レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
チラシの裏 3枚目
-
ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに
-
ノアズパーク研究所…倉庫上。
海を臨むその建物の縁に一人腰かけるはエイリア。
崖を眺め、待ち人が来るのをずっと待ち続けていた。
「…………。」
エイリアは……すでに覚悟を決めている。
明日、エックスがもし危険な目に遭ったら…その時は。
「エイリア」
「きゃあああ!?」
後ろから声がかかるとは思っていなかった。
慌てて落ちそうになる体をエックスに引き上げてもらう。
「……いえ、ごめんなさい」
背中合わせで座る。エイリアが縁、エックスは入り口の側を向き。
…そしてエイリアは研究の結果、今まで聞いた話から一つの推論を立てていた。
敵の目的、その考え。
「……ねえエックス」
「うん?」
「始めのミッションから今まで数えて25年…ね」
「…。 最初の戦いからカウンターハンター、ドップラー博士の事件、レプリフォース大戦、コロニー落下、ゲイト事件までで…
そうだね。3年と1ヶ月だ」
「そこからレッドアラートまでが9年、今に至るまでが15年。…ね」
「こんなことになるなんて思っていなかったでしょう。」
「…そうだな」
風に吹かれ、ブロンドの髪が靡く。
「ここはいい場所よ。…空は高いし、吹く風は優しい。」
「…でも私はこうやって研究所を出て…戦いたいと思った」
「ゲイトの事件から逃げたいと思ったのか…或いは」
「貴方を発端とする、レプリロイドの進化の行く末を
私なりに見たかった部分もあるのかも解らない。」
今となってはそんなことは言い訳でしかないのかもしれないが。
「…君は…一体どこまで知っているんだい?」
いよいよエックスが不審がる。
彼方の軌道エレベーターを眺めつつ。
「………さぁ。ただ、全てを知るわけじゃないのは確か」
「新世代が出てきて…一体どこへ向かうのか?
果たして彼らが旧世代と呼ぶ私達がどうなっていくのか。」
「…何か思いつくものはある?」
「………喜べるものと喜べないものがある。
…喜べるものは…どうなのかしらね。…現実的じゃない」
「…そうか」
「あくまで想像。まだ未来はどこへ繋がっているか解らない…。
ただ、貴方の辛さを少しでも共有できたら、と思う」
「…俺の…辛さか」
「戦い続けることでエックスがどうなっていくのか。
こうなったら、一蓮托生…てね」
バスターに腕を変える。エイリアにつられエックスも。
「………明日が最初の私達のミッションね」
「…ああ。」
手を握るとか、何かをするとか。そういうよりも、こういう方が自分達の柄には合っている。
エックスバスターとエイリアバスター、二つのバスターをこつんと突き合わせた。
地球と月…二つの世界をかけての人間とレプリロイドのこれからが、明日きっと動くのだろう。
決意の言葉。
「…立ち向かおう」
「…少し昔話をしましょうか?」
「……いつまでそこにいるつもりだい。」
「ちょっと話してみたくなったのよ。貴方がナウマンダーのいた工場で黒こげになった時のこととか」
「…あれはちょっと笑い話にはならないと思うけどなぁー…」
-
そして夜は明け…。
朝日が海に登り始める。
「………」
エックスを寝かせたまま、エイリアはその場を立つ。
朝日を受け、新しい光を受け入れるエイリアの目。
その背に高い声がかかる。
「ハンターベース総出でのものだそうだね 今日の作戦は僕も参加させてもらうよ」
例の少年博士だ。
「…………今までこのピンチに何をしていたのかしら?博士君」
「というのも、僕はそもそもがヤコブ計画に反対だったからだよ」
くすりと笑い、エイリアは返す。
「…それでも今日は参加? …素直じゃないのねぇ。」
歯を軋らせ、眼鏡が太陽光を反射する。
「そういう解釈が一番腹が立つ」
小石を蹴り、海へと落とす。
「…まぁ。機械人形の頭では理解できないんだろうね」
「僕ら人間は、今まで誰かさんのおかげで、ずっと地下に避難していて…
どこかくすんだ明るさの中、太陽光も、川も、海も、森もまともにない暗い地下世界で生きてきたんだ
どんどん死者が増えて、腐って土に同化していくのを見守りながらね。」
「こうして極少数の人間がこうやって地上にやっと、やってこられたんだ。どういう気持ちだと思う…?」
「………。」
「一種の憧れすら感じていたよ。新世代の奴らは目新しいことにだけ気を取られてるようだが。」
「それで、この計画が無事に終わったら今度は僕ら人間を宇宙に放り出す? ハッ…なーにを考えておるのやら。
もっと歯がゆいのは何もそれに不自由を感じないという無能な人間の存在だ。自分の脳みそでものを考える気がないのだろうね」
「何が言いたいの…」
「聞きなよ。
そうも言っていられなくなった、っていうわけさ。地上を再生しようにも、
その地上を破壊されちゃあどうしようもない」
「目の前の火の粉は自分達で払わなきゃ、ということだ」
「結局は協力するのね」
「話を聞いてたなら確認の必要もないんだがな。」
地上世界を再生するため。これからも世界を続けるため。
最後の戦いが今、始まる。
「な、何だ!?」
エックスが起き上がる。水平線から…煙と火の手。
「さぁ、作戦開始だ。僕も行かないとね」
「突撃始めええええええええ!」
シグナスが指令を出すとハンター達が次々にヤコブ前に陣取る兵達へと突進していく。
持っている武器は重火器がメインとして、少数近距離戦用のものもいる。
「おらおらー!」
ダグラスはエニグマ砲を小型化した破壊兵器を投入、レーザー砲として敵を焼き払っていく。
「大丈夫ですか!」
ライフセーバーは負傷したハンターを救助する。
「さぁ、どんどん僕が焼き払ってあげよう!」
ゲイトが戦車に指令を出し、自動操縦で相手を攻撃していく。
「さぁ僕の自慢の兵器の力だ!」
相手を狂わせる音波兵器で、敵の方向感覚を狂わせる。
「…始まってる!」
「……激しい戦いだ」
全てはエックスとエイリアに降りかかる敵を減らすべくだ。
……この作戦は彼らの双肩にかかっている。…負けられるわけがない。
「行こう!」
最後のミッションはこうして幕を開ける。
-
「軌道エレベーター。
これで一気に宇宙まで… 乗り込むわよ!」
オペレーターは啖呵を切る。
戦火の中を掻い潜り、皆の声援を受け
彼らはいよいよ最後の戦いへと足を踏み入れたのだった。
軌道エレベーター…ヤコブ。
地上から、遥か空の上までを貫くその果てしない塔。
「宇宙へ旅立つ、宇宙に進出する、宇宙に飛び出す、宇宙に足を踏み入れる。
…色々表現はあるけど」
「まさか『宇宙に乗り込む』という気持ちになるなんて思わなかった!」
「…あら。エックスもそんな感じ? …さー、やってやろうじゃないのっ!」
まずは彼らは9つあるエレベーターのうち、搬入用の中央のものに乗った。
「………戦闘準備はいいね」
「勿論!」
急加速が始まる……それでも大分長い戦いとなるだろう。
見上げても見えないほど上まで続くこの塔であるが、
とりあえずすぐ上が黒い何かの影でびっしり覆われているのが解るからだ。
「行っくわよー!!」
まずは飛来し襲いくるメカニロイドを吹き飛ばす。
続けてゆっくりと近づいてくるは新世代型レプリロイド。
「サンダーダンサー!」
雷が踊り、次々に敵を感電させていく。
一度停止、敵が乗り込んでくる。
「来る!」
「任せて!」
「グリーンスピナー!」
盾を持ったレプリロイドはパンデモニウムから手に入れたミサイルで攻撃。
一気に防御を突き崩しそのままチャージショット。
手榴弾を投げつける新世代は近くまで踏み込み一撃。
更に上へ。
捕まえようとするメカニロイドも意味を成さず。すぐに倒される。
「ドリフトダイヤモンドー!」
氷の弾で斜め上方に攻撃。敵を凍らせてエレベーターの急加速により粉々に粉砕する。
そして交代。
「クリスタルウォーール!」
敵の攻撃を防ぎ、短いチャージ時間を稼ぐ。
そして…
三方向に分かれるヘルメスチャージショットが敵を攻撃。
「割と進んだんじゃないかしら」
雲の上に来た。地上が遥か下に見える。
今度は液体窒素を用いる新世代。これは炎で返す。
「メルトクリーパー!」
地面を這う炎が敵を焼く。
「…リングか!」
加速装置がエレベーターにつき、更にペースを上げて加速していく。
「はぁあああ!! チャージ・シャドウランナー!」
大量の黒き矢が放たれ、敵を追尾攻撃。
「交代よ!」
続けて再びサンダーダンサーとチャージショットの二段攻撃。
「スクイーズボム!」
敵の攻撃を吸収した状態で連射攻撃。敵を蜂の巣にしていく。
空が見えなくなった。大気圏を超え、更に上へと行くのだろう。
更に新世代は乗り込んでくる。今度は盾と腕が一体化しているのか、破壊が出来ない。
「ふっ…!」
ダッシュジャンプ、ギリギリの位置で回り込んで一撃。
だがこれは何発も連続は出来ない。
「メルトクリーパー!」
防御を突き抜けるこの攻撃をもう一度。
「……!」
「エイリア?」
-
交代してみる。
「星空を見てたの?」
「…あ、ごめんなさい……。」
いよいよ宇宙が近づいてきた。これでもかと敵がひしめく。
「シャイニングレイ!!」
空へと放ち、空中で炸裂する花火のようなこの攻撃だ。
「いよいよ宇宙ね…」
もう止まりはしない。敵もいなくなった。
「エックス、エイリア。そろそろ最上階よ 準備はいい?」
「はい!」
「勿論だ!」
最上階。…月が見える。きらきらと輝く星、流れる星、銀河も見える。
「……。」
エレベーターが…止まる。
「来るわ!」
やってきたのはVAVAだった。
「軌道エレベーター、宇宙開発材料、ロケット…貴様ラノ希望ハ俺達ガモウスデニ握ッタゾ!」
「…だからなんだというの?早くシグマに会わせなさい」
「ククク、ソウ怒ルナ…オ前達ハコレカラジックリト料理シテヤルノダカラナ!」
またもVAVAは戦いを挑んでくる。
「逃ゲラレン!」
肩から電撃の弾を連射する。この場合の弾は敵を追尾するもののようだ。
「ドリフトダイヤモンド!」
「アッハァァァァァァ!?」
落下。レイヤーから弱点は聞いてある。当てやすいこの武器を当てればよいのだ。
「ヒヒヒヒッ」
またも弾を放つ。これは多方向に一度に攻撃できるタイプの撃ち方のようだ。
これも間を潜って簡単に回避。
「燃エロ!」
膝の辺りが開き、何かが射出される。炎の柱だ。
「…危ないエックス!」
エックスと交代。
「うっ……!!」
エイリアに炎の柱が襲い掛かる。
「ドウシタドウシタ…?」
次の弾は連射する弾。単純にVAVAの動きに合わせた軌道。
「これが厄介みたいね…」
ドリフトダイヤモンドで強制的に動きを止められているからいいのだが。
「…ヒッヒヒヒイヒヒ!」
紫色の光がVAVAから放たれる。…VAVAもだったのか!エックスは驚く。
どうやら新世代になったのはAIの中だけではなかったらしい。
「逃ゲラレルカ!?」
VAVAの体が震え、電撃が放射状に広がる。
「……違う。これは技じゃない!!」
「ミギギギギ…ギュギュギュ…勝テバイイトイウノニ 下ラン事ニ五月蝿イナ…!!」
ビクビクと体が痙攣しながら、電撃を放っていく。
こんな攻撃、何度も連発できるわけではない。
「自ら狂うことが出来なければ…だったかしら?」
シグマがVAVAに言った言葉だ。
「ヒヒヒヒヒ…!」
電撃がVAVAを中心にぐるりぐるりと回転し、エイリアやエックスを攻撃しにかかる。
「エイリア、交代だ!」
「え?どうしてここで… ああ!!」
ヘルメスアーマーの能力だ。ダッシュ能力を使っている間は如何なる攻撃も通しはしない。
「ナ!?」
VAVAが体を張って放ったこの技もエックスには無意味となる。
「オノレレレレレレレ!」
ついにVAVAが怒った。
キャノン砲から大きな電撃の弾を放ち、炸裂させてエックスを追わせる奥の手を使い始めたのだ。
この攻撃は予想がつきづらい。ダッシュ一つでは回避することなど…
しかし。
「全ての弾が俺を追うなら同じこと!」
全て一斉に引き付けてかわす。これを繰り返し…
「ドリフトダイヤモンド!!」
氷の弾が横に回転、VAVAを撃ち落した。
「アッハァァァァァァ!?」
そして…VAVAはそのまま姿を消した。
「待て!!」
「……VAVAはとりあえずいつでも仕留められる。
シグマだけを、追いましょう」
「そうだな」
こうして彼らの体は、星空の中に溶けていくのだった。
-
星の海を泳ぎながら、エックスとエイリアはハンターベースと通信を取る。
「先輩、シグマの反応がどこにあるかわかりますか?」
「ええ。解るわ
どうやら月との中継施設みたい。そこから移動してみて」
その場所はゲートウェイと呼ばれた。
「静かだけどどこか……不気味ね。」
辺りを見回しながら進んでいく。通路を抜けた先には…
「…え?」
巨大なパイプオルガンのパイプのような装置。
その各所には色とりどりのカプセルが8つ。
「今回はここで…か」
今回は再生レプリロイドでもコピーレプリロイドでも記憶が作り出した幻でも亡霊でもなく、
新世代型レプリロイド達の変身だった。
8人の新世代に変身した新世代との戦いは長い時間をかけ行われた。
そして……
「…爆発する!!」
「エックス、エイリア!急いで脱出して!」
部屋全体が炎に包まれる。
最上部から飛び降り、扉から脱出、床が落ちつつある繋ぎ目の通路を駆け抜け…
「…だ、大丈夫?」
「ああ!もうすぐだ、急ごう!」
…いや。8人のレプリロイドを倒した所で突然爆発。このパターンは以前エックスは経験したことがある。
扉を潜り、入り口へと戻った…所で。
「エイリア、危ない!!」
「きゃっ!?」
レーザーがエイリアへ向けられた。
間一髪エックスに体を引き寄せられ、ダメージを負わずには済んだ。
「………シグマ!」
「フハハハハハ!よく来たなエックスよ」
「全人類、全レプリロイドに仇なすお前の行為…許しはしない!」
バスターを向けられてもシグマは動じない。
「ククク…我らが月を手にしたことか?
我々が新たな世界、月を手に入れた時点でお前たちが何をしようとも無駄というもの!
まずはエックス、お前との決着を先につけようではないか!」
そして手から炎を迸らせ笑った。
「全力で来い!」
シグマはまず構えている。
「ハァ!!」
シグマは目にも止まらぬ動きでサーベルを抜き、斬りながら走り床を蹴り、天井へと舞い上がる。
エックスはそれより少し早く、それと交差するようにチャージショットを放つ。
「やるな!」
もう一度同じ動作を繰り返すが、勿論エックスになど食らうわけは無し。
「これならどうだ!?」
指先から弾丸を様々な方向へ発射、床、壁、天井へと反射し縦横無尽に部屋を跳びまわる。
「エックス、私に任せて!」
交代、スクイーズボムを放つ。
小型ブラックホールの中に次々と吸い寄せられる弾。
そしてチャージショット。シグマへと直撃する。
「貴様ぁぁぁぁ…!」
跳びあがり、額からレーザーを発射。それは床を走り、炎の海へと変える。
「ぬぉおおおおおおおお…!」
エネルギーが集まる音。チャージ攻撃を繰り出すつもりだ。
「そうはいかないわ!」
チャージショットでそれを止め、そのまま通常バスターでダメージを与える。
「お、おのれ…!?」
弾を放つもスクイーズボムで全て吸収される。
炎の中を斬り上げ攻撃をするもエックスのインビジブルエアダッシュで回避、後ろから撃たれ……
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう……!」
爆発に包まれながら、苦しみながら。
天井へ向かい手を伸ばし……
「…やはりね。」
その姿を何の変哲もない、新世代型レプリロイドの本性へと変え、散っていった。
「解っていたのか!?」
「ええ。レイヤーがコピーした武器はシグマの剣。ビームじゃなく物質で出来た剣なんだけど
あんな強力な武器、ゼロの力でパワーアップし続けるゼットセイバーでもまだ追い抜けはしない。
……シグマだったら、アレを持たずあんなビームサーベルで戦ってくる訳がないのよ。」
それならシグマの場所は…?
「どうやら…この施設はもう移動していたようね。…行きましょう」
目の前に、その場所が現れる。
「…月…!!」
-
月面へ降り立つ二人。
デコボコとした地面、目の前に見えるのは…巨大な城、『シグマパレス』
新世代達の本拠地にして、新たなる世界の中心地となる場所だ。
「…通信はもう繋がらないみたいね」
「もう、引き返す理由なんてない。行こう、エイリア」
新世代の兵が城を厳重に警備している。
撃ち、跳んで撃ち、回り込んで撃ち。とにかく敵を撃ち殺して、その煙の背後の城へと急ぐ。
扉の中へ入ると…そこには。
「ヒーッヒヒヒヒヒヒ!」
「VAVA…!」
エントランスにて現れたのは毒々しい色のライドアーマーに乗ったVAVAだった。
「頑張ルヨウダナ、エックス! オ前達ガ何ヲシヨウトモ、モウ手遅レダト言ウノニ…!」
「話すことなど何もない。そこをどけ!」
「ソウ怒ルナ… 破滅ノソノ時マデ、楽シモウデハナイカ!!」
ライドアーマー・デビルベアが連続パンチで搭乗者の闘志を示す。
「…膨大なエネルギーを中に感じる…。このライドアーマーを破壊したら爆弾何個分もの爆発が来るわ!」
「…じゃあVAVAだけを狙おう!」
チャージショットでVAVAを確実に吹き飛ばす。
「ヌォオオオ!?」
ドリフトダイヤモンドで攻撃、宙に浮いたVAVAを叩き落とす。
「アッハァァァァァ!?」
攻撃を避けてみても、特に何も目新しいことはない。
ライドアーマーを使っての攻撃が今回の手。
VAVAはその持てる力をヤコブ最上階での戦いですでに使い果たした後だったのだ。
3発攻撃したタイミングでまたライドアーマーへと戻る。
「グリーンスピナー!」
今度はミサイルを使い、バスターより確実にVAVAを操縦席から切り離す。
「クソォォォォォオオオオオ!」
またも攻撃。
「ゴゲ、グゴ、ガゴ、ゴゴゴゴゴゴ…ギニェェエエェエエエエエエエエエエエ!」
いよいよVAVAの精神が先に崩壊を始める。
「エックス、エックスゥゥウウウウウ!」
暴走。力任せに攻撃を続ける。
狡猾なそのやり口はすでにもう、全て防がれた後なのでもう変わりはないのだが。
「ドリフトダイヤモンド!!」
凍らせ、内部から熱で吹き飛ばし…その連続。
「ア”ア”ア”ア”ア”、ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!アアーーーーーーーーーー!」
ライドアーマーへと戻る。
「最後は私がやるわ!」
エイリアへと交代。
まずはチャージショット。吹き飛ばしたVAVAをドリフトダイヤモンドで1発。
「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!」
2発。
「ベッグズウウウウウウウウウウウ!」
3発。
「ォア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
VAVAのAIが完全瓦解。その体は床へと転がっていった。
-
「…有難う。後はシグマだけだな 急ごう!」
「……うん。」
自分は無事にVAVAを倒せた。無事なエックスがいる…
…その事実に安堵する。
そして、最後の戦いへと急ぐ。平和な日々がもうすぐ…やってくるのだから。
……そんなエイリアの背中が、突如として荒々しく突き飛ばされる。
「きゃっ…!! …え、エックス?一体…」
次の部屋の入り口へ倒れこむエイリアの体。
ちょっとした悪戯だとわかり、叱ろうと振り向いた瞬間……全てを理解した。
「ァアアーーーーーーーッハッハッハアアアアアアア!!
ハァアーーーーハーーーーーハアアァアーーーー! アーーーーーーーーーーーーー!」
動き出したライドアーマーと、それへに向かうエックス。
強力爆弾何個分ものエネルギーを蓄えたそのライドアーマーが今、爆発しようとしていた。
「エッ…クス」
彼を抱きとめ、一緒に逃げようと叫ぼうと、叫ぶより早く跳びつく。
「……。」
だがその腕は硬い、厚い…扉にぶつかることとなる。
ライドアーマーが突進する中、最後にニッと笑い、エックスは扉を閉めたのだ。
「エックス、エックス…!?開けて、お願いだから!!」
開けるわけにはいかない。これはVAVAが仕掛けたトラップでもあり、
そしてこれにより、ライドアーマーがどうなろうとエイリアのいる部屋から先には害を及ぼさないためだ。
叩いても、蹴っても、頭で突いても何も起こりはしない。
「エッ……………!!!!」
爆発音に全てがかき消される。
……膨大なエネルギーが中で炸裂したのだ。
…音が消えた頃には……エイリアの喉は叫ぶこともままならなくなっていた。
VAVAは、最後に復讐を果たしたのだ。
これが、自分達の初めてのミッションだったのに。
苦しみを幾分か和らげ、引き受け、エックスがもし危険にあったら庇う気でいたのに。
彼女は彼の名前を、最早うわごとのように呟くしかできない。
彼女の目の前で………彼は死んで行った。
かつてゼロが彼の前で彼を庇い、VAVAの前で散り…シグマの元へ導いたその時のように。
かつて彼女は臨時オペレーターとして一人のハンターを担当し、
彼をサポートし、戦いへ導き、そしてその内惹かれていった。
…そして彼は、助けられる側から助ける側へ回り…最期を迎えた。
だが…彼の最期を看取るハンターは、いない。
エイリアの孤独な戦いの幕を開けであった。
-
エックスの遺志を継ぐべく。
エイリアは腕のバスター片手に、シグマパレスの中を突き進む。
彼女の怒りはエックスのそれと同じように、彼女を覚醒させた。
シグマの姿をした新世代の兵らを、的確な動きで回避、撃ち抜いていく。
水晶の針が植物のように生い茂る場所を登り、シグマの形をした兵を撃破。
彼女は、スムーズな動きでとうとう最後の通路までたどり着いた。
扉が開く。開けた段差のある通路に、柱が綺麗に立ち並んでいる。
眩い星が照らし、一直線に絨毯は続いていく。
…玉座へと。
そして…その玉座へとたどり着いたエイリアを見たシグマの最初の一言は勿論。
「だ、誰だ貴様は!?」
驚愕するシグマ。その姿は、幾度もの戦いを経て、炭と化していた。
…でもそれでいい。その間抜けなリアクションでいい。エイリアは思っていた。
「まぁ、よい…誰だか解らぬが、この玉座の間へたどり着いた事を褒めてやろう。
…エックスの仲間だな?」
「……黙りなさい」
「ぬ?」
「貴方と話すことなんて何もない。貴方に名乗る名前も。
炭に玉座なんて似合わない。ここは貴方の墓場よ!!」
「……随分と生意気な口をきく小娘よ。
まぁいい…旧世界への私の勝利はこれで完成するのだから」
エイリアはバスターを向ける。
「それもないわね。」
話を始める。
「貴方の敗北は、まだ名も知らなかった赤いイレギュラーへの敗北から始まる。」
「そしてその次には目を付けていたとはいえ格下のB級ハンターに。」
「その次にはかつてハンターとして貴方が倒す気でいたイレギュラーだった者に。」
「やがては貴方は自分が利用しようとした少年レプリロイドにすら倒されている……」
震え、ひくつく声でエイリアは一つ一つ、声をひねり出す。
「そして今!!」
チャージを始める。
「貴方はこうして!!
名も知らぬ!一介の新人ハンターに敗れ!
永遠の死を迎えるのよ!!」
彼女の赤くなった目は腕を前へ、前へと…突き出させた。
「それが貴方の末路っ…………!!」
その表情を見て全てを察したシグマはニタリと笑い、玉座から立ち上がる。
「ククク…なるほど。いい殺気だ。あらゆる感情が含まれている。
…これはこれで面白い戦いになりそうだ…!」
柱二つに挟まれ、玉座をバックに戦いが始まる。
「全力で来い!!」
-
エイリアの動きに迷いはない。
素早く走り、チャージショット。それと同時に後ろへ跳び、柱へ張り付く。
「クフフフ!!」
シグマは消える。
そして上から剣を手に落下、剣を振るう。その剣とは勿論レイヤーが使っていたもののオリジナルだ。
「行くぞぉ!!」
とっさに通常弾で攻撃しながら回避。
「はぁああ!」
逆方向に降って来たシグマをまた回避、今度はチャージショット。
「やるなぁ…」
腕からフープショットを放つ。
輪の形をしたエネルギー弾が柱へと飛んでいく。
「ハァアアアア!!」
エアダッシュで輪を潜り一発。
輪そのものを飛び越し一発。もう一度エアダッシュで潜り一発。
「ぐぬううう……!?」
これは早々に必殺の技を使わざるを得ない。
そう判断したシグマは、新世代特有の紫色の光を発し、その能力を発動する。
「終わりだああああ!!」
何もない場所にエイリアが引き寄せられる。
「くっ…離しなさい!!」
何もない空間からシグマの手が現れ、全体が現れる。
エイリアの頭を掴んでいる。
「ハーーーーーッハッハッハ!やはり素晴らしいぞこの力は!!」
「くっ…!」
「新世代の王となった、この私の前では貴様など無力に過ぎぬわ……!」
「滅べ、滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ……!!」
このままでは……。
奇しくもそれは、ゼロに対しかつて行った技が強化されたものだった。
これにより頭を掴まれたゼロはこの後、気絶させられ、床へと転がることとなる。
エイリアに成す術は……
そう思われた時、激しい音が辺りを轟かせる。
凄まじい勢いで走ってきた一つの風が、跳びあがり………
「何っ!?」
「!!!」
エイリアの頭からシグマの手を吹き飛ばしたのだ。
「大丈夫か、エイリア!!」
「エッ…………クス?」
倒れこむその体を支える。
「………」
表情でわかる。変身などでもなく…
「…エックス…!? エックス!!」
「ああ。俺だよ 待っててくれると思ったら、まさかこんなトコまで来ちゃうなんて……」
エネルギー反応で感知しても、何もなかったはずである。そこにはいなかったのだから。
通信が途絶えても転送は出来る。
エックスはとっさに、VAVAを引き付けライドアーマーが壊れるその瞬間に
ハンターベースへ戻り、再度月まで転送してもらったのだ。
…VAVAの罠でエックスが死に、エイリアが絶望し、後から何事もなかったかのように現れる。
その時と、何ら変わりなかったのだ。
だが、エックスは知らず成長した姿を見せ付けていた。
戦いの始まりのとき、こうして頭を掴まれた人質のゼロを彼は助けだせなかった。
そして、ゼロがかつて死んだときも、ゼロはその後エックスを助けることは流石に出来なかったのだから。
彼は、ゼロも、かつての自分も超え、シグマの前に再び姿を現したのだ。
「エックス………!!!」
エイリアの顔が歪む。
様々な感情が混ざり合い、洪水のように押し寄せ、何も言えずにいる。
怖かったのだろう。恐らくそんな顔は同じハンターには向けたくないはず。
そう判断したエックスは目を閉じ、顔を見ないようにしながら、エイリアを後ろに立たせ、背を向けシグマと相対する。
「…エイリア、有難う。 君は待機していてくれ……
コイツは俺が倒す」
バスターの色はピンクから青へ。
「フハハハハハハハ!来たかエックス!!
貴様が来なくては面白みに欠ける!」
剣を振りかざす。
「決着をつけるぞぉおおおおおおおおおお!」
-
シグマはまたも消え、フープショットを撃ち始める。
新たなるアルティメットアーマーを装備したエックスは、
フープショットを通過してプラズマチャージショットを放つ。
「それがお前の力か…!」
またも消え、今度は剣を振り回して上下に連続で跳び始めた。
「思い知れええええええええ!」
背後に回り一撃。
「くううう…!!」
「燃え滾れ…!」
レーザーで壁を燃やす。
シグマは宙へと浮いて、チャージを始める。
「ぬぉおおおおおお!」
エックスはとっさにチャージショットでそれを解除、再び攻撃へ転じる。
「行くぞ!!」
またシグマが剣を手に降って来た。
「はぁああ!」
2回。
「食らええええええ!」
3回目。
チャージを始めたシグマに対しチャージショットを一撃、
次に現れる位置を予測し…
「シャイニングレイ!!」
8方位に攻撃できるこの武器で広範囲攻撃を狙う。
「ぉおあおあおあおああああ!?」
弱点だったようだ。シグマの体が床へと落ちる。
「くうう………!!」
フープショットを放つ。今度はフープ自体が回転するタイプである。
「効かない!!」
一つ一つを飛び越し、チャージショットを思う存分当てる。
「貴様ああああああ!!」
シグマはまた天井から降り、剣での攻撃を行う。3連続で。
「ゆくぞおおおお!!はーーーーーっはっはっはあああ!」
チャージが完了。腕から巨大な衝撃波を放つ。
「…何!?」
エックスにはそれは通用しなかった。
インビジブルダッシュで回避、そのままチャージショットへとつなげていた。
「くっ!?」
ここまで醜くも頑張ってきたシグマに対し、エックスは最後に花火を見せることにした。
「チャージ・シャイニングレイ!!」
-
バスターを上に向け、光を放つ。
それは空中で分裂、
そして分裂した光自体が空中で炸裂、綺麗な花火となって消えていく。
「がはああぁあぁあぁっ……!!」
シグマはそれをダイレクトに受け、体が吹き飛ぶ。
「…ば、馬鹿な… 新世代の王が…滅ぶというのか…!?」
シグマの体が震える。
「滅ぶのは…奴ら、…旧世代の………!」
体の各所が爆発。シグマの体が激しく動き、そして…大の字になり…
「がはっ……」
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!」
濃い叫び声を残して…最期を迎えたのだった。
音一つ残らないシグマパレスの玉座。
後に残るはシグマの破片のみ。
絨毯の上のそれをエックスは見下ろしていた。
…エイリアもそっと出てくる。
後はルミネを救出するのみ。
玉座の後ろから、足音を響かせ歩いてくる少年が一人。
「君は…… 君はルミネ!無事だったんだな!」
そう。軌道エレベーターが動いているということは
管理者である彼も生きているということ。
「やっぱり生きていたのね」
ルミネはシグマの死体を見下ろして言う。
「無事? ええ、当然じゃないですか」
彼は冷めた笑いをエックスに向ける。
「…あなた方も、もうシグマを倒して満足でしょう?」
…エイリアの推測が、彼女を疼かせ始める。
「…あなた、シグマに利用されていたんじゃ…ないの?」
ルミネは首をかしげる。
「利用?」
シグマの死体に足を乗せる。
「…違いますね。
シグマはただ……役目を果たしただけです」
そして…砕く。
「私達、新世代型を目覚めさせるという 役目をね」
-
そう。考えてみれば、シグマは初期レプリロイドであり、
VAVAともども旧世代レプリロイドの最たるものではないか。
考えてみれば、ルミネが無抵抗で軌道エレベーターを動かしたままでいることも不完全だったではないか。
ルミネの周りには六角形の結晶が8つ。
白、黄色、水色、赤、緑、オレンジ、紫、黒。
……新世代型のコピーチップだ。
「来なさい」
彼こそが新世代レプリロイドの頂点に立つものだったとは。
宙を自在に浮く彼をエックスはチャージショットで攻撃。
「……はあぁぁ!」
彼の前に現れた驚くべき敵は、驚くべき戦いを始める。
ルミネはコピーチップのうちの一つを自らに取り込んだ。
その色は……オレンジ。
ルミネは床に手をかざすと、床からは水晶が発生、波のように現れ始める。
そう。…トリロビッチの技だ。
「くっ!!」
エックスは攻撃できない。襲い来る水晶の波を避けるのが精一杯であるためだ。
「スクイーズボム!!」
…だがその攻撃ももう遅く。水晶の波の中ではルミネには届かなかった。
「哀れ。」
次にコピーチップを取り込む。今度は…黒。
ルミネは宙へと舞い上がり、腕をビームの鎌へと変化させる。それも物凄く巨大な。
「とう!!」
カマキールの技だ。
襲いかかる巨大な鎌。左…次は右。
かわしきれない…その時である。
「天照覇!!」
光の柱が現れ、ルミネを攻撃する。
「くっ…!?」
「大丈夫か、エックス!」
そう…ゼロだ。
「来てくれたんだな、ゼロ!」
「シグマも随分と小さな体になったものだな?」
「…面白い冗談ですね」
続けて取り出したコピーチップは白。
「美しい雪の結晶をご覧に入れましょう」
ルミネの手から吹雪。雪の結晶が空を舞う。
「さぁ、いきますよ」
雪の刃が降る中、次のコピーチップは水色。
「FALL ON YOU…」
そう、ドクラーゲンの技だ。
ルミネの体に電撃が蓄えられ、
雷の爪となって降り注ぐ。
「いきますよー!」
「くう…!」
音波の弾があらゆる方向に反射、ルミネの体に当たる。
「面白いお仲間達だ…」
次なるコピーチップは赤。
「思い知りなさい」
コケコッカーの能力だ。
炎を手から放ち、シグマパレスの柱を燃え上がらせる。
炎の中での戦いへと移行する。
-
エックスはチャージショットで攻撃。
次なるコピーチップは紫。
「だが、邪魔をしないでいただきますよ」
ルミネは部屋中にブロックの雨を降らせ始める。
「何!?」
ズゴン、ガゴン。
ブロックは床へ落下、砕け散る。
これを避けるのは困難…そう思われたが。
「竜巻旋風脚!」
「ほう…」
レイヤーが現れ、ルミネの胴を蹴りつける。
「皆さんの回復が間に合い、本当によかったです!」
続いてのコピーチップは黄。
「地を砕く光よ」
レーザーがエックスを捉え…光の柱が打ち込まれる。
「なっ…!?」
「危なーーーい!」
手榴弾、ブラストランチャーがアクセルにより投げ込まれる。
「僕を真似したにしちゃ、ちょっと明るさ足りないんじゃないのー?」
「容赦のない方々だ。だが出揃った様子…
ここでエックスを失えばどうなるやら」
最後のコピーチップは緑。
「さよならです」
ゼロを瀕死に陥れた最強の技、葉断突だ。
「メルトクリーパーーー!」
エックスを庇い、最後に現れたのはエイリア。
炎の波が、突進するルミネを焼き、炎を纏わせる。
「うっ……!!」
軌道が逸れ、エックスの横を通り過ぎ…柱へと爪は激突。
「有難う。」
「さっきのお返し、それだけよ。」
…ここで8つ全てのコピーチップが音を立てて割れる。
「…それでこそ、滅び行く者達。」
ルミネの体が宙に浮き始める。
「真似の技ねえ…貴方、エックスのファンか何か?」
エイリアが言う。
「ちょっとそこまで行くとズルいんじゃないですかー?」
パレット。
「…皆さんお気をつけてください。…エネルギーが未知数…測定できません」
レイヤー。
「そんな小手先の戦い方で俺達を倒せると思うな」
ゼロ。
「…そろそろ本気出してみなよ。 ……アンタの戦い方でさ」
アクセル。
「…ルミネ。君もイレギュラーなのか?」
-
「イレギュラー…?
