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あと3話で完結ロワスレ

688剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:07:31
 けれどある日、唐突に、全く予期せぬ形で、彼は彼女の前から姿を消してしまった。
 不可思議な闇の霧、暗黒のオーラとも呼ぶべきものが彼の体を包んだ時に、一緒に巻き込まれそうになった彼女を助けて、彼は闇に呑まれて消えてしまった。
 突然の別離を受け入れられず、彼女はまるで、彼が少し出掛けてしまっただけだと自分に言い聞かせるように、食器と食事を2人分用意して、そのまま待ち続けるという奇行を繰り返していた。
 今日で5日目。その間、彼女は自分も用意した食事や間食に一切手を付けていない。睡眠はとっているのでなんとか保っているが、人間が飲まず食わずで生きられる限界とされる時間を既に超えてしまっている。
 今も意識が朦朧としておりいつ倒れてしまってもおかしくない。その朦朧とした意識の中で、彼女はもうすぐ薪が無くなってしまうので、木を伐らなければならないことに気付いた。
 いつもは彼が率先してやってくれていたので、すっかり忘れていた。
「………………ダリオ」
 彼の姿を思い出して、彼女は一度も呼んだことの無かった彼の名を唱えた。
 離れ小島での隠遁生活とはいえ、食料の買い出しに行くことはあるし、そこで噂や世間を騒がせるニュースぐらいは知っていた。
 アカシア龍騎士団四天王筆頭にして、聖剣イルランザーの新たなる所持者となった人物の名と容姿の特徴を、彼女が知らないはずが無かった。
 それでも言えなかった。教えられなかった。彼にもう帰る場所が無くなっていたからとか、そんな理由では無く。彼と、ずっと一緒にいたかったから。
 彼女の頬を、一筋の涙が伝った。寂しさから、後悔からか、それとも哀しさからか。それすらも、もう分からなくなっていた。
 このまま何も分からなくなってしまおうかと思った、その時、家の扉を叩く音が聞こえた。
 一瞬、彼が帰って来たのかと思ったが、彼ならばすぐに入って来るはずだ。なのに、今ドアを叩いた人物は返事を待っているのか一向に姿を現さない。
 自分の冷静な思考に落胆しつつ、彼女は立ち上がって客人を出迎えようとしたが、体に力が入らず、椅子から立ち上がれない。
 止むを得ず、椅子に座ったまま声を掛けて客人を招き入れる。
「どうぞ。鍵は開いています」
「失礼する」
 彼女の声に応じて入って来たのは、金の長髪を束ねて纏めている、青い鎧を纏った騎士だった。異様に大きな足の部分が特徴的な鎧だ。


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