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あと3話で完結ロワスレ

507 ◆MobiusZmZg:2013/05/03(金) 17:25:21
 情報の塊である『萬川集海』を、おのが核としているがゆえにか――。
「……やはりな。そういうことかって、ツナセンなら言うだろうよ」
 あるいは茶化すような言葉のとおりに、予想から外れていなかったであるからか。
「何を我慢してたのかなって思ってたけど、それこそこの盤をひっくり返して『壊すこと』だったわけだな」
 藤林の、修羅ノ介は、問題の要諦を捉えて言った。
「それならお前はやれる……のかなあ? なんだかんだ、人減らしも完全者サンにやってもらったんじゃない」
「……では、やれた方が良かったのか?」
「んー、まあ、どっちもヤだね。だって俺、こんなザマでもまだ死にたくないし」
 でもまあ、そうやって照れ隠し出来るアンタにほっとした。
 さながら保護者であるかのように言う少年。神を辞めたという人間の、神のごとき安堵を前にして、
 私は、どのような顔をすべきか解れぬままに息を吐く。
 創って壊す。その言葉に自身が釣り合わぬなどと、この草は欠片たりとも考えまい。

  ――救世主の使命なんかより大事なものはあるよ。

 神であるならその不遜をこそ受け容れよとばかりに私の前へ立つ、賢しさへ水と桜が混淆する。
「で、どうやってこれ壊すの?」
「影弥勒が忍法【合方】。終焉の石<デミクリスタル>を埋め込む際に、お前の『絆』を奪っている」
「はぁ? 絆、て――そいつは『魔獣の絆』ッ!?」
「そのとおりだ。この絆が綾なすは、妖かしどもが忍法【魔界転生】。これで一手は稼げようが」
「うん、俺それが本業だから知ってるよ! てぇか、俺もソイツは使いたいんだけどマジでここにあったの!?」
 言いながら、藤林の若者は忍術秘伝の巻物を四肢より乱雑に引き出した。
 そのうちの『どれが頑丈なつくりをしているのか』認識して、私は、壊すために瞑目する。
 迎撃でなく反撃でもなく、純然たる進撃のために征く、耳朶にバリトンが染みた。

「あぁ、無い物はしゃーねえ。……ならもう、せめて『エゴ』じゃなく『愛』をもって、そいつを使いやがれ!」


  世界の何もかもが許せねえ、俺が許すから。


 化け物であろうとする人間をこれほどに許容する、この少年こそ神なのではないか。
 追憶の入り口にあって、あれの忍法はいまだ力を発揮しているようであった。



 ◆◆



 追憶の行われる、どこにも届かない一瞬で、藤林修羅ノ介は息を吐いた。
「ったく、さすがに軍人なだけあって、戦い方とか分かってやがる。
 この戦争、結局は壊しあい……てか、空白<ブランク>になってる過去の創りあいなんだよねぇ」
 結局、ちらとも視線を向けられなかった完全者と『ファルコンブレード』高崎隼人……忍法の布石であるとはいえ、
下手をすれば衆人環視の戦場ロマンスのような何かを演じかねなかった状況を思えば、そこにため息が続く。
 そうしてついに、ため息は八つ当たりとなって絶対の他者にと向かった。
「微妙に乙女ちっくになった俺が気持ち悪いんだけど、せめてなんか言わせろよあの莫迦。
 【魔界転生】の反動も『4点になっちまったヤツ<絶対防御>』で防げたけど、人目のあるとこで見せたくな――あ」
 それは駄目だと思い直すと同時、思考も醒めた。
 かなり緊張していた自分自身を見つけた少年は、これから纏うと決めた『影』に意識を向け直す。

 真面目じゃないけど変な話。
 その『変』で脳が動き、喰らった意味から新たな何かが生まれるのならば、それはべつに構わない。
 だが、真面目じゃないうえに変なところさえない話は無為や益体もないといった形容を通り越して無意味に。
 ――単なる無意味ならばまだいいが、恥ずかしげもなく白くて淡い、透き通るものに堕してしまうと思えたのだ。



 ◆◆


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