そんなものでないことは、あなた方も理解しているのでは?」
レイヤー、パレットが一時転送の限界時間を過ぎハンターベースへと帰還する中、
ルミネが口の端を吊り上げ話し始める。
「私にトドメを刺せないのは、それがわかっているからでしょう」
そういいながら、ルミネの傷はみるみる塞がっていく。
「……どういうことか、まず説明してもらいたいわね」
ルミネは話す。
「私達新世代型は、数え切れない沢山の旧世代型レプリロイドを参考にして作り上げられました」
アクセルが動揺する。
「コピーチップに……シグマ!?じゃあ僕もいつかシグマみたいに狂ってしまうってこと!?」
「残念ながら、プロトタイプである貴方にはそれほどの能力はありませんし…
変身もまた不完全です。…それに、」
「シグマは狂っていたわけではありませんよ」
炎の海の中を歩くは大量のシグマの群れ。その中心にいたのは他ならぬルミネ。
そう…あの光景は皮肉にも、新世界そのものを暗示していたのだ。
ルミネはこれからの世界を見据え、立ちはだかる敵に向かい語る。
「私達は、自らの意思であなた方の旧世界に戦いを挑むことが出来る。」
そして見下ろす。
「あなた方にわかるように言えば…」
「私達は、『自らの意思でイレギュラーになれる』のです。」
軌道エレベーターを描いた一人の小説家が提唱したロボット三原則。
ロボットは人間に危害を加えてはならない。
人間に与えられた命令に服従しなければならない。
これらに反しない限り、自己の身を守らなければならない。
………それが皮肉にも、軌道エレベーターの管理者により、ここに破られたのだ。
故障でも、ウイルスでもなく。
考えの中に人間が存在しないロボット。
人間から解き放たれた……完全に生命体として確立されたロボット。それが…
新世代型レプリロイドだったのだ。
-
「フフッ…どうですか?エックス。 私達が撃てますか。」
ライト博士は言っていた。
エックスには無限の可能性があり、無限の危険性も存在すると。
エックスの無限の危険性は、その戦闘での強さ以外発現することはなかった。
だが…ここに、同じく姿を変えることなく相手の能力を手に入れる力を持った
ルミネという、もう一人のエックスを以って、
「所詮は人の道具に過ぎない、旧い世代のあなた方が」
無限の危険性は…ここに開花したのだ。
「進化し、自由になった私達に何が出来ると。」
エックスは…バスターを下ろさねばならない。
ロボットは、自由になりたかったのだ。
勝利の快感がルミネの体を駆け巡る。その快感は顔を歪める。
「フフフフフフフ…ウクククク…
アアハハハハハハハ、アーーーッハッハッハッハッハ!」
新しい世界の宣言。
「世界は変わったのです!!」
人間からの独立宣言。勝利宣言を口にする。
「旧い生命が、より進化した生命に取って代わられるのは、自然の摂理です!!」
「大人しく…… 滅んでおしまいなさいっ!」
ルミネが腕を振るう。
その瞬間…彼の肩に銃弾が。
「……エックス、迷うことないよ」
少年の言葉は、単純な発想から来るものだった。
「コイツは悪いヤツだ… 敵だよ。」
そんな言葉は虫唾が走る。ルミネは口にする。
「敵…味方…。
そんな単純な問題ではない。」
「生命のあり方が変わったのです。これからの世界に、あなた方は必要ないのですよ」
エイリアは言う。
「そうやって、あなたはこのレプリロイドの戦い全てを、
レプリロイドの進化の言葉で片付けようっていうわけ?」
ルミネは返す。
「科学者ならわかりませんか。」
「悪いけど………
この戦いはそんな言葉できっちりまとめられるほど、
簡単なものでも 筋の通ったキレイなものでもないのよ!」
チャージを行う。
「そんな辻褄合わせは… 要らない!」
そしてゼロがセイバーを強く握る。
「滅べといわれて…黙って滅んでやるつもりはない!!」
4人の気持ちが一つとなった。ハンターベースで見守る3人も同じであろう。
そして最後にエックスが……ルミネへとバスターを向けた。
「…………それでこそ、ですよ」
ルミネが更に高く飛び始める。そして…光に包まれる。
「我々は…自由だ!!」
ルミネの姿が変化していく……
-
場所は暖かな光の差し込む天の上。
ヘキサゴンパネル一枚の上にエックスは乗っていた。
ルミネの第二形態。
現れたのは、6枚の翼を背負い生まれ変わったルミネ。
究極の力を持ったレプリロイドがここに現れた。
バサッ…と翼をはためかせ、空を滑空する。
だが実際、空を飛ぶのに羽を使っているわけでも、ホバーを使っているわけでもない。
ルミネ独自の、重力を完全に無視した能力で空を飛んでいるのだ。
「来なさい!」
6枚の翼を広げ、戦いがいよいよもって始まった。
凄まじいエネルギーの高まり。かつてない最強の敵として立ちはだかるはルミネ。
「当たれ!!」
空飛ぶルミネへ向かいプラズマチャージショットを放つ。
「フフフフフ……」
ルミネの能力がここで明らかになる。
ルミネが持つ6つの翼から、滑らかな光が放たれる。
強力なレーザーだ。
それは次々に折り重なりエックスを襲う。
「ぐぁぁぁあっ…ぐっ……!!」
いきなりの大量ダメージ。サブタンクで回復を行う。
逃げても逃げてもレーザーはエックスを追う。
攻撃の隙もありはしない。
「いきますよ」
空を滑り更なる攻撃へ。
「こうして世界は変わっていくのですよ」
ルミネから、辺り一面へ放射するように光の輪を放つ。
そう、ルミネの戦い方は「光」そのものを操る力。
自由自在に、どこからでも、どこへでも攻撃を行える極めて自由度の高い能力。
-
光の輪はルミネを中心として展開、エックスを切り刻んでいく。
「くぁぁあっ……!!」
ここでエイリアに交代。
「ハァァア!」
ルミネへとチャージショット、続けて通常バスターを食らわせる。
だが…ルミネには一切ダメージが通らない。シールドで防護されているためだ。
いかなる攻撃も防御される。だが攻撃を加え続ければ破壊できないことはない。
長期戦を覚悟しながら、エイリアはルミネへバスターを放ち続けるが…
2つ目の光の輪が展開され、収縮し始めた外側の輪と交差、エイリアを襲う。
「きゃあああああ…!!」
続けてゼロに交代。
シールドを破壊したところでレイヤーからもらったシグマブレードでルミネを斬る。
「くっ………」
「屍を晒しなさい」
今度は光を両腕から放つ。
二つの光は明後日の方向へと飛んでいき……猛スピードで戻り、
「何っ!!」
ゼロを串刺しにし、
「がはああっ……!!」
貫いた。
「僕が相手になるよ」
「かわすのが精一杯でしょう」
放たれ続ける貫通性の高い光の弾。
貫かれながらもいくつかかわし…
アクセルがバレットを乱射、ルミネを再び攻撃する。
「私を怒らせましたね?」
ルミネのボディが展開、光の束を頭上へ向かい放ち始める。
それらは上空で分かれ……
「何だよその攻撃!!」
光の矢となって降り注ぐ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
エックスへと交代。
光の槍を合間を縫ってかわし、ルミネへとバスターを撃ちつづける。
「くっ………!」
だがやはりシールドの上。攻撃の効きは悪い。
何度も何度も繰り返すが…
その間に何と光の槍は重力に逆らい、今度は上に向かい戻ってくるではないか。
「な!?」
全く同じ速度で『下から降ってくる』光の槍に体を貫かれる。
「くっ…そ…!!」
そして同じように光の槍は一本の光の束になりルミネの元へ戻る。
「随分な格好ですね、エックス」
続けてまたも6枚の翼によるレーザー。
折り重なる光がエックスを焼く。
「諦めない!!」
サブタンクをまたも使用。
「ノヴァストライク!!」
エックスはノヴァストライクでルミネに突進を仕掛ける。
だが…これもまたシールドの前に通用せず。
エックスはまたプラズマチャージをルミネに向かい放つのみとなる。
「哀れですね」
またも滑空、次なる攻撃へと移る。
-
紫色の光が放たれ…ルミネ最強のものと思われる攻撃が発動する。
「はぁあああああああ!!」
それを止めるべく高く跳び、ルミネを撃とうとするがその瞬間。
光の束を今度は胸から正面に放ったのだ。
「ぐぁぁああああああ…!!!」
そして光の槍は今度は左右からエックスを串刺しにするべく飛び交い始める。
「くそっ…………!!」
もうダメージなど構っていられない。
エックスはひたすらチャージショットを放つ。
「私もやるわ!」
エイリアも交代。同じくダメージを気にせずルミネへ特攻を仕掛ける。
「くっ…野蛮な物だ…所詮は旧き世代の浅知恵…ですか」
光の槍が呼び戻され始める。
交差していた光の槍は戻り、逆方向へとエックスを引き裂き始める。
「まだまだ……!!」
そして戻る。破壊力よりも、その自在な光の前に彼らは苦戦を強いられる。
後は…体力が持つかどうか。
もう残った僅かな残量しかないサブタンクを使用、なけなしの回復を図る。
「そこまでですよ」
またも2本の光がルミネから放たれ、エックスに向かいクロスし始める。
これを何とか回避し攻撃。
「くっ……!」
大分削ったはずだ。なのにルミネはまだ何かをし始める様子だ。
天の中心へと飛び始める。そして……
ルミネの最強最後の攻撃が放たれようとしていた。
彼から、膨大な光がルミネから放たれ、辺りの空間を染めていく。
ダブルアタックのときのそれのように、しかしルミネから大きな大きな…波動が放たれる。
人間は、悪魔から差し出された罪の果実を口にして、目覚めたのだ。それは創造した神への反逆。
同じことだ。
新世代レプリロイドは、シグマという悪魔から差し出されたコピーチップにより、創造した人間へ反逆し目覚める。
世界全てを書き換えんとする最強最後の攻撃。その名は。
「『パラダイスロスト』!!」
-
辺りが真っ暗な闇に覆われ、ルミネが発動の準備に入る。
6枚の翼を閉じ、詠唱に入っている。
これが完成すればどうなるか、全く見当もつかない。
ルミネを倒さねば。
「行くぞルミネ!!」
チャージショットで翼の防御を解く。それだけでは足りない。
「グリーンスピナー!!」
これにより防御を解く。もう一度チャージショット。
これにより防御は解いた。後はルミネ本体を攻撃するのみ。
「行くぞ…!」
1発、2発…3発。
だが足りなかった。ルミネは再び翼を閉じ、辺りを更なる闇へと包みながら詠唱を続ける。
「私もやるわ!」
エイリアと交代、チャージショットとグリーンスピナーの波状攻撃。
一気にルミネの防御を解きにかかる。そして最後の防御を解き…
攻撃力ならばエックスだ。再び交代。
「行けえええええええええええええ!!」
チャージショット。
…だがまだ足りない。最後の一撃を……!
「エックス!ダブルアタックよ…!!」
「……ああ!!」
最後の攻撃。空間を変える力を持つなら、こちらが更に変えてしまえばいい。
ダブルアタック。
転送空間へとこの歪んだ空間ごとルミネを連れ去り……
「いっけえええええええええええええええええ!」
最大出力のエックスとエイリア、二人のバスターが交差、ルミネを貫いていく。
そして。
「くっ…………!! ぐあああ…!! がっ………!!」
闇が晴れる。ルミネのボディの大破によって。
「うぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
-
風景はシグマパレスへと戻っていく。
そこには、膝をつき力尽きたルミネの姿。
「くっ………」
「……私を倒した所で、最早…何も変わりはしない」
アクセルは強がりながら、胸を押さえて言う。
「お前みたいなのが出たら、いつだって相手してやるさ」
そんな彼らのプロトタイプの様子をルミネはあざ笑う。
「ククッ… 本当に……何も解っていないのですね」
そして彼は機能を停止する。
「まあ………いい ………いずれ…… ………わか」
言葉はそこで途切れた。
破壊され尽くしたシグマパレスの絨毯の上に膝をつくルミネの姿。
「………コイツのコピーチップを調べてみる必要がありそうだ。」
アクセルは、ゼロに話しルミネへと近づく。
天を見たまま、口を開け、何も言おうとしないルミネの顔…
…が、突然ガクリと動き始める。
「!?」
何とルミネの胸部から黒き触手が発生。
わらわらと、アクセルを掴もうと伸び始めたのだ。
「ぐああああああ!!!!」
アクセルの頭のクリスタルが割られる。
「アクセル!」
ゼロは飛び出し、触手を切る。
パン、という妙な音を立てて触手は切れ、弾けた。
「うぉあああああ!!」
チャージショットを放ち…ルミネに今度こそトドメを刺した。
「ゼロさん、ゼロさん…!状況報告をお願いします!」
レイヤーだ。
「……アクセルが負傷した」
「ええーーーーーーーーーー!」
パレットからの声が耳を攻撃する。
「…だけど無事だよ。…これより、帰投します」
そしてエックスの隣には頬を染めたエイリア。
…それぞれを待つ所へ、帰ることとなった。
「少し、私寝ているわね……」
「…ああ。ゆっくり休んでいてくれ。初ミッションご苦労様」
彼は肩を貸してあげることにした。
-
「ゼロ、急いでそこから逃げて!」
「ゼロ、本当にいくの!?」
「…………を倒してしまうなんて、あなた本当にゼロなのね」
「行き過ぎた正義、力による支配。………………………を作ったのは、私なのよ!」
帰りの軌道エレベーターの中、謎の少女の夢をゼロは見ていた。
「………最近は変な夢を見るな」
ゼロは考えていた。
……ルミネが言っていたことが本当ならば、
もうシグマは復活しないだろう。 …いい、潮時かも知れんな
エイリアを傍らに、地球を見つめるエックスを見つめ…自分よりも優秀なハンターがいる、そう確信しながら。
…そして彼には宛てもある。彼の体を安心して任せられそうな者が。
彼に任せることにしよう。あの…少年科学者に。
彼は何より、自分が平和を乱す存在になることを恐れていた。
「おお、エックス…お前は本当に人間のようだ」
「すまない、エックス…。 お前を世に出してあげるには…時間が、なかった…」
「ああ、ワシも願っておるよ… お前の力が、正しいことに使われることを 世界の人々が…… それを望むことを。」
「お前のような存在を受け入れるには…人間はまだ…幼すぎるのかもしれん」
エックスもまた、アクセルを抱えながら夢を見ていた。
遠い昔のこと……ライト博士に自分が作られているときの夢だ。そしてエックスは考える。
『覚醒』ルミネはそう言っていた。これは『進化』であるとも。
それが、レプリロイドのあるべき姿であるならば……
自分達のしていることは、何なんだろう。
目を閉じて考えてみる。
「…… 大方、ルミネの言っていたことでも考えていたんじゃないのか?」
「………」
エックスは否定しない。
「シグマのようなヤツばかりになるのが… 進化などであってたまるか。」
単純な答えだ。
ゼロは背を向ける。
「…それにな、エックス。」
「?」
ゼロは声のトーンを落とし、呟く。
「もし、本当に進化のときとやらが来て」
エックスは目を見開く。
「俺達が滅ぶのが、運命だったとしても。」
ゼロは、エックスの背中に、最後の言葉を刻む。
「俺達は、戦わなきゃいけねぇんだ …その、運命ってヤツと」
エックスはただ、黙っているばかりだった。
破壊されたアクセルの額の…その妖しい輝きに気付くことなどなく。
そして待ち受けていたのは、残酷な処置と、その後。
ルミネのイレギュラー化を受け、政府は新世代型レプリロイドの初期ロットを破棄。
しかし、更なる宇宙開発の隆盛から高性能なレプリロイドの開発要請は尽きず……
厳重なプロテクトを施し、政府はコピーチップの開発を再生した。
『人間とロボット 相容れぬ二つの生命が共存する世界
それは、私が願ってやまない理想郷だ トーマスライト』
その理想が実現するのは、果たして何時になるのであろうか。
エックスが託された想い、遺された過去があり…
ゼロへ託される想い、引き継がれる未来がある
そして、彼らはただ、『今』を戦っている。
To be continued...
-
「エックス!帰って来てからもそのアーマーつけてくれてるの?」
赤いビームマフラーをなびかせ
エイリアお手製のアーマーを身に纏い、エックスは今日もミッションから帰って来た。
「ああ。これ、結構使いやすいからね」
世紀は変わり22XX年。
エックスは、ゼロ、ハンターのシャドウと共に人工島ギガンティスへ潜入し…
自分の謎を知るべくやってきたアクセルと合流、
そして最近、やっと帰って来たのだ。
パレットがやってくる。
「気に入ってくれてるみたいですねー、エックスさん。」
「ええ。デザインした甲斐があった…」
喜んでいると、突然彼女に声がかかった。
「あのぉー…。」
「?」
ふと目をやると…。
そこには、金髪をゆらゆらと揺らせる、白い…
メイド服のような、ナース服のような格好をした…手に猫の前足のようなグローブをはめた
可愛らしい幼い娘がそこにいた。
「…………何、その格好」
「…ダ、ダメですかぁ?」
「いや、別にダメじゃないんだけどもね。
…えっと、あなたは?」
「へぇ…シナモンっていうのね。」
「はいっ!私、今日からハンターベースの医務室にお世話になることになりましたぁ!」
『怪我人』を名乗る者も増えることだろう…。
「とすると、もしかしてあれかしら。エックスがギガンティスでお世話になった、っていう…」
「お世話になったのは私の方ですよー♪」
えへへ、と笑う。
「……所で、行かなくていいの?」
「はいー。そうなんですけど、
ちょっと会っておきたい人がいるんです♪」
「…はぁ。」
頬を染める少女。……これは恋をしている顔だ。
嫌な予感がするので聞いておく。
「ところで。…あなた、所で誰か好きな人いない?」
「わぁああ! …な、何で解ったんですかー…?」
一応、一応聞いておこう。
「……ヒント教えてくれない?」
シナモンは喋りたがっているようでもあったので、すぐに話してくれた。
「えーとですね!
実は、髪が長くってー…赤色のアーマーを着ててー…
カッコよくってー…背が高くってー…それで、ズバーって戦いのときは敵を切っちゃうんですよ!」
「…ああ。もうそれだけ言えば解るわ。うん」
レイヤーにライバル出現か。
…最も、アイリスが生きていれば彼女もまた強力なライバルだっただろうが。
「ちょっと待っててねー」
ゼロを呼びに彼女は向かった。
-
「おや!シナモンじゃないかい。どうしたんだい?」
ふと見ると、そこには緑色の長い髪を靡かせた、
赤みがかった桃色のアーマーを身に着けた
ビームナイフを携帯した背の高めの、くのいちレプリロイドが一人。
彼女は、先日からハンターの諜報部で活躍しているマリノだ。
「あーー、マリノさぁん♪」
とてとてと走り、その豊満なバストに顔を埋める。
「ちょっ、もうシナモンったらいきなり何するんだい。」
そう言いつつ頭を撫でる。
…レプリロイドの恋も複雑なものである。
「何だ?誰も居ないじゃないか」
「変ねぇ。さっきまでシナモンって子がいたんだけれど」
「ぜ、ゼロさん……」
するとそこにはレイヤーが。
「お前は……ああ。確かレイヤーだったか。俺に話があるのか」
「あ、いえ…実はエイリアさんに。」
「私?」
「はい。ギガンティスから、本日付でハンターベース配属になる
オペレーターが一人見えているようですが」
「ふうん……」
というなり、ゴツンと何かがエイリアの背中にぶつかった。
「ご、ごめんなさい………」
見ると桃色の髪に前髪の一部だけが白くなった美少女がやってきていた。
エイリアより背は低く、可愛らしい顔つきをしており…
何より目立つのはレイヤーに勝るとも劣らぬそのはちきれんばかりのバスト。
「………もしかしてあなたが?」
「は、はい。ナナといいます。エイリアさんですね。宜しくお願いします!」
「ええ。宜しく… 所であなた、どういうことをしていたの?」
「主にメカニロイドの派遣業務が多かった気もします…」
「実戦をオペレートする経験なんかは少ないのかしら。」
「…そうでもない…筈ですけど」
「とにかく、そうね。…今日はもう忙しいし、
あなたはもう帰って大丈夫よ。明日から来て?」
「は、はい!」
そう言って、エイリアは足早に歩き始める。
エックスの元へと、急いでいく。
「エックス、元気でしょうか…。」
やがて来る、ナナとの戦いを… 今はまだ、知る訳もなく。
-
「それじゃ、これからはまじめに活動してくださいね、Drワイリー!」
ロックマンはほっとした心地で家路を急いだ…その1分後。
「危うい所でしたねー、Drワイリー…」
声の高い、小柄で四角いロボットがカプセルから出てくる。
「俺ら流石に見つかったらヤバかったんじゃねえのか?」
奇怪な形をした青いロボットが続けて現れる。
「へーン!オレの爆弾であんなのはぶっ飛ばしてやるよ!」
バイザーのついたロボットが現れる。
「迷惑な真似ややめろよオイ! みんなお前みたいに頑丈なボディ持ってるわけじゃないんだぜ」
頭の輝くロボットが現れる。
「フン!馬鹿を言うな…お前達は性能テストもまだじゃろう!」
ワイリーは土下座のポーズを止めて立ち上がる。
「…Drワイリー。ヤツと戦えるのは何時頃になりそうでしょうか。」
長身のロボットはワイリーに聞く。
「何じゃ?クイックマン」
クイックマンと呼ばれたロボットは答える。
「ヤツと戦いたいのです。俺が最強であることを、ヤツに見せてやりたい。」
その目は真っ直ぐだった。
ワイリーは腕組みをして考える。
「……そうじゃな。予定を早めるとしよう… まぁ…1ヶ月もあれば十分じゃろう」
「…い、行くならクイックマンが行ってよ…」
足ヒレをつけた弱気なロボットはぼそぼそと喋る。
「お、オイ!今から仲間割れしていてどうするんだ!」
長男の責任というものか。最初に作られたロボットはあたふたする。
「…いや。 …あながち、その意見も的を得てるかも知れんのう」
どっしりとした体格のロボットは長男の肩に手をやる。
「…何でだよ!?」
こもった声で彼は話し続ける。
「バブルマンはまだ自分の能力に自信を持てずにいるのだろう。実際、能力はまだ未熟な点がある。
…一番強い者がロックマンを潰しに行けば、一番安全というものだ」
「…で、この中で一番強いのは…誰だ?」
それから28日が経過した日のライト研究所。
ロックマンとロールは、カットマン達の修復作業に明け暮れていた。
だが…TVは突然またも乱れ…
彼の姿を映し出す。
「先日は遅れを取ったなライト…いや、
ライトの所にいるロックマン!」
「…Drワイリー!!」
またも電波はジャックされた。
「ううむ…ワイリーめ、このために時間を空けていたのか…」
大手を広げ、拳を振り上げるDrワイリー。
そしてその背後にはロボットのシルエット。
「お前に挑ませるべく、ワシは戦闘用ロボット集団、
『ワイリーナンバーズ』を組織した!」
V字の飾りを頭につけた長身のロボットを先頭に、
頭のない大柄のロボット、
小柄で足ヒレをつけたロボット、
頭にバイザーをつけた両腕がとがったロボット、
真ん丸い頭をした、何の変哲もないように影では見えるロボット、
直方体に手足のついたようなロボット、
真ん丸い円柱形の体をしたがっしりとしたロボットが続く。
-
「これから8体のロボットが様々な場所で事件を起こし、お前をおびき出す!
そしてロックマン、お前はこのワイリーナンバーズに敗れることになるのじゃ!!」
博士はビシッと指を指し宣言する。
「……あれ?」
「7体しか見えないわね…ワイリーの後ろ?」
そう思った瞬間。
「な、なんじゃこの音は!?」
ライト博士が見上げた天井。
そこにはヒビが入り…鋭い何かが落下してきた。
「博士ーーーー!」
ロックが庇う。
天井からの巨大なドリルだ。
「………何じゃ…!?」
ドリルに乗って現れたのは赤いボディの一体のロボット…
ワイリーナンバーズ最初の刺客だった。
「オレはメタルマン!
さぁ、ロックマン!はるばるやってきたんだからオレと勝負しやがれ!!」
頭につけた円形の刃が輝く。
「えぇえええーーーい!」
「!?」
メタルマンの背後から殴りかかるロールちゃん。その手には…箒。
「…戦えるロボットはオレ以外にもいたっていうのか!?」
目が飛び出んばかりに驚いているメタルマンのわき腹に今度は爆発音。
「のああああああ!?」
…ロックバスターが火を吹いていた。
「…メタルマン。僕が相手だ」
「私だって戦えるわロック!」
前から後ろから。知らず、メタルマンは挟み撃ちに遭っていた。
「…ひ、卑怯だぞ!!」
「とはいっても、お前さんは奇襲を仕掛けてきているしのう」
ライト博士にまで突っ込まれる始末。
メタルマンは手足をじたばたするしかない。
「もういい、メタルマンよ。ちょっと戻って来い…」
頭を抱えていることが一発で分かる疲れた声がメタルマンの耳元から漏れる。
「…まぁいい!次は1人で来いロックマン!」
天井の穴からメタルマンは去っていった。
「…お前はこうじゃからダメなんじゃ…」
「も、申し訳ありませんDrワイリー…」
とぼとぼと帰っていくメタルマン。ワイリーはクイックマンの元へ歩く。
彼は壁を背にしていた。
「…本来、お前が行く予定だったんじゃぞ」
「1号機であるメタルマンに華を持たせたまで。
…それに俺はロックマンの能力の全てを手に入れさせた上で戦いたいのです。」
呆れた様子でワイリーは言う。
「…じゃからヤツはロックバスターしか使えんと言っておる。」
そして、彼の無言でワイリーは勘付く。
「………」
「まさか、お前…」
「ええ。ワイリーナンバーズの他全部の能力を手に入れたロックマンと俺は戦いたいんです。
能力を得ることもヤツの力のうちでしょう。」
「非情なものじゃな…」
「…俺との戦いでヤツの快進撃は止まる。
そうでなかったらそれ以前に敗れる、それまでの奴だったということですよ。
どの道スペアボディで蘇ることは可能なのでしょう」
「誰が用意すると思っておる、全く…」
「申し訳ありません。
俺は…ちょいとコイツでロックマンとの模擬戦闘をしてみますので」
クイックマンは窓際にいた一体のロボットを親指で指す。
「…慣れなれしい真似はやめてもらおう。」
サングラスをかけたロボットがそこにいた。
「…今回の敵は僕を倒しに来ている…か。」
夜の高層ビルの屋上から夜景を眺める。
今度の戦いの舞台は…町のどこになるのだろうかと。
-
ビームが左右から交差し、彼を撃ち殺そうとする。
だが危なげなく、彼はそれを素早い動きでそれを回避、
見る見る内に下のフロアへと落下していく。
「…タイムは更新できたようだ」
最下層に着地。
「そろそろロックマンがやってくる。…お前は最深部で待機しておれ」
ワイリーの声。
「…はい」
メタルマン、エアーマン、バブルマン、クラッシュマン、フラッシュマン、ヒートマン、バブルマン。
7体のロボットは全員、すでにロックマンにより倒され、
今はスペアボディを作成している最中だ。
…彼らの仇は勿論彼が取るつもりでいる。
最強のロックマンを倒すことで自分が、そしてそれを作ったワイリーが最強であることを証明するべく。
彼は、あるときのことを思い出していた。
「クイックマン。
ワシはな、赤と黒という色が好きなんじゃ」
卓球のラケットを手にワイリーはニヤつく。
「俺のボディも、赤ですね」
「その通り!最初に作ったメタルマンもじゃな!」
ワイリーは力説を始める。
「赤という色はな。
人間が最も最初に知覚する色であり、人間の興味を最も引く色なのじゃ」
クイックマンは黙って聞いている。
「赤子ですらワシの存在を知れるように!
世界全体がワシのことを、ワシの技術を完全に認めるように!
ワシは赤という色を、傑作中の傑作であるお前や、最初の1号機であるメタルマンに与えたのじゃ」
その熱さに少しだけ体力を削がれながら。
「そして黒という色は全てを染め上げる色!光すら吸収する、完全な無じゃ!
