル。
「…え?」
だが辺りの景色がおかしい。変色している。
自分以外の全て…現れたストンコングさえも。
狂気の空間での戦いの幕開けであった。
戦え、と結局言ってしまった。
エックスに辛いことを言ったつもりなのは解っている。
しかし、言うからにはエイリアにも相応の覚悟があるのだった。
もう、見送るだけの身にはならない。
その言葉を実行できるだけの力を手に入れるべく、今まで必死に訓練を繰り返してきていた。
エイリアはクリムゾンパレス上層との境界線で戦いを延々続ける。
ハンターに就職する際、ケイン博士からエックスの過去と託された『その武器』を手に。
「なぁ、姿を見せておくれよエイリア。」
優しい声がする。
「え? …… あ、…あの、私が来てることバレちゃった?エックス」
「ああ。当たり前じゃないか。君は目立つからね。美人だからね、」
…ここで気付く。
…ニセモノだと。
「エイリアぁぁぁ!!」
「ここで気付く自分が恨めしい!」
「かわされたかー…残念だなぁ。実はさ、まーた頼まれちゃってね。足止め
…ゼロの旦那が潜入してくると思ったらアンタが出てきちゃうんだものなぁ。
割と有名なんだぜアンタ。」
「足止めしようにも歯ごたえがなかったと思っていたところよ。
全力で来なさい、ダイナモ。貴方の戦い方はオペレートで調査済みなの。」
彼女は構える。
「来なさい」
彼に足止めを頼んだ者とは…そう、奴である。
最後の一人を倒した所でワープゾーンが開く。墓から先には一体どこへ繋がっているのか。
…落下するエレベーターの中だった。
ここでアクセルが漸く口を開く。
「なぁ、いるのは解ってるんだよ。
…早く出てきなよ セーンセ。」
奴が出てくる。
「ハハハハハハハハハハ!!」
「シグマ!?…またお前だったのか」
驚くのはエックス一人。
「何度もエックス達が戦ってる相手なんだってね。
薄々センセイの正体にも勘付いてた所さ。ほんっとにゴキブリみたいに何度でも蘇るみたいだね」
「ハハハハハハハ!
何とでも言うがいい!エックス、それにこの場にはいないがゼロ。
キサマらの命を我が物にするまで、私は
何度でも、なんどでも、な・ん・ど・で・も! 蘇ってくれるわぁああ!
さぁ、諸君。熱い戦いを期待しているよ?」
-
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
謎の渦が発生する上で戦ったのは巨大ボディを手に入れたシグマ。
巨大ロボットアニメのロボのようなシグマの姿に惑わされながらも、
とうとうエックスとアクセルはこれを倒したのだ。
「…ぬ、ぬううううう………!」
ゲイトの研究所で現れたときのように、ボロボロのシグマが現れる。いや、それ以下かもしれない。
マントの下にはグロテスクなボディ。
体からチューブが無数にわらわらと飛び出て束となっていて、ドクンドクンと体中をエネルギーが巡る音が聞こえる。
「わ、わあああああああああああああ!!」
アクセルが恐怖のあまり、ダブルバレットを乱射する。
「んぬううううう!」
シグマが粗暴に腕を振るい、アクセルを吹き飛ばす。
「アクセル!」
「まだ、まだだぁぁぁぁ……」
シグマが一歩、また一歩と歩いていく。
「私は」
ずるり。
「何度でも……」
ずるり…。
「…蘇る。」
ゴトリ。
「姿を変え、」
グチャリ。
「形を変え…、」
腐ったその目を見開く。
「なんどでもおおおおおおおお!!」
その時だ。
「…見つけたぞ…エックス!!」
「そんな…!?」
レッドの姿だ。何故ここに…?
すぐにエックスを蹴り飛ばしシグマの元へ。
「おお、レッド!!キサマのボディをてにいれ、
ワシは…わしは、わしはこんどこそせかいをぉおおおおおおおおおおお」
…よく考えればレッドがシグマに協力するわけはない。
「これなら、」
二つの声が重なる。一つはレッド。もう一つは…
「どうかな!!」
アクセルだった。
零距離でコピーショットを放つ。爆発…シグマの体が吹き飛ぶ。
「ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ガラスの窓を突き破り、どこかへと落ちていく。
「……レッドのDNA、いつ手に入れたんだ?」
「あ。…えっとね、内緒!」
「エックス、エックス!シグマを倒したのね!」
「…ああ。エイリアか。すぐに戻るよ」
「その近くに抜け道があるわ、早く脱出して!」
アクセルとエックスは並んで走っていく。
…エイリアの声が二重に聞こえた気がしたが、エックスは気のせいだと思うことにした。
それから3週間後。
「エックスー、エックス!どう?また僕事件解決したんだよー!」
アクセルが手を振る。
「……まだまだだな。負傷者が出てるじゃないか。状況によってはこれは許されない」
「えー?ケチー…」
「まーまーアクセル。私はいつでも待ってるから♪」
「え…おでこちゃんと何かの約束したのアクセル?」
エイリアが真顔で聞く。
「は!? いや、そういうわけじゃなくて!!」
「え?じゃあ貰いっぱなしー?」
「貰うって!?」
ダグラスが首を突っ込む。
「いや、説明する!説明するからエイリアは黙ってて!」
「へぇー…」
だがそんなこんなしている間にも。
「アクセル。また事件発生のようだよ」
ゲイトがメッセージを発信。
「え? いや、だからさ!おーい、ちょっと!」
「ただちに出動したまえ」
「うー……」
誤解は消えそうにない。
「解った! 行って来るからねエックス!僕のこと早く認めてよー!?」
彼は走りだした。
「……この1週間で30件もアクセルによって解決されているイレギュラー事件があるわ。
どれもこれも彼のお手柄よ。
…ねえ、いい加減、もうアクセルのこと認めてあげたら?エックス。」
エックスは口をへの字に結び。
「いいや!ダメだ。…俺のようなハンターを目指すなんて持っての外だよ」
「…どうして?」
エックスを目指しているのは1人じゃないというのに。そういう意味も含まれていた。
「俺は…とても褒められたハンターじゃない。
こうやって、ずっと戦いを続けている…これじゃ…ダメなんだ。俺みたいになったら…。」
「…エックス」
シグナスが口を挟む。
「…だがどの道、この先お前なしでハンターの存続は難しいだろうな」
「………」
「これからは凶悪なイレギュラーによる犯罪が増えていくことだろう。
…お前の言う、戦わずして解決できる問題は、ますます減っていくだろう」
「でも…。」
混乱を増す時代の中。エックスはただ、黙っているだけだった。
-
穏やかに流れ続ける川。
大地を遥かな上から見守る太陽。
柔らかく浮かぶ雲は描く夢を映し出す。
道を彩る草花が風に踊る。
立ち並ぶビルは中の人々の生活を映し出す。
車は今日も誰かの元へと向かい走る。
電波はそれぞれの今日を乗せて町を行き交う。
今日も画面は人々の生活を潤わせ、笑いを届ける。
その風景の中、画面にはノイズが紛れ込み…、陽気な一人の老人の顔が映り込んだ。
「ごきげんよう、世界の諸君!」
陽気に、ガハハと老人は笑う。
「突然だが!ワシはこの世界を征服することにした!
詳しい声明は後で発表することとしようじゃないか!」
ロボット好きのこの老人は話を続ける。
「まずは、諸君らにこれをご覧にいれよう!
世界に刻んで見せよう!諸君らの支配者の名はっ!」
太陽を覆う灰色の影。
雲を突きぬけ、何かが落下してくる。
「Drワイリー!」
轟く激震に草花は折れ、川が恐れる。
ビルからは人々の悲鳴。車はブレーキの音を重ならせる。
灰色の、一つ目巨大ロボット『プロトアイ』の落下だ。
電波は交錯し、パニックを煽る。
プロトアイは跳び、道路を凹ませ、大気を振動させながら近づく先は二人の少年少女。
「どどど、どうしようロック!」
「ロールちゃん、研究所に逃げて!」
研究所というのは、この近辺に居を構えるロボット工学の第一人者、
『トーマス・ライト』博士の研究所のこと。
若き頃から日本人女性科学者に招かれたネットワーク工学の道より、
友と共にロボット工学の道へ進むことを選らんだ彼は、研究に没頭するあまり、いつしか老人になっていた。
子供の居ぬ彼が作り出した機械の子供こそ、このロックとロールである。
「…え、えーーーい!」
彼は道端のボールをプロトアイの目へとぶつける。得意とするサッカーの技術だ。
「ビギョ!?」
プロトアイがぐるりとボディをのけぞらせる。効果があったようだ。だが…
2発は打てない。今逃げても逃げられるかどうか…と思ったその時である。
「兄キ兄キーーーー!」
取っ手のような耳をつけた、銀色のハサミをつけたロボット達がやってくる。
「カットマン!」
彼らもライト博士が作り出したロボットであり、ロックの弟達にあたる。
「ここは俺達に、任せろぉおおおおおい!」
ファイヤーマンと呼ばれる、熱きロボットが叫ぶ。
「ロックさんは、今のうちに研究所へ避難して欲しいでありますっ!」
風景に似合わぬ厚着。アイスマン。
「オラぁ!ほぉい!そぉい!!」
気がつくと体格のいいロボット、ガッツマンがプロトアイが攻め込めぬよう壁を形成している。
「てやんでぇ!俺っちの爆弾で、こんな奴ぁぶっ飛ばしてやるからよぅ!」
花火職人、ボンバーマンだ。
「みんな…ごめん!」
「気にすることないっす兄キ!さ、早くー!」
ロックは走り出した。
…皆のことが気がかりではあるが…ロールちゃんが途中で危険に遭っているかも解らないし
まずは博士への報告が第一だからだ。
-
「!?」
近づいた研究所の屋根が焦げ、穴が開いているではないか。
コレは一体…
研究所へと入ったロックは、驚くべき光景を目にする。
「博士!! ロールちゃん! ……!」
研究所の一室に、腰を抜かしたロールちゃんの姿。
その一歩ほど前には焦げ付いた床。ライト博士は気が動転し、何も出来ずにいる。
そして……屋根に穴を開け、床を焦げ付かせた犯人がそこにいた。
「……え、エレキマン……?」
「ほぅ、ロックですか。君も死にに来たのかい?」
黄色いマスクのスリムで気障なロボット…エレキマンだ。
彼もライト博士のロボットなのにどうして……?
「博士には危害は加えませんが、ロールちゃん、君には容赦できないよ?」
左腕の人差し指を真上へ突き出す。
「痺れなさい、サンダー…ボルト!」
「危ない!!」
指を真下へ向けたその瞬間、雷が屋根を突き破り、床へと突き刺さる。
ロックはロールの腕を握り、後ろへ引っ張り逃がす。…間一髪だった。
「ろ、ロック…」
ロックは叫ぶ。
「エレキマン、どうしたの!?」
「…解りませんか?」
「解らない!」
「僕はワイリー博士の所で働くことにしたんだよ。
彼の方が技術力が上なんでね。これは博士の命令さ…研究所を破壊するようにとね」
「や、やめてくれエレキマン!」
彼は声をあげるしかない。
「話はもう終わったよ。それでも邪魔するつもりかい?」
指だけではない。掌に電撃を溜める。
「やめるんだ!!」
「消えてもらうしかないな!」
彼の能力、サンダービームが手から放たれる。
「うぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
ロックに流れる高圧電流。
全身を駆け巡り、その各電子部品を次々とショートさせていく。
焼かれたロックの体はそのまま、真っ黒になり床へと転がっていった。
「…や、やめてくれ……やめてくれ…エレキマン…お願いだ…」
「黙りなさい。それではさらばですよ、ロック…」
その時。
「…………」
「…エレキマン?」
「…ロ……ロールちゃん…今のうちに…今のうちに!!!
