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あと3話で完結ロワスレ

441300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:49:19
 
 そして財部依真が軽いノリで提案し、当たり前という風に四人が否定する。
 本当に当たり前みたいだった。
 というか。実際に、当たり前の話なのだ。
 だって。

「「「「「私たちは。大切な友達を殺してまで生きようとは、思わない」」」」」

 少女たち五人は、とってもとっても仲がいいのだから。
 彼女たちだけが残ってしまった時点で、彼女たちの中ではもう、
 バトルロワイアルなんて設定は。――『なかったこと』になっているのだ。
 殺し合って終わるような結末は無い。絶対に、ない。

 だから残り58時間、
 少女たちはこの箱庭で最後の時を共に過ごし、
 そして……仲良く皆で首輪の爆発を待って……この箱庭と共に心中することを決めた。

 誰もが誰も殺そうとしなければ、殺し合いなど、成立しない。


◇◆◇◆


 食事のあとはただ、分かりきった作業を進めた。
 脱出の可能性の模索。担当は主に、オーパーツじみたアンドロイドである水晶だ。
 まずどうにかして外に出られないかやってみる。
 外へ続く柵を人力で、あるいは飛行能力で、または爆薬などで乗り越えようと壊そうとする。
 しかし、謎バリアにより失敗。まあ当たり前の話だ。
 この囲いのスキルを定義したのはあの安心院なじみなのだ、
 安心院なじみの端末にすぎない5人がどうにかできるわけがない(というか、誰だって無理だ)。

 次に298話にて死体を巡礼したときに目についた、
 獅子目言彦の首からなぜか外れていた首輪――これを回収して分析をした。
 言彦の首を跳ねて首輪を外した後、球磨川禊が首の切断を『なかったこと』にしたのだろうか?
 今となっては真相は闇の中だが、
 ともかくこれによって、少女たちが誰の首も切断することなく首輪を回収できたことは僥倖だったのだろう。
 なぜなら、首輪を外すことが出来るなんて展開はすぐ否定されることになるからだ。

「やはり、不可能ですね……強力なスキルとマイナスによる呪い。
 私たち普通(ノーマル)の力ではどうにもなりません。もしかしたら、安心院さんでさえどうにもできないのでは」
「うん、やっぱり無理かぁ。ノゾミちゃんで無理なら、どうしようもないね」
「ねぇねぇ! じゃあワニちゃんの隠された右目に首輪を解除できるスーパー能力が備わってたりしないかな?」
「いやジロちゃんそれは無茶振りであります……この右目はもう何のスキルも宿してません」
「&strike(){ま、だよなあ}そして、外への連絡手段も全滅、っと」

 試行錯誤の果てに。
 生徒会室へと引き返してきた少女たちは、一縷の望みを外部からの救援に託した。
 電話、メール、あるいは無線など。
 全体から見ればとても今さらながら、本人たちも無駄だとは思っていたが、
 ひととおり外部への連絡手段を試してみたのだ。……そしてやはり無駄だった。

「こっちからの連絡が無理ってことは……外に居る誰かが気づいてくれるのを待つしかない、のかぁ」
「でもそれは――万が一、億が一にも満たない――ほとんど0の可能性であります」
「&strike(){というか、ありえねーだろ}あの安心院さんがそんなご都合主義を起こせるような余地を残すとは思えないよね」
「100人が閉じ込められて1日半以上経って、外部から何のアクションもない(なかったっぽい)時点でねー……」
「……C-7が禁止エリアになりました。あと。54時間」

 つまり彼女たちの寿命は、九割九分九厘、あと54時間しかないということなのだった。
 いや、ことここに至ってしまえばむしろ――54時間は、多くすら感じられる。

442300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:51:00

「54時間かあ。二日と四半日」
「&strike(){案外長いなおい}やることはやったし、なにしよっか?」
「ゲームならいっぱいあるよー。前来た時あそこの棚に隠しといたからね私」
「さすがツッキー。でも、スマブラやマリオパーティで最期のひとときというのはどうなんでありましょう……」

 それもそれでいいけどね、と付け加えたあと、五人は机を囲んでうんうん唸る。
 ひとしきり粗潰し、しらみ潰しを終えたら。
 普通(ノーマル)の少女である五人にはもう何も出来ることがない。
 それでも、たとえば残り3時間しかないなら悩むことはない、仲良く駄弁って終わればいい。
 ただ54時間もあるとさすがにずっと喋っていてもネタが尽きるし、
 ――多分、なんだか時間を無駄にした気になる。
 何が出来る? 何をすればいい?
 
 後悔せずにみんなで終わるために――あとなにか足りないピースはあるだろうか。

「足りない……足りない、か。
 足りないって言えばさ、もしかしてここなら、あれがあるんじゃないかな」
「?」
「ちょっと待ってて。えっと……こっちかな……?」

 何かを思いついたらしい喜々津嬉々が、生徒会室の試料棚を漁り始める。
 がさごそ、がさごそ。ぼうっとそれを見つめながら、次葉が不意に呟いた。

「なんか、実感わかないなあ。これから私たち、死ぬんだ。
 死ぬ。死ぬ……死んだら、どうなるんだろうなあ。
 なんにもなくなって、私なんてなかったことになるのかなあ」
「そうではないでありましょう。ジロちゃんが生きていた証は、きっとどこかに残るでありますよ」
「あたしはそうとは思えねーかな。&strike(){うん、きっとそうだよ}」
「タカちゃん、本音と建前が逆になってるけど…?」
「&strike(){今さら本音も建前もねーだろ}……よいしょっと。えい」

 (ぽい。っとセリフに手を突っ込んで打ち消し線を取り除く)

「よし。あーあー。……今さら本音も建前もねーだろ?」
「物理的に全部本音にしたー!?」
「今日は珍しくツッコミ冴えわたってんなジロちゃん。
 でだ、話の続き。あたしたちが生きてた証が残るかどうかだけど……残るかなあ。ホントに」
「……?」
「黒神めだかとか、安心院さんとか。それこそ球磨川先輩とか。
 ああいう、歴史に名を刻んじゃうタイプの特別な人間は、きっといつまでも証を残せるだろうけど。
 あたし達って言ってみれば、安心院さんの駒1号〜5号とか、
 そういうくくりでまとめられちゃう存在だろ? そんなあたし達の生きた証が、いつまでも残るか?
 戦国時代に死んだ雑兵の名前が一人一人明確に残ってるわけじゃないのと同じ。
 少しはどうにか残っても。いつかは、忘れられるだろ」

 メガネと帽子を外して、胸に手を当てながら財部依真は淡々と言葉を連ねた。
 死んだ人間は、周りの人の心の中で生き続ける。
 なんて詭弁を人は言う。
 本当にそうだとして、ではどうだろう、死んだそのAさんを覚えている人が全員死んだら、
 Aさんは今度こそ本当に死んでしまうことになるじゃないか。――こう財部依真は言いたいのだ。

「そ、それはそうかもしれないでありますが。
 少しでも残るのであれば、それで十分ではないでしょうか? 少なくとも私は……」
「そこで満足するって手もあるよ、確かに。現にあたしは、
 死ぬ間際までワニちゃんやツッキー、ノゾミちゃんにジロちゃんと一緒にいられるってだけで、
 けっこう満たされてるなーなんて思ってる側面もあるんだ。でもさ」

443300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:52:33
  
 立ち上がり、窓の近くまで行って少女は外を見る。
 広がる箱庭学園の風景――彼女たちが生きてきた場所を見て、思う。

「贅沢な考えだとは思うけど。どうせ死ぬならこう、あたしはここにいたぞ! って気持ちを、
 どこかに、ずっとずっと、少しでも長く残しておきたいって思うのは、間違いじゃないと思うんだ。
 特にあたし達は、この学園で――安心院さんの気まぐれ次第じゃ、
 自分自身の気持ちなんて持てずに、駒みたいな生き方しかできなかったかもしれなかった。
 でも今は、ルールなんてぶっちぎって、安心院さんに抗えてる。
 そういうことが出来るようになった。せっかく出来るくらい、自分が出来て、育ったのにさ。
 あたし達を誰にも伝えられずに死ぬなんて――嫌なんだよ。やなんだ。みんなだって、そうでしょ?」

 最期のほうは少し熱っぽくなりながら。依真は他のメンバーに問いかけた。
 打ち消し線を外して、メガネも帽子も外して、もはや彼女を彼女と定義づける記号は一つもない。
 だけど瞳に遺志を帯びた顔をしている彼女は、誰がどう見ても財部依真以外のなにものでもなかった。

 安心院なじみ。
 自分以外を悪平等に大したことはない存在だと定義する全能少女。
 フラスコ計画を潰した黒神めだかから主人公をはく奪するために、彼女が送り込んだ5人の「普通」。
 「普通」であるがゆえに警戒されず、
 「普通」であるがゆえに作戦の要を担った5人の候補生たちは、最初はただの記号の集まりでしかなかった。

 でもいつのまにか、記号なんて無くても個人を個人だと判別できるくらいに、育った。
 ただの記号に人間としての色がついて、自分として独立することができた。
 それなのに。誰にもそれを伝えられないまま、彼女たちはもう死を選ぶしかない。
 彼女たちが成長したことを知っている人々もみんな死んでしまっているから、
 この状況でみんなで死ぬことを選んだという彼女たちの想いすら、このままだと知る人はいないまま。

「……機械的に言わせていただくと」

 依真の言葉に最初に返したのは、希望が丘水晶だった。

「私はアンドロイドですから、死んでもこの体の中にメモリーは残ります。
 ですから、もし後日に私の死体からこのメモリが解析されれば、
 この場で私たちが選んだ決断、それ自体は知られることになるでしょう。ですが」

 反語を呟くと、水晶は関節部を動かして自らの背中に手を回す。
 そしてカチリと脊髄のあたりにあるバックカバーを開けて、中から小さなメモリを取り出す。
 四角いチップ型のそれは希望が丘水晶の誕生からこれまでの記録を収めているメモリだ。
 無表情のまま――希望が丘水晶は、それを自らの手で、
                              折った。

「え?」
「ノゾミちゃん!?」
「な……」

 ぽきり。
 とメモリが折られたことで、希望が丘水晶の外部保存領域は消滅した。 
 残る記憶領域は、せいぜい人間と同じ程度の重要事項しか残さず、
 電源が落ちれば0になるローカル領域だけ……つまり、他の4人と同じくらいの記憶だけ。

「メモリはあくまで記録であって、その場での感情を記した思い出ではありません。
 だからタカちゃんの想いを受け取るならば。思い出を残すためならば。
 この記録はむしろ、ノイズであると判断しました。――間違いだったでしょうか?」

 自らアンドロイドとしての利点を捨て、希望が丘水晶はそれでも笑顔を作った。
 もうこれでいよいよ本当に、5人が死んでも何も残せなくなったのに。
 36時間眠っていて話に関われなかったことさえ残せなく――――残「ら」なく、なったのに。

444300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:54:53
 
 そう、これで。
 彼女たちのこれまでの動きを証言する記録(メモリー)は消えたので。

「いや間違いもなにも、それじゃ、
 ほかにどんな記録を残してもその正しさが証明できなくなるじゃねー……か?」
「あれ、ってことはそれって――」

 水晶の行動に対して、財部依真と与次郎次葉が驚きながらも、何かを察し。

「あはは!
 なるほどね。間違ってないよ、ノゾミちゃん。っていうか……同じこと考えてた?」
「おわ! ツッキー? な、何を持ってるでありますか!?」

 話がひと段落したところを狙ったかのように、喜々津嬉々が戻ってきた。
 手にはタウンページ大はありそうな大きく分厚い冊子を持っている。
 彼女は軽快な言葉と共に、その冊子をうんしょと持ち上げて。
 ばばん!
 と大きな音を立ててその冊子を机の上に置いた。

「ツッキー。探し物は見つかりましたか?」
「ん。見つけたよ。――足りない穴を埋めるパズルのピース」
「ウィ。さすがです。やはり、ここにありましたね……」

 その冊子とは、
 箱庭学園全生徒および関係人物、および、黒神めだかが知り合った人物……。
 有体に言えばこのバトルロワイアルの参加者全員を含む様々な人間のプロフィールをまとめた、
 いかにも黒神めだかが持ってそうな「全生徒手帳」である。

 試しに水晶が数枚、ぱらぱらとめくれば。
 載っている、載っている。
 阿蘇短冊から贄波錯誤まで。
 きっとこれさえあれば全く知らない人物だってそれなりに語れてしまうだろうほどの情報が。
 そう、どんな登場人物であろうと、それっぽく「書けて」しまうほどの資料が――!

「さーみんな。ここに。残り時間が『54時間』ある」

 喜々津嬉々は時計を指差して。

「そしてここに、足りない情報を埋める、『把握のための資料』がある」

 次に冊子を指差して。

「さらに球磨川先輩のおかげで、
 『どんな展開になってもラスト3話でなかったことになる』のなら。」

 悪戯っぽい笑みをうかべて、紙とペンを取り出しながら。

「……『そこまでの297話で、どんな嘘をついてもいい』ってことでしょ?」

 白紙のそれを、真っ白なキャンバスを見せつけるようにして、
 喜々津嬉々は4人にひとつの提案をする。

「ねぇ。遺書を書こうよ。未来にいつまでも残るような、
 馬鹿らしくて阿呆らしい、何でもありのとびっきりフリーダムなやつをさ。
 みんなでリレーのバトンを渡すようにして、一から十まで嘘で固めて、
 でも誰もそれが嘘なんだって証明できないような、カンペキな悪ふざけ――」

445300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:56:21
 
 それは、0になった物語に存在しないはずの虚数を加える行為。
 ウソツキハッピーエンドへ向かうリレー遺書。
 死んでも何も残らないと思うなら、自分から何かを残してしまえばいい。
 しかもただ遺すだけじゃない。全力で自分たちをアピールできるものを遺せるのならそれをやるべきだ。
 そう考えた喜々津嬉々の提案は――この箱庭でつづられた物語の、そのシナリオを。

「わたしたちで。このバトルロワイアルを、捏造しちゃおうぜ?」

 二次創作、してしまうこと。

 ぞわりと空気が震えて、得体の知れない雰囲気が部屋を満たした。
 本気だった――喜々津嬉々のゴーグルの下の目が、本気だった。
 まったくネタでなく、本当に彼女は世界に嘘をつくつもりなのだ。
 もう誰も知らない36時間の空白を、言ったもん勝ちのシナリオで埋めるつもりなのだ。

 異常でも過負荷でもない「普通」の少女たちである自分たちが、主役になり。
 誰をも倒し、誰をも説き伏せ、誰もを思い通りにする――カミサマにでもなったみたいな。
 そんなシナリオ。
 ありえないことだ。
 ありえないことすぎて可笑しくなる。
 でも、54時間で出来ること。たった5人で出来ること。
 そしてなにより、空っぽになってしまった箱庭で、少女たちが抱えていた。
 提案された他の4人は――ごくりと唾を呑みこんで。

「ひ」

 硬直した顔で、一文字喉から絞り出せば……あとは雪崩のようだった。 

「――ひとつだけ、ルールを。――(中略)――でいいでありますね?」
「確認するまでもないよ、ワニちゃん。それは前提でやらなきゃ意味ないじゃん。
 だって、これってわたしたちのエゴでもあるし……『それだけじゃない』んだからさ」
「ウィ。では私は、細かい矛盾点が発生しないよう各所の管理と、繋ぎを。
 ワニちゃんはバトル、ジロちゃんは中二、タカちゃんは心理戦、ツッキーは頭脳戦でしょうか」
「おおさすがノゾミちゃん、いい役割分担。
 でも最後の方とかは合作するのもいいかもな。闇鍋みたいに取り合いじゃなくてみんなで」
「いいね! なんたってこれは――みんなで背負う、罪だからね」

 ある者は楽しそうに笑みを浮かべ、ある者は真剣に流れを考え始め。
 全員が喜々津嬉々の発案に、いたずらにしては大きすぎる罪に、ノータイムで同意した。

 そしてすぐ。
 闇鍋にどんな具を入れるか話し合ったときのように、思い思いにリレー遺書の案を出し。
 2時間かからずおおまかなあらすじを確定し。
 2時間ちょっとかけて参加者のデータを把握して。
 50時間を残したところで、少女たちは執筆の用意を完了させる。

 それぞれ目の前に白紙を用意、おのおのが書きやすいペンを手にし、
 中央には希望が丘水晶が管理する、
 現在位置表や参加者の各種データを集めたPC画面を表示。
 途中で休憩を挟むときのお供にどこからかスナックやジュースも持ってきた。
 添い遂げる準備は――万全だ。

「じゃあ……オープニングを、始めるよ」

 言い出しっぺの法則。喜々津嬉々がまず書き初めに着手した。
 続いて平行作業で他4人がそれぞれの登場話に移る。
 細かく分けられたプロットは合計にしておよそ300話。
 一話が短い手記形式とはいえ、創作に携わることなどなかった少女たちには難しい量だ。

446300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:58:17
 
 それでも、やり遂げると決めた。
 自分たちの想いを遺すため――いいや、それだけじゃ、ない。

 297話近く積み上げられた物語が、全て台無しにされたそのあと。
 少し優しい顔で眠りにつかされた死体からは、なにもかもが奪われてしまっていた。
 ある少年は良かれと思ってそうしたという。
 人の死には付属する物語なんて、悲劇なんて喜劇なんて、英雄譚すら、邪魔なだけだと思ったという。

 確かにそうなのかもしれない。
 死はけして美談ではないのだから。
 けれど――そうしてしまったら。物語を消してしまったら。
 そこにあるのはただの「死」だ。

 誰が死んでいても一様に同じ、代替の利く現象でしかない。
 そんな死に、個性はない。

「だからあたしたちは、この物語を書く。死んだのが誰なのかを分からせるために」
「かけがえのない、たった一人の、わたしが、みんなが、一人一人が! 死んだんだって知らしめるために!」
「そのための、本当の物語が失われてしまったのなら――たとえ嘘であっても構いません」
「伝えたいのです。残したいのです」
「ただひたすらに――『みんなはちゃんとここにいた』って、伝えたいだけなんだ!」

 もちろん少女たちは分かっている。それはそうあってほしいと言う願いでしかないということを。
 嘘で作られた100人の登場人物の生き様は本当のものではけしてなく、
 他人では100パーセント本人を再現することなんて、不可能だということを知っている。
 だけれどそれがなんだというのだ?
 不可能だからと言って筆を置くのか?
 違う。
 違うのだ。
 例え願いでしかなくても――そう願おうとする気持ちは。
 本物であってほしいと言う気持ちは、嘘をもうひとつの本物に、変えるのだ。

 少女たちは書いて。
 書いて。
 書いて。
 くだらない嘘を紡ぎ続けた。

 20話が描かれて。
 40話が描かれて。
 第一放送が描かれて。
 80話が描かれて、
 100話が、200話が、
 第三放送が、第五放送が……。

 そして――50時間が経過して。
 最後の禁止エリアが、指定される。

「「「「「……はは」」」」」

 ぴぴぴぴと鳴り始めた首輪の警告音は、少しうるさいファンファーレだ。

「「「「「みんな、お疲れ様、そして・……」」」」」」

 財部依真は。与次郎次葉は。鰐塚処理は。喜々津嬉々は。希望が丘水晶は。
 クマだらけの目で力なく、それでもやりきったような笑みを浮かべ。
 腱鞘炎になりかけの手でグーを作って、乾杯をするようにそれをぶつけ合って。
 人生最後のガッツポーズを、した。

447300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 22:59:40
  
「「「「「――完結、おめでとう。」」」」」

 少し離れて机の上。
 たくさんあった白紙の紙が0枚になっていて。
 急いで書かれた走り書きの手記が、散らばる紙にはびっしりと書かれていて。
 空想は描かれた。0は虚数で埋め尽くされた。そこには確かに物語があった。

 彼女たちの首が、跳んだ。

 
【財部依真 死亡】
【与次郎次葉 死亡】
【鰐塚処理 死亡】
【喜々津嬉々 死亡】
【希望が丘水晶 死亡】


【ロワイアルボックス――停止。生存者:なし】 
 
  
 
◆◇◆◇ 



 ――後日談。



◇◆◇◆


 
 201X年△月○日。
 文化祭の日程と祝日の関係で、
 この日までその学園は4連休となっていた。
 その4連休が明けたばかりのこの日、久しぶりに学園に足を踏み入れたのは、
 陸上部の朝練にいち早く来ようとしていた当学園の一年生の少女(仮名:A子)だった。

 不可解なのは、連休前の夕方に用務員が学園を出てから4日半後のその瞬間まで、
 学園には誰も出入りしなかった……定期掃除の業者さえ入ることを忘れていたことだが、
 とにかく広い校門をくぐったその瞬間に、A子は糸が切れたような音を聞いた。

「? ――――!?」

 その次の瞬間、A子の目の前に広がっていたのは――惨劇の、跡だった。

 「箱庭学園集団拉致監禁殺人事件」という名が付けられたこの大事件は、
 発覚するや否や様々なニュース、TV、新聞などに取り上げられて世界をにぎわせた。
 確認できるだけで死者99名。そして行方不明者3名。
 その人数規模だけでも腰を抜かすしかないのに、
 死者の中にはかの黒神財閥の関係者など、日本の中枢に関わる人物の名前もあった。
 「どうして4日も行方が分からなくなっていたことを放置していたのか?」と非難の声が出るほどだ。

448300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:01:24
  
 さらに世間をにぎわせたのは、その事件の異常(アブノーマル)な中身だった。
 100名に届くかという数の死者たちはその全員が、
 なんらかの爆薬を仕込んだ首輪によって首を爆破された死体となっていた。
 凄惨な首なし死体。
 この、映画バトル・ロワイアルを彷彿とさせる殺害方法――これも異常なのだが、
 それ以上に、
 不可解かつ異常な点が一つ。
 死者たちは全員、首輪の爆発による外傷以外には『傷ひとつない』という点が、おかしかった。
 つまり――急性心停止とかでない限り。

「首輪の爆発以外に、彼らを殺す手立てがない、ということだったんだよね」

 201X年◇月◎日。東京都庁資料室。
 別件で招かれたとある青年探偵が、暇潰しに一年前の大事件の資料を覗いていた。
 背丈普通、印象普通、されど頭と性格は少し普通ではない。
 かといってそう大それたことができるわけでもない――彼は普通の探偵だった。
 隣には女子高生じみた助手がいて、こちらは少し間の抜けたことを言う。

「じゃあ首輪の爆発で死んだんじゃないの?」
「普通に考えればそうなる。
 でも、映画バトル・ロワイアルをリスペクトして人質に首輪をつけた犯人が、
 映画のように殺し合いを開催しなかったわけがない。だからおかしいんだ。
 まるで、殺し合いを始めますと言った瞬間に、全員の首輪が誤作動で爆発してしまったようなものだ」
「ほへぇ。それはひどくこめでぃだ」
「そうコメディだ。現実的に考えてありえない。
 なにか整合性のとれる仮説が存在しうるはずだ――たとえば、
 世の中には、異常(アブノーマル)な事象を起こせるスキルを持つ人間もいる。
 さらに箱庭学園は、その手のスキルにずいぶんと研究熱心だという情報があった。
 常識にとらわれずに色々な可能性を検討すれば、情報次第では真実に迫れるかもしれない。
 ……事件の最初の一報を聞いたぼくたち探偵はそう思って、思索に耽ろうとした。
 その暇さえ与えられないとは思わなかったけどね。この事件が異常なのはさらにこの後。手記が見つかったことさ」
「手記?」
「そう、手記。それも同じ場所から、五編の手記が見つかった。
 執筆者は中学生の“参加者”五名。その内容は、ぼくたちにはクリティカルなものだった」

 探偵はぱらぱらと事件の資料をめくり、手記が発見された当時の新聞記事のページを開く。
 少し目の悪い助手はそれに近寄って目を凝らし、大きな字で書いてある見出しを読む。

「へぇ、中学生が……って、
 見出し……《大事件の死者が描いた不可解な手記》……どゆこと?」
「きみの目には細かい内容までは見えないだろうから、
 ぼくから説明しよう。端的に言うとこの五編の手記には、こう書かれていたんだ。
 “全知全能の神のような主催、安心院なじみは、
 殺し合いを確かに開催した。しかし――殺し合いは『行われなかった』”」
「行われ……なかった?」
「そうなんだ。開始からたった4日で全員が死ぬシステムだったにも関わらず。
 最期の一人にさえなれば生き残れるシステムだったにも関わらず。誰一人として、人を殺さなかった」

 手記には5人の少女たち、それぞれの視点からゲームの様子が描かれていた。
 バラバラの場所からスタートした5人は、
 違うルートを通って箱庭学園内を巡回して、物語を紡いだ。
 ある時は恐怖に怯えていた少女を助け。
 ある時は殺し合いに乗りそうになっていた少年と戦い、説得し。
 ある時は賭けを行い、交渉して。
 個性的な箱庭学園の面々と、彼女たちなりに――語り合った。
 そして、最終的に。
 見せしめとして殺された理事長を除いた全員を、校庭に集めることに成功したのだという。

449300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:03:27
  
「ここで登場するのが、球磨川禊と赤青黄という登場人物だ。
 球磨川禊はどんな事象でも『なかったこと』にする、マイナスのスキルを。
 赤青黄はどんな病気でも治せるスキルを持っていた、と記録されている」

 この二人が協力して――協力(二人の因縁を知る人からすればありえないことだが!)して。
 それまでの手記で意思のぶつかり合いや事故、
 あるいはetc.によって創られた参加者の傷を、『なかったこと』にしたと手記には書かれていた。

「『なかったこと』にするとか、便利だねぇ。
 そんなスキルあったらさいっきょーじゃん。その中学生のでまかせじゃないの?」
「のちの調べで、球磨川禊がこの能力を持っていたことについてはウラが取れてるよ。
 彼は箱庭に来る前、いくつもの学校でそのスキルで猛威を振るっていたし……。
 まあ、とにかくだ。かくして全員が無傷の状態で校庭に集められた、最初の状態に戻ったわけだ」
「ふりだしに」
「そう振り出し。そこからは凡そ予定調和さ。
 殺し合いする気が無くなった参加者、全員、バーサス主催者ふたり。どちらが勝つかは明白だよね。
 ただ、安心院なじみはそれこそ本当に何でもできるほどに埒外の力を持っていたから、
 参加者全員で、さらに球磨川禊が自分ごと『なかったこと』にすることでしか決着をつけられなかったらしい。
 ともかく安心院なじみたち主催者側は敗北し、
 消滅することとなった――ただし首輪と殺し合いのシステムだけ残して」

 主催は消滅した……が。
 「開始から4日経った時点で優勝者が決まっていない場合、全員の首輪が爆発する」というルールは。
 すべて『なかったこと』になった殺し合いで、そのルールだけはどうしても無くならなかった。
 まるで安心院なじみの呪いのようなそれを前に、参加者たちは頭を捻ったが……力及ばず。

「そして99人の首輪がいっせいに爆発し、全員が一気に死んじゃった、と……そいうわけ?」
「手記に従うならばそうなる。従うならばだけどね」

 探偵は苦笑いをしながら頭を掻いた。

「でもね、魔法少女ワンダーツギハがどうとか、無駄にお涙ちょうだいだとか、
 基本情報は押さえてるけど若干キャラが違う人がいるとか、色々都合がよすぎるとか、
 手記に描かれたストーリー自体は正直言ってどの推測よりずっと荒唐無稽でありえない話なんだ。
 なにより、100人も居て、
 その中には好戦的な人物や死ねない信念を持った人物もいるのに、
 誰一人として殺し合いを遂行することをしなかった(あるいはする前に止められた)なんてさ、
 いくらなんでも信じれるはずがない。――嘘としか思えない異常なシナリオだ。きみなら、信じる?」
「うーん。……信じないねー。殺し合いが起きなかったってのは、いくらなんでもふしぜんじゃん。
 でも手記ごとケーサツ側が捏造したにしちゃお粗末な筋書きだし、
 手記自体、「本物」だって証明はできない代わりに、「嘘」だって証明もできないんでしょ〜……?」
「珍しく鋭いね。そう。
 この手記はどうみても嘘としか思えないことが書かれているけれど、矛盾点はないんだ。
 5つの手記の内容を比べても矛盾する描写はひとつもないし……。
 見つかった死体の状態と、ウラが取れている参加者のスキルを照らし合わせれば、
 そういうことがあったとしてもおかしくはないという結論になってしまう。
 手記さえ見つからなければ、いろいろな可能性を想像(創造)することができたのに。
 実際に参加していたキャラクター側からの『公式見解』がある以上、論より証拠になってしまう」

 シニカルに呟く探偵の頭の中には、彼なりに考えた事件の真相が存在する。
 殺し合いをなかったことにしようとした球磨川禊が、
 手記の筆者を除くすべての参加者から傷を消した後、主催と相討ちになり消滅、
 残された5名が4日ルール(あるいはこんなルールはなかったかもしれないが、
 とにかく4日で全員死ぬようなルールだ)で死ぬまでの間に、でたらめな手記を捏造したというものだ。
 「誰も誰を殺さないような話」という、彼女たちの間で決めたひとつのルールにのっとって。

450300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:06:10
  
 だが探偵が考えたそのシナリオも一欠片の無茶がないシナリオとは言い難い。
 候補生たちのスペックから考えれば、
 5人の候補生と球磨川禊だけが都合よく生き残らなければならないし、
 さらに球磨川が主催と相討ちになって消滅したあと、都合よく少女たちがメモを捏造しないといけない。
 では他の探偵の考えた推測はどうかというとやはりどこかに綻びは存在し、他の推測も同様、その他も……。

 ――現実はえてして数奇なものであって、こんなことありえないということがやすやすと起こり得る。

 結果として残っている「外傷がない99体の首なし爆殺死体」という無茶苦茶な謎を前に、
 だから誰一人として完璧に無茶のない推測を立てることはできないし、
 だから誰一人として、参加者が描いた手記という絶対的な証拠を超える信憑性を出せない。

「……結局きみも知ってのとおり、この事件は先日、大規模な捜査を打ち切られることになった。
 他に証拠がない以上、この手記にのっとるしか、なかった。
 そして手記通りに『バトルロワイアルなんてなかった』という『答え』が採用されて、
 しかも主催が消滅した以上、死亡者の誰にも罪はなくなった。後は細かい事務処理だけさ」
「ああ、だから事件の名前もバトルロワイアルとかじゃなく、拉致監禁殺人になったわけですか?
 確か最初のころは、現代に実際に開かれてしまった殺し合いゲームが〜とかニュースで言ってたけど、
 最後のほうは死者の生前の功績とかしかぴっくあっぷされてなかったような」
「そういうこと。事実上は違うけど……真実に対しては、この事件は迷宮入りってわけさ」

 結局は、そういうことだ。
 沢山の好奇心によって0から作り出されるはずだった真実を探る手は、
 大きな嘘で形作られた偽物の壁を突き破れない。
 つまり皮肉なことに――いや、運命だったのか――結果的には、
 とある少年がとある少女のために行おうとしたバトルロワイアルを『なかったことに』するという願いは、
 ふたりが消えたあとに5人の少女たちによって、『完成』されたのだった。

「なんというか、アレですね。黒い真実を明かさせないための、学園規模の白い嘘、みたいな。
 本人たちにそのつもりがあったのかは分かんないけど――きっとその子たち、優しかったんですねぇ」
「そうだね――うん、大分きみもいい意見を出せるようになったね。
 普通の探偵たるぼくの助手にふさわしくなってきた。帰りにジュースをおごってあげよう」
「まじです? でも、褒めるくらいならいいかげん、
 あなたの名字を教えてほしいんですが……あ。来ましたよ雪(そそぎ)さん。警部だ」
「おや、もうそんな時間かい。……珍しく感傷にひたりすぎてしまったかな?」
「悪いな雪! 遅れた! さて、では始めようか。で……今回の事件はなんだっけっか!?」
「わすれてるんかいー!?」
「おやおや、しっかりしてくださいよ警部。――ぼくはこの事件、『なかったこと』には、させませんよ……?」

 資料室の扉が開いて、探偵に協力してくれる警部がいかめし面をして入ってきて。
 探偵と助手の、無意味で無価値な雑談は終局を迎えた。
 資料は棚へ戻される――。
 しかし大事件の記憶は人々の記憶に長く長く残り続けるし、
 その証人である少女たちの手記も、そこにつづられた箱庭学園への愛(i)も、
 彼女たちの名前と共に末永く語り継がれて、向こう千年は消えることがないだろう。
 
 だから彼らは、そこに居た。
 例えすべてが『なかったこと』になっても――確かにそこに、在ったのだ。





 第297話までは『なかったこと』になりました  ‐完‐

451300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:07:41
  



 &strike(){第297話までは『なかったこと』になりました  ‐完‐}

452300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:08:28
  


 このバトルロワイアルは『なかったこと』になりました  ‐完‐ 


.

453 ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:12:16
以上で投下終了です。
読んでくれた方いらっしゃいましたらありがとうございます!
最終的に当初の着地点を2回りほどぶっとばして亜空間に着地しましたが、
うまいことこの企画じゃないと出来ない話になったように思います。

企画を開いてくれた>>1さんにも改めて感謝を!

454FLASHの人:2013/04/10(水) 23:44:03
>>453
完結おめでとうございます!すばらしい&西尾らしいデビルかっこいい結末でした
非リレーだとしてもこのエンディングに到達するのは非常に困難だと思います。
ここで書いてくれて本当によかった……感謝ッ!!

ところでまとめサイトで登場人物まとめてて気づいたんですが、死体列記の中に
杠かけがえだけ「これ絶対わざとだろ」って数出てきてたんですが、何があったんで……
あ、いや、「なかったことになった」ことを聞くのは無粋ですね
そこを妄想で補ってこその三話ロワでした。やめておきましょう。

なにはともあれ、完結おめでとうございます。そしてお疲れ様でした!

455名無しロワイアル:2013/04/11(木) 18:38:10
おお、おお、おお、おおおおお!
投下お疲れ様でしたあああ!
なかったことになった。文字通り、なかったことになった。バトルロワイアルまでなかったことになった
いや、なったじゃない。彼女たちが、なかったことにしたんだ
この五人だからこその結末。ずっと残り続ける物語。彼女たちの二次創作でリレー創作
この話はまさにこの企画じゃないと無理だよなあ。非リレーでもダメだ
ちゃんと書かれちゃったらそれまでの297話が俺らの中には残っちゃうもの
でも、後3話ロワにはそれがない。或いは本当はあったのかもしれないけれど、なかったことに文字通りなった
だから、やっぱり、俺たちも。彼女らが完結させたパロロワですらない手記をそのままそうだったんだろうと覚えておこう

456FLASHの人:2013/04/14(日) 02:22:26
剣士ロワのまとめ、できました
ttp://akerowa.web.fc2.com/kenshi/kenshitop.html

とにかく渋く、シンプルにあの熱い文章を読んでもらいたく、
こんな感じになりました。
地味に面倒なことしました。

457名無しロワイアル:2013/04/14(日) 02:30:04
剣をバックに…渋いなぁ
wiki形式だとこういうデザイン中々できないからな

458 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/04/14(日) 23:10:26
>>456
ありがとうございます! こうして拙作を纏めて頂けるとは、感無量です。
そして過去のページ、自分も提案しようか迷っていた「闇に呑まれて消えた」演出をやって頂けるとは!
貴重な時間を割いて手間暇かけて頂いて、本当にありがとうございます。

……『常闇の皇』に「とこやみのすめらぎ」と読み仮名を振ることを今の今までうっかり忘れていたことを、ここに懺悔します。
大神を知らない人へのフォローを怠ってしまいました、申し訳ございません。

459FLASHの人:2013/04/15(月) 07:51:15
>>458
あ、ああ、そうか未プレイの人は読めないのか……
(当たり前に世界中の人が読めると思ってたマン

460 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/04/15(月) 19:03:57
>>459
多分「すめらぎ」を「おう」と読む人が大半ですわ……
皇の鍵然り、応龍皇しかり。

大神は素晴らしい楽曲も多いのでマジお勧め。
絵本の中を走り回るような独特な爽快感は、他では味わえない。
虎燐魄登場辺りは「勇者オキクルミ」を聞きながら読むのもいいと思うよ!
というか聞きながら書いてたよ!

461FLASHの人:2013/04/15(月) 19:39:32
>>460
(完全に同意なのでそっと広告を変更する、結婚式にケーキ入刀で「大神降ろし」を流した管理人)

462 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/04/15(月) 20:00:52
>>461
あなたが――信仰伝道師、天道太子だったのですね。

463FLASHの人:2013/04/18(木) 00:59:11
拙作で恐縮ですが、第297話まではなかったことになりました
の支援絵らしきサムシングを置いておきます
できれば完結した作品にはサイト以外になにかしらこういうこともしたいです
まあ、多分全部は無理なんだけど

ttp://akerowa.web.fc2.com/rwbox/medakarowa.png

464 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/04/18(木) 19:02:38
>>463
ナイスなイラストじゃないか!   消し線と命は投げ捨てる者by世紀末病人
原作でもありそうなワンシーンですね。

ところで、誤字の訂正とかはここで申請すればよいでしょうか?
まとめサイトになって漸く誤変換に気付きまして……。

465FLASHの人:2013/04/18(木) 22:29:35
うす、誤字修正やらスペース調整やらなんでも受け付けます。
とりあえずこちらに書いていただくのが一番早いです

466 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:49:21
謎ロワ・300話を投下します

467 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:49:43



 ――――11:37:27
 ――――――――鉄塔:最上層



「……はっ、私は……!」
「うわぁっ!」

 突然目を覚まし、唐突に起き上がるKさん。
 ……暫し呆然としていたが、はっと我にかえって時計を見る。

「ど、どうしたモナ?」
「ああ、ごめんなさい。……私は、どれくらい眠っていましたか」
「大体、30分は寝てたモナ」
「そうですか……少しですが、疲れが取れましたよ」

 十分とは言えないが、ある程度回復しただけでも儲け物だ。
 ……そんなKさんに、話しかけてくる人がいた。
 それは、先程まで階下で戦っていたはずの"いい男"!

「――――よう、Kさん。目は覚めたかい?」
「あ、阿部さん! 良かった、合流できたんですね」
「まあな。ちょっと手間取ったが……タバコを一本くれないか? 確かあっただろう」

 ――――阿部高和であった!
 しかし、明るそうな声とは裏腹に、表情からは疲労の色が見て取れる。
 それもそうだ、先程まで階下で死闘を繰り広げていたのだから……。
 その上、ここまで歩いてきたおかげで、その分余計に体力を消費しているのである。
 その疲れに勝つことは、さしもの阿部さんでも難しかったようだ。
 ドカッとその場に座り込み、一服。
 ……ゆらゆらとゆらめく紫煙と、煙草の香り。

468 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:50:15

「やっと一息つけるぜ……まだ、時間は残ってるか?」
「ええ、まだ大丈夫です」
「そうか……」

 ……もう少しすれば、"最終決戦"が始まる。
 なるべく、疲労は解消しておきたいと思うのが筋である。













 ――――--:--:--
 ――――――――不明



 それから数十分後。
 5人は、最終決戦の場に、赴いていた。

469 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:50:39

「……ここか……」

 世界が揺らめく。
 空間が揺らめく。
 全てが、この場にある全てが、揺らめく。

「……やはり、私たちが一番最初にいた場所……」

 刹那。
 揺らぎは止まり、空間に均衡が戻った。
 それと同時に、溢れるように"邪気"が辺りに満ちる。
 ……全員の顔が、一気に険しくなる。

『――――ここまで来るとはな』
「私たちを軽く見たのが悪いんですよ」
『ほう。わざわざ、我が領分に招き入れてやったと言うに……』

 この状況でも、全く動揺せずにほくそ笑む伊右衛門。
 それは、果たして虚勢なのか、それとも何らかの策があるのか。
 それを、5人は知るよしもない。

「……お喋りをしにきた訳じゃあないからな。とっととお前をあの世に送ってやるぜ」

 そう言い終わったと同時に、下までツナギのチャックを下ろす阿部さん。
 するとどうだろうか。
 股の間に、見る見る内に力が溜まっていくではないか!
 それを合図に、Kさんがこめかみに手を当てる。

『ほう……その貧弱な力で、我を消そうと? ……やはり家兎は家兎。浅ましき考えよ』
「確かに、俺だけじゃあお前は消せない。隕石すら、砕けないだろうな……。
 だが……今は違う。皆がいる。皆の力で、お前を斃す!」
『……やってみよ!! 身の程知らずの愚か物めがッ!!!』
「言われなくても、やってやるさッ!! Kさん、位置は!?」
「――――分かりました! あそこですッ!!」

 Kさんが、伊右衛門の一部を指差す。
 それと同時に、3人……ジョニー、スペランカー先生、そしてモナーが、伊右衛門に襲い掛かる。
 まず、スペランカー先生が、ありったけの銃弾を、伊右衛門にぶち込む!
 霊体である以上、大した打撃にはならない。だが、狙いはそこではなかった。

470 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:50:53

『このような攻撃、痛くも痒くも――――うぐッ!?』

 真に狙った標的は……霊体内に潜む、即身仏と化した伊右衛門本体。
 こちらは霊体ではなく実体。既に朽ちた肉体が、銃弾を躱せるはずも無い。
 なす術もなく、銃弾の雨に晒され、ボロボロと崩壊して行く。

『ぬうっ……!?』

 銃弾の雨を逃れ、首のみとなった伊右衛門の肉体。
 ――――現世に残してはならぬ、禍々しき存在。
 この場所、いやこの世界と共に、葬らねばならぬ。

「「イヤーッ!」」

 落ちて来た首を、ジョニーとモナーの持つ剣がバラバラに引き裂く!
 切り刻まれた首は、ぶしゅうと小さく音を立てて、塵と化した。

『ほう……わざわざ肉体を先に滅するとは……』
「将を射んとすればまず……ですよ。邪気の発生源である即身仏を先に滅するのは当然です。
 ……邪気が強く、場所を特定するのは至難の技でしたがね。もう少し遅れていれば失敗してましたよ」
『だが、まだワシは残っておるぞ? それで勝ったつもりとは……』
「だからこそ――――俺とKさんの出番なんだぜ?」

 ……阿部さんの股間からは、眩い程の光が溢れだしている!
 それと同様に、Kさんの胸元にも光が……!
 お互いにすさまじい力を放っており、2人を中心に半径2メートルほどの邪気が浄化されている。
 もはや、直視することもできぬほどの、聖なる光。

『まさかそれは……』
「――――俺の"テクニック"、Kさんの、そしてTさんの"スゴい力"、トコトン味あわせてやるからな」
『させぬッ!!』
「もう遅いッ! 食らえ、俺と……」「私の……」

471 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:51:09










「破アッ――――――――――――!!!!」
「ア―――――――――メンッッ!!!」











 迸る力。
 辺りに満ちる、光。
 全てが、白に、染まって行く……。

『ぐっ……ぬおおぉぉぉぉぉッ!!!』

 その光の中で、何かが溶けて、消えた――――。

472 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:51:24











【岸猿伊右衛門@かまいたちの夜2 塵も残さず――――消滅】




















 サイレンが、鳴り響く。それと同時に、遠方から迫る赤い波。

473 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:51:41
 次元を、世界を超え、襲い掛かる波。
 これほどの波に飲まれれば、普通は死は免れられないだろう。
 だが……この波では、そうはならない。
 全てが終わった時――――5人が勝とうが負けようが、ここには、津波が来る。
 生き残った者を、あるべき世界へ押し流す津波が……。

「これで、お前らともお別れか……寂しくなるな」
「……元の世界に帰っても、絶対、忘れないモナ」
「それは皆同じですよ。……それでは皆さん、お元気で」

 ――――5人を、赤い津波が覆った。







【謎ロワ――――完】

474 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:51:58








〜〜〜

475 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:52:13










【謎ロワ――――完?】






【謎ロワ――――】













 砂嵐のみが映るモニター100個。
 そして、その近くに横たわる、100人の人影。

476 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:52:33
『全ての招かれし者よ、目覚めよ』

 その声に誘われるように、目を覚ます100人。

『"運命"を見終わった感想はどうかな? それらは全て、貴様らが辿るかもしれない道だ』

 何も終わってない。
 何も始まってない。
 全ては、スタートラインで行われていただけの事。

『だがこれは、あくまで1つの可能性。必ずこうなる訳ではない』

 無数ある可能性の1つ。
 それが、この"5人が生き残り、伊右衛門を打ち倒し生還する道"。

『自身の恐ろしい結末や、無残な最期を見た感想はどうかね』

 それに反応し、何人かが反応を示す。
 ――――彼、または彼女らは、ゲームに乗り、参加者を殺害した者達。
 自身の凶暴性に怯える者や、血の気が引く者、逆に、顔色一つ変えぬ者もいた。
 それとは別に、何人かが別の反応を示す。
 ――――彼、もしくは彼女らは、何も出来ずに無残に殺された者達。
 自身の死の可能性に怯える者もあれば、紙の様に白い顔でガタガタ震える者もいた。

『"運命"には、並大抵の力では抗えぬぞ。犠牲を払い、運命を変える覚悟があるか?』

 自身が死ぬ運命に抗い、生き残ろうと足掻くか。
 殺戮者となる運命に従い、他人を殺すか。
 運命を捻じ曲げ、生きるか。それとも、運命に従い、死ぬか。
 "運命"を先に見た事によって……選ぶ権利が、100人全員に等しく与えられた。

『さあ、始めようぞ。全ては――――これからだ』

 もう一度……いいや、これから全てが始まる。
 ――――本当の悪夢からは、まだまだ目覚められそうに無い。










【謎ロワ――――開始】

477 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/18(木) 23:52:48
これにて、投下終了でございます

478 ◆rjzjCkbSOc:2013/04/19(金) 01:54:35
申し訳ありません、タイトルを忘れていました。
タイトルは「300:OVER/START」です。

479FLASHの人:2013/04/20(土) 00:01:24
>>478
完結おめでとうございます&お疲れ様です!!
お前にはわかるまい!この俺の股間を通して出る力が!!
いやあ、面子にそぐわぬ(といっていいのか)熱い展開と、それをすべて無に帰す
無慈悲極まりないエンディング、そしてオープニング……
これまであった297話だけでなく、ここから始まる300話すら想起させるなんて
恐ろしいお話でした……間違いなく、ここから始まるロワにゃこの5人は残らないね……

まさか597話分を想像させる三話だなんて……これもまた新しい!
素晴らしいロワでした!
あらためて完結おめでとう!そしてお疲れ様!!

480名無しロワイアル:2013/04/20(土) 23:02:48
すげぇ。
最後の最後、全てをひっくり返す正しく衝撃のラストであり、劇的なスタート。
凄惨な運命を見せられた者達の反応から、開幕後の選択を想像したら……堪んねぇな。
ある意味、参加者全員がリピーターになるラストとプロローグとか発想が凄過ぎる。俺も想像力が足りなかったのか……!
完結お疲れ様でした。

481 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/04/21(日) 23:02:32
それでは、拙作剣士ロワの誤字脱字の報告をさせて頂きます。

うっかりでは済まない全編通した根本的な勘違い。
スプラウトの50年やら半世紀やら→正しくは30年。
設定資料集を確認せずにうろ覚えで書いた結果がこれだよ!
挙句最終話では20年ともなってたり。ファンなのにどうしようもねぇ。

第298話
×殺し合いを強制され続けたこの3日。たった3日とは思えないほどに
○殺し合いを強制され続けたこの4日。たった4日とは思えないほどに

×殺戮の舞台の主宰者達が待つ宮殿の中心部へと迫った。
○殺戮の舞台の主催者達が待つ宮殿の中心部へと迫った。

×未だ死んでいないはずのタクティモンが知らぬ内に会場から抜け出していた
○タクティモンが知らぬ内に会場から抜け出していた

×司馬懿「〜この予言を実現させることこそ、我らの使命」
○司馬懿「〜この預言を実現させることこそ、我らの使命」

×血塗られた赤き魔剣に浸けこまれてしまった。
○血塗られた赤き魔剣に付け入られてしまった。

×幻魔大帝の力は、既に一介の剣士の領域を遥かに超えている。
○幻魔皇帝の力は、既に一介の剣士の領域を遥かに超えている。

×司馬懿は肩越しに背後に
○司馬懿は肩越しに背後へ

第299話
死亡表記を【死亡確認】から【死亡】へ

×ゼロは同様から一気に切り崩されていたことだろう。
○ゼロは動揺から一気に切り崩されていたことだろう。

×ゼロ「〜あいつはいつも、長く続かない平和を、何度終わらせても繰り返し引き起こされる戦いを、いつも悩んでいる。〜」
○ゼロ「〜あいつはいつも、長く続かない平和を、何度終わらせても繰り返し引き起こされる戦いを、どうにかしようと悩んでいる。〜」

×爆界天衝
○爆界天昇(300話も同様)

×勢いを留めず司馬懿にまで迫る。
○勢いを止めず司馬懿にまで迫る。

×――友よ〜君と共に在り続ける。
○――友よ〜君と共に在り続ける――

ゼロ達の状態票の下の▽を2つから1つに

×2人は視線を交え、ほんの一瞬だけ穏やかな笑みを浮かべて、すぐに鬼神の表情へと戻り、剣を構える。
○2人は視線を交えると、鬼神と見紛う表情のまま笑みを深めた。

×崩れ落ちそうになった膝を踏ん張り、一瞬俯けた顔を即座に上げる。
○背後へたたらを踏み、そのまま崩れ落ちそうになった膝を踏ん張り、前のめりになって一瞬俯けた顔を即座に上げる。

第300話
×『代わり得る自分自身』
○『変わり得る自分自身』

×姿は見えないが、ゼロにはそれこそが、自分の倒すべき敵なのだと直感し、一心不乱にセイバーを振るった。
○姿は見えないが、ゼロは直感的にそれこそが自分の倒すべき敵なのだと思い、一心不乱にセイバーを振るった。

×しかしその声調はタクティモンらしくなく、戸惑っているような調子が混ざっていた。
この一文は削除してください。

×今向けられている10の砲門――いや、2つの大砲は、
○今向けられている10の砲門は、

×両腕の極大暗黒砲を発射した。
○極大暗黒砲を発射した。

星割の後の▽を2つから1つに

×手を温かい何かが触れた。
○手に温かい何かが触れた。

×壊す以外に脳の無いモノなど、一体、誰にも止められるというのだ。
○壊す以外に能の無いモノなど、一体、誰に求められるというのだ。

×3人の帰還を、誰よりも逞鍛が驚愕した。
○3人の帰還に、誰よりも逞鍛が驚愕した。

×回天の盟約
○廻天の盟約(複数ありました)

×狼と虎の姿を持った斬撃は、常闇の皇の神体は完全に噛み砕く。
○狼と虎の姿を持った斬撃が、常闇の皇の神体を完全に噛み砕く。

×常闇の皇の本体は人間とさして変わらない。
○ムーンミレニアモンの大きさは人間とさして変わらない。

×魂たちを還るべき世界へと還り
○魂たちを還るべき世界へと還し

×そして、彼の願いを叶えるべく、そして3人へのせめてものお礼として、
○彼の願いを叶えるべく、そして3人へのせめてものお礼として、

×そして3人は、帰るべき世界へと帰って来た。
○そうして3人は、帰るべき世界へと帰って来た。

482 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/04/21(日) 23:05:20
以上です。以上のはずです。以上であってくれ。
妄想妖怪ロワの名簿作成時の悪夢はもう嫌だ。
ご覧のあり様ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。

483FLASHの人:2013/04/22(月) 01:34:32
>>481
修正完了しました
ご確認ください

484名無しロワイアル:2013/04/22(月) 22:18:45
>>483
確認しました。
私の不手際で御手間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした。
迅速な対応、ありがとうございます。

485 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/04/22(月) 22:19:18
>>484は私です。

486FLASHの人:2013/04/29(月) 16:11:45
ラジオ何日くらいがいいかしら……
GWの真ん中ってむしろ人はいないかなぁ

487名無しロワイアル:2013/04/29(月) 21:36:52
水曜日でも俺は一向に構わん!

488FLASHの人:2013/05/01(水) 00:47:46
んではとりあえず3話ロワにかけて3日の金曜夜にしましょうかね
時間は9時くらいから2時間程度で

489 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/05/01(水) 01:58:30
>>488
了解です

490 ◆XksB4AwhxU:2013/05/01(水) 03:31:18
桶。

491 ◆c92qFeyVpE:2013/05/01(水) 22:53:11
りょーかいっ

492FLASHの人:2013/05/02(木) 02:02:17
3話ロワ全体のまとめサイトができました
ここからこれまでまとめたロワには飛べます
それとFC2の上んとこに出てくるうざったいQRコードを出なくしたので
少しは見やすくなってるかなと思います

ttp://akerowa.web.fc2.com/3warowa/index.html

493名無しロワイアル:2013/05/02(木) 19:53:58
>>492
乙です!
次はどのロワが完結するかな。

494 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:00:38
まとめサイトの作成やリンクの整備、ラジオ企画などお疲れ様です。
完結はきっちりみてますが、リテイクやリアルの事情などで遅れてしまって申し訳ない……!

では、『Splendid Battle B.R.』の投下いきます。
今回は第二話・第二章。今回予告の漫画は下記のURLからどうぞ。

 ttp://www.eonet.ne.jp/~ice9/3rowa/etc_comic03.html

495 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:01:28
289-b 素晴らしき小さな戦争(Ⅱ)われら死地に踏み入る者たち

Scene 06 ◆ 黒の鳥・世界の歯車が軋み始める


 なんとも、安直な発想だね。

 世界を静かに眠らせることを使命とする鳥は、穏やかな声でそう言った。
 なにものにも染まらず、染まらぬものをも逃がさない、響きはほがらかに心を侵す。
 だが、軽薄そうに謳う鳥――齢三十を超えたかどうかという見目をした男の、双眸はひどく冷酷に光っていた。
 宵闇の輪郭をぼかす月の瞳には諧謔と超然が混淆して、見たものの裡にある空虚を暴き立てる。
 彼がため息をついて腕を組めば、襟巻から墨色をした羽根がこぼれ、白手袋に包まれた指先を包み込んだ。
 道化のごとく剽げた佇まいは世界を憎んでいるのか愛しているのか、あるいは許しているのかさえ余人に掴ませない。

 この箱庭にある鳥よ。
 貴方も『そう』だったのかな。

 ただひとつ、囀る言葉の自嘲だけが周囲の闇を揺らしていく。



 ◆◆



 足りないものがあるから足す。
 安直だという感想を撤回はしないが、使い方によっては、それほど悪い考えではないとも思うんだ。
 なにせ私は、時で滅ばぬ黒の鳥。箱庭の滅びを司る存在なんだ。自殺行為を破滅的だというだけで否定はしないさ。
 白梟ともども、他の者の主観から復元された存在<タイム&アゲイン>だからこそ素直な言葉もほうりやすいよ。
 それに、ここでこうしていると、失敗作を壊して行かれるあの方の気持ちを察することが出来る気もしてねぇ。

 ま、私も『たったひとつ』のために世界すべてを裏切っていける者だ。
 滅びを恐れ、喪失を嘆いて手を伸ばすこと自体にどうこう言うつもりはないよ。
 ただ、伸ばした手を離すべき時に至ってなおもぐずぐずしていると、結局世界はこうなるというわけだ。ほんとうに、
愛とは害意に他ならないな。なぁムラクモ。箱庭の楔たる鳥、ヴァルキュリアを手にかけた現人神よ。
 なんていうか、お前が掲げた天命と主の浮かべる理想は、わずかに色味が似ているんだ。悪い意味でというよりは、私が
好まない方向で合致している。だから、届かないと分かっていても意地悪を言いたくなってしまったんだなぁ。

  ――ひとがひとを殺し過ぎない世界を。

 ……まだ負ってもいない傷をさえ嘆いて、征く途を綺麗にしてみたところで、世界にはなにも実るまい。
 それは花に満ちる庭とて同じだ。すべてが白い花の色に塗り潰された楽園は、なにも香らせ得ずに滅びるさ。
 だって、綺麗だと思ったものだけを集めたというのなら、美しきを峻別するはずの五感は役に立たなくなるじゃないか。
 世界に息づいているものの、一体なにが綺麗であるのか、なにがそれを綺麗に見せたのかも見えなくなった世界で生きろと
いうのなら、人は情愛を注ぐべきを選べなくなる。なにを見てもいとおしいと思えなくなるだろうね。
 比喩表現が気に入らないなら、花を闘争にでも入れ替えたまえ。
 なにを当てはめるにせよ、そんな世界ではだれもが神のように生きてしまう。だから世界も壊れるというわけだ。
 それは推測でも、予測でもない。経験に基づいた確信で、私にとっての絶望ともいうべきものさ。

 でも正直、顰め面如く行う講釈なんてどうでもいいんだ。
 私はこの世界も気に入らないけれど、それ以上に、この世界に従うお前が嫌いだなぁと思うから。

 泣き言と感傷しかない、おもちゃ箱をひっくり返して戻さない戦争。
 あのちびっこのように、道を歩みきったはずの者が折れるまで紡がれる繰り言。
 胸が悪くなるほどに密で甘い感傷すら――胸が悪くなること自体に飽きてしまったから、感傷に浸らせていたものを
死なせてなかったことにする。そんな世界の様相を前にすると、すべてが嫌になってこないか。
 こんなふうに雪であるとか花だとか、美しいものたちをかき回しても、生み得るものなどありはしないよ。
 指を伸ばす前に発想したことを正答としているものにとって、世界は我を肥やすエサにしかならないから。

496 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:03:07
 ムラクモ。結局、お前もおのが力を自分自身にさえ使ってやれないんだ。おのが現状、そのありようの正しさを示すお前は、
相手方から「話にならない」と見放されることさえも「受容」とみなして、人の身で神に至らんとする自身を守り続けている。
 そうして自身が餓えないために他者と闘って意味を喰らうけれど、自らの意味は喰らわせない。
 魂が死んでいるなんて濡れ女は言ったようだが、何にも満たされ得ない自分に、お前はうんざりしていないのか。
 もちろん、あの玄冬を息子として育て、世界を内側から見ることで変化したのは私個人の問題で感じ方だよ。
 だけどそんなにもお前だけが正しくて、お前だけは変わらないのなら、ずっと自分だけを見ていれば十分じゃないか。
 なのにお前はこの期に及んで終わりきれずに、他のものを殺そうとするんだな。


  ゆっくりと息を吐き、ならばと黒の鳥は続ける。
  言葉が空に散じてほどけ、そのたび無為に心を凍らせてなおも口を開く。


 そうであるなら、そんなお前に『足りないもの』というのはいったいなんだ。
 過去を殺して未来を潰して、切り捨てるものばかりしかない現在にあって満たされもしない現人神。真理に到達しても
腐るばかりの死体を満たし得るなにものかは、死よりほかに与えるものの無い手を伸ばした先にあるというのか。
 いま、完全者が世界を無理矢理に抱き締めているけれど、それを儀式忍法に活かしてしまったのはお前だ。
 その先でも傷つかず繋がり得ず、すべてを投げ出して死んでいけるなら、……そうだな。赦さないよ。
 箱庭を滅ぼすものとされても世界や人々を憎まず、未来をも望み得たあの子<玄冬>。
 自身の罪を知り、玄冬と救世主とで創られた世界のシステムに抗おうとしたちびっこ<花白>。
 世界の平和をまえに萎れたちびっこを見つめて、籠の鳥と定義する己の心を揺らがせたあの人<白梟>。
 ああ、それとまぁ……代わりは創らないと仰った主の言葉を無視して、『代わり』にされた私<黒鷹>もだろうな。
 個人で完結など出来ない者どもの魂を、お前の裡の矮小なものを慰撫するために歪めたのなら、私はお前を赦さない。



 ◆◆



 言いたい放題言ってみたけれど、ここまで言えば、貴方にも伝わったかな。
 気分? よくはないね。私自身に心当たりがあることを札にしたんだから、すっきりなんてするわけがない。
 それでも口を開かなければ、『思考され得たものは棄却されない』この場のルールを利用出来ないじゃないか。

 ……あの儀式忍法の力で死に終われるかもしれないのに、自身の主観で世界を弄ぶ気分はどうかな。
 去ると決めたはずの世界に手を伸ばし、貴方を排斥したものにさえ手を伸ばすのは、どうしてなのかな。
 手を伸ばして、結局は消えていくだけなのが解っているのだと、私は勝手に思っていたんだが。

 ああ――だって、そうだろう。
 救いを綴って優しい物語を受け取ろうにも、他の誰かのためにあるようで腰が引けるのが貴方だ。
 息をひそめた背中は気持ちの悪い言葉に刺され続けているし、グリム・グリモワールの『魔法』だけに沿おうとしたって
迫る無意味が恐ろしいし、だけど足を止めることは一時しのぎにもならないと理解しているのも貴方だ。
 それでもまだ朝は、変化は自身の胸中にすら訪れていないのだと目を閉じれば、そこに何もありはしないことへの
焦燥にさいなまれると知っているから、膝の上に世界があるように振る舞うことさえかなわない――。
 逸脱しようにも、常軌を逸することさえ出来ないのが貴方や、あの男たちなんじゃないか。
 だから暴力を蹂躙を殺戮を短絡を欲望する自分から目を背けても胸中の自身<他者>にさえ呆れられる有様で、
 それでもまだ、かたりたいものがあるんだろう。
 かたりたいものを語るか、それとも騙るのか。私はどちらでも構わない。
 いずれにせよ、それは何かを信じるということか、こうあって欲しいと祈り願う思いなんだから。
 貴方の目に対面の打ち手さえ見えなくても、そもそも打ち手がいないとしても、ゲームはまだ続いている。
 たまらず汚した世界、詰みかかっている自分の手筋に殺されようとも、それでも好きだと貴方だけは言えるはずさ。


 ◆◆


.