ワシはその二色をいつか、傑作とするロボットに使いたいと思っておる」
初号機としてのメタルマンとは違う。
その性能からその色を授かった彼は、負けるわけにはいかない。強さをアピールせざるを得ないのだ。
真っ赤な、この部屋で。
…ロックマンはきっと上の部屋にあるレーザー地獄を潜り抜けてくるだろう。
フラッシュマンのタイムストッパーがあればそれも可能なはずである。
部屋の扉に青い色が入り込んでくる。
「…よお、ロックマン」
「君がクイックマンだな」
「気をつけてね、ロック!」
ロックマンの耳から、オペレートするロールちゃんの声が聞こえてくる。
そしてその妙な凹凸のあるその部屋は、全体が一つの装置になっていた。
その装置とは。
「博士の研究所のバリアを解きたければ解け。」
そして高く舞い上がる。
「ただし、俺という存在がこの基地にいる限りバリアは解けない仕組みだけどな!」
「行くぞクイックマン!!」
ロックマンは素早くジャンプ、クイックマンの落下を回避するが
クイックマンはそれを追尾するようにタックルをかます。
「うああぁああっ…!」
「どうだ、超高速のタックルってものは!」
再び跳びあがる。
彼の能力はそう。名の通り、恐ろしいほどの速さにあったのだ。
だがそれだけではない。
「メタルブレード!!」
メタルマンの特殊武器。バブルマンだけでなく、フラッシュマンまで沈め、多くのロボットを倒してきた
彼の愛用する特殊武器となっていたものを放つ。
だが…
「効くか!!」
クイックマンはそれをガード、全てはじいてしまう。
「そんな刃は俺には効かない!」
更に突進。
「くぁぁぁっ…!!」
手に刃を持つ。そして…
「クイック・ブーメラン!!」
勢いよく射出。それはロックマンめがけて一気に3つ飛んで行く。
「うぁああ…!!」
肩を裂かれながらもロックマンは逃げる。だが。
「俺の能力を甘く見るんじゃない!!」
突進。ロックマンはそれを回避 …した瞬間。
「うあああああああああああああああ!!」
クイックマンが加速から着地に入るそのタイミングでニヤリと笑う。
クイックブーメランは2段追尾の必殺技。
一度避けても、当たっても、次にもう一度食らうことがある。
彼のブーメランすら越える速度での移動で誘導したなら尚更当たりやすい。
-
「食らえ!!」
半端な攻撃力ではない。すでにエネルギー缶を一度使ったロックマンは
バスターでクイックマンを撃つ。
だが。
「やっぱりな…?」
弾は遅く、弾道はするするとクイックマンの体を通してしまう。
「なら!!」
この方法だ。
クイックマンへ近づき、バスターを放つのだ。
「ぐう……!!」
「ああぁああああああああああ!」
相打ちになる。だが…
「そのダメージのままいつまで戦うつもりだ、ロックマン!!」
攻撃力、防御力、速さ。全てにおいて勝っているクイックマンには
それだけではダメージが割りに合わないのだ。
………例え、エネルギー回復という手段があっても。
「ロック、アレを使って!!」
「………仕方ない」
ロールちゃんはあらかじめ、敵のボディを研究。
そこから、今までの弱点から考えクイックマンの弱点を割り出していたのだ。
「…まさか!!」
「うぉおおおおおおおおお…!!」
バスターを前へと突き出す。
「タイムストッパーーーー!」
「ぐぉおおおおおおお、おああああ……あああああああ…!!!」
辺りが輝き…
クイックマンの視界を真っ白に染め上げていく。
ワイリーナンバーズには通用しないはずのタイムストッパー防御装置が故障していたのだ。
『よりにもよって』 ワイリーはそう言っただろう。
彼には特に致命的な欠陥があったのだ。
時間を制御する光を放つ、フラッシュマンのその武器だが、
特にクイックマンの場合、それを食らうと大変なことになる。
…加速装置の暴走。
不安定に時間を止めることによりクイックマンの体は硬直、内部で暴走が起き…エネルギーが増大し続けるのである。
クイックマンの体が…光に包まれる。
「…ば、馬鹿な」
ロックマンは全てのタイムストッパーのエネルギーを使い果たしたがクイックマンは倒れはしなかった。
クイックマンを驚かせているのは、ここでタイムストッパーを使ったという事実である。
クイックマンのいたバリア基地は、
クイックマンの性能テストにも使われていた場所である。
その性能テストとはその素早さを試すもの。実際彼が先ほどやってみせたように、
殺傷力の極めて高いレーザーを壁の左右から照射し、それを一息で乗り越えさせるというものだ。
…クイックマン以外に出来るわけがないそれを、出来るものが2人いた。
そう。時を止められるフラッシュマンと、その力を得たロックマンだ。
だがあいにく、タイムストッパーは一度発動すると使い切るまでそのままである代物。
故に、クイックマンの元へつくまでに使い切っており、本来ロックマンが使えるはずなどないのだ。
「…何故だ。」
その、消耗させてからの戦いをクイックマンは抗議した。自分は全ての力を使うロックマンと戦いたいのだと。
けれどワイリーはそれもロックマンの力の一つといったのはお前であると反論した。
「…簡単だよ。
…あのレーザーを何も使わず抜けるルートをロールちゃんに解析してもらったんだ」
「…なんだと…?」
さらりと言ってのけた彼に対し。そんなことが出来るのか、ではない。
それを発見したところで、隙なくそれを実行できるのか、ということだ。
「…どうしたんだい、クイックマン。」
ニヤリと笑う。
そして、ニヤリ笑いが…大笑いへと変わる。
「フフ…アハーーーーッハッハッハ!」
「!?」
跳躍。
「ありがとうよ!!ロックマン!
いっそう楽しい戦いにしてくれたってわけか!」
弱点を使われても、むしろそれが嬉しい。
通常ではありえぬ方法でここへ来たロックマンに、全力で相手してもらえているのだから。
「気分がいい! ちょっと外へ出ようぜ!」
赤い光が消えていく。
「待て、クイックマン!」
青い光となって消えていく。
-
「風が気持ちいいだろう…。」
吹き抜ける風。いつぞやに夜景をバックにビルの上に立つロックマン。
アンテナの上に立ち、それを見下ろすクイックマン。
「決着はここでつけよう。」
ビルを渡り歩き、どんどん高いビルへと登っていくクイックマン。
『アイテム1号』を使い上へ上へと進んでいくロックマン。
「さぁーーーー、行くぜ!!」
月夜に跳躍。
「クイックブーメラン!!」
重力加速も加わり、破壊力を増したブーメランが二つ放たれる。
「フッ!!」
1つ目。
「ハッ!!」
2つ目。
「食らえっ!!」
ロックバスターが勢いよく火を吹く。
「二段追尾を忘れちゃ困るぜ!!」
勿論忘れてなどいない。
ロックマンはビルを蹴り反動でブーメランをかわす…
ブーメランが発電所へ激突……辺りに停電を起こす。
そして宵闇が両者の体を隠す。
「さあああああ、行くぞロックマン!!」
空の上から刃を手に飛び降りるクイックマン。
「これで最後だ、クイックマン!!」
屋上を蹴りジャンプ。
バスターを上へ、クイックマンへと突き上げる。
……予備電源が作動。二人の体を…照らす。
「……………!!!」
ロックマンの色は…
「アトミックファイヤーーーーーーーーーーーーー!」
赤だった。
「わっ!?」
「ぉああああああああああああああ…………!!」
そして夜に太陽が打ち上げられる。
アトミックファイヤー…ヒートマンから得た、原子の炎。
ロックマンですら知らなかった。
準備している間に、一発をと思い残していたら、いつの間にか膨れ上がっていたのだから。
特殊武器は本来、敵の技を真似るのみのもの。
だが彼はその力を更に拡張、
エネルギーをバスターの内に溜め…最大出力でチャージし、放つことが可能となっていたのだ。
後に世は、それをチャージショットと呼ぶこととなる。
彼は最後にロックマンの全力を見た。
初代ワイリーナンバーズ最強の男の…ロボットとしての、ロックマン最初のライバルの最期だった。
-
「ゼロか。話は聞いているよ…部下に話はしてある。宜しく頼む」
少年科学者がゼロに斜めに手を差し伸べる。
「…ああ。」
彼は自らを封印しに来たのだ。
「本当に…それでいいのですか?」
ゼロの功績を知る科学者は言う。
「失礼ですが、もしこのような事が今後あったときに。
…貴方抜きで、果たして対処できるのでしょうか」
「…何とかやっていけるだろう。
ハンターには、俺なんぞよりよほど優秀な奴がいる筈だ」
「…俺は、自分自身が平和を乱す存在になる事の方が、辛いんだ。
それで…俺が目覚めるのは何時頃になる」
「はい…おおよそ」
「み、見つけた…見つけたぞーーーーーーー!」
一人の男が声をあげる。
その部屋に、まもなく煙と共に光が差し込む。
「……シエル様、ここは俺たちに任せてくれ!」
「急ごうシエル!」
「う、うん!」
シエルと呼ばれた少女は、部下に任せ、
一人のレプリロイドの男と共に先へと進む。
男の名はミラン。
組織で1、2を争う戦闘能力を持つ彼が得意とするのは銃。
敵組織の主力兵を、普通なら数人で1人を相手に戦うところを
1人で5人も、ものの1分で倒すことが出来るほどの実力を持っていた。
彼女が見つけたものは。
金の髪を垂らし、腕が千切れ、体の各所がコードで繋がれた
一人の赤いレプリロイドの姿。
「…これが、100年前の英雄………ゼロ」
100年の眠りについていたその英雄の力を借りるべく、
彼女はやってきたのだ。
100年前の戦争で破壊神と呼ばれたそのレプリロイドは死んだように眠り続けている。
「…どう?パッシィ」
「…ダメだよ、プロテクトがかかってる……」
小さな光が彼女に、見えない光の壁が彼女らを遮っていたことを教える。
よく見るとその小さな光は、小さな小さな少女の形をしている。
「…どうすれば………」
その瞬間、背後から叫び声がした。
「うわああああああ!」
「…!」
部下の頭を踏み潰し、敵の兵がやってきた。
「シエル!危ない!!」
ミランは入ってきた敵に向かい銃を放つが。
「ぐあぁああ…!」
肩を撃たれ。
「うあああああ!!」
シエルの目の前でオイルを噴出し…倒れた。
-
「…………」
愕然とするシエル。
「……ねえ、シエル」
「………」
「シエルってば!」
「…え?」
パッシィと呼ばれた光は、プロテクトを外す手段を彼女に教える。…たった一つの。
「…私の力を使って!」
「……え…!?」
バスターを構えた敵が迫る。
「…お願い!みんなが死んじゃってもいいの!?」
「でも…!」
…更に迫る。
「…シエルの帰りを待ってるみんながいるんだから!」
パッシィの必死の言葉。
小さな光はサイバーエルフと呼ばれ、プログラムの生命体である。
その力は様々なことに活用されるが…
…サイバーエルフは、一度力を使ったが最後、消えてしまう運命にあるのだ。
「………解った。」
少女は決意する。
「……ごめんなさい、パッシィ」
その様子を見て、ほっとする。
「…ううん。いいんだよ、シエル」
寂しくはある。けどそれはお互い様であり…
例え死ななくてもシエルはいなくなってしまうのだからこれで最後には変わらないのだ。
それならば。
「……今まで有難う、シエル」
「……パッシィ」
パッシィの体を手で支え……
放つ。
「パッシィーーーーーーーーー!!」
別れの時だ。
振り返らずに彼女の体はプロテクトの光に到達。
光を突き破り…
ゼロのボディへと届いていく。
そして…彼女の命を動力として………
光がボディから発し……千切れた腕が再生、
ボロボロに朽ちた体が再生されていく。
その光は、目の前の敵達を焼き滅ぼし………
青いレプリロイドをかつて彼は助けた。
黒いボディの少年も彼は助けた。
…助けを待つ者の前に……… 彼はまた、現れる。
彼こそが伝説の英雄。
「……ゼロ…!」
「…………。」
何も言葉を発しない。
「…ゼロ。聞こえる?ゼロ」
「……?」
「お願い、ゼロ。…助けて!」
-
「………」
何も言わぬまま、
足元の、ミランのバスターショットを手に…彼は駆け出した。
駆ける、撃つ、避ける、跳ぶ。
瞬く間に、敵の体に穴が開き、破壊されていく。
敵がトラップとして仕掛けた空中爆弾も利用して更に沢山の敵を巻き込んでいく。
青いボディの敵組織の主力兵。
ミランが1分に5体倒したものだが… それはまるで比にならなかった。
1秒に1体…それ以上のペース。
凄まじい連射速度と俊敏性。
彼は…1分もせずに………敵の群れをほぼ全滅させながら突っ切ったのだ。
…シエルには傷一つ与えることなく。
…だが、そこはもう行き止まり。
入り口はすでに、これ以上近づけないようにとシエルの部下達が爆破していたのだ。
「…行き止まり…? …ど、どうすれば…」
踏み出したその時。
「…危ない!」
「きゃあああ!!」
シエルの足元が崩れる。
ゼロはとっさに崩れる足元へ駆け出し、シエルを抱きかかえる。
長い髪が流れ、遥か下のフロアへと一気に落下していく。
「!!」
着地。気がつくと彼女の頬は染まっていた。
「あ、ありがとう…」
そう。シエルの部下も通路を爆破するのには意味がある。
他に入り口があることを知っていたからだ。
「…ここは、旧時代の研究施設か何かかしら…。」
「…」
ゼロは何も言おうとしない。
「もしかしたら、脱出に使える何かがあるかもしれない」
だがそこも瓦礫。
「ダメ、ここも崩れちゃってる。戻りましょうか?」
…見ると、シエルの背後の瓦礫がボロボロと崩れかかっている。
「下がれ!!」
「!?」
背後から伸びた巨大な手がシエルの体を掴んだ。
「きゃああ!!」
奥には研究室。そこにいたのは……
「ゴーレム!? ま、まさかこんなものまで投入されていたなんて…!!」
そこにいたのは巨大メカニロイド。
「逃げて…こいつには…バスターショットが…!」
戦闘が始まる。
ゼロはバスターをボディへ当てるが、敵のボディは硬質なものらしく、ちっとも当たりはしない。
「………」
壁を蹴り登り、頭へバスターを当てる。
ここならば頑丈ではないはずだ。
見事に相手のボディに命中。手ごたえがあった。
だがゼロの存在を感知した敵の口が開き…
「!」
レーザーを放つ。ゼロは落下、敵の足元へと移動。
レーザーは壁に撃ち込まれ、そのまま天井を撃つ。
ゼロの背後に瓦礫が降り注ぐ。レーザーが破壊した位置をゼロは感じ取ったのだ。
瓦礫を登り、瓦礫を破壊しに突進をするゴーレムを撃つ。
続けて床から壁へのレーザー。
これは難なく壁を蹴り回避、そのまま撃つ。
…だがやはり攻撃力に難がある。
「…チッ」
長期戦は避けられない。そう思ったときだった。
-
「ゼ………ロ………」
「?」
彼の耳に誰かの声が聞こえてくる。
「これを…使って………」
「それは……!」
ゴーレムの腕の中のシエルが反応した。
何かが画面の中から飛び出し、地面に刺さる。
「…剣、か?…お前は誰だ」
「いいから…早く、彼女を助けないと」
「……」
何も言わずにそれを取る。
突然、ゼロに力がみなぎってくる。
そして…壁を登り、勢いよく蹴り……
「………!」
無言でそれを振る。
ゴーレムの巨体の上から下へ…一筋の線が刻まれる。
そして…線の色が黒から白へ。
エネルギーが発せられ………消し飛ぶ。
「きゃあああ!!」
シエルを救出、爆発から遠ざかる。
「……大丈夫か。」
「え、ええ……」
光の剣をしまう。
シエルが唖然とする。
「…輝く剣ゼットセイバーを使いこなす……
そしてあのゴーレムを倒してしまう…。」
そのために来た、それはわかっているのだが…信じられない。
「あなた、本当に…… 伝説のゼロなのね」
「…ゼロ… …俺の名前…か? …すまん、思い出せん」
彼は…全ての記憶を失っていた。
「100年も寝ていたんですもの。仕方ないわ」
扉の奥へ。
「!」
扉に入るなり、何かを見つけたシエルは作業を始める。
30秒ほどか。
「…うん。『トランスサーバー』が生きてたみたい。
これに乗って?座標は入力してあるから。」
どうやらそれは転送装置のようだ。
「着いたら、話すわ。 この時代の…この世界のこと。」
シエルに導かれるまま、彼は…光となり消えていった。
「あなたが今戦った… 相手のこと。」
-
ネオ・アルカディア。
「…それがお前達を追っていた組織の名前か?」
「ええ」
それは大きな、とても大きな組織。
「…お前達は一体何故殺されかかっていた?」
故障、社会的反逆者である『イレギュラー』を粛清すべく動いている。
問題はその基準。
彼らは何の罪もないレプリロイドを、イレギュラーとみなし処分しているのだ。
「………イレギュラーの作り出した組織というわけではなさそうだな。」
その組織によって、無能とされた、能力のないレプリロイドは弾き出され、
あらゆる手で処分を行われる。
「……どこにそんな権限がある?」
その組織は全てが滅び去った世界の各地にドームを構え、その中で人間もレプリロイドも生活している。
その中心地は赤道直下の軌道エレベーター。
エネルギーの無駄となるレプリロイドは破壊される。
全ては、人間の生存圏拡大のために。
少しでも問題とされたレプリロイドも、破壊される。
全ては、人間の平和のために。
「………人間を住まわせている?生存圏の拡大? …待て。それではまるで」
「…ええ。」
敵となる組織『ネオアルカディア』
それはそう…世界そのもの。
「……お前達はネオアルカディアからイレギュラーとして認定されてきた。そういうことか」
「ええ。私達は『レジスタンス』 科学者である私を中心にして逃げてきたの。
…信じて、いい人達ばかりなの!」
「そうなると、奴らからすれば俺もイレギュラーというわけか」
ゼロはため息をつく。
「そしてあなたは、100年前の戦争で戦った伝説の英雄。
その…ゼットセイバーで数々の戦いを切り抜けてきた」
「…………。」
「今はね、調査に出かけているメンバーもいて…正直不安も大きいの。」
ゼロの手を握る。
「手を貸してくれないかしら…ゼロ」
目を閉じて、5秒ほど考える。
「……お前が言っていたことが本当かどうか。」
手をどける。
「どこまで信じられるかは、これから考えてみよう。」
部屋の入り口へと向かっていく。
「ひとまずは力を貸すことにする。…だが、少し待っていろ」
ひとまずはその姿を見て、シエルは安心するのだった。
「…力は貸して貰えるのか。…よかったじゃないか」
「セルヴォ!」
軽く皺のついた、優しげな目の中年レプリロイドが入ってくる。
彼はセルヴォ。レジスタンスの技術者を担当している者で、メンテナンスも担当している。
そして…シエルを父親のような目線で見守っている人物。
「私は技術室に戻るよ。
…後でゼロにエスケープユニットを渡しておくことにする」
「ええ」
-
意外にもゼロは、律儀にレジスタンスのメンバーに挨拶していた。
…シエルの言っていたことを確かめる意味もあったのだろう。
「あ!ぜ、ぜぜぜゼロ様ですね!トランスサーバーのお使い方お解りますか?」
「…妙な喋りをするやつだな。」
「あー、お腹がすいて動けないよー…
ねえ君、悪いけどEC(エネルゲン水晶)持ってないかな。」
食いしん坊のイブー。
「おお、新入りかい。ワシは『アンドリュー』と言ってな。これでも昔は船乗りだったんじゃよ?
…先輩達を見習って、一人前になるんじゃぞ?」
「ああ。」
老人レプリロイド、アンドリュー。
「あの… こ、こんにちはっ……」
「…何だ?」
ぬいぐるみを抱いた少女、アルエット。
「次の作戦を立てないと… って…君がゼロかい?100年前のレプリロイドかぁー…」
まとめ役、コルボー。
「わー、あなたがゼロさんーーー!? へぇー、結構カッコいいね!」
女性レジスタンスもいた。
「…アンタは…技術者か」
「ああ。私の名はセルヴォ。宜しく頼むよ
…ミランから受け継いだ銃と、ゼットセイバーを見せて欲しい。」
「…解った」
10分ほどして。
「…ふむ。やはりか」
「何か解ったか?」
そして彼はシエルの待つ司令室へと戻る。
「…ひとまず一回りしてきた」
「練習なんかはしなくて大丈夫?」
「…特に体はなまっていない。
技は……戦いの中でしか取り戻せないものだろう。戦いが今、何より必要になる」
「そう。それじゃ少しミッションをあなたに授けたいんだけど…それよりも、
まず言っておきたいことがあるの。」
「……確かに一つ聞き忘れていたことがある」
場所は変わってネオアルカディア。
人工の草花が風に揺れる庭園にて。
「結果は?」
風に乗り空へ浮かぶ緑色のレプリロイドに、
部下と見られる青いレプリロイドが膝をつき報告をする。
「ええ… 残念ながらシエルの生け捕りには失敗しました。
今頃は…爆発に巻き込まれ研究所の下敷きかと…」
「……そうか。レジスタンスとはいえ、
人間を殺してしまったとなると残念だ。」
宙に浮かぶ画面にはプール。水に半身を漬かした青い女性レプリロイドがその報告を聞いていた。
「あらあーら。また失敗したの?この前も確かレジスタンスを逃がしていたんじゃない?」
「捕獲することは出来ないまでも、死んだのならもうレジスタンスの動きはまとまらないだろう。
…少し奴ら相手に力を出しすぎたようだ」
続いて、隣の画面の赤いレプリロイドの足は、床をガスッとカカトで蹴り、火花を散らす。
「あーあ。どっかにオレの腕を満足させられる強えヤツがいないかなー!」
そんな戦闘狂には目もくれず、彼は風に乗り、遥か上空へと飛んでいく。
『彼』へと報告するためだ。
黒いレプリロイドが柱の影に潜む中、彼は玉座の彼へと報告する。
「……そうか。 僕としても残念だね 彼女はまだ利用価値があったと思うんだが」
「…聞き覚えのある名前だな。」
「ネオアルカディアの君主として…彼は今でも生きているの。」
「100年前の戦争であなたと共に戦った… もう一人の、伝説の英雄。」
彼の報告した相手は…足を組み座っていた、ヘルメットの似合う青いレプリロイドの少年。
世界の頂点たる…その存在。
「申し訳有りません…『エックス様』」
-
「後1時間か…」
瓦礫の山に風が吹く。
旧時代の何かの施設を利用しているレジスタンスたちのアジト、
レジスタンスベースは地下にあり…
梯子を登るとそこは、ユーラシア落下からそのまま放置された都市の跡。
「…………………。」
町をうろつくネオアルカディア兵、パンテオンを斬りながら、瓦礫の町を走る。
(…上か)
敵が、タイヤ型のメカニロイドを放る。
跳びあがり斬る。そして着地したところを後ろから斬りつける。
(一体何があったんだ?)
瓦礫の上のパンテオンをバスターショットで動きを止め、跳んで斬る。
瓦礫の山を登り、鉄骨の上を登り、ビルの上に登り……
「…………」
「ぜ、ゼロ…あの、私が何か話せることは…」
「何か注意すべき点でもあるのか。」
「……その、特にないんだけれど…」
「なら、話さなくても問題ないだろう。報告なら後でだ」
突如雨が降りだし、強風が吹き荒れる。
飛行タイプのパンテオンを撃つ。
(………コイツは一体…。)
パンテオンは青き兵。腕を銃口に変化させて、エネルギーの弾を撃って来る。
警棒を使うものも中にはおり、バリエーションは多彩と見る。
青いヘルメット、青のアーマー、水色のスーツ、赤い目。
…見覚えのあるその格好の、このパンテオンとは一体?
考えていても仕方がない。
強風はどうやら人工的に起こされていたもののよう。強風を発生させる装置を破壊、
瓦礫の山を飛び降りる。
(…邪魔な敵だな)
地面からせり上がる砲台を斬り、先へと進む。
「……ゼロ、処刑場はこの先よ。
…高エネルギー反応がする…… 気をつけて!」
「高エネルギー反応…具体的に頼む」
「ゴーレムとは比べ物にならない、恐らくは強敵よ… 勝てないようなら帰ってきて、ゼロ」
「了解した」
扉を潜るとそこは丸い部屋。
壁にはオイルがびっしりと塗りこまれており… レプリロイドの捥げた手足が確認できる。
…手足だけではない。 腹や胸… 内臓パーツも確認できる。 そして…これは…。
「何だ?お前」
ゼロに話しかけてきたのは翼を持った、大きなレプリロイド。
「…お前、何しに来たんだ」
その問いに、セイバーを軽く振って答える。
…レプリロイドがニヤつく。
「…ほう? …スクラップどもの仲間、って訳か」
腕を広げる。
「この俺を、『エックス様』をお守りする『ネオアルカディア四天王』の一人…
『ハルピュイア様』の部下、『アステファルコン』と知ってのことだろうな」
「覚えておこう。」
「お前……一緒に処刑してやるよ!」
アステファルコンが駆け出した。
「気をつけてゼロ、コイツは『ミュートスレプリロイド』よ!!」
「…後で説明してもらう」
「ひぃいいいい!助けてくれぇぇぇぇ!!」
下階から声が聞こえる。
-
戦闘体勢へ移行。
(床が下がり始めたか…)
ゼロはその突進を避け、後ろからセイバーを一撃。
「なっ…!?」
その威力に驚きながら、アステファルコンは壁へ張り付く。
「食らいな!」
雷の矢を3つ、同時に放ってくる。
ゼロにその攻撃は通用せず。
軽く避けてバスターを見舞う。
「ちょこまかと…!」
腕を広げ、強力磁力でゼロを吸い寄せにかかる。
だが距離をとるゼロを吸い寄せきれず。
そのまま腕を閉じ、腕から雷の矢を撃ち始める。
下…飛び越える。
上…撃つ。
下……
ここでゼロはダッシュし…バスターショットから強力な一撃を見舞った。
「何…!?」
飛び出すは強烈で鋭いエネルギーの弾…チャージショット。
セイバーを手に入れた際、入手した力である。
「…チィッ…!!」
「だが…もう時間がないんじゃねえか?」
アステファルコンはダッシュ。
「この下に何があるか、教えてやろうか!」
それを飛び越えバスターショット。
「テメェの仲間がこの下にいる…そして」
アステファルコンは壁へと張り付き…
「俺らがいるこの床は、下のフロアの針天井になっていてな……」
翼を大きく広げ、床へ持てる電撃を全て流し込む!
「ヤツらはこれから串刺しになり押しつぶされるのさァァァァァァ!!!」
「酷いっ……!!」
シエルが言う。
残虐なやり方でこれまでそれほど多くのレプリロイドが。
ゼロは大きく跳びそれを回避。
「…んなっ…!?」
素早くダッシュ………
そしてセイバーでその体を股から、腹、胸、頭へかけ………一刀両断した。
爆発。
「テメェ………一体………………!」
床をトゲごと粉々に切り刻み、落下。
その下には…レジスタンスの泣き顔があった。
「…ああ… あああー…!! 助かっ…た…!?」
「…大丈夫か」
「は、はい! た…助かるだなんて思ってもいませんでした…!」
ミッション完了である。
「有難う、ゼロ! …これでやっと、誰もこの処刑機にかからないで済むわ!」
「…どういう状況に置かれていたんだお前達は…。」
レジスタンスが置かれている極限状況を理解。
ゼロは振り返らず、レジスタンスベースへと戻ろうとした、その時。
「……………何だ、アレ…は………。」
スクラップの一部が、動き始める。
「……どうした、アステファルコン…」
少年の声がスクラップから発せられる。
「ハル… ピュイア様…… レジスタンスに…赤い…」
「…」
チャージショットで破壊。 今度こそアステファルコンは消滅した。
「…敵に気付かれた…。 すまない」
「…ううん。いいの…」
「気付かれた分はこれから俺が働こう。ひとまずは…帰る」
「…ゼロ、アステファルコンと一緒に今何かを破壊しちゃったような」
-
「…ネオアルカディアには、実力のある神話の神々を模した、
『ミュートスレプリロイド』という、強力なレプリロイド達が何人か存在するの。」
「アステファルコンがその一人だったというわけだな」
ゼロはアルエットの頭に手を置き話をする。
「そして…それらをまとめているのが、生存圏の拡大とイレギュラーの排除に
それぞれ2人が当たっているとされる『ネオアルカディア四天王』」
「…らしいの」
「らしい?」
シエルは俯く。
「ごめん。私はあまり知らないのよ…多分、私がレジスタンスを組織する前後辺りに生まれたのかもしれない。」
「そうか」
「後、あなたが倒したアステファルコンのことだけど…」
「…ああ」
「どうやら、私達にとって有益になるはずのチップを持っていたみたい」
チップの欠片を見せる。
「……すまない。」
「ううん。仕方ないわ とりあえずこのチップの欠片は、アルエットにセルヴォの所に持っていってもらうことにするわね」
そして次なるミッション。
「どうやら、私達が使っていたサイバーエルフがネオアルカディアに盗まれてしまったようなの」
「サイバーエルフについても説明が欲しい所だが…」
「100年前にはなかったのかしら… まぁとりあえず、実際見てもらった方が早いと思う。」
地下鉄跡。
「ネオアルカディアは、物資と共に列車でサイバーエルフを運ぶつもりよ
プラットフォームに行って乗り込んで!」
梯子を落下、壊れた地下通路を進んでいく。
「ゼロ。君はゼットセイバーを手に入れたとき、何か力がわくのを感じなかったかい」
「……確かに。」
「君は確かに尋常ではない強さを持っている。 だが…君はどうやら、
まだ戦争時代の能力を取り戻していないようだ」
「…戦いの中で、それが目覚めていっている…ということか」
「その通り。…だからゼロ。これからバスターショットやセイバーをうまく使って、戦っていって欲しい
得るものが何かあるかもしれないぞ」
前ミッション前のセルヴォとの会話だ。
(俺の力か…)
走行、突進してくるメカニロイドを横へ払う。
そこに袈裟切り。
(…なるほど)
隙のない二段斬りを彼は取り戻した。
メカニロイドを倒し続け、いよいよプラットフォームへ。
「これか…。」
飛び乗った瞬間…列車が突然動き始める。
「……遅かったか」
列車はネオアルカディアへと向かい走り始めた。
「ゼロ…ごめんなさい、間に合わなかったわ!
エスケープユニットで転送は出来るから、列車を破壊してエルフを助け出して!」
「…解った」
列車の機関室は先頭車両。列車の屋根へ登る。
感づいたパンテオン達がわらわらと沸いてくる。
飛び越えて二段斬り…破壊。ミサイル発射メカニロイドもミサイルを撃ち落とし、破壊。
バスターショットとゼットセイバー、二つの武器を使って彼は進んでいく。
「これが先頭車両だな?」
「ええ。エンジンを破壊して… でも、何かおかしい…」
扉を潜ると…そこにはパンテオンの顔が据え付けられた巨大な動力システムが。
「…なんだ、コレは」
「………サイバーエルフが捕まってるのもそこよ!気をつけて!」
敵はパンテオンの頭脳を移植した生きたレプリロイド動力、『パンテオン・コア』だ。
まずは炎を吹くパンテオンコア。火炎放射ならば…
壁に飛び乗り、チャージショット。
火炎放射が収まった瞬間を見計らいセイバーで一発。
流石に動かない敵なら攻撃は容易。ありとあらゆるタイミングを見計らい攻撃を行う。
炎をかわし一発、炎が伸びた所に一発。炎が収まった瞬間に二段斬り。
次々に敵の動力を削っていく。
(……随分な耐久力のようだな)
半分を削ったところで、敵が炎を吹き、じりじりと迫ってきた。
床のタイルが伸び、トゲで出来た天井へと押しつぶそうとし始める。
(…なるほど)
これは時間との戦いとなった。
パンテオンコアの体力を奪い続けるが、敵は炎を吹き、こちらへ近づいてくる。
押しつぶされる前に対決を終わらせる。
更に近づく。炎は回避、更に削り続け…そして。
「フンッ!」
パンテオンの顔面部が破壊され…エンジンが爆発。列車は停止した。
「………サイバーエルフ…これか?」
光の球を回収、レジスタンスベースへと戻っていく。 …シエルには聞かねばならぬことがまだある。
-
今更ながらMoira聴いてみた。
じまんぐと若本が相変わらずじまんぐと若本だった。
マトリョーシカに詰め込んだのは不条理と書いてじまんぐ汁ですね分かります
アルバム全体としては敢えて言うならクロセカの系譜なのかねえ。
伏せたカードはいつもよりかなり少ないような。それとも隠したカードがあるのかね?