今のうちにロックと博士を連れて逃げなさ…い……!!」
「え、エレキマン!?」
体全体が震えている。…エレキマンの様子がおかしい。
一体どうしたのか?そう思ったところに…
壁を突き破り、黒きロボットが飛び込んできた。
「どけどけーー邪魔だYO−−−−!」
給油ロボット、オイルマンだ。ライト博士が作ったロボットである。
「ぎゃあああああああ!!」
エレキマンの横顔にゴツンとぶつかり、突き飛ばす。
「ヘイヘイ!どうしたんだYOエレキマン!」
「うぁぁああ!?」
エレキマンが衝撃のショックで、溜めていたエレキビームを放ってしまう。
これではロールに直撃…そう思われた瞬間。
何とロールは一瞬でこれを回避。電撃はドアを吹き飛ばしたのみだった。
「予定通り。」
時間操作ロボット、タイムマンが時間をとめてロールとロックを逃がしていたのだ。
「くうううううう!! コントロールが不完全じゃったか!」
画面の中で聞こえていた声が聞こえる。Drワイリーだ。
赤いUFOに乗った彼はぷかぷかと天井の穴から研究所へと入り込んでいた。
「じゃが、まあいい!プロトアイは犠牲にしたものの、
これで6体のロボット達を捕まえることが出来たんじゃからな!」
UFOの下部にはモゴモゴと蠢く袋が。 …ロボット達が入っているのだろう。
アームがエレキマンを捕まえ、袋の中にポイっと投げる。
「今日の所はこれで引き上げてやろう!それではさらばじゃライト!」
「…! ま、待て!待つんじゃワイリー!」
-
ワイリーはどこかへと飛び去ってしまった。
それよりも、である。
「……ロック、ロック!大丈夫なの、ロック!」
「ロー、ルちゃん… 博士…」
…ロックはその短い命を終えようとしていた。
「…博士… …僕…悔しいです」
彼の心は、エレキマン達を救えなかった気持ちで一杯だった。
電撃を食らったロックよりも、兄姉を攻撃することになったエレキマンの方が辛かったに違いない。
「ロック……」
「博士、ロックは、ロックは助からないんですか!?」
「……残念じゃが」
「そんな…!」
「…残念じゃがこのボディでは無理なんじゃ…スペアの体もない…
最早…ロックは助かるまい」
頭脳は今は無事なので話せている。だが…
あと1時間もすればAIは狂い、停止。彼は死を迎えることだろう。
ロールが膝をつき、涙する。
ライト博士は……考え続けていた。何か出来ないかと。
…そう思ったとき、机の上にあった何かを目にする。
「………!」
動力パーツ。
「…博士…!博士!あれを使っちゃダメなの!?」
「…博士!」
「あれはなロール。…あれは…」
それは…戦闘用の動力炉だった。
このボディのパーツを現在のロックに移植することで、彼は蘇るかもしれない。
…だが、そうしてしまったらロックは…。家庭用ロボットではいられなくなる。
そして、彼は敵を倒す運命を強いられるのだ……命の限り。
そんな運命をわざわざ背負わせることなど博士には絶対出来なかった。
「アレは…アレは、不良品なんじゃ。使えない」
嘘をつく。彼を死なせてあげることが最善だからだ。
それに、ある意味本当でもある。戦闘用としては、あまりに武器が弱いためだ。
オイルマンやタイムマンもいる。これから、彼の弟を作り……彼の分まで生きてもらおう。
「そんな…」
そう覚悟を決めようとした…その時だった。
「…博士。不良品でも構いません」
「何を言い出すんじゃロック」
「…僕、みんなを助けたいんです…
カットマン、ガッツマン、アイスマン、ボンバーマン、ファイヤーマン、エレキマン…。
そしてこれからワイリーの被害に遭う…みんなを。」
「………ロック」
「僕自身の痛みならいくらでも耐えます。だから…」
腕を伸ばし、しわくちゃの手を掴む。そして、命の限り叫んだ。
「僕を…、僕を戦闘用ロボットに改造してください!!」
どうせ死ぬ命だというのならば、せめて試してみてからでも違いはない。
例え欠陥があろうと、弱かろうと。
ロックはせめて、彼らを助けてから死にたい。そう思ったのだ。
「………解った。ロック、改造手術はすぐにでも行う。…いいな」
彼を手術台へと運ぶ。
…改造の始まりだった。
戦闘用ボディから各パーツを取り出し、ロックの壊れたボディと交換する。
まずは動力炉の交換。これにより、彼の命はひとまず繋ぎとめられる。
新品の美しいそのパーツが彼の胸に挿入され…
次に体の各所を新しいパーツへと変え、繋ぎ合わせていく。
材料も強固なものに差し替える。
…作業すること数時間。
いよいよ、皮膚と外部装甲を取り付けるのみとなった。
…ライト博士はロックに一つの質問をする。
「ロック。お前は…何色が好きだい」
むき出しの機械で、人工皮膚の残る唯一の部分、顔。
ロックは目を開け、ライト博士の方を向く。
これから自分が取り戻したい平和な空の色。
落ち着きをもたらす色。
これから戦闘用として、ただの子供ロボットではいられなくなる自分を示した色。
「…青…です」
「…ああ、青か…青か。 …解った…いいだろう。」
それからまた作業は長く続き。
「…………目を開けていいぞ、ロック。」
「…………。」
「ロック…」
-
ロールの目に映ったのは青いボディの、生まれ変わったロックの姿。
「……これは」
腕が丸みを帯びた筒型へと変化している。
「…それが、お前の武器じゃよ」
エネルギー弾を撃ち出す、弱き武器。
彼が用いることからロックバスターと名づけられた。
「…有難うございます、博士。」
青いボディに、彼は満足な様子でもある。
「じゃがなロック。お前はこれから、
色んな色に染まっていなければならない。
戦いを潜り抜け…色んなロボットの体を貫き、
その色を自分が受けなければならない」
「…はい」
その言葉の真意はその機能にこめられていることを、
彼は後に知ることとなる。
「……お前は何色にも染まらねばならない。これからお前は、
お前は…平和の虹をかける奇跡の子供…」
「レインボー戦士、ミラクルキッドじゃ!」
…博士から貰ったその名前。だが…
ロックは自分の意見を出す。
「…すみません博士、自分で決めた名前じゃダメですか?」
「…ダメかのう。まあ…いいじゃろ、言ってみなさい」
戦闘用になっても『ロックはロックである』こと。
そして…彼は子供ロボットではない。
戦闘用である『1体のロボット』であること。
ライト博士製ロボットによくつけられるこの名称と、
自分の名前とを組み合わせた名前。
「僕は……『ロックマン』」
風の吹き抜ける、真っ青な空の下に立ち並ぶはビルの群れ。
切り立った崖で彼はヘルメットを一旦置いて…
黒き髪を靡かせる。
これから守ることとなる………
そして今まで自分がいた、 みんなの暮らしを遠くに見つめていた。
200X年。
ここは、ロボットと人間がともに平和に暮らしている未来の世界―――
まだ、平和だった世界。
-
今日は非番。
エイリアは、オペレーター学校を卒業した
紫髪の女性レイヤーとおデコの娘パレットとを呼びつけ談笑していた。
「へぇ…エックスさんも鈍感ですねぇ」
「まぁ…ね、私あまり積極的な方じゃないし」
「…エイリアさん、地味に結構美人なのにねー…」
エイリアをじろじろと見つめてみる。
5秒ほどして。
「………解った!」
「えっ?」
「きっとエイリアさん、お姉さん的存在と思われてるんですよー!」
お姉さんも何も、この世界のレプリロイドでエックスより年上は、居てゼロ位のものじゃ?
エイリアはムッとしながらも思っていた。
「この際、イメージチェンジなんてどうでしょうか!」
「まあ。いいですね」
レイヤーも賛成した。
「エイリアさんエイリアさん。エックスさんと手繋いだこととかありますー?」
「へ!? …あ、あるわけないでしょ!」
「……やっぱり。
ねえねレイヤー。エイリアさんって身長どれくらいに見える?」
「私よりも…もっと上に見えますね」
レイヤーは175。
「…エックスさんは?」
「…私からは165と言った所に見えますが」
座ったままのことが多いから気付かなかったのか。
或いはエイリアの中でエックスは大きく見えていたのか。
…異様に脚が長く、彼女はエックスより遥かに背が高かったのだ。
「後髪型もあると思うんですよね。」
「私、昔は髪ほどいてたわよ?」
ゲイトの件までは。
「んー。ちょっと解いてみましょか。」
「…そうね」
目を閉じ、髪の後ろの髪を収納するパーツを開けると……
セミロングの金髪が、ふわりと開放された。
「…エイリアさんって結構美人だと思ってましたけど…」
「失敗?」
「…結構カワイイですよね。」
「そ…う?」
「はい。10歳は若返った気がしますよ」
「じゃあアーマーも私的なデザインに作り変えちゃいますね
あまり、背の高さを感じさせないデザインにしたいんですよ」
「……あ。それなら…これ、外してみてもらえる?」
「? はいはい」
外してみる。
「………え」
唖然。足のパーツは……結構な比率で、脚を包む空白部分だったのだ。
「…あー………。」
パレットが見上げることなくエイリアを見据える。
「…………エイリアさんって、エックスさんより背小さかったんですか?」
「ほんの2,3cm差…じゃない?」
「そういうことじゃなくて!わざわざ何でそんな格好してたんですかっ!!」
「そう言われても…」
-
「反省しましょう。さて…アーマーの話に移りますね。
……んー。エイリアさんって、割と派手な格好してると思うけど」
動きやすいよう、腰周りはアーマーはなくスーツのみ。
「やっぱりほら。我々オペレーター職は
顔含む上半身に印象的なパーツがあると『違う』と思うんですね」
パレット先生のご高説は続く。
「例えば私だと、この髪型とオデコっ!レイヤーは……言わなくても解りますよね」
「……ええ」
「エイリアさんは割と目立つパーツがないんですよね…どこか強調する点を作りたいんです。」
「ええ」
「まず下も取ったことだし、上のパーツも取……」
その瞬間。
「きゃあああ!?」
内側からの弾力で、アーマーが吹き飛びパレットのオデコに激突。
現れたものは。
「なっ……………!」
額の痛みを押さえ、パレットが半泣きになって震える。
「…え、エイリアさん…」
レイヤーも驚く。
「お……」
爆発する。
「表へ出てくださいエイリアさん!ハンター勝負ですハンター勝負!
いよいよ私を怒らせちゃいましたね!
何なんですか!?わざわざ髪型そんなにしちゃって背まで無駄に伸ばしちゃって!
何が相談ですか女の子でありながら女の敵じゃないですか!おまけになんですかその巨」
「お、おおお落ち着いてくださいパレット!」
その頃。
「わっ!」
剣の形をしたレーザーポインタがエックスに向けられる。
…子供の玩具だ。
ハンターベース内にある、リフレッシュフロア。
様々な草花が飾られたその場所に、眼鏡をかけた一人の少年がいた。
「…危ないじゃないか。」
「……レプリロイドだからいいけど、
人間にこんなことしたら危険だよ、覚えておいてくれ。」
「やだなぁ。ここにレプリロイド以外がいるわけないでしょ。…僕以外。」
「………人間?」
「ああ、そうだとも 僕は人間様だよ?」
「……そうなのか。」
「滅多なことを言うのはやめた方がいいぞ、エックス」
「…シグナス」
真っ黒な巨体が現れる。
「この子はな、エイリアやゲイトと同じ科学者なんだ。
この年にして並み居る研究者達の最前線に立つ…大天才さ」
「…へえ」
「………ハンターはこの子には頭が上がらないよ。
この子はユーラシア事件で祖母や祖父を失い、
…後遺症で、家族をみんな失った。けど…協力をしてくれるって言うんだ」
「そうか…」
「…なあ博士君。君は、この社会についてどう思ってる」
「…そうだな」
未来を担う有望な子供の、しっかりとした意見は貴重。
-
「ロボットからレプリロイドになったことが、僕は失敗と考える」
「なっ…
………そ、そうか。すまなかった」
「仕方ないよ人間も人間だから。
君達レプリロイドは確かに優秀だよ。でもそのレプリロイドに全てを任せ
今や地下に篭って出てこない…。ゲイトって科学者も言ってたことだよ」
非常にシビアな視点を持つ少年。
けれど………それだけで終わる子ではなかった。
「こうやって、言ってるばかりじゃ何も始まらない。
だからさ。僕も出来ることがあれば何でもやるつもりだ。方法なんて選んでられないだろ?
僕はまだ子供だがもう僕が若いうちには無理だと思っている
いつか人間もレプリロイドも幸せで居られる…自然に溢れた社会を僕は作りたい。」
エックスはポカーンと口を開けていることしか出来なかった。
「……有難う。頑張ろう お互いにね」
パシン、と博士君はエックスとタッチをかわし、シグナスとその場を後にした。
「エックスさんに会いに行ってみたらどうですー?鼻血出しちゃうかも♪」
パレットは技術室を後にした。
鏡を見てみる。
背伸びしないありのままの身長、
強調された豊かな胸、
シェイプアップしたそのアーマー。
以前のように跳ねた髪でなく、ふわりとしたゆるめの長い髪。
…少女エイリアの姿が、そこにあった。
髪を弄ったりしてみる。
オペレータールームへ向かう。
ライフセーバー、ダグラス、ゲイト、先輩オペレーター、シグナス総監、
エックス、ゼロ、アクセル、レイヤー、パレット、自分。
他にも沢山のハンターたちがいて、ハンターベースは何時しか、昔のような賑わいを取り戻していた。
みんな…それぞれ色々なことがありつつも今を生きているのだ。
パレットは、一足早く部屋に戻ったレイヤーを相手に、
ナビゲーター教本を見ながらオペレートの練習をしている。
「はい」
「『アクセル、聞こえますか。』
『ゼロさん、聞こえますか。』 …あっ」
「違うーーー!だからレイヤー、キッチリしたかったら先輩相手でも、任務中はさん付けとかしないの!