497 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:05:13
Scene 07 ◆ 咲乱の間・透明な傘の内側より


 白梅の鮮華こぼれるなか、藤林修羅ノ介は深く瞑目していた。
 こころ澄ませばいくさ場に流れし雪の香を、自身の肌をなす忍術秘伝が吸い取ってゆく。
「は? ……ええー、なんだ、なんだよそれ。第三の選択肢にもほどがあんだろッ」
 淡く、果敢ない匂いから盤面に刻まれた【情報】――『合咲の間』が二重に分割されたことと、花白の自殺という
結末を手にした少年は、雪白へ荒々しく語尾をぶつけた。
 流された血の優しさに、抗うように目蓋を開けば、そこにはしかり、まなこがある。

「雪の香から情報を読み取る、忍法……やっぱ『匂追(におい)』だよなぁ。
 天華ちゃんの術そのものじゃなくて、俺なりの変奏だけどさ。名前だけもらっとくよ」

 化野天華(あだしの・てんか)という名前は、まだ、思い出すことがかなった。
 私立御斎学園で迎えた何度目かの六道祭、萬川集海の断章を奪い合う魔戦が始まる日に転校してきた狐の少女。
 血盟『化野生徒会』のリーダーとしてあった仲間の名を呼べば、失せて久しい胸も痛んだ。
 鋼玉の赤をした瞳に沈んだ悲しみは、されどいくばくもせぬうちにほどける。
 仮睡の余韻か、あるいは桜の香にも似て情の薄まる原因は、少年の精神でなく肉体にあった。
「しっかし、よろしくねぇなあ、なにもかも」
 口を開いた傍から、肉の薄い頬がくずれる。
 白く、きめの粗い肌が『紙のようだ』という形容は、露出した文字列と竹で出来た巻物の芯が超越した。
「もう四六時中くだらないことでも喋ってなきゃ、俺はコイツに全部持ってかれちまう。
 萬川集海の力を使わなきゃまだマシだろうが、それじゃなんにも出来ないうちにタイムアップだ」
 水は好きじゃないんだけどな。うそぶいた彼の唇に、ゆるんだ雪が染み込んでいく。
 それほどまでに、伊賀の末裔は自身を萬川集海そのものであると信じている。
「面白いな。藤林の、修羅ノ介」胡座をかいて刀を見分するムラクモの声に、喜色はかけらもなかった。
「自我を保つために抗うべきものとの同調を敢えて深め、死に体となってなおも闘志を収めぬとは」
 石床をすべった囁きの底にあるものは、いつしか主と従が逆転している。
 憂いと紙一重の疲労。特段面白くもないものを面白いと断ずる苦しさが、少年を見下ろす赤に映っていた。
 くるめきを覚えるほどに濡れた鋼の、赤い眼光が、雪とも花とも見えぬもので遮られたそのとき、修羅ノ介は風の流れに
触れて返す言葉の刃を喪う。いまも滅びにむけて時が進んでいるというのに、滅びゆく世界の今日という日が暮れたとて、
やって来る明日は雪に埋もれた昨日と見分けのつかぬ無明であったのに、それでも時の流れが嬉しい。
 自他の間にあるものの、なにひとつとして変わることなく「脳裡」で泡の弾けるような幸福が。自他の間に、なにひとつも
生むこともなく、認識の空白に痛む「背骨」の熔ける安堵が、――とうに原型がない「四肢」から「五指」に沁みる。
 死よりほかに思うこともない少年の、「爪」に覆われた「肉」がしびれていわれない多幸感がうたを運んだ。



 ◆◆





  ――――創って壊す〜、それが真理〜、しんらばんしょー。




 ◆◆



 壊すことの痛みも創ることへの躊躇も知らないヒトビトの声を、「耳」にしたのはなにゆえか。
 いま、まさに音楽的なまどろみに浸りかけていた修羅ノ介は、その声を聴きたかったからだと断じた。
「創って壊すー、壊して創るー。……イッゴー、イッゴー、リッサ―――イクル――」
 かすれた「のど」で歌の続きを引き取れば、夢のなかでは美しくあった誤解が崩れ去る。
 冴えた雪に韻律を載せれば、卑小で行き詰まるしかない思いも綺麗に。たとえば空から降る白い花の、風に舞い遊ぶが
ごとくに響くと思えたのに、自分の「耳」にさえ感傷と泣き言しか届かないとなれば笑ってやるほかなくなった。
 たがの外れた笑いで「胸」を開けば、壊れた誤解の招いた感傷が感慨に変じる。
「ああ――なあ、……ムラクモさんよ」
 忘我のもたらす深い息。そこに沈んだ名を、修羅ノ介は、ただ滑らかな音のつらなりとして捉えていた。
 雪を見通した先にある天井の、石の継ぎ目を見つめるしかない「後頭部」がしびれ、「目」の焦点が現世のどこにもない
紫明に合わされて盤面からずれ落ちるばかりの存在が自身の「肉体」であったものを構成する

498 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:07:12
 

  紙に、神に近づいていく。


 孤独に対しておぼえる安らぎ。永遠に対する感覚の鈍麻。これらが招くであろう死をいっとき忘れさせ、今、このとき
だけでも主を生きながらえさせる「胸」の昂ぶりさえ修羅ノ介を大地に縫い止めて離さない。
 忘却と停滞の肯定。それこそが生にしがみつくヒトガタ、「いのち」の性質さえ無為なものとしてしまう。
 なんだこれと、洒落にならねえとこぼした声は、はたしてかたちをなしたろうか。
 子供のむずがるようにもがいて、――紙のかたまりはぴくりともせぬまま、梅花のひとひらに口をふさがれた。
 なんだこれ、ではない。これを自分は知っている。萬川集海の断章を取り込んだとき、力に酔いしれて『神モード』などと
うそぶいたものだが、違う。あの、スイッチを操作するようにおのれの任意で変えられる状態と、これとは違う。
 銀色にひかって痛む、「眼」の前を青白く燃えて流れる星が塗りつぶした。
 黒焔の、華散るがごとくに翻る幻想は、九尾の妖狐が中天へ舞った夜に見たものだ。

  ――俺にはいくらでも時間がある。俺が俺を見失わないうちはな!

 六道ノ書と六識ノ書。萬川集海のうちの二巻をみずから散逸させたときに紡いだ言葉が「耳」に蘇る。
 秘伝書に自身を侵蝕させたことは、しかし計算のうちにあったことだ。
 この魔戦が盤面の、ひいては世界を形作る【情報】のひとつもなければ、自分は自分の定点を見失う。世界に関わらず、
そのありようを拒絶するという選択さえ、世界に抱かれていなければ選べないように。
 “喰らうべき意味が裡になければ”外側から取り込むしかないのだと考えて、探った相手は花白だった。
 この世界はどうすれば君に償えるんだろう。箱庭における唯一の被害者としてある玄冬の「顔」を見た救世主は世界と
折り合いをつけることすら出来ぬがゆえに正しく少年で、それだから死ぬことでしか存在しえないものだったのかと思えた、


  その思いも逃散する。
  逃げゆくいま<ヒト>との間にある距離を嘆いて伸ばした「手」が刻む文字で時をつかもうとあがく発想の
  健全に自分はまだヒトだまだ大丈夫なのだと安堵して「心臓」をさすろうと溢れるものを止められない。


 ならば自分こそが他者の定点、他者の情動を励起する、モノになる。
 過去のように死のように、他者から意識を向けられねば現れ得ぬ機能と成り果てる。
 もはや喪失への危惧もなく、そのくせ「膝」の裏の「腱」がひきつる痛みが恐れの役をはたしている。
 茫洋とたゆとう、思考がそのとき煤竹色に。大外套の役を果たす上着の、腕に通していない片袖で引き裂かれ、

.

499 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:07:49










     他者<自分自身>を認めた一秒で、藤林修羅ノ介は神の、死体からヒトへと戻っていた。









.

500 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:10:04
「うわあ」。
 のどをすり抜けた響きは彼が纏っていたはずの果敢無さを裏切って太く、間が抜けている。
 声からのぞけた生理的な――ああ、ああ。そうだ。もう自分にはこのヒトガタが自身の身体であるどころか、まるで、
これがヒトの、半端な温度に縛られた肉であるように感じられる――嫌悪感。いっそ「ひるんだ」と言ったほうが楽になる
思いの向かった先は『藤林修羅ノ介』が死して神となる過程かどこまでいこうと逸脱出来ない自分自身にか――。
 それこそとりとめもなく浮かぶ思考の、一切を現実が黙らせた。
 黒手袋に包まれていた男の爪が、修羅ノ介の視線に晒されている。節くれだった指と、肉の厚い手のひらが有する輪郭は
弛緩とかけ離れて、彼が自身の肉体を我が物にしていることがひと目で判別出来るものだった。
 すんなりと修羅ノ介に向かって伸ばされた指は、彼の吐息が飛ばした花びらの、赤い萼を軽々と摘む。
 自身の肉体を扱うことに慣れた男の所作は生理的な震えがくるほどに優しい。
 そうして震えは修羅ノ介の意識に背中を、腋下を二の腕を脇腹を腿を膝をくるぶしを土踏まずを思い起こさせ、
 書物が、肉体としての意識を模る。
 それを意識したときには、くぐもって固まり、不恰好に軋んでさえいる鼓動の、――幻想を取り戻したことによる緊張が
すすり泣きのような呼気にまで及んでいた。不随意のうごきで息を吸い込めば、もはや不要となった空気になめし革の
蒸れた匂いが鼻孔をつく。『ああこんなヤツでも汗をかくのか』と思い遊ばせたそのときに傘の、透明な内側からすべてを
睥睨するしかなかった修羅ノ介の花よりおぼろな認識を突き抜け


  半端な熱に触れた瞬間夢の淡いから世界が異物感を誇示して立ちのぼり、透き通ってあろうとするものの
  底に沈む鈍い、濁りを鋭角なものとして少年がたましいに流れる、赤いものにと突き込んでくる。


 だから、もう、藤林修羅ノ介は神に戻らなかった。
 紙たる自身が神に変ずるという逃避、透き通って口当たりがいいだけのひとりよがりに醒めていた。
『神モード』とうそぶいてまで現実にしなかったものの影を見た目尻に伝うものがある。肌が水を弾くさまを感じる。
 涙かと、あるはずがないものに鼻孔の奥を衝かれて――泣きたくなるほど、意識が自らの肉体を捉えている。
 根拠ひとつない自分の、体温で雪を解かすほど確かな在り方へなぜなど問わず、修羅ノ介は視線を上げた。
 淡く、果敢ない。恥ずかしげもなく白にまみれた世界にあって、鋼玉の瞳はそれ以外の色と、音と光をつかんで輝く。
 色は、泥砂にくすんだ都市迷彩の青で、音は、歯列を抜けた嘲笑の原型で、光は、つやめく無彩の黒髪だった。
「ああ――ちくしょう。こういうのアンタに言うとか絶対変だし、死ぬほど不本意なんだけどなぁ」
 眉間が深く落とした翳を、みずから払って強く光る武官の瞳を見た、少年の目は気安い口調と裏腹に緊張している。
 平然と手袋をはめ直したこの男。父よりは少しく若いだろうムラクモよりほかに、修羅ノ介が視える世界にはいない。
 そう思えるほどに閉塞し客観というべきものから遠ざかった状況で、ゆえにこそ客観を連れて来る他者が。どれほど抽象に
溺れようと世界に残る不純物が、自分に常軌を逸させはしなかったのだと今にして気づく。
 動かない武官の表情に二の腕がひりつく感覚は、それこそ父を盗み見る時間でおぼえたものに近い。

「でもいまは、もういい。俺はお前で……じゃねぇな。お前がいいよ」

 ムラクモ。
 精神の血肉を取り戻した身体の紡ぐ名が空気をふるわせ、銀花をもたつかせた。
 どうにもならないものを前にふてくされながら引き下がる、子供の言いようが口へと残る。
 言葉を費やしたとて記号に出来ず、視線で射抜けども磔にされず、思惟の果てにさえ汲み尽くせぬ不可侵の、
「……お前は、私とあの女に勝つつもりではなかったのか?」
 他者は、しかし鼻にかかった笑みで修羅ノ介に『応じた』。
 深い響きを有する、現実認識をあざけって怒りを引き出す言葉には拍子抜けするほど傷つかない。
 永遠の少年は、雪と花を割り裂く男から、自分が体感していたものと同質の空虚を視ているがゆえに。
 ムラクモ。神に至ろうとするものに意識を向ければ――そこで、暴力と軽侮に対する怒りにとらわれさえしなければ、
赤く沈んだ光をのぞかせる瞳が想い出のように死体のように相対する者の胸を衝く。
 呼気を詰める切なさこそは、過去を忘れ現在を手放し、未来を迷妄に押し込めた先刻から消えない思いであった。

501 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:12:11
「莫迦を言うなよ。お前は俺とか完全者サンに向かって行って勝つとか、そんなんないでしょ?」
 仰向けになっているしかない修羅ノ介は、ゆえに愛惜ともいうべき情をもって武官に応える。
 彼を直視し立ち向かおうとしなければ、彼は世界から消えていく。命の器による【封鎖結界】の罠を仕掛け、『影弥勒』を
使って『天魔伏滅の法』を展開し、『綾鼓ノ儀』で理想に夢さえ抱かせぬ強敵であっても関係はない。

「だって……ほら。ここで俺らがみんな死んじまって、世界の全部が壊れちまったら。
 絶対、誰も気付けない。俺もお前も、この天井突き抜けた宇宙のどこからも忘れられて、いなくなっちまう」

 あンの八咫烏だって、俺ら『化野生徒会』が墜としちまったし。
 天才的にエロい――えげつなくろくでもなく、いやらしいにもほどがある札さえ、事無草はまなうらに追憶する。
 こうして追憶しなければ生まれ得ないからこそ、自分は現世にない過去にありもしない熱を燃やしているのだと、
 萬川集海による侵蝕と闘う際に覚えた絶望とて、こうして、喰らえずともしがみ続けて慣れていったのだろうと、
 なにものかを呑めぬまましがみ続ける代わりに男へ刻まれたのが、額から頬骨に落ちる翳であるのかと、思った。

「濡れ女みたいには、言ってやれねえけど……でも『斬らないならお前、また負けるよ』。
 その得物の、美の一閃で、物語<Winter Tales>なんざすぐに終わらせちまえる冬の圧制者だってのに」

 あぁ、でも、――斬っても負けたんだっけ。
 ささめいて冬の気配たる雪を水にほどけば、修羅ノ介の双眸には九重ルツボの魂が宿る。
 これまで命を落とした忍びたちの名をもって過去を刻む忍術秘伝が外典・『天下忍名録』にかたどられた他者に触れても、
彼女の置き土産であろう哀れみにちかい愛惜に口を開かされても、情報を溶かし落とした心水は揺らがない。
「その、ヒトガタをすら作れぬ身体で、私に勝つつもりか」
「なんでよ? 俺の負けがお前の勝ちとか、その逆になるような場所じゃないっしょ、ここはさ」
 けれども哀れみの行く先は、この、短い間で移り変わりかけていた。
 意識せねば現し世に浮かび上がることのない、昨日の体現。それがムラクモなのだというのなら、昨日を愛し、あるいは
傷つけてみたところで、振り向かせることはかなうまい。日向影斗という『いま』を武器として、彼に立ち向かおうとした
九重ルツボと、いまの自分はきっと同じだ。『過去の、想い出から人間を取り出そうとする』自分をこそ哀れんで、



                 ――――所詮、夢は夢。過去を追っても、何も得られぬ。



「……うるっせえんだよ『花狂い』!」
 哀れむことがかなったからこそ、修羅ノ介は冬の気配に怒声をもって応じられた。
 怒り。紙の身体が何より恐れる焔のごとき感情こそは、ムラクモという他者に声を放ったつもりでいて、そのじつ自分に
声が返ってくる感触を前にすれば、どうしても抱ききれなかった思いである。
「何も得られない。夢を見続けたくて目を閉じたって、夢を見られる自分にさえ冷めちまってる。
 そんなのはもう知ってるよ。でも、それを分かっててしがみつくのはいつだって九尾の――狐じゃねえか」
 けれども今、殴り返されることのないのだろう場所から響いた声に、少年は酷薄な笑みをもって応じた。
 ヒトは完全な受動にあって、はじめて己の本性を露にする。藤林修羅ノ介。のらりくらりと立ち回り、ときに『悪魔忍者の
再来』とさえ言われよう策を弄して勝ちを奪う「戦術」の得手。怒りで自身を燃やす《火術》の達人。
 過去の喪失を取り戻さんとする彼の本性は、ならば変化を拒む盲信であり拘泥であり、憎悪であった。
「だけど、それで俺を黙らせようってなら、当てが外れてんだよなぁ……。
 本当は何も喪ってないなら、本当は傷ついてないなら、あのときつらかった自分は何だったのかって、思うよ。
 でもあのとき、止まれなくなってた俺を止めた狐<天華ちゃん>だって、ここばっかりは止まらずに走るだろうさ」
 けれどこのとき、修羅ノ介は決めた。
 都合よく日常を謳歌し夢を思い出し、ひとりよがりに咲き散らかす自分をこそ赦さないと決めてしまった。

502 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:14:29
「俺はもう、黙らないし誤魔化さない。この『傷痕』に何度でも目を覚まして、それでもほっとく不義理を許す。
 だって腐る傷のかさぶた剥がして、そんな安い快感で満足するかよこんな、世界に――――萬川集海・巻ノ七!」

 怒りの激しさを裏切るように、紡がれた声はさえざえとしていた。
 先ほどの絶対失敗<ファンブル>で、何も起こらなかったことも幸いしたのだろう。数多の巻物、忍法の秘奥綴られし
紙片が部屋の全域に鮮烈な嵐を起こす。それが骨となり肉をなして、藤林修羅ノ介のヒトガタが再び模られる。
 骨組みの心もとない身体が纏うのは、しわや汚れのひとつとしてない、白の学ラン。
 私立御斎学園の生徒会に所属する者だけが着用を許される、いささか時代錯誤な『勝負服』であった。



 ◆◆



Scene 08 ◆ 無限の始源・闇夜が食べるは影の色


「……忍法、『秘身宝鑑』」
 凛然と響きわたったはずの、声はしおれた反響となってあるじの耳朶を叩いた。
 秘伝書の紙は着衣の上から四肢を覆って垂れ下がり、事無草を木乃伊のごとくによどませている。
 雪と花の白で満たされた世界に著しく透明度の低い自身を認めながら、修羅ノ介は背筋を伸ばす。
 凍りついた世界のなかでヒトビトが――自分が、泡沫となって氷を濁らせる空気となっていようと構うことはない。
 どんなに終わりかけた世界でも濁っていた双眸を開けば、血と泥にまみれた肉は、心臓は脈を打つのだと信じて、

「ああ、あ――ははッ。ホンっト、清々しいなあ……カラダを動かすってのは」

 信じれば、空白への恐怖さえ覚悟の扉に。この先に通じるものへと変わって彼を動かしていく。
『かみ』より降ってきた御言に逆らうのではなく、言を受けて弾んだと言うに相応しい転回を遂げた修羅ノ介の、しかし
右腕は動かない。様々な陣形や忍法、特技の策を断簡として授けてきた萬川集海は巻物の数こそ揃っていても、そこに
刻まれた情報を伝える精神の血<インク>が圧倒的に不足している。
「なんだ、完全者サン刺されてたんだ。その深傷で《リザレクト》してんなら、しばらくは起き上がれねえか」
 完全者に乗られている者の姿が、けれど、今ならよく見えた。
 どうということもない短髪を、真理を得た『完全者』――電光機関の力を使ったムラクモらのように白く染めた青年を、
修羅ノ介は知らない。うつ伏せになったパーカーの、影からのぞくネクタイさえ彼を『ヒトビト』に埋もれさせる。
「一応聞いとくけど、あいつ、誰?」
 忍びが声をかけるまで無個性の影に落ち込んでいたのは、ムラクモとて同じだった。
「高崎隼人(たかさき・はやと)……『ファルコンブレード』。UGNのエージェントだ」
「あ、そっちなら知ってるわ」どうということもない顔で、修羅ノ介は頷く。「ま、始末されてないんなら生還するだろ」
 そうして彼は、その認識で射抜くべきただひとつ<Sロイス>を定めて一歩を踏み出す。
 つねに自身を貫くなにかに耐えているような、この男。目を逸らしてしまった瞬間に世界から消えてしまう空虚に向かって
いくというのなら、脇目もふらずに進まねば――指で、腕で身体で、彼のあばらをこじ開けることさえかなわない。
 東風吹かば萬川集海の紙片がまたたいて、ふたりの場所を満たしていく。
 そのなかでいちど息を吸い、呼気と変えた修羅ノ介は、得心がいったとばかりに息を漏らした。


「俺の《ワーディング》にも反応しねぇってことは、やっぱ、そっちも『もう』オーヴァードか」
「そのとおりだ。藤林修羅ノ介――愚者の黄金<デミクリスタル>に適合した、新たなる『神の現実態』よ」


「ヤだ」取り繕うような言葉を、修羅ノ介は即座に断った。「俺は自分を人間だと信じきるコトにしたんで、そういうのは
もう要らねぇ。ていうか、もともと俺は『新神宮殿』とかどうでもいいって、言って――言ってたよね?」
「私やあの女と敵対する【使命】などないとは、その口でさえずっていたな」
「うん、そう。そんで、でも隼人がデッドマンになるまでにお前と戦うとかそういうのは……言ったっけなぁ……」
 だが、正確無比な返答と温度のない視線を受けて、忘れたふりをする言葉尻は濁った。
 生きていようとすることの濁りとは違い、まったくもって美しくはない光景の先で蒼い刃の鯉口が切られる。

503 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:16:11
「『神の死体』……お前の屍を、いま此処に創り出すか。あるいは、その手で私を倒してみるか」
「あー、ダメダメ。俺とお前に殺しあうのは無理だって、ちゃんと説明したでしょ?」
 月下美人の銘が刻まれた刀、世界にあまぎる雪を呼ぶ遺産を恐れることなく、修羅ノ介は歩を進めた。
 分かってないなら、もっかい言うよ。気負いのない言葉は、水が、波紋をつくるように彼らの世界を侵蝕する。
「俺はお前を選んだ。壊れかけた俺の全部を壊して、もっかい同じに創ろうとしたお前を心に刻んでるんだ。
 まぁ……俺が勝手にお前『で』立ち直ったのかもしれねぇが、それならやっぱ、俺はとっくにお前を選んでるんで」
 それは、白に雑ざった影とよどんだ修羅ノ介の身ごなしも同じであった。
『幽霊歩き』と呼ばれる、忍者の高速機動のなかでも最も遅い足取りは、けれどムラクモに捉えられない。
 より正確には、修羅ノ介の纏う文字が『影』と変わるさまを、捉えようとさえしていなかった。
 レネゲイドウィルス。第二次大戦前夜には『ヴリル』や『魔術』と呼ばれていた力でもって、身体能力や思考能力の
増大が果たされていようとも。いいや。レネゲイドウィルスによる力を有するからこそ、彼は足を止めている。
 この空間における音波の伝達、匂いの拡散――。
 藤林修羅ノ介が『いた』場所を中心とした地点から、それらすべてが遮断され、

(こいつ、が、オーヴァードのエフェクト。《イージー、フェイカー》……?)

「――ッ、ぅ――――!」
 転瞬、ムラクモに肉薄していた少年は、声にならぬ声を喉奥に詰まらせた。
 とうにヒトから離れた身体の、それでも文字が熔け堕ちてゆく異形化<イレギュライゼーション>。
 文字が渦をなし、影となって場を支配するイメージが使い手をも貫いて、久方ぶりに『肉体的な痛み』をもたらしたのだ。
自身を構成する萬川集海に刻まれた【情報】をアヴァターとして操る幻想。これまでも忍法や奥義のかたちで現実にしてきた
都合のよさが、もはや都合よく切り離せないものになったのだと、交錯以前の接近で叩き込まれる。
「ちぃ……ホンモノ、触るまで怖さが分かんねえとかッ」
 はっきりとした声が出て、はじめて《無音の空間》が壊れたことを知った。
 その体たらくを笑ってやる前に、膝のほうが笑っている。そのふるえが情報までも揺さぶって、ああ、……思い出した。
 この力。影と、他人様の発現したシンドロームをコピーして使う力は『ウロボロス』のシンドロームに属するものだ。
 それは、忍術の秘伝書から力を引き出して使う者が目覚めるにはなんとも似つかわしい、


  借り物を我が物顔で操る力。
  物欲しげに喰らった他者の意味を自身の進化のためにしか使えない能力。


 外部からの刺激を受けて進化するという力への絶望が、修羅ノ介の存在に叩きこまれた。
 空を見れば星と消えてしまいそうな、モードにすらならない『神』になりかけたときに何度も、何度も響いた言葉。
 カミからの御言が響く瞬間に世界からは色も音も、光さえも消え失せるのだと今さらのように知覚する。
 きっと、この現象には誰も気付けない。神鏡による未来視を扱えるムラクモでさえ、気付いているかは分からない。
「そん、でも……知るか。腹が減っても選り好みする感傷なんざ、俺は、分かってたって知らねえッ!」
 ゆえにこそ、感傷で腹など満ちなかった少年は、強く声を張ってみせた。
 世界と折り合いをつけようと譲歩して、それでも残った意地と見栄が、声に折れることを赦さなかった。
 至近で、その声を聞かされたからか。かたくななまでに動かないでいた武官の「顔」が、はっきりとしかめられる。
 動かぬがゆえに相手の感情だけを励起してきたモノ――神としての表情が、大きく揺らいだ修羅ノ介の視界でさらに歪みを
増して植物の。あるいは無機物から生命の芽吹くように色と、音と光とをにじませた。
 見開かれた双眸が詰まった呼気が熱を帯びる、そのさまは顔を伏せた少年の目に見えることがない。
「ほら。借り物ばっかでも、射抜くべきヤツには、届いた」
 見えなくとも、爪先立ちになって相手方の首にかじりついた腕の、左で鼓動を感じ取っていた。

504 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:18:14
「な――――」
「こういうのはないって思ってた顔だろうな。でも残念。俺はセクハラを、男にだってするんだぜぇ……」
 濡れ女とは違って、俺は、お前に優しくする義理もないわけだしさ。
 ある意味においては絶望的な言葉を耳朶に這わせて、修羅ノ介はムラクモの、剣を振るう右肩に額を預ける。
 斬らないならまた負けるよ。その言葉のとおりに、武官は負け続けている。人間に価値はないと言い放つわりに他者を
『面白い』と評し、人の身を保って神に至ろうとする彼は、価値はないとした人間にこそ意味を求めてやまない。
 ただひとりでは闘争など成り立たぬことを知悉しているがゆえに、ヒトとの繋がりを鏡面のごとく構築する、――。


  九重ルツボ<死者>の余韻を超え藤林修羅ノ介<生者>自身の認識が芽吹きひらいて枝をなす。
  神。かの者の存在を意識したものの想いを照り返す機能を願うヒトの過去に沈んでなお悲しまぬさまに心が灼ける。


 ――ふたりでいれば、寒くないね。
 自身の裡にあるなにものも返さぬ男<無為の咎人>に相応しい言葉が思考の端へ浮かんだが、即座に叩き潰す。
 それを言ってしまうには、フラグも好感度もイベントも足りていない。理合いだけに満ちた相手の抱えているだろう、
過去と名のついたブラックボックスに比すれば、わずかな言葉と時間で作った手筋はあまりに脆いものだ。
(でも、ヒトの敵愾心を煽るコイツは【人類の敵】だろうが、ジャームになれるようなヤツじゃない。
 自分ひとりで完結出来て、相手の言動にタイミングよく応えて衝動を満たすだけの存在なら……塞とかいうヤツに、
前後不覚になるまで怒る理由なんかない。絆を持てないっていう存在なら、過去にだって執着出来ねえよ)
 だのに「小賢しい」との評には、瞬速の抜刀どころか、四本貫手も軍靴による鋭い蹴り上げも乗りはしない。
 いつの間にか適合させられた『愚者の黄金』とやらが大事なのか、やり過ごせると判断したか。――せめて、後者を
潰さねば、過去に逃れるムラクモを意識して繋ぎ止める修羅ノ介の側が彼の孤独に取り込まれかねなかった。
 そうなればきっと、『貴方はそこにいていいのか』と男に問い続けたルツボのように死ぬしかなくなってしまう。
 けして返らぬ熱情を抱き続ける自分が可哀想になってしまうか、熱情を注いだものへの憎しみにとらわれてしまう。
(ええい。死。死ぬ。そりゃあもう、都合よく家族を蘇らせる『モード』なんか使わないって言ったけどさ!)
 こんな体になっても、こんな力を手にしても、それだけはいやだった。
 忘我の果てに命を落とすなど、無意味などあり得ない書物を核としていなくとも認められない。鼻がぶつかりそうな
ほど近くにいる、無意味に、執着をあっさりと捨てて死ねるがあまりに無意味に生きることすら出来そうな男は吐き気が
するほどおぞましい。だからこそ相手にすがって体温を奪い鼓動を盗み、心を、聴き取ろうとしている。
 それもきっと、事無草ではない『藤林修羅ノ介』の。ヒトのかたちを崩していながら常軌を逸することのかなわない
小市民の性だった。あるいは、世界から拾いあげた意味を喰らい刺激を受けて進化するものであるものの業だった。
 外界に在るなにものかを理解出来ぬ責が自身にあるとして、それをも呑み込めるように――。
 愛せるように、少年は思考を続ける。同時に自分が理解出来ないものを繋ぎ止めて記号になるまでしがみ、相手を
標本にしてしまうような行いにさえ快感をおぼえる事実を認識して、

「お前の得意分野に付き合う気はなかったけど、こういうのも立派に暴力だろ。
 でもまぁ、意外と肌が気持ちいいしなんだか眠たくなる匂いがするから、冗談で済むまでに本題に入ろうか」

 だからそれがなんなのだと、開き直って視線を上げた。
「正直言ってさぁ、俺、このままならお前を躊躇なく傷つけてやれると思うんだよ」
 紙でいたからか『影』を扱うシンドロームに目覚めたからか、ともすれば内閉に向かいかねない自分自身の心持ちに
こそうんざりする。絶望のなかにあっておぼえる、不思議に停滞した安堵。死にも近いあの感覚を、もう二度と味わいたく
ないというのなら目の前にいる他者の、鏡写しのように赤い双眸を見なければならない。

505 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:20:14
「俺の思ったコトを叶えるなら、たぶん出来ることはふたつ。
 お前が、自分が無意味である事実を嫌になるくらいに愛していくか、アンタが自分のたましいを守りたくなるくらいに
傷つけてやるかだと思うんだけど、そっちのコトよく知らないから後者は選びやすいんだ。
 ホント……戦争とかおぼろげに覚えてるコトはあるし、学園にいた頃とかの想い出もきっちり刻んでんだけど、魔戦の
全貌となるとハイライトみたいな記憶しかないんで、俺自身、再構成にゃ苦労したんだよねぇ」
「……まるで、最終決戦<クライマックスフェイズ>からセッションが始まったように、か?」
「は、――え、セッションッ?」
 紙の身体を突き放して、同時に『砂時計週報日本語版』の縮刷版をほうってきたかみさま。
 自分と同じ『人間のなりそこない』が、鏡像のように触れ得ども奪えぬ他者であるのだと認めて、
 この世界に、不可侵の他者が。自身の餓えをしのぐためにあるのでない者がいることにこそ安堵を、覚えたい。

「『次のリプレイのセッションあり。至急連絡求む』――って、すげえ。
 リプレイってラノベになるヤツでしょ? あンの猫耳、莫迦っぽく見えてガチの遊侠<テーブルパンク>なのな」
「兵棋演習か、それを基に作られたウォーゲームのようなものだろう。騎士ならばやっておいて損はない」
「えっ、なにこれ。お前がそういう遊びをしてりゃ楽だったなと思うけど、それがないコトに安心する……だと?」

 そうして、ひどく殊勝なことを考えていたのに、言葉を交わせば思考は回転の速度を増した。
 安堵でいいのかと問う声はカミでなく安堵に浸された胸から届いて、そのたびに自分が憎らしくなる。
 火のつきかけた憎しみを怯懦や惰性に拠らずいなし、衝動に溺れることなく、この足で歩きたくなってしまう。
「さて。だったらやるべきコトも見えてきたよね。けっこう、俺のやりたいコトともかぶってるかも」
「フ……もう、手数というべきも残されてはいないというのにか?」
「まあ、そうだなあ。白子ちゃんとか【電撃作戦】得意だったけど、ソレももう使える局面じゃねえから」
 挑発的な笑みへ応えないことに、ムラクモががっかりでもしてくれないだろうか。
 忘れ水のごとくに沸いた思いを受けて、修羅ノ介は肩をすくめた。『天下忍名録』から取り出したというほかない
九重ルツボも瑣末な歯がゆさを重ね、それでも他者を解体する行いへの誘惑を殺し続けていたに違いない。
 そのはずだが上っ面をなぞるようなやり取り、その手応えのなさへ、自分はすでに寂しさを感じ始めている。
 いっそ戦ってみたほうが、お互い楽しくなれるのではないか。いいや。では、なぜこの男から戦わない――。

「だけど、戦う理由が……俺たちの知らない昨日に来て欲しいってのは、そっちだって同じだろ?」

 回転する思考の転回を受けて言葉が口をつき、修羅ノ介は、この男に感じる親近感の源泉を視た。
 想像出来ない、世界は創造出来ない。完全者――ミュカレらも、それは同じだ。この世界は嫌だと思っているくせに
常軌を逸した世界の土台から妄想することは出来ないまま、これまでに『旧世界』から受け取った意味を拾って言葉を。
最終解決策に最終戦争、新世界に現人神といった語を繋げて、幻想を、なんとか現実にしようとしているだけの、


  少しく影に色がついたばかりのヒトビトが盤上へ唐突に放り込まれて理由のひとつもなく戦えるわけがない。


 転瞬、修羅ノ介を動かしたのは自身に対する恐怖であった。
 絡んだロープをほどく程度であった思考の回転が加速しすぎて、このままでは相手を構成する螺子や歯車さえバラバラに
分解してしまう。常軌を逸するのと他者を守らないのとは違う。
 守られなくとも生きて死んでしまえるようなヤツであるからこそ、自分はこれを喰らいたくはない。
「なんだ、それは……?」
 違う、違うと繰り返してどうにかヒトの側にとどまろうとしたくせに、指が甘えてムラクモの服を掴んだ。
「あー、えっと、その。手汗がひどいなーって錯覚がしたからつい」
「ならば、せめて外套にしておけ」
「え、なに、脇腹弱いの?」
「……………………死ね」
 だのに、この反応さえシナリオに見えてしまうまでに掴んで良かったと心から思えた。
 ああ、そこはお前は死ねでいいんだ。斬らないと負けるのに殺すとは言わないのか言えないのか、だったらアンタは
どれだけ優しく殺されてくれるのかみさま。これを胸中に留め置く藤林修羅ノ介もずいぶん優しくなったではないか。

506 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:23:11
「ま、嫌がるなら仕方ないな。お前の悔しがったりとかするところ、一回見てみたかったんだけどさ」
 へらへらとしながら一歩後ろに下がった少年は、まだ動かせる左手を振って汗を払うふりをした。
 文字。情報。影。種々のしがらみを纏ったままで、力に目覚めた事無草は同族喰らい<ウロボロス>の左手を伸ばす。

「さあ、綱引きを始め……始められない……?」
「なんだと……」
「だって俺、もうお前のこと選んじゃったじゃん。なんでこんなに『真面目じゃないけど変な話』に行くんだよ!」
「私の知ったことか! それを悔やむのならば、少しは考えてものを言え――」
 開いた指の銀花に冷えてゆくその先で、ムラクモの眉がしかめられた。
 許容とかけ離れた怒りと自制が前にでた顔つきへ、新たに加わった色は困惑。
 眉間をひくつかせている彼の視界から左手が収められ、その先では藤林修羅ノ介が『腹を抱えて笑っている』。
「やったぜ。『真面目じゃないけど変な話』……茶番や楽屋落ちって死ぬほど大事なもんでさ。
 楽屋なんざ必要なさげなアンタがそういうコト出来るように、雰囲気を壊して、まずは楽屋を創らせてもらったよ」
 真の創造は、破壊なくしてはあり得ない。
 日常を壊され家族を奪われ力の使い方さえ去勢され、それらすべてを手放してなお影に囚われた、
 少年は外界から引いてきた言葉を諦観に拠らず受け容れて、なおも抗うようにひねた笑みを口角に刻み付ける。


「なぜなら、『破壊こそが創る事そのものだからさ』。
 師匠……イゴさんのゴッドハンドにゃ及ばないが、これが俺の忍法『イゴイゴリサイクル』だ!」


 ――――口上を放った藤林の、修羅ノ介の出で立ちからは、冬の気配がゆるやかに拭われていた。
 痛みを喪わず、なれど傷に固執せず。ヒトガタを成したときの言葉どおりに動く少年は、今こそ世界という激流に、
自分自身という濁流に、無自覚という清流に正しく抗うものとしてある。
「さあ、だから、今度はそっちが選べ。ロイスなんざ一方通行の片思いだけど、それでもここで選んでよ」
 先ほどの言に沿うのならば、「壊してよ」と同義の言葉を、彼は優しい響きでさえずる。
 世界も人も赦せないのに手放したり見放したりすることだって出来ない、お前、この世界がけっこう好きだろ。
 好きだという言葉の白々しさを知っていながら、それを口にすることで生にすがる化け物が、
「それならもう、ここでかみさまを殺して全部終わらせて、誰も悲しまない世界にしよう」
 世界へ色を、音を光をつけるように甘く、せつない声でうたう。
「……でもリリカルポップ・ダンジョンシアターは恥ずかしいんでちょっと今風に」
 言い終わって、はじめて羞恥心の存在を思い出したとでも言いたげに、でたらめな言葉をつなぐのだ。


「『カミサマヤメマスカ』――ッて、え?」


 ああ、ああ。……歌を覚えたばかりの声でわめくな。
 何を無理をしているのか、何に堪えているのか何を望んでいるのか、
 そのすべてを知らずともお前は。『お前たち』は自儘に、自力で救われて征くのだろうに。
 失ってなお喪わぬものどもは、こうして、命を落としてなお落とし得ぬものさえ奪ってゆくのだ。
 そうして、それが。このひととき、命を賭け金として遊戯に興じることが、なにゆえかひどく面白い――。



 ◆◆


 ▼ムラクモ用リバースハンドアウト
 シナリオロイス:完全者  推奨感情 ポジティブ:懐旧/ネガティブ:侮蔑

 キミは、過去に箱庭の楔となる『星の意志』の声を聞いたことがある。
 魔戦の始まる前、旧世界に死をもたらす黒き鳥・ヴァルキュリアを打倒した一因もそこにあった。
 だが、星の意志を取り込んだという九重ルツボは、キミに向けてこう言った。
「『いびつな戦役<バロック・キャンペーン>』を私戦<フェーデ>に変えられるときは、今より他にありませんよ」
 すなわち終わるしかない世界で、ここからは一騎討ちをするしかないほど限定された状況に向かってしまうのだから、
 自分の好きにしてよいのではないかと。

 キミは、完全者の手で望んだ世界――無価値と断じた人間が減った世界を創られている。
 だが、それでもキミはあの魔女に刃を向けた。
 あのとき、キミは、掲げた使命以上のなにを望んだのだろうか。


 ◆◆


.

507 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:25:21
 情報の塊である『萬川集海』を、おのが核としているがゆえにか――。
「……やはりな。そういうことかって、ツナセンなら言うだろうよ」
 あるいは茶化すような言葉のとおりに、予想から外れていなかったであるからか。
「何を我慢してたのかなって思ってたけど、それこそこの盤をひっくり返して『壊すこと』だったわけだな」
 藤林の、修羅ノ介は、問題の要諦を捉えて言った。
「それならお前はやれる……のかなあ? なんだかんだ、人減らしも完全者サンにやってもらったんじゃない」
「……では、やれた方が良かったのか?」
「んー、まあ、どっちもヤだね。だって俺、こんなザマでもまだ死にたくないし」
 でもまあ、そうやって照れ隠し出来るアンタにほっとした。
 さながら保護者であるかのように言う少年。神を辞めたという人間の、神のごとき安堵を前にして、
 私は、どのような顔をすべきか解れぬままに息を吐く。
 創って壊す。その言葉に自身が釣り合わぬなどと、この草は欠片たりとも考えまい。

  ――救世主の使命なんかより大事なものはあるよ。

 神であるならその不遜をこそ受け容れよとばかりに私の前へ立つ、賢しさへ水と桜が混淆する。
「で、どうやってこれ壊すの?」
「影弥勒が忍法【合方】。終焉の石<デミクリスタル>を埋め込む際に、お前の『絆』を奪っている」
「はぁ? 絆、て――そいつは『魔獣の絆』ッ!?」
「そのとおりだ。この絆が綾なすは、妖かしどもが忍法【魔界転生】。これで一手は稼げようが」
「うん、俺それが本業だから知ってるよ! てぇか、俺もソイツは使いたいんだけどマジでここにあったの!?」
 言いながら、藤林の若者は忍術秘伝の巻物を四肢より乱雑に引き出した。
 そのうちの『どれが頑丈なつくりをしているのか』認識して、私は、壊すために瞑目する。
 迎撃でなく反撃でもなく、純然たる進撃のために征く、耳朶にバリトンが染みた。

「あぁ、無い物はしゃーねえ。……ならもう、せめて『エゴ』じゃなく『愛』をもって、そいつを使いやがれ!」


  世界の何もかもが許せねえ、俺が許すから。


 化け物であろうとする人間をこれほどに許容する、この少年こそ神なのではないか。
 追憶の入り口にあって、あれの忍法はいまだ力を発揮しているようであった。



 ◆◆



 追憶の行われる、どこにも届かない一瞬で、藤林修羅ノ介は息を吐いた。
「ったく、さすがに軍人なだけあって、戦い方とか分かってやがる。
 この戦争、結局は壊しあい……てか、空白<ブランク>になってる過去の創りあいなんだよねぇ」
 結局、ちらとも視線を向けられなかった完全者と『ファルコンブレード』高崎隼人……忍法の布石であるとはいえ、
下手をすれば衆人環視の戦場ロマンスのような何かを演じかねなかった状況を思えば、そこにため息が続く。
 そうしてついに、ため息は八つ当たりとなって絶対の他者にと向かった。
「微妙に乙女ちっくになった俺が気持ち悪いんだけど、せめてなんか言わせろよあの莫迦。
 【魔界転生】の反動も『4点になっちまったヤツ<絶対防御>』で防げたけど、人目のあるとこで見せたくな――あ」
 それは駄目だと思い直すと同時、思考も醒めた。
 かなり緊張していた自分自身を見つけた少年は、これから纏うと決めた『影』に意識を向け直す。

 真面目じゃないけど変な話。
 その『変』で脳が動き、喰らった意味から新たな何かが生まれるのならば、それはべつに構わない。
 だが、真面目じゃないうえに変なところさえない話は無為や益体もないといった形容を通り越して無意味に。
 ――単なる無意味ならばまだいいが、恥ずかしげもなく白くて淡い、透き通るものに堕してしまうと思えたのだ。



 ◆◆


.

508 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:27:14
【交錯迷宮・咲乱の間】
【ムラクモ@エヌアイン完全世界】
[状態]:【人類の敵】、侵蝕率120%、衝動:解放、青×黒カラー
[シンドローム]:ノイマン/エンジェルハィロゥ(クロスブリード。思考強化と屈折率の変更)
[エフェクト]:《コンバットシステム:白兵》、《エクスマキナ》、《陽炎の衣》、《神の眼》、《ゆらめき》、《朧の旋風》、他
[Dロイス]:反抗者、??? [ロイス]:完全者(Positive:懐旧/○Negative:侮蔑)
[忍法・奥義]:【達人:《刀術》】、【合方】、【秘剣『人間華』:クリティカルヒット《封術》】
[エクストラアーツ]:大乱れ雪月花【桜嵐】(月下美人装備時のみ/属性:神斬、氷撃+5、敵勢力全体を攻撃)
[装備・所持品]:六〇式電光被服@エヌアイン完全世界、神鏡@シノビガミ、銀朱の外套@花帰葬、
 月下美人【天霧】(Mサイズ・刀/パライズ、AP+9、オーバーソウル種に特攻)@ラストレムナント、
 魔獣の絆(流派を問わず【魔界転生】が使用可能になる)@シノビガミ、???
[思考]:【魔界転生】で過去時制のドラマシーンに移行。修羅ノ介にロイスを結ぶ……?
[備考]:儀式忍法『天魔伏滅の法』と、その変奏『綾鼓ノ儀』を発動させています。
 この儀式忍法が発動している間、【生命力】がゼロになったキャラクターは必ず死亡します。
 侵蝕率は120%固定。ロイスは取得可能ですがタイタスの昇華は出来ません。
 Eロイス(エグゾーストロイス)をもたず、通常のロイスを取得しているため、ジャームではありません。


【藤林修羅ノ介@シノビガミ・リプレイ戦】
[状態]:【右腕使用不可】、【限界寸前 >> 終焉の継承者】、侵蝕率???%、衝動:憎悪、【生命力】残り2点
[シンドローム]:ウロボロス/???(ブリード:不明。影の使役・能力の模倣)
[ロイス・タイタス]:愚者の黄金(Dロイス)、ムラクモ(Sロイス・○Positive:親近感/Negative:憐憫)
[忍法]:【末裔:鏡地獄】、【内縛陣:《呪術》】、【御斎魂:《意気》】、【早乙女】、【達人:《火術》】、【鏡獅子:《火術》】
[奥義]:【傷無形代:絶対防御《呪術》】−同じシーンにいる者からひとり選び、【生命力】の減少を4点まで無効化する
[背景]:【他流派の血(常世:屍人使い)】、【末裔(伊賀者:鏡地獄)】、【政治的対立】、【目撃者】
[装備・所持品]:萬川集海@シノビガミ・リプレイ戦、御斎学園の生徒会専用白ラン@シノビガミ、
 終焉の石(デミクリスタル相当/レムナント種に特攻、アニメート無効、ユニークアーツ+5)@ラストレムナント、
『砂時計週報』日本語版@シニカルポップ・ダンジョンシアター 迷宮キングダム
[思考]:過去から想い出<人間>を見出……そのプライズ俺が持ってたのォッ!?
[備考]:修羅ノ介の体を構成しているのは、萬川集海@シノビガミ・リプレイ戦です。
 弱点【目撃者(超存在たる『忍神』と遭遇したことで現在を正しく生きることが出来ず、同時にふたりまでにしか
 感情を抱けない)】を克服する条件を満たしました。
 自身の心を確かめ、ショックを受けることでオーヴァード@ダブルクロス The 3rd Editionとして覚醒しました。
 《リザレクト》、《ワーディング》、《イージーフェイカー:無音の空間》以外のエフェクト・ウロボロス以外の
 シンドロームは不明。また、「制限:侵蝕率100%・120%以上」のエフェクトを使うことは、彼に大きな負担を強います。


【完全者@エヌアイン完全世界】
[状態]:【人類の敵】、転生中、???
[装備・所持品]:???
[思考]:???
[備考]:高崎隼人(たかさき・はやと)@ダブルクロス・リプレイ・オリジンに転生していました。

【高崎隼人@ダブルクロス・リプレイ・オリジン】
[状態]:侵蝕率100%未満、重度刺傷、《リザレクト》中、白い髪と赤い瞳、???
[シンドローム]:モルフェウス/ハヌマーン(クロスブリード。物質錬成と反射神経の強化)
[ロイス・タイタス]:生還者(Dロイス・侵蝕率を減少させる際にダイス数が増加)、???
[装備・所持品]:完全者@エヌアイン完全世界と共通
[思考]:???
[備考]:参戦時期は『ダブルクロス The 3rd Edition データ集 レネゲイズアージ』巻頭コミック以降。
 《リザレクト》による自動回復の速度が低下しています。

509 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:29:40
【高崎隼人(たかさき・はやと)@ダブルクロス The 3rd Edition】
『ダブルクロス・リプレイ・オリジン』のPC1。
 UGNチルドレンとして様々な街に赴き、レネゲイドと能力者から日常を守る少年。
 普段は気怠げにしているが、任務はけして放棄せず、やる気になれば実力以上の力を発揮する。
 かつては、絆を喪ってジャームと化したオーヴァードを人間に戻すために始められた「プロジェクト・アダムカドモン」の
 実験体であり、暴走した計画において『ダインスレイフ』と呼ばれる戦闘用人格<Dロイス>を与えられていた。
 現在のコードネームは『ファルコンブレード』。戦闘においては物質を錬成するモルフェウスの力で思い出の写真から
 日本刀を作り出し、ハヌマーンの超スピードをもってそれを振るう。


【ウロボロス@ダブルクロス The 3rd Edition】
 サプリメント『インフィニティコード』で追加された、オーヴァードの十三番目の能力。
 別のシンドロームに目覚めた者が持つエフェクトを取り込み、自分の力とすることが出来る。また、世代によって
 進化するウィルスの特性どおりに喰らった能力――外部刺激からの自己進化を繰り返す特性に秀でている。
 純粋にウロボロス自身のものといえる能力としても、『影』と呼ばれるものを扱う力が挙げられる。
 藤林修羅ノ介のプレイヤーである田中天は、『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・ナイツ』で、公式リプレイ
 初となるウロボロス・シンドロームのPC、炎の魔神ラハブを演じていた。

【Dロイス(ディスクリプトロイス)@DX3】
『上級ルールブック』で追加された、自分に対する特殊なロイス。
 取得したキャラクター自身の過去や特徴、強い思いを、データ的な裏付けも含めて表現する。

 ▼反抗者(レジスタンス)
  キャラクターが、とてつもなく強大な敵手と戦っていることを表すDロイス。
  このDロイスを持つ者が有する不屈の精神は、ぎりぎりの死地においてかれに勝利をもたらす。
  万物の理は闘争にあるとしたムラクモが反抗<闘争>をやめるのは、勝利か、死を迎えたときだけだ。

 ▼愚者の黄金(デミクリスタル)
  レネゲイドウィルスの結晶・賢者の石の紛い物に適合したことを表すDロイス。
  デミクリスタルに適合した者は、石の力を引き出すことで一度だけエフェクトのレベルを上げて
  使用することが可能になるが、代償としてHPを失う。
  また、このDロイスを持つ者が死亡すると身体は塵のように崩壊し、あとには力をほとんど使い果たした
  デミクリスタルだけが残される。
  藤林修羅ノ介が手にした石は、『神の現実態』たるエヌアインがその身に埋めたものだった。

 ▼生還者(リターナー)
  このDロイスを持つキャラクターが、強い自我で衝動から生還する者であることを表す。
  代わりに、このDロイスを持つ者は他のDロイスを取得することは出来ない。
  隼人の記憶、けして手放せない日常に対する思いはリプレイ本編の彼を幾度も人間につなぎとめた。


【Eロイス(エグゾーストロイス)@DX3】
 レネゲイドに侵蝕されて理性を喪ったジャームのみが取得出来るロイス。
 超人を日常へと繋ぎ止める絆<ロイス>をすべて無くして燃え尽きた魂のなかに、わずかに残る人間性の残滓は、
 歪んだ心が求める衝動を満たすためにかれらを動かす。ジャームとなったものはEロイスと、自身のもつ
 力の特性を示すDロイス以外のロイスを新たに取得することは出来ない。

【リバースハンドアウト@DX3】
 サプリメント『ユニバーサルガーディアン』で追加された要素。
 他のキャラクターに対して非公開の背景を持ってセッションに参加する。
 情報判定で内容が分かる【秘密】とは違い、内容を公開出来るのは持ち主のみである。

【合方@シノビガミ】
 血盟の仲間と連携行動を行うことを示す、常駐タイプの「装備忍法」。
 戦闘中、自分と同じプロット値に血盟の者がいる場合はあらゆる行為判定に+1の修正がかかり、また、対象にした
 血盟の者との間で同意が得られれば攻撃を行う代わりに忍具<支給品>の受け渡しを行うことも出来る。

【魔界転生@シノビガミ】
 妖怪や年を経た獣らがゆるやかに集う「隠忍の血統」の流派忍法。
 戦闘中、自分が攻撃を行う代わりに【生命力】を消費して、自分をシーンプレイヤーとした過去の
 ドラマシーンに移行する。一度の戦闘に回しか使えないが、戦闘しながら手数を増やすことが出来る。

510 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:31:46
Scene 09 ◆ 断簡・散り往く桜の語部


 ああ、やっと起きたね。おはよう。
 目覚めはど……え? 寒くはないのかって、なんで、僕の側がそんなこと訊かれるのさ。
 そりゃ、こんな雪だけどさ。
「ここはどこだ」とか「なぜ助けた」とか「お前は誰だ」とか、まずはそういう質問をするんじゃないの?
 え、あ……うん。そう。僕がきみを助けたんだ。この――雪がやまないから上着かけたり、焚き火とかしてみたりで。
 きみは戦いだけが得意なのかと思ってたんだけど、そうやって、自然に聞き出すことも出来るんだね。

 でも、やっぱり名前とかは忘れちゃってるか。
 ……ああ、ごめん、こっちの話。きみは知らなくても平気だからさ。

 きみの名前は『アカツキ』。 
 日の出とか黎明とか、そんな意味合いの言葉だね。
 ここ、底なしの迷宮だから太陽なんて見えないんだけど。きみの戦いぶりは、たしかに太陽みたいだったよ。
 うん。あの森の向こう、見える? 大陸間弾道列車砲『グングニル』――えっと、なんか、ものすごい射程の鉄砲……?
 あ、それ。大砲。そんな危ないモノが、あそこにあった要塞を見つけたヒトたちを一網打尽にしてさ。
 それだけなら【発射台】の拠点を壊しちゃえばいいんだけど、この迷宮の核を支配したヤツ……ものすごい雷使いの、
黒須左京ってバカが魔物まで呼び出しちゃったんだよね。小鬼とかバンダースナッチとか、ザコならともかく火炎魔神みたいな
ヤツらまでいる砦なんて、下手に行ったら各個撃破されるのは目に見えてるでしょ?

 だから、僕らはアイツらに戦争を仕掛けたんだ。小隊<ユニオン>を組んで魔物の群れと戦うのが普通だったっていう
侯爵様……ダヴィッドってヒト……ミトラっていう種族なんだっけ?
 あー、うん、ゴメン。訊かれたって覚えてないよね。
 ソイツと、ソイツの脇を固める四将軍……うーん。二刀を使う女の人の他には、四本腕の猫<ソバニ>とか、二本の足で
歩ける魚<ヤーマ>とかカエル<クシティ>とか、変だけど強くて、ムカつくくらい真っ直ぐなヤツらがいたんだ。
 で、ソイツらのところに忍者とかオーヴァード、ランドメイカーみたいな強いヤツらがたくさん集まってきてたんだよ。

 それでも、結果はこのとおりさ。
 この平原って、もとは森だったところだし、一緒に戦ってたヤツらも、もう何人も生きちゃいない。
 完全者を一回倒すまではいけたんだけど、本陣に【リセットスイッチ】ってのが仕掛けられてた。ほとんど、っていうか
全部そのせいだな。
 なんていうか、ひどい名前の戦罠<トラップ>だよね。
 そいつを誰も見つけられなかったのが悪かったんだけどさ、攻め込んでいった側は消耗したままなのに魔物や罠は全部
元に戻りました、なんて身も蓋もなさすぎると思わない?
 で、そのままダヴィッドたちも初手を取られたから、最後は撤退戦にもならなかった。
 攻めれば大抵の敵は蹴散らしてたし、護りにまわっても鉄壁だったのに、兵の士気って簡単に上下するんだね。
 僕? 僕は後方にいたよ。剣なら少しは使えるけど、あのとき風邪をひきかけてたから。だからきみを拾えたんだ。
 う……うるさい。子供だからなんて言うな。『始末屋』のアリサやエヌアインは、僕より年下だったんだぞ。

 名前? そっか。僕の名前も、もう一回言わなきゃいけないんだ。
 花白。僕は花白っていうんだ。きみの切り札の名前は、たしか『桜花』だったよね。
 ん。春に咲いて、この雪みたいに空から降るしろいはな。――これは、桜と同じ名前だよ。

511 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:33:48
※イゴイゴリサイクル
『花帰葬』を制作したHaccaWorks*の二作目、『あかやあかしやあやかしの』の劇中に登場する幼児向け工作番組。
 白手袋にステッキを持った紳士「イゴさん」が、相手役の子供「イゴンくん」と会話しながら、ゴッドハンドで様々なものを創造(破壊)していく。
「よく分からないがカッコいい」というのがヒトビトの評価であるらしく、テトリスが視た過去の風景においても、修羅ノ介らの世界に住まう
 子供たちが番組のテーマ曲を口ずさんでいた。
 "創って壊す〜それが真理〜しんらばんしょー♪"

※スプレンディッド・ビッグ・ウォー(Splendid Big War)
 交錯迷宮の森林部・閃刃の間で「戦争の夏」を終わらせた大規模戦闘。
 人類の敵と迷宮支配者が集う【要塞】を陥とすことに加え、そこに据えられた【発射台】――「大陸間弾道列車砲
 『グングニル』@ダブルクロス・リプレイ・トワイライト」を破壊して、再度の砲撃を止めるのが寄せ手の目的であった。
 集団戦闘の指揮に慣れた青年・アスラム侯ダヴィッド@ラストレムナントと、小隊の長<ユニオンリーダー>を
 務める者の手によって束ねられた強者は、それぞれが持ち得た力を尽くして拠点を落とすことに成功する。

 だが、拠点の本陣に仕掛けられ、発見されなかった【リセットスイッチ】の罠が発動したことで戦況は一変。
 これまでに倒した魔物や死んだはずの完全者らが蘇った状況にあって、死力を尽くしたがゆえに消耗した
 ダヴィッドたちは撤退戦以前の状況に立ち向かうことを強いられる。
 大盤振る舞いの許された『素晴らしき大きな戦争』は、月下美人の力を引き出すユニークアーツ『大乱れ雪月花』
 によって終わりを告げた。

512 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:34:52
以上で投下を終わります。
そして、藤林修羅ノ介(シノビガミver.)のキャラクターシートと登場人物一覧を「公開情報」に。

 キャラクターシート:藤林修羅ノ介 ttp://www.eonet.ne.jp/~ice9/3rowa/etc_cs01.html
 登場人物一覧 ttp://www.eonet.ne.jp/~ice9/3rowa/etc_chara.html

TRPGリプレイを読んだ後にキャラシートを眺める時間も好きなんで、そういうところが状態表とかにも出てます。
『ダブルクロス』くらいになるとエフェクトの量が多いのでアレなんですが、そっちもうまいこと見せられればいいな、と。
ページ名にしている『アイテム・コレクション』『キャラクター・コレクション』等にもお世話になりました。

513名無しロワイアル:2013/05/03(金) 21:23:04
うん?もうラジオ始まってる?