しかしまあ今回はいつにも増して歌詞カードが読み辛い
台詞が書いてないのは仕方ないんだろうけど、今回台詞多いしなあ
-
―1BBY.(大提督創設 12人)―
ディミトリアス=ザーリン(新)
グラント(新)
ニアル=デクラン(新)
オスヴァルド=テシック(新)
ルファーン=ティゲリナス(新)
マーティオ=バッチ(新)
アフシーン=マカーティ(新)
イシン=イル=レイズ(新)
ダネッタ=ピッタ(新)
ジョセフ=グランガー(新)
ペッカッティ=シン(新)
ミルティン=テイケル(新)
―3ABY.(ザーリン大提督の乱 12人)―
スローン(新)
グラント
ニアル=デクラン
オスヴァルド=テシック
ルファーン=ティゲリナス
マーティオ=バッチ
アフシーン=マカーティ
イシン=イル=レイズ
ダネッタ=ピッタ
ジョセフ=グランガー
ペッカッティ=シン
ミルティン=テイケル
―4ABY.(エンドアの戦い 9人)―
スローン
ルファーン=ティゲリナス
マーティオ=バッチ
アフシーン=マカーティ
ダネッタ=ピッタ
ジョセフ=グランガー
ミルティン=テイケル
ファーマス=ピエット(新)
十条 翼(新)
-
―5ABY.(ヒッサ大総督の乱 4人)―
スローン
マーティオ=バッチ
ファーマス=ピエット
十条 翼
―6ABY.(ケイン大総督の帰還 10人)―
スローン
グラント(復帰)
ファーマス=ピエット
ギラッド=ペレオン(新)
ロース=ニーダ(新)
カーギー(新)
テリナルド=スクリード(新)
デラク=クレンネル(新)
テラドク(新)
十条 翼
―11ABY.(ファーマス皇帝の第2帝政開始 16人)―
スローン
グラント
ギラッド=ペレオン
ロース=ニーダ
バロー=オイカン(新)
タイタス=クレヴ(新)
デラク=クレンネル
テリナルド=スクリード
ヴォス=パーク(新)
ミル=ギエル(新)
テラドク
オキンス(新)
キラヌー(新)
カーギー(新)
ザミュエル=レノックス(新)
十条 翼
―14ABY.(クレンネル大提督の乱 17人)―
スローン
グラント
ギラッド=ペレオン
ロース=ニーダ
バロー=オイカン
タイタス=クレヴ
テリナルド=スクリード
ヴォス=パーク
ミル=ギエル
テラドク
オキンス
キラヌー
カーギー
ザミュエル=レノックス
ナターシ=ダーラ(新)
サークリィ(新)
十条 翼
―22ABY.(テラドク大提督の乱 15人)―
グラント
ギラッド=ペレオン
ロース=ニーダ
バロー=オイカン
タイタス=クレヴ
テリナルド=スクリード
ヴォス=パーク
ミル=ギエル
オキンス
キラヌー
カーギー
ザミュエル=レノックス
ナターシ=ダーラ
サークリィ
十条 翼
大提督在位期間 Best3
1.グラント (2年間の離脱を除く21年間に渡って大提督)
2.スローン (22ABY.に大元帥になるまでの19年間に渡って大提督)
3.十条 翼 (ヴェイダーによって任命された唯一の大提督で、18年間に渡って大提督)
-
「サイバーエルフは、プログラムの生命体。
100年前にはあったのか解らないんだけど…小さな光のように見えるけど、よく見て…」
ゼロが助け出した光を覗き込むと少女の姿。
「ゼロ…! ありがとう!」
「…こうやって、実は姿もあるし話も出来るの。」
「面白い世界になったものだな」
「彼女達は、EC…エネルゲン水晶を食料にして生きているの…
あなた達とそこは変わらないかもしれない。」
「…お前もレプリロイドだろう?」
シエルは言う。
「……ごめん。実はメンバーの中で私だけは…人間なの」
「…謝ることはないが、驚いたな」
ゼロは表情一つ変えずに言う。
「驚いてる…の?」
「…見えないか。」
シエルは目を逸らす。
「…まだ説明して欲しい所はある?」
「…パンテオンのことだ。…アレは一体何者だ」
青き兵、パンテオン。ネオアルカディアの主力兵である
様々な能力を持ち、大量に配備されたレプリロイド。
「…あれはね、実は…エックスなの」
ゼロはまたも驚く。
「………トップがエックスなら部下もエックスか。」
「機械的にクローニング、量産されたエックス達。
あなた達レプリロイドもエックスを「参考にした」ものだから、
ある意味、レプリロイドよりレプリロイドらしいレプリロイドと言えるかも。」
目が一つしかない、口もないあのレプリロイドが…?
「覚えておこう。俺は青いヤツを倒すことになる…そういうことだな」
「…ええ。」
しかし、シエルには… 彼が、あの余りに強大な力を持ったエックスを倒せるとは、到底思えないのだった。
いずれ…彼は強くなれるのだろうとは思いつつも。
パンテオンコアの列車のあった地下鉄跡から登るとそこは工場。
「これを敵から奪うのが今回のミッションだな」
「ええ。頑張って、ゼロ!」
光の盾を構え飛行するメカニロイドを背後から斬りつけ、または正面から撃ち、
わざとカウンターを行わせた上で斬る。
「正面から行くと警備が厳しいだろう。俺は上から行くぞ」
折れたパイプを登り、タンクの上へ。浮遊砲台を破壊、タンクを渡り歩き工場の通気口を破壊、
ファンを斬り侵入、蜘蛛型メカニロイドを斬る。
「侵入に成功した」
「有難う。ここからエレベーターで降りていって」
エレベーターのスイッチをバスターショットで攻撃、下がっていく。
そこにはまた蜘蛛型メカニロイド。これも破壊、一気にエレベーターホールを落下していく。
「…随分な穴だな」
運搬メカニロイドがアームで運搬する資材に乗って進む…ということか。
「そして、随分なことを要求するものだな」
「…難しい?」
「問題ない」
資材へと足を乗せ、そのままメカニロイドの動くまま進んでいく。
電撃をまとった棒がゼロのいる位置に当たるが、それも飛び越えてメカニロイドの上へ再び着地。
資材から資材へ、跳び移り再び進んでいき……終着点で梯子を登る。
トラップが発する電撃をかわして更に先へと進み…いよいよ最上階。
-
「このフロアでメカニロイドを倒せば終わりよ 頑張って!」
歩いていった…その先には。
(馬鹿デカいのが出てきたな)
奇妙な形をしたメカニロイドが落下してきた。
8つの首を持ち、中心に丸いカバーが見える。その下が恐らくコアだろう。
その敵は工場の守護に当たるメカ、『ガード・オロティック』…。
「これがあるからレジスタンスの他のメンバーは工場を制圧できないの…頑張って、ゼロ!」
オロティックはゆらゆらと飛行…
したかと思いきや、突然コアからエネルギーの弾を乱射してきた。
「嘘…」
シエルが言葉を詰まらせる。
「報告にはそんな攻撃方法があったなんて記述ない!…一体どうして」
それは、オロティックが一定以上の戦闘力を持つと判断した者にのみ使う機能であるから。
(隙がなくなるというわけだな…)
弾を誘導しつつチャージショット。
敵のボディがコアを中心として45度回転、左右の首を伸ばす。
(緑色か…)
オロティックの首は持ち上がり、電撃を放射する。
これをかわしオロティックのコアにセイバー。
またコアからの連射攻撃。そして…また45度移動。今度は…
(赤か)
パンテオンコアのような火炎放射。
これも距離をとり回避、チャージショット。
コアからの連射、そして次は…
(青色…となると)
冷気を噴出す。
コアへ向かいバスターショットの通常弾、そして体重をかけたセイバーでの一撃へ繋げる。
もう少しで倒せる。連射をかわし、そして最後は…
(オレンジ色…?)
首を伸ばしての直接攻撃。首を二段切りで破壊、そして…
チャージショットで攻撃。8つの首は次々ともげて行き……爆発。コアは吹き飛んだ。
「……チップの破片を回収、帰還する」
「ありがとう。そのチップについて説明するわね」
-
「…列車のエンジンはヤられちまうし、工場は奪われちまった……どうなってるってんだ?」
赤いレプリロイドは首をかしげる。
「俺の部下の死に際の報告にあったが… どうやら、レジスタンスに最近赤いレプリロイドが手を貸しているらしい」
ハルピュイアが言う。
青いレプリロイドが身を乗り出す。
「…それって…ミュートスレプリロイドを倒せる実力があるってことよね!?」
赤いレプリロイドが言う。
「あー…一人でやったのか、複数人でやったのか、それは解らねーからなァ…」
そして緑色のレプリロイド。
「それにあの時のアステファルコンは戦闘を想定してはいなかったため、ハートタンク(ライフアップ)の付加なしで動いていた。…言い訳ではないがな」
青色のレプリロイドは乗り気だ。
「とりあえず、大型メカニロイド程度では倒されてしまうわけよね」
「そうなるな…今度はこちらから、ミュートスレプリロイドを向かわせることにしよう」
誰の部下を行かせるか。その話へと続いていく。
「お前んトコの部下はとりあえず負けたみてぇだし、その前は人間を殺しちまって失敗もしてる…
まーとりあえず次は俺らに任せな!」
「私の部下も向かわせることにするわ。それで様子を見てみましょう!」
そんな様子の二人にハルピュイアは呆れ顔だ。
「お前達、部下の負けを願ってはいないか…?」
「ダイジョーブだよ!万全の準備はさせとくからよ!エックス様には内緒だからな!?」
「それに、ここではレプリロイドの復活も出来るじゃない?」
「お前、機密事項をベラベラと…」
一方、レジスタンスベース。
「アステファルコンのときも拾ったが…この、『チップ』とは何だ」
破片を手にして言う。
「『エレメントチップ』…ネオアルカディアでも希少価値の高いものでね。
これ一つつけるだけで攻撃に炎や氷や雷の力が付属されるという代物よ」
「……それは弱点も生むことにはならないのか」
「多分。あくまで攻撃だけだから…ボディまでには影響はないと思うの。
けどとても高い技術が要るから、レジスタンスベースじゃ絶対1から作ることが出来ないし
ネオアルカディアでも属性そのものを純粋に取り出して作り出す技術なんてトップシークレットとされている。
…おまけに『手に出来たとして』誰もがそれを使えるわけじゃない…ミュートスレプリロイド以上の高性能機に限られるかも。
ううん…それでも完全に使いこなせるとは思えない」
「…すまなかった」
「それでも重複含め2つ以上を所持することは許されない…
…3種全てを所持でき、その全てを使いこなせるなんて者はいない。
………たった一人を、除いてね」
「エックス…か」
次なるミッション。
「仲間の乗った輸送機が砂漠に墜落したらしいの…お願い、助けにいってあげて!」
レジスタンスベースの真上は地上都市。東へ進むと地下鉄跡や工場があり…… そこから西へ進むと…そこは砂漠。
「この島の中でここは一番西側にある場所なのよ」
「島…だったのか、ここ」
東の海からは列車で大陸と繋がっており、
そこはかつて…エックスが戦った場所でもある。
鳴き声をあげて砂漠に来る者を襲うコンドル型メカニロイドを倒し、
砂から顔を出すモグラ型メカニロイド砲台も倒し…壊れた道路を渡り西の方角…砂漠の奥へ進んでいく。
…すると突如砂嵐が。
「コイツのせいだな…」
強風で砂を巻き上げていたメカニロイドを破壊、トラップも破壊し更に先へと進む…と。
-
「…輸送機の不時着地点にミュートスレプリロイドの反応……気をつけて、ゼロ!」
墜落機体を背にするは…杖を回し、宙に漂う犬面のレプリロイド。
「そなたか……レジスタンスに肩入れしているという赤きレプリロイドは」
セイバーを構える。
「我は、大地を司る偉大なる、四天王『ファーブニル様』に遣わされし者
アヌビステップ・ネクロマンセス3世。
「この先で死を待つレプリロイドを冥界へつれ行くべくやってきた。そなたも参るか…?」
戦闘開始。
まずは通常弾を放つが…杖でガードされる。
「蘇れ…!」
地面の下から、死したパンテオンが蘇る。
「これに掴まれたら厄介だな…」
チャージショットで攻撃。
ネクロマンセスが投げてきた杖をゾンビごと飛び越えてセイバーで一撃。
ネクロマンセスが地中に潜り、ゾンビが力を失う。
「…!!」
今度は砂の中から二つの柱が出現。
「それがそなたの棺となろう!」
ゼロを押しつぶしにかかる。
ゼロは柱を蹴り飛び越える。
今度は出現位置を予測、挟まれる範囲にすらいないことで出現前に回避。
そして最後に遠くから柱がやってきたので、再び蹴って飛び越える。
「生にしがみつく愚か者め!」
砂の中から姿を現す。
「死へ急ぐことに意味などない」
チャージショットを1発、時間を置いて2発目。再び砂へ潜る。
「時間がかかりそうだな…」
大型メカニロイドとは戦闘のレベルが全く違い『技』を用いるのがミュートスレプリロイド。
その戦いは…実に長くに渡った。
「…土に還るんだな」
チャージ…更にチャージ。
「ぬっ…」
2段階目のチャージをしてのチャージショット。
「………………くうっ……!!」
腹を貫かれ、そのまま下半身からボトリと砂の中に落下。
消滅していった。
ネクロマンセスのすぐ後ろには
「ゼロ…ゼロ!大丈夫!?」
「こちらゼロ。時間がかかってしまった… これより生存者の救助を行う
…歩けるか」
「ゼロさん!? ああー…助かった…! は、はい…なん、とか…」
トラップもメカニロイドも多く存在するこの砂漠。彼は生存者を連れて注意深く砂漠を戻った。
「……ゼロ……ゼロ…だと…?」
通信を入れる。
「おう、根暗ナントカ!」
「ネクロマンセスです、ファーブニル様」
「…ああー、すまねえすまねえ!で、ネックレス、赤いヤツとは戦えたかぁ!?」
「ネクロマンセスです、ファーブニル様…
赤いレプリロイド… ええ、戦いましたとも…… …申し訳ありません、敗れ申した…」
「おおお!戦ったかーー! あー。けどライフアップを持ってもダメだったかー… しゃあねえな。
…で、相手は何人で来たんだ?ミクロマンセス!」
「ネクロマンセスです、ファーブニル様…
…いえ、一人…で御座います。力押しというわけでもなく… 我が技は全て通用せず… 一方的な敗北で…」
「うおおお…! 強ェみたいだな! よっし、解った!お前を今転送するから
ちょっと待ってろ! …えーっと…」
「いえ…もう結構です。それより…お伝えせねばならぬことが」
「どした、ネ…クロ……マンセス!」
「正解!! …ああ。 いえ、私が交戦したその赤きレプリロイドの名前ですが……」
-
「そういえば…戦争終結から100年くらいになるわねー …はいお茶」
お茶のような色をしたハルピュイアにお茶を勧め、青いレプリロイドは言う。
「…いきなりどうした。」
「ほら。赤いレプリロイドで思い出したけれど、
『ゼロ様』って確か100年の眠りについてるじゃない?
そろそろ目覚める頃かなーと思って」
そこに突然声がする。
「忍び部隊に身を置いていらっしゃった時期もあるのは有名…
だが、ゼロ様を赤いイレギュラーから連想するなど、余りに不届きであるぞ…」
「ちょっ…と!」
黒いレプリロイドが気配を消していたのだ。
「お前はいつの間に……」
「いるなら早く言いなさいよー…」
「茶を置いたのは誰だと思っている。…拙者に気付いていないなら飲むでない。
ウイルスが仕込まれていたらどうする」
「こんな安全な場所でそんなのないわよ。
…で、目覚めたらやっぱりネオアルカディアに招くのよね?
エックス様のお友達でしょ?実力が伯仲していたっていう」
「無論。ゼロ様が加わってくださればエックス様の築いた平和がより磐石なものと…」
能天気なファーブニルが駆けて来る。
「おーい、ハルピュイアー!お前の部下殺したヤツ、『ゼロ』っていうらしいぜー!」
お茶を噴き出す男、お茶を詰まらせる男、即座に振り向く女の姿がそこにあった。
「おお、ゼロかい。少しワシの…昔話を聞いてもらえるかのう」
老人レプリロイド・アンドリューはゼロに話しかける。
「…ああ。いいだろう」
「私も聞くーー!」
アルエットも加わる。
それから暫くしてシエルがやってくる。
「ゼロ。少し頼みたいミッションがあるんだけど…」
「………『R』が頭文字の軍にいた黄色い船の乗組員で、人間に恋とやらをした、ということか…」
「うむ。どうじゃったかな…お前さんみたいな若いモンにも解ってもらえると思ったがのう…」
「いや、興味深い話だった。」
アルエットをアンドリューに預け、シエルの元へ。
「あなた、子供好きなのねぇ…」
「多分、あの爺さんよりも生きているとは思うが」
「…けど…何だか…」
「まぁ、今の俺は全ての記憶を失った。ある意味、アルエットより幼いとも言える。
…さて。ミッションとは何だ」
またも砂漠へ。
「敵のアジトが恐らく、砂漠のどこかに…。」
今回のミッションは、部下の捕らえられているというネオアルカディアの基地捜索。
恐らくは砂漠にあるとされている。
それはすぐに見つかった。
蟻地獄型のメカニロイドを倒すとそこから巨大な穴が開いたのだ。
(…怪しいな)
即座に穴を落下。
…落下するうち、音が聞こえてくる。ジジジジ…という、電磁バリアの音だ。
「…シエル。行けそうか」
「解除してみる…… どうかしら!?」
バリアが消える。
更に下へ。
地下鍾乳洞。自然の針がゼロを襲う。
壁をゆっくりと滑り、蹴り…。安全にゼロは下層へ降りた。
(どうやら敵のアジトで間違いないらしいな…)
エネルギーチャージ砲を破壊、蝙蝠型メカニロイドを倒すと…
(地下水…か)
「凍ってる………!?」
凍った地底湖を歩く。どうやら下まで凍っている模様。
安全に地底湖を渡れるのだが…どこか不自然。
「梯子がある。どうやら基地の入り口みたいだな…登るぞ」
カメ型のメカニロイドを倒し、梯子を登ると…
「入り口の解除を頼む」
「は、はい!」
-
基地内へ侵入。パンテオンがうろついているのが解る。
壁へ張り付きサーチライトをかわす。
背を向けた瞬間、飛び降りて一撃。
梯子から小部屋へ。…イレギュラーを収容するための牢らしい。
セイバーでスイッチを斬る。
「…あ、有難う…! 全部で7人ここに掴まっているんです、どうかお願いします!」
そして彼は脱出していく。
続けて見回りのパンテオンを撃ち殺し、次の部屋に。
「有難うゼロさん! あと6人よ、頑張ってください!」
「有難うゼロさん!俺らは奥で待ってますんで!」
上へ。立ち並ぶ梯子の上の部屋を、パンテオンを撃破しながら進んでいく。
「有難う、ゼロさん!」
「わざわざごめんねゼロさん…」
「…お前……はパンテオンか」
ダミーもある。
「ありがとう、ゼロさん!あと2人です!」
「後一人です、お願いします!」
シエルの声。
「次が最後…頑張ってね、ゼロ!」
歩いていき…斬る。
「有難うー、ゼロさんっ!ステキっ!!」
チュッ。
最後のレジスタンス兵は…ゼロに何かをして去っていった。
「よし、これで全員だ」
「ゼロ、今の音は何?」
「ゼロ、説明しなさい」
「ゼロ、話してよ」
「ゼロ、報告を、ゼロ」
「? 何って…女兵が唇を俺の唇に」
その瞬間ゼロの耳をブチッという音での攻撃し、シエルは通信を終えた。
「ゼロさん、有難う! でも、ここの基地を任されているミュートスレプリロイドがいるらしくて…そいつを倒さないと出られないの」
「…解った。待っていろ」
扉を潜る。
「ムフー… お前がレジスタンスに手ぇ貸してるゼロってやつかぁー」
冷気を鼻から吹き出す巨体。
「俺様はぁ、海を司る四天王『レヴィアタン様』の部下、『ブリザック・スタグロフ』だぁ…
ゼロ様の名を騙る不届き者は俺様が氷付けにしてやるぜぇー…ムフー!」
「グォオ!」
その声とともに拳と拳を胸の前でガツンガツンとあわせ…
スタグロフは跳び上がった。
(…コイツは…。パワー系か)
氷の爆弾を床へ投下、床を凍らせる。氷を斬り…スタグロフへ近づく。
距離をとりダッシュ斬り。後ろへジャンプし二段階目のチャージショット。
「むはぁぁぁぁ!!」
続けて近づきセイバーで攻撃。
横に払う。
斜めに斬る。
両手で持ち、真上から敵を床に対し垂直に斬る。
『三段斬り』まで彼は習得していた。
「おぁぁあ…!!」
スタグロフも負けてはいない。そのまま腕からブリザードを発射する。
「凍っちまえええええ!!」
ゼロはブリザードの流れに乗りスタグロフから遠ざかり、壁を蹴りブリザードの範囲外へ。
「踏み潰すぜええええ!」
回避。そのままジャンプ斬りで迎撃。
「まだまだーー!!」
今度は更に強力なブリザード。吹雪に乗せて氷の矢を乱射するもの。ゼロは遠ざかりまたも壁へ逃げ…
「ぐぉおおお!!」
跳んできたところをチャージショットで撃ち落とし…飛び降りて斬る。
「ウッシッシ!そこを待っていたのさあああ!」
氷の角を武器とし、飛ばす。
それも急げばかわせるレベル。遠ざかり…
「…お前は鹿じゃないのか」
跳びあがり一刀両断。
「そうだあああああああああああああああああ!!!」
氷の角が粉々に砕け……爆発。皮肉にも冷たい体が死を迎えることで暖かくなっていった。
「こちらゼロ。…チップを手に入れたのでこれを持って帰還する… …シエル、聞こえているのか?」
そしてその後…。
「スタグロフー…迎えに来たわよ」
スリムながら出る所の出た肢体。青きおかっぱの頭。彼女こそ四天王の一人。
「れ、レヴィアタン様ぁ……」
「随分なやられ方ねー…それで、レジスタンスのゼロの腕はどうだった?」
「ありゃあ……もしかすると………」
「うん。特徴を言ってもらえればそれでいいわ。伝説と合っているか確かめるから。」
そして一方レジスタンスベース。
「はいはーい。シエル様、私を呼んで一体どうしたんですか?」
-
CoD4でマクミラン大尉を見ていたらモリゾーに見えた、と言ったら驚きますか?
あかり「驚かへんなぁ、うちもモリゾーやと思ったもん」
-
「おお、ゼロかい 来てくれたか」
「ああ、またチップを壊してしまった…」
セルヴォはゼロに一つのチップをここで渡す。
「ゼロ。今回のは修復可能な範囲だったよ」
エレメントチップの一つ…『アイスチップ』。
「…スタグロフの物は壊れていたはずだが…」
「ああ。それが、アステファルコンの所にあったものとオロティックのものの破片を組み合わせて
何とか一つのチップの復元に成功したんだよ。」
ゼロはアイスチップを受け取る。
「…すまない」
「これが何かに役立つといいのだが……」
アイスチップを手に戻ると…シエルが慌しくしていた。
「ゼロ、ゼロ!!」
「どうした」
「敵の大型ヘリが近づいているの、迎撃して!」
「…解った」
転送地点はアステファルコンのいたレプリロイド処刑場。
外に出るとすぐ上空にヘリ。プロペラの音が大きく聞こえる。
「……?」
上を見上げると、誰かがゼロのことを見下ろしていた。
…黒きレプリロイド。
「……ふむ。奴が『ゼロ』を騙った者か… その力、見せてもらおう。」
その声はゼロには届かない。
「…行け 『ヒッタイト・ホッタイド』よ」
そして…落下してきたのは巨大なメカニロイド。
モグラのような形をし、頭は回転する掘削機の車輪、腕は土を砕き、掻き出す仕組みで、
背中、尻部、後部にそれぞれハッチを持つ巨大なキャタピラで動くもの。
それは、レジスタンスベース強襲用の戦車であった。
「巨大メカニロイドね… 随分硬いけど…倒せるはず! 頑張って倒して!」
「作戦を開始する」
扉から飛び出し、ホッタイドの後部ハッチにセイバーで斬りかかる。
続けて払い、袈裟斬り、真上から叩き斬る動作を三連続で。
それから体重を乗せひたすらジャンプ斬り。
ホッタイドは偵察メカニロイドを発射したり、後部ハッチから地雷を射出したりする。
地雷を発射されたらターゲットを変え、
尻部ハッチと背中ハッチに向かいチャージショットを放つ。
地雷発射を終えたところで飛び越えてまた三段斬り。後部ハッチを破壊する。
「時間を取られてしまったな」
続いて残り二つのハッチの破壊へ取り掛かる。これはチャージショットしか方法が存在しない…
だが案外早く決着がついた。ゼロの攻撃力が圧倒的に高いため。
最後のハッチを破壊すると…内部からパンテオンが顔を出す。
(コイツは…)
彼こそが、乗組員でありホッタイドの頭脳でもあった。
銃を向け、マシンガンで攻撃したり拘束弾を放ってくる。
だがこれもチャージショットで攻撃を数発食らわせた後……
最後に一撃、セイバーを振り下ろすと敗れた。
「停止したか…。」
レジスタンスベースまではまだまだ距離がある。どうやらヤツもまたゼロの敵ではなかったようだ。
…だがそこで事態が動く。
「ホッタイドも最早これまで!」
黒き影が跳び…
「さらば!」
忍者刀を片手で柄を握り、もう片方の手で柄の端に沿え…落下。
「!!」
ホッタイドのボディに落下、そのまま忍者刀を突き刺し、抜き、飛び降りる一連の動作を素早くこなし…
「ゼロ…今の………!!」
ホッタイド以上の凄まじいエネルギー量を持ったソレは、そのまま忍者刀を一振りし……
爆ぜるホッタイドの破片を全てゼロの方へと吹き飛ばした!
「……………。」
セイバーでそれを細切れにする。
「……………人間型…」
舞い散り、ガシャンと音を立てて落下するホッタイドの欠片の中……
火花をバックに振り向く影が一つ。
白の仮面から除く鋭い目、漆黒のアーマー、靡かせるは血の色のマフラー………
「…四天王か」
明らかに今までの敵とは一線を画すその相手。
「名乗る名などない 堕ちたものだな、英雄よ」
彼は確信していた。彼こそが…英雄ゼロその人であると。
「ファントム様! お戻りください!」
甲高い声に呼ばれ、ファントムはヘリに戻る。
「これより我々『四天王』はお前をイレギュラーとみなし…全力で当たらせて貰う。」
「全ては…貴様に記憶から追いやられてしまわれた…エックス様が為!」
マフラーをなびかせ…ファントムは空へと消えていった。
陸のファーブニル、海のレヴィアタン、空のハルピュイア、影のファントム。
いよいよ…来るのだ。 『四天王』との戦いが。
-
そしてその時はやってきた。
「コルボーが、…調査に出かけたコルボーが帰って来ないの…!
お願い、ゼロ! コルボーを探してきて!!」
コルボーは、
場所は地下鉄跡……海に面した、線路の跡。
そこは何者かによって破壊され尽くしていた。
「…こんな所をよく行けたものだな…」
敵を撃ちながら、駆け、跳ぶ。
リフトに乗り、敵を撃ち落とし、乗り継いで破損部分を乗り継いでいく。
整った線路へ降り立つと…そこには倒れたレジスタンスたちが沢山。
「……」
そしてその先には…。
緑色のレプリロイドが背筋を伸ばし真っ直ぐに立ち…班のリーダー、コルボーに対し剣を突きつけている。
チャージショットを発射。
「!」
緑色のレプリロイドは剣でそれを弾く。
「ぜ、ゼロさああああああん!」
その隙にコルボーが走り出した。
…これでこの場にいるのは二人。ゼロと、緑色のレプリロイドのみ。
線路のバックには旧都市跡。
青い空に白い雲。湿り気を帯びた空気、潮の匂いの中……
戦いが始まろうとしていた。
緑のボディの少年は高い声を発した。
「お前がゼロか…。」
「だったらどうする」
セイバーを抜く。
「俺はネオアルカディア四天王の一人『ハルピュイア』
エックス様と並び立っていた英雄でありながらイレギュラーに肩入れするとは何たる愚かな…」
「その罪、その命で払ってもらおう」
ハルピュイアが両腕の短刀、『ソニックブレード』の刃を出し…
「罪ならお互い様ではないのか」
四天王との戦いが始まる。
「フゥッ!!」
放物線を描き空へ舞う。
その際、二つのブレードを交差させて衝撃波を発生、巨大な刃としてゼロへと放つ。
「!!」
不意を突かれた。いきなりダメージを負う。
「行くぞ!!」
ハルピュイアはそのまま横に8の字を描き飛行。上昇のタイミングでソニックブレードを交差、衝撃波を放つ。
「くっ…!」
左右へ移動するが衝撃波をかわすのが精一杯。
「手も足も出ないようだな!!」
雷を纏ったビットを射出。自在に飛行させる。
「ハッ!」
それを破壊。
だがそのタイミングでハルピュイアは衝撃波を発生させる。
「…!」
ここで再び8の字飛行。だが今度は手は考えている。
一度衝撃波を放ったタイミングでそれを飛び越し…背後からハルピュイアをセイバーで斬りつけたのだ。
「ううっ…!!」
落下。
「フッ!」
片手で前方へ衝撃波、ゼロはそれを跳んでかわす…が。
「フッ!!」
もう片方で斜め上へ衝撃波。ゼロはそれに直撃。
「はあぁあ!!」
そのまま前方へクロスさせて放った衝撃波を発射…
ゼロは紙一重でそれをかわす。
「…クソッ…!!」
一気に体力を削られた。あと一発耐え切れるかどうかは微妙な所だろう。
再び二つの刃を交差、衝撃波を放たれる。
「くっ…」
それを一歩退き回避。
ここで通信が入る。
「ゼロ、ゼロ!!大丈夫!?」
「シエルか …今は話している暇はない」
8の字飛行を回避しながら。
-
「なら一方的に言っておくわ 貴方は今、有利に立てる相手と戦っている!」
「……」
「シエルは生きていたか。ならよかった…」
8の字飛行のまま、体勢を低くし…ゼロを掴みにかかる。
「!!」
つかまれる。
「部下が危うく…」
そのまま上昇。
「処刑されるところだった!!」
叩き付ける。
「ぐあっ…!!」
満身創痍のゼロは立ち上がる。
「まだやるつもりか」
息を荒くし立ち上がる。
「ゼロ… ハルピュイアは風や雷を使っているのね」
「ああ…」
「ならアイスチップを使って! 弱点を突けるはずだから!!」
シエルからの思わぬ情報。
「雷には氷、氷には炎、炎には雷。そうやって属性は出来ているの
貴方は今、氷の属性を持っている! …使って、その力を!」
アイスチップを装着…ゼロのセイバーとバスターショットが青く輝く。
「ハルピュイア!!」
チャージ。青き輝きが銃口にこめられ…
「何!?」
掴みに低空飛行に入ったハルピュイアは最大級のチャージショットを受けることとなる。
青きチャージシショットを。
「うううっ…!!」
ぐるりとハルピュイアの体が回転、そのまま地面へと落下。
「その一つで俺を倒せると思うな!!」
三段衝撃波を放つ。
距離をとり一発目を避け、二発目をダッシュで回避、三発目をかわした…所で
「行くぞ!」
払う、袈裟切り、振り下ろし。三段斬りがヒットする。
「くそっ!!」
衝撃波を放つ。ゼロは後ろへ跳んで回避、そのまま氷のチャージショットを放つ…が
「おおおおおおおお!!」
ハルピュイアのオーラにかき消される。
緑色のオーラ。これが示すものは…?
四天王クラス以上のみが持つ、強大なエネルギーの放出。
奥義を放つときのみの…それは特別なもの。
「エックス様の『ファルコンアーマー』から生まれし、空を任された俺の力を舐めるなよ!!
『マグネットタイフーン』!」
その技は左右に高圧電流の壁で檻を作り中央の竜巻でそれにぶつけるというもの。
「………一定以上の速さがあるものなら避けられる…お前ならわかるだろう」
ゼロは竜巻に抗った。それならばと反対側へ打ちつけようとするが、それも察して反対側へ。
そうやっているうちに…ビットの効力が尽きた。
「……しまった……!!」
青きチャージショットでハルピュイアを狙い撃つ。
「くっ…!!」
そしてそのまま三段斬りを回避、こちらの三段斬りを当てる。
「くそぅ…!!」
そして上昇のタイミングで飛び越えジャンプ斬り。
「くはっ…!!」
今度は更に三段斬りを回避し……ハルピュイアの背から氷のチャージショット。
「うぉおあああああああああああ…!!!」
ハルピュイアが膝をついた。
「クソッ…… エックス様の…DNAを継いだ…俺達が…貴様如きに…」
ファルコンアーマーから生まれた?エックス様のDNA?