名前そのものがハンターとしての名前なんだから!」
「……すみません。もう一度…」
先輩に教えてもらった…臨時で入ってきた頃を思い出す。
「うん。最初のオペレートにしてはいい出来ね。あなたたち相性いいんじゃない?」
「そうですか?」
「ええ。私はそう思う。…あ、一つ言うとすればそうね。任務中、ハンターにさん付けは要らないわよ
ハンターは名前一つでハンターとしてのコードネームともするわけなんだから。」
「はぁ…」
「俺もあまり堅苦しいのは好きじゃないしね。敬語要らないのはさっき言ったけど、呼び方も『エックス』でいいよ」
B級ハンター・エックスと臨時オペレーター・エイリア。
先ほど言ったようにこの頃エイリアは、髪を下ろしていたのだ。
…今のように。
「もういいよレイヤー。ゼロさんだけはさん付けで行く?」
「………」
草花に囲まれたリフレッシュルームを
扉の影から体を曲げ、ちらりと覗く。…彼の背中がある。
少し、昔の呼び方で呼んでみる。
「エックスさん」
形容しがたい表情で振り向いたエックスに、自分の姿を見せてみる。
そしてその感想。
彼女と、それを聞いたレイヤー、パレットはその日一日…偉く上機嫌であった。
-
レッドアラートとの戦いが過去の話となって
更に歳月は進む。
人類とレプリロイドの総人口は、ユーラシア以前の頃まで回復していた。
その間の出来事を3つほど紹介しよう。
1つ目はおデコの娘パレットと、紫髪のその同級生レイヤーがオペレーター養成学校を卒業、
また、アクセルも功績を認められ正規イレギュラーハンターになったこと。
長い長い年月をかけながら彼らは戦いの中で様々な物事を学んでいくこととなった。
2つ目は謎の鉱物物資が発見されたこと。これはエネルギー物資として用いたり、
広い用途に資材として製品開発などに貢献できるものとされており、
世界を大きく騒がせたものだ。
そして、社会全体にも動きが見られた。
3つ目は各国政府が度重なる会議の末、人類、レプリロイドに対し
平和な生活を取り戻すための…1つの計画を発表したこと。
『ヤコブ計画』。
全世界から数十億にものぼるレプリロイド達、また死を迎えていった様々な過去のレプリロイド達の
DNAデータが提供され、それらの開発の末に世界を背負う、
従来では考えられないほどの高性能レプリロイドの開発に当たるものである。
それは『新世代型レプリロイド』と名づけられた。
そのプロトタイプとするべく政府は特殊能力を持つイレギュラーハンター『アクセル』へ協力を要請。
彼の構造を徹底的に調べ上げ、様々なレプリロイドの情報を持った上でDNAを書き換える変身機能を持つ
『コピーチップ』を搭載し…いよいよそれの開発に着手した。
それらがいかにして社会を豊かにするのか。何故『ヤコブ計画』と呼ばれるのか。
それについても報告がなされ、着々と計画は進む。
「エックス、いつ帰って来られそう?」
「いつでも帰れるよ。転送装置一つあればね」
「…うん。
もしよかったら、私のいた研究所が近くにあるから寄ってね?」
エックス、ゼロ、アクセルは旅立って行った。
「あの、失礼ですがエイリアさん。ゼロさん達は今日からどちらへ?」
「えっ…?」
「れ、レイヤー知らないのー!?」
俯く。
「す、すみません……」
「ニュース、見てないかしら。エックス達はガラパゴス諸島に行くことになったのよ」
「………今の時期にその場所というと、まさか…」
さすがにレイヤーもそこは知っている。
「そ、軌道エレベーターの警備のお仕事ですよー! エックスさん達流石ですよねー。
でもお二人が有能だから、アクセルなんて出番ないかも知れないですね」
そう、ヤコブ計画とは軌道エレベーターを建設し、新世代型レプリロイドを宇宙という
過酷な環境下に送り出し、人間やレプリロイドの新天地を作り上げるものだった。
その新天地とは…いつも夢と共に彼らが毎晩見ていた… 『月』。
「へぇー…そんなこと言ってアクセルには早く帰ってきて欲しいのかしら、パレット。」
「んもー、そういうことじゃないですよぉ!」
ゼロさん達が帰ってくるまでに正規オペレーターの職につけるように頑張ろう。
レイヤーはそう思っていたのだった。
ハンターベースの仲間達が毎週、報告書を楽しそうに見る日々や、
休日のエックスやアクセルを彼女達が連れ出す。そんな日々がそれからずっと続いた。
それは実に15年以上もの間。
軌道エレベーターが完成しても、彼らの任務は終わらないのである。
-
天高くそびえる軌道エレベーターの一角が……運用開始のその日、爆発を起こした。
夜空を照らすは燃え盛る炎、夜空を曇らすは立ち上る煙。
すっかり青年になった彼が近づく。
「こちらエックス。 下り4番ゲート付近にコンテナの落下事故が発生、
至急、救助用メカニロイドの出動を………」
その時である。
拉げたコンテナの扉が、ベコリと膨らむ。
「…?」
中から有り得ない顔が姿を見せた。
「………………。」
無言のまま。
ズシリ、ギシリ、ギシリ…。地面を踏み鳴らし、彼が姿を現す。
スキンヘッドに、がっしりとした体躯。
「……シグマ!」
信じられない光景は続く。もう一人シグマが現れたのだ。
…言っている間に、もう1人。
…続けて2人、3人、4人……
炎の海の中を……シグマの大群が闊歩する。
「………………………」
声が出ない。口をあんぐりと開けて光景をただ見るばかり。
「大丈夫ですよ」
…シグマの大群の中から女性のような声がする。
「安全のため、頑丈で高性能なシグマボディを、コピーしておいたのです。」
現れた小さなレプリロイド。
その言葉と共に、シグマ達は次々と姿を光に包まれ…
「シグマをコピーしても、何の問題もありません。」
毎日目にする一般レプリロイドのソレとなんら変わらぬ姿へと変わっていく。
「私達『新世代型』は、完全な耐ウイルス性能がありますから。」
事故は意図したもの。これは…新世代型の耐久テストの一環だったのだ。
「…君は?」
炎に照らされ、軌道エレベーターが貫く夜空の下。
涼しげな声はエックスに紹介をする。
「私は……『ルミネ』」
「軌道エレベーター…『ヤコブ』の管理者です」
-
その翌朝、久しぶりのイレギュラー発生を告げるアラームが鳴り響く。
「WARNING!WARNING!」
ゲイトの声だ。
「軌道エレベーター周辺にて大型イレギュラー反応が発生!
ポイント・ガラパゴス!付近のハンターは急行してください!」
エイリアが研究員時代を送っていた研究所の存在する『ノアズパーク』
そこに、イレギュラーが発生したのだ。
エックスとアクセルが降り立つ。
「エックス、今回のイレギュラーはどこか今までとパターンが違うみたいなの。」
「解った、調べてみるよ」
「倒したらAIサンプルの回収をお願いできるかしら。
そうそう、もし危なくなったらアクセルに交代してね」
「へっへーん、僕と交代なんてしちゃったら、エックスの出番がなくなっちゃうかもよー?」
アクセルが調子づく。
「後でゼロも応援に向かわせます。」
「それじゃ二人とも、頑張って!」
ゲイトにより更なる機能を何か追加したと思われる簡易転送装置でアクセルは待機に入り、
エックスがミッションに移る。
イレギュラー化したメカニロイド達を倒して川を渡るとすぐに例のイレギュラーは姿を現す。
「二人とも、注意して!このイレギュラーは、相手を捕まえて動けなくするタイプよ」
蟹のような形をした巨大メカニロイドとの戦いが始まる。
とはいっても所詮はメカニロイドである。
ハサミでの攻撃は難なく回避、そのまま巨大なチャージショットを放つ。
相手を引き寄せるため後ろへ下がる所更に撃ち、すぐに敵は逃げていった。
「エイリア。敵のAIサンプルが手に入った」
「ありがとうエックス。それじゃそれを届けるために一度ハンターベースに戻ってきて」
「了解」
エックスは転送装置でワープ、
「…おかえりなさい、エックス。どうだった?」
「異様に耐久力が高いのが気になったかな。そっちは何か変わったことは?」
「えーとね…」
そんなやり取りをしてる間にアクセルは滝を横切っていく。
ホバーにローリング、1丁に戻ったアクセルバレット。
洞窟に入って敵を倒して進むとすぐに3人目が現れた。
「手間取っているようだな、アクセル」
「遅れてきてそれはないんじゃないのー?ゼロ。こんなミッション、僕にかかればすぐなんだからね」
「元気なことだ」
「敵は滝の裏で待ち構えているわ。戦闘の準備はいいわね」
アクセルはそのまま洞窟を抜け最も大きな滝へと飛び降りると…
水の中から小型メカニロイドを放ったり、ハサミを飛ばしてきた。
顔を出したところをバレットで撃ち続ける。ガガガガガガ、とアゴの一箇所に一箇所に集中して弾丸が叩き込まれる。
……そうしてすぐに敵はまた逃げた。
「私のいたノアズパーク研究所が近づいてきたわね…」
「へへっ、楽勝ー♪AIサンプルゲットだよ」
「うむ。ではお前はそれを持って一度戻れ」
「はーい!」
アクセルは帰って行った。
そのまま海をバックに彼はメットールやライドアーマー型メカニロイド、
懐かしいタイヤ型メカニロイドと戦いながら崖を横切っていく。
研究所の入り口だ。
「ゼロ。貴方が今居るところは裏口前の倉庫なの。
裏口へは梯子を昇っていかなきゃいけないんだけど」
「今は降りている。」
することは解っている。二段ジャンプでその場を登り、裏口から入っていく。
設置されたジェネレーターから発生する蜂型メカニロイドを倒し続け、いよいよ内部へ。
窓から海の見えるそこで彼は現れる。
「待たせた、ゼロ。状況は?」
「問題ない。行くぞ」
コンテナを破壊し、レーザーを放つメカニロイドを倒したりしつつ進んでいく。
迫る壁を抜けた先で、いよいよ3度目の戦いに入る。
「ここは俺に任せてもらおう」
壁を破壊し、三度メカニロイドが現れる。
ハサミでガードしつつ攻撃を加える戦法を取ってきたが、
ハサミをセイバーの三段斬りで吹き飛ばして本体を斬る…これを続けて撃破。
-
大破したメカニロイドからAIサンプルを入手しようとした…その時である。
「ゼロさん!!」
彼の足元へ向かいミサイルが大量発射される。とっさに回避したが、それ以前にミサイルの軌道がずれた。
「キ…キサマァァァァァァ!」
発射寸前にミサイルを撃った彼を攻撃したのだ。
「私が相手です」
紫色の髪が靡く。
彼を攻撃したのはVハンガーを手にしたレイヤー。
ミサイルを撃ったのは……VAVAだった。
「シツコイナ…!!」
Vハンガーを腕に構え、斬りつけにかかるが
「ディスタンス・ニードラー!!」
腕から放たれた、彼愛用の貫通弾が放たれる。
「!!」
レイヤーはそれをVハンガーでガードする…が
「甘イゾ?」
彼が狙ったのは手元。
「ぁあっ……!!」
貫通力を見誤っていた。
カラスティングの形見Vハンガーは、ディスタンスニードラーによりあっけなく破壊されてしまう。
「ヒャーハハハハハハ!武器ノ使イ方ヲ誤ッタナ!!」
そのまま電磁弾を放ち、レイヤーを動けなくした所で話を始める。
奇怪な合成音声が発せられる。
「マタ 会エタナァ、エックス!」
「…VAVA!?」
到着早々、ワケの解らないといった様子のアクセルに向かい説明。
「元イレギュラーハンター。今は…俺達の敵。お尋ね者のイレギュラーだ」
地獄の底から、漸く蘇ったようだ。
「オ前達ト遊ンデヤリタイ所ダガ、今ハ マダ、ヤルコト ガ アルノデナ?」
よく見ると電撃で痺れさせるタイプの捕獲用メカに少女が捕らえられている。
「…ルミネ!?」
「コレデ軌道エレベーターハ 我々ノ手ノ中トイウ訳ダ!」
「貴様… 何を企んでいる!!」
「ィーーーッヒッヒッヒ! 始メルンダヨ 新シイ世界ヲ、ナ!」
VAVAはホバーで飛び去っていった。
エックスは追う術がない。
レイヤーはパレットにより転送させられ、エックス達もハンターベースへと帰還した…。
「ルミネ。軌道エレベーター管理者の彼を浚って一体何をするつもりなのかしら」
「…解らない。一体VAVAは何をするつもりなんだろうか。
…それより今、君…『彼』って言った?」
「ええ。…間違えられがちだけど、ルミネは男性レプリロイドよ?」
エックスに衝撃が走る。
「…ともかく。こうしてる間にも何かが裏で蠢いているのかもしれない」
まずはこれからの動きが何かないか、目を光らせる必要があろう。
-
初めてのミッションは、いつ訪れるか解らない。
その前に、彼女はエックスに話しておくべきことがあった。
「エックス。」
エイリアは胸に手をあて、言葉をとうとう発した。
「次のミッションは私にやらせてくれないかしら」
「…本気かい?…危険だよ」
にっこりと笑う。
「なら、私の力見てみてくれない?」
転送装置の行き先にトレーニングスペースを入力する。
「……」
ワープしたエイリアを追って、エックスも行く。
トレーニングスペースは仮想空間。
修復プログラムの行き届いたこの場所でなら思い切り戦うことが可能である。
がらんと開けたバトルフィールド。
「…来たわね、エックス」
「どういうつもりなんだ、エイリア」
タッ、タッ、と音だけが響く。
「私は長年、貴方の背中ばかりを見送ってきた。
でも私の胸にはやはり戦いへの憧れと、
貴方達をサポートしたい気持ちがある。」
冷静に彼は話す。
「パレットはアクセルバレットを自分用に改造したようだし、
レイヤーは自分で持ってきた……確か5種もの武器がある。」
「…君は一般用の武器しか持って居ないはずだし…戦闘経験はないんだろう?」
腕を後ろに組み話す。
「…ダブルをハンターベースから撤退させたのは誰だと思う?」
そう言えばそうだった。
「!!」
「スカラビッチやヴォルファングを倒したのはどうやってだと思う?」
「……そう、なのか?」
「私だって強くなろうとしたのよ。
少し……あなたに直接戦ってもらうことで力を試してみたいの」
エックスは聞く。
「どうして、俺なんだ?」
理由は2つある …そのうちの一つは言えないので、
もう一つの理由を音で答える。
キュイイイイイイイン………
「…………!!」
有り得ない光景が広がる。
エイリアの胸部…動力部にエネルギーが収束していくのだ。
ゼロのバスターはエックスとは違う。
チャージ中は光の色と作り出す模様で違いが理解できる。
それだけではない。今まで見てきた、様々な…
今まで戦ってきた相手のどれもが異なるチャージ方法。
…だが…エイリアのそれは…全く、同じだったのだ。
キイイイイイイイイイイイン…
チャージ完了の音へとすぐに変わる。
「……馬鹿な」
「いっくわよーーーーー!!」
エイリアはダッシュして…腕を変化させる。
身の丈よりも大きい、蒼き巨大なエネルギーが…
その腕から放たれたその瞬間。
彼女の武器…それは…
「『エイリアバスター』!!」
-
勝負は3本勝負、2本先取で勝利となる。過去56種類の特殊武器全てから選択可能な戦いとなる。
まずはエイリアが攻めに入る。
「ストームトルネード!」
長く連なる竜巻を撃ち出す。
「この攻撃は隙が大きい…わかってるさ!」
エックスはこれを壁を蹴り回避。
エイリアは反対側の壁を蹴り、天井まで移動。落ちながら次の特殊武器を発する。
「ソニックスライサー!」
壁を反射する刃。
その軌道を見切り、重力に任せ壁から落下
潜るように避ける。
「レイスプラッシャー!」
床へと落ちてきた所に遠ざかりなが光の散弾銃を放つ。
扇状に広がっていくその攻撃範囲は最大限に広められることとなる。
「何…!?」
壁を蹴りジャンプ、エイリアの体を飛び越し回避する…が。
エイリアがにやりと笑う。そこを狙ったのだ。
「ライジングファイア!!」
上方向への攻撃をされるとこちらは弱い。
腹を突き上げられるように炎が飛んでくる。
ここで一本を取られる。
「ぐうう…!!」
「ぃよーーっし!」
エイリアはガッツポーズ。
エックスとエイリアは部屋の端へと戻り…
2本目。
「出方はもう見切ったぞ、エイリア!」
ここからはエックスはアルティメットアーマーを着用する。
エイリアは素早くチャージショットを放つ…が。
「スパイクロープ!」
「…!!」
茨の塊で防御され、そのままエックスもチャージ攻撃を発動する。
「メタルアンカー…チャージ!」
宙へ浮いて大の字になる。
ゲイト製のレプリロイドの技は強く…この技なら回避できないだろうと踏んだのだ。
「行けっ…イーグリーーード!」
「待たせたなエックス!」
メタルアンカーの力で鉛色で蘇ったイーグリードが大量に滑空。
「…しまった…!」
エイリアを突き飛ばし、
空へと帰っていく。
「きゃっ……!」
素早く2本目が取られた瞬間だった。
3本目。
チャージに入るエイリアに対しエックスは攻めに転じる。
-
「スナイプミサイル!」
エックスはミサイルを発射、エイリアを追撃する。
「まだまだよ!」
…ここでエイリアは驚くべき行動に出た。
ミサイルを通常弾で全て破壊、そのままチャージショットをエックスに向かい放ったのである。
「嘘だ!?」
撃った時点でチャージは途切れる。
チャージショットで対処されたところでエックスが攻撃に転じるつもりだったのに。
「はああぁっ!」
紙一重でこれをかわし、再び攻撃。
「どうなってるんだ!?」
バスターはバスターで、チャージショットはチャージショットで相殺される。
その上でエイリアはエックスが通常弾を撃つタイミングでチャージショットを放つ。
一歩、手数で上となる。
「エックスさんが押されてますー!」
実況パレット、
「エックスさんとエイリアさんは攻撃力、機動力、アーマーなしでの攻撃力…
どれも互角のようですが…アーマーでの差を知識でどこまで埋められるか」
解説レイヤー。
「プラズマチャージショットも相殺されたらおしまいだからねー…」
「アルティメットアーマーはその全ての力を引き出す」
エックスのダッシュと交差するようにエアダッシュで彼の上を潜る。
「けれどその実、無限に能力が使えることを除けばフォースアーマーとそこまで変化はしない」
チャージショットをダッシュジャンプで回避する。
「だがその能力を君は忘れてるみたいだ!」
通常弾をかわしたそのタイミングで…
来る…。
ノヴァストライクだ!!