514FLASHの人:2013/05/03(金) 21:28:23
ラジオ一応開始です。
こちらからどうぞ

ttp://www.ustream.tv/broadcaster/new/3580224

515 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 22:20:10
あ、遅れましたが元ネタは『花帰葬PLUS+DISC』の「打鶏肉」です>289話
ゼロ羽>一羽>二羽>三羽(天・地)>四羽>五羽(陰・陽)と、
タイピングゲームのなかでも分岐があったんで。
つまりはそういうことです。はい。

516 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 22:20:56
……スレ間違えッ……!(1ゾロ感)

517 ◆uPLvM1/uq6:2013/05/03(金) 22:43:17
皆忘れてると思うけど変態ロワ投下します。

518158話 走る変態  ◆uPLvM1/uq6:2013/05/03(金) 22:45:32
安錠は涙を流しながら、城を走り回っていた。
走り回っていたというより、逃げ回っていたという表現のほうが正しいのだが。

(殺される殺される殺される殺される殺される殺される……)

彼のスタンスは殺し合いはせず、ただ隠れ続けること。
しかし、バトルロワイアルが中盤に差し掛かった頃に、謎の気持ち悪い生物に見つかった。
そして生死をかけた鬼ごっこが始まったのである。
そのため、立ち止まればその生物に食われて死ぬ、と安錠は思っている。
が、自分を追いかけていた生物が、既に死んでいることに安錠は気づいていない。
安錠を追いかけていた生物、レギオン・ムクロはキシンによって退治されていた。
クルクル回転しながらレギオンに突っ込んでいく様は、まごうことなき変態であった。
安錠にとって幸いだったのは、キシンが自分の存在に気づかなかったことである。
もしキシンが存在に気づいていたなら、既に安錠の命は無かったのだから。
そんなこんなで、安錠がもう謎の生物に追いかけられていないことに気づくのは、少し先の話である。
と同時に、最終決戦の場である最上階へ近づいていることに気づくのも、先の話。

【安錠春樹@新米婦警キルコさん】
[状態]:恐怖
[装備]:拳銃@現実 おなべのふた@ドラクエシリーズ
[道具]:基本支給品一式、エロ本
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破したい……俺は無理。
1:止まったら殺される……!
2:死にたくねえ!
[補足]
安錠春樹は追っ手がいないことに気づいていません。
また、最上階に向かって走っていることにも気づいていません。


□□□


さて、安錠の存在に気づくことなくレギオンを倒したキシン。
彼もまた、最上階に向けて変態的な速度で走っていた。
いつものような変態的な動きはできないが、それでも変態的な速度で走り続ける。
ちなみに、走っている方向は安錠とは全く違う方向だが、最上階へと向かうもう一つのルートでもある。

(ジュスト……もうすぐでお前の敵はとれる……!)

最上階にはジュスト殺した、髭をたくわえた老人。
恐らく奴もドラキュラであろう、なんとしてでも奴は殺さなくてはならない。
はじめは優勝するつもりだった。
だから他の参加者を躊躇無く殺した。
しかし、最上階に奴がいるとなれば話は早い。
敵を討つのだ。
奴を殺すのだ。
ドラキュラを、殲滅する。
邪魔をするものも殺す。
彼の頭の中には復讐という二文字しか、ない。


【マクシーム・キシン@悪魔城ドラキュラ】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:日本刀@現実 ヨーヨー@現実
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本:主催を殺す。そのためなら他の参加者も容赦なく殺す。
1:最上階へ向かう。
2:邪魔をする者は殺す。

519158話 走る変態  ◆uPLvM1/uq6:2013/05/03(金) 22:46:05


□□□


「ワシのことはいい! 早く最上階へ急ぐんじゃ!」
「で、でも! 亀仙人を置いていくことなんてできないよ!」
「早く行くんじゃ!」

一方、ふんどし仮面一行は危機的状況に陥っていた。
亀仙人がいまにも、落とし穴に落ちそうになっているのだ。
ギリギリ床を掴んでいるのだが、最早命は風前の灯火である。
亀仙人にはもう、右腕がない。
従って、左腕でしか掴むことはできない。
片手で自分の全体重を支えているのだ。
さらにここまで、最上階に向かって休まずに移動していたので、疲労も溜まっている。
限界は近かった。

「クッ……! 少しでも休んでいればこんなことには!」
「…………ひとついい?」
「なんだ! お前も見ている暇があったら手伝え!」
「…………普通は、あんなみえみえの罠には引っかからないよね?」
「…………そうだな」

ムッツリーニこと土屋康太が指差したのは、落とし穴の手前にある台。
そこにはエロ本が置かれている。
そう、亀仙人はあのエロ本を取ろうとして罠にかかってしまったのだった。
他の三人はあからさまに怪しいなと思い、取ろうとはしなかったが、亀仙人は違った。
普通に取りに行った。
結果、今の状況に至る。
ふんどし仮面とクマ吉はそのことを思い出し

「ああ、じゃあ別にいいか」
「亀仙人! 君の犠牲は忘れないぞっ!」
「ええっ!?」
「よし、最上階に急ぐぞ」

あっさりと亀仙人を見捨てることを決めたのだった。
今までのやりとりはなんだったのだろうか。
この数分後

わしは ふかい ふかーい やみの なかへと
てんらくした。
そして そこによこたわる ドクロたちの
なかまになるのを まつだけになってしまった。
ざんねん!!
わしの ばとるろわいあるは これで おわってしまった!!

亀仙人は死神を見たという。

「あんな罠に引っかかりにいくなんて、亀仙人はまさしく、しんのゆうしゃだよ!(笑)」


【亀仙人@ドラゴンボール 死亡】
【残り5人】


【ふんどし仮面@銀魂】
[状態]:限界寸前、疲労(中)
[装備]:盾@現実 
[道具]:基本支給品 月刊チェヨンス@ギャグマンガ日和 上条の右手@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破する。
1:最上階へと向かう
2:亀仙人……お前のことは忘れない……

【クマ吉@ギャグマンガ日和】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:ジャスタウェイ@銀魂×10 西洋の鎧@ギャグマンガ日和
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破する
1:最上階へと向かう
2:亀仙人……プークスクスwwwwwwww

【ムッツリーニ(土屋康太)@バカとテストと召喚獣】
[状態]:疲労(中)、フラッシュバックによる無効化の可能性
[装備]:クサリ@悪魔城ドラキュラ
[道具]:基本支給品 エロ本 輸血パック@バカとテストと召喚獣
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破する
1:最上階へと向かう
2:…………なんで、引っかかったんだろう

520 ◆uPLvM1/uq6:2013/05/03(金) 22:46:40
というわけで158話目終了です。
おもっくそ忘れてましたすんません……

521 ◆MobiusZmZg:2013/05/08(水) 17:27:13
『Splendid Little B.R.』、ちょっとSSの内容を修正したので報告を。
黒須左京からアカツキに結んだロイスの感情、「憐憫/殺意」を、
ダイス振った結果に沿って「親近感/殺意」に変更します。
自分以外の誰かへ、ポジティブ・ネガティブで表裏一体になった思いを抱くのが
ロイスなんですが憐憫は間違ってもポジティブじゃねえよ!w

と、報告の義務はあまり無いんでしょうが、他のどなたかに見られてる・どなたかに
伝えているという観点は持っていたいのでこちらに。
次の投下は……またちょっと色々仕込む羽目になるんでゆっくりになりそうですが、
そのネガティブ感情に尖りまくった左京さんと、アカツキのお話になると思います。
雷使いどうしの対決とか見た目からしてカッコいいですね!

522名無しロワイアル:2013/05/08(水) 22:00:30
>>520
へ、変態だー!?
最強戦力と思われた亀仙人が割と初期の頃のノリで墓穴掘ってクソ吹いたww
クマ吉とふんどし仮面もあっさり見限りやがってw
次もどうなるのか楽しみにしてます。

>>521
あと3話詐欺(褒め言葉)がどう転ぶのか常に楽しみにしています。
TRPGが良く分からないのが残念な所。小学校の頃は友人に付き合ってやってたんですが。

折角だから雑談ネタも振ってみる。
皆さんこの3話ロワ企画で知って、読んでみたい・見てみたい・やってみたいと思った作品はありますか?
自分はワイルドアームズ3とトトリのアトリエです。
ええ、想い出ロワに影響されましたとも。
しかしバトライドウォーに買いそびれたマクロス30に迷っているDIVAf、
やりこみ中のUXにいつでもやりたい大神……最近は良作が多くて困る。

523名無しロワイアル:2013/05/08(水) 23:39:26
>>522
ゼクレアトルかな…>読んでみたい

524名無しロワイアル:2013/05/09(木) 23:15:51
>>522
読んでみたいと思ったのは想い出ロワの『レジンキャストミルク』、
やってみたいのは剣士ロワの『大神』だなあ……。
前者は殊子のキャラが、後者は神さびた色合いの世界観がよく伝わったのです。
で、もう持ってるしやってるけれど、作品に影響されて触り直したっていうのが
『クロノ・クロス』と『ワイルドアームズ3』でした。
書き手さんさえよければロボロワにイルランザーとかフェイトとか出てもいいんだよ……
と無責任に思っていた読み手だったので、9D氏の手によるクロノ・クロスは嬉しかったッ!w

TRPGは >522 氏とは逆に、小学生の頃に出来なかったけれどTwitterなどの
オンライン募集をとおして十年越しの夢がかなった! やった! ってヤツでしたねー。
『シノビガミ』『ダブルクロス』ともに、リプレイ読んでても面白いですし、後者はたしか
アニメ版『氷菓』でも遊んでるシーンが出てきたり、声優さんの参加もちょこちょこあるので
「あのゲームなんなの」とか「主人公が若林神だと……!?」とかから読んでみても面白い気がしますー。

525名無しロワイアル:2013/05/10(金) 00:33:19
>>522
大神やりたくなった
前から気にはなってたんだけど手を出せてなかったんだよな

526 ◆nucQuP5m3Y:2013/05/10(金) 17:31:34
>>522
割と把握率高いので改めてってそんなにないんですが、
やっぱレジンキャストミルクかなあ
あとはスパロボ効果もあるけどSD三国伝!

>>523
やったー!書いたかいがあったというもの!
まあ読む人を選ぶタイプなので手放しで推薦できない感はありますが
それでも読む人が増えたら嬉しいことこの上ない!!

527名無しロワイアル:2013/05/10(金) 19:34:46
は、花帰葬(小声)
花白の最期に震えたけど乙女ゲー?なんだよなぁ

528 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/05/10(金) 20:30:58
>>524
俺好みの発想だ……(下っ端風に)>ロボロワにフェイトでもイルランザーでも
というか、隙あらばグランドリオンを魔剣にしてスバルかエックスにプレゼントしようと画策していましたw
ちなみに、グランドリオンは剣士ロワではオキクルミと共に孫権の真の勇気によって救われ、最後はゼンガー(α外伝)と共に壮絶な最期を遂げました。
あとは本編中にダリオぐらいしかクロス要素を入れられなかったのが心残り。
俺とお前達でトリプルグレン団(要するにグレン2人と鬼リーダー)とか考えていた時期もありました……。
余談ですが、クロノ・クロスがお好きでしたらファントム・ブレイブがある意味オススメ。
人間と亜人種が存在=種族間の差別や軋轢がある、というクロスでも存在したお決まりパターンを完全無視。
最初から、あらゆる人種が一つの世界の住人としてごく普通に共存して暮らしております。
ファルガやイレーネス、ゼルベス、亜人の賢者に是非とも見せたい世界です。

>>大神、三国伝やってみたい・読みたい
書いた甲斐が、あったというもの!
大神で注意点は、オキクルミは終盤に登場する重要人物ということですね。
あと三国伝は漫画版(風雲豪傑編、英雄激突編、戦神決闘編、計8巻)がオススメ。
漫画だとSDガンダムシリーズのメインテーマ『光と闇の戦い』が描かれているのと、曹操の苛烈な一面が強調されているのもポイント。
アニメに比べて孫権が地味というか劉備と曹操に食われ気味という難点がありますが。
アニメもアニメでメイン主人公であるホンタイさんを蔑ろにし過ぎている点が非常に気に食わない。
プラモキットでは、轟大帝孫権、真・翔烈帝劉備、玄武装呂布、呂布+天玉鎧セット、紅蓮装曹操+猛虎装孫権セット、天熾鵬司馬懿サザビー
などが特にお勧め。

529 ◆MobiusZmZg:2013/05/11(土) 12:27:04
>>528
うおお、熱い……!>真の勇気
ラスト三話で十分伝わりましたが、『光と闇の戦い』には、それこそ
グランドリオンとイルランザーは大事な存在だったろうなあ。
>524ではうっかりトリ外して返答しちゃってなんでしたが、『クロノ・クロス』には
テキストにおける言葉つきから何から、色々影響されました。
大好きなゲームのひとつに、いまだ思い入れを持ってくれてる方が見つかったのも嬉しいところです。

そして異種族のちゃんぽんというと、自分の場合はサガシリーズですとか、
自分のロワなら『ラストレムナント』がミトラ(人間)・魚・猫・カエルの四種族がごた混ぜに
平然と生きてて、その世界にプレイヤーとして立つのがたまらなく好きですね。
調べるかぎりでは『ファントム・ブレイブ』は隙間時間でも遊びやすそうな感じなので、
機会があれば触ってみようかと思います。


最後に、『花帰葬』が気になるあなたは……PSP版、やりましょう(笑顔)。
RPGロワの「勇者と魔王」を掘り下げるために触ってみて、最初は女性のヒロインが欲しくて
仕方なかったんですけどw それでも「この世界はどうすれば君に償えるんだろう?」を
はじめとした台詞に力がありますし、雰囲気作りも巧い。志方あきこさんのBGMもいい。
(同人版が出た当時、志方さんご本人がシナリオを読んで必要だと思ったシーンにBGMをつけたのだとか)
なにより勇者(花白)と魔王(玄冬)のうち片方が死ぬエンディングが多いし、世界を滅ぼす雪の表現が
綺麗なのに、けして死を美化していない姿勢はロワというか、ひとの生き様を書くうえでも役立つかもしれないです。

530名無しロワイアル:2013/05/27(月) 00:58:30
続きのプロットは頭にあるんだけど、
なかなかそれを文章化できぬぇ

531名無しロワイアル:2013/05/27(月) 21:40:36
>>530
いっそソードマスター形式にしてみよう(暴論)
当初は最終回をソードマスターにしようと本気で考えていたのもいい思い出ですw

黒幕「俺は1回攻撃したら死ぬぞぉー! ウボァー!!」
一同「えぇー!?」
主催者「待て慌てるなこれは孔明の罠である」

532名無しロワイアル:2013/06/09(日) 19:09:17
パロロワ系列のbotなど見かけるので、ちょっと作ってみました。

ttps://twitter.com/3rowa_bot

登録したつぶやき数は、いまの時点では130程度。
さすがにこのスレではリクエストを受けられないですけど、想い出を楽しむ時間などが生まれれば幸い。
読み返す間にも琴線に触れる表現や切り口が多くて、作業の手がしばしば止まりましたよ!

533 ◆XksB4AwhxU:2013/06/09(日) 21:25:07
おお、すげえwこんなの作ってくれるとは!

534 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/09(日) 22:18:18
>>532
素晴らしい。覗いてみたら早速剣士ロワの一節が出ていてしんみりしました。
少しでも皆さんを楽しめたのなら、俺は満足だ……。
ところで、剣士ロワ死者スレラジオとかやってもいいでしょうか?

535名無しロワイアル:2013/06/10(月) 00:01:32
私は一向に構わんッッ

(ん?死者スレラジオ?
 死者スレネタ投下でもなく、剣士ロワをネタにしたラジオでもない?
 一体何が始まるんです?)

536名無しロワイアル:2013/06/10(月) 00:55:30
たしか漫画ロワとかの死者スレでやってた、登場人物のロワ内での行動とか
異名、ネタなんかを紹介するヤツ……かな?>死者スレラジオ
たいてい、パーソナリティが見せしめのひととかなんだよねw
予想が間違ってたらあれですが巻末漫画読んだり、ギャグ調のおまけシナリオを
見たりするのが好きな自分もばっちこーいですよー。

537名無しロワイアル:2013/06/11(火) 00:06:15
3話ロワbot、1日12ツイートで全130ワードか・・・
全部見終わるのは結構掛かりそうだな

538 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/13(木) 19:33:40
>>535-536
いいんですね!? やったー!
>>536の方の説明の通りで、基本ギャグでネタ満載でカオスです。三国伝の公式ページぐらい。

漫画ロワの死者スレで停滞していた死者スレラジオを勝手に再開させて以降、ほぼ毎回投下していたのは私だし、
ロボロワに至っては死者スレネタの大半が私のネタでした。人気投票の集計と発表もやってたり。
そうか、死者スレラジオを知らないロワ住人の人もいるんですね……ジェネレーションギャップってやつか(多分違う)。

539 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/13(木) 19:34:16
司馬懿「剣士ロワ完結記念」
逞鍛(今更だなおい)
「「死者スレラジオ特別編、名前だけ出たあいつら」である」

司馬懿「さて、今回の死者スレラジオは表題にある通り、剣士ロワの最終3話で名前だけ出て来た者達を、たまに本人もゲストに呼びつつ、本編で解説役の位置にあった我らが直々に解説する」
逞鍛「孫権や衛有吾のように、本編で普通に出番があった奴もいるがな」
司馬懿「ちなみに、前回まで死者スレラジオのメインパーソナリティを務めていたのは右京さんとデスティニーガンダム。見事なボケとツッコミであった」
逞鍛「突っ込み不足で呼んでた参加者じゃないキャラが、何時の間にか居ついて死者スレラジオまでやってたとかどういうことだ」
司馬懿「所謂イボンコとウェンディの法則である。そしてフルカラーRPG編で剣士キャラだったから余裕のセーフ。では、早速始めるとしよう」

その1.幻魔皇帝アサルトバスター「刃鳴散し、華と散れ。類稀なる剣士達よ!」

逞鍛「そういえば、あと3話ロワで最初から死んでいた主催者はこいつだけだったな」
司馬懿「我らと同じ主催者でありながら哀れな奴。ちなみに死者スレでは曹操将軍によりアイマスファンとなり参加者達と和解した。
     推しアイドルは天海春香と佐久間まゆ」
逞鍛「奴もまた、俺と同じく常闇の皇によって闇へと堕ちた頑駄無だ。その為、俺達の世界と大神の世界が同一世界であるかのような描写が散見されたが、全ては謎のまま」
司馬懿「闇の使命よりも、己が力を示すという享楽を優先する愚物であった。儀式に古今東西の剣士達のみを召喚することとなったのもこやつの仕業。
     しかし、私と逞鍛が異を挟めぬ力を持つだけあり、なまじ強過ぎた。その強さ故の慢心と油断から隙が生じ、タクティモンによって深手を負わされる最大の敗因となった」
逞鍛「俺達からすれば、目障り極まりない目の上の瘤を消せた上、常闇の皇の復活の生贄にも使えた。あの状況は一石二鳥だったよ」
司馬懿「本人の名誉などどうでもいいが、付記しておくとすれば奴の力は絶大の一語に尽きる。もしも奴が生きていたなら、結末は変わっていたやもしれぬ」
アサルトバスター「ぶっちゃけ資料不足で把握きついってレベルじゃないからな」←カードダスだけでしかも絶版。
司馬懿「……そうでもあるな」←最終章3巻で大体把握できる。
逞鍛「そんなことを言っていいのか」←最終巻だけでほぼ完璧に把握できる。

その2.ゼンガー・ゾンボルト「償いようのない過ちを犯したのなら、戦うしかない。俺達は……“剣”なのだから」

逞鍛「実は最後の生き残りの対主催連中はなかなか1つに纏まらなかった」
司馬懿「そんな奴らを1つにまとめ上げた侠こそ、大地の守護神とも称された悪を断つ剣、ゼンガー・ゾンボルトなのである」
逞鍛「当初こそこっちはα外伝出典だから戦闘力に一抹の不安があるなど散々言われていたが、
    最終的にグランドリオンを手に生身で星薙の太刀を放っていた」
司馬懿「もう1人のPXZ出典の方は割合あっさりと死んだというのに、どこで差が付いたのか……」
ゼンガー「俺の存在が、勝利へと繋がったと言うなら……何も悔いは無い」
逞鍛「アサルトバスターとは逆に、お前さえいなければ闇の勝利となっていただろうな」

540 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/13(木) 19:39:22
その3.真の正義を持つ侠・劉備ガンダム「燃えよ龍帝剣! 宿せ正義!」

司馬懿「龍帝の魂を継ぎ、龍帝剣を継承した者。我ら闇の宿敵にして怨敵の代表格であった」
逞鍛「正直、この侠は最終局面まで生き残るものと思っていたが……ロイド・アーヴィングとの正義問答が響いたか」
司馬懿「正義を心得ずして正義を網羅したかのように語り謗る視野狭窄の愚者……ふふ、この2人を早期に遭遇するよう配置したのは正解だった」
逞鍛「しかし、その後に加わった青龍のロック……じゃなかった、楓と衛宮士郎の存在は誤算だった。2人の緩衝と橋渡しを見事にこなしていたからな」
司馬懿「なにより、青龍とは同じく龍神の力と宿命を受け継ぐ者同士……奴らは力を高め合っていた。故に危険視し妖魔王キュウビと黒き王アルトリアを向かわせたのである」
逞鍛「その策は見事に嵌り、劉備は仲間を、お前の言う愚者を庇って散った……滑稽なほどに策略通りに」
劉備「黙って聞いていれば好き勝手を! ロイドが愚者などと、どの口が言った!!」
司馬懿「正義を毛嫌いし、知ろうとも理解を深めようともせぬ輩が、正義とは暴力を正当化する暴論であるという持論をさも真理であるかのように語る。
     これを愚者の物言いとせずしてなんとするか、龍帝剣よ」
劉備「それこそは、正義を信じたくとも信じられぬ世界に生まれ、正義の言葉を暴力として振りかざす悪虐の徒に蹂躙されて生きて来た、彼の心の悲痛な叫び声に他ならない!
    ならばこそ、俺は……この魂を賭して我が正義を示したのだ!!」
司馬懿「……見事。それでこそ翔烈帝、真の正義の持ち主よ」

その4.真の理想を持つ男・曹操ガンダム「笑止。正義無くして理想無し!」

司馬懿「私の元主君である。尤も、我ら闇の使命を果たす為の依り代程度の関係であったがな」
逞鍛「それだけに、お前が最も敵視し、また危険視していた侠でもあったな」
司馬懿「然り。その太陽の如きカリスマ性で、見る間に一大対主催グループを作り上げて行った。
     闇の王アルトリアや豪将ハイドラ、朱雀を始め、多くの闇の盟主達を刺し向けたが……」
逞鍛「最後に奴を討ったのは、我々が最早闇の盟主の器に非ずと見限っていた魔星だった」
司馬懿「うむ。流石は史上唯一の闇の大将軍。事前に弱っていたとはいえ、よくぞ曹操将軍を討ち取ってくれた」
曹操「父を想う子の心、そして……子を想う父の心。余が理解できなかった情の前に、敗れ去ることになるとはな」
逞鍛「情の力、か……」
曹操「だが、闇を討つべく配した余の布陣、その全ては見切れなかったようだな、司馬懿よ」
司馬懿「星凰剣と威天剣。雀瞬の力の象徴とも言うべき双剣を魁斬に預けたまま別れた時は何事かと思ったが……
     よもや、七逆星として天命を授けられし魁斬が、天の刃の資質を秘めていようとはな……!」
曹操「自らに課せられた宿命に殉じながらも、その果てに運命を超えるという切なる祈りを胸に、己が魂を燃やし尽くしてでもそれを成そうとする心――
    それ即ち、真の理想。それを見抜けなんだ貴様の不明よ!」
逞鍛「ところで、お前の一推しアイドルは誰だ?」
曹操「菊池真だ。しかしマコマコリーンは無い」
司馬懿「私はシスプリ派であるのでファンから搾取するゲームとか心底どうでもよい」
曹操「なに……?」
司馬懿「なにか?」
曹操「こやつめハハハ」
司馬懿「ははは」
逞鍛(殺気と剣を収めろよ……)

541 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/13(木) 19:45:02
その5.疾風剣豪精太「歯を食い縛れ! 貴様のような我が儘小僧は、修正してやる!!」

逞鍛「今思ったが、俺達の名前は武者頑駄無シリーズに馴染みが無いと難読漢字となってしまうな」
司馬懿「酷く今更な話であるが、実際、昔日のラジオでも貴公の名前でちょっと止まっていたな」
逞鍛「こいつはゼータ、そして俺はティターンだ。共に天宮の光の七人衆に名を連ねていた。
   邪悪武者との第二次決戦に勝利した後、光の力の暴走が治まった本来の状態からの参戦だ」
司馬懿「曹操将軍の唱える理想を太陽と称し、最初に共感した戦友。この男がいなければ、もっと早くに手を打てたものを……」
逞鍛「とにかく騎馬の扱いに手慣れており、アルトリアのポンコツ道中記に騎馬戦での完敗を加えたのもこの男だ」
精太「なんだ、そのポンコツ道中記って。彼女の実力はとてもポンコツなんてものじゃなかったが……」
司馬懿「正確には、あの女を完全なる闇の王へと仕立てる為に張り巡らせた我が謀略である。悉く嵌って片腹痛すぎたが」
逞鍛「しかし、お前は結局……誰も守れなかったな。結果としてだが、曹操のグループはあの戦いで全滅した」
精太「その通りだ。それだけが、この戦場での俺の最大の悔いだ」


司馬懿「さて、こんな所であるか」
逞鍛「取り敢えず、298話分はこれで終わりだな」
頑駄無「待て! 俺達は!?」
孫権「俺たちだって298話で名前が出ていたはずだ!」
アルフォースブイドラモン「そうだよ! だから僕らも何時でも出られるように準備していたのに」
司馬懿「お前たちは普通に出番があった。故に、今回は無し」
逞鍛「まぁ、次があるかも分からんがな」
司馬懿「全くの余談であるが、剣士ロワの書き手は某所で殺伐ガンアクションのラスボスがほのぼの日常の水の惑星で過ごすという気の狂ったものを書いている」
逞鍛「大神とUXに現を抜かした上に剣士ロワを書き終えて燃え尽き気味で止まっているがな。暇に殺されそうになった時に気が向いたら探してみるといい」

司馬懿「では、次回があればその時に、再び相見えようぞ」
逞鍛「司会進行役が変わっていそうな気もするがな」
司馬懿「待て慌てるな落ち着けそうなったならそれは孔明の罠である」
逞鍛「お前が落ち着け」

542 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/13(木) 19:46:28
以上で死者スレネタは終わりです。
死者スレネタ書くのも久しぶりだったなぁ……。

543名無しロワイアル:2013/06/13(木) 20:57:51
はじめまして、失礼します。
最近この企画のことを知ったのですが新しく参加を申し込んでも構わないでしょうか。
申し込み期限は半年前ですしまだ書き手の経験もないのですが良ければよろしくお願いします。

544名無しロワイアル:2013/06/13(木) 21:20:10
>>543
>>365らしいですぜー、楽しみが増えたー。

545名無しロワイアル:2013/06/13(木) 21:41:48
>>543
これから毎日ロワを書こうぜ?

546名無しロワイアル:2013/06/13(木) 21:54:29
>>543
おや、いらっしゃいませ。よい完結を楽しめますようにッ!

547名無しロワイアル:2013/06/13(木) 21:58:54
あたたかい言葉ありがとうございます。
では、準備ができ次第投下させていただきます。

548FLASHの人:2013/06/14(金) 10:53:14
なんかすげえのが投下されてるwwwwwww
推しアイドル設定は必要なのか
まとめサイトに追加すべきなのか……!?

でも死者スレネタいいな……うちもちょっとやろうかな……
わりと297話分の設定はあるし

>>543
いらっしゃいませいらっしゃいませ
こちらの企画はすでに期限などあってなきが如しのお祭り騒ぎ
締め切りがあるとすれば己の心にのみ誓って突き進んで下され
投下をお待ちしております

549名無しロワイアル:2013/06/14(金) 20:10:46
>>548
やめてください(剣士ロワのシリアスな雰囲気が)しんでしまいますw

でも、それはそれで面白いかも…w

550 ◆uuKOks8/KA:2013/06/14(金) 21:47:45
1話め?を半分まで書き終えたのでロワテンプレを投下します。

551 ◆uuKOks8/KA:2013/06/14(金) 21:52:40
【ロワ名】幻想水滸ロワイヤル

【生き残りの6人】
[グレミオ@幻想水滸伝【マーダー】【極限状態】][リオウ@幻想水滸伝Ⅱ][テンガアール@幻想水滸伝Ⅱ【フラッシュバックによる無力化の可能性】][ルカ・ブライド@幻想水滸伝Ⅱ【右腕切断】][ユーラム・バロウズ@幻想水滸伝Ⅴ][リムスレーア@幻想水滸伝Ⅴ]

【主催者】
ウィンディ@幻想水滸伝→ルック@幻想水滸伝Ⅲ

【開催目的】
所有者を殺し真の紋章を手に入れる→真の紋章を集め、破壊する


【補足】
・幻想水滸伝Ⅰ〜Ⅴまでのキャラクターを集めたバトルロワイヤルです。
・真の紋章は配分アイテムに数えません。
・紋章の使用回数は全キャラ共通で8/6/4/2とします。これは例外を除き回復しません。
回復アイテムが配布されない代わりに死者蘇生を除き、紋章での回復量に制限はありません。無論、欠損した器官は喪われたままです。
・真の紋章を宿している人物が死んだ場合最も近くにいた人物に移ります。ただし自決、首輪の爆発による死亡の場合は主催者の元に移動します。
・原作とは違い宿せる紋章の数制限はありませんが宿しすぎることで精神崩壊や体調の異変が起こることもあります。真の紋章は原則1つまでです(無理に宿すと精神崩壊します)。固有紋章を他の人物が使用することもできます。
戦闘中に使用できる紋章の数はどんなに宿していても3つまでです(常時効果以外)。
・紋章師、魔法使いなら誰でも紋章を他人に宿すことができます。
いない場合でも紋章を宿すことはできますが効果は半減します。
☆ルック@幻想水滸伝Ⅲが主催者を殺害し成り代わりました。参加者リストでは死亡として扱っています。
☆紋章の効果に多少の捏造を含みます


【参加者リスト】
・幻想水滸伝(1/17)
●ティル・マクドール(Ⅰ主人公)【ソウルイーター】/○グレミオ/●オデッサ・シルバーバーグ/●レパント/●アイリーン/●テオ・マクドール/●キルキス/●カーミユ/●バルバロッサ【黄金剣・・覇王の紋章】/●クロン/●ヨシュア【竜の紋章】/●クロミミ/●バルカス/●シドニア/●ソニア・シューレン/●ミルイヒ・オッペンハイマー/●クワンダ・ロスマン

・幻想水滸伝Ⅱ(3/21)
○リオウ(Ⅱ主人公)【輝く盾の紋章】/●ジョウイ・ブライト【黒き刃の紋章】/○ルカ・ブライト【獣の紋章(使用不可)】/●ソロン・ジー/●ムクムク/●ヒックス/○テンガアール/●ビクトール【星辰剣・・星の紋章】/●ハンフリー/●ネクロード/●バレリア/●エイダ/●アビズボア/●カスミ/●ニナ/●ジル・ブライト/●シエラ【夜の紋章】/●フリック/●テンプルトン/●ポール/●ラウラ

・幻想水滸外伝(0/2)
●ザジ/●リイン

・幻想水滸伝Ⅲ(0/29)
●ヒューゴ【真の火の紋章】/●ジンバ【真の水の紋章】/●ゲド【真の雷の紋章】/●ササライ【真の土の紋章】/●ルック【真の風の紋章】/●ビッキー/●フッチ/●コゴロウ/●パーシヴァル/●エース/●クイーン/●ジャック/●アイラ/●バスバ/●シバ/●デューク/●エレーン/●アヤメ/●ピッコロ/●ケンジ/●フーバー/●メルヴィル/●アラニス/●エリオット/●ワイルダー/●ルイス/●ルビ/●ユーバー【八鬼の紋章】

・幻想水滸伝Ⅳ(0/11)
●ラズル(Ⅳ主人公)【罰の紋章】/●スノウ/●カタリナ/●タル/●ハーヴェイ/●キカ/●ジュエル/●レイチェル/●リーリン/●ラインホルト/●ミツバ/

・幻想水滸伝Ⅴ(2/20)
●ファルス(Ⅴ主人公)/○リムスレーア/●リオン/●ミアキス/●ギゼル・ゴドヴィン/●アルシュタート【太陽の紋章】/●サイアリーズ/●モルル/●ドルフ/キルデリク/●ベルクート/●マリノ/●フェルド/●ラハル/●ニック/●サルム・バロウズ/○ユーラム・バロウズ/●ボズ・ウィルド/●レツオウ/●ゲッシュ

男女比:70:30
生存比: 4: 2

552 ◆uuKOks8/KA:2013/06/14(金) 22:00:04
テンプレは以上です。補足が長いのは一々細かい所まで考えているからです、はい。そしてやっぱり状態表は長いと言われました。
1週間以内に本文を投下させていただきます。

553名無しロワイアル:2013/06/14(金) 22:10:55
>>552
幻想水滸伝きたーッ!
最終盤まで生きているルカ様とかもう恐すぎる……ッ!
リムとかグレミオも気になるし、超楽しみだ!

554名無しロワイアル:2013/06/14(金) 22:14:44
と、よく見たらルカ様マーダーじゃないのか。
それはそれで気になるッ!

555名無しロワイアル:2013/06/14(金) 22:20:52
剣士ロワ死者スレ乙〜!
本編未登場キャラの活躍分かって嬉しかったw
真の勇気でグランドリオンもだけど、個人的にはカイザーを出してくれたのが嬉しかったなーw
確かにあいつは天の刃にふさわしい。天に輝く7つ星的にも
あの最終回は子供の頃泣いた

そして幻水ロワだと!?
個人的にはテンガアールがいてくれてるのがすごい嬉しいw

556名無しロワイアル:2013/06/14(金) 23:12:22
執筆や投下など、お疲れ様ですー

……あの剣士ロワにもこんな部分がッ!?
死者スレのこの空気、なんだか懐かしくて好きだなあ。
いくら良い話を見ても、というか良い物語が終わったから「あとちょっと余韻を味わいたいな」
と感じるのだろうけど、本編のノリをキープしつつネタとしてのノリを出して掛け合いしてるのが
純粋に凄い。氏はそのへん、読ませるにあたってのバランス感覚がいいのだなあと、改めて思いますね。
しかし自分も推しアイドルはいないからか、あのへんバッサリいっちゃう司馬懿いいキャラだわw

そして、幻水ロワもすっげえ気になります。
幻水やったのは3までで、しかもRPGロワ関連だったんですが、それでも名簿を
見ていて感じるところが多いのがこのシリーズのすごいとこなんだろなあ。
ユーバーにはお世話になったけど、まさか死亡表記だけでクるとは思わなかったw
ゲーム好きとしては、紋章関連のルールがリソース管理的に楽しそうで身悶えしちまう……。
改めまして、よい完結を迎えられますようにッ。

557 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/15(土) 10:29:03
>>548
残念ながら、あと3話に登場した面子に推しアイドルはいないのです……
司馬懿:モバマス・グリマスのゲーム性の低さ、課金制度に幻滅。
逞鍛:なんだよアイドルって……。そんなことより語り合おうぜ衛有吾。
トゥバン:そんなことより仕合しようぜ!
タクティモン:そんなことより仕合しようぜ! 完璧算数教室もね!
スプラウト:孫娘が愛し過ぎて他が見えていない。
生還者:そんな事情は露知らず。
ちなみに、元ネタは某動画サイトの菊地真をSDガンダムがプロデュースするMADシリーズだったり。
死者スレネタは皆さんもっとやっていいと思いますw

>>555
自分も魁斬の最期には心打たれ、涙しました。
なので、実は最初、逞鍛の最期は魁斬のパク……
もとい、リスペクトした展開にしようと考えていました。

>>556
司馬懿は多分、煽りスキルがカンスト。
ちなみにシスプリ派になっている原因は公式ネタで、
曹丕を妙に楽しそうにシスプリ厨に教育していたことから。

そして新たなあと3話は幻水ロワでしたか。
未プレイですが何度か耳にしたことはあるシリーズなのでちょっと楽しみです。
またプレイ予定ゲームの増える予感が……。

558名無しロワイアル:2013/06/16(日) 01:21:26
何だよ、完璧算数教室ってw

559 ◆uuKOks8/KA:2013/06/16(日) 09:21:40
失礼します。寝ぼけていたのか所持している真の紋章を間違えて書いていたので修正します。

修正箇所
・さあ

560 ◆uuKOks8/KA:2013/06/16(日) 09:26:55
くっ、途中送信してしまった

修正箇所
ビクトール【星辰剣…×星の紋章○夜の紋章】
シエラ×【夜の紋章】○【月の紋章】
ユーバー×【八鬼の紋章】○【八房の紋章】

561名無しロワイアル:2013/06/16(日) 20:12:29
>>558
さぁ、漫画版クロスウォーズ第3巻収録の特別編をチェックするんだ!
タクティモンがいじけてOTZする貴重な姿が見られるぞ!

562558:2013/06/16(日) 20:25:40
>>561
公式ネタかよw

「みんな〜♪タクティモンのさんすうきょうしつはっじまっるよ〜♪
 あたいみたいなてんさいになれるように、がんばっていってね〜♪」
的なネタじゃなかったのかよw

563 ◆loZDXIX6eU:2013/06/21(金) 22:34:14
【NARUTOロワ】

【生存者】
1 自来也   【疲労大】
2 うちはサスケ【木の葉に帰る決意】
3 奈良シカマル【フラッシュバック無力の可能性】
4 テマリ   【限界寸前】
5 干柿鬼鮫  【左目失明】
6 大蛇丸   【右腕欠損】

【主催者】
うちはオビト
うちはマダラ

【主催者の目的】
全て明かされていない。
 
【補足】
・参加者にはクナイと手裏剣が基本支給品として支給されています。
・影分身ストック(仙人の所から戻す)などは禁止。
・参加者は穢土転生を使えません。
・変身には時間制限が付きます。
・現在は昼です。


先にテンプレを投下させていただきました。
投下は来週になると思いますがよろしくお願いします。

564 ◆uuKOks8/KA:2013/06/22(土) 03:07:38
申し訳ありません。書き直しに書き直しを重ねた結果、まだ書き終えておりません…!
もう少しお待ちください。

NARUTOロワは忍者の戦いがどう描写されるかが楽しみであります。

565 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/06/24(月) 22:31:14
>>563
千客万来! ようこそ、あと3話ロワスレへ。
サスケェ! お前は木の葉の新たなる光だぁ! 
みたいな展開を勝手に予想しときますw

>>564
はは、自分も散々書き直したりで延びまくりましたから、あまり気張らず行きましょう。

566名無しロワイアル:2013/06/25(火) 23:28:32
>>564
あるあるw
大まかなプロットはできてても、必要な描写を入れてくとドゥンドゥン長くなるんだよなw

567 ◆LO34IBmVw2:2013/06/27(木) 20:37:54
【ロワ名】
『孤独ロワイアル』

【生存者6名】
ナナ(エルフェンリート)【右腕使用不可】
岩倉玲音(serial experiments lain)
佐藤達広(NHKにようこそ!)
桐敷沙子(屍鬼)【限界寸前】【フラッシュバックによる無力化の可能性】
引企谷八幡(やはり俺の青春ラブコメは間違っている。)
鈴木英雄(アイアムアヒーロー)
ピノ(Ergo Proxy)

【主催者】
球磨川禊(めだかボックス)

【主催者の目的】『暇つぶし』『強いて言うなら』
        『パロロワってやつを開催してみたくてね』

【補足】『優勝したら元にいた世界に返してあげるけど』『願いは叶えないよ』
    『だってどんな願いも叶えるだなんて』『人間にできるわけないだろう(笑)』

【参加作品】
・エルフェンリート
・serial experiments lain
・NHKにようこそ!
・屍鬼
・やはり俺の青春ラブコメは間違っている。
・Ergo Proxy
・めだかボックス
・GUNSLINGER GIRL
・僕は友達が少ない
・今、そこにいる僕
・ぼくらの
・BRIGADOON まりんとメラン
・灰羽連盟
・アイアムアヒーロー
・烈火の炎
・おやすみプンプン


以上テンプレです。投下はまた来週か再来週になると思います。よろしくお願いします。

568 ◆9n1Os0Si9I:2013/06/28(金) 19:35:23
まともなロワも書きたいと思い、前回やったやきうロワの反省(仮)を生かし、今度は真面目なロワを1つ書こうと思ってます。
という事でテンプレ+298話投下

<<ここからテンプレ>>
【ロワ名】希望ロワ
【生存者6名】
1.鏑木・T・虎徹@TIGER&BUNNY【対主催:NEXT能力使用可能、体中にダメージ】
2.左右田和一@スーパーダンガンロンパ2-さよなら絶望学園-【対主催:精神的不安定】
3.江迎怒江@めだかボックス【マーダー:右目が潰されている、全身に裂傷】
4.天野雪輝@未来日記【マーダー:左脇腹に銃創】
5.玄野計@GANTZ【対主催:GANTZスーツ着用(壊れている)】
6.羊飼士狼@オオカミさんと七人の仲間たち【マーダー:左頬に切り傷、右足に銃創】
【主催者】超高校級の絶望@ダンガンロンパシリーズ
【主催者の目的】最上級の絶望を得る、そしてこの世を絶望で支配する
【補足】鏑木・T・虎徹と左右田和一は共に行動中
<<ここまでテンプレ>>

0/8【リトルバスターズ】
●直枝理樹●棗鈴●棗恭介●井ノ原真人●神北小毬●来ヶ谷唯湖●三枝葉留佳●二木佳奈多

0/7【enigme【エニグマ】】
●灰葉スミオ●来宮しげる●支倉モト●九条院ひいな●祀木ジロウ●水沢アル●崇藤タケマル

1/7【オオカミさんと七人の仲間たち】
●大神涼子●森野亮士●赤井林檎●桐木リスト●桐木アリス●猫宮三郎○羊飼士狼

1/7【GANTZ】
○玄野計●加藤勝●風大左衛門●桜井弘斗●西丈一郎●和泉紫音●鈴木良一

0/7【ToHeart2】
●河野貴明●柚原このみ●向坂環●小牧愛佳●十波由真●姫百合珊瑚●姫百合瑠璃

0/6【ダンガンロンパ-希望の学園と絶望の高校生-】
●苗木誠●霧切響子●大和田紋土●石丸清多夏●大神さくら●戦場むくろ

0/6【物語シリーズ】
●阿良々木暦●戦場ヶ原ひたぎ●八九寺真宵●神原駿河●羽川翼●阿良々木火憐

0/6【ペルソナ4】
●鳴上悠●花村陽介●里中千枝●天城雪子●巽完二●クマ

1/6【めだかボックス】
●黒神めだか●人吉善吉●阿久根高貴●喜界島もがな●球磨川禊○江迎怒江

1/5【未来日記】
○天野雪輝●我妻由乃●来須圭悟●雨流みねね●秋瀬或

1/5【スーパーダンガンロンパ2-さよなら絶望学園-】
●日向創●狛枝凪斗●終里赤音○左右田和一●ソニア・ネヴァーマインド

1/5【TIGER & BUNNY】
○鏑木・T・虎徹●バーナビー・ブルックスJr.●カリーナ・ライル●キース・グッドマン●ユーリ・ペトロフ

0/5【バトルロワイアル】
●七原秋也●川田章吾●桐山和雄●三村信史●杉村弘樹

0/5【戦場のヴァルキュリア】
●ウェルキン・ギュンター●アリシア・メルキオット●ロージー●ラルゴ・ポッテル●イーディ・ネルソン

0/5【おまもりひまり】
●天河優人●緋鞠●九崎凛子●静水久●神宮寺くえす

0/5【かのこん】
●小山田耕太●源ちずる●犹守望●源たゆら●熊田流星

0/5【魔法少女まどか☆マギカ】
●鹿目まどか●暁美ほむら●美樹さやか●巴マミ●佐倉杏子

569298話 ◆9n1Os0Si9I:2013/06/28(金) 19:36:19
<Chapter6 元『超高校級の絶望』が??という『??』を掴んだ理由>

【超高校級のメカニックとその相棒の永遠的な別れ】

『うぷぷぷぷ……オマエラ、絶望してるぅ〜?』

俺はただその声を聴いていた。
ただ茫然と、感情をどこかへやってしまったかのように。
前の放送からすでに6時間が経っていた。
俺はただ目の前で目を閉じている奴を見る。
安らかに眠っている。
寝息も立てずに、ただ眠っている。

『かれこれ前の放送から6時間たっちゃったねぇ〜、コロシアイの方も順調でいい感じだね!
 うぷぷぷ……それじゃあこの6時間で死んじゃった人の発表と行きましょうか!

 棗恭介
 風大左衛門
 ウェルキン・ギュンター
 バーナビー・ブルックスJr.
 川田章吾
 日向創

 以上6人でーす! うぷぷぷ……残りの生存者も言っておいた方がいいかなぁ?

 鏑木・T・虎徹
 左右田和一
 江迎怒江
 天野雪輝
 玄野計
 羊飼士狼

 残りも6人だね! もうすぐこのコロシアイも終焉って所だね……。
 あ、言っておくけどボクを倒して脱出できるなんて思ってないよね?
 無理無理無理! 無駄無駄無駄! そんな考えは甘いんだよ!
 それじゃあ、ほどほどに頑張ってね!
 禁止エリアについては、もう言わなくていいや!
 オマエラは全員、同じエリアにいるんだからさ!
 それじゃーねー!』

放送は終わった、だが目を覚まさない。
先ほどからずっと揺すってるのに、目を覚まさない。

「なぁ、目を覚ませよ」
「嘘だよな、嘘だと言ってくれよ」
「さっきまで、動いてたじゃねぇか」

いつの間にか、自分の目から液体が流れていることに気が付いた。
何故俺は泣いているんだ。
泣く理由なんてねぇだろうがよ。
ソニアさんが死んだ時、あの時もう涙は枯れたはずなんだ。
それにコイツは、日向はまだ生きてるんだ。
死んでなんかない、すぐに目を覚ますはずなんだ。

「起きろよ、寝たふりで俺を驚かせようなんてオメェらしくねぇぞ」
「なぁ、何とか言えよ」

日向、そういわれた少年は重力に負けて横たわる形となって落ちた。
彼の背中からは、大量の出血の跡。
誰が見ても死んでいるとわかるような状態であった。



「何とか言えよ、日向あああああああああああああああああああああああ!!」



その悲痛な叫びは、もう日向に届かなくなっていた。
日向創の『ココロ』はもう二度と、『ロンパ』できない。




◆            ◆

570298話 ◆9n1Os0Si9I:2013/06/28(金) 19:36:44
【ヒーローとして】

何をやっているんだ、そう思いながら俺は唇を噛んだ。
ヒーローなんて言って、結局は守れなかったんだ。
バニーとの約束も、守れなかった。

「――――なーにやってんだかな」

自分を嘲笑いたくなる。
これ以上誰も殺させはしない。
その約束はもう守ることはできないのだ。
日向創、そういわれた少年と遭遇し、永遠に分かれることになった。
羊飼士狼――――奴に俺は負けたんだ。

「こんなんじゃ、ヒーロー失格だよな」

かつて、Mr.レジェンドに助けてもらったとき、彼は被害を出しただろうか。
レジェンド――――彼はどんな時でもヒーローだった。
それに比べて自分はどうだろうか。
バニーも助けられず、日向という少年も救えなかった。
それ以前にどれだけの人間を見捨ててしまったのか。

「――――クソッ」

結局はすべて自分の無力さが招いた結果だった。
100人いたこの殺し合いも6人しか生きていない。
バニーもカリーナもキースもあの裁判官さんだって死んでしまった。
ヒーローの奴らは全員、最後までヒーローらしく動いたのだろう。


「――――なぁ、虎徹さん」


そこで、左右田が俺に話しかけてきた。
目は宙を見ているようであった。
焦点が俺に会っていない。
まるで、絶望に染まった景色でも見ているかのように。

「……なんだ」
「日向が目覚めないんだよ、どうしてなんだ?」
「…………」

もう、左右田は精神的にボロボロになっているのだとわかった。
何を言ってやればいいのかわからない自分にさらに苛立ちを覚える。
下手をすれば、完全に左右田は廃人のようになってしまうだろう。
こういう状況に陥るなんて、よほどの人間じゃなければ正気は保てない。
左右田は機会にめっぽう強いらしいが、言ってしまえば弱いただの一般人だ。
いや、逆にここまで精神を保ててるだけ左右田は強いのだろう。
しかし友人が全員死んでしまった今、もう彼の支えがない。
だから今、このようになってしまっているのだ。

「なぁ、虎徹さん――――どうしてなんだよ」
「左右田、俺は今からお前を信じて言わせてもらうぞ」
「は?」
「現実を見ろ、日向創はもう死んでいるんだ。
 さっきの放送でも、もう死んだって言われた。
 バニーだって死んだのを確認した、そして呼ばれた。
 あの放送に嘘はないはずだ、だから日向創はもうこの世にはいない」
「何言ってんだよ、そんなわけねぇだろ!! さっきまで、俺と話して、俺を守ってくれて……」
「もう、いないんだよ……目の前でお前を守って死んだんだぞ、ソイツは……!
 お前はその死を侮辱するつもりかよ!」
「違う! 日向が、死んでるわけねー!」
「現実を見やがれ、このわからず屋がッ!!」

ぱぁん、と気味のいい音が耳に触れる。
おれの手は、いつの間にか左右田の頬を叩いていた。
あの時――――バニーに対しやった時と同じように。

571298話 ◆9n1Os0Si9I:2013/06/28(金) 19:37:17
「――――わかってんだよ、それくらい……日向はもういねーんだって。
 終里だって、あの狛枝だって……ソニアさんだって、もういねーんだよ」
「左右田……」
「……くそ、なんでこんなことになってんだよ……! アレで、あの殺し合い修学旅行で終わったんじゃねーのかよ……!」

殺し合い修学旅行、左右田が経験した悪夢の日々のことだ。
彼はそこから、命からがら生還した。
その時の一番の立役者が、日向創――――今、目の前に死体となっている彼だ。
左右田にとって、そんな彼は心の支えだったに違いない。
自分にとっての……Mr.レジェンドと同じだ。

「――――」

この時から、崩壊と言う名の【絶望】は始まっていたのだ。


【鏑木・T・虎徹@TIGER&BUNNY】
[状態]NEXT能力使用可能、体中にダメージ
[装備]ワイルドタイガー用ヒーロースーツ(かなりボロボロ)
[道具]ヒーローのブロマイド(ワイルドタイガーとバーナビー・ブルックスJr.)@TIGER&BUNNY
[思考]
1:ヒーローとして、バニーの相棒として主催を倒す
2:……左右田
3:能力がいつまで持つのか……
[備考]
※NEXT能力が減退して行っています。 現在は3分強くらいしか続きません
【左右田和一@スーパーダンガンロンパ2-さよなら絶望学園-】
[状態]精神が不安定
[装備]なし
[道具]サバイバルナイフ@ダンガンロンパ-希望の学園と絶望の高校生-
[思考]
1:……


◆            ◆


【君と僕が壊れた世界】

少なくとも、もう6人しか生きていないらしい。
あれだけたくさんいた中で、僕が生きている。
これは、あくまで決まっていたことなのだ。
この『未来日記』の通りでは、僕はまだ死なないと決まっていた。

「――――ねぇ、由乃」

由乃、僕の大事な存在となった女の子だ。
サバイバルゲームを終えて、一緒にHAPPYENDを掴み取ったはずの相手だ。
だが、そのHAPPYENDは消えてしまった。
その掴み取ったものが消えたとき、僕は絶望したのだろう。
だけれども、今は違う。
この殺し合いで優勝し、もう一度……4周目に行けばいい。
4周目に行けば変わってしまうのだろう。
だけれども、僕の中で由乃はそれほど大事な人なのだ。
たとえこの世が壊れたとしても、由乃と居れるのならば僕はそれも甘んじて受け入れれる。
それほどに――――僕の中で、彼女は大きかった。



「こんな、由乃が死ぬなんていうふざけた結末も……無かった世界に行けるんだ」



――――それはとっても、幸せなことに違いない。
だからこそ、彼女を追いかけ続ける。
その、はるか遠い幻影(我妻由乃)までも。
たとえそれが異端であり、この世を敵に回す行為なのだとしても。
僕はそれほどに――――彼女を愛しているのだから。

【天野雪輝@未来日記】
[状態]脇腹に銃創
[装備]無差別日記@未来日記、ガリアン-4(5/5)@戦場のヴァルキュリア
[道具]ガリアン-4の弾丸(30)、雪輝日記@未来日記
[思考]
1:殺し合いに優勝し、4周目の世界に行く
2:間違っているかもしれないけれど……それでも……
[備考]
※無差別日記は制限がかかっていて少し先の未来しか見えなくなっています

572298話 ◆9n1Os0Si9I:2013/06/28(金) 19:37:38

◆            ◆


【私と貴方が壊した世界】

あと6人だそうですね。
ねぇ、球磨川さん。
貴方が死んでしまってから、私は頑張ったんですよ?
もう、体だってボロボロになって。
右目なんかも見えなくなっちゃったんですよ。
でも私は諦めません……あなたを再び生き返らせるために。
この殺し合いに、勝利しなくてはならないのだから。
貴方がいなければ、マイナス十三組はどうなるのですか。
この私の愛を受け止めてくれる人は、いないんですよ。
貴方が――――球磨川さんがいなければ。
プラスもマイナスもない、0とも言えない様な最高に最悪な状況です。

「ふふ、ふふふふふ待っててください球磨川さん。
 私は絶対にこの殺し合いで優勝して貴方をよみがえらせます。
 そしてマイナス十三組全員で箱庭学園を……!」

球磨川さんを殺すほどの化け物が、ここにはいる。
死んでいるかもしれないし、今も生きているかもしれない。
だけれども私は……止まるわけにはいかない。
この『愛』のために、絶対に止まれない。


【江迎怒江@めだかボックス】
[状態]右目が潰されている、全身に裂傷
[装備]万能包丁×2@現地調達品
[道具]なし
[思考]
1:殺し合いに優勝して球磨川さんを生き返らせる
[備考]
※荒廃した腐花が進化しています


◆            ◆


【わるいおおかみにごようじん】

「――――くくくっ、ああ……なんて滑稽なんだろうね」

白い清楚な制服に身を纏う男はただただ笑っていた。
彼の名前は羊飼士狼、鬼ヶ島高校の生徒会長にして生徒達の頭を張る男。
そして――――この殺し合いのトップマーダーである。
鏑木・T・虎徹と左右田和一を襲撃し、日向創を殺した張本人でもある。

「まぁ、今ここで彼らに接触する意味はない……このままいけば、もっと彼らは崩れてくれる」

そして、彼は物陰から虎徹と左右田を見ていた。
接触しようと思えばすぐにでもできたが、彼はそれを良しとしなかった。
もっともっともっと、彼らが崩れるのを見たかったからだ。
彼はただの殺人者ではない。
面白い風になるように動く、それが羊飼のスタンスだ。

573298話 ◆9n1Os0Si9I:2013/06/28(金) 19:37:48

「でも、結局涼子ちゃんには会えなかったね。 本当は壊れていく彼女を見たかったんだけどなぁ……」

大神涼子――――羊飼が壊したいと思った少女だ。
彼女を強くしたのは羊飼であり、弱くしたのも羊飼である。
そして、彼女を知らずの場所で絶望させたのも――――彼だ。
森野亮士という大神涼子が好意を寄せた男を、彼が殺したからだ。
彼にとって本来歩むべき未来にて倒される相手を、羊飼は殺したのだ。
自分の未来を消し、書き換えた。

「――――まぁ、どうせそういう運命だったんだ。 今はとりあえず、このつまらなくなってきたゲームを終わらせなきゃね」

その場から離れる――――と思ったその時だった。
左ポケットからナイフを取り出し茂みに放つ。
それと同時に茂みから何かが飛び出してきた。

「ッ――――なぜわかった」
「バレバレだよ……気付かれてないとでも思ったの?」
「……そうかよ」

黒いスーツを身にまとった男――――玄野計は羊飼の前に立つ。
この殺し合いを止めようと動いていた彼は、先ほどまで潜んでいたのだ。
自分の親友であった、加藤勝を殺した張本人を殺した羊飼を殺すために。

「絶対ぇ――――殺す!」
「見せてやるよ、格の違いって奴をさ」

二人の人間の対決が、ここに始まる。

【羊飼士狼@オオカミさんと七人の仲間たち】
[状態]左頬に切り傷、右足に銃創
[装備]投げナイフ@現実、安綱@おまもりひまり
[道具]支給品の一部
[思考]
1:この殺し合いに優勝し、主催も殺す
2:まずは目の前の奴(玄野)の対処
【玄野計@GANTZ】
[状態]左肩脱臼
[装備]GANTZスーツ@GANTZ(オシャカ)、GANTZソード@GANTZ
[道具]なし
[思考]
1:死んだ皆の分まで、生きぬく
2:加藤を殺したコイツ(羊飼)は許せねぇ……!