「お前は…一体何者だ」
だがそれに答えるはずもなく。
「…くっ… 今日の所はここで引き上げるとしよう。 …だが次はない!!」
転送装置で姿を消していった。
「…大丈夫、ゼロ…!? …やっぱり四天王はあなたには…!」
「………今までの中では一番の敵だったが…」
「…アイスチップを持っていたからよかったけれど…残りの3人の弱点は持っていないのよ」
「………そうだな」
「お願いだからゼロ、今度はレジスタンスのメンバーも連れて…」
それは死者を出すだけだと解っている。
「…シエル。…俺を、お前に起こされた場所まで転送できるか」
「えっ…?」
「腕を磨く必要と、記憶を取り戻す必要がある。」
-
「いよいよ四天王の中から敗北者…ってわけね」
こつんと冷気をまとった武器で傷口を染みらせるレヴィアタン。
「うあぁあっ…!! …お、お前!」
ビットの電撃を放つが…レヴィアタンは指先でそれを受け止める。
「アハハッ…ごめんなさい、悪かったわ」
「さて。…ゼロもあまり大したことはなさそうね…キザ坊や相手に苦戦してるようじゃ」
「お前は単に俺相手には属性の関係で有利なだけだろう…俺達3人の力は均等なはずだ」
「まぁそれもそうだけど…私ファーブニルの馬鹿に負けたことないわよ?」
「………細かいことはいいんだ。」
「ひとまず…ゼロが今以上の力を手に入れるのを阻止する必要が出てきた」
ゼロが眠っていた場所…忘却の研究所。ゴーレムの残骸の残る部屋を通過、シエルの落下した縦穴へ。
「…トラップがあるな」
「ネオアルカディアも多分…感づいているのね」
電撃トラップを避けて縦穴を登り…研究所内へ。顔ぶれの変わった敵達を倒して先へと進んでいく。
開け放たれた扉を先へ、先へと進む…ゼロが眠っていた場所へたどり着いた。
「そこで何をしている」
セイバーを一振り。丸々としたレプリロイドの象の姿がそこにあった。
「麻呂はミュートスレプリロイド『マハ・ガネシャリフ』でおじゃーる
もうお主のデータは巨大サーバーでもある麻呂の腹の中でおじゃーる…回収不能でおじゃるよ。」
「盗まれるくらいなら俺自身で俺の記憶を破壊させてもらおう」
「力づくで来るでおじゃーるか?」
張り手をかます。戦いが始まる。
「はっ」
ガネシャリフへセイバーで一撃。
「行くでおじゃるよ!」
高速回転、ゼロへと向かってくる。
それを飛び越えて一撃。
「うぬっ…!!」
象牙のブーメランを飛ばす。それを回避してまた一撃。
「流石に体は硬いか?」
チャージショットで攻撃。
「硬いからだの攻撃、食らうでおじゃるか?」
体を縮め…球にし、頭の部分からワイヤーを天井へ伸ばし…ぐらんぐらんと振り子の要領でぶら下がり、自分を放り出す。
「フンッ!」
後ろから横、斜め、縦の3段斬り。
「おおおお…!?」
最後にチャージショットで頭を撃ちぬき…ガネシャリフはあっさりと真っ二つに。
「…悪いが、もうネオアルカディアへデータは送信済み…残念でおじゃったな」
…最早ゼロの敵ではなかった。
「……こちらゼロ。これより封印装置から俺の記憶を…」
その瞬間…爆発音がこだまする。
「……吹き飛んでしまえでおじゃる!!」
アラートが鳴り響き……岩盤が落下する。
「くっ……!」
データ受信の途中だったというのに。
取得を中断、ゼロは脱出に入る。
「ゼロ、急いで!!」
言われなくてもそのつもりだ。
崩壊していく研究所から脱出、緊急用シャッターがゼロを閉じ込めようとするが、これもゼットセイバーで破壊、先へ進む。
2枚、3枚、4枚、5枚……
シャッターを破壊し続け…最後の縦穴を落下した瞬間…ドスン、という音がし…研究所は完全に埋まった。
「…ごめんなさい、ゼロ…いつも危険な目に遭わせてしまって」
「いい。今回は俺から言い出したことだ」
脱出。
「データはやっぱり…ほとんど何も残っていなかったわ。…巧妙な暗号まで施されている。
多分、ネオアルカディアには全てのデータが残ってるだろうから… いつか解読されてしまうかもしれない。」
「…いや、いい。 …では何も得られなかったんだな」
「ううん。そうでもないの」
技術室にて。
「おお。ゼロ …これを見てごらん」
そこには一本のゼットセイバーに似た武器が。
「これはトリプルロッドと言ってね。君の記憶の中から出てきた武器なんだよ」
「…トリプルロッド?」
「ああ。3段階に伸びるからトリプルロッドと呼ばれると思うんだが…使ってごらん」
どうやら槍である模様。 …しかし…1段階しか伸びない。
「……これもセイバーやバスターショットと同じか」
「ああ。多分君の技はこれを使いこなすことにも含まれているはずだ。腕に馴染ませ、それを使いこなしてみるんだ」
「……解った」
そして司令室へ。
「シエル」
「は、はい!?」
「何かどうしても俺に頼むべき事が出たら言え…それまでは俺は、修行に入る。」
トリプルロッド、バスターショット、ゼットセイバー。これらを今まで以上に使いこなせるために…。
ゼロは、通信機器をつけたまま、トランスサーバーへと向かうのだった。
-
ゼットセイバーが風を斬る。
バスターショットが壁へ突き刺さる。
トリプルロッドが大地を貫く。
「…こんな所か。」
対四天王戦用のゼロの出来上がりであった。
無論、それだけではない。身のこなしも見違えるようであり、ゼロの能力は格段に上昇していたのだった。
「…呼んだか」
「ええ、ゼロ…。 とうとう来るみたい。敵の地上部隊が…」
砂漠の西から上陸してくるは敵の大群。
「正直、不安… あなたに勝てる相手なの…?」
「…やってみるしかないだろう。」
セイバーをしまい、戦いの場へと赴く。
「さーーーー!やってきたぜーーゼローーーーーー!
俺を楽しませてくれよなぁ!!」
彼の前方には…無数のヘリの姿があった。
地響き。無数の機械音、それから発せられる熱が砂漠を更に熱くする。
真っ黒な影…おびただしい数のイレギュラーだ。
ゲート前には沢山のレジスタンスの姿。その先陣を切るはもちろん。
「来る!! …お願い、なるべく数を防いで、ゼロ!」
セイバーを抜き……
駆け出した。
「行くぞ」
無数のパンテオンが向かってくる。
斬る、払う、跳ぶ、撃つ、突く。
一撃たりとも食らうことなく鉄壁の守りを展開するゼロ。
それだけではない。
ゼロは先へと進み、無数の軍勢を一気に押し返しにかかる。
だが敵は増える。
どんどん次から次へとパンテオンは押しかけ、走行レプリロイドは一直線に走り、
砲台メカニロイドは次々とゼロにエネルギー砲を浴びせにかかる。
回避、攻撃、三段斬り。
跳び、撃ち、低姿勢ダッシュからの一閃でパンテオンを両断。
現れる砲台の弾を回避しそのままチャージショットで破壊。
空から襲い掛かるコンドルも襲う前に地上から跳び斬り落とす。
ヘリが増員にかかる。
だがパンテオンは降りて早々ゼロにより大量に切り刻まれ、その全てが一瞬にして連鎖爆発を起こし、散っていく。
ヘリから現れたタイヤ付きのメカニロイドもトリプルロッドで突かれ、動きを止め崩壊し続ける。
そしてどんどん先へ…先へ。
「…オイ……… アレ、敵の全力だよな」
「………俺達の所にまるで…敵が来ないぞ」
黒い群れが次々に動きを止め、赤い炎へと変わっていく。赤い小さな影が駆け回るその場所から次々へと。
一切の傷を負うことなく、ものの2分もせぬ内に…砂漠を覆う軍勢は一体残らずゼロにより死の海へと変えられていったのだった。
「…………ゼロさん、一体どうなっちまったんだ?」
敵すらも恐れるその力の前に、ようやっと対等な力を持つ者が現れる。
「ハーッハッハッハァ!」
ヘリから飛び降りたのはがっしりとしたボディの、赤いレプリロイド。
「よお、お前がゼロか!!」
「…四天王だな」
「おう!俺は四天王の一人、『ファーブニル』!
レジスタンスに凄腕が現れたってんで、はるばるネオアルカディアからやってきたぜ!!
『ガイアアーマー』から作られたこの俺様を満足させてくれよ、英雄さんよォーーーー!!」
そして拳を振り上げ…
「ぬぉおおおおっ!!!」
己の士気を鼓舞する。
賢将ハルピュイアに続き現れるは闘将ファーブニル。無数の軍勢を纏め上げる実力者がここで戦いを挑んできた。
「オラぁああ!!」
ジャンプ…そこから拳を地面へたたきつけ、衝撃波を発生させる。
これを飛び越えて…一撃…から
ゼロは目にも止まらぬ速さで円形に回転、ファーブニルを斬りつける。
「なっ!!」
そこから派生させるは三段斬り。体重を乗せ落とす、断つ、払う、斬る、叩く。
一気に繰り出されたのは5連撃。
「て、テメェ…!?」
両腕のバスターから炎のショットを放つ。
これも潜りチャージショット。以前より数段早い。
「のぁああ!!」
「や、やるな…!!」
ダッシュするが…これもかわしてトリプルロッドの三段攻撃がファーブニルに届く。
「ごああああ!!」
だが…優勢はそこまでだった。
-
「…や、やるじゃねえか……」
ファーブニルが両腕を持ち上げる。
「少し燃え上がってきたぜええ!!!」
チャージに入る。 …そう。彼もまたエックスのDNAを継いでいたのだ。
「いっくぜえええええ!!」
目にも止まらぬ速さでジャンプ、拳を叩きつけ、比べ物にならぬほどの高い衝撃波を発する。
「ぬっ…!!」
「オラオラ!!!」
続けてチャージショットを腕から放つ。
「なっ…!!」
吹き飛ばされる。
「まだまだ行くぜーーー!」
ジャンプ…跳び越す瞬間にゼロに向かいチャージショットを投下する。
これをゼロは回避。
「ハァ!!」
負けじとチャージショットを一撃。
「チィッ!!」
そしてそのまま体重をかけジャンプ斬り。
「うぉっ…!!」
ゼロは機動力攻撃力では圧倒的に勝っているものの、体力に乏しい。
事実、戦いは互角といえた。
「や、やるじゃねえか…!」
通常バスターでファーブニルを撃ち、そこへまた近づきダッシュ斬り、そして跳び退く。
「いい動き…!!」
だがファーブニルはそれを負い…
「すんじゃねえか!!」
アッパーで打ち上げる。
「………うっ!!」
青空の上へと一気に持ち上げられ…日の光をゼロのボディが覆う。
そして……
「食らいなああ!!」
そこへ恐るべきジャンプ力で跳びあがったファーブニルが掴み…砂漠の砂の上へと落下…叩き付ける。
「ごほっ………!!」
「ど、どうでい…!!」
息のあがる両者。恐らく次決めた側が勝つことだろう。
「だが俺にはまだこんな手が残ってるのさああああ!!!」
バスターへの最大チャージ。
「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
オーラに包まれる。ファーブニルの奥義だ。
「メテオレイン!!」
空へ無数のチャージショットを放つ……
それは炎の雨となって青空から降り注ぐ。
「ハーーッハッハッハァ!熱いだろ熱いだろーーーー!!」
「うっ… く!!」
回避が精一杯。細かく動いて避けるしかない。
「さぁ、最後だああああ!!」
チャージショットを一発、ゼロへと放つ…が。
「なっ…!?」
ゼロはそれをダッシュで潜り…
「ハァ!!」
ファーブニルの腹を斬りつける。
「うぉおおおおおおおお……おおおおおお…!!」
ガクンと四肢が砂に落ち…頭のその角はガツンと腕にぶつかる。
「ああっ…うあぁああ……!! や…やるな…!」
腕を庇い、ゼロはファーブニルの体躯を見下ろす。
「…ま、まぁいい…今日の所はこれくらいにしといてやる!!
いいな!この先誰にも負けんじゃねーーぞ!」
またも転送装置で去るファーブニル。
…決着は、ついた。
ゼロは、四天王クラスの実力を確実につけていた。
-
我が家の声優一覧表
アイラ・ブランネージュ・ガルディニアス 林原めぐみ
あかぎ 富山あかり
アリシア・メルキオット 井上真理奈
一条あかり 麻績村まゆ子
イツ花 吉田古奈美
カリス・フィリアス 白石涼子
シーナ・カノン 水樹奈々
ロジーナ 富山あかり
-
のわー!表記ミスだべし!orz
井上麻里奈でしたorz
-
シエルは映像を確認してみる。
…敵の群れの中を突っ切り、その全てを炎へ変え、
斬り、撃ち、突き、破壊し続けるゼロの姿。
……有り得ない。
ゼロが、もしこれでもなおイレギュラー戦争時代の力を出し切っていないというのならば…
一体、イレギュラー戦争とは如何なる戦争だったのだろうか。
そして、それに匹敵する四天王の力。更には、恐らくそれを超えるであろう…最強の存在、エックスが持つ力。
最早、シエルの想像のつかない戦いへと局面は進んでいき始めているのだった。
「へぇ…今度は弱点チップなしでファーブニルを倒したって訳?」
「ち、ちっと手加減したんだよ!!」
「手加減なんて言葉アンタ知ってるの?」
「…うっ。 …まぁー…ここだけの話、楽しかったぜ♪」
「まぁアンタがこれだけコテンパンにやられる相手となるとね…
さて。残るは私とファントムだけど…どちらが先に行く?」
「拙者は綿密な計画を立てる故。」
「そう、なら次は私の出番ね。 …どんないい男か楽しみ♪」
「おう、写真見せてやろーか?」
「いらないわよ。 …こういうのは直に会ってみるのが一番なんだから」
そしてまたも技術室。
「おお、ゼロか! ロストデータから手に入れたもう一つの武器が完成したぞ」
小さな円盤が一つ。円には一本の棒が持ち手として存在する。
「これを持った腕を前に突き出し、力をこめてご覧」
「…ふむ」
握り、力を込めるとすぐにそこから回転する円形の光の刃が展開する。
「それは、シールドブーメランといってね。
敵の攻撃を防ぐことも、チャージして投げることも出来る代物だ
…悪いが、ちょっと扱いが難しそうだからあまり近づけないでおくれよ…?」
セルヴォはじりじりと後退する。
「今、チャージと言ったか…?」
「…ああ。そうだな」
セルヴォが説明を続ける。
「どうやらチャージ能力は何もバスターショットに限った話ではないらしい。」
「最強の力を持つ『ゼットセイバー』は流石に不可能だろうが…
『トリプルロッド』はチャージ可能なようだし、『シールドブーメラン』は元から可能なことが前提の『武器』だ
『防具』というわけではない。」
「そしてエレメントチップは腕に仕込むもので、君の腕が持つその、チャージ機能と直結している…
即ち、チャージ攻撃でなければ敵の弱点を突くことは不可能ということだね。」
「……セイバーは4つの武器の中では最強の破壊力を持っていると見られるが、
属性を持った敵が相手ならば他の武器の方が攻撃力は高いのかも知れないな」
セルヴォの話はそこまでだった。
「わざわざすまない…。…練習を行っておく。」
そしてシールドブーメランを使いこなす訓練の開始。
チャージ…そして投げる。楕円軌道で相手の胴を切り裂き、ゼロの元へ戻ってくる。
「……。」
また投げる。
そしてトリプルロッドの訓練も怠らない。
敵に突進して突き、背後に回り突き、宙から相手の頭蓋を砕く刃を突き出す。
…日付は進み…。
ゼロはシエルに呼ばれることとなる。
-
「ゼロ…新しい武器の練習をしていたの?」
「大体使いこなせるようにはなった。」
シエルの目の前で刃を出さずトリプルロッドをぐるりと3回転。
「…次のミッションをお願いしたいの」
ミッション内容はハッキングの阻止。
ガネシャリフから得たデータは昔のデータ。今のゼロのデータではない。
恐らくはそれを得るべくなのか、レジスタンスベースのコンピュータが何者かにハッキングされた形跡が見つかったらしい。
勿論犯人はネオアルカディア。
そしてネオアルカディアが付近に作った基地となると…?
「電磁バリアが復活している…やっぱり!」
機能が制限されたレジスタンスベースのコンピュータで何とか電磁バリアを解除。
再びスタグロフのいた基地へと向かう。
「あの氷はスタグロフによるものだったらしいわね…」
地底湖の氷が溶けており…目の前には黄色い潜水艦が二隻。
(ここから侵入してきた…と見るべきか)
水中に潜り、魚型メカニロイドを破壊。岩場を進み、潜水艦に潰されないように調節して潜水艦の背後へ。
そして潜水艦に跳び乗る。 ミサイルが次々に発射されるが、これも回避、または斬り崩して前方に。
…基地にたどり着き、シエルの協力で扉を開けてもらう。
再び基地へ侵入、メカニロイドやパンテオンを斬って上のフロアへ。
「この扉が怪しい。…開きそうか、シエル」
「コンピュータがもう持たないの… 最後の力を使ってやってみるわ… …どう!?ゼ」
通信が切れる。
扉の先には…立ち並ぶコンピュータが6基。
セイバーで叩き斬り続ける。サイバーエルフの力で動いているものも見られた。
「…どうだ?」
全部を破壊した時、レジスタンスベースのコンピュータは自由になった。
「うん、今までどおり使えるようになった! …有難う、ゼロ! …でもエスケープユニットが使えないみたい。
…無事に帰ってきてね」
言われるまでもなく。 …帰りは簡単。
セイバーで敵を倒し、基地から落下。…水中に沈んでいく。
「…巨大なエネルギー反応!! …敵よ、ゼロ!気をつけて!!」
シエルの慌てよう。
…解っている。ミュートスレプリロイドクラスではないこと位。
「あらあら…いい男じゃない♪」
すいすいと水中を泳いで現れたのは青きレプリロイド。…人間型だ。
「私の名前は四天王の『レヴィアタン』 一応妖将って呼ばれていて、エックス様に仕えているのよ。
キザ坊やや戦闘馬鹿があなたに負けて、大層嬉しそうにしてたわ♪」
「…お前は何を言っているんだ」
「やっといい喧嘩友達が見つかった、ってね。
あまり早くに負けちゃダメよ?」
目にも止まらぬ速さで二つの棒が回転する。
一つは戦闘体勢に入ったゼロのトリプルロッド。
もう一つはレヴィアタンの武器『フロストジャベリン』。
槍と槍の戦いがこうして始まりを告げる。
-
「お得意のセイバーは使わないの!?」
水を蹴り素早くゼロの背後へ。
「ハッ!!」
ぐるりと回転させたジャベリンから発するは氷の輪。
ゼロはそれを飛び越え、レヴィアタンの頭をトリプルロッドで一撃。
「ったぁ!!」
そのまま浮力に任せて移動、バスターショットのチャージショットで追撃。
「うっ…!!」
そのまま泳ぎ…今度は壁を蹴って移動するゼロのように、水中で水を蹴りジグザグに移動。
何かをばら撒き、生成していく。
「何だ…」
「逃げ切れる?」
レヴィアタンの得意技・マリンスノー。水を一瞬で凍らせる超低温結晶を水中に射出、
氷で刃を作りそのまま落とす… 即席の氷の機雷。
「ね?こういうの綺麗じゃない」
氷の合間を縫ってトリプルロッドで腹をひと突き。
「きゃあっ!!」
そのまま離れる。
「いったいわね…!」
遠ざかり氷の輪を出す。
「…!!」
今度は回避できず、被弾。
「うっ……」
「さぁさぁまだまだ行くわよ!」
無限に補充されるジャベリンの先を3回続けて射出、ゼロを高速で負わせる追尾弾とする。
「ハッ…!!」
これを巧みに回避、そのまま水底近くに浮くレヴィアタンをセイバーで三段斬り。
「きゃっ!やっ!!あああああ!!」
横、斜め、縦へと裂き…そのまま回転斬りで反撃を作らない。
「うっ!!」
反動で遠ざかり、チャージの準備。
ここでレヴィアタンの奥義が炸裂。
青きオーラから出現したのは…
「出ておいで! スピリット・オブ・ジ・オーシャン!!」
マリンスノーの応用…氷の龍。
とはいっても意思を持っているらしい。…というより、レヴィアタンそのものであるようだ。
レヴィアタンの意思に従い、上下左右自在に泳ぎ、身動きの取れない水中でゼロを追い詰める。
「うっ…」
チャージショット。ただの氷ではないらしく、それで壊れることもない。
「はぁ…!!」
続けてセイバーで回転斬り。ここでやっと氷の龍の破壊に成功。
「さぁ最後よ!!」
底の方からレヴィアタンが3つの刃先を飛ばしてきた。
ゼロはこれを、真っ向から向かい全て回避し……
「はぁああああああああああ!!」
両手の捌きでトリプルロッドを高速回転。刃先が何度も何度もレヴィアタンの胴体を斬り付ける。
「きゃああああぁっ………!!」
レヴィアタンの体が水面近くへと放りだされる。
「…うっ…!!」
エネルギーが底をつき、レヴィアタンがジャベリンをしまう。…決着がついた。
「…どうして殺さないのかしら」
「今の俺から見ればお前達の技術はまだまだ未熟。
そして…俺が殺すターゲットは『エックス』ただ一人…」
セイバーに持ち替え、水を切る。
「…途方もないことを言い出したものね、ゼロ…
エックス様は私達四天王全員が本気で戦っても傷一つつけられなかった相手よ?」
「…まぁいいわ。次こそあなたを倒してみせる…いいわね?」
「…一つ聞かせてもらえないか」
レヴィアタンはきょとんとする。
「?」
「お前達四天王とは何者だ」
「4人中3人が負けたわけだし…こちらはあなたの情報を得た。いいわ、教えてあげてもいい。
こんなことハルピュイアは教えるわけもないし、ファーブニルは説明できっこないんだからね?」
「私達は『エックス様の子供』」
「………」
疑問はすっきりすれど、意外ではなかった。何故だろう。
「私から言えるのはそれだけ …じゃあね、パパのお友達さん♪」
-
「やられてきたわ…… なかなか…ゼロったら強いわね……ったた……」
「はいはーい。ハルピュイア、ファーブニルの二人は外に出ててね?」
扉を閉める。アーマーとスーツを脱ぎ、裸の状態でメンテナンス用カプセルの中へ。
レヴィアタンは女性なので、彼女の回復担当は男性技術者ではない。
「ゼロ相手によく頑張ったわ さ、回復するわね… まぁまずこれ飲んで」
飲料式エネルギー缶を渡す。
「コーラの方がよかったのに…」
しぶしぶ口に含む。
「これで4人中3人がゼロに挑んでいったのね………。さて。ファントムはどう出るのかな」
顔以外カバーに覆われる。
「ファントムにはもう伝えてあるわよ?…斬影の人たちってどう戦うのかしらね」
「……わっかんない。それより姉さん姉さん。ゼロって…強いの?」
「言うとすれば…早い内に仕留めて置くべきだった、かしらね…勝つつもりなら」
「ハルピュイアにアイスチップを使ってギリギリで勝ったと思ったら、
ファーブニル相手に正々堂々といい勝負して勝って、
私相手には、水中という不利な状況で割りと危なげなく勝ってる。
………どうなってるの?やっぱり本来の力に近づいてるのかしら。」
女性科学者は何も言わない。
「…あなた達が危なくなったら、すぐに私が転送しますからね。」
「何そのお母さんみたいな言い方ー…」
「立場的にはそれに近いでしょう? …さ。私エックス様に呼ばれてるようだから行かなきゃ」
そしてレジスタンスベースでは。
「お疲れ様。…ゼロ、段々メンテナンス時間が少なくなって行ってるみたいね」
時間が取れない訳ではない。傷が浅いのだ。
「だが四天王はやはり強い…。次は恐らくヤツが来る。ホッタイドにトドメを刺した奴が。」
「ファントム…だったわね」
「奴は今までの奴とは、何か違うものを感じる。四天王の中でもな」
「………。」
「また、頼みたいことがあれば言え。それまでは俺は腕を鍛えておく」
それから7日が経過……ゼロは寝ずの鍛錬を行っていた。
…そして声がかかる。
「…ゼロ。ちょっと来てくれないかしら。」
「…ミッションだな」
8日目の夜中だった。
「…何だ」
次なるミッションは、工場防衛。
オロティックのいた工場区画に行ったきり、丸3日メンバーが帰ってきていないのだという。
今回はその捜索。
「………。」
ゼロは工場の外観を見回す。…真っ暗で何も見えないが。
工場内に閉じ込められたか、或いは足場を踏み外したか…
そんな可能性も考慮に入れながら歩く。
…あくまで『そんな可能性』。一番に考えていたのは…これだった。
「…。」
投げられたクナイを軽々回避。
「…奇襲を避けるとは敵ながら見事」
闇の中に赤い揺らめきを残し白い仮面が落下してきた。
……ファントムだ。
「拙者の名は四天王『ファントム』」
体勢を整える。
「美しき表の世を守るがエックス様ならば、」
忍者刀を取り出す。
「汚れし裏の世は拙者が裁く」
右手からは巨大な手裏剣。
「エックス様にあだ名すイレギュラー・ゼロ…」
体勢を低くし、戦いを始める。
「拙者がその影一つ残らず斬り捨ててくれようぞ」
金の髪と赤のマフラー。共に黒が入ったボディ。
-
ファントムは忍刀を手に駆け出す。
「斬!」
飛び越えると同時にセイバーで一撃。
「ぬ」
武器を持ち替え、バスターショットの連射で動きを止める。
「くっ!」
その間にチャージ。
「ゆけ」
「ハッ!!」
チャージしたシールドブーメランを投げる。
と同時にファントムも手裏剣を投げる。
「ゆくぞ」
戻ってきた手裏剣に乗る。
ゼロは手裏剣を回収しセイバーに持ち替えてファントムを斬る。
「とう!」
手裏剣に乗り、ゼロへ向けてクナイを落下させる。
1回、2回、3回…
だがどれも回避。落下してきたところに回転斬り。
(流石にお前相手には三段斬りをかます余裕はない)
ファントムの体が大きく縦に裂かれる。
「ぬうっん…!」
ファントムがポーズを取り、影に隠れる。
「…」
4つのファントムの影が現れ、ゼロを囲む。
「その手には乗らん」
影の一つを攻撃した瞬間…
「かかったな!!」
それはニセモノ、パンテオンの一体に過ぎなかった。
ホッタイドにしたように上から落下、串刺しにしようとするファントム。
「…」
敢えてニセモノを突いたのだ。一歩避けてそれを回避。
「… 何時の間に!」
シールドブーメランが落下直後のファントムを襲撃。
「うっ…!!」
わき腹を抉る。
「貴様…」
ゼロへ向かい駆け、忍者刀で斬りかかる。
ゼロはまたも飛び越え、向きを変える瞬間を後ろからチャージショット。
「………ならば…」
黄色のオーラが発生。
「滅!」
ファントムの体を中心に、闇が広がっていく。
「………何だ?」
ファントム自身も姿を消す。
「是ぞ我が必勝の型『朧舞 月無』」
どこからともなく声がし、クナイを投げる。
「…!」
これを回避するが反対側からクナイが投げられる。完全に姿を消す攻撃のようだ。
どこにいるか全く目で追うことが出来ない…。
攻撃の出所を見極めた上で高速で迷いなく移動、攻撃を放てるかがポイントとなる。
ゼロは…それが出来た。
1回目はチャージショット。
2回目はシールドブーメランの返しで攻撃。
3回目…いよいよ「その攻撃」が放たれた。
ゼロの体に光が集中。…その手にはゼットセイバー。
そう。…可能だったのだ。不可能とされていた、セイバーのチャージ攻撃が。
それは、ゼロのかつての大技、アースクラッシュを得意の剣技と組み合わせ放つもの。
闇の中に光を放つゼロの体が舞い……セイバーを両手に構え…
出始めたクナイを全て空中でかわした上でそこにいるファントムへと力の限りに振り下ろし……
床を破壊。瓦礫を巻き上げ……巨大な穴を生成する。
「はああああああ!!!」
エネルギーがセイバーの刀身だけに留まらず、あふれ出て飛散。闇を…晴らした。
「ぬうううっ…ぐ!!」
ファントムは膝をつく。
「…やるな… …だが」
…「だが」。
「だが、この工場内にはすでに大量の爆弾が仕掛けてある…」
それはファントムの二重の策。
「後数分もすればその全てが爆発する… 解除できるものなら、やってみるがよい …さらば!」
ファントムは姿を消した。
「…ゼロ、ゼロ!!大変…そこから逃げて!
EC生産よりもあなたの命が大事なの、そこから逃げて!!」
とシエルが言っている間にも、ゼロは迷わずに工場内へと向かっていっていた。
「…………解った。…私、サポートするわ。時間がなくなったら強制転送するけどね」
「いいだろう。それまでに全て…俺が解除しよう」
-
「今のが最後の爆弾だったな?」
「ええ。全て解除成功! …有難う、ゼロ!」
ほっと一息ついて、レジスタンスベースに帰ろうとした…その時。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「うああぁあああああああああああああ!!」
「のあああああああああああああ!!」
「助けてええええええええええええええええええええええええ!!」
「やめろおおおおおおおおおおおおお!!!」
…断末魔の声。
「……え?」
「何だ…」
「ベースで何かが起きてる、私、見てくっ…んん!!んーーーーーーーーーー!!」
破砕音で通信が途切れる。
ファントムが直接戦いを挑みに来たのも、
その後わざわざ爆弾の存在を知らせ、時間に余裕を持たせ解体させたのも…
全てはこのため。
ファントムは時間をかけ、3重の策を練ってきていたのだ。
ベースから遠く離れた工場に意識を集中させている間に兵を侵入させ、
レジスタンスのシエル以外のメンバーを皆殺しにするための作戦。
「くそっ…やられたか!」
ベースへ戻るとそこは死傷者の山。
「……急がなければ」
パンテオンの強襲部隊を次々に斬る。
メカニロイドがいればそれを攻撃、ベースの隅々を回り生き残りがいないか確認していく。
「おお、ゼロ!! 助かった… どうやら敵は食料庫に向かったようだ
エネルギーを奪ってここを爆破するつもりだ! お願いだ、助けてくれ…!」
セルヴォにエスケープユニットをつけ、避難所へ転送。
エレベーターの動力が動いていることを確認、上へと移動。
食料庫にて、敵は現れた。
「ウキキキキキキキキ! 馬車馬のようなご活躍ですね、破壊神ゼロ様!」
頭に輪をつけ、棒を構えたサル型レプリロイド。
「ワタクシめの名は、『ハヌマシーン』。ファントム様の片腕を努めさせて頂いております。いざ尋常に勝負!」
如何に時間を短くして戦うか。
「ウキキキキ、ウッキー!」
チャージしてジャンプ。手の棒を伸ばしてゼロへと突進してくる。
それを回避、三段斬りへとつなげる。
「燃えつきなさい!」
炎の弾を3発放つ。
これを回避してチャージ斬り。
「きいいいいいいいいいい!!」
ハヌマシーンが吹き飛ぶ。
「全く驚きました!」
頭の毛は極小カプセルとなっていて、投げると自動的にメカニロイドが生成される仕組みのようだ。
その形は…ハヌマシーンを小さくしたもの。
バスターショットのチャージショットで一気に貫き、攻撃。
「ウキキ…!?」
そのまま通常弾で怯ませ、そこにチャージ斬り。
「や、やりますねゼロ様……!!」
ハヌマシーンが倒れ、ゼロは部屋を脱出。
これで後は問題ない…かと思いきや。
「ゼロ!! ゼロ!!」
シエルの通信。
続いてセルヴォの声。
「おお、ゼロか!生きていたようだな!
