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あと3話で完結ロワスレ

448300:ウソツキハッピーエンド ◆YOtBuxuP4U:2013/04/10(水) 23:01:24
  
 さらに世間をにぎわせたのは、その事件の異常(アブノーマル)な中身だった。
 100名に届くかという数の死者たちはその全員が、
 なんらかの爆薬を仕込んだ首輪によって首を爆破された死体となっていた。
 凄惨な首なし死体。
 この、映画バトル・ロワイアルを彷彿とさせる殺害方法――これも異常なのだが、
 それ以上に、
 不可解かつ異常な点が一つ。
 死者たちは全員、首輪の爆発による外傷以外には『傷ひとつない』という点が、おかしかった。
 つまり――急性心停止とかでない限り。

「首輪の爆発以外に、彼らを殺す手立てがない、ということだったんだよね」

 201X年◇月◎日。東京都庁資料室。
 別件で招かれたとある青年探偵が、暇潰しに一年前の大事件の資料を覗いていた。
 背丈普通、印象普通、されど頭と性格は少し普通ではない。
 かといってそう大それたことができるわけでもない――彼は普通の探偵だった。
 隣には女子高生じみた助手がいて、こちらは少し間の抜けたことを言う。

「じゃあ首輪の爆発で死んだんじゃないの?」
「普通に考えればそうなる。
 でも、映画バトル・ロワイアルをリスペクトして人質に首輪をつけた犯人が、
 映画のように殺し合いを開催しなかったわけがない。だからおかしいんだ。
 まるで、殺し合いを始めますと言った瞬間に、全員の首輪が誤作動で爆発してしまったようなものだ」
「ほへぇ。それはひどくこめでぃだ」
「そうコメディだ。現実的に考えてありえない。
 なにか整合性のとれる仮説が存在しうるはずだ――たとえば、
 世の中には、異常(アブノーマル)な事象を起こせるスキルを持つ人間もいる。
 さらに箱庭学園は、その手のスキルにずいぶんと研究熱心だという情報があった。
 常識にとらわれずに色々な可能性を検討すれば、情報次第では真実に迫れるかもしれない。
 ……事件の最初の一報を聞いたぼくたち探偵はそう思って、思索に耽ろうとした。
 その暇さえ与えられないとは思わなかったけどね。この事件が異常なのはさらにこの後。手記が見つかったことさ」
「手記?」
「そう、手記。それも同じ場所から、五編の手記が見つかった。
 執筆者は中学生の“参加者”五名。その内容は、ぼくたちにはクリティカルなものだった」

 探偵はぱらぱらと事件の資料をめくり、手記が発見された当時の新聞記事のページを開く。
 少し目の悪い助手はそれに近寄って目を凝らし、大きな字で書いてある見出しを読む。

「へぇ、中学生が……って、
 見出し……《大事件の死者が描いた不可解な手記》……どゆこと?」
「きみの目には細かい内容までは見えないだろうから、
 ぼくから説明しよう。端的に言うとこの五編の手記には、こう書かれていたんだ。
 “全知全能の神のような主催、安心院なじみは、
 殺し合いを確かに開催した。しかし――殺し合いは『行われなかった』”」
「行われ……なかった?」
「そうなんだ。開始からたった4日で全員が死ぬシステムだったにも関わらず。
 最期の一人にさえなれば生き残れるシステムだったにも関わらず。誰一人として、人を殺さなかった」

 手記には5人の少女たち、それぞれの視点からゲームの様子が描かれていた。
 バラバラの場所からスタートした5人は、
 違うルートを通って箱庭学園内を巡回して、物語を紡いだ。
 ある時は恐怖に怯えていた少女を助け。
 ある時は殺し合いに乗りそうになっていた少年と戦い、説得し。
 ある時は賭けを行い、交渉して。
 個性的な箱庭学園の面々と、彼女たちなりに――語り合った。
 そして、最終的に。
 見せしめとして殺された理事長を除いた全員を、校庭に集めることに成功したのだという。


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