574 ◆9n1Os0Si9I:2013/06/28(金) 19:38:53
投下終了ですん。
前回のカオス系と違って、ちょっと考えたりしないといけないので、さすがに前回よりは投下ペースが落ちる(確信)

575 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:41:14
遅れながらNARUTOロワ一回目投下させていただきます

576意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:45:00

「あの小僧……霧隠れの鬼人の底力ですか」


地図に存在している建物は全て消えている。
草原もその姿を消し視界に広がるのは荒々しい大地が彼方まで続く。
大地の中央に存在感を放ち君臨するは再不斬の愛刀首切り包丁一本のみ。


彼が死に際に放った斬撃は会場を覆う邪悪を断罪した。
四代目火影波風ミナトが己のチャクラと体を犠牲にして瞬身の術を発動し会場を飛び回る。
その役目は各地にある幻術の札を破壊するためであり故に10分の間に7つのエリアを巡回。
札は8つあった事をミナトは知らない。
8つ目を破壊したのは大蛇丸。
無論知っていたとしても大蛇丸が協力したなど信じられる話ではないし、大蛇丸も協力した訳ではないようだ。
しかしそれが会場を騙る幻術を破壊するのに繋がった。
札を破壊したことにより幻術が解け会場がただの荒地に戻る。
そこは第四次忍界大戦が行われた場所である。


大きなチャクラの反応――それは始まりの仮面の男。
奴のせいで多くの人間が死に、多くの悲劇が生まれ、多くの憎しみが生まれた。

ミナトは酷使し過ぎた反動により一矢報いるチャクラも命も残っていなかった。
破壊に協力したガイ、キラービーもチャクラが残っていなく絶命寸前。
唯一の生き残りである再不斬を他にオビトと戦える者は残っていない――
三人は状況が理解できないほど頭が回らない訳ではない。

常に最善の方法を尽くす忍。


ならば可能性が高い方に賭けるのが筋であり故に全てのチャクラを再不斬に捧げる。



木の葉の気高き碧い猛獣、八尾の人柱力、四代目火影、そして己の生命を一本の愛刀に宿し根城を斬り裂く。
結果として四代目の瞬身の助けもありオビトと激突を起こし命を取る事はなかったが傷を負わし仮面を割る。
仮面が割れたことによりそのチャクラに気付く生き残った忍達は主催を目指す。


霧隠れの鬼人桃地再不斬が切り開いた可能性を目指して――

577意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:47:12
「イタチさんも死んでしまい残る暁は私だけですか」


唯一の暁生き残りとなった干柿鬼鮫
彼の動向は定まっていない。
この場に来てからも慣れ合うことはしなかった。
時に人を殺せば時に悪者を斬り付け人の命を奪うにも様々な形で行なってきた。
始まりの仮面の男であるトビ――オビトの計画である月の眼計画が生き残りの参加者に知れ渡った。
無論干柿鬼鮫は最初から全てを知っていた、参加自体には何の説明も無かったが。

イタチの死に際の際に語られたうちは一族の真実。
そして今もこの会場に存在しているイタチの弟であるうちはサスケ。
会場で遭遇している生存者は伝説の三忍の一人である自来也、木の葉の奈良一族の忍そして風影の側近の三人。
出会ってはいないがかつての裏切り者大蛇丸、そして自分を含めた計六人。
外道魔像がまだ発動できる状態とは思えない。
九尾の人柱力であるうずまきナルトのチャクラ反応がまだ残っているため儀式前だろう。
再不斬の一撃は魔像に直撃しているためもしかしたら発動が出来ない状態かもしれない。
無論、条件を無視してマダラの口寄せが可能のため主催の戦力は十分高いものと予想できる。
生存戦力を考えた場合己を含め全員が万全な状態とは呼べないはずだ。
それに鬼鮫自身暁の一員であるためオビトと対立する必要がない。

そう必要がない――――――





「私の処分に来ましたか……ゼツ」

578意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:48:13
前方に広がるのは大量の暁の一員であるゼツ。
その数十万ををも超える。


「やぁ鬼鮫久し振りだね」


「邪魔者は全て消す……私もデイダラもサソリもペインもイタチさんも邪魔者でしたか」


「ごめんねぇもう君たちは要らないみたいだ」


何故殺し合いを画策したかは一切不明であるが月の眼計画に必要なのだろう。
死人の魂やチャクラが必要だったのかも知れない。
暁の構成員も元の大蛇丸を含め複数死人を出しているので形として計画に協力していたかもしれない。


だとしたら、だとしたらだ。


終盤とも言えるこの状況なら必要と仮定する魂やチャクラは集まった。
ならもう出先の者は用済みで後はその生命を粛清するだけだとしたら――鬼鮫はもう必要ない。


「ククク……私もイタチさんも随分と馬鹿にされたみたいですね」


「まあそうゆうことだからごめんね!」


一斉に飛びかかる大量のゼツ


「水遁・大瀑布の術!!」


鮫肌に大量の水を己のチャクラを宿し腰を落とした体制で前方を見つめる。
そこから放たれる一閃は豪快に水流を飛ばし迫るゼツを孤高の彼方へと押し流す。
それでもゼツの数は減らず依然として視界に映る景色はゼツ一色。




『もし機会があるのなら……サスケを頼む』




「イタチさん……あなたは最後にとても面倒な事を頼みましたねえ――




ですがあなたの頼みなら断れませんねぇまったく!!」



【干柿鬼鮫@NARUTO】
[状態]左目失明、疲労(中)、チャクラ消費(小)、腹部損傷、左腕に裂傷
[装備]鮫肌
[道具]バック、クナイ、手裏剣、起爆札、各×10、ガイの額当て、イタチの指輪、ヒナタの左目
[思考]基本:イタチの頼みに従う
1:ゼツを殺す
2:イタチの遺言通りサスケを助ける
3:碧い猛獣……覚えておきますよ
[備考]
※うちは一族の真実を知りました。
※鮫肌はもう裏切ることはありません。

579意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:50:34
「シカマル!!」


叫ぶ
そう、叫んでしまう
お前は今何処に行こうとしている
何故私を置いていこうとするのだ
我愛羅もカンクロウも皆、みんな死んでしまった


「もう私を一人に――――」








「俺は今からあいつの首を取る」


崖から見下ろすこの景色に思い出はない。
イタチにも会えずに彼は死んでしまった。
ナルトのチャクラの反応が消えた。


カカシもサクラもリーもネジもテンテンもチョウジもいのもキバもシノもヒナタもみんな死んでしまった。


「俺は木の葉に帰る」


聞かされたうちはの真実。
もうあんな悲劇は二度と繰り返さない。




「俺の復讐に終止符を撃つ――!!」




【うちはサスケ@NARUTO】
[状態]疲労(中)、チャクラ消費(中)、万華鏡写輪眼開眼可能
[装備]草薙の剣
[道具]バック、忍具一式
[思考]基本:木の葉に帰り一族の悲劇を繰り返さないため火影になる
1:仮面の男を殺す
2:もう人を殺す気はない
3:ナルト……
[備考]
※うちは一族の真実を知りました。

580意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:52:32


「こいつ……魘されてるのか?」


限界寸前で気絶しているテマリの傍にいるシカマルが呟く。
無理もないこの会場に来てから常に死との隣合わせの状況で時間が過ぎている。


そして我愛羅が自分を守り抜いて目の前で絶命した――気絶するのも仕方がない。
このまま一人で残しておくのは大変危険である。
それに知り合いを見捨てる程腐っている男ではない。
生存者も一桁となりこの先には辛い戦いしか待ち受けていないだろう。


ならば少しでも休息を取るのが最善の策といえる。
生き残れる保証など最初から存在していない。
少しでも可能性を上げるためにチャクラを温存し体力を回復するのが今行うべき行動。
少しでも長く術を発動できるように、少しでも勝てる可能性を上げるために――――――。


「みんな……みんなが切り開いた道を無駄にはしたくねえ」


数々のドラマが、色が生まれた殺し合い。
それは悲劇の繰り返しであり行わない方が良いに決まっている。
終わり良ければ全て良しなど存在しない、そんな事なら始めからやる必要がない。

でも死んだ命を無駄にすることは許されない。
残った希望を生存者は導く必要が、義務がある。


弱い消極的な意思は捨てろ、理不尽な世界に反逆しろ、ここは諦める場面何かじゃない。


受け継いだ希望の意思をその胸に宿し例えその身が砕けようとも貢献しろ。


根性、この言葉がよく似合う。


「これじゃあナルトみてぇだな……まぁたまにはいいかもな」


世の中数字だけでは測れない事が多数に存在している。
今思えばサスケ奪還任務の時だって同じだ。
テマリ達が助けに来てくれなければ自分を含めキバとリーが死んでいただろう。
無論その助けなど知らず計算の内に入っていなかった。


「『絶対』何て言葉は通用しない……残された奴は次の世代に全てを繋ぐ……そうだろアスマ」

581意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:54:32

「――やっぱタバコは合わないわ」


空を見上げる。
幻術が解け大地は荒々しくなったが空は色褪せることは無かった。
美しい蒼に邪魔することなく存在している白い雲。
思い返せば自分は昔雲に憧れていた。
何物に縛られない自由な存在に憧れていた時代を思い出す。


「たしかにめんどくせぇ事ばっかだ」


出来る事ならゆっくり風を感じながら寝ていたい。
縛るものなど存在しない世界でゆっくり気が赴くままに事を成し遂げたい。


「でもそんな事言ってる暇があったら……」


感じるチャクラ反応。
噂に聞く暁の一人干柿鬼鮫。
以前とは変わったがそれでも懐かしさを感じるうちはサスケ。
全ての元凶でもあるアスマやカカシ先生の同期らしい男うちはオビト。
邪悪さは相変わらずの禍々しいチャクラ大蛇丸。
今この場で倒れている何かと縁のある女テマリ。
そして木の葉が誇る伝説の三忍の一人自来也。


三桁もあった参加者も気づけば指で数えられるような所まで減ってしまった。
それでもシカマルは前を見続ける――この遥か先に感じるオビトのチャクラから。


所謂次が最終戦――――――




【奈良シカマル@NARUTO】
[状態]疲労(大)、チャクラ消費(中)、固い決意
[装備]忍具一式、チャクラ刀
[道具]バック、忍具一式
[思考]基本:全てを背負い任務を行う
1:テマリを守る
2:オビトを倒し木の葉に帰る
3:悲しむのは全てが終わった後
[備考]
※我愛羅からテマリを任されました



【テマリ@NARUTO】
[状態]疲労(大)、チャクラ消費(大)、全身消耗
[装備]忍具一式、巨大扇子
[道具]バック、忍具一式
[思考]基本:気絶中

582意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:55:17

四代目火影波風ミナト。
正義の具現者としてその最後は自らの犠牲を顧みずその身と引き換えに幻術破壊に貢献する。

三代目火影猿飛ヒルゼン。
強い力と圧倒的経験を活かし戦いだけではなく精神的支柱にもなっていた。
その最後は薬師カブトに敗れるもその後の勝利へと繋げた。

五代目火影綱手。
治療術を活かして数々の負傷者を救ったがその最後はデイダラに爆破された。

そして伝説の三忍の生き残りである――



「大蛇丸か……」


「あら気付いていたのね自来也」


再び相まみえる両雄。
方や正義方や悪を名乗るに相応しいかつての仲間がこの地で再び出会う。
その瞳に映る影はどちらも――昔から変わらない姿だけ。
交わす言葉も必要ない、自来也からすれば語りたいことはたくさん存在する。

だが、それでもだ。

言葉で解決するほど簡単な物ならとっくに物事は解決しているだろう。
止めれるなら既に止めている――ナルトとサスケのように。


「綱手の仇を取ってくれたらしいのう」


「デイダラと綱手を天秤に掛けただけよ……」


それは大蛇丸が変わったわけではない、いや、変わっている。
だが彼の本質的な、根本的な事に影響している訳ではない。
形成されている全てが人一人の死で変わるのなら争いなんて起きない。


それこそ月の眼計画何て必要ない。

「お前はオビトの策に乗るのかのう?」

「うちはオビト……カカシの同期であったうちは一族……興味ないわねえ」

「ならお前はどうするんだ?――これから」

「他人の起こした戦争に興味はないのよ……だからと言って」

583意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:56:39


大蛇丸は言わずとも【悪】の位置に存在する生物である。
その性格、構成ともに常人とはかけ離れ酷く歪んでいる存在。
故に数多の人間を殺し闇と向かい合ってきた忍者。
それは表舞台に立つことを二度と許されない闇の役者。


「私は帰るわ……失った右腕もヤマトの、初代の細胞を手に入れることが出来たしね」


「今どうするかを聽いているんだがのう」


「愚問ね自来也……これまでと変わることなんてない……あなたも分かっているでしょう?」


そうだ。
人間には、忍には己の意地がある。
アイデンティティが簡単に崩壊している様じゃ真っ当な忍は務まらないし邪魔なだけ。
強い意志を持っていないものは成長どころか戦場に立つことを許されない。
他人に流される人間が忍を、人の命を奪う忍を語る上で己の強さを認識しろ。
責任を持てない人間に忍を語る資格はない。


「火遁――――――!!」


己の意思とは己の忍道
簡単に曲げる柔な意思では伝説の三忍は務まらない。
火遁と火遁のぶつかり合いは互い譲らず大きな爆発を起こす。
距離を取る両者――こんな事で命が取れるなど全く思っていない、目の前の男が簡単に死ぬはずがない。
煙が晴れて自来也が前方を見るも大蛇丸の姿を捉えられない。
大蛇丸は足にチャクラを集中させ岩場に張り付いている――チャクラの簡単な応用。
そこから右腕を伸ばし蛇を、初代の細胞によって更に木遁も追加し自来也に放つ。
クナイを投げつけ撃墜を試みる自来也だが大蛇丸の意志によって行動するため避けられてしまう。
木遁と蛇が螺旋を組み自来也に襲いかかるが伝説の三忍の戦いは終わらない。


「忍法・針地蔵!!」

584意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 13:58:21


長い髪を己に纏わせチャクラを流して硬化させ針のように身を守る自来也の忍術。
蛇と木遁は髪に捕まり自来也に衝撃を与え後退させる。
ジリジリと大地を引き摺るが損傷は一切与えられずその術を大蛇丸は解く。
岩場を離れその手にクナイを握り自来也に急接近、そこから格闘戦に映る。
大蛇丸が自来也の首元を斬りつけようとするが自来也もクナイで応戦、これを防ぐ。
自来也の上を飛び越し踵落としを脳天に叩きこむも両腕を交差させその攻撃に耐える。
腕を大蛇丸ごと払い上げ接近し腹に拳を叩きこむ。
しかし変わり身で背後を取られ大蛇丸が逆にその体を貫く。
だがこれは分身――本物の自来也は後方に居る。


「火遁・火龍炎弾!!」


「水遁・水龍弾の術!!」


どちらも引かない蒼炎の龍は大きく跡を残しこの世を去る。
自来也と大蛇丸――その意志は違えど最終的な行動は同じである。
チャクラを温存しておかないとうちはオビトに勝利するのが断然難しくなる。
だが。
目の前の相手は手を抜いて勝てる程弱い男なのだろうか?
答えは違う。
因縁の、昔の仲間に、友達に手を抜ける筈がない。


「相変わらずの力ね自来也」


「お前は劣ることを知らんのか大蛇丸」


再び対峙する二人に冷たい空気が張り詰める。
元より無傷で勝てるなど思っていない。
互いが互いを知りその強さも、その忍道も全てをしっているのだから。

585意志を継ぐ者/繋げる者 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 14:00:00


「風遁・大突破!!」

荒々しく吹き荒れる暴風。
大地に残る僅かな緑をも毟り取り自来也目掛けて螺旋を描く。

「土遁・土流壁!!」

自来也を守るべく厚い肉壁が大地から出現する。
風遁は土流壁を抉り取りながらも破壊までには至らない。
風は貫く事を諦め次の段階に移る。
大きく上空に吹き荒れる暴風は土流壁を遥か彼方に吹き飛ばす。

「やるのう……だが!」

「こんな簡単に終わるとは思っていないわ……!」

術の応酬を繰り返すかつての友。
その実力は生存者の中でも間違いなく上位を争う屈強なき力。
それこそ生存者、いや参加者全体の中でもトップクラスの激突である。
もしこの二人が手を組んだら。
所詮甘い妄想である。

幼稚な妄想に取り憑かれるほど弱い人間ではない。
傷つくことを恐れる忍は成長が……大切な存在を守ることも出来ない。

潜り抜けてきた場数は並の忍と並ぶ事なかれ――此処に君臨するは木の葉が誇る伝説の三忍。
その器量、その度胸どれも一級品。
小さい瞳を開眼させ拝んでおくがいい。



「「口寄せの術!!」」



事実上の最終決戦を――――――





【自来也@NARUTO】
[状態]疲労(大)、チャクラ消費(中)、全身にダメージ、右肋骨骨折
[装備]忍具一式、
[道具]バック、忍具一式
[思考]基本:火の意志を次の世代に受け渡す
1:大蛇丸を止める――倒す
2:受け継いだ火の意志を次の世代に受け渡す
3:ナルト……お前は今何処にいる?
【備考】
※は一族の真実をしりました


【大蛇丸@NARUTO】
[状態]疲労(中)、チャクラ消費(中)、ヤマトの右腕
[装備]忍具一式、草薙の剣
[道具]バック、忍具一式
[思考]基本:???
1:自来也と戦う
2:他人の戦争に興味はない
[備考]
※うちは一族の真実を知りました

586 ◆Q0VzZxV5ys:2013/06/30(日) 14:03:56
以上で投下終了です
トリップが違いますが同じ人です(前のトリは忘れてしまいました)
これからよろしくお願いします

587 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:18:42
遅くなりましたが >>551 幻想水滸ロワ投下します。

588Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:21:57
軽い足音が去って数刻。
ぱきり、と何かが割れた音がした。
その直後、激戦を物語る砕け荒れ果てた石畳の上に横たわっていた遺体の片割れがのそりと起きあがる。

「(―――)」

彼は酷く汚れた金の髪を指で払うことなく、ただぼんやりと虚空を見つめる。
男は死んだ、死んでいた、…死んだ筈だった。
太陽の王子が差し違いに放った一突きは心臓を確実に貫いていたし、その妹姫の弾丸は眉間の真ん中に芸術的とも思えるくらいに綺麗に吸い込まれていったのだ、生きている方がおかしい。
それでも男が死ななかったのは幸運が幾つも重なっていたからだろう。
例えば夜の紋章による吸血鬼化―それに伴う身体能力の上昇、例えば真の紋章が所有者を守るため自動的に貼られた結界、例えば星辰剣での斬撃が結界により急所に当たらなかったこと…そして『身代わり地蔵』の所持。
ひとつでも欠けていたら男は冥府に降っていた。
しかし最早この殺戮以前の面影はくすんだ金の髪だけだったとしても男は今なお生きている。
代償に彼の思考回路は完全に麻痺し、ただひとつの想い以外は獣の如く理性がない状態になっていたが。
そんな男の虚ろにさ迷う視界に映ったのは一度自分を殺した銀の王子。
既に冷たくなっている青年の遺体を見ても憎しみも恨みも抱くことはない。ただ、浮かんできたのは

『美味そう』

黒く変わりつつあるがまだ新鮮な血も、固いだろうが若く瑞々しいであろう身体も、満足とはいえないだろうが乾いた喉を空腹の胃を満たしてくれるだろう。
彼の本能がそう告げる。微かに鼻に届いた血の匂いに餓えは膨れ上がる。

『ああ、待っていてください、全てを終わらせて必ずや皆さんの待つ家に帰ります』

唯一残った己の『願い』を叶えるべく、男は不自由な身体を這いつくばわせ…そして餌に覆い被さると食らい始めた

589Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:24:05


癒やしの光が身体を包み込み、刻まれた傷を塞いでいく。
この5日間ですっかり慣れてしまった感覚を受けながらユーラムは魔法を行使している少女を、光の射さない瞳を向けてただ見つめていた。
少女は涙を見せることも嘆くことも縋ることもせず、リオウの意見に賛同し惨劇の場を離れた。
信頼していた男が側から離れ、目の前で最愛の兄を亡くし。
一度は感情が麻痺してしまったのかと不安になったが、そうではないのだろう。

リムスレーアという少女は強すぎた。
だから悲しみを誰にも見せず、ただ耐えているのだ。
悲しいはずだ、だって彼女の周りの空気はずっと僅かに震えている。

この時、ユーラムは初めて視力を喪っていることに感謝した。そのお陰で姫君の隠された本音を知れたのだ。
ユーラムは何も聞かない。悲しいのは当たり前で、慰める言葉も見つからない。
その代わり、震える手を両手でそっと包み込みたった一言だけ彼女に伝える。揺るぐことない決意と、想いを。
――ほら。目が見えないのも悪くはない。
強がりな姫君の涙を、見ない振りできるから。

590Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:25:57


「ん、休憩終わったようだね」

リオウがふたりの元に戻ってきたのはそれから数分も経たない内だった。

少年はリムスレーアが先程よりも青い顔をして俯いていることやユーラムの役割を果たすことのない瞳が薄く濁っていることにも気付いていたが、それに対して何かを言うつもりはなかった。
とりあえず、とリオウはリムスレーアに数枚の札を渡す。《癒やしの雫》の込められた札が一枚、《氷の息吹》は三枚。グレミオの懐を漁ったら出てきたものだ。
支給品に回復アイテムはない、と言っていた主催者を信じるならば恐らくは誰かに作らせたものだろう。

「(水の紋章が残っていた方が良かったのにな)」

もう過ぎたことだが思わずにはいられない。
札と引き替えに消失してしまった水の紋章…特に傷口を全て癒やす強力な回復魔法《癒やしの雫》はこれからの決戦にかなり有利に働いただろうに。

「(愚痴言っても仕方ないか)」

ユーラムにはかなりの量の封印球と華美な装飾のついた杖を袋ごと渡す。
残りのメンバーを合わせても、唯一まだ紋章術を使っていない青年はある意味で最終兵器だった。

「ユーラムは適性が合いそうな紋章宿しておいて」
「はい」

既に真の土の紋章を宿してしまっている彼には不要かもしれないが、リオウには副作用があるかもしれない強大な力を持つ真の紋章を多用させるつもりはなかった。

しかし結局ユーラムが宿せる紋章は見つからなかった。
というより彼が宿しているもうひとつの紋章―音の紋章がこれ以上紋章を宿すのを拒絶したのだ。
その紋章を外せば彼は歩くこともままならないだろうから打つ手はなく。

「仕方ないなぁ。ユーラムには後方支援を任せるね」

情報が確かならばルックのしもべたちは宙に浮いている筈だ。土の紋章による攻撃魔法は無効化される可能性が高い。
それに、いくら勝ちたいと願っていても盲目の人を前線に立たせるような人でなしにはなりたくない、というのも本音ではあった。

「いいえ、私も前に出て戦います」

しかしユーラムは自らその提案を蹴った。
光ない瞳には強い決意の中に僅かに諦めと虚無が混じっているような気さえするが考えすぎだろうか。

「そうすればリオウ君たちへ攻撃が行く可能性が減ります」
「…わらわからも頼む」

しかも驚いたことにリムスレーアも賛同している…その可愛らしい表情に陰りはあるが。
少年は困ったなぁ、とばかりに頭を掻いた。

「(アラニスちゃんやテンガアールなら強い調子で駄目って言ってただろうな。
 ルカやキカさんは足手まといだってはっきり言ってくれただろうし)」

押しが弱い少年にとって彼らのそういうところは素直にうらやましく感じられた。

「分かった。ただし無理はしないように」

無茶とは思ったが言わずにはいれなかった。しかし頷いてはいたのだけどユーラムがそれを承諾したようには思えない。

「(リムちゃんが心配そうにあなたを見つめてるよ、とでも言えば別なんだろうけど…人間関係って複雑だからなぁ)」

やれやれと心中で溜め息を吐きつつリオウは二人を先へ促す。

…その時、上空から5日間で何度も聞いた、あの声が場に響いた。

591Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:29:58
【五日目夕方/放送直前:シンダル遺跡第三層東】

[リオウ@幻想水滸伝Ⅱ主人公]
[状態]HP3/5 常時HP回復 微かな吐き気 ルカに対する信頼 テンガアールへの罪悪感
[回数]1/1/2/1
[紋章]○始まりの紋章、○破魔の紋章(半減)、○大地の紋章(半減)、●獅子の紋章
[装備]星辰剣(会話不可能)+友情の紋章、玄武の服、たいようのバッチ
[道具]ボナパルト、ムクムクのマント、支給品(ムクムク、ジョウイ)、瞬きの手鏡
[思考]……はぁ、何かめんどくさいな…もう
[基本方針]対主催、戦いを終わらせる
[第一目的]誰も死なせない
[第ニ目的]全てが終わったらルカと戦って殺す約束を果たす
[備考]紋章の宿しすぎによる体調の異変を起こしています。
参戦時期:ベストエンド後

[リムスレーア@幻想水滸伝Ⅴ]
[状態]HP全快 全身に打ち身 グレミオに対する恐怖心 ルカへの信頼と依存 ユーラムに対する微かな慕情 兄の死による衝撃と死への恐怖
[回数]1/3/4/2
[紋章]○黎明の紋章、○黄昏の紋章、太陽の紋章
[装備]シュトルム、白銀のローブ
[道具]札セット(凍える息吹*3、優しき雫)、疾風の封印球
[思考]兄上…わらわは泣かぬのじゃ…
[基本方針]対主催、戦いを終わらせる
[第一目的]元の時代に帰り家族が望んだ国を築き上げる
[備考]太陽の紋章の力により黎明と黄昏の合体魔法を1人で使うことができます。
また、順番通りに紋章を宿した為、太陽の紋章の力は黎明と黄昏の紋章により抑えられています。
参戦時期:騎士長エンド後


[ユーラム・バロウズ@幻想水滸伝Ⅴ]
[状態]HP4/5 盲目(暗闇) 右肩に弾痕 右足捻挫 感覚機敏 ルカへ対する尊敬と信頼 リムスレーアを護る決意
[回数]8/6/4/2
[紋章]○真の土の紋章、○音の紋章
[装備]クリスタルロッド、羽根付帽子、黄色いスカーフ
[道具]各種装備と封印球(話には出てきません)
[思考]姫様…
[基本方針]対主催、リムスレーアに従う
[第一目的]姫様を護り彼女と仲間は死なせない
[第ニ目的]できるならばもう1度、姫様のお顔を見たい
[備考]音の紋章が目の役割を補っています。敵意や殺気、空気の震えなどには敏感ですがそれ以外には鈍いです。
真の紋章使用時1/5の確率で暴走します。また、複数回連続で使用することでデメリットが発生します(目安は10回)。
きれいなユーラムです。
参戦時期:騎士長エンド後

【共通:シンダル遺跡第三層東→第四層】

592Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:31:24


ルカ・ブライトは自分の前で必死に穴を掘っている娘を、特に何も感じることなく視界の中に映していた。
死体など朽ちるに任せろ、死した者に情を向けても無駄だ―それは「狂った」今でなおルカの中に染み付いた持論である。
テンガアールもそれに薄々と気付いているようで手伝いを強制することはなかった。
ルカは目を閉じると、身体を休めるべく眠りにつく。

放送が始まったのは日が暮れて…テンガアールがやっと、3つめの穴を掘り終え、埋葬をすませた頃だ。
その頃にはルカも休息を終えて、放送を聞き逃さないように集中していた。
放送前は13人生存者がいた―死んだと確認したのは、リオウと協力して殺した青い奴がひとり。
此処に転がる遺体はテンガアールの仲間が3人にマーダーの黒ずくめ。
リオウたちが斧使いと不気味な笑みを浮かべていた女を殺しているのならば残り人数は6人になる。

視線を移すとテンガアールは天井を仰ぎ見ている。ルック、と掠れた声が耳に届いた。

《こんばんは。
 今から死者を発表する》

ただ、淡々と事務的に届けられる年の割には高い声。
ウィンディと名乗った魔女とは対照的に必要なことだけを参加者に伝えていく。

《最終日、無残に死んでいったのは
 フリック
 アラニス
 レツオウ
 キカ
 ユーバー
 ソニア・シューレン
 ファルス
 グレミオ
 以上の8人だ。
 これにて放送を終了する》

あっけなく放送が終わる。
テンガアールの半ばで焦げ落ちたお下げが跳ねるのを見ながらルカは今、呼ばれた内のひとりを脳裏に浮かべる。
ファルス…リムスレーアの兄、人格者で何があっても諦めず立ち向かった青年。
妹思いの優しい性格をしていて、彼と合流してからリムスレーアの笑顔が増えていたことはルカも気付いていた。
戦力的にも武術に優れ、紋章の扱いも上手い。生きていてほしい人員だった。
それにあの面子の中で死ぬなら盲目な上に戦闘能力もそんなにないユーラムの方だとばかり思っていたから、衝撃を受けなかったといえば嘘になる。

「(それほどあの斧使いは強かったのか…貴様は妹を残し、どんな死を迎えた?)」

しかし、ルカはすぐにファルス王子のことを脳内より切り捨てる。そしてへたり座っている娘を立たせた。

「早く行くぞ、小娘」
「………行けないよ」

テンガアールは泣いていた。

「ボク、リムちゃんに酷いこと言ったんだ。
 『きみの大切な人も死んじゃえ!』って」

別行動する前、少女2人が何かを話していたが、リオウが想像していたようなふわふわとした内容ではなかった、と本人から聞かされる。

「ヒックスがいなくなったからって、リムちゃんに八つ当たりして…ボクは酷い奴だ。
 リムちゃんに合わせる顔がなあよ」

恐らく娘はファルスの死に責任を感じているのだろう。
本来ならここで慰めるべきなのだろうが、記憶喪失時の「爽やかなルカ」ならともかく今の彼にはその選択肢は浮かんでこない。
代わりにルカはテンガアールを片手で器用に担ぎ、歩き出す。そして抵抗しようとキーキーと暴れる娘に

「懺悔や謝罪はリムスレーアにしろ、それに今の貴様は猿のようだ」
「………」

途端に静かになるテンガアール。少し歩くとありがと、と小さな声が耳に届いた。
しかし何故礼を言われたのかが分からないルカはああ、と彼にしては間の抜けた返答をするに留まった。

593Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:32:10


ルカに担がれながらテンガアールは死んでいった仲間たちを、友人を想っていた。

アラニス。
大切な人を喪ったのは自分と同じなのに嘆くことなく、最期までまっすぐに立ち向かっていた女の子。

キカ。
初めて会った時から自分の傍にいてくれて、ずっと誇りを失うことのなかった強い女性。

レツオウ。
娘のもとに帰りたいとずっと言っていたのに、出会って間もない少女たちを庇って散ったお父さん。

もう会うことのできない、大切な人たち。
愛しい人を喪った娘が、それでも生きることを諦めなかったのは彼女たちがいてくれて、それぞれの生き様を示してくれたからだ。

大丈夫?とアラニスが聞いてくる。
大丈夫さ、とキカが応える。
大丈夫だろう、とレツオウが声をかけてくる。
それはテンガアールの心の中だけで見える光景だけど、もしかしたら心配した3人が様子を見に来たのかもしれない。
そうだ、そっちの方がいい。

「(……大丈夫。ボクは、)」

まず、合流したらリムスレーアに謝ろう。そしてルックを止めて、みんなで帰る。それまでは

「(立ち止まらないから)

594Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:33:05
【五日目夕方/放送直後:シンダル遺跡第三層西】

[ルカ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ]
[状態]HP4/5 「狂っている」 右腕切断 リムスレーアを護る決意 リオウに対する僅かな信頼 ユーラムへ対する信頼と尊敬
[回数]0/0/3/1
[紋章]○烈火の紋章、○はやぶさの紋章、○ドレインの紋章
[装備]天命双牙、アタックリング
[道具]ピリカのぬいぐるみ、木彫りの御守り、支給品*5、首輪(ソロン・ジー)、折れた剣
[思考]今は戦いのことだけを考える
[基本方針]対主催、リムスレーアに従う
[第一目的]このふざけた宴を終わらせる
[第ニ目的]全てが終わったらリオウと戦い、果てる
[備考]ソロン・ジーの生首を見たときに記憶喪失は治っています。
自分のことを「狂った」と認識していましたが現在は変化を受け入れています。尚、他人への感情は表に出していません。
参戦時期:本編死亡後


[テンガアール@幻想水滸伝Ⅱ]
[状態]HP3/4 フラッシュバックにより戦闘不能に陥る可能性 右目欠損 刃物恐怖症 リムスレーアに罪悪感
[回数]4/1/1/2
[紋章]○流水の紋章、○雷鳴の紋章、魔吸いの紋章
[装備]チュニック
[道具]力の石、赤のペンキ
[思考]リムちゃんに謝ろう
[基本方針]対主催
[第一目的]ルックを止める
[第ニ目的]ヒックス(の死体)を捜して一緒に帰りたい
[備考]ヒックスの死を直視した影響で「金髪」の「剣士」に対してトラウマを受けています
参戦時期:ベストエンド後

【共通:シンダル遺跡第三層西→シンダル遺跡第四層】

595Ep.322「最後の分岐点」1 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:34:05


首を締める忌々しい枷は取って、粉砕した。身体は重いが、ちゃんと動く。
……ああ、どうしたことか。
あんなに満たしたはずなのに血の渇きを感じる。
それならばまずは、満たすことにしよう。

男が去り静寂が戻る。
ただ一切れその場に残った赤色の布は、風にさらわれどこかに消えた。


【五日目夕方/放送直後:シンダル遺跡第ニ層】

[グレミオ@幻想水滸伝]
[状態]HP1/50 瀕死(極限状態) 沈黙 首輪なし 全身に大火傷 首に深い斬り傷 左手の指全切断 右腕欠損 精神崩壊 錯乱 吸血鬼化とそれに伴う不老不死 首輪なし
[回数]0/0/0/0
[紋章]○ソウルイーター、真の炎の紋章、夜の紋章、真の水の紋章、雷の紋章
[装備]誓いの斧@幻想水滸伝
[道具]なし
[思考]渇きを満たす
[基本方針]無差別、坊ちゃんたちの待つ家に帰る
[最終目的]坊ちゃんの為に皆殺し
[備考]真の紋章を多数宿し使用した結果、精神崩壊を起こしています。
この世界で出会ったティルのことを偽物だと信じ込んでいます。
星辰剣以外ではとどめをさせません。
※身代わり地蔵が発動しました
※首輪は首はねぽーんで取りました。
参戦時期:ソビエール監獄での死後

【シンダル遺跡第ニ層東→???】

596 ◆uuKOks8/KA:2013/07/03(水) 13:35:24
以上で投下終了です。

597名無しロワイアル:2013/07/03(水) 23:45:56
NARUTO・幻水・希望と立て続けに新シリーズが始まって、
あと3話で完結ロワ・第2期開始って感じだな…

ところで、twitterの3話ロワbotって今も少しづつコメントが追加されてったりします?
今まで見なかったツイートがちょくちょく出てきて、非常に嬉しい(KONMAI感)

598名無しロワイアル:2013/07/04(木) 05:25:22
執筆や投下、お疲れさまでした。
簡単にですが、新たに始まったロワへの感想など。

希望ロワ。前作もそうでしたが、とにかく真っ直ぐにロワしてるなあ。
どの企画も最初の一話はそんな印象ですが、ひねたところがなく、最終戦への土台を固めつつ
それぞれの掘り下げを行うターンが好みでたまらない。
ひねたところがない、だけでは後に残らない可能性も出るんですが、「もう二度と、『ロンパ』できない」を
はじめとした光る表現に引きつけられてしまう。
原作の把握率は非常に低いですが、素直にロワを楽しんでいる、その姿勢だけでまぶしいです。

続いてのNARUTOロワは、とくに否定形の強い文章に惚れ惚れしたなぁ……。
「死んだ命を〜」あたりは文章自体も小気味良くて、気持ちよく読みを進めていけました。
戦闘パートでも、おもにダッシュによる間が適宜入って叙情的なものを滲ませる文章がじつにいい。
原作は中忍試験くらいで止まってたのですが、三忍が揃って戦うヒキも少年漫画らしくて熱かったです。
中忍試験あたりの展開だとシカマル好きだったんで、アイツがどうなるか、生きるも死ぬも見届けたいなと思ったり!

幻想水滸ロワ、ルカ様とテンガアールなんてぇコンビがなんだか面白いw
歴史の流れ、流転するもののなかで、それでも受け継がれるものがあるのだ、というように
解釈している原作ゲームの描写が大好きなんですが、愛する者の生き様を見せてもらったから
諦めないって心理描写の流れがとくにらしいなあ、いいなぁと感じることしきりでした。
そういう意味では、受け継ぐことは出来るけれど「エンドユーザー」になってしまいがちな
吸血鬼になっちまったグレミオがどうなるか、なんだよなあ……。
状態表でも紋章の残り回数なんかにワクワクしたり、楽しませていただいてます。

リテイクなどに悩まされる側としては、書き直しで遅くなるのにも心当たりがありすぎるんですが、
泣いても笑っても三話、どの書き手さんも存分に楽しんでいただければと思いますー。

>>597
楽しみにしていただいて、どうもありがとうございます。
botのツイート、おっしゃるとおり少しずつ追加してますね。本文以外には、完結したロワのタイトルや
六代目さんのまとめサイトにある良い言葉・面白いと感じたルールとかも入れたりしてます。
なにがTLに出るかは完璧にランダムなんですが、ここ最近で新たに始まった企画から
新規のツイートも入れてみてるので、のんびり楽しんでいただければ幸いです!

599名無しロワイアル:2013/07/04(木) 23:53:38
新鮮なあと3話のスタート3連打ぁ!
どのロワも良き完結を期待しております。

>>598
自ロワのタイトル出る度に
「なんで俺にはネーミングセンスが無いんだ」と悶絶しております。

600FLASHの人:2013/07/10(水) 09:21:51
くそう!
読んでるよ!
新作ラッシュに目頭がバーニングだよ!
でも忙しくてまとめも感想もおいつかねえよウワァーーーン!
もうちょい、もうちょいしたらドバッとやりますゆ
何卒、なぁにぃとぉぞぉー(蛇に呑まれながら

601 ◆r7Zqk/D9pg:2013/07/17(水) 01:59:14
始めさせて頂きます。


D(どうしようもないよ)Q(くぉいつら)ロワ

【生存者】
○女戦士【両腕欠損】【限界寸前】【フラッシュバックによる無力化の可能性】【頭が悪い】
○男武闘家【頭が悪い】
○女賢者【それほど賢くはないし、むしろ頭が悪い】
○女僧侶【頭が悪い】
○女武闘家【頭が悪い】
○バラモス【マーダー】【頭が悪い】【ジョーカー】

【主催者】
○ゾーマ【頭が悪くない】
○子どもテリー【性格が悪い】

【主催者の目的】
未だ不明


【前回までのあらすじ】
参加者の抵抗むなしく、とうとう主催の本拠地であるヘルクラウド城は宇宙へと向けて射出された。
ヘルクラウド城の城壁にGに耐えながら懸命にしがみつく主催の手先バラモスの姿を見ながら、
参加者達は天馬の塔の最上階で時間切れによる死を待つだけなのか!?

勇者の遺言である雨雲と太陽が重なる時、虹の橋が掛かるとはいったいどういう意味なのか!?

今、戦いは最終局面を迎える!!
(ただし、DQロワ書き手の方の苦情が入った場合は最終局面ではなく最終回を迎えたことになります)

602虹の架け橋 ◆r7Zqk/D9pg:2013/07/17(水) 01:59:59


「どうしようもない……」
前回のピサロもじゃとの戦いで両腕を失った上に一生消えないトラウマを植え付けられ、
それに加えて、全力で戦うと死ぬ所まで追い詰められた女戦士は弱々しく呟いた。

「やっぱり……駄目だったんだ!!私達じゃ……勝てないよ!!」
「諦めるな!!」
そんな女戦士に活を入れるべく、男武闘家は女戦士の頬を引っぱたいた。
女戦士は死んだ。

【女戦士@DQ3 死亡】

「女戦士!!」
「てめぇよくも女戦士を!!」
「絶対にゆるさないぞ男武闘家!!!」
突如与えられた理不尽な死、それを前に冷静でいられるほど生き残った参加者達は冷血ではなかった。
男武闘家許すまじ、満場一致でそういう感じだった。

「待て!!」
男武闘家が叫ぶ。

「死ぬ前の遺言かこの野郎!!」
「聞いてやろう!!なるべくゆっくり大きい声で言えよなこの野郎!!」
「そして死ね!!」
突如発せられた男武闘家の言葉、それを遺言であると察した参加者達は、その言葉を止めるほどに冷血ではなかった。

「俺の拳で殴られて女戦士が死んだのはなんでだと思う!?」
「もしや……理由があるのか!?」

「アイツは……ピサロもじゃとの戦いで限界を迎えていたんだ!!じゃあなんで限界を迎えていたんだと思う!?」
「それにも理由があるのか!!」
「理由を求め続けると無限連鎖になる……なんかすごいな!!」

「こんな殺し合いに参加せられたから、アイツは限界を迎えていたんだ!!
つまりこの殺し合いを開いた奴が悪い!!トドメを刺したのは俺だけど……俺だってトドメを刺したかったわけじゃない!!この殺し合いを開いた奴が悪い!!」
「……言われてみればそうだ!!」
「この殺し合いを開いた奴が悪い!!」
「男武闘家はそんなに悪くない!!」

「確かに自分でも惚れぼれする程の会心の一撃で女戦士を仕留めたが、
それはそれとして絶対にこの殺し合いを開いた奴を殺して女戦士の仇を取ろう!」
「で……でもさぁ、天馬の塔の屋上に突き刺さっていたヘルクラウド城はもう射出されちまったんだ……どうやって追えばいいんだよ!!」

「雨雲と太陽が重なる時、虹の橋が掛かる……この言葉を覚えているか!?」
「それは……勇者の遺言!!」
「死に際に頭おかしくなって言った言葉じゃないのか!?」

「違う……アイツの言葉には、意味があったんだ!!これを見ろ!!」
そう言って男武闘家は、自分のふくろから太陽の石と雨雲の杖を取り出した。

「こ、これは……」
「わかるだろう?こいつらの名前は太陽の石と雨雲の杖……つまり!」
「こいつらを重ねるわけだな!!」

603虹の架け橋 ◆r7Zqk/D9pg:2013/07/17(水) 02:00:30





「ああ……生まれろ!!虹よ!!!」




                 ̄ ̄ ̄ ̄-----________ \ | /  -- ̄
      ---------------------------------  。 ←太陽の石
           _______----------- ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     ∧ ∧    / / |  \   イ
                    (   )  /  ./  |    \ /
                 _ /    )/   /  |     /|
                 ぅ/ /   //    /   |    / |
                ノ  ,/   /'    /    |│ /|
 _____      ,./ //    |     /    .─┼─ |
(_____二二二二)  ノ ( (.  |    / ┼┐─┼─
              ^^^'  ヽ, |  |   /  .││  .│
 ↑雨雲の杖





太陽の石は大気圏を突き抜け、ヘルクラウド城の動力源を破壊し再び天馬の塔の屋上に叩きつけた。
そう、太陽と雨雲が重なることで、虹が生まれたのだ!!

【次回に続く】

604 ◆r7Zqk/D9pg:2013/07/17(水) 02:01:55
投下終了します。
雨雲の杖で太陽の石を打つというアイディアを書くために、
288話も一人だけで書いてきたこのロワもあと2話で最終回です。

605名無しロワイアル:2013/07/17(水) 22:53:51
>>604
投下乙です。
288話まではどこで読めますか?w

606 ◆r7Zqk/D9pg:2013/07/17(水) 23:53:34
>>605
前々から防ごうとしていたのですが、
とうとう287話で公安の方が動いたため、投下していた板及びwikiは完全に消滅しました。
それでも最終回までは書きたかったので、当スレをお借りしています。

607605:2013/07/18(木) 20:58:33
>>606
返答ありがとうございます。
そうですか、公安……。

このスレが公安に見つかる前に私も何とか最終回を書き上げたいものです。では!

608 ◆MobiusZmZg:2013/07/25(木) 22:30:51
すみません、いつもお世話になっております。
けれども心が折れたので、自分の三話ロワ、ここでやめさせてください。
話は固まっていて、三話目へのタメなど作っていましたが、「果たして、自分には
この文章で他の誰かに伝えられることがあるだろうか」と考えていたらもう駄目でした。
巧くはまとまりませんが、理由はそれだけです。
botのほうは……どうにかするためにはこのスレに目を通さなければならないので、
心労が溜まっている現在、それが出来る保証もないので月末をめどに削除します。
以上です。

609 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/07/28(日) 19:24:19
>>608
とても残念です。感想書くのが苦手で書けていませんでしたが、いつも楽しく読ませて頂いておりました。
ロワじゃないですけど、自分も似た理由で絶筆してしまった作品があるので、その気持ちは本当によくわかります……。
お疲れ様でした。またどこかで、あなたの作品が読める日が来ることを楽しみにしております。



不謹慎かもしれませんが、皆様にちょっと質問です。
エピローグ投下とかありですかね?

610名無しロワイアル:2013/07/28(日) 23:31:11
>>608
ここにわざわざ書き込んで中止宣言をして下さったということは、
相当悩んだ末の結論なのだろうと思います。
お疲れ様でした。

>>609
あると思います。
死者スレもありますし。

611FLASHの人:2013/07/29(月) 02:44:23
>>608
このスレは来る者拒まず去るもの追わず
どっかの投下にありましたが、物語はすべて
完結させたいときにさせるべきだと思いますので
そこでやめるという判断もまた、物語に対する一つの
真摯な向き合い方だと思います
ご苦労様でした、いつか貴方が望むなら、完結することを願っています

>>609
知ってるかい?
エピローグって本編じゃないから、三話には含まれないんだよ?
このスレは完結に至る三話以外については一切の制限がないんだ
じゃあどうしたらいいかわかるよね?

612 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/07/30(火) 19:08:06
>>610-611
ありがとうございます! 発起人からのお墨付きも頂いた!
差し当たっては、序文となるようなものを投下させて頂きます。




 崩落する仮初の世界、無へと還る殺戮の舞台。
 そこに大神の筆しらべが走り、異空へと繋がる幽門が開かれる。
 黄金神と大神の導きを受け、戦いの中で散って逝った数多の剣士達の魂は、還るべき世界へ還っていった。
 それは、彼らの振るった幾多の剣も同じ――。


 エピローグ 剣の還る場所
※頓挫する可能性も十分にあります。

613虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:04:28
>>301 第98話
>>331 第99話

に続き、虫ロワ第100話を投下します。

614虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:05:16
最上階付近が震源と見られる、アリ塚全体を揺るがした巨大な振動。
その後、微かに聞こえたユピーの絶叫。
階上で大規模な戦闘があったのか?
主催者の罠か?
ユピーと、姫の生死は?
ティンとヤマメの両名は、ユピーの残した足跡を頼りにアリ塚を駆け上がっていた。
既に階下は腐海の瘴気に満ち、巨大菌類が発芽を始めている。後退は不可能だ。
この先に何が待っていようと、生き残るために、二人は上を目指すことしか出来ない。
二人が目指す先に待つのは、太陽輝く外界の光か、その身を焼き尽くす炎なのか?
もはやヒトとも虫ともつかぬ姿の二人だったが、
その現在の立場においていえば、正体も知らぬ光に引き寄せられる夜の虫そのものであった。

二人はアリ塚を登っていくにつれて、
壁や床の損傷が激しくなっていることに気づいていた。
最初は髪の毛のように細い筋が何本か走っているのが辛うじて見える程度だったのが、
次第に遠目でも判るほど太く、深いひび割れになっていった。
そろそろ最上階に近づいた辺りだろうか。
階段を上り切った先には、一際損傷の激しい大広間があった。

「これは……!」

ティンが見回すと、ある一点を中心にクレーターのように床が抉れている。
床だけではない。壁も、天井も、その中心から発生した巨大な衝撃を受けたようだ。
土造りのアリ塚がどうして崩壊せずにいるのか、不思議な程にボロボロである。

「う……何、この臭い?」

ヤマメは部屋に立ち込める異臭に、思わず左手で口元を覆った。
生臭いような、金気臭いような、鼻に刺さるような刺激臭……だが……何故か馴染み深いとも感じる。
すぐに判った。虫の体液の臭いだ。
臭気の源は……部屋の奥。
そこにあったのは黒い土山。発酵中の堆肥のようにホカホカと白い湯気を上げている。
よく見ると、それは山と積み上げられた蟲……シアン・シンジョーネの依り代だったものであった。

615虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:05:53
階上……屍体の山向こうの上り階段からヒヅメの足音が降りてくる。
仲間意識の薄い「彼」らしからぬ行為だが、ティンとヤマメを出迎えてくれるのか?
少しだけ安堵した表情で二人は部屋向こうを見やる。(ティンは表情を作ることが出来ないが)
足音が大きくなるにつれ、その音から多少の違和感を覚える。何だか重量感が足りない。
歩き方がおかしいのか?もしかしてケガを?
二人の表情が少し曇る。(ティンは表情を作ることが出来ないが)
ゆっくりと降りてくる足音の源が穴からチラリと覗いた。
それから発せられる妖気を感じてまずヤマメが、それに一瞬遅れてティンが、違和感の原因を悟った。
二人は部屋に入って来ようとする者を睨みつけ、身構えた。
表情には、怒りと、憎しみと、悲しみと……恐怖がこもっていた。
(もちろん、今のティンに表情を作ることが出来ない……だが、その様子は、表情なしでもハッキリと判る)
「それ」の姿が少しずつあらわになる。
下半身の馬がユピー「だった」頃より一回り、いや、二回り小さい。
上半身は、彼らの知る筋骨逞しい姿ではない、腕を組んだ美しい女性の上半身、そして、
赤毛のポニーテールの美貌……現れたのはユピーではない……シアン・シンジョーネだ!

616虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:07:15
「シアン、随分と人間離れしたな……!」
「ユピーを、『喰った』のね……!」

先刻の闘いで、蟲毒の儀式により増幅されていたシアンの魔力は、遂にユピーの膨大なオーラ量をも超越した。
そしてユピーとの力関係が逆転した瞬間、彼女はユピーに対して『同化の法』を試みたのだ。
『同化の法』、それは他者の肉体を術者と融合・支配する、七英雄・ワグナスの開発した術……。
シアンは主催サイドを通じて習得した異界の術『同化の法』で、ユピーの肉体を取り込んだのである。
かつて地底で同様の事態に遭遇したヤマメは、シアンに起こった異変を『ほぼ』正確に見抜いていた。
だが……

「あの羽根……ユピーの羽根じゃないのか……」

ばさり、とシアンの背中に広げられた一対の大きな翼。
ティンが指摘したように、ユピーが飛行の際に生やしていたそれとは、明らかに様子が違う。
金色をベースに、風切羽は虹のように彩られ、シアンの背後で後光の様に輝いている。

「あ、あいつは、一体何者に『なっている』の……?!」

時間にすればほんの数秒のことだったが、ヤマメは一歩も動くことが出来なかった。
神の御使かと見紛うシアンの姿に、戦慄していたからか。
遺伝子に刻まれた本能が、眼前の天敵の両翼に立ち向かう事をためらわせていたからか。
いや、最大の理由は、シアンから発せられる力が、黄泉還り者(レブナント)でも、
キメラアントの生命エネルギーでもない、何か別の畏るべきものになりつつあることを感じ取ってしまったからである。

617虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:07:47
「悪いが…先手必勝でやらせてもらう!」

ヤマメが立ち竦むのをよそに、シアンの緩慢な動作を見たティンが飛び出していた。
口を衝いて出たのは、戦友であるゴッド・リーの言葉。
このバトル・ロワイアルのオープニングで真っ先に主催者への反抗の意志を示した、
ミイデラゴミムシのバグズ手術被験者である。
彼は、その言葉と共に司会者である皇兄ナムリスの首をその能力で灼き斬ると同時に、
全身を突き破って生長する巨大キノコにまみれて死んだ。
リーはこのバトルロワイアルに逆らった者がどうなるか、最初の見せしめにされたのだ。
ティンがこの場でその勇気ある戦友の言葉を借りたのは、殆ど無意識下の事であった。

「……――!……駄目ッ!!」

我に返ったヤマメがティンを制止する。
迫り来るティンにゆっくりと顔を向けたシアン、その双眸に急速に妖力が収束している。

次の瞬間、シアンの両目から一瞬だけ鋭い閃光が煌き、ティンの全身を包みこんだ。
『王の怒り』と呼ばれる凄まじい熱線。
シアンがその存在を賭して求めた存在、『魔王』の術である。
蟲毒の儀式を経て得た膨大な魔力、妖力、オーラ、そして何より、
失意のうちに死んでいった蟲たちの怨念……呪いを一身に集めたシアンは、
最早『魔王』に限りなく近い存在になりつつあったのだ。

「ティン!!」

1秒置いて、『王の怒り』の余波でティンの周囲の床・壁が爆裂した。
アリ塚の土壁が瞬く間に沸騰する程の熱量。
タンパク質と水で出来た身体など、灰を吹くように蒸発してしまう。
続けてシアンからこちらに向かって、山なりに何かが大量に飛来してきた。
無数の七色の羽根。『ふりそそぐ羽』の弾幕だ。
今まで見てきたどの弾幕よりも殺意の篭った弾幕……かわせない!

618虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:08:36
「網だ!網を出せ!」

たった今霧散したかと思われたティンの声。
ティンは『王の怒り』を浴びる瞬間に咄嗟に蹴り足を戻し、
両腕・両脚の防具でシアンの視線から全身を覆い隠していたのだ。
お陰で両脚を守る『クイックシルバー』を失いながらも、辛うじて『王の怒り』をしのぐことができていた。

そうだ、かわせない弾幕には……

「スペルカード、罠符『キャプチャーウェブ』!!」

ヤマメは左腕のブレスレットと、右手改め右前肢から網を生成し、羽根を片っ端から絡めとる。
その時焼きたてピザの様に煮え立つ床を、びちゃりと踏む音が聞こえた。
ティンが駆け出している。
それを迎え討つシアン、形の整った乳房を惜しげもなく露わにして突き出した両腕、
それが……ところてんのように、裂けた!……触手だ!
一瞬の間に10発は繰り出されようかという触手の鞭打ち、
それは『本来の世界』でも魔王に挑む戦士達を最も苦しめていたであろう、魔王最大の攻撃。
そのおぞましきうねりがティンの行く手を阻む。

(あたしが、盾になって道を空ける……!)

ヤマメが『メタルキングの盾』をデイパックから取り出そうとする……
その一瞬の隙を、魔王は見逃さなかった。尻尾より生成された一本の触手がティンを迂回し、ヤマメに迫る。

「あ、卵……!」

大きな円軌道を描き、一際加速をつけてしなった触手が、超音速でヤマメの身体を切り裂いた。
下半身を階下に弾き飛ばされ、ボトリと床に落ちるヤマメの上半身。
デイパックを盾にすれば防ぐことが出来たかも知れない一撃。
だが、我が子の収められたカバンを盾にすることなど、彼女にできはしなかった。

619虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:09:24
「網だ!網を出せ!」

たった今霧散したかと思われたティンの声。
ティンは『王の怒り』を浴びる瞬間に咄嗟に蹴り足を戻し、
両腕・両脚の防具でシアンの視線から全身を覆い隠していたのだ。
お陰で両脚を守る『クイックシルバー』を失いながらも、辛うじて『王の怒り』をしのぐことができていた。

そうだ、かわせない弾幕には……

「スペルカード、罠符『キャプチャーウェブ』!!」

ヤマメは左腕のブレスレットと、右手改め右前肢から網を生成し、羽根を片っ端から絡めとる。
その時焼きたてピザの様に煮え立つ床を、びちゃりと踏む音が聞こえた。
ティンが駆け出している。
それを迎え討つシアン、形の整った乳房を惜しげもなく露わにして突き出した両腕、
それが……ところてんのように、裂けた!……触手だ!
一瞬の間に10発は繰り出されようかという触手の鞭打ち、
それは『本来の世界』でも魔王に挑む戦士達を最も苦しめていたであろう、魔王最大の攻撃。
そのおぞましきうねりがティンの行く手を阻む。

(あたしが、盾になって道を空ける……!)

ヤマメが『メタルキングの盾』をデイパックから取り出そうとする……
その一瞬の隙を、魔王は見逃さなかった。尻尾より生成された一本の触手がティンを迂回し、ヤマメに迫る。

「あ、卵……!」

大きな円軌道を描き、一際加速をつけてしなった触手が、超音速でヤマメの身体を切り裂いた。
下半身を階下に弾き飛ばされ、ボトリと床に落ちるヤマメの上半身。
デイパックを盾にすれば防ぐことが出来たかも知れない一撃。
だが、我が子の収められたカバンを盾にすることなど、彼女にできはしなかった。

620虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:09:52
「シッ!!」

ティンが小さな掛け声と共にシアンの傍を駆け抜けると同時、刃と化した右肘が煌めき、
吸引の負圧を生み出さんとして動き出したシアンのノドをバッサリ切断した。
シアンの生首は30cm垂直に飛び上がり、時計回りに90度回転して元の場所に着地。
だが、新たな接合面となったシアンの左頬が一瞬にして首と癒着し、食道と気管はすぐさま再構築された。
吸引作業は、ケースに挿し込まれたままのストローから、当初の予定通り開始された。

ずじゅっ、ずごごごっ

プラスチックケースの不快な振動音が部屋に小さく響く。
粘度の高い液体が吸引される音だ。

俺の、俺たちの子が。確かに首を落としたはず。
この、バケモノが。次こそ、仕留める。
振り返ったティンが見たのは、横倒しの頭から垂直に串刺しにされたシアンの姿……
左手の剣をシアンの耳孔にねじ込む、ヤマメの上半身だった。

「返せ……あたしの子ども、返セッ……!」

毒符「樺黄小町」。ヤマメは上半身を斬り落とされた瞬間にそのスペルカードの効果で身を隠し、
糸を飛ばしてシアンの真上に回りこんでいたのだ。

「殺す、殺してやるっ……殺ス、殺スコロスコロス……」

ヤマメはかすれた声でひたすら呪言を繰り返している。
憎悪に歪むその表情はまさしく悪鬼羅刹のそれだ。
『断面』から自らの血肉がこぼれ落ちるのも厭わない。
ヤマメはシアンの肩に右前肢を掛け……
左手でシアンに根元まで刺さった『メタルキングの剣』の柄を掴み……
全力で引き倒した。

みしっ、ばきばきめき、ぶしゃっ。

621虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:10:18
シアンの身体が頭からへそまで左右に分かれ、『開き』となった。
重力の作用のままに、それらはバラバラの向きにグニャリとしなだれてゆく。
力を使い果たし、ボトリと倒れかかるヤマメ。シアンの下半身に『騎乗』する格好だ。
だが、当のシアンの四つ足は……未だに床をしっかり踏みしめている!
『開き』はすぐに動き出し、背中のヤマメにバクリと食らいついた!

「くそおっ!」

間近まで間合いを詰めていたティンは、シアンの『新たなアゴ』の付け根に会心のミドルキックを叩き込んだ。
……はずだった。脚がシアンの身体を通り抜けている!?
違う!蹴りによって切り裂かれたそばから、傷が癒えている!

めりめり、ぼきぼき、ばきっ。ぐじゅっ、じゅうじゅう。

ヤマメに食らいついた『アゴ』が激しく蠕動し、咀嚼する。
ヤマメは……もはやミンチだろう。一目で判るほど無慈悲な蠢きだ。
シアンは『アゴ』からヤマメの肉体を『しぼりとる』ことによって、回復力を増しているのだ。

「返せよ……ヤマメをっ、子どもを返せっつってんだろうがああああ!」

ティンが渾身の打撃をいくら叩きこもうとも、シアンにダメージは残らない。
シアンはティンのことなどもはや眼中に無く、反撃も防御もせずに、
ひたすらヤマメの身体と妖力を貪っている。

622虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:10:42
「ハアッ……バケモノが……!シュッ!シッ!ハッ!」

そしてシアンに叩きこまれた打撃が200を超える頃の事だ。
今まで一心不乱に、怒りのままに攻撃を続けていたティンが、異変に気付いた。
なぜだ。疲労を推して今まで闘って来て、体力は限界に近づいてきているはずなのに……
技のキレが増してきている。シアンに傷が、少しずつ残り始めている。
傷の治りが、攻撃に追いつかなくなってきている。
……そうだ、怒りだ。あの信じられない脚力を生んだのは、怒りの感情だ。
もっと怒りを。
ティンは、ヤマメが『アゴ』に食われる瞬間の映像を脳裏に浮かべながら、膝蹴りを繰り出した。
シアンの脇腹が削り取られ、初めてシアンの四足がぐらついた。
怒れ。
ゴッド・リーの全身を突き破ってキノコが生長する音を思い出しながら、逆側に回り込み、肘鉄を叩き込んだ。
煙を上げてシアンの肉が削げ、白い背骨が露出した。
もっとだ。
礼拝堂で庇い合うように死んでいた、ヤマメの知り合いの少年と背中に蝶の羽根を持つ少女を埋葬した時の感触を思い出しながら、
シアンの後ろ脚をローキックで斬り落とした。
怒れっ。
突然「逃げろ」と叫んだ瞬間、産まれ出たリアルクィーンに体内を食い破られた本郷の最期をフラッシュバックさせながら、
腹を蹴り上げる。宙を舞うシアン。
怒りだ!
小吉が偽神・オルゴ・デミーラと壮絶な相討ちを遂げた瞬間を目撃した時の無念・後悔を反芻しながら
浮き上がったシアンに追撃を加えた。
怒りしか無い!!
デイヴス艦長、一郎、菜々緒ちゃん、ヴィクトリア、再会を果たすこと無くこの場で死んでいったバグズ2号の仲間達を思い出す。

怒涛の連撃とともにシアンの周囲を旋回するティンは、いつしか黒い竜巻となっていた。
狙った相手を削り取り尽くす、呪われし竜巻である。
シアンは竜巻の中を木の葉のように舞い、
ミキサーに掛けられたトマトのように撹拌、粉砕され、血と肉片の赤い雨となった。

623虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:11:11
ティンは体力を使い果たし、赤い雨に打たれるままに床に突っ伏していた。

これでまた、俺は独りぼっちか……。
……休もう。腐海の瘴気もここまでは届いていない。
新手が来ないということは、主催者の手の者はもうこの場を放棄したのだろう。
少し休んで動けるようになったら、姫と合流して脱出の方法を探そう。
うまく隠れていてくれればいいが。
それにしてもこの顔、不便だな。まぶたが無いから寝る時も目を閉じられない。
あの昆虫ケースが……嫌でも目に入っちまう。
……思い出してみれば変な女だった。
どう見てもただの人間なのに、蜘蛛の化物……ツチグモだったか?を自称していて、
ああ、こんな異常な状況でおかしくなっちまったんだな、こんな若い娘が……って最初は同情したんだよな、確か。
確かに腕っ節は強かったし、糸を出したりもしたから、俺や本郷さんみたいに改造手術を受けたクチかと思ったんだが……
まさか、タマゴ産むとはな……。本当に人と根本から違うイキモノだとは思わなかったぜ……。
……でも、それでも……あの卵、俺の子でもあったんだよな……。
本郷さんが死んで、半分ヤケになってた時に作ったとはいえ、
「だいじょぶ、ダイジョーブ、人と妖怪なんだし、そうそう当たるもんじゃないって!」
と誘われるがままに作ったとはいえ、あれは俺の子どもなんだよな……。
畜生、見たかったな、あの卵からどんな子どもが産まれてくるか。
……ん?よく見たら残っている!卵が、ケースの中に!!
あの時シアンは、卵をすすっていなかったのか?
シアンがすすっていたのは、ケースを満たしていた、王蟲の漿液だった?
卵をすするフリをしていただけなのか?それとも、卵ではなく、漿液の方が目的だったのか?
……でも、ああ、良かった。俺はまだ、独りじゃない。

血溜りを這いずりながらティンは卵の入ったケースにたどり着いた。
卵は生きている。その鼓動が確かであることを手で触れて確認すると、
それを大事に抱きかかえ、しばしの休息についた。

624虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:11:38
ティンは目を覚ましたのは、それからしばらくしてからのことだった。
5分だったか、1時間だったか、どれくらいの時間が流れたか分からない。
少し体を休めるつもりだったのが、すっかり熟睡してしまっていた。
姫のことが心配だ。早くここを出る方法を探そう。
それにしても……俺の目の前にいる女は……誰なんだいったい!?
あの金髪はヤマメか……いや違う。だがどこか見慣れた顔立ち、そして額には1対の触覚……そうだ、俺だ!
俺と、ヤマメの子か!抱えていた卵か殻だけになっている。
卵が孵った!?いくらなんでも成長が早すぎる。妖怪の子だからか?