だが、幾度か見たその攻撃の対処法もエイリアは心得ている。
ノヴァストライクは飛んだその位置で攻撃位置を固定し、攻撃後の隙は大きい。
それ即ち。
「誘導してしまえばこちらのもの!」
小さく跳んだときにこちらは壁際にいて、大きく跳べば、『発動前の回避』が可能になるのだ。
以前よりいっそう巨大な力…太陽のような光に包まれエックスが突進する。
エイリアはこれをエアダッシュで回避…
彼の着地地点の1歩後ろに着地。
「いっけーーーーーーーーーーーーー!」
振り向き、体を大きく捻り彼の背後からチャージショット。
「うっ………!」
「そこまでです。 2本先取、これにてエイリアさんの勝利となります」
手の内を読むまでに時間がかかりすぎた。
バスターと特殊武器のハイブリッド攻撃、そして通常弾とチャージショットの使い分け。
そしてこれまでの長い長い時間を費やし、こちらの手の内を見られていたこと。
それらを考慮してこの結果だったが、彼女は実戦に耐えうるレベル。…そう判断せざるを得ない。
「私もすでにアクセルに勝ってるから、これで私達3人とも戦えますね!」
「どうして…俺がこんな目に…」
体育座りで落ち込むエックス。
ハンターチームS級はこれにて6人となり……いよいよ戦いへの準備は整った。
アーマーでの強化が出来るエックス。 特殊武器とバスターを完全両立させるエイリア。
セイバー技を自在に使いこなすゼロ。 5種の武器の使い手レイヤー。
変身能力を持つアクセル。 様々な銃を扱えるパレット。
最後の事件は、こうして幕を開けた。
-
次の日、ハンターベースに警告音が鳴る。
「事件発生ね、現場は…ピッチ・ブラック。
それではイレギュラーハンター・エイリア、出動いたします!」
相方は勿論。
「エック…」
シグナスがそれを阻む。
「待てエイリア。能力も整っていない今だ、
君の能力ならパートナーに選ぶのは別タイプの方がいいだろう」
「…そう」
その様子を見てパレットが気を利かす。
「それじゃ今日はひとまず私とエイリアさんで行きましょうよー!」
「……まぁそうねぇ。」
【エイリア&パレット担当事件:ピッチブラック潜入】
真っ暗な闇の中…。ここは何かが行われているとされる地下の兵器工場。
「……潜入ってことでこうっ…、ピッチリボイーンって言う…大層えっちなスーツ着て行くことになるかなぁと思ったんですけどー…」
「どういうイメージよ。そういうのはレイヤーでしょう」
しかし場所としては、彼女が持つそういったスパイものの潜入先としては
ここのイメージはそのままであるといっていい。
真っ暗な中をファンが回転、警備メカニロイドが飛びまわり、警棒の代わりのビームサーベルを持った新世代型が巡回している。
赤外線スコープで見ると…どうやら肉眼では見えぬ、殺傷力の高いレーザーが警備に用いられている模様。
「あの小型メカニロイド可愛いと思いません?」
「最近あれがヤコブ周辺施設にわらわら沸いてて、そんな気にもなれないわ…」
その名を豆Q。
通気口から別の部屋へ侵入、暗い中をバスターで攻撃しつつ……
「あぶなっかしいものが運ばれてるんですよー、きっと!」
コンテナにしがみつき、レプリロイドに当たると殺傷力のあるものに切り替わるレーザーセンサーを降りていき。
「ひゃああ…敵が沢山出てきますよ!」
「私達どちらも遠距離型だからこうやって来られると少し困るわね」
チャージショット、続けて通常弾。
波状攻撃で一気に敵の数を減らしにかかる。
「交代ですー!」
パレットは銃を構える。
「…何その変な銃」
「アクセルバレットを私風に改造してみたんですよぉ」
パレットバレットというらしい。
妙な銃から放たれる弾は敵を次々貫き、次の部屋への扉を開ける。
「…警備兵がいますね」
「ここは私がやるわ」
敵に近づき、弾丸を一気に浴びせ、飛び越える。
感づかれたらその瞬間倒すしかなく、その前に隠れる。
下のフロアまで見つかることなく進むと…今度は真っ暗な部屋に出る。
「…豆Qが光ってますね」
「なるほど、あれが明かりになるわけか……パレット、目はいい?」
「眼鏡かけてるの解りませんー?いつもはコンタクトなんですよぉ」
「私が進むしかないか」
豆Qを始末、トラップだらけと思われるその部屋を慎重に通過、そしてまたコンテナにしがみつき…。
「よう、お嬢ちゃん達。俺に刻まれに来てくれたのかい。」
ここを取り仕切る危険な匂いのする鎌使い。
「ダークネイド・カマキール…だったかしら」
「エイリアさーん、何かアブなそーですよぉ?」
「可愛いツラしてんなぁ。アンタらにも見せてやりたかったねえ。新しい世界って奴をさ…。
ま、旧世代なアンタらが悪いんだ…せめて」
光の鎌が飛び出る。
「俺を悦ばせてくれよぉおお!!」
猟奇的なイレギュラーだった。
-
「…コイツ、戦いをスポーツとして捉えている戦闘狂ってタイプじゃないわね」
小刻みに跳び、鎌を楽しげに振る。
「ぇへ、へへへ!!シャドウランナー!」
楔形の、ボディによく食い込む漆黒の刃が放たれ、床に壁に張り付く。
「!!」
「へへ、へへへ…」
壁を蹴り、空中を移動。
この間にパレットはエイリアと交代する。
敵を撃つ。
「生意気なお嬢さんだなぁ、結構結構!」
「え”」
「よろこばせてくれよぅ…♪」
ガバッとパレットを床に倒し跨り鎌を突き刺し始める。
「ぎゃああああああああああああああああ!!」
鎌を振り上げたところにエイリアが一撃。パレットを助けることに成功する。
「だ、だだだだだだだだだめ!!コレはさすがに楽しめませんエイリアさん!」
「そうだそうだ、その苦悶の表情が、ハハァ…俺にとっちゃ楽しいんだよぉ…!」
「…まず私に任せて」
交差、後ろからチャージショット。
通常弾2発、チャージショット。
敵の攻撃にリズムを合わせ、一定の距離を置いて攻撃を仕掛ける。
「へへっへ…!」
鎌が巨大化する。
「そらよ!」
カマキールの体が発光、更なる攻撃に移る。
「血を見せてくれよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
身の丈の3倍ほどに出力上昇した両腕の鎌が……思い切り振り下ろされる。
鎌だけで部屋を覆い尽くせるのではなかろうか。
「何…!?」
右腕、左腕。急激な動きの前に…
「きゃぁぁあああっ……!」
人間で言う肩から肋骨の辺りまでを斬られる。
「へへへへー、いいねいいねオイルのにおいってのはさ!!」
巨大化したままの鎌を手に陽気に跳ねるカマキール。
「…変態は黙ってなさい!」
新しい転送装置の機能が発動。
『ダブルアタック』だ。
「な!!?」
これはエネルギーを大量に消費するこの必殺の攻撃…。
転送時に移動するサイバー空間へ敵を連れ込む。
ここでは数秒間の間ハンターは更なる力を開放する。
「いきますよー!」
パレットの全弾発射、エイリアの最大出力のレーザーチャージショット。
「なんてこったあああああああああああああああ!!」
元の空間に戻ったときにはターゲットは巨大な傷を負っていることとなるのである。
体のあちこちが爆発、ガクリガクリと倒れていきそして…大爆発。
「…………あ、アクセルに後で慰めてもらったら?」
「はい…そうします……」
遭遇したのは新世代型のイレギュラー。その感性、理解できぬ者だった。
-
「へ?変なイレギュラーに襲われた…?どういう風にさ。」
「正直聞かない方がお互いいいんじゃない…?うん」
次なるミッションは火山の中。毎度のことである。
【エックス&アクセル担当事件:ドロップデッド火山の破壊活動阻止】
「………随分ぽっかりと開いてるね火口」
「足場を乗り継がないと危険だ。アクセル、待機しとくんだ」
「そりゃエックスでしょー?僕はホバーがあるから。」
「うーん…。」
ひとまず待機するはエックスとなった。
「よっと、ほいっと、やぁー!」
飛び降りながらホバー、続けて敵メカニロイドの破壊。
リズミカルに事は進み、横穴へ。ここが正規ルートの模様。
「これは焼却炉?」
「みたいだね。パレットが怖がってたよ。ここはレプリロイド焼却施設だって」
嫌な事を聞いてしまった…新世代を倒して更に先へ。
パイプから熱風が発せられる火山内部。
「…嫌がらせ?」
「俺も文句言いたい位だ……」
そこは針だらけの危険な箇所。
「へんしぃーーん!」
ハイテンションな声をあげて変身。
飛行レプリロイドのそれだ。
注意深く飛行、下へと降りていく。
「また焼却炉か…」
豆Qが飛び出す中、敵をどんどんと倒していく。
「………また降りるんだな」
単調な降下作業がまた続く。
「ええー…飽きたぁ」
「我慢するんだ。モルボーラーに追いかけられるよりはいいだろう」
一番下で、何かの大きな音が聞こえてくる。
ガツン、ゴツン、ゲシッ、ゲシッ、ゴスン。
…一番下でマグマの制御装置を蹴り続けている謎のレプリロイド。
黙ってみていると…
「こけっ。」
咳払いをして跳びあがる。
「!」
真上に落下。一歩退きこれを避けるとレプリロイドは突然空の上へ浮いた。
「何をしている」
-
「こけっ。俺はな、ここにイレギュラーの認定を受けて溶かされていった
レプリロイド達の怨霊の声をこうやって聞いているのさ」
「新世代型レプリロイド…バーン・コケコッカーだったな」
「ぷっ…うくくくくく……んく…いや、な…なんでもないよエックス…」
明らかにアクセルが通信越しに笑っている。
炎の中、真っ赤なとさかが揺れる。
「いかにもだ。ケッコー頭に来ちまったぜ俺はー。ああ、トサカに来た!