どうやらレジスタンスベースの一番奥に、アルエットが敵に襲われているようなんだ、
行ってやってくれ!! 頼む…!!」
-
レジスタンスベースを再び飛びまわる。
「奥に誰か居るかもしれん……」
エレベーターで下階へと下がった…その時である。
「貰ったわ!!」
上から落下してきたのはレヴィアタン。勿論手にはジャベリン。
「はっ!」
セイバーでチャージ斬り、レヴィアタンを壁へ叩きつけ奥へ。
転送装置があればまだ奥に居る誰かが助かるかもしれない…
レヴィアタンは後回しにしてレジスタンスベース奥へ。
最下層、最深部。イブーのよくたむろしている箇所だ。
「どこだ、どこに……」
そこにいたのは…
黒い布。恐らくアルエット… 布をどけると。
「…………!?」
それはファントムから回収した、工場爆発用の爆弾。
「……………なんだ…!?」
「よーーーーー ゼローーーーーーーーーーー!!」
レヴィアタンが追ってこなくなったと思ったら今度はファーブニルの声が背後から。
「それじゃあ…な!!」
チャージショット。そして逃走。
「!!」
爆弾へ向けられる。シールドブーメランを展開するが…間に合わず。
爆弾に着火。旧都市の地下は巨大な爆発を起こし………
一瞬にして直径1kmほどの大きなクレーターになったのだった。
「…やったか」
上空からそれを見下ろすハルピュイアの姿があった。
「…ゼロ、ゼロ…!!だいじょうぶー!? ゼロってばああああああ!!」
幼い声が聞こえる。
目を覚ますと、そこには…。
「おお、若いの!大丈夫じゃったか!? 若いモンは頑丈じゃのー…」
「みんな……」
起き上がるとそこには……レジスタンスみんなの姿。
死んだと思われたメンバーも… どうやら生きているようだ。
…彼は…… 全員、助け出したのだ。
「よかった…… 心配したのよ、ゼロ…」
シエルの姿。
「いやぁ、よかったよかった……」
若いレジスタンスらに肩を貸されたセルヴォの姿。
だがその瞬間。
「手間が省けた」
肩を貸したレジスタンスの顔面から刃が突き出る。
「キャハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
1人、2人、4人、6人、10人。
レジスタンスのメンバーの腹に次々と穴が。シエルの持った銃だ。
「あああああっ…!!」
「シエル…さま…!?」
「セルヴォさん… …!?」
倒れたその頭をグシャリと潰すシエル。…何かが飛び出る。
続けてシエルは女性レジスタンスの首をその腕で引きちぎり投げ捨てる。
「……………」
アルエットの目を覆う。
「めでたい奴らだ。…狂ったイレギュラーどもに、狂う演技がここまで通用するとは不思議なもの」
セルヴォの手にはクナイ。
シエルの体がグニャリと歪む。
「……………斬影軍団!」
武器は遥か彼方に見える。
「シエル博士とセルヴォとやらはもう居らぬ。…諦めることだ、レジスタンスども」
-
「くっ…!」
ファントムを相手に、アルエットを庇いながら武器のない戦いは流石にきつい。
クナイを思う存分投げられ、抵抗することもできない。
「ゼロおおおおおお!」
倒れたゼロをアルエットが庇う。
「邪魔だ」
アルエットの体を忍者刀が貫こうとした…その時。
「ゼロ!」
強烈な光が辺りを照らし…ファントムを吹き飛ばす。
「………お前はセイバーを投げてよこした…」
「ええい何奴………!」
力が入らないらしい。
その隙にゼロはセイバーを取り戻し…
ファントムの眼前に突きつける。
「…戦うか」
「…止むを得ん」
ファントムが姿を消す。シエルに化けた何かも消えていった。
「………恩に着る」
セイバーを戻す。
「…ここは僕が守っておく。ゼロ。君は早く行くんだ。
足は…用意してある」
目の前にはトランスサーバー。
「………まさか」
「…そのサーバーにネオアルカディアの座標を入力しておいた。 …頼んだよゼロ」
背を向ける。
「……『エックスを殺す』 ひとまず今出来るのはそれだけか」
「うん。 …エックスを、倒さなきゃ」
「ゼロー!」
アルエットが現れる。 …アンドリュー爺さんは気を失っている。
「何だ」
「お願い、帰ってきてね!私、ゼロのことお兄ちゃんだと思ってるから!」
「? …ああ。何とでも思うといい」
「それと、ちょっとこれはシエルお姉ちゃんから聞いたんだけど……。」
ネオアルカディア中心地『聖域』
その隅の部屋のトランスサーバーが動作、一人のレプリロイドのシルエットを映し…実体化させる。
「…。」
ゼロ。…彼は、走り出した。
向かう方向は…上。
小部屋を抜け、狼型メカニロイドとコンドル型メカニロイドを撃破。扉の先の神殿区域を進んでいく。
彼は、行く。
エックスの作り出した理想都市の中をイレギュラーとして。
そして、それがエックスとの遠い約束を果たしに行くことになるのだとは…知ることなどなく。
「ゼロ。 …もし、俺がイレギュラーになったら… その時は君が、俺を倒して欲しい」
エイリアの答え。
「馬鹿…!」
ゼロの答え。
「何を言っている」
…だがこうやって、約束を果たすときがやってきたのだ。
-
「…石像か」
神殿フロアの中で実体化した石像、門番パンテオン・エース。
特別製の2体のパンテオンが宙を飛びまわり、ゼロを攻撃する。
ゼロは問題なくそれらを斬り、床へと落とす。
そして更に上へ。
「何だ?」
見ると、細身で四本腕の…剣を持ったミュートスレプリロイドが行く手を阻んでいる。
「私は!アスラ・バスラ!聖域に侵入する者を!排除せよと!仰せ遣っている!!」
一言一言を大きな声で区切ったそのレプリロイドの体が回転、戦闘体勢に入る。
これもまた敵ではなく。ゼロの三段斬りの前に4本腕全てを斬り落とされ、爆発していった。
そして更に上へ進んだ所で……
赤いレプリロイドが行く手を阻む。
カブトムシの形をした…ごつごつとしたレプリロイド。
「この地はネオアルカディアの深部、聖域。
…そしてワシはハルピュイア様の部下『ヘラクリウス・アンカトゥス』
汚れたイレギュラーが入ることは許されん…このワシの刃の錆となるがいい!」
角と角の間から電撃を発し、闘志をアピール。
ゼロはといえばアイスチップを装備。
「行くぞ!」
電流で接合された腕を伸ばし、壁へ刺し…突進を行う。
ゼロは腕を伸ばした段階でそれを回避、後ろから三段斬りを行う。
ヘラクリウスは無駄な突進を行った結果となる。
「そらそら!!」
電撃の弾を角から連射。ゼロへと向かい放っていく。
間を縫って、氷属性のチャージショットを放つ。
「あぁっがががが…!!」
何せ敵は雷属性であることが一目瞭然である。ハルピュイアの部下であるという言葉からも。
「ならばこれなら!」
今度は大きな電撃。それはゼロをゆっくりと追い始める。
「フンッ!!」
腕を伸ばすことなく突進。小さく回避すると電撃の餌食なので大きく回避、そのまま再び氷のチャージショット。
「うっ…おおおお…!!」
電撃で繋がった羽根を部屋の中心で展開、弾を乱射し始める。
ゼロはシールドブーメランでそれを跳ね返しヘラクリウスへ当て…
落下してきたところをチャージシールドブーメランで真っ二つに。
「……弟よ………強く生きろ…!!」
青きボディをした弟の幸せを願い、ヘラクリウスは二つに分かれたその体を弾けさせていった。
「…ゼロー、ゼローーーー!お願い、一度戻ってー!」
アルエットの声が聞こえる。
「休みは大切じゃぞー!!」
だが聞かない。
ゼロはそのまま、先へと進んでいった。 …聖域フロアを抜けたようだ。
雰囲気の変わった通路が続き…… その先は。
-
「この塔は一体どこまである…」
このさきは、きどうエレベーターっていうんだって! …アルエットは言っていた。
軌道エレベーターの意味が理解できないゼロは、ひとまず足場に乗っていく。
敵の攻撃も何のその。
戦争時代の力を取り戻したゼロの敵ではなく…
エレベーターはすぐに止まった。
「……」
だがおかしい。扉も何もここにはない…
「…………そうなると」
壁だけが続いている。
上を見上げようとしても、最上階が見えない。
「…こうするしかないか」
壁を蹴り、登り始めた。
軌道エレベーターは実に、地上3万km以上もの高さを持っている。
青空の中だった聖域からは…後どれほど登らねばならないか?
そう、『壁を蹴って』。
…ゼロの力が試される時だ。
「…時間の感覚がなくなってきたな。」
途中作業用リフトの力なども借りつつ、砲台を破壊したりなどしつつ。
有り得ない速度で登り続けたゼロは…何時しか、ネオアルカディアの塔と呼ばれる
この起動軌道エレベーターの、最上階にまで達していた。
衛星軌道上に作られた巨大施設…エリアXの入り口にて。
二人のシエルと、縛られたセルヴォがそこにいた。
「ゼロか…!?」
「……セルヴォ…。 シエルはどっちだ」
振り向く。
「ゼロっ!」
「ゼロォ…」
右のシエルは目に涙をため、左のシエルはグニャリと歪む。
「キェヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!」
左のシエルの腕が縦1mほどに肥大化、右のシエルの体を一掴みにする。
「あぁあっ……!!」
セルヴォが説明する。
「こいつは…レインボーデビルだ! ファントムのいる部隊の兵器で…!
ロストデータを使っているようだ… コアを…コアを狙うんだ!」
顔部分はパンテオン。レインボーデビルはそのまま色が変化…ぶくぶくと膨れ上がり虹色のスライムへと変化。
シエルをその内部へと取り込む。
「…! むー! …むぐ!!」
セイバーを構え、戦闘を開始する。
「厄介な相手だな」
-
チャージショットでレインボーデビルのコアを攻撃。
「ぶも!!」
ぐにょりぐにょりと移動…飛沫を吹き飛ばす。
「ぶもももももももー!もー!」
これを回避。レインボーデビルの顔をトリプルロッドで上から突き、反動で跳びあがる。
「食らえ!」
高さを調節し、シエルに当たらないようにしながらチャージ斬り。
「ぶもっも!」
レインボーデビルが跳びあがり…部屋を跳ね回る。
「うかつには攻撃できないな…」
バウンドするレインボーデビル。コアを狙い撃ち…更にセイバーで攻撃。
「もーっ!?ぶもも!!」
分裂したボディは4つに分かれる。ギリギリシエルのボディがスライム内に収まっている状態だ。
そしてすべてが集まり…復活。
「ぶもおおおっ!!」
ゼロへ向かい硬質化したスライムボディの腕でパンチを放つ『ナイトメアブロー』
回避、壁へ登り………蹴り、宙へ舞う。
「はぁああああああ!!」
再びチャージ斬り。
「ぶもーーーーーーーっ!!」
パンテオンの顔が消滅。レインボーデビルの体が飛び散る。
「………大丈夫か」
シエルはその場に倒れる。どうやら気を失っている様子。
「ぜ…ゼロ………。」
シエルへ近づきつつアルエットへ報告。
「こちらゼロ。シエルの救出に……」
だがその瞬間。
「待て!!」
ゼロとシエルの間に現れたのはアステファルコンとハヌマシーン。
「…すまない。阻まれたようだ …邪魔をするな」
「ウキキキキ。そう申されましても、それがワタクシの使命でして!」
「そういうわけだ。まずは俺と戦ってもらうことになる」
復活アステファルコン戦。
「ハァ!」
氷属性を持ったトリプルロッドを振り回すチャージ攻撃。
「がはっ……ハルピュイア様…!!」
続けて、エックスの元へシエルを運び終わったハヌマシーンが登場。
「いざ、再び勝負!!」
「キッキキーーーー! いい勝負をさせてもらいましたよ、破壊神様!!」
ハヌマシーンも消滅。
縄をセイバーで切る。
「時間を取られた…セルヴォ。お前は戻っていろ」
「……こんな所まで一人で来させてしまった… 申し訳ないと思っている」
「いい。そんなことよりまずはシエルを取り戻すのが先だろう」
「ああ。そうだな…… 私にとってシエルは娘のような存在でもあるんだ。…宜しく頼むよ」
頷き、扉を潜る。…この先に待つのは恐らくハルピュイア、ファーブニル、レヴィアタン、ファントム、
そして…。
「………」
彼はもう、振り返らない。
-
「古き者よ、そろそろお主も土へ還るがよい」
アヌビステップ・ネクロマンセス3世改め4世。
「よもやお前のような者にこのワシが敗れたとは…」
早くも復活したヘラクリウス・アンカトゥス。
「麻呂のデータにお前の戦いは記録されたでおじゃーるよ」
マハ・ガネシャリフ。
「むふー!今度こそお前を氷付けにしてやるぜえ…」
ブリザック・スタグロフ。
エリアXの4つの部屋にて4人、計6人の復活ミュートスレプリロイドを倒したことになるゼロは
再び同じ形の扉を潜る。
「ここはお前のような者がいていい場所じゃないんだ。 身の程を知れ、ゼロ!」
ハルピュイア。
「クソッ…キサマだけは許さん」
「さーさー、またやってきたなーゼロ!ちったぁ楽しませてもらおうじゃねえか!!」
ファーブニル。
「ちっきしょー、足が動かねえ…!まぁいい、通してやるよ!」
「…ちょっと私、あなたの強さが病みつきになっちゃったみたい♪」
レヴィアタン。
「うっ… いいわ、その力… 私、あなたのような人を待っていたのかもしれない……」
「人類に光を、イレギュラーに死の影を。」
ファントム。
「…レジスタンス達の仇は討たせてもらう。」
だがコイツだけは違った。
「うっ……!! 拙者が敗れるとは… だが、貴様だけは… エックス様の下へは…!!」
『エックス様』への四天王一の忠誠心が行わせた行動。
「無念!」
自爆を行ったのだ。
爆風から逃れ…最後の一人を倒したことでいよいよエックスへの扉が開かれる。
この時代において最強の力を持つとされる…エックスへの。
開けた部屋に出た。
「そこまでだ!!」
「こっから先はぁ通さねえ!」
「覚悟なさい!」
またも現れたハルピュイア、ファーブニル、レヴィアタン。
エックスとの戦いの前哨戦となるか…
だが。
「…待て」
転送装置で光の柱となって現れたのは…青いレプリロイド。
整った丸いヘルメットと顔立ち、青いボディ。
…彼こそがエックスだ。
そして…傍らにはシエル。
「ゼロ!!」
そしてエックスは3人に言う。
「…お前達が束になって敵う相手じゃあない… 下がれ。」
「ですが……」
ハルピュイア。
「…解りました」
レヴィアタン。
「チィッ!」
ファーブニル。
ここで部屋にいるのは3人だけになる。
-
シエルがゼロの元へ走ってきた。
「…アルエットがお前から聞いたということを一つ確かめたい」
「…」
シエルも予想がついていた。 …エックスも。
「お前の隣にいるそれは… エックスのコピーだな?…お前が作り出した。」
エックスの表情は変わらない。
「…ええ。 エックスのコピーを作り出し…ネオアルカディアをこんなにしたのは… 私よ。
…全部、私の責任なの」
エックスがここでフッと含み笑いをする。
「僕の生みの親であるあなたに感謝するからこそ、僕はこうやって
あなたを許そうっていうんじゃないか。」
「…レジスタンス全員の命と引き換えに…。」
「でなければ、僕に完全なエックスの記憶を授け、
ゼロをネオアルカディアの一員として加えることを…条件にね」
「名実ともに本当のエックスになるためには記憶は不可欠だし…
彼なら四天王を補って余りある働きをしてくれそうだ。」
そしてシエルを上を向き気味な顔で見下ろす。
「でなければ…」
「…粛清者としての功績を挙げることがいいかもね。」
誰からも本物のエックスだとされても、極一部の者と自分のみが知ることから来る苛立ちの解消。
それがエックスの目的だった。
「……さぁ、どうする。
ゼロ。それとは関係なく君にもこちらへ来てもらってもいいんだ
このネオアルカディアの美しい聖域を見て思っただろう?」
「昔の君や、オリジナルのエックスですら作れなかった理想郷がやっとここ、ネオアルカディアに実現したんだ」
「…いいんだ、こちら側に来ても。
わざわざ世界の敵になる必要なんてない。 …ここが英雄の居るべき場所なんだ」
くすりと笑う。
ゼロはその言葉、喋り方で何かエックスの何たるかを思い出しはしないか。
目を閉じて聞いていたが……。
結論が出る。
「紛い物だな」
エックスの目が細まる。
「…」
「下らない偽物に過ぎないと言ったんだ。 …お前も、この世界も」
シエルも、彼の肩を強く掴み…エックスを睨んだ。
エックスの目元がピクリと動く。
「シエル、君も同意見か。………へぇ」
「やっぱり面白い人だったよ、君は。まぁ、楽しい話が出来ただけ…貴重な体験だった。」
腕をクロスさせる。
エックスに膨大なエネルギーが集中。施設全体がガタガタと揺れ始める。
「それじゃ…」
光がエックスを包む。
腕を解き、アルティメットアーマーを生成。
「仕事を始めますか。」
機械翼のデザインが真っ白な翼へ変化、カラーリングは白、腰周りは動きやすいようスーツのみ。
100年前のオリジナルエックスのそれとは違うものだった。
「イレギュラーハンターの、ね」
-
アルティメットアーマーに身を包んだエックスは宙へ浮く。
「何だ…?」
「ノヴァストライク!」
光に身を包み、ゼロへ向かい突進してくる。
これを壁を蹴り回避…
壁に衝突したところで飛び越える。
「甘いね!」
飛行の一環としてエックスはそれを使いこなしていた。
エックスは斜め下、ゼロの居る位置に向かってエックスバスターを放つ。
青いバスターで、ゼロのものよりも勢いの強いもの。
ゼロはそれを潜り……
払う。袈裟切り。振り下ろす。三段斬りをエックスに浴びせる。
「へぇ…?」
色が変化する。
「エレメントチップか…」
赤色になったエックスは炎のバスターを放つ。
「…!」
宙から放たれる連なる炎は放物線を描き飛んでいく。
「ハッ!!」
距離をとりチャージショット。
次の攻撃に備える。
「僕の力を侮ってはいけない…」
チャージを始める。そしてゼロの目の前に跳び…
「炎の雨というわけさ」
天へ向かいチャージショット。
炎の塊が上に撃ち出され、降り注ぐ。
「ハァ!!」
「うぐっ…!!」
チャージ斬りでエックスを吹き飛ばす。
またもカラーチェンジ。
「今度は何で来る」
緑。
「さぁどう出るかな」
またもノヴァストライク。
「ぬ…」
壁の上で回避。
そのまま今度は雷の弾を2,3個放ち、またノヴァストライク。
緩急差の激しい追尾攻撃を使うということか。
「食らわん!」
雷の弾を回避し…更にノヴァストライクも回避。エックスをセイバーで叩く。
「………それなら!」
チャージし、拳を下に突き出す。高圧電流の波が床を伝い流れる。
「ハッ…!!」
エックスを避け、壁へ。
-
「さてお次は…」
水色…氷属性。
「さぁ、苦しむがいい…」
斜め上、横、下。様々な方向に氷の弾を発射、衝突させて細かな粒として散乱させ始める。
ゼロはそれを巧みにかわす。
「そこを狙っているのさ!」
チャージショット。氷の竜巻がゼロ目掛けて飛んでいく。
「その速さでは俺を追うことは出来ん!」
エックスを飛び越え回転斬り。
「ぐふっ…!!」
エックスが飛びのく。
「……もう許さん!」
エックスに力が集中し…光が立ち上る。
エックスともなると流石に奥義の幅も異なり… 見る見るうちに傷がふさがり、再生していく。
色が青になる。 …戦闘体勢だ。
「受けてみるがいい!」
ノヴァストライク。
ゼロはチャージ斬りでそれを向かえ撃ち…チャージ斬り叩き落とした。
「なっ!?」
そのまま飛び越えて回転斬り。
「はあっ!!」
エックスバスターの連射。これもかわして三段斬り。
「ふざけるな!」
バックステップからのダッシュは攻撃能力を持つスライディングに変化。
「悪いがそれでは的だな」
チャージ斬りで再び叩き斬る。
「舐めるな!!」
特大のチャージショット。青紫色のエネルギー弾が発射されていく。
「…それはどちらだ」
回転斬りで飛び越し、向きを変えて…
「ハッ!!」
ダッシュ斬り。
エックスの膝から肩にかけてを切り裂く。
「くううっ……!!」
…人間であるシエルには全くわからない。
先ほどまで四天王と戦っていたはずのゼロが、どうしてあのエックスを相手に…傷一つ負うことなく優勢に持ち込めている?
今までと比べ、あまりにも速い。あまりにも力が強い。
エックスの間から見た様子では、四天王の撃破に…一人当たり20秒も費やしていたというのに。
そもそも、弱きパンテオンをセイバーの一振りで倒せないこともあったのに、
どうしてゴーレムは一撃で倒せたのか?
そしてシエルは一つの考えが浮かぶ。
…彼は無意識に… 力をコントロールしているのではないかと。
…もし、今彼が戦争時代の力を100%取り戻していて、
相手に合わせてた出力に本人の意思と関係無し制御されているのだとしたら。
「……弱いな」
膝を突いたエックスに向かい話す。
「…オリジナルのエックスもそんなに弱かったのか?」
「何…!?」
いや 結論は出ている。
「…違うな。
記憶が覚えていなくとも…」
「体はかつての友を覚えているようだ。」
「『エックスは、もっと強かった』」
-
その言葉は彼の逆鱗に触れる。
「…よし、いいだろう。 僕の本当の力というものを…見せてやろう」
宙へ跳びあがる。
「危険? …ああ、承知の上さ!」
誰かと話しているようだ。
「はあああああああああああああ!」
エネルギーの解放。
エックスの体が、光に包まれ、光となって散っていく。
…一つの、小さなコアのみが残る。
そしてそのコアを中心に光が集結… 新たなる体を生成していく。
アルティメットアーマーの上を行く、エックス最強の能力。
巨大な6枚の翼に、宙へ浮いた白い爪、脚のない下半身。通常状態のままのヘルメット。
エックスが体を伸ばすと、光の輪が頭に現れる。
「ゼロおおおおおおお!!」
「下がれ、シエル!」
エスケープユニットをつけ強引に転送させる。
そして、どこからか落下してきた二つの棒が床へ打ち付けられ……沈む。
砕けて宇宙の塵となる。
残るはゼロのいる、エックス直下の小さな床のみ…。
背景のパネルは透明なものへと変化…宇宙を映し出す。
最後の戦いの後半戦。
「光よ!!」
両腕から放たれるはレーザーの雨。
床へと撃ちつけられるが…ゼロはそれをギリギリで回避。
チャージ斬りを食らわせる。
「うぁっ…!!」
「けどそれで避けたつもりだというのか!!」
更に光の雨を降らせる。
ゼロは相手の動きを誘導するようにして、間を縫って回避。
「ちょこまかとしつこいな」
頭の光の輪を上空から降らせる。
エックスによるコントロールを可能にするものだ。
「うっ…!!」
棒を蹴っていたところから回避するも…輪に閉じ込められる。動けない…
「裁きだ!!」
床をレーザーが通り… その通り道が遅れて灼熱の地獄と化す。
「うぉああああああああああ……!!」
「まだまだ…」
レーザーの雨。
これを避けて上から回転斬り。トリプルロッドで腕を攻撃。
「その程度の攻撃を食らうと思っていたかな」
腕を弾き、トリプルロッドで高く跳びあがり…
「ハァ!!」
またもチャージ斬り。
「ぐはっ…!!」
「はははは…ハハハハハハハ!!!!」
左右の柱が消滅。
それは彼のもう2つの腕だったのだ。
床を叩き、粉々に粉砕しようと動き続ける。
「スクラップになってしまえっ!スクラップになってしまえ!!」
振り下ろされる超重量の柱。
光の輪で固定し、更に破壊を続ける。
「塵に!!」
ゼロを貫くべく。
「クズに!!」
ゼロを粉々にするべく。
「ゴミに!!
ただの鉄の塊にするべく。
「屍を晒すんだ!!」
-
「ハーーッハッハッハッハ!!!」
自在に動かすその力。 …だが所詮は小さな床の中。 …所詮は、柱程度。
「……何」
ゼロは…攻撃全てを受けながら立っていた。
だがエックスにはまだ数発分の時間がある。ゼロは対してあと一撃でもすれば粉々だろう。
「おのれ…!!」
光の雨を誘導、回転斬りで反対側へ。
「くっ…!」
エックスの攻撃が当たらぬことがそれから暫く続く。
女性の声がエックスの耳元から。
「エックス様、 …エックス様!!」
「黙れオペレーター!後で君も処刑されたいかな!?」
再び光の雨を降らせる。
音量が上がる。
「滅相も御座いません!!」
更に音量が上がる。
「私は、エックス様のオペレーターですから!!」
「ですから、私はエックス様の有利になる情報しかお伝えはしません!」
「黙れと言っている!気が散るな!!」
二つの柱でのプレス攻撃を再開する。
「ですから!! 私からエックス様に!! 少しばかり情報を!」
そして音量が最大に。
「エックス様、今のあなたは属性のバランスが崩れております!!
ですから!!」
炎の海を作りながら。
「…何が言いたい?」
音量が最大。…エックスも気付いた。
「ゼロが持っているアイスチップを使われては危険!
絶対にその攻撃を食らわぬよう!!」
「!?」
「黙れ!!貴様!! 貴様ぁあああああ!!」
「ああ、ゼロよ! 絶対にアイスチップの力を使わぬよう!!」
それは…応援という反逆だった。
「オペレーター…!黙れ!黙れ…!!何を言っている!?」
「ええ、氷属性だけは使われては危険!!」
レーザーが灼熱の炎でゼロを焼きにかかる。
「黙れ!!オペレーター!!」
「大丈夫です、そんなことがなければエックス様の勝利は確定!」
青きセイバーを手にしたゼロは、柱を蹴り…冷気のエネルギーを最大までチャージし…
「…黙れエイリアあああああああああああああああああああ!!!」
そしてそれは力いっぱいに振り下ろされた。
「……………………!」
-
エックスの頭から、顔面、胸のコア、脚なき下半身までが一筋に青き光により刻まれ……
体の各所から…爆発を起こす。
6枚の美しき翼はバリンバリンと割れ…
顔面がひび割れ、仮面のように内部機械を露出。
翼を支える骨組みだけの状態となり、腕は力を失い床へ落下、爆発…そして……
「がはっ…!!」
床へ叩きつけられ、崩壊した。
上半身だけの状態。ひび割れ、眼球となるアイカメラを露出した目、
骨組みだけとなったその翼は半分骨組みすらも粉々に砕け、
下半身は完全に潰れ… その体はガクリと傾いたまま。
「……………なぜ……… …なぜ…… 僕が…… こんな… 目に」
戦いの後の余韻。
その顔を見下ろし、ゼロは静かに呟く。
「…今、少しだけ思い出した」
「…エックスは、お前のように単純な奴じゃない」
「いつもグズグズしていて…キッパリと答えの出せない、
悩んでばかりの… 意気地なしだったさ」
目を閉じる。
「だが」
「…そんな奴だからこそ」
開く。
「…アイツは英雄になれたんだ。」
エリアX・オペレーター室にてデスクに座り…その言葉を聞く女性が一人。
レヴィアタンの友達であり、エックスと最も親和性の高いDNA構造を持ち、
シエルのエックスのコピー技術から、四天王を生んだ一人のレプリロイド。
…結局したのは汚い仕事に終わってしまった…一人の女性。
「……………エックス、様…か」
いつぞやは彼女は星空を見て、エックスは宇宙を見ていた。
…今は、彼女が宇宙を見ていた。
そこに小さな光がやってくる。…戦いを見守るがてら、顔を出したのだろう。
「…!?」
気付く。
「あなた……は………」
…目が潤む。唇が震える。
「エッ…………」
「…お前だけは…許さない…! お前だけは…道連れに… して……… や……………」
エックス自らが、爆破を指令を出したからだ。
「緊急事態、緊急事態。 イレギュラーが最終防衛ライン『エリアX』を突破。
これより該当エリアを爆破、イレギュラーの排除を開始します」
アラートと、警告の音声。
「……間に合うか…!?」
部屋から脱出、全速力で駆け始める。
白き光……爆発が広がる。
エリアXは消滅。 残っていたレプリロイド全てが宇宙の塵となり消えて行った。
-
砂嵐。 ……風の音。 …真っ暗闇。
そこに、懐かしき声がこだまする。
「君が、僕を残し この地上を去ってから…」
ゼットセイバーを投げてよこした者の声。
「僕はたった一人、100年近くもの間、途方もない数のイレギュラーと戦っていたんだよ」
「それは、辛く悲しい 孤独な戦いの日々だった」
…ネオアルカディアの冷たい君主の声のようでもあったが…
違う。
「でも、何より一番 辛かったのは」
それは……
…友の声だった。
「段々何も感じなくなっていく、自分自身の心だったんだ。」
彼はわかっていた。
命を奪うことに、何も感じなくなること…それはイレギュラーであると。
そして…コピーエックスがそうであり、自分もまた…そうなるところであったと。
「………ゼロ。」
聞こえているのか、聞こえていないのか…分かりなどしないが、
確かにそこにいる赤い彼に向かい一言を告げる。
「君にこの世界を預けてみたい」
人と、機械のために戦う者の称号…
『ロックマン』
「…僕を、もう少しだけの間…眠らせておいて欲しい」
思いは託され、ここに…生まれの異なる新たなるロックマンが一人、誕生した。
…ロックマン・ゼロ。
最後に一言。
「ごめんね…」
彼は姿を消した。
「………」
起き上がる。
「……全く、我侭な奴だ…」
しかし、彼にはわかっている。その理由も。
「…だが、そんな奴だからこそ 共に戦うことが出来たんだったな」
ふと、気配を感じ振り返る。
「………。」
そこにいたのは、彼を出迎えるレジスタンスの仲間達…
…ではなかった。
おびただしい数の、無数のネオアルカディアの軍勢。
コピーエックスは、最も彼に近いパンテオンでしかなかった。
四天王もまた、エックスの子供。
逆に言えば、彼を殺さんとする、世に犇くコピーエックスはまだ… こんなにも沢山いたのだ。
…戦いは、まだ何も終わってなどいやしない。
「…我侭は聞いてやろう
暫くは俺に任せてゆっくり休め…」
目を閉じる。
「…俺は悩まない。」
呼吸を整える。
「目の前に敵が現れたのならば……」
見開く。
「叩き斬る…までだ!」
そして彼は戦い続ける。
-
「すまなかった、今度こそ世界征服は諦めるから、お願いだロックマン!!」
「……本当にもう」
Drワイリーは、監視の意味も含めてライト博士に協力してもらうこととなった。
これできっと、改心してくれるはず。
協力とは、宇宙開発のこと。
土地を開発するが如く、遠い宇宙の惑星を…今、様々な形でその星の特性を活かし、開発を行っているのだ。
開発先となるのは8つの星達。
それぞれには特有のエネルギーがあり、
それらを集めることで新しいエネルギーを作り出せるとされている。
8基のロケットに8体のロボット。人類の夢は、こうして打ち上げられたのだった。
Drライトと、Drワイリーの共同作戦によって。
…8体目の打ち上げの瞬間を見届けた二つの背中。
「いやー…お前が協力してくれて助かったよ、ワイリー。」
ライト博士は言う。
「なぁに。気にすることはないわい。散々迷惑をかけてしまったのだからな」
その様子を見ているのはロックマン。手にはロケットの巨大フィギュア。
「……よかった」
「ロック、そろそろ帰る?宇宙グッズとかも貰ったことだし!」
ロールちゃんが、どっさりと宇宙グッズを貰ってやってくる。
「ど、どうしたのそんなに…」
「タダでもらえたんだし、いいじゃない。
要らないなら誰か友達にあげることも出来ると思うしね」
無駄遣いをしないロールちゃんにしては珍しく。
彼女は機嫌がよかったのだ。そろそろ…カットマン達の修復が最終段階に入っていたからだ。
「…そうだね」
帰りの電車を待つ。
「Drワイリーはどこへ行ったんですか?博士」
「ああ。少し航空宇宙局に呼び出されているようだから、後で来るそうじゃよ」
しかし静寂はすぐに破られる。
慌てて飛び込んできたDrワイリーの声によって。
「たたたたた、たたたたた大変じゃああああ!!」
「ど、どうしたんじゃワイリー!」
駅に緊張が走る。
「最初に宇宙へ向かった第一号のタップマンが…」
「タップマンが、タップマンが暴れておるらしいのじゃ!」
タップマンが向かったのは、植物の生育に適した土の組成をした惑星。
そこは宇宙開発の第一歩として、人工温室を作り上げ、
植物の光合成により人間の住める環境を作り出す試みの行われている星。
巨大な温室ドームの中で、彼が暴走を起こしたというのだ。
「…急がなきゃ……!」
他7人のロボットは多忙な上…直接の転送は不可。
……ロケットを使い宇宙へ旅立つこととなる。
「行ってきます、博士!」
二人の博士が声援を送る。
「頑張るんじゃぞー、ロックマン!」
かくして、9つ目のロケット打ち上げの手続きは行われた。
皮肉にもその間に、ロボット暴走のニュースは次々とその件数を増加させていた。
「…どういうことなんだろう。」
新たなる戦いの始まり。しかし…ロックの思考は、口笛により中断される。
「…誰だ!!」
-
あの日、彼の目の前に現れたのは赤いロボット。
その名は『ブレイクマン』
黒いサングラス型のバイザーと、赤いヘルメット、黄色いマフラーが特徴のロボット。
タップマン達宇宙開発のロボットは、一つの場所に集まっているというのは彼の情報。
そして彼らの人数は9人。…8人のロボットに彼を足した数。
彼は一体何者なのか? 武器を放ってきた彼に、ロックマンは応戦し、倒した。
初めにタップマンを倒したロックマンは次に訪れた、鉱物資源の豊富な鉱山惑星にて彼と再び出会う。
「ブレイクマン!」
「俺の名前、覚えてくれたようだな」
彼の武器は…ロックバスターのそれと同じだった。
エネルギーの弾を腕から発射する。小刻みに跳び、回避しづらいパターンでロックマンを追い詰める。
「うっ…!」
段差を利用した戦いとなると更にそれは強烈。
だが、ある程度戦ったところで姿を消していく。
そしてその次も。
その、次のときというのは…シャドーマンのいた惑星。
シャドーマンは宇宙から飛来してきたロボットである。恐らくは暴走する要因があるとすれば彼…
元凶である彼が起こした事件は、液体燃料資源に恵まれた惑星での…その全てに火を放つというもの。
地下油田に落下してきてすぐ、ブレイクマンが現れた。
シャドーマンを倒しても、暴走はすでに始まってしまったわけで…
止まることはなかった。
磁力惑星でのブレイクマンの戦いを経て、スネークマンが築き上げたロボット達のアジトも破壊。
…それでも暴走は止まらない。
7人のロボットが倒された所でブレイクマンは、いよいよロックマンを呼び出した。
場所は…… ロボットの反応がなかったはずの惑星。
不明な点が多い、高いエネルギー反応を持つ惑星で、
一説には星を構成する結晶型の物質は、生命ではないかともされている…神秘の惑星。
「…よく来たな」
ブレイクマンはいつもの通り、口笛を吹いてやってくる。
「いよいよ決着をつける気になったんだな」
バスターを構える。だが…
「今回は戦わねえよ… お前を奴らのリーダーの所へ案内するために来た」
爆弾を仕掛け、星のエネルギーを吸収している、足元にある装置を破壊する。
「!」
装置の下には底の見えぬ空洞。
「その中が奴らのアジトだ… さて。お前に奴が倒せるか?」
ブレイクマンは姿を消し、ロックマンは下の空洞へ潜る。
不思議な場所だった。呼吸をするように輝きを変えていく洞窟。
洞窟内にひしめく無数の泡の中からは謎の生命体。
深部には…水。一体この惑星は何であるのか…?