「おはよう、ティン、いいえ……お父さん」
「……お、おう」

もう言葉を話している。ああ、声は母似だ……。

「いや、こういう時はもっと的確なセリフがあったね。

金髪の少女の顔が、『シアン・シンジョーネ』の顔に変化した。声も、口調もだ。
部屋中に散らばっていた肉片と血液が、目の前の誰かに吸引されてゆく!
まさか、おまえは……!

625虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:12:06
「そうだ、確か……『先帝の無念を晴らす!』……だ。
 魔王だから正しくは『先王』、か。フフフ。」
「!?」

俺は、悪い夢を見ているのか!?卵は……やはり殻だけ!
動けない、手足が縛られている、『蜘蛛の糸』で!!

「では、頂くか。」
「う、うあああああああああああああ、がは」

お前は、何だ。何者なんだ。
『シアンの姿をした何者か』は、真っ先に喉笛を噛み砕いてきた。叫ぶこともできない。
それから脇腹を噛み砕き、生暖かい唇を押し当てて、はらわたをズルズルと吸い出してきた。
痛みは殆ど感じない、手足は床にベッタリはりつけられている、やはりびくともしない、
腹から先刻の命を救ってくれた核鉄が覗いている、ヤマメの形見だ、俺はまだ死ねないんだ、
にもかかわらず頭が妙に落ち着いてきた、もう一度さっきの力を、視界が暗い、寒い、脇腹の唇だけが温かい、冷たい体を吸い出して、
この喉越しは俺のはらわたか、横たわる俺が見える、動けよ俺の体、俺のはらわたをすするの奴の顔が見える、
これで『計画』は完成する、計画、なぜ俺がシアンの目的を知っている、
そうか、そうだったのか、バトルロワイアルとは、蟲毒とは、正しき統治、くそっ気をしっかり持つんだ、
やめろ、迎えに来たなんて、ああ、一郎、小吉、本郷さん、ヤマメ、……皆……
ただいま。

【モントゥトゥユピー@HUNTER×HUNTER】死亡
【黒谷ヤマメ@東方project】死亡
【ティン@テラフォーマーズ】死亡

626虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:12:30
本人にその頃の記憶はないが、シアン・シンジョーネは元はただの村娘であった。
彼女は結婚式の日に理不尽な理由で新郎、家族、村人を皆殺しにされ、
自身も身動きひとつ取れなくなる程の重傷を負った。
だが、彼女はすぐには死ななかった。
チャペルに累々と積み上げられた死体の中……シアンは数日に渡り生き続けていた。
死肉に群がる蟲に、生きたまま食われ続けながら……
自分をこのような仕打ちに遭わせた世界を呪い続けながら……。
そんな彼女の怨念は彼女の肉を喰らった蟲に宿り、一体の魔族を生んだ。
無数の蟲を依り代としたレブナント……シアン・シンジョーネである。

レブナントとして生まれ変わったシアンには、その存在を賭けてでも実現したい目的があった。
世界を正しく統治する絶対的な存在、魔王の誕生である。
正しい統治が民を救う。正しい為政者は、世にはびこる不幸を駆逐する。
その信念は、彼女の居た世界から突然研究に連れ出され、
それが済んで用済みなった後に『虫ロワ』(正式名称:バグズ・バトルロワイアル)
という名の悪趣味な催しが開かれることを知っても揺るぐことは無く、一層強固なものとなった。

だが魔王の誕生には、シアンが体内に内蔵していた『魔王の魂』と莫大な量の魔力が必要である。
彼女が元居た世界では、大地に走る何本ものマナの導線『マナライン』から長期に渡って魔力を集め、
さらにシアン自身を含む多数の蟲の魔力を『コドク』の儀式によって収束させることで、やっと魔王を誕生させることができた。
虫ロワの参加者の魔力を、『コドク』で集めれば魔王を産むに足りる力を集めることができるか?
確かに彼らの中には非常に強力な力を有する者も複数存在した。
だが、それだけでは足りない、魔王を産むにはほんの少し足りない。
その少しを埋めるものは何か?怨念だ。魔力とは精神の力。
惨劇の種を振りまき、この場を阿鼻叫喚で埋め尽くそう。
その時生まれる怒り、憎しみ、苦しみ……それらが参加者の魔力を増幅させる。
そう……今しがたシアンが喰らった飛蝗の男が、魔族、いや、ヨウカイとしての力に目覚めたように。
それは皮肉にも、レブナント・シアンを産んだ状況と酷似していた。

627虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:12:52
(奴らが私を『ジョーカー』とやらに選んだのは、その為かもな……さぞ楽しめたことだろう)

血の雨降り注ぐ死闘から十数分後、そこには膨れた腹をさすりながら、独り佇むシアンの姿があった。
生物学的には、彼女は『半妖の卵』から生まれた子なのであるが
何も知らぬ白紙の状態の赤子に、アバロンに伝わる秘術『伝承法』によってシアンの人格と魔力が乗り移ってきたのだ。
彼女は間違いなく『シアン・シンジョーネ』であろう。
シアンは沈黙し、立ち尽くしていた。最後に残った蟲……このアリ塚に突入した王蟲の生命が尽きるのを待っていたのだ……
が、それだけではない。彼女は黙祷に耽っていた。
恋人の片割れを目の前で殺害し、生き残った方も生きたまま喰らうという自らの所業に、わずかながら罪悪感を覚えていたのだ。

(そうか、私が……ヒトの心など蟲に喰われた時に失せたと思っていた、私の心が痛むとは……)

そういえば、蜘蛛の女を挑発する為にすするふりをした卵も、何故か実際に口を付ける気にはなれなかった。
もちろん『伝承法』で乗り移るための保険を掛けていたから、あえて食べるフリだけにしたのだが、
例え状況が許したとしてもアレは食べられなかっただろう。
人間の子供は容赦なく魔族に変え、成人の魔族は容赦なく利用し見捨てるシアンだが、
何故か魔の者の子供には甘かった。

(私は、子供に、そして、子を育む男女に、つい今しがた私が完膚なきまでに踏みにじったものに
 ……未来の希望を見ていたのかも知れん。)

(だが、私は謝らない。……代わりに約束する。
 この世の、ありとあらゆる不幸は……お前たちで最後にすると。)

(たった今息絶えた蟲の王の魂によって、『コドク』は完成した。)

628虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:13:22
「魔王『シアン・シンジョーネ』の誕生だ……!」

誰にともなく、天を仰いでシアン・シンジョーネは宣言した。
背中には、以前にも増して眩いばかりの虹色の鳥の翼が広がった。

「私は誓う。魔王として得た力で、……全世界の、あらゆる平行世界の、あまねく不幸を尽く駆逐すると。」

シアンの頭上に、黄金色に輝く魔法陣が展開された。
大気が震え、空中放電が産まれる程の、凄まじいエネルギー。
バダンに伝わる『時空魔法陣』だ。
バダンの怪人には月面と地球を繋ぐのが関の山だったが、
今のシアンに掛かれば並行世界の壁すら容易に破ることができる。

「来たか、『虫愛づる姫君』。最後まで生き延びた褒美だ。
 このシアンの為すことを、傍らで見守っていて欲しい。
 ……最早こうして言葉を交わす必要もないだろうが。」

そう言うとシアンは姫の手を取り、魔法陣の中央、闇の中に飛び込んでいった。
魔力の源を失った魔法陣はすぐにその機能を停止し、収縮して消滅した。
大広間には、静寂だけが残された。

【王蟲@風の谷のナウシカ】死亡
【シアン・シンジョーネ@パワポケ12秘密結社編】脱出
【虫愛づる姫@堤中納言物語「虫愛づる姫君」】脱出

629虫ロワ 第100話「完全変態、そして」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:13:50
☆参加者名簿
【サバイビー】(0/13)
●バズー/●ライバー/●デブリン/●赤目/●イップ/●ギロ/●エンゾ/●デッド/●ボガド/●キム/●ラム/●ブレイズ/●マシュー

【HUNTER×HUNTER】(0/13)
●ポンズ/●キメラ=アントの女王/●コルト/●ラモット/●レイナ/●メルエム/●ネフェルピトー/●シャアウプフ/●モントゥトゥユピー/
●レオル/●ブロヴーダ/●ウェルフィン/●メレオロン/●イカルゴ/●ヂートゥ/●ザザン/●パイク/●ヒナ

【仮面ライダーspirits】(0/11)
●本郷猛/●一文字隼人/●風見志郎/●フレイ・ボーヒネン/●アスラ/●グィン将軍/●ジゴクロイド/●カマキロイド/●カニロイド/●ムシビト/
●ビクトル・ハーリン

【虫姫さま】(0/11)
●レコ/●アキ/●キンイロ/●ギガスゾォム/●ザゾライザ/●ベニホノォガーダー/●キュリオネス・ヘッド/
●ヤミィロシマーボウ/●ダマルリガ/●ルリイゴホォン・クリス/●アッカ

【テラフォーマーズ(バグズ2号編)】(0/11)
●小町小吉/●ドナテロ・K・デイヴス/●蛭間一郎/●秋田菜々緒/●ティン/●ゴッド・リー/●ヴィクトリア・ウッド/
●テラフォーマー(第1話・菜々緒の首を折った個体)/●テラフォーマー(第2話・ゴッド・リーの高熱ガスを受けた個体)/
●テラフォーマー(第3話・テジャスの頭をもいだ個体)/●次世代型テラフォーマー(額に川の字)

【風の谷のナウシカ】(0/6)
●ナウシカ/●セルム/●王蟲(6巻・ナウシカを漿で包んだ個体)/●王蟲・幼体(2巻・トルメキア軍に囮として利用された個体)/●地蟲/●ヘビトンボ

【地球防衛軍2】(0/6)
●巨大甲殻虫/●赤色甲殻虫/●凶虫バゥ/●バウ・ロード/●ドラゴン・センチピード/●ストーム1

【ドラゴンクエスト7】(0/5)
●チビィ/●シーブル/●ヘルワーム/●チョッキンガー/●オルゴ・デ・ミーラ

【ロマンシング・サガ2】(0/4)
●ワグナス/●クィーン/●マンターム/●タームソルジャー

【パワポケ12秘密結社編】(1/4)
○シアン・シンジョーネ/●ソネ・ミューラー/●ハキム/●ヘルモンド

【東方project】(0/3)
●西行寺幽々子/●リグル・ナイトバグ/●黒谷ヤマメ

【武装錬金】(0/2)
●パピヨン/●ドクトル・バタフライ

【堤中納言物語「虫愛づる姫君」】(1/1)
○虫愛づる姫

【スパイダーマン(東映版)】(0/1)
●山城拓也

【現実】(0/2)
●ジャン・アンリ・ファーブル/●下妻市のシモンちゃん

計2/93
虫ロワ(バグズ・バトルロワイアル)終了

630虫ロワ エピローグ「胡蝶の夢」 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 10:14:40
途方も無い魔力を蓄え、真なる魔王と化したシアン・シンジョーネが、地球に『降臨』した。
北極点付近で撮影されたその姿は、太陽のようにまばゆく輝く黄金の鳥の様だったという。
その輝きは波紋のように大気圏内を巡り、地球上全ての生命体を覆い尽くした。
同時に、彼らはその輝きの正体を知る。
何か偉大で、温かい力を持つものが入り込んでくる。
それを中心に、全ての生命体の精神がつながり合っていく。
同化の法。テレパシー。蟲や死霊を操る能力。
蟲毒によって集めた参加者の魂からこれらの能力を獲得したシアンが行ったのは、地球上の全生命体の意識の統合。
食うものが食われることの痛みを知り、食われるものが食うことの苦しみを知る世界。
シアンの目的は自ら大地にあまねく五虫を束ね、調和させる鳥となることだった。

その光の津波は、社会と生命のあり方を根本から覆した。
今まさに戦闘中だった敵兵同士が、突如として武器を投げ捨てた。
自力の呼吸すらできなくなった母親の真意を知り、静かに呼吸器を外す息子がいた。
職を求めるという行為が意味を失い、人々は皆自然と最も適する役割を担った。
役割が無いと悟った者は静かに土や海へと還っていった。
市場経済は自然消滅し、政府は大幅にその機能を縮小した。
屠殺業者は自責の念から自殺を試みたが、家畜たちに制止された。
恋愛はその意味を失い、婚姻ははより優れた子孫を残すための品種改良の手段となった。

生きとし生けるものがお互いの全てを知り、競争を止め協力をする世界。
地球の生命は、初めて一つの『真の社会』となった。
生存競争というエネルギーのロスが消え、文明が急速に発展した。
やがて並行世界の壁をも超えて統合された地球の生命は宇宙にまで版図を広げ、
末永く繁栄を謳歌することとなる……。

631虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:32:39
……今、わらわが見ていたのは何だったのじゃろう。

確か、やっとの思いで隠れることができた所までは覚えておる。
傍にいるだけでどうにかなってしまいそうなゆぴいの『怒りの感情』じゃった。
隠れた後、わらわは……気を失っておったのじゃろう。
長い、永い、幾百年、幾千年もの間を夢見ていたようじゃ。
ゆぴいに、やまめに、てぃんは、どうしたのじゃろう。

(死ンダ。……アノマツロワヌ魂……しあんノ贄トナッタ。)

虫愛づる姫君が仲間の安否を案じると、階下から話しかけてくる心の声が聞こえてきた。
体全体を震わすように重々しく、それでいてどこか安らぎを感じるその声は……王蟲。
姫を含む4人を、捨て身でこの蟻塚まで運んでくれた仲間。
既に事切れたかに思えた彼女だったが、まだ息があった。
現在も姫の右腕の腕輪を介して、王蟲と心が通じ合っているのが何よりの証拠だ。
だが今は、そんなことよりも……

(3人とも死んだ、じゃと?)
(オマエモ見タハズダ。今見テイタノハ、紛レモナク現実ニ『起キテイタ』コト。
 ヨリ正確ニハ……今、マサニ『起コッテイル』コト、ナノダ。
 オマエガ左手ニ握リ締メテイル、ソノ『珠』ガ我々ニ見セタ光景ハ……。)
(この珠が……?)

632虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:33:13
いつの間にか姫が握り締めていたのは、オレンジ色に淡く輝く宝珠・『未来視の珠』。
その名の通り説明書きには『未来が見えるといわれる魔法の珠』とだけ記されていたが、
何をしてもその効力を発揮することがなく、支給された彼女自身その存在を忘れてしまっていたシロモノだ。

(では、今見たまぼろしが本当に『起コッテイル』コトとして、
 どこまで『起コッテイル』のじゃ?判るか?王蟲よ)
(ダカラソレハ……今教エタ通リ、ダ。)
(死んだのか!?ゆぴいも、やまめも、てぃんも!おお……なんということじゃ)
(ダガ……案ズル事ハ無イ。
 オ前ハ恐ラク、最後マデ生キ残ル。ソノ珠ガ見セル通リニ事ガ運ベバナ。
 ソレニ……ソノ『珠』ノオカゲデ初メテしあんの真意ヲ知ルコトガデキタ。
 コノ地デ斃レタ蟲タチノ魂ヲ糧ニ、しあんハ『救イ』ヲモタラソウトシテイルノダ。)
(『救い』、じゃと……?)
(私モモウ助カラナイガ……私ガ死ンダ時、ソノ魂ヲ以ツテしあんノ『救イ』ハ完成スル。
 ダカラ、オ前ハ何モ案ズル事ハ無イ、心配ハ要ラナイ。
 我々ノ戦イハ……モウ、終ワッタノダ。)

既に我々にはシアンと戦う理由がない。
そう告げられた姫は咄嗟に王蟲に何か言い返そうとしたが、上手く言葉にできなかった。
だが、数十秒の沈黙の後、ポツリと一言、口にした。

633虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:33:59
「……嫌じゃ。」
(……)
「そんな世界、嫌じゃ。
 産まれた時からこの世の生き物のこと全て知り尽くしておる世界など、わらわは嫌じゃ。
 そんな世界、『救い』でも何でもない。」
(………)
「わらわは……毛虫が蛹になって、蝶になるのを見るのが好きなのじゃ。
 初めて見る毛虫が、どんな蛹にこもって、どんな蝶になるのか……
 成長する過程、そして、わらわがそれを知っていく過程が好きなのじゃ」
(…………)
「じゃから……シアンのこれからやろうとしていることは、
 とても『救い』であるとは思えん。わらわが、わらわでなくなってしまう。
 ……のう、どうにかしてしあんを止めることはできぬか?」
(……オ前ハ、ワガママダ。
 貴人ノ娘トシテ何一ツ不自由ナク生キテキタカラ、ソンナコトガ言エルノダ。
 全テノ生キ物ガ心ヲ通ジ合ワスコトガ出来レバ、
 人間ドモガツマラヌ争イデ苦シムコトハナクナルノダ。
 餓エテ死ヌ子ラモ大勢救ウコトガデキルノダ。)

「……駄目なのか?……ならば、わらわだけでも行く。行かせてたもれ。」
(イヤ……待ッテイタゾ、ソノ言葉ヲ。『しあんヲ止メル』トイウ、ソノ言葉ヲ。
 オ互イ殺シ合イ、喰ライ合イ、餓エテ倒レ……ソレデモ生キテユクノガ、人間ナノダ。
 生命ナノダ。ダカラ……『コノ者タチ』ト共ニ、チカラヲ貸ソウ、『虫愛ヅル姫君』ヨ。)

いつの間にか姫の周りには、喰われずに残っていた魂が集まっていた。
シアンに『触媒』として集められ、蟲毒の足しにならぬからと捨て置かれていた、ただの人間の魂。
姿は視えないが、確かにそこにいる。会ったことがある者も、顔も見ることも無く死んでしまった者も。
そして、魂を喰われて尚、子の為に戦わんとする土蜘蛛の半身も、そこにいた。
彼らが護ってくれている。姫は武器を手に、立ち上がった。

(君ならできるよ)
「そうとも、わらわたちなら……できる!」

これが最後の闘いだ。

634虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:35:08
血の雨降り注ぐ死闘からおよそ十分後、そこには膨れた腹をさすりながら、独り佇むシアンの姿があった。
生物学的には、彼女は『半妖の卵』から生まれた子なのであるが
何も知らぬ白紙の状態の赤子に、アバロンに伝わる秘術『伝承法』によってシアンの人格と魔力が乗り移ってきたのだ。
彼女は間違いなく『シアン・シンジョーネ』であろう。
シアンは沈黙し、立ち尽くしていた。最後に残った蟲……このアリ塚に突入した王蟲の生命が尽きるのを待っていたのだ……
が、その時シアンの胸に、赤い呪力の槍が突き刺さった。
これは、シアンもよく知る攻撃魔術の一つ……『ブラッドランス』!

「『虫愛づる姫君』……!そのまま大人しく寝ていれば、『新世界』の誕生に立ち会えたものを!」

シアンが振り向いた先には、『賢者の青き衣』を纏った黒髪の少女がいた。
右腕に大型のプラズマ銃、左手には今しがた初めて『本来の用途』で使われた未来視の珠。
そして、下半身は……先程階段に叩き落としたツチグモの胴体と融合している!

「既にお前達の仲間は全滅している!
 それでも、あくまで私を邪魔するというなら、消え失せろッ!」
「……右っ!」

以前にも増して強力な熱線『王の怒り』を、姫は蜘蛛の肢で横跳びし回避。
姫のもう一つの支給品は、一枚の紙切れ。
破り捨てることで一時間だけ『念能力』を得ることができる、てのひらに収まる大きさの、小さな紙切れだ。
彼女に支給されていたのは……『死体と遊ぶな子供達(リビングデッドドールズ)』が封じられた券。
それは、死体に取り付き、我が身のように操る念能力だ!

(よもやわらわがこうして、土蜘蛛と一つになって戦うことになるとはな……)

635虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:35:35
感慨に浸る暇はない!
シアンは再び背中に翼を、そして両腕を無数の触手を生み出している!
姫の正面から『ふりそそぐ羽根』が、周囲からは回りこむように『触手』が、
怒涛のように襲い掛かってくる!

「敏捷性強化(くいっくねす)……!」

未来視の珠に封じられたもう一つの術、『クイックネス』で加速した姫は、
なんとシアンに向かって真正面から突貫した!
無数の毒羽根の発射地点に、最も弾幕密度の高い地点に向かって!だが、当たらない!
身を翻し、首を反らし、電光のように隙間を縫いながらかわす、かわす、かわす!

「この動き!術で強化された程度でこれだけ動けるはずが……!まさか……!」

シアンが驚愕する一瞬の間に、既に姫は目前に到達していた!
既に癒えつつあった胸の傷に右腕のプラズマ銃をねじ込みながら!

「そこじゃああああああ!」

636虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:36:16
そして、レイピアGスラストの引き金が引かれ、シアンの体内に押し込まれた銃口から
エメラルドグリーンの閃光が放たれた!
巨大昆虫さえ一瞬で焼き殺す無数のプラズマアーク刃が、ゼロ距離、いや、マイナス距離からシアンを襲う!

「がああぁああああぁああぁあぁあ!」

全身を痙攣させ、苦悶の叫びを上げるシアン!
炭化する肉体は魔王の驚異的な回復力で次々修復されてゆくが、追いつかない!
徐々にシアンの胸に穴が穿たれてゆき、そしてついに鼓動する心臓が露出した!

「これでえぇ!終わりじゃああああああ!」

姫はエネルギーの切れた銃を投げ捨て、
右手をシアンの心臓に……『魔王の魂』の宿る処に押し当て、スペルカードを宣言した!
今や姫の半身となった『黒谷ヤマメ』の、スペルカードを!

「細網『犍陀多之縄(カンダタロープ)』!……皆、還って来いっ!」

掌から放たれる黄金色のレーザーが露出したシアンの心臓を更に灼き貫く!
……いや、貫けない!
シアンの肉体の回復が追いつき始めている!破壊力が、足りない!
そして、ついにスペルカードの効力が終了した!
シアンの傷は姫の右腕を閉じ込めたまま、完全に回復してしまった……!

637虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:36:46
「ハァッ、ハーッ……どうした、これで打ち止めか」
「はあっ、はぁっ……」
「……惜しかったな。私の攻撃を掻い潜り、間近まで詰め寄ったあの動き。
 蟲毒の材料として使われず漂っていた『人間』達の意識を借りていたのだろう?
 私が真の魔王となれば、更に多くの者……全世界の生命と繋がることも可能だ。
 お互いがお互いの全てを知り尽くし、争いもなく協力して生きていく。
 悪しき迷信に囚われること無く、全ての者が正しい知識を生まれつき共有している。
 ……そんな世界を創ることができるのだ。
 ……もう一度だけチャンスをやろう。私と共に来い。世界を救おう。二人で、共に」
「……じゃ。」
「ん?」
「わらわの……わらわたちの勝ちじゃ」
「何を言って……まさか、これは!!」

(ほらね?迎えは絶対来るって)

シアンの胸の中から声が聞こえてくる。

(しかし、こんな細い糸で大丈夫なのか?)

正確には胸の中、心臓と一体化した魔王の魂からだ。

(どっかのお釈迦様の気まぐれとは一緒にしないでほしいわね。
 この糸は百人ぶら下がってもダイジョーブ!)
(カメラで撮られたりしない限りね!)
(うっさい!)

この声は……蟲毒によって魔王の魂の中に封じられた、死んだ蟲たちの声!

638虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:37:16
「待てっ、お前は何を「おおおおおおおおお!!」

姫がシアンの体内に埋まった右腕を力の限り引き抜くと、その手には金色に輝く細い糸が握られている!
糸には数匹の蜜蜂や、ケラ、甲虫、コオロギ、隻眼のオオスズメバチ……何匹もの小さな虫たちの……魂が掴まっている!

「まさかお前は!……やめろ、やめてくれえええええ!」

シアンはその時初めて姫の真の目的を知った!
魔王の魂に撃ち込まれた『カンダタロープ』の真の目的を!

「皆の者、手伝ってたもれ!」

『人間』たちの魂が、力を合わせて金色の糸を引く!
魔王の魂に封じられた、蟲達の魂が続々引きずり出されて来る!
ヒトと心を通じ合わせた、あるいは通じ合わすことのなかった虫の魔物たちが、
異星からの尖兵たちが、火星で異常な進化を遂げた黒き悪魔たちが、ヒトを喰らいヒトの姿と知性を得た蟻たちが、
ヒトの身に蟲を組み込んだヒト達が、善悪なく、その魂の聖邪にかかわらず、一筋の蜘蛛の糸を手繰り魔王の魂を脱出する!

(姫と、王蟲たちに……あのワグナスって奴には感謝しないといけないな)
(そうね……ユピー、アンタはどうするの?
 要らないっていうんなら、あたしがアンタの分までもらってくわよ?)

「……王蟲よ、頼む!」
(心得タ)

639虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:37:48
金色の糸の延びる先には、既に朽ち果てた肉体を脱した王蟲がいた!
彼女もまた綱引きの錨(アンカー)となって、糸を引いている!
蟲達の魂はなおも列を為し、続々と抜け出てくる!
シアンの同志だった者たちも、森を護っていた巨大な蟲たちも、
かつて世界を救い英雄と呼ばれた復讐者も、世界を切り取り闇の中に封じようとした偽神も、
蟻の王とその忠実な下僕たち、そしてその母君も……!

(ピトー、プフ、そして、母上……迎えが来た、共に行こうぞ)
(ははっ)
(仰せのままに)
(王!私も、このモントゥトゥユピーもお供します!)
(ならぬ)
(!?……何故です、王!)
(余は既に王ではない)
(王、いえ、メルエム様は既にその役目を終えられた……ただそれだけの事)
(これで、今度こそコムギ様の元へ行けますね、メルエム様)
(モントゥトゥユピー、今まであの子に、メルエムによく仕えてくれました。
 ですが、肉体の滅びた私たちは行かなければなりません。あの巨きな蟲の導く先へ。
 この地で我らが種族もその殆どが斃れてしまいました。貴方だけは、まだ……)
(母上の言う通りだ。余からも、頼む。……キメラアントの未来をお主に託す)
(……メルエム様)

(ユピー!どーすんのー!?)
(早く決めないと、ヤバいぞー!)

640虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:38:40
既に蜘蛛の糸は姫の手を離れていた。
王蟲を先頭に、ヒトと、蟲と、それ以外の何かの魂が、蜘蛛の糸に連なり天へと還ってゆく。
生前の姿を模していた魂の像が、次第にぼやけ、薄くなり、遠く何処かへ離れてゆく。
文字通り魂の抜け殻となり、仰向けに倒れたシアン・シンジョーネ。
首の裏から一瞬、焼けるような痛みが走った。『呪印』が解かれたのだ。
もはやこの蜘蛛の体も必要ない。持ち主に還そう。姫は念能力を解除し、ヤマメの半身との融合を解いた。
シアンの胸からは依然、天に向かって延びてゆく蜘蛛の糸が……糸を掴んだ手が湧き出てくる!
実体のある、手が!シアンの胸から!腕が!肩が!身体が!バリバリと肉を裂きながら!

「お、お主ら……!……何者じゃ!?
 ええと、『やまめ』に、『ゆぴい』に、その『飛蝗頭』は本当に何者じゃあ!?」
「ティンよ。なかなか美味しそうな顔でしょ?」
「……やまめよ、それは無いのう。して、なぜお主がゆぴいの胴体を!?」
「だってあたし、出てきても足が無いし」
「だからって俺の身体奪う奴があるか!?」
「ゆぴいが縮んでおるのはそのためか……でも、良かった。3人とも無事だったのじゃな」
「4人よ」
「ああ」

蜘蛛の糸を手繰り、魔王の魂から最後に脱出を果たしたのは、
ユピー、ティン、ヤマメと、彼女が左手に持つ卵の『4名』であった。
魂のみならず、肉体をもシアンに奪われた彼らは
魔王の魂の中でワグナスより教わった術・同化の法でシアンから肉体を奪い返すことにより、生還を果たしたのだ。
……ユピーが迷う間にヤマメが余分に身体を同化してしまうというイレギュラーは発生してしまったが。

641虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:39:02
「俺の身体返せよ、テメェ!」
「やだよ、同化の法で身体は治せても、痛いモノは痛いもん!」
「じゃあ、あの人間の女に貸してた、胴体を寄越せ!」
「それもダメ!……あたしを食べて良いのは、ティンだけだもん!」
「……おい、ティン!……あの胴体、喰って良いか?もしダメなら、お前の下半身をもらう」
「俺に振るな俺に!」

(あやつら、生き返ったばかりなのに元気じゃのう。
 ……そうか。そうでなければ困る、か。そうじゃな、戦いはまだ終わってはおらぬ。
 そして、この戦いが終わってもまた新たな戦いがやってくる……か。
 ……王蟲よ。達者でな)

「あー、痛かった……今日は3回も胴を斬られた……厄日だわ」
「少なくとも1回は自業自得だろうが、ケッ!」
「そういう時は逆に考えるんじゃ。
 1日に3回も胴体を斬られて生きておるなんて、なかなかできん経験じゃぞ?
 普通1回で死ぬ。お主は幸運じゃ」

『ア゛ァア゛ア゛ア゛ア゛――――――――――――――――!!!』

ユピーが『元の姿』に戻り、ヤマメが蜘蛛の下半身を取り戻した時、
部屋中にけたたましいモーターサイレンの大音響が鳴り響いた。

642虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:39:35
「この音は!」
「『警告音』だ!……主催者の手に負えなくなった俺たちを、アリ塚ごと始末する気だ!
 核爆弾か、殺虫剤のような兵器で!」
「姫!主催者の、ナムリスの居所は判るか!」
「この上……階段を登った先じゃ!」

一行が階段を駆け上がり、鉄の扉を突き破ると、
そこは無数のモニターが床から天井から並ぶ……航空管制室とでも表現すべき部屋に行き着いた。
部屋の中央の机には、マイクスタンドと兜をかぶった生首があった。
バトルロワイアル司会進行役の、皇兄ナムリスだ。

「おい、そこの生首!わらわ達が帰る方法を教えろ!」
「あ゛ぁ!?」

モニターを見張っていたナムリスは、ぴょんぴょん飛び跳ねて一行の方を向いた。

「脱出の方法を教えろって言ってんのよ、このゆっくり亜種!」
「ああん!?ねえよ、そんなもん!」
「何だと……!」
「しらばっくれたら為にならねぇぞ。頭を開いて脳味噌に直接『質問』させてもらう。
 俺はピトー程器用でないから、余計に苦しませることになるかもしれん。覚悟しろよ」
「そんなことしても何も判らねえぜ?『廃棄』されたんだよ!お前らも、俺も!!
 脱出方法なんざ無え!あと10分でこの会場の最深部、腐海の底にセットされた水素爆弾が爆発する!
 せいぜいゆっくりして逝きやがれ!ヒヒヒヒヒヒ、ヒ、ヒ……ヒ!?」

一行が詰め寄ろうとすると、一つ目をあしらったナムリスの兜の『瞳』に、剣が突き刺さっていた。
大広間に置き忘れてきた、『メタルキングの剣』だ!
投げつけたのは……

643虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:40:07
「シアン・シンジョーネ!」
「生きてやがったのか……」

ユピー、ティン、ヤマメの3名は、部屋の入り口で息を切らすシアンに敵意の篭った眼差しを向けた。

「その男の言う事は……事実だ。脱出方法など最初から用意していない」
「このアマ……!」
「よせ、ゆぴいよ……しあん、お主が」
「ああ、脱出方法は、これから私が作る」
「信用するとでも思っているのか?」
「それはお前たちの勝手だ。私は為すべきことをするだけだ」
「てぃん……わらわも保証する。しあんにもはや、敵意はない」
「……方法は?」
「『時空魔法陣』を開く。『コドク』の儀式は魂の解放によりお前たちに破られたが……
 『コドク』により集められた魔力はまだいくらか残っている。
 お前たちを元のところに帰すくらいなら、何とかなるだろう」
「……では、わらわは屋敷に送ってたもれ」

最初に行き先を告げたのは、虫愛づる姫君だった。
彼女だけは、予知で『時空魔法陣』を見ていた。
シアンが目を閉じ空中に手をかざすと、スパークと共に空中に魔法陣のリングが出現。
それは拡大を続け、シアンの身長ほどのサイズで静止した。姫が予知で見たものと同じ魔法陣だ。
リングの内側には、夜の水面のように波打つ膜の向こうに……うっすらと大きな木造の邸宅が見える。

「ここを通り抜ければ帰れる……別に時速600キロを出す必要はないからな」
「? ともかく、向こうに見えるのは、間違いなくわらわの家じゃ。信じてやっても良いと思うぞ」

3人は実際に出現した魔法陣と姫の言葉に、幾分警戒を和らげた様子だった。

「本当に信じて良いのね?あたしとこの子は、幻想郷の地底の入り口へ頼むわ。ねえ……」

ヤマメがぶつけた質問は、参加者の立場からすればごく当然の質問だった。

644虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:40:37
「シアン、あんた敵だったのに……なぜそこまでしてくれるの?」
「同じだからだ。私も、お前たちも……人間以外の関係者は全て生体データ採取の為に集められたサンプルなのだ。
 この場でバトル・ロワイアルが開かれたのも、サンプル処分を兼ねた余興に過ぎん。
 『コドク』を完成させようとしたのも……いや、よそう。今は時間が惜しい。早く次の者の行き先を教えろ」

シアンがこのバトル・ロワイアルの開催の経緯を参加者に告げたのは、その時が初めてだった。

「俺は……そのサンプルとやらを集めた連中の元に送ってくれ。ぶん殴りに行く」

……そして、それを知ったユピーの反応は実に彼らしい反応であった。

「ユピー、アンタ王様とお母さんの最期の言葉忘れたの!?『キメラアントの未来を頼む』って!
 復讐なんてやってる場合!?」
「ヤマメの言うとおりだ。奴らに楯突く事は……あまりオススメできんな。
 私たちの反乱など想定の範囲内だろう。対策は何重にも打っているはずだ。
 例え関係者全員を皆殺しにして復讐を果たしたとしても
 いずれ代わりの組織が現れて同じ事をするだろうしな」
「それでもやるんだよ。俺たちをこんな穴蔵に閉じ込めて、こんな殺し合いをさせて、
 それを肴に一杯やる連中の事、許せる訳がねぇ!ありえねぇよ!
 その連中とやらには一発、痛い目見せてやらなきゃならねぇ!
 でねぇと、またすぐに同じことやるぜ……!俺たちや、俺達の子孫を無理矢理呼び出してな!」
「なるほど、ユピーは『私と同じ』でいいな」
「シアン、てめぇ……」

シアンの手により、新たに2つの魔法陣が開かれた。

645虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:41:00
「残るはてぃんだけじゃな。てぃん、お主はどうするのじゃ?」
「俺は……」
「あたし達と一緒に行こう!幻想郷で一緒に暮らそうよ!」
「……すまない。俺もユピー達と共に行く」
「え……?」
「俺たちの子を守るためだ、分かってくれ……全部片付いたら、必ずそっちに行くから」
「…………ティン、頭下げて」

そう言うや否や、ヤマメはティンの頭を右前肢で自分の顔まで引き寄せ……

「そういえば、ちゃんとキスしたの初めてたったね……」

本来緑のはずのバッタの頭が、赤く染まった瞬間であった。

「ティン、待ってるから!じゃあね、みんな!」
「ああ、必ずそっちに行くからな!」

照れくささを隠し切れない様子で、まずヤマメが幻想郷へと繋がる魔法陣に飛び込んだ。
もちろん、左手には卵を抱えて。

646虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:41:37
「おおう、あやつら熱いのう……」
「ケッ、バカップルが」
「では、わらわも行くとするか。あやつらを見ておると、急に右馬佐の奴に会いとうなってきた。
 ……ゆぴいに、てぃんよ。お主らも急ぐが良いぞ。では、さらばじゃ」

別れの言葉もそこそこに、虫愛づる姫君もそそくさと魔法陣を通り抜けていった。
と同時に、ユピーとティンは異変に気付く。

「う、うむむむむ……」(ぷしゅ〜っ)
「シアンの奴、湯気吐いてるぞ!」
「オイッ、シアン!目ェ回して、ゆでダコみたいになってんじゃねぇ!
 魔法陣消えかけてんぞ!気を確かに持てっ!どんだけウブなんだよ、オイッ!
 ティン!早く来いっ!!魔法陣がやべぇ!」

ティンと、シアンを担いだユピーが、駆け足で魔法陣を駆け抜けていった。
彼らの戦いはまだ終わってはいない。

【王蟲@風の谷のナウシカ】死亡
【黒谷ヤマメ@東方project】脱出
【虫愛づる姫@堤中納言物語「虫愛づる姫君」】脱出
【モントゥトゥユピー@HUNTER×HUNTER】脱出
【シアン・シンジョーネ@パワポケ12秘密結社編】脱出
【ティン@テラフォーマーズ】脱出

647虫ロワ 第100話・TAKE2『バグズ・ライフ』 ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:42:07
☆参加者名簿
【サバイビー】(0/13)
●バズー/●ライバー/●デブリン/●赤目/●イップ/●ギロ/●エンゾ/●デッド/●ボガド/●キム/●ラム/●ブレイズ/●マシュー

【HUNTER×HUNTER】(1/13)
●ポンズ/●キメラ=アントの女王/●コルト/●ラモット/●レイナ/●メルエム/●ネフェルピトー/●シャアウプフ/○モントゥトゥユピー/
●レオル/●ブロヴーダ/●ウェルフィン/●メレオロン/●イカルゴ/●ヂートゥ/●ザザン/●パイク/●ヒナ

【仮面ライダーspirits】(0/11)
●本郷猛/●一文字隼人/●風見志郎/●フレイ・ボーヒネン/●アスラ/●グィン将軍/●ジゴクロイド/●カマキロイド/●カニロイド/●ムシビト/
●ビクトル・ハーリン

【虫姫さま】(0/11)
●レコ/●アキ/●キンイロ/●ギガスゾォム/●ザゾライザ/●ベニホノォガーダー/●キュリオネス・ヘッド/
●ヤミィロシマーボウ/●ダマルリガ/●ルリイゴホォン・クリス/●アッカ

【テラフォーマーズ(バグズ2号編)】(1/11)
●小町小吉/●ドナテロ・K・デイヴス/●蛭間一郎/●秋田菜々緒/○ティン/●ゴッド・リー/●ヴィクトリア・ウッド/
●テラフォーマー(第1話・菜々緒の首を折った個体)/●テラフォーマー(第2話・ゴッド・リーの高熱ガスを受けた個体)/
●テラフォーマー(第3話・テジャスの頭をもいだ個体)/●次世代型テラフォーマー(額に川の字)

【風の谷のナウシカ】(0/6)
●ナウシカ/●セルム/●王蟲(6巻・ナウシカを漿で包んだ個体)/●王蟲・幼体(2巻・トルメキア軍に囮として利用された個体)/●地蟲/●ヘビトンボ

【地球防衛軍2】(0/6)
●巨大甲殻虫/●赤色甲殻虫/●凶虫バゥ/●バウ・ロード/●ドラゴン・センチピード/●ストーム1

【ドラゴンクエスト7】(0/5)
●チビィ/●シーブル/●ヘルワーム/●チョッキンガー/●オルゴ・デ・ミーラ

【ロマンシング・サガ2】(0/4)
●ワグナス/●クィーン/●マンターム/●タームソルジャー

【パワポケ12秘密結社編】(1/4)
○シアン・シンジョーネ/●ソネ・ミューラー/●ハキム/●ヘルモンド

【東方project】(1/3)
●西行寺幽々子/●リグル・ナイトバグ/○黒谷ヤマメ

【武装錬金】(0/2)
●パピヨン/●ドクトル・バタフライ

【堤中納言物語「虫愛づる姫君」】(1/1)
○虫愛づる姫

【スパイダーマン(東映版)】(0/1)
●山城拓也

【現実】(0/2)
●ジャン・アンリ・ファーブル/●下妻市のシモンちゃん

計5/93
虫ロワ(バグズ・バトルロワイアル)終了

648虫ロワ ◆XksB4AwhxU:2013/08/05(月) 13:42:36
以上で投下を終了します。

649名無しロワイアル:2013/08/12(月) 19:55:30
これで完結したのは……
8作品目?

650名無しロワイアル:2013/08/12(月) 21:17:23
虫ロワ完結おめでとうございます。
エピローグまで流れて、事実上の全滅で終わるかと思いきや、
まさか虫愛づる姫がヤマメの力を借りて、蜘蛛の糸の寓話の再現というか、
仲間達を死の淵から現世に呼び戻す荒業! また俺の想像力が足りなかった……
ティンたちの戦いはこれからのようですが、続きはあるんですかね?(期待)

651 ◆XksB4AwhxU:2013/08/13(火) 21:22:02
>>650
感想ありがとうございます。
参戦発表時は2話目までのプロットまでしか考えてなかったのでどうなることかと思っていましたが、
何とか完結できました。

行き当たりバッタリなのは毎度のことですが、エピローグはまたそのうちに……ということで。

それにしても……今思い返すと普段のパロロワじゃあ生き残りそうに無いメンツだなぁw

ティン:1巻で壮絶な死を迎える主人公の親友ポジ
ヤマメ:1面ボス
ユピー:敵組織幹部の脳筋担当
シアン:敵組織幹部のリーダー、ただし原作ではハーゴンに近い立場
王蟲:名無しキャラ、見た目からして完全に人外
虫愛づる姫君:古文の短編が出典の一般人、ていうかほぼオリキャラ

652 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/13(火) 21:47:02
>>651
そもそもテラフォの参戦キャラ(死亡済みですが)からして無理矢理感がw
バグズテラフォーマーですらないのにじょうじい過ぎですよw
けどそうやって自分の好き放題やれるのが、そしてそれを見せてもらえるのがあと3話の醍醐味。
あとティンは死に様も生き様も最高に熱い男なので、二次創作でこそ生き残って欲しいと思う自分には最高でした。


自分の場合、2話目でノリ過ぎて初期プロットが完全にひっくり返ってしまいました。
本当はもっと1話辺りの文量を少なく、さっくり全滅ENDの予定だったのに……
実はオキクルミはパワーアップせずに死ぬ予定でした。というかそれを思いついたがためにああなりました。

653名無しロワイアル:2013/08/19(月) 21:47:28
よーし、お兄ちゃん新しく来たヒトの為に
>>317の続き作っちゃうぞーw

◆Wue.BM1z3Y氏
DQFFロワイアルS XIII 完結
>>17から3話連続

◆eVB8arcato氏
まったくやる気がございませんロワイアル
テンプレ、298話>>33

◆nucQuP5m3Y氏
リ・サンデーロワ 未完(だけど完結)
テンプレ>>44 298話>>59 299話>>122 300話>>366

◆6XQgLQ9rNg氏
それはきっと、いつか『想い出』になるロワ 完結
テンプレ、298話>>46 299話>>97 300話>>174

◆9DPBcJuJ5Q氏
剣士ロワ 完結
テンプレ>>66 298話>>137 299話>>212 300話>>385 死者スレラジオ>>539

◆MobiusZmZg氏
素晴らしき小さなバトルロワイアル
テンプレ、288話>>68 289話・序幕>>161 289話・第一章>>276 289話・第二章>>494

◆c92qFeyVpE氏
絶望汚染ロワ
テンプレ、288話>>84 289話>>344

◆YOtBuxuP4U氏
第297話までは『なかったこと』になりました(めだかボックスロワ) なかったことになりました(完結)
テンプレ、298話>>149 299話>>192 死者スレ>>353 300話>>438

◆rjzjCkbSOc氏
謎ロワ 完結(プロローグが)
テンプレ>>201 298話>>234 299話>>255 300話>>467

◆9n1Os0Si9I氏
やきうロワ 完結
テンプレ、288話>>206 289話、300話>>322
希望ロワ
テンプレ、298話>>568

◆tSD.e54zss氏
ニンジャスレイヤーロワ
テンプレ、288話>>244

◆uPLvM1/uq6氏
変態ロワ
テンプレ>>264 158話>>517

◆xo3yisTuUY氏
日常の境界ロワ
テンプレ、298話>>265

◆XksB4AwhxU氏
虫ロワ 完結
テンプレ>>67 98話>>301 99話>>332 100話>>613

◆Air.3Tf2aA氏
現代ジャンプバトルロワイアル
テンプレ>>350

◆ULaI/Y8Xtg氏
ダンガンロンパ―もういっかい! リピート絶望学園♪―(ダンガンロンパロワ)
テンプレ>>379

◆uuKOks8/KA氏
幻想水滸ロワイヤル
テンプレ>>551 322話>>587

◆loZDXIX6eU氏=◆Q0VzZxV5ys氏
NARUTOロワ
テンプレ>>563 一回目>>575

◆LO34IBmVw2氏
孤独ロワイアル
テンプレ>>567

◆r7Zqk/D9pg氏
D(どうしようもないよ)Q(くぉいつら)ロワ(ドラクエロワ)
テンプレ、288話>>601

654 ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 00:58:07
投下します、と言いたいですがテンプレ生存者七人おるやん、ってことでまずはテンプレ変更します。



【ロワ名】
『孤独ロワイアル』

【生存者6名】
岩倉玲音(serial experiments lain)
佐藤達広(NHKにようこそ!)
桐敷沙子(屍鬼)【限界寸前】【右腕使用不可】
引企谷八幡(やはり俺の青春ラブコメは間違っている。)
鈴木英雄(アイアムアヒーロー)【フラッシュバックによる無力化の可能性】
ピノ(Ergo Proxy)

【主催者】
球磨川禊(めだかボックス)

【主催者の目的】『暇つぶし』『強いて言うなら』
        『パロロワってやつを開催してみたくてね』

【補足】『優勝したら元にいた世界に返してあげるけど』『願いは叶えないよ』
    『だってどんな願いも叶えるだなんて』『人間にできるわけないだろう(笑)』

【参加作品】
・エルフェンリート
・serial experiments lain
・NHKにようこそ!
・屍鬼
・やはり俺の青春ラブコメは間違っている。
・Ergo Proxy
・めだかボックス
・GUNSLINGER GIRL
・僕は友達が少ない
・今、そこにいる僕
・ぼくらの
・BRIGADOON まりんとメラン
・灰羽連盟
・アイアムアヒーロー
・烈火の炎
・おやすみプンプン


以上テンプレです。では投下しますー。

655 ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:19:17
昨日はテンプレ透過した瞬間メンテでした、すみません。

ちと修正があったので再び改めてテンプレから。




【ロワ名】
『孤独ロワイアル』

【生存者6名】
岩倉玲音(serial experiments lain)
佐藤達広(NHKにようこそ!)
桐敷沙子(屍鬼)【限界寸前】【右腕使用不可】
引企谷八幡(やはり俺の青春ラブコメは間違っている。)
鈴木英雄(アイアムアヒーロー)【フラッシュバックによる無力化の可能性】
ピノ(Ergo Proxy)

【主催者】
球磨川禊(めだかボックス)

【主催者の目的】『暇つぶし』『強いて言うなら』
        『パロロワってやつを開催してみたくてね』

【補足】『優勝したら元にいた世界に返してあげるけど』『願いは叶えないよ』
    『だってどんな願いも叶えるだなんて』『人間にできるわけないだろう(笑)』

【参加作品】
・エルフェンリート
・serial experiments lain
・NHKにようこそ!
・屍鬼
・やはり俺の青春ラブコメは間違っている。
・Ergo Proxy
・めだかボックス
・GUNSLINGER GIRL
・僕は友達が少ない
・ローゼンメイデン
  ・私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!
・ぼくらの
・BRIGADOON まりんとメラン
・灰羽連盟
・アイアムアヒーロー
・烈火の炎
・おやすみプンプン


以上テンプレです。では投下しますー。

656 ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:23:36
『みんなおはよう!』『はじめまして!』
『ここはいいところだよね』『折角好き勝手出来る世界だし』『2chと違って』『規制もないしね!』
『こんな機会めったにないから』『パロロワってやつをやってみたよ!』
『簡単にルールを説明するから』『よく聞いてね』『ちょっと複雑で』『馬鹿にはわかんねーと思うから!』
『孤独ロワ開催の為に安心院さんから借りたスキルは』『たったの五つ』
『参加者のみんなにはこれをあらかじめかけてあるから』『強制的に守ってもらう事になるよ』
『縛りプレイってやつさ!』


『一つ目のスキル』

『重い愛(エクスキュートコミュニケート)』

『人を孤独にさせるスキル』
『仲間が出来る』『誰かの為に戦う』『身体が接触する』『マーダー殺害』『恋をする』『などなど』
『他人と関わる事や自分以外の為に動く事で発動する』『発動すれば徐々に肉体のステータスが劣化していく』
『当事者のみならず、関わった人間もステータスは劣化する』
『でも』『安心して!』
『マーダー化とか』『自殺とか』『孤独になろうとすれば関わった人間の能力劣化は一斉解除されるよ』『すごく優しいよね!』


『二つ目のスキル』

『苦労する支配(デッドナイト)』

『クロスオーバーのスキル』
『各参加者の作品固有能力はその才能に関わらず条件を満たせばクロスオーバー出来る様になり』
『また全ての能力・武器は普通(ノーマル)が回避、防御可能になるか』『普通(ノーマル)の常識の範囲内まで』
『威力・性能が劣化する』
『チート能力とか』『瞬殺とか』『そんなオカルト』『有り得ません。』
『あ』『忘れてたけど』
『劣化却本作り(マイナスブックメーカー)』
『これも一応使ってるぜ』『ま』『このスキルで更に劣化してるけど』
『参加者は初期肉体的ステータスに限り僕と同等となる』『効力は普通(ノーマル)ですら一週間』
『たったの一週間だぜ?』『最早弱過ぎて』『笑っちまうよな』
『さて』『あとの三つは会場とかを作ったものだし』『大したものじゃないから』『さらっと流すよ』


『三つ目のスキル』

『列島生(ネックレス)』

『人に首輪つけて島に閉じ込めるスキルなんだって!』
『最早こじつけだし』『スキルですらないような気がするけど』
『残念ながら』『ーーー僕は悪くない。』


『四つ目のスキル』

『復路工事(ラックアンロック)』

『僕が用意した袋を持った者に脱出を禁止するスキル』
『この説明をしたあと』『支給品袋を受け取らなかった主人公達もいたけど』
『彼等はもう死んだから』『描写もないし』『するつもりもないから』
『関係ないや。』


『五つ目のスキル』

『楽監視(メタルピクト)』

『一度に大勢を監視するスキル』
『こうでもしなきゃ』『一人で全員分把握出来るわけがないからね』
『全く』『一人でやってのける他ロワの主催はどうかしてるぜ』『人間業じゃないよな』
『僕みたいな普通の人間には無理だよ。』



『以上、球磨川禊でした』『じゃっ』『また1レス後!』

657ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:26:24


『放送の前に一つだけ言ってもいいかな?』

予定には無かったはずの放送で、先ず球磨川はそう切り出した。

『このロワが終わったら、僕』
すう、と小さくブレスが入る。
『死んだ女の子達の全開パーカーで週刊少年ジャンプのセンターカラーを飾るんだ!』

最終日。残り六人、あと二時間、ビルの中。暗い地下室。血の臭い。響くハウリング。
スピーカーから流れてきたのは、およそ考えつく限りこの世で最も成就されそうにない、戯けた死亡フラグだった。







                  <ep.298-------------------主人公はもう居ない>







ぺちぺち、とやる気のない拍手の音が部屋の中を反響する。
わざとらしく設置されたBOSEのスピーカー、MB12WRは無駄に音だけは良く、生き残りの大半はその感情の籠らない拍手に顔を顰める。

『あはは』『みんなよく生き残ったね!』『すごいすごーい!』

球磨川は続けた。こちらの様子は監視カメラで把握しているだろうに、言動はそれに構う素振りさえ見せない。
そういう人間なのだと分かっていても、やはり癪に触るものだ。

『いやぁ』『感動したよ』『おめでとう!』

腹が立つ声だ、と思った。何がと言われれば思い付かないが、ただただ不快な声だった。
理由などありはしない。ただ純粋に、俺は球磨川が嫌いだった。個人的な怨みを抜きにして、このバトルロワイヤルの主催という事も関係なく。
比企谷八幡という人間は、球磨川禊が嫌いだ。
嫌われている俺が言えた事じゃなあないが、人が人を好きになる理由が無い様にーーー人が人を嫌いになる理由なんか、無くたって良いのだ。
一目惚れという言葉があるように、一目嫌いという言葉もあって然るべきだと俺は思う。
感情は、常に他人に対して冷酷で理不尽なのである。

『誇ったっていい』『君達みたいななんの取り柄も無い親負孝者が』『ここまで頑張って強者達を倒してきたんだ』

倒してきた? その言葉に俺は自問した。俺は誰を、倒してきた?

