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あと3話で完結ロワスレ
503
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:16:11
「『神の死体』……お前の屍を、いま此処に創り出すか。あるいは、その手で私を倒してみるか」
「あー、ダメダメ。俺とお前に殺しあうのは無理だって、ちゃんと説明したでしょ?」
月下美人の銘が刻まれた刀、世界にあまぎる雪を呼ぶ遺産を恐れることなく、修羅ノ介は歩を進めた。
分かってないなら、もっかい言うよ。気負いのない言葉は、水が、波紋をつくるように彼らの世界を侵蝕する。
「俺はお前を選んだ。壊れかけた俺の全部を壊して、もっかい同じに創ろうとしたお前を心に刻んでるんだ。
まぁ……俺が勝手にお前『で』立ち直ったのかもしれねぇが、それならやっぱ、俺はとっくにお前を選んでるんで」
それは、白に雑ざった影とよどんだ修羅ノ介の身ごなしも同じであった。
『幽霊歩き』と呼ばれる、忍者の高速機動のなかでも最も遅い足取りは、けれどムラクモに捉えられない。
より正確には、修羅ノ介の纏う文字が『影』と変わるさまを、捉えようとさえしていなかった。
レネゲイドウィルス。第二次大戦前夜には『ヴリル』や『魔術』と呼ばれていた力でもって、身体能力や思考能力の
増大が果たされていようとも。いいや。レネゲイドウィルスによる力を有するからこそ、彼は足を止めている。
この空間における音波の伝達、匂いの拡散――。
藤林修羅ノ介が『いた』場所を中心とした地点から、それらすべてが遮断され、
(こいつ、が、オーヴァードのエフェクト。《イージー、フェイカー》……?)
「――ッ、ぅ――――!」
転瞬、ムラクモに肉薄していた少年は、声にならぬ声を喉奥に詰まらせた。
とうにヒトから離れた身体の、それでも文字が熔け堕ちてゆく異形化<イレギュライゼーション>。
文字が渦をなし、影となって場を支配するイメージが使い手をも貫いて、久方ぶりに『肉体的な痛み』をもたらしたのだ。
自身を構成する萬川集海に刻まれた【情報】をアヴァターとして操る幻想。これまでも忍法や奥義のかたちで現実にしてきた
都合のよさが、もはや都合よく切り離せないものになったのだと、交錯以前の接近で叩き込まれる。
「ちぃ……ホンモノ、触るまで怖さが分かんねえとかッ」
はっきりとした声が出て、はじめて《無音の空間》が壊れたことを知った。
その体たらくを笑ってやる前に、膝のほうが笑っている。そのふるえが情報までも揺さぶって、ああ、……思い出した。
この力。影と、他人様の発現したシンドロームをコピーして使う力は『ウロボロス』のシンドロームに属するものだ。
それは、忍術の秘伝書から力を引き出して使う者が目覚めるにはなんとも似つかわしい、
借り物を我が物顔で操る力。
物欲しげに喰らった他者の意味を自身の進化のためにしか使えない能力。
外部からの刺激を受けて進化するという力への絶望が、修羅ノ介の存在に叩きこまれた。
空を見れば星と消えてしまいそうな、モードにすらならない『神』になりかけたときに何度も、何度も響いた言葉。
カミからの御言が響く瞬間に世界からは色も音も、光さえも消え失せるのだと今さらのように知覚する。
きっと、この現象には誰も気付けない。神鏡による未来視を扱えるムラクモでさえ、気付いているかは分からない。
「そん、でも……知るか。腹が減っても選り好みする感傷なんざ、俺は、分かってたって知らねえッ!」
ゆえにこそ、感傷で腹など満ちなかった少年は、強く声を張ってみせた。
世界と折り合いをつけようと譲歩して、それでも残った意地と見栄が、声に折れることを赦さなかった。
至近で、その声を聞かされたからか。かたくななまでに動かないでいた武官の「顔」が、はっきりとしかめられる。
動かぬがゆえに相手の感情だけを励起してきたモノ――神としての表情が、大きく揺らいだ修羅ノ介の視界でさらに歪みを
増して植物の。あるいは無機物から生命の芽吹くように色と、音と光とをにじませた。
見開かれた双眸が詰まった呼気が熱を帯びる、そのさまは顔を伏せた少年の目に見えることがない。
「ほら。借り物ばっかでも、射抜くべきヤツには、届いた」
見えなくとも、爪先立ちになって相手方の首にかじりついた腕の、左で鼓動を感じ取っていた。
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