「面白い場所だろう」
最深部で同調するかのように輝くロボットが居た。
確か彼は…。
「ジェミニマン!」
「……この深部は惑星の頭脳とは遠いな…ここでよかった」
「ここで…よかった…?」
意味が解らず、バスターを向ける。
ジェミニマンは部屋を舞い始める。
「…!?」
だが宙を舞い部屋の反対側へ回ったはずのジェミニマンが…まだそこにもいる。
「9人… ブレイクマンを含めてではなく、そういう意味だったのか!」
ジェミニの意味。…ジェミニマンは、二つのボディを持っていたのだ。
-
「悪いなロックマン!」
「頑張ったようだがここまでだ!」
左右から。
「はぁあ!」
バスターを向ける。
「おっと!」
一体には当たるが一体はかわしていく。
「うあぁああ!!」
背後からのもう一体のバスター。
「…はっ!」
1体が攻撃するたび、2体は揃って攻撃を仕掛ける。
「………」
バスターを撃つと同時に跳んで避ける。
パターンを変えて、2対1での戦いに慣れなければならない。
幸い…敵は一発しかバスターを撃てない。
…それを考慮しても、ほとんどの能力でロックマンはジェミニマンに敗れているのだが。
「…はぁ、はぁぁ…」
大分削ったはず。
エネルギー缶を使用、体力を回復…
一撃を見舞う。
「いっけぇ!!」
ジェミニマンのうちの1体が…消えた。
「ホログラフ…?そんな、はずは!」
ただのホログラフが攻撃してくるとでも言うのか。
だがどの道、もうジェミニマンは一人しかいない。
「そう。ただのホログラフじゃなくなった。俺がこの星に来て手に入れた能力だ」
敵のバスターが部屋を真っ白に照らす。
ホログラフ機能に回していたエネルギーを使い、レーザーを放つ。
「!!」
轟音と共にレーザーは一本の矢となり、ロックマンへ向かってくる。
「うぁーーーーっ!!」
襲い掛かる。
壁までロックマンの体は押され、叩きつけられる。
腹はそのままゴリゴリと抉られ……大きな穴となる。
「げぇほっ…………!!」
口から、腹から…オイルが噴出する。レーザーの出力が…あまりに強い。
ジェミニマンの体が紫色に怪しく輝き始める。
「コイツは『ジェミニレーザー』 …思った以上のパワーアップだ 実験体になってくれてありがとよロックマン。」
「…それは…!?」
よろけながら立ち上がる。
「この星は生物惑星。 …その深部に行った俺は、驚いたことにこの惑星と同調したんだ…」
またその銃口が輝き、部屋の全体を照らす。
「そしたら、気がついたらもう一人、ああやって同じ自分が出来ていた!」
もう一発撃つ。
「…!?」
解らないことだらけ。だが…ひとまずしなければならないことは。
「わぁあああ!!」
放たれたジェミニレーザーを避けることのみ。
壁へ、天井へと反射、ロックマンを追う。
「この惑星が持つエネルギーの特徴は意思を持つことだ。 …だがそれ自体では思考せず、
手にしたものの意思を反映することで初めて生命として機能する」
反射してロックマンの肩を貫き、今度は床へ叩き付ける。
「ぐあああああ!!」
「思考する生命体にしか貫通しない、対生命体武器・ジェミニレーザーがこの星で反射するのもそのせいだろう。
現に…壁や天井はレーザーを反射し、お前はそれに貫かれている」
「………!?」
心を反映し自律する未知のエネルギー、
反射する高出力レーザー・ジェミニレーザー。
戦いは第二ラウンドにもつれ込んだ。
-
ジェミニマンを死闘の末に撃破。
その内部にあったものと同じ、この惑星のエネルギーを回収…
ロックマンは地球へと帰還していく。
というのも、この戦いにはもう一つ意味があったためである。
「困ったのう…そうなると8つのエネルギーが…」
ライト博士が言う。
「そうじゃな。8つの星のエネルギーを集めないことにはガンマは動かん…」
と言うのはワイリー。
ガンマとは?ロックマンはライト博士に聞いてみた。
「……ああ。お前には説明していなかったな」
「ガンマとはな、宇宙開発用の搭乗型ロボットでな…
だがなにぶんとてもエネルギーが要るもので、8つの星に散らばるエネルギーを各部で動かさねば
動かすことが出来ないのじゃ」
どういう仕組みなのかはあまり説明はもらえなかった。
だが取り敢えずは作業用ロボット達のいる8つの星のエネルギーを8つとも集めなければならなかった。
そしてそれは達成された。
地球行きのロケットに乗り、亜空間へとワープ。
何時間かの飛行のあと、地球付近の宙域に出現。
それからまもなく大気圏へ突入、切り離し作業を以って地球へ帰還。
落下先は太平洋上。
サイズの小さな最後のエネルギーは6時間先にのライト博士の元へ直接転送されていた。
後はガンマの雄姿を見るだけ。
そう思われたのだが…。
「えっ……!?」
博士の研究所に大きな穴が。
「…ラッシュ!」
今回の戦いから加わった犬型サポートロボットの力で空を飛び、上空から確認してみる。
アスファルトの道路が凹み、車が潰れ、ビルが粉々に粉砕されたり倒壊したりしている。
なんと……町の通りを、破壊の後が一直線に貫いている。
少し先で、煙の発声した地点があったのを最後に、その先は破壊されていない。
これは…まさか。
「おお、ロックマンか!!…ガンマが、ガンマが…!!ワイリーに奪われたんじゃ!」
「…ガンマが!?」
「ワイリーはワシらを利用しておったんじゃ… 完成したガンマを使って、
世界征服を実行に移すと言っておった!!」
ワイリーは、諦めてはいなかったのだ。
「博士、ワイリーの研究所へ転送してください!」
しかし。
「転送装置を破壊されてしまった…
幸い、ワイリーの研究所はそこまで遠い場所ではない。
急ぐんじゃ、ロックマン!」
再びワイリーの計画を阻止するべく彼は動いた。
-
エネルギーを大量に搭載し、町の中をラッシュジェットで飛行。
町から海へ…海はラッシュマリンで水中へ。
そして水面からあがり……ワイリーの研究所のある島へたどり着く。
波の打ち寄せる砂浜に飛び出す。遠くに、巨大なワイリーの研究所が見える。
「あれか!!」
そう思った瞬間…背後から圧縮された水の弾丸が発射される。
「!」
避けきれない…そう思った瞬間。
「アイススラッシャー!!」
後ろを振り向く。 …そこにはドクロ型のロボットと、アイスマンの姿。
「アイスマン!!」
「ロックさん、ここはボクに任せて早く行って下さいでありますっ!」
「せっかく水の中で待ち伏せたのにい…」
姿に似合わぬ声が発せられる。
浜辺から森の中へ。
また先へと進むと炎の壁が。止まった瞬間…周りを取り囲み始めた。
「さー、この先には行かせないよロックマン!!」
高い少年の声が聞こえる。…先ほどの声といい、聞き覚えがある。
…すると斜め背後から、今度は荒々しい、汗臭い声が響いてきた。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
奴だ。
「何だ何だあああああ今の可愛い声はああああああああああああ!」
炎の壁を突き破って現れる。
「萌えるロボットのためならばああ!!」
ファイヤーマンだ。
「例え火の中、炎の中、マグマの中あああああ!」
「わっ!」
ロックマンを担ぎ、
「どこだああああああ!!」
可愛らしい少年声のした、前方へと走っていく。これは重症だ。
「何だああああ!?」
また待っていたのはドクロ型のロボット。
思わずロックマンを放り出す。
「た、助かったよファイヤーマン!」
先へと進むと…
爆弾が左右から現れ…衝突、爆発。
「てやんでぇ!ワイリー製にもハジケた奴がいんじゃねえか!!」
右からはボンバーマンの声。
「お前っ!!」
左からはまたもドクロ型のロボットの声。
「グズグズしてねーで先いけロックマン!」
右から来たのはボンバーマンのハイパーボム。
そして左から来た爆弾の形状もロックマンは知っていた。
…ロックマンは確信する。
ひた走る。森から、崖へ。
「そこまでだ、止まれ止まれええ!」
「オウ、こっから先は通せねえなあ!」
低い男らしい声が二つ。またドクロ型のロボットだ。
「フラッシュマンにウッドマンか!!」
そう。彼らはワイリーナンバーズ。
前回の戦いで敗れたのを、共通したドクロ型のボディでワイリーが復活させたのだろう。
-
「タイムストッ…」
「そうはさせないよ?」
エレキマン。
「リーフシールド!!」
「そんなの切っちゃうッス!」
カットマン。
二人の助けをもらい、更に先へ。
崖をラッシュの助けもあり順調に登った…そこには。
「残念だが落ちてもらおうかあああ!」
竜巻を発生させるはエアーマン。
「おらっしゃあああああああ!!」
野太い声。ガッツマンだ。
岩をエアーマンとロックマンの間に配置、風避けとする。
風を避けたロックマンは岩を登り、エアーマンごと飛び越える。
「有難う!」
「ガッツ、ガッツ、ロックマン!」
敵も必死、仲間のみんなも必死。
ここで自分が倒れるわけにはいかない。
「でやぁあ!!」
メタルブレードが飛んできた。
「ロック、危ないっ!!」
ロックの前に現れ、超合金の歯車を箒で弾く赤いワンピース。
「ロールちゃん!」
「メタルマンは私が倒すから!ロックはこの先に行って!研究所はもうすぐそこよ!」
至近距離で向ける笑顔。
「…うん!」
そして彼は走り出す。
目を閉じ、箒を振り下ろし、地を砕く。
「………」
振り上げ、メタルマンに向かって突きつける。
「来なさいっ」
最後に待ち受けるのは勿論この男。
「よう、待ってたぜっ!」
着地、ドクロの体をぐるりと回転させる。
脚にブレーキをかけ、眉を寄せ、バスターを構える。
「クイックマン」
…戦いのときだ。
「また、お前と戦えるなんて夢のようだ…」
「そんな体で戦っても、君は満足なのかい」
クイックマンはやれやれ、と息をつく。
「以前以上のスピードに耐久力に攻撃力。
…お前と思う存分戦える体なら、なんだっていいんだよ!」
そして研究所のバルコニーからその様子を見る影。…ブレイクマン。
「そろそろ俺も準備か」
-
再び現れたクイックマンとの決着をつけ、ワイリーの研究所へ。
「水の中での戦いか…」
「侵入、ヨクナイカメ!」
いつぞやのように、水中で大量のメカと戦い、
「ぶも、ぶもももももも!ぶも!」
「イエローデビル!!」
復活した黄色い悪魔と戦い、
「よう、」
「オリジナル!」
「兄弟が一気に3人も増えた気分は」
「「「どーーだい!」」」
3人のコピーロックマンとの対決。
だがそのうちの2人はホログラフだった。
「ぐるるるるー!今度こそやっつけるよロックマン!」
タップマン。
「ウッス!」
ハードマン。
「お前の体は、どうして思うとおりに動かない!」
マグネットマン。
「スパーーークショォオオック!」
スパークマン。
「先日は不覚を取ったが…二度も我が刃避けられると思うな」
シャドーマン。
「シャァァァ…歓迎するぜぇ」
スネークマン。
「串刺しにしてくれるわ!!」
ニードルマン。
「ガンマにはもう8つのエネルギーは送られた…お前には何も出来ないのさ」
ジェミニマン。
8人のロボットを倒し、いよいよ彼はワイリーの元へと向かう…
だがやはりまだ戦っていない相手がいる。
大量のスクラップに埋もれた部屋で彼は現れる。
「ブレイクマン!」
赤いバイザーのロボット、ブレイクマンは会うなり
その顔面パーツを変化させる。
「今回は悪いが本気でお前を止めさせてもらうぞ」
バイザーの中心に黄色い点が一つ。赤いフェイスマスクで全身全てを覆い…
彼のバスターが輝き始める。
「容赦なく行くぞロックマン」
小さく跳びバスターを放つ。
大きめのバスターが二発、ロックマンに向かい飛んでくる。
「うっ!」
回避。
「どうした!」
連射に入る。
「待ってくれ!」
それを飛び越えてバスターで一発。
「僕の話を聞いてくれ、ブレイクマン…」
「…ライトのロボットと話すことなど何もないな」
その言葉尻に篭った力。
それは彼の言葉とは逆に、ロックマンにそれを聞くよう決めさせた。
「…君は一体何者なんだい」
バスターを下ろす。
ブレイクマンはあらかじめ用意されていた定型の答えを話す。
「俺はお前を元にして作られた戦闘用ロボットだ」
その言葉では満足しない。
「どうやって」
ブレイクマンのバスターが頬を掠める。
「…そんなこと俺が知ったことか」
「…………じゃあ!」
-
ロックマンはバスターをブレイクマンのバイザーめがけ放つ。
「あの口笛は一体何なんだよ!」
バイザーにヒビが入る。
「……」
バスターを膝、肩に向かい放ち続ける。
…一瞬の間をおいて。
「ライト博士に聞いてみたんだ 妙な口笛を吹くロボットがいるって」
「ワイリー博士が気に入ったフレーズだってだけさ!」
「そのマフラー、そのバイザーの下のサングラス、その赤いボディ!
そのバスター!」
ブレイクマンのバスターをロックバスターで弾く。
「もう…解っているんだよ」
「……あの日、僕が改造されたあの日、テーブルの上にあった
戦闘用ロボットのセットは、君のスペアだったこと位!!」
ブレイクマンが床に転がるスクラップに向かいバスターを放つ。
「……全て知ってて言ってたのか 意地の悪い………」
「…意地の悪い弟だ」
白状した。
「僕が今使っているロックバスター、それにこのボディ。
…全部、君が持っていたものの流用なんだ この動力炉もね…。」
「…何があったんだい ブレイクマン。 …いや
ドクターライトナンバーズ・000番…『ブルース』」
脳裏によぎる光景。
博士の笑顔。
頭を撫でるしわくちゃの手。
窓の外の原っぱ。
博士が食べるおいしそうなハンバーグ。
置かれたエネルギー缶に持った不満。
エネルギー缶を頑張って飲んでみせようとする博士。
それを止める自分。
一生懸命に見せられた弟達の設計図。
いつか実現させたいその夢。
ラジオで聴いたメロディ。
そのラジオをにぎわせる物騒なニュース。
関係ない、という言葉。
見てしまったグシャグシャの設計図。
大きく真っ赤な×の字。
表題にあった「戦闘用」の文字。
話しても向けられなかった博士の顔。
心臓の痛み。
薄れ行く意識。
縛られた体、
向けられたアーム。
背後のスクラップ。
「…ハッ、何でもねえよ」
ブルースは腕を持ち上げバスターを構える。
「……話してくれないのかい」
バスターを片手で支え構える。
-
「お前はちょっと頑張りすぎたんだよ『ロック』
…お前達はどう思う?失敗作君たちよ」
そのエネルギーの高まりに呼応するように、スクラップが動き始める。
「!?」
「あぁあ、あああ」
立ち上がる。
「うぅうう、うううう」
よろける。
「うげえええええ」
崩れる。
目の飛び出した、スクラップ達。
繋がり、合わさり、人型ロボットの形を形成…同じスクラップをかき集め、投げ始める。
「コレが…人間のすることさ。」
「ああああああ」
力なく投げ始める。
「わいりーさま」
ロックマンに向かい突進しようとするが途中で崩れる。
「はかせのため」
爆発する。
「ろっく、たおす」
ひたすらジャンクを投げ続ける
「あおいの、たおす」
死体を投げ続ける。
「ああああああああああああ」
壊れた声だけを出す。
「…」
目を背けるロックマン。
「気持ち悪いだろ? …見てられないだろ?」
「それでいい」
「コレが…『戦闘用』の真実さ」
彼のバスター…『ブルースストライク』が彼の腕へ向け火を吹いた。
-
「最後だワイリー …タップスピン!!」
巨大なガンマの腕から作業台リフトへと飛び乗り、そこからガンマの頭へ
タップマンから得た特殊武器を発動。
高速回転を開始。頭脳部分からコックピット後部、首、胸までを抉り、外へと出、回転を止める。
「…な、何でじゃあああああ!?」
ガンマが崩壊。搭乗席からワイリーが投げ出される。
「す、すまなかった!ワシが悪かったーーーー!」
土下座で謝るワイリー。
…もうロックマンは知らんぷりを決め込んでいた。
だがそこに…
「…な、し…しまったぁ!!」
ガンマが崩壊したことで研究所自体が崩れ始めた。
「どうすれば…」
瓦礫が落下してくる。
「わ、わああああああ!?」
ワイリーの頭にも。
「ぐえ!!」
「っ………!!」
そしてロックマンにも。
脳天に瓦礫が落下、強烈なショックで意識を失う。
「うっ……あぁ… …ああ…」
そのまま瓦礫の下敷きに。
こうしてロックマンとワイリーは共に研究所の下敷きに……
いや。それを許さない者が一人いた。
「ロックマン、大丈夫か!!」
瓦礫を破壊。救出する。だが……
「Drワイリーは… ダメだ、間に合わない!!」
ライトのことは許せない。許す気もない。
…だが、弟達になんら罪はない。
だが彼は結局、ロックマンの意思に敗れた。
スクラップになっても、いずれ滅びる運命にあっても
それでも戦いたい、守りたい者達がいる…ということ。
…ならば、その様子を遠くから見守ろうと決めたのだ。
「ロック、ロックーーーー!!」
ロールちゃんの声。
…目を開ける。
ライト博士が喜ぶ。
「…おお、ロック、目覚めたか!!」
目を開ける。
「…はか…せ…?」
そして6人の弟達の歓喜の声。
…嬉しそうだ。…こんなにも自分は恵まれている。
そして、それを作ったライト博士が…あんなことをするはずがない。
ブルースとも、きっと…。
「しかし、一体誰がお前を助けたというんじゃ……?」
「…さぁ……。」
すると、口笛が辺りに鳴り響く。
「ん…あれは…?」
「!!」
「誰の口笛かしら……」
ロックマンは走り出した。…その口笛の奏でられる方向へ。
息を切らして走る。走り続ける…。ただ一言、有難うを言うために。
…そして、いつか帰って来るように彼に言うために。
ロックは走り続ける。しかし……
口笛は、いつしか止んでいた。彼はもう近くには居ないのだろう。
でも、いつかきっと会える。 …自分が守り通した、自分の色の空を、
ロックマンはただ見上げるのだった。
…木陰のUFOに気付くことなく。
そして、そのUFOに搭載されていた…ガンマの中に納まっていた8つの星のエネルギーがいずれ引き起こす事態を、何も知ることなく。
-
軌道エレベーター最上階にて…
宇宙空間へ浮かぶエリアXの残骸を見つめる3人のレプリロイドの姿が。
「……………まさか」
ハルピュイアが唇をかみ締める。
「ゼロの奴、やってくれたなぁ………こりゃ大事だ」
ファーブニル。
レヴィアタンはと言えば、ここで死を迎えた金髪の女性のことを思っているのだった。
…彼女の母親的存在であり、彼女の姉のような立場でもある…エイリアのことを。
「…ゼロ……か」
ハルピュイアは再戦を決意する。
だが…彼らにもコピーエックスへの疑問がなかった訳ではない。
「……取り敢えずこの事は表沙汰にはするな」
「勿論よ。エックス様が死んだなんて言えるわけないじゃない」
「レジスタンスも随分やってくれるぜ、ったく…。」
「……奴らの考えも一つあるが……甘すぎる…。」
そこに、通信が入る。
「何だ」
ガネシャリフから得たデータの解析が進んだとのこと。
「よし…今行く。」
ネオアルカディア・聖域内の神殿にて。
「…どういう情報が得られた」
「はーい。これなんですけどー…見てもらえますかー?」
呼び出したのはパレット。
「…………。」
まずはガネシャリフの目線で捉えた視界の映像。
「あん?何だ…この、【ΣV】って文字…」
「途切れているようだな」
「…何の意味かしら」
続いて映し出されたのは、ガネシャリフから得られた、羅列された情報の文字列。
「Dr.W LAST No.【No∞ ZERO】…?」
「…お、オイオイ…コレやべえんじゃねえのか」
青き英雄エックス様の元、人類の生存圏再生と
平和を脅かすイレギュラーから人々を守るため、粉骨砕身し励むこと……。
目の前のその目標に突き進むだけだった彼らに、その日変化が見られた。
「……レヴィアタン、ファーブニル」
「指図すんなよピュンパぁ」
「誰がピュンパだ」
「えらそうな口利かれるのは嫌だけど、何となくアナタの言おうとすること解るわね」
「皮肉にも、エックス様がいないことで、俺達の権限は増えたはずだ」
机を叩く。
「………奴について、ネオアルカディアの隅々を調べて、情報を集めるんだ。
そして、今までの何倍にもましてゼロ撃破へ向け腕を磨くこと!」
「へっ!」
「言われなくても、よ」
そしてそんな彼らをよそに…
その日、一人の男がゼロなきレジスタンスベース跡へと帰ったのだった。
「シエルさん ただいま戻りました…お久しぶりですね」
「……あなたは…!」
-
今日は俺の誕生日でした
というわけで擬人化竜達からプレゼントをry
ルルカ「バ…っ! 今日はお前の誕生日だろうがっ!!」
http://imepita.jp/20090508/852760
ガノ「ダークお兄ちゃんお誕生日おめ〜w わたしの誕生日は倍返しでお願いね?」
http://imepita.jp/20090508/852990
ナッチ「これ…、サイズ合うかどうかわからないけど…」
http://imepita.jp/20090508/853240
バサル「おっおおっお誕生日おおおおおめでtr△めるぽξ・∀・)☆@くぁwせry!!///」
http://imepita.jp/20090508/853480
おまけ、ルルカに余計な事を言ってしまったが為に…(未完成)
http://imepita.jp/20090508/853780
-
乾き、ひび割れた地面……赤々と燃える夕日。
薄茶色のぼろ切れをマントにして砂嵐の中を歩くレプリロイドが一人。
一歩、また一歩と歩き続ける。
彼は体力を減らさぬよう走ることなく、ゆっくりと歩みを続ける。風避けになるような場所は…ないから。
何故歩かねばならないのか?彼を追うもの達が彼を追っているかも知れないから。
風が止む。
…彼の背後から、青き集団…ネオアルカディアがやってくる。
その足音を聞き…彼は歩みを止める。
口を覆う布を外す。
マントを投げ捨てる。
…傷だらけの顔で振り返り、きつく睨みつける。
最強のレプリロイドはここに…しっかりと生きていた。
ネオアルカディアの君主が倒された初夏のあの日から一年と少しが過ぎ、今の季節は秋。
その間、誰にも頼らず、何処にも立ち寄ることなく…
彼はずっと、ネオアルカディアに見つかっては戦い、逃げ続ける逃亡生活を送っていた。
彼の栄養源は日光の他は敵から奪ったエネルゲン水晶や、敵から奪った動力パーツのみ。
戦争時点までの力を取り戻した彼に与えられた1年以上もの過酷な戦いは、彼にとって更なる鍛錬の日々となった。
少ない体力で、強力な一撃を繰り出す。
エネルギーを減らして長い距離を走り、短い休息で体力を最低ラインまで取り戻す。
「…しつこい奴だ」
連なったその頭をチャージショットのエネルギー弾で串刺しするように貫き、
彼は逃げ始める。
前方に現れたパンテオンを気付く暇さえ与えず斬る。
大声をあげて飛び立つ鳥メカニロイドを地上付近で両断。
サボテン型のメカニロイドは上下に斬り、素早く倒す。
そして真っ直ぐに駆け抜ける。大きく跳ぶ。
見つからないよう、浪費しないよう、時間をかけぬよう。
最小限のエネルギーで戦うことを心がけた結果、彼は一撃で敵を倒すよう第一に心がけるようになった。
「…懐かしい敵だ」
懐かしくも新しい顔ぶれの敵が現れる。
ゴーレムの強化版、ゴーレム・タイプE。
レーザーの発射位置を予測し回避、頭へ着実にチャージショットを当て続ける。
撃破。
少し進んでもう一体。これも撃破。
また走る。
ひたすら走る。
段差、谷すら構わずに跳び続ける。
残された体力は僅か。全力で戦えるほどのエネルギーは3ヶ月前にとうに尽きている。
前方からパンテオン。だが彼の意識はそこへは向かっていない。
「………誰だ、そこにいるのは」
巨大なハサミが飛んでくる。それを飛び越す。
パンテオンはハサミの餌食になる。
-
「逃がしてはくれないか」
背後の岩壁を粉々に粉砕し、現れる。
追跡軍の切り札、巨大メカニロイド…『メガ・スコルピア』だ。
100年前、ある組織が使っていたメカニロイドの兄弟機である。
その腕のハサミでバスターはガードする。
ハサミのガードがない所を見計らいチャージショットを放つ。
尾がゼロ目掛けて地面に突き刺さり、その周囲を粉砕する。
そのタイミングでゼロはスコルピアの頭へと近づき、セイバーで一撃、同時に戻る。
ハサミが飛んでくる。これは先ほどと同じように大きく跳んで回避。
セイバーを頭へと直撃させる。戻ってきたところをまた跳び…
バスターを一発。ハサミで防がれる。その間にチャージ。
ハサミによる防御が解けた瞬間…トドメの一発、チャージショット。
尾が力なく落ちる、動きが止まる、そして爆発。
「………」
気は抜かない。…爆発に紛れて何が来るか解らない。
…だがそのまま爆発。辺りに静寂が戻る。
…5秒。 …何も起こらない。やっと彼は安堵する。
…だが今度は、脚が動かない。
まぶたが重くなる。体が重くなる。
「……さすがに、限界…か」
そして…彼は倒れた。
風が彼の姿を消していく。 …また強い風が吹き始める。
「……居ましたね」
すっと、スムーズな動きで地面に柔らかく落下する4つの脚。
……蘇ったかつての敵…『アステファルコンR』だ。
そして…それに乗るは四天王の一人、ハルピュイア。
「ご苦労」
…あれから1年以上。彼らはネオアルカディアを任され、
色々なことを調べて回った。
そしてその中に、彼らが仕えていた、ゼロが倒した『エックス様』についてのことも知った。
だが、本物であろうとなかろうと。 彼が仕えるべき相手が増えただけである。
…もっとも、その二人ともが今は亡き存在なのだが。
主君の仇が目の前に倒れている。
「…見つけたぞ、ゼロ」
アステファルコンRが爪で地面を踏みしめる。
…ハルピュイアにとっても、かつて自分を負かした相手。憎き敵。
「…さて。このまま殺してしまうか」
「…それとも………」
-
「それでは、作戦の説明を終わらせたいと思います。
エックスのいない今がチャンス!
皆さん、それぞれの任務に励むように!」
「おおおーーーー!『明るい未来をーーーー!!』」
『明るい未来を』。
レジスタンスベースの合言葉となった言葉。
提唱したのはシエル。
だが今、そうして作戦会議を執り仕切ったのは…
「…エルピス。本当にそれで大丈夫? …あまり、やり過ぎないでね」
綺麗に整備され、最新設備の整った新レジスタンスベース司令室の中心に立つは
紫の派手な服に身を包み、片目の隠れた帽子つきヘッドパーツをつけた…
くるりくるりと巻いた長い金髪の、華奢な長身レプリロイド…『エルピス』。
…男性である。
「ええ、解っていますともシエルさん!」
声のトーンが上がる。
「あくまで、シエルさんの研究が完成するまでの時間稼ぎ…ですよね?」
爽やかな笑顔を向ける。
「……。」
シエルは怪訝な表情で見つめる。
「…それなら、いいんだけど」
「…まぁけれどそうですね。
わかってほしいのです。我々は十分に力をつけました 英雄に頼っているしか出来なかった頃とは違うんですよ」
エルピスというこの男は、自分の任務中に現れ、エックスの首を取ったとされる
伝説のレプリロイドをライバル視していた。
「…しかし、本当に彼が力を貸していたのですか?
ネオアルカディアのトップの…あのエックスの親友なのでしょう
今どこで何をしているやら。或いはそんな者が本物のゼロだったのやら…解ったものでは。」
シエルは真っ直ぐな目で彼を見つめて言う。
「………そうかもしれない。けれどね、彼は生きているし、私達に力も貸してくれている。」
「……シエルさん」
「私にとっては、あの人こそがゼロなのよ。」
…彼が戻ってきたら彼にその言葉を言おう。彼女はそう思っていた。
「…………ま、…まあそういうことでしたら私はそれ以上は言いませんよ
私から何か言ってもアナタの機嫌を損ねるだけだ」
機嫌を悪くしているのは本当はどちらなのだろう。
「うん…ありがとうね、エルピス」
彼女は全く気付いていない。
「………しかし、あれから1年以上しますしねぇ」
指をとんとんと鳴らす。
気まずい空気が流れた司令室に……叫ぶような大声が響き渡る。
「おおおおおおおおおおおおおおい!!
おおおおおおおおおおおおおい!!