『今まで培ってきた熱い友情』『血の滲む努力』『輝かしい勝利』『その賜物あっての結果だよね!』

隣から舌打ちが聞こえた。気持ちは分かるが、安い挑発に苛立つ事ほど無意味な事はない。
俺は溜息を吐いた。やれやれ、いつまでこの中身のない放送は続くんだ、と。

『生き残った人間に希望を託した、熱い最期』『鬱展開を砕く熱血』『受け継がれる想い』『淡い恋心』

馬鹿げている。俺は思った。
いや、或いはここまでつらつらと嘘八百を並べられるのは、一種の才能と呼ぶべきなのかもしれない。
少なくとも、俺には到底真似出来ない。憧れこそしないが、認めよう。確かにそれは球磨川禊の個性の一つなのだと。

『……眼福だったよ』『だってまるで週間少年ジャンプみたいじゃないか!』
『さぁみんな頑張れ!』『あとは僕を倒して感動のエンディングだ!』

球磨川禊は俺と少し似ている。それに気付いたのはいつだったろう。……いや、違うか。俺、ではない。皆、だ。
ここに居る奴等は皆、少なからず何かしらの“孤独”を抱えている。ならば誰しもが一度は思っているはずだった。
“自分と球磨川禊は似ている部分がある”。

『でも、流石に最弱の僕も一応ラスボスだからね』『残念だけど一筋縄じゃいかないかもしれない』
『だけれど』『そんな時の展開は昔から決まってるんだ』『ゲームも』『漫画も』『小説も』『映画も』『ドラマも』
『このロワを運営するにあたって2chやしたらばやwikiで読んだあらゆるパロロワでもそうだった』

無論、球磨川は俺達がそう思っている事も分かっているだろう。分かっていて、俺達をからかっているのだ。自分の事は勿論、棚上げして。
まったく以って始末が悪いが、球磨川はそれを悪いと思っていない。奴の言葉を借りるならまさに『僕は悪くない』だ。
相手が俺達だろうが、葉山みたいな奴だろうが、球磨川は同じ態度を取るだろう。球磨川は孤独や感情や事情に一切左右されない。
決定的な違いがあるとすればそこだった。奴の目と口は人をカテゴライズしたとしても、それを行為に出さないのだ。
そう、それは言わば。

 平 等 。

658ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:31:24
『皆の想いを剣に乗せて』『皆の幻に背を押してもらって』『愛と奇跡と勇気と友情と』『突然の覚醒で』『敵は倒れる』
『どんなに力の差があっても』『どんなに死にかけでも』『どんなに馬鹿でも』『主人公補正と謎の浅知恵で逆転勝利』
『皆との繋がりアピールで孤独なラスボスを全否定』『鬱展開にするための偶然<奇跡>は荒れるくせに』『熱血展開にする奇跡<偶然>は決して荒れない!』
『キャラ崩壊<覚醒>は荒れるけど』『覚醒<キャラ崩壊>は荒れない』『そんな素晴らしい必殺魔法』『“御都合主義”!!』
『夢があって』『かっこいいよね!』

だから俺達は球磨川を嫌悪する。奴は嫌われ者で孤独であると同時に、苛めっ子で、リア充で、どこまでも平等だったからだ。
俺達の劣等性を持ったまま、けれども決して態度だけは劣等しない。言わば理想的で完璧な劣等生だった。

『うん』『どうかな?』『中々の感動ストーリーだと思うのだけれど』『でも少し難易度高いかな』
『……あっ、そうか!』『じゃあこうしよう』

俺達は怒りの矛先を失ったも同然だった。何故ならば今まで俺達を排斥してきた連中にないものを、球磨川が持っていたのだから。
それに気付いた奴等から、絶対的な拠り所を無くしていった。勝ち組の様な口を持つ球磨川は、あろうことか自分達の向こう側に立つ、負け組の頂点だったのだ。ベスト・オブ・ルーザー。キング・オブ・ルーザー。それが球磨川だった。
だけれど。いや、だからこそ。

『出血大サービスだ』
『 こ の 戦 い 、 僕 は わ ざ と 負 け て あ げ よ う ! 』

だからこそ、球磨川には足りないものがあると俺は思ったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーそれは人間性だ。

『だって』『そうすればハッピーエンドだ!』
『ほら』『終わり良ければすべて良しって、誰かも言っていたよね』

球磨川はそれを決して出さない。奴には表面しか存在しない。能面の様な顔。起伏の無い声。一貫しない意見。矛盾した態度。
どれをとってもそこに本質は無かった。だがそれはあり得ない。
..... ..........
そんな人間、この世に居ないからだ。
小説や創作の上では存在しても、現実にこんな異常な人間が居るわけない。しかも球磨川は精神病でもなく、異常殺人鬼でもなく、ただの人間なのだという。
常識的に考えて有り得ない。それでも、球磨川禊は存在してしまっている。わけが分からなかった。
マイナス十三組? 過負荷? 大嘘憑きにルビを振ってオールフィクション、だって? おいおい、寒すぎて鳥肌すら立たねぇよ。
材木座の創作小説の方がまだまともだったぞ。厨二病も大概にしとけって。いいか、よく聞けよ。
............
この世に魔法は存在しない。
正直に言おう。この世界も、球磨川も、気味が悪いと。
何故って、球磨川は、此処はまるでーーーーーーーインテリサブカルぶったオサレラノベ作者が考えた、二次創作のようだからだ。
だから、俺は考察もしないし、頑張らない。球磨川に憧れない。
完璧で究極で理想的で個性的で孤独で大変優れた劣等生は、けれども俺の常識の中ではニンゲンじゃあなかったからだ。

『うん! そうだよ。過去ばかり気にしてても仕方ないよね』
『僕を倒して』『脱出して』『君達に未来と希望を託して死んでいったオトモダチの分まで』『思う存分幸せになってくれよ』
『未来を見て生きるんだ、これからは』
『ああよかった』『これなら僕も安心して死ねるよ』『なんてったって輝かしい未来のためだもんね!』
『その犠牲だと思えば』『こんな極悪人の僕の命だなんて』『安い安い!』

球磨川禊の正体は、
クマガワミソギ界 クマガワミソギ門 クマガワミソギ綱 クマガワミソギ目 クマガワミソギ科 クマガワミソギ属 クマガワミソギ種 クマガワミソギ 
という、ただの孤独な何かなのだ。

『だからもう』










『君達みたいな無力な人間が他人を蹴落として裏切って逃げて嘲笑って嘘をついてただ引きこもったり頼ったり守ってもらったりして
 一度も戦わないまま目的も理想もなにも自殺する勇気すらもなくただただ無駄に生き延びて来て全部他人に押し付けて生存者になってしまった事も』









『何もかも全く全然ちっともすべからく全部まるで』『関係ないよね!!!』

659ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:34:42
人間じゃないものが何を言ったところで、少なくともその挑発は俺には通じない。
ああ。何度でもはっきり言ってやる。球磨川、お前ーーーーーーーーーーーーー気持ち悪いぜ。

『おめでとう、幸せ者(負幸せ)!』
『さて、残りあと6人』『首輪爆破までの時間は泣いても笑ってもあと120分』『マーダーは……教えるまでもないけど、君達の目の前に居るそいつ1人』
『頑張って頂上まできてくれよ』『流石に今週のジャンプももう読み飽きたんだ』『期待を裏切るんじゃないぜ?』
『テイルズシリーズみたく』『決戦前夜のくだらない会話でもして』『テンションをあげてくれ』
『ただ』『やりのこしたイベントを回収するような時間は』『生憎ともうないぜ』
『さてと』『じゃあ僕も君達がくる前までには』
『新しい戦闘用BGMと』
『ヌルヌル動く新規ムービーと』
『無駄に図体だけはでかい割に意外と弱い第二形態と』
『無駄に貰える経験値と』
『範囲が広くて高威力なくせに体力を1だけ残してくれる便利な秘奥義を作ったりとか』
『散々努力した挙句』
『それでも負けられる準備をして』
『首を洗って待ってるからね!』

もう一度言おう。クマガワミソギ。

『じゃあね、主人公(人殺し)。』

俺はお前がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー嫌いだ。

だから、早く終わってしまえ。
俺も、お前も、このくだらないゲームも。
ファンタジーはもうたくさんだ。



なにもかも、もうどうでもいい。

660ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:37:53

【120:00】





生きていれば良い事はあるさ、とジョン=レノンは言った。
生きていればなんとかなる、ともののけ姫の登場人物は言った。

だがちょっと待って欲しい。それはなんて自己中心的で無責任な台詞だろう。
湯煙の中に舞う雪の様に、或いは霧の中で吹かす煙草の様にーーーその言葉はあまりにも茫漠としていやしないだろうか?
生きていれば良い事がある。なんとかなる。まぁ、確かにある意味ではそうである事を認めよう。
生きていたから、彼女が出来た。生きていたから、就職出来た。生きていたから、友達が出来た。
生きていたから、あの時仲直り出来たし、生きていたから、今こうして誰かと話せている。
生きていたから、生きていたから、、、生きていたから、、、、、、、


ただ、悲しいかな忘れてはいけない事がある。
その台詞を言うのは、決まって生きていれば良い事があったか、生きていればなんとかなった奴等だけだって事だ。
そしてその台詞に感動する事が出来るのもまた、良い事があった奴等だけなのだ。
世の中の名言といわれるものは大体がそうであると言って良い。

……そして断言しよう。名言とやらを生み出す人間は、そうなる事がわかっている側の人間である、と。
さぁ今から俺は良い事を言うぜと息巻き、自分の豊富な経験に基づくごもっともな高説を、さもこの世の真理の様に語る。
信者共や依存性が高いかまってちゃんは、その言葉に感動し、そして本人は雲の上から満足げにそいつらを見下すのだ。
そういった名言製造機を中心とした不毛なサイクルを経て、奴等のくだらない世界は出来ている。

妹が持っていた漫画の中に、ダサイクルという造語が出てきた。これほど言い得て妙な言葉がかつてあっただろうか。
間違いなく俺の中の上半期第一位。寧ろベストオブ八幡語録。
ダサイクル。
コミケだとかバンドだとかpixivだとか創作SSだとか2chだとかファッションだとかデザインだとかTwitterだとか、
そんな中でよく見られる現象だが、こうして名言のサイクルを考えれば、存外身近にあることがわかる。
勘違いしないで欲しいが、別に彼等の存在を否定する訳じゃないし、正しくないと言っている訳じゃない。
ただ、奴等は見えているのにこちらを向かない。俺はそれが気に入らない。
私だって辛いよ、とか、私だって孤独だったよ、とか、安い言葉を並べ立て、新たな名言を作り出し、その言葉に依存していくのだ。

そうして俺達を数と正義とリア充の暴力で黙らせ、聖母の様な微笑みで口を軒並み揃えてこう言うーーーーーーーー“僕達は一緒だよ”。

もうね、馬鹿かと。阿保かと。
これを善行だと信じ込んでいるのだから始末が悪い。奴等は問題の本質を、俺達を見ていない。
奴等が微笑みを向けているのは、自分とその周囲環境と未来的観測による利益だ。
そして奴等は、俺達がそれを分かっている事を知らない。その時点で底が知れたも同然だ。
奴等は俺達を莫迦か阿保だと勘違いしているが、敢えて言おう。それは間違っていると。
よく考えなくてもわかる。他人の顔を人一倍伺って生きてきた俺達が、単純思考のお前達の考えを見抜けないわけがないだろう?
それにお前達は俺達と逆なのだ。水と油。腐女子とオタク。ホモとレズ。磁石のS極とN極。そんな相入れない存在。

思考が真逆ならば、その通りにすれば良い。行動と思考を反対にすれば、お前達の中身なんて簡単に分かってしまう。
そもそもだ、前提の考え方からしてまず間違っているんだ。俺達は一緒なのだと慰めて欲しいんじゃない。


俺達が本当に望んでいるのはーーーーーー俺達はあんたらと違うっていう、決定的な証拠なのだ。


さて、生きていてもなんともならないし、生きていても良い事がなかった孤独な俺達へ。
だからこそ俺はその名言をただの言葉に置き換えて、こう表現しよう。


“死んだ方がマシだ”。

661ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:42:02



【119:50】


放送が終わった。球磨川の戯言について語る人間は一人もいない。今は口を挟む余地も、意味もなかった。
それよりも大切な現実が目の前にあったからだ。
120分。派手なアクションを起こすには些か足りず、赤の他人同士で結束するにも短過ぎ、寝るにも半端で、ただ黙っているには長過ぎる時間だった。
ただ一つだけ言えるのはーーーけれども弱った少女一人の命を奪うには、十分過ぎるという事だ。

「た、たすけっ……嫌っ……誰か……」

ひんやりとしたコンクリートの床は、灰色の身体を薔薇色のドレスで着飾っている。
かちかちと点滅するナトリウム灯は、流れ広がる鮮やかな紅を不規則に照らしていた。
部屋はそれなりに広くちょっとした公園や体育館程度の広さはあったが、家具や雑貨の類は無く、至って簡素な作りだった。
良く言えばシンプル。或いは悪く言えば味気ないとも言う。図体だけ大きく空っぽな部屋には、温かみの類など探すだけ無駄だった。

「…………ど、うして、こんなっ……わ、わた、しっ……なにもっ」

灯りは切れかけの裸電球一個。御世辞にも明るさが足りているとは言えない。
その暗さからなのか、地下室だからなのか。空気は薄気味悪いほど冷たかった。
吐いた息すらほんのり白かったが、湿気だけがいやに彼等の肌に纏わり付いて離れなかった。
飽和水蒸気量を超えた水分子達は、菜の花に群がる油虫の様に床や天井にびっしりと張り付いている。
部屋の隅は深緑の暗がりに飲まれ酷く不鮮明で、壁の気配は消えてしまっていた。
そのせいでどこまでも空間が続いている様な錯覚さえ感じられたが、スケルトン天井の異様な低さから閉鎖感を忘れる事だけは出来なかった。
よくよく見ると、壁は打ちっ放しのコンクリートである事がわかった。ただ遠目にも綺麗な施工とは言えず、欧州よりのそれだったが。
職人が外国人だったか、或いは時間と金がなかったかだろう。安藤忠雄だったら建物ごと殴り倒しているレベルだ。
空気は質量を持っているかの様にずっしりと重く、トンネルの中の様に酷く淀んでいた。
これ以上こんな場所に居たくない。
その場にいる全員がそう思っていたことだろう。
低い天井がだんだんと彼等に近付き、空気ごと肉を圧迫しているようで、得体の知れないその重圧は彼等の肌をぴりぴりと刺激していた。
辺りには噎せ返る様な血の臭いが満ちている。此処に来て彼等が覚えた臭いの一つだ。そこには明確な死の予感があった。
音は、少女の命乞いが一つ。はぁ、はぁ、と荒れた息遣いが、幾つか。

「たす……死に、く……なっ……わ、私、なにも、悪、ない、のにっ……」

嗚咽混じりの嗄れた声が少女から漏れた。その場に立っていた青年が、少女の胸倉を掴んで小さな身体を持ち上げる。その光景はどうにも奇妙だった。

「“何も悪くない?”」
青年ーー佐藤達広ーーは震える声で呟く。乾いた嘲笑が地下室に反響した。
「“何も悪くない”、だって?」

怯えた声色で悲鳴を上げる少女の後ろの暗がりに、不意にぼわりと灯りが浮かび上がる。支給品のランタンだった。
弧を描いた薄い飴色のガラスの内側で、何かを嘲笑う様に焔がぶわりと踊る。
その度に部屋に散らかる影はけたけたと輪郭を変えて、部屋の中を徒に駆け回った。
青年はランタンを灯した男を一瞥して、小さく舌を打つ。なんなんだ、と。

「さ、佐藤くん……お、落ち着こう、まずは」

鈴木英雄だった。
皮脂でずり落ちる眼鏡を上げながら、彼は続ける。

「相手はまだ子供だよっ。それにZQNですらないし。何もここまでする必要はないんじゃない……ですか」

ハン、と青年が呆れた様に笑った。

「正気っすか、鈴木さん。俺達が残ったのは、全部こいつらのせいだろ? 全部こいつらの陰謀だろ! 違うか!?
 球磨川だって言ってただろ! こいつが最期のマーダーだって!!」
「それは……」

ランタンに照らされて、部屋の隅で腕を組む少年の不服そうな顔が浮かび上がった。比企谷八幡だった。
残念ながらそいつは違う、と少年は心の中で呟く。俺達がここまで残ってしまったのは、他でもない俺達自身のせいなのだ、と。
間違っても誰かのせいなんかではない。自分達には彼女を殺す権利はあっても、糾弾する権利は無い。
むしろトリエラが今際の際に語った彼女のしてきた事は、マーダーとして至極正当なものだった。
それが非人道的で褒められるものではないにせよーーー彼女のせいにするには驕りが過ぎるというものだ。
少年は口を閉ざしたまま、胸中で舌を打った。それを偉そうに言う権利もまた、自分にはないのだと自覚していたからだ。

662ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:44:57

「だとしても人殺しは刑法38条によって定められた立派な犯罪でっ! この場合過失致死にも該当しなさそうだし……。
 あっ! でもこの場合バトロワっていう特殊環境下にあった事が考慮されるのか……?
 いやいや、でも相手が幼女って言い訳厳しいだろうなぁ……今の世の中、ロリには厳しいし……猟銃や刃物だって持ってるし、それだけでも犯罪なのに。
 なにより沙子ちゃんは右手折れてるから……。
 それを分かってて五人掛かりで私刑か……うん、厳しいな。
 それに殺人はやっぱりよくない……何故なら今日の日本社会において、そう法律で決められてるからでっ」
「こんな状況であんたはまだそんな悠長な事言ってんのか!」
「ひいっ!」

少女を乱暴に投げ捨て、青年は男の胸倉を掴んだ。ぴしりと空気が張り詰める。やれやれ、と少年は溜息を吐いた。
ランタンが男の手から弾かれて、派手な音を立てながら床を転がる。ごう、と炎が鈍い悲鳴を上げた。

「おいおい。喧嘩なら外でやってくださいよ。俺、プロレスとか嫌いなんで」

少年が肩を竦めて皮肉気に呟くと、青年は男をつっぱねて恨めしそうに睨む。

「……そういう比企谷はどう思うんだよ?」

妥当過ぎる意見に少年は一度だけ眉を潜めたが、やがて観念した様に溜息を零した。
そうして口を心底嫌そうな表情で開くのだ。こういう場で意見はらしくないが仕方無い、と。

「……答えなんて出てるだろ」
「何か言ったか?」
「いや……。正直、興味はないですけど……生かしておく必要、ないんじゃないですか?」

そう。こうなってしまったのは彼女のせいではない。だが、あくまでもそれは理屈である。
理屈で人は動かない。理屈で動くのは、プログラムと弁護士と、ごく一部の生真面目な変人くらいなものだ。
比企谷八幡は人間が出来ていなかった。理屈は好きだが、彼の理屈はやや利己的な方へ婉曲した……端的に言えばただの屁理屈なのだ。
故に少年は、糾弾こそしないがーーー決して少女を赦すつもりはなかった。
なにより実際問題、この件はそれ以外に解決方法が無いのだ。
彼女は残された最後の絶対悪であり、捌け口だった。彼女は彼等の為に死ななければならなかったのだ。
それは生き残った誰もが分かっている事だった。何よりも理不尽で、何よりも合理的。そして何よりも必要な犠牲だった。
嗚呼そうとも。断言しても良い。


桐敷沙子は今から、彼等の言い訳と、中身の無い復讐心と、自己満足の為だけに無様に死ぬ。


「起き上がりたいなら別ですけど、皆さん違うでしょう? まぁ、起き上がる為の時間もねーんですけどね。
 でもこれ以上面倒を増やすくらいなら、ここで処理しておくのが余程合理的ですよ、多分」

僅かに間があったが、やがて青年が額に汗を浮かべながら笑った。張り付いた様な気味の悪い笑みだった。
男は眉間に皺を寄せて押し黙っている。青年はそれを見て笑みをぴたりと止め、唇を釣り上げながら男の肩をぽんと叩いた。

「決まりだぜ、鈴木のおっさん。三人のうち二人が殺すべきだって言ってる」

663ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:47:27
男は俯いたまま唇を噛んだ。本当は、誰だって解っているのだ。
誰かのせいにしなければ、この現実を受け入れられない。何かを差別して、殴らなければ、現実逃避できやしない。
悪の権化を磔にしたボロボロのサンドバッグ。それが目の前にあるのなら、殴らない人間は居なかった。
少なくとも、現実から目を背けてきた社会不適合者の彼等の中には、一人も。

「……分かった」
少しの沈黙のあと、男は額に手を宛てながら言った。重々しい声色は、床を滑り暗闇に沈んでゆく。
「でも、殺すとして」

しかし。だがしかし、その一言で彼等の時はぴたりと凍て付く。

先に行くには続けなければならなかったが、それは絶対に口にしてはいけない呪いの言葉だったからだ。
誰一人目を見て話さない彼等の視線が中空を彷徨って、不気味に混ざり蕩け合う。
行き場の無い声が、感情がーーー空気を石の様に凝固させ、息を詰まらせた。
床に転がる死に損ないの少女が、彼等の視界の隅にちらつく。いたいけな薄幸の少女が、その虚ろな双眸が、孤独な卑怯者共を畏怖の感情で射抜いていた。
わかっているのだ。そんな事は。わかってる。
あぁしかしなんという事だろう。
殺人鬼になり少女を裁こうとしている彼等の大半は、本当の殺意を以って人を殺した経験など、ましてやその勇気と覚悟さえありはしなかったのだ。




「……誰が彼女を殺せるんだ?」




責任も、献身も。少しの優しさすらもありはしない。嫌な役を擦り付け合い、現実からは目を背け、面倒事は避け続けてきた。
放送は聞かないフリ。悲鳴も聞かないフリ。禁止エリアだけを必死にメモして、ひたすら隠れて引き篭もる。
仲間が危機に瀕せば真っ先に見捨て、自分が危機に瀕せば真っ先に逃げた。
他力本願の屑人間。そのくせ責任転換と我儘だけは一人前の、底辺よりも底辺な最底ーーーーーそれが彼等、望まざる生き残りの、無様な正体だった。

「……鈴木さんがやって下さいよ」嫌な沈黙を最初に絶ったのは、少年だった。「知ってるんですよ? ここに来る前までZQN退治してたって」

ZQN、とその後ろで小さく青年が繰り返した。
この島で猛威を奮った要素の一つだ。ZQN、起き上がり、コギトウイルス。
その三つさえなければ、或いはこんな酷い結末はなかったのかもしれない。

「そうなのか、鈴木さん」
青年が尋ねたが、男は俯いたままかぶりをぶるぶると振った。
「い、嫌だっ……!」

嫌だ。男は素直にそう思った。こんないたいけな少女を、自分が、殺す?

「ぐ、ぎ、じょ、冗談じゃない。そんなのまるで悪者だっ。法律でも、ひ、人を殺したら駄目って決まってらぁっ。
 お、俺がなりたかったのは、そんな事をする大人じゃないっ。そんな為に銃を担いでいるんじゃないっ。
 な、何の為に今まで犯罪せず生きてきたと、お、思ってるんだっ。俺は、本当はっ」
   ....
……本当は?

唾を飲む音が、地下室に響いた。少女 へ一度だけ視線を向けた後、男はこうべを垂れ、続ける。
「俺がなりたかったのは、したかった事は……っ。も、もっと、アレで……。
 皆の、ソレの為に……そのっ、こんなんじゃ、俺が望んでたのは、い、生き残ったのは、こんな事の為じゃあ、こんなはずじゃ……」

ーーーこんなはずじゃ、なかった。

拳を握ったまま腹の底から絞り出す様に呟いた男に、けれども青年は追い打ちをかけんと口を開く。

「……悪いけど、年の功だろここは」
「年の功!?」男は諸手を前に差し出してかぶりを振った。「なんでそうなるんだっ」
青年の口から溜息が漏れる。
「いや、常識的に考えてそうだろ。若い奴にやらせるっておかしいしー」
「おかしいだろぉその常識っ。俺は反対してたんだから君達がやるのが筋だっ」
「筋だぁ!?」
青年は肩を竦めて嘲笑った。何が筋だ、と。
「冗談じゃないっすよ。アンタだって本当は分かってんでしょ?
 分かってるくせに、体裁を気にして善人ぶってる! アンタは偽善者だ!」
「ち、違うっ。俺は、」
「人を殺したら駄目? 今日日いじめっ子の餓鬼だって知ってるぜ、それくらい!
 自分だけいつまでも綺麗なままみたいな顔しやがって! もう目を覚ませよ! 現実はなぁ、腐ってんだよ!!」
青年の指が、無精髭だらけの男の顔をびしりと指した。
どの口が偽善者だと? 青年の心の奥で、誰かが飽きれた様に吐き捨てる。同族嫌悪も大概だ。

664ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:49:33


「だから……もう知ってるはずなんだぜ、おっさん。こいつを殺さなきゃ何も始まらない事くらい」


はじまる? 男が震える声で鸚鵡返しした。はじまる、だって?
地面に横たわるランタンの中で、炎が揺れた。わなわなと肩を揺らす男の顔に、深い影が落ちる。

「今更何が始まるってんだっ。俺達みたいな社会のゴミが集まったところで、何も始まるわけがないっ!」

男は叫んだ。腐っているのを知っているから、せめて綺麗で居たいのだと。
35年。夢を見る事も、生きる事すら、疲れきって諦めてしまうには十分な歳月だった。
成程ならばそれは確かに尤もな意見なのかもしれない。何故って彼等は自他が認める紛れもない屑なのだから。
幾ら烏が集い雲の上を目指しもがいたところで、ただ煩いだけなのだ。誰もが嫌というほど知っていた。
ただ天井が見える年齢になって、それを諦めるか諦めないか、たったそれだけの違いだった。
しかし、いやだからこそその一言は青年の琴線に触れた。分かっていて、それでも逃げてきたのだ。諦める事から目を背けてきたのだ。
同類にだけには、絶対に言われたくなかった台詞だった。

「ふざけんなよ……」
だから、青年は先ず最初に思った事を口に出した。ふざけんな、と。
「まだ負けたわけじゃねぇだろ……」

冗談じゃない。このまま終わるだなんて。全部無駄になるなんて。

「まだ終わったわけじゃねぇよ!」
「いいや終わってるねっ!!」

びくり、と青年の肩が揺れる。喉はからからに渇いていた。心臓がばくばくと、子供が叩く太鼓の様に鳴り止まない。
終わりなんかじゃない。自分に言い聞かせるその想いには、およそ自信と呼べるようなものが悉く欠落していた。

ならば、これから、少女を殺してどうすると?

心の底の波を荒立てるその鉛色の疑問に、青年は何も答える事が出来なかった。
途方に暮れるもう一人の自分の薄汚れた双眸の前には、救いの道など残されていなかったのだ。改めて問われるまでもない。
屑は何処までいこうが屑なのだから。
されど、だが、だけど、でも、しかし、けれど。だからと言ってーーー認めろというのか。
詰みきったこのどうしようもない現実を、未来を。受け入れろと、そう言うのか。
山崎も、柏先輩も、岬ちゃんも、委員長も、城ヶ崎さんも、皆、皆。
皆みんなみんなッ、無駄にしろって言うのか。

「……ふざけろ!!」

気付いた時には、青年の右手が男の胸倉を掴んでいた。青年は自分の行動に、しかし呆気にとられる。
何をしている? 青年は思った。自分は今、こいつに何を言いたいんだ?
ぎしり、と胸の奥が軋む様に痛んだ。

「勝手に俺まで終わらせんな! 何で! 何でそう言い切れるんだよッ!
 まだ何もわからないだろ! 未来なんて!! 誰にも!!!」

どこかで聞いた様な台詞ばかりが、頭の中をごうごうと渦巻く。不意に、デジャビュという単語が浮かんだ。
それは漫画やアニメで、何度も見てきたシーンだった。目の前と重なり、繰り返す。作り物で、偽物で、馬鹿みたいな青春御伽噺。
主人公はいつだって現実に辟易としていながらも何もない日常をなんとなく生きていて、童貞で、幼馴染と妹がいて。
クラスにはエロい男友達が居て、委員長はツンデレで、教師は適当な人間で。理事長の娘は、決まってプライドが高い生徒会長。
主人公の性格は普通で、部活にも入ってなくて、奥手で難聴の癖して稀に無駄に熱くて、何故かは知らないがやたらとモテる。
演出と作画も良くて、BGMも良い。脚本は虚淵にでもすればなお良い。死人を出せば感動もカタルシスも出来るし満足だ。
寄せ集めテンプレ設定でも、それだけでゲームやアニメの台詞には中身があるように見えた。
ところが、現実はどうだ?

665ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:51:58

「まだこれからなんだよ!」

何がだ? いつだって、そうやって待ってて何かが起きたか? 変わったか?

「俺たちはまだ本気を出してないだけだ! 強い奴らが居たから! 仕方が無かった! 戦った事すらないんだから!」

本気なんて出した事が、一度だってあったか? 戦おうとしなかっただけじゃないのか?
あの時はどうだった? ヘンリエッタやビンセント、ルーシーを前に逃げたのは、誰だった? その結果、何人が死んだ?

「球磨川にだって、弱体化が少ない俺達なら敵うはずだ! 敵が居なくなった今なら、きっと!」

戦略はあるのか? 勝算は? 一人でもそれをやれるか? 答えは出てるだろ?

「今まで俺達が逃げてきちまった結果が今朝の事件だろ!?」

本当にそう思ってるのか? 仕方ないって、思ってねぇか? あいつらを見捨てて逃げたのは、何でだ? 罪悪感を言い訳にしてないか?

「またあれを繰り返すってのかよ!」

繰り返すよ。
そうやって卑怯に生きて来たんだろうが、お前は。なぁ、そうだろう? 言葉だけは毎回一人前だからな。それがお前だよ佐藤達広。


ーーー今更、生き方は変えられないよ。


青年の頭の中で、少女の形をした誰かが言った。
全部知ってるはずだよね? 本だって読んだ。ネットに情報はゴロゴロあった。近所にハローワークだってあった。
どうすれば、上手くいくのか。
どうすれば、仕事が出来るのか。
どうすれば、家から出られるか。
どうすれば、親に迷惑をかけずに済むのか。
どうすれば、嘘を吐かずに済むのか。
どうすれば、借金しないのか。
どうすれば、真面に生きていけるのか。
どうすれば、人を好きになれるのか。
どうすれば、脱法ドラッグを止められるのか。
どうすれば、ネズミ講に引っかからないのか。
どうすれば、童貞を捨てられたのか。
どうすれば……こうならずに済んだのか。
裸の少女が、間抜け顏の青年を抱き締める。耳元に少し湿った息が掛かって、青年は鼻息を荒くした。


ーーーね? 全部、知ってたんだよ、佐藤くんは。

  ........ .....
「だいじょうぶだよ おれたちは」


ーーーでも。分かっていても、どうにもならなかったから。だから佐藤くんは、引き篭ったんでしょ?

  .. ......
「まだ やりなおせる」


寄せ集めた言葉。震える唇、閉じた拳。滲む脂汗。歪む視界。霞んだ感情。濁った未来。光の無い眼。
ごとりと重い何かが体の中で転がった。心臓が、ずっと喧しい。
そうして初めて理解るのだから、嗚呼。解っていたつもりだったが、存外自分って奴は馬鹿な生き物なのだ。


中身なんて、ありはしなかった。


餓鬼が喜ぶ紙風船の様にーーーー図体だけが、徒らに立派で。水で割れてしまうほど儚く、脆く、空気の様にどこまでも薄く、軽い。

「佐藤くんは、夢を見過ぎだ」

男は恨みを吐き捨てるように言った。青年は男を見る。眼鏡の奥の曇った瞳は、まるで自分の何もかもを見透しているようで、吐き気がした。

「ここは映画でも、漫画でも、ライトノベルの世界でもない」

男はぽつぽつと、言葉を零す。青年は黙ってそれを聞く事しか出来なかった。

666ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:54:40

「一番俺達がわかってるはずじゃないかっ。現実は、創作じゃないって。
 青春や、起承転結や、奇跡や、ドラマなんてものは……自分の世界には無いんだって」

青年は少女を見た。横たわる少女の目は見開かれ、瞳孔は開き、焦点は合っていない。
彼女は死ぬ。放っておいても、どうせ死ぬ。苦しみながら死ぬ。痛がりながら死ぬ。無様に死ぬ。
虫螻蛄の様に。畜生の様に。ゴミ屑の様に。もうすぐ彼女は、人間でなくただの肉の塊になる。
引導を渡すのは、誰だ?

「主人公はいつも別に居て、成功も、金も、才能も、名声も、処女も、どうしようもないヤリチンが奪ってくんだっ、いつも、いつも!」

そうだ。現実はいつだって非情だった。それを一番知っているのは、生き残ってしまった俺達みたいな、どうしようもない底辺じゃないか。
だけど。

「だから、始まらないんだーーーーーーーーー俺達は産まれた時から、負けてる」




だけどさ。それでも諦めたくないのだと、勝ちたいんだと思う事は、罪なのか?




「あのさぁ……」

ーーー寝耳に水とは正にこの事だ。
青年と男はははっとして、声の主へ顔をがばりと向けた。傷だらけのコンクリートの床に、退屈そうに少年が胡座をかいている。

「……なんか面倒なんで、もう最初に言い出した佐藤さんがやればいいじゃないですか? 埒があかないですよ」

少年が目を逸らしながら、さらりと言った。肩を竦めて、やれやれと溜息を吐きながら。朝におはよう、夜におやすみと言う様に。
「な、な、ななっ」
青年の顔からみるみるうちに血の気が引いてゆく。当然だった。ここで少年が敵に回るとは毛ほども思っていなかったのだから。

「なんでだよ! お前だって殺せばとかなんとか言ってただろ! だったらお前がやれよ!」
「……いいぜ」
「ファッ!?」

思わず、青年がよろめく。少年は気怠そうに立ち上がると、口をあんぐりと開けた二人の元へ足を進め、そして言った。
「俺がやるって言ってんの」
少年は彼等に視線すら寄越さない。足も止めず、目もくれず。少年は地面に臥す少女だけを見ていた。
「お、おい引企谷……お前……」
「何だよ」
青年の問いに、背中を向けたまま少年が苛立った声で応える。
「い、いや……」
青年は助けを求める様に男を見た。男は目を逸らして、額の汗を拭うだけだった。
少年はゆっくりと歩く。コンバースのオールスターが、地面を擦る様に叩いていた。
かしゅっ、かしゅっ、と、ソールが擦れきった右踵が規則的に悲鳴をあげている。


「死……たく、ない……」


消えてしまいそうな声が、少年の耳を打った。桐敷沙子の声だった。けれども少年は表情一つ変えず、その命乞いの主へと足を運ぶ。
落ち着いた桔梗色の長髪に不釣合いなほど華奢な手足が、床に転がるランタンに照らされていた。
飴細工のように繊細そうな体躯は、触れると壊れてしまいそうだった。こうして見ると、ただのいたいけな少女なのだ。
尤も、利発そうな顔は涙と鼻水で台無しになっていたし、右足は捻じ曲がり、右手は砕けていたが。
それでも肌は雪の様に、或いは病的と言っても良いくらいに白く透き通っていたし、顔立ちはやはりフランス人形の様に端正過ぎた。
完璧過ぎる程に、彼女は完璧だった。怖いくらいに、引いてしまうくらいに。
身体は木の枝の様にすらりと細く可憐に伸び、薄紫のワンピースはキュプラ生地が上品でーーー惜しむらくはその全てが赤黒い血に染まっていた事だ。
ねぇ、と少女が震える声を投げ掛ける。ランタンの炎が再びぐらりと揺れて、影と光がぐにゃりと歪んだ。
少女の枕元に立つ少年の顔は、影で暗く、窺えない。
ーーーお願い。
か細い声が地下室の暗闇に消えてゆく。少女の懇願に応える者は一人も居ない。異様な光景だった。
数拍置いて、少年はくたばり損ないの少女を目線だけで見下し、口を開いた。


「……そう言っていた奴等を、お前は何人手に掛けてきた?」


黒神、神楽、行橋、三日月、不知火、アンジェリカ、宇白、レキ、来栖、リル、志熊、ナナ、山崎、志布志、ダイアナ、霧江、小金井、中田ーーーーー雪乃下。
ぽつぽつと、起伏の無い声が念仏を唱える様に犠牲になって来た者達の名前を呟く。

667ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:57:29

「あと何人だ?」声は震えていた。「どれだけ奪えば気が済む?」

口を開かぬ少女を見て、八幡は諦めた様に表情だけで笑った。懐から、獲物が抜かれる。
血で濡れた事は勿論無く、陽の目を見る事は愚か、その予定すらなかった刃。
魔道具、神慮伸刀。持ち主の意思を読み何処までも伸びる魔双刀の片割れ。
今は亡き不知火から受け取ったそれは、使う機会はあったものの使う勇気すら無く、逃げる様に隠したーーー死んだ切札だった。

「答えろ。桐敷」

けれどもそう問われても少女は。桐敷沙子は。
首筋に宛てられる刃を前にしてもなお、震えながらかぶりを降るのだ。私は悪くないと。信じてくれと。

「……わたし、は、やっ、て、ない……人が、人間……が……勝手に……死んだ……だけ、よ……私は、悪く、な……いっ……」

嗚呼、と世界を呪う様に唸る。少年は目を細めながら歯を軋ませた。
こういう手合いには何を言っても無駄だ。多分、死んでも治らない。

「私、がっ、何……を……なに……を、した……って、言う、の……ただ、とも、だち、を、作っ……た……だ、けじゃ……ない…… 」
「作ったのは死体の間違いだろ」

八幡が吐き捨てる様に言った。

「違うわ……私は誰も、殺してない……私は、ただ、人並みに……普通に……生きたかった、だけじゃない……。
 それすら、認めない、の……ならっ……人じゃ、な、いの、は…………………お前達、の……ほう、よ……」

一瞬の静寂の後、部屋の中に哄笑が響いた。佐藤達広だった。

「そりゃそうだよな。俺達は所詮餌だ。いや、別に良いんだぜ。トリエラが言ってたよ。そういうものなんだろ、お前達は」

汚れたアディダスのシューズが、血だまりをぬるりと進む。ざらざらとした床に張り付いた固まりかけの血液が、ソールをねっとりと床に捕まえた。
虫の息の少女の側まで足を進めて、青年は腰から銃を、SIG SAUER P230 SLを抜く。

「佐藤さん……俺がやるって言ったじゃないですか」
少年が呟くと、青年は自嘲した。
「流石に全部丸投げってのはかっこ悪過ぎだからなぁ」
シワだらけのTシャツに色褪せたジーンズ、無精髭だらけのもやし体型の引きこもりと、真新しい拳銃は酷く不釣合いだった。
青年は震える手に力を入れ、少女を見た。哀れだと、決して思わないわけではない。

「……別にさ、俺はアンタが誰かを喰ったからキレてるんじゃねぇんだぜ」

安全装置を外して、トリガーに指をかけ、両手で銃を構える。この距離では外すわけもなかったが、なにせ彼には銃を撃った試しがなかった。
アニメや小説みたいに、可愛い女の子達でも銃を撃てるなんて事があるはずないのだ。
尤も、この島では義体という少女やオートレイヴとかいう奴等がオサレパンク雰囲気アニメよろしく銃火器で猛威を振るっていたらしい。
だが、奴達はほぼ全身が機械のような代物だったという。素人が下手に銃に触れば肩が外れると聞くのは嘘ではない筈だった。
そうだ。何度も言うが此処は決してアニメなんかじゃない。小説じゃない。ゲームじゃない。漫画じゃない。
紛れも無い、現実なのだ。

「それは構わねーんだ。別にお前が誰を喰おうが良かった。いや良くはねーけど、俺には関係無いからな。
 他人がどうなろうが正直な話、ざまぁとしか思わねー」

つらつらとそう零す青年の背の向こう側で、男が間の抜けた表情で立ち尽くしている。
鈴木英雄。彼はただ二人の後輩の背を見ている事しか出来なかった。
背に下がるガリルMARは最早お飾りだ。大量の汗で滑るグリップを何時でも取り出せる様に握ってはいたが、その弾丸はZQNにしか向けられた事はなかった。
どうして、と男は呟く。化け物とは言え、少女。躊躇するには十分過ぎるはずだった。
なのに何故佐藤と比企谷は平気なのかと。



「ーーーでもな。めだかちゃんは、彼女だけはまずかった」

668ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:59:38
それを尻目に、青年は続ける。
銃口は震えていたし、膝はがたがたと笑っていた。それでも無様に、間抜けに強がって続けた。

「分かってたはずだろ、お前だって。めだかちゃんは対主催陣営の最後の希望だった。誰もあいつが負けるだなんて、疑わなかった。ちっとも。
 こんなどうしようもない奴等が、夢を見ちまってたんだ。めだかちゃんなら勝てるって、何でも出来るって。信じてた。
 めだかちゃんには皆をその気にさせる何かがあった。口を開けば説得力の方が後からついてきた。めだかちゃんは絶対の存在だった。
 皆言わなかったけど分かってた。俺達がめだかちゃんで保ってたって事ぐらいは。でも言う必要すら無かった。
 何故ってめだかちゃんが負けるだなんて誰も思わなかったからだ。だから心配する必要が無かった。
 ヘンリエッタ・ビンセント・ルーシー戦で沢山の強ェ奴がくたばったけど、皆が諦めなかったのはだからなんだ。
 めだかちゃんが居たから、生きていたから。何とかなるって信じてた。希望を見てた! 本気で!!
 それにマーダーも本当ならヘンリエッタ達で最後だったからな。皆、浮かれてたんだ。
 あとは首輪解除だけだった! それも改心した都城と玲音ちゃん達が居たからなんとかなるはずだった!
 球磨川の『重い愛』の影響もあったけど、それでも乗り越えてきた様な強い奴等だったんだ!
 俺達対主宰陣営の勝利は目前だった……なのに、なんでだよ! それを、何でだ!! 何で!!!」

「……めだかが……悪かっ、た、だけよ……」
少女はけれども血だらけになりながら首を降り、その一言で全てを終わらせる。
いっそ清々しい程の一貫性。ともすればそれが真実なのではないかと疑うほどの真っ直ぐさだった。
或いはそれは、少女の声色と容姿からその奥に純粋さを見ていたのかもしれなかった。
青年は、惑わされてはいけないと銃を握る力を強くする。
winnyを使って小学生の裸を集めた事も、通学路の茂みに隠れて児童を盗撮した事も確かにあった。自分は立派なロリコンだ。
ただ、目の前に居るのは諸悪の根元だった。幾ら純粋無垢な皮を被ろうが、その腐った性根は消えないはずだ。

「勝……手に、皆を……襲って、私……ねぇ、信じて……私は……めだかに、噛、み……付い、たり……してない…の…。
 命、令だっ、てして、ない……めだか、は、私の、大切な……お友達だ……もの……人狼に、なんか……しな、い……わ……」

異様な光景である事は、誰もが理解していた。
血の涙を流しながら罪人でない事を説く少女に、大人が三人掛かりで言葉攻め。どう甘く見ても普通の状況ではなかった。
「私を、信じて」
ただ悲しいかな、彼女の言葉が真実であるか否かは、この場ではさしたる問題ではなくなってしまっていた。
彼等が望むのは、真実ではなく彼女の死そのものだったからだ。
それは自分達が役立たずではなかったのだと、仇を討ったのだと、自分に納得させる為。
あの時逃げたけど、でも今回は逃げなかったのだと、居もしない死者に許しを乞う為。
とことん下らない理由だったが、彼等はそれがないと生きていけなかった。逃げる事が出来なかった。
最後まで現実と立ち向かわない。腐り切った根性は、少女に罪を被せる事でしか、弱い心を守れなかったのだ。
桐敷沙子の正体や諸行は、やはりその為のただの口実に過ぎなかった。

「……もう黙れよ」少年が言う。「桐敷、お前は少しやり過ぎた」

少女は何も言わなかった。その変わりに首筋に当てられた刃を受け入れ死を享受する様に、瞳を閉じて涙を流した。

「返せよ、皆を。生き残ってなきゃいけなかったのは、あいつらだったんだ」

青年が銃口を向け直しながら言う。少女は肩を揺らしながら力無く笑った。自嘲に歪んだ唇は、酷く青白い。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお前なんか、産まれてこなけりゃ良かったのに。




青年が呟いて、銃声が鳴る。
少女はそうしてただの肉片になった。

669ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:03:59






【89:04】






結論から言おう。俺達は運が無かった。

何故ならここまで生き残ってしまったからだ。
敗因は何だ? 考えてみたが至極当たり前の事で、答えは直ぐに出た。理由は一つ。
……俺たちがどうしようもなく弱虫だったからだ。

孤独な人間を集めてバトルロワイヤル。略して孤独ロワ。今思えば最初から企画が破綻していた。
球磨川禊は何を考えていたのか。いや、或いは何も考えてなかっただけなのか。
他人と関わるのを嫌がる奴等ーー例外もあったが大多数はそうだったらしいーーがいくら集ったところで、対主催集団など出来るわけがないのだ。
話によれば天使(天使!?)を中心に少しは出来たらしいのだが、まぁ性格が悪く協調性が無い奴等の集団がどうなったかなんて、結末を言うまでもない。
結局、まともだったのはーーそれも今となっては跡形もないがーー黒神めだかの集団だけだったって事だ。

黒神は、佐藤さんが言った通り不思議な魅力がある奴だった。
今まで誰も信じてこなかった俺ですら彼女の口車に乗せられて半ば信じ、それを死に追いやった桐敷を理不尽に恨んでしまうくらいには、すごい奴だった。
それにしても、今でさえ信じられない。今まで一人で生きてきた俺が何故黒神に頼ってしまったのか。
そのせいでこんなにもやるせない気持ちになり、誰かを恨み、後悔しているというのに。それが嫌で誰にも頼らないと決めていたのに。
とは言えどうにも黒神を好きにはなれなかった訳だが、まぁ成程確かにカリスマ性はあったのだろう。
どこぞの生徒会長にも見せてやりたかったところだ。
しかし彼女がここに呼ばれていたという事は、彼女も孤独だったのだろうか、と思う。答えなんて当人が死んだ以上は今更だが、少しだけ興味はあった。

さて、この世界に呼ばれた奴等の孤独は、大きく三つにカテゴライズする事が出来るのだと、二日前に志熊理科は言った。


   一つ、種族的孤独者。
   二つ、性格的孤独者。
   三つ、環境的孤独者。


ーーー貴方と私は二つ目。葵さんが三つ目。一つ目は先程のルーシーという人があたります。

志熊はそう言って、マーダーになりやすい奴だとか自殺しやすい奴だとかを俺に一方的に話した。
カテゴライズには成程と俺は思ったが、しかしどうにもこの島の奴らの考え方は好きにはなれなかった。
孤独の渦中にいる癖に、まるで孤独を悪の様に語るからだ。自分のせいでそうなったにも関わらず。
皆で力を合わせて信頼し合うのが如何に素敵な事かという言い分は分かる。
しかしだからと言って、一人でやりきる事が悪だ、というのは必ずしもイコールにはならないはずだ。
孤独は悪ではない。俺は志熊にそう言おうとしたが、彼女が隣人部とかいう戯けきった部活に所属する事実を知って、やめておいた。

ーーーおいおいおいおいおい、そりゃあ随分と温い孤独だな。欠伸が出るぜ。それを世間一般だとリア充って言うんだ。
   お前等さぁ、訓練されたプロぼっち舐めてんの? なんなの? 死ぬの?

素直に腹が立ったので、俺はそう言った。志熊は苦笑こそ浮かべたが、反論はしなかった。
その二時間後に志熊と葵は調査だとか言って地下室を出たが、それっきり戻ってくる事はなかった。
俺が次に彼女達の名前を聞いたのは、それから四時間後の放送だ。
俺はそれから黒神が助けにくるまでの数日、引き篭もった。他人に関わりたくなかったからだ。
下手に関わるから悲しくなったりするのだ。人はどうせ死ぬ時は一人なのだから、最初から独りで良い。
途中不知火や葉山が来たが、それ以外にイベントらしいイベントは皆無だった。故に俺はさしたるフラグも持っていない。
元々イベントやフラグとは無縁の人種だし、特に不便もなかった。だからそれで良かった。

良かったのだ。



「おかえりなさい!」



階段を上がった俺達を迎えたのは、機械仕掛けの少女の声とシチューの匂いだった。

670ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:05:46

「あ、あぁ」

佐藤さんは応えると、ぎこちない苦笑を浮かべてオートレイヴ少女、ピノの頭を撫でる。
「達広たち、なにしてた?」
ピノが笑顔で佐藤さんに尋ねた。俺達は彼女にだけは状況を説明していなかったのだ。
相手が機械とは言え、流石にこんな少女に真実を告げる気にはなれない。コギトウイルスに感染しているなら尚の事だ。
だから岩倉に彼女の御守りを任せて、男面子だけで重症を負った桐敷の後始末を行う事にした。

佐藤さんは何をしていたのかを思い出してしまったのだろう。
みるみるうちに顔を青くすると口を押さえて逃げるようにトイレへ駆け込んだ。
無理もない。頭が破裂した死体なんか、2chでさえあれど実際に目の前で見たのは二人とも初めてだったのだから。
俺はそれに比べてまだマシだった。見た事はあったし、一度だけ人もーーそれもクラスメイトだった葉山隼人をーー殺したから。

「? ねぇ、達広どうしたの?」

ピノが小首を傾げて鈴木さんに尋ねる。鈴木さんは中空を見たまま、譫言の様に何かをぶつぶつと呟いている。

「ピノ。今は鈴木さんも佐藤さんも、少し休ませてやってくれ」

ピノは怪訝そうな表情を見せたが、直ぐに頷いてにかりと笑った。唯一の癒しだな、と俺は苦笑する。
オートレイヴの奴等は、コギトに感染して自我と暴力性に目覚めない限りは人間に忠実で決して嫌わないらしい。
なんて素晴らしいのだろうか。しかし、俺は知っている。もし仮に、俺の世界にそんな常識があったならばーーー俺は確実にロボットに恋をしていたと。
全く、イヴの時間かってんだ。そう思えばある意味まだ運が良かった。俺の嫁はこの島に呼ばれなかった戸塚だけで良いのだ。
戸塚マジ天使。TMT。

「……岩倉は?」
「れいんは、おりょうり!」

俺が誰も居ない部屋を見渡しながら尋ねると、ピノが猫のフードを被りながら応えた。
だが、悪いなピノ。材木座ならともかく、俺はそのあからさまな萌えには騙されない。
それはそうと、岩倉は上のキッチンに居るらしい。
匂いからすれば此処の冷蔵庫の食材から作った普通のシチューだとは思うが、あまり期待は出来そうにはなかった。
俺は佐藤さん以上に岩倉が苦手だったからだ。
例えそれが如何に美味かろうが、あの能面の様な顔を見ながら飯を食べるというシチュエーションだけで味は三割減だ。
全くもって、ピノと岩倉どちらが人間でどちらがオートレイヴなんだか分かりゃしない。あそこまで考えてる事が分からない人間も中々居ない。
それ以前に、そもそも人を殺した直後だ。飯なんか食べる気分でも無かった。自分と佐藤さんはまだしも、鈴木さんは特に駄目だ。

「鈴木さん、取り敢えず座って休んだらどうですか?」

俺の提案に、鈴木さんは白い顔で頷き、部屋の隅に腰を下ろした。彼の服にはべっとりと血が染みていた。当然だった。
なにせあの瞬間、俺達を押し退けて桐敷の頭に散弾を捻じ込んだのは他でもない鈴木さんだったのだから。
俺はサックの中から白いシャツを取り出して、鈴木さんの目の前に置いた。サイズが合うかは別にして、その血はこちらとしても勘弁願いたかったからだ。
慣れているとは言え、決して気分は良くなかった。

「……どうして、あの時撃ったんですか」

レジ袋を口に当てながらえづく鈴木さんの隣に腰を下ろして、俺は尋ねた。
遠くからショパンの“子犬のワルツ”が響いていた。ピノが何処かでピアニカを吹いているようだった。

「俺は……」鈴木さんはレジ袋から口を離して深呼吸をした。「俺は、ヒーローだし……」

ヒーロー。俺は舌の上でその言葉を転がしたが、さっぱり意図が掴めなかった。

「ヒーロー?」何を言っているんだ? 俺は思った。この人は何を言っている?「意味が分かりませんけど」
「分からなくても、別に、良い……」

鈴木さんは力無く笑うと、レジ袋の中に吐瀉物をぶちまけた。嫌な臭いが部屋に満ちる。
とても“子犬のワルツ”を聴く気分じゃないな、と俺は思った。

「……ふぅー。や、やっぱり俺には無理だな。こんなに酷い事を繰り返すのは。か、身体が保たないぜぇー。つれぇーっ」

一通り吐いた後、胸をさすりながら鈴木さんが言った。同感です、と俺は応えた。
遠くで“子犬のワルツ”が途中で終わって、今度はパッヘルベルの“カノン”が流れ始めた。
演奏に慣れていないのか、やけにぎこちなかった。

「そ、その割に引企谷君は、平気、みたいだけども?」

そう言うと、鈴木さんは再びレジ袋に吐瀉物を吐いた。
シチューの匂いと胃液の臭いが混ざり合って、なにやらよくわからない臭いを作り出していた。
夜の満員電車でたまに嗅ぐ匂いだな、と俺は思った。

671ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:08:36

「平気じゃないです。我慢してるだけですよ。それに人を殺した事は一度ありますから。ほら、俺この通り極悪人なんで」

佐藤さんと岩倉と黒神は好きにはなれなかったが、何故だかこの人はそこまで嫌いじゃないな、と俺は思った。何故かは知らないが。

「お、俺は生きてる人を殺したのは、うぷ、は、初めてだった……。
 見捨てた事なら、一度だけあったけど……ごぷ。ぅぐぇー、きもちわるっ」

血で濡れたシャツを脱ぎながら、鈴木さんは言った。
服を脱いだ後、鈴木さんは決まりきった出来事の様にレジ袋に吐瀉を吐いた。俺は最早何も思わなかった。

「それで気分を悪くしてるんですか?」
俺は尋ねた。鈴木さんは首を横に振る。
「違う……違うんだっ。同じだったから……ZQNを殺す感覚と、同じだった……」
「解らないな」俺も首を横に振った。「だったら何処に、気分が悪くなる理由があるんですか?」
鈴木さんはレジ袋に吐くと、長い溜息を吐いて、そして俺の方を見た。

「俺が元の世界で殺してきたZQNは、人間だったんだって……だったらやっぱり、殺人だ……そう思ってしまったのでっ……。
 だったら彼女だって、化け物とは言うけれど……お、同じ人間だったんじゃ、ないのかって……。な、なら。ならだ?
 それって、つまり、俺が、やった、事、は、その、」

俺が鈴木さんの言葉を遮って反論しようとした時、トイレの扉が開いてげっそりとした面持ちの佐藤さんが出て来た。

「すまん、待たせた。もう大丈夫だぜ。ちょっと堪えたけど……」
「俺も……もう行ける」
佐藤さんの言葉に、鈴木さんも続いた。どう見ても大丈夫そうにはなかったが、彼なりの気の遣い方なのかもしれないので放っておいた。
「なら、上に行きましょう。食べる気分じゃなくても、最期の晩餐くらい胃に入れとかないと」

俺は立ち上がって、階段の上で鍋を見張る岩倉を見た。
どうか神様。あれが空鍋でありませんように。
俺は今生最期の祈りを、密かに神に捧げた。






【80:12】






「悪いな、玲音ちゃん。メシまで作ってもらってさ」

佐藤さんが申し訳なさそうに言って、席に着いた。向かい側に座る岩倉は無表情のままこくりと頷く。
「……最期の晩餐」
隣で、独り言の様に鈴木さんが呟く。もし本当にそうならこの場に裏切り者が居る事になるな、と俺は思った。
ならば果たしてそいつは銀貨何枚で俺達を売るのだろうかと思ったところで、俺は考えるのを止めた。
メリットが無いからだ。故にそれは有り得ない答えだった。最早裏切る必要さえも無い。

「さいごって?」

ピノが左を向き、佐藤さんに尋ねた。
「皆消えちゃうって事さ」
佐藤さんは悲しそうに笑って、ピノの頭を撫でる。

「きえる?」
「何も無くなるって事だよ」

岩倉がコッペパンを齧りながら淡々と言った。
ピノは眉間に皺を寄せて暫く考えているようだったが、やがてかぶりを振って考える事を止めたようだった。
黒くくすんだスプーンを手にとって、俺はシチューを口へ運ぶ。
スプーンはきっと高級な代物なのだろうが、銀装飾がごつごつと指に当たってどうにも慣れなかった。
シチューの味は、本来こうあるべきというシチューよりーー少なくとも俺の知っている常識で考えてーーだいたい十倍ほど薄く、そして必要以上に塩辛かった。
隣の鈴木さんはしかめっ面を浮かべている。体型的にも濃い味が好きそうだもんな、と俺は思った。二郎とか行って呪文唱えてそうだし。
……俺は食べられなくはなかったが、それでも不味いという事実は避けようがない。やはり岩倉は普段料理をする人間ではないらしい。
まぁそういう風にも見えないし、不自然に美味いよりかは下手な方が余程良いかもしれない。

「……なくなってもまたつくれる?」

数分間はカトラリー達が音を立てていたが、ふと不安そうな顔をしたピノがそう呟いて、四人の手は止まった。

つくれる?

俺は間抜けに口を開けたままその発言の意図を咀嚼してみたが、意味が掴めずそのままスプーンを口へ運んだ。
人を作れるのかどうかと、そういう事を訊いているのだろうか。この幼女の世界ではクローン技術でもあるのかもしれない。
なにせオートレイヴとかいうアンドロイドが当たり前の様に居るのだ。そのくらいあっても別段おかしくはないだろう。

672ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:09:29

「ピノはそうかもしれない。でもそれは、今のピノとはきっと違うピノだよ」

きっと誰もがお手上げ状態だったであろう質問に応えたのは、意外にも岩倉だった。
「? ピノはピノだよ?」
ピノが言った。岩倉は紙ナプキンで丁寧に口を拭き、静かにスプーンをテーブルに置く。
「……ピノの持ってる鍵盤ハーモニカがあるでしょ? 他の鍵盤ハーモニカじゃなくて、ピノの。
 それがなくなるって事……みたいなもの、かな」
「れいん、ピノよくわかんないよ……」

しかしピノはかぶりを振る。随分物分りが悪いアンドロイドだな、と思った。これではまるで人間の幼女じゃないか。
フィリップ=K=ディックさんよ、朗報だぜ。どうもこのアンドロイドは電気羊の夢だって見れそうだ。

「ごめんね、また後で説明してあげるよ」

とかなんとか下らない事を思っていると、岩倉が眉を下げながらそう言った。
珍しい表情だった。少なくとも俺達には向けられた事はない類の。
岩倉とピノは付き合いがそれなりに長いらしい。仲もまぁ、普通に良いのだろう。
似た者同士なのか、或いは足りない何かを互いに求めているのか。
ロボットの様な少女と、人間のようなロボット。彼女達が少しだけ奇妙な関係に見えた。



「ピノちゃん、死ぬのは怖いかい?」



食事を終えて暫くして、ソファに座っていた鈴木さんが何の脈絡もなく言った。
中々面白い質問だと思ったので、俺は視線だけを彼等の方へ向ける。今読んでいた参加者詳細名簿よりは、少なくとも中身がある話だった。

「こわくないよ」階段に座っていたピノが応える。「パパがいってたもん。しぬのはしあわせなことだって」

パパ? 俺は思ったが、直ぐに考える事を止めた。どうせ死んでいるのだ。考えるだけ無駄だった。
この名簿と同じ。居ない人間の情報など塵にも等しい。
「幸せな事、か……そうなのかもしれない」
鈴木さんは視線を落として自嘲混じりに呟く。まるで自分に言い聞かせている様だった。

「それに、みんないっしょ! だからピノ、こわくない!」

アンドロイドは大層御立派だなと思った。
俺は早く死にたいが、それでも死ぬのはまだ少しだけ怖いというのに、この少女は怖くないのだと言う。


「ーーーーーーーもう、みんなひとりじゃないもんね」


窓際に腰掛ける岩倉が、熊のフードを被りながらぼそりと呟いた。一番彼女と近かった俺さえ聞き逃してしまいそうな程、か細い声だった。
俺は少しだけ怖くなった。一番その言葉から遠そうな岩倉がそう言ったのは、何かとても深い意味がある様に思えたからだ。

……ひとりじゃない。

いや、違う。都城達と組んで首輪を解除しかけたほど賢い岩倉なら尚更分かっていたはずだ。
人間は種として一人じゃない。だが、人間は生物としてはどこまでいこうが独りだという事を。

俺は岩倉をまじまじと見た。瞳孔が開いた大きな双眸は、吸い込まれそうな黒に染まっている。
冬の深い夜を丸めた様なその冷たく澄んだ瞳には、けれども人も月も光も、一切の景色は映っていなかった。

お前は一体、何処を見ている? 俺は心の中で彼女に訊いた。

何も見ていないよ。俺の心の中で、彼女は無関心そうに応えた。

673ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:10:48








【50:08】







「悪かった、鈴木のおっさん」
「へ?」

俺がトイレから帰ってくると、佐藤さんが鈴木さんに頭を下げていた。何事かと俺は彼等の会話に耳を傾ける。

「やっぱりさ、無理だった。耐えられねーよ。もうあんな思いをするなんて二度と御免だ」

佐藤さんは力無く笑っていた。俺は漸く状況を理解する。きっと桐敷を殺す時のあの口論の謝罪なのだろう。

「い、いや俺だって悪かったんだしっ……謝らないでいいって、佐藤くん」
「駄目だ。謝らせてほしい。……だけど、これだけは言いたいんです。
 俺は考える事を止めたわけじゃない。やっぱり色んな事考えちまうよ。でも俺には優勝は無理なんだ。脱出も。
 もどかしいけどこればっかりは仕方無いんだよな。力も覚悟も勇気も頭も、足りねぇ。俺、馬鹿でヘタレですから。
 貴方達がやろうとしてる答え意外、選択出来なかったんです。それが一番……楽だったから」
「佐藤くん……」

ピアニカの音が階段の方から聞こえていた。譜面は多分、小瀬村晶の“light dance”だった。
透き通った音は確かに綺麗だったが、佐藤さんの苦い表情と固く閉じた拳とは、その雰囲気と曲調は酷く不相応だった。

「なぁ、引企谷」
「ん?」
「確か球磨川は“無かった事に出来る”んだったよな?」

佐藤さんは不意に何かを思い出した様に顔を上げると、手を濡らしたまま立ち尽くす俺にそう質した。

「……少なくとも黒神と都城と行橋と不知火は、そう言ってました」
俺はソファに腰を下ろしながら応える。
尤も、今はその眉唾情報を確かめる事すら叶わないのだが。
「『大嘘憑き(オールフィクション)』。現実(すべて)を虚構(なかったこと)にする能力、らしいですよ」

正直不知火から聞いた時は半信半疑だったが、黒神と都城から聞けば納得するほかなかった。
ラノベ顔負けな設定だが、スキルや魔道具とかいうものがあった以上、ファンタジーも最早ファンタジーではなくなりつつある。
いや、それでも十分中二っぽいファンタジーなのだが。

「だよな……尚更お手上げだわ。何でも有りじゃねーか。そんなのチートだぜ、チート。
 “ぼくがかんがえたさいきょうきゃら”かよ。MUGENなら糞キャラ扱いだぜ?
 アクションリプレイでもそこまで出来ねぇよ」
佐藤さんは肩を竦めて諸手を上げ、そして諦めた様に笑った。

「認めるよ鈴木さん。俺は負けた」
「……でもっ、佐藤くんは俺と違って迷って決めた事、だろ?
 なら、産まれた時から負けてたと思ってた俺よりは、ずっとマシだと思うけど……ど、どうだろう?」
「よしてくださいよ。結果は同じじゃないですか」

胸ポケットから桃印のマッチを取り出しながら、佐藤さんはあからさまなフォローを嗤った。

「俺の方が、よっぽど道化ですよ」

深い溜息と共にそう続けて、佐藤さんはソファに深く腰掛ける。カリモクソファーの木製脚がぎいと軋む音を上げた。
鈴木さんは中空に目を泳がせて、開きかけた口を閉じる。それ以上二人の間で言葉が交わされることはなかった。
遠くから、下手糞な“light dance”が聞こえている。部屋の隅の窓の外には、月が浮かんでいた。
天井から垂れ下がる電球に、小さな蛾が一匹、体当たりを繰り返していた。
本棚の影では、岩倉が体育座りをしたまま膝にパソコンを載せ、一心不乱に何かを打ち込んでいる。

俺は時計を見た。あと46分で俺達はこの世から消えてしまうというのに、時計は素知らぬ顔をして秒針を進めている。
針は細く、動きは軽やかで、死のタイムリミットは余りにも軽々しく進んでいた。
きっとあと46分後にも、一秒もずれることなく時計の針は進むのだろう。
俺達の命は、あんなに細い時計の秒針一つ動かせない。

そんなものなのだ、人の命なんて。

674ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:18:25







【38:37】







「……なあ比企谷。NHKって知ってるか?」

箱の背でマッチを擦りながら、佐藤さんが言った。
「知らない奴が居るのかよ。黄金時間の量産型糞クイズ番組でも全員正解レベルだわ―」
俺はそう答えた。日本人なら知らない人間は居ないだろう。
「何か勘違いしてないか? 何を想像してた?」
「……日本放送協会?」
俺の代わりに鈴木さんが質問に答える。いや、と佐藤さんはかぶりを振った。
「違うんですよそれが」火の点いたマッチが薄暗い部屋に光の残滓を振り巻く。「答えは日本人質交換会」
煙草に火が点いて、何とも言えないリンの匂いが鼻をつんと突いた。

「にほんひとじちこうかんかい?」俺が文句を言う前に、玲音はそう言って小首を傾げる。「なぁに、それ」
「ピノもしらないよ?」
岩倉の隣で、ピノが言った。そもそも本来のNHKすら彼女たちの世界にはなさそうだな、と俺は思った。

「その胡散臭さMAXな会があるのかは置いといて、それって造語じゃないんですか?」

俺は肩を竦めて言った。聞いた事もない単語だし、なによりNHKの略称をそんな戯けた会に許すほど、日本放送協会は懐が深くないと思ったからだ。
佐藤さんは少しだけ笑うと、不味そうに煙草の煙を吐いた。

「俺の知り合いが作ったんだ。人質交換会ってのはな、会員同士で人質を交換するんだよ。自分の命を人質にして互いに差し出すんだ。
 まあ、つまり“あんたが死んだら俺も死ぬぞコラ!”って事だな。
 そうすると、あたかも核保有国の冷戦下ににおける睨み合いのごとく身動きがとれなくなって、死にたくなっても死ねなくなるんだとよ」

俺達は黙って佐藤さんの話を聴いていた。きっと、その知り合いはこの島で死んだのだろう。俺は何よりも先ずそう思った。

「でも注意しなきゃいけない点がひとつだけあってな。
 “あなたが死んだって、そんなのどうでもいいよ”って状況になるとこの会のシステムは破綻しちまう。
 だからそうならないように気をつけなきゃいけねーんだ」

俺達は黙っていた。きっと俺を含めこの場にいる誰もが、誰が死んでもどうでもいいと思っていたからだ。
俺達は生き残ったが、何一つとして絆は無かったし、心の底から仲間と呼び合える間柄でもなかった。

675ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:20:13

「不思議だよな。俺も、多分お前らも、“あなたが死んだって、そんなのどうでもいいよ”って心の底では思ってるだろ?
 でも今の状況って、なんか脅迫じみたもんがあると思わねーか? 自分の命を人質にして互いに差し出してるみたいなもんに思えてきたんだ」

佐藤さんが言った。確かにそうかもしれない。自分が仮に死にたくなかったとしても、恐らくこの状況では生きたいとはとても言い出せないだろう。
しかし生憎、今この部屋の中に生きたい奴は居ないだろうし、この話に中身があるとは俺には思えなかった。
ただ、不思議な状況であるというのは俺にも何となく理解できた。集団自殺もこんな雰囲気なのだろうか。

「……誰も言わないから、俺が訊いとくぜ。俺達は今から死ぬ。そうだよな?」

佐藤さんが続けた。俺は周りの皆を見た。岩倉も、鈴木さんも、頷いている。
ピノは未だに理解していなさそうな表情だったが、死ぬことで幸せになれるとか、死ぬことが理解できないとか言うアンドロイドだ。
最早彼女が理解していようがいまいが、どうでも良かった。無理に理解させようとして話が拗れる方が面倒だ。

「だよな。まあ良いんだけどよ。飽き飽きしてたんだ。ただぶらぶらと宛てもなく、変わらない毎日を生きるって事に。
 なぁ、不謹慎だけど本当は皆思ってたんだろ? 今まで生きてきて、初めて生きた気がしたってさ」

胸の奥がいやにざわついた。
その言葉は、たしかに本質を突いていたからだ。誰もが思っていながら言わないであろう、黒い感情だった。
不謹慎と黙殺されるが、人間はきっと何時だってそうなのだ。誰かが死んで、目の前で事件が起こって、災害が起きて、戦争が起きて。
大変なことだと思いながら、きっとそれにワクワクしている。高揚している。

「映画とか、漫画とかにはさ。起承転結があって、感情の爆発があって、結末がある。でも元の生活には、そんなもん無かった。
 だけど、此処はそれがあった。程度はあっても確かに始まりがあって、小さくてもドラマがあって、感情の爆発があって、約束された結末があった」

バトル・ロワイアル。まるでハリウッド映画やゲームの世界の出来事だった。北野武の映画の中だけの事件だと思っていた。
ところがある日目が覚めると、自分が参加者。笑っちまうよマジで。目の前で人が死んで、毎日誰かが死んで。でもそれに目を背けた。
不知火を看取った。葉山を殺した。紅麗や黒神の死を間近で見た。
その度に妙な高揚感があったのは確かだ。

「辛い思いをしてまであの灰色の世界に帰るのと、このファンタジーの世界で、役者としてエンドロールを迎えるの。
 どっちが良いかなんて、考えるまでもなかったのかもな……」

約束された、結末。
俺は胸の中でその言葉を繰り返す。その時俺は何を思って、何を感じて、どんな表情で死んでいくのだろう。

676ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:24:59






【30:00ーー岩倉玲音とピノの場合ーー】





あれから、自由行動ということになったので、玲音はピノと一緒に散歩することにした。
いくつか部屋を見て、それから辿り着いた廃ビルの裏口には、ハンス・ウェグナーのYチェアが二脚、ぽつんと置いてあった。
一脚は苔と黴に覆われ自慢の曲線美は失われてしまっていたが、もう一脚は比較的新しく、岩倉玲音はそこに腰を下ろした。

「何をしているの?」

玲音が小首を傾げながら尋ねた。ピノは落ち葉が重なった地面に、木の枝を立てているところだった。
「おはかっ、つくってるの!」
ピノは玲音へ振り向いて、大きな声で答えた。顔は泥だらけだった。
「……桐敷ちゃんの?」
玲音はノートパソコンに何かを打ちながら訊いた。エンターキーを打つと同時に、ピノの体がびくりと大きく跳ねた。
ビルの入り口からは太い細いが入り乱れた様々なコードが溢れ、玲音の持つパソコンやその周辺の大きな機材、そしてピノの背中とを繋いでいた。
「うん。うごかなかったから。うごかなくなったら、おはかをつくるんでしょ? ビンスがおしえてくれたよ」
今度はピノの声は聞き取れないほど小さかった。玲音の指がパソコンに何かを打ち込む。当たり前の様に、ピノの身体がびくんと跳ね上がった。

「ピノはビンセントさんが好き、なんだね?」
「すき?」
「えっと、違うの?」
「ううん。すきって、なにー?」

ピノが小首を傾げる。愛玩用だから辞書をインストールしておかなかったんだね、と玲音がパソコンのモニタを見ながら小さく呟いた。

「ピノ、すきってわかんない。だけど、ビンスはほうっておけないやつ。だからピノがついてなきゃいけないんだ」

ピノは鼻の頭を擦って、したり顔を浮かべた。玲音は目を白黒させた後、肩を揺らして小さく笑った。
「ふふっ。ピノと話してると、不思議な気分になるよ」
ふしぎなきぶん、とピノは歌う様に繰り返す。ふしぎな、きぶん?