こんなんだから今の世界は狂ってるんだよ!」
また現状の世界の話。
「こけっ!焔降刃!!」
空中から鋭い、矢のようなキックを斜めに落とす。
壁へとぶつかりながら蹴り降りる。
「こけけけ!」
炎の弾がぐるりぐるりと回転、エックスに向け降って来る。
「なっ!?」
回避するが…
どうやらコケコッカーは炎に包まれて防御の態勢にあるようだ。
そんな相手である意味よかった。
今回エックスが装備したのは高機動力の『ヘルメスアーマー』。
短時間でのチャージからの3方向チャージショット、
一定以下のダメージを一切カットし、
回避力機動力に優れたアーマーである。
「食らえ!!」
3方向のチャージショットは二度続けてコケコッカーを撃つ。
「ほあ!?」
続けてエックスはコケコッカーの蹴りを回避。
「メルトクリーパー!」
脚を振り上げて床に叩き付ける。
彼の技が発動…炎の波が吹き上がり、相手へと走っていくというものだ。
「エックス、交代!」
アクセルに交代。彼は上空からバレットを乱射する。
「おぉおおおおおおお!」
今度は後ろの装置へと移動、そのパワーで火山活動そのものを活発化させる。
「これで解ったか!?俺がこの火山の亡霊たちと通じ合ってることが!」
「…………そんなわけがない!」
二昔前のエイリアのようなことを言い、交代したエックスはチャージショットを再び放つ。
「思い知れ!!」
すると光に包まれた彼は今度は炎を吐き出し、辺りを炎の柱で狭めたのだった。
「何…!?」
「どうした、戦いの場が狭くなったくらいで先ほどの自信はどこか行ったか!?
コッケーなものだな!!」
「それが言いたいだけじゃないのか!」
エックスは背中を撃つ。
「悪いかよ!!」
辺りをいきなり炎の海へと変える。…一瞬で消えるとはいえこの炎は強力。
すぐに回避、3方のチャージショットは彼のトサカ、クチバシ、腹を貫き倒すのだった。
「…ハーーーーッハッハッハッハッハッハッハ……!」
コケコッカーが爆発しながらこちらへ歩いてくる。それも炎のついた体で。
「コケ!」
だがそのまま後ろ向きに倒れ消滅。彼はマグマと一緒になることも、エックスを倒すこともできなかった。
「エックス!火山活動がコケコッカーのせいで激しくなったわ!
今すぐ…お願い、逃げて!」
エックスは落ち行くリフトを次々と昇ることを強制されたのだ。
「どうしよう!?」
「俺だってこれくらい行ける…行けるさ!」
回避力抜群なそのダッシュ、上へ、上へと乗り継いでいく。
「間に合うかしら…火口よ!」
光が見えた…
「あそこだ!!」
アクセルは直前で交代、出口の目印たるレアメタルを手に入れられてしまうが細かなことだ。
「……ふう」
あっついその場所から彼は飛び出していった。
-
コケコッカーを撃破し、戻ってきた彼は呟く。
「……まただ。」
エイリアは彼を心配する。
「…どうしたの?エックス…。 まだ、始まったばかりよ?」
「ああ…そうだ また始まってしまった。
…こうやって、レプリロイド同士の無益な戦いがまた始まるんだ」
「へっへーん!僕はこれからイレギュラーをもっと狩れると思うと腕が鳴るよ!」
「アクセル!!」
「…いや、アクセルの言う通りだ。始まった以上は…戦わないと」
次なるミッションが幕を開ける。
「…場所はセントラルホワイト。南極の気象管理センターの通称ね
そこにはレイヤーと……私が行こうかしら」
「いえ!」
パレットが声を張り上げる。
「エイリアさんは待機していてください、ここは私が行きますから!」
「……随分やる気なのね」
「前回のこと、これでも反省してるんですよー…。」
「無理しなくてもいいのに。」
パレットにはこのミッションは自らがストレスを発散する意味もこめられていた。
このミッションではライドチェイサーが主体となる。
そのライドチェイサーはレイヤーとパレットがそれぞれ好むものであったからだ。
【レイヤー&パレット担当事件:セントラルホワイト気象制御システム正常化】
全ては気象制御システムの誤作動によるものである。
局地での厳しい条件下での新世代レプリロイドの動作を見るべく作られたこの施設だが、
その新世代レプリロイドにより占拠され…システムが暴走を開始、酷い吹雪を発生させているのだ。
ライドチェイサー・バリウスを走らせる。
「カスタマイズしてきたー?」
「勿論です」
バリウスの従来のライドアーマーと違うポイントは、
様々な使用者に合わせ機能を色々と変更できるということにある。
レイヤーとパレットの使うバリウス二機はそれぞれ、
レイヤーのものはセイバーのような刃を射出する機能が、
パレットの場合はオート連射機能が追加…と大きく変化している。
今回の敵もまた新世代型レプリロイド。量産型ライドチェイサーに乗り、次々と向かってくる。
氷の橋での戦いを制し、クレバスに落ちたりしないようにジャンプ台で急加速、飛び越えていく。
「アレは一体…?」
尾のようなパーツのつく飛行船から降りてくるはレプリロイド達。
それらを倒し、飛行船に一気に近づいて連射。
退散したところを更に進んでいく。
更に過酷になるその道。
氷の壁が迫り、段差も激しいものへと変わっていく。
氷の海を船体まるごとぶつかりに来た飛行船をまた攻撃したところで…
いよいよ到着だ。
壁へ激突、バリウスは大破する。
「…実は過去にチェイサーが壊れなかった事例って1件しかないんだけど、何かの慣習かなぁ」
センター内部は入り口から入ってすぐ地下に向かう構造なのだが、
階にして2階分も雪で埋まっていた。
「ふわっふわの雪ですよー!!」
「寒く…ないんですか」
ぼふっと落下、雪と戯れるパレット。
ターゲットが現れる。
盛り上がった雪から登場する。
ガッツリと大きなそのボディから、じとっとした目が覗く。
「ワシの名はアイスノー・イエティンガー。来たな、旧き者よ」
「悪いけど、お爺さんみたいな口調のイエティンガーさんに言われたくないです」
「我々はいくらでも姿を変えるのだ…そんなものに縛られるお前さんは、それだから旧世代なのじゃよ」
言うことは同じなようだ。
-
イエティンガーはホバーで宙に浮き、腕から氷を乱射し始める。
「アイスガトリング!」
雪の上に突き刺さり、壁にも突き刺さる。
「私が相手です!」
レイヤーに交代。
「Dグレイブ!」
レイヤーが持つ武器の一つ。ゼロからパレット伝いに貰ったものらしい。
正式名称『ドゥルガー・グレイブ』。
「えい、やぁ!!」
斬る、払う、振り回す。
「うぬう…!!」
Dグレイブはその形状ゆえ、扱いには癖がある。
イエティンガーは体が大きく、当たれば縦に横にと満遍なく切り刻めるのだが。
「食らうがいい!!ドリフトダイヤモンドーーーー!!」
跳びあがり、氷をまとって突進してくる。
「!!」
体が大きいレイヤーはこれで突き飛ばされ、氷付けにされてしまう。
「出番ですねっ!」
現れて氷を一撃。パレットへと交代。銃からブラックアローを撃ち出す。
「当たりますよー?」
当てる気なのだが。
「ぐううう…ええい!!」
くるりくるりと回転するその矢は、イエティンガーの背から頭から、次々に食い込む。
「まだまだ!!」
部屋の隅へと移動、イエティンガーが必殺の技を使用するための紫色の光を発する。
「…なるほど。新世代はそこも凄いトコなんですねえ……」
真似しきれぬ専用の能力とでも言うべきか。
イエティンガーは吹雪をはき、空中で巨大な氷の結晶として降らせる。
それはかなりの重量を持ちながらふわふわと移動する特殊なものであり、よく見ると刃となっている。
「きれいな技ですけど怖いなー…!」
再びレイヤーへと交代。
「レイヤーレイピア!」
武器を元に戻し…
「羅刹旋!!」
レイヤーはぐるりと回転しその刃を切り刻み、三段斬りでイエティンガーを攻撃。
「ぬっ…ぐ………!!」
イエティンガーが深い深い、雪の中へと姿を消す。そして…
「どこを動いてるか解るよね、レイヤー!」
「勿論です。次の一発で…最後にしましょう」
雪の中から突き上げるアッパー。
「氷龍昇!!」
「なっ……!?」
その速度、上昇高度。
レイヤーの体は吹き飛ばされる。
「避けられまい!!」
またも氷龍昇。
レイヤーの胴体全体を覆うサイズのその拳が、レイヤーを高く吹き飛ばす。
「くっ………」
だが、次なら行ける。イエティンガーは雪の中でレイヤーを追う。
敵を引き付け………敵へと近づく。
ここでイエティンガーは必ず氷龍昇を仕掛ける。
「食らうがいいっ!」
だから一息にイエティンガーの位置と交差する。
「何!?」
跳びあがり、武器を交換。
「さよならです!」
Tブレイカー…タイタンブレイカーへと武器を交換。
これは、巨大なハンマーであり、防御も何もかもを貫通し…
「はあああああああ!」
叩き落とした!
「んごおおおおおおおおおおおお!!!」
「見事だぁぁぁぁぁ……!」
内包する高エネルギーを体から放出…爆発。氷が一気に蒸発した。
-
あの方のことか ああ知っている
話せば長い そう 古い話だ
知ってるか?姫様は3つに分けられる
勝気でおてんばな姫様、おしとやかで綺麗な姫様、庶民的な姫様
この3つだ あの方は―
騎士団へ、謁見拒否は許可できない 謁見せよ
だろうな ドキドキ上乗せだ
十日前――姫様を巻き込んだ争奪戦があった
『エリア第二ダンスホール』で大人数による姫への告白!
左も右も貴族だらけだ!
騎士団、エスコートに向かえ!
よう相棒、俺たちにお似合いの任務だ
彼は『姫様の護衛』と呼ばれた騎士
『彼』の相棒だった男
隣国の貴族接近!姫をエスコートし、隣国の貴族に御帰りを願え
しまった!玄関でお出迎えだ
私は『彼』を追っている
今までの奴より告白するのが速い
大国の王子だ! 油断すんな
この国の姫の護衛がいる、噂に聞いた奴か
野良犬どもには贅沢な会場だ
ここは『宮城』 フラレに口なし
そして――護衛の言葉で、物語の幕は上がる
あれは雪の降る寒い日だった
守り抜くぞ!姫様を!
-
暇でやった、反省は…たぶんしてない
エリ「反省しろよおい」
-
あれのことか ああ知っている
話せば長い そう 古い話だ
知ってるか?空母は3つに分けられる
全長150mくらいの軽空母、全長200mは当たり前の正規空母、
全長130mぐらいの護衛空母
この3つだ、あれは――
聯合艦隊へ、撤退は許可できない、索敵せよ
だろうな、被害上乗せだ
60年前――世界を巻き込んだ戦争があった
ミッドウェー諸島沖で大規模な戦闘!
どこもどこも攻撃機だらけだ!
大和、掩護に向かえ!
よう中将、俺たちにお似合いの任務だ
彼女は『死神』と呼ばれた駆逐艦
一時期聯合艦隊の旗艦を務めた女
米国雷撃機接近!全機撃墜し、空母を死守しろ
サイパンの基地でお出迎えだ
私は『彼女』を追っている
今までの奴より正確だ
SBDだ! 油断すんな
塗装の派手のがいる、噂に聞いた奴か
米兵どもには贅沢な墓場だ
ここはミッドウェー 死人に口なし
そして――四空母の撃沈で、物語の幕は上がる
あれはよく晴れた日だった
生き残るぞ!雪風!
エリ「またかい!」
いいじゃないかよー…
-
レイヤーとパレットは雪まみれになって帰って来た。
「う”ー、あううう、寒いですー」
カマキール、コケコッカー、イエティンガー。不可解な言動をする3体は、どれも新世代レプリロイドである模様。
「能力も比較にならないなら思考も突飛…最早別パターンね。 『新世代型イレギュラー』…といった所かしら」
「新世代型イレギュラーか…。」
エックスとエイリアは話していた。パレットが顔をアクセルに拭かれつつ口を挟む。
「どうせシグマウイルス食らったりとかしてるんじゃないんですかー?」
「それはないわ。新世代型は完全な耐ウイルス性能を持っている。
というのも、新世代型はコピーチップによりDNAパターンを変えることが出来るから。ウイルス反応も一切見られない…
内部から壊れたタイプのイレギュラーと見るしか」
「誰かが裏で操ってるんじゃないですかねー。」
戦いは続く。次は昔ながらのエックスとゼロのコンビ。
「よし、行こうゼロ!」
「ああ。次はお前の好きなライドアーマーが絡む事件だそうだぞ。 …敵は、悪魔のような名を持っているらしいがな」
「…悪魔か」
【エックス&ゼロ担当事件:ブースターズフォレスト開放】
ヤコブ計画のスタート前、ロケットを作っていたとされるこの場所。
廃ロケットの森とも呼ばれていて、作業用ライドアーマーもそのまま放置されている。
そのライドアーマーを乗りこなしここを占拠しているのもまた、新世代レプリロイド。
森の中を進むとそこには旧式ライドアーマー・サイクロプス。
設置台数の少ないこれを量産化したものがライドアーマー・ゴーレムである。
「いっけぇぇ!!」
搭乗、進み始める。このライドアーマーの特徴はなんといっても、そのハイパワーにある。
「オラオラアアアアアアアアアアアアア!!」
敵を粉砕。
「でやああああああ!」
踏み潰す。
「以前のライドアーマーほど使い勝手がいいとは言えないんじゃないのか?」
「この動きの重さがいいんだよ」
「そうか。」
エイリアからの通信。
「いいわねぇエックス…私もライドアーマーで暴れてみたい」
「任務が終わったら君は非番だろ?一度ここで暴れてみなよ」
「お前達さっきから何をイレギュラーな会話をしている」
ベルトコンベアに乗り進んだり、コンテナを破壊しながら進む。
ライドアーマーが大量に出てくるゲートでは本領発揮。
「止まれ!」
肩パーツに備えられたキャノンで動きを止め…
「オラオラアアアアアアアアア!!」
ストレスを乗せて粉砕。
「…ふう」
扉を潜り、また森を進んでいく。エイリアとエックスが話し始める。
「ここは重さで動くリフトだろう?」
「そうそう。それでね、このスイッチを使って…」
あれやこれや思いを巡らせる。
「それで、ここでは衝撃でコンテナを破壊しないように」
「ソフトに移動だね。」
「コンテナが壊れたら進めなくなるから慎重にね」
施設内を、動きの限られたライドアーマーでいかに突破するかの相談だった。
結果、スムーズな移動と戦いで次の扉を潜ることが出来た。
「ヒーーーーーーヒッヒッヒ!!」
始まりの戦いの役者、エックス、ゼロ。一応エイリアもいて、そして奴もいた。
「VAVA!」
3人の声が重なる。
「オ前達ハ、マダ無駄ナコトヲシテイルヨウダナ…?」
だが今回はこちらがライドアーマー。VAVAは乗っていない。以前と逆。
一度VAVAにこの攻撃をやってみようと思っていた…
「コレカラ世界ハ滅ブトイウノ…ニ!?」
ライドアーマーは大きく跳び…
「キ…キキキキ…キサマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
立っている状態のそのVAVAの頭を
重い、重い……膨大な質量を持ったライドアーマーが踏み潰す。
「グガゴゴゴゴゴゴ…ガ…」
形容するでもなく、本当にVAVAは潰されていった。…また蘇るのだろうけれど。
更に進み次の扉にはエレベーター。ライドアーマーのエックスを持ち上げ、建物の最上階へと連れて行く。
シャリ…ブチッ、モシャリ。
巨大な塊の後ろで何かの音がする。これは一体?