みんなーーーーー!!みんな聞いてくれーーーーーーーーーーーーー!」
一人のレジスタンスがどたどたと走ってくる。
「ゼロさんが!! ゼロさんが表で倒れてるぞおおおおお!」
「!?」
一同が振り返る。
ゼロの帰りを待っていた者、ゼロの帰りを絶望視していた者、ゼロを話でしか知らなく、見てみたいと思っていた者。
「ゼロが!? …うん、今行く!」
シエルが走り出す。
「………」
エルピスが無言になる。
「…エルピス司令?」
オペレーターの声。
「…ああ、ははは…お気になさらず。感激のあまり少し言葉が出なく、ね…」
ならば拳は作らない。
「ゼロさん…か」
-
「ん…」
まぶたが動く。
「………。」
首が動く。
「!!」
カバーが取り外される。
「…ん!?」
ゼロが起き上がった。
「ゼロ…!」
不安に満ちていたシエルの表情が崩れる。
「………おお、ゼロ!! 本当にお前は無茶をする…!…心配していたんだぞ」
セルヴォも。
「……お前達… …ここは一体」
「ここは新しいレジスタンスベースよ。新しいメンバーも沢山来てくれた。
…みんな、あなたのことを待っていたのよ…… 本当に…よく帰って来たわ…。 …おかえり、ゼロ」
肝心のゼロはぼやっとしている。
「…ああ。」
「目覚めたばかりだ…もう少し寝ていた方がいい。私達は邪魔になるから下がってることにするよ。シエル、来なさい」
「ええ。 …あ、後で私達の部屋に寄って行ってね」
未だ呆けているゼロを尻目に。
「…………」
起き上がる。
「わーーーー!ゼローーーー!おかえりなさーい!」
アルエット。
「おお、新入りかね?」
アンドリューは残念ながら忘れていた。
「やあ、君がゼロかい?思っていたイメージと違うんだね もっとガタイのいいレプリロイドかと思ってたよ」
新しく入ったレジスタンス、イロンデル。
「あ、ゼロさんですね!はじめまして!わたくしぺロケと申します!」
眼鏡の少年レプリロイド。
「あらー、アンタよく生きてたわねー!」
恰幅のいいおばさんレプリロイド、ロシニョル。
「…………ここは本当にレジスタンスベース…のようだな」
司令室へ向かう。
「フフッ…」
「…」
セルヴォの部屋へ直行。
「!? ま、待ってください、挨拶くらいはさせてくださいよゼロさん」
エルピスが呼び止める。
「…すまない」
「レジスタンスを救っていただいた伝説の英雄ゼロさん、お話は聞いていますよ。
この度、レジスタンス指揮官の任を受けました、エルピスと申します。以後、お見知りおきを。
共にネオアルカディアを倒しましょう。」
握手を求める。
だがゼロはこれに応じない。
「倒して終わりなら… シエルも悩まないだろうな。」
すたすたと歩く。
「…………ははは… ならばアナタならどうするっていうんだ」
-
セルヴォの部屋。まずこれがなくては始まらない。
ゼットセイバーとバスターショットを渡される。
「ほれ、直しておいたぞ」
「すまない」
セイバーを受け取り起動させる。
「…しかし、以前と形状が変わった気がするね」
「確か…コピーエックスとの戦いの最中に変化したようでな」
真っ直ぐな直線の刃から、広がった刃へと。
そのセイバーは個性的な形状へと変化していた。
「そして、シールドブーメランも直しておいたが…
トリプルロッドはダメだな。私が改造を加えておいたよ 『チェーンロッド』と名づけた」
「…ほう」
上へ伸ばすと鎖が伸びる。そのまま天井に刺さり…
「あ」
セルヴォが細かなことを気にする中、鎖をよじ登り、ぶらぶらとターザンごっこをしてみる。
「…なるほど。耐久性は確かだ」
刃を外し、しまう。
「すまないな」
続いてシエルの部屋。…何か気配がする。
「…ん?」
見ると、シエルが向かっているデスクトップ式コンピュータに直結した
カプセルの中に何かが浮いている。
気配の正体…丸い球体。
「…アレは……何だ」
「あ。」
シエルが気付き、振り向く。
「…ゼロ。改めておかえりなさい。…どう?新しいレジスタンスベースは」
「慣れるまで時間がかかりそうだ。よくこんな所を見つけたものだ
…それはそうと。」
「ああ。これはね 前に言った、エネルギー問題を解消するための研究に使っている子なの」
「子。」
よく見ると中には閉じられた目が。
「……サイバーエルフか」
「ええ。…ベビーエルフ、って呼ばれているらしいの。エルピスが見つけたみたいでね」
「…そうか」
「この子からは特殊な反応があるみたいで、
それを使えば…もしかしたら、新しいエネルギーを作り出せるかもしれないのよ。
…痛いこと、辛いことはしないようにしているわ」
「なら安心だ」
そして話は切り替わる。
「…エルピスのことなんだけどね。」
ゼロの表情が変わる。
「あの人、悪い人じゃないのよ?信じてあげて。
…少し、平和を求めるあまり先走ってしまうところはあるんだけど」
「…そうだろうな」
「彼を支えてあげて。お願いだから…」
「ああ…」
そんな所にベース内の放送が入る。
「ゼロさん、ゼロさん 至急司令室までお越しください」
すぐさま向かう。
「…なんだ」
「作戦の実行に移ります。 ゼロさんにも何かお手伝いしていただきたいのです、が…
そうですね」
ゼロの実力はある程度わかっている。
エルピスは少し意地悪に、危険なミッションを彼に差し出すのだった。
「ではこのミッションに向かっていただけますか?」
-
ついた場所は南極。
「………敵の基地破壊、ということらしいが」
オペレーターからの説明。
「基地内のコンピュータを破壊してください、全部で5機存在し
冷却機能も兼ねているため、破壊することで基地内の温度が上がるので解りやすいかと」
「…了解した」
メカニロイドの反応がある。水面上に居ては狙われるだけ。
水中に潜り、水中の魚型メカニロイドを回転斬りで倒しながら先へ進む。
「…基地は近いか」
大きな柱を登り、空中砲台メカニロイドを斬りながら落下。基地内へ潜入する。
「…」
ゼロは逃亡生活の間に、ある力に目覚めていた。
それは、先ほど挙げたように『ゆっくり地道に進み』、『敵を素早く一撃で倒すよう心がけ』
『エネルギーを無駄にしない戦い方』をした結果、
発現した一つの能力。
「……『エナジーフォーム』」
ゼロのボディカラーが黄色に変化する。
メカニロイドをいつも以上の攻撃力でスパッと一撃で刻み、足を運んでいく。
そう…これはゼロの覚醒。
自らの戦い方に合ったようにその能力をある方向へ伸ばしていく…
その形態一つ一つは『フォーム』と呼ばれる。
その内のひとつを彼は得ていたのだ。
エナジーフォームのゼロは歩みが遅い。それ故、
滑る氷の上では安全に動け、且つその高い攻撃力で敵を着実に仕留めることが可能。
少ないエネルギーをノーマルフォーム以上に多く摂取することが出来るが…ダメージを負わないこの戦いでは意味はなかろう。
パイプの上を走る砲台を斬り破壊、
氷を押すメカニロイドも破壊…そしてその奥にあるコンピュータを斬る。
「1機目を破壊した」
水中へ潜り魚レプリロイドを始末し
「2機目」
「この棟にあるコンピュータはその2機です、残りの2機を破壊するため、
隣の棟に移ってください」
指示に従い、敵を倒して渡り廊下へ。
窪んだその通路で……何かが現れる。
「種類は増えたようだな」
ゴーレム・タイプI。
ツララを生成し、撃ち出して来る。
これを回避してチャージ斬りを2回…あっという間に沈んだ。
「だが以前は一発だったはず……どうしたものだ」
隣の棟へ…
そこにはパンテオン兵が大量に配備されている。
-
ここもエナジーフォームのまま、高い攻撃力を活かしパンテオンを切り刻む。
機動力が少ないのが難点だが、トラップを抜けるには十分な速度。
大きく跳んで飛び越し、敵を倒してまた飛び越える。
「3機目」
登る、降りるといった行程を繰り返す。
「4機目」
後は基地を管理するミュートスレプリロイドを破壊するのみ。
「ボファー!? 暑い、体が暑いボファー……!!」
巨大な白熊型レプリロイドが暑がっている。…室温5度。
「オデの基地に何しただゼロー!」
「お前は…属性から言ってレヴィアタンの部下か」
「んだど!レヴィアタンざまに任せられだだ!ボファー…
お前、この『ボーラー・ガムベアズ』が氷漬けにしてやるど!」
正しくは『ポーラー・カムベアス』との戦いの始まりである。
どすんどすんと移動してくる。
これは多分、見た目と打って変わって素早い敵…という可能性はなさそうだ。
壁を蹴り、飛び越し背中を斬りつける。
「ボファー!?」
勿論手持ちのアイスチップは通用しない。
氷の柱を避け、切り刻む。
だが、このセイバーは一撃の攻撃力は高いものの、連続して斬るのは向かない。
氷の弾をよけて一撃。更に向かってきたところをチャージショットで一撃。
「ボファーー!ごどー、ごどー!!(このー、このー!!)」
大きな氷の柱を作り出し、上下に叩き砕く。氷の破片が飛んでくるもこれをかわす。
「さぁ、行くぞ…」
壁を蹴り…大きく跳び、大きくセイバーを振りかぶり一撃。
「ボファーーーー!?」
大きな体が真っ二つに切れる。
「……………!」
司令室にいたエルピスも思わずその様子を見て唖然とする。
「ボファーーーー!? お、オデが…こんな奴に……!? ボファーーーーー!!」
むふーに続きボファー。レヴィアタンの部下は変わった口調の者が多いのだった。
-
「……………」
あまりのゼロの強さ…沈黙するエルピス。
ゼロの帰還。
「…ははは。素晴らしい実力ですね… ご苦労様ですゼロさん」
「ああ」
ミッションはその翌日、また言い渡されることとなる。
「…ゼロさん、今日のミッションは物資の強奪です。
ネオアルカディアの貨物列車に潜入し、物資を奪ってきて頂きます」
さらさらと簡単な説明だけをし、オペレーターはゼロを転送する。
「3………2………1…… 転送!」
しかし違和感を覚える。 …コンピュータが何かおかしい。
「…………やけに動作が重いような」
着いた先は列車の上。主に貨物の積まれている車両まで一気に走る。
走るためにはエナジーフォームでは向かない。ノーマルフォームに切り替える。
いつぞやのようにタイヤ型メカニロイドを投下してくる運搬メカニロイドを回転斬りで対処。
先へと進んでいく。
ドップラー効果でサイレンの音が前から後ろへ高低をつけ流れていく。
1,2,3回…そして…
「!」
列車ギリギリのサイズのゲートが通過。列車の屋根上に居たパンテオンはゲートに激突、粉砕される。
先へとまたひた走る。
列車内へ落下、ヤドカリ型メカニロイドを倒し、更に先の車両へ向かい進んでいく。
パンテオンは一気にチャージショットで撃退。
そしてたどり着いた貨物車両。この先、ゲートは存在しないようだ。
「…来るか」
メカニロイドの影。
「巨大な貨物コンテナの転送までは時間がかかります、
荷物を移されないように運搬メカニロイドを破壊してください!」
戦闘開始。
前から後ろから上から。飛んでくる運搬メカニロイドを回転斬りで次々斬り刻んでいく。
「大分かかりそうか」
「ええ…1分ほど」
際限なくやってくるメカニロイド達。チャージショットでは撃退は難しい。
ひたすら斬り続ける。
何体も斬り続け…
「転送準備完了いたしました、有難う御座います!」
敵の方も止んだ模様。転送ポイントである先頭車両へと進んでいく。
二つの路線が並び…列車がやってくる。同じく先頭にはメカニロイドが乗っている。
「…ミュートスメカニロイドか」
爪の目立つ、黒い豹。
「ここぁハルピュイア様の部下、『パンター・フラクロス』様の領域
入ってくるとは活きのいいレジスタンスだ 可愛がってやるぜぇ!」
「いくぜぇ!」
戦いが始まる。
「らぁああ!」
まず爪から発した電撃を弾にして放つ。
これを二つまとめて飛び越えてチャージショット。
「うぉああ!?」
爪からブーメラン軌道の衝撃波を放つ。
これもまとめて飛び越えてフラクロスの背後へ。
払う、袈裟斬り、振り下ろす三段斬り。
「うぬううっ…てんめぇえ!!」
「…」
ゼロのいた車両へジャンプ、空中から爪の衝撃波を放つ。これは戻らず別々の方向へ放たれる。
間を縫って回避、チャージショットで攻撃。
「うがぁああああ!!」
そろそろ追い詰めてきたようだ。
「頭くる奴だぁ!!」
跳びあがり、ゼロに向かい蹴る。100年前のドラグーンのように。
これを寸前で回避、チャージ斬りをフラクロスに放つ。
「ぉあああああああああああああああ!!」
-
フラクロスが離れていく。
やはりミュートスレプリロイド程度ではゼロの敵でもない。
「その程度か」
「………ちっ」
その瞬間…
「…!? た、大変です!コンピュータが何者かにハッキングを受けています!!
…ど、どうすれば…!?」
レジスタンスベースにてオペレーターが騒ぎ始める。
「こんなこともあろうとなぁ…アステファルコン様はレジスタンスベースへお前を送り届ける時、
装置を取り付けていたのさぁああ!!」
「……俺をレジスタンスベースに送ったのは奴だったか」
ゼロとフラクロスは転送…レジスタンスベースへ。
「ちっ…」
「ゼロ!?…まさか!!」
「逃げろシエル!」
「何てことだ…」
エルピスが頭を抱える。シエルがレジスタンスを避難させ始める。
フラクロスはベースを駆け回り、レジスタンスたちを追い続ける。
一箇所へと追い込もうとしている。ゼロはそれを追う。
…そして1Fへ…外へ。
レジスタンスベースは崖の上にある。…コンテナ置き場からは地は続いていない。
シエルを含めたレジスタンスたちは崖っぷちへと追い込まれたのだ。
「オラオラあああああ!!
コイツらの命が惜しければ俺に従えゼロおおお!」
息の上がるフラクロス。
「…………」
黙るしかない。
「オラぁあ!」
尾からの電撃がゼロへと打ち込まれる。
「…!!」
ゼロの体が痺れる。
「ハーーーーッハッハァァ!!」
「…!」
そのまま壁に叩きつける。
「エックス様を前にしておきながら、
レジスタンスの救出を優先して逃げ去った臆病者だと聞いているぞ!?
人質取られたらすぐそれだ!ザマぁねえな英雄さんよ!」
エックスがいなくなった、というニュースはネオアルカディアには流れていないのだ。
…どちらのエックスにしても。
「そんな約束、守ると思ったか?バーーーーーカ!」
何も知らぬフラクロスが口を広げ…レーザー砲を構える。
「ハルピュイア様が目ぇつけるまでもねえ!」
ターゲットは…シエル。
「さらばだ、ゼロおおおお!」
「!!」
その時…
「んな!?」
ゼロの色が変化。…エナジーフォームへ。
「のああああああああああああああ!」
フラクロスの体が吹き飛ぶ。
「…ゼロ。」
月夜をバックにチェーンロッドを舞わせるゼロ。
「調子に乗りすぎたようだな。」
フラクロスが四つんばいになり、体を起こそうとし始める、が。
「て、めぇ…!?」
先端を投げつけ…突き刺す。
「ごああああああああああああああああああああ!!!!」
貫通…破壊。
フラクロスは月夜のレジスタンスベースで散っていったのだった。
-
「…まさかレジスタンスベースがハルピュイアの奴に狙われていたとは…。」
エルピスが爪を噛む。
「俺が追ってきたゴーレムは雷属性に改造されたタイプだった。
ハルピュイアの手の者達だろうとは思っていたがな…」
そこにセルヴォが現れる。
「おお、いたかゼロ! もうミッションへ行ってやしないかと思っていた所だ」
「…セルヴォか。どうした」
彼がゼロに手渡すは黄色のチップ。
「……それは…」
「サンダーチップだ。フラクロスを回収してみたら見つかってね」
「……2つ目のエレメントチップ、という訳か」
氷に続き雷。二つ目の力を手に入れたゼロは
次なるミッションへ。
「…今回のミッションはパンテオン製造基地の破壊となります
工場を動かす動力炉は全部で4基 全て破壊すれば工場の動きは止まると見ています」
転送される。
パンテオンが大量に存在しているのが見てとれる。
チャージショットで貫き、工場内へと。
「何だ?」
テリーボムと呼ばれる200年前から存在するメカニロイドの亜種が飛んでくる。
バスターショット一発で簡単に吹き飛ぶ。そして壁にぶつかると…
派手な爆発を起こす。
「危険なメカニロイド…だが」
工場の破壊にも使うことが出来る。
壁をテリーボムで破壊、床を破壊、天井を破壊。
次々に進み続け…地下のパイプが張り巡らされた部屋にたどり着く。
「下に何か反応があるな」
テリーボムを誘導、ジャンプして上から叩き落とし、床を破壊。
「…何だこの敵は」
その先に待っていたのは赤いゴーレム。…ゴーレム・タイプF。
「コイツからはエレメントチップは出そうか」
「…難しいが、まずは倒してみてくれ」
バーナーで作った炎を輪にして飛ばしてくる。
これを潜り雷のチャージバスターを2発。…すぐに倒すことが出来た。
「…ここは外れか?」
とにかく複雑なこの工場内。
レールを伝ってくる敵の電撃を避けて梯子を登り、動力炉の1つ目を破壊、扉を潜り2つ目を破壊。
戻って一つ破壊、最後に足場についたトゲをテリーボムで破壊、安全にして進んだ先に…
「こんなところか」
防衛機能を破壊して4つ目も破壊。
エルピスの通信。
「…ミッション完遂、有難う御座います。
…しかしどうやら、ミュートスレプリロイドの反応がある様子。転送の妨げとなっているようです
…ゼロさん、お願いできますか」
「…ああ」
長く流れる、輝くものとそれに反射する光が正反対の位置で、円を描き飛ぶ。
そのまま空高く舞い上がり……燃え上がる。鳥の形。
輝いていたのは尾。
「我が名はファントム様の部下だった者『フェニック・マグマニオン』
不死鳥たる私が貴様の罪を燃やすため舞い降りてやった… 感謝するがいい」
戦いが始まる。
マグマニオンは構えている。その体勢からならセイバーでの一撃は回避される…そこで。
「ふん」
バスターショットを一発。
「甘いっ!!」
体を斜め後ろへずらし回避。そのまま炎を纏い突進攻撃へと移ってきた。
「やはりな」
サンダーチップの効果を発動。雷属性のチャージ斬りだ。
「おおお!?」
-
姿を消す。ワープ機能があるようだ。
「ファントムの部下は炎を使う者が多そうだな」
ハヌマシーンもそうだった。
「喋っている場合かな!?」
上からの急降下。
一歩退きチャージ斬りで対応。
「おあああああ!?」
また待機に入る。バスターにチャージ斬り。同じことを繰り返す。
「うっ…ならばこれなら!」
前、後ろ、前上方、後ろ上方。4人のマグマニオンがゼロを取り囲む。
「…そうきたか」
4方向からの一斉攻撃。
だがゼロは慌てず、自らの向いている方へ向かいチャージ斬り。
正直、分身を見破ることは出来ない。 …だがこの攻撃をマグマニオンは退くことなく耐え切ることは不可能であり、
前方に跳びながら放てば後方だった場合の攻撃を食らうこともない。
「ちっ…」
一瞬にして判断、マグマニオンの攻撃を避けたゼロ。
またも待機の姿勢に入るが…
「3度目で通用すると思うか」
バスターで一発。…だがここで。
「甘い」
マグマニオンが揺らめく。
「…!?」
炎を纏ったまま、マグマニオンが高速でゼロを追い回す。
「どういうことだ!?」
バスターも通用しない。逃げ続ける。
「追いつけませんか…ならこれならどうです!」
マグマニオンが高速化、光となってゼロを貫く。
「…!」
痛みはない。だが…
「さぁ、痛いのはこれからですよ」
マグマニオンの周囲から何かが生成される。
「あなたには自らの罪と戦ってもらいましょう」
揺らめく影が…ゼロへと突進を始める。
「ハーーッハッハッハ!100年ぶりだなゼロ!」
VAVA。
「私の剣技をもう一度ご覧に入れましょう」
アジール。
「博士の仇だ…行くぞゼロ!」
ヴァジュリーラ。
「まさかジェネラル様のみならず を貴様が殺すとは!!」
カーネル。
「…誰だ…!?」
VAVAは炎の壁を発生させる。
「なっ…」
超えたところにアジールの高速剣。
「速い…!?」
ヴァジュリーラが輪を放ちゼロを拘束しようとする。
「厄介な奴だ…」
カーネルが目の前に現れ一撃を見舞う。
「!!」
一歩退きこれを避けると今度は回転ブレードの嵐。
「やーあゼロの旦那ぁ!」
エネルギー球が地面を転がる。
「デスボール!」
ノヴァストライクがゼロに向かい突き刺さる。
「行くぞゼロ!!」
「お前…エックスか!」
上から剣が3回にわたり振り下ろされる。
「フハハハ、ゼロよ!!食らえええええええ!」
8人に囲まれた。
「これは私としても驚くべき結果… あなたの罪がこれほどまでとは」
8つの影が…一つに重なる。最後の一人が現れる。
…それは一人の少年の姿。
「やぁーゼロ!僕だよ僕。忘れたかな? アク」
斬る。
「な!?」
マグマニオンの動揺。
「誰だかは解らんが……余計なことをしてくれたな」
過去を切り捨て走る。
「…わ、私の技…が!?」
チャージ斬りを放つ。
「あああああああああっ……!!
…貴様の罪は消えない…私は、何度でも蘇る…貴様を地獄で裁くため…!!」
-
「…皆、覚えのある声だったな」
転送される。
エルピスとセルヴォが頭を悩ませている。
「…ダメージが激しいようですね…」
「うむ。少し残念だが、ゼロならきっとやってくれるさ」
「…どうした」
「マグマニオンからフレイムチップを取り出せればと思っていたのですが…
どうやらそれが出来そうにないらしいのです」
「…すまない」
取り敢えず暫くはアイスチップとサンダーチップで進むこととなりそうだ。
「…次のミッションの説明に入ります。実際に向かっていただくのは明日で結構です」
そして翌日向かったのは…デュシスの森。
「救出ミッションだそうだな」
「厳密にはレジスタンスメンバー救出より優先すべき事項がありますが…あなたならどちらもこなせるでしょう」
ベビーエルフを手に入れること。
…シエルの部屋のカプセル以外にもいたのだ。
「…クリエ?」
「ええ。アルエットが名づけてくれたらしいの」
ゼロは森の中を進む。
蜂型メカニロイドを斬り、食虫植物型メカニロイドを飛び越えて先へと進んでいく。
モグラ型も倒して更に先へ。
「遺跡の中か」
チェーンロッドを使って渡り遺跡へ近づく。
遺跡の中は入り組んでいる。
蜘蛛型メカニロイドを倒して下層へと進んでいく。
「遺跡とは言っても…まだ新しくも見えるな」
「戦争時代の封印施設ですしねぇ。…ゼロさんよりも若いのでは?」
エルピスの嫌がらせに気付かずに扉を潜る。
「………よく出来たトラップだ」
壁にある巨大な、一つ目顔の口からトゲの生えた床が伸びてきた。
「飛び越えさせも落ちさせもせずに…」
弾力のある酸の塊と、反射ビームを放つ。
「ひたすら嬲り殺すつもりか」
エナジーフォームへ変化、チャージショットを撃つ。
「…水攻め…」
部屋を水浸しにし始める。
ならば好都合。もう一発チャージショットを撃った後に
ゼロは浮力を使い一つ目の顔へと跳び…チャージ斬り。
「倒したか…」
トゲの床も破壊、そのまま落下。遺跡の先へと進むと…
「ああ、ゼロさん!ありがとうございます…
まだ自分の他にも仲間がいるんです、助けてやってください!」
レジスタンスだ。続けて…
「…すけてー……」
小さな声のSOS。
チェーンロッドを壁に突き刺すと…
「…」
引っ張るとすぐに取れた。…違う。これは壁に紛れた立方体のブロックだ。
「ああ、ありがとうございますゼロさん!」
落下したり戻ったりしているトゲつきの天井でレジスタンスを1人助ける。
「来たはいいけど、罠が作動してどうしていいか解らなくて…」
最後にトゲだらけの部屋の隅で発見。
「まさか助かるなんて思っていませんでした!」
最後の一人はどこへ…?そう思い、最深部へ。
茶色い遺跡の中、うろこのような模様をした一直線のタイルを進むと…いた。レジスタンスだ。そこにはベビーエルフも。
「あ、ああ…ああああ…」
震えている様子。
「何だ…渡さないのか、ベビーエルフを…渡せば命だけは助けてやるというのに」
-
エルピスの通信。
「ゼロさん、ベビーエルフを回収してください、さぁ!」
「仲間を助けろ、の間違いだろう」
チェーンロッドを伸ばす。
先端は床を跳ね返り…レジスタンスを脅している、背後の敵の体へと絡みつく。
「!!」
…引く。
「げぇええっ…!!」
「ぜ、ゼロさん…!助かったぁ…」
レジスタンスは速やかに逃げ出した。
「…お前の相手は俺だ」
「貴様、ファントム様の仇ゼロ…!余計なことをしやがって… 後悔させてやるよ!!」
床が崩れる。広大な下の空間へと落下………うろこ型のタイルが一つに繋がる。
それは…メカニロイド。
蛇の形だった。…彼の前に現れたそのミュートスメカニロイドと同じように。
「俺はファントム様の部下だった『ヒューレッグ・ウロボックル』!
ここは俺の独壇場だ、死んでもらおうかぁ!」
うねり出す蛇型のメカニロイド……戦いが始まる。
「しゃーはははぁ!」
ゼロが剣を構え呟く。
「……『ライズフォーム』」
白く体が変化する。…剣での近接戦闘に適したそのフォームへ。
「行くぞ」
まずは一発チャージ斬り。
敵のしなるパンチを一歩退き避け、バスターで一発。
そのまま跳ぶ相手を潜り、方向転換し着地地点を狙い攻撃。
「何!?」
ライズフォームは速いのだ。
「うっ!!」
ジャンプ、回転斬りをしながら遠ざかる。
「…くそっ…!」
手足をしまいより蛇に近い形に変形、蛇型メカニロイドの上を走る。
これをかわして…チャージショット。
「おぉあああ!」
足場が変化…階段状になる。
「20世紀のおもちゃをご覧アレ!!」
ばね型をした、飛び跳ねる爆弾を投下する。階段に沿って動き、敵に触れると爆発する仕組み。
これを斬って、メカニロイドからのレーザーもかわして階段の最上部、ウロボックルの元へ。
「テイッ!」
払う。
「ハッ!!」
袈裟切り。下へ持ってきたセイバーをそのまま…
「デアッ!!」
更に下へ持ち、上へと斬り上げる。
「のがああああああ!!」
これがライズフォームの由来であり、その最大の能力。
速さを高めるだけでなく、下から上へ切り上げるときにセイバーが鋭さを増す。
三段斬りの際上へ切り上げることでそれが作用するのだ。
「…べ、ベビーエルフを取られてさえいなけれ…ば………!!」
どうやらベビーエルフの、レプリロイドを強化する力は強いらしい。
ウロボックルは蛇型メカニロイドと連動、両方爆発に飲まれていった。
「…」
そのまま下へ落下。その場所はトゲだらけで、崩れた蛇型メカニロイドの残骸が足場となっていた。
「……ゼロ」
降りてくる一つの小さな光。
「エックスか」
「ああ。…どうやら僕も、ゆっくり眠ってばかりは居られなくなってきたよ」
「何…?」
エックスが不安そうな顔をしている。
「2人のベビーエルフ達を止めてあげてくれ。…彼女達を会わせては…危険だ。」
ベビーエルフが危険…エックスは忠告する。
「説明してもらおう」
「時間はないんだ… …ベビーエルフは、探しているんだ…母親を。
……封印された存在 『ダークエルフ』を」
「…………『ダークエルフ』?」
頷く。
「…お願いだ。彼女が目覚めるのを絶対に阻止しなくてはならない」
飛び立つ。
「彼女は、この世界で永劫眠らされるべき……禁忌の存在」
「………待て、エックス」
だが彼は姿を消した。
「ゼロ… 君に、力を授けよう。 …この力、役立てて欲しい」
「どうやら、ミュートスレプリロイドも倒したようですね
ご苦労様です …ベビーエルフはシエルさんに預かってもらうことにしましょう」
「ねーねー!新しいベビーエルフは『プリエ』って名前はどうかなぁ?」
エルピスにアルエット。 …彼らは…いや、ゼロもまだ、ベビーエルフの危険性を知らないのだ。
-
「お願いエルピス、考え直して!この作戦は危険すぎるわ!!」
司令室のエルピスに向かい訴える。
「その作戦はあまりに無謀で危険すぎる…もう少し機会を見た方がいい」
「今までどおりのゲリラ作戦でいいはずだ。シエルのエネルギー研究ももうじき完成する」
セルヴォとゼロもまた。
「うるさい!!」
エルピスが吼える。
「…… …すみません」
エルピスから別の本音が漏れる。
「…私だって… 私だって皆さんのことをこうやって考えているつもりなんだ
なのにどうして……」
エルピスの気持ちは真っ直ぐ……だが、色んなことを見落としていた。
考えてもどうしようもないことが堆積し、いつしか一つの目的のみに動いていた。
「……全軍、…作戦開始!」
通信で、持ち場についたレジスタンスたちに命令を下す。
「ネオアルカディアを倒せ!!」
「はっ!!」
足並みを揃え、全員揃っての敬礼。…そして彼らは突撃を始める。
「私も向かいます。シエルさん、私の戦いを見ていてください!」
エルピスもまた…姿を消した。
「お願い、ゼロ!エルピスを止めてあげて!」
「私からもお願いします。ゼロさん、どうか…」
「そのつもりだ」
ゼロが転送される。
…その先はネオアルカディア・市街地。
「………!」
辺りはすでに死体の山。そしてパンテオンたちがひしめいている。
「……」
解っていたことだった。
レジスタンスの生き残りを探すべく、彼は力を発動する。
ゼロの体が…青く変化する。
「『エックスフォーム』!」
町を駆け抜ける。バスターショットを乱射、パンテオンを撃ち倒していく。
チャージショットを一度放てばあらゆる敵が一撃の下に沈んでいく。
エックスフォームの能力はバスターショットの強化、連射力、攻撃力共に増加するというもの。
敵のボディに弾丸を撃ち込み蜂の巣に変える。
更に先へと進む。段差のある町をバスターショット一つで潜り抜けていく。
「…」
だが生きているものは…いない。
扉の奥にいたのはゴーレム達。
「貫け!」
氷の力を纏ったチャージショットでタイプEを倒す。
「痺れろ!」
電撃の力を得たチャージショットでタイプFを倒す。
「…」
タイプIには弱点はない。その雪玉を回避、ツララの刃を回避、チャージショットを頭へと当て続け…倒す。
「こんなところだな」
まだタイプIの作った雪玉が残っているが…問題なく飛び越えようとした時。
「おじゃーーーーーる!!」
巨大な雪玉が割れ、聞き覚えのある声がこだまする。
「麻呂の名は『マハ・ガネシャリフR』! 前回のような不覚は取らないでおじゃーるよ!」
彼のパワーアップは思った以上であった。
上下に爆発する爆弾をばら撒きながらの突進、突進のパターンも跳ねるものが追加され
張り手をしながら前進するため、バスターショットなどで押し返す必要が出てくる。
ぶら下がっての攻撃は、以前以上に重くなったボディでのものであるため、落下の際に地震を発生させる。
Rと名乗るだけはあり、純粋強化とは言え中々の実力。
…しかし、ゼロの攻撃の前に沈むのであった。
「……」
扉を潜ると、そこには軌道エレベーターが見える天窓のある部屋。
「おいおいゼロー!ちょっと遅かったんじゃねえのか!?」
腕をガツンとあわせるはファーブニル。
「レジスタンスは、ここにいる元ネオアルカディアの落ちこぼれ以外みーんなやられちゃったわよ」
レヴィアタンの足元には倒れたエルピス。
「…ゼロ。コイツを助けに来たのか」
そしてハルピュイア。
エルピスへと近づく。
「その通りだ。 生きているようだな …ベースへ運ぶ」
「…いいのか こいつを助けることで、こいつの作戦のせいでまた沢山のレジスタンスが犠牲になるんだぞ」
「ハッキング装置をしかけたお前に言われたくはない」
「それはすまなかったな …なら詫びるついでにもう一つ忠告しておこう」
「何だ」
「お前達のベースへ向けて、特殊爆弾を搭載した爆撃機が向かっている」
「こんなやり方、私達も大嫌いなんだけどねぇ」
「俺らより格下の癖に、やるやるってウルサい奴がいてよー!」
「…俺の命令でも責任でもない。 『奴』が覚悟してのことだ」
「………オペレーター、急げ」
「了解しました」
|
|
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板