「ともだち、だから?」
「ふふふ、そうかもね?」

玲音は口元を隠して笑うと、キーボードを指で静かに叩いた。
画面は暗い緑色のスクリーンで、意味ありげな文字列がずらりと並んでいたが、それを覗いたピノには意味がさっぱり分からなかった。

「……ねぇ」数分の沈黙の後、玲音は思い出した様にそう切り出した。「ピノは人が動かなくなったのを見たって言ってたよね?」

ピノは苔の生えたYチェアーの上でピアニカを吹いていたが、玲音の質問にうーんと唸る。
ピアニカの唄口を咥えたままだったので、警笛を失敗した様な間抜けな音が鳴った。

「ラッカがね、くびをしめてっていうから、しめたの。そしたらうごかなくなっちゃったんだ。ピノ、びっくりしたな。
 れいん。あれがみんなのいう、“しぬ”ってことなんだよね?」

玲音の指がするするとキーボードを走る。スクリーンに浮かぶ小窓にはRakka、と黄緑色の文字が浮かびあがった。
エンターキーを押すとほぼ同時に、ずらりと何かの一覧が新しいウィンドウで飛び出した。そのうちの一つがタブで選択される。
玲音はそれをドラッグして、haibaneというフォルダにドロップした。

「うん。そうだよ」
「ピノにはすこしむずかしいな」

ピノが口を尖らせて言う。玲音は手を止めて、ピノの頭を猫耳フード越しに撫でた。

「れいんはわかってる?」
「私にも、難しいよ。リアルワールドでの死なんて、解らない。意味も、価値も。知りたいと思った事も、ない……から」
「ふうん……?」

玲音は熊耳のついたフードを深々と被って、目の前に広がる景色を見た。
小さな枝が墓標の様に地面に刺さっていて、しかしその下には死体は埋まっていない。
コギトに感染し、死んだ事を理解できて、弔いの文化や墓について知っていても、そこには感情と意味が欠落していた。
人が死んだら、墓を作って弔わなければならない。ピノはその一文を条件と結果の一致としか見ていなかった。

「ピノは今、幸せ?」

677ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:27:48
玲音が思い付いた様に尋ねる。目線は墓の向こう側の暗い森を見ていた。
よくわかんない、とピノは応えた。玲音はピノの方へ視線だけを動かした。ぐるり、とやや大き過ぎる目玉が回転する。

「ピノ、ニンゲンじゃないから、よくわかんないの。でも“死ぬのは幸せな事だ”って、パパ、いってた」
「オートレイヴだから、よくわからない?」
「わかんないもん、そんなの」
頬を膨らませながらピノは言う。玲音は少し悩む様な素振りを見せた後、再び口を開いた。
「でも、ピノはコギトウイルスに感染しているんだよね?」
「うん。でもわからないの!」
「どうして?」
「わかんないっ。れいんはときどき、よくわからないこという!」

ばん、とピノが椅子の上に立ち上がって、玲音にサックを投げ付ける。
サックの中身が散らばって、玲音の膝の上のパソコンは落ち葉の海にダイブした。

「……。……ごめんなさい。ピノがどう思ってるか、知りたかっただけなの。許してくれる?」

玲音は立ち上がり、ピノの支給品をサックの中に入れながら言った。ばつの悪そうな表情だった。

「ううん……ピノも、ごめんなさいする。ピノ、れいんのことしりたいよ。ピノだって、しあわせ、おしえてほしいもん」
「私は……私みたいな人の事なんか、知っても良い事ないよ」
玲音は苦笑を浮かべて言った。ピノは首を振って、椅子を飛び降りる。錆色の木の葉が少しだけ地面の周りを踊った。

「トリエラがいってた。きっとともだちってやつは、おたがいのことをよくしってるものなんだって」
「トリエラが……?」
「トリエラ、それからヘンリエッタこわしたんだ。そしたらトリエラきゅうになきだしたの」
「……きっとコギトに感染してたんだね、トリエラも」
「トリエラ、さみしいっていってた。ピノもね、そのあとうごかなくなったビンスをみたの。そしたらむねがなんか、きゅーってしたよ。
 だからピノ、きっとトリエラがいってた“さみしい”っていうびょうきなのかもしれないなって」

玲音は無表情のまま、空を見上げた。星は一つとして顔を出していない。
ーーー寂しい?
自分に問いかけるように呟いたが、やがてその言葉は森の向こう側の闇に沈んでいった。
いつまでもそうしていた玲音の腰あたりに、ピノは不安そうな表情を浮かべて抱き付いた。
熊のフードと、猫のフード。白い肌、暗い髪の毛。端から見れば、姉妹の様に見えなくもなかった。

「……ビンス、いつここにくるのかな」

不意に、ピノが呟く。顔は玲音の胸に埋まっていた。玲音はピノの肩を優しく掴み、ゆっくりと引き離す。
「……あのね、ピノ」
「うん?」
「ビンセントさんは、もう帰ってこないんだよ」

678ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:30:03

半秒の間があって、どうして? とピノが首を傾げた。玲音はパソコンを拾うと丁寧に枯葉を払い、椅子に腰をかけ、そして口を開いた。

「ビンセントさんは、死んじゃったから」

しってるよ、とピノは応えた。
「めだかがいってたもん。だからビンス、もういっこないかなって」
違うの。玲音は言った。違うんだよ、ピノ。

「無いの、ピノ。人は、一つしかないんだよ」

「……ふべん、だね?」
「そう。不便、人間は。だから、死ぬのは寂しいんだよ。
 ピノも知ってたんじゃない……? もういっこのビンセントさんは、ビンセントさんだけどビンセントさんじゃないって。
 だから寂しかったんじゃない、かな」
そうなのかなぁ、とピノは俯きながら口を尖らせた。
「じゃあ、ビンスにはもうあえない? でーたでも?」

奇妙な間があった。

答えに悩んだのではなく、聞きそびれたからという訳でもない。六秒半という絶妙な間の後、玲音は無表情のまま笑った。
ふふふ、と無機質な声が蔦だらけの廃ビルの身体を舐め回す。そして一通り笑うと、息を小さく吸って玲音はピノを見た。
そして、微笑みながら言うのだ。

「……また、会いたい?」

それは、凡そ有り得ない質問だった。或いは相手がオートレイヴの少女でなければ、その質問に疑問を持てただろう。
しかし少女ピノはオートレイヴだったし、剰えその心は下ろしたてのシャツや刷りたての画用紙よりも遥かに白く、無垢で、純粋だった。

「あいたい!」
「会えるよ。きっと」
「ほんと!?」
うん、と玲音は応えながらパソコンを開く。
「そういう風に出来てるの。ビンスにも、リルにも……ピノのパパにだって、会えるんだよ」
「ほんと!? すごい、れいん!」

かたかたかた。パソコンのキーボードが囁いて、それが止むと同時に生温い風が吹いた。
風は少女たちの髪をさらさらと靡かせた。

「ピノは、みんなと繋がっていたい?」

玲音が尋ねる。つながる? とピノは訊き返した。
「うん。みんなの考えをわかりたいなぁとか、みんなとずっと一緒がいいなぁとか、思う?」
「うん! おもうよ!」
「私なら、繋げてあげられるよ。ずっと」
「ずっと!?」
「ふふ。うん。ずーっと、永遠にみんなと一緒。うふふっ。もう寂しくないんだよ。だから、ね?」

玲音はにこりと笑って、愛玩用オートレイヴ少女の首にゆっくりと手を伸ばした。
ピノの視界に、灰色の砂嵐が走る。高揚の無い笑い声が、夜の森の向こう側に響いていた。


「こんな世界、もういらない」

679ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:32:12





【30:00ーー佐藤達広と比企谷八幡の場合ーー】






ソファに腰を深く沈めた。緑色のベロア生地に金色の刺繍は中々に高級感があって、座り心地も悪くはなかった。
サイドテーブルからカップを手に取って、口へ運ぶ。注いである珈琲は、何故だかいつもより苦く感じた。

「どうして」

カップの中の黒い水面を見ていると、そこに映っている冴えない男の口から声が漏れた。

「どうして、俺達なんだ」

どうしてなんだ、と。腹の底から捻り出す様に言う。半ば無意識の言葉は、その九文字は、この一週間の苦い想いの全てが詰まっていた。

「生き残ってなきゃいけなかったのは、めだかちゃんや紅麗さん達の方だった」

対面の高校生は、何も言わなかった。ただ光の無い黒い目を、こちらに向け続けていた。
励ます人も、怒る人も同意する人も、殴ってくれる人すら、もうこの世界には居ない。
残ってしまった五人は生きてこそいれど、軒並み心が死に尽くしていた。
優しさなどありはしない。温かさなどありはしない。希望は愚か、絶望すらありはしない。
そこにあるのは、ただただ“無気力”だった。
抗う事すら諦めた。勇気なんてものは、端からありはしなかった。人の形をしたその中身は、ひたすらに空虚だった。

「俺達は守られちゃいけなかったんだ。死ぬべきなのは俺達だった。ずっと前からそう思ってたんだ」

珈琲を飲み干して、ソーサーの上にカップを置く。
まるで泥水のような不味さだった。こんなにも不味く感じたのは初めての事だった。

「そうさ、ずっと思ってた事だ。ずっと見てきた事だ。自殺していく奴や、戦って死んでいく奴。殺してもらう奴、集団で死ぬ奴。
 俺もそうなるはずだった。せめて人間らしく、誰かに悲しんでもらって逝く筈だった。それが、なんで」

震える両手を目の前に出す。一週間を生き残ったにしては、彼等の掌はあまりに綺麗で、あまりに白かった。
目頭が熱くなる。視界が滲んで。頬をゆっくりと雫が流れ落ちた。



「ーーーなんで、ここに居る?」



わななく口で、震える心で、絞り出す。
死にたくなかった。
死ねなかった。
生きたくなかった。
戦いたくなかった。
ただどうしようもなく、生きてしまった。

「こんな守る価値も無い引き篭もりでニートの屑が、なんで。なんでだよ……なんでだ……」

一緒に死のうと言ってきた奴が居た。俺は怖くて、薬を飲んだふりをした。そいつだけ死んだ。
脱出を誓った奴も居た。敵に襲われて、俺はそいつを餌に逃げた。
俺を元気付けてくれた奴も居た。救ってくれた奴が居た。戦いを任せていたらピンチになったので、見捨てて隠れた。
全員、ゴミ屑の様に死んでいった。自分なんかよりもよっぽど価値ある命が、まるで羽虫の様にこの島の呪いに喰い散らかされた。

「俺達は此処で何をしてきた? 何を誇れる? 俺達に一体何がある?
 ただだらだらと長い時間引き篭って、助けられて、縋って、仲間を見捨てて、ひたすら現実から逃げて……そんな俺達の命に何の意味がある?
 守られて、頼って、逃げて、任せて。一度も戦ってこなかった俺達に、今更何が出来る?」

680ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:36:52
対面のソファに座る高校生は、口を開く素振りすら見せない。
何だってこんな仏頂面の可愛くもない歳下餓鬼相手に、俺は必死になって雄弁になっているのかーーーあぁ、そうか。
そっくりなんだ。昔の自分に。高校の時、達観した気分になって、斜に構えてれば格好良いと思っていたあの時の俺に。

「悪い、こんな事いきなり言われても困るよな」
目尻に浮かんだ涙を拭きながら、俺は言った。まったく、今日の俺はどうかしてる。
「しかし……本当にさ。何でこうなっちまったんだろうな。何処で間違えちまったんだろうなぁ」

ソファに全身を預け、胸ポケットから煙草を取り出す。
火を点けて咥えてみるが、マールボロ・ライト・メンソールは、すっかり“メンソール”の部分だけが抜け落ちてしまっていた。
これじゃあただのマールボロ・ライトだ。やれやれと鼻から息を吐きながら、俺は天井を見た。
湿気た煙草は世辞にも美味くはなかったが、味気ない天井に向かって漂う紫煙を見ている気分は、何故だか決して悪くはなかった。
不味い珈琲に不味い煙草、小さな矩形窓が一つだけの味気ないコンクリートの部屋。
だが或いはこんなロリコン薬中引き篭もりニートの最期には、相応しいシチュエーションなのかもしれなかった。

「ヒキタニ君は、何でだと思う?」
「……分かりませんよ。自分の胸にでも聞いてみて下さい。あと俺の名前間違ってます。不快です。死にます」

へへへ、と思わず笑みが零れる。頭を起こして、俺は仏頂面の引企谷を見た。
この目だ。周りを見下して捻くれた目。高校生の時、俺が委員長を見ていた目もきっとこうだった。

「でも、何が出来るか、って言いましたよね。あれには答えられますよ」

引企谷が言った。へぇ、と俺は先を促す。

「何もできねぇと思いますよ。俺にも、佐藤さんにも。だから俺達には嘆く資格も権利もありゃしないんです。
 俺達がやってきた事の皺寄せが今の状況なんですし。
 今更逃げる脅威も無い。抗う勇気も気力も無い。なら、受け止めるしかないでしょう? 今更決めた事迷うとか、それでもぼっちの先輩ですか?
 まあでも、俺は今も間違ってなかったって思いますけどね。そうやって狡賢く不器用に生きる事が、俺の生き方だったんですから」

煙草を銀皿に押し付けて火を消して、俺は懐からもう一本を取り出した。かちり、とライターの火打石が火花を散らす。

「だから俺は嘆かない。泣かない。逃げない。これで良い。俺は此処で孤独に死ぬ。そう決めた。
 自分勝手に生きてきたんだ。人間、報われないまま終わる事もありますよ。
 テトリスと一緒ですよ、人生なんて。長い棒野郎を待ってる時は来ないし、待ってない時に限って降ってきやがる」

人間、報われないまま終わる事もある、か。
咀嚼する様に胸中で反芻しながら、俺はぼんやりと煙越しに引企谷を見た。そこまで当時の俺は達観してただろうか。
いや、少なくともその振りだけはしてたか。こいつもそうなのかもしれないけど……ま、関係ないか。

681ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:38:39

「今更考え方を変えても過去も未来も変わらない。屑は屑らしく、嫌われ者は嫌われ者らしくしてれば良いと思うんです。
 佐藤さんがどう思うかは知りませんけどね、俺には何も期待しないで下さい。
 貴方の事なんか知ったこっちゃないですよ。なんてったって、あと数十分で別れる他人なんですから。
 くれぐれも内輪揉めとかに俺を巻き込まないで下さいね。俺は内輪に居たくないんで」

引企谷はきっぱりとそう言って、ソファから腰を上げる。埃が少しだけ舞って、天井からぶら下がるナトリウム灯の光にきらきらと踊った。
少し迷って、口を開く。今日の俺は何故だか饒舌だった。

「……俺はそれでも悩んで悩んで、最後まで悩んでいたい。勇気もないし、抗う気力もないけど。
 何も変わらなかったとしても、悩む。決めたとしても、やっぱり迷う。
 人間、そんなもんじゃないのか? 少なくとも俺はそういう情けない奴だよ。ニートだし。大学中退だし、引き篭もりだしな。
 ただお前みたいな奴は、俺から言わせればただの格好つけたがりの糞生意気な餓鬼だね。
 感傷的な気分にでも浸って星空でも見上げてろよ。あれがテネブ、アルタイル、ベガってさ(笑)。
 その間にも逃げて、悩んで、結局いつもいつも駄目な結果で。
 死ぬのを決めた今でもまだ死にたくないとか、あの時こうしてればとか、色んな事を後悔し続けておくからな。俺は。
 俺達は確かに現実に負けた屑だけど、まだ25分くらいは生きてるんだぜ。全部放り投げてくたばっちまうのは……それからだろ。
 迷わない考えない悩まないってのはお前、そりゃあ最早人間じゃなくて機械の域だぜ。俺はそう思うけどな」

引企谷は口をへの字に曲げて俺の言葉を聞いていたが、やがて溜息を吐いて俺に背を向けた。

「非生産的ですね。きっと球磨川大先生は、今のアンタをモニタ越しに見ながらメシウマしてますよ」

肩を竦めて僅かに嘲笑しながら、引企谷は扉の向こう側に消えてゆく。なにやら原因不明の苦しい気持ちだけが、胸の奥に深く残っていた。
部屋は静かになってしまった。錆びた鉄扉へ煙の輪を飛ばしながら、俺は黴臭いソファに上半身を委ねる。

「格好つけてるのは俺の方だ……なぁ……本当にこのままで、良いのか? 教えてくれよ、岬ちゃん。
 俺はまだ自分の人生の中で、一度も答えを見付けた事がないんだ。笑っちまうよなぁ。
 でもさ、死ぬ時くらい、見付けたいんだよ……何の答えかは分からないけどさ。何かを見付けたいんだ。何か一つでいいんだ」

俺はポケットに手を入れた。いつか山崎と作った脱法ドラッグは、まだ確かに残っている。
この島に来てから、一度も使っていなかった。そんな気分にはなれなかった。だが、今なら使ってもいいかもしれない。
どうせ死ぬからなのだろう。そんな気分だった。

ーーー佐藤くん、また私に会いたい?

重い鉄の扉の向こう側から、そんな声が聞こえた気がした。
あぁ、岬ちゃん。会いたいよ。またこの夢の粒を飲めば、答えを教えてくれるかな?
君は、俺を救ってくれる天使だもんな。


「いつかの星空の、続きを見に行こうぜ。岬ちゃん」


だけど、嗚呼ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー高校の時あんなに覚えた星座の名前、もう殆ど忘れちまったよ。

682ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:40:26






【30:00ーー鈴木英雄の場合ーー】






小さな頃から、絵が好きだった。

アニメのキャラクターを真似てはクレヨンや色鉛筆で広告の裏に描き、両親や親戚に見せた。絵が上手だと言われて、嬉しかった。
十歳の時に、初めて他人に絵が褒められた。校内コンクールで金賞を取ったからだ。先生にも褒められた。英雄くんは絵が上手だね、と。
運動能力は皆無。学業は普通以下。顔も中の下。背も高くなければ、体型も良くないし、モテすらしない。真面に褒められた事など皆無っ。
そんな俺にとって、それは“勘違い”させるに十分過ぎる出来事だったと言える。
今思えばそれが始まりだった。
中学。並の受験勉強で、並の学校に入学した。相変わらず勉強は出来ず恋人も出来ず運動も出来ず。
ただ、美術だけはいつも成績が良かった。自分にはそれしかない。俺はそれが分かっていた。齢十四にして。分かってしまった。

僕は勉強ができない。答えが書けない。けれどもーーー絵だけは描けた。

これはアイデンティティと言うべきか? まぁ、それは置いておいて。その頃、丁度漫画の面白さを知ったのだ。俺は。
読み漁り買い漁り、自力で初めて漫画を描いたのもその頃だった。
見せる人は居なかった(今思えば到底見せられる代物でもなかった)けれども、当時はその達成感だけで十分だったのだ。
十七の頃、それで満足出来なくなり、雑誌に漫画を投稿した。銅賞を取った。編集に褒めて頂いた。
自分の才能はこんな小さな世界で完結すべきでないと考え始めた。
俺は漫画家になって、金をたんまり稼いで、いい女とそれこそメロンブックスで売ってる男性向け同人誌顔負けなセックス三昧の日々を送るのだと。

高校三年生の夏、再び銅賞を取って、漫画家になろうと決意した。俺には才能があったのだ!
例年より些か暑く、雨が少ない夏だった。

二十代になって、週刊漫画は糞だと切り捨てた。自分には作風が合わないし、自己表現に週刊漫画という媒体は向かない。
長いスパンで見た場合、アンケート打ち切り制度など、自ら漫画界の将来を閉ざす間抜けな戦法じゃないか。
編集は糞しかいないし。奴等は何も理解していやしない。いや、理解はしているが営利主義と顧客主義の面から見て……或いは仕方ないのかもしれないが……。
それにしたって十週打ち切りとかなんだの、あんまりだろっ。物語の始まりの『は』も始まってないじゃないか。
ここからは漫画の意味という根本的な問題から話す事になるが、まず。まずだよ。
誰しもが、思春期を境に気付き始める。まずい、と。自分の人生は存外つまらないなと。
だから漫画があるわけだ。他人の人生を覗いて、その恐怖から逃げる為に。それで満たされる。
経験と充実を代替してくれる素晴らしい媒体だ、漫画は。でも漫画の主人公だっていつも上手くいくわけじゃない。
だから“静”は必要だ。アンケートも当然その時は票数が取れないだろう。でもこれからなんだよ。これからだ。
漫画の主人公だって、これから味が出てきて、話も盛り上がるんだ。
なぁ、そうだろう? これからなんだ。
俺の漫画『アンカットペニス』だって、これからだったんだ……。

二十代後半、そろそろだなと思っていた。本気を出すなら今だと。でも、気付けばアシスタントを繰り返す日々になっていた。
そうこうしていて三十になった。そこで漸く気付くのだ。俺は。漫画家は夢を与える職業だと誰かが言ったが、それは違うと。



漫画家は、夢を見る仕事だった。



社会の不条理の中に揉まれて。徹夜明けのマクドナルドの中で。京王線の満員電車の中で。新宿駅のトイレの中で。
腐り切った世界で、濁った目で、汚れた夢を見ていた。叶わない事なんか知っていた。
漫画は売れない。このままプロアシとして血反吐を吐いて、身体を壊して廃業。
独身のまま、ナマポで飯を食っていく。そんな未来を認めたくないだけだった。バクマンみたいに上手くいかないんだ、漫画は。

現実を見ず、夢を見る。それが取り残された漫画家の唯一の生き方だ。

683ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:45:15
「ふぅーっ」

溜息が自然に出た。吐く物は全部吐き尽くしていたが、息だけは未だに吐ける事に少しだけ安心した。
まだ自分が生きている事の裏返しのように思えたからだ。

「こんな事になる前に早く誰か可愛い女の子を守って、格好つけてから自殺すれば良かった……」

何となしに、空を仰いだ。雲で暗く淀んで、星など見えはしなかった。今生最期の夜だと言うのに、気の利かない空だ。

「くそ。俺の馬鹿っ。結局集団自殺とかっ」
赤く錆びた手摺に額をごつりと凭れる。ざらざらとして、少しだけ痛かった。
皆と別れた後、テラスへ出た。あの息が詰まりそうな地下室に居ると、吐き気が治まりそうになかったからだ。
テラスは二階の東側にあった。こぢんまりとした、一畳あまりの一人用テラスだった。
夜風は涼しく、湿気は適度。虫一匹いない。自然光は皆無で、朧月が僅かに辺りを照らしているだけ。中々どうして良い環境だった。
テラスの外には深い森ーー参加者達からは“黒い森の庭”と呼ばれて恐れられたーーが見えた。
屋久杉顔負けな巨大な杉達は天を目指してそれぞれが競うように伸び、ひしめき合っていた。
森の中には深い谷があり、そこには川が流れていて、滝壺に落ちる水の音が、空にどうどうと響いていた。
めだか、紅麗、トリエラ、ジョーカー、夜空、クルス、王土、坂東、メラン、ヘンリエッタ、ルーシー、ヴィンセント、桜田、黒木。
少なくとも今朝から夜にかけての惨劇で、13の死体がその森に眠っている筈だった。

「はぁーっ。ついてなさすぎだろぉっ、俺……」
溜息と共に、言葉が唇から零れ落ちる。そのうちの一人になれたならどれだけ幸せだったろう。
自殺だなんて、そんな事想像すらした事なかった。自殺する奴は馬鹿だと思っていた。
漫画家の世界では別段珍しくはなかったが、それでも親や大家に迷惑だし、折角生きてるのに自分から命を終わらせる意味もさっぱりわからなかった。
だがそれがここにきて現実味を帯びて心を襲う。
かつて自分が貶してきた最も間抜けな最期が、目前にあった。皮肉にも程がある馬鹿げた話だった。

「……でも。俺なんかが格好つけられる様なシーン、どこにも無かったよなぁ……」

初日から、俺は洞窟の奥に引き篭もった。DQNとの戦いで学んだ事は、とにかく静かにして身を隠す事が一番という事だったからだ。
三日目に差し掛かる頃に、中原岬さんと小野寺雄一さんの二人が洞窟へ来たが、その二人も結局自殺して。
その後も黒神めだかさんが来るまでずっと引き篭った。格好つける余裕も隙も、機会さえありはしなかった。

「おぇ。まだちょっと吐き気する。くそっ」
瞳を閉じると、少女の頭が弾け飛ぶ瞬間が壊れたテープの様に繰り返す。
「けど、悪くない……俺は……悪くない……大丈夫……大丈夫……」
網膜に焼き付いてしまったみたく、最期の瞬間が離れない。

「……ようつべで見た、外人が輪ゴムで西瓜を割る動画みたいだった……」

人を殺した以上、天国には行けないな、と思った。ただでさえ今だって不法侵入してるし、器物破損もしてきた。元の世界でも。
これじゃあ、バカッターに犯罪自慢するDQNと何も変わらない。
寧ろローソンやブロンコビリーのアイスケースや冷蔵庫の中に入る方がエンターテイメント性があるだけまだマシじゃないか。
……あ―あ。ガリガリ君の梨味と炭焼き厚切り熟成ぶどう牛サーロインステーキセット400g……死ぬ前にもう一回食べたかったなぁ。

「自分の人生って、やっぱり自分で思ってる以上に大した事ないよな。俺の持論は身を以って証明された訳だ……。
 自分の人生がつまらないから、漫画で他人の人生を覗きたがる。そこに現実を見て、経験を補いたい。だから人間は漫画を見るのだという理論が……」

684ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:46:31

“なぁ、不謹慎だけど本当は皆思ってんだろ? 今まで生きてきて、初めて生きた気がしたってさ”
佐藤君の言葉が、頭の中でずっと渦巻いていた。元の世界では、三谷さんも同じ様な事を言って死んだ。
何も変わらない毎日は、確かにDQNやバトロワのせいで変わった。生きる事を初めて意識して、命に対する想いも変化した。
死に触れる事で、生きている事に実感が持てた。だけど、結局本質は変わらない。死なない様に引き篭って脇役に徹しただけだった。

「俺は……俺の人生くらい、自分がヒーローにななりたかったんだ……それだけなのに」

しかし結局、どうやらヒーローにはなれずに人生は終わってしまいそうだった。
……でも、本当にそれでいいのか?
ふと思い出して、胸ポケットの煙草を取り出す。煙草は好きではなかったけれど、その一本の煙草だけは、ヒーローになれた時に吸おうと決めていた。

「こんな時に、どうして思い出しちゃうかなぁ……俺は……」

ーーーヒーローになりたいです。
三日目の昼、俺は雄一さんに言った。雄一さんはふむ、と唸り、煙草をふかしながら暫く考え込んでいた。
その夜、雄一さんは俺の隣に座って、眼鏡のレンズをTシャツで拭きながら言った。
ーーー僕ァね、鈴木くん。ヒーローになりたければなればいいと思うよ。
   ただ君以外の誰もが、君がヒーローである事に、興味なんてないんだ。
俺は何も反論する事が出来なかった。
ーーーだけどヒーローは街を壊すし、全員を救えないし、法律と警察無視で直接悪を殺すし、誰にも理解されない。
   それでもヒーローであり続ける自信が、責任を取り続ける覚悟が、君にはあるのかい?

「……誰もやらないというなら、俺がやってやる……今しかないんだ、チャンスは。俺なら、うん。出来る」
ガリルのグリップを握って、空を見上げた。雲の向こう側で、十六夜の月がぼんやりと浮かんでいる。


「アイアムア、ヒーロー」


ーーーないです。
俺は言った。
ーーーないけれど、どうしていいか分からないけど、ヒーローになる方法も、貴方の言う覚悟も分かりませんけど。
   でも、なりたかった。それって、悪い事なのでしょうか?
雄一さんは笑って煙草に火を点けた。まるでエクトプラズムの如く煙は洞窟に浮かんで、やがて岩壁に吸い込まれるようにして消えていった。
ーーー今度、君の漫画を見しておくれよ。そしたら、答えてあげても良いかな。
雄一さんはそう言って煙草をふかした。いいですよ、と俺は応えた。
その夜、雄一さんは遺書と一本の煙草を遺して洞窟を出ていった。

『僕ァ、ヒーローにはなれそうにないからね』

遺書の最後の一文には、汚い文字でそう綴られていた。

685ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:47:52





【20:00】






俺達は孤独だ。

心も弱いし、勇気は無い。運動能力も無ければ、運もないし、挙句勉強も出来ない。
モテすらしないし、凡そ才能やカリスマ性と呼ばれる類のものとはとことん無縁だ。
だけど別に、それを悪い事だと思った事は一度だってない。誇れる事だと思った事もないが、しかしそれを咎めるリア充共よ、成功者共よ、俺は問いたい。
だからなんなのだ、と。
そもそも俺達が居なければ、お前達は高説を垂れ流す事も、成功する事も、悦に浸る事すら出来なかったはずではないのか?
とは言え俺は別にそれを恨んでいるわけではない。可哀想と思いたくば思え。嫌いたくば嫌え。
ただ、それを認めている俺達に、お前達は意見を言える立場にあるのかと言いたいのだ。
俺はお前達から蔑まれる事も、無視される事も、負ける事も認めている。だからお前達も、俺達が孤独である事を認めろ。
俺達からその立ち位置すら奪おうというなら、それは最早白痴や傲慢以外の何物でもないだろうに。

俺達は弱い自分を受け入れた人間だ。そして少なくとも俺はーーーそれが諦観とは違うと思っている。
俺は幾ら啓発本を読んでも自分が変わらない事を知っている。ゲームやアニメじゃないんだ。人間、中身はそうそう変わらない。
でもそれでいい。変わりたいと思う事も確かに少しはあるし、すごい奴には……まぁ多少なり憧れるが、その反面で確かに今の自分を享受しているし、嫌いではない。
何より結果として変わらないのは、変わりたい気持ちよりありのままの自分を選んでいるからだ。
クズでいい。ニートでいい。馬鹿でもコミュ障でもいい。
恋人が出来なくとも、体育で2人組を作れなくとも、友達が居なくとも、ヒーローになれなくても、主人公じゃなくても良い。
何故ならそれが俺の人生だからだ。

だからお前、頭によく刻め。お前達が何をもって“ハッピーエンド”と呼んでいるのかはこの際問わない。








だがそれでもーーーーーーーーーーーーーーーこの物語を。結末を。決して“バッドエンド”とは言わせない。



















【桐敷 沙子 死亡確認】

【孤独ロワイアル 残り5人】

686ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:48:58
投下終了。長くてすみません。

687剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:02:34
 崩落する仮初の世界、無へと還る殺戮の舞台。
 そこに大神の筆しらべが走り、異空へと繋がる幽門が開かれる。
 黄金神と大神の導きを受け、戦いの中で散って逝った数多の剣士達の魂は、還るべき世界へ還っていった。
 それは、彼らの振るった幾多の剣も同じ――。




 エピローグ 剣の還る場所
 其の一『聖剣イルランザー』




 ガルディア大陸から遥か南方に位置する、幾つもの島々からなるエルニド諸島。
 かつては大陸で名を馳せた蛇骨大佐率いるアカシア龍騎士団によって統治されていたが、数年前に中枢メンバーが死海へと遠征に向かい全員が行方不明となり、少し前にその死海も消滅してしまった。
 現在は交易の中心である港町テルミナを始め、本島はパレポリ軍の統治下――事実上の支配下――にある。
 そんな世間の喧騒から隔絶された、小さな離れ小島があった。
 豊かな緑に囲まれたそこは一見無人島のようだが、中心部には小さな小屋があり、そこには1人の女性が住んでいた。
 彼女は今日も、2人分の茶器を用意して、2人分のお茶を淹れて、じっと、椅子に座ったまま待っていた。机を挟んだ対面の席に来るべき人が来ることを、帰るべき人が帰ることを。
 女性の顔にはおよそ精気と呼べるものは見られず、悲しみや嘆きのような感情すらも垣間見えない。
 ほんの数年前、この離れ小島に大怪我を負った騎士が記憶喪失の状態で流れ着くまで、彼女はずっと1人だった。それが当たり前だった。
 世間から隔絶された場所で、彼女はずっと1人で生きて来た。死が訪れるその時までそれは変わらないと、そう思っていた。
 だが、彼が現れてから彼女の世界は一変した。
 彼は命を救われた恩を返す為だと彼女の手伝いを買って出た。木を伐ったり薪を割ったりと力仕事が主だ。
 彼女もそのお礼にと、彼には腕を振るって食事を御馳走した。
 またそのお礼にと青年が、またそのお礼にと彼女が、とその関係はずっと循環していた。
 彼と共に暮らし、語り合う内に、彼女の心に今まで感じたことの無い感情が芽生えた。
 それが恋であり、愛なのだと悟ることに、さして時間はかからなかった。
 その想いを自覚すると同時に、彼女の内に一つの恐怖が生まれた。それは、彼と別れる時が訪れること。
 彼はいつか、記憶を取り戻すかもしれない。或いは、彼の知り合いがここに来るかもしれない。そうなってしまったらと思うと、胸が張り裂かれるようだった。
 彼がここに来る前の日常に戻るだけだと頭では理解できているし割り切れるものだと思えるのに、心は、そんなものには耐えられないと叫んでいた。

688剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:07:31
 けれどある日、唐突に、全く予期せぬ形で、彼は彼女の前から姿を消してしまった。
 不可思議な闇の霧、暗黒のオーラとも呼ぶべきものが彼の体を包んだ時に、一緒に巻き込まれそうになった彼女を助けて、彼は闇に呑まれて消えてしまった。
 突然の別離を受け入れられず、彼女はまるで、彼が少し出掛けてしまっただけだと自分に言い聞かせるように、食器と食事を2人分用意して、そのまま待ち続けるという奇行を繰り返していた。
 今日で5日目。その間、彼女は自分も用意した食事や間食に一切手を付けていない。睡眠はとっているのでなんとか保っているが、人間が飲まず食わずで生きられる限界とされる時間を既に超えてしまっている。
 今も意識が朦朧としておりいつ倒れてしまってもおかしくない。その朦朧とした意識の中で、彼女はもうすぐ薪が無くなってしまうので、木を伐らなければならないことに気付いた。
 いつもは彼が率先してやってくれていたので、すっかり忘れていた。
「………………ダリオ」
 彼の姿を思い出して、彼女は一度も呼んだことの無かった彼の名を唱えた。
 離れ小島での隠遁生活とはいえ、食料の買い出しに行くことはあるし、そこで噂や世間を騒がせるニュースぐらいは知っていた。
 アカシア龍騎士団四天王筆頭にして、聖剣イルランザーの新たなる所持者となった人物の名と容姿の特徴を、彼女が知らないはずが無かった。
 それでも言えなかった。教えられなかった。彼にもう帰る場所が無くなっていたからとか、そんな理由では無く。彼と、ずっと一緒にいたかったから。
 彼女の頬を、一筋の涙が伝った。寂しさから、後悔からか、それとも哀しさからか。それすらも、もう分からなくなっていた。
 このまま何も分からなくなってしまおうかと思った、その時、家の扉を叩く音が聞こえた。
 一瞬、彼が帰って来たのかと思ったが、彼ならばすぐに入って来るはずだ。なのに、今ドアを叩いた人物は返事を待っているのか一向に姿を現さない。
 自分の冷静な思考に落胆しつつ、彼女は立ち上がって客人を出迎えようとしたが、体に力が入らず、椅子から立ち上がれない。
 止むを得ず、椅子に座ったまま声を掛けて客人を招き入れる。
「どうぞ。鍵は開いています」
「失礼する」
 彼女の声に応じて入って来たのは、金の長髪を束ねて纏めている、青い鎧を纏った騎士だった。異様に大きな足の部分が特徴的な鎧だ。

689剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:11:59
「何のご用でしょうか? ご覧のとおり、ここは何も無い島ですよ」
「俺の友……ダリオの剣を届けに来た」
 青い鎧の騎士の言葉を理解するのに、普通よりも遥かに時間が掛かった。
 もう二度と聞けないと思っていた名前が、唐突に告げられたから。
「ダリオの!? 貴方は、一体……?」
 彼女が問うと、騎士は兜を脱ぎ、答えを口にする。
「俺はゼロ。ダリオに救われ……ダリオを死なせた大馬鹿だ」
 その報せを聞かされて、彼女は言葉を失い、何とかその場に崩れ落ちるより前に椅子に座る。
 覚悟はしていたはずなのに、改めて他人の口から事実として告げられたその言葉は、ダリオの訃報は彼女の心を粉々に砕いてしまう程に強烈だった。
 暫時、小屋の中を静寂が包む。彼女は伝えられた言葉を受け入れなければならないと分かっていながら、上手く飲み込めないまま、ただただ沈黙だけが過ぎて行く。
 やがて、堪りかねたのか、或いはこのままでは彼女は一言も発せないと察したのか、ゼロと名乗った騎士が再び口を開いた。
「俺が我を失って暴走した時に、ダリオと衛有吾……俺の友は、俺を斬り捨てることを選ばず、俺を救うことを選んでくれた……。なのに、俺は、あいつらを……殺して、しまった」
「そんな……」
 告げられた、あまりにも残酷な事実に、彼女は言葉を失った。
 もしもゼロが、虫が鳴くように表情を変えずに声を発していただけだったなら、彼女はゼロを憎み罵声を浴びせることもできただろう。
 だが、ダリオともう1人の友人の死について語ったゼロの表情は、隠し切れないほどの悲しみと後悔に塗れていた。
 感情を不要に表に出すまいと表情を強張らせているのが分かってしまい、殊更痛ましかった。
 それでも、ゼロは決然とした表情で、言葉を紡ぐ。
「あんたが望むなら、俺はここで死んでもいい。だが、その前に……どうか、この剣を受け取って欲しい」
 そう言って、ゼロはダリオの形見というべき剣を、彼女へと差し出す。
 幾度かゼロと剣とを交互に見比べて、彼女は一つの疑問をぶつけた。
「……何故、私にこの剣を?」
 この剣を返すならば、廃墟と化しているとはいえかつてアカシア龍騎士団の本拠地だった蛇骨館か、歴代の四天王の御魂が祀られているテルミナの霊廟こそが相応しいはずだ。
 それを何故、ゼロはわざわざ辺境の小島の、誰も知らないような女の下まで届けに来たのだろうか。
 気が動転して、却ってそんな率直で素朴な疑問が湧いて出て口を突いて出てしまった。

690剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:15:49
「ダリオから、あんたの事は聞いていた。全てを失った自分を救ってくれた、誰よりも大切な女性だと。だから、こいつを預けるならあんたしかいないと、そう思ったんだ」
 帰ってきた答えは、予想はおろか今の今まで、ただの一度も思いもしなかったことだった。
「ダリオが、私を……?」
 彼女には負い目があった。ダリオが記憶喪失のままずっと自分の傍にいて欲しいという、浅ましい欲望。
 そんな欲に目がくらんでダリオに少しの真実も教えようとしなかった自分に、ダリオが好意を向けてくれているなど、考えたことも無かったのだ。
「ああ。全部の記憶を取り戻した上で、あいつがそう言っていた」
 彼女の反応からその内心を僅かながらも察したのか、ゼロは肝心の事を付け加えてくれた。
 或いはダリオが何も知らない、思い出せないからこそではないかという不安も、その言葉で消えた。
「ゼロ、そろそろいいかい? 次の世界への入り口が見つかったみたいだよ」
「了解した、すぐにそちらへ向かう。……俺はもう行く。ダリオの剣を……イルランザーを頼む」
 外からゼロを呼ぶ青年の声が聞こえた。ゼロはその声に応えて、彼女に一礼をしてから小屋を出た。
 彼女は自分でも気付かぬ内に、イルランザーを受け取り、それを両腕でしっかと抱き締めていた。まるで、愛しいひとの体を抱きしめるように。
「ダリオ……」
 本来なら感ずるはずの無い、まるで自分自身も抱かれているような温もりを、彼女はイルランザーを通じて感じていた。





 こうして、聖剣イルランザーは緑豊かな名も無き小島の小さな小屋に住む女性の下へと辿り着いた。
 彼女はその剣をアカシア龍騎士団の宝剣ではなく、ダリオの形見としてとても丁重に扱い、大事にした。
 後に修羅の如き剣士の手の中で風のように舞い、輝ける聖剣と共に星のように輝いた、もう一つのイルランザーを携えた冒険者達が彼女の下を訪れるのだが、それはまた、別の物語である。

691 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:30:05
剣士ロワエピローグ、これにて投下終了です。
その一と銘打ちましたが続く予定はありません。構想程度はありますが。
こんなマイナーキャラ(名無しのモブキャラ)メインのエピローグとか、普通のロワだったら絶対怒られますよね……。

>>653
まとめ乙です! いやぁ、これはありがたい。
想い出ロワとかまだまとめられていないロワを読み返す時に探すのが地味に大変だったので。
目当てのロワじゃないロワをつい読みふけってしまったりで。

692名無しロワイアル:2013/08/26(月) 21:36:46
>>654
遅くなりましたが、感想を

正直いって殆ど把握していない作品ばかりだけど……
凄く面白かった(KONAMI缶)
一点のヒロイズムも存在しない生き残りたちが6人残るってのは、
最初から順を追って書いた小説では考えにくい、3話ロワならではの状況で
その苦悩を描いたのは斬新に感じられました

693名無しロワイアル:2013/09/27(金) 23:28:41
ううむ、過疎ってるなぁ

早くDQロワの完結が読みたいというのにw

694名無しロワイアル:2013/10/28(月) 00:58:48
誰もいない……試しに話を振ってみよう。
剣士ロワの主催者にアサルトバスターが名を連ねていたのは、彼の切り札に由来します。
その名も嵐暴神ストーム・サン。暗黒の世界に君臨する「もう一つの太陽」。
そのサイズは機兵(MSみたいなもの)を内部に搭載するという規格外の巨体。
ここまで来ればお分かり頂けるでしょう。当初のジェネラルジオングポジでした。
しかしカードダスだけで資料もクソもあったもんじゃないので、技や能力をでっちあげるのすら困難を極めたので構想段階で没に。
なのでアサルトバスターさんにはあと3話時点で故人になって頂きました。

695名無しロワイアル:2013/10/28(月) 18:08:10
裏話だなーw

696名無しロワイアル:2013/10/28(月) 20:25:26
裏話……か。

拙作虫ロワの対主催の本拠地突入は、
風の谷のガンシップ@ナウシカで火蜂を撃破っていう没案があったなぁ
突入者も、ユピー、虫愛づる姫の他は、一文字@ライスピ、リグル@東方の予定だった。

テラフォーマーズっていう良作漫画の存在を知ってから、
突入メンバーをティン&ヤマメに変更したんだけどねw

ガンシップじゃなくて王蟲さんで突入する案を採用したのは、
乗員数の問題と、ラストシーンで働いてくれそうって理由があったからかな。

697名無しロワイアル:2013/10/29(火) 00:31:33
>>696
ゆぴぃと姫は確定だったんですね!(歓喜)

698名無しロワイアル:2013/10/29(火) 21:15:33
>>694
うん?アサルトバスターって主人公サイドのMSじゃねえの?
SDだと敵なん?

699名無しロワイアル:2013/10/29(火) 21:37:07
>>697
スマヌ……
彼らもまた確定ではなかったのだ……
原案では、ゆぴい@ハンタはチビィ@ドラクエ7だったし、
虫愛づる姫君は、ナウシカ@風の谷のナウシカ、レコ姫@虫姫さま、ファーブル@史実
で迷ってたのだ……

唯一役柄が確定してたのは、主催兼ジョーカーのしあーん@パワポケ12秘密結社編だけっていうね……

最終話の展開は全くノープランだったしなw

700名無しロワイアル:2013/10/30(水) 01:06:21
>>698
うん。幻魔皇帝アサルトバスターが登場するシリーズが始まる際、SD製作陣にバンダイの偉い人が
「本家ガンダムの人気がSDに食われ気味だから、主人公ガンダムのモチーフに今アニメ放送してるVガンダム使うの禁止な」
という理不尽な業務命令を出した結果、主人公機の最終形態がラスボスになったという。
主人公にするなと言われただけで、モチーフにするなと言われてはいないけど思い切ったことしたもんだよ。
ちなみに実力は歴代ボスでも屈指、そして見た目は目玉が全身についてて非常にグロくてキモイ。

余談ながら、主人公ゼロガンダムのデザインモチーフはシャッコー。ウッソ少年が最初に乗ったMSだね。
ついでにV2モチーフの騎士ガンダムも後に味方側で無事に登場している。

701名無しロワイアル:2013/10/30(水) 21:30:52
>>700
ゼロガンダムってガンダムWのアレじゃないのか・・・w

702名無しロワイアル:2013/11/08(金) 11:31:20
>>701
ウイングゼロモチーフの騎士は翼の騎士ゼロと超鎧闘神ウイングだよ!
ウイングゼロよりもゼロガンダムの方がずっと先だよ!
ググれば画像はすぐに見つかるから、是非一度見て欲しい。そしてレジェンドBBを買おう(ステマ)

703名無しロワイアル:2013/11/14(木) 21:26:22
そろそろこの企画も1周年か……。

704名無しロワイアル:2013/11/14(木) 21:36:48
1周年記念に何か投下しようかな……

705名無しロワイアル:2013/11/15(金) 23:11:27
そういえばこれ年末駆け込み企画からスタートしたんだっけ……
スレなくなるような板じゃないけどまさかこの時期まで人がいるようなスレになるとは
思ってなかったんじゃよ……

706FLASHの人:2013/11/21(木) 21:57:17
せっかく一周年なのでもっとぶっ壊れた企画やろうか
名づけて
「あと3行で最終話ロワ」
とか

3行だけラスト書いて、
【○○ロワ 終了】(これは行に含めず)
みたいなの

707名無しロワイアル:2013/11/21(木) 22:06:49
「Go d b e my mas r……yo  c n ch ng thi wo ld」
レイジングハートは、最後の力で己のマスターに勝利を告げ、もう光ることはなかった。
巴マミは己の命、ソウルジェムとそのひび割れた赤い宝石を握り締めると、強く祈る。これより、世界は再生される。

【魔法少女決戦ロワ 完】

こんな感じ
いや、さすがに3行無茶だわ。
33行くらいが限界か。

708名無しロワイアル:2013/11/22(金) 18:25:10
全ての悲劇を乗り越えて、、誰かの立場に則って、語り口に挙がるのはハッピーエンド。
だから、これもまた「めでたし、めでたし」で終わるおとぎ話。
笑顔で終わる物語。それだけではなかった筈の物語。

【おとぎロワ 完】

三行だと特定作品ぶっこんだり個性出すのは無理ゲーっぽいなー

709名無しロワイアル:2013/11/23(土) 01:08:30
「人はただ、宿命に殉じるのみである!」
「貴様らの語るぬるい情や正義など、この俺が斬り捨ててくれるわ!」
「さぁ見るがいい。闇との血盟によって得た、我が激越なる真力をォ!」

【剣士ロワ主催者達の自己紹介(?) 完】
ロワを語れないならキャラに語らせればいいじゃない(混乱)

710名無しロワイアル:2013/11/23(土) 20:05:36
――クックックッ……。





――――ハッハッハッハッハッハッハッ……。





――――アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!





【木原マサキ  生還】
【スパロボキャラバトルロワイアルR 完】





空白除けば3行
Rはリスタートまたはリピーターの意、全員復活しロワの記憶を持ったままリスタート
でも大方の予想通り、やっぱりまた冥王が一人勝ちしたようで

711名無しロワイアル:2013/11/24(日) 00:19:18
0.5畳の空間で繰り広げられる死闘は、いま正に佳境を迎えていた。少年の想いが届いたカブトムシが、遂にラジコン操作の悍ましきゴキブリキメラを高々と投げ飛ばしたのだ。
今や眼前に残るのは斜向かいに住む幼なじみの少女の駆る、アシダカグモのみ。ふと、二人の視線が交錯し、誰からともなく口にした……「決着をつけよう」と。
頂点に立つのはどちらか?睨み合う最後の2匹。一陣の風が吹き……決戦の火蓋が、切って落とされなかった。二匹は、突如現れた野良猫の口の中に収まっていたのだった。


【虫ロワ:終了】
【生存個体:無し】


やっぱり3行ロワなんて無理だったよ・・・w

712名無しロワイアル:2013/11/26(火) 22:35:13
そうしてそこに溢れ返るのは、強く激しく輝き過ぎた、力や意志や言葉や歌や勇気や魂や『想い出』が、すべて砕けて爆ぜて潰え切り、神の悪夢に呑まれたが故の、ただ深く真っ白な霧だけでしかなかった。
誰からも顧みられず、観測されず、意識すらされないその場所は、もはや世界としての形を保てはせず、微かに残響する泣き声さえも、やがて消えてしまうに違いない。
そう、それはもはや、ただ忘却されるだけの、虚語<ウツロガタリ>。

【それはきっと、いつか『想い出』になるロワ Oblivion End】

おかしい
3行で完結するロワを書いていたはずなのにポエムが出来ていた

713名無しロワイアル:2013/11/27(水) 19:18:00
 
そう、これで、すべておわり。ゆめにみた、もとのせかいがひろがる。
うれしいきもちと、ごめんねがいっしょにきて。まぶたからなみだが、ほほをぬらす。
「さよならを、いわずにきょうをむかえたかったな。ひとりだけしんでしまったのは、くやしいよ…」

【五十音ロワ 完結】

しんだのはだーれだ

714名無しロワイアル:2013/11/27(水) 21:25:27
>>713
あ……!?