のっそりとそれは向き直った。…手には…笹。そう、彼こそは。
-
「パンダだ………。」
エックスが言う。
「…パンダだったのか。」
彼らが探していたのは新世代レプリロイド、バンブー・パンデモニウムだった。
笹をかじりながら、低い低い声で、もそもそと喋り始める。
「やぁ…。 知っているかい……? ロケットの始まりは…戦争に使われるミサイルだったんだよ…。人が、人を殺すために作った道具だったんだ。」
「………」
「そうやって、戦争の末に社会は、役に立つ存在を世に生み出していっているんだ…。
僕らは…この滅びたがっている世界を滅ぼしてあげて、新しい世界へ行く。」
「待て、それは…!」
「うん。それはイレギュラーな考えだよね。だから僕らは…戦わなきゃいけないんだ。」
「グリーンスピナー!」
竹の形をしたミサイルが腕から発射される。
「行くぞパンデモニウム!」
エックスはチャージショットを放つ。今回装備したイカロスアーマーは攻撃力特化型。
チャージショットは貫通力がとても高い、巨大レーザーとなる。
「んぉ…。」
「ほっ…!」
今度はのんびりとした動作で大きめの爆弾を二つ落とす。間に入り回避、そのままチャージショットへ繋げる。
突然、足元に巨大な竹が4本生え始める。
「何!?」
グリーンスピナーがその合間に落下してくる。パンデモニウムは突進して竹を破壊。3重攻撃だ。
「そ、それなら…!」
高いジャンプ力で飛び越し、後ろから攻撃。
「いっくぜぇ!」
ゼロへと交代、ゼットセイバーで斬る。
「おぅ…」
パンデモニウムは次なる攻撃が発生する。
「あーららららららららら!」
さながらライドアーマーのするそれのような、チャージしての連続パンチ。
「ぐぉおあああああああああ!」
吹き飛ばされる。
「ゼロ、やっぱり俺が戦うよ!」
エックスへ交代。
「白黒つけるよっ」
「!?」
…パンダだけに。パンデモニウムはエックスを捕まえ…鯖折りにしたのだ。
「ぐあぁあああああああああ!」
「俺が相手だ」
ゼロへまた交代。今回はピンチがあまりにも多すぎる。
「氷龍昇」
イエティンガーから得た技。宙へ昇る回転斬りだ。そしてそのまま
「焔降刃!」
刃を下に向け、炎の力を纏い突き刺す。
「あっちゃあぁぁぁあ!!」
パンデモニウムの弱点だったようだ。…黒の部分が増える。
「あーあららら」
紫色の光を発する。…パンデモニウム最強の攻撃が…来る。
「くっ…!?」
「葉断突!」
パンデモニウム最強の攻撃。一時的に恐ろしいほどの加速力を得て、相手を粉砕するパンチを放つ。
「ぐぁあああああああああああああああああああああああああ!」
ゼロの体が勢いよく吹き飛び、ボディが砕け散る……まさかの瀕死状態。
「メルトクリーパー!」
「あぁぁあああああ…!!」
真っ黒になったパンデモニウムはもっさりと倒れ、爆発。
……稀にみる強敵との戦いはこうして幕を閉じた。
-
「今まで調べた結果から、捕まえたイレギュラー達にある一つの共通点があることが見つかったの」
エイリアは調べ続けていた。
「結論から言うわ」
画面に映し出されたのは一人のレプリロイドの画像。シグマだ。
「………どういうことだい」
「新世代にとってはDNAデータはいくらでも変えられるものであり、
本体の姿とはまた別のものであり、問題はないの
だから、そこから共通項が見つかることなんてほとんどないはず。
…でも、あったのよ… どのイレギュラーも、シグマのDNAパターンに似たパターンを持っていた」
「……」
「これが何を意味するのか、まだよくは解らないけど…調べてみる価値はありそうね」
次なるミッションへ。
「さ、調べ物も終わったことだし…今度は私がミッションへ向かうわ」
エイリアは張り切っている。
「どうしたんだい、エイリア。」
「次のミッションは全力で当たらせてもらうわ。私の愛機でね!」
エイリアの愛機…ライドチェイサー・シリウス。お洒落なデザインで空をゆったりと走る…空の散歩を楽しみたい夢を叶えるチェイサーだ。
「俺はかっ飛ばせるチェバルがいいよ…君よくあんなのに乗れるね。」
「ダメよ、エックス。町の中を安全に走るにはアレじゃないと。」
もっとも、安全な走行とはこのミッションは行かないだろうが。
「…そうだ。練習がてら今度一緒に…町に出かけてみる?」
さりげなく言ったつもりで上ずった声でデートの約束をつけて彼女は任務へ向かう。
【エイリア&レイヤー担当事件:ダイナスティ暴走レプリロイド捕獲】
そこは人工の明かりが照らす夜の街…ダイナスティ。
競い合い立ち並ぶ高層ビル。透き通る看板が人々を誘い、標識は行き交う車に注意を促す。
車はどこへ行くとも知れず空の上を走っている。
「夜の街ですか………なかなか綺麗ですね。あまり出歩くことはありませんが」
「オトナな世界が似合いそうな見た目してるのに。意外ねぇ…」
「…エイリアさんはどうなのですか?」
「私も…そうね。研究に、汚い仕事に……その後もハンターの仕事でみんなのオペレーター。
気がつけば仕事ばかりする、大人のお姉さんを演じてたけれど。」
頬を染め、本心を呟く。
「やっぱりダメ。私は…似合わないな。
朝の明るい町をチェイサーで散歩したりとか、そういうのがいいかな。…隣にエックスなんか呼んだりして」
「そうだね。来週の日曜日とかになる?」
通信は入っていた。
「…………………!」
エイリアの頭がストップする。
「え、エックスさん……」
机をダンダンと叩く音が聞こえる。
「プククッ…あはは…はー、もう! あーーっはっはっはっは!ひゃーーー、もう…苦し!!」
「アクセル!!」
そしてターゲットが現れる。
「HYAHAHAHAHAHAHAHA! BREAK OFF! SHOOT!SHOOT! BREAK OFF!!」
奇声を発して暴れ回る柔らかな物体。
「市民の皆さん、速やかに退避をお願いいたします!」
スピードは出ないものの、小回りが効くのがシリウスの特長だ。
ブースト機能で敵を追尾する。
「ターゲット確認。攻撃に移ります」
「了解」
カーチェイスが始まる。
備え付けのショットで攻撃し、敵の電撃や半透明の弾を避ける。
「加速装置が各所に備え付けられていますからそれを!」
「解ったわ!」
丸いそれを取り加速…素早い相手との距離を縮めていく。ショットを当て続けるが…看板が来る。
「きゃっ!」
慌てて回避。続けて大きな柱。
「おっと…」
これもかわす。
「下へ向かいましたよ、エイリアさん!」
アイテムを取り加速、下降。
「トンネルの中なら戦いやすいわ!」
奇声が反響するトンネルの中で敵を集中攻撃。相手からの攻撃も一つ一つ丁寧にかわしてまた一撃。
「逃がしませんよ!」
ここで交代、町の下部へと降りていった敵を加速して落下、追う。
三次元のカーチェイスはしばらくの間続き…敵の体が燃え始める。そして。
「追いつきましたね!」
-
奇声が止まり、町を走るリフトの上で戦いがスタートする。
どうやら大きなターゲットはアーマー部分だったようで、中身は小さいレプリロイドだったようだ。
手足が伸び…顔を現す。
「……お、オレ…イレギュラーじゃないよ………」
暴走してるときはあんなに五月蝿かったというのに、
話となると話せずにオドオドする。奇妙なタイプのイレギュラーだ。
「それなら、止まりなさいと言ったときに止まりなさい!」
「…だって。あの方が…シグマ様が大都市を必要とするから………」
「やっぱりシグマの命令ね…… 悪いけどやられてもらうわよ」
ギガボルト・ドグラーゲンとの戦いが始まる。
「GET YOU!」
またも奇声。
ぐるりぐるりと回転し、半透明の弾を作り出し…遠隔操作で動かし始める。
「いっけぇー!!」
チャージショットも阻まれた。
「交代です」
レイヤーが交代。
「Vファン!」
バショウファン。扇子の武器だ。
足をあげた色っぽい姿勢で身を守りながら…
「はっ!てい!そぅ!」
華麗に、かつ激しく敵を斬る。
「HURRY UP!!」
次なる攻撃は弧を描いての突進から始まる。
まずこれを斬りつけ、敵に備える。
「NOT AT ALL!」
半透明の弾が合体、一つの大きなクラゲ型メカニロイドとなって動き出す。
「な…」
ゲル状のボディがレイヤーを包み込む。
「もご…むぐぐ…!」
「大丈夫!?」
エイリアが敵を撃ち分裂させる。交代である
ドグラーゲンは電撃を放つが
「はぁ!」
1,2,3発とバスターを撃ち
「いっけえええ!」
チャージショットを一発。相手に続けざまにダメージを与えた。
敵は避難、レイヤーの上へと移動する。
「FALL ON YOU!!!!!」
紫色の光を発し、エネルギーチャージ。
「来る…!」
複数に枝分かれした雷が、まるで爪で引っかくかのように床に衝撃を加える。
「はっ…!」
1発目、2発目、3発目と回避。
「終わりよーー!」
チャージショット。
「NOOOOO……!!」
ドグラーゲンは横文字を発したまま宙に浮かび消えていった。
落下することなく。
「………やっぱり新世代ってわからない」
「イレギュラーの考えなど、と言ってはそれまでですが、…何か考える必要もありそうですね」
-
「おかりなさーい、エイリアさん、レイヤーさん!」
ドグラーゲンのミッションが終わり、二人が帰還。
パレットはどこかニヤニヤしているようにも見えるが。
「さてさてー。お二人にはここで休んでもらうとして…
実はもう次のお二人にはミッションに向かってもらっているんですよ」
「次は誰と誰かしら」
エックスが顔を覗かせる。
「残ってるのはあの二人しかいないよ」
【ゼロ&アクセル担当事件:メタルバレー・メカニロイド暴走停止】
荒涼とした大地。クレーンに鉄骨、ライドアーマー。
男性陣に向かわせるにはうってつけの、男の現場という所か。
「へぇ…こんなトコにいったい何が…」
ドガンと大きな音が鳴り響く。
「げっ!?何アレ」
「……アレが今回倒すべき相手ということになるか」
単眼の、全長10mはあろうかという巨大メカニロイドが落下してきたのだ。
「アクセルー、聞いてー」
「ん?何さ」
「そのメカニロイドね、物凄い危ない奴らしいの。
力任せに壊そうとするとメタルバレー全体が大爆発を起こしちゃうみたい」
「へ、へー…で、どうすればいいって」
「まずは逃げてみて」
「もう逃げてる!」
敵から逃げつつ雑魚のメカニロイドに躓いたりなどしないように。
巨大メカニロイドのパンチなどをかわしながら逃げ続ける。
「まずは高さのある場所まで逃げてみて!」
行き止まりと思われた場所には崖…その上にクレーンのレバーがある。
「なるほどね」
レバーをバレットで攻撃。すると…?
