[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
あと3話で完結ロワスレ
276
:
SLBR・289-a: 素晴らしき小さな戦争(Ⅰ)
◆MobiusZmZg
:2013/02/02(土) 17:10:17
SLBR・289-a: 素晴らしき小さな戦争(Ⅰ)まことの騎士
Scene 01 ◆ 白の鳥・まるで玩具のような
幼子の、遊びですね。
雪によって滅ぶ箱庭の維持を使命とする鳥は、玲瓏な声でそう言った。
なにものにも染まらず、染めようとするものも退ける、響きは凍てて耳朶を灼く。
だが、優美な韻律を含ませてさえずる鳥――齢三十にも満たぬ見目をした女の、双眸はひどく茫洋としていた。
初夏の陽にきらめく緑を宿した瞳には空疎と超然が混淆して、硝子玉のように透き通っている。
彼女が黙してかぶりを振れば日覆いの絹から薄香の髪が溢れ、口許を隠すように添えられる手をいろどった。
粛然たる居住まいは世界を俯瞰しているのか傍観しているのか、あるいは諦観しているのかさえ余人に悟らせない。
この箱庭にある鳥よ。
あなたも、『そう』なのですか。
ただひとつ、歌う言葉の自嘲だけが周囲の空気をふるわせる。
◆◆
分かりません。
いえ。貴方のなさっていることは、私には分かりたくありません。
もとより初めから主によって創られ、箱庭を見守る私に、これだけは分かりようもない。
だからでしょうか。私の紡いでいるこの言葉さえ、貴方に届くことなどありません。
この箱庭に在る私は、外なる果てで戯れに浮かべられた『夢』の欠片でしかないのですから。
そして、ある意味では貴方も……正しくあの方と相似した視点をもって、この箱庭を眺めつつある。
これだけは分かります。
分かりましたから、もう、やめておしまいなさい。
すでに滅びも近いとはいえ、創世主の真似事をして、貴方は何を得られるのです。
まるで玩具のような為様で弄んでいるの箱庭に想いを寄せて、貴方はこんなに憔悴しているではありませんか。
今にも泣き出しそうになりながら、中座するのもこらえ、おぼつかぬ指と四肢をふるわせて――。
急き立てられるように、貴方は、形の合わない小片を押し込み繋いで間隙を埋めようとしつづける。
いちど歪めてしまったものを壊し切ることも出来ず、別の物を創ってしまうことも出来ずに、ずっと。
ずっとその掌で温めたなら、いつか、別の箱庭の小片が馴染むかもしれないとでも思っているのですか。
愚かしい。ほんとうに、惨めで、哀れで見苦しいものですね。
これ以上に付け加えるものもないだろう、これに、どうして別の小片が馴染むのです。
綻び解けるものを無理に繋いで疵を押し隠す。その行いに、どれほどの価値があるのですか。
なにより、貴方自身が己の行いを愚かしいと思っている。箱庭の維持にも繋がらないと解している。
そうと分かってなお突き進んだのが、同じ鳥としてある貴方の、最も救いようのないところです。
無様にしがみついている、これが、貴方になにをしてくれました?
裏を返せば、これに、貴方はなにかをしてやれると仰るのですか?
愛を叫んだところで、ここより先にはもう何もない。貴方が、すべて壊してしまったから。
何かを憎もうにも、ここから遡ってももう何もない。貴方が、すべて消してしまったから。
世界を切り取り抱き締めて、二度と手に入らないものを求めている事実さえも知っていて、
そこまで行ったというのなら、もう、やめてしまえば楽になれるでしょうに。
それでも許せないのですか。
それでも手離せないのですか。
それでも諦められないのですか。
それでも、忘れられないのですか。
荒らげた息を吸って、ならばと白の鳥は続ける。
言葉が胸で凍って砕け、そのたびに彼女自身を傷つけてなおも口を開く。
ならば……せめて、終わらせてしまいなさい。
終わってしまえば、夢だったとでも思えるでしょう。
いつかあの方の仰っていたように、忘却が精算にはならないのだとしても。
◆◆
.
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板