715名無しロワイアル:2013/11/28(木) 07:46:19
>>713
空母?級「ヲッ、ヲッ」

716名無しロワイアル:2013/12/10(火) 23:57:12
そういえば、あと3話ロワももう1年かー

717 ◆MobiusZmZg:2013/12/19(木) 23:46:07
|U∞) U◉◉) ……
……なにも文面を考えていなかったコトを小鬼@迷宮キングダムでごまかすのはよそう!
ということで、はい。自分の3話ロワを俺ロワにリファインしたので、花という名のURLを置いていきます。

 ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1387460732/

[参戦作品]
『Splendid Little B.R.(3話で完結ロワ)』
『GOD EATER BURST』『OZ −オズ−』『あかやあかしやあやかしの』
『エヌアイン完全世界』『花帰葬・花帰葬PLUS+DISC』『ラスト レムナント』
『シニカルポップ・ダンジョンシアター 迷宮キングダム』『忍術バトルRPG シノビガミ』
『ダブルクロス The 3rd Edition』『Replay: 真・女神転生TRPG 魔都東京200X』

向こうでも言ってますが、『雨時々僕たちまち君』とかいう莫迦な話を書いた時点で、
「これ企画の概要に沿うことが出来ないわ……」となっていたので、いっそ縛りを外して、
ここ二年ほど構想したりプロット固めたりしてた世界にブチ込んでしまおうと、そういう感じで。
純粋にこのスレにおける容量面での専有っぷりも気にしてたので、あのレスがいい区切りにもなりました。
感想の有無と構成とは関係ないですし、ついてこれるヤツがいない名簿でやった自分が悪いんで大丈夫です。
むしろ、なにか言うにしても文章しか褒めるコトが出来ないような物語の出来損ないを綴ってしまって、すみませんでした。

718名無しロワイアル:2013/12/20(金) 15:09:12
>>717
ムラクモがメインという俺得ホイホイなロワなので復活嬉しいです!
……けど参戦作品はエヌアインとゴッドイーターしか分かりません。悔しいなぁ……。

719 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:09:11
>>717
やった! また読めるッ! しかもオープニングから読めるッ!
楽しみにはしておりますが、御無理はなさらないでくださいな

さて、あと3話で完結ロワ企画も一周年!
記念ってことで、ひっそりとひとつ投下していきます

『それはきっと、いつか『想い出』になるロワ』エピローグです

720夢と『想い出』が交差するその日 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:12:06
 食欲を遠慮なく刺激してくる香りが、湯気と共に立ち上る。
 木造の部屋の真ん中、テーブルいっぱいに料理が並べられていた。
 酒場にも負けないほどの色々なお酒に、アランヤ村近海で獲れる新鮮な魚介類をふんだんに使った料理、更にはアーランドの食堂にでも行かないと食べられないような豪勢な料理、それに、ハニーパイ、ミルクパイ、ベジパイ、ミートパイ、おさかなパイなどなど、様々な種類のパイが所狭しと置かれたその様は、なかなかに壮観だった。
 そして、それだけの料理に負けないほどの人々が、その部屋には集まっていた。
 老若男女を問わず集った人々は皆、談笑に興じ笑い合っている。
 その部屋は、あったかさで溢れる空間だった。
 そんな、寂しさからも悲しさからも切なさからも虚しさからも切り離されたような部屋の隅っこで、トトリは、ティーカップを片手にぼんやりと佇んでいた。
 ぐるりと、人々の様子を眺めてみる。
 夢中で料理を食べ、幸せそうに笑う男の子がいる。
 自分より少し年上くらいに見える女の子が、とろけそうな顔でパイを頬張っている。
 楽しそうにお喋りをしながらも、空いた皿をてきぱきと片付けていく女性が見える。
 豪快にお酒を煽る中年女性の隣で、同じくらいの年の男性が苦笑いをしている。
 他にも、他にも、他にも、他にも、色んな人たちがいる。
 そのすべてが、なんとなく知っているような、けれどよく見ると見覚えのない、曖昧な人たちばかりだった。
 ティーカップに注がれた黒の紅茶を一口飲む。舌が溶けそうなほどの甘さに顔を顰めて、トトリは小さく息を吐いた。
「ねえ、ベアちゃん」
 呼びかける。
 すると音もなく、トトリの隣に黒衣の少女が現れた。
「この紅茶、甘すぎるよ」
「そんなことない。美味しいわ」
 小さな両手で持ったティーカップに口をつけると、ベアトリーチェは満足そうに笑ってみせた。
「ベアちゃんは子どもなんだから」
「わたし、トトリよりずっと、ずーっと、ずーーーーーーっっと長く生きてるもん」
 頬を膨らませて反論してくるベアトリーチェを、あやすようにしてぽんぽんと撫でてやる。
「こ、子ども扱いしないでくれる?」
 トトリと目を合わせずにそう言いながらも、拒絶せずに甘ったるい紅茶を啜るベアトリーチェに感じるのは、微笑ましさだった。
 ベアトリーチェの頭を撫でながら、トトリはもう一度部屋を眺める。
 不確かな人々が作り出す、仮初めいた喧騒こそが、ここが夢の世界であると物語っていた。
 だから。
 ふと、遠くから聞こえてきたノックの音に気付いたのはトトリと。
 夢現渡り鳥<アローン・ザ・ワールド>によって現着されているベアトリーチェしかいなかった。
 ここではない遠くから響くそのノックは、不確かに揺らぐこの部屋の騒々しさに比べれば小さなものだ。
 けれどそれは、確かに鳴り響く音だった。
「起きなきゃ。アトリエに誰か来たみたい」
 トトリは部屋の外に目をやって、ベアトリーチェの髪から手を離し、大きく伸びをする。
 瞬間、賑やかしさはゆっくりと遠ざかり、美味しそうな匂いが薄れていき、部屋が色を失い始める。
 ベアトリーチェが慌てて紅茶を飲み干した直後に、トトリの手にあった陶器の感触が、風に吹きさらされた砂のように消え失せた。
 渡り鳥の羽撃きが響く。
 夢から現へと渡る鳥の鳴き声が、夢を溶かし目覚めを促してくる。
 そうして消えゆく夢を。
 賑やかで、いい匂いで、あったかくてあったかくてあったかくて、堪らない夢のカタチを。
 トトリは、噛み締めるように見つめていた。

721夢と『想い出』が交差するその日 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:12:45
 ◆◆
 
 アトリエにやってきたのは、冴えないよれよれの衣服を纏った中年の男だった。
 無精髭の生えたその顔立ちは地味なものであり、特筆した特徴はない。
 だがそれだけに、男の瞳は印象強い。
 黒い瞳が、力強い輝きを湛えているのだ。
 生き生きとした輝きからは揺るぎない自信と誇りが見て取れて、それでいて、希望と挑戦を忘れない少年のようだった。
 このような瞳ができるということはきっと、心から打ち込めるものがあるということなのだろう。 
 素敵だなと、トトリは思う。同時に、羨ましいとも思う。
「凄腕の錬金術師だって有名なお前さんに、頼みたいことがあって来たんだ」
「は、はい。なんでしょう……?」
 強い熱が籠る男の声を前に、トトリは緊張を覚える。
 目立たない風貌をしながらも、これほどの情熱を持つ男の依頼が何なのか、想像がつかなかった。
「こいつらを、作って欲しい」
 不敵な笑みを浮かべ、男は一冊の分厚い本を差し出してきた。
 受け取り、表紙に記述されたタイトルを読み上げる。
「帆船解体新書……?」
「ああ、そうだ。ワクワクするだろ?」
「え? えっと、特には……」
「そ、そうか? まあ、まだ題名を見ただけだもんな。ぱらぱらっと見てみろって!」
「はあ……」
 勢いに押されるようにして表紙をめくると、見開きいっぱいに描かれていたイラストが飛び込んでくる。
 それは、波を掻き分け飛沫を上げ、大きな帆いっぱいに海風を受けて大海原を進んでゆく船だった。
 雄大で力強く、堂々としていて美しい。 
 次のページへは、進めなかった。
 ただただトトリは目を見張り、船の駆動音さえ聞こえてきそうなイラストに釘づけになっていた。
 知っている。
 トトリは、この船を、知っている。

 これは。
 この船は。
 顔も名前も憶えていない父が残してくれた船と、瓜二つなのであった。 

「ほら、どうだ! すげーだろ!」
 宝物を見せびらかす子供のように得意げな男の声に、トトリは顔を上げる。
「……船を、造るんですか?」
「ああ、そうだ。といっても、組み立ては俺がやる。お前さんに頼みたいのは船の材料作りだ」
 言って、男はトトリの手にある本のページをめくっていく。
 超重碇、動力操縦桿、百木船体、疾風の帆、防食甲板、神秘の船首像。
 それらの錬金レシピが、詳細なイラスト付きで書き記されていた。
 初めて見るレシピだった。錬金素材にも、知らないものもいくつかある。
 作ったことが、あるはずがない。
 それでも、それなのに、どうしてか。
 深くて深くて深くて、目の届かない心の水底で、正体のわからない何かが、ざわついた気がした。
 何一つ得体のしれないまま浮かび上がってくるそのざわつきは、漂流物を運ぶさざ波のように、トトリの心に何かを届けてくる。
 それが何かは分からない。
 分からないが、それは、楽しい夢を見た覚えはあるのに、内容が思い出せないときのような感覚に似ていた。
 だからきっと。
 この何かは、逃してしまったら、夢の彼方で弾けてしまい、二度と掴めなくなるもののように感じられた。
 逃したくないと、そう思った。 

「採取できる素材は冒険者に依頼して集めてもらうつもりだ。そんで、報酬なんだが――」
「お引き受けします」
 男の言葉を遮って、トトリは、食らい付くようにして返答していた。
 面食らったような男の前に、冒険者免許を見せつける。
「素材集めもわたしにやらせてください。最高品質の材料をご提供します」
 断言すると、男は口の端を吊り上げ、愉快そうにひとしきり笑ってから。
 真っ直ぐに右手を差し出してきたのだった。
 
「自己紹介がまだだったな。俺はグイード。船大工をやってる。宜しく頼むぜ」

722夢と『想い出』が交差するその日 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:13:58
 ◆◆
 
 ぱたん、と音を立てて扉が閉じる。
 諸々の打合せを終えて帰ったグイードの姿を、トトリは首を傾げて腕を組み、思い起こしていた。
「あの人、さっきの夢の中で、見たような……見てない、ような……やっぱり見たような……」
 あのあったかい夢を作っていた人たちの中に、グイードの姿もあったような気がする。
 だからだろうか。
 初めて会った人だというのに、もっと前から知っていたように思えて仕方がなかった。
「グイードさん、グイードさん……」
 落とし物を探して道を歩くように、トトリはその名前を呟く。
 そうやって名を呼ぶことに、奇妙な違和感があった。
 もっと別の呼び方があるはずだと、根拠もなく感じる。
 もっとずっと、親しみのある呼び方があるに違いないと、なんとなくながら思ってしまう。
 その呼び方を知りたかった。
 その呼び方を知らないということが、何故かとても、とても寂しかった。
 だからトトリは、ふわふわとして定まらない感覚に触れる。
 そうして撫でて、捏ねて、混ぜて、探る。
 けれどカタチを作れない。言葉を生み出せない。
 それどころか、考えれば考えるほど遠ざかってしまう。
 親しみのある呼び方など、最初から存在してなどいないというように。
 親しいものなどいるはずがないだろうと、改めて思い出させるように。
 手の届かないところへ、行ってしまう。

 胸の奥が――空白に詰め込まれた世界が、苦しみを訴えた。
 視界が揺らめき、足元がふらつく。
 呼吸が上手くできなくなり、頭の中を掻き回されるような不快感が襲ってくる。
 急速に、現実と夢の境界線が薄れていく。
 わからなくなる。
 現実なのか夢なのか、わからなくなる。
 トトリの意識<現実>と集合的無意識<夢>の境目が、わからなくなっていく。
 目が霞む。
 知らない光景が意識に溢れる。膨大な情報量がトトリを呑み込むべく流れ込む。
 その、瞬間。
 胸のあたりに、熱を感じた。腰に回される、力を感じた。
 それは、確かな温もりだった。
「トトリッ!」
 それは、紛れもない呼び声だった。
 それらによって、トトリは引っ張り上げられて浮上する。
 足裏は床に触れている。
 様々な薬品の臭いが鼻をつく。 
 視線を、ゆっくりと温もりへと向ける。
 ベアトリーチェの頭が、目に入った。
 トトリを強く抱き締めてくれているベアトリーチェが、目に入った。
「ベアちゃん……」
 呼ぶと、ベアトリーチェが弾かれたように顔を上げた。
「トトリ! トトリッ! 大丈夫!?」
 ベアトリーチェは、不安と心配を調合したかのような表情をしていた。
 だからトトリは、笑ってみせる。
 大丈夫だよと、ありがとうと、そう告げるために笑顔を見せる。

 そうやって表情を変えて、初めて気付く。
 涙が溢れ、頬を伝っていることに、だ。
 けれどトトリは、それを拭おうとはしなかった。
 そうして泣いたまま、トトリはベアトリーチェをぎゅっと抱き締め返す。
 今は、ここにある小さな温もりを感じていたかった。
 引っかかったままの違和感も、思い出せない寂しさも、消えてなんていないけど。
 だからこそ、今は。
 今だけは。
 確かなあったかさを、確かなこの場所で、感じていたかったのだった。

723 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:14:31
以上、投下終了です
それでは、よいお年を

724 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/12/30(月) 21:51:59
想い出ロワのエピ投下来たぁぁ!! 乙です!
トトリとベアトの微笑ましいやり取りと、原作知らなくとも伝わって来るグイードとの悲しいすれ違い、
どちらも素晴らしいです。原作をやる時間を捻出しなくちゃ……!


やろうかどうか悩んでましたが、あと3話詐欺(褒め言葉)の復活、今回のエピ投下など、自分もいても立ってもいられなくなりました。
というわけで、新しい後3話のテンプレを投下いたします。
ちなみにこれは数カ月前に
曹操「剣士ロワには足りぬものがあった。それは女っ気! あと余の活躍」
という天啓を授かってから妄想していたものです。剣士ロワと違って悩みまくり。

【ロワ名】いのちロワ(仮) タイトル絶賛募集中
【生存者6名】
1.アマテラス@大神
2.劉備ガンダム@SDガンダム三国伝:左腕損失、失血多量
3.リチュア・アバンス@遊戯王OCGデュエルターミナル:ラストマーダー
4.暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG:フラッシュバックによる無力化の可能性
5.クローネ@ファントム・ブレイブ
6.Ⅳ@遊戯王ZEXAL :生死不明。何処かで野垂れ死んでいる可能性。
【主催者】
1.ミヒャエル・ハードバーグ@漫画版エレメントハンター
2.バグラモン@漫画版デジモンクロスウォーズ
3.ゾーン@遊戯王5D’s:死亡
4.フェイト(ダークセルジュ)@クロノクロス
5.無限法師@武者○伝シリーズ
【主催者の目的】
・膿み腐る心、人間に醜さを強いる人間の生物としての限界を超越する為、人間に新たなる進化を促す、
或いは新たなる生物へと新生させること。バトルロワイアルはその実験の為のプログラムとされる。
・現在、居ても立ってもいられなくなったフェイトが絶賛暴走中。
【補足】
・ロワ中に数名が別次元(11次元宇宙とされる)へと旅立って消息不明になっています。ゲッターの導きではないのであしからず。
・融合や進化に関するアイテムが大量に登場し、それらによって多くのパワーアップ・暴走イベントが発生。ラストマーダーもそんな感じ。
・曹操将軍の活躍? あと3話より前にちゃんとありましたよ。

ミヒャエルと無限法師を知っている人は僕と握手!

725 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:28:28
いのちロワの投下を始めます。

726第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:30:41
 進むべき未来の消え失せた――生物はおろか時すらも死んでしまった海、死海。
 その中心部に聳え立つ滅びの塔の頂上、バトルロワイアル・プログラムを画策した主催者の本陣に、2人の男が静かに佇んでいた。
 皇帝バグラモンとミヒャエル・ハードバーグ。世界の未来と人の種としての限界を憂い、深く世界を愛すればこそ非情の決断を為し、今回のプログラムを画策した中心人物。
 もう1人の同志、行き過ぎた進化の果てに滅びた未来に生き残った最後の一人【Z-ONE】、ゾーンは彼らとは違った。
 彼は、バトルロワイアルを見守る中で心の奥底で信じ続けていた希望を確信し、突如として反旗を翻し、バグラモンとミヒャエルを討たんとした。
 だが、パートナーを得たバグラモンと自らが率先して人類進化の魁とならんと既に人間を捨てていたミヒャエルを相手に、寿命の迫った体では力及ばずに斃れた。
 それでもゾーンは死の直前に最後の手を打ち、死海の門を開き、バトルロワイアルを生き残った参加者達を導くためのプログラムを起動させた。
 ゾーンの最後の行動を阻止することは不可能ではなかった。だが、敢えてバグラモンとミヒャエルはそうしなかった。
 誰よりも長い年月を絶望との戦いに費やした名も無き英雄に対する敬意の表れであると同時に、彼らの最後の迷いを断ち切る答えを得る為に。
 その答えを持つ者が、もうじき現れる。

727第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:33:39



 滅びの塔の入り口付近で、参加者同士での最後となる戦いが始まっていた。
 劉備によって率いられた一行の前に立ちはだかるのは、最早人としてのかつての面影を何一つとして残していない、異形の怪物と成り果てたもの。
 それは、リチュア・アバンスという名の青年だったもの。
 最愛の女性を失った悲しみから心の闇を暴走させ、獣へと堕した今の名はイビリチュア・リヴァイアニマと、本来ならそう呼ばれるべきだった。
 だが今の彼は、最早そうとすらも呼べない存在になっていた。
 様々なモノが融け合い、ぶくぶくと肥大化したどす黒い体に、イビリチュア・リヴァイアニマの顔が生え、反対側には魔剣シヴァと一体化した尾が生えていた。
 ヘドロが凝固したような醜悪な肉体を、背に当たると思しき部分から生やした9対の翼を羽ばたかせることすら無く浮遊する様は、生物と形容することさえも憚らせた。
 力を得て、勝利を奪い取る為に、アバンスは超融合のカードとダークネスローダーの力を使って、ありとあらゆるものを自分自身に取り込み続けた。
 リチュアの儀水鏡と写魂鏡に始まり、魔剣シヴァ、ジェムナイトたちのコア、ナンバーズのカード、モーメント、暗黒玉璽、龍の涙、シンフォギア『ガングニール』と『神獣鏡』、全ての武化舞可の鎧、
 シャウトモンを始めとする多くのデジモン達、ポジ元素、妖魔王キュウビの仮面、そしてヴェルズ・ケルキオンを殺して奪い取った氷結界の三龍のコア……枚挙に切りが無いほど、膨大に、貪欲に。
 ありとあらゆる物を奪い取り、自らの力とした。ある時は騙し、ある時は不意を討ち、ある時は正面から、ある時は戦いの後に漁夫の利を狙って。
 無様にもなった。汚くもなった。嘗ての仲間から痛罵を浴びせられたこともあった。だが、それでも立ち止まることはしなかった。
 たった一つの願いを、叶える為に。
 何もかもを擲ってでも、何もかもを奪い取ってでも抱き続けた、決して忘れることの無かった、切なる願い。
 ――死んでも、君を救いたい――
「エ、ミリ、ア……」
 最早人のものとは掛け離れた体構造と成り果てた肉体で、アバンスだった怪物は人の言葉を絞り出した。
 それを聞いて、アバンスを知る数少ない1人であるマローネが悲痛な叫び声を上げた。
「もうやめて下さい、アバンスさん! エミリアは、貴方がこんなことをすることを望んでなんかいません!」
 マローネはリチュア・エミリアとバトルロワイアルの初期に出会い、力を合わせて生きて帰ろうと約束した。
 マローネにとってエミリアは、生まれて初めてできた大切な友達だった。幼馴染であり恋人でもあるアバンスとの再会が叶った時は、マローネも心から喜んだ。
 だが、エミリアが妖魔王キュウビの凶刃に斃れ、続いて現れたタクティモンに手も足も出ず逃げることしかできなかった。
 それらの出来事が、アバンスを狂わせてしまった。

728名無しロワイアル:2014/01/16(木) 00:37:42
「ア、バ……? だれ…………??」
 しかし、エミリアの親友の言葉も、今や届かない。
 最早アバンスは、自分の名前はおろか、自分が元々は人間だったことすらも忘れてしまっていた。
 アバンスだった怪物の発した声に、マローネと切歌は悲しみのあまり声を失う。
 その瞬間に生じた隙に振り下ろされた魔剣シヴァを、大神アマテラスの沖津鏡が盾となって防ぎ、劉備が隻腕のまま斬って掛かる。
「忘れるな! 思い出せ! お前はリチュア・アバンス! 俺達の、友だああああああ!!」
 タクティモンに襲われたマローネとアバンスを、絶体絶命の窮地から救ったのが劉備だった。
 劉備はアバンスの心の傷の深さを見抜けず、彼が心の闇に呑み込まれてしまうのを引き止められなかったことを、ずっと悔いていた。
 しかし、劉備とアバンスが共にいた時間も交わした言葉は決して多くない、むしろ少ないくらいだ。
 それでも劉備がアバンスを友と呼ぶのは、彼が元々懐いていた志を聞いていればこそ。
 戦乱で荒れ果てた世界に、2人の母から授かった知識を教え広めて復興の礎となり、人々が笑顔で暮らせる明日を作ること。
 その志は劉備と同じものであり、確かにあの時2人は同じ志を共有する友となれた。そのはずだったのだ。
「ジゃ、ぁ、マぁアアアア!!」
 アバンスだった怪物には、もう劉備の声も届かない。それどころか、事態は急速に悪化する。
 怪物の体から突如として3つの首が現れ、劉備に襲いかかったのだ。
 劉備は咄嗟にかわそうとするも、隻腕となり重心が変化してしまった体では、以前のような身のこなしは出来ず。
「ぐわああああああ!!」
 回避を損ない無防備を晒した劉備の体に、三ツ首の龍の牙が突き立てられる。それに続いて更に2頭の龍の首が生えた。
「劉備さん!」
「劉備!」
 マローネと切歌が悲痛な叫びを上げると、まるでそれを見計らったかのように、更なる龍の牙が劉備に襲いかかった。
 現れた龍の名はトリシューラ、グングニール、ブリューナク。
 ケルキオンによって闇とヴェルズの呪縛から解き放たれたはずの氷結界の三龍。彼らは今、再び闇へと堕ちてしまっていた。
 ヴェルズ化との違いがあるとすれば、それぞれの龍の顔に今はキュウビの仮面が憑いていることだ。
 これこそは、妖魔王キュウビの呪い。
 暴走したアバンスによって逆襲されたキュウビは、自らも取り込まれることを悟るや、その妖力の全てを自らの仮面に封じ込め、アバンスに呪いを掛けた。
 より深く、より暗く、闇の深淵へと堕ち、地獄の底でのた打ち回るように。
 かくしてキュウビの呪いは今この時に実を結び、アバンスが無作為に取りこみ続けた闇の力をも取り込み、増幅していく。
 この上龍帝の魂をも喰らい闇に染めてしまえば、その時は妖魔王の復活もあり得るだろう。

729第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:47:53
 だが、天を翔ける龍は、この程度では落ちない。
「アマテラス! 切歌! マローネ! 今だああああああ!!」
 5頭の龍に貪られながら、劉備は龍帝の力を発揮し、自分諸共にアバンスの魂を蝕もうとする邪悪なる闇の力に拮抗する。
 命など惜しくは無い。友を救う為ならば、命を擲つ覚悟など疾うに済ませている。
 闇に染まったアバンスと氷龍たちは強烈な光の力に苦悶の呻き声を流すが、同時に龍達の目から一筋の涙が伝った。
 劉備には、三龍達の声にならぬ慟哭が、言葉にならぬ嘆きが、ひしひしと伝わって来た。
 あり余る力を利用され、その力故に利用され続け。心も体も侵され、蹂躙され、凌辱され、氷龍たちは泣いていた。邪悪からの解放を願って、ただただ祈り続けていた。
 はっきりと分かる、この龍達もまた、同じ世界に生きる命。劉備が手を差し伸べるべき民なのだと。
 ならばこそ、尚更この命を懸ける意味があるというもの!
 劉備の心に応えるように、アマテラスが草薙の剣と一閃の筆しらべを翻してグングニールとブリューナクの首を落とす。
 残るトリシューラの三ツ首は1つを残して狙いを劉備からアマテラスに変えたが、そこへ切歌の一撃が割って入る。
「堕悪馬吸夢、発射デェース!」
 厳密に言うとそれは発射するものではなく吸収するものだが、そんなことは些細なことだ。
 堕悪馬吸夢(ダークバキューム)は対象の肉体すらもエネルギーに変換して吸収する装置。
 これを利用してアバンスが吸収した様々なものをエネルギーとして可能な限り吸い取り、弱体化させる。これこそが後に続く秘策の為の大前提であった。
 エネルギーを吸い取られ、怪物の膨れ上がった醜悪な姿が次第に小さくなっていく。
 だが、怪物が吸収していたエネルギーの総量は桁外れで、全てを吸収し尽くす前に堕悪馬吸夢の容量の限界に達してしまった。しかし、これで十分。
 怪物が力を奪われ戸惑っている隙に、切歌は続けて一枚のカードを取り出す。
「更に速効魔法『融合解除』、発動デス!」
 これこそが、アバンスを救う為の秘策の第一手。
 アバンスが行った吸収はダークネスローダーを媒介として制御された超融合の力によるもの。
 故に、この融合解除によって取りこんだものを強制分離できるのではないか――蒼沼キリハと遊城十代が遺してくれた希望は、彼らの思い描いた通りの結果を導き出した。
 怪物が取り込んだ諸々が混然一体となったカオスは四散し、本体のイビリチュア・リヴァイアニマの姿が露わになった。
 リヴァイアニマは血走った眼で力を奪った張本人である切歌を睨み、魔剣シヴァを手に彼女に襲いかかる。
 刹那、割って入ったアマテラスの沖津鏡の盾がそれを遮り、続けざまに放たれた神業・イズナ落としによって死海の波間に叩きつけられる。
 この間に、最後の一手をマローネが執り行う。
「彷徨える魂よ、導きに従い現れ出でよ! 奇跡の能力、シャルトルーズ!」
 物質を媒介として、霊魂に仮初の肉体を与える、正しく奇跡の能力。その担い手たるマローネがいるからこそ、この策は成り立った。
 アバンスの救済の願いと共に託されたケルキオンの杖を強く握りしめ、マローネはリチュアの写魂鏡に期せずして閉じ込められてしまった魂――リチュア・エミリアのスピリット体に働きかける。
 今やエミリアのスピリット体は他者に姿を見せられないほどに衰弱している。しかし、マローネのシャルトルーズならば今一度、彼女に仮初の体を与えることができる。
 エミリアとアバンスを、もう1度会わせることができる。

730第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:50:48
 ここで更に大神アマテラスの尾先が翻り、イビリチュア・リヴァイアニマを包む大きな○を描いた。
 2対の鳳凰が認めアマテラスも共感した真の理想を掲げたワカ武者の、その御旗に記された紋様と同じ。日輪と同じ形を描く、命の力を司る桜花の筆しらべ。
 桜花の筆しらべの隠された効果も作用し、力を失っていたリヴァイアニマはそれを拒絶することも無く受け入れて、リチュア・アバンスの姿へと戻った。
 アバンスは突如として儀式の効力が覆されたこと、失われていた理性が急に取り戻されたこと、吸収していた莫大な力が一挙に抜け出た反動で昏倒したが、すぐに意識を取り戻した。
 すぐ傍に、懐かしい魔力を、温かさを感じたから。
「エミリア……?!」
「アバンス」
 互いに名を呼び合い、一方は驚愕に目を瞠り、一方は穏やかな笑みを浮かべた。
 お互いに、もう2度と会えないと、言葉を交わすことは出来ないと諦めていた最愛の人に、名を呼ばれた、名を呼べた。
 これだけでも2人は、2人を見守る者達は感無量だった。
「俺は……」
 しかし、アバンスはそんな感慨には耽ることは出来なかった。
 朦朧とした意識が、却って偽らざる本心を、素直に吐き出させる。
「君を、守りたかった、救いたかった。その為なら、俺の命なんか……いらないのに…………」
 滂沱の涙を流しながら、アバンスは後悔に塗れた言霊を吐いた。その相貌に浮かぶのは、悲哀と自責。
 愛する人を救えなかったことに対する後悔だけが、アバンスをここまで突き動かしていた。
 同時に、理性を取り戻したことで自分を襲った悲劇に耐えられず、その怒りと悲しみを殺戮という最悪の形で無関係の大勢にぶつけてしまったことへの自責の念が、どうしようもなくなってしまった今になって胸を貫く。
 アバンスの口は更に言葉を紡ごうとするが、それ以上は声が出せず、涙を流しながら、餌を求めるひな鳥のようにぱくぱくと口を動かすしかできなかった。
 そんなアバンスの姿を見て、エミリアは柔らかに微笑んだ。
「なら、私からのお願い。私の分も生きて、アバンス」
 あの時に伝えられなかった、大切な人への切なる願い。それを伝えることだけが、エミリアに残された心残りだった。
 同時に、エミリアの姿が薄らぎ、消え始めた。
 シャルトルーズには元々時間制限があるのだが、こんなに早くない。エミリア自身の魂が限界を迎えつつあるのだ。
「エミリア!!」
 アバンスは無我夢中で、消え行くエミリアを抱き締めた。
 力強くも優しく、しっかりと、二度とこの温もりを忘れない為に。彼女が最期に、温もりを感じていられるように。
 エミリアは涙を流しながらも笑顔のままでアバンスを抱きしめ、愛しい人の腕の中で消えて行った。
 誰もいなくなった腕を解いて、アバンスは涙を拭い、泣くのをやめた。最愛の人から託された願いのためにも、泣いている暇などもう無いのだ。

731第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:54:11
「アバンス、エミリア……よかった」
 アバンスが立ち直り、エミリアが笑顔で逝けたことを見届けた劉備は、その場に崩れ落ちた。
 龍の牙に貫かれた部分だけでなく、応急処置で止血していた腕の断面からも夥しい量の血が溢れ出て来た。
「劉備!」
「劉備さん、しっかりして下さい!」
 切歌とマローネが駆け寄るが、劉備は荒い呼吸を繰り返すだけで応えることもできない。
 どれだけ傷つこうとも、如何なる困難や強敵に直面しようとも。
 先陣に立って戦い続け、仲間達を導いて来た侠の今にも息絶えてしまいそうな姿は、今まで一瞬たりとも想像していなかった。出来るはずもなかった。
 マローネと切歌は、すぐさま支給品から回復用のエレメントを取り出し、発動させる。
 瀕死の状態から復活させるリカバー、仲間全員の傷を癒すケアルガやヒールウィンドなど、ありったけを使った。
 しかし、劉備は一向に目を覚まさず、傷口からはとめどなく血が溢れて来る。
「どうしよう……血が、血が止まらないデス……ッ」
 それが意味するのは、治癒の魔法やエレメントが通じないほどの状態であり。
 劉備の命は死の運命を覆せない瀬戸際にあることを意味していた。
「俺は……俺は、なんてことを……!」
 全体回復のエレメントの効果の恩恵で傷が癒えたアバンスは、そのことで却って心に傷を負った。
 自分を救おうと、誰よりも必死になってくれた、己の命さえも顧みずに戦ってくれた友の命を、自分が奪ってしまった。
 エミリアの時と同じかそれ以上の自責の念がアバンスを襲うが、もう自暴自棄になることは無い。
 寧ろ努めて冷静に、劉備を救う為の術を見つける為に考えを巡らせていた。
 そこで、ふとある物が目に入った。
 まるで劉備に寄り添うように転がっている4つの珠――氷結界の三龍のコアと秘宝・龍の涙が。
 加えて、自分の腰にはキュウビから奪い返した、ジェムナイトの融合の力の結晶であるマスター・ダイヤの剣が進化した戦友セイクリッド・ソンブレスの短剣がある。
 そして、手にはエミリアが遺したリチュアの写魂鏡、傍らにはケルキオンの二つの杖の内リチュアの儀水鏡が変化した杖もある。
 これらの力を、全て合わせることができれば。
 アバンスが一縷の望みを見出した、その時。
 頭上から、更なる絶望を告げる声が響いた。

732名無しロワイアル:2014/01/16(木) 00:57:47
「深く、黒く、愛に血を流す……素晴らしい戦いだったよ。だが、残念だな。あんなにも美しい憎しみが、完全に掻き消えてしまったとは」
 滅びの塔への門、巨大な黄金と白銀の梟の像の間にある柱の上に、声の主は立っていた。
 身の丈ほどの大鎌を軽々と振り回す、少年の面差しを残した魔人フェイト。その傍らには、蒼い鎧装束に身を包んだ錬金術師・無限法師の姿もあった。
「お前は……フェイト!」
「それに、無限法師か」
 切歌とアバンスはそれぞれに怒りを籠らせた声で、忌々しい2人の主催者の名を呼ぶ。
 特にこの2人の声は放送の度に幾度となく聞かされていたのだから、殊更に討つべき敵として記憶に刻まれている。
 マローネは一言も発さなかったが、このバトルロワイアルで最初に手を差し伸べてくれたヤマネコの亜人――セルジュの本当の体を、そして一番大切な女性を奪ったというフェイトに対して、静かに怒りを燃やしていた。
 アマテラスは早くも臨戦態勢となって2人の魔人を威嚇しているが、フェイトは自分に向けられる怒りや敵意を全て受け止めた上で、全員を睥睨しているようにも、誰も目に入れず虚空を見ているようにも思えた。
「この世で唯一純粋なものは憎しみだけだ。だからこそ、心が憎しみに染まりきった姿は、憎しみが広まっていくその様は、とても美しかった」
 唐突に始まった、フェイトの狂った価値観と美意識の吐露に、無限法師以外の全員が困惑する。
 そんなことはお構いなしに、フェイトは焦点を眼下のアバンスに合わせて、続く言葉を紡ぎ出す。
「リチュア・アバンス。お前がその憎しみでガンダムを……劉備をも取り込むことを期待していた。とても残念だよ」
「超融合のカードとダークネスローダーは返してもらおうか」
 恍惚とした表情で語り続けるフェイトを尻目に、無限法師は淡々と事を進め、目的の物を回収する。
 十代とキリハから必ず取り戻すように言われていた2つの重要アイテムを先んじて回収されてしまったのだが、そこまでは頭が回らず、マローネは感情を吐き出した。
「あなたたちは……一体、何者です!? どうして、こんな酷いことをするんですか!」
 怒りと悲しみ、そして純粋な疑念が織り混ざった問い掛け。
 これにアマテラスも切歌もアバンスも、無言の視線で以って同様の問いをフェイトと無限法師に投げ掛ける。
 事実、このバトルロワイアルを主催した5人を知る参加者は、彼らが放ったジョーカーを除いて、彼らの思惑や真意を全くと言っていいほど知らなかった。
 何故、どうして、なんのために、なにがあって、こんな殺し合いに自分達を、様々な世界や時代から100人もの参加者を集めて殺し合わせたのか。
 バトルロワイアルに関する最大の謎の答えが得られるかもしれない。
 そんな予想から来る緊張感は、フェイトからの返答によって一瞬で吹き飛んだ。
「私は、お前達を……人間を愛している。狂おしいほどに、狂わずにはいられないほどに。だから、私は……お前達と、一つになりたい。その為に、このプログラムが必要だったのだ」
 身の毛もよだつ思いというものを、3人は初めて実感した。
 フェイトの声色は優しく、言葉にも慈愛が込められていることがよく分かった。
 だが、爛々と輝く瞳と恍惚とした面貌には、狂気の二字以外に見出せない。
 切歌が勇気を振り絞って何故そこで愛なのかと言い返そうとしても、口を動かせなかった。

733名無しロワイアル:2014/01/16(木) 01:02:04
 いや、それだけではない。瞼も、眼球も、指の一本さえも、動かせない。
(なん、だ……。体が、動か、ない……!?)
(い、息も、できな、い……っ)
(ど、どうなってる、デスかっ……!)
 自らの体を襲った異変に、3人のみならずアマテラスさえも吐息を一つ絞り出すことさえできなかった。
 不意に、アマテラス達の視界に巨大な翼が現れた。機械仕掛けの梟の翼が。
 フェイトと無限法師の両脇に控えていた、黄金と白銀の魔神像が動き出したのだ。
 それこそは、カムイの國を永久の氷壁に包みこまんとした双子の魔神。
 錬金術師たちの狂気が生み出した、禁忌の力の結晶。
「ホーッホッホッホッホウ。如何かな? 我ら時操衆の最高傑作、双魔神モシレチク・コタネチクの時操術は」
 無限法師は声高らかに、静止した時間の中で自らの力を誇る。
 時操衆から別れた、積極的に時操術を操り全てを支配せんと企んだ一派、時攻流の最後の生き残りとして、この喜悦に浸らずにはいられないとばかりに。
 正真正銘の神すらも縛る自らの力に、無限法師は酔いしれていた。
「無限法師」
 無粋な横槍によって愛の語らいに水を差されたフェイトが、ギロリと無限法師を睨みつける。
 フェイトもまた時空間を超越する力の持ち主故に、平然と双魔神の時操術を撥ね退けていたのだ。
「案ずるな、お前の夢は錬金術師の私としても非常に興味深い。素材は残すさ」
 それだけ言って、無限法師は自らの屍鬼力とした双魔神を標的へと差し向ける。
 白銀魔神コタネチクは翼を羽ばたかせて劉備の下へと向かい。
 黄金魔神モシレチクは死海の波間を独特の歩き方で進み、アマテラスへと迫る。
 切歌が、マローネが、アバンスが、声に出せないまま絶叫を上げる。
 しかし双魔神の凶刃は、無慈悲に劉備とアマテラスへと振り下ろされた――。



「バグラモン。どうやら、彼が間に合ったようだ」
「そうか。さて……希望は絶望に相克しうるのか、見届けようか」



734第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:07:40

「この世は単純な一面だけじゃない、複雑な側面を併せ持つ多面体だ。時にその面(ボックス)の構成は、遠近感や距離感を狂わせる仕掛け(ギミック)となる」
 唐突に、静止した世界に青年の声が割って入った。
 その世界を作り出している双魔神達はと言えば、確かに仕留めた――否、そこにいたはずの標的へと放った攻撃が、見当違いの場所に突き刺さっていることに首を傾げていた。
 すると、どこからか、不気味な笑い声が響きだした。
 その笑い声の出所は、双魔神を欺いた機械仕掛けの多面体。
「永続罠、ギミック・ボックス」
 同時に双魔神へと襲いかかる、赤と白の獣の影。
 これによって双魔神の魔術は解かれ、時は再び正常に刻まれる。
「……ふえ?」
 双魔神の魔術から解き放たれてすぐ、切歌は意気を整えるより先に素っ頓狂な声を出してしまった。
 今、目の前で起こったことへの理解が追いつかない。
 劉備とアマテラスを助けたカードに見覚えがあるし、なによりそれを操る声の主にも聞き覚えがあった。
 だが、彼は死海へと突入する際に、死の門の番人アポリアと相討ちになってしまった、そのはずなのだ。
 しかし、彼以外の誰がいよう。これらのカードを巧みに操る決闘者が、ファンの窮地に颯爽と現れるスターが。
「なんだよ、切歌。忘れちまったのか? お前の歌の、一番のファンの顔を!」
 何時の間にやら登っていた滅びの塔周辺に点在する柱の中でも最も高い所から、高らかな宣言と共に1人の決闘者が降り立った。
「Ⅳさん……ホントに、Ⅳさんデスか!?」
 喜びよりも驚きの方が先に立った切歌からの呼び掛けに、Ⅳは笑みだけ浮かべて軽く答える。今は、再会を喜んでいる余裕は無い。
「話は後だ。俺のファン達に随分なことをしてくれたみたいじゃねぇか」
「バカな!? 大神をも縛る双魔神の魔術を、何故人間ごときが……!?」
「ナンバーズを持つ者は、時間操作の類の影響を受けません。悔しいでしょうねぇ」
 絶対の自信を持っていた双魔神の魔術が人間に破られたことに、無限法師は驚愕を露わにした。
 その醜態を、Ⅳはわざとらしい煽り口調と共に鼻で笑って挑発した。
「ファンサービスはしなくていいのか? 希望を与え、それを奪う男よ」
 屈辱にわなわなと肩を震わす無限法師を余所に、今度はフェイトが嘲笑混じりにⅣへと問い掛ける。
 フェイトはその素性も相俟って、全ての参加者の詳細なプロフィールを把握し管理している。
 だからこそ、Ⅳが今と最も掛け離れていた時期を引き合いに出し、動揺を誘う。
 しかしⅣは、これすらも一笑に附してみせた。
「そういう時もあったさ、確かにな。だが、今はそういうわけじゃないのさ。さぁ、切歌! 俺からのファンサービスだ、受け取れぇ!!」
 Ⅳからのファンサービスという号令を受け取って、先程の赤と白の獣が、切歌の前へと現れた。
「ゾナ!」
「ブオー!」
「な、なんデスかこれー!?」
 ……それらは、獣ではあるのだが、本当に獣なのか疑わしいものだった。そもそも鳴き声からしておかしい。
 ふくよかで全体的に丸みを帯びた外見は、赤い鳥と白い牛のぬいぐるみや着ぐるみのようだった。
「ゾナーとブオーだ。切歌、こいつらを使え」
「け、けど、牛と鳥で、私はどうすればいいんデスか!?」

735第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:11:30
「アマテラス、あの双魔神には残る3種の神器とお前の分神が1つずつ封じられている。何としても取り戻せ」
「無視デスか!?」
 Ⅳはさも当たり前のように、何の説明も無しに赤い鳥のゾナーと白い牛のブオーを切歌に託し、切歌の抗議を無視してアマテラスにとって最も重要な情報を伝えた。
 アマテラスの残る分神は2つ、幽神と凍神のみ。そしてアマテラスの三種の神器、天叢雲剣と八尺瓊勾玉はそれぞれ雷と氷の力を帯びたもので、双魔神の特徴とも一致するものだった。
 それらの情報は、敵が強大な力を司る凶報であると同時に、アマテラスが全ての力を取り戻すことが不可能ではないという吉報でもあった。
「Ⅳさん、どこでそんな情報を?」
 参加者の身分では決して知りえない主催者側の内部情報。その出所が不思議になって、マローネは切迫した状況ではあるが出所を問わずにはいられなかった。
「Z−ONE……。やはり、裏切ったか」
 するとマローネの問いに代わって答える形で、フェイトが納得したように呟いた。
 自分と同じく、遥かなる時間をかけて人類を見守り、破滅を超えたより良き未来へ導く為に人類の運命を定め、神とも呼ばれた最後の一人。
 彼の人類への愛はフェイトとは似て非なる物であり、いずれ彼が離反し自分達に刃を向けることは予見していた。
 しかしそれもまた運命であればこそ、同じく運命を知るバグラモンもフェイト共々その意志と結末を祝福した。
「奴らも一枚岩じゃなかったのさ。劉備、アバンス、怪我人は大人しく寝てろ。心配しなくても、俺のファンサービスはばっちり見せてやるからよぉ!」
 2体のギミック・ボックスを双魔神と対峙させ、全員を鼓舞するようにⅣが叫ぶ。敬愛する父をその手に掛けた、アバンスに対してさえも。
 Ⅳの父、トロンはⅣとは異なる時間軸から招聘されたが故に主催者のジョーカーとしてバトルロワイアルに参画し、10人を超える参加者をその奸智と実力で以って葬り去った。
 だが、Ⅳの決死のデュエルによって彼に憑り付いていた復讐と憎悪は祓われ、分かり合うことが出来た。
 その少し後、心の整理の為にと1人になっていたトロンを、アバンスは殺した。彼の紋章の力と強大なナンバーズを奪う為に。
 Ⅳはこのバトルロワイアルによって家族を全て奪われ、友すらも失った。
 それでも、決して自分を見失わず、怒りや悲しみを他者に当たり散らそうとしない。
 アバンスには、礼の言葉を言うことすら憚られた。
「……ああ、そうさせてもらう。みんな、劉備は……俺に任せてくれないか?」
 だから、行動で示す。ケジメと、覚悟を。
 誰もアバンスの案に異を唱える者はおらず、劉備の命運は託された。
 一方、ゾナーとブオーに懐かれたのはいいものの、どうしたものか戸惑っている切歌を残し、2人と大神は主催者たちと対峙する。

736第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:16:04
「お師匠様、シェンナさん、セルジュさん、アバンスさん、エミリア……皆さんの運命を狂わせた、仇……。許しません」
 霊剣スカーレットを強く握りしめて、マローネはフェイトを睨んだ。
 イヴォワール九つ剣の1人、大剣士スプラウトは家族を失い天涯孤独となったマローネを助け、生き抜く為の力と戦い方を教えてくれた大切な師匠。
 シェンナは悪霊憑きと忌み嫌われ万人から罵声を浴びせられていたマローネを唯一受け入れ、分け隔てなく接し、住む場所をくれた大切な恩人。
 セルジュはバトルロワイアルという極限の状況下で手を差し伸べ、助けてくれた大切な仲間。
 エミリアとアバンスについては、最早言うに及ぶまい。
 彼らの全てを狂わせたフェイト達は、マローネにとって間違いなく倒すべき敵だった。
 主催者全員を師匠仕込みの剣術、セルジュから譲り受けたシェンナの剣で討つことに寸毫の迷いも無い。
 そんな風に気を張っていたマローネの肩を、Ⅳが軽く叩いた。
「憎しみで戦うのはやめときな。父さんも……そういう心の闇を、奴らに利用されたんだ」
 達観したような眼で、Ⅳは静かに語りかけた。
 Ⅳの父、トロンに関する顛末を知るマローネは、静かに頷いた。
 彼女の瞳に宿るのは、憎しみではなく、怒りと悲しみの代償に得た、強い意志と確固たる決意。
「はい。なら、せめて……あの人達の無念を晴らす為に、私、戦います。戦うの、好きじゃありませんけど」
 マローネの言葉を聞いて、アマテラスは喜びを示す為に大きく鳴き、そのまま決戦を告げる遠吠えを上げる。
 しかしその決意を、黒衣の運命と蒼き鎧の錬金術師は嘲笑う。
「ホウホウ。お前達にとっての神にも等しい我らに、人の分際で挑もうとは愚かなこと」
「お前たちの運命は、私達の掌中にある」
 その言葉を聞くや、Ⅳは左腕のデュエルディスクを構え、右手にカードを握る。
「なら全てぶっ壊してやるさ! お前らの言う運命を、俺達の手でなぁ!!」
 2体のギミック・ボックスをオーバーレイし、呼び出すのは彼の握る切り札の1枚。
 かつては神のみぞ操れる運命の糸を操る者と嘯いたその1枚を、今敢えて召喚する。
「現れろ、No.40! 運命の手綱を断て! ギミック・パペット−ヘブンズ・ストリングス!」
 運命を操らんとする者と運命を見極めようとする者――運命に囚われし者たちと、運命を壊し未来を勝ち取らんとする運命に挑みし者たち。
 バトルロワイアル・プログラムの終わりを告げる最終決戦の幕が、今、切って下ろされた。

737名無しロワイアル:2014/01/16(木) 01:46:14
【劉備ガンダム@BB戦士三国伝 戦神決闘編】
[状態]:意識不明、出血多量、左腕損失、体と鎧に無数の穴。
[装備]:劉備の鎧@BB戦士三国伝、龍帝剣@BB戦士三国伝
[道具]:基本支給品一式、イルランザー@クロノクロス、グランドリオン@クロノクロス、
[思考]:正義を成し、主催者達を討つ。

【リチュア・アバンス@遊戯王デュエルターミナル】
[状態]:疲労(極大)、深い後悔と強い覚悟
[装備]:無し
[道具]:辺りに散乱している
[思考]:劉備を助ける

【アマテラス@大神】
[状態]:疲労(小)
[装備]:沖津鏡@大神、草薙の剣@大神
[道具]:基本支給品一式、
[思考]:闇を祓い、浮世を照らす。

【マローネ(クローネ)@ファントム・ブレイブ】
[状態]:疲労(中)、静かな怒り
[装備]:霊剣スカーレット@ファントム・ブレイブ、ケルキオンの杖@遊戯王デュエルターミナル
[道具]:基本支給品一式、回復エレメント一式
[思考]:主催者を討ち、大切な人達の無念を晴らす。

【Ⅳ@遊戯王ZEXAL】
[状態]:疲労(大)、紋章の力の反動による魂の消耗(大)
[装備]:デュエルディスク&Ⅳのデッキ@遊戯王ZEXAL
[道具]:基本支給品一式
[思考]:主催者共にファンサービス! スターとして、ファンに全てを捧げる覚悟。

【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]:疲労(小)、困惑
[装備]:赤いマフラー@BB戦士三国伝、ブオーとゾナー@武者○伝シリーズ (※No.カード付き)
[道具]:基本支給品一式、回復エレメント一式、オキクルミの仮面@大神、デュエルモンスターズのカード×10@遊戯王シリーズ
[思考]:みんなと一緒に戦いたいけど、どうしたらいいか分からないデス!

補足説明
・クローネとマローネ
クローネはファントムブレイブの主人公マローネの並行世界の同一人物。
両親だけでなくアッシュさえも失ってしまい、天涯孤独となったIFの存在。
クローネという呼び名は見た目が日に焼けて黒いのと、原作で説明をめんどくさがったある人物が
「クローンのようなもん」と乱暴な上に語弊のある説明をして「クローンのマローネ」を縮めた通称。
なのでこの後3話では彼女の本名のマローネで通させてもらいます。ややこしくてすみません。

738 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:49:42
以上で投下終了です。
マイナー作品のネタ多過ぎてすみません。けど大好きなんだ……!

739 ◆uBeWzhDvqI:2014/09/30(火) 21:49:13
【ロワ名】ジャンプキャラバトルロワイアル 俺が書かなきゃ誰が書く

【略称】俺ジャン

【生存者】
○うちはサスケ@NARUTO-ナルト-
○男鹿辰巳@べるぜバブ
○小野寺小咲@ニセコイ
○斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
○DIO@ジョジョの奇妙な冒険
○八雲祭@PSYREN -サイレン-

【主催】
バビディ@ドラゴンボール
ダーブラ@ドラゴンボール

【主催陣営】
ヴィクター@武装錬金
鶫誠士郎@ニセコイ
ドルキ@PSYREN -サイレン-
(多分増えたり減ったりします)

【参加作品】
○ドラゴンボール/○ONE PIECE/○NARUTO-ナルト-/○BLEACH/○銀魂/○るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-/○ジョジョの奇妙な冒険
○べるぜバブ/○PSYREN -サイレン-/○武装錬金/○ニセコイ/○アイアンナイト/○恋のキューピッド 焼野原塵/○ダブルアーツ/○タガマガハラ


とりあえずテンプレ的なものを……。
本編及び設定とか流れは10月中に投下できるように頑張ります。

(始めても大丈夫ですよね?)

740 ◆uBeWzhDvqI:2014/09/30(火) 22:27:32

各キャラの動向みたいなものだけ先に。

その一、サイヤ人頂上決戦関係者


【男鹿辰巳】
バビディにベル坊を人質に捕らえられているが弱気にならず己の道を進む。
最初に出会った一条楽、ナルトと行動を共するがブロリーとの戦闘で一条楽を亡くしてしまう。
己の無力を痛感するが止まっている暇はなく他の参加者達と合流し血を流しながらも前を進んでいた。
その先にアイアンナイトとして暴れる少年と交戦し言葉ではなく拳で語るも化け物を取り逃してしまう。

道中ナルトの友達であり敵であるうちはサスケと出会い交戦寸前になるが「ダチの勝負の邪魔はしねぇ」と拒否。
他の仲間と共にナルトの戦いを見守るが突然ナルトが急変し味方にも攻撃を開始する。
戸惑いながら交戦し、「DIO様のために」と呟くナルトを戦闘不能にさせるべく奮戦。
しかし乱入してきた志々雄真にナルトを殺害されてしまう。その後志々雄を倒そうとするもヘルメスドライブで逃げっれてしまう。
死にゆくナルトから謎の紙を託され、彼はなお、前へ進む。

サスケは無言でその場を去り残された男鹿や山田ヤマト達はゲームに乗ったパピヨンと遭遇してしまう。
この戦いでパピヨンを殺すことは出来たが近藤勇が死亡、彼の漢としての最後を看取った。

そしてバビディに洗脳されたベジータと交戦し壊滅級の被害を被ることになる。


【八雲祭】
最初に出会った武藤カズキと共に行動を開始する。カズキの人懐っこい姿に笑顔を見せる場面も。
左之助と承太郎の戦い(勘違いによる)を目撃し謎のビジョン(スタンド)を使う承太郎をPSI使いと認識。
そのまま左之助に加勢し交戦を続けるも勘違いと判明し中断。左之助から「何で邪魔をした」と言われるが基本無視。

その後一条楽の死を知り彼を生きかえらせるためにゲームに乗ったマリーの奇襲を受ける。
ニアデスハピネスの爆発で被害を負うもマリーを無力化し彼女を正す。
しかし改心させる事は出来ずにマリーの決死の自爆で左之助を亡くしてしまった。

進む道中に黒崎一護と小野寺小咲の二人組と合流しゲームに乗ったロンシアと交戦。
これを退け後を追うも其処には何者かによって殺されたロンシアの姿があった。
祭達の脳裏に浮かぶのは「DIO様のために」と呟いていた意味深な言葉だけだった。

殺し合いの遅延を感じたバビディによって放たれた虚と戦っていく中、大きな閃光に包まれた。


【サイヤ人頂上決戦】
バビディに洗脳されたベジータはそのまま男鹿辰巳グループを襲撃した。
カカロットがバビディによる首輪の爆破で死んだ今、彼を止める者は存在しない。
男鹿やヤマト、恋次や銀時など多数の猛者を一度に戦うがサイヤ人の戦闘力は一線を超えていた。

戦闘する中彼の脳裏にはかつての王子であった自分とカカロット達と共に戦うZ戦士がぶつかり合っていた。
銀時の「お前は誰なんだ」を受け己の身体に多大なる負担を掛けながらも洗脳を振り切った。

しかしその場にブロリーが出現し更なる戦闘が始まる。この時ブロリーと交戦していた祭達も加入する。
この時祭達から一護と小野寺が戦闘の余波で逸れてしまっていた。
既に何方の陣営にも被害及び死者が出てしまい戦闘はブロリーが終始圧倒していた。
その最後は承太郎が時を止めブロリーにラッシュを叩き込んだ後に銀時が斬り捨てる幕引き。
だがブロリーは最後の悪足掻きとして己の気を全開にまで高め自爆を引き起こした。

爆心地の距離の関係上生き残ったのは祭と男鹿とベジータの三名。
その後ベジータは洗脳されていた時に多くの命を奪ったケジメを着けるためにその生命を犠牲にして結界を破る。
これによりバビディの居場所がマップ上に出現し祭は乗り込むために足を進める。

一方男鹿はナルトから託された紙が動いているのに気付く。
この紙の招待はビブルカード、つまりこの紙の方向にDIOが居る。
ナルトやヤマトの仇を取るため男鹿は満身創痍ながらも足を進めた。

741 ◆uBeWzhDvqI:2014/09/30(火) 23:46:26
その二、小野寺救出煉獄決戦関係者


【DIO】
承太郎という恐るべき敵が存在する中、このロワでは黒幕的な存在として暗躍していた。
肉の芽によって洗脳に成功したのはナルト、ロンシア、ヤマト、アゲハ、剣心、桂……など多くの参加者を手駒に。
命令を下し自身は光に身体を晒す事無くロワを優位に勧めていた、しかし。

カーズに奇襲され応戦、スタンド能力で優位に立つも身体能力はカーズが優っていた。
時止のアドバンテージでさえも覆すカーズに絶体絶命だったがアゲハが駆けつけ奇跡が起きる。
アゲハの暴王の流星「追尾は無限」でカーズの動きを止める事に成功、そして場所は禁止エリア。
時間が経ちカーズの首輪は爆発しDIOは最大の危機を乗り切った、しかし――。


【小野寺小咲】
殺し合いに巻き込まれ錯乱するが最初に黒崎一護と出会い彼のおかげで平常心を取り戻す。
その後出会った塵を見て驚くが心優しい彼を外見で判断すること無く仲間として受け入れた。
当の塵は小野寺を「恋する乙女」として見守ることを決意していた。

仲間と合流し平穏に進むがDIOに操られた剣心と交戦することになるが小野寺自身は戦わない。
皆が戦い、自分だけ安全な場所に居ることに罪悪感を感じてしまう。

一条楽の死を知り生きる希望を感じられなくなり、泣きながら「私を殺してください」と仲間に頼む。
この発言を仲間たちは受け流すこと無く彼女を論し、支え、励ました。

マリーの死が知らされ追い打ちを掛けられ更に心が空になるも前だけは見つめていた。
アイアンナイトの襲撃に遭うも生き延びる、そして彼の心が泣いていることに気付く。

その後仲間と別れ一護と行動を共にし祭達と合流し襲ってきたロンシアと交戦。
塵の仲間と聞いていたがその性格は全くの別人だった。気になることは剣心と同じく「DIO」という単語を口にしていたこと。
ブロリーの戦闘の際に大きく吹き飛ばされ一護共に祭達と離れる。

そこで小野寺にとって悲劇が起きてしまう。


【斎藤一】
名簿に乗っていた志々雄の名前に疑問を抱くも悪を斬るため動き始める。
最初に出会ったゴルゴンに苛立ちを覚えるも奇術と呼べる瞬間移動の力を目にし近くに置いておく。
……しかし道中何度も苛立ちからか斬り捨てようとしていた。

その後土方十四郎、桐崎千棘らと合流。
土方の名前と新選組関連の情報から騙りと決め付け交戦を開始する。
何方の言い分も本当ではあるが世界が違うため真実は互いに異なっていた。
千棘やゴルゴンが戸惑っている中志々雄の乱入により戦闘は中断、彼の相手を務める。

志々雄の戦闘能力は斎藤一の知っている志々雄と変わらないが時間の制限を既に知っていた。
15分が経過しようとしていた所を武装錬金ヘルメスドライブによって逃げられてしまう。

その後放送により左之助の死を、次の放送により剣心の死を知らされる。
また一条楽の死を知った千棘が暴走の末にエルを殺してしまい自身も自殺してしまう。
少ない間に知った顔が死んでゆくが修羅場を潜り抜けてきた男の心は揺るがない。
その冷静さから反感を買うも彼は悪・即・斬を貫き通す。


【うちはサスケ】
ゲームに乗り悪を殺し願いを叶えるべく行動を開始する。
しかし最初に出会ったシーザーと交戦、彼を殺害するも彼の生き様に過去の自分を重ねてしまう。
心に一瞬の迷いが生まれるが目的のために止まることは許されない、彼は進む。

その後何度か戦闘を繰り返した後パピヨンと出会い同盟を申し込まれる。
サスケは断ろうとしていが近くにナルトの姿があった。
彼を見ているとチャクラに気付かれナルトと交戦する嵌めになってしまう。
この際、パピヨンに「邪魔をするな」と告げた。後のパピヨンVS男鹿一味戦であった。

ナルトと交戦する中、過去の自分を再度重ねるも闇に染まったこの身体に光は受け付けなかった。
途中ナルトが急変し「DIO様のために」と呟く。異変を感じたサスケだが戦闘は止めない。
此処に男鹿達も加勢するが暴走するナルトは大術を発動しながら確実に彼らの生命を削っていた。
その後斎藤達との交戦から回復した志々雄が乱入しナルトを殺害、サスケはそのまま志々雄を追うべくその場を去る。

ナルトの仇を取るつもりはない、だが志々雄を殺すべき相手として認識していた。

742 ◆uBeWzhDvqI:2014/10/01(水) 00:04:50
【小野寺救出煉獄決戦】


殺し合いの停滞を危惧したバビディは志々雄に無限刃と強化した戦闘集団、そして煉獄を授ける。
これを受け取った志々雄はそのままバビディを殺害しようとするもダーブラの介入で失敗してしまう。
直後に後を追ってきたサスケに敵意を向けられるも「これからもっと面白ぇ祭りが始まるから黙っとけ」と言葉を残し消える。
ヘルメスドライブで移動した先は斎藤一のグループであり宣戦布告をした後小野寺を攫い煉獄の中に乗り込む。
煉獄の中に居るのは志々雄と攫われた小野寺、そしてフレアの能力を見込まれたキリだった。


小野寺を救うべく(斎藤はあくまで志々雄を殺すためと言い切る)煉獄へ向かう一行。
道中に肉の芽に支配されたアゲハと帝王DIOと交戦する形になってしまう。
バビディの命令かどうかは不明だが志々雄の戦闘集団はDIO達に加勢しており数では圧倒的に不利だった。

交戦する中埒が明かないため煉獄突入組と残存組に別れる事に。
アゲハを止めるべく残る飛竜を始め、塵や剛太、神埼など他合わせて系6人が残ることに。
煉獄に突入するのは斎藤、一護、土方、ゾロ、ゴルゴンの五人だった。
ゴルゴンの瞬間移動で移動を開始するがDIOが時を止める事により妨害する。
このままでは一生煉獄に突入できないため、斎藤が残ることを決意する。
志々雄はいいのか、と聞かれると「こんな雑魚は速攻で斬り捨てる」と残し他の足を促した。


DIOのスタンド能力に苦戦するもその高いプライドを煽り生まれた隙を狙い牙突を放ち彼の右腕を吹き飛ばす。
そのまま海の中へ蹴り飛ばし斎藤も煉獄の中へ突入した。

743 ◆uBeWzhDvqI:2014/10/01(水) 00:06:38
先に煉獄へ突入していた一護達は志々雄と交戦していた。
志々雄の戦闘能力は本物であり無限刃の存在もあったか苦戦……数では此方が有利。
一護、土方、ゾロ……彼らも一級品の戦闘能力を持っており志々雄とは存在する世界も違うため圧倒。
しかし既に満身創痍のため戦局は五分、やや志々雄が優勢になっていた。ゴルゴンはこの間に小野寺とキリを開放していた。


その後斎藤も合流し四対一となり志々雄に攻め込む。
やがて15分が経ちそうになった所で斎藤が牙突零式で志々雄を吹き飛ばし勝負が終わるはずがない。
志々雄は武装錬金「激戦」で己の身体を修復し再度四人相手に暴れ始める。
殺しても殺しても復活する志々雄、その力の前に斎藤達は徐々に押され始め意識が現界に近づいていた。


サスケも乱入し五対一となるも志々雄の優勢は変わらない、しかしまだ彼が居る。
この状況を破ったのはゴルゴン、激戦で再生する中、逆刃刀を投げ付け妨害し志々雄の身体を破壊する。
発火現象が始まった志々雄はそのままゴルゴンを斬り捨てるが死は免れない。ゴルゴンの顔は笑顔だった。


志々雄が死ぬように煉獄も崩壊を始め、サスケは逸早く脱出する。
ゴルゴンが最後の力を振り絞って瞬間移動させようとするも身体は限界、キリのフレアの力を借りる。
しかしこれではキリも死んでしまう、彼を止めるゴルゴンだがキリはそれを振り切り瞬間移動を始める。


だが伸ばした腕は小野寺に届かず彼女は一人煉獄の中へ残され――崩壊した。


陸地に戻った斎藤達だが彼らを待っていたのは暴れるマスターバロンと桂だった。
DIOはそのまま逃走を図りアゲハは仲間によって倒されていた。しかし飛竜達は死んでしまい、生き残ったのは塵と剛太だけ。
時を同じくしてベジータが結界を破界したため居場所が判明するが移動出来る状況では無かった。

志々雄戦で後半参戦し比較的傷が軽い斎藤を先公させる提案をする土方、この発言にナニカを感じる斎藤。
「いいから黙って行け、それで俺達を受けいられるように宴の準備でもしとけ」「阿呆が」。
ゾロは斎藤に三代鬼徹を託し、彼を走らせた。
土方は桂を止めるため、ゾロと剛太はマスターバロンを止めるために戦う――結果は何方も相打ち。


塵と一護は小野寺の気(霊圧)を感じた方向へ移動していた。
その際塵は何かゴルゴンと会話していたようだが内容は不明、しかし彼らは何時通り笑顔だったという。


塵と一護が駆けつけた先にはアイアンナイトに襲われかけている小野寺だった。
聞けば小野寺はサスケに救出されていたらしく、彼はバビディの元へ行くため小野寺一人を此処に放置したらしい。
暴れるアイアンナイトを止めるのは恋のキューピットと護る力を信じる死神。
志々雄戦で満身創痍の一護はアイアンナイトを止める前に力尽きるが彼の死を笑う者は存在しない。
塵の最期は暴れ悲しむアイアンナイトの心を理解し受け入れた上で其処から「だがお前は最低野郎だ」と突き放し殺した上で自身の生命も停止した。


残された小野寺は一護の斬魄刀である斬月を形見として受け取り、脚が震える中、それでも皆のためにバビディの元へ足を進めた。


こんな感じです。きっと矛盾も生まれる(既に生まれてる)かもしれませんが、頑張ります。


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