「よーし!」
クレーンが急激に移動、アーム部分がメカニロイドの頭に激突した。
「もう一か……わぁあああああ!」
目からビームを出し、アクセルの体を焼く。
「うっ……」
続けてメカニロイドのパンチが崖とアクセルのボディに叩きつけられる。
「ぁああああああああああああ!」
「交代だ」
しかしゼロは近距離型。レバーを攻撃するのには向いていない。
だがそこはゼロ。うまく敵の攻撃の合間を見計らいレバーを斬り、作動させる。
「よし、追うぞ」
敵が方向転換した。
「エネルギーが暴走してるみたいですー!早く追ってください、ゼロさんっ!」
「うむ」
先ほどとはうってかわって、追う側になったが今度は時間に追われるハメとなる。
ジャンプ、破砕音と共に屋根が砕かれる。
「内部か」
メカニロイド倉庫に入ると…そこで待っていたのは。
「ククク…復活シタゾ ゼロ、後アクセルとやら!」
「チッ、メカニロイドに踏み潰されることはなかったか」
「ハッハッハ、危ナカッタガナ!」
「危なかったんだ……」
面倒な奴との戦いになる。
「アッハァァァァァァ!?」
少しの戦いの後VAVAは逃げ、ゼロたちは再びメカニロイドを追う。
-
「……えっと、レバーは左右に動く…と。」
昇降機で昇ってすぐに現れた。
「よっと!」
アクセルがレバーを作動、左右へ動くレバーはメカニロイドの頭を直撃。
「もう一発だ」
交代、またもレバーを攻撃。
「…何」
まだ余力はあるようだ。ビームを目から放ち、ゼロを焼こうとする。
「物騒な物を向けるなよ」
クレーンが直撃、メカニロイドの頭がぐわんと横を向く。交代。
「いっけー!! …わっ!?」
腕につかまれ、床に叩きつけられる。
「いってぇええ…」
「後は俺に任せろ」
アクセル戦闘不能。ゼロはレバーを攻撃、これにてメカニロイドは機能を停止。
「ゼロさーん、この先に巨大な反応があるんです。行ってみてくださーい」
「…うむ」
床から水晶が飛び出…その中から現れたのは
「ゴキブリ!?」
「違うよパレットー。…なんだろ」
「ゴキブリだな」
アースロック・トリロビッチ。
「俺は三葉虫モチーフだ、覚えとけポンコツどもがぁ!」
老人のような声がする。
「俺達の考えなんて旧世代のジジイなお前らにはわからんだろう!」
「悪いけどあんたの方が年取って見えるよー?」
「お、俺を馬鹿にするなよー!能無しどもがー!」
しゃがれた声の若者との対決。
「ほらよー!」
水晶が足元から湧き出、トリロビッチは突進でそれを崩す…。
ゼロは水晶から飛び降り、三段斬りでその甲羅をはがす。
「ぎぁぁぁ…」
「葉断突!」
そのまま攻撃、ダメージを与える。
「羅刹旋!」
ぐるりぐるりと回転、敵を刻む。
「これでも食らえー!」
水晶の壁で複雑な反射に変えた上で、真ん丸い…反射弾を放つ。
「面倒な敵は嫌いだな」
くるりくるりとそれらをかわしてまた一発。
「うっひゃぁああ!」
紫色の光を早くも放つ。
「もー、怒ったぞお!」
水晶が足元から、天井から湧き出る。
「ほらよーーー!」
それを波のようにしてゼロへと滑らせてくる。
どうやら破壊できる代物ではなさそうだ。
「面白い攻撃をするな」
地形攻撃を全て回避。これで潰されるのはよほど遅い者のみであろう。
「最後だ」
三段斬りでまたも殻をはがし、一撃。
「嘘だろぉおおおおおお…」
すぐに倒れたのだった。
「メカニロイドの強さに頼るとやはりその程度か……始めに倒すべき敵だった。」
-
エックスとエイリアは数えていた。
「俺とゼロ、ゼロとアクセル、アクセルと俺」
「私とレイヤー、レイヤーとパレット、パレットと私…これで全員出たことになるから
次にミッションが来たときにはどうしましょうか」
ちらりとレイヤーを見る。
「え?」
【ゼロ&レイヤー担当事件:トロイアベース・ヘリオス暴走停止】
ヘリオス……
今から数百年後の世界の人物ではない。
ヘリオスとは、ハンターとしての高い技術を誇るトロイアベースが持つ
自慢の高性能訓練プログラムである。
戦闘のため自分の力を少しだけ解放したとされる、黒きボディのゼロが言う。
「お前、名をなんと言う」
「れ、レイヤーです、ゼロさん…」
「うむ。行くぞレイヤー」
近い能力を持つ二人同士で組み合わせた場合はどうなるか?
それを試してみたのだが、図らずもレイヤーの望みが叶う形となった。
そんな二人を待ち受け、牙を研ぐは復讐者。
彼らは知らない。100年の時を重ね続けてきた憎しみが、ゼロを追っていたことを。
「私は戦いにおいてその…未熟な所が目立つと思いますので、その…ゼロさん」
「サポートはするが、お前自身の成長のため、敢えて戦ってみるのもいいだろう。
…最初の訓練が見えてきた。まずは俺がやろう」
「はい!」
バーチャルシフト。場所は海の上。
訓練に使われるのは小型メカニロイド豆Q。
空から一定パターンで5体で現れるこれをどれだけ効率よく斬り刻めるか。
最初にして一番難しいものである。
「厄介なものだが…いつもこうなのか」
「暴走して有り得ない難易度に設定されていると思うのですが…」
だが究極のレプリロイドはあっさりと豆Qを切り刻んでいく。
5体、10体、15体、20体……
110体でクリアして次へ向かう。
「む?」
「どうやら、違うみたいですね」
難易度が上昇する。
「…わ、私にやらせてください、ゼロさん!」
「いいだろう。やってみろ」
Tブレイカーへ変更、入っていく。バーチャルシフト。
…そこは無限に続く空。無限の落下をしながら、空を飛ぶ豆Q1体を倒せるかどうかというもの。
「はぁああああああ!」
殴り続け、何とか破壊。
「…何とか保てたようですね…。」
次は移動するリフトの上での豆Q破壊。
その次はベルトコンベアの上での豆Q破壊。
その次は巨大豆Q破壊。
「あの変な物体の相手するの疲れないか」
「い、いえ…全然疲れません!」
その次にやってきたのは…
「レイヤー、次の相手は普通の兵士を相手にした訓練プログラムみたいだよ?頑張ってー!」
ワープした先は。
「ヒーッヒッヒッヒッヒ!」
「昇龍拳!」
「あっはぁぁぁぁぁ!?」
レイヤーはVAVAを蹴散らし進む。
「豆Qの方がまだ戦っていて面白いというものだな。」
最後は巨大な龍のようなものに包まれた豆Qの破壊。
尋常でない耐久力だが、ゼロの攻撃の前にあっけなく敗れた。
「訓練プログラムはこれで終わりのようだ……行くぞ」
そこにエイリアが割り込む。
「待って、ゼロ、レイヤー! …そこに、何か不明なデータがあるの!」
「何」
-
電子の海を渡り歩いてきた、100年の復讐者。
その復讐者の『名前』を彼女は読みあげる。
「ファイル名『C・M』! 古い反応で、カプセルの反応でもない!…これは、一体…!?」
復讐者C・Mが待つその光の柱。
ゼロが進むとそこには………。
「おい!ワイリーのロボット!オイラが成敗してやるッスよー!」
「何だお前は」
「カットマンっス!必殺ローリングカッt」
しかし敵ではなかった。剣が…振り下ろされる。
「最後に兄貴として… エックス、コイツには気をつけるッスよーーーーーー!!」
そしてターゲットが現れる。
滑稽な姿をしたそれは…
「オプティック・サンフラワード…だな?」
ひまわりの形をしていた。
「私はこの場所からよく人工衛星を通し宇宙を眺める。」
「…そうか」
「この地球は可哀相だ。あなた達古い世代の者達に取り付かれているんだから」
プログラムのみで姿を現した新世代が相手だ。
草花に包まれてきゅるりきゅるりと姿を消すサンフラワード。
「ここだ! あーっはっはっは!」
ひまわりの、太陽のような眩しい笑顔で地形を変化させる。
「厄介な相手ですね…」
レイヤーが交代。
「Kナックル!」
カイザーナックルに持ち替え攻撃を始める。
「竜巻旋風脚!!」
「なぁーにぃ!?」
長い脚を勢いよく回転させサンフラワードを攻撃。
「ほーらほら!」
サンフラワードは虹色の球状の網を放つ。
これは恐らく相手に当たると閉じ込める性質のものだろう。
縦横無尽にバウンドするそれを何とか回避し
「焔降脚!」
植物型ならこれが効く…と思っていたがそんなわけではなかった。
「甘い甘いー!」
そのまま捕まってしまう。
「大丈夫か」
虹色の網を破壊、ゼロが交代する。
「これならどうだ!!」
宙に浮き、回転ビーム。
ゼロはサンフラワードの周りを一回転、またもセイバーで斬る。
「まだまだ行くよ〜」
声を震わせてビーム。
今度は二つのビームであり、奇妙な動きをしていた。
「………なんだこれは!?」
一定の高さから、床へと垂直にかけられるビームが、端まで行ったらまた天井に。
「光を自在に操る、ということでしょうか」
「あっはっははー!」
踊る。
「アースクラーーーーッシュ」
背後には人工衛星。
「懐かしい技の名前だな」
殺傷力のないレーザーが収束、ゼロを捉える。
「なっ!」
天から降り注ぐは光の柱。巨大レーザーがゼロの体に打ち込まれたのだ。
「ぐぉおおおおお!!」
「ゼロさん!!」
「これで終わりだ!」
もう一発。
「んぐう…」
最後の一発。
「ぐああああああああああああああ!!」
レイヤーへと交代。
「どうやら撃ち止めのようだ…この攻撃を最後までとりあえずは受けきれたようだ…」
「喋らないでくださいゼロさん!」
「よくもゼロさんをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「何ぃいいいいいい!?」
気迫がまるで違う。レイヤーの怒りが…その手に何かを生成し始める。
「…な、何でお前その剣を……シグマ様の…!?」
ヘリオスに訪れた者のデータはある程度、あらかじめ探し出すことが出来る。
その中にはなんとシグマもいたのだ。
…シグマが使っていた剣のデータをコピー、自分用にとっておいたのだ。
その形状はゼットセイバーの2倍ほどのサイズであり、
驚異的な重量と破壊力を備えている。
「葉断突!!」
怒りのレイヤーによる、最強の武器の、偶然にもサンフラワードにもっとも有効な攻撃。
圧倒的重量の剣がサンフラワードに突き刺さり……貫き、バキリと体を折り、砕く。
「こんな者にいいいいいいいいいいい!?」
手足が、葉となって散っていきしおれる。ひまわりの最期だった。
-
「ということは…ヤコブ関連施設にシグマが?」
「ええ。彼の言葉で確定と言えそうです。
そ、それよりゼロさんは!?」
「ゼロは毎回無茶するよ… 今はライフセーバーの所にいるんじゃないかな。」
そしてレイヤーはゼロの元へ。
「…大丈夫かしらあの子」
「………!? 重力研究所上空に奇妙な物体が発生。これは…?」
「何だろう。調査してみた方がいいな」
「それじゃ私達が行きますねー!」
「えっ…」
「僕らにかかれば楽勝だよーこんなの!ね、パレット!」
「そうだねアクセルー!」
「………ちょっと私ライフセーバーの所行って来るわ……」
「ああ。行ってらっしゃい」
【アクセル&パレット担当事件:ブリムローズ・巨大物体調査】
「あまり考え無しに動かないようにねー。何があるかわかんないから」
「重力関係の施設なのかなー?」
「どうかな?重力研究所の上空にあるからってそうとは…」
あれこれ話しながらワープ。
「このスイッチ何かな」
赤色のでっぱりが見える。
「アクセルの方が考え無しに動いてるよー!」
ぐるり…。部屋が…180度回転する。
「わぁあああ……!!」
ように見えた。実際は重力の向きが変化するのだ。体感としては実は変わらない。
「お。敵が落ちてきた」
「部屋全体が変わるってことだね」
そして、彼らの危なっかしい戦いが幕を開ける。
「あぶなーーーーーーーい!」
天井にはトゲ。この状態でスイッチを踏むと…?
「ひゃああああああ!?」
ホバーで何とか回避。
天井にトゲ、下にブロックがある状態でスイッチを踏むと…?
「お。降って来た」
ブロックは敵に降り注ぎ破壊。同時に安全に移動することが可能となった。
「…緑色のスイッチって何かな?」
「パレットーーー!危ないから!」
踏む。…部屋が90度回転した。
「…なるほどー!」
もう一度踏むと更に90度。
「で、ブロックに囲まれちゃったけどどうするー?」
「もう一度押すとどうなるかな。」
答えは…潰される。
「…………え、エイリアさーーーん?」
「はいはい…」
ハンターベースへ転送。もう一度突入する。
「長い道のりだったね…」
トラップを抜け、トゲのトラップ部屋を抜け…どんどん先へと。
「そういえば私達だとやや火力不足だけどどうしよう?」
「うーん……でもまぁ火力不足なだけじゃないよ。僕ら身軽だから何とかなるでしょ」
コピーショットでレプリロイドを倒し、トゲの足場を渡っていく。
「メタルゲーット!」
「そこまでしてって…随分がめついのねーアクセルー。」
更に進み、最深部。いよいよ現れるは…ターゲットだ。
立方体が落下、床で砕けて中から現れる。
「!! 下の研究所のアントニオンさん!?…優秀だったんでしょ、どうしてこんなことするの!」
「アントニオンさんー?何何、プロレスラーか何かー?」
「200年前の話でしょそれ!」
「ふむ。私らのプロトタイプがやってきましたか。…貴方は新世代だ。解らないんですか?」
「ああ、解るよ!何が正しくて、何が間違ってるか位」
「そうですね、私にも、解ります。」
「間違っているのは、この世界だということ位ね!」
-
部屋が回転するのか、アクセルたちが回転しているのか。
アントニオンは重力にお構い無しに動く。
「私は重力に逆らいますよ。いや、私自身が重力を発生させることも出来る。
見せてあげましょう、私の力を」
ぐるりと回転、設置したブロックが落下する。
「危ない!!」
回避。ブロックが持ち上がる…アントニオンが床の下からブロックを持ち上げたのだ。
「なっ!」
投げ飛ばし、アクセルへと落下する。
「覚悟なさい」
ぐるりと回転。
壁や天井を走るアントニオンはここで技を使い始める。
「スクイーズボム!」
小型ブラックホールを発生させるというものだ。
様々な攻撃を吸収する。
「パレットー、交代!」
「出番ですね!」
銃を持ち替えて交代。
「ブラックアロー!」
すぐさまその頭で弱点を捜し当てた。
「無駄ですよ!」
ブラックアローは吸い寄せられ、消えていく。
「とう!」
緑色の粘液を吐き出し、パレットの動きを封じる。
「きゃあああぁあ…」
「食らいなさい!」
柱を持ち上げ、触覚で掴みそれで叩く。
「きゃあああああ!」
「僕の出番だ!」
アクセルが交代、パレットを助け攻撃に転じる。
「おららー!!」
バレットを至近距離で乱射。スクイーズボムに吸収されないように。
「邪魔をするなーーーーー!!」
紫色の光を放つ。
「えっ!?」
ブロックが発生し…落下。
真ん中、右、左、真ん中、真ん中、左、右…
次々に降り注ぐブロック。
「クソッ……!」
「アクセルーーーーーー!」
…何とパレットが庇った。
「えっ!?」
パレットはブロックの下敷き。
頭部を強打してしまう。
「パレットーーーーーーーーーー!?」
「…うぅう……」
交代。アクセルの出番だ。
「叫ぶ暇があるなら攻撃することですね!」
柱を持ち上げ、振り回す。
「ぐあぁぁあ…!」
「さぁトドメです!」
持ち上げる。
「コピーショット!」
「ぐっ…不完全ですよ、貴方のコピー能力は……!」
攻撃のためのコピーショットではない。
一度コピーショットで攻撃。もう一つの腕で…パレットの撃とうとした武器を使う。
「ブラックアローーーー! …だったかな!?」
「!?」
二発連続でのダメージはさすがに痛い。かわしたい…が…
もう吸い込めないのだ。矢は追いかけ、近づいてくる。…そして。
「この、私がああああああああああああ!?」
背中にグッサリとブラックアローが刺さり…そのままアントニオンは落下。
打ちつけると同時に更にブラックアローを食い込ませ、倒れていった。
「うっ…………ううぅ…」
アクセルはフラつく。
「まだ…だ…!」
アントニオンが起き上がる。
「全て飲み込んでご覧にいれよう!!」
スクイーズボムが拡大…あらゆるものを飲み込んでいく。
「!?」
施設全てを包み込み……大爆発。
「うぁああああああああああああああああ!!」
エイリアが緊急の転送でハンターベースに帰したときには、ボロボロだった。
-
「結局、この事件もシグマの仕業か……」
「そうなるわね。VAVAもやっぱり絡んでいるようだし」
今は忙しく、手が離せないものも多い。
気がつけばハンターベースの司令室に居るのもエックスとエイリアの二人だけ。
「ゼロ、アクセル、パレットが重症、レイヤーもゼロの看病で手一杯…か」
「………。」
シグナスは会議、ダグラスは血の繋がらない娘であるパレットの様子を見ている。
ライフセーバーは勿論医務室だし、ゲイトはコンピュータの中。
そこに桃髪の彼女がやってくる。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「先輩!?どうしてここに。」
「人手が足りないんでしょう?協力するわ」
「…有難う御座います」
そして…すぐにアラームが鳴り響く。
「通信が割り込みます! …これは!?」
「何だ!?」
シグナスも駆けつけた。
画面いっぱいに六角形のシグママーク。
真っ赤に染まるその画面。
そしてそれらがパラリパラリと、
パズルのように解けていくと………
「!」
エックスがその顔を認識する。
敵は顔をあげる。
「シグマ!!」
奴の顔が…またも現れたのだった。
「久しぶり、というべきかな…?エックス。」
-
「…シグマ!」
「そう、呼ぶことを許そう。いかにも私は…シグマだ。」
「今回の事件もお前が仕組んでいたんだな!」
「そう、私だ…そしてお前との因縁もここで終わりだ!
私は衛星軌道上で待っている…そろそろ決着をつけるぞ…!」
言葉はそれだけ。あっさりとしたものだった。
「エックス。私の考えをここで言わせて貰いたいんだけど」
「?」
「…ヤコブ計画が最初からシグマに狙われていた?」
「ええ。そうとしか考えられない。
「今回事件が起こったのは…」
新世代用プログラム、宇宙のための重力研究所、新世代レプリロイドの地下基地
ヤコブ計画以前に作られていたロケット開発所、大規模な電力を用いる海上都市
宇宙開発材料の鉱山、新世代の耐久性テストの施設、イレギュラー廃棄用の火山
「…何らかの方法でヤコブ計画や新世代型のそれと関わりがある。」
「つまり…」
「今回の事件は大掛かりなもの。ずっと前からすでに練られていた計画なのよ。」
「そう…なのか。」
そして、敵は衛星軌道上から通信していたと推測される。
つまり…敵は宇宙にいる。
「小型機の出番だな…」
だがシグナスは口を挟む。
「ダメだな…アレはハンターが独自に作ったものだったんだ。
それに、衛星軌道上にそんなもので行こうとしたら…確実に落とされる」
「そう、か…」
「ロケットを使おう。パンデモニウムのいた場所に何か!」
「大掛かり過ぎるだろう。その前に目をつけられ、破壊されるのが関の山だ」
「…ワープは?出来ないのか」
「誰かが宇宙にいれば或いはそれも可能。
でもハンターは誰も宇宙へ行っていないし…直接の転送には遠すぎる」
…エックスは机を叩く。
「クソッ……どうすれば!!」
「方法、あるわよ」
「…エイリア。それは…まさか。」
エイリアは画面にその位置を打ち込み、衛星写真で表示する。
「そう、この空高く、星空にまで届く『ヤコブ』………」
金の髪を振り乱し、振り返る。
「私達で、乗り込みましょう。 …軌道エレベーターに!!」
【エックス&エイリア 担当事件:ラストミッション】
-
「コラー!カットマン、早く帰って来なさーい!
おー!しー!おー!きー!よーーーー!」
「ヒィィィ!!」
そんなやり取りもあった。
「ワイリー博士から聞いたんっス… 兄キ、悪いロボットになっちゃダメっスよ…!」
「僕達の言葉を信じてくれないのかい、カットマン…!!」
記憶を書き換えられたカットマンとの戦い。
撃ち出された弾丸は……弟を貫く。
「グスッ………うぅ…っ、くっ…うぐ……」
体中の切り傷に涙を染み込ませ、手にした初勝利は嬉しくなかった…これっぽっちも。
「親方が現場放り出してどないするっちゅうんじゃ!お前こそ叩きだしたるわぁ!!」
投げ出された岩を砕き…そのボディの力を発揮する。本来の力を超えて。
「諦めるんだ…ガッツマン!」
「ボクがロックさんを止めるしか…!少しの間、凍るですー!」
「立ち止まるわけにはいかないんだ!」
見た目中身ともに最年少の幼きロボット、アイスマンも例外に非ず。
「てやんでぃ、泣きべそかくなよーーー?」
「…ここでかわさなきゃ……やられる!!」
単眼の量産兵、スナイパージョーの守る都市の地下で対峙したボンバーマン。
爆弾という、兵器を操る力を持つ彼を相手に、いよいよ戦いを学び始める。
「燃える、燃える、お前に萌えるーーーーーーーー!」
「た、助けてロック!!ファイヤーマンが何かおかしいの!」
他人を助ける戦いで、己の戦いの意味を見出す。
「…元からだったんだよ、ロールちゃん。」
「では正式な声明をここで発表しよう、私はこの世界を掌握する科学者…アルバート・W・ワイリーである!」
彼の掌が世界へ向けられたその日。
「電波塔へ向かうのじゃロックマン!」
エレキマンとの再戦を迎える。ロックマンに刻まれた恐怖が呼び覚まされる。
「また焼かれに来たのかい、ロック。」
「ロックはもう、いないんだ。」
「………こんな力で君とは戦いたくなかった。けど」
ロックマンの体が、灰に染まる。
「これしか方法は、ないんだ」
「その力は…!?」
6つの力を手にし、彼はいよいよ研究所へ乗り込む。
「ぶも!!ぶもも!ぶも、ぶももも!ぶもー!」
「それは困るよ!」
長き宿命が始まりを告げる。
後ろからやってきて前を阻むは黄色き悪魔、イエローデビル。
その悪魔の巨体の先で待ち受ける、過酷な戦い。
「よおオリジナル。お前の持ってる力、随分ズルいじゃねえか!」
戦闘用としての自分に気付かされたこともあった。
「ま、そのお前をコピーしたこの俺が一番ズルいんだけどな?」
向けられたロックバスターに向けるは勿論ロックバスター。
「侵入、ヨクナイ!削除、スル!」
止められようとも…彼はもう、立ち止まれなかった。
-
そして迎えた最深部での戦い。
ワイリーの赤いUFOが飛来し……何かと結合する。
そして暗闇が晴れたその時。
「ガーハッハッハッハッハ!よく来たなぁ、ライト博士のロボットよ! 随分な能力を持っているそうじゃないか!」
「ワイリー博士…」
彼は見上げる。
「何か言いたげじゃな?」
「……ライト博士の、大学での友達だったんでしょう。
他人のロボットを奪って世界を支配するなんてこと…やめてください!」
UFOと直結した巨大な搭乗マシンに乗った、Drワイリーを。
それは今まで戦ってきた人型ロボットより遥かに大きく…
「何をぉ?生意気な口を…」
そして、イエローデビルとは比べ物にならぬ硬いボディをしていた。
「キサマなど、この最強マシン『ワイリーマシン1号』で、 けっちょんけっちょんのぎったんぎったんにしてくれるわぁ!」
今までに得てきた能力を駆使…降り注ぐ弾丸を潜り攻撃を浴びせる。
ワイリーマシンが大爆発を起こす。
だが…。
「エマージェンシー機能、発動!」
マシンの搭乗部が露になる。マシンの更なる力が開放された瞬間だ。
だが、それ以上に彼の精神を圧迫する要因が存在した。
「どうじゃ、人間の顔を前にして戦いをする、気分は!!」
「……………」
「何も言葉は出ぬか?」
「くっ…」
身を乗り出して彼は嘲った。
「ガーーーーッハッハッハッハ!」
「弱きバスターを戦って得た力でここまで来たキサマは確かに強いじゃろう、
じゃが、所詮キサマのAIはその程度ということじゃな!」
広げられた両腕。
「非情のヒーローになりきれなかった、哀れなライトのロボットよ!」
拳を握る。
「お前は戦闘用ですらない……」
拳がバスターに代わる。
「ただの家庭用じゃ!!」
「………!」
彼は……跳んだ。
「うぉおおおおおおお!!!」
腕をバスターに切り替える。最後は自分の手の決着となる。
一発の光のつぶてが…ワイリーマシンのコアを粉々に砕く。
「何っ!?」
コアを通じマシンの各所に破壊の衝撃が注ぎ込まれ、末端から噴出すように爆発を起こし始める。
「な……!?」
「……」
そして爆発は連鎖、大きな爆発へと変わって行く。
「ば、ばかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
…大破。
「ぎゃああああああああああ!!」
ボディから投げ出されるはDrワイリーの体。
「……」
とうとうワイリーの顔はロックマンの下になった。
「……す、すまん!」
「すまなかった、もう悪さはしないよぉ…!
だからぁー、そのすまん!許しておくれぇぇぇぇ…!」
ぺこりぺこりと土下座で謝るワイリー博士。
安堵し、彼は息をつく。
…ヘルメットを脱ぐときがやってきたようだ。
いつかカットマン達も復元されて元に戻っていくはず。
彼は…家路につく。
こうして、Drワイリーの野望は終わりを告げた。
だが…ロックマンはまだ知らなかった。
これが、終わりなき戦いの始まりであったことを……
ワイリーの背後にあった、彼に気付かれなかった8つのカプセルと、
ワイリーの開発した兵士ロボット・スナイパージョーの存在がそれを示していた。
何故、優れた設計のライト博士のロボット達を洗脳できたのか、その答えが。
戦え、ロックマン。…平和の、ために。
-
―元帥・将官の名称―
地上軍:大将軍・将軍
宇宙軍:大提督・提督
空軍:大空将・空将
ストーム・トルーパー軍:大将軍・将軍
―地上軍、ストーム・トルーパー軍の単位と司令官―
帝国軍団:40個師団を越える臨時編成 将官たる皇族、軍事エグゼキューター、元帥
宙界軍団:24〜40個師団 元帥、上級大将
宙域軍団:12〜20個師団 大将
星系軍団:6〜10個師団 中将
師団:9840名 少将
旅団:6560名 准将
大連隊:3280名 上級大佐
連隊:1640名 大佐
大隊:820名 中佐、少佐
中隊:205名 上級大尉、大尉
小隊:41名 中尉、少尉
分隊:10名 上級曹長、曹長
班:3名 軍曹、伍長
―宇宙軍の単位と司令官―
帝国艦隊:スター・デストロイヤー24隻を越える臨時編成 将官たる皇族、軍事エグゼキューター、元帥
宙界艦隊:24隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 グランド・モフ、元帥、上級大将
宙域艦隊:12隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 モフ、大将
星系艦隊:6隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 モフ、中将
機動艦隊:3隻のスター・デストロイヤーと補助艦艇 少将
警備艦隊:2隻以下のスター・デストロイヤーと補助艦艇 准将、代将たる上級大佐
スター・ドレッドノートの艦長:准将
スーパー・スター・デストロイヤーの艦長:上級大佐
スター・デストロイヤー、ヘヴィ・クルーザーの艦長:大佐
ミドル・クルーザー、エスコート・キャリアーの艦長:中佐
ライト・クルーザーの艦長:少佐
フリゲートの艦長:上級大尉、大尉
パトロール艇の艦長:中尉、少尉
―空軍の単位と司令官―
帝国航空軍団:40個航空集団を越える臨時編成 将官たる皇族、軍事エグゼキューター、元帥
宙界航空軍団:24〜40個航空集団 元帥、上級大将
宙域航空軍団:12〜20個航空集団 大将
星系航空軍団:6〜10個航空集団 中将
航空艦隊:2048機 少将
航空群:512機 准将
航空大隊:64機 上級大佐、大佐
航空中隊:16機 中佐、少佐
航空小隊:4機 上級大尉、大尉
航空編隊:2機 中尉